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特許75303871つ以上の電気的に制御可能なプライバシーガラス構造を動作させるためのシステムおよび方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】1つ以上の電気的に制御可能なプライバシーガラス構造を動作させるためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/133 20060101AFI20240731BHJP
   G02F 1/13 20060101ALI20240731BHJP
   G02F 1/1334 20060101ALI20240731BHJP
   G02F 1/1337 20060101ALI20240731BHJP
   G02F 1/15 20190101ALI20240731BHJP
【FI】
G02F1/133 580
G02F1/13 505
G02F1/1334
G02F1/1337
G02F1/15 502
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2021564567
(86)(22)【出願日】2020-04-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-06-30
(86)【国際出願番号】 US2020030394
(87)【国際公開番号】W WO2020223297
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-04-27
(31)【優先権主張番号】62/840,026
(32)【優先日】2019-04-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】504076839
【氏名又は名称】カーディナル アイジー カンパニー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニコラス シュルダー
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ユール
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム エミール ジュリアン スケトラー
(72)【発明者】
【氏名】ピーター ウォーリー
【審査官】磯崎 忠昭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-218431(JP,A)
【文献】特表2019-503510(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0239209(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/133
G02F 1/13
G02F 1/1334
G02F 1/1337
G02F 1/15-1/19
B06B 3/66
B06B 9/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プライバシーガラス構造を電気的に制御するための方法であって、
ドライバによって電気駆動信号をプライバシーガラス構造に印加することであって、前記電気駆動信号が、第1の駆動パラメータを有し、前記第1の駆動パラメータが、第1の値を有する、印加することと、
前記ドライバによって電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加し、前記電気感知パルスに応答して、前記プライバシーガラス構造の電気的応答を測定することと、
前記電気感知パルスに対する前記測定された応答に基づいて、前記プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けることと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前の時間において特徴付けられた対応する1つ以上のパラメータと、閾値量を超えて異なるかどうかを決定することと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なる場合、前記第1の駆動パラメータを、前記第1の値とは異なる第2の値に調整することと、を含み、
前記電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加することは、前記プライバシーガラス構造が、前記前の時間において特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが生成されたときにおける前記プライバシーガラス構造の温度とは異なる温度にあるとき、前記電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加することを含む、方法。
【請求項2】
プライバシーガラス構造を電気的に制御するための方法であって、
ドライバによって電気駆動信号をプライバシーガラス構造に印加することであって、前記電気駆動信号が、第1の駆動パラメータを有し、前記第1の駆動パラメータが、第1の値を有する、印加することと、
前記ドライバによって電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加し、前記電気感知パルスに応答して、前記プライバシーガラス構造の電気的応答を測定することと、
前記電気感知パルスに対する前記測定された応答に基づいて、前記プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けることと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前の時間において特徴付けられた対応する1つ以上のパラメータと、閾値量を超えて異なるかどうかを決定することと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なる場合、前記第1の駆動パラメータを、前記第1の値とは異なる第2の値に調整することと、を含み、
前記電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加することが、複数の電気感知パルスをある期間にわたって前記プライバシーガラス構造に印加し、前記電気感知パルスの各々に応答して、前記プライバシーガラス構造の前記電気的応答を測定することを含み、
前記電気感知パルスに対する前記測定された応答に基づいて前記プライバシーガラス構造の前記1つ以上のパラメータを特徴付けることが、前記複数の電気感知パルスの各々に対する前記測定された応答に基づいて前記プライバシーガラス構造の前記1つ以上のパラメータを特徴付けることを含み、
経時的に前記1つ以上の特徴付けられたパラメータの傾向を決定することと、
前記決定された傾向に基づいて、経時的に前記第1の駆動パラメータの前記値を自動的に変更するためのスケジュールを確立することと、をさらに含み、
1つ以上の温度センサから温度データを受信することをさらに含み、経時的に前記1つ以上の特徴付けられたパラメータの傾向を決定することが、温度に関して前記1つ以上の特徴付けられたパラメータの傾向を決定することを含む、方法。
【請求項3】
プライバシーガラス構造を電気的に制御するための方法であって、
ドライバによって電気駆動信号をプライバシーガラス構造に印加することであって、前記電気駆動信号が、第1の駆動パラメータを有し、前記第1の駆動パラメータが、第1の値を有する、印加することと、
前記ドライバによって電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加し、前記電気感知パルスに応答して、前記プライバシーガラス構造の電気的応答を測定することと、
前記電気感知パルスに対する前記測定された応答に基づいて、前記プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けることと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前の時間において特徴付けられた対応する1つ以上のパラメータと、閾値量を超えて異なるかどうかを決定することと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なる場合、前記第1の駆動パラメータを、前記第1の値とは異なる第2の値に調整することと、を含み、
前記プライバシーガラス構造が、電気的に制御可能な光学活性材料を拘束している一対の電極層を含み、前記電気駆動信号を前記プライバシーガラス構造に印加することが、前記電気駆動信号を前記一対の電極層に印加することを含み、
前記電気的に制御可能な光学活性材料は、液晶材料である、方法。
【請求項4】
プライバシーガラス構造を電気的に制御するための方法であって、
ドライバによって電気駆動信号をプライバシーガラス構造に印加することであって、前記電気駆動信号が、第1の駆動パラメータを有し、前記第1の駆動パラメータが、第1の値を有する、印加することと、
前記ドライバによって電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加し、前記電気感知パルスに応答して、前記プライバシーガラス構造の電気的応答を測定することと、
前記電気感知パルスに対する前記測定された応答に基づいて、前記プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けることと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前の時間において特徴付けられた対応する1つ以上のパラメータと、閾値量を超えて異なるかどうかを決定することと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なる場合、前記第1の駆動パラメータを、前記第1の値とは異なる第2の値に調整することと、を含み、
前記測定された応答が、前記プライバシーガラス構造の両端の経時的な電圧および/または前記プライバシーガラス構造を通る経時的な電流の測度を含む、方法。
【請求項5】
プライバシーガラス構造を電気的に制御するための方法であって、
ドライバによって電気駆動信号をプライバシーガラス構造に印加することであって、前記電気駆動信号が、第1の駆動パラメータを有し、前記第1の駆動パラメータが、第1の値を有する、印加することと、
前記ドライバによって電気感知パルスを前記プライバシーガラス構造に印加し、前記電気感知パルスに応答して、前記プライバシーガラス構造の電気的応答を測定することと、
前記電気感知パルスに対する前記測定された応答に基づいて、前記プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けることと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前の時間において特徴付けられた対応する1つ以上のパラメータと、閾値量を超えて異なるかどうかを決定することと、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なる場合、前記第1の駆動パラメータを、前記第1の値とは異なる第2の値に調整することと、を含み、
前記電気感知パルスに対する前記測定された応答に基づいて前記プライバシーガラス構造の前記1つ以上のパラメータを特徴付けることが、前記プライバシーガラス構造と関連する抵抗値、前記プライバシーガラス構造と関連する静電容量値、前記プライバシーガラス構造と関連するインダクタンス値、前記プライバシーガラス構造と関連するRCパラメータ、前記プライバシーガラス構造と関連するRLパラメータ、または前記プライバシーガラス構造と関連するRLCパラメータを決定することを含む、方法。
【請求項6】
前記第1の駆動パラメータを調整することが、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータのデータベース関連の値を、前記第1の駆動パラメータの対応する値と照合すること、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータと、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータとの間の大きさの変化に基づく量だけ、前記第1の駆動パラメータの前記第1の値を調整すること、または
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータと、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータとの間の前記変化に比例する量だけ、前記第1の駆動パラメータの前記第1の値を調整すること、のうちの1つを含む、請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが経年変化を表すかどうかを決定することをさらに含み、
前記1つ以上のパラメータが経年変化を表す場合、前記第1の駆動パラメータを、前記第1の値とは異なる値である第2の値に調整することが、経年変化に対応する所定の調整を適用することを含む、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記電気駆動信号が、複数の駆動パラメータを含み、前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なる場合、前記複数の駆動パラメータのうちの第2の駆動パラメータの値を調整することをさらに含む、求項1から請求項7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の駆動パラメータが、電圧、波形形状、波形周波数、最大電流、デューティサイクル、平均電流、RMS電流、またはスルーレートを含む、請求項1から請求項8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記電気駆動信号が、パルス幅変調された方形波を含み、前記第1の駆動パラメータが、レール電圧または設定電圧を含む、求項1から請求項9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けることが、前記ドライバによって前記1つ以上のパラメータを特徴付けることを含み、
前記1つ以上のパラメータを比較することが、前記ドライバによって前記1つ以上のパラメータを比較することを含み、
前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なるかどうかを決定することは、前記電気感知パルスに応答して特徴付けられた前記1つ以上のパラメータが、前記前の時間において特徴付けられた前記対応する1つ以上のパラメータと、前記閾値量を超えて異なるかどうかを、前記ドライバによって決定することを含む、求項1から請求項10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記ドライバが、電源と前記プライバシーガラス構造との間に電気的に結合され、プロセッサ、非一時的コンピュータ可読媒体、および電気回路を含み、前記非一時的コンピュータ可読媒体が、前記プロセッサに、前記電気回路を制御させて前記電気駆動信号を前記プライバシーガラス構造に印加させるように構成された命令を含む、求項1から請求項11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
前記第1の駆動パラメータを前記第2の値に調整した後、前記第2の値を有する前記第1の駆動パラメータを用いて前記電気駆動信号を使用して、前記電気駆動信号を前記プライバシーガラス構造に印加することをさらに含む、求項1から請求項12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
前記プライバシーガラス構造に印加される前記電気感知パルスが、少なくとも異なる周波数を有することによって、前記電気駆動信号とは異なる、請求項1から請求項13のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連事項
本出願は、2019年4月29日に出願された米国仮特許出願第62/840,026号の利益を主張し、その全容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本開示は、電気的に制御可能な光学活性材料を含む構造に関し、より具体的には、電気的に制御可能な光学活性材料を制御するためのドライバに関する。
【背景技術】
【0003】
制御可能な光変調を有する窓、ドア、パーティション、および他の構造が、市場で人気を集めている。これらの構造は、ユーザが構造を通して見ることができる透明状態から、構造を通して見ることを抑制するプライベート状態に変換するそれらの能力のために、一般に「スマート」構造または「プライバシー」構造と称される。例えば、プライバシーの制御および視覚的な暗色化を提供するために、スマートウィンドウは高級自動車および家庭で使用されており、スマートパーティションはオフィス空間の壁として使用されている。
【0004】
スマート構造には、光透過性の制御を提供するために種々の異なる技術を使用することができる。例えば、エレクトロクロミック技術、フォトクロミック技術、サーモクロミック技術、懸濁粒子技術、および液晶技術はすべて、制御可能なプライバシーを提供するために異なるスマート構造用途で使用されている。これらの技術は、概して、透明状態からプライバシー状態へ、またはその逆に変換するために、電気などのエネルギー源を使用する。
【0005】
実際には、電気ドライバを使用して、光学活性材料を制御または「駆動」することができる。ドライバは、電気エネルギーを光学活性材料に印加するか、または印加を停止して、透明状態とプライバシー状態の間で遷移するか、またはその逆を行うことができる。さらに、ドライバは、特定の状態に遷移すると、その状態を維持するのを助けるために、電気信号を光学活性材料に印加することができる。例えば、ドライバは、交番する極性の電気信号を光学活性材料に印加して、光学活性材料を状態間で遷移させ、および/または光学活性材料を遷移状態に維持することができる。
【0006】
様々な構成では、光学活性材料を含む特定の光学的に制御可能な構造(例えば、プライバシー構造)は、ドライバによって提供される特定の対応する電気駆動信号で最もよく駆動される。例えば、いくつかの実施形態では、異なる電気駆動信号は、異なるサイズの構造または異なる電気的特性を有する構造により適している場合がある。したがって、特定の構造には、特定の構造に対応する特定の電気駆動信号を提供するように構成された対応するドライバがしばしば提供される。
【0007】
しかしながら、対応する構造には適切であるが、かかるドライバによって提供される電気駆動信号は、交換用構造などの他の構造に適切な電気駆動信号を提供するのには不適切である場合がある。さらに、ドライバによって提供される電気駆動信号は、最初に設置されたときの構造には好適な場合があるが、ドライバの特性は、経過年数、周囲の動作条件などのいくつかの要因に基づいて変化する場合がある。したがって、対応するドライバによって提供される電気駆動信号は、常に構造に好適であるとは限らない可能性がある。
【発明の概要】
【0008】
概して、本開示は、制御可能なプライバシーを提供する電気的に制御可能な光学活性材料を組み込んだプライバシーガラス構造を対象とする。本開示によるプライバシーガラス構造は、窓、ドア、天窓、内部パーティション、またはさらには制御可能な可視透過率が望まれる他の構造の形態で実装することができる。いずれの場合も、プライバシー構造は、窓ガラス間に電気的に制御可能な媒体を含む、透明材料の複数の窓ガラスから製造することができる。透明材料の各窓ガラスは、電極層を担持することができ、電極層は、窓ガラス上に堆積された導電性で光学的に透明な材料の層として実装され得る。光学活性材料は、例えば、電極層に通信可能に結合された電気ドライバを介して、例えば、光学活性材料への電気エネルギーの印加および/または除去を制御することによって制御することができる。例えば、ドライバは、光学活性材料からの電気エネルギーの印加および/または除去を制御することができ、それにより、光学活性材料は、構造を通る可視性が阻害される散乱状態から、構造を通る可視性が比較的クリアである透明状態に遷移する。
【0009】
コントローラと称されることもある電気ドライバは、充電式および/または交換可能なバッテリおよび/または壁もしくは主電源などの電源から電力を受け取るように設計され得る。電気ドライバは、例えば、電源から受け取られた電気の周波数、振幅、波形、および/または他の特性を変更することによって、電源から受け取られた電気を調整することができる。電気ドライバは、調整された電気信号を、光学活性材料に電気的に結合された電極に送達することができる。さらに、ユーザ入力または他の制御情報に応答して、電気ドライバは、電極に送達される調整された電気信号を変更し、および/または電極への電気の送達を停止することができる。したがって、電気ドライバは、光学活性材料に送達される電気信号を制御し、それによって、特定の光学状態を維持するように、またはある状態(例えば、透明状態もしくは散乱状態)から別の状態に遷移するように材料を制御することができる。
【0010】
様々な実施形態では、ドライバは、第1の駆動パラメータを有する電気駆動信号をプライバシーガラス構造に提供することができ、第1の駆動パラメータは第1の値を有する。ドライバは、電気感知パルスをプライバシーガラス構造に印加し、電気感知パルスに対するプライバシーガラス構造の電気的応答を測定することができる。本開示によるいくつかの方法は、電気感知パルスに対する測定された応答に基づいて、プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けることを含む。1つ以上の特徴付けられたパラメータは、前の時間において特徴付けられた対応する1つ以上のパラメータを考慮して分析することができる。いくつかの例では、1つ以上の特徴付けられたパラメータが、前の時間において特徴付けられた対応する1つ以上のパラメータと異なる場合、駆動信号の第1のパラメータは、第1の値とは異なる第2の値に調整され得る。いくつかのかかる例では、電気駆動信号は、プライバシーガラス構造の変化するパラメータによりよく一致するように調整される。
【0011】
様々な実施形態では、電気感知パルスは、プライバシーガラス構造に複数の時間に印加することができ、例えば、環境パターン(例えば、毎日、季節性など)に起因する、変化する特性および/または1つ以上の駆動パラメータの対応する変化の傾向を確定することができる。追加的または代替的に、電気感知パルスは、異なる周囲温度などの複数の様々な環境条件中に、プライバシーガラス構造に印加することができる。かかる変化する条件に起因するプライバシーガラス構造の変化する特性を追跡し、将来検出される環境の変化に基づいて電気駆動信号をカスタマイズするために使用することができる。
【0012】
電気駆動信号の1つ以上のパラメータを調整することに加えて、またはその代わりに、本開示の態様は、プライバシーガラス構造(例えば、未知の特性を有するプライバシーガラス構造)の電気的に制御可能な光学活性材料に駆動を電気的に結合することを含むことができる。感知パルスは、ドライバから、電気的に制御可能な光学活性材料に印加することができ、印加された感知パルスに対するプライバシーガラス構造の電気的応答を測定することができる。印加された感知パルスに対する測定された電気的応答に基づいて、プライバシーガラス構造の1つ以上の電気的パラメータを特徴付けることができる。特徴付けられた1つ以上の電気的特性に基づいて、ドライバが後で使用するために1つ以上の駆動パラメータをロードすることができる。いくつかのかかる例では、実行される特徴付けプロセスに基づいて、任意のプライバシーガラス構造に好適な電気駆動信号を提供するようにドライバを適合させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】例示的なプライバシーガラス構造の側面図である。
図2】マルチ窓ガラス絶縁ガラスユニットに組み込まれた図1の例示的なプライバシーガラス構造の側面図である。
図3】プライバシー構造の電極層へのドライバの接続配置例を示す例示的な概略図である。
図4A】第1の電極層と第2の電極層との間に経時的に印加される例示的なドライバ信号を示す。
図4B】第1の電極層と第2の電極層との間に経時的に印加される例示的なドライバ信号を示す。
図5】スイッチングネットワークと、それと通信する複数のエネルギー貯蔵デバイスとを含む例示的なドライバ構成を示す。
図6】複数のプライバシーガラス構造と通信しているドライバを示す。
図7】プライバシー構造の特徴付けに基づいて、電気駆動信号でプライバシーガラス構造を駆動するための例示的なプロセスを示す例示的なプロセスフロー図を示す。
図8】異なるプライバシーガラス構造の電気的特徴付けの例示的な分類、および対応する電気駆動信号パラメータを示す。
図9】電気ドライバを介してプライバシーガラス構造に提供される電気駆動信号を更新するためのプロセスフロー図を示す。
図10A】プライバシーガラス構造の例示的な駆動信号および結果として生じる応答電流信号を経時的に示す。
図10B】プライバシーガラス構造の例示的な駆動信号および結果として生じる応答電流信号を経時的に示す。
図11A】表示を容易にするための異なる表示スケールを含む、図10Aおよび10Bの例示的な電流および電圧信号の拡大図をそれぞれ示す。
図11B】表示を容易にするための異なる表示スケールを含む、図10Aおよび10Bの例示的な電流および電圧信号の拡大図をそれぞれ示す。
図12】1つ以上の漏れ電流値を決定するための例示的なプロセスを示すプロセスフロー図を示す。
図13】スタガ電気駆動信号を複数のプライバシーガラス構造に印加するための例示的なプロセスを示すプロセスフロー図を示す。
図14】複数のプライバシーガラス構造に、決定されたスタガ量を含む電気駆動信号を印加する実装例を示す。
図15】複数のプライバシーガラス構造に、決定されたスタガ量を含む電気駆動信号を印加する実装例を示す。
図16A】システム内の対応する複数のプライバシーガラス構造を駆動するために使用される複数の電気駆動信号の電圧対時間プロファイルの例を示す。
図16B】システム内の対応する複数のプライバシーガラス構造を駆動するために使用される複数の電気駆動信号の電圧対時間プロファイルの例を示す。
図16C】システム内の対応する複数のプライバシーガラス構造を駆動するために使用される複数の電気駆動信号の電圧対時間プロファイルの例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0014】
一般に、本開示は、制御可能な光変調を有する光学構造を制御するための電気制御システム、デバイス、および方法を対象とする。例えば、光学構造は、プライバシーまたは散乱状態と可視または透過状態との間の制御された遷移を提供する、電気的に制御可能な光学活性材料を含み得る。電気コントローラ、またはドライバは、光学活性材料を拘束している電極層を介して光学活性材料に電気的に結合することができる。電気ドライバは、電源から電力を受け取り、例えば、電源から受け取られた電気の周波数、振幅、波形、および/または他の特性を変更することによって、電源から受け取られた電気を調整することができる。電気ドライバは、調整された電気信号を電極に送達することができる。さらに、ユーザ入力または他の制御情報に応答して、電気ドライバは、電極に送達される調整された電気信号を変更し、および/または電極への電気の送達を停止することができる。したがって、電気ドライバは、光学活性材料に送達される電気信号を制御し、それによって、特定の光学状態を維持するように、またはある状態(例えば、透明状態もしくは散乱状態)から別の状態に遷移するように材料を制御することができる。
【0015】
電気ドライバ構成および電気制御機能の例が、図3~10でより詳細に説明される。しかしながら、図1および2で、最初に、本明細書で説明される電気ドライバ配置および電気制御機能を利用することができる例示的なプライバシー構造を説明する。
【0016】
図1は、透明材料の第1の窓ガラス14と、透明材料の第2の窓ガラス16とを含み、光学活性材料18の層が、透明材料のこれら2つの窓ガラス間に拘束されている、例示的なプライバシーガラス構造12の側面図である。プライバシーガラス構造12はまた、第1の電極層20および第2の電極層22を含む。第1の電極層20は、透明材料の第1の窓ガラス14によって担持され、第2の電極層22は、透明材料の第2の窓ガラスによって担持される。動作中、第1および第2の電極層20、22を介して供給される電気は、光学活性材料18を制御して、プライバシーガラス構造を通る可視性を制御することができる。
【0017】
プライバシーガラス構造12は、光学活性材料18の層として任意の好適なプライバシー材料を利用することができる。さらに、光学活性材料18は単層の材料として概して図示および説明されているが、本開示に従った構造が、同じまたは変動する厚さを有する1つ以上の光学活性材料の層を有することができることが理解されるべきである。概して、光学活性材料18は、制御可能かつ可逆的に光学的に不明瞭にすること、および軽量化を提供するように構成される。例えば、光学活性材料18は、材料に印加される電気エネルギーの変化に応答して直接可視透過率を変化させる、電子的に制御可能な光学活性材料であり得る。
【0018】
一例では、光学活性材料18は、材料に印加される電圧変化に応答して不透明度、したがって光透過特性を変化させるエレクトロクロミック材料で形成される。エレクトロクロミック材料の典型的な例は、WOおよびMoOであり、これらは、薄層で基材に適用されると通常無色である。エレクトロクロミック層は、酸化または還元プロセスによってその光学特性を変化させることができる。例えば、酸化タングステンの場合、プロトンは、電圧の変化に応答してエレクトロクロミック層内を移動し、酸化タングステンを青色タングステンブロンズに還元することができる。着色強度は、層に印加される電荷の大きさによって変動する。
【0019】
別の例では、光学活性材料18は、液晶材料で形成される。光学活性材料18として使用することができる異なる種類の液晶材料としては、ポリマー分散型液晶(PDLC)材料およびポリマー安定化コレステリックテクスチャー(PSCT)材料が挙げられる。ポリマー分散型液晶は、通常、電極層20と電極層22との間に挟まれたある量のポリマーを含有する同種の液晶からのネマチック液晶の相分離を伴う。電場がオフのとき、液晶は、ランダムに散乱している。これは、材料を通して液晶に入る光を散乱させ、透過した光を拡散させる。2つの電極層間に特定の電圧が印加されるときに、液晶は、ホメオトロピックに整列することができ、液晶は、光透過性が増加し、光が結晶を透過することを可能にする。
【0020】
ポリマー安定化コレステリックテクスチャー(PSCT)材料の場合、材料は、ノーマルモードポリマー安定化コレステリックテクスチャー材料またはリバースモードポリマー安定化コレステリックテクスチャー材料のいずれかであり得る。ノーマルポリマー安定化コレステリックテクスチャー材料では、材料に電場が印加されていないときに光が散乱される。電場が液晶に印加される場合、ホメオトロピック状態になり、液晶に電場の方向で平行な再配向を引き起こす。これにより、液晶の光透過性の増加を引き起こし、光が液晶層を透過することを可能にする。リバースモードポリマー安定化コレステリックテクスチャー材料では、液晶は、電場の不在下(例えばゼロ電場)では透明であるが、電場の印加時には不透明で散乱する。
【0021】
光学活性材料18の層が液晶を使用して実装される一例では、光学活性材料は、液晶と二色性染料とを含み、ゲスト-ホスト液晶モードの動作を提供する。そのように構成されていると、二色性色素は、液晶ホスト内でゲスト化合物として機能することができる。二色性染料は、染料分子の配向が液晶分子の配向に追従するように選択することができる。いくつかの例では、電場が光学活性材料18に印加されると、染料分子の短軸には吸収がほとんどからまったくなく、電場が光学活性材料から除去されると、染料分子は長軸において吸収する。その結果、二色性染料分子は、光学活性材料が散乱状態に遷移されると光を吸収することができる。そのように構成されていると、光学活性材料が材料に当たる光を吸収して、プライバシーガラス構造12の片側にいる観察者が構造の反対側で起こっている活動を明確に観察することを防止することができる。
【0022】
光学活性材料18が液晶を使用して実装されるとき、光学活性材料はポリマーマトリックス内に液晶分子を含み得る。ポリマーマトリックスは硬化してもしなくてもよく、液晶分子を取り囲むポリマーの固体媒体または液体媒体を生じる。加えて、いくつかの例では、光学活性材料18は、透明材料の第1の窓ガラス14と透明材料の第2の窓ガラス16との間の分離を維持するために、例えば3マイクロメートル~40マイクロメートルの範囲の平均直径を有する、スペーサビード(例えば、微小球体)を含むことができる。
【0023】
光学活性材料18の層が液晶材料を使用して実装される別の例では、液晶材料は、プライバシー状態に遷移したときに曇る。かかる材料は、材料に当たる光を散乱して、プライバシーガラス構造12の片側にいる観察者が構造の反対側で起こっている活動を明確に観察することを防止することができる。かかる材料は、光透過状態にあるときと比較して、プライバシー状態にあるときに、最小限にのみ総可視透過率を低減しながら、材料を通る可視正透過率(可視直接透過率とも称され得る)を顕著に低減することができる。これらの材料を使用すると、材料を透過する散乱可視光の量は、光透過状態と比較してプライバシー状態で増加し、材料を通る可視正透過率の低減を補う。可視正透過率または直接透過率は、光学活性材料18を通って散乱または方向転換されない透過可視光とみなしてもよい。
【0024】
光学活性材料18の層として使用することができる別の種類の材料は、懸濁粒子材料である。懸濁粒子材料は、典型的には非活性化状態では暗色または不透明であるが、電圧が印加されると透明になる。他の種類の電気的に制御可能な光学活性材料を光学活性材料18として利用することができ、本開示はこの点に関して限定されない。
【0025】
光学活性材料18の層に使用される材料の特定の種類とは無関係に、材料は、プライバシーガラス構造12が透明であることを意図される光透過状態から、絶縁ガラスユニットを通る可視性を遮ることを意図されるプライバシー状態へと変化することができる。光学活性材料18は、最大光透過状態から最大プライバシー状態へ遷移するときに漸進的に減少する可視直接透過率を呈し得る。同様に、光学活性材料18は、最大プライバシー状態から最大透過状態へ遷移するときに漸進的に増加する可視直接透過率を呈し得る。光学活性材料18が概して透明な透過状態から概して不透明なプライバシー状態に遷移する速度は、光学活性材料18用に選択される特定の種類の材料、材料の温度、材料に印加される電圧などを含む、種々の要因によって規定され得る。
【0026】
光学活性材料18を電気的に制御するために、図1の例におけるプライバシーガラス構造12は、第1の電極層20および第2の電極層22を含む。各電極層は、光学活性材料18に面するそれぞれの各窓ガラスの表面の上にまたはそれにわたって堆積された導電性コーティングの形態であり得る。例えば、透明材料の第1の窓ガラス14は、窓ガラスの反対側に内面24Aおよび外面24Bを画定することができる。同様に、透明材料の第2の窓ガラス16は、窓ガラスの反対側に内面26Aおよび外面26Bを画定することができる。第1の電極層20は、第1の窓ガラスの内面24Aにわたって堆積することができ、第2の電極層22は、第2の窓ガラスの内面26Aにわたって堆積することができる。第1および第2の電極層20、22は、それぞれの窓ガラスの内面、またはブロッカー層などの1つ以上の中間層に向けて堆積することができ、窓ガラスの内面と電極層との間に堆積することができる。
【0027】
各電極層20、22は、アルミニウムドープ酸化亜鉛および/またはスズドープ酸化インジウムなどの透明導電性酸化物(「TCO」)コーティングである導電性コーティングであってもよい。透明導電性酸化物コーティングは、以下でより詳細に説明するように、ノッチ構造を介して電源に電気的に接続することができる。いくつかの例では、電極層20、22を形成する透明導電性コーティングは、光学活性材料18が接触する透明材料の第1の窓ガラス14と透明材料の第2の窓ガラス16との間に空洞の壁面を画定する。他の例では、誘電オーバーコート(例えば、酸窒化シリコン)などの1つ以上の他のコーティングを、第1および/または第2の電極層20、22の上に重ねることができる。いずれの場合も、透明材料の第1の窓ガラス14および透明材料の第2の窓ガラス16、ならびにこれらの窓ガラスの内面24A、26A上の任意のコーティングは、光学活性材料18を含む空洞またはチャンバを形成することができる。
【0028】
第1の窓ガラス14および第2の窓ガラス16を含む、プライバシーガラス構造12を形成する透明材料の窓ガラスは、任意の好適な材料で形成される。各透明材料の窓ガラスは、同じ材料から形成することができ、または透明材料の窓ガラスの少なくとも1つを、透明材料の窓ガラスの少なくとも1つの他方と異なる材料で形成することができる。いくつかの例において、少なくとも1つの(および任意にすべての)プライバシーガラス構造12の窓ガラスは、ガラスで形成される。他の例において、少なくとも1つの(および任意にすべての)プライバシーガラス構造12は、例えばフルオロカーボンプラスチック、ポリプロピレン、ポリエチレン、またはポリエステルなどの、プラスチックで形成される。ガラスが使用されるとき、ガラスは、ホウケイ酸アルミニウムガラス、ナトリウム-石灰(例えば、ナトリウム-石灰-ケイ酸塩)ガラス、または別の種類のガラスであってもよい。加えて、用途に応じて、ガラスは透明であってもよいか、またはガラスは着色されていてもよい。ガラスは異なる技術を使用して製造することができるが、いくつかの例では、ガラスは、溶融ガラスを溶融した錫のバス上に堆積してガラスを成形および固化するフロートバスラインで製造される。かかる例示的なガラスは、フロートガラスと称され得る。
【0029】
いくつかの例では、第1の窓ガラス14および/または第2の窓ガラス16は、複数の異なる種類の材料から形成され得る。例えば、基材は、ポリビニルブチラールなどのポリマーで互いに接着された2枚のガラスの窓ガラスを含み得る積層ガラスで形成されてもよい。本開示で使用できるプライバシーガラス基材の配置に関する追加の詳細は、「HIGH PERFORMANCE PRIVACY GLAZING STRUCTURES」と題し、2018年4月20日に出願された、米国特許出願第15/958,724号に見出すことができ、その全内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0030】
プライバシーガラス構造12は、ドア、窓、壁(例えば、壁のパーティション)、住宅もしくは商業ビルの天窓、または他の用途を含む、任意の所望の用途で使用することができる。プライバシーガラス構造12の設置の促進を助けるために、構造は、構造の外周を囲むフレーム30を含んでもよい。異なる例では、フレーム30は、木材、金属、またはビニールなどのプラスチック材料から製造することができる。フレーム30は、構造12の外周エッジを受容して保持するチャネル32を画定することができる。
【0031】
図1の例では、プライバシーガラス構造12は、光学活性材料18を拘束している透明材料の2つの窓ガラスから形成されたプライバシーセルとして示されている。他の構成では、プライバシーガラス構造12は、1つ以上の窓ガラス間の空間によって分離された1つ以上の追加の窓ガラスを有するプライバシーセルを含む、マルチ窓ガラスガラス構造に組み込むことができる。図2は、図1のプライバシーガラス構造12が、窓ガラス間の空間を有するマルチ窓ガラス絶縁ガラスユニットに組み込まれている、例示的な構成の側面図である。
【0032】
図2の図示の例に示されるように、マルチ窓ガラスプライバシーガラス構造50は、窓ガラス間の空間54によって、例えば、スペーサ56によって透明材料の追加の(例えば、第3の)窓ガラス52から分離されたプライバシーガラス構造12を含み得る。スペーサ56は、周囲環境とのガス交換から窓ガラス間の空間54を気密封止するために、マルチ窓ガラスプライバシーガラス構造50の周囲全体の周りに延在し得る。マルチ窓ガラスプライバシーガラス構造50を横断する熱交換を最小にするために、窓ガラス間の空間54は、断熱ガスで充填されてもよく、またはさらにはガスを排気しもよい。例えば、窓ガラス間の空間54は、アルゴン、クリプトン、またはキセノンなどの断熱ガスで充填されてもよい。かかる用途では、断熱ガスを乾燥空気と混合して、10パーセントの空気と90パーセントの絶縁性ガスなど、空気対断熱ガスの所望の比率を提供してもよい。他の例では、窓ガラス間の空間54は、窓ガラス間の空間がマルチ窓ガラスプライバシーガラス構造50を取り囲む環境の圧力と比較して減圧圧力であるように、排気されてもよい。
【0033】
スペーサ56は、例えば窓ガラス間の空間とユニットを取り囲む環境との間のガス交換を抑制または排除するように、マルチ窓ガラスプライバシーガラス構造50の寿命にわたって対向する基材を離間関係に保持し、かつ対向する材料の窓ガラスの間の窓ガラス間の空間54を封止する任意の構造とすることができる。スペーサ56として使用することができるスペーサの一例は、透明材料の第1の窓ガラス14と透明材料の第3の窓ガラス52との間に配置された管状スペーサである。管状スペーサは、いくつかの例において乾燥剤を充填した、中空の内腔または管を画定することができる。管状スペーサは、(シーラントの第1のビードによって)透明材料の第1の窓ガラス14の外面24Bに接着された第1の側面と、(シーラントの第2のビードによって)透明材料の第3の窓ガラス52に接着された第2の側面と、を有することができる。管状スペーサの頂面は、窓ガラス間の空間54に暴露され得、いくつかの例では、窓ガラス間の空間内のガスが、スペーサの内側の乾燥材料と連通することを可能にする開口部を含む。かかるスペーサは、アルミニウム、ステンレス鋼、熱可塑性物質、または任意の他の好適な材料から製造することができる。
【0034】
スペーサ56として使用することができるスペーサの別の例は、シーラント組成物によって取り囲まれた波形金属補強シートから形成されたスペーサである。波形金属補強シートは、透明材料の第1の窓ガラス14を透明材料の第3の窓ガラス52から離して保持する、剛性構造用構成要素とすることができる。さらに別の例において、スペーサ56は、金属箔を伴う窓ガラス間の空間に面する側を除いてすべての側を取り囲んだ発泡材料から形成することができる。別の例として、スペーサ56は、透明材料の第1の窓ガラス14と透明材料の第3の窓ガラス52との間に主シーラント(例えば、接着剤)を、続いて、任意に、基材と主シーラントとの間に画定された外周の周りに塗布される副シーラントを配置することよって形成された、熱可塑性スペーサ(TPS)スペーサとすることができる。スペーサ56は、当業者によって理解されるように、他の構成を有することができる。
【0035】
用途に応じて、透明材料の第1の窓ガラス14、透明材料の第2の窓ガラス16、および/または透明材料の第3の窓ガラス52(含まれる場合)は、プライバシー構造の性能を変更するために1つ以上の機能性コーティングでコーティングされてもよい。例示的な機能性コーティングとしては、低放射率コーティング、太陽光制御コーティング、および光触媒コーティングが挙げられるが、これらに限定されない。概して、低放射率コーティングは、中赤外線および遠赤外線が窓ガラスを通過するのを実質的に防止しながら、近赤外および可視光が窓ガラスを通過することを可能にするように設計されているコーティングである。低放射率コーティングは、2層以上の透明誘電体フィルムの間に挿入された1層以上の赤外線反射フィルムを含み得る。赤外線反射フィルムは、銀、金、または銅のような導電性金属を含み得る。対照的に、光触媒コーティングは、二酸化チタンなどの光触媒を含むコーティングであり得る。使用中、光触媒は、自浄作用を助長する、または窓ガラスのメンテナンスを少なくすることができる光活性を呈してもよい。
【0036】
プライバシーガラス構造12の電極層20、22は、単独で実装されても、窓ガラス間の空間を備えた複数窓ガラス構造の形態で実装されても、ドライバに電気的に接続することができる。ドライバは、光学活性材料18を制御するための電力および/または制御信号を提供することができる。いくつかの構成では、配線を使用して、ドライバとそれぞれの各電極層との間の電気的接続を確立する。第1のワイヤは、ドライバと第1の電極層20との間の電気通信を提供することができ、第2のワイヤは、ドライバと第2の電極層22との間の電気通信を提供することができる。一般に、配線という用語は、絶縁コーティングで任意に覆われた金属の糸、柔軟なプリント回路、バスバー、または電極層への電気的接続を容易にする他の電気コネクタなどの任意の柔軟な導電体を指す。
【0037】
図3は、プライバシー構造のドライバと電極層との間の接続配置例を示す概略図である。図示の例では、ワイヤ40および42は、ドライバ60を、それぞれ第1の電極層20および第2の電極層22に電気的に結合する。いくつかの例では、ワイヤ40および/またはワイヤ42は、電極層に隣接する透明窓ガラス内の導管または穴を介してそれらのそれぞれの電極層に接続することができる。他の構成では、ワイヤ40および/またはワイヤ42は、ワイヤ40および/またはワイヤ42が他のセクション(例えば、透明窓ガラス14、16)を通って延在してそれぞれの電極層に到達することを必要とせずに、プライバシー構造12のエッジにおいて、それらのそれぞれの電極層に接触し得る。いずれの場合も、ドライバ60は、電極層20および22の各々に電気的に結合され得る。
【0038】
動作中、ドライバ60は、電極層20と電極層22との間に電圧差を印加することができ、その結果、光学活性材料18の両端に電場が生じる。光学活性材料18の光学特性は、層の両端に電圧を印加することによって調整することができる。いくつかの実施形態では、光学活性材料18に対する電圧の影響は、印加電圧の極性とは無関係である。例えば、光学活性材料18が、電極層20と電極層22との間の電場と整列する液晶を含むいくつかの例では、結晶整列の光学的結果は、電場の極性とは無関係である。例えば、液晶は、第1の極性で電場と整列する可能性があり、極性が逆転した場合、約180°回転する可能性がある。しかしながら、どちらの配向における液晶の光学的状態(例えば、不透明度)も、ほぼ同じであり得る。
【0039】
いくつかの実施形態では、光学活性材料18は、第1の電極層20と第2の電極層22との間の誘電体と電気的に同様に挙動する。したがって、いくつかの実施形態では、第1の電極層20、光学活性材料18、および第2の電極層22は、ドライバ60によって駆動されるコンデンサと同様に、一緒に挙動する。様々な例では、プライバシーガラス構造12は、例えば、構造自体に起因して、および/またはドライバと電極層20、22との間の接触によるなどの他の特徴(例えば、接触抵抗)に起因して、抵抗およびインダクタンスなどの追加または代替の電気的特性を呈することができる。したがって、様々な実施形態では、ドライバ60に電気的に結合されたプライバシーガラス構造12は、コンデンサ、RC回路、およびRLC回路などと同様に挙動し得る。
【0040】
図4Aは、経時的に第1の電極層20と第2の電極層22との間に印加され得る例示的な交流駆動信号を示す。図4Aの信号は例示的なものであり、例示の目的で使用され、ドライバから印加される任意の種々の信号を使用することができることが理解されよう。図4Aの例では、ドライバによって生成された第1の電極層と第2の電極層との間の電圧信号は、印加電圧Vと-Vとの間で経時的に変動する。換言すれば、図示の例では、大きさVの電圧が、第1の電極層と第2の電極層との間に印加され、印加電圧の極性は、経時的に交互に切り替わる。光学活性層18の光学状態(例えば、透明または不透明のいずれか)は、層に印加される電圧が経時的に変動していても、電圧が光学活性層に印加されている間、実質的に変化しない場合がある。光学状態は、補助されていない人間の目が、電流の交番する極性に応答して光学活性層18に対する変化を検出しない可能性があるという点で、実質的に変化しない可能性がある。しかしながら、ドライバが光学活性層への電力の送達を停止した場合、光学活性層18は、状態を(例えば、透明から不透明に)変化させる場合がある。
【0041】
図4Aの例に示されるように、電圧は、極性を、Vから-Vにすぐに反転させない。代わりに、電圧は、(影付きの)遷移時間70にわたって極性を変化させる。いくつかの例では、十分に長い遷移時間は、極性間の、光学活性材料の観察可能な遷移をもたらす可能性がある。例えば、例示的な実施形態では、光学活性材料内の液晶は、電場と整列して実質的に透明な構造を作成し、電場が除去されると実質的に不透明になることがある。したがって、V(透明)から-V(透明)に遷移するときに、Vと-Vとの間の十分に遅い遷移は、-V<V<Vのとき(例えば、|V|≪Vのとき)、観察可能な光学状態(例えば、不透明または部分的に不透明)をもたらす場合がある。他方、極性間の(例えば、Vから-Vへの)十分に速い遷移は、観察者(例えば、リアルタイムで肉眼)には、光学活性材料の光学状態に明らかな変化をもたらさないように見える場合がある。
【0042】
図4Bは、経時的に第1の電極層20と第2の電極層22との間に印加され得る別の例示的な交流駆動信号を示す。図4Bの駆動信号は、V、0、および-Vにおける状態を有する、実質的にトライステートの方形波を含む。示されるように、Vと-Vとの間の遷移時間72中に、信号は、0Vにおいて一時的に保持された状態を有する。Vおよび-Vにおける駆動信号の持続時間よりもはるかに短いことが示されているが、様々な実施形態では、信号が0V(または別の第3の状態値)に保持される時間量は、駆動信号がVまたは-Vに保持される時間量よりも少ないか、それに等しいか、またはそれよりも多い可能性がある。いくつかの例では、駆動信号が0V(または別の中間状態)に保持される時間量は、光学活性材料が光学状態を変化させないように見えるように、十分に短い。
【0043】
いくつかの例では、特定の光学状態(例えば、透明状態)を維持する場合、各々がその光学状態に対応する極性の間(例えば、+Vと-Vの間)で切り替えることにより、光学活性材料への損傷を防ぐことができる。例えば、場合によっては、光学活性材料に静的または直流電圧を印加すると、構造内にイオンプレーティングが発生し、構造内に光学欠陥が生じる可能性がある。この光学的劣化を回避するために、(例えば、プライバシー構造などの電気的に動的な窓内の)光学活性材料のドライバを構成して、印加電圧(例えばV)の印加極性の間で連続的に切り替えて、所望の光学状態を維持することができる。
【0044】
反対の極性の電圧を負荷(例えば、光学活性材料)に印加するための1つの技術は、本出願の譲受人に譲渡され、かつその全体が参照により組み込まれる、2018年5月9日に出願されたELECTRICALLY CONTROLLABLE PRIVACY GLAZING STRUCTURE WITH ENERGY RECAPTURING DRIVERと題する米国仮特許出願第62/669,005号に記載されているようなHブリッジ構成などのスイッチングネットワークを介する。
【0045】
図5は、スイッチングネットワークと、スイッチングネットワークと通信する複数のエネルギー貯蔵デバイスとを含む例示的なドライバ構成を示す。図示の例では、ドライバ200は、電圧Vを印加するように示される電源210と、接地220と、例えば反対の極性で、負荷240を駆動するために使用されるスイッチングネットワーク230とを含む。スイッチングネットワーク230は、スイッチング機構のいずれかの側の構成要素を選択的に電気的に接続および切断することができる1つ以上のスイッチング機構を含むことができる。様々な実施形態では、スイッチング機構は、金属酸化物半導体電界効果トランジスタ(MOSFET)などのトランジスタを含むことができる。電源210は、直流電源(例えば、バッテリ)、交流電源(例えば、壁もしくは主電源)、または他の好適な電源であり得る。駆動負荷240は、第1および第2の電極層20、22とともに、電気的に制御可能な光学活性材料18であり得る。
【0046】
図5の例では、スイッチングネットワーク230は、負荷240の第1の側235と接地220との間に結合された第1のスイッチング機構SW1と、負荷240の第2の側245と接地220との間に結合された第2のスイッチング機構SW2とを含む。いくつかの例では、分離構成要素224は、スイッチング機構SW1、SW2から接地220への電流の流れを選択的に防止または許可することができる。スイッチングネットワーク230は、負荷240の第1の側235と電源210との間に結合された第3のスイッチング機構SW3と、負荷240の第2の側245と電源210との間に結合された第4のスイッチング機構SW4とをさらに含む。本明細書で使用されるとき、構成要素「に結合される」または「間に結合される」ことは、少なくとも間接的な電気的接続を意味することが理解されよう。ただし、特に明記されていない限り、「に結合される」または「間に結合される」という用語は、「結合される」構成要素が互いに直接接続されている必要はない。
【0047】
図5のドライバ200は、第3および第4のスイッチング機構、それぞれSW3およびSW4、ならびに第1の側の電源210、ならびに別の側の接地220と電気的に通信しているように示される第1のエネルギー貯蔵要素SE1を含む。分離構成要素212は、電源210と、第1のエネルギー貯蔵要素SE1または第3および第4のスイッチング機構などのドライバ200の他の構成要素との間の電流の流れを選択的に有効または無効にするように配置されるように示されている。
【0048】
ドライバ200は、負荷240の第1の側235に結合され、かつ第3のスイッチング機構SW3と第1のスイッチング機構SW1との間に結合された、第2のエネルギー貯蔵要素SE2をさらに含む。同様に、ドライバは、負荷240の第2の側245に結合され、かつ第4のスイッチング機構SW4と第2のスイッチング機構SW2との間に結合された、第3のエネルギー貯蔵要素SE3を含む。
【0049】
様々な実施形態では、エネルギー貯蔵要素は、誘導性貯蔵要素、静電容量性貯蔵要素、1つ以上のバッテリなどの電気エネルギー貯蔵要素であり得る。いくつかの例では、貯蔵要素SE1、SE2、およびSE3は、同じである。他の例では、SE1、SE2、およびSE3のうちの少なくとも1つが、他のものとは異なる。いくつかの実施形態では、SE1は、静電容量性エネルギー貯蔵要素を含み、SE2およびSE3は、誘導性エネルギー貯蔵要素を含む。いくつかのかかる実施形態では、SE2およびSE3は、一致した誘導性エネルギー貯蔵要素を含む。
【0050】
図5のドライバ200は、スイッチングネットワーク230と通信しているコントローラ260をさらに含む。図示の例では、コントローラ260は、スイッチング機構(SW1、SW2、SW3、SW4)の各々と通信している。コントローラ260は、例えば、スイッチング機構を開閉して、スイッチング機構の各々のいずれかの側の構成要素を選択的に電気的に接続または切断することによって、スイッチング機構のスイッチング動作を制御するように構成することができる。様々な実施形態では、コントローラ260は、直列および/または並列(例えば、同時スイッチング)のスイッチング機構を制御するように構成することができる。
【0051】
いくつかの例では、コントローラ260は、(例えば、電源210からの)電圧を、電気的に動的な窓内の光学活性材料などの負荷240に提供するように、スイッチング機構を制御するように構成される。さらに、いくつかの実施形態では、コントローラ260は、負荷240に印加される電圧の極性を周期的に変化させるために、スイッチング機構を制御するように構成することができる。いくつかのかかる例では、(例えば、極性を変化させるときに)負荷から放出されたエネルギーの少なくとも一部を回収して1つ以上のエネルギー貯蔵要素SE1、SE2、SE3に貯蔵することができるように、スイッチングネットワークの動作を実行することができる。かかる回収および貯蔵されたエネルギーは、例えば、その後の充電動作を実行するために使用することができる。
【0052】
説明したように、いくつかの実施形態では、ドライバ200は、ドライバの様々な部分への電流の流れを選択的に防止するための追加の構成要素をさらに含む。例えば、図5の図示の実施形態では、ドライバ200は、電源210とドライバの他の部分との間の電流の流れを選択的に許可するように構成された分離構成要素212を含む。同様に、ドライバ200は、接地220とドライバ200の他の部分との間の電流の流れを選択的に許可するように構成された分離構成要素224を含む。いくつかの例では、分離構成要素212、224は、ドライバ動作の様々な段階中にコントローラ260を介して制御することができる。分離構成要素は、様々なドライバ構成要素間の電流の流れを選択的に許可および/または防止するための種々の好適な構成要素のいずれかを含むことができる。例えば、様々な実施形態では、分離構成要素212、224は、スイッチ、トランジスタ(例えば、パワーMOSFET)、もしくは他の構成要素またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0053】
例えば、1つ以上のエネルギー貯蔵要素、スイッチなどの上記で参照した機能のうちの1つ以上を省略することなど、他の可能なドライバ構成が可能である。例えば、様々な例では、ドライバは、スイッチング要素を必要とせずにAC電気駆動信号を出力するように構成することができる。
【0054】
図6は、複数のプライバシーガラス構造310、320、330と通信しているドライバ300を示す。様々な実施形態では、ドライバ300は、プライバシーガラス構造310、320、330と同時に通信するように、例えば、同時に複数の構造の動作を制御するように構成することができる。追加的または代替的に、プライバシーガラス構造310、320、330は、ドライバ300と通信して交換可能に配置することができる。例えば、例示的な実施形態では、ドライバ300は、複数のプライバシーガラス構造(例えば、310、320、330)のいずれかをそれに結合することができる電気的インターフェースを含むことができる。いくつかの実施形態では、ドライバ300は、かかる構造を光学的に制御するために、複数のプライバシーガラス構造310、320、330の各々に電気駆動信号を提供するように構成することができる。
【0055】
いくつかの例では、ドライバ300から各プライバシーガラス構造に提供される電気駆動信号は、安全上の理由により、例えば、1つ以上の安全基準に準拠するように制限されている。例えば、いくつかの実施形態では、電気駆動信号は、NECクラス2などの1つ以上の電気安全基準を満たすように電力が制限されている。1つ以上のかかる安全基準を満たす駆動信号を提供することで、例えば、資格のある電気技師を必要とせずに設置することを可能にすることによって、幅広い人々が安全に設置することが可能になる。
【0056】
図示の例では、プライバシーガラス構造310、320、330の各々は、対応するプライバシーガラス構造に関する温度情報を提供することができる、1つ以上の対応する温度センサ312、322、および332をそれぞれ有する。温度情報は、例えば、接触温度情報(例えば、表面温度)または非接触温度情報(例えば、気温)を含むことができる。いくつかの例では、かかる温度センサ312、322、332は、かかる温度情報をドライバ300に提供することができる。
【0057】
しかしながら、場合によっては、異なるプライバシーガラス構造は、例えば、異なるサイズ、異なる材料などのために、異なる電気的特性を有する。結果として、異なる構造は、効果的および/または効率的に動作するために異なる駆動信号を必要とし得る。例えば、いくつかの実施形態では、所与のプライバシーガラス構造に対してうまく機能する駆動信号は、異なるプライバシーガラス構造では、構造間の差異のために、不十分な光学性能をもたらす場合がある。
【0058】
いくつかの例では、ドライバは、プライバシーガラス構造から、例えば、ドライバによって読み取り可能な識別情報を含む構造上のメモリストレージ構成要素から識別情報を受け取ることができる。いくつかのかかる例では、ドライバは、かかる識別情報を読み取り、識別された構造を駆動するための電気駆動信号を(例えば、メモリに記憶されたルックアップテーブルから)確立するように構成することができる。しかしながら、所与の構造に対して適切な駆動信号に関する一次推定値を提供する一方で、場合によっては、(例えば、製造のばらつき、環境要因、例えばUV劣化による経年変化特性などに起因する)類似の構造間の変動が、かかる類似の構造間で異なる電気的特性をもたらす可能性がある。したがって、同じメーカー/モデルの2つのプライバシーガラス構造でさえ、同じ電気駆動信号で駆動されたときにかかる構造間の不整合につながる可能性がある、異なる特性を有する場合がある。
【0059】
いくつかの実施形態では、ドライバは、プライバシーガラス構造を駆動するのに好適な1つ以上の駆動信号パラメータを決定するために、それと通信しているプライバシーガラス構造の1つ以上の特性を特徴付けるように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ドライバは、電気感知パルスをプライバシーガラス構造に印加し、電気感知パルスに対するプライバシーガラス構造の応答を分析するように構成される。ドライバは、電気検知パルスに対する分析された応答に基づいて、プライバシーガラス構造を特徴付けるように構成することができる。いくつかの実施形態では、ドライバは、1つ以上の電気的パラメータなどの分析された応答に基づいて、プライバシーガラス構造の1つ以上のパラメータを特徴付けるように構成することができる。
【0060】
図7は、プライバシー構造の特徴付けに基づいて、電気駆動信号でプライバシーガラス構造を駆動するための例示的なプロセスを示す例示的なプロセスフロー図を示す。このプロセスは、電気感知パルスをプライバシーガラス構造に印加することを含む(700)。
【0061】
図7の方法は、印加された電気感知パルスに対するプライバシーガラス構造の応答を分析することをさらに含む(702)。いくつかの例では、電気感知パルスは、(例えば、既知の電圧対時間を有する)電圧パルスを含み、分析された応答は、電圧パルスが印加される時間にわたってプライバシーガラス構造を流れる電流を測定することを含む。追加的または代替的に、分析された応答は、感知パルスの印加に対する特定の時間(例えば、感知パルスの40ミリ秒後)における、または特定の時間範囲(例えば、感知パルスの5~40ミリ秒後)における電圧または電流値の測定値を含むことができる。いくつかの例では、時間または期間は、抵抗および静電容量値などの測定または推定された電気パラメータに基づいて決定されることができ、したがって、時間または期間は、10個のRC時定数などのパラメータに関して特定の期間内にまたは特定の期間にわたってデータをキャプチャする。この方法は、プライバシー構造の1つ以上の電気的特性を決定することをさらに含む(704)。かかる1つ以上の電気的特性は、抵抗、静電容量、インダクタンス、またはそれらの任意の組み合わせを含むことができる。例えば、いくつかの例では、抵抗値は、電極層(例えば、20、22)に電気信号を印加することと関連する接触/リード抵抗に対応する。追加的または代替的に、静電容量値は、電極層20と電極層22との間の光学活性材料18の静電容量に対応することができる。1つ以上の電気的特性を決定した後、ドライバは、プライバシーガラス構造を駆動するための1つ以上の駆動パラメータをロードするように構成することができる(706)。駆動パラメータは、電圧(例えば、ピーク電圧)、周波数、スルーレート、波形、デューティサイクルなど、1つ以上の電気駆動信号パラメータを含むことができる。
【0062】
いくつかの例では、1つ以上の電気的パラメータを特徴付けることは、プライバシーガラス構造と関連する抵抗値(例えば、等価直列抵抗)、静電容量値、および/またはインダクタンス値を決定することを含む。いくつかのかかる例では、ドライバは、RC回路またはRLC回路など、1つ以上の電気的パラメータを含む代表的な回路を生成するように構成することができる。いくつかの実施形態では、1つ以上の駆動パラメータをロードすること(706)は、そのように決定された1つ以上の電気パラメータに基づいて、例えば、1つ以上のルックアップテーブルおよび/または式に基づいて実行することができる。
【0063】
いくつかの実施形態では、1つ以上の駆動パラメータをロードすること(706)は、駆動信号を確立することを含む。追加的または代替的に、駆動信号が現在適所にある場合、1つ以上の駆動パラメータをロードすることは、既存の駆動信号の1つ以上の駆動パラメータを調整することを含むことができる。様々な例では、1つ以上のパラメータを調整することは、1つ以上のパラメータの新しい値をロードすることを含むことができるか、または既存の電気駆動信号に関して1つ以上のパラメータと関連する値を増加もしくは減少させることなどの相対的調整を含むことができる。
【0064】
決定された1つ以上の電気的特性と関連する1つ以上のパラメータがロードされると、ドライバは、ロードされた駆動パラメータを含む電気駆動信号をプライバシー構造に印加するように構成することができる(708)。
【0065】
いくつかの例では、図7のプロセスは、複数の時間に実行することができる。いくつかのかかる例では、印加された電気感知パルスに対する分析された応答(例えば、ステップ702)は、測定された応答(例えば、結果として生じる電圧または電流値)の時間微分または移動平均など、応答の時間ベースの値を計算することを含むことができる。追加的または代替的に、かかる応答データは、例えば、経時的に収集されたデータからノイズ、外れ値などを除去するために、経時的にフィルタリングすることができる。かかる時間ベースの値を使用して、プライバシー構造の1つ以上の電気的特性を決定することができる。
【0066】
いくつかの実施形態では、図7に示されるプロセスは、初期設置中など、プライバシーガラス構造の起動プロセス時に実行される。設置者は、ドライバをプライバシーガラス構造に接続することができ、ドライバは、プライバシーガラス構造の初期駆動信号を確立および印加するために、図7に示す方法を実行することができる。かかるプロセスは、手動および/または自動で開始され得る。いくつかの例では、プライバシーガラス構造に適切な電気駆動信号を決定して印加するドライバの能力により、異なるドライバが異なる種類のプライバシーガラス構造を駆動する必要がなくなり、所与のプライバシーガラス構造にどの駆動パラメータが好適であり得るかの専門知識を必要とせずに適切な駆動信号をロードすることができるようになる。
【0067】
図8は、様々なプライバシーガラス構造の電気的特徴付けの例示的な分類、および対応する電気駆動信号パラメータを示す。図8の例示的な図に示されるように、構造は、低または高抵抗値および低または高静電容量値に従って分類することができる。いくつかの例では、ドライバは、どの抵抗値が「低」でありどの抵抗値が「高」であるか、および同様に、どの静電容量値が「低」でありどの静電容量値が「高」であるかを指定するために、閾値でプログラムすることができる。
【0068】
図8に示されるプライバシーガラス構造の1つのカテゴリは、低抵抗および低静電容量を含む。かかる構造は、例えば、(例えば、低抵抗値に寄与する)バスバー接点を有する(例えば、低静電容量値に寄与する)小さい構造を含むことができる。場合によっては、低抵抗値は、方形波または他の鋭い遷移電圧信号が構造に印加されるときに、大きい電流スパイクにつながる可能性がある。したがって、対応する電気駆動信号は、最大電流レギュレータを用いること、スルーレート方形波を利用すること、および/または(例えば、レール電圧からの)パルス幅変調(PWM)信号など、大電流値のリスクを軽減するための1つ以上の機能を含むことができる。いくつかの例では、より低い周波数の電気駆動信号を使用して、経時的な平均電力消費を最小限に抑えることができる。1つ以上のかかる機能は、小さい静電容量性負荷(例えば、プライバシーガラス構造内の静電容量性電気的に制御可能な光学活性材料)を適切に充電して、大きい電流スパイクを低減しながら適切な審美的構造挙動を提供することができる。
【0069】
図8の例における構造の別のカテゴリは、低抵抗および高静電容量構造、例えば、(高静電容量値を有する)大きい構造および(低抵抗値に寄与する)バスバー接点を含む。かかる構造は、低抵抗のために大きい電流スパイクの影響を受けやすい場合もあるが、低抵抗は、コンデンサを電荷で迅速に充填することを容易にして、構造の動作中に高品質の審美性を提供することができる。最大電流レギュレータ、スルーレート方形波信号、PWM信号の印加など、同様の手法を用いて電流スパイクのリスクを低減することができる。
【0070】
図8の例による構造の別のカテゴリは、高抵抗および高静電容量、例えば、(例えば、より高い抵抗値に寄与する)点接点を有する大きい構造を含む。いくつかのかかる場合、抵抗値が大きいと電流スパイクが制限されることがあるが、コンデンサを電荷で充填することがより困難になることもある。さらに、静電容量が大きいので、良好な審美的挙動のために構造を迅速に充電するためには、大量の電荷が必要となる可能性がある。したがって、いくつかの例では、電気駆動信号は、オーバードライブされた方形波を含むことができる。例えば、いくつかの実施形態では、電気駆動信号は、方形波の一部分がオーバードライブされた方形波を含む。例示的な実装形態では、方形波パルス内で、パルスの前半は、構造のコンデンサをより迅速に充填するために、パルスの後半よりも高い電圧で印加され得る。追加的または代替的に、より低い周波数の波形を使用して、大きいコンデンサが充電されるための追加の時間を提供することができる。
【0071】
図8の例による構造の第4のカテゴリは、高抵抗および低静電容量、例えば、点接点を有する小さい構造を含む。高抵抗は一般に、大きい電流スパイクを低減し、小さい静電容量は一般に、良好な光学的審美性を達成するためにコンデンサを電荷で充填するのに必要な比較的少量の電流を可能にする。いくつかの例では、かかる構造は、「デフォルト」の電気駆動信号を用いて動作することができる。いくつかの実施形態では、電圧スルーレートを組み込んで過剰な電流ピークを軽減し、ピーク電力消費を最小化すること、および/または周波数を低減して平均電力消費を軽減することなど、動作効率を高めるために様々な電気パラメータを調整および/または実装することができる。
【0072】
2つのカテゴリに対して2つのビンとして示されているが、任意の数のパラメータを分析することができ、任意の数のビンによって区別することができることが理解されよう。例えば、一般に、N個のパラメータのグループ(図8では、N=2、抵抗および静電容量)は、パラメータ値がその中に入り得るM個のビン(図8では、M=2、低および高)に分割することができる。特性と、それらがその中に入り得る対応するビンとの組み合わせを使用して、かかる特性を有するプライバシーガラス構造を駆動するための適切な電気駆動信号を(例えば、式またはルックアップテーブルを介して)識別することができる。
【0073】
いくつかの例では、図7に示されるものと同様の方法を経時的に繰り返すことができる。かかる方法は、プライバシーガラス構造の1つ以上の電気的特性の変化に基づいて駆動信号を更新すべきであるかどうかを決定するために、手動または自動で(例えば、事前にプログラムされたスケジュールに従って)実行され得る。いくつかのかかる例では、既存の駆動信号を停止して、図7に示されるものと同様の方法を実行して、駆動信号を更新すべきであるかどうかを決定することができる。これは、手動でまたはスケジュールに従って、例えば、夜間に、動作の中断から生じ得る望ましくない光学特性が見過ごされる可能性があるときに実行することができる。いくつかのかかる実施形態では、印加された感知パルスに対する応答に基づくプライバシーガラス構造の決定された特性など、様々なデータをメモリに記憶することができる。いくつかの例では、電気駆動信号を確立するために設置時に決定されたプライバシーガラス構造の特性は、初期時間tと関連付けられている。
【0074】
図9は、電気ドライバを介してプライバシーガラス構造に提供される電気駆動信号を更新するためのプロセスフロー図を示す。例示的な実装形態では、図9に示される方法は、ドライバが既存の駆動信号をプライバシーガラス構造に印加していた後に実行することができる。図9の方法は、時間tにおいて電気感知パルスをプライバシーガラス構造に印加することと(900)、印加された電気感知パルスに対するプライバシーガラス構造の応答を分析することと(902)、時間tにおいてプライバシーガラス構造の1つ以上の電気的特性を決定することと(904)、を含む。この方法は、時間tにおける決定された特性を、前の時間tn-1において決定された特性と比較することを含む(906)。時間tn-1における特性に対する、時間tにおける特性の変化が閾値量以下である場合(908)、ドライバは、既存の電気駆動信号を印加し続ける(910)。時間tn-1とtとの間の特性の変化が閾値量よりも大きい場合(908)、ドライバは、1つ以上の駆動パラメータをロードおよび/または更新して、更新された電気駆動信号を確立するように構成することができる(912)。
【0075】
いくつかの実施形態では、更新された電気駆動信号は、図7に関して説明したように、決定された特性に基づいて1つ以上の駆動パラメータをロードするのと同様に、時間tにおける決定された電気的特性に基づいて決定することができる。追加的または代替的に、1つ以上の駆動パラメータをロード/更新して、更新された電気駆動信号を確立することは、1つ以上の電気的特性について検出された変化量に基づいて1つ以上の駆動パラメータを調整することを含むことができる。
【0076】
図9に関して、時間tn-1と時間tとの間の1つ以上の電気的特性の変化が閾値量よりも大きいかどうかを決定することは、種々の方式で実行することができる。いくつかの実施形態では、各特性は、それを超えた場合、電気駆動信号の1つ以上のパラメータの変化を引き起こす、対応する絶対閾値差を含む。例えば、例示的な実施形態では、1つ以上の電気的特性のうちの1つとして測定された抵抗値が、1000オームを超えて変化する場合、その変化は、閾値よりも大きいとみなされる。追加的または代替的に、閾値量よりも大きい変化は、特性の変化率に対応することができる。例えば、いくつかの実施形態では、1つ以上の駆動パラメータは、少なくとも100%増加する抵抗値に応答して更新することができる。別の例では、1つ以上の駆動パラメータは、少なくとも10%変化する静電容量値に応答して更新することができる。
【0077】
いくつかの実施形態では、1つ以上のパラメータの各々の経時的な変化を、対応する閾値と比較することができる。いくつかの例では、いずれか1つの特性が、その前の値と、対応する閾値量だけ異なる場合、特性の変化は、閾値量よりも大きいとみなされ、更新された電気駆動信号が確立される。他の例では、変化が閾値よりも大きいとみなされ、電気駆動信号を更新するためには、1つ以上の特性の各々の変化量は、対応する閾値量よりも大きくなければならない。様々な実施形態では、電気的特性の様々な組み合わせ(例えば、複数の決定された特性のサブセット)を分析して、特性の変化が閾値量よりも大きいかどうかを決定することができる。
【0078】
いくつかの実施形態では、1つ以上の駆動パラメータをロード/更新すること(912)は、追加の追跡/測定データ914に基づくことができる。追跡/測定データ914は、プライバシーガラス構造の経過年数、プライバシーガラス構造の温度などの情報を含むことができる。いくつかの例では、ドライバは、かかるデータに基づいて1つ以上の駆動パラメータを調整するように構成することができる。
【0079】
例えば、例示的な実施形態では、時間tn-1と時間tとの間の1つ以上の電気的特性の変化が閾値量よりも大きい場合、ドライバは、温度情報(例えば、構造および/または環境温度情報)を取得し、かつ温度情報に基づいて1つ以上の駆動パラメータを更新するように構成することができる。温度情報は、例えば、構造自体を表す温度情報を出力する接触(例えば、熱電対)または非接触(例えば、赤外線)温度測定デバイスから受け取ることができる。追加的または代替的に、温度情報は、周囲温度センサから受け取ることができる。いくつかの例では、1つ以上の温度センサを、プライバシーシステム内の1つ以上のプライバシーガラス構造の各々と関連付けることができる。例えば、図6に関して、温度センサ312、322、332は、それぞれ、対応するプライバシーガラス構造310、320、330と関連する温度情報(例えば、接触および/または環境温度情報)を提供するように構成することができる。
【0080】
温度情報に加えてまたはそれの代替として、時間tn-1と時間tとの間の1つの以上の電気的特性の変化が閾値量より大きい場合、ドライバは、プライバシーガラス構造の経過年数を決定し、かつ構造の経過年数に基づいて1つ以上の駆動パラメータを更新するように構成することができる。いくつかの例では、ドライバは、例えば、構造が所定の時間量動作しているとき、および/または電気的特性が経年変化構造を表すとき、構造に対して経年変化としてのフラグを立てるように構成することができる。更新された電気駆動信号を決定するとき、決定された電気的特性に加えてまたはそれの代替として、経過年数および/または温度を使用することができる。
【0081】
図7および9に関して説明したように、様々なプロセスにおいて、ドライバは、プライバシーガラス構造を特徴付けるために(例えば、その1つ以上の電気的特性を決定するために)構造に電気感知パルスを印加するように構成することができる。いくつかの例では、構造を特徴付けることは、抵抗、静電容量などの構造の1つ以上の電気的パラメータを決定することを含み、いくつかのかかる例では、構造の電気的特性を表す等価回路(例えば、RC回路、RLC回路など)を決定することを含む。
【0082】
様々な実施形態では、様々な電気感知パルスを使用して、かかる特性を決定することができる。例えば、様々な例では、電気感知パルスは、DC感知パルス、低周波数駆動信号(例えば、駆動信号の振幅もしくは波形などの同様の特性を有するが、より低い周波数を有する信号)、または動作駆動信号(例えば、現在実装されている駆動信号)を含むことができる。いくつかの実施形態では、ユーザは、プライバシーガラス構造を特徴付けるときにどの電気感知パルスを使用するかを選択することができる。
【0083】
場合によっては、DC信号を構造のいくつかのRC時定数にわたって印加することができるため、DC感知パルスは、最も正確な特徴付けを提供することができる。いくつかの実施形態では、DCパルスは、少なくとも5つの時定数にわたって構造に印加されるが、また少なくとも10個の時定数、少なくとも100個の時定数、少なくとも1000個の時定数、または他の値など、より長い時間量にわたって印加されてもよい。RC時定数の正確な値は事前にわからない場合があるが、いくつかの例では、プライバシーガラス構造は、例えば、DC感知パルスが少なくとも最小数の時定数持続するという尤度を高めるための最小DCパルス長を決定するために使用され得る(例えば、様々な構造サイズ、種類などと関連付けられた)時定数の予想範囲を有することができる。DC感知パルスの潜在的な欠点は、パルス中に、プライバシーガラス構造の視覚的審美性が劣化し得ることである。しかしながら、この種類の電気感知パルスは、例えば、設置手順中に、または構造が使用されていないときに使用することができ、構造の審美的外観の一時的な低下は許容される場合がある。
【0084】
いくつかの例では、動作駆動信号は、図4Aおよび4Bに示される駆動信号のうちの1つなどの電気感知パルスとして使用することができる。例示的な実施形態では、かかる駆動信号は、約45~60Hzの周波数で印加することができる。いくつかのかかる例では、かかる周波数は一般に、構造の特徴付けのためのいくつかのRC時定数に達するのには短すぎるパルスをもたらし、その結果、より長いDC感知パルスと比較したとき、あまり正確でない特徴付けを提供する可能性がある。しかしながら、動作駆動信号は電気感知パルスの2倍になるため、特徴付けプロセス中に審美的劣化は発生しない。したがって、動作駆動信号を電気感知パルスとして使用する特徴付けは、見られている可能性が高い日中に実行することができる。
【0085】
場合によっては、低周波数駆動信号は、DC感知パルスと、感知パルスとしての動作駆動信号との間のバランスを提供することができる。例えば、いくつかの実施形態では、駆動信号の周波数を低減することにより、より長いDC感知パルスほど深刻にプライバシーガラス構造の審美性に影響を与えずに、信号に対するプライバシーガラス構造の応答を特徴付けるための追加の時間が提供される。いくつかの例では、低周波数駆動信号は、約5~45Hzの周波数範囲を有する。場合によっては、低周波数駆動信号は、プライバシーガラス構造の審美性をやはり低減することがあるため、プライバシーガラス構造が一時的に審美性の低下した状態で見られる可能性が低い夜間の印加に好適な場合がある。
【0086】
様々な実施形態では、ユーザは、プライバシーガラス構造特徴付けプロセスを手動で開始することができ、このプロセスでは、1つ以上の電気感知パルスがプライバシーガラス構造に印加され、例えば、電気駆動信号を決定または更新するための、構造の1つ以上の電気的特性が決定される。いくつかのかかる例では、ユーザは、本明細書の他の場所で説明されているものなど、複数の利用可能な電気感知パルスタイプから選択することができる。追加的または代替的に、いくつかの例では、ドライバは、例えば、所定のスケジュールに従って(例えば、1時間に1回、1日に1回、1週間に1回など)、特徴付けプロセスを自動的に実行するように構成することができる。いくつかのかかる例では、ドライバは、プロセスがいつ実行されるかに応じて、異なる特徴付けプロセスを実行するように構成することができる。例えば、初期設置時に、ドライバは、DC感知パルスを印加して、構造を最初に特徴付け、電気駆動信号を確立することができる。
【0087】
設置後に、ドライバは、周期的に電気感知パルスを印加して構造を特徴付けるように構成することができ、例えば、図9に関して説明されるように、構造の1つ以上の特性が変化したかどうか、および/または電気駆動信号を更新すべきかどうかを決定するように構成することができる。いくつかのかかる例では、ドライバは、例えば、時刻または他の要因に応じて、印加する電気感知パルスを選択するように構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、ドライバは、一時的な審美的劣化に気付かれる可能性がないときなど、電気感知パルスが1つ以上の所定の間隔中に印加される場合、本明細書の他の場所に記載されるような低周波数駆動信号電気感知パルスを印加するように構成することができる。所定の時間間隔の外では、例えば、一時的な審美的劣化に気付かれる可能性があるとき、ドライバは、動作駆動信号である電気感知パルスを印加して、特徴付けプロセス中の構造審美性への影響を低減または排除するように構成することができる。
【0088】
いくつかの例では、分析を実行するために使用されるシステム構成要素の処理能力に従って、異なる更新スケジュールが実装されてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、オンボード処理構成要素は、限られた処理能力を有する場合があり、より大きい処理リソースを備えたクラウドベースの処理システムよりも少ない頻度でかかる分析を実行し得る。
【0089】
いくつかの例では、プライバシーガラス構造の経時的な周期的特徴付けを使用して、例えば図9に関して説明したように、構造の動作および経年変化特性を追跡するか、または特性の変化に対応するように電気駆動信号を調整することができる。いくつかの実施形態では、複数の時間にキャプチャされた決定された1つ以上の電気的特性は、例えば、(例えば、図9に関して説明された)比較、傾向分析などのために、メモリに保存されてもよい。いくつかの実施形態では、ドライバは、経時的な電気的特性の統計分析を実行し、かつパターンを認識するように構成することができる。パターンは、(例えば、構造の故障などによる)経時的な所与の方向への1つ以上の電気的特性のトレンディング、繰り返しの傾向(例えば、日中および夜間の時間帯に変化する電気的特性、または周囲温度の変化に伴う季節ごとの変化など)を含むことができる。場合によっては、ドライバは、周囲温度または構造温度データなどの追加のデータを同様に追跡および/または分析することができ、電気的特性をかかる追加のデータと相関させるように構成することができる。
【0090】
追加的または代替的に、いくつかの実装形態では、ドライバは、構造のライフサイクルを通して異なる速度でプライバシーガラス構造の態様を周期的に特徴付けるように構成することができる。例えば、場合によっては、ドライバは、設置直後に構造をより頻繁に特徴付け、その間、ドライバは、構造の挙動および/または典型的な特性、例えば、構造の挙動に対する環境の影響(例えば、温度、日光など)を学習する。
【0091】
いくつかの例では、ドライバは、環境変化(例えば、温度変化、周囲光の変化など)を検出または予測するように構成することができ、特定の要因の影響を分離するために短い期間内(例えば、数分または数時間以内)に構造を特徴付けることができる。例えば、ドライバは、太陽が雲に遮られたときに構造を特徴付け、次いで、太陽がもはや遮られなくなったときに構造をもう一度特徴付けて、構造の特性に対する日光の影響を分離するように構成することができる。ドライバは、例えば、1つ以上のセンサを介して、および/またはデータ分析を介して(例えば、気象データへのインターネットアクセスを介して)、かかる変化を検出するように構成することができる。
【0092】
同様に、例示的な実装形態では、ドライバは、(例えば、地震通知システムおよび/または1つ以上の加速度計もしくは他のセンサへのインターネット接続を介して)地震を検出および/または予測するように構成することができる。ドライバは、地震が検出された後の構造を特徴付けて、損傷または動作特性の変化を評価するように構成することができる。ドライバは、地震が差し迫っているという情報を(通知システムなどから)受信した場合、ドライバは、地震の発生前に構造を特徴付け、地震後に再び構造を特徴付けて、地震による構造特性の変化を具体的に検出することができる。
【0093】
いくつかの実施形態では、ドライバは、プライバシーガラス構造の電気的特性のパターンを経時的に認識し、および/またはプライバシーガラス構造の電気的特性を周囲温度もしくは構造温度データなどの他のデータと相関させるように構成することができる。いくつかのかかる例では、ドライバは、統計分析ならびに認識されたパターンおよび/または相関に従って、電気駆動信号の1つ以上の駆動パラメータを調整/更新するように構成することができる。例えば、ドライバは、経時的な構造挙動の認識された変化に基づいて、夏と冬との間で電気駆動信号を自動的に切り替えるように構成することができる。追加的または代替的に、ドライバは、温度データと構造特性との間の観察された相関に基づいて、温度データなどの受信データに基づいて、1つ以上の駆動パラメータを調整するように構成することができる。
【0094】
構造内の検出されたアーク発生イベント、電力サージ、停電、落雷、または他のイベントなどの電気的イベントは、構造の変化および/または損傷を検出するために、特徴付けを実行するようにドライバをトリガすることができる。
【0095】
いくつかの例では、様々な電気駆動信号パラメータは、経年変化データおよび/または温度データなどの追跡および/または測定データに基づいて調整することができる。いくつかの実施形態では、かかるパラメータは、電圧(例えば、RMS電圧および/またはピーク電圧)、周波数、ならびに/あるいは立ち上がり時間/スルーレートを含むことができる。様々な例では、1つ以上の駆動パラメータをロード/更新すること(例えば、図9のステップ912)は、以下のうちの1つ以上を含む:
【0096】
温度上昇に応答して電圧値を減少させること
【0097】
温度低下に応答して電圧値を増加させること
【0098】
構造の経年年数の増加に伴って電圧値を増加させること
【0099】
温度上昇に応答して周波数値を減少させること
【0100】
温度低下に応答して周波数値を増加させること
【0101】
構造の経年年数の増加に伴って周波数値を減少させること
【0102】
温度上昇に応じてスルーレート/立ち上がり時間を長くすること
【0103】
温度低下に応じてスルーレート/立ち上がり時間を短くすること
【0104】
構造の経過年数の増加に伴ってスルーレート/立ち上がり時間を短くすること。
【0105】
プライバシーガラス構造の動作における経年変化および温度/季節変化などの要因の代替としてまたはそれらに加えて、構造の健全性メトリックなどの他の要因を分析することができる。いくつかの実施形態では、健全性メトリックは、構造を通る漏れ電流の測度を含む。漏れ電流は、光学活性材料18などの構造材料の破壊、コーティングの不良もしくは破壊、または構造の他の変化しやすい部分など、複数の問題から生じる可能性がある。漏れ電流は種々の方式で測定され得る。例示的な実施形態では、漏れ電流値は、特定の時間中にプライバシーガラス構造を流れる電流の分析に基づいて決定することができる。
【0106】
図10Aおよび10Bは、プライバシーガラス構造の例示的な駆動信号および結果として生じる応答電流信号を経時的に示す。示されるように、プライバシーガラス構造に印加されたスルーレート方形波電圧は、周期的な電流応答をもたらす。信号は必ずしも図10Aおよび10Bにおいて同じスケールで示されているわけではないが、プライバシーガラス構造を通る電流信号の形状が、図10A図10Bとの間で異なることは明らかである。かかる差異は、プライバシーガラス構造を流れる漏れ電流の変化を示している可能性がある。
【0107】
図11Aおよび11Bは、表示を容易にするための異なる表示スケールを含む、図10Aおよび10Bの例示的な電流および電圧信号の拡大図をそれぞれ示す。
【0108】
いくつかの実施形態では、電流信号と関連する1つ以上のメトリックは、構造の設置時など、構造が良好な動作状態にあることが知られている時間中に測定することができる。かかるメトリックは、例えば、駆動信号の所定の部分におけるまたはそれにわたる(例えば、正の電圧パルス中などの)測定電流の時間微分または積分を含むことができる。追加的または代替的に、方形波の正の部分および負の部分中の平衡電流の差(それぞれ、図11Aおよび図11BにΔおよびΔとして示される)をメトリックとして使用することができる。例えば、いくつかの実施形態では、印加された電気駆動信号に対する測定された電流応答は、印加された方形波の遷移間の期間など、印加された駆動信号の所定の部分中の電流応答を測定することを含む。いくつかの例では、これにより、構造の状態にかかわらず存在し得る特徴(突入電流など)を含む電流応答の比較を回避することができる。
【0109】
構造と関連する1つ以上の漏れ電流値を決定するために、1つ以上の電流応答メトリックを経時的に記録することができる。図12は、1つ以上の漏れ電流値を決定するための例示的なプロセスを示すプロセスフロー図を示す。いくつかの例では、図12の方法は、プライバシーガラス構造のドライバを介して実行することができる。この方法は、初期時間tにおいて、健全な構造の電流応答信号と関連する値を測定することを含む(1200)。かかる測定は、電流の微分または積分、ならびに/または印加された交流駆動信号(例えば、方形波)の正の部分および負の部分中の平衡電流間の差を決定することを含むことができる。いくつかの例では、時間tは一般に、設置または初期動作中など、構造がピークのまたはピークに近い健全性にあると想定される時間に対応する。
【0110】
次に、この方法は、時間tにおいて、電流応答信号と関連する値を再び測定することを含み(1202)、これは、時間tの後の第1のインスタンスにおいて、t(n=1)と表すことができる。例えば、いくつかの例では、時間tにおける初期測定後の第1の測定は、時間tに行われる。この方法は、時間tおよびtにおける電流信号と関連する決定された値に基づいて、時間tにおける漏れ電流を決定することを含む(1204)。例えば、いくつかの例では、漏れ電流を決定することは、時間t対時間tにおける測定値の差を決定して、時間tにおける健全な構造の値の測定以降に発生した漏れ電流によって引き起こされた変化を決定することを含む。様々な例では、かかる決定は、例えばドライバを介してローカルで実行することができ、またはクラウドベースのコンピューティングを介して行うことができる。
【0111】
図12の方法は、漏れ電流が所定の条件を満たすかどうかを決定することを含む(1206)。漏れ電流が所定の条件を満たさない場合、ドライバは、既存の電気駆動信号を印加し続ける(1208)。例えば、いくつかの例では、所定の条件を満たさない漏れ電流は、漏れ電流が存在しないか、または漏れ電流が十分に小さいので、既存の電気駆動信号が、目に見える光学的劣化なしにプライバシーガラス構造を適切に駆動され得ることを示すことができる。いくつかのかかる場合、過剰な漏れ電流を補償するために駆動信号を変更する必要はない。
【0112】
しかしながら、いくつかの例では、漏れ電流が所定の条件を満たす場合、この方法は、1つ以上の駆動パラメータをロードおよび/または更新して、更新された電気駆動信号を確立するステップを含むことができる(1210)。例えば、いくつかの例では、過剰な漏れ電流はプライバシーガラス構造の光学性能を劣化させる可能性があるが、電気駆動信号に対する調整によって補償することができる。
【0113】
過剰な漏れ電流に基づく電気駆動信号に対する調整例には、電圧を増加させること(1212)、周波数を減少させること(1214)、および/または電圧をパルス化すること(1216)を含むことができる。いくつかの例では、電圧(例えば、図4のVの値)を増加させることにより、漏れ電流による失われた電圧を補償することができる。周波数を減少させると、例えば、方形波駆動信号の正の部分中に、静電容量性光学活性材料が充電するための追加の時間が提供される。いくつかの例では、電気駆動信号の周波数を減少させることは、電気駆動信号の周期を増加させることを含む。例えば、図4Aに示される例示的な電気駆動信号に関して、電気駆動信号を調整することは、各サイクル中に電圧Vおよび-Vが印加される時間量を増加させることを含む。
【0114】
電圧パルス化に関して、いくつかの例では、駆動信号は、1つ以上の浮動ステップを含み、このステップでは、光学活性材料が電源および接地から切断される。例えば、図5に関して、いくつかの例では、駆動信号は、負荷(例えば、接触電極間の光学活性材料)がその現在の電圧を維持するように、例えば、すべてのスイッチSW1、SW2、SW3、およびSW4が開かれる期間を含むことができる。しかしながら、漏れ電流により、負荷における電圧が浮動ステップ中に下落する可能性がある。電圧をパルス化すること(例えば、ステップ1216)は、負荷における電圧を維持し、かつ漏れ電流による電圧下落を補償するために、1つ以上の浮動ステップ中に負荷に1つ以上の電圧パルスを印加することを含むように電気駆動信号を変更することを含むことができる。例示的な実装形態では、構造全体にわたる期待値(例えば、電圧下落)からの電圧の低下を測定し、所定の閾値と比較することができる。電圧の低下が所定の閾値を満たすかまたはそれを超える場合、レール電圧パルスを負荷に印加することができる。レール電圧パルスを印加する頻度は、(例えば、漏れ電流の重大度に起因する)下落の重大度に依存することができる。例えば、場合によっては、レール電圧パルスは、印加された電気駆動信号の単一サイクルまたは半サイクル中に複数回印加することができる。
【0115】
様々な実施形態では、インデックスnをインクリメントすることができ、図12のプロセスのステップは、複数の時間t、t、…、tにわたって繰り返すことができる。いくつかの例では、1つ以上の時間と関連する(例えば、時間t…tのうちのいずれか1つ以上における)測定値および/または漏れ電流値を、メモリに保存することができる。追加的または代替的に、この方法は、測定された漏れ電流対時間および/または対インデックスの測定曲線を生成することを含むことができる。いくつかの例では、経時的な漏れ電流の傾向を使用して、漏れ電流の考えられる原因に関する情報を決定することができる。
【0116】
いくつかの実施形態では、漏れ電流が所定の条件を満たすかどうかを決定すること(例えば、ステップ1206)は、単一の漏れ電流値が、決定された漏れ電流が閾値漏れ電流値を超えることまたは漏れ電流値の所定の範囲内にあることなど、ある条件を満たすかどうかを決定することを含むことができる。追加的または代替的に、漏れ電流が所定の条件を満たすかどうかを決定することは、経時的な漏れ電流の微分が所定の閾値を超えるかどうかなど、漏れ電流の傾向対時間および/または時間インデックスが所定の条件を満たすかどうかを決定することを含むことができる。
【0117】
いくつかの実施形態では、ステップ1212、1214、および1216に示されるように、所定の条件を満たす漏れ電流に応答して、1つ以上のアクションをとることができる。場合によっては、異なる所定の範囲内に入る漏れ電流値、および/または1つ以上の所定の条件を満たす経時的な漏れ電流の傾向など、異なる漏れ電流条件に応答して、異なるかかるアクションまたはそれらの組み合わせを実行することができる。いくつかの実施形態では、プライバシーガラス構造が光学的に劣化した場合に、ユーザが漏れ電流補償を開始および/または変更することができる。
【0118】
いくつかの例では、印加電圧に対する電流応答の非線形性は、プライバシーガラス構造内のイオン挙動に起因する可能性がある。いくつかのかかる例では、かかる非線形応答を分析して、構造内を移動するイオンの様々なサイズおよび/または密度、ならびに構造内の印加電場に対するかかるイオンの応答など、様々なパラメータを決定することができる。いくつかの実施形態では、かかる情報を使用して、光学活性材料に関する詳細、およびかかる材料が動作中にどのように分解してプライバシーガラス構造の光学劣化を引き起こすかを決定することができる。いくつかの実施形態では、経時的な漏れ電流のデータを使用して、悪いコーティング、イオン生成、および/または他の要因など、1つ以上の漏れ電流源を決定することができる。
【0119】
様々なかかる計算および/または決定は、例えば、ドライバを介してローカルで実行することができ、および/またはクラウドベースのコンピューティングを介するなどの外部環境において実行することができる。
【0120】
図6に関して説明したように、単一のドライバ300は、かかる構造の同時動作のために、複数のプライバシーガラス構造(例えば、310、320、330)の各々に電気駆動信号を提供するように構成することができる。本明細書で説明するように、ドライバは、かかる構造を駆動するのに適切な電気駆動信号を確立するために、プライバシーガラス構造の電気的特性を決定するように構成することができる。いくつかの実施形態では、ドライバは、複数の関連するプライバシーガラス構造の各々に対して(例えば、図7、9、および/または12に示されるような)様々なかかるプロセスを実行するように構成することができる。ドライバは、複数のプライバシーガラス構造の各々に適切な電気駆動信号を決定するように、かつかかる電気駆動信号をかかる各プライバシーガラス構造に同時に提供するように構成することができる。
【0121】
本明細書の他の場所で説明するように、いくつかの例では、電気駆動信号は、方形波またはほぼ方形波(例えば、スルーレートを有する方形波、台形波、遅いゼロクロスオーバーを有する方形波形状など)の信号を含む。例えば、図4、10A、および10Bに示される例示的な電圧対時間駆動信号は、ほぼ方形波の駆動信号を示す。さらに、図10Aおよび10Bに示されるように、方形波駆動信号において半周期ごとに発生する遷移は、構造を通る電流のスパイクをもたらす。概して、静電容量性プライバシーガラス構造を考えると、方形波駆動信号のエッジが急になるほど、対応する電流スパイクがより大きくなる可能性がある。したがって、複数のプライバシーガラス構造が、方形波またはほぼ方形波の駆動信号と同時に駆動されている場合、各構造内の電流スパイクはほぼ同時に発生し、ドライバから出力される大きい電流/電力ピークを生成する可能性がある。
【0122】
いくつかの実施形態では、ドライバは、1つ以上のプライバシーガラス構造に印加される電気駆動信号をスタガして、印加される電気駆動信号に対する電流応答と関連するピーク電流/電力引き込みを低減するように構成される。言い換えると、電気駆動信号をスタガすることは、ドライバによって駆動されるプライバシーガラス構造の各々によるピーク電流引き込みが、異なる時間に発生するように行われ得る。いくつかの実施形態では、第1の電気駆動信号に対して第2の電気駆動信号をスタガすることは、第1の電気駆動信号および第2の電気駆動信号が互いに同相であるときに、第1の電気駆動信号の印加に対して第2の電気駆動信号の印加を遅延させることを含む。いくつかの例では、第1の電気駆動信号に対して第2の電気駆動信号をスタガすることは、第1の電気駆動信号に対して第2の電気駆動信号を位相シフトしながら、第1の電気駆動信号および第2の電気駆動信号を実質的に同時に印加することを含む。またさらなる実施形態では、第1の電気駆動信号に対して第2の電気駆動信号をスタガすることは、第1の電気駆動信号に対して第2の電気駆動信号を位相シフトし、第1の電気駆動信号の印加に対して第2の電気駆動信号の印加を時間的に遅延させることを含む。したがって、様々な実施形態では、電気駆動信号をスタガすることは、信号を位相シフトすること、信号の印加を時間的に遅延させること、またはそれらの組み合わせを含むことができる。
【0123】
図13は、スタガ電気駆動信号を複数のプライバシーガラス構造に印加するための例示的なプロセスを示すプロセスフロー図を示す。この方法は、複数のプライバシーガラス構造の各々に電気感知パルスを印加することと(1300)、複数のプライバシーガラス構造の各々について電気駆動信号を決定することと(1302)、を含む。かかるステップは、例えば、図7に関して説明したように、プライバシーガラス構造の各々について実行することができる。
【0124】
図13の方法は、1つ以上のプライバシーガラス構造に対するスタガ量を決定することをさらに含む(1304)。かかる決定は、種々の方式で実行され得る。いくつかの例では、ドライバは、各プライバシーガラス構造の電気駆動信号間に所定量の遅延を提供するように構成することができる。追加的または代替的に、いくつかの例では、ドライバは、決定された複数の電気駆動信号を分析して、複数の電気駆動信号を印加するための適切なスタガ量を決定するように構成することができる。例えば、大きさ、周波数などの各電気駆動信号の1つ以上のパラメータを分析して、電気駆動信号間の適切なスタガ量を決定することができ、例えば、大きい電流および/または電力スパイクをもたらす可能性がある信号の重ね合わせのインスタンスを低減することができる。いくつかの実施形態では、第1の電気駆動信号と第2の電気駆動信号との間のオフセットを決定して、方形波駆動信号の状態間の遷移など、駆動信号の1つ以上の特徴の重ね合わせを低減または排除するために、第1の電気駆動信号と第2の電気駆動信号との周波数成分を比較することができる。
【0125】
いくつかの例では、対応する複数のプライバシーガラス構造に対する複数の電気駆動信号の各々は、他の信号に対してスタガされており、その結果、どの2つの信号も同時に印加されることはない。他の例では、ドライバは、2つ以上の電気駆動信号が、望ましくない電流スパイクをもたらすことなく(例えば、ピーク電流引き込みなどの総電流引き込みが所定の閾値を超えることをもたらす)同時に印加され得ると決定することができる。いくつかのかかる例では、ドライバは、他の電気駆動信号を潜在的にスタガしながら、かかる電気駆動信号を同時に提供するように構成することができる。
【0126】
図13の方法は、決定されたスタガ量を含めて、複数のプライバシーガラス構造の各々に電気駆動信号を印加することをさらに含む(1306)。電気駆動信号を印加する際にスタガ量を含めることは、決定された電気駆動信号の印加を遅延させること、および/または電気駆動信号を位相シフトすることを含むことができる。説明したように、場合によっては、決定されたスタガ量は、複数の電気駆動信号(例えば、複数の印加された電気駆動信号のサブセット)が、対応するプライバシーガラス構造に互いに同時にかつ同相で印加される一方で、他の信号が、同時に印加される信号に対してスタガされるという結果をもたらす。他の例では、各電気駆動信号は、他の電気駆動信号の各々に対して遅延および/または位相シフトされる。
【0127】
いくつかの実施形態では、ドライバは、かかる信号をよりよくスタガするために、1つ以上の電気駆動信号を調整するように構成することができる。例えば、図13の破線で表されるように、ドライバは、調整された電気駆動信号(例えば、図7の方法によって決定されたものとは異なる電気駆動信号)に基づいてスタガ量を決定するように構成することができる(1304)。したがって、いくつかのかかる実施形態では、ドライバは、ドライバのピーク電流および/または電力負荷を低減するために適切なスタガ量を決定した後、更新された電気駆動信号を決定するように構成することができる(1302)。例示的な実施形態では、第1のプライバシーガラス構造が、第1の周波数を有する電気駆動信号で駆動され、第2のプライバシーガラス構造が、第1とは異なる第2の周波数を有する電気駆動信号で駆動される場合。位相シフトおよび/または遅延によってかかる信号をスタガすることは、それぞれの電気駆動信号の初期印加と関連する電流スパイクを減少させる可能性がある。しかしながら、かかる電気駆動信号の重ね合わせは、それにもかかわらず、望ましくないほどに大きい電流および/または電力スパイクが発生する時間をもたらす可能性がある。いくつかの例では、ドライバは、かかるインスタンスを低減または排除するために一方または両方のかかる電気駆動信号を調整するように構成することができ、例えば、合成電流および/または電力スパイクが閾値レベルを下回ったままになるように、共通の周波数を含むように電気駆動信号を調整し、および/または一方または両方の信号の大きさを調整するように構成することができる。スタガリング分析に応答して、対応する1つ以上のプライバシーガラス構造のために1つ以上の電気駆動信号を調整するための他の技術が可能である。いくつかのかかる例では、望ましくないほどに大きい電流および/または電力スパイクのインスタンスを低減するために1つ以上のかかる電気駆動信号を調整すると、決定されたスタガ量を含む決定された電気駆動信号を、それぞれのプライバシーガラス構造に印加することができる(1306)。
【0128】
図14および15は、複数のプライバシーガラス構造に、決定されたスタガ量を含む電気駆動信号を印加する実装例を示す。図14は、プライバシーガラス構造1410、1420、および1430と電気的に通信しているドライバ1400を示している。図14の図示の例では、ドライバ1400は、共通の電気駆動信号f(t)を、プライバシーガラス構造1410、1420、および1430の各々に提供する。例えば、各プライバシーガラス構造1410、1420、および1430は、同じ種類の構造であり得、同様の電気的特性などを含んで、図7の方法によって決定されるような、各構造に印加される同じ全般的な電気駆動信号をもたし得る。
【0129】
図14に示されるように、電気駆動信号f(t)は、各プライバシーガラス構造間で位相シフトされて、各構造における電流スパイクが同時に低減または排除される。例えば、信号f(t)がプライバシーガラス構造1410に提供される一方で、信号f(t-Δt)がプライバシーガラス構造1420に印加される。したがって、電気駆動信号の様々な要素および結果として生じる電流応答(例えば、電流スパイク)は、プライバシーガラス構造1420では、プライバシーガラス構造1410に対して量Δtだけ遅延される。同様に、信号f(t-2Δt)がプライバシーガラス構造1430に印加され、その結果、電気駆動信号の要素および結果として生じる電流応答は、プライバシーガラス構造1430では、プライバシーガラス構造1420に対してΔtだけ、およびプライバシーガラス構造1410に対して2Δtだけ遅延される。
【0130】
いくつかの例では、複数の電気駆動信号の各々の間のスタガ量は、電気駆動信号の1周期以内である。例えば、図14のシステムが、プライバシーガラス構造1410、1420、および1430を含み、電気駆動信号f(t)が、周期Tを伴って周期的であり、場合によっては2Δt<Tである場合。例えば、電気駆動信号f(t)の周波数が60Hzである場合、いくつかの例では、Δt<8.3msである。またさらなる例では、複数の電気駆動信号の各々の間のスタガ量は、電気駆動信号の半周期以内である。
【0131】
図15は、複数のプライバシーガラス構造1510、1520、および1530の各々に電気駆動信号を提供するドライバ1500を示している。示されるように、いくつかの例では、異なる電気駆動信号f(t)、g(t)、およびh(t)を、それぞれプライバシーガラス構造1510、1520、および1530に提供することができる。かかる電気駆動信号は、例えば、図7に示される方法によって、各プライバシーガラス構造について決定することができる。異なる電気駆動信号は、ピーク電圧、スルーレート、波形、周波数など、1つ以上の異なるパラメータを含むことができる。本明細書の他の場所で説明するように、いくつかの例では、ドライバは、例えば、決定された電気駆動信号の数学的分析に基づいて、異なる電気駆動信号間に印加するスタガ量を決定することができる。図示の例では、プライバシーガラス構造1520に印加される電気駆動信号g(t)は、電気駆動信号f(t)に対して量Δtだけスタガされ、プライバシーガラス構造1530に印加される電気駆動信号h(t)は、電気駆動信号f(t)に対して量Δtだけスタガされる。様々な例では、Δtは、決定された電気駆動信号に基づいて決定されたスタガの量に応じて、Δtよりも大きいか、それよりも小さいか、またはそれに等しいことが可能である。本明細書の他の場所に記載されるように、いくつかの例では、異なる電気駆動信号に対する合成電流応答が、例えば、複数のかかるプライバシーガラス構造によって提供される特定の負荷サイズにより、(例えば、所定の閾値よりも大きい)望ましくないほどに大きい電流および/または電力スパイクに達しないであろうとドライバが決定した場合、かかる異なる電気駆動信号を同時に印加することができる(例えば、Δt=0、Δt=0、および/またはΔt=Δt)。
【0132】
図16A~16Cは、システム内の対応する複数のプライバシーガラス構造を駆動するために使用される複数の電気駆動信号の電圧対時間プロファイルの例を示す。図16Aは、関数f(t)を示している。図16Bは、結果として生じる信号がf(t-Δt)によって表され得るように、時間Δtだけ遅延された関数f(t)を示している。同様に、図16Cは、結果として生じる信号がf(t-2Δt)によって表され得るように、時間2Δtだけ遅延された関数f(t)を示している。図16A~16Cの図示の例では、電気駆動信号f(t)は、組み込みスタガリングでプライバシーガラス構造を分離するために印加され、その結果、個々の電流および/または電力スパイクを引き起こし得る各電気駆動信号の様々な遷移部分は、同時に起こらなくなる。
【0133】
いくつかの実施形態では、複数の駆動信号が決定されると、ドライバは、どの電気駆動信号が、同時に印加されるときに、1つ以上のパラメータ(例えば、電流スパイク値)に所定の閾値を超えさせるかを決定することができる。同様に、ドライバは、どの電気駆動信号が、合成されるときに、1つ以上のパラメータに所定の閾値を超えさせないかを決定することができる。ドライバは、どの電気駆動信号を同時に印加することができるかを決定し、電気駆動信号または電気駆動信号のグループの印加をスタガすることができ、その結果、1つ以上のパラメータは、各電気駆動信号または電気駆動信号のグループが印加されるときに、所定の閾値を超えなくなる。
【0134】
例示的な実施形態では、ドライバは、5つのプライバシーガラス構造に電力を供給するように接続され、そのうちの3つは、ドライバによって駆動され得る最大負荷を表す。残りの2つのプライバシーガラス構造は、小さいとみなされ、電気的パラメータが所定の閾値を超えることなく同時に駆動され得る。ドライバは、残りの3つの電気駆動信号の各々を残りの構造にスタガして送達しながら、これら2つのより小さい負荷に互いに同時にかつ同相で電気駆動信号を提供するように構成することができる。
【0135】
図14、15、および16A~Cでは、3つのプライバシーガラス構造を含むものとして示されるが、概して、システムは、ドライバと、それと通信している任意の数のプライバシーガラス構造とを含むことができる。ドライバは、それとの電気通信における1つ以上のプライバシーガラス構造の各々について、本明細書で説明される様々なプロセスを実行するように構成することができる。いくつかの例では、ドライバは、電気駆動信号が提供されるプライバシーガラス構造の数を決定するように構成することができる。かかる決定は、1つ以上のプライバシーガラス構造を駆動するための適切な電気駆動信号および/またはスタガリング量を決定することなど、様々な情報を決定する際に使用することができる。
【0136】
ドライバは、本明細書に記載されているプロセスを種々の方式で実行するように構成することができる。いくつかの例では、システムドライバは、電気信号および/または他の受信センサ情報などの情報を処理し、それに応答して1つ以上の対応するアクションを実行するように構成された1つ以上の構成要素を含むことができる。かかる構成要素は、例えば、1つ以上のプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、あるいは事前定義された関係に従ってデータおよび/または信号を受信および出力することが可能な他の適切な構成要素を含むことができる。いくつかの例では、ドライバは、1つ以上のかかる構成要素にかかるプロセスを実行させるための命令でプログラムされた1つ以上の非一時的コンピュータ可読媒体などの1つ以上のメモリ構成要素を含むか、またはそうでなければそれらと通信することができる。追加的または代替的に、ドライバは、外部コンピュータシステムおよび/またはネットワークなどの追加のデバイスと通信して、クラウドベースのコンピューティングなどの情報処理を容易にすることができる。
【0137】
様々な非限定的な例が本明細書で説明されてきた。当業者は、これらおよび他のものが、添付の特許請求の範囲の範囲内に収まることを理解するであろう。
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12
図13
図14
図15
図16A
図16B
図16C