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特許7530385スイッチング回路のゲート駆動回路およびスイッチング電源の制御回路
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】スイッチング回路のゲート駆動回路およびスイッチング電源の制御回路
(51)【国際特許分類】
   H02M 1/08 20060101AFI20240731BHJP
   H02M 1/14 20060101ALI20240731BHJP
   H02M 3/155 20060101ALI20240731BHJP
   H03K 17/06 20060101ALI20240731BHJP
   H03K 17/687 20060101ALI20240731BHJP
   H03K 19/0175 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H02M1/08 C
H02M1/14
H02M3/155 X
H03K17/06 063
H03K17/687 A
H03K19/0175 210
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021564036
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046076
(87)【国際公開番号】W WO2021117821
(87)【国際公開日】2021-06-17
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2019224735
(32)【優先日】2019-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100133215
【弁理士】
【氏名又は名称】真家 大樹
(72)【発明者】
【氏名】新倉 浩樹
【審査官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-23269(JP,A)
【文献】特開2011-234430(JP,A)
【文献】特開2019-140752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 1/08
H02M 3/155
H03K 17/06
H03K 17/687
H03K 19/0175
H02M 1/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Nチャンネルのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むスイッチング回路のゲート駆動回路であって、
前記ハイサイドトランジスタのソースおよび前記ローサイドトランジスタのドレインと接続されるとともに、ブートストラップキャパシタの一端が接続されているスイッチング端子と、
前記ブートストラップキャパシタの他端が接続されるブートストラップ端子と、
前記スイッチング端子と接続されるスイッチングラインと、
前記ブートストラップ端子と接続されるブートストラップラインと、
その出力が前記ハイサイドトランジスタのゲートと接続され、その上側電源ノードが前記ブートストラップラインと接続され、その下側電源ノードが、前記スイッチングラインと接続されるハイサイドドライバと、
その出力が前記ローサイドトランジスタのゲートと接続されるローサイドドライバと、
定電圧が供給される定電圧ラインと前記ブートストラップラインの間に直列に設けられるPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタのスイッチおよび整流素子と、
前記ブートストラップラインと前記スイッチングラインの間の電位差であるハイサイド電源電圧を電源として動作し、前記ハイサイド電源電圧としきい値電圧との大小関係を示す検出信号を生成する比較回路と、
前記検出信号を接地電圧がローである信号にレベルシフトダウンするレベルシフト回路と、
前記レベルシフト回路の出力に応じて、前記ハイサイドトランジスタのスイッチングと非同期で前記スイッチを駆動するPMOS用ドライバと、
を備えることを特徴とするゲート駆動回路。
【請求項2】
前記レベルシフト回路は、
前記検出信号のポジティブエッジ、ネガティブエッジそれぞれに応答して、所定のパルス幅を有するセットパルス、リセットパルスを生成するパルス発生器と、
ソースが前記ブートストラップラインと接続され、前記セットパルスに応じてオンとなる第1トランジスタと、ソースが前記ブートストラップラインと接続され、前記リセットパルスに応じてオンとなる第2トランジスタと、を含むオープンドレイン回路と、
クロスカップルされた第1トランジスタおよび第2トランジスタを含み、前記オープンドレイン回路の出力に応答して状態遷移するラッチ回路と、
を含み、前記ラッチ回路の状態に応じた信号を出力することを特徴とする請求項1に記載のゲート駆動回路。
【請求項3】
前記レベルシフト回路は、電源ラインと接地ラインの間に設けられ、前記ラッチ回路の相補的な第1ノードおよび第2ノードのうち、前記レベルシフト回路の出力に応じた一方をローに固定するラッチ安定化回路をさらに含むことを特徴とする請求項2に記載のゲート駆動回路。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載のゲート駆動回路を備えることを特徴とするスイッチング電源の制御回路。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載のゲート駆動回路を備えることを特徴とするスイッチング電源。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、スイッチング回路に関する。
【背景技術】
【0002】
DC/DCコンバータや、AC/DCコンバータ、インバータをはじめとするパワーエレクトロニクスの分野において、ハーフブリッジ回路やフルブリッジ回路などのスイッチング回路が用いられる。
【0003】
図1は、スイッチング回路100Rの回路図である。スイッチング回路100Rは、直列に接続されるハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLと、それらを駆動するゲート駆動回路200Rを備える。ゲート駆動回路200Rは、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLのオン、オフを制御することにより、スイッチング端子SWを、ハイ状態(入力電圧VIN)およびロー状態(接地電圧0V)の二状態、あるいはそれにハイインピーダンス状態を加えた3状態で切り替える。
【0004】
ゲート駆動回路200Rは、ハイサイドドライバ202、ローサイドドライバ204および整流素子D1を備える。ハイサイドトランジスタMHはNチャンネルトランジスタであり、それをターンオンするためには、入力電圧VINより高い駆動電圧が必要となる。入力電圧VINより高い駆動電圧を生成するために、ブートストラップ回路が利用される。整流素子D1は、外付けのブートストラップキャパシタCとともにブートストラップ回路を構成する。ブートストラップキャパシタCの一端は、スイッチング回路100のスイッチング端子SWと接続され、その他端には、整流素子D1を介して、定電圧VREGが印加される。
【0005】
スイッチング端子SWがロー(すなわち0V)であるとき、ブートストラップキャパシタCは定電圧VREGで充電される。ローサイドドライバ204をロー出力、ハイサイドドライバ202をハイ出力とすると、ハイサイドトランジスタMHのゲートにはブートストラップ電圧Vが印加される。スイッチング端子SWの電圧V、すなわちハイサイドトランジスタMHのソース電圧が上昇すると、それにともなってブートストラップ電圧Vが上昇するため、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間に、しきい値より大きな駆動電圧を印加することができる。
【0006】
スイッチング素子としては、従来、シリコン(Si)のMOSFETやバイポーラトランジスタが用いられていたが、近年、その代替として、窒化ガリウム(GaN)を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT:High Electron Mobility Transistor)が注目されている。GaN-HEMTは、優れた高周波数特性、低い動作抵抗と高い耐圧を有しており、Siデバイスとの置き換えにより、DC/DCコンバータの高効率化、小型化が期待される。
【0007】
図1において、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLをGaN-HEMTで構成すると、ブートストラップキャパシタCに過電圧が印加されるおそれがある。この理由を説明する。
【0008】
ハイサイドトランジスタMHとローサイドトランジスタMLが同時にオンすると、貫通電流が流れるため、それを防止するために、ハイサイドトランジスタMHとローサイドトランジスタMLが両方オフとなるデッドタイムが挿入される。DC/DCコンバータをはじめとするいくつかのアプリケーションでは、スイッチング回路100がロー出力からハイ出力に遷移するときのデッドタイムの間、ローサイドトランジスタMLには逆電流が流れる。Si-MOSFETの場合、スイッチング端子SWの電圧Vは、ローサイドトランジスタMLのボディダイオードによって、-Vfにクランプされる。したがって整流素子D1の電圧降下を無視すれば、ブートストラップキャパシタCの両端間に印加される電圧は、VREG+Vfにクランプされる。
【0009】
これに対して、GaN-HEMTはボディダイオードを有しておらず、ローサイドトランジスタMLに逆電流が流れるとき、ドレインソース間電圧VDSが数Vと非常に大きくなる。そのため、ブートストラップキャパシタCの両端間には、VREG+VDSの電圧が印加され、過充電状態となる。
【0010】
ブートストラップキャパシタCが過充電された状態で、ハイサイドドライバ202がハイを出力すると、ハイサイドトランジスタMHのゲートソース間に過電圧が印加され、素子の信頼性が低下することとなる。
【0011】
この問題を解決するために、ブートストラップキャパシタCの両端間電圧VBSをクランプする必要がある。たとえば特許文献1には関連技術が開示されている。図2は、従来の駆動回路200Sの回路図である。具体的には特許文献1の駆動回路200Sでは、ブートストラップ用の整流素子(ダイオード)D1と直列にスイッチ(PMOSトランジスタ)SW1が挿入される。
【0012】
抵抗R11,R12は、ブートストラップ端子の電圧Vを、接地電圧との間で分圧する。抵抗R21,R22は、定電圧VREGを、スイッチング端子の電圧Vとの間で分圧する。分圧後の電圧V,Vは、スイッチSW11,SW12を介してコンパレータ208に入力される。スイッチSW11,SW12は、ローサイドトランジスタMLがオンの期間、オンとなるように制御される。ローサイドトランジスタMLがオンの期間は、V≒0Vとなるから、ブートストラップ端子の電圧V、すなわちブートストラップキャパシタCの両端間電圧VBSを、定電圧VREGにもとづくしきい値と比較することが可能となる。コンパレータ208の出力は、PMOSトランジスタSW1のゲートに入力される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【文献】米国特許出願公開第2013/0241621A1号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
特許文献1に記載の技術では、ローサイドトランジスタMLがオンの期間のみ、コンパレータSW1の電圧比較が行われており、ローサイドトランジスタMLがオフの期間は、スイッチSW11,SW12がオフとなり、コンパレータ208の入力電圧が保持され、比較結果も維持される。スイッチSW11,SW12がオフの期間、コンパレータ208の入力はハイインピーダンスとなり、ノイズの影響を受けやすい。したがってローサイドトランジスタMLがオフの期間に、コンパレータ208の入力端子にノイズが混入すると、コンパレータ208による誤検出が発生する。
【0015】
本開示は係る課題に鑑みてなされたものであり、そのある態様の例示的な目的のひとつは、ノイズ耐性を高めつつ、ブートストラップキャパシタの過充電を抑制可能なゲート駆動回路の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本開示のある態様は、Nチャンネルのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むスイッチング回路のゲート駆動回路に関する。ゲート駆動回路は、ハイサイドトランジスタのソースおよびローサイドトランジスタのドレインと接続されるとともに、ブートストラップキャパシタの一端が接続されているスイッチング端子と、ブートストラップキャパシタの他端が接続されるブートストラップ端子と、スイッチング端子と接続されるスイッチングラインと、ブートストラップ端子と接続されるブートストラップラインと、その出力がハイサイドトランジスタのゲートと接続され、その上側電源ノードがブートストラップラインと接続され、その下側電源ノードが、スイッチングラインと接続されるハイサイドドライバと、その出力がローサイドトランジスタのゲートと接続されるローサイドドライバと、定電圧が供給される定電圧ラインとブートストラップラインの間に直列に設けられるPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタのスイッチおよび整流素子と、ブートストラップラインとスイッチングラインの間の電位差であるハイサイド電源電圧を電源として動作し、ハイサイド電源電圧としきい値電圧との大小関係を示す検出信号を生成する比較回路と、検出信号を接地電圧がローである信号にレベルシフトダウンするレベルシフト回路と、レベルシフト回路の出力に応じて、ローサイドトランジスタのスイッチングと非同期でスイッチを駆動するPMOS用ドライバと、を備える。
【0017】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせや、各構成要素や表現を、方法、装置、システムなどの間で相互に置換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0018】
本開示のある態様によれば、ノイズ耐性を高めつつ、ブートストラップキャパシタの過充電を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】スイッチング回路の回路図である。
図2】従来の駆動回路の回路図である。
図3】実施の形態に係るゲート駆動回路を備えるスイッチング回路のブロック図である。
図4図4(a)、(b)は、図3のスイッチング回路の動作波形図(シミュレーション結果)である。
図5図3のスイッチング回路の動作波形図(シミュレーション結果)である。
図6】レベルシフタの構成例を示す回路図である。
図7】レベルシフタのさらに具体的な構成例を示す回路図である。
図8】レベルシフタの別の構成例を示す回路図である。
図9】実施の形態に係るスイッチング電源の制御回路のブロック図である。
図10図10(a)~(f)は、ゲート駆動回路を備える電源の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態の概要)
本開示のいくつかの例示的な実施形態の概要を説明する。この概要は、後述する詳細な説明の前置きとして、実施形態の基本的な理解を目的として、1つまたは複数の実施形態のいくつかの概念を簡略化して説明するものであり、発明あるいは開示の広さを限定するものではない。またこの概要は、考えられるすべての実施形態の包括的な概要ではなく、実施形態の欠くべからざる構成要素を限定するものではない。便宜上、「一実施形態」は、本明細書に開示するひとつの実施形態(実施例や変形例)または複数の実施形態(実施例や変形例)を指すものとして用いる場合がある。
【0021】
一実施形態は、Nチャンネルのハイサイドトランジスタおよびローサイドトランジスタを含むスイッチング回路のゲート駆動回路に関する。ゲート駆動回路は、ハイサイドトランジスタのソースおよびローサイドトランジスタのドレインと接続されるとともに、ブートストラップキャパシタの一端が接続されているスイッチング端子と、ブートストラップキャパシタの他端が接続されるブートストラップ端子と、スイッチング端子と接続されるスイッチングラインと、ブートストラップ端子と接続されるブートストラップラインと、その出力がハイサイドトランジスタのゲートと接続され、その上側電源ノードがブートストラップラインと接続され、その下側電源ノードが、スイッチングラインと接続されるハイサイドドライバと、その出力がローサイドトランジスタのゲートと接続されるローサイドドライバと、定電圧が供給される定電圧ラインとブートストラップラインの間に直列に設けられるPMOS(P-channel Metal Oxide Semiconductor)トランジスタのスイッチおよび整流素子と、ブートストラップラインとスイッチングラインの間の電位差であるハイサイド電源電圧を電源として動作し、ハイサイド電源電圧としきい値電圧との大小関係を示す検出信号を生成する比較回路と、検出信号を接地電圧がローである信号にレベルシフトダウンするレベルシフト回路と、レベルシフト回路の出力に応じて、ローサイドトランジスタのスイッチングと非同期でスイッチを駆動するPMOS用ドライバと、を備える。
【0022】
この構成によると、ローサイドトランジスタのオン、オフにかかわらず、常時、比較回路によってブートストラップキャパシタの両端間に生ずるハイサイド電源電圧を監視することができる。したがって、比較回路の入力がハイインピーダンスとなる期間が存在せず、ノイズ耐性を高めることができる。
【0023】
一実施形態において、レベルシフト回路は、検出信号のポジティブエッジ、ネガティブエッジそれぞれに応答して、所定のパルス幅を有するセットパルス、リセットパルスを生成するパルス発生器と、ソースがブートストラップラインと接続され、セットパルスに応じてオンとなる第1トランジスタと、ソースがブートストラップラインと接続され、リセットパルスに応じてオンとなる第2トランジスタと、を含むオープンドレイン回路と、クロスカップルされた第1トランジスタおよび第2トランジスタを含み、オープンドレイン回路の出力に応答して状態遷移するラッチ回路と、を含み、ラッチ回路の状態に応じた信号を出力してもよい。
【0024】
この構成によれば、ハイサイドの検出信号を低遅延でローサイドに伝送することができる。
【0025】
一実施形態において、レベルシフト回路は、電源ラインと接地ラインの間に設けられ、ラッチ回路の相補的な第1ノードおよび第2ノードのうち、レベルシフト回路の出力に応じた一方をローに固定するラッチ安定化回路をさらに含んでもよい。ラッチ安定化回路によってレベルシフト回路の出力に応じて、第1ノードと第2ノードに作用することにより、ラッチ回路の状態を固定することができる。ラッチ安定化回路は、ラッチ回路の状態を遷移させる必要はないため、動作電流は非常に少なくて済む。加えて、ラッチ安定化回路は、ハイサイドラインとスイッチングラインの間に設けられ、それらの電位差は、5Vや12V程度であるため、ラッチ回路の状態を固定するために、電位差が数百Vであるハイサイドラインと接地ラインの間に電流を流す場合に比べて、消費電力を大幅に削減できる。
【0026】
(実施形態)
以下、実施の形態について図面を参照しながら説明する。各図面に示される同一または同等の構成要素、部材、処理には、同一の符号を付するものとし、適宜重複した説明は省略する。また、実施の形態は、発明を限定するものではなく例示であって、実施の形態に記述されるすべての特徴やその組み合わせは、必ずしも発明の本質的なものであるとは限らない。
【0027】
本明細書において、「部材Aが、部材Bと接続された状態」とは、部材Aと部材Bが物理的に直接的に接続される場合のほか、部材Aと部材Bが、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0028】
同様に、「部材Cが、部材Aと部材Bの間に設けられた状態」とは、部材Aと部材C、あるいは部材Bと部材Cが直接的に接続される場合のほか、それらの電気的な接続状態に実質的な影響を及ぼさない、あるいはそれらの結合により奏される機能や効果を損なわせない、その他の部材を介して間接的に接続される場合も含む。
【0029】
図3は、実施の形態に係るゲート駆動回路200を備えるスイッチング回路100のブロック図である。スイッチング回路100は、ハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタML、ブートストラップキャパシタCおよびゲート駆動回路200を備える。ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLは、GaN-HEMT(GaN-FET)である。
【0030】
ゲート駆動回路200は、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLを制御する。ゲート駆動回路200は、ハイサイドパルスSHがハイのとき、ハイサイドトランジスタMHをオン、ローのとき、ハイサイドトランジスタMHをオフする。またゲート駆動回路200は、制御信号SLがハイのとき、ローサイドトランジスタMLをオン、ローのとき、ローサイドトランジスタMLをオフする。
【0031】
ゲート駆動回路200は、ハイサイドドライバ202、ローサイドドライバ204、レベルシフタ206、ダイオード(整流素子)D1、スイッチSW1、比較回路210、レベルシフト回路220D、PMOS用ドライバ212を備え、ひとつの半導体基板に集積化されている。
【0032】
ゲート駆動回路200の出力ピンHOは、ハイサイドトランジスタMHのゲートと接続され、スイッチングピン(端子)VSは、ハイサイドトランジスタMHのソースおよびローサイドトランジスタMLのドレインと接続される。ゲート駆動回路200の出力ピンLOは、ローサイドトランジスタMLのゲートと接続される。
【0033】
ローサイドドライバ204は、ローサイドパルスSLにもとづいてローサイドトランジスタMLを駆動する。具体的にはローサイドドライバ204は、ローサイドパルスSLがハイのときハイ電圧VREGを、ローサイドパルスSLがローのときロー電圧(0V)を、ローサイドトランジスタMLのゲートに印加する。
【0034】
ブートストラップキャパシタCの一端はVSピンと接続され、その他端はVBピンと接続されている。VSピンと接続される配線をスイッチングラインVSと称する。同様にVBピンと接続される配線をブートストラップラインVBと称する。
【0035】
レベルシフタ206は、ハイサイドパルスSHをレベルシフトし、ハイサイドドライバ202に供給する。ハイサイドドライバ202は、その出力がハイサイドトランジスタMHのゲートと接続され、その上側電源ノードN1がブートストラップラインVBと接続され、その下側電源ノードN2が、スイッチングラインVSと接続される。ハイサイドドライバ202は、ブートストラップピンVBとスイッチングピンVSの電位差VBS=V-V、つまりブートストラップキャパシタCの両端間電圧を電源電圧として動作する。したがって、VBSをハイサイド電源電圧と称する。
【0036】
ハイサイドドライバ202は、レベルシフト後のハイサイドパルスSH’に応じて、ハイサイドトランジスタMHを駆動する。具体的には、ハイサイドドライバ202は、ハイサイドパルスSHがハイのときハイ電圧Vを、ハイサイドパルスSHがローのときロー電圧Vを、ハイサイドトランジスタMHのゲートに印加する。
【0037】
PMOSトランジスタであるスイッチSW1と、整流素子であるダイオードD1は、定電圧VREGが供給される定電圧ライン(REGラインと称する)とブートストラップラインVBの間に直列に設けられる。
【0038】
比較回路210は、ブートストラップラインVBとスイッチングラインVSの間の電位差VBS(ハイサイド電源電圧)を電源として動作する。比較回路210は、ハイサイド電源電圧VBSをその目標電圧VBS(REF)を規定するしきい値電圧VTHと比較し、それらの大小関係を示す過電圧検出信号OVDETを生成する。検出信号OVDETは、VBS>VTHの過電圧状態においてハイ、VBS<VTHのときローとなる。比較回路210は、電圧コンパレータを用いて構成することができる。
【0039】
レベルシフト回路230は、検出信号OVDETを、接地電圧がローである信号LVS_OUTにレベルシフトダウンする。
【0040】
PMOS用ドライバ212は、レベルシフト回路230の出力LVS_OUTに応じて、ハイサイドトランジスタMHおよびローサイドトランジスタMLのスイッチングと非同期でスイッチSW1を駆動する。スイッチSW1は、過電圧検出信号OVDETがハイ(VBS>VTH)のときオフ、過電圧検出信号OVDETがロー(VBS<VTH)のときにオンとなる。
【0041】
以上がゲート駆動回路200およびスイッチング回路100の構成である。続いてその動作を説明する。図4(a)、(b)は、図3のスイッチング回路100の動作波形図(シミュレーション結果)である。図4(b)は、図4(a)の時間軸を拡大したものである。シミュレーションは、VCC=VREG=5V、発振周波数1MHz、オン時間Ton=50ns、VIN=90V、デッドタイム30ns、C=1μsの条件で行った。
【0042】
図5は、電圧V,V、ハイサイド電源電圧VBS、過電圧検出信号OVDET、スイッチSW1のゲート電圧VPGATEの波形図(シミュレーション結果)である。ハイサイド電源電圧VBSがしきい値VTHを超えると、過電圧検出信号OVDETがハイ、PGATE信号がハイとなり、スイッチSW1がオフする。この間、ハイサイド電源電圧VBSは低下していく。そしてハイサイド電源電圧VBSがしきい値VTHを下回ると、過電圧検出信号OVDETがロー、PGATE信号がローとなり、スイッチSW1がオンする。この間、ブートストラップ回路がアクティブとなり、ハイサイド電源電圧VBSは、スイッチング電圧Vがスイッチングするたびに上昇する。この例では、ハイサイド電源電圧VBSのリップル幅は70mVと非常に小さい。
【0043】
以上がスイッチング回路100の動作である。実施の形態に係るゲート駆動回路200によれば、ローサイドトランジスタMLのオン、オフにかかわらず、常時、比較回路210によってブートストラップキャパシタCの両端間に生ずるハイサイド電源電圧VBSを監視することができる。したがって、比較回路210の入力がハイインピーダンスとなる期間が存在せず、ノイズ耐性を高めることができる。
【0044】
従来技術では、比較回路210の停止期間が存在するため、ハイサイド電源電圧VBSのリップルが大きくなる。これに対して実施の形態に係るゲート駆動回路200によれば、ハイサイド電源電圧VBSのリップルを小さくできる。
【0045】
図6は、レベルシフト回路220Dの構成例を示す回路図である。レベルシフト回路220Dは、Vをハイ、Vをローとする入力信号LVS_IN(上述の検出信号OVDET)を、電源電圧VCC(あるいはVREG)ハイ、接地電圧0Vをローとする出力信号LVS_OUT(LVS_OUT)に変換するレベルシフトダウン回路である。
【0046】
レベルシフト回路220Dは、パルス発生器230D、オープンドレイン回路232D、ラッチ回路240D、ロジック回路260D、ラッチ安定化回路280D、を有する。
【0047】
パルス発生器230Dは、ワンショット回路であり、入力信号LVS_INのポジティブエッジ、ネガティブエッジに応答して、所定のパルス幅の期間、ローとなる負論理のセットパルスSET、リセットパルスRSTを生成する。
【0048】
オープンドレイン回路232Dは、PMOSトランジスタMP11,MP12を備える。第1トランジスタMP11は、ソースがブートストラップラインVBと接続され、セットパルスSETに応じてオンとなる。第2トランジスタMP12は、ソースがブートストラップラインVBと接続され、リセットパルスRSTに応じてオンとなる。
【0049】
ラッチ回路240Dは、PMOSトランジスタMP21,MP22を含む。第1トランジスタMP21および第2トランジスタMP22は、クロスカップルされ、オープンドレイン回路232Dの出力に応答して状態遷移する。
【0050】
ラッチ安定化回路280Dは、ラッチ回路240Dの相補的な第1ノードN21および第2ノードN22のうち、レベルシフト回路220Dの出力LVS_OUTに応じた一方をハイに固定する。
【0051】
ロジック回路260Dは、ラッチ回路240の出力(第1ノードN21、第2ノードN22の電圧の少なくとも一方)を受け、レベルシフト出力信号LVS_OUTを生成する。
【0052】
ラッチ安定化回路280Dは、ラッチ回路240Dの相補的な第1ノードN21および第2ノードN22のうち、レベルシフト回路220の出力LVS_OUTのレベル(ハイ、ロー)に応じた一方のローを維持するように構成される。
【0053】
たとえばラッチ安定化回路280Dは、LVS_OUTがハイ、すなわち第1ノードN21がハイのときに、第1ノードN21のハイを維持するように動作し、LVS_OUTがロー、すなわち第2ノードN22がハイのときに、第2ノードN22のハイを維持するように動作する。
【0054】
あるいは反対に、ラッチ安定化回路280Dは、LVS_OUTがハイ、すなわち第1ノードN21がハイのときに、第2ノードN22のローを維持するように動作し、LVS_OUTがロー、すなわち第2ノードN22がハイのときに、第1ノードN21のローを維持するように構成されてもよい。
【0055】
図7は、レベルシフト回路220Dのさらに具体的な構成例を示す回路図である。ロジック回路260Dは、レベルシフタ兼ラッチ回路262D、インバータINV1,INV2を含む。
【0056】
レベルシフタ兼ラッチ回路262Dは、ラッチ回路240Dの出力を受け、ラッチする。レベルシフタ兼ラッチ回路262Dは、ラッチ回路240の出力を、電圧VCCをハイレベル、電圧0Vをローレベルとする信号にシフトダウンする。レベルシフタ兼ラッチ回路262は、トランジスタMN31,MN32,MP33~MP38を含む。レベルシフタ兼ラッチ回路262Dの出力は、2段のインバータINV、INV2を経て出力される。
【0057】
ラッチ安定化回路280Dは、スイッチSW1、第2スイッチSW2、第1インピーダンス素子284_1、第2インピーダンス素子284_2、第1カレントミラー回路286_1、第2カレントミラー回路286_2を含む。第1スイッチSW1は、レベルシフト回路220の出力LVS_OUTが第1レベル(ハイ)のときにオンとなる。第1インピーダンス素子284_1は、第1スイッチSW1と直列に接続される。第1カレントミラー回路286_1は、第1インピーダンス素子284_1に流れる電流をコピーし、第1ノードN21に電流IAUX_SETをソースする。これにより、ノードN21がプルアップされる。
【0058】
第2スイッチSW2は、レベルシフト回路220Dの出力LVS_OUTが第2レベル(ロー)のときにオンとなる。第2インピーダンス素子284_2は、第2スイッチSW2と直列に接続される。第2カレントミラー回路286_2は、第2インピーダンス素子284_2に流れる電流をコピーし、第2ノードN22に電流IAUX_RSTをソースする。これにより、ノードN22がプルアップされる。
【0059】
図8は、レベルシフト回路220Dの別の構成例(220E)を示す回路図である。図8のレベルシフト回路220Eは、図7のレベルシフト回路220Dに加えて、アシスト回路250Eを備える。アシスト回路250Eは、セットパルスSETに応答して第2ノードN22からアシスト電流IASST_SETをシンクし、リセットパルスRSTに応答して第1ノードN21からアシスト電流IASST_RSTをシンクする。アシスト回路250Eを追加することにより、さらに高速化が可能となる。
【0060】
続いてスイッチング回路100および駆動回路200の用途を説明する。ゲート駆動回路200は、絶縁型あるいは非絶縁型電源に利用できる。図9は、実施の形態に係るスイッチング電源のブロック図である。このスイッチング電源300は、降圧(Buck)コンバータであり、ハイサイドトランジスタMH、ローサイドトランジスタML、インダクタL1、出力キャパシタC1および制御回路400を備える。制御回路400は、上述のゲート駆動回路200に加えて、フィードバック回路410を備える。フィードバック回路410は、スイッチング電源300の出力信号(出力電圧VOUTあるいは出力電流IOUT)にもとづくフィードバック信号VFBを受け、フィードバック信号VFBが所定の目標値に近づくようにデューティ比や周波数が変化するパルス信号SH,SLを生成する。フィードバック回路410は、パルス幅変調器やパルス周波数変調器などを含むことができ、アナログ回路(エラーアンプ)やデジタル回路(補償器)で構成することができる。
【0061】
図10(a)~(f)は、ゲート駆動回路200を備える電源の回路図である。ゲート駆動回路200は、図10(a)に示す降圧コンバータのトランジスタA,Bのペアの駆動に適用できる。
【0062】
ゲート駆動回路200は、図10(b)に示すフォワードコンバータにも適用可能である。具体的にはゲート駆動回路200は、一次側のハイサイドトランジスタBとローサイドトランジスタAのペアの駆動に利用できる。
【0063】
ゲート駆動回路200は、図10(c)に示すハーフブリッジコンバータにも適用可能である。具体的にはゲート駆動回路200は、一次側のハイサイドトランジスタBとローサイドトランジスタAのペアの駆動に利用できる。
【0064】
ゲート駆動回路200は、図10(d)に示すフルブリッジブリッジコンバータにも適用可能である。具体的にはゲート駆動回路200は、一次側のハイサイドトランジスタBとローサイドトランジスタAのペア、一次側のハイサイドトランジスタDとローサイドトランジスタCのペアに利用できる。
【0065】
ゲート駆動回路200は、図10(e)に示すカレントダブラ同期整流器にも適用可能である。具体的にはゲート駆動回路200は、一次側のハイサイドトランジスタBとローサイドトランジスタAのペアの駆動に利用できる。
【0066】
ゲート駆動回路200は、図10(f)に示す二次側フルブリッジ同期整流器にも適用可能である。具体的にはゲート駆動回路200は、一次側のハイサイドトランジスタBとローサイドトランジスタAのペア、あるいはハイサイドトランジスタCとローサイドトランジスタDのペアの駆動に利用できる。またゲート駆動回路200は、二次側のハイサイドトランジスタFとローサイドトランジスタEのペア、あるいはハイサイドトランジスタGとローサイドトランジスタHのペアの駆動に利用できる。
【0067】
実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。以下、こうした変形例について説明する。
【0068】
スイッチング回路は、電源のほか、モータ駆動回路などさまざまな用途で使用されており、本発明は電源以外の用途にも適用可能である。
【0069】
実施の形態は、本発明の原理、応用を示しているにすぎず、実施の形態には、請求の範囲に規定された本発明の思想を逸脱しない範囲において、多くの変形例や配置の変更が認められる。
【産業上の利用可能性】
【0070】
本発明は、スイッチング回路に利用できる。
【符号の説明】
【0071】
100 スイッチング回路
MH ハイサイドトランジスタ
ML ローサイドトランジスタ
ブートストラップキャパシタ
200 ゲート駆動回路
202 ハイサイドドライバ
204 ローサイドドライバ
206 レベルシフタ
D1 ダイオード
SW1 スイッチ
210 比較回路
212 PMOS用ドライバ
220 レベルシフト回路
230D パルス発生器
232D オープンドレイン回路
240D ラッチ回路
260D ロジック回路
262D レベルシフタ兼ラッチ回路
280D ラッチ安定化回路
INV1,INV2 インバータ
300 DC/DCコンバータ
310 コントローラ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10