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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】スプリットサイクルエンジンの制御
(51)【国際特許分類】
   F02B 33/22 20060101AFI20240731BHJP
   F01N 5/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
F02B33/22 Z
F01N5/02 G
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2021550090
(86)(22)【出願日】2020-02-25
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-04-14
(86)【国際出願番号】 GB2020050448
(87)【国際公開番号】W WO2020174228
(87)【国際公開日】2020-09-03
【審査請求日】2023-02-22
(31)【優先権主張番号】1902593.1
(32)【優先日】2019-02-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】521377568
【氏名又は名称】ドルフィン エヌツー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】オーウェン ニック
(72)【発明者】
【氏名】アトキンズ アンドリュー
(72)【発明者】
【氏名】セルヴァラージ アヌープ
【審査官】小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】特開昭63-120821(JP,A)
【文献】特開平03-065216(JP,A)
【文献】特開平11-323432(JP,A)
【文献】特表2012-511664(JP,A)
【文献】特表2020-512504(JP,A)
【文献】特表2020-528516(JP,A)
【文献】実開昭59-032135(JP,U)
【文献】国際公開第2018/178624(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/020978(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0023465(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 5/02
F02B 33/06
F02M 15/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプリットサイクル内燃エンジンであって、
圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
前記燃焼シリンダからの排出流体と、クロスオーバ通路を通じて前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
(1)前記レキュペレータの材料と、(2)前記クロスオーバ通路内の前記作動流体と、の少なくとも一方の温度の表示値に基づいて前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
表示された前記温度に基づいた前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作の制御は、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるような前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作の制御、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの前記材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とするエンジン。
【請求項2】
前記レキュペレータの前記材料の前記温度の前記表示値に基づいた前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作の制御は、
表示された前記温度が前記上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータの前記材料の前記温度を下げるような前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作の制御、
を含む、
請求項1記載のエンジン。
【請求項3】
前記レキュペレータの前記材料の前記温度の前記表示値に基づいた前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作の制御は、
表示された前記温度が下位閾値を下回る場合に、前記レキュペレータの前記材料の前記温度を上げるような前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作の制御、
を含む、
請求項1または2記載のエンジン。
【請求項4】
前記レキュペレータは、
(1)前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに流体が移動する第1通路と、
(2)前記燃焼シリンダの排気口から前記排出流体が移動する第2通路と、
を含む、
請求項1乃至のいずれかに記載のエンジン。
【請求項5】
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
前記燃焼シリンダから前記レキュペレータに流れる前記排出流体により駆動するように設計されたタービン、
を含み、
前記コントローラは、
前記燃焼シリンダからの前記排出流体の温度を調節するために、表示された前記温度に基づいて前記タービンの動作を制御するように構成される、
請求項1乃至のいずれかに記載のエンジン。
【請求項6】
前記タービンは、前記圧縮シリンダに供給される入口流体を圧縮するために配置されたコンプレッサに連結される、
請求項記載のエンジン。
【請求項7】
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
前記燃焼シリンダからの前記排出流体の少なくとも一部が前記タービンを駆動することなく前記レキュペレータに流れることを可能にするように設計されたタービンバイパス通路、
を含む、
請求項または6記載のエンジン。
【請求項8】
前記コントローラは、表示された前記温度に基づいて前記タービンバイパス通路の動作を制御するように構成される、
請求項記載のエンジン。
【請求項9】
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
少なくとも一部の流体が前記レキュペレータを通って流れることを避けることができるように設計されたレキュペレータバイパス通路、
を含む、
請求項1乃至のいずれかに記載のエンジン。
【請求項10】
前記コントローラは、表示された前記温度に基づいて前記レキュペレータバイパス通路の動作を制御するように構成される、
請求項記載のエンジン。
【請求項11】
前記コントローラは、(1)前記燃焼シリンダの吸入弁、および/または、排出弁の開閉時点と、(2)前記燃焼シリンダ内に燃料を供給するタイミングと、の少なくとも一方を表示された前記温度に基づいて制御するように構成される、
請求項1乃至10のいずれかに記載のエンジン。
【請求項12】
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
前記圧縮シリンダに供給される入口流体を冷却、および/または、圧縮する中間冷却器、
を含む、
請求項1乃至11のいずれかに記載のエンジン。
【請求項13】
前記コントローラは、
(1)前記圧縮シリンダに供給される入口流体を圧縮するコンプレッサと、
(2)前記圧縮シリンダに供給される前記入口流体を冷却する中間冷却器と、
(3)前記燃焼シリンダに供給される前記作動流体の温度を調節するように設計されたクーラントシステムと、
(4)前記燃焼シリンダ用の吸入弁と、
(5)前記燃焼シリンダ用の排出弁と、
(6)前記燃焼シリンダにおける燃料噴射タイミングと、
(7)前記燃焼シリンダから前記レキュペレータに流れる前記排出流体により駆動するように設計されたタービンと、
(8)タービンバイパス通路と、
(9)レキュペレータバイパス通路と、
(10)前記圧縮シリンダの吸入口、および/または、排出口と、
の少なくとも1つの動作を表示された前記温度に基づいて制御するように構成される、
請求項1乃至のいずれかに記載のエンジン。
【請求項14】
スプリットサイクル内燃エンジンを制御する方法であって、
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
(3)前記燃焼シリンダからの排出流体と、クロスオーバ通路を通じて前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
を備え、
前記方法は、
(a)前記レキュペレータの材料と、(b)前記クロスオーバ通路内の前記作動流体と、
の少なくとも一方の温度の表示値を取得する工程と、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるように表示された前記温度に基づいて前記スプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御する工程と、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの前記材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とする方法。
【請求項15】
スプリットサイクル内燃エンジンであって、
圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
前記燃焼シリンダからの排出流体と、前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
(1)前記レキュペレータに関連する温度と、(2)前記燃焼シリンダに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値に基づいて排出弁の動作を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
前記燃焼シリンダは、前記燃焼シリンダから前記排出流体を排出する前記排出弁を有し、
表示された前記温度に基づいた前記排出弁の動作の制御は、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるような前記排出弁の動作の制御、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とするエンジン。
【請求項16】
表示された前記温度に基づいた前記排出弁の動作の制御は、
表示された前記温度が最小閾値を下回る場合に、サイクル内のある時点であって、表示された前記温度が前記最小閾値を上回る場合の前記排出弁の開口時点より早い時点で開口するような前記排出弁の動作の制御、
を含む、
請求項15記載のエンジン。
【請求項17】
前記燃焼シリンダは、前記燃焼シリンダに流入する前記作動流体の流れを制御する吸入弁を有し、
前記コントローラは、前記コントローラがより早い時点で開口するように前記排出弁を制御する場合に、前記サイクル内のある時点であって、表示された前記温度が前記最小閾値を下回る場合の前記吸入弁の開口時点より早い時点で開口するように前記吸入弁の動作を制御するように構成される、
請求項16記載のエンジン。
【請求項18】
スプリットサイクル内燃エンジンを制御する方法であって、
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
(3)前記燃焼シリンダからの排出流体と、クロスオーバ通路を通じて前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
を備え、
前記燃焼シリンダは、前記燃焼シリンダから前記排出流体を排出する排出弁を有し、
前記方法は、
(a)前記レキュペレータに関連する温度と、(b)前記燃焼シリンダに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値を取得する工程と、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるように表示された前記温度に基づいて前記排出弁の動作を制御する工程と、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とする方法。
【請求項19】
スプリットサイクル内燃エンジンであって、
圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
前記燃焼シリンダからの排出流体と、前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
少なくとも一部の流体が前記レキュペレータを通って流れることを避けることができるように選択的に動作可能なレキュペレータバイパス通路と、
(1)前記レキュペレータの材料と、(2)クロスオーバ通路内の前記作動流体と、の少なくとも一方の温度の表示値に基づいて前記レキュペレータバイパス通路の動作を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
表示された前記温度に基づいた前記レキュペレータバイパス通路の動作の制御は、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるような前記レキュペレータバイパス通路の動作の制御、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの前記材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とするエンジン。
【請求項20】
スプリットサイクル内燃エンジンであって、
圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
前記燃焼シリンダからの排出流体と、前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
前記燃焼シリンダから前記レキュペレータに流れる前記排出流体により駆動するように設計されたタービンと、
前記排出流体の少なくとも一部が前記タービンを駆動することなく前記レキュペレータに流れることを可能にするように選択的に動作可能なタービンバイパス通路と、
(1)前記レキュペレータの材料と、(2)クロスオーバ通路内の前記作動流体と、の少なくとも一方の温度の表示値に基づいて前記タービンバイパス通路の動作を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
表示された前記温度に基づいた前記タービンバイパス通路の動作の制御は、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるような前記タービンバイパス通路の動作の制御、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの前記材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とするエンジン。
【請求項21】
請求項19または20記載の前記スプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法であって、
前記方法は、
(1)前記燃焼シリンダに関連する温度と、(2)前記レキュペレータに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値を取得する工程と、
表示された前記温度に基づいてバイパス通路の使用を制御する工程と、
を含む、
ことを特徴とする方法。
【請求項22】
スプリットサイクル内燃エンジンであって、
圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
前記燃焼シリンダからの排出流体と、前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
前記燃焼シリンダから前記レキュペレータに流れる前記排出流体により駆動するように設計されたタービンと、
(1)前記燃焼シリンダに関連する温度と、(2)前記レキュペレータに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値に基づいて前記タービンの動作を制御するように構成されたコントローラと、
を備え、
表示された前記温度に基づいた前記タービンの動作の制御は、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるような前記タービンの動作の制御、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とするエンジン。
【請求項23】
スプリットサイクル内燃エンジンを制御する方法であって、
前記スプリットサイクル内燃エンジンは、
(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、
(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、
(3)前記燃焼シリンダからの排出流体と、前記圧縮シリンダから前記燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、
(4)前記燃焼シリンダから前記レキュペレータに流れる前記排出流体により駆動するように設計されたタービンと、
を備え、
前記方法は、
(a)前記燃焼シリンダに関連する温度と、(b)前記レキュペレータに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値を取得する工程と、
表示された前記温度に基づいて前記タービンの動作を制御する工程と、
を含み、
表示された前記温度に基づいた前記タービンの動作の制御は、
表示された前記温度が上位閾値を上回る場合に、前記レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するために、前記レキュペレータの温度を下げるような前記タービンの動作の制御、
を含
前記上位閾値は、前記レキュペレータの材料への材料損傷に関連する温度である、
ことを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項141821、および23のいずれかの方法を実行するようにプロセッサをプログラミングするように構成されたプログラム命令を含む、
ことを特徴とするコンピュータプログラム製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示はスプリットサイクルエンジンの分野に関する。特に、本開示の態様はスプリットサイクルエンジン内の温度制御の分野に関する。
【背景技術】
【0002】
英国特許第2565050号には、作動流体を圧縮する圧縮シリンダと作動流体を燃焼する燃焼シリンダとを有するスプリットサイクルエンジンが開示されている。同エンジンでは、作動流体がクロスオーバ通路を経て圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される。また、同エンジンは、コントローラであって、燃焼シリンダ内の燃焼のピーク温度を判定し、そのピーク燃焼温度に基づいてエンジンの動作を制御するように設計されたコントローラを備える。例えば、同コントローラは、クーラントシステムの動作と、燃焼シリンダに流体が流れるために吸入弁を開閉するタイミングと、燃料が燃焼シリンダに噴射されるサイクル内の位置と、の少なくとも1つを制御することによりエンジンの動作を制御してもよい。また、同コントローラは、ピーク燃焼温度を(例えば、選択温度範囲内の)閾値より低い温度に保つための、これらの動作を制御するように構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】英国特許第2565050号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示の態様は、エンジンに関連するその他の温度を制御すること、および/または、燃焼シリンダ内のピーク燃焼温度を制御する様々なシステムと方法とを提供すること、を目指したものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の態様は、独立請求項に記述され、任意の特徴は、従属請求項に記述されている。本発明の態様は相互に関連して提示されることもあり、ある態様の特徴が他の態様に適用されることもある。
【0006】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンであって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、クロスオーバ通路を通じて圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)(a)レキュペレータの材料と、(b)クロスオーバ通路内の作動流体と、の少なくとも一方の温度の表示値に基づいてスプリットサイクル内燃エンジンの動作を制御するように構成されたコントローラと、を備えるエンジンが開示される。より詳細に後述するとおり、レキュペレータの材料の温度の表示値は、例えば、レキュペレータに関連する動作条件から(例えば、燃焼シリンダから流出する作動流体の温度の表示値、および/または、クロスオーバ通路内の作動流体の温度の表示値に基づいて)推測されてもよく、または、例えば、レキュペレータ自体(またはレキュペレータの一部)から直接検知されてもよい。
【0007】
本開示の実施形態は、エンジンの動作に伴う加熱による材料欠陥の防止を可能にしてもよい。例えば、レキュペレータの材料は、エンジンの動作の間に高温に曝される結果として高温クリープを受けることがある。エンジンの動作を制御することにより、レキュペレータ内の温度は、レキュペレータにおける加熱による損傷の量を軽減するように制御されてもよい。
【0008】
レキュペレータの材料の温度は、レキュペレータの材料におけるピーク温度でもよい。同ピーク温度は、燃焼シリンダからレキュペレータに流入する排出作動流体の入口の箇所でレキュペレータが受ける温度でもよい。表示された温度に基づいてエンジンの動作を制御する工程は、エンジン(またはレキュペレータなどのエンジンの少なくとも一部)の温度が選択範囲内に収まるようにエンジンの動作を制御する工程を含む。コントローラは、エンジンの連続使用が(エンジンの少なくとも1つの部品の動作が修正された状態で)レキュペレータの温度などのエンジンの少なくとも一部の温度を選択範囲へと促すように、エンジンの少なくとも1つの部品の動作を制御してもよい。
【0009】
(1)レキュペレータの材料と、(2)クロスオーバ通路内の作動流体と、の少なくとも一方の温度の表示値に基づいたエンジンの動作の制御は、表示された温度が上位閾値を上回る場合に、レキュペレータの材料などの、エンジンの少なくとも一部の温度を下げるようなエンジンの動作の制御を含んでもよい。コントローラは、レキュペレータなどのエンジンの一部内を通る少なくとも1つの流体の温度を下げるように(例えば、燃焼シリンダからの排出流体の温度を下げるように、および/または、レキュペレータを通って圧縮シリンダから燃焼シリンダに進む作動流体の温度を下げるように)、エンジンの動作を制御することにより、レキュペレータの材料などの、エンジンの少なくとも一部の温度を下げるようにエンジンの動作を制御してもよい。例えば、この制御は、排出流体がレキュペレータ内を通る時点での排出流体の温度が上位閾値を下回るようなエンジンの動作の制御を含んでもよい。これにより、レキュペレータの材料の損傷に関連した閾値を上回る、レキュペレータの材料のピーク温度の出現(または出現数)を低減し得る。
【0010】
上位閾値は、エンジンの一部に対するの材料損傷に関連する温度(例えば、レキュペレータに対するの材料損傷に関連する温度)に基づいて選択されてもよい。上位閾値は、レキュペレータの材料に基づいて選択されてもよい。例えば、上位閾値は摂氏約800度でもよい。材料は、インコネルでもよく、上位閾値は、摂氏800度でもよい。この閾値は、圧力の関数、例えば、レキュペレータ内の作動流体の圧力の関数でもよいことが理解されよう。材料損傷に関連する温度は、材料に伴う、加熱による熱クリープの問題に関連する温度でもよい。
【0011】
(1)レキュペレータの材料と、(2)クロスオーバ通路内の作動流体と、の少なくとも一方の温度の表示値に基づいたエンジンの動作の制御は、表示された温度が下位閾値を下回る場合に、レキュペレータの材料などの、エンジンの少なくとも一部の温度を高めるようなエンジンの動作の制御を含んでよい。例えば、この制御は、(例えば、いずれかの流体がレキュペレータ内を通るために)レキュペレータ内の作動流体の温度を高めてもよい。コントローラは、レキュペレータなどのエンジンの一部内を通る少なくとも1つの流体の温度を上げるように(例えば、燃焼シリンダからの排出流体の温度を上げるように、および/または、レキュペレータを通って圧縮シリンダから燃焼シリンダに進む作動流体の温度を上げるように)、エンジンの動作を制御することにより、レキュペレータの材料などの、エンジンの少なくとも一部の温度を上げるようにエンジンの動作を制御してもよい。例えば、この制御は、排出流体がレキュペレータ内を通る時点での排出流体の温度が下位閾値を上回るようなエンジンの動作の制御を含んでもよい。これにより、レキュペレータの温度(すなわち作動流体の温度)が、流体の燃焼度を妨げる程に十分に低い温度である時間の長さを短縮し得る。
【0012】
レキュペレータは、(1)圧縮シリンダから燃焼シリンダに流体が移動する第1通路と、(2)燃焼シリンダの排気口から排出流体が移動する第2通路と、を含んでもよい。レキュペレータは、使用時に、低温の作動流体が燃焼シリンダ内に噴射される前に、高温の排出流体が低温の作動流体に熱を伝え得るように設計される。第2通路は、第1通路に比べてより高温の流体を受け入れるように設計される。レキュペレータは、第2通路から第1通路への(例えば、第2通路内の流体から第1通路内の流体への)熱伝達が行われるように設計されてもよい。レキュペレータの材料の温度は、レキュペレータにおける任意の材料のピーク温度を含んでもよい。またこの温度は、平均レキュペレータ温度、および/または、レキュペレータの高温側(例えば、第2通路)を示す温度を含んでもよい。さらにこの温度は、2種類の流体の温度の平均値、または2種類の流体の温度のいずれかの表示値を含んでもよい。この温度(および任意の閾値温度)は、圧力依存性を有してもよい(そのため、例えば、これらの温度の値は、目下の圧力に依存して変化してもよい)。
【0013】
エンジンは、燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排出流体により駆動するように設計されたタービンを含んでもよい。排出流体を用いたタービンの駆動は、排出流体の温度を下げてもよい。これによりレキュペレータ中を流れる排出流体の温度が下げられ得るため、その結果、レキュペレータの材料の温度は下げられてもよい。コントローラは、燃焼シリンダからの排出流体の温度を調節するようにタービンの動作を制御することにより、表示された温度に基づいてエンジンの動作を制御するように構成されてもよい。タービンの動作の制御は、タービン内を流れる排出流体にタービンが与える抵抗の度合の制御を含んでもよい。例えば、タービンにより妨げられる流体の流路の割合は、変化してもよく、および/または、タービンは、可変の歯車装置に接続してもよい。
【0014】
タービンは、圧縮シリンダに供給される入口流体を圧縮するために配置されたコンプレッサに連結されてもよい。コンプレッサは、ターボチャージャでもよい。コンプレッサは、より大量の作動流体がエンジンを通って移動するように、圧縮シリンダに供給された作動流体の圧力と密度とを高めてもよい。コンプレッサの利用は、より高いエンジン出力と、より高いエンジンの動作温度と、をもたらしてもよい。これにより動作温度が高まる結果として、レキュペレータの温度の上昇がもたらされてもよい。一方で、排出流体とタービンとの相互作用の結果、排出流体の熱エネルギはレキュペレータに達する前に減少するため、タービンは、冷却効果を有してもよい。タービンは、排出流体の流れからエネルギを取り込むために、発電機(例えば、タービン発電機)などの他の手段に連結してもよい。取り込んだエネルギは、蓄電手段に蓄えられてもよく、および/または、電動過給機に供給されてもよい。
【0015】
エンジンは、燃焼シリンダからの排出流体の少なくとも一部がタービンを駆動することなくレキュペレータに流れることを可能にするように設計されたタービンバイパス通路を含んでもよい。タービンバイパス通路を通って流れ得る流体の量を制御するために、タービンバイパス弁が設けられてもよい。タービンバイパス弁は、流体がタービンバイパス通路を通って流れ得ない第1位置と、実用上可能な限りの大量の流体がタービンバイパス通路を通って流れ得る第2位置と、の間を移動してもよい。コントローラは、タービンバイパス通路の使用を制御することにより、表示された温度に基づいてエンジンの動作を制御するように構成されてもよい。例えば、表示された温度が上位閾値を上回る場合、コントローラは、(例えば、タービンを冷却するために)より大量の流体がタービンを通って流れる必要があるように、バイパス通路を通って流れ得る流体の量を制限してもよい。表示された温度が下位閾値を下回る場合、コントローラは、バイパス通路を通って流れ得る流体の量を増して、(例えば、排出流体がより高温でレキュペレータに達してレキュペレータを加温するように)より少量の流体がタービンを通って流れる必要があるように、バイパス通路を通って流れ得る流体の量を増してもよい。コントローラは、レキュペレータの温度が選択範囲内に入るように、タービンバイパス通路の使用を制御してもよい。タービンバイパス通路は、タービン用のウェイストゲートを含んでもよい。実施例により、タービンは、例えば、可変ピッチの案内翼を含む、可変形状タービンでもよい。実施例により、コントローラは、例えば、エンジンの温度を制御するために案内翼のピッチを制御するように構成されてもよい。
【0016】
エンジンは、少なくとも一部の流体がレキュペレータを通って流れることを避けることができるように設計されたレキュペレータバイパス通路を含んでもよい。レキュペレータバイパス通路は、(1)圧縮シリンダから燃焼シリンダに流れる作動流体の通路であって、作動流体の行路の大半(例えば、全部)がレキュペレータ内を通過しないような経路、および/または、(2)燃焼シリンダから排気口に流れる排出流体の通路であって、排出流体の行路の大半(例えば、全部)がレキュペレータ内を通過しないような通路、の少なくとも一方を含んでもよい。例えば、レキュペレータバイパス通路は、レキュペレータのいずれかの側におけるバイパス(例えば、第1通路または第2通路のいずれかを迂回するためのバイパス)でもよい。レキュペレータバイパス通路は、燃焼シリンダからの排出流体の少なくとも一部がレキュペレータ内を通って流れることを避けることができるように設計されてもよい。
【0017】
コントローラは、レキュペレータバイパス通路の使用を制御することにより、表示された温度に基づいてエンジンの動作を制御するように構成されてもよい。コントローラは、いずれの流体、および/または、どれだけの量の同流体がレキュペレータを通って流れ得るかを制御することにより、レキュペレータの温度を制御してもよい。表示された温度が高すぎる場合、コントローラは、レキュペレータを通って流れる流体の平均温度が下がるように、エンジンの動作を制御してもよい。例えば、レキュペレータバイパス通路は、表示された温度が低い場合に比べて、大部分の高温の排出流体をレキュペレータから逸らすように、制御されてもよい。表示された温度が低すぎる場合、コントローラは、レキュペレータを通って流れる流体の平均温度が上がるように、エンジンの動作を制御してもよい。例えば、レキュペレータバイパス通路は、大部分の高温の排出流体がレキュペレータを移動するように、制御されてもよい。レキュペレータの第1通路に関連するレキュペレータバイパス通路についても同様であり、第1通路側の流体が第2通路側の流体より低温である場合のみ、レキュペレータバイパス通路の使用の制御は、第2通路に関して述べた制御と逆の制御でもよい。
【0018】
コントローラは、(1)燃焼シリンダの吸入弁、および/または、排出弁の開閉時間と、(2)燃焼シリンダ内に燃料を供給するタイミングと、の少なくとも一方を制御することにより、表示された温度に基づいてエンジンの動作を制御するように構成されてもよい。例えば、表示された温度が閾値より低い場合、コントローラは、(1)吸入弁が早期に開口する、(2)排出弁が早期に開口する、(3)燃料が早期に燃焼シリンダに供給される、の少なくとも1つが生じるように動作を制御してもよい。例えば、表示された温度が閾値より高い場合、コントローラは、(1)吸入弁が後期に開口する、(2)排出弁が後期に開口する、(3)燃料が後期に燃焼シリンダに供給される、の少なくとも1つが生じるように動作を制御してもよい。排出弁が早期に開口することは、より高温の(例えば、より直近に燃焼された、および/または、膨張が少ない状態で燃焼された)流体をレキュペレータに送ることを可能にし得る。さらに、これによりレキュペレータが暖められてもよく、その結果、燃焼シリンダへと移動する作動流体が暖められてもよい。これにより、より適度な速度の燃焼シリンダへの作動流体の流れが提供されてもよく、より暖かい燃焼前温度が提供されてもよい。この結果、より完全な燃焼が生じてもよく、それにより排気温度が上昇してもよく、さらにそれによりレキュペレータの温度が上昇してもよい。
【0019】
エンジンは、圧縮シリンダに供給される入口流体を冷却、および/または、圧縮する中間冷却器を含んでもよい。これにより、水などの液体は、冷却された流体から濃縮されてもよい。エンジンは、クーラントとして使用され得る液体であって、圧縮シリンダに供給するための、中間冷却器から液体(例えば、濃縮液)を得ることを可能にするように構成された流体通路を含んでもよい。クーラントの噴射は、圧縮シリンダ内と燃焼シリンダ内との両方の作動流体の温度を下げてもよく、それにより排気温度が下がってもよい。したがって、レキュペレータの両側は低温の流体を収容してもよく、それによりレキュペレータの温度が低下してもよい。
【0020】
コントローラは、(1)圧縮シリンダに供給される入口流体を圧縮するコンプレッサであって、例えば、ターボチャージャであるコンプレッサと、(2)圧縮シリンダに供給される入口流体を冷却する中間冷却器と、(3)燃焼シリンダに供給される作動流体の温度を調節するように設計されたクーラントシステムと、(4)燃焼シリンダ用の吸入弁と、(5)燃焼シリンダ用の排出弁と、(6)燃焼シリンダにおける燃料噴射タイミングと、(7)(例えば、可変形状タービンの静翼のピッチを制御することにより)燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排出流体により駆動するように設計されたタービンと、(8)タービンバイパス通路と、(9)レキュペレータバイパス通路と、(10)圧縮シリンダの吸入口、および/または、排出口と、(11)熱電発電装置、および/または、有機ランキンサイクルなどの熱機関と、の少なくとも1つの動作を制御することにより、表示された温度に基づいてエンジンの動作を制御するように構成されてもよい。上記の各手段は、レキュペレータの材料の温度を上昇または低下させるために使用されてもよい。
【0021】
一態様において、スプリットサイクルエンジンのレキュペレータの材料の温度の表示値に基づいてエンジンの動作を制御する相応の方法が提示される。この方法は、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、を備えたスプリットサイクル内燃エンジンを制御するものである。この方法は、レキュペレータの材料の温度の表示値を取得する工程と、表示された温度に基づいてエンジンの動作を制御する工程と、を含む。装置を参照して前述した任意の特徴は理解されよう。
【0022】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンであって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダであって、燃焼シリンダから排出流体を排出する排出弁を有する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)(a)レキュペレータに関連する温度と、(b)燃焼シリンダに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値に基づいて排出弁の動作を制御するように構成されたコントローラと、を備えるエンジンが提示される。
【0023】
本開示の実施形態は、燃焼シリンダの排出弁の開閉時間を制御することにより、エンジンの温度の調節を可能にし得る。例えば、排出弁の早期の開口は、(十分に膨張していなくて、かつ直近に燃焼された)高温のガスを放出し得る。したがって、この高温の排気ガスは、レキュペレータをさらに加熱し、これにより圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体のさらなる加熱がもたらされ得る。作動流体の加熱は、作動流体の圧力の増加に基づく燃焼シリンダ内への作動流体の流入の速度を速めてもよく、これにより燃焼シリンダ内の燃料との良好な混合が提供されてもよい。しかし、実施例により、作動流体の流れはチョークされてもよく、そのような実施例では、作動流体の加熱は、燃焼シリンダ内への作動流体の流入の速度を変化させなくてもよい。燃焼シリンダ内の作動流体が燃焼前温度の閾値を上回る場合でも、より完全な燃焼が提供されてもよい。このような実施形態は、エンジンの始動時などの、エンジンの動作温度が低いときの特定の用途を見出してもよい。
【0024】
レキュペレータに関連する温度は、レキュペレータの材料の温度(例えば、ピーク材料温度)でもよい。また、レキュペレータに関連する温度は、レキュペレータ内を通過する少なくとも1つの流体の流体温度でもよい。燃焼シリンダに関連する温度は、燃焼シリンダに流入する作動流体の温度でもよい。また、燃焼シリンダに関連する温度は、燃焼シリンダ内での燃焼の温度(例えば、燃焼シリンダ内の燃焼のピーク温度)でもよい。コントローラは、表示された温度が選択範囲外にある場合に、関連する温度が選択範囲内に収まるようにエンジンが動作するように、エンジンの動作を制御するように構成されてもよい。
【0025】
表示された温度に基づいて排出弁の動作を制御する工程は、表示された温度が最小閾値を下回る場合に、サイクル内のある時点であって、表示された温度が最小閾値を上回る場合の排出弁の開口時間より早い時点で開口するように排出弁の動作を制御する工程を含んでもよい。早期に排出弁を開口する工程は、ピストンがそのサイクルの間に上死点から短い距離を移動した後、排出弁を開口する工程を含んでもよい。最小閾値は、エンジンの動作条件に基づいて選択されてもよく、例えば、燃焼シリンダ内の閾値割合の燃料の完全燃焼に関連する値でもよい。排出弁を開口する位置またはタイミングは、表示された温度に基づいて選択されてもよく、例えば、サイクル内でどれだけ早期に排出弁を開口するかは、受け取った表示値に基づいてコントローラにより決定されてもよい。表示温度については複数の閾値が存在してもよく、開口時間は、表示温度がどの閾値を下回っているかに基づいて選択されてもよい。
【0026】
燃焼シリンダは、燃焼シリンダ内に流入する作動流体の流れを制御する吸入弁を有してもよい。コントローラは、コントローラがより早い時点で開口するように排出弁を制御する場合に、サイクル内のある時点であって、表示された温度が最小閾値を上回る場合の吸入弁の開口時点より早い時点に開口するように吸入弁の動作を制御するようにも構成される。吸入弁は、排出弁を早期に開口させる際の開口量に対応する開口量(例えば、同量でもよい)により、早期に開口してもよい。
【0027】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンを制御する方法が提供され、同エンジンは、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダであって、燃焼シリンダから排出流体を排出する排出弁を有する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、を備える。この方法は、(1)レキュペレータに関連する温度と、(2)燃焼シリンダに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値を取得する工程と、表示された温度に基づいて排出弁の動作を制御する工程と、を含む。
【0028】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンであって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)少なくとも一部の流体がレキュペレータを通って流れることを避けることができるように選択的に動作可能なレキュペレータバイパス通路と、を備えるエンジンが提示される。
【0029】
本開示の実施形態は、レキュペレータを通って流れる流体を制御することにより、エンジンの温度の調節を可能にし得る。高温の排出流体を燃焼シリンダへと流れる低温の作動流体と接触させることにより、これら2種類の流体の間で熱交換が行われ得る。この熱交換は、レキュペレータを通って流れる流体の量により制御されてもよい。したがって、レキュペレータバイパス通路は、流体の量を制御することを可能にしてもよく、それによりエンジンの温度を調節されてもよい。
【0030】
エンジンは、(1)レキュペレータに関連する温度と、(2)燃焼シリンダに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値に基づいてレキュペレータバイパス通路の動作を制御するように構成されたコントローラ、を備えてもよい。レキュペレータバイパス通路、レキュペレータバイパス通路の動作、および/または、レキュペレータバイパス通路の表示温度は、本明細書で既に開示されたとおりに設計または操作されてもよい。
【0031】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンであって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排出流体により駆動するように設計されたタービンと、(5)排出流体の少なくとも一部がタービンを駆動することなくレキュペレータに流れることを可能にするように選択的に動作可能なタービンバイパス通路と、を備えるエンジンが提示される。
【0032】
本開示の実施形態は、燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排気ガスにより、エネルギを(例えば、発電機やコンプレッサを駆動するために)利用することを可能にし得る。これは、エンジンが付加的なエネルギを利用することを可能にし得る。また、タービンは、排出流体の温度を下げてもよく、それによりレキュペレータで交換される熱の量を減らしてもよい。レキュペレータで交換される熱の量を増加または最大にすることが望ましくてもよく、それによりタービンバイパス通路は、排出流体がレキュペレータに向かって移動する際に失う熱が少なくなるように、使用されることが望ましくもよい。これにより、例えば、タービンバイパス通路を通って流れる流体の量を制御することにより、タービンバイパス通路を用いる流体の量に基づいたエンジンの温度の調節が可能であってもよい。
【0033】
エンジンは、(1)レキュペレータに関連する温度と、(2)燃焼シリンダに関連する温度との少なくとも一方の表示値に基づいてタービンバイパス通路の動作を制御するように構成されたコントローラ、を備えてもよい。タービン、タービンバイパス通路、タービンまたはタービンバイパス通路の動作、および/または、タービンまたはタービンバイパス通路の表示温度は、本明細書で既に開示されたとおりに設計または操作されてもよい。
【0034】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法であって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)少なくとも一部の流体がレキュペレータを通って流れることを避けることができるように選択的に動作可能なレキュペレータバイパス通路と、を備えるエンジンの方法が提示される。この方法は、(1)燃焼シリンダに関連する温度と、(2)レキュペレータに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値を取得する工程と、表示された温度に基づいてバイパス通路の使用を制御する工程と、を含む。
【0035】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンを動作させる方法であって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排出流体により駆動するように設計されたタービンと、(5)排出流体の少なくとも一部がタービンを駆動することなくレキュペレータに流れることを可能にするように選択的に動作可能なタービンバイパス通路と、を備えるエンジンの方法が提示される。この方法は、(1)燃焼シリンダに関連する温度と、(2)レキュペレータに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値を取得する工程と、表示された温度に基づいてバイパス通路の利用を制御する工程と、を含む。
【0036】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンであって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排出流体により駆動するように設計されたタービンと、(5)(a)燃焼シリンダに関連する温度と、(b)レキュペレータに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値に基づいてタービンの動作を制御するように構成されたコントローラと、を備えるエンジンが提示される。
【0037】
本開示の実施形態は、燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排気ガスにより、エネルギを(例えば、発電機やコンプレッサを駆動するために)利用することを可能にし得る。これは、エンジンが付加的なエネルギを利用することを可能にし得る。また、タービンは、排出流体の温度を下げてもよく、それによりレキュペレータで交換される熱の量を減らしてもよい。コントローラは、エンジンの温度を調節するために、タービンの動作を制御してもよい。タービン、タービンの動作、および/または、タービンの表示温度は、本明細書で既に開示されたとおりに設計または操作されてよい。
【0038】
一態様において、スプリットサイクル内燃エンジンを制御する方法であって、(1)圧縮ピストンを収容する圧縮シリンダと、(2)燃焼ピストンを収容する燃焼シリンダと、(3)燃焼シリンダからの排出流体と、圧縮シリンダから燃焼シリンダに供給される作動流体と、の間で熱交換を行うように設計されたレキュペレータと、(4)燃焼シリンダからレキュペレータに流れる排出流体により駆動するように設計されたタービンと、を備えるエンジンの方法が提示される。この方法は、(1)燃焼シリンダに関連する温度と、(2)レキュペレータに関連する温度と、の少なくとも一方の表示値を取得する工程と、表示された温度に基づいてタービンの動作を制御する工程と、を含む。
【0039】
本開示の諸態様は、本明細書開示のいずれかの方法を実行するようにプロセッサをプログラミングするように構成されたプログラム命令を含むコンピュータプログラム製品を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
以下、図面を参照していくつかの実施形態を説明するが、これらはあくまでも例示である。
図1図1は、スプリットサイクル内燃エンジンの一例を示す模式図を示す。
図2図2は、スプリットサイクル内燃エンジンの動作方法の一例を示すフローチャートを示す。各図において、同様の参照符号が同様の構成要素を示すために用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本開示の実施例は、スプリットサイクル内燃エンジンの温度を制御するシステムと方法とに関するものである。エンジンの動作は、少なくとも1つの取得されたエンジンの温度の表示値に基づいて制御され得る。
【0042】
関連するエンジンの温度は、エンジンのクロスオーバ通路内のレキュペレータなどの、エンジン部品の材料の温度でもよい。レキュペレータの最も高熱の部分は、例えば、排出作動流体が燃焼シリンダからレキュペレータに流入する箇所でもよい。実施例により、レキュペレータは、レキュペレータに流入する作動流体を拡散するディフューザを有してもよい。ディフューザは、レキュペレータが燃焼シリンダからの排出作動流体を受け入れる箇所に連結されてもよい。すなわち、レキュペレータは、排出作動流体の吸入口を有してもよく、ディフューザは、この排出作動流体の吸入口に連結されてもよい。これらの部品内部の材料温度が高温に達すると、同部品の寿命に大きく影響し得る。本開示のシステムと方法とは、部品の温度が選択された閾値を下回った状態を維持し得るようにエンジンの動作を制御するために提示される。これによりエンジンの長寿命化が促進されると考えられる。
【0043】
関連するエンジンの温度は、レキュペレータに関連する温度と、および/または、燃焼シリンダに関連する温度と、のいずれかでもよい。これらの温度を調節するために、エンジンの動作を制御するシステムと方法とが提示されてもよい。エンジンの動作は、エンジンの温度が低すぎると妨げられることがある。例えば、燃焼前の燃焼シリンダ内の作動流体の温度が低すぎると、不完全燃焼が生じ得る。エンジンの温度が高すぎる場合も、エンジンの動作を悪化させ得る。例えば、燃焼のピーク温度が高すぎると、NOxなどの望ましくない汚染物質が生成し得る。エンジンの動作は、これら2つのゾーンの間の範囲内の温度を提供するように制御されてもよい。
【0044】
図1は、内燃エンジン100の模式図を示す。図1には、エンジン100の温度を調節するシステムの様々な例が示されている。図示の組合せは限定的と考えるものではないことは理解されよう。簡明のために構成要素はまとめて示されており、一括部品として説明される。しかし、温度を調節するために使用される部品の任意の組合せが予想されることは理解されよう。
【0045】
基本的に、エンジン100は、圧縮シリンダ10と燃焼シリンダ20とを備える。これら2つのシリンダは、レキュペレータ35の形をした熱交換器が備えるクロスオーバ通路30により接続される。
【0046】
圧縮シリンダ10は、連結ロッド52を介してクランクシャフト70の一部上の各クランクに連結される圧縮ピストン12を収容する。圧縮シリンダ10は、エンジン100に供給される流体を受け入れる吸入口8と、クロスオーバ通路30に連結された排出口9と、を備える。排出口9は、排出口9を通じてクロスオーバ通路30に向けて流出した流体が圧縮シリンダ10内に逆流できないように、例えば、一方向弁などの弁を備えてもよい。
【0047】
クロスオーバ通路30は、圧縮シリンダ10から燃焼シリンダ20への流体の流路を形成する。クロスオーバ通路は、第1通路36(レキュペレータ35の「低温側」とも言う)と、第2通路37(レキュペレータ35の「高温側」とも言う)と、の2つの流体用通路を有するレキュペレータ35内を通る。クロスオーバ通路30は、第1通路36を通る。第2通路37は、燃焼シリンダ20からの排出流体95用の通路である。レキュペレータ35の2本の通路は、第2通路37から第1通路36に熱を伝え得るように設計される。これにより、燃焼シリンダ20からの排出流体95が第2通路37を通って、圧縮シリンダ10から燃焼シリンダ20へと移動する圧縮された作動流体に熱を伝えることが可能になり得る。これにより燃焼前の圧縮された作動流体が温められる。レキュペレータ35は、より優れたクリープ耐性を得るために、インコネルなどの耐熱性材料で作製されてもよい。レキュペレータ35は、高熱部分(例えば、第2通路37の一部)が、例えば、誘導された熱に応じて曲がることが可能なように設計されてもよい。このことはレキュペレータ35の熱応力の軽減に役立ち得る。レキュペレータ35は、蓄熱し得る相変化材料を格納してもよい。しかし、実施例により、相変化材料は、レキュペレータ35の排気側の前、例えば、燃焼シリンダ30とレキュペレータ35との間で作動流体を移動させる通路内など、に置かれてもよいことは理解されよう。前述したとおり、実施例により、レキュペレータ35は、レキュペレータ35に流入する排出作動流体95を拡散するディフューザを有してもよいことも理解されよう。ディフューザは、レキュペレータが燃焼シリンダ20から排出作動流体95を受け入れる箇所に連結されてもよい。すなわち、レキュペレータ35は、排出作動流体の吸入口を有してもよく、ディフューザは、この排出作動流体の吸入口に連結されてもよい。
【0048】
燃焼シリンダ20は、連結ロッド54を介してクランクシャフト70の一部上の各クランクに連結される燃焼ピストン22を収容する。燃焼シリンダ20は、クロスオーバ通路30に連結された吸入弁18を備える。吸入弁18は、流体がクロスオーバ通路30から燃焼シリンダ20に流入し得るかどうかを制御するように動作可能である。さらに、燃焼シリンダ20は、排気を燃焼シリンダ20から排気装置に送る排出弁19を備える。燃焼シリンダ20は、燃料を燃焼シリンダ20内に噴射する燃料インジェクタ82として示された、燃料供給装置を備える。燃料インジェクタ82は、燃料貯蔵部80から燃焼シリンダ20内への流体の流路を形成するために、燃料貯蔵部80に接続される。
【0049】
基本的なエンジン100の動作は、以下のとおりである。入口流体1(例えば、周囲環境から取り込まれた流体)が吸入口8を介して圧縮シリンダ10に供給されてもよい。吸入口8は、選択された量の入口流体1が圧縮シリンダ10に供給されるように制御される。圧縮シリンダ10において、この流体は、圧縮ピストン12の動作により圧縮され、その後、圧縮シリンダ10から排出口9を介してクロスオーバ通路30に排出される。その後、流体は、レキュペレータ35の第1通路36を通って流れ、その間に燃焼シリンダ20から第2通路37を通って進む排出流体95により加熱される。燃焼シリンダ20の吸入弁18は、暖かい圧縮された流体が燃焼シリンダ20に流入できるように制御される。燃料貯蔵部80からの燃料は、燃料インジェクタ82を介して燃焼シリンダ20に噴射されて、燃焼シリンダ20に供給された加熱された作動流体と混ざり合う。この混合気は、燃焼して燃焼ピストン22を動作させた後、排出弁19は、燃焼シリンダ20からの燃焼した流体が排出されるように制御される。次に、この高温の排出流体95は、(存在すれば)詳細に後述するタービン111と、レキュペレータ35の第2通路37と、を通り、レキュペレータ35の第1通路36内の流体した後、排出流体2としてエンジン100から排出される。
【0050】
エンジン100を使用すると、エンジン100の温度が変動することがある。温度の変動は、エンジン100の性能特性の違いにつながり得る。一般に、エンジン100は、(例えば、大気温度の部品と流体とを用いることで)比較的低温で始動する。この温度は、エンジンの使用に伴い上昇する。また、エンジン100の温度は、少ない流量の作動流体を用いてレキュペレータ35が最も効率よく動作し得る部分負荷(例えば、最大負荷の50%以下の負荷)の下において、ピークに達してもよい。しかし、実施例により、エンジン100の温度は、多用下(例えば、最大負荷の50%以上の負荷の下、または最大負荷の80%以上の負荷の下)において、ピークに達してもよい。
【0051】
温度のモニタリングに関しては、レキュペレータ35に関連する温度と、燃焼シリンダ20に関連する温度と、が特に有用になり得る。温度のモニタリングは、エンジン100の温度が高すぎることを判定してもよい。レキュペレータ35の温度が高くなりすぎると、レキュペレータ35の材料は損傷し得る。例えば、レキュペレータ35の材料を過度の熱に曝すことにより、レキュペレータ35の性能を損ねて最終的にレキュペレータ35の修理または交換を要する、クリープ関連の問題が生じ得る。同様に、燃焼シリンダ20の燃焼のピーク温度が高くなりすぎると、望ましくない汚染物質であるNOが生じ得る。
【0052】
温度のモニタリングは、エンジン100の温度が低すぎることが判定してもよい。エンジン100の温度が低すぎると、最適な燃焼が妨げられ、噴射された燃料の不完全燃焼が生じる得る。このことは、レキュペレータ35の温度、および/または、レキュペレータ35内の作動流体の温度に基づいて識別されてもよい(燃焼シリンダ20に流入する前の作動流体が低温であることは、燃焼シリンダ20内の温度の低下の原因となるため)。また、このことは、燃焼シリンダ20内の燃焼温度に基づいて識別されてもよい(不完全燃焼は、温度の低下の原因となるため)。
【0053】
エンジン100は、少なくとも1つのエンジンの温度の表示値をモニタリングするように構成されたコントローラ(不図示)を備える。エンジンの温度は、レキュペレータ35の材料の温度、および/または、レキュペレータ35(例えば、第1通路、および/または、第2通路37)内の作動流体の温度などの、レキュペレータ35に関連する温度でもよい。また、エンジンの温度は、燃焼温度(例えば、燃焼のピーク温度)、または、(例えば、燃焼前の)燃焼シリンダ20内の作動流体の温度などの、燃焼シリンダ20に関連する温度でもよい。得られた関連する温度(例えば、上記温度のいずれか)の表示値に基づいて、コントローラは、エンジン100の動作を制御してもよい。例えば、得られた温度が、エンジン100の動作温度が下位閾値より低い(例えば、冷たすぎる)ことを示している場合、コントローラは、エンジン100の温度を上げるようにエンジン100の動作を制御してもよい。得られた温度が、エンジン100の動作温度が上位閾値より高い(例えば、熱すぎる)ことを示している場合、コントローラは、エンジン100の温度を下げるようにエンジン100の動作を制御してもよい。
【0054】
コントローラは、例えば、表示された温度に基づいて、関連する部品の温度を上げる(または下げる)ようにエンジン100の動作を制御すべきか、または、現在の動作を続けるようにエンジン100の動作を制御すべきか、を判定してもよい。温度を下げるかまたは上げる場合、コントローラは、それに応じて以下の手段のいずれかの操作を(個別にまたは他の手段と組合せて)用いてもよい。
【0055】
エンジン100は、コンプレッサ112を備えてもよい。コンプレッサ112は、圧縮シリンダ10に供給される入口流体1を受け入れるように配置される。コンプレッサ112は、ターボチャージャまたはスーパーチャージャの形をしたものでもよい。コンプレッサ112は、入口流体1が圧縮シリンダ10に供給される前に入口流体1を圧縮するように構成される。コンプレッサ112は、圧縮されて高濃度になった流体を供給してもよい。これにより、より大量の流体がエンジン100中を流れることが可能でもよい。この結果、より高速の流体が燃焼シリンダ20に流れ込んでもよく、および/または、燃焼シリンダ20内の燃焼温度がより高温になってもよい。したがって、コンプレッサ112を作動する効果として、エンジン100の温度が上がってもよい。コンプレッサ112の使用は、燃焼シリンダ20、および/または、レキュペレータ35に関連する温度を上げてもよい。
【0056】
したがって、コントローラは、エンジン100の温度を上げるために、コンプレッサ112の動作を向上または開始してもよい。例えば、エンジン100の温度を上げるとの表示値に応じて、コントローラは、エンジン100の温度を上げるようにコンプレッサ112の動作を制御してもよい。コンプレッサ112の動作の制御は、コンプレッサを通る流体を圧縮するために、コンプレッサ112の電源の投入を含んでもよい。また、この制御は、コンプレッサ112を通る流体の割合の制御、および/または、コンプレッサ112により与えられる圧縮の度合の制御を含んでもよい。したがって、コンプレッサ112は、作動流体の圧縮を提供しない第1状態と、作動流体の最大圧縮を提供する第2状態と、の間で動作可能でもよい。また、コンプレッサ112は、作動流体の圧縮度(例えば、可変の圧縮度)を提供するように、これら2つの状態間で動作可能でもよい。コントローラは、エンジン100の温度を下げるために、コンプレッサ112の動作を低下(または停止)してもよい。したがって、コントローラは、コンプレッサ112の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0057】
エンジン100は、中間冷却器120を備えてもよい。中間冷却器120は、圧縮シリンダ10に供給される入口流体1を受け入れるように配置される。中間冷却器120は、コンプレッサ112から流体を受け入れた後、その流体が燃焼シリンダ20に進むように配置されてもよい。中間冷却器120は、例えば、コンプレッサ112から流体を受け入れつつ、圧縮シリンダ10に供給される流体を冷却してもよい。これは、定圧での流体の冷却でもよい。中間冷却器120は、空気対空気の中間冷却器または空気対水の中間冷却器でもよい。
【0058】
中間冷却器120の動作は、(顕著な)圧力の低下を生じることなく作動流体の温度を下げてもよい。結果として、圧縮(次いで燃焼)される流体の初期温度が低くなるように、そして最終温度が低くなるように、エンジン100の動作温度は低くなってもよい。さらに、これによりレキュペレータ35内の流体の熱質量の増加が生じてもよく、排出流体95との熱交換の結果として、レキュペレータ35に低速の(軽度の)熱上昇が生じてもよい。コントローラは、中間冷却器120が作動流体を冷却する作用の程度を制御するように構成されてもよい。例えば、この制御は、冷却手段の温度を制御すること、または、圧縮シリンダ10に流入する前に作動流体を冷却手段に曝することを含んでもよい。例えば、作動流体の冷却に用いる任意の流体の温度、および/または、作動流体が取る流路は、コントローラからの命令信号に応じて制御されてもよい。エンジン100の関連する温度を上げるために、コントローラは、中間冷却器120の動作を低下(または停止)するように、エンジン100の動作を制御してもよい。エンジン100の関連する温度を下げるために、コントローラは、中間冷却器120の動作を向上(または開始)するように、エンジン100の動作を制御してもよい。したがって、コントローラは、中間冷却器120の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0059】
エンジン100は、クーラントシステムを備えてもよい。クーラントシステムは、クーラントインジェクタ14を介して圧縮シリンダ10に連結されたクーラント液貯蔵部40を備えてもよい。この構成により、クーラント液貯蔵部40内のクーラントが圧縮シリンダ10に流入するための液体流路が画定される。クーラントは、水などの任意の適当な流体、および/または、冷凍処理を経て液相に濃縮された流体などの低温流体を含んでもよい。さらに、クーラントシステムは、(図1には示されていないが)クーラントをクロスオーバ通路30内に噴射するインジェクタ14を備えてもよい。クーラントシステムは、圧縮シリンダ10内にクーラントを噴射するように構成される。クーラントシステムは、圧縮シリンダ10内の作動流体の温度を調節するように操作されてもよい。クーラントシステムは、クーラントシステム内に噴射された流体の量を制御するように操作されてもよい。エンジン100は、中間冷却器120をクーラントシステム(例えば、クーラント液貯蔵部40)に接続する流体通路121を備えてもよい。これにより、中間冷却器120内の入口流体1の冷却により生じる任意の濃縮液体を、作動流体を冷却するために圧縮シリンダ10内に噴射されるクーラントとして使用され得る箇所から、クーラント液貯蔵部40内に移送することが可能でもよい。
【0060】
クーラントシステムの動作は、圧縮シリンダ10内に噴射される流体の量の制御を含んでもよい。より大量の(またはより冷たい)流体が圧縮シリンダ10内に噴射されるのに伴い、流体は温められて蒸発しつつ熱を吸収して、その結果、圧縮シリンダ10内の全体の温度を下げる。コントローラは、より少量の流体(またはより暖かい流体)を圧縮シリンダ10内に噴射するようにクーラントシステムを制御することによりエンジンの温度を上げるように、エンジン100の動作を制御してもよい。コントローラは、より大量の流体(またはより冷たい流体)を圧縮シリンダ10内に噴射するようにクーラントシステムを制御することによりエンジンの温度を下げるように、エンジン100の動作を制御してもよい。したがって、コントローラは、クーラントシステムの動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0061】
燃焼シリンダ20の吸入弁18は、エンジン100の関連する温度を調節するように制御されてもよい。吸入弁18が開くと、作動流体は、クロスオーバ通路30から燃焼シリンダ20に流れてもよい。吸入弁18は、作動流体がクロスオーバ通路30に流れ得るかどうか、および、どれだけの量の作動流体が流れ得るかどうかを制御するために、第1位置と第2位置との間を移動可能である。吸入弁18は、ピストンのサイクルの間に、選択位置で開閉してもよい。選択位置は、固定されてもよく、可変でもよい。また、選択位置は、コントローラにより選択されてもよい。
【0062】
吸入弁18が開口すると、作動流体は、燃焼シリンダ20に流れる。開口のタイミングに応じて、燃焼シリンダ20内の作動流体は、燃焼ピストン22が上死点に向かって進行する間にさらなる圧縮を受けてもよい。この圧縮は、作動流体のさらなる加熱を提供し、エンジン100の関連する温度を高めてもよい。吸入弁18の開口を遅らせることにより、エンジン100の燃焼時点も遅延され、そのために不完全燃焼が生じて温度の低下が起こってもよい。しかし、吸入弁18の開口をさらに遅らせると、不完全膨張のために温度は再び上昇してもよい。コントローラは、ピストンのサイクルの後期に燃焼シリンダ20用の吸入弁18が開くように制御することにより、関連する温度を下げるように、エンジン100の動作を制御してもよい。コントローラは、ピストンのサイクルの早期に燃焼シリンダ20用の吸入弁18が開くように制御することにより、関連する温度を上げるように、エンジン100の動作を制御してもよい。したがって、コントローラは、燃焼シリンダ20の吸入弁18の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0063】
燃料インジェクタ82は、エンジン100の関連する温度を調節するために制御されてもよい。燃料インジェクタ82が燃料を燃焼シリンダ20内に噴射するタイミングは、コントローラにより制御されてもよい。コントローラは、燃焼シリンダ20内に噴射される燃料の量(例えば、燃料インジェクタ82が燃料を燃焼シリンダ20内に噴射する持続時間)を制御してもよい。コントローラは、エンジン100の関連する温度を調節するように、燃料インジェクタ82の動作を制御するように構成されてもよい。
【0064】
燃料インジェクタ82は、始動すると、燃焼シリンダ20内の作動流体と燃料と混ざって燃焼し得る燃焼シリンダ20内に、燃料を噴射する。これにより、燃焼ピストン22が駆動される。関連する温度を上げるために、コントローラは、ピストンのサイクルの後期に燃料インジェクタ82が燃料を燃焼シリンダ20内に噴射するように、エンジン100の動作を制御してもよい。これにより、遅めでかつ低速の燃焼事象が生じ、膨張に使える時間が短くなると共に、燃焼ピストン22に作用するエンタルピーの変換が少なくなり、かつ排気中のエンタルピーが大きくなり燃焼シリンダ20からの排気温度が上がり得る。関連する温度を下げるために、コントローラは、ピストンのサイクルの早期に燃料インジェクタ82が燃料を燃焼シリンダ20内に噴射するように、エンジン100の動作を制御してもよい。これにより、早めでかつ高速の燃焼事象が生じ、膨張に使える時間が長くなると共に、燃焼ピストン22に作用するエンタルピーの変換が多くなり、かつ排気中のエンタルピーが小さくなり燃焼シリンダ20からの排気温度が下がり得る。したがって、コントローラは、燃料インジェクタ82の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0065】
燃焼シリンダ20の排出弁19は、エンジン100の関連する温度を調節するために制御されてもよい。排出弁19の開口のタイミングは、燃焼シリンダ20内で生じる燃焼の量、および/または、レキュペレータ35に供給される排出流体95の温度を制御するように選択されてもよい。排出弁19が開口すると、燃焼シリンダ20内の流体は、レキュペレータ35に向けて排出されてもよい。コントローラは、排出弁19が開口する時を制御するように構成されてもよい。
【0066】
動作時には、燃焼シリンダ20内の作動流体は、燃焼するにつれて膨張して、燃焼ピストン22を下死点の位置に向けて駆動させる。関連する温度を上げるために、コントローラは、排出弁19がピストンのサイクルの早期に開口するように、エンジン100の動作を制御してもよい。これにより、高温でかつ直近に燃焼して未だ完全に膨張されていない作動流体をレキュペレータ35に送ることが可能でもよい。関連する温度を下げるために、コントローラは、排出弁19がピストンのサイクルの後期に開口するように、エンジン100の動作を制御してもよい。これにより、燃焼した流体は、燃焼シリンダ20内で膨張する時間が多くなり冷却されてもよく、その結果、レキュペレータ35に供給される流体の温度が下がってもよい。したがって、コントローラは、排出弁19の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0067】
エンジン100は、タービン111を備えてもよい。タービン111は、燃焼シリンダ20からの排出流体95により駆動するように設計される。タービン111は、排出弁19とレキュペレータ35との間に配置される。燃焼シリンダ20からレキュペレータ35に流れる排出流体95は、タービン111を回転駆動してもよい。タービン111は、タービンを駆動しつつ排出流体95の移動に基づいて仕事を生成するように設計されてもよい。例えば、タービン111は、コンプレッサ112の圧縮動作を駆動するために、タービン111の回転動作を伝える連結手段113により、コンプレッサ112に連結されてもよい。連結手段113は、シャフトまたは車軸でもよい。タービン111は、高温の排出流体95の流れからエネルギを取り込むタービン発電機などの他の手段に接続されてもよい。実施例により、取り込まれたエネルギは、一時的に保存されてもよく、その後、他のエネルギの形態に変換されてもよい。これに加えて(またはこれに代えて)、エネルギは、有機ランキンサイクル、および/または、熱電発電装置などの熱機関により高温の排出流体95の流れから取り込まれてもよい。タービン111は、種々の抵抗の度合で駆動されるように動作可能でもよい。例えば、タービン111はギアで接続されてもよく、および/または、可変形状タービンを用いる場合はタービンの静翼のピッチが調整されてもよい。コントローラは、タービン111に伴う抵抗の度合を制御するように構成されてもよく、例えば、排出流体95とタービン111との相互作用に応じて排出流体95からのエネルギ損失量を制御するように構成されてもよい。例えば、タービン111は、ギアで接続されてもよく、および/または、排出弁19からレキュペレータ35までの流体の流路のうちタービン111により遮断される割合を変化させてもよい。
【0068】
動作時には、排出流体95がタービン111中を流れつつ、タービン111の動作を駆動し、これにより排出流体95のエネルギ(温度)の低下を生ずる。関連する温度を下げるために、コントローラは、タービン111が作動流体から取り出すエネルギが多くなるように、エンジン100の動作を制御してもよい。例えば、コントローラは、タービン111の駆動に大きな割合の排出流体95が必要であるようにタービン111の動作を制御して、排出流体95の温度を下げてもよい。関連する温度を上げるために、コントローラは、タービン111が作動流体から取り出すエネルギが少なくなるように、エンジン100の動作を制御してもよい。例えば、コントローラは、タービン111の駆動に少量の排出流体95が必要であるようにタービン111の動作を制御して、温度の低下を減らしてもよい。したがって、コントローラは、タービン111の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0069】
エンジン100は、バイパス通路141を備えてもよい。燃焼シリンダ20から流れる排出流体95のタービンバイパス通路141への進入は、タービンバイパス弁142により調節されてもよい。タービンバイパス弁142の動作は、コントローラにより制御されてもよい。タービンバイパス弁142は、流体がタービンバイパス通路141を通って流れ得ない第1状態と、実用上可能な限りの大量の流体がタービンバイパス通路141を通って流れ得る第2状態と、の間で動作してもよい。タービンバイパス弁142は、タービンバイパス通路141を通る流体の流れの量を制御するために、第1状態と第2状態との間に存在してもよい。タービンバイパス通路141は、排出流体95の少なくとも一部がタービン111を通ってタービンを駆動することを避けることを可能にするように設計される。これにより、タービン111を駆動することなく排出流体95の一部が排出弁19からレキュペレータ35まで流れることが可能になり得る。
【0070】
動作時には、排出流体95の流れがタービン111を通ってタービンを駆動する際に排出流体の温度が下がり得るため、レキュペレータ35内の流体の温度は高温になり得ない。排出流体95がタービンバイパス通路141を通って流れる場合、流体はタービン111を駆動しないため、流体がレキュペレータ35に達するときには温度が暖かい。関連する温度を下げるために、コントローラは、より大量の排出流体95の流れがタービン111を通ってタービンを駆動するように(例えば、タービンバイパス通路141を通って流れる排出流体95の量が減るように)、エンジン100の動作を制御してもよい。これは、流体のエネルギ(すなわち熱)の低下が促進されるという効果を生じ得る。例えば、コントローラは、この変化が生じるようにタービンバイパス弁142を制御してもよい。関連する温度を上げるために、コントローラは、少量の排出流体95の流れがタービン111を通ってタービンを駆動するように、エンジン100の動作を制御してもよい(例えば、コントローラは、タービンバイパス通路141を通って流れる排出流体95の量を増やすことにより関連する温度を上げてもよい)。これにより、より高温の排出流体95がレキュペレータ35に供給されてもよく、その結果、エンジン100の関連する部品が加熱されてもよい。したがって、コントローラは、タービンバイパス通路141の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0071】
エンジン100は、レキュペレータバイパス通路131を備えてもよい。燃焼シリンダ20から流れる排出流体95のレキュペレータバイパス通路131への進入は、レキュペレータバイパス弁132により調節されてもよい。レキュペレータバイパス通路132の動作は、コントローラにより制御されてもよい。レキュペレータバイパス通路132は、流体がレキュペレータバイパス通路131を通って流れ得ない第1状態と、実用上可能な限りの大量の流体がレキュペレータバイパス通路131を通って流れ得る第2状態と、の間で動作してもよい。レキュペレータバイパス通路132は、レキュペレータバイパス通路131を通る流体の流れの量を制御するために、第1状態と第2状態との間に存在してもよい。レキュペレータバイパス通路131は、排出流体95の少なくとも一部がレキュペレータ35を通って(例えば、レキュペレータ35の第2通路37を通って)流れることを避けることを可能にするように設計される。これにより、排出流体95の一部がレキュペレータ35の少なくとも一部を迂回することが可能になり得る。
【0072】
動作時には、排出流体95がレキュペレータ35を通って(例えば、第2通路37を通って)流れる際に、レキュペレータ35を通って燃焼シリンダ20に流れる作動流体と熱交換し得る。排出流体95は一般に暖かいので、この熱交換により熱が伝えられて作動流体が温められ、エンジン100の関連する部品が温められるという効果が得られる。関連する温度を下げるために、コントローラは、レキュペレータバイパス通路131を通って流れる排出流体95の量が増えるように(例えば、レキュペレータ35を通って流れる排出流体95の量の減るように)、エンジン100の動作を制御してもよい。例えば、コントローラは、上記変化をもたらすようにレキュペレータバイパス通路131を制御してもよい。これにより、熱伝達量が減少して、エンジン100内に保持される生成熱の量が低下するという効果が生じ得る。関連する温度を上げるために、コントローラは、レキュペレータバイパス通路131を通って流れる排出流体95の量が減るように(例えば、レキュペレータバイパス通路131を通って流れる排出流体95の量が増えるように)、エンジン100の動作を制御してもよい。これにより、レキュペレータ35で交換される熱の量が増してエンジン100が温められてもよい。したがって、コントローラは、レキュペレータバイパス通路131の動作を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0073】
圧縮シリンダ10の吸入口、および/または、排出口は、エンジン100の関連する部品の温度を制御するために制御されてもよい。吸入口、および/または、排出口の開口のタイミングを変えることにより、圧縮シリンダ10内の作動流体は、様々な量の圧縮を受け得る、および/または、レキュペレータ35内で様々な時間の加熱(様々な加熱用の熱質量を含む)を受け得ることが理解されよう。したがって、コントローラは、吸入口、および/または、排出口の開閉を制御することにより、エンジン100の温度を調節してもよい。
【0074】
以下、図1に示されたようなスプリットサイクルエンジンの動作方法200を図2のフローチャートを参照して説明する。前述のコントローラは、このスプリットサイクルエンジンの動作方法200を実行するように構成されてもよいことが理解されよう。
【0075】
ステップ210で、温度の表示値が取得される(210)。この取得は、温度の表示値を取得するあらゆる適当な方法を含んでもよい。例えば、温度の表示値は、温度を測定するセンサから入力されてもよく、および/または、温度の表示値を推定し得る熱力学変数を測定するセンサから入力されてもよい。エンジン100は、エンジン100の関連する部品の温度の表示値を提供する機能を有する、少なくとも1つのセンサを備えてもよい。エンジン100は、英国特許第2565050号に記載されたタイプの少なくとも1つのセンサの構成を含んでもよく、上記方法は、英国特許第2565050号に記載されたタイプの様式で取得すること(例えば、センサから測定値を受け取ってその測定値から温度を判定すること)を含んでもよい。実施例により、センサは、レキュペレータ35の最も高温の箇所に置かれてもよい。ピーク温度は、燃焼シリンダ20からレキュペレータ35に流入する排出作動流体の入口の箇所でレキュペレータ35が受ける温度でもよい。実施例により、レキュペレータ35は、レキュペレータ35内の作動流体を拡散するディフューザを有してもよい。ディフューザは、レキュペレータ35が燃焼シリンダ20から作動流体を受け取る箇所に連結されてもよい。つまり、レキュペレータ35は、排出作動流体の吸入口を有してもよく、ディフューザは、その排出作動流体の吸入口に連結されてもよい。レキュペレータ35の温度を測定するセンサは、ディフューザ、および/または、排出作動流体の吸入口に連結されてもよい。
【0076】
取得された温度は、レキュペレータ35の材料、または、クロスオーバ通路30の材料の温度の表示値でもよい。実施例により、取得された温度は、レキュペレータ35、および/または、クロスオーバ通路30の温度の少なくとも一方の表面の測定値に基づいて取得されてもよい。取得された温度は、レキュペレータ35、および/または、クロスオーバ通路30内の流体の温度の少なくとも一方の測定値に基づいて取得されてもよい。方法200は、測定された温度(または他の適当な熱力学変数)に基づいてピーク温度を判定する工程などの、温度を判定する工程を含んでもよい。例えば、関連する温度に測定値を対応付けるマッピングが用いられてもよい。例えば、レキュペレータ35、および/または、クロスオーバ通路30の第1位置での温度の測定値は、レキュペレータ35、および/または、クロスオーバ通路30内の材料の関連のピーク温度にマッピングされてもよい。したがって、この方法は、エンジン100の関連する温度の表示値を取得する工程を含んでもよい。
【0077】
ステップ220で、取得された温度の表示値は、下位閾値と比較される(220)。同温度が下位閾値を下回る場合(したがって、エンジン100の温度の選択された動作範囲外にある場合)、方法は、ステップ240に進む。同温度が下位閾値より高い場合、方法は、エンジン100の温度の選択された動作範囲内に温度があるか否かを判定するために、ステップ230に進む。
【0078】
ステップ230で、取得された温度の表示値は、上位閾値と比較される(230)。同温度が上位閾値を下回る場合、現在の温度は、エンジン100の選択された動作範囲内にあると判断される。この場合、方法は、ステップ210に進んで、本方法が再度繰り返される。方法は、定期的(例えば、5秒毎)に繰り返されてもよい。したがって、この方法は、エンジン100の関連する温度を選択された動作範囲内に保つように調節する連続フィードバックシステムを提供してもよい。温度が上位閾値を上回りエンジン100の温度の選択された動作範囲外にある場合、方法は、ステップ240に進む。
【0079】
ステップ240で、エンジン100の動作は、温度を調節するために制御される(240)。このステップでは、関連する温度を選択された動作範囲内に収める目的でエンジンの動作が制御される。この制御は、前述のコントローラにより行われてもよい。温度が上記範囲を下回る場合、コントローラは、エンジン100またはエンジン100の少なくとも一部を温める目的でエンジン100の動作を制御する。温度が上記範囲を上回る場合、コントローラは、エンジン100またはエンジン100の少なくとも一部を冷却する目的でエンジン100の動作を制御する。
【0080】
コントローラは、エンジン100またはエンジン100の少なくとも一部の温度を上下する適当な手段または手段の組合せを選択してもよい。的確な選択は、エンジン100の1つまたは複数の部品の動作の制御の選択でもよいことが理解されよう。この選択は、ある所定のエンジン100に利用可能な部品に基づくものでもよい。コントローラは、ある所定の部品の動作の変化の結果として予想される変化を示すデータを有してもよい。したがって、コントローラは、このデータに基づいて温度を制御するために部品を選択してもよい。実施例により、所定の部品は最大出力を有してもよく、温度変化は、その内のある部品を最大出力まで選択的に用いることで制御されてもよい。例えば、クーラントシステムは、(例えば、エンジン100内の濃縮された液体を濾過/除去する必要を避けるために)作動流体の蒸発限界まで動作させられてもよい。
【0081】
したがって、コントローラは、関連する温度を選択された範囲に調整する目的でエンジン100の関連する部品の動作を制御してもよい。次いで方法は、エンジン100の関連する温度を調節する制御フィードバックループを提供するために、関連する温度をさらにモニタリングするためのステップ210に戻る。関連する温度が選択された範囲内にあるときにエンジン100の動作を制御するために、コントローラは、それまでと同じエンジン100の動作条件を続けてもよい。あるいは、コントローラは、取得された温度の表示値と、広い温度範囲内での動作に亘るエンジン100の動作の向上につながる狭い範囲の選択と、に基づいて、エンジン条件を向上するための模索を続けてもよい。
【0082】
以上の考察から、図に示された実施形態は例示に過ぎず、本明細書と請求の範囲とに記載したとおりに一般化、除去、または交換され得る特徴を含むものと理解されよう。全体的に図面を参照して、模式的機能ブロック図は、本明細書記載のシステムと装置との機能を示すために用いられていると理解されよう。さらに、1つの電子デバイスによりサポートされる処理機能が複数のデバイスによりもたらされてもよい。ただし、この機能は以上述べたとおりに分割される必要はなく、また本記載ならびに後述の請求項記載の構造以外の特定のハードウェア構造を示唆すると解釈されるものではないことも理解されよう。図に示された1つ以上の構成要素の機能はさらに2次分割可能、および/または本開示の装置全体に広げることが可能である。実施形態によっては、図示の1つ以上の構成要素の機能は1つの機能ユニットに統合されてもよい。
【0083】
本開示の文脈から当業者に理解されるとおり、本記載の各実施例は種々の方法で実施されてもよい。本開示の全ての態様のいずれの特徴も、本開示におけるいずれかの他の態様と組合わされてもよい。例えば、方法の態様は装置の態様と組合わせられてもよく、装置の特定の構成要素の動作を参照して述べた特徴を、それら特定種類の装置を用いない方法に備えてもよい。さらに、各実施形態の各特徴は、一部の他の特徴がその動作に本質的なものであることが明確に述べられていない限り、組合わせて述べられている特徴から分離可能とされるものである。これらの分離可能な特徴の各々は、当然ながら実施形態のいずれかの他の特徴であって、その実施形態に記載されている特徴と組合わせてもよい。または本記載のいずれかの他の実施形態のいずれかの他の特徴または特徴の組合せと組合わせてもよい。さらに、前述されていない等価物および変形もまた本発明を逸脱することなく用いられてもよい。
【0084】
本記載の方法の特徴はハードウェアで実施されてもよく、本記載の装置の1つ以上の機能は方法ステップとして実施されてもよい。また、本記載の方法は記載されたとおりの順で実行する必要はなく、また必ずしも図に示したとおりの順で実行する必要もないことは、本開示の文脈から理解されよう。したがって、製品または装置を参照して記載されている本開示の態様もまた方法として実施されるものであり、逆もまた同様である。本記載の方法は、コンピュータプログラム、またはハードウェア、またはそれらの任意の組合せにより実施されてもよい。コンピュータプログラムは、ソフトウェア、ミドルウェア、ファームウェア、およびそれらの任意の組合せ、を含む。このプログラムは信号またはネットワークメッセージとして提供され、非一時的な形でコンピュータプログラムを記憶し得る有形のコンピュータ可読媒体などのコンピュータ可読媒体に記録されてもよい。ハードウェアは、コンピュータと、携帯端末と、プログラマブルプロセッサと、汎用プロセッサと、特定用途向け集積回路(Application Specific Integrated Circuit:ASIC)と、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field Programmable Gate Array:FPGA)と、論理ゲートアレイと、を含む。特に、前述のコントローラは、コンピュータ、携帯端末、プログラマブルプロセッサ、汎用プロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、および論理ゲートアレイなどのハードウェアの形で実施されてもよいことは理解されよう。
【0085】
本開示の他の実施例と変形とは、本開示の文脈から当業者には明らかなものである。
図1
図2