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特許7530359ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子およびポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体
(51)【国際特許分類】
   C08J 9/18 20060101AFI20240731BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20240731BHJP
   B29C 44/44 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C08J9/18 CFD
B29C44/00 G
B29C44/44
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2021529897
(86)(22)【出願日】2020-05-07
(86)【国際出願番号】 JP2020018534
(87)【国際公開番号】W WO2021002092
(87)【国際公開日】2021-01-07
【審査請求日】2023-04-03
(31)【優先権主張番号】P 2019123634
(32)【優先日】2019-07-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000941
【氏名又は名称】株式会社カネカ
(74)【代理人】
【識別番号】110000556
【氏名又は名称】弁理士法人有古特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】南 徹也
【審査官】鏡 宣宏
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/049694(WO,A1)
【文献】特開2012-241166(JP,A)
【文献】国際公開第2006/103972(WO,A1)
【文献】特開2007-302778(JP,A)
【文献】特開2007-130763(JP,A)
【文献】特表2013-510213(JP,A)
【文献】特表2013-506024(JP,A)
【文献】国際公開第2019/022008(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60、67/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡粒子全体でのゲル分率が30~80重量%であり、かつ、前記発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が5重量%以下であることを特徴とする、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項2】
前記発泡粒子の1粒当たりの重量が0.3~10mgであり、かつ、前記発泡粒子の長さ/直径が0.5~2.5である、請求項1に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項3】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される1種以上である、請求項1または2に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項4】
ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、3-ヒドロキシブチレートとコモノマーの共重合体であり、該共重合体中のモノマー比率が、3-ヒドロキシブチレート/コモノマー=99/1~80/20(モル%/モル%)である、請求項1~3のいずれかに記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項5】
前記発泡粒子が、有機過酸化物で架橋されたものである、請求項1~4のいずれかに記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項6】
前記有機過酸化物が、1時間半減期温度が114~124℃であり、カーボネート基を有し、かつ、常温で液体である、請求項5に記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項7】
前記発泡粒子の見掛け密度が、20~150g/Lである、請求項1~6のいずれかに記載のポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の発泡粒子を成形してなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の発泡粒子を製造する方法であって、
耐圧容器内でポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)を含む樹脂粒子と架橋剤を水に分散させた後、前記耐圧容器内に発泡剤を導入し、前記樹脂粒子の軟化温度以上に加熱した後、前記耐圧容器の一端を開放し、低圧の雰囲気下に放出することにより前記樹脂粒子を発泡させる工程を含み、
前記架橋剤が、1時間半減期温度が114~124℃であり、カーボネート基を有し、かつ、常温で液体である有機過酸化物であり、
前記架橋剤の使用量が、前記樹脂粒子100重量部に対して1.2重量部以上5重量部以下である、製造方法。
【請求項10】
前記有機過酸化物が、カーボネート基を1つ有する化合物である、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記樹脂粒子の軟化温度以上に加熱する時の温度が、100~140℃である、請求項9に記載の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系組成物から成る樹脂粒子を発泡してなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子と、該発泡粒子を成形して成るポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
石油由来プラスチックは毎年大量に廃棄されており、これらの大量廃棄物による埋立て処分場の不足や環境汚染が深刻な問題として取り上げられている。また近年、マイクロプラスチックが、海洋環境において大きな問題になっている。このため海や土等の環境中や埋立て処分場、コンポスト中で微生物の作用によって分解される生分解性プラスチックが注目されている。生分解性プラスチックは、環境中で利用される農林水産業用資材、使用後の回収・再利用が困難な食品容器、包装材料、衛生用品、ゴミ袋等への幅広い応用を目指して、開発が進められている。更に生分解性プラスチックから成る発泡体は、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等での使用が期待されている。
【0003】
前記生分解性プラスチックの中でも、優れた生分解性およびカーボンニュートラルの観点から、植物由来のプラスチックとしてポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)(以下、P3HAと称する場合がある)が注目されている。その中でも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)(以下、P3HBと称する場合がある)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(以下、P3HB3HVと称する場合がある)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(以下、P3HB3HHと称する場合がある)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(以下、P3HB4HBと称する場合がある)等が注目されている。
【0004】
上述の生分解性プラスチックを発泡体用途に展開することが検討されている。例えば、特許文献1には、生分解性を有するポリエステル系樹脂発泡粒子、及び、該発泡粒子を金型に入れて加熱することで発泡粒子を相互に融着させ、一体化した発泡粒子成形体が開示されている。
【0005】
また、特許文献2には、ポリヒドロキシアルカノエートとイソシアネート化合物を含み、特定以上の溶融粘度を持つポリヒドロキシアルカノエート樹脂組成物からなるポリヒドロキシアルカノエート樹脂発泡粒子が開示されている。
更に、特許文献3には、ポリヒドロキシアルカノエートやポリ乳酸を有機過酸化物で処理することで、発泡粒子を経ることなく、発泡体を製造する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2001-49021号公報
【文献】国際公開第2007/049694号
【文献】国際公開第2012/170215号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1では、発泡粒子内部のクロロホルム不溶分が20重量%以上であるポリエステル系樹脂発泡粒子を用いることで、成形体内部に巨大気泡を発生させずに、ポリエステル系樹脂発泡粒子成形体が得られることが報告されている。しかしながら、該文献に記載の発泡粒子では、発泡粒子内部のクロロホルム不溶分と、発泡粒子全体又は発泡粒子表層部のクロロホルム不溶分の差が大きいため、多段発泡や型内発泡成形時に発泡粒子内で膨脹ムラが起こり、製造される成形体に色ムラが発生する場合があることが、本発明者により確認された。
【0008】
特許文献2では、ポリヒドロキシアルカノエートとイソシアネート化合物を押出機等で溶融混練し、特定以上の溶融粘度を持つポリヒドロキシアルカノエート樹脂組成物を得た後、発泡剤を用いて該樹脂組成物を発泡させることで、発泡成形体に成形する時の加工幅が広く、また成形体の後収縮がないポリヒドロキシアルカノエート樹脂発泡粒子が得られることが報告されている。しかしながら、該文献に記載の製造方法では、押出機等でイソシアネート化合物と溶融混練し、溶融粘度を向上させているので、押出機等の負荷が非常に大きく、吐出量を少なくする必要があるため生産性が低いという問題がある。また、溶融粘度が高いとメルトフラクチャーが起こり易いため、粒子1粒当たりの重量が小さく、均一なポリヒドロキシアルカノエート樹脂粒子を作製することが困難となる。そのため、得られる発泡粒子の発泡倍率にはバラツキがあり、得られる発泡成形体に色ムラが発生する場合があることが、本発明者により確認された。
【0009】
特許文献3では、ポリヒドロキシアルカノエートと有機過酸化物を高温で短時間、溶融・反応させることで、発泡剤を使用せずに発泡体を製造する方法が報告されている。しかしながら、該文献では、発泡粒子は記載されておらず、発泡粒子を経ることなく発泡体を製造するため、発泡体の形状が不定形になる。更に、得られる発泡体の密度が高いため使用できる用途が限られるという問題があることが、本発明者により確認された。
【0010】
以上に鑑み、本発明の目的は、型内発泡成形時に採用できる成形加工条件の幅が広く、かつ、色ムラの発生が抑制された発泡成形体を得ることができるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子および前記発泡成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は前記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子全体でのゲル分率を特定範囲とし、かつ、該発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差を特定値以下とすることで、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子を用いて発泡成形体を製造するための型内発泡成形時に採用できる成形加工条件の幅が広くなり、かつ、色ムラの発生が抑制された発泡成形体が得られることを見出し、本発明を完成させた。
【0012】
第一の本発明は、発泡粒子全体でのゲル分率が30~80重量%であり、かつ、前記発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が25重量%以下であることを特徴とする、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子に関する。好ましくは、前記発泡粒子の1粒当たりの重量が0.3~10mgであり、かつ、前記発泡粒子の長さ/直径が0.5~2.5である。好ましくは、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される1種以上である。より好ましくは、ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)が、3-ヒドロキシブチレートとコモノマーの共重合体であり、該共重合体中のモノマー比率が、3-ヒドロキシブチレート/コモノマー=99/1~80/20(モル%/モル%)である。
また、好ましくは、前記発泡粒子が、有機過酸化物で架橋されたものである。より好ましくは、前記有機過酸化物が、1時間半減期温度が114~124℃であり、カーボネート基を有し、かつ、常温で液体である。好ましくは、前記発泡粒子の見掛け密度が、20~150g/Lである。
【0013】
第二の本発明は、前記発泡粒子を成形してなるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体に関する。
【0014】
第三の本発明は、前記発泡粒子を製造する方法であって、耐圧容器内でポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)を含む樹脂粒子と架橋剤を水に分散させた後、前記耐圧容器内に発泡剤を導入し、前記樹脂粒子の軟化温度以上に加熱した後、前記耐圧容器の一端を開放し、低圧の雰囲気下に放出することにより前記樹脂粒子を発泡させる工程を含み、前記架橋剤が、1時間半減期温度が114~124℃であり、カーボネート基を有し、かつ、常温で液体である有機過酸化物であり、前記架橋剤の使用量が、前記樹脂粒子100重量部に対して1.2重量部以上5重量部以下である、製造方法に関する。好ましくは、前記有機過酸化物が、カーボネート基を1つ有する化合物である。好ましくは、前記樹脂粒子の軟化温度以上に加熱する時の温度が、100~140℃である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、型内発泡成形時に採用できる成形加工条件の幅が広く、かつ、色ムラの発生が抑制された発泡成形体を得ることができるポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子および前記発泡成形体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】P3HA系組成物から成る樹脂粒子のDSC曲線およびそれから測定される融点等を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明のP3HA系発泡粒子(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡粒子)およびP3HA系発泡成形体(ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)系発泡成形体)の実施の一形態について詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。
【0018】
本開示のP3HA系発泡粒子は、例えば、P3HA系組成物から成る樹脂粒子を発泡剤を用いて発泡させることで得られる。また、P3HA系発泡成形体は、P3HA系発泡粒子を成形することにより、具体的には例えば、型内発泡成形することにより得られる。
【0019】
[P3HA]
P3HAは、3-ヒドロキシアルカノエート繰り返し単位を必須の構成単位(モノマー単位)として有する重合体であり、具体的には、下記一般式(1)で示される繰り返し単位を含む重合体が好ましい。
[-CHR-CH-CO-O-] (1)
【0020】
一般式(1)中、RはC2p+1で表されるアルキル基を示し、pは1~15の整数を示す。Rとしては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、メチルプロピル基、ブチル基、イソブチル基、t-ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等の直鎖または分岐鎖状のアルキル基が挙げられる。pとしては、1~10が好ましく、1~8がより好ましい。
【0021】
P3HAとしては、特に微生物から産生されるP3HAが好ましい。微生物から産生されるP3HAは、3-ヒドロキシアルカノエート繰り返し単位が、全て(R)-3-ヒドロキシアルカノエートであるポリ[(R)-3-ヒドロキシアルカノエート]である。
【0022】
P3HAは、3-ヒドロキシアルカノエート繰り返し単位(特に一般式(1)の繰り返し単位)を、全繰り返し単位の50モル%以上含むことが好ましく、70モル%以上含むことがより好ましく、80モル%以上含むことが更に好ましく、繰り返し単位(モノマー単位)として3-ヒドロキシアルカノエート繰り返し単位のみであってもよいし、3-ヒドロキシアルカノエート繰り返し単位に加えて、その他の繰り返し単位(例えば、4-ヒドロキシアルカノエート繰り返し単位等)を含んでいてもよい。
【0023】
P3HAとしては、3-ヒドロキシブチレート(以下、3HBと称する場合がある)を繰り返し単位(モノマー単位)として80モル%以上含むことが好ましく、85モル%以上含むことがより好ましい。特に、3-ヒドロキシブチレートが全て(R)-3-ヒドロキシブチレートであるもの(微生物によって産生されたもの)が好ましい。P3HAの具体例としては、例えば、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシプロピオネート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)(P3HB3HV)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)(P3HB3HH)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘプタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシオクタノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシノナノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシウンデカノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)(P3HB4HB)等が挙げられる。なかでも、ポリ(3-ヒドロキシブチレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシバレレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)およびポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)からなる群より選択される1種以上が好ましい。特に、加工性および発泡成形体の物性等の観点から、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)、及び/又は、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-4-ヒドロキシブチレート)がより好ましく、ポリ(3-ヒドロキシブチレート-コ-3-ヒドロキシヘキサノエート)が特に好ましい。
【0024】
P3HAが3-ヒドロキシブチレートを必須の構成単位として有するポリマーの場合、3-ヒドロキシブチレートと共重合しているコモノマー、例えば、3-ヒドロキシヘキサノエート(以下、3HHと称する場合がある)や4-ヒドロキシブチレート(以下、4HBと称する場合がある)との構成比、即ち共重合体中のモノマー比率としては、3-ヒドロキシブチレート/コモノマー=99/1~80/20(モル%/モル%)が好ましく、より好ましくは97/3~80/20(モル%/モル%)、さらに好ましくは95/5~85/15(モル%/モル%)である。コモノマー比率が1モル%未満では、P3HAの溶融加工温度域と熱分解温度域が近くなり、加工性に劣る傾向がある。一方、コモノマー比率が20モル%を超えると、溶融加工時の結晶化が遅く、生産性が低い傾向がある。
【0025】
なお、P3HAの各モノマー比率は、当業者に公知の方法、例えば国際公開2013/147139号に記載の方法により求めることができる。
【0026】
P3HAの融点は、特に限定されないが、110~165℃が好ましく、より好ましくは120~155℃である。融点が110℃未満では、得られるP3HA系発泡成形体の加熱寸法変化が大きくなる傾向がある。一方、融点が165℃を超えると、発泡工程中に加水分解が起こり易くなる傾向がある。なお、P3HAの融点は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用いて、P3HAを約5mg計量し、10℃/分の昇温速度にて10℃から190℃まで昇温した時に得られるDSC曲線において、最も高温の融解ピークの温度として測定される。
【0027】
P3HAの重量平均分子量は、特に限定されないが、20万~200万が好ましく、より好ましくは25万~150万、更に好ましくは30万~100万である。重量平均分子量が20万未満では、得られるP3HA系発泡粒子の独立気泡率が低くなる傾向がある。一方、重量平均分子量が200万を超えると、樹脂粒子作製などの溶融加工時の機械への負荷が高く、生産性が低くなる傾向がある。なお、P3HAの重量平均分子量は、クロロホルム溶液を用いたゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製作所社製HPLC GPC system)を用い、ポリスチレン換算分子量分布より測定することができる。該ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにおけるカラムとしては、重量平均分子量を測定するのに適切なカラムを使用すればよい。
【0028】
P3HAの製造方法は特に限定されず、化学合成による製造方法であってもよいし、微生物による製造方法であってもよい。中でも、上述のように微生物による製造方法が好ましい。微生物による製造方法については、公知乃至慣用の方法を適用できる。
【0029】
例えば、3-ヒドロキシブチレートと、その他のヒドロキシアルカノエートとのコポリマー生産菌としては、P3HB3HVおよびP3HB3HH生産菌であるアエロモナス・キヤビエ(Aeromonas caviae)、P3HB4HB生産菌であるアルカリゲネス・ユートロファス(Alcaligenes eutrophus)等が知られている。特に、P3HB3HHに関し、P3HB3HHの生産性を上げるために、P3HA合成酵素群の遺伝子を導入したアルカリゲネス・ユートロファス AC32株(Alcaligenes eutrophus AC32, FERM BP-6038)(T.Fukui,Y.Doi,J.Bateriol.,179,p4821-4830(1997))等がより好ましく、これらの微生物を適切な条件で培養して菌体内にP3HB3HHを蓄積させた微生物菌体が用いられる。また前記以外にも、生産したいP3HAに合わせて、各種P3HA合成関連遺伝子を導入した遺伝子組み換え微生物を用いても良いし、基質の種類を含む培養条件の最適化をすればよい。
【0030】
前記P3HAは、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。
【0031】
[P3HA系組成物から成る樹脂粒子]
P3HA系組成物から成る樹脂粒子は、P3HAを必須成分として含む組成物(P3HA系組成物)で構成される粒子である。当該組成物は、通常、P3HAと必要に応じた添加剤とを含む。なお、本開示において、樹脂粒子とは、発泡工程に付す前の、いまだ発泡していない粒子のことを指す。
【0032】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子におけるP3HAの含有量は、特に限定されないが、得られる発泡粒子や発泡成形体の生分解性等の観点で、70重量%以上が好ましく、より好ましくは80重量%以上である。
【0033】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子の融点(以下、Tmpと称する場合がある)は、特に限定されないが、110~165℃が好ましく、より好ましくは120~155℃である。融点が110℃未満では、得られるP3HA系発泡成形体の加熱寸法変化が大きくなる傾向がある。一方、融点が165℃を超えると、発泡工程中に加水分解が起こり易い傾向がある。なお、P3HA系組成物から成る樹脂粒子の融点は、示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用いて、P3HA系組成物から成る樹脂粒子を約5mg計量し、10℃/分の昇温速度にて10℃から190℃まで昇温した時に得られるDSC曲線において、最も高温の融解ピークの温度として測定される。
【0034】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子のメルトフローレート(以下、MFRと称する場合がある)は、特に限定されないが、1~30g/10min(分)が好ましく、より好ましくは1~25g/10min、更に好ましくは1~20g/10minである。MFRが1g/10min未満では、1回の発泡だけでは見掛け密度の低い発泡粒子を得ることが難しくなる傾向がある。一方、MFRが30g/10minを超えると、得られる発泡粒子の独立気泡率が低くなる傾向がある。なお、P3HA系組成物から成る樹脂粒子のMFRは、メルトフローインデックステスター(安田精機製作所社製)を用いて、JIS K7210に準じて、荷重5kg、測定温度は、「P3HA系組成物から成る樹脂粒子の融点の測定」で得られるDSC曲線から読み取った融解終了温度+1~10℃の条件で測定することにより、求められる。
【0035】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子の1粒当たりの重量は、0.3~10mgが好ましく、より好ましくは0.4~7.5mgであり、更に好ましくは0.5~5mgである。1粒当たりの重量が0.3mg未満では、P3HA系組成物から成る樹脂粒子を高い生産性で安定して製造することが難しくなる傾向がある。一方、1粒当たりの重量が10mgを超えると、P3HA系発泡成形体の薄肉化が難しくなる傾向がある。
【0036】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子の形状が円柱状である場合、前記樹脂粒子の長さ/直径は0.5~3が好ましく、より好ましくは0.7~2.7、更に好ましくは1~2.5である。長さ/直径が0.5未満では、得られる発泡粒子の形状が偏平となる傾向がある。一方、長さ/直径が3を超えると、発泡粒子の形状が縦長となる傾向がある。
【0037】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子は、発明の効果を阻害しない範囲において、添加剤を含有していてもよい。添加剤としては、例えば、気泡調整剤、結晶化核剤、滑剤、可塑剤、帯電防止剤、難燃剤、導電剤、断熱剤、架橋剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、無機充填剤、有機充填剤、加水分解抑制剤等を目的に応じて使用できる。特に生分解性を有する添加剤が好ましい。
【0038】
気泡調整剤としては、例えば、タルク、シリカ、ケイ酸カルシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニウム、酸化チタン、珪藻土、クレイ、重曹、アルミナ、硫酸バリウム、酸化アルミニウム、ベントナイト等が挙げられる。中でも、P3HAへの分散性に特に優れている点で、タルクが好ましい。気泡調整剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、0.01~1重量部が好ましく、より好ましくは0.03~0.5重量部、更に好ましくは0.05~0.3重量部である。また、気泡調整剤は、1種のみならず2種以上混合してもよく、目的に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0039】
結晶化核剤としては、例えば、ペンタエリスリトール、オロチン酸、アスパルテーム、シアヌル酸、グリシン、フェニルホスホン酸亜鉛、窒化ホウ素等が挙げられる。中でも、P3HAの結晶化促進効果が特に優れている点で、ペンタエリスリトールが好ましい。結晶化核剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、0.1~5重量部が好ましく、より好ましくは0.5~3重量部、更に好ましくは0.7~1.5重量部である。また、結晶化核剤は、1種のみならず2種以上混合してもよく、目的に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0040】
滑剤としては、例えば、ベヘン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ステアリン酸アミド、パルミチン酸アミド、N-ステアリルベヘン酸アミド、N-ステアリルエルカ酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、エチレンビスエルカ酸アミド、エチレンビスラウリル酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、p-フェニレンビスステアリン酸アミド、エチレンジアミンとステアリン酸とセバシン酸の重縮合物等が挙げられる。中でも、P3HAへの滑剤効果が特に優れている点で、ベヘン酸アミドとエルカ酸アミドが好ましい。滑剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、0.01~5重量部が好ましく、より好ましくは0.05~3重量部、更に好ましくは0.1~1.5重量部である。また、滑剤は、1種のみならず2種以上混合してもよく、目的に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0041】
可塑剤としては、例えば、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物、二塩基酸エステル系化合物等が挙げられる。中でも、P3HAへの可塑化効果が特に優れている点で、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、二塩基酸エステル系化合物が好ましい。グリセリンエステル系化合物としては、例えば、グリセリンジアセトモノラウレート等が挙げられる。クエン酸エステル系化合物としては、例えば、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。セバシン酸エステル系化合物としては、例えば、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。二塩基酸エステル系化合物としては、例えば、ベンジルメチルジエチレングリコールアジペート等が挙げられる。可塑剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、1~20重量部が好ましく、より好ましくは2~15重量部、更に好ましくは3~10重量部である。また、可塑剤は、1種のみならず2種以上混合してもよく、目的に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0042】
着色剤としては、例えば、アゾ系、ポリ縮合アゾ系、アゾメチン基を含むアゾ系、アゾメチン系、アンスラキノン系、フタロシアニン系、ペリノン・ペリレン系、インジゴ・チオインジゴ系、ジオキサジン系、キナクリドン系、イソインドリノン系、ジケトピロロピロール系、キノフタロン系等の有機顔料、および、酸化鉄系顔料、水酸化鉄系顔料、紺青系顔料、カーボンブラック系顔料、酸化チタン系顔料、複合酸化物系顔料等の無機顔料等が挙げられる。着色剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA100重量部に対して、0.001~5重量部が好ましく、より好ましくは0.05~5重量部、更に好ましくは0.1~2重量部である。また、着色剤は、1種のみならず2種以上混合してもよく、目的に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0043】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子を製造する際に、イソシアネート基を有する化合物(以下、イソシアネート化合物という)を用いることも可能である。但し、イソシアネート化合物は毒性を持つ場合がある。また、得られるP3HA系発泡粒子や発泡成形体が黄色くなる場合がある。したがって、イソシアネート化合物の使用量としては、P3HA100重量部に対して、3重量部未満が好ましく、より好ましくは1重量部未満、更に好ましくは0.1重量部未満である。最も好ましいのは、樹脂粒子がイソシアネート化合物を含有しないことである。
【0044】
前記イソシアネート化合物としては、例えば、1分子中にイソシアネート基を2個以上有するポリイソシアネート化合物を用いることができる。具体的な種類としては芳香族、脂環族、脂肪族系のイソシアネート等がある。例えば、芳香族イソシアネートとしてはトリレン、ジフェニルメタン、ナフチレン、トリジン、キシレン、トリフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、脂環族イソシアネートとしてはイソホロン、水素化ジフェニルメタンを骨格とするイソシアネート化合物、脂肪族イソシアネートとしてはヘキサメチレン、リジンを骨格とするイソシアネート化合物等がある。更に、これらイソシアネート化合物を2種類以上組み合わせたものも使用可能であるが、汎用性、取扱い性、耐候性等からトリレン、ジフェニルメタン、特にジフェニルメタンのポリイソシアネートの使用が好ましい。
【0045】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子(P3HA系発泡粒子も同様)は、更に、P3HA以外の樹脂成分(「その他の樹脂成分」と称する場合がある)を実質的に含まなくともよいし、含んでいてもよい。その他の樹脂成分としては、例えば、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリブチレンサクシネートアジペート、ポリブチレンアジペートテレフタレート、ポリブチレンサクシネートテレフタレート、ポリカプロラクトン等の脂肪族ポリエステルや脂肪族芳香族ポリエステル等が挙げられる。なお、その他の樹脂成分は、一種を単独で使用することもできるし、二種以上を組み合わせて使用することもできる。P3HA系組成物から成る樹脂粒子(P3HA系発泡粒子も同様)におけるその他の樹脂成分の含有量は特に限定されないが、例えば、P3HA100重量部に対して、10~400重量部が好ましく、より好ましくは50~150重量部である。
【0046】
P3HA系組成物から成る樹脂粒子の製造方法は特に限定されず、公知乃至慣用の方法を適用することで製造できる。例えば、まず、P3HAと必要に応じて前記添加剤とを、押出機、ニーダー、バンバリーミキサー、ロール等を用いて溶融混練し、溶融したP3HA系組成物をダイスのノズルから吐出し、冷却した後、カットすることで、円柱状、楕円柱状、球状、立方体状、直方体状等の、発泡に利用しやすい形状の樹脂粒子を得ることができる。製造装置としては、生産性と利便性の観点から二軸押出機が好ましい。
【0047】
前記P3HA系組成物から成る樹脂粒子の製造方法において、P3HAと必要に応じて前記添加剤とを溶融混練する温度は、P3HAの融点、重量平均分子量等や、使用する添加剤にもよるため一概には規定できないが、例えば、ダイスのノズルから吐出される溶融したP3HA系組成物の温度を150~200℃とすることが好ましく、より好ましくは160~195℃、更に好ましくは170~190℃である。溶融したP3HA系組成物の温度が150℃未満では、P3HA系組成物が溶融混練不足となる傾向がある。一方、溶融したP3HA系組成物の温度が200℃を超えると、P3HAが熱分解し易くなる傾向がある。
【0048】
前記P3HA系組成物から成る樹脂粒子の製造方法において、ダイスのノズルから吐出される溶融したP3HA系組成物を冷却する温度は、特に限定されないが、20~80℃が好ましく、より好ましくは30~70℃、更に好ましくは40~60℃である。冷却する温度が20℃未満では、溶融したP3HA系組成物の結晶化が遅くなり、P3HA系組成物から成る樹脂粒子の生産性が低くなる傾向がある。一方、冷却する温度が80℃を超えると、溶融したP3HA系組成物の結晶化が遅くなり、P3HA系組成物から成る樹脂粒子の生産性が低くなる傾向がある。
【0049】
[P3HA系発泡粒子]
本開示のP3HA系発泡粒子は、例えば、上述のP3HA系組成物から成る樹脂粒子を発泡剤を用いて発泡させることにより得られる。本開示のP3HA系発泡粒子は、以下の[1]および[2]の特性を満足するものである。
[1]発泡粒子全体でのゲル分率が30~80重量%である
[2]発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が25重量%以下である
【0050】
P3HA系発泡粒子のゲル分率は、該発泡粒子中のP3HAの架橋度を示す指標である。本開示において、P3HA系発泡粒子全体が示すゲル分率は、30~80重量%であり、好ましくは40~79重量%、より好ましくは50~78重量%である。ゲル分率が30重量%未満では、発泡粒子から発泡成形体に型内発泡成形することが不可能であったり、また、成形可能であっても、発泡成形体に型内発泡成形する時に採用できる成形加工条件の幅が狭くなる。一方、ゲル分率が80重量%を超えると、1回の発泡だけでは見掛け密度の低い発泡粒子を得ることが難しくなる。P3HA系発泡粒子のゲル分率は、特に、後述する架橋剤の種類やその使用量等によって制御することができる。
【0051】
P3HA系発泡粒子全体のゲル分率の測定方法は次の通りである。100mlのフラスコに、0.5gの発泡粒子と50mlのクロロホルムを入れ、大気圧下、62℃で8時間加熱還流した後、得られた加熱処理物を100メッシュの金網を有する吸引濾過装置を用いて濾過処理する。得られた金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥する。この際、得られた乾燥物重量Wgw(g)を測定する。ゲル分率は、Wgw/0.5×100(重量%)として算出される。
【0052】
本開示では、更に、P3HA系発泡粒子の内部のゲル分率と、該P3HA系発泡粒子の外部のゲル分率の差が、25重量%以下であり、好ましくは15重量%以下であり、より好ましくは10重量%以下であり、さらに好ましくは5重量%以下である。このように発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が小さくなるように制御することによって、発泡粒子を多段発泡や型内発泡成形に付した時に、発泡粒子内で膨張ムラが少なくなり、結果、製造される発泡成形体において色ムラの発生を抑制することができる。
【0053】
ここで、発泡粒子の内部とは、発泡粒子1粒の重量の半分の重量になるように発泡粒子の中心部を直方体に切り出した部分と定義される。また、発泡粒子の外部とは、発泡粒子の表層部のことを指し、前述した内部を除いた部分を指す。
【0054】
P3HA系発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差の下限値は0重量%以上であってもよいし、1重量%以上であってもよい。P3HA系発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差は、特に、後述する架橋剤の種類によって制御することができる。
【0055】
P3HA系発泡粒子の内部又は外部のゲル分率を測定するにあたっては、P3HA系発泡粒子を内部と外部に分離した後、内部と外部それぞれについて上述のゲル分率の測定方法を適用すればよい。
【0056】
P3HA系発泡粒子の1粒当たりの重量は、0.3~10mgが好ましく、より好ましくは0.4~7.5mgであり、更に好ましくは0.5~5mgである。1粒当たりの重量が0.3mg未満では、P3HA系組成物から成る樹脂粒子を高い生産性で安定して製造することが難しくなる傾向があるため、得られるP3HA系発泡粒子が不均一となる傾向がある。一方、1粒当たりの重量が10mgを超えると、P3HA系発泡成形体の薄肉化が難しくなる傾向がある。
【0057】
P3HA系発泡粒子の形状が円柱状である場合、前記発泡粒子の長さ/直径は0.5~2.5が好ましく、より好ましくは0.7~1.5であり、更に好ましくは0.8~1.2である。長さ/直径が0.5未満では、発泡成形体の表面性が悪くなる傾向がある。長さ/直径が2.5を超えると、型内発泡成形時の充填性が悪くなる傾向がある。
【0058】
P3HA系発泡粒子の見掛け密度は、特に限定されないが、20~150g/Lが好ましく、より好ましくは23~140g/L、更に好ましくは25~130g/Lである。1回の発泡だけでは所望の見掛け密度のP3HA系発泡粒子が得られない場合、1回発泡した発泡粒子を、2回目以降の発泡工程に付してもよい。なお、P3HA系発泡粒子の見掛け密度は、エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーに重量Wd(g)の発泡粒子群を、金網等を使用して沈め、エタノール水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積をVd(L)とする。発泡粒子の見掛け密度は、Wd/Vd(g/L)である。
【0059】
P3HA系発泡粒子の独立気泡率は、特に限定されないが、88%以上が好ましく、より好ましくは90%以上、更に好ましくは93%以上である。独立気泡率が88%未満では、得られる発泡成形体の成形収縮率が大きくなる傾向がある。なお、P3HA系発泡粒子の独立気泡率の測定方法は次の通りである。P3HA系発泡粒子に対して、ASTM D2856-87の手順C(PROSEDURE C)に記載の方法に準拠して、空気比較式比重計(東京サイエンス社製モデル1000)を用いて、体積Vc(cm)を測定する。次に、Vcを測定後の発泡粒子の全量を、エタノールの入ったメスシリンダー中に沈め、メスシリンダーの水位上昇分(水没法)から、発泡粒子の見掛け上の体積Va(cm)を求める。発泡粒子の独立気泡率は、100-(Va-Vc)×100/Va(%)である。
【0060】
P3HA系発泡粒子の平均気泡径は、特に限定されないが、50~500μmが好ましく、より好ましくは100~400μmである。なお、P3HA系発泡粒子の平均気泡径の測定方法は次の通りである。発泡粒子を、カミソリ(フェザー社製ハイステンレス両刃)を用いて、該発泡粒子の中央で切断する。該切断面を、光学顕微鏡(キーエンス社製VHX-100)を用いて、倍率50倍にて観察して得られた画像において、該発泡粒子のほぼ中心を通る直線を引き、該直線が貫通している気泡数n、および、該直線と該発泡粒子表面との交点から定まる発泡粒子径L(μm)を読み取る。発泡粒子の平均気泡径は、L/n(μm)である。
【0061】
P3HA系発泡粒子の製造方法は特に限定されないが、例えば以下に説明する方法を適用することができる。例えば、P3HA系組成物から成る樹脂粒子、水、分散剤、分散助剤および架橋剤と、必要に応じて架橋助剤や可塑剤とを攪拌下で耐圧容器内に仕込み、これらを十分に分散させた後、発泡剤を耐圧容器内に導入する。その後、該樹脂粒子に発泡剤を含浸および架橋剤を含浸、反応させるために、必要に応じて、一定の温度で一定時間保持する。更に、該樹脂粒子に対する発泡剤の含浸並びに架橋剤の含浸および反応させながら、耐圧容器内容物を該樹脂粒子の軟化温度以上に加熱した後、必要に応じて、発泡させる温度付近で一定時間保持した後、耐圧容器の一端を解放し、該樹脂粒子と水等の内容物を耐圧容器内の圧力よりも低圧の雰囲気下に放出して該樹脂粒子を発泡させることにより、P3HA系発泡粒子が得られる(以下、この一連の操作を除圧発泡と称する場合がある)。なお、低圧の雰囲気下に放出する際の耐圧容器内の温度を発泡温度とし、低圧の雰囲気下に放出する際の耐圧容器内の圧力を発泡圧力とする。
【0062】
前記水としては、P3HA系組成物から成る樹脂粒子、分散剤、分散助剤、架橋剤、発泡剤等を均一に分散できるものであればよく、特に限定されない。例えば、RO水(逆浸透膜法により精製された水)、蒸留水、脱イオン水(イオン交換樹脂により精製された水)等の純水および超純水等を用いることができる。水の使用量は、特に限定されないが、P3HA系樹脂組成物から成る樹脂粒子100重量部に対して、100~1000重量部が好ましい。
【0063】
前記分散剤としては、例えば、第三リン酸カルシウム、第三リン酸マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、カオリン、タルク、クレイ、酸化アルミニウム、酸化チタン、水酸化アルミニウム等の無機物が挙げられる。分散剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA系樹脂組から成る樹脂粒子100重量部に対して、0.1~3.0重量部が好ましい。
【0064】
前記分散助剤としては、例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ソーダ、α-オレフィンスルホン酸ソーダ、ノルマルパラフィンスルホン酸ソーダ等のアニオン界面活性剤が挙げられる。分散助剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA系樹脂組から成る樹脂粒子100重量部に対して、0.001~0.5重量部が好ましく、より好ましくは0.01~0.2重量部である。前記分散剤と該分散助剤とは、併用することが好ましい。
【0065】
前記架橋剤としては、例えば、有機過酸化物が挙げられる。有機過酸化物は、溶融混練によりP3HAと混合して反応させる必要がなく、上述したように樹脂粒子を作製した後に該樹脂粒子に含浸、反応させることができるため、プロセス上好ましい架橋剤である。架橋剤として有機過酸化物を使用した場合、P3HAの分子鎖同士が直接(架橋剤に由来する構造を介することなく)結合することで架橋構造が形成される。
【0066】
発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が小さくなるように制御するため、架橋剤は、樹脂粒子の軟化温度付近で架橋反応が進行すること、P3HAとの相溶性が良好であること、樹脂粒子の内部まで含浸しやすいこと、といった特性を有することが望ましい。この観点から、架橋剤は、1時間半減期温度が114~124℃であり、カーボネート基を有し、かつ、常温で液体である有機過酸化物が好ましい。中でも、前記1時間半減期温度を満足し得ることから、カーボネート基を1つ有する有機過酸化物が好ましい。具体的には、t-ブチルパーオキシ-2-エチルへキシルモノカーボネート(1時間半減期温度:119℃)、t-ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度:118℃)、t-アミルパーオキシ-2-エチルへキシルモノカーボネート(1時間半減期温度:117℃)、t-アミルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(1時間半減期温度:115℃)等が挙げられる。以上のような有機過酸化物の存在下で樹脂粒子を架橋および発泡させて発泡粒子とすることによって、発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差を小さく制御でき、結果、該発泡粒子から製造される発泡成形体において色ムラの発生を抑制することができる。
【0067】
架橋剤の使用量は、特に限定されないが、P3HA系樹脂組成物から成る樹脂粒子100重量部に対して、1.2~5重量部が好ましく、より好ましくは1.3~4重量部、更に好ましくは1.4~3.5重量部であり、特に好ましくは1.5~3重量部である。架橋剤の使用量が1.2重量部未満では、P3HA系発泡粒子全体が示すゲル分率が十分に高くならず、発泡粒子から発泡成形体に型内発泡成形することが不可能であったり、また、成形可能であっても、発泡成形体に型内発泡成形する時に採用できる成形加工条件の幅が狭くなる。一方、架橋剤の使用量が5重量部を超えると、添加しただけの効果を得られるものでもなく、経済的に無駄となる傾向がある。なお、適切な量の架橋剤を使用することで、P3HA系発泡粒子中のP3HAは、架橋構造を有するP3HAとなり、P3HA系発泡粒子全体のゲル分率の要件を満足することができる。架橋剤の使用量はP3HA系発泡粒子全体のゲル分率と相関関係があり、当該ゲル分率の値に大きく影響するため、得られるゲル分率の値を考慮して架橋剤の使用量を厳密に設定することが望ましい。
【0068】
前記架橋助剤としては、例えば、分子内に少なくとも1個の不飽和結合を有する化合物が挙げられる。中でも、特にアリルエステル、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル、ジビニル化合物等が好ましい。架橋助剤の使用量は特に限定されないが、P3HA系樹脂組から成る樹脂粒子100重量部に対して、0.01~3重量部が好ましく、より好ましくは0.03~1.5重量部、さらに好ましくは0.05~1重量部である。架橋助剤の使用量が0.01重量部未満では、架橋助剤としての効果が小さい傾向がある。
【0069】
前記可塑剤としては、例えば、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、アジピン酸エステル系化合物、ポリエーテルエステル系化合物、安息香酸エステル系化合物、フタル酸エステル系化合物、イソソルバイドエステル系化合物、ポリカプロラクトン系化合物、二塩基酸エステル系化合物等が挙げられる。この中でもP3HAの可塑化効果が優れている点で、グリセリンエステル系化合物、クエン酸エステル系化合物、セバシン酸エステル系化合物、二塩基酸エステル系化合物が好ましい。グリセリンエステル系化合物としては、グリセリンジアセトモノラウレート等が挙げられる。クエン酸エステル系化合物としては、アセチルクエン酸トリブチル等が挙げられる。セバシン酸エステル系化合物としては、セバシン酸ジブチル等が挙げられる。二塩基酸エステル系化合物としては、ベンジルメチルジエチレングリコールアジペート等が挙げられる。可塑剤の使用量は特に限定されないが、P3HA系樹脂組から成る樹脂粒子100重量部に対して、1~20重量部が好ましく、より好ましくは2~15重量部、さらに好ましくは3~10重量部である。また、可塑剤は、1種のみならず2種以上混合してもよく、目的に応じて、混合比率を適宜調整することができる。
【0070】
前記発泡剤としては、二酸化炭素、窒素、空気等の無機ガス;プロパン、ノルマルブタン、イソブタン、ノルマルペンタン、イソペンタン、ネオペンタン等の炭素数3~5の飽和炭化水素;ジメチルエーテル、ジエチルエーテル、およびメチルエチルエーテル等のエーテル;モノクロルメタン、ジクロロメタン、ジクロロジフルオロエタン等のハロゲン化炭化水素;水等が挙げられ、これらの群より選ばれる少なくとも1種を用いることができる。中でも、環境負荷や発泡力の観点から二酸化炭素を用いることが好ましい。発泡剤の添加量は、特に限定されないが、P3HA系組成物から成る樹脂粒子100重量部に対して、2~10000重量部が好ましく、5~5000重量部がより好ましく、10~1000重量部が更に好ましい。発泡剤の添加量が2重量部未満であると、見掛け密度の低い発泡粒子が得られ難い傾向がある。一方、発泡剤の添加量が10000重量部を超えると、添加しただけの効果を得られるものでもなく、経済的に無駄となる傾向がある。
【0071】
前記除圧発泡において、P3HA系組成物から成る樹脂粒子に架橋剤および必要に応じて架橋助剤を含浸、反応させる際、架橋効率を上げるために耐圧容器内の酸素濃度および水の溶存酸素量を低くすることが好ましい。その方法としては、二酸化炭素や窒素等の無機ガスで置換したり、真空引きすることが挙げられる。
【0072】
前記除圧発泡において、所望の発泡温度まで昇温する際の速度(以下、昇温速度と称する場合がある)としては1~3℃/分が好ましく、1.5~3℃/分がより好ましい。昇温速度が1℃/分未満では、生産性が低い傾向がある。一方、昇温速度が3℃/分を超えると、昇温時に、P3HA系組成物から成る樹脂粒子への発泡剤の含浸および架橋剤の含浸、反応が不十分となってしまう傾向がある。
【0073】
前記除圧発泡において、発泡温度は、P3HAの種類、発泡剤の種類、所望の発泡粒子の見掛け密度等によって異なるので、一概には規定できないが、発泡させる前の樹脂粒子の融点(Tmp)よりも低い温度とすることが好ましい。発泡温度は、具体的には例えば、100~140℃が好ましい。発泡温度が低すぎる(例えば100℃未満の温度とする)と、見掛け密度の低い発泡粒子が得られ難い傾向がある。一方、発泡温度が高すぎる(例えば140℃を超える温度とする)と、耐圧容器内でP3HA系組成物から成る樹脂粒子の加水分解が起こり易い傾向がある。
【0074】
前記除圧発泡において、発泡圧力は、1~10MPa(ゲージ圧)が好ましく、より好ましくは2~5MPa(ゲージ圧)である。発泡圧力が1MPa(ゲージ圧)未満では、見掛け密度の低い発泡粒子が得られ難い傾向がある。
【0075】
前記除圧発泡において、P3HA系組成物から成る樹脂粒子に発泡剤を含浸および架橋剤を含浸、反応させる時の温度は、P3HAの種類、架橋剤の種類等によって異なるので、一概には規定できないが、100~140℃が好ましい。また、該温度で保持する時間は、30~120分間が好ましく、より好ましくは45~90分間である。
【0076】
前記除圧発泡において、発泡させる温度付近で保持する時間は、特に限定されないが、30~120分間が好ましく、より好ましくは45~90分間である。保持する時間が30分間未満であると、樹脂粒子中に未反応の架橋剤が残る傾向がある。一方、120分間を超えると、P3HA系組成物から成る樹脂粒子の加水分解が起こり易い傾向がある。
【0077】
前記除圧発泡において、耐圧容器内のP3HA系組成物から成る樹脂粒子、水等の内容物を低圧雰囲気に放出する際、流量調整や、発泡倍率バラツキ低減等の目的で、直径1~5mmの開口オリフィスを通して放出することもできる。また、比較的融点の高いP3HA系組成物から成る樹脂粒子については、発泡性を向上させる目的で、前記低圧雰囲気を飽和水蒸気で満たしても良い。
【0078】
前記除圧発泡だけでは所望の見掛け密度のP3HA系発泡粒子が得られない場合がある。その場合、前記除圧発泡で得られたP3HA系発泡粒子を耐圧容器内に入れて空気、二酸化炭素等の無機ガスを含浸させる加圧処理により該P3HA系発泡粒子内の圧力(以下、発泡粒子内圧と称する場合がある)を常圧よりも高くした後、該P3HA系発泡粒子を過熱水蒸気等で加熱して更に膨張させ、所望の見掛け密度のP3HA系二段発泡粒子としても良い(以下、この一連の操作を二段発泡と称する場合がある)。
【0079】
前記二段発泡を行う際の発泡粒子内圧は、0.15~0.60MPa(絶対圧)が好ましく、より好ましくは0.20~0.50MPa(絶対圧)である。
【0080】
前記二段発泡において、P3HA系発泡粒子に無機ガスを含浸させる際の耐圧容器内の温度としては、10~90℃が好ましく、より好ましくは40~90℃である。
【0081】
前記二段発泡において、P3HA系発泡粒子を加熱する過熱水蒸気等の圧力(以下、二段発泡圧力と称する場合がある)は、用いる発泡粒子の特性、所望の見掛け密度によって異なり、一概には規定できないが、0.01~0.17MPa(ゲージ圧)が好ましく、より好ましくは0.01~0.10MPa(ゲージ圧)である。
【0082】
P3HA系二段発泡粒子は、上述のP3HA系発泡粒子の見掛け密度、独立気泡率、平均気泡径を充足することが好ましい。
【0083】
[P3HA系発泡成形体]
P3HA系発泡成形体の製造方法は特に限定されず、公知乃至慣用の方法を適用することで製造できる。例えば、次の(A)~(D)の型内発泡成形の方法等が挙げられるが、特に限定されない。
(A)P3HA系発泡粒子(上述のP3HA系二段発泡粒子を含む、以下同じ)を無機ガスで加圧処理して、該発泡粒子内に無機ガスを含浸させ、所定の発泡粒子内圧を付与した後、該発泡粒子を金型に充填し、過熱水蒸気で加熱する方法
(B)P3HA系発泡粒子を金型に充填した後、該金型内の体積を10~75%減ずるように圧縮し、過熱水蒸気で加熱する方法
(C)P3HA系発泡粒子をガス圧力で圧縮して金型に充填し、該発泡粒子の回復力を利用して、過熱水蒸気で加熱する方法
(D)特に前処理することなく、P3HA系発泡粒子を金型に充填し、過熱水蒸気で加熱する方法
【0084】
P3HA系発泡成形体の製造において、P3HA系発泡粒子を加熱する過熱水蒸気の圧力(以下、成形圧力と称する場合がある)は、用いる発泡粒子の特性等によって異なり、一概には規定できないが、0.05~0.30MPa(ゲージ圧)が好ましく、より好ましくは0.08~0.25MPa(ゲージ圧)である。
【0085】
P3HA系発泡成形体の製造方法のうち前記(A)法での無機ガスとしては、空気、窒素、酸素、二酸化炭素、ヘリウム、ネオン、アルゴン等が使用でき、これらの群より選ばれる少なくとも1種を使用できる。これらの中でも、空気または二酸化炭素が好ましい。
【0086】
P3HA系発泡成形体の製造方法のうち前記(A)法での発泡粒子内圧は0.10~0.30MPa(絶対圧)が好ましく、より好ましくは0.11~0.25MPa(絶対圧)である。
【0087】
P3HA系発泡成形体の製造方法のうち(A)法での無機ガスを発泡粒子に含浸させる際の耐圧容器内の温度としては、10~90℃が好ましく、より好ましくは40~90℃である。
【0088】
P3HA系発泡成形体は、各種用途に使用することができ、例えば、包装用緩衝材、農産箱、魚箱、自動車部材、建築材料、土木材料等の用途に用いることができる。
【実施例
【0089】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によりその技術的範囲を限定されるものではない。
【0090】
実施例および比較例で使用した物質を以下に示す。
[ポリ(3-ヒドロキシアルカノエート)]
P3HA-1:P3HB3HH(カネカ社製カネカ生分解性ポリマーPHBH X131N、モノマー比率は3HB/3HH=95/5(モル%/モル%)、融点は145℃、メルトフローレートは2g/10min)
P3HA-2:P3HB3HH(カネカ社製カネカ生分解性ポリマーPHBH X331N、モノマー比率は3HB/3HH=95/5(モル%/モル%)、融点は145℃、メルトフローレートは15g/10min)
P3HA-3:P3HB3HH(カネカ社製カネカ生分解性ポリマーPHBH X151N、モノマー比率は3HB/3HH=89/11(モル%/モル%)、融点は130℃、メルトフローレートは2g/10min)
P3HA-4:P3HB4HB(Ecomann社製EM5400、モノマー比率は3HB/4HB=86/14(モル%/モル%)、融点は131℃、メルトフローレートは1g/10min)
【0091】
[気泡調整剤]
気泡調整剤:タルク(林化成社製タルカンパウダーPK-S)
【0092】
[着色剤]
着色剤-1:黒色マスターバッチ(東京インキ社製TEP BP-BLACK1)
着色剤-2:青色マスターバッチ(東京インキ社製TEP BP-BLUE1)
【0093】
[分散剤]
分散剤:第三リン酸カルシウム(太平化学産業社製)
【0094】
[分散助剤]
分散助剤:アルキルスルホン酸ソーダ(花王社製ラテムルPS)
【0095】
[架橋剤]
架橋剤-1:t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキシルモノカーボネート(含有量 97%)(日油社製パーブチルE)
架橋剤-2:ジベンゾイルパーオキサイド(含有量 75%)(日油社製ナイパーBW)
【0096】
[架橋助剤]
架橋助剤:メタクリル酸メチル(富士フィルム和光純薬社製)
【0097】
[可塑剤]
可塑剤-1:グリセリンジアセトモノラウレート(理研ビタミン社製リケマールPL-012)
可塑剤-2:ベンジルメチルジエチレングリコールアジペート(大八化学工業社製DAIFATTY-101)
可塑剤-3:アセチルクエン酸トリブチル(旭化成ファインケム社製)
【0098】
実施例および比較例において実施した評価方法に関して以下に説明する。
【0099】
[P3HA系組成物から成る樹脂粒子の融点の測定]
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製DSC6200型)を用いて、P3HA系組成物から成る樹脂粒子を約5mg計量し、10℃/分の昇温速度にて10℃から190℃まで昇温した時に得られるDSC曲線において、最も高温の融解ピークの温度を融点とした(図1に例示)。
【0100】
[P3HA系組成物から成る樹脂粒子のMFRの測定]
メルトフローインデックステスター(安田精機製作所社製)を用いて、JIS K7210に準じて、荷重5kg、測定温度は、「P3HA系組成物から成る樹脂粒子の融点の測定」で得られるDSC曲線から読み取った融解終了温度+1~10℃の条件で測定した。
【0101】
[P3HA系発泡粒子全体のゲル分率の測定]
100mlのフラスコに、0.5gのP3HA系発泡粒子と50mlのクロロホルムを入れ、大気圧下、62℃で8時間加熱還流した後、得られた加熱処理物を100メッシュの金網を有する吸引濾過装置を用いて濾過処理した。得られた金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥した。この際、得られた乾燥物重量Wgw(g)を測定した。ゲル分率は、Wgw/0.5×100(重量%)より求めた。
【0102】
[P3HA系発泡粒子を内部と外部に分離する手法]
発泡粒子をカミソリ(フェザー社製ハイステンレス両刃)で、中心部が直方体となるように表層部分を6回カットした。この際、中心部の直方体の重量は発泡粒子1粒の重量の半分となるようにカットした。その直方体を発泡粒子の内部とし、その他の表層部分を発泡粒子の外部とした。
【0103】
[P3HA系発泡粒子内部のゲル分率の測定]
100mlのフラスコに、0.5gのP3HA系発泡粒子内部と50mlのクロロホルムを入れ、大気圧下、62℃で8時間加熱還流した後、得られた加熱処理物を100メッシュの金網を有する吸引濾過装置を用いて濾過処理した。得られた金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥した。この際、得られた乾燥物重量Wgi(g)を測定した。ゲル分率は、Wgi/0.5×100(重量%)より求めた。
【0104】
[P3HA系発泡粒子外部のゲル分率の測定]
100mlのフラスコに、0.5gのP3HA系発泡粒子外部と50mlのクロロホルムを入れ、大気圧下、62℃で8時間加熱還流した後、得られた加熱処理物を100メッシュの金網を有する吸引濾過装置を用いて濾過処理した。得られた金網上の濾過処理物を、80℃のオーブン中で真空条件下にて8時間乾燥した。この際、得られた乾燥物重量Wgo(g)を測定した。ゲル分率は、Wgo/0.5×100(重量%)より求めた。
【0105】
[P3HA系組成物から成る樹脂粒子またはP3HA系発泡粒子の1粒当たりの重量の測定]
P3HA系組成物から成る樹脂粒子またはP3HA系発泡粒子を100粒準備し、重量Wp(mg)を測定した。1粒当たりの重量は、Wp/100(mg)より求めた。
【0106】
[P3HA系組成物から成る樹脂粒子またはP3HA系発泡粒子の長さ/直径の測定]
P3HA系組成物から成る樹脂粒子またはP3HA系発泡粒子の長さと直径をデジタルノギス(ミツトヨ社製)で測定し、長さ/直径を求めた。長さは押出機のノズルから吐出されたMD方向である。
【0107】
[P3HA系発泡粒子またはP3HA系二段発泡粒子の見掛け密度の測定]
エタノールが入ったメスシリンダーを用意し、該メスシリンダーにP3HA系発泡粒子群またはP3HA系二段発泡粒子群(該発泡粒子群の重量Wd(g))を、金網等を使用して沈め、エタノール水位上昇分より読みとられる発泡粒子群の容積をVd(L)とした。該発泡粒子の見掛け密度は、Wd/Vd(g/L)より求めた。
【0108】
[P3HA系発泡粒子またはP3HA系二段発泡粒子の独立気泡率の測定]
P3HA系発泡粒子またはP3HA系二段発泡粒子に対して、ASTM D2856-87の手順C(PROSEDURE C)に記載の方法に準拠して、空気比較式比重計[東京サイエンス(株)製、モデル1000]を用いて、体積Vc(cm)を測定した。次いで、Vcを測定後の該発泡粒子の全量を、エタノールの入ったメスシリンダー中に沈め、メスシリンダーの水位上昇分(水没法)から、該発泡粒子の見掛け上の体積Va(cm)を求めた。該発泡粒子の独立気泡率は、100-(Va-Vc)×100/Va(%)より求めた。
【0109】
[P3HA系発泡粒子またはP3HA系二段発泡粒子の平均気泡径の測定]
P3HA系発泡粒子またはP3HA系二段発泡粒子を、カミソリ(フェザー社製ハイステンレス両刃)を用いて、該発泡粒子の中央で切断した。該切断面を、光学顕微鏡(キーエンス社製VHX-100)を用いて、倍率50倍にて観察して得られた画像において、該発泡粒子のほぼ中心を通る直線を引き、該直線が貫通している気泡数n、および、該直線と該発泡粒子表面との交点から定まる該発泡粒子径L(μm)を読み取った。該発泡粒子の平均気泡径は、L/n(μm)より求めた。
【0110】
[P3HA系発泡成形体の成形加工幅の評価]
P3HA系発泡粒子またはP3HA系二段発泡粒子を用いて、P3HA系発泡成形体を製造する際に用いる過熱水蒸気に関して、該成形体の製造を実現できる過熱水蒸気圧の幅を、以下の基準にて評価した。
○:成形を実現できる過熱水蒸気圧の幅が、0.05MPa(ゲージ圧)以上である。
△:成形を実現できる過熱水蒸気圧の幅が、0.05MPa(ゲージ圧)未満である。
×:成形不可であり、良好な発泡成形体が得られない。
【0111】
[P3HA系発泡成形体の色ムラの評価]
P3HA系発泡成形体の表面を目視で観察し、以下の基準にて評価した。
○:P3HA系発泡成形体の色が均一で、発泡成形体表面に見られる発泡粒子内および発泡粒子間の色にムラがほとんど無い。
×:P3HA系発泡成形体の色にムラが有り、薄い色または濃い色の部分が散見される。
【0112】
[P3HA系発泡成形体の密度の測定]
P3HA系発泡成形体の縦、横、および厚みをデジタルノギス(ミツトヨ社製)で測定し、該発泡成形体の体積を求めた。該発泡成形体の重量を該発泡成形体の体積で割った値を、発泡成形体の密度とした。
【0113】
<実施例1>
[P3HA系組成物から成る樹脂粒子の製造]
P3HAとしてP3HA-1を用い、P3HA-1が100重量部、気泡調整剤が0.1重量部となるように計量し、ドライブレンドした。ドライブレンドした混合物を、二軸押出機(東芝機械社製TEM-26SX)を用いて、シリンダー設定温度130~160℃で溶融混練し、押出機の先端に取り付けたダイスのノズルから吐出された183℃の溶融したP3HA系組成物を43℃で水冷後、切断して、1粒当たりの重量が2.0mg、かつ、長さ/直径が2.5の樹脂粒子を得た。得られた樹脂粒子は、Tmpが145℃であり、160℃で測定したMFRが2.2g/10minであった。
【0114】
[P3HA系発泡粒子の製造]
得られたP3HA系組成物から成る樹脂粒子100重量部、純水200重量部、分散剤1.0重量部、分散助剤0.1重量部、および架橋剤2重量部を、攪拌下で耐圧容器内に仕込んだ後、真空引きを行い耐圧容器内の酸素を除去した。次に、耐圧容器内に発泡剤として二酸化炭素を導入した。その後、耐圧容器内容物を129.5℃の発泡温度まで昇温した。その後、二酸化炭素を追加導入して3.3MPa(ゲージ圧)の発泡圧力まで昇圧し、該発泡温度付近、該発泡圧力付近で60分間保持した。その後、耐圧容器下部のバルブを開き、直径3.6mmの開口オリフィスを通して、耐圧容器の内容物を大気圧下に放出し、発泡粒子を得た。該発泡粒子の表面に付着した分散剤を洗浄した後、75℃で乾燥した。得られた発泡粒子全体のゲル分率は67重量%であった。また発泡粒子内部のゲル分率は65重量%、発泡粒子外部のゲル分率は67重量%であり、発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差は2重量%であった。また1粒当たりの重量が2.0mg、かつ、長さ/直径が1.0であった。その他の発泡粒子の特性を表1にまとめた。
【0115】
【表1】
【0116】
[P3HA系発泡成形体の製造]
得られた発泡粒子を80℃に加温した耐圧容器に仕込み、空気で加圧処理することで発泡粒子内圧を0.18MPa(絶対圧)とした。該発泡粒子を成形機(DAISEN社製EP-900)の縦370mm×横320mm×厚み60mmの金型内に充填した。次に、0.08~0.26MPa(ゲージ圧)の間で0.02MPa(ゲージ圧)刻みの各圧力の過熱水蒸気で発泡粒子を加熱して、各発泡成形体を得た後、75℃で乾燥した。発泡成形体に関する評価結果を表1にまとめた。発泡成形体の成形加工幅は広く、かつ得られた発泡成形体に色ムラはほとんど無かった。
【0117】
<実施例2~4、比較例1~3>
配合や発泡条件を表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表1にまとめた。なお、着色剤を配合する際には、P3HA-1および気泡調整剤と共に、着色剤をドライブレンドした。
【0118】
表1に示すように、発泡粒子全体でのゲル分率が30~80重量%であり、かつ、発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が25重量%以下である発泡粒子(実施例1~4)によると、発泡成形体の成形加工幅は広く、かつ得られた発泡成形体に色ムラはほとんど無かった。
【0119】
一方、発泡粒子全体のゲル分率が30重量%未満である発泡粒子の場合(比較例1及び2)には、発泡成形体の製造が不可能、または、発泡成形体の成形加工幅が狭かった。また、発泡粒子全体のゲル分率が30~80重量%の範囲内にあるが発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が25重量%を超える発泡粒子の場合(比較例3)には、発泡成形体の成形加工幅は広いものの、得られた発泡成形体に色ムラが有った。
【0120】
<実施例5~8>
配合や発泡条件を表2に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、樹脂粒子、発泡粒子および発泡成形体を作製し、実施例1と同様の評価を実施した。結果を表2にまとめた。なお、着色剤を配合する際には、P3HA-1および気泡調整剤と共に、着色剤をドライブレンドした。また、架橋助剤を配合する際には、樹脂粒子、純水、分散剤、分散助剤、および架橋剤と共に、架橋助剤を耐圧容器内に仕込んだ。いずれの実施例でも、発泡粒子全体でのゲル分率が30~80重量%の範囲にあり、かつ、発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が25重量%以下であり、発泡成形体の成形加工幅は広く、かつ得られた発泡成形体に色ムラはほとんど無かった。
【0121】
【表2】
【0122】
<実施例9~11>
[P3HA系組成物から成る樹脂粒子の製造]
P3HAとしてP3HA-1を用い、P3HA-1が100重量部、気泡調整剤が0.1重量部、着色剤-1が1重量部となるように計量し、ドライブレンドした。ドライブレンドした混合物を、二軸押出機(東芝機械社製TEM-26SX)を用いて、シリンダー設定温度130~160℃で溶融混練し、押出機の先端に取り付けたダイスのノズルから吐出された180℃の溶融したP3HA系組成物を43℃で水冷後、切断して、1粒当たりの重量が2.0mg、かつ、長さ/直径が2.5の樹脂粒子を得た。この際、押出機に液体添加ポンプ(日機装社製)を接続し、可塑剤を5重量部添加した。配合を表2にまとめた。
【0123】
得られた樹脂粒子を用いたこと以外は実施例1と同様にして、発泡粒子および発泡成形体を作製した。実施例1と同様の評価を実施し、結果を表2にまとめた。いずれの実施例でも、発泡粒子全体でのゲル分率が30~80重量%の範囲にあり、かつ、発泡粒子の内部と外部のゲル分率の差が25重量%以下であり、発泡成形体の成形加工幅は広く、かつ得られた発泡成形体に色ムラはほとんど無かった。
【0124】
<実施例12>
[P3HA系発泡成形体の製造]
実施例3で得られた発泡粒子を、空気で加圧処理せずに、成形機(DAISEN社製EP-900)の縦370mm×横320mm×厚み84mmの金型内に充填した後、厚み方向に24mm圧縮した。次いで、0.08~0.26MPa(ゲージ圧)の間で0.02MPa(ゲージ圧)刻みの各圧力の過熱水蒸気で発泡粒子を加熱して、各発泡成形体を得た後、75℃で乾燥した。発泡成形体に関する評価結果を表3にまとめた。発泡成形体の成形加工幅は広く、かつ得られた発泡成形体に色ムラはほとんど無かった。
【0125】
【表3】
【0126】
<実施例13>
[P3HA系二段発泡粒子および発泡成形体の製造]
実施例3で得られた発泡粒子を80℃に加温した耐圧容器に仕込み、空気で加圧処理することで発泡粒子内圧を0.30MPa(絶対圧)とした。その後、0.04MPa(ゲージ圧)の過熱水蒸気で加熱して、二段発泡粒子を得た後、75℃で乾燥した。得られた二段発泡粒子の見掛け密度は37g/Lであった。
【0127】
該二段発泡粒子を用い、実施例1と同様にして、発泡成形体を作製した。実施例1と同様の評価を実施し、結果を表3にまとめた。発泡成形体の成形加工幅は広く、かつ得られた発泡成形体に色ムラはほとんど無かった。
【0128】
<参考例>
発泡剤である二酸化炭素を使用しない以外は実施例1と同様にして、129.5℃の発泡温度、0.5MPa(ゲージ圧)の発泡圧力で除圧発泡を実施した。除圧発泡後の樹脂粒子は、全体のゲル分率が65重量%であったが、該樹脂粒子は発泡しておらず、見掛け密度は1202g/Lであった。
【0129】
以上のように、本発明のP3HA系発泡粒子によると、発泡成形体の成形加工幅は広く、かつ得られた発泡成形体に色ムラはほとんど無いことが確認された。
図1