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特許7530353インバータの制御装置、非同期機用のインバータ、車両、及びインバータを動作させる方法
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  • 特許-インバータの制御装置、非同期機用のインバータ、車両、及びインバータを動作させる方法 図1
  • 特許-インバータの制御装置、非同期機用のインバータ、車両、及びインバータを動作させる方法 図2
  • 特許-インバータの制御装置、非同期機用のインバータ、車両、及びインバータを動作させる方法 図3
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】インバータの制御装置、非同期機用のインバータ、車両、及びインバータを動作させる方法
(51)【国際特許分類】
   H02M 7/48 20070101AFI20240731BHJP
【FI】
H02M7/48 E
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2021515502
(86)(22)【出願日】2019-09-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-11
(86)【国際出願番号】 EP2019075190
(87)【国際公開番号】W WO2020058411
(87)【国際公開日】2020-03-26
【審査請求日】2022-08-23
(31)【優先権主張番号】102018123206.3
(32)【優先日】2018-09-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】518334554
【氏名又は名称】ヴァレオ ジーメンス エーアオトモーティヴェ ゲルマニー ゲーエムベーハー
【氏名又は名称原語表記】Valeo Siemens eAutomotive Germany GmbH
(74)【代理人】
【識別番号】100098589
【弁理士】
【氏名又は名称】西山 善章
(74)【代理人】
【識別番号】100147599
【弁理士】
【氏名又は名称】丹羽 匡孝
(72)【発明者】
【氏名】カルステン ヴィードマン
(72)【発明者】
【氏名】マルクス レイマン
【審査官】佐藤 匡
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-155393(JP,A)
【文献】特開2015-198461(JP,A)
【文献】特開平10-066386(JP,A)
【文献】国際公開第2015/152002(WO,A1)
【文献】特開平10-136676(JP,A)
【文献】特開2015-198463(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0285064(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
DC電圧入力(3)と、パワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)により形成される3つのハーフブリッジ(11u、11v、11w)を有する電力ユニット(5)を備え、前記DC電圧入力(3)に印加されるDC電圧をAC電流出力(4)に供給される多相AC電流に変換する通常動作モードで前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)を駆動するように構成されたインバータ(1)用の制御装置(2)であって、
前記DC電圧入力(3)からDC電圧源(9)が切断されていることを示す信号(21)の信号状態を評価し、前記評価の結果に応じて、DC制動をもたらす第1のスイッチングパターンとフリーホイールをもたらす第2のスイッチングパターンを交互に採用するように前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)を制御することを特徴とする、制御装置(2)。
【請求項2】
前記信号状態に加え、前記インバータ(1)が回生モードであるかを評価する、請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
さらに、所定時間経過後に前記第1スイッチングパターンから前記第2スイッチングパターンに切り替え、および/または所定時間経過後に前記第2スイッチングパターンから前記第1スイッチングパターンに切り替える、請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
さらに、前記DC電圧入力(3)における電圧を示す電圧値に応じて前記交互の駆動を制御する、請求項1又は2に記載の制御装置。
【請求項5】
さらに、前記電圧値が電圧閾値に到達したことを検出すると、前記第1のスイッチングパターンから前記第2のスイッチングパターンに切り替え、および/または前記電圧値が電圧閾値に到達したことを検出すると、前記第2のスイッチングパターンから前記第1のスイッチングパターンに切り替える、請求項4に記載の制御手段。
【請求項6】
さらに、前記第2のスイッチングパターンで前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)を駆動するとき、前記電圧値が所定の電圧閾値を超えないときは安全な動作状態をもたらすスイッチングパターンを採用するように前記パワースイッチング素子を継続的に駆動する、請求項4または5に記載の制御手段。
【請求項7】
前記安全な動作状態をもたらすスイッチングパターンは、前記第2のスイッチングパターンである、請求項6に記載の制御装置。
【請求項8】
さらに、前記AC電流出力(4)を流れる電流を示す少なくとも1つの電流値に応じて前記第1のスイッチングパターンを決定する、請求項1から7のいずれか一項に記載の制御装置。
【請求項9】
前記第1のスイッチングパターンは、前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w)によって形成される前記ハーフブリッジ(11u、11v、11w)のセンタータップからの電流が正であり、かつ、時間経過に伴う前記電流の変化が負であるときに、前記DC電圧入力の高電位(12)に接続された前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w)の導通状態へのスイッチングを示す、請求項8に記載の制御装置。
【請求項10】
前記スイッチングパターンは、前記DC電圧入力(3)の前記高電位(12)に接続された残りの前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w)の遮断状態へのスイッチングを示す、請求項9に記載の制御装置。
【請求項11】
前記第1のスイッチングパターンは、前記パワースイッチング素子(15u、15v、15w)によって形成される前記ハーフブリッジ(11u、11v、11w)の前記センタータップからの電流が負であり、かつ時間経過に伴う前記電流の変化が正であるときに、前記DC電圧入力(3)の低電位(14)に接続された前記パワースイッチング素子(15u、15v、15w)の導通状態へのスイッチングを示す、請求項9に記載の制御装置。
【請求項12】
前記第1のスイッチングパターンは、前記DC電圧入力(3)の前記低電位(14)に接続された残りの前記パワースイッチング素子(15u、15v、15w)の遮断状態へのスイッチングを示す、請求項11に記載の制御装置。
【請求項13】
DC電圧入力(3)と、2つのパワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)によりそれぞれ形成される3つのハーフブリッジ(11u、11v、11w)と、
請求項1から12のいずれか一項に記載の制御装置(2)と、
を備える非同期機(10)用のインバータ(1)。
【請求項14】
車両(25)を駆動する非同期機(10)と、請求項13に記載のインバータ(1)とを備える、車両(25)。
【請求項15】
DC電圧入力(3)と、パワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)により形成される3つのハーフブリッジ(11u、11v、11w)を有する電力ユニット(5)を備えるインバータ(1)を動作させる方法であって、
前記DC電圧入力(3)に印加されるDC電圧をAC電流出力(4)に供給される多相AC電流に変換する通常動作モードで前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)を駆動するステップと、
前記DC電圧入力(3)からDC電圧源(9)が切断されていることを示す信号(21)の信号状態を評価するステップと、
前記評価の結果に応じて、DC制動をもたらす第1のスイッチングパターンとフリーホイールをもたらす第2のスイッチングパターンを交互に採用するように前記パワースイッチング素子(13u、13v、13w、15u、15v、15w)を駆動するステップと、
の各ステップを有する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、DC電源入力と、2つのパワースイッチング素子によりそれぞれ形成される3つのハーフブリッジを有する電力ユニットとを備えるとともに、DC電圧入力に印加されるDC電圧をAC電流出力に供給される多相AC電流に変換する通常動作モードでパワースイッチング素子を駆動するように構成されたインバータ用の制御装置に関する。
【0002】
さらに、本発明は、非同期機用のインバータ、車両、およびインバータを動作させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
電気的に駆動可能な車両の駆動系において、インバータは、DC電圧源、例えば高電圧バッテリによって供給されるDC電圧を電気機械のための多相AC電圧に変換するために使用することができる。電気機械の動作中、インバータのDC電圧入力からDC電圧源が切断されることがある。負荷制限としても知られるこのような事象は、故障が発生したときの安全対策としてしばしば用いられる。車両が負荷制限中に回生モードにある場合、電気機械のインダクタに蓄積されたエネルギーは、インバータのDC電圧入力に戻され、DCリンクコンデンサおよびそれに接続された構成要素を損傷し得る過電圧を引き起こし得る。
【0004】
継続的に励起される同期機の場合、インダクタに蓄えられたエネルギーを電気機械内で熱に変換するために、インバータのパワースイッチング素子を能動短絡回路にトリガすることが知られている。しかし、非同期機の場合には、負荷制限時に能動短絡回路に直ちに切り替わると、非同期機の漏れインダクタンスが低いためにパワースイッチング素子を流れる電流が非常に高くなり、その結果、パワースイッチング素子が損傷を受ける可能性がある。
【0005】
したがって、非同期機では、回生運転中に負荷が低下した場合でもDCリンクコンデンサが過電圧に耐えることができるように、DCリンクコンデンサを十分に大きくすることが一般的である。しかしながら、このようなDCリンクコンデンサは高価であり、大きくなる。また、回生トルクは、負荷制限時に有害な過電圧が生じない値に制限することができる。しかし、これは回生モードの効率および動作範囲を低下させる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、特に非同期機の場合に、上述した欠点を解消する負荷制限を処理する方法を提供するという課題に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この課題を解決するために、本発明によれば、上述の制御装置は、DC電圧入力からDC電圧源が切断されていることを示す信号の信号状態を評価するとともに、この評価の結果に応じて、DC制動をもたらす第1のスイッチングパターンとフリーホイールをもたらす第2のスイッチングパターンとを交互に採用するようにパワースイッチング素子を制御するように構成されている。
【0008】
本発明は、負荷制限後、すなわち電圧源がDC電圧入力側から遮断された後、フリーホイールに切り換えられたときにDC電圧入力の電圧が望ましくないほど急激に上昇するのに対して、DC制動時には電圧が急激に降下し、極端な場合にはDC電圧入力に有害な負電圧が生じる可能性があるという考察に基づいている。したがって、本発明は、電気機械のインダクタに蓄積されたエネルギーを熱に変換することができ、フリーホイールおよびDC制動の効果を互いに相殺することができるように、これらの2つの動作モード間で交互に切り替えることを提案する。
【0009】
したがって、本発明によれば、DC制動に切り替えることによってフリーホイールにおける絶縁耐力を超えることが回避されるので、回生動作において通常発生する電圧用に設計されたDCリンクコンデンサを使用することが可能になる。同様に、回生トルクを通常動作モードの回生トルクを超えて制限する必要はなく、このような制限による効率損失を回避することができる。同時に、能動的短絡回路の場合のようなパワースイッチング素子を損傷し得る許容できないほど高い電流は生じない。
【0010】
本発明による制御装置は、好ましくはさらに、信号状態に加えて、インバータが回生モードにあるかどうかを評価するように構成される。このようにして、スイッチングパターン間で交互にするスイッチングの方策は、DCリンクコンデンサを過負荷にする特定のリスクがある場合に限定することができる。
【0011】
電気機械のインダクタとDCリンクコンデンサとの間の共振回路がDCリンクコンデンサに負電圧を生じさせ得るため、基本的に、第1のスイッチングパターンすなわちDC制動から第2のスイッチングパターンすなわちフリーホイールへのスイッチングは、共振回路を遮断するために行われる。第2のスイッチングパターンから第1のスイッチングパターンへは、典型的には、DCリンクコンデンサにおける許容電圧を超えないように切り替えられる。
【0012】
少ない労力で実現可能な本発明による制御装置の一実施形態によれば、所定時間が経過した後に第1のスイッチングパターンから第2のスイッチングパターンに切り替えるように、および/または所定時間が経過した後に第2のスイッチングパターンから第1のスイッチングパターンに切り替えるようにも設定される。この所定時間は、共振回路が遮断されるか、またはDCリンクコンデンサにおける許容電圧を超えないように、最大可能回生電圧に基づいて経験的に決定することができる。
【0013】
さらに、本発明による制御装置は、DC電圧入力における電圧を示す電圧値に応じて交互制御を制御するように構成することができる。このために、制御装置は有利には、DC電圧入力における電圧を示す電圧値のための入力を有している。インバータは、典型的には、DC電圧入力における電圧を検出するように構成された電圧検出ユニットを備える。このような電圧検出ユニットは多くの場合に形はどうあれ設けられているので、インバータに付加的なハードウェアコストは生じない。
【0014】
上述した時間制御に加えて、またはその代わりに、制御装置は、電圧値が電圧閾値に達したことを検出したときに第1のスイッチングパターンから第2のスイッチングパターンに切り替わるように、および/または電圧値が電圧閾値に達したことを検出したときに第2のスイッチングパターンから第1のスイッチングパターンに切り替わるように設定されることも有利であり得る。電圧閾値は、共振回路が適切な時間に遮断されるように、またはDCリンクコンデンサにおける許容電圧を超えないように、適切に選択される。これにより、インダクタに蓄積されたエネルギーによって引き起こされる電流の特に速い減衰を可能にする。
【0015】
さらに、制御装置は、パワースイッチング素子が第2のスイッチングパターンでトリガされるときに電圧値が所定の電圧閾値を超えない場合に安全な動作状態をもたらすスイッチングパターンを採用するように、パワースイッチング素子を継続的にトリガするように設定することもできる。この場合、安全な動作状態を継続的に確保することができ、例えば車両が望ましくない制動トルクなしで惰性走行させることができる程度まで、電気機械のインダクタに蓄積されたエネルギーが熱に変換される。安全な動作状態をもたらすスイッチングパターンは、好ましくは第2のスイッチングパターンである。
【0016】
第1のスイッチングパターンは、典型的には、1つのハーフブリッジにおいては、DC電圧入力の第1の電位に接続されたパワースイッチング素子が遮断状態にあり、他方が導通状態にあり、1つのハーフブリッジにおいては、DC電圧入力側の第2の電位に接続されたパワースイッチング素子が遮断状態にあり、他方が導通状態にあり、1つのハーフブリッジにおいては、両方のパワースイッチング素子が遮断状態にあることを表す。第1のスイッチングパターンの具体的な設計は、好ましくは、負荷制限の瞬間におけるAC電流出力での位相角に依存する。実際、第1のスイッチングパターンの誤った決定は、制限のないDC電圧またはパワースイッチング素子を通る望ましくない高電流を生じさせる可能性がある。
【0017】
したがって、本発明による制御装置は、AC電流出力に流れる電流を表す少なくとも1つの電流値に応じて第1のスイッチングパターンを決定するように構成されてもよい。電流値は測定されてもよく、その場合、電流値は制御装置に入力されてもよい。しかし、好ましくは、電流値は通常動作モードにおいて制御装置から提供される設定値に基づいて決定される。
【0018】
好ましくは、第1のスイッチングパターンは、パワースイッチング素子によって形成されるハーフブリッジのセンタータップからの電流が正であり、電流の経時変化が負であるときに、DC電圧入力の高電位に接続されたパワースイッチング素子を導通状態に切り替えることを示している。これにより、第1のスイッチングパターンは、DC電圧入力の高電位に接続された残りのパワースイッチング素子の遮断状態への切り替えることを示すことができる。
【0019】
さらに、第1のスイッチングパターンは、パワースイッチング素子によって形成されるハーフブリッジのセンタータップからの電流が負であり、時間経過後の電流の変化が正であるときに、DC電圧入力の低電位に接続されたパワースイッチング素子を導通状態に切り替えることを示すことができる。これにより、第1のスイッチングパターンは、DC電圧入力の低電位に接続された残りのパワースイッチング素子の遮断状態への切り替えを示すことができる。
【0020】
好ましくは、第2のスイッチングパターンは、全てのパワースイッチング素子の遮断状態への切り替えを示す。
【0021】
さらに、本発明は、DC電圧入力と、2つのパワースイッチング素子によりそれぞれ形成される3つのハーフブリッジを有する電力ユニットと、本発明の制御装置とを備える非同期機用のインバータに関する。
【0022】
本発明はさらに、車両を駆動するための非同期機と本発明によるインバータとを備える車両に関する。
【0023】
最後に、本発明は、DC電圧入力と、2つのパワースイッチング素子によりそれぞれ形成される3つのハーフブリッジを有する電力ユニットとを備えるインバータを動作させる方法であって、DC電圧入力に印加されるDC電圧をAC電流出力に供給される多相AC電流に変換する通常動作モードでパワースイッチング素子を駆動するステップと、DC電圧入力からDC電圧源が遮断されていることを示す信号の信号状態を評価するステップと、その評価の結果に応じて、DC制動をもたらす第1のスイッチングパターンとフリーホイールをもたらす第2のスイッチングパターンとを交互に採用するようにパワースイッチング素子を駆動するステップとを備える方法に関する。
【0024】
本発明による制御装置に関するすべての説明は、本発明によるインバータ、本発明による車両および本発明による方法に同様に適用することができ、したがって、上述の利点はこれらによっても達成することができる。
【0025】
本発明のさらなる利点および詳細は、以下に説明する実施形態および図面から明らかになるであろう。以下の図面は概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1図1は、本発明の一実施形態の制御装置を有する本発明の一実施形態のインバータの回路図である。
図2図2は、図1に示すインバータの、時間に対する、DC電圧入力における電圧、AC電流出力における相電流、及び運転中のトルクの曲線である。
図3図3は、本発明の車両の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は、一実施形態の制御装置2を有する一実施形態のインバータ1の回路図である。さらに、インバータ1は、DC電圧入力3と、AC電流出力4と、電力ユニット5と、DC電圧入力3と並列に接続されたDCリンクコンデンサ6とを備える。DCリンクコンデンサ6の両端間またはDC電圧入力3に印加されるDC電圧Uを検出するための電圧検出ユニット7がさらに設けられる。
【0028】
DC電圧入力3は、コンタクタによって構成される2極絶縁装置8を介して高電圧バッテリの形態のDC電圧源9と接続されており、絶縁装置8が閉じられているときにはDC電圧入力3にDC電圧Uが供給される。これがインバータ1によって多相の、ここでは3相のAC電圧に変換され、AC電流出力4に供給される。
非同期機10の形態の電気機械がこの出力と接続されている。
【0029】
電力ユニット5は、3つのハーフブリッジ11u、11v、11wを備え、各ハーフブリッジは、DC電圧入力3の高電位12に接続されたパワースイッチング素子13u、13v、13wと、DC電圧入力3の低電位14に接続されたパワースイッチング素子15u、15v、15wとの直列接続によって形成されている。各パワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wは、絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)16と、これに並列に接続されたダイオード17とからなる。または、各パワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wはパワーMOSFETによって実現されていてもよい。非同期機10のための相電流Iu、Iv、Iwが供給されるAC電流出力4には、各ハーフブリッジ11u、11v、11wのセンタータップ18が接続されている。
【0030】
制御装置2は、DC電圧入力3に印加されるDC電圧Uを多相AC電流に変換するように、通常のクロック動作モードでパワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wを制御する。通常動作モードでは、回生運転も可能であり、この回生運転では、電気機械10が発電機として運転され、電気エネルギーが高電圧バッテリに戻される。制御のために、制御装置2は各パワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wの制御入力19に接続されている。
【0031】
外部制御装置20によって故障状態が検出された場合、絶縁装置8にコンタクタを開かせ、DC電圧源9をDC電圧入力3から遮断させる信号21を制御装置が供給することによって負荷制限が開始される。DC電圧源9がDC電圧入力3から遮断されていることを示す信号21は、制御装置2の入力22にも供給されている。信号21は、制御装置2自体が負荷制限を検出したときに、代替的または追加的に制御装置2の内部で生成される。
【0032】
制御装置2は、その時点で、信号21が存在するか、およびインバータ1が回生モードにあるかを評価する。この場合、制御装置2は、通常運転モードを終了して、DC制動をもたらす第1のスイッチングパターンとフリーホイールをもたらす第2のスイッチングパターンとを交互に採用するようにパワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wを制御する負荷制限運転モードを開始する。
【0033】
このため、制御装置2は、相電流Iu、Iv、Iwを示す電流値に応じて、DC制動をもたらす第1のスイッチングパターンを決定する。このために制御装置2内にはルックアップテーブルが格納されており、このルックアップテーブルは、クロック動作の終了時点におけるパワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wのそれぞれのスイッチング状態を電流Iu、Iv、Iwおよびこれらの時間微分dIu/dt、dIv/dt、dIw/dtに割り当てる。以下の表は、この割り当てを示す。
【0034】
【表1】
【0035】
ここで、「1」は各スイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wが導通状態に制御されていることを意味し、「0」は遮断状態に制御されることを意味する。フリーホイールをもたらす第2のスイッチングパターンは、全てのパワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wが遮断されるように駆動されることを示す。
【0036】
本実施形態において、第1のスイッチングパターンと第2のスイッチングパターンとの交互のスイッチングは時間制御される。すなわち、制御装置2は、パワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wをそれぞれ第1のスイッチングパターンまたは第2のスイッチングパターンに従ってそれぞれ所定時間制御する。
【0037】
この交互のスイッチングは、第2のスイッチングパターンのスイッチング中すなわちフリーホイール中にDC電圧Uが所定の電圧閾値を超えないときに終了する。このために、制御装置2は、電圧検出ユニット7から入力23に供給される電圧値を評価する。交互のスイッチングの完了後、制御装置2は、第2のスイッチングパターンに従ってパワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wを継続的に制御し、これによって安全な動作状態を実現する。
【0038】
図2は、インバータ1の例示的な構成における時間tに対するDC電圧U、相電流Iu、Iv、Iw、および結果として生じる非同期機10のトルクMの曲線を示す。時間t0において、負荷制限が発生し、制御装置2は、インバータ1を通常動作モードから負荷制限動作モードに移行させる。
【0039】
時間t0より前は、非同期機10は回生モードにあり、これは、負のトルクM、相電流Iu、Iv、Iwが本質的に高調波であること、およびDC電圧Uがわずかにのみ振動していることから分かる。時間t0において、相電流Iuはその最大値を超えたばかりである。相電流Ivはゼロクロス直前であり、増加する。したがって、以下が成り立つ。
【0040】
【数1】
【0041】
その結果、制御装置2は、上記表に従って、パワースイッチング素子13u、15vを導通させ、他のパワースイッチング素子13v、13w、15u、15wを遮断させて、DC制動のため第1のスイッチングパターンを決定する。そして、制御装置2は、決定した第1のスイッチングパターンに従って、パワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wを所定時間制御する。続いて、制御装置2は、全てのパワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wを、遮断のためすなわちフリーホイールをもたらす第2のスイッチングパターンに従って、所定の持続時間制御する。
【0042】
スイッチングは、DC電圧Uが図2において破線24によって示される電圧閾値を時間t1に超えなくなるまで、2つのスイッチングパターンが交互に行われる。時刻t1から、パワースイッチング素子13u、13v、13w、15u、15v、15wは、第2のスイッチングパターンに従って継続的に駆動される。図2からさらに分かるように、相電流Iu、Iv、Iwは、時間t0とt1との間で大きな電流ピークなしで減衰し、トルクMは短時間にわずかな変化のみが生じる。
【0043】
別の実施形態によれば、第1のスイッチングパターンと第2のスイッチングパターンとの間の交互のスイッチングは、時間制御ではなく電圧制御される。この場合、制御装置2は、電圧検出ユニット7によって検出された電圧値がそれぞれのスイッチングパターンに対して規定された電圧閾値に到達したときに、スイッチングパターンを切り替える。
【0044】
図3は、上記実施形態のうちの1つによるインバータ1を備える車両25の一実施形態の概略図である。図1と同様に、インバータ1は、絶縁装置8を介してDC電圧源9と、車両25を駆動するように構成された非同期機10と、上位制御ユニット20とに接続されている。

図1
図2
図3