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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】血液浄化システム及び原液準備判断装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 1/14 20060101AFI20240731BHJP
   A61M 1/16 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61M1/14 100
A61M1/16 161
A61M1/16 111
A61M1/16 110
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2021526855
(86)(22)【出願日】2020-06-17
(86)【国際出願番号】 JP2020023853
(87)【国際公開番号】W WO2020262175
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-03-23
(31)【優先権主張番号】P 2019119102
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000226242
【氏名又は名称】日機装株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095614
【弁理士】
【氏名又は名称】越川 隆夫
(72)【発明者】
【氏名】田口 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】松本 良平
(72)【発明者】
【氏名】石川 大
(72)【発明者】
【氏名】市川 毅
【審査官】胡谷 佳津志
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-249746(JP,A)
【文献】特開2007-236532(JP,A)
【文献】特開2012-249751(JP,A)
【文献】特開2018-153557(JP,A)
【文献】特表2008-526375(JP,A)
【文献】特開2008-220784(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 1/14
A61M 1/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透析液原液を準備する原液準備部と、
前記原液準備部から供給された透析液原液を希釈して所定濃度の透析液を作製し、当該透析液を供給する透析液供給部と、
血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群を有するとともに、前記透析液供給部が作製する透析液が前記透析液供給部によって当該血液浄化装置群に供給されて前記血液浄化治療を行う血液浄化治療部と、
所定期間に亘って前記血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において前記血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果である残りの治療回数に基づき、前記原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断する第1の判断工程を実行する判断部と、
を備えた血液浄化システム。
【請求項2】
前記原液準備部は、透析液原液の追加準備が必要と前記判断部が判断したとき、薬剤を溶解して透析液原液を作製する制御部を有する請求項1記載の血液浄化システム。
【請求項3】
前記判断部は、前記所定期間である日程又は治療時間に亘って行われる血液浄化治療の前記実際の治療回数と前記予想治療回数とを比較して透析液原液の追加準備の要否を判断する請求項1又は請求項2記載の血液浄化システム。
【請求項4】
前記血液浄化装置は、前記実際の治療回数を前記判断部に送信する送信部を具備した請求項1~3の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項5】
前記血液浄化装置は、前記送信部により、血液浄化治療の開始若しくは終了、又は血液浄化治療時間を前記判断部に送信する請求項4記載の血液浄化システム。
【請求項6】
前記判断部は、前記実際の治療回数及び前記予想治療回数の比較結果である前記残りの治療回数に基づく追加準備の要否の判断を行う前記第1の判断工程に加え、現在行われている治療において前記原液準備部における透析液原液の不足の有無を判断する第2の判断工程を実行する請求項1~5の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項7】
前記判断部は、前記第2の判断工程及び前記第1の判断工程をこの順で実行し、前記判断部が、前記第2の判断工程において、透析液原液の不足があると判断する場合、前記判断部が前記第1の判断工程を実行せずに前記原液準備部が透析液原液を準備する請求項6に記載の血液浄化システム。
【請求項8】
前記判断部が、前記第2の判断工程において、透析液原液の不足がないと判断する場合であっても、前記第1の判断工程において、追加準備が必要であると判断するとき、前記原液準備部が透析液原液を準備する請求項6記載の血液浄化システム。
【請求項9】
前記判断部は、前記血液浄化装置に供給される透析液の量、流速、供給時間若しくは供給時刻、又は前記血液浄化装置の工程情報若しくは治療の中断情報に基づいて特定の治療時間における透析液原液の消費量を推定するとともに、当該推定した原液の消費量と前記原液準備部における透析液原液の残量とを比較して、前記原液準備部における透析液原液の不足の有無を判断する請求項6~8の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項10】
前記予想治療回数は、過去の治療データ又は治療の予約データに基づいて設定される請求項1~9の何れか1つに記載の血液浄化システム。
【請求項11】
透析液原液を準備する原液準備部と、
血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群を有するとともに、前記原液準備部で準備された透析液原液が当該血液浄化装置群に供給されて血液浄化治療を行う血液浄化治療部と、
所定期間に亘って前記血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において前記血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果である残りの治療回数に基づき、前記原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断する判断部と、
を備えた血液浄化システム。
【請求項12】
透析液が供給されて血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群に対して通信可能に接続されると共に、前記透析液を前記血液浄化装置群に供給する透析液供給装置、又は前記透析液の供給のために透析液原液を準備する原液準備として構成される原液準備判断装置であって、
所定期間に亘って前記血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において前記血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果である残りの治療回数に基づき、前記原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断する判断部、
を備えた原液準備判断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透析液原液を準備する原液準備部と、原液準備部から供給された透析液原液を希釈して所定濃度の透析液を作製する透析液供給部と、血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群を有するとともに、透析液供給部が作製する透析液が当該血液浄化装置群に供給されて血液浄化治療を行う血液浄化治療部とを具備した血液浄化システム及び原液準備判断装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、血液浄化システムは、病院等医療現場における機械室に溶解装置や透析液供給装置を設置しておき、これとは別の場所である透析室(治療室)に透析用監視装置(血液浄化装置)を設置するとともに、これら透析液供給装置と透析用監視装置とを配管で連結させて構成されている。透析液供給装置は、溶解装置で作製された透析液原液を希釈して所定濃度の透析液を作製するものであり、透析用監視装置は、患者に透析治療を施すための血液浄化器(ダイアライザ)の数に対応して複数設置され、透析液供給装置で作製された透析液を配管を介して導入し、血液浄化器に供給するものとされている。
【0003】
すなわち、機械室に設置された透析液供給装置から透析室に設置された複数の透析用監視装置に分配して透析液を送液し、それぞれにおいてダイアライザに透析液を供給するよう構成されているのである。このように透析液供給装置で作製された透析液を各透析用監視装置に分配して透析治療を行う血液浄化システムは、通常、「透析治療用セントラルシステム」と称される。
【0004】
ところで、従来、透析用監視装置から使用予定の透析液の量に関する情報(例えば、透析液の量、流速、供給時間、供給時刻等の情報)を取得するとともに、それぞれの透析用監視装置で使用予定の透析液の量を判断し、その使用予定の透析液の量と溶解装置で作製された透析液原液の量(準備量)とを比較する血液浄化システムが提案されている。そして、従来の血液浄化システムは、現在行われている治療中において溶解装置で作製された透析液原液の量が不足するか否か判定され、不足すると判定されると、溶解装置に指示信号を送信し、不足量に応じた量の透析液原液の作製を行うようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2012-249746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の血液浄化システムにおいては、以下の如き問題がある。
病院等医療現場においては、「クール」と称される治療時間(予め定められた特定の治療時間)毎に複数の患者に対する透析治療が行われることがあり、例えば、一日のうち、午前に行われるクール、午後に行われるクール、及び夜間に行われるクールが設定されている場合、個々の患者は、予め決められたクールの開始時間帯に治療室を訪れ、複数の患者に対して一斉に透析治療が行われるようになっている。
【0007】
このような場合、特定のクールにおいて、従来技術を適用して、溶解装置で作製された透析液原液の量(準備量)が現在行われている治療中において足りると判定された場合であっても、その日のうちに次のクールが設定されている場合、透析液原液の量が不足する可能性がある。反対に、溶解装置で作製された透析液原液の量(準備量)が現在行われている治療中において足りないと判定された場合、次のクールが設定されている場合と設定されていない場合とでは、追加で準備(溶解)すべき透析液原液の量が異なってしまう。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、透析液原液の追加準備の要否を精度よく判断することができる血液浄化システム及び原液準備判断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の発明は、透析液原液を準備する原液準備部と、前記原液準備部から供給された透析液原液を希釈して所定濃度の透析液を作製し、当該透析液を供給する透析液供給部と、血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群を有するとともに、前記透析液供給部が作製する透析液が前記透析液供給部によって当該血液浄化装置群に供給されて前記血液浄化治療を行う血液浄化治療部と、所定期間に亘って前記血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において前記血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果である残りの治療回数に基づき、前記原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断する第1の判断工程を実行する判断部とを備えた血液浄化システム、である。
【0010】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の血液浄化システムにおいて、前記原液準備部は、透析液原液の追加準備が必要と前記判断部が判断したとき、薬剤を溶解して透析液原液を作製する制御部を有する。
【0011】
請求項3記載の発明は、請求項1又は請求項2記載の血液浄化システムにおいて、前記判断部は、前記所定期間である日程又は治療時間に亘って行われる血液浄化治療の前記実際の治療回数と前記予想治療回数とを比較して透析液原液の追加準備の要否を判断する。
【0012】
請求項4記載の発明は、請求項1~3の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記血液浄化装置は、前記実際の治療回数を前記判断部に送信する送信部を具備した。
【0013】
請求項5記載の発明は、請求項4記載の血液浄化システムにおいて、前記血液浄化装置は、前記送信部により、血液浄化治療の開始若しくは終了、又は血液浄化治療時間を前記判断部に送信する。
【0014】
請求項6記載の発明は、請求項1~5の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記判断部は、前記実際の治療回数及び前記予想治療回数の比較結果である前記残りの治療回数に基づく追加準備の要否の判断を行う前記第1の判断工程に加え、現在行われている治療において前記原液準備部における透析液原液の不足の有無を判断する第2の判断工程を実行する
請求項7記載の発明は、請求項6記載の血液浄化システムにおいて、前記判断部は、前記第2の判断工程及び前記第1の判断工程をこの順で実行し、前記判断部が、前記第2の判断工程において、透析液原液の不足があると判断する場合、前記判断部が前記第1の判断工程を実行せずに前記原液準備部が透析液原液を準備する。
請求項8記載の発明は、請求項6記載の血液浄化システムにおいて、前記判断部が、前記第2の判断工程において、透析液原液の不足がないと判断する場合であっても、前記第1の判断工程において、追加準備が必要であると判断するとき、前記原液準備部が透析液原液を準備する。
【0015】
請求項記載の発明は、請求項6~8の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記判断部は、前記血液浄化装置に供給される透析液の量、流速、供給時間若しくは供給時刻、又は前記血液浄化装置の工程情報若しくは治療の中断情報に基づいて特定の治療時間における透析液原液の消費量を推定するとともに、当該推定した原液の消費量と前記原液準備部における透析液原液の残量とを比較して、前記原液準備部における透析液原液の不足の有無を判断する。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項1~の何れか1つに記載の血液浄化システムにおいて、前記予想治療回数は、過去の治療データ又は治療の予約データに基づいて設定される。
【0017】
請求項11記載の発明は、透析液原液を準備する原液準備部と、血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群を有するとともに、前記原液準備部で準備された透析液原液が当該血液浄化装置群に供給されて血液浄化治療を行う血液浄化治療部と、所定期間に亘って前記血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において前記血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果に基づき、前記原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断する判断部と、
を備えた血液浄化システム、である。
【0018】
請求項12記載の発明は、透析液が供給されて血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群に対して通信可能に接続されると共に、前記透析液を前記血液浄化装置群に供給する透析液供給装置、又は前記透析液の供給のために透析液原液を準備する原液準備として構成される原液準備判断装置であって、所定期間に亘って前記血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において前記血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果に基づき、前記原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断する判断部、
を備えた原液準備判断装置、である。
【発明の効果】
【0019】
請求項1、11、12の発明によれば、所定期間に亘って血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果に基づき、原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断するので、透析液原液の追加準備の要否を精度よく判断することができる。
【0020】
請求項2の発明によれば、原液準備部は、透析液原液の追加準備が必要と判断部が判断したとき、薬剤を溶解して透析液原液を作製する制御部を有するので、薬剤の溶解時間を考慮して透析液原液の追加準備を行わせることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、判断部は、所定期間である日程又は治療時間に亘って行われる血液浄化治療の実際の治療回数と予想治療回数とを比較して透析液原液の追加準備の要否を判断するので、透析液原液の追加準備の要否を特定の日程又は特定の治療時間に亘って判断することができる。
【0022】
請求項4の発明によれば、血液浄化装置は、実際の治療回数を前記判断部に送信する送信部を具備したので、判断部において、透析液原液の追加準備の要否を迅速且つ円滑に判断することができる。
【0023】
請求項5の発明によれば、血液浄化装置は、送信部により、血液浄化治療の開始若しくは終了、又は血液浄化治療時間を判断部に送信するので、実際の治療回数を正確に把握させることができる。
【0024】
請求項6の発明によれば、判断部は、実際の治療回数及び予想治療回数に基づく追加準備の要否の判断に加え、現在行われている治療中の原液準備部における透析液原液の不足の有無を判断するので、現在行われている治療における追加準備の要否を円滑に判断させることができる。
【0025】
請求項の発明によれば、判断部は、血液浄化装置に供給される透析液の量、流速、供給時間若しくは供給時刻、又は血液浄化装置の工程情報若しくは治療の中断情報に基づいて特定の治療時間における透析液原液の消費量を推定するとともに、当該推定した原液の消費量と原液準備部における透析液原液の残量とを比較して、原液準備部における透析液原液の不足の有無を判断するので、現在行われている治療における追加準備の要否をより一層正確且つ円滑に判断させることができる。
【0026】
請求項10の発明によれば、予想治療回数は、過去の治療データ又は治療の予約データに基づいて設定されるので、透析液原液の追加準備の要否を円滑且つ精度よく判断することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】本発明の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
図2】同血液浄化システムにおける溶解装置の構成を示す模式図
図3】同血液浄化システムにおける透析液供給装置の構成を示す模式図
図4】同血液浄化システムにおける透析監視装置の構成を示す模式図
図5】同血液浄化システムにおける判断部の判断方法を示すフローチャート
図6】本発明の他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
図7】本発明の更に他の実施形態に係る血液浄化システムを示す全体模式図
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら具体的に説明する。
本実施形態に係る血液浄化システムは、透析液原液から所定濃度の透析液を作製し、その透析液を複数の透析用監視装置(血液浄化装置)に供給するためのものであり、図1に示すように、原液準備部としての溶解装置1と、透析液供給部としての透析液供給装置2と、病院等医療現場における透析室(治療室)に設置された複数の透析監視装置3(血液浄化装置群)を有する血液浄化治療部とから主に構成される。なお、本実施形態に係る血液浄化システムは、複数の透析監視装置3に代えて、単数の透析監視装置3(血液浄化装置群)としても良い。
【0029】
溶解装置1と透析液供給装置2とは、配管R1にて接続されており、溶解装置1にて作製したA原液及びB原液を透析液供給装置2に供給し得るとともに、透析液供給装置2と各透析監視装置3とは、配管R2にて接続されており、透析液供給装置2で作製した透析液を各透析監視装置3に供給し得るよう構成されている。これにより、溶解装置1にて作製されたA原液及びB原液は、透析液供給装置2にて透析液となり、各透析監視装置3に供給されて透析治療(血液浄化治療)が行われることとなる。
【0030】
また、溶解装置1と透析液供給装置2とは、LANケーブルC1にて電気的に接続されており、溶解装置1と透析液供給装置2との間で情報を送受信可能とされるとともに、透析液供給装置2と各透析監視装置3とは、LANケーブルC2にて電気的に接続されており、透析液供給装置2と各透析監視装置3との間で情報を送受信可能とされている。
【0031】
すなわち、本実施形態に係る血液浄化システムにおいては、溶解装置1、透析液供給装置2及び各透析監視装置3とが、LAN(ローカルエリアネットワーク:構内通信網)にて接続されており、双方向の情報の通信が可能とされている。これにより、本血液浄化システムにおいては、複数の透析監視装置3に関する個々の所定情報をそれぞれの透析監視装置3から透析液供給装置2に対して送信可能な構成とされている。なお、本実施形態の如くLANケーブルを用いるもの(有線)に限らず、無線で双方向の情報の通信が可能なもの(無線LAN)であってもよい。
【0032】
溶解装置1は、薬剤を溶解して透析液原液を作製して所定量の透析液原液を貯留するとともに、その貯留した透析液原液を透析液供給装置2に供給するもので、図2に示すように、容器B1内のA剤を溶解する溶解槽Ta1と、溶解槽Ta1で溶解したA原液を貯留する貯槽Ta2と、容器B2内のB剤を溶解する溶解槽Tb1と、溶解槽Tb1で溶解したB原液を貯留する貯槽Tb2とを有して構成されている。
【0033】
貯槽Ta2及び貯槽Tb2は、内部に収容された液体の液面を検出して残量を検出する残量センサSa1、Sb1がそれぞれ配設されるとともに、溶解槽Ta1及び溶解槽Tb1とそれぞれ接続されており、電磁弁Va1、Vb1を開状態とすることにより、溶解槽Ta1内のA原液及び溶解槽Tb1内のB原液をそれぞれ貯槽Ta2及び貯槽Tb2内に流下させ得るようになっている。また、溶解槽Ta1及び溶解槽Tb1は、それぞれの内部に下限の液面を検出する液面センサSa2、Sb2と上限の液面を検出する液面センサSa3、Sb3とを有している。
【0034】
そして、容器B1及び容器B2をそれぞれ所定位置にセットしてこれら容器B1、B2内に流路La1、Lb1及びLa2、Lb2の先端部を挿入させるとともに、給水路Lwで溶解装置1内に導入された清浄水(RO水)を流路Lwaにて溶解槽Ta1に所定容量だけ供給し、流路Lwbにて溶解槽Tb1に所定容量だけ供給する。このとき電磁弁Va1、Vb1は、それぞれ閉状態となっている。
【0035】
その後、給水を停止してポンプPa1、Pa2を駆動することにより、溶解槽Ta1と容器B1との間でA剤及び清浄水を混合しつつ循環させることによりA原液を作製するとともに、溶解槽Tb1と容器B2との間でB剤及び清浄水を混合しつつ循環させることによりB原液を作製する。このように作製されたA原液及びB原液は、透析液を構成する互いに異なる組成の溶液から成り、具体的には、A原液(A剤原液)は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム及び酢酸ナトリウムなどを含有する混合水溶液から成り、B原液(B剤原液)は、炭酸水素ナトリウムの水溶液から成る。
【0036】
しかるに、溶解槽Ta1及び溶解槽Tb1で所定容量のA原液及びB原液が作製された後、ポンプPa1を停止させて電磁弁Va1を開状態とすることにより、溶解槽Ta1内のA原液を自重にて貯槽Ta2に流下させて貯留することができるとともに、ポンプPb1を停止させて電磁弁Vb1を開状態とすることにより、溶解槽Tb1内のB原液を自重にて貯槽Tb2内に流下させて貯留することができる。
【0037】
また、溶解槽Ta1、Tb1内のA原液、B原液を全て貯槽Ta2、Tb2に流下させた後、空の容器B1、B2を取り外してA剤、B剤が収容された新しい容器B1、B2をセットすることにより、上記工程を経ることにより、溶解槽Ta1、Tb1で所定容量のA原液、B原液をそれぞれ作製することができる。そして、ポンプPa2を駆動させることにより、貯槽Ta2内のA原液を透析液供給装置2に供給することができるとともに、ポンプPb2を駆動させることにより、貯槽Tb2内のB原液を透析液供給装置2に供給することができる。なお、電磁弁Va2を開状態とすることにより、貯槽Ta2内のA原液を排液させることができるとともに、電磁弁Vb2を開状態とすることにより、貯槽Tb2内のB原液を排液させることができる。
【0038】
さらに、本実施形態に係る溶解装置1は、LANケーブルC1と電気的に接続されるインターフェイス部1a及び制御部1bを具備している。インターフェイス部1aは、透析液供給装置2のインターフェイス部2aとの間で所定の情報を送受信し得るものである。そして、インターフェイス部1aにて透析液供給装置2から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部1bによる制御が行われ、所定の動作が行われるようになっている。
【0039】
透析液供給装置2は、溶解装置1(原液準備部)から配管R1を介して供給された透析液原液(A原液及びB原液)を希釈して所定濃度の透析液を作製するもので、図3に示すように、計量部5と、原液ポンプPa、Pbと、透析液貯槽6とを有して構成されている。そして、原液ポンプPaを駆動させることにより、溶解装置1で作製されたA原液を透析液貯槽6内に供給するとともに、原液ポンプPbを駆動させることにより、溶解装置1で作製されたB原液を透析液貯槽6内に供給する。また、透析液貯槽6内には、計量部5で計量された所定容量の清浄水(RO水)が供給され、A原液及びB原液と混合及び攪拌されて所定濃度の透析液を作製し得るよう構成されている。
【0040】
さらに、本実施形態に係る透析液供給装置2は、LANケーブルC1、C2と電気的に接続されるインターフェイス部2a及び制御部2bを具備している。インターフェイス部2aは、溶解装置1のインターフェイス部1a及び各透析監視装置3のインターフェイス部3bとの間で所定の情報を送受信し得るものである。そして、インターフェイス部2aにて溶解装置1又は各透析監視装置3から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部2bによる制御が行われ、所定の動作が行われるようになっている。
【0041】
透析液供給装置2で作製された透析液は、配管R2を介して各透析監視装置3に供給されることとなる。透析監視装置3(血液浄化装置)は、図4に示すように、患者に血液浄化治療(血液透析治療)を施すためのダイアライザ9(血液浄化器)が取り付けられ、透析液供給装置2から供給された透析液を当該ダイアライザ9に供給するためのもので、血液透析治療や他の制御内容(洗浄又は消毒)の指示及び所定の表示を行わせ得るタッチパネル3aが配設されている。
【0042】
より具体的には、複数の透析監視装置3の各々は、図4に示すように、透析液供給装置2から延設された配管R2に接続された透析液導入ラインL1と、図示しない排液手段に接続された排液排出ラインL2を具備し、これら透析液導入ラインL1及び排液排出ラインL2に跨って複式ポンプ7が配設されて構成されている。このうち透析液導入ラインL1には、当該透析液導入ラインL1を流れる液体の流量を検出する流量検出センサ、当該液体の給液圧を検出する液圧検出センサ、及び当該液体の電導度(濃度)を検出する電導度検出センサ等が配設されている。
【0043】
ダイアライザ9(血液浄化器)は、複数の中空糸膜(不図示)が収容されており、この中空糸が血液を浄化するための血液浄化膜を構成している。かかるダイアライザ9は、その筐体部に、血液導入口9a、血液導出口9b、透析液導入口9c及び透析液導出口9dが形成されており、このうち血液導入口9aには動脈側血液回路Laが、血液導出口9bには静脈側血液回路Lbがそれぞれ接続されている。また、透析液導入口9c及び透析液導出口9dは、透析液導入ラインL1及び排液排出ラインL2とそれぞれ接続されるようになっている。
【0044】
しかして、血液ポンプ10を駆動させて動脈側血液回路La及び静脈側血液回路Lbにて患者の血液を体外循環させるとともに、複式ポンプ7を駆動させて透析液をダイアライザ9に導入することにより、透析治療(血液浄化治療)が行われることとなる。また、透析監視装置3内には、除水ポンプ8が配設されており、かかる除水ポンプ8を駆動させることにより、ダイアライザ9内を流れる患者の血液に対して除水を行わせることが可能とされる。なお、複式ポンプ7に代えて、所謂チャンバ形式のものとしてもよい。
【0045】
さらに、本実施形態に係る各透析監視装置3は、LANケーブルC2と電気的に接続されるインターフェイス部3b(送信部)及び制御部3cを具備している。インターフェイス部3bは、透析液供給装置2のインターフェイス部2aとの間で所定の情報を送受信し得るものである。そして、インターフェイス部3bにて透析液供給装置2から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部3cによる制御が行われ、所定の動作が行われるようになっている。
【0046】
ここで、本実施形態に係る血液浄化システムは、透析監視装置3(血液浄化装置)により行われた実際の治療回数と予想される予想治療回数(予想の治療回数)とを比較して溶解装置1(原液準備部)による透析液原液の追加準備(補充)の要否を判断する判断部2cを透析液供給装置2に具備している。また、本実施形態に係る溶解装置1の制御部1bは、判断部2cで透析液原液(A原液及びB原液)の追加準備が必要と判断されたとき、容器B1、B2内の薬剤を溶解して透析液原液(A原液及びB原液)を作製するよう構成されている。なお、追加準備された透析液原液は、適宜のタイミングで、透析液供給装置2に供給される。
【0047】
すなわち、透析監視装置3(血液浄化装置)から実際の治療回数に関わる情報がLANケーブルC2を介して透析液供給装置2に送信されるとともに、透析液供給装置2の判断部2cは、受信した「実際の治療回数」と予め入力(記憶)された「予想される予想治療回数」とを比較し、溶解装置1による透析液原液の追加準備の要否を判断するよう構成されている。そして、判断部2cにより追加準備が必要と判断されると、LANケーブルC1を介して制御信号を溶解装置1に送信し、その制御信号に基づく制御部1bの制御により、容器B1、B2内のA剤及びB剤が溶解されて溶解槽Ta1、Tb1にてA原液及びB原液が作製される。
【0048】
また、本実施形態に係る透析監視装置3は、インターフェイス部3b(送信部)により、血液浄化治療の開始若しくは終了(工程情報)、又は血液浄化治療時間を透析液供給装置2の判断部2cに送信するものとされている。そして、これら「血液浄化治療の開始若しくは終了(工程情報)、又は血液浄化治療時間」に基づいて、現時点で行われた「実際の治療回数」を判断部2cが把握し、「予想される予想治療回数」と比較することができる。また、「実際の治療回数」は、各透析監視装置3が実際に行った治療回数を合計した数であり、換言すれば、血液浄化システム(血液浄化装置群)における実際の治療回数である。「予想治療回数」は、各透析監視装置3が行うと予想される治療回数を合計した数であり、換言すれば、血液浄化システム(血液浄化装置群)において予想される予想の治療回数である。なお、「実際の治療回数」及び「予想の治療回数」について、血液浄化システムの全ての透析監視装置3を対象としてカウントしなくともよく、一部の透析監視装置3を対象としてカウントしてもよい。なお、上述の工程情報は、血液浄化治療の開始若しくは終了の他に、血液浄化治療の進捗状況を示す情報としても良い。
【0049】
一方、本実施形態における「予想治療回数」は、過去の治療データ又は治療の予約データに基づいて設定される。過去の治療データは、医療施設において過去に行われた実績に基づく情報であり、例えば過去の特定の日時における患者の治療実績や治療回数等により求めることができる。また、治療の予約データは、患者が治療の日時を予約した情報であり、例えば将来の特定の日時における予約状況等により求めることができる。なお、予想治療回数は、例えば操作者が入力した情報等、他のデータに基づくものであってもよい。
【0050】
またさらに、本実施形態に係る判断部2cは、特定の日程(曜日等の管理を含む)又は特定の治療時間(「クール」を含む)に亘って行われる血液浄化治療の実際の治療回数と予想治療回数とを比較して透析液原液(A原液及びB原液)の追加準備の要否を判断するよう構成されている。特定の日程又は特定の治療時間は、所定期間で設定され、例えば、1日、半日、又は1クール等である。更に、上記所定期間は、溶解装置1が溶解を開始した後、透析監視装置3のために透析液原液を供給し、血液浄化システムの終了(シャットダウン又は待機状態)に応じて透析液原液を廃棄するまでの期間(溶解装置1の稼働期間・時間)以下に設定することが望ましい。なお、「クール」とは、病院等医療現場にて予め定められた特定の治療時間の単位をいい、クール毎に複数の患者に対する透析治療が行われる。例えば、一日のうち、午前に行われるクール、午後に行われるクール、及び夜間に行われるクールが設定される場合がある。
【0051】
さらに、本実施形態に係る判断部2cは、上述の如き「実際の治療回数及び予想治療回数に基づく追加準備の要否の判断」に加え、現在行われている治療中の溶解装置1における透析液原液(A原液及びB原液)の不足の有無を判断するものとされている。具体的には、判断部2cは、透析監視装置3(血液浄化装置)に供給される透析液の量、流速、供給時間若しくは供給時刻、又は透析監視装置3(血液浄化装置)の工程情報(治療前のプライミング工程、ガスパージ工程、血液透析治療工程、返血工程、洗浄・消毒工程、置換工程等)若しくは治療の中断情報に基づいて特定の治療時間における透析液原液(A原液及びB原液)の消費量を推定するとともに、当該推定した原液の消費量と溶解装置1における透析液原液の残量(本実施形態においては、溶解槽Ta1、Tb1の容量と貯槽Ta2、Tb2の残量の合計)とを比較して、溶解装置1における透析液原液の不足の有無を判断するよう構成されている。
【0052】
次に、本実施形態に係る血液浄化システムの判断部2cによる判断方法について、図5のフローチャートに基づいて説明する。
先ずS1にて原液(A原液又はB原液)を選択し、その選択されたA原液又はB原液の残量が十分か否か判断する。すなわち、透析液供給装置2における原液ポンプPa、Pbの駆動速度が得られる所望の液組成に応じて調整されており、A原液及びB原液の原液消費時間は必ずしも一致するとは限らないため、予想される消費時間が早い原液(A原液又はB原液)を選択するようになっている。なお、かかる原液の選択は、追加準備(追加溶解)の要否を判断するたびに実施される。
【0053】
原液の選択方法としては、A原液およびB原液の容量と、予測消費量/予測消費速度に基づいて判断することができるとともに、予測消費速度は、例えば、透析液供給装置2における原液ポンプPa、Pbの駆動速度から求めることができる。具体的には、下記の計算式によりA原液およびB原液の何れを選択すべきか求めることができる。
【0054】
先ず、以下の計算式(3)、(4)により、A原液について予測原液量が全て消費される時間(基準時刻からの経過時間)Taと、B原液について予測原液量が全て消費される時間(基準時刻からの経過時間)Tbとを算出する。
X=α1-α2×Ta ・・・(1)
Y=β1-β2×Tb ・・・(2)
式(1)においてX=0である場合(A原液について予測原液量が全て消費された場合)
Ta=α1/α2 ・・・(3)
式(2)においてY=0である場合(B原液について予測原液量が全て消費された場合)
Tb=β1/β2 ・・・(4)
(但し、A原液量=α1、B原液量=β1、A原液の予測消費速さ=α2(絶対値)、B原液の予測消費速さ=β2(絶対値)、時刻TaにおけるA原液の予測原液量=X、時刻TbにおけるB原液の予測原液量=Yとする)
【0055】
そして、A原液の予測原液量が全て消費される時間Taと、B原液の予測原液量が全て消費される時間Tbとを比較する。その結果、Taの方がTbより大きい場合、B原液を選択し、Taの方がTbより小さい場合、A原液を選択する。なお、TaとTbとが等しい場合は、A原液を選択するものとする。
【0056】
しかるに、S1にて原液の選択が行われると、S2に進み、残り原液量が十分か否か判断される。すなわち、S2は、現在行われている治療中の溶解装置1(原液準備部)における透析液原液(A原液又はB原液)の不足の有無を判断するものであり、具体的には、以下の条件によって透析液原液の不足を判断することができる。
【0057】
溶解装置1におけるA原液又はB原液の残量(A原液については溶解槽Ta1及び貯槽Ta2の残り容量の合計、B原液については溶解槽Tb1及び貯槽Tb2の残り容量の合計)をX(L)、マージンをY(L)、その時点で分かっている先の時刻における原液消費量の累計をZ(L)とした場合、(X-Y)-Zなる計算結果が0以上の場合、残り原液量が十分であると判断するとともに、(X-Y)-Zなる計算結果が0より小さい場合、残り原液量が不足すると判断する。
【0058】
そして、S2にて残り原液量が十分であると判断されると、S3に進み、透析監視装置3により行われた実際の治療回数と予想される予想治療回数とを比較して溶解装置1による透析液原液(A原液又はB原液)の追加準備の要否を判断する。すなわち、透析治療が1クールしか行われない医療施設であれば、S2の判断のみで十分であるが、医療施設や曜日によっては複数のクールが設定されるため、次のクールがあるかを予測する必要がある。次のクールがあるか分かっていなければ、次のクール開始時(例えば、一斉にプライミングが開始された時)に予測していない大量に必要とする透析液原液(A原液又はB原液)が生じ、溶解装置1の透析液原液が枯渇する可能性がある。そこで、本実施形態においては、次に控えている治療(クール)を予測し、追加準備の判断が行われるのである。
【0059】
具体的には、先ず、判断部2cがその曜日の治療回数の実績データ(過去の治療データ)を受信する。また、その日の治療回数の情報を周期ごとに受信し、実績データ(過去の治療データ)との差を計算する。かかる差分が閾値を超えた場合は、次の治療が控えていると判断する。そして、S2にて残りの原液量が足りていると判断される場合であっても次の治療が控えている場合は追加準備を実施する。本実施形態においては、追加準備する条件は以下の通りとする。
【0060】
溶解装置1におけるA原液又はB原液の残量(A原液については溶解槽Ta1及び貯槽Ta2の残り容量の合計、B原液については溶解槽Tb1及び貯槽Tb2の残り容量の合計)をX(L)、マージンをY(L)、その時点で分かっている先の時刻における原液消費量の累計をZ(L)、溶解装置1の原液作製時間の間における透析監視装置1台あたりの原液消費量をQ(L)とした場合、{(X-Y)-Z}-Q×残り治療回数なる計算結果が0以上の場合、追加準備は不要であると判断するとともに、{(X-Y)-Z}-Q×残り治療回数なる計算結果が0より小さい場合、追加準備が必要であると判断する。
【0061】
その後、S3にて追加準備が必要であると判断されると、S4にて溶解装置1において追加準備(溶解)が可能か否かが判断され、可能であると判断されると、S5にて追加準備が行われる。なお、S2にて残り原液量が十分でない場合は、S3をスキップしてS4に進むものとされ、S3、S4にて追加準備が必要でない、追加準備が可能でないと判断されると、S6にて待機状態とされ、その後、S1に戻るようになっている。
【0062】
上記実施形態によれば、所定期間に亘って血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において血液浄化治療群が行った実際の治療回数との比較結果に基づき、溶解装置1(原液準備部)による透析液原液の追加準備の要否を判断するので、透析液原液の追加準備の要否を精度よく判断することができる。
【0063】
また、本実施形態に係る溶解装置1(原液準備部)は、薬剤(A剤及びB剤)を溶解して透析液原液(A原液及びB原液)を作製して所定量の透析液原液を貯留(A原液及びB原液)するとともに、判断部2cで透析液原液の追加準備が必要と判断されたとき、薬剤を溶解して透析液原液を作製する制御部1bを有するので、薬剤の溶解時間を考慮して透析液原液の追加準備を行わせることができる。
【0064】
さらに、本実施形態に係る判断部2cは、所定期間である日程又は治療時間に亘って行われる血液浄化治療の実際の治療回数と予想治療回数とを比較して透析液原液の追加準備の要否を判断するので、透析液原液の追加準備の要否を特定の日程又は特定の治療時間に亘って判断することができる。しかるに、本実施形態における予想治療回数は、過去の治療データ又は治療の予約データに基づいて設定されるので、透析液原液の追加準備の要否を円滑且つ精度よく判断することができる。
【0065】
また、本実施形態に係る透析監視装置3は、実際の治療回数を判断部2cに送信する送信部(インターフェイス部3b)を具備したので、判断部2cにおいて、透析液原液の追加準備の要否を迅速且つ円滑に判断することができる。さらに、本実施形態に係る透析監視装置3(血液浄化装置)は、送信部(インターフェイス部3b)により、血液浄化治療の開始若しくは終了、又は血液浄化治療時間を判断部に送信するので、実際の治療回数を正確に把握させることができる。
【0066】
加えて、本実施形態に係る判断部2cは、実際の治療回数及び予想治療回数に基づく追加準備の要否の判断に加え、現在行われている治療中の溶解装置1(原液準備部)における透析液原液の不足の有無を判断するので、現在行われている治療における追加準備の要否を円滑に判断させることができる。
【0067】
特に、本実施形態に係る判断部2cは、透析監視装置3(血液浄化装置)に供給される透析液の量、流速、供給時間若しくは供給時刻、又は透析監視装置3(血液浄化装置)の工程情報若しくは治療の中断情報に基づいて特定の治療時間における透析液原液の消費量を推定するとともに、当該推定した原液の消費量と溶解装置1(原液準備部)における透析液原液の残量とを比較して、溶解装置1における透析液原液の不足の有無を判断するので、現在行われている治療における追加準備の要否をより一層正確且つ円滑に判断させることができる。
【0068】
以上、本実施形態に係る血液浄化システムついて説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、例えば図6に示すように、透析液供給装置2に対してLANケーブルC3を介して透析通信システム11を電気的に接続し、当該透析通信システム11から予想治療回数(過去の治療データ又は治療の予約データ)を判断部2cに送信するようにしてもよい。
【0069】
また、判断部2cは、透析液供給装置2に配設されたものに限らず、例えば溶解装置1や他のコンピュータ等に配設するようにしてもよい。さらに、本実施形態に係る溶解装置1は、薬剤(A剤及びB剤)を溶解して透析液原液(A原液及びB原液)を作製して所定量の透析液原液を貯留するものとされているが、透析液原液(A原液及びB原液)を所定容量収容して透析液供給装置2に供給する他の形態の原液準備部としてもよい。また、本実施形態に係る溶解装置1は、原液(A原液又はB原液)を選択し、その選択されたA原液又はB原液の残量が十分か否か判断するが、A原液及びB原液を個別に溶解できる場合は、個別に残量が十分か否かを判断し、個別に追加準備を実施してもよい。
【0070】
しかるに、本実施形態に係る血液浄化システムにおいては、溶解装置1と透析液供給装置2が分かれて構成されているが、1つの装置として構成しても良い。この場合、例えば図7に示すように、透析液原液を準備する溶解装置1’(原液準備部)と、血液浄化治療(血液透析治療)を施す少なくとも一つの個人用監視装置3’(血液浄化装置)で構成される血液浄化装置群を有するとともに、溶解装置1’(原液準備部)で準備された透析液原液が血液浄化装置群に供給されて血液浄化治療を行う血液浄化治療部4と、所定期間に亘って血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果に基づき、溶解装置1’(原液準備部)による透析液原液の追加準備の要否を判断する判断部とを備えて構成されている。なお、上記の実施形態と同様の構成要素には同一の符号を付し、それらの詳細な説明を省略する。
【0071】
原液準備部としての溶解装置1’は、薬剤を溶解して透析液原液(A原液及びB原液)を作製して所定量の透析液原液を貯留するとともに、その貯留した透析液原液を配管Rにて個人用監視装置3’に供給するもので、インターフェイス部2a、制御部2b、判断部2cとを有して構成されている。インターフェイス部2aは、LANケーブルCを介して各個人用監視装置3’のインターフェイス部3bとの間で所定の情報を送受信し得るものである。そして、インターフェイス部2aにて各個人用監視装置3’から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部2bによる制御が行われ、所定の動作が行われるようになっている。
【0072】
複数の個人用監視装置3’の各々は、上記実施形態と同様、LANケーブルCと電気的に接続されるインターフェイス部3b(送信部)及び制御部3cを具備している。インターフェイス部3bは、溶解装置1’のインターフェイス部2aとの間で所定の情報を送受信し得るものである。そして、インターフェイス部3bにて溶解装置1’から所定の情報を受信すると、その情報に基づいて制御部3cによる制御が行われ、所定の動作が行われるようになっている。
【0073】
特に、個人用監視装置3’は、溶解装置1’から供給された透析液原液(A原液及びB原液)をRO水などの清浄水等で希釈して所定濃度の透析液を作製し得るものであり、その透析液を使用して透析治療(血液浄化治療)が行われるようになっている。そして、個人用監視装置3’(血液浄化装置)により行われた実際の治療回数と予想される予想治療回数とを比較して溶解装置1’(原液準備部)による透析液原液の追加準備(補充)の要否を判断する判断部2cを溶解装置1’に具備している。また、本実施形態に係る溶解装置1’の制御部2bは、判断部2cで透析液原液(A原液及びB原液)の追加準備が必要と判断されたとき、薬剤を溶解して透析液原液(A原液及びB原液)を作製するよう構成されている。
【0074】
すなわち、個人用監視装置3’(血液浄化装置)から実際の治療回数に関わる情報がLANケーブルCを介して溶解装置1’に送信されるとともに、その溶解装置1’の判断部2cは、受信した「実際の治療回数」と予め入力(記憶)された「予想される予想治療回数」とを比較し、透析液原液の追加準備の要否を判断するよう構成されている。そして、判断部2cにより追加準備が必要と判断されると、A剤及びB剤が溶解されてA原液及びB原液が作製される。
【0075】
さらに、本実施形態においては、LANケーブルにて情報を双方向にて送受信しているが、例えば透析監視装置3から判断部2cに対して実際の治療回数に関わる情報を送信し得るものであれば、双方向の通信を行わせるものでなくてもよい。また、本実施形態に係る判断部2cは、実際の治療回数及び予想治療回数に基づく追加準備の要否の判断(図5のS3)に加え、現在行われている治療中の原液準備部における透析液原液の不足の有無を判断(図5のS2)するものとされているが、実際の治療回数及び予想治療回数に基づく追加準備の要否の判断(図5のS3)のみを行い、現在行われている治療中の原液準備部における透析液原液の不足の有無の判断(図5のS2)を行わないものとしてもよい。また、現在、血液浄化システム(血液浄化装置群)の次のクール(次の治療)が予定されているか否かに基づき、実際の治療回数及び予想治療回数に基づく追加準備の要否の判断(図5のS3)を行うか否かを切り替えてもよい。具体的には、次のクール(次の治療)が予定されている場合、追加準備の要否を判断し、次のクール(次の治療)が予定されていない場合、追加準備の要否判断を省略し、制御の効率化を図ってもよい。なお、本実施形態においては、透析治療を行うシステムとされているが、他の血液浄化治療を行う血液浄化システムに適用するようにしてもよい。
【0076】
さらに、本実施形態においては、各透析監視装置3が実際に行った治療回数を合計した数と、各透析監視装置3が行うと予想される治療回数を合計した数とを比較し、追加準備の要否を判断するが、別の実施形態として、血液浄化システム(血液浄化装置群)が実際に行ったクール数と、血液浄化システム(血液浄化装置群)が行うと予想されるクール数とを比較し、追加準備の要否を判断してもよい。ただし、病院等医療現場によっては、上記の如きクールを採用せず、治療室を訪れた患者に対して順次透析治療を開始する場合もある。この場合、例えばその日に設定されたクールを考慮して透析液原液の量の不足を判定することができない。一方、本実施形態に係る血液浄化システム及び原液準備判断装置によれば、クールを採用しない病院等医療現場においても適用可能であり、その日の実際の治療回数及び予想治療回数に基づき、透析液原液の量の不足を判定することができるため、上記別の実施形態より優位である。
【産業上の利用可能性】
【0077】
透析液原液を準備する原液準備部と、原液準備部から供給された透析液原液を希釈して所定濃度の透析液を作製する透析液供給部と、血液浄化治療を施す少なくとも一つの血液浄化装置で構成される血液浄化装置群を有するとともに、透析液供給部が作製する透析液が当該血液浄化装置群に供給されて血液浄化治療を行う血液浄化治療部と、所定期間に亘って血液浄化装置群が行うと予想される予想の治療回数と、当該所定期間の経過中において血液浄化装置群が行った実際の治療回数との比較結果に基づき、原液準備部による透析液原液の追加準備の要否を判断する判断部とを備えた血液浄化システム及び原液準備判断装置であれば、他の機能が付加されたもの等にも適用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1、1’ 溶解装置(原液準備部)
1a インターフェイス部
1b 制御部
2 透析液供給装置(透析液供給部)
2a インターフェイス部
2b 制御部
2c 判断部
3 透析監視装置(血液浄化装置)
3a タッチパネル(表示部)(入力部)
3b インターフェイス部(送信部)
3c 制御部
3’ 個人用監視装置(血液浄化装置)
4 血液浄化治療部
5 計量部
6 透析液貯槽
7 複式ポンプ
8 除水ポンプ
9 ダイアライザ(血液浄化器)
10 血液ポンプ
11 透析通信システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7