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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】アルミニウム合金製部品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B22F 10/20 20210101AFI20240731BHJP
   B22F 1/00 20220101ALI20240731BHJP
   B22F 10/64 20210101ALI20240731BHJP
   B23K 26/342 20140101ALI20240731BHJP
   B33Y 10/00 20150101ALI20240731BHJP
   B33Y 70/00 20200101ALI20240731BHJP
   B33Y 80/00 20150101ALI20240731BHJP
   C22C 21/00 20060101ALI20240731BHJP
   B22F 3/14 20060101ALN20240731BHJP
   B22F 12/13 20210101ALN20240731BHJP
【FI】
B22F10/20
B22F1/00 N
B22F10/64
B23K26/342
B33Y10/00
B33Y70/00
B33Y80/00
C22C21/00 N
B22F3/14 101B
B22F12/13
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021543270
(86)(22)【出願日】2020-01-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-02
(86)【国際出願番号】 FR2020050108
(87)【国際公開番号】W WO2020095009
(87)【国際公開日】2020-05-14
【審査請求日】2022-12-09
(31)【優先権主張番号】1900598
(32)【優先日】2019-01-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(31)【優先権主張番号】1908684
(32)【優先日】2019-07-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】519367223
【氏名又は名称】シーテック コンステリウム テクノロジー センター
【氏名又は名称原語表記】C-TEC CONSTELLIUM TECHNOLOGY CENTER
(74)【代理人】
【識別番号】100080447
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 恵一
(72)【発明者】
【氏名】シェアブ,ベシール
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-017637(JP,A)
【文献】国際公開第2018/206876(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第107801404(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F 1/00,3/14,10/20,10/64,12/13
B23K 26/342
B33Y 10/00,70/00,80/00
C22C 21/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ね合わされた連続的な金属層(20・・・20)の形成を含む、部品(20)の製造方法であって、各層が、溶加材(15、25)の堆積によって形成され、前記溶加材が、エネルギー供給を受けて溶融しそれから凝固することによって前記層となり、該方法が、溶加材(15、25)が以下の合金元素(重量%)、
- Zrが、0.5%~2.5%、
- Feが、0%~3%、
任意には、Siが、0.3%以下、
任意には、Cuが、0.5%以下、
任意には、Mgが、0.2%以下、
Cr、V、Ti、Mn、Mo、W、Nb、Ta、Sc、Ni、Zn、Hf、Nd、Ce、Co、La、Ag、Li、Y、Yb、Er、Sn、In、Sb、Sr、Ba、Bi、Ca、P、Bおよび/またはミッシュメタルの中で選択される他の合金元素が、各々0.1%未満でかつ合計0.5%未満、
- 不純物が、各々0.05%未満で合計0.15%未満、
残りはアルミニウム、
からなるアルミニウム合金であることを特徴とする製造方法。
【請求項2】
他の合金元素のそれぞれの質量分率が、300ppm未満である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- Zrが、0.5%~2.5%、
- Feが、1.5%~2.5%
である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
- Zrが、0.5%~2.5%、
- Feが、1%未満、
である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
層(20...20)の形成後すなわち最終部品の形成後に、熱処理の適用を含む、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項6】
熱処理が、焼き戻しまたは焼きなましである、請求項に記載の方法。
【請求項7】
熱処理が、
- 400℃を超え500℃未満の温度で行われ、その場合、熱処理の継続時間が、0.1h~10hに含まれ、
- または300℃~400℃に含まれる温度で行われ、その場合、熱処理の継続時間が、0.5h~100hに含まれる、
請求項またはに記載の方法。
【請求項8】
熱処理が、350℃以上さらには400℃以上の温度で、または90~200hの継続時間で行われる、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
層の形成後すなわち最終部品の形成後、または熱処理後に、焼入れを含まない、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項10】
溶加材が粉末(15)の形態をなし、光ビーム(12)や荷電粒子ビームへのその曝露が、局所溶融とそれに続く凝固を生じさせて固体層(20・・・20)を形成する、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項11】
溶加材がフィラーワイヤー(25)に由来し、熱源(22)へのその曝露が、局所溶融とそれに続く凝固を生じさせて固体層(20・・・20)を形成する、請求項1からのいずれか一つに記載の方法。
【請求項12】
付加製造法のフィラー材として利用されることを目的とした、粉末であって、該粉末が以下の合金元素(重量%)、
- Zrが、0.5%~2.5%、
- Feが、0%~3%、
任意には、Siが、0.3%以下、
任意には、Cuが、0.5%以下、
任意には、Mgが、0.2%以下、
Cr、V、Ti、Mn、Mo、W、Nb、Ta、Sc、Ni、Zn、Hf、Nd、Ce、Co、La、Ag、Li、Y、Yb、Er、Sn、In、Sb、Sr、Ba、Bi、Ca、P、Bおよび/またはミッシュメタルの中で選択される他の合金元素が、各々0.1%未満でかつ合計0.5%未満、
- 不純物が、各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満、
残りはアルミニウム、
からなるアルミニウム合金から成ることを特徴とする粉末。
【請求項13】
コールドスプレーコンソリデーション(CSC)、レーザー金属堆積(LMD)、摩擦による付加製造(AFS)、通電焼結法(FAST)、または慣性回転摩擦溶接(IRFW)の中で選択される製造法における、請求項12に記載の粉末の利用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の技術分野は、アルミニウム合金製部品の製造方法であり、付加製造技術を実施するものである。
【背景技術】
【0002】
80年代以降、付加製造技術は発展した。これらの技術は、素材の付加によって部品を成形することにあり、このことは、素材を切削することを目ざす加工技術とは逆である。付加製造は、以前はプロトタイピングに限定されていたが、今では、金属部品も含めて工業製品を大量生産するために実用化されている。
【0003】
用語「付加製造」は、仏規格XP E67-001によると、「デジタルオブジェクトから物理オブジェクトを、素材の付加によって、層ごとに製造することを可能にする方法の全体」と定義されている。規格ASTM F2792(2012年1月)もまた、付加製造を定義している。規格ISO/ASTM 17296-1において、さまざまな付加製造方式もまた定義および記述されている。国際公開第2015/006447号において、低気孔率のアルミニウム製部品を作製するために付加製造を用いることが記述された。連続的な層の適用は一般的に、フィラー材と呼ばれる材料の塗付、ついでレーザービーム、電子ビーム、プラズマトーチまたはアークタイプのエネルギー源を用いた、フィラー材の溶融または焼結によって実現される。適用される付加製造方式がどうであろうと、付加される各層の厚みは、およそ数十ミクロンまたは数百ミクロンである。
【0004】
他のいくつかの付加製造法が利用されうる。例えば、粉末の形状をなすフィラー材の溶融または焼結を非制限的に挙げてみる。それはレーザー溶融またはレーザー焼結であることができる。米国特許出願公開第2017/0016096号明細書は、電子ビームまたはレーザービームタイプのエネルギービームへの粉末の曝露によって得られる局所溶融による部品の製造方法を記述しており、この方法はまた、“Selective Laser Melting”を示すアングロサクソン語の頭字語SLM、または“Electron Beam Melting”を示すEBMによっても示される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開第2015/006447号
【文献】米国特許出願公開第2017/0016096号明細書
【発明の概要】
【0006】
付加製造によって得られるアルミニウム部品の機械的性質は、溶加材を形成する合金、またより具体的にはその組成ならびに付加製造の実施の後に適用される熱処理に依る。
【0007】
本出願人は、溶体化処理および焼入れタイプの熱処理を実施する必要なく、付加製造法において利用されると傑出した機械的性能を有する部品を得ることを可能にする、合金の組成を決定した。さらに、利用される部品は、興味深い熱伝導特性または電気伝導特性を有する。このことは、これらの部品の適用可能性を多様化することを可能にする。
【0008】
[発明の開示]
本発明の第一の対象は、互いに重ね合わされた連続的な金属層の形成を含む、部品の製造方法であって、各層は、溶加材の堆積によって形成され、溶加材は、エネルギー供給を受けて溶融しそれから凝固することによって前記層となり、該方法は、溶加材が以下の合金元素(重量%)、
- Zr:0.5%~2.5%、第一の変形例によると好ましくは0.8~2.5%、より好ましくは1~2.5%、さらにより好ましくは1.3~2.5%、または第二の変形例によると好ましくは0.5~2%、より好ましくは0.6~1.8%、より好ましくは0.6~1.6%、より好ましくは0.7~1.5%、より好ましくは0.8~1.5%、より好ましくは0.9~1.5%、さらにより好ましくは1~1.4%、
- Fe:0%~3%、好ましくは0.5%~2.5%、第一の変形例によると好ましくは0.8~2.5%、好ましくは0.8~2%、より好ましくは0.8~1.2%、または第二の変形例によると好ましくは1.5~2.5%、好ましくは1.6~2.4%、より好ましくは1.7~2.3%、
- 場合によってはSi:0.3%以下、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下、
- 場合によってはCu:0.5%以下、好ましくは0.05~0.5%、好ましくは0.1~0.4%、
- 場合によってはMg:0.2%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%未満、
- 各々0.1%未満でかつ合計0.5%未満である他の合金元素、
- 不純物:各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満、
残りはアルミニウム、
を含むアルミニウム合金であることを特徴とする。
【0009】
他の合金元素の中で、例えばCr、V、Ti、Mn、Mo、W、Nb、Ta、Sc、Ni、Zn、Hf、Nd、Ce、Co、La、Ag、Li、Y、Yb、Er、Sn、In、Sb、Sr、Ba、Bi、Ca、P、Bおよび/またはミッシュメタルが挙げられる。
【0010】
好ましくは、本方法は、個別に選ばれるまたは技術的に実現可能な組合せにより選ばれる以下の特徴を有することができる。
- Zr:0.8~2.5%、または好ましくは1%~2.5%、またはさらに好ましくは1.2%~2.5%、またはさらに好ましくは1.3%~2.5%またはさらに好ましくは1.5%~2.5%、
- Zr:0.5~2%、より好ましくは0.6~1.8%、より好ましくは0.6~1.6%、より好ましくは0.7~1.5%、より好ましくは0.8~1.5%より好ましくは0.9~1.5%、さらにより好ましくは1~1.4%、
- Fe:0.5%~2.5%または0.5%~2%、好ましくは0.8~2.5%、好ましくは0.8~2%、より好ましくは0.8~1.2%、
- Fe:0.5%~2.5%または0.5%~2%、好ましくは1.5~2.5%、好ましくは1.6~2.4%、より好ましくは1.7~2.3%、
- Si:0.2未満また好ましくは0.1%未満、
- Si:0.01%以上さらには0.05%以上、
- Cu:0.05%~0.5%、好ましくは0.1~0.4%、
- Zr:0.5%~2.5%かつFeは1%以上、
- Zr:0.5%~2.5%かつFeは1%未満、
- 他の合金元素のそれぞれの質量分率は、500ppm、300ppm、200ppm、さらには100ppmを完全に下回る、
- 不純物のそれぞれの質量分率は、300ppm、200ppm、さらには100ppmを完全に下回る、
- 合金は、Cr、V、Mn、Ti、Moを含まないか、または500ppm、300ppm、200ppm、さらには100ppmを下回る質量分率により含む。
【0011】
一変形例によると、本発明により利用される合金は、Cuを、0.05%~0.5%、好ましくは0.1~0.4%の質量分率により含む。
【0012】
各層はとりわけ、数値モデルから定義されるパターンを描くことができる。
【0013】
本方法は、層の形成後すなわち最終部品の形成後に、少なくとも1つの熱処理の適用を含み得る。熱処理は、焼き戻しもしくは焼きなましであり得るかまたはそれを含むことができる。熱処理はまた、溶体化処理および焼入れを、たとえそれらを避けることが好まれようとも、含むこともできる。熱処理はまた、熱間等方圧加圧を含むこともできる。
【0014】
機械的性質を優先するために、熱処理は、
- 400℃を超える温度で行われることができ、その場合、熱処理の継続時間は、0.1h~10hに含まれ、
- または300℃~400℃に含まれる温度で行われることができ、その場合、熱処理の継続時間は、0.5h~100hに含まれる。
【0015】
熱伝導特性または電気伝導特性を優先するために、熱処理は、最適な熱伝導率または電気伝導率を得るように、350℃以上もしくは400℃以上の温度で、または90~200hの継続時間で行われることができる。例えば、380~470℃の温度および90~110hの継続時間である。
【0016】
有利な一実施形態によると、本方法は、層の形成後すなわち最終部品の形成後、または熱処理後に、焼入れを含まない。このように本方法は好ましくは、溶体化処理とそれに続く焼入れのステップを含まない。
【0017】
一実施形態によると、溶加材は粉末の形態をなし、光ビームや荷電粒子ビームへのその曝露が、局所溶融とそれに続く凝固を生じさせて固体層を形成する。別の実施形態によると、溶加材はフィラーワイヤーに由来し、アークへのその曝露が、局所溶融とそれに続く凝固を生じさせて固体層を形成する。
【0018】
本発明の第二の対象は、本発明の第一の対象による方法の適用後に得られる金属部品である。
【0019】
本発明の第三の対象は、付加製造法のフィラー材として利用されることを目的とした、とりわけフィラーワイヤーまたは粉末のフィラー材であって、フィラー材が以下の合金元素(重量%)、
- Zr:0.5%~2.5%、第一の変形例によると好ましくは0.8~2.5%、より好ましくは1~2.5%、さらにより好ましくは1.3~2.5%、または第二の変形例によると好ましくは0.5~2%、より好ましくは0.6~1.8%、より好ましくは0.6~1.6%、より好ましくは0.7~1.5%、より好ましくは0.8~1.5%、より好ましくは0.9~1.5%、さらにより好ましくは1~1.4%、
- Fe:0%~3%、好ましくは0.5%~2.5%、第一の変形例によると好ましくは0.8~2.5%、好ましくは0.8~2%、より好ましくは0.8~1.2%、または第二の変形例によると好ましくは1.5~2.5%、好ましくは1.6~2.4%、より好ましくは1.7~2.3%、
- 場合によってはSi:0.3%以下、好ましくは0.2%以下、より好ましくは0.1%以下、
- 場合によってはCu:0.5%以下、好ましくは0.05~0.5%、好ましくは0.1~0.4%、
- 場合によってはMg:0.2%以下、好ましくは0.1%以下、好ましくは0.05%未満、
- 各々0.1%未満でかつ合計0.5%未満である他の合金元素、
- 不純物:各々0.05%未満でかつ合計0.15%未満、
残りはアルミニウム、
を含むアルミニウム合金から成ることを特徴とする。
【0020】
フィラー材を形成するアルミニウム合金は、本発明の第一の対象との関連において記述される特徴を有することができる。
【0021】
フィラー材は、粉末の形態をしていることができる。粉末は、粉末を構成する粒子の少なくとも80%が、5μm~100μm、好ましくは5~25μm、または20~60μmの範囲における平均サイズを有するという状態であり得る。
【0022】
フィラー材がワイヤーの形態をしているとき、ワイヤーの直径はとりわけ、0.5mm~3mmに含まれることができ、また好ましくは0.5mm~2mmに含まれることができ、またさらに好ましくは1mm~2mmに含まれることができる。
【0023】
本発明の別の対象は、コールドスプレーコンソリデーション(CSC)、レーザー金属堆積(LMD)、摩擦による付加製造(AFS)、通電焼結法(FAST)、または慣性回転摩擦溶接(IRFW)の中で選択される製造法、好ましくはコールドスプレーコンソリデーション(CSC)における、上に記述されたようなまた明細書のその他において記述されるような粉末またはフィラーワイヤーの利用である。
【0024】
他の利点および特徴は、以下にリストされる図面に示される非制限例として与えられる本発明の特定実施形態の下記の説明から、よりはっきりと分かるようになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】SLMタイプの付加製造法を示す図である。
図2】本発明による付加製造法を実施して製造されるサンプルから、実施例1の実験的試験中に決定される引張特性および電気伝導特性を示している。
図3】WAAMタイプの付加製造法を示す図である。
図4】複数の実施例にしたがって利用される試験片の図である。
図5】実施例1の第2のテスト部品の図である。
図6】本発明による付加製造法を実施して製造されるサンプルから、実施例2の実験的試験中に決定される引張特性および電気伝導特性を示している。
【発明を実施するための形態】
【0026】
[特定実施形態の開示]
説明において、相反する指示がない限り、
- アルミニウム合金の呼称は、The Aluminum Associationの学術用語に従っており、
- 化学元素の含有量は、%で示され、また質量分率を示す。x%~y%の記号表記は、x%以上でありかつy%以下であることを示す。
【0027】
不純物とは、意図せずに合金中に存在する化学元素を意味する。
【0028】
図1は、レーザーによる選択的溶融タイプの付加製造法(選択的レーザー溶融またはSLM)の作動を示している。フィラー材15は、台座10の上に配置されている粉末の形態をしている。エネルギー源、この場合レーザー源11は、レーザービーム12を発する。レーザー源は、光学システム13によってフィラー材につながれ、その動きは、数値モデルMに応じて決定される。レーザービーム12は、伝播軸Zに沿って伝播し、また数値モデルに依存するパターンを描く、平面XYに沿った動きをたどる。平面は例えば、拡大軸Zに垂直である。粉末15とのレーザービーム12の相互作用は、粉末の選択的溶融とそれに続く凝固を引き起こし、結果として層20・・・20の形成をもたらす。層が一つ形成されると、該層は、溶加材の粉末15ですっかり覆われ、そして別の相が、先に作製された層に重ね合わされて形成される。一層を形成する粉末の厚みは、例えば10~200μmに含まれることができる。
【0029】
アルミニウム合金について、台座10またはトレーは、350℃まで至る温度で加熱されることができる。市場で現在入手可能な機器は一般的に、200℃までのトレーの加熱を許容する。トレーの加熱温度は、例えばおよそ50℃、100℃、150℃または200℃であることができる。トレーの加熱は一般的に、粉末床のところの水分を減らすこと、そしてまた製造中の部品の残留応力を減らすことを可能にする。粉末床のところの水分レベルは、最終部品の気孔率への直接的な影響を有するようである。実際に、粉末の水分が多いほど、最終部品の気孔率は高いようである。トレーの加熱が、加熱式の付加製造を実現するための既存の手段のうちの一つであることに注目すべきである。しかしながら本発明は、この単一の加熱手段の利用に制限されることはできないであろう。例えば赤外線ランプのような、他のすべての加熱手段が、加熱および温度調整のために本発明の範囲内で利用されることができる。このように本発明による方法は、350℃まで至る温度で実現されることができる。
【0030】
粉末は、以下の特徴のうちの少なくとも1つを有し得る。
- 5~100μm、好ましくは5~25μmまたは20~60μmの平均粒径。所定値は、粒子の少なくとも80%が、特定範囲における平均サイズを有していることを示すものである。
- 球形の形状。粉末の球形は例えば、モルフォグラニュロメーターを利用することによって決定されることができる。
- 良好な流動性。粉末の流動性は例えば、規格ASTM B213または規格ISO 4490:2018に準じて決定されることができる。規格ISO 4490:2018によると、流動時間は、好ましくは50未満である。
- 好ましくは0~5体積%、より好ましくは0~2体積%、さらにより好ましくは0~1体積%の低気孔率。気孔率はとりわけ、光学顕微鏡写真からの画像分析によってまたはヘリウムピクノメーター(規格ASTM B923を参照)によって決定されることができる。
- より大きい粒子に密着する、サテライト粒子と呼ばれる小さな粒子(粉末の平均サイズの1~20%)の量が少ないことまたはないこと(10体積%未満、好ましくは5体積%未満)。
【0031】
このような方法の実施は、40cm/hに達するさらには超えることのできる、収率が高い部品製造を可能にする。
【0032】
本出願人はまた、焼入れタイプの熱処理の適用が、温度の突然の変化が原因で、部品のゆがみを誘発する可能性のあることに気づいた。部品のゆがみは一般的に、その寸法が大きいほど、有意である。ところで、付加製造法の利点はまさに、製造後の形が最終的またはほぼ最終的である部品を得ることである。熱処理の結果生じる有意なゆがみの突発はしたがって、回避すべきものである。ほぼ最終的とは、仕上げ加工が部品上でその製造後に行われること、すなわち付加製造によって製造される部品は、仕上げ加工を除いて、その最終的な形に応じて広がることを意味する。
【0033】
先に記載されたように、本出願人は、層の形成の直後すなわち最終部品の形成後の、ゆがみを誘発するおそれのある熱処理の適用を必要とすることなく、許容される機械的性質を得ることを可能にする、フィラー材を形成する合金組成を探し求めた。とりわけ、温度の突然の変化をもたらす熱処理を回避することが重要である。本発明はこのように、とりわけ降伏応力という観点から満足のゆく機械的性質を有する部品を、付加製造によって得ることを可能にする。選択される付加製造法のタイプに応じて、フィラー材は、ワイヤーの形態をしていることもできるし粉末の形態をしていることもできる。
【0034】
本出願人は、1質量%を超える含有量を有する合金中に存在する元素の数を制限することによって、興味深い機械的性質と熱的性質との間の良好な妥協が得られることを確認した。合金中への元素の添加が、付加製造によって作製される部品の特定の機械的性質を改善することを可能にすることが一般に認められている。機械的性質とは、例えば降伏応力や破断伸びを意味する。しかしながら、合金の化学元素の添加の量が多すぎる場合、またはそれらの添加が多様すぎる場合、付加製造の結果として生ずる部品の熱伝導特性を害しかねない。このように、付加製造法における二元合金または三元合金の利用は、付加製造の分野において有望な手段となる。
【0035】
本出願人は、許容される機械的性質および熱的性質(または電気的性質)を得るように、合金中に添加される元素の数と量との間の妥協に達することが有用であると考えた。
【0036】
本出願人は、1%以上の質量分率を有するアルミニウム合金を形成する化学元素の数を1つまたは2つに制限することによって、そのような妥協が得られると考える。このように、とりわけ興味深い合金は、以下を、1%を超える質量分率により添加することによって得られることができる。
- Zrのみであって、その場合、合金は主として2つの元素(AlおよびZr)によって構成される。例えばZr:0.5%~2.5%かつFeは1%未満、
- またはZrおよびFeであって、その場合、合金は主として3つの元素(Al、ZrおよびFe)によって構成される。合金中のFeの存在は、機械的性質を改善することを可能にし、それは高温引張および低温引張による機械的性質または硬度である。例えばZr:0.5%~2.5%かつFeは1%以上。
【0037】
合金中のZrの存在は、合金の良好な加工性を付与し、加工性という用語は、アングロサクソン語の呼称「processability」に相当し、付加製造法による成形に対する合金の適性を形容するものである。このことは、付加製造によって製造された部品において、割れタイプの欠陥がほぼないこと、および低気孔率であることによって示される。本出願人は、0.5%を超えるZrの質量分率が、良好な加工性を付与することを確認した。最適なZr質量分率は、第一の変形例によると0.8~2.5%、より好ましくは1~2.5%、さらにより好ましくは1.3~2.5%に含まれることができ、または第二の変形例によると好ましくは0.5~2%、より好ましくは0.6~1.8%、より好ましくは0.6~1.6%、より好ましくは0.7~1.5%、より好ましくは0.8~1.5%、より好ましくは0.9~1.5%、さらにより好ましくは1~1.4%に含まれることができる。Zrが0.5%未満のとき、機械的性質は一般的に十分ではない。
【0038】
本出願人は、SLM法でおよびZrの存在下で、とりわけ0.5%を超えるZr含有量について、各層の凝固中に、液体中に形成される一次析出物AlZrからレーザビードの下部に形成される等軸粒を観察した。一次析出物AlZrは、生成核の役目を果たし、そこからアルミニウムの等軸粒が形成される。レーザビードの残りは、半径方向にビードの縁から中心の方へ成長する柱状粒の形状に凝固する。Zr含有量が多いほど、等軸粒の分率は高く、また柱状粒の分率は低い。等軸粒の十分な画分の存在は、凝固の終わりの割れを回避するために有益である。
【0039】
しかしながら、Zr含有量が0.5%未満のとき一次析出物AlZrの濃度はあまりに低く、このことは、層から層へ進行するエピタキシャル成長により、複数の層を貫通することができる粗大な柱状粒の形成に導く。得られる部品はこのように、凝固割れ感受性がより高い。
【0040】
割れ感受性へのZr含有量のこの影響は、SLM法のような各層の溶融
を伴う付加製造法に特有である。急速に凝固した薄帯からまたは粉末からの部品の圧密加工および押出加工を伴う急冷凝固法と呼ばれる従来の方法のような付加式でない方法の場合において、Zr含有量が0.5%未満の合金製部品は、割れなしで製造されることができる。実際に、これらの方法は、成形段階中の溶融を必要とせず、またしたがって凝固割れしない。
【0041】
本出願人はまた、0.5%以下、好ましくは0.05~0.5%、好ましくは0.1~0.4%の銅の存在が、熱処理後の機械的性質および、電気伝導率と降伏応力と間の妥協を改善することを可能にすることも確認した。
【0042】
好ましくは、Zrの質量分率は0.5%~2.5%に含まれ、第一の変形例によると好ましくは0.8%~2.5%、さらには1%~2.5%、さらには1.2%~2.5%、さらには1.3%~2.5%、さらには1.5%~2.5%、または第二の変形例によると好ましくは0.5~2%、さらには0.6~1.8%、さらには0.6~1.6%、さらには0.7~1.5%、さらには0.8~1.5%、さらには0.9~1.5%、さらには1~1.4%に含まれる。
【0043】
合金がFeを含むとき、Feの質量分率は、3%以下である。それは好ましくは0.5%~3%に含まれ、第一の変形例によると好ましくは0.8~2.5%、好ましくは0.8~2%、より好ましくは0.8~1.2%、または第二の変形例によると好ましくは1.5~2.5%、好ましくは1.6~2.4%、より好ましくは1.7~2.3%に含まれる。ZrとFeとの組合せは、先に言及されたように、また実験的試験によって確証されるように、とりわけ有利である。
【0044】
合金はまた、Cr、V、Ti、Mn、Mo、W、Nb、Ta、Sc、Ni、Zn、Hf、Nd、Ce、Co、La、Ag、Li、Y、Yb、Er、Sn、In、Sb、Sr、Ba、Bi、Ca、P、Bおよび/またはミッシュメタルのような他の合金元素を、各々0.1%を完全に下回り、好ましくは500ppm未満、また好ましくは300ppm未満、または200ppm未満、または100ppm未満の質量分率により含むこともできる。しかしながら、これらの合金元素のうちのいくつか、とりわけCr、V、TiおよびMoは、伝導率を低下させる。Cuは、熱伝導率および/または電気伝導率に関して有害度がより低いとみなされる。
【0045】
溶体化処理-焼入れ-焼き戻しの処理がない場合でのMgの添加は、機械的性質への有意な影響なく電気伝導率または熱伝導率を低下させるかもしれない。それに、SLMおよびアトマイジング法の際に蒸発するその傾向が、本発明によりテストされる合金のような液相線の高い合金について特に、付け加えられる。このように、一変形例によると、本発明により利用される合金は、Mgを含まないか、さもなければ不純物の量にしたがって、すなわち0.05%未満を含む。
【0046】
合金がY、Yb、Er、Sn、In、Sbのような他の合金元素を含むとき、それらは好ましくは500ppmを完全に下回る質量分率、さらには300ppmを完全に下回る質量分率、さらには200ppmもしくは100ppmを完全に下回る質量分率により存在する。
【0047】
本発明による合金は好ましくは、0.2%を超える量のSiおよびMgの同時の添加がないので、AA6xxxタイプの合金ではないことに注目すべきである。
【0048】
例として、本発明により利用されるアルミニウム合金は、以下を含み得る。
- Zrが1.52%、Feが213ppm、Siが183ppm、不純物が各々0.05%未満で不純物の累積が0.15%未満、
- Zrが1.23%、Feが0.94%、不純物が各々0.05%未満でその累積が0.15%未満、
- Zrが.81%、Feが1.83%、不純物が各々0.05%未満でその累積が0.15%未満、または
- Zrが1.39%、Cuが0.32%、不純物が各々0.05%未満でその累積が0.15%未満。
【実施例
【0049】
[実施例1]
第一の試験が、合金1を利用して行われ、ICPによって測定されるその質量組成は、Zrを1.52%、Feを213ppm、Siを183ppm、不純物を各々0.05%未満で不純物の累積が0.15%未満含んでいた。
【0050】
テスト部品は、EOS290 SLM(納入業者EOS)タイプの機器を利用して、SLMによって作製された。この機器は、部品が上で作製されるトレーを、およそ200℃の温度まで加熱することを可能にする。試験はおよそ200℃に加熱されたトレーを用いて行われたが、補足の試験は、より低いトレーの温度、例えば25℃、50℃、100℃または150℃での本発明による合金の良好な加工性を示した。
【0051】
レーザーの出力は370Wであった。スキャン速度は1400mm/sに等しかった。用語「散乱ベクトル」によって一般に示される、スキャンの2つの隣接するライン間の差は、0.11mmであった。層の厚みは60μmであった。
【0052】
利用された粉末は、40μmのメジアン径を伴う、主として3μm~100μmに含まれる粒径、16μmの10%フラクタイルおよび79μmの90%フラクタイルを有していた。
【0053】
第一のテスト部品が、平面(X-Y)においてベースを形成する組立トレーに対して垂直(Z方向)の中実円柱の形に作製された。円柱は、11mmの直径と46mmの高さとを有していた。第二のテスト部品が、12(X方向)×45(Y方向)×46(Z方向)mmの寸法の平行6面体の形状を成して、作製された(図5を参照)。全ての部品が、300℃で4時間の、SLM製造後の応力除去処理を受けた。
【0054】
いくつかの第一の部品は、350℃、400℃または450℃での製造後の熱処理を受け、処理継続時間は、1h~104hに含まれた。第一の部品の全て(製造後の熱処理を伴う部品および伴わない部品)は、加工されて、以下の特徴をmmで有する円筒形の引張試験片を得た(表1および図4を参照)。
【0055】
図4および表1において、φは、試験片の中心部分の直径を示し、Mは試験片の2つの端部の幅を示し、LTは試験片の全体の長さを示し、Rは試験片の中心部分と端部との間の曲率半径を示し、Lcは試験片の中心部分の長さを示し、そしてFは試験片の2つの端部の長さを示している。
【0056】
【表1】
【0057】
これらの円筒形の試験片は、規格NF EN ISO 6892-1(2009-10)に準じて室温で引張試験が行われた。
【0058】
いくつかの第二のテスト部品は、第一の部品との関連において記述されたような、製造後の熱処理を受けた。第二のテスト部品は、電気伝導率が熱伝導率に類似した仕方で変化するという事実に基づきながら、電気伝導率試験を受けた。ウィーデマン・フランツの法則による、熱伝導率と電気伝導率の線形従属関係は、刊行物Hatch「Aluminium properties and physical metallurgy」ASM Metals Park,OH,1988において有効と認められている。第二のテスト部品は、粗度180の研磨紙を使って伝導率測定のために45mm×46mmの各面の上に表面研磨を受けた。電気伝導率の測定は、60kHzでのFoerster Sigmatest 2.069タイプの測定器を利用して、研磨された面上で実行された。
【0059】
以下の表2は、第一のテスト部品のそれぞれについて、熱処理温度(℃)、熱処理の継続時間、0.2%降伏応力Rp0.2(MPa)、引張強さ(Rm)、破断伸びA(%)、ならびに電気伝導率(MS×m-1)を示している。引張特性(降伏応力、引張強さ、および破断伸び)は、第一のテスト部品から、製造方向Zに沿って決定され、一方で電気的性質(電気伝導率)は、第二のテスト部品で決定された。以下の表2において、継続時間0hは、熱処理のないことに相当する。
【0060】
【表2】
【0061】
熱処理の適用無しでも、機械的性質は十分であると判断される。しかしながら、適切な熱処理の適用は、降伏応力、引張強さ、ならびに電気伝導率を改善することを可能にする。
【0062】
熱処理の有益な効果が、ナノメートルサイズの析出物AlZrの形成に割り当てられ、このことが、降伏応力と伝導率との同時の上昇に導く。熱処理がない場合、Zr画分は、固溶体において閉じ込められたままである。
【0063】
注目すべき局面は、熱処理が、電気伝導率を非常に有意に上昇させることができることであり、電気伝導率は、純アルミニウムの電気伝導率(34MS/mに近似)に近づきながら、同時に純アルミニウムの機械的性質と比較した機械的性質もまた向上させる。
【0064】
良好な機械的性質を得ることを可能にするパラメータは、以下のとおりである。
- 400℃で、継続時間は1h~10hに含まれる、
- 350℃で、継続時間は10h~100hに含まれるが、10h~20hに含まれる継続時間で十分であるらしいことが分かっている。
【0065】
したがって、熱処理が適用されるとき、その温度が500℃未満であるほうがよい。最適な機械的性質の獲得が優先される場合、熱処理の温度は、好ましくは450℃未満であり、例えば300℃~420℃に含まれる。
【0066】
電気伝導率または熱伝導率が優先される場合、熱処理の温度は、好ましくは350℃以上さらには400℃以上であり、100hを超え得る継続時間、例えば90~200hの継続時間を伴う。
【0067】
熱処理が400℃で行われるとき、処理の継続時間に応じた、引張りの機械的性質(降伏応力、引張強さ)の変化が、まず増大し、ついで減少することが観察される。熱処理の最適な継続時間は、引張りの機械的性質を最適化することを可能にする。該継続時間は、400℃で0.1h~10hに含まれる。
【0068】
熱処理は、好ましくは焼き戻しまたは焼きなましである。
【0069】
図2は、熱伝導特性(横座標軸であり、MS/mで表される熱伝導率を示している)に応じた、引張特性(縦座標軸であり、MPaで表される降伏応力Rp0.2)を示している。熱伝導特性が電気伝導特性を示すと推測されることが想起される。図2で、パーセンテージは、破断伸びを示す。矢印で、電気伝導率の観点からと同時に降伏応力の観点からの、熱処理の有益な効果を示した。図2の記号説明において、用語「brute(未処理)」は、熱処理のないことを示す。
【0070】
サンプルの相対密度は99.5%を超えており、このことは0.5%を下回る気孔率を示し、該気孔率は、研磨されたサンプルの断面上での画像分析によって評価された。
【0071】
第二の試験は、以下を利用して行われた。
- 上に記述されたような合金1、
- 合金2であって、ICPによって測定されるその質量組成は、Al、Zrを1.78%、Feを1.04%、Siを1812ppm、Cuを503ppm、不純物を各々0.05%未満で不純物の累積が0.15%未満含んでいた。
【0072】
第一の試験に関係して記述されたテスト部品に類似したテスト部品が、形成された。
【0073】
利用された粉末は、41μmのメジアン径を伴う、主として3μm~100μmに含まれる粒径、15μmの10%フラクタイルおよび82μmの90%フラクタイルを有していた。
【0074】
平行6面体部品で、規格ASTM E384に準じてビッカース硬さHv0.2ならびに電気伝導率が特徴づけられた。硬さおよび伝導率の測定は、熱処理のない場合に、ならびにさまざまな熱処理後に行われた。
【0075】
表3は、特徴づけの結果を示している。N/Aは、特徴が測定されなかったことを示している。
【0076】
【表3】
【0077】
試験は以下を確証している。
- Feの存在は、機械的性質を有意に改善する、
- 熱処理の適用は、機械的性質および電気伝導特性を改善する。
【0078】
[実施例2]
実施例1の試験に類似した第二の試験が、実施例1との関連において上に前述されたような合金2を利用することによって行われた。
【0079】
利用された粉末は、41μmのメジアン径を伴う、主として3μm~100μmに含まれる粒径、15μmの10%フラクタイルおよび82μmの90%フラクタイルを有していた。
【0080】
テスト部品は、EOS M290タイプのSLM機(納入業者EOS)を利用して、SLMによって作製された。レーザーの出力は370Wであった。スキャン速度は1250mm/sに等しかった。用語「散乱ベクトル」によって一般に示される、スキャンの2つの隣接するライン間の差は、0.111mmであった。層の厚みは60μmであった。
【0081】
実施例1についてのように、400℃または450℃で100hまでの熱処理の付加は、応力除去したままの状態と比べて、機械的強度と電気伝導率とを同時に高めることを可能にしたのであり、それは以下の表4および図6中に示されているとおりである。
【0082】
【表4】
【0083】
合金2は、実施例1の合金1と比べて、Feの添加のプラスの影響を、降伏応力Rp02および引張強さRmの上昇(電気伝導率の有意な低下なし)に示すことを可能にした。この合金2は熱処理後に、実施例1の合金1によっては達成できないRp02値とRm値とに達することを可能にし、Rp02値は、24MS/mさらには26MS/mを超える電気伝導率を維持しつつ、260MPaを超えていた。
【0084】
理論に束縛されることなく、熱間圧延によって得られる標準試験片からの加工のような従来の方法によって製造される部品において、Feは、数十μmまで及ぶサイズを伴う粗大な金属間化合物の形態で存在しているようである。反して、実施例2の合金2から選択的レーザー溶融によって製造される部品において、Feは、耐腐食性にも金属の陽極処理に対する適性にもマイナスの影響を有しないナノメートルサイズの析出物の形態で存在する。Feを主成分とするナノメートルサイズの析出物の存在はそれどころか、テスト部品の局部的でなく、側方の腐食に導くことにより、耐腐食性にプラスの影響を有するようである。
【0085】
[実施例3]
実施例2の試験に類似した第三の試験が、合金3を利用して行われ、ICPによって測定されるその質量組成は、Al、Zrを1.23%、Feを0.94%、不純物を各々0.05%未満で不純物の累積が0.15%未満含んでいた。
【0086】
利用された粉末は、37μmのメジアン径を伴う、主として3μm~100μmに含まれる粒径、15μmの10%フラクタイルおよび71μmの90%フラクタイルを有していた。
【0087】
テスト部品は、EOS M290タイプのSLM機(納入業者EOS)を利用して、SLMによって作製された。レーザーの出力は370Wであった。スキャン速度は1250mm/sに等しかった。用語「散乱ベクトル」によって一般に示される、スキャンの2つの隣接するライン間の差は、0.111mmであった。層の厚みは60μmであった。
【0088】
実施例2についてのように、400℃で100hまでの熱処理の付加は、応力除去したままの状態と比べて、機械的強度と電気伝導率とを同時に高めることを可能にしたのであり、それは以下の表5中に示されているとおりである。
【0089】
【表5】
【0090】
合金2のZr含有量と比べた合金3のZr含有量の減少(それぞれ1.78%対1.23%のZr)は、伸び値および電気伝導率値の有意な上昇に導いたのであり、またこのことは、テストされた製造後熱処理の全体について同様であった(上の表4および表5を参照)。合金3はまた、合金2のものより柔らかい製造されたままの状態を呈していた、すなわちRp02はそれぞれ133MPa対214MPaであった。
【0091】
より柔らかい、この未処理の状態は、SLM法の際の加工性という観点から有利であり、というのもこの状態は、部品の製造時の残留応力の有意な減少を可能にするからである。
【0092】
合金3および合金2の最良の機械的強度は、類似しており、またそれぞれ400℃で4hに対して400℃で1hの製造後熱処理について得られた。機械的強度のこれらの最大化条件において、合金3は、より優れた伸びと同時により優れた電気伝導率を提供する利点を有していた。
【0093】
[実施例4]
実施例2の試験に類似した第四の試験が、合金4を利用して行われ、ICPによって測定されるその質量組成は、Al、Zrを0.81%、Feを1.83%、不純物を各々0.05%未満で不純物の累積が0.15%未満含んでいた。
【0094】
利用された粉末は、38μmのメジアン径を伴う、主として3μm~100μmに含まれる粒径、15μmの10%フラクタイルおよび75μmの90%フラクタイルを有していた。
【0095】
テスト部品は、EOS M290タイプのSLM機(納入業者EOS)を利用して、SLMによって作製された。レーザーの出力は370Wであった。スキャン速度は1250mm/sに等しかった。用語「散乱ベクトル」によって一般に示される、スキャンの2つの隣接するライン間の差は、0.111mmであった。層の厚みは60μmであった。
【0096】
実施例2についてのように、400℃または450℃で100hまでの熱処理の付加は、応力除去したままの状態と比べて、機械的強度と電気伝導率とを同時に高めることを可能にしたのであり、それは以下の表6中に示されているとおりである。
【0097】
合金4は、合金1と比べて、1.83%のFeの添加に関連した、Zr含有量の減少のメリットを示すことを可能にした。
【0098】
合金4および合金1の最良の機械的強度は、400℃で4hの熱処理について得られた。機械的強度のこれらの最大化条件において、合金4は、合金1と比べて、Rp02および伸びの有意な上昇とそれに伴う電気伝導率の低下を有していたのであり、上の表2および以下の表6を参照されたい。
【0099】
【表6】
【0100】
[実施例5]
実施例2の試験に類似した第五の試験が、合金5を利用して行われ、ICPによって測定されるその質量組成は、Al、Zrを1.39%、Cuを0.32%、不純物を各々0.05%未満で不純物の累積が0.15%未満含んでいた。
【0101】
利用された粉末は、27μmのメジアン径を伴う、主として3μm~100μmに含まれる粒径、11μmの10%フラクタイルおよび54μmの90%フラクタイルを有していた。
【0102】
テスト部品は、EOS M290タイプのSLM機(納入業者EOS)を利用して、SLMによって作製された。レーザーの出力は370Wであった。スキャン速度は1250mm/sに等しかった。用語「散乱ベクトル」によって一般に示される、スキャンの2つの隣接するライン間の差は、0.111mmであった。層の厚みは60μmであった。
【0103】
実施例2についてのように、400℃または450℃で100hまでの熱処理の付加は、応力除去したままの状態と比べて、機械的強度と電気伝導率とを同時に高めることを可能にしたのであり、それは以下の表7中に示されているとおりである。
【0104】
合金5は、合金1と比べて、0.32%のCuの添加に関連した、Zr含有量の減少のメリットを示すことを可能にした。実際に、合金5は、合金1と比べてより優れた機械的強度と同時により優れた伸びを呈していたのであり、またこのことは、350℃でおよび400℃でテストされた製造後熱処理の全体について同様であった。
【0105】
合金1の最良の機械的強度は、400℃で4hの熱処理について得られた。これらの条件において、合金5は、合金1と比べて、電気伝導率の非常にわずかな低下に関連した、Rp02および伸びの有意な上昇を有していたのであり、上の表2および以下の表7を参照されたい。
【0106】
合金5は、実施例1の合金1と比べて、Zrの減少に関連したCuの添加のプラスの影響を、降伏応力Rp02および引張強さRmの上昇(電気伝導率の有意な低下なし)に示すことを可能にした。
【0107】
【表7】
【0108】
[実施例6]
追加の高温引張試験が、それぞれ実施例3中と実施例4中とに記述されている合金3と合金4とに行われた。
【0109】
実施例1中に記述されている仕方と同じように、テスト部品は、平面(X-Y)においてベースを形成する組立トレーに対して垂直(Z方向)の中実円柱の形に製造された。円柱は、11mmの直径と46mmの高さとを有していた。
【0110】
これらのテスト部品は、EOS M290タイプのSLM機(納入業者EOS)を利用して、また以下のようなセット1とセット2とによって示される異なるSLMパラメータの2つのセットに従って、SLMによって作製された。
セット1:
・レーザーの出力:370W
・スキャン速度:1250mm/s
・散乱ベクトル:0.111mm
・層の厚み:60μm。
セット2:
・レーザーの出力:370W
・スキャン速度:1307mm/s
・散乱ベクトル:0.177mm
・層の厚み:60μm。
【0111】
全ての部品が、300℃で4時間の、SLM製造後の応力除去処理を受けた。
【0112】
いくつかの部品は、400℃での製造後の熱処理を受け、処理継続時間は、1hと4hの間に含まれた(以下の表8を参照)。第一の部品の全て(製造後の熱処理を伴う部品および伴わない部品)は、加工されて、実施例1中に記述されているものと類似した円筒形の引張試験片を形成した(図4および上の表1を参照)。
【0113】
高温(200℃)での引張試験が、規格NF EN ISO 6892-1(2009-10)に準じて得られる引張試験片から行われた。これらの試験の結果は、以下の表8中にまとめられている。同じテスト条件のそれぞれについて、合金4が、合金3より優れた機械的性能(Rp0.2およびRm)を有していた。
【0114】
実施例6は、Zr含有量の減少に関連したFe含有量の増加のプラスの影響を、高温での機械的性質に示すことを可能にした(合金3の性能と合金4の性能間の比較)。
【0115】
【表8】
【0116】
一実施形態によると、方法は、熱間等方圧加圧(HIP)を含むことができる。HIP処理はとりわけ、伸び特性および疲労特性を向上させることを可能にすることができる。熱間等方圧加圧は、熱処理の前、後または代わりに行われることができる。有利には、熱間等方圧加圧は、250℃~550℃、好ましくは300℃~450℃の温度で、および500~3000バールの圧力で、0.5~50時間の継続時間の間行われる。
【0117】
場合によっては行われ得る熱処理および/または熱間等方圧加圧は、得られる製品の硬度または降伏応力および電気伝導率を上げることを特に可能にする。しかしながら一般的に、温度が高いほど、機械的強度を犠牲にして伝導率(電気伝導率または熱伝導率)がより優遇されることに注目すべきである。
【0118】
組織硬化型合金に適合した別の実施形態によると、形成された部品の溶体化処理とそれに続く焼入れおよび焼き戻し、および/または熱間等方圧加圧を行うことができる。熱間等方圧加圧はこの場合有利には、溶体化処理の代わりとなり得る。
【0119】
本発明による方法はしかしながら、溶体化処理とそれに続く焼入れの処理を好ましくは必要としないため、有利である。溶体化処理は、薄い金属間化合物または分散質の増大に関与することから、特定のケースにおいて機械的強度への不利な影響を及ぼし得る。
【0120】
一実施形態によると、本発明による方法はそのうえ任意に、加工処理、および/または化学的表面処理、電気化学的表面処理もしくは機械的表面処理、および/またはトライボ仕上げを含む。これらの処理はとりわけ、粗さを減らすおよび/または耐腐食性を向上させるおよび/または耐疲労亀裂発生を向上させるために行われ得る。
【0121】
任意に、例えば付加製造の後かつ/または熱処理の前に、部品の機械的変形を施すことが可能である。
【0122】
本方法は、SLMタイプの付加製造法に関係して記述されてはいるが、先行技術に関係して言及される、WAAMタイプの他の付加製造法に適用されることができる。図3は、そのような選択肢を示している。エネルギー源31、この場合トーチは、アーク32を形成する。この装置において、トーチ31は、溶接ロボット33によって保持される。製造されるべき部品20は、台座10の上に配置される。この実施例において、製造される部品は、台座10によって定義される平面XYに垂直に、横断軸Zに沿って広がる壁である。フィラーワイヤー35は、アーク12の影響下で、溶融して、溶接ビードを形成する。溶接ロボットは、数値モデルMによって制御される。それは位置を変えて、互いの上に積み重ねられ壁20を形成するさまざまな層20・・・20を形成するようになり、各層は溶接ビードに相当する。各層20・・・20は、数値モデルMによって定義されるパターンにしたがって、平面XYにおいて広がる。
【0123】
フィラーワイヤーの直径は、好ましくは3mm未満である。それは0.5mm~3mmに含まれることができ、また好ましくは0.5mm~2mmに、さらには1mm~2mmに含まれることができる。それは例えば1.2mmである。
【0124】
例えば、また非限定的に、他の方法がそのうえ考えられる。
- 選択的レーザー焼結(Selective Laser SinteringまたはSLS)、
- 直接金属レーザー焼結(Direct Metal Laser SinteringまたはDMLS)、
- 選択的加熱焼結(Selective Heat SinteringまたはSHS)、
- 電子ビーム溶融(Electron Beam MeltingまたはEBM)、
- レーザー溶融堆積(Laser Melting Deposition)、
- 指向性エネルギー堆積(Direct Energy DepositionまたはDED)、
- 直接金属堆積(Direct Metal DepositionまたはDMD)、
- 直接レーザー堆積(Direct Laser DepositionまたはDLD)、
- レーザー堆積技術(Laser Deposition Technology)、
- レーザー操作型ネットシェイピング(Laser Engineering Net Shaping)、
- レーザークラッディング技術(Laser Cladding Technology)、
- レーザーフリーフォーム製造技術(Laser Freeform Manufacturing TechnologyまたはLFMT)、
- レーザー金属堆積(Laser Metal DepositionまたはLMD)、
- コールドスプレーコンソリデーション(Cold Spray ConsolidationまたはCSC)、
- 摩擦による付加製造(Additive Friction StirまたはAFS)、
- 通電焼結法(Field Assisted Sintering Technology,FAST)または放電プラズマ焼結(spark plasma sintering)、または
- 慣性回転摩擦溶接(Inertia Rotary Friction WeldingまたはIRFW)。
【0125】
本発明による解決案は、特に粉末の低硬度のために、とりわけコールドスプレーコンソリデーション(いわゆる「cold spray」)法に適合されており、このことにより堆積が容易になる。部品を次に、硬化の焼きなまし(後熱処理)によって硬化することができる。
【0126】
本発明による解決案は、電気分野、電子分野、および熱交換器の分野における適用にとりわけ適合されている。
【符号の説明】
【0127】
10 台座
11 エネルギー源
12 レーザービーム
15 溶加材
20 層
31 エネルギー源
32 アーク
33 溶接ロボット
35 フィラーワイヤー
図1
図2
図3
図4
図5
図6