(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】キャロブエキスからピニトールを分離するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
C07C 41/36 20060101AFI20240731BHJP
C07C 43/196 20060101ALI20240731BHJP
C07C 35/16 20060101ALI20240731BHJP
C07C 29/10 20060101ALI20240731BHJP
C07C 29/76 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C07C41/36
C07C43/196
C07C35/16
C07C29/10
C07C29/76
(21)【出願番号】P 2021564573
(86)(22)【出願日】2020-04-30
(86)【国際出願番号】 IB2020054084
(87)【国際公開番号】W WO2020225665
(87)【国際公開日】2020-11-12
【審査請求日】2023-02-08
(31)【優先権主張番号】102019000006530
(32)【優先日】2019-05-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】521473701
【氏名又は名称】ボノ アンド ディッタ エスピーエイ
【氏名又は名称原語表記】BONO & DITTA S.P.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100181847
【氏名又は名称】大島 かおり
(72)【発明者】
【氏名】ファビオ サルバトーレ ディッタ
(72)【発明者】
【氏名】アンドレア アマト
【審査官】水島 英一郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2003/0040609(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャロブエキスから少なくとも1種のイノシトールを分離するためのプロセスであって、
a)ブリックス値が60超であり、ピニトール含有量がエキスの重量に基づく重量パーセントで5~25%である濾過および脱塩されたキャロブエキスを提供する工程と、
b)前記工程a)の前記キャロブエキスに、前記ピニトールのクロマトグラフィー分離プロセスを行なう工程であって、該プロセスは、前記エキスをクロマトグラフィー樹脂に少なくとも1回通し、これにより、ピニトール含有量が溶液の総重量に基づく重量パーセントで35~70%であり、ブリックス値が20以下である水溶液を得ることを含む工程と、
c)前記工程b)で得られた前記水溶液に精製工程を行なうことにより、ピニトール含有量が溶液の総重量に基づく重量パーセントで55%超である精製水溶液を得る工程と、を有
し、
前記工程a)の前記キャロブエキスが、少なくとも2つの弱陰イオン交換樹脂および少なくとも2つの強陽イオン交換樹脂に通すことによって脱塩され、
前記キャロブエキスを弱陰イオン交換樹脂に前記少なくとも1回通した後、強陽イオン交換樹脂に通す前に、前記キャロブエキスを強陰イオン交換樹脂に通し、
前記工程a)の前記キャロブエキスが、該エキスの重量に基づく重量パーセントで、5~15%のスクロースを含む、プロセス。
【請求項2】
前記工程a)
において、前記キャロブエキスが脱色される
ことをさらに含む、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記脱塩は、前記キャロブエキスに、
i.前記キャロブエキスを弱陰イオン交換樹脂に1回目に通す工程と、
ii.前記キャロブエキスを強陽イオン交換樹脂に1回目に通す工程と、
iii.前記キャロブエキスを弱陰イオン交換樹脂に2回目に通す工程と、
iv.前記キャロブエキスを強陰イオン交換樹脂に通す工程と、
v.前記キャロブエキスを強陽イオン交換樹脂に2回目に通す工程と、に順に行なうことにより行なわれる、請求項
1または2に記載のプロセス。
【請求項4】
前記工程a)の前記キャロブエキスが、該エキスの重量に基づく重量パーセントで、5~20%、
または10~15%のピニトールを含む、請求項1~
3のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記工程b)が、「擬似移動床クロマトグラフィー(SMBクロマトグラフィー)」法によって
、改良連続クロマトグラフィー分離(ISMB)
によって、または、ISMB(登録商標)(三菱化成工業株式会社)によって行なわれる、請求項1~
4のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項6】
前記精製工程c)が、前記工程b)で得られた前記溶液を、
濃縮する、または熱により濃縮する工程を含む、請求項1~
5のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記精製工程c)の最後に、ピニトールを少なくとも70%
、少なくとも80%
、少なくとも85%
、少なくとも90%、
または少なくとも95%の純度で含む濃縮物が得られる、請求項1~
6のいずれか1項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記工程c)の後に、該工程c)で得られた前記水溶液に対しピニトールの酸加水分解を行ない、D-チロ-イノシトールを含む水溶液を得て、次に、D-チロ-イノシトールを含む前記水溶液を強陰イオン交換樹脂に少なくとも1回通すことにより、D-チロ-イノシトールを含む前記水溶液からD-チロ-イノシトールをクロマトグラフィー分離することにより、D-チロ-イノシトールを含む水溶液を得る工程d)が行なわれる、請求項1~
7のいずれか1項に記載のプロセス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、食品サプリメント産業の分野、特にピニトールベースの食品サプリメントに関する。
【0002】
より詳細には、本発明は、キャロブエキスからピニトールを分離するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0003】
ピニトール(3-O-メチル-1,2,4 cis-3,5,6 trans-ヘキサヒドロキシシクロヘキサノールまたは3-O-メチル-D-チロ-イノシトール)は、分子量194.18g/molのD-チロ-イノシトール(C7H14O6)のメチルエーテルである。
【0004】
ピニトール(またはD-ピニトール)は、血糖値降下作用および経口投与時のインスリンの機能改善作用、ならびに糖尿病および肥満の治療への利用で知られている。また、ピニトールは、炭水化物と一緒に摂取した場合と同様にクレアチンの吸収を高める。上記の作用により、大量の炭水化物を摂取しなくても、必要量のクレアチンを摂取することが可能となる。
【0005】
さらに、ピニトールは筋肉組織の機能を高め、筋肉中のグリコーゲン産生を増大させ、筋肉組織内のグルコース輸送を促進する。このようなピニトールの活性は、スポーツ分野で選手のパフォーマンスを向上させるために利用することができる。実際、ピニトールには、筋肉細胞へのグルコースの取り込みを増加させ、筋肉内に貯蔵されるグリコーゲンを増大させる作用がある。この結果、血糖値が安定し、高いレベルのエネルギーを長時間持続できるようになる。
【0006】
ピニトールは、体重1kgあたり0.1mg~1.0g/日の用量でサプリメントの形態で、または飲食物に配合して経口投与により使用する。また、非経口投与または静脈内投与も可能である。
【0007】
ピニトールは最初に松から単離されたが、大豆にも(大豆の乾燥重量に基づく重量パーセントで)約1%の濃度で含まれている。大豆の消費が盛んなアジアの一部の国では、大豆からのピニトールの摂取量が5mg/kg/日超であると推定されている。
【0008】
ピニトールはブーゲンビリア・スペクタビリス(Bougainvillea spectabilis)およびグリリシディア・セピウム(Gliricidia sepium)にも含まれている。ピニトールは、キャロブの果実(セラトニア・シリキアCeratonia siliqua)にも含まれており、クロマトグラフィー法を用いてピニトールを抽出することができる。
【0009】
キャロブの木は寿命の長い常緑広葉樹の果樹であり、成長が遅い。食品分野では、キャロブのペーストおよび種子がチョコレート代替品の製造に使用されるとともに、キャロブ種子の粉末から多くの食品増粘剤およびゲル化剤が得られる。
【0010】
キャロブエキスの組成は、通常、(キャロブエキスの乾燥重量に基づく重量パーセントで)スクロース40~65%、ピニトール7~15%、フルクトース7~17%、グルコース7~15%、不純物0.5~2%である。したがって、キャロブはピニトールを非常に多く含む供給源であり、例えば、大豆および松葉(ピニトール0.5~1%)よりも多く含む。
【0011】
特許文献1(Compania General del Algarrobo de Espana, S.A.)には、キャロブエキスからピニトールを分離するためのプロセスが記載されている。このプロセスでは、エキスに含まれるスクロースをフルクトースおよびグルコースに転化し、得られたシロップに、詳細には強陽イオン樹脂によるクロマトグラフィーを行なってシロップに含まれる糖類からピニトールを分離し、純度90%超のピニトールの水溶液を得る。次に、溶液からピニトールを分離する。
【0012】
特許文献2(Amicogen Co. Ltd)には、キャロブシロップからピニトールを分離するための方法が記載されている。この方法は、シロップ中のピニトールの含有量を増加させ、低純度(40~50%)のピニトールを含む製品を得るために、分離前に細菌、酵母、またはカビを培養する工程を含む。微生物の細胞を分離したのち、得られたシロップに、活性炭による処理および結晶化プロセスを行なう。これにより、90%超もの高い純度でピニトールを含む製品が得られる。
【0013】
前述のプロセスはいずれもピニトールを90%超の純度で得ることができるが、非常に複雑かつ高価である。事実、特許文献1の場合、さまざまな濾過工程が想定されており、その後に強陽イオン樹脂(Na)で最初の脱塩を行ない、エキスを濃縮し、陽イオン樹脂でスクロースを転化する工程を経て、さらに陰イオン樹脂に通すことで脱塩を行ない、最後にISMB(登録商標)によるクロマトグラフィーにかけ、ピニトールをクロマトグラフィー分離する。それぞれの通過の際に大量の水を使用する必要があり、各カラムから出る溶液を濃縮する各種工程が必要である。
【0014】
特許文献2の場合、キャロブシロップ中で微生物を培養する工程が存在するため、微生物の細胞を分離する後工程が必要となる。食品分野における微生物管理のための特別な措置が必要となる理由においても、この2つの工程はいずれも工業的規模では困難となり得る。
【0015】
ピニトールは化学合成によっても得られるが、この手法は非常に高価である。
【0016】
このため、当該分野において、キャロブからピニトール(続いてピニトールからD-チロ-イノシトール)を分離するための、従来技術のプロセスよりも簡潔かつ安価なプロセスを提供することが求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0017】
【文献】欧州特許第1241155号明細書
【文献】韓国公開特許第2004-0016338号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
したがって、本発明の技術的課題は、キャロブから、より詳細にはキャロブエキスからピニトール(およびD-チロ-イノシトール)を分離するための、実用的かつ安価で汎用性を有し、スケーラブルかつ高収率のプロセスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
この課題は、本発明により、キャロブエキスから少なくとも1種のイノシトールを分離するためのプロセスによって解決され、本プロセスは、
a)ブリックス値が60超であり、ピニトール含有量がエキスの重量に基づく重量パーセントで5~25%である濾過および脱塩されたキャロブエキスを提供する工程と、
b)前記工程a)の前記キャロブエキスに、前記ピニトールのクロマトグラフィー分離プロセスを行なう工程であって、該プロセスは、前記エキスをクロマトグラフィー樹脂に少なくとも1回通し、これにより、ピニトール含有量が溶液の総重量に基づく重量パーセントで35~70%であり、ブリックス値が20以下である水溶液を得ることを含む工程と、
c)前記工程b)で得られた前記水溶液に精製工程を行なうことにより、ピニトール含有量が溶液の総重量に基づく重量パーセントで55%超である精製水溶液を得る工程と、を有する。
【0020】
本特許における「ピニトール」という用語は、D配置のピニトール(D-ピニトール)を意味し、D-ピニトールは、キャロブエキス中に存在するピニトールの唯一の配置である。
【0021】
本明細書では、「キャロブエキス」とは、刻んだキャロブのさやを浸漬(maceration)して圧搾し、得られた水溶液から粗い固体残渣を分離して得られる水溶液を意味する。
【0022】
好ましくは、前記少なくとも1種のイノシトールは、ピニトールおよび/またはD-チロ-イノシトールから選択され、より好ましくはピニトールである。
【0023】
浸漬は一般に、さやと水とを約1:3の重量比で混合し、60℃~90℃の温度で1~24時間、pH4.5~5.5で行なわれる。圧搾は、一般には圧搾機によって、例えば連続的に行なわれる。
【0024】
得られた水溶液は一般に色が濃く、粒子が浮遊している。さらに、得られた水溶液は、一般にグルコース、フルクトース、スクロース、ピニトール、および他の糖類または不純物を含み、通常はブリックス値が10~30である。
【0025】
工程a)の濾過されたエキスは、当該分野で公知の濾過技術、好ましくは回転式真空フィルターによって得ることができ、より好ましくはフィルター助剤がパーライトを含む。
【0026】
好ましくは、パーライトは160μm超の粒子径の分布が5%(w/w)~10%(w/w)、より好ましくは7%(w/w)である。
【0027】
好ましくは、パーライトの密度値は90~130g/l、より好ましくは110g/lである。
【0028】
本発明の目的に適したパーライトは、例えばRandalite(登録商標)W24(フランス国Ceca Arkema Group)である。
【0029】
パーライトは、ケイ酸アルミニウムの軟岩石で構成されており、熱を加えると膨張する。この膨張した材料を粉砕して、各種サイズ(degrees)のフィルター助剤を作製する。
【0030】
好ましくは、回転式フィルターによる濾過に加えてまたはそれに代えて、フィルターエレメントが垂直に配置されたベルフィルター(プレコートフィルターとも呼ばれる)による濾過工程を含んでよい。
【0031】
好ましくは、濾材は珪藻土を含む。
【0032】
好ましくは、珪藻土はSiO2を含む。
【0033】
好ましくは、珪藻土は融剤焼成型である。
【0034】
本発明の目的に適した濾材は、例えば、Dicalite Speedplus(登録商標)またはDicalite 6000(イタリア国Palumbo Trading, Srl)である。
【0035】
好ましくは、回転式フィルターによる濾過および/またはベルフィルターによる濾過に加えて、またはそれに代えて、濾過が、当該分野で公知の技術によるタンジェンシャルフィルターに通すことによる濾過工程を含んでよい。好ましくは、タンジェンシャルフィルターは、孔径が0.45μm以下のフィルターを備える。
【0036】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスが濃縮される。濃縮は、当該分野で公知の濃縮法、例えば熱による濃縮、好ましくは40~90℃の温度、6000~10000l/hの流速で行なわれる。
【0037】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスが脱色される。
【0038】
好ましくは、脱色が吸着クロマトグラフィーによって行なわれる。
【0039】
好ましくは、脱色が、キャロブエキスを、吸着性樹脂、より好ましくはスチレン-ジビニルベンゼン(DVB)共重合体ベースのマトリックスを含む吸着性樹脂に通すことによって行なわれる。適切な樹脂およびプロセスパラメータを選択することは、当業者の技術の範囲内である。脱色に適した樹脂は、Resindion Srl(イタリア国ミラノ)のSepabeads(登録商標)SP207吸着性樹脂である。
【0040】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスが、陽イオン交換クロマトグラフィーおよび陰イオン交換クロマトグラフィーによって脱塩(または調整(rectified))される。
【0041】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスが、キャロブエキスを、少なくとも1つの陰イオン交換樹脂および少なくとも1つの陽イオン交換樹脂、より好ましくは弱陰イオン交換樹脂および強陽イオン交換樹脂に通すことによって脱塩(または調整)される。
【0042】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスが、キャロブエキスを、少なくとも1つの陰イオン交換樹脂、より好ましくは弱陰イオン交換樹脂、続いて陽イオン交換樹脂、より好ましくは強陽イオン交換樹脂の順に通すことによって脱塩される。
【0043】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスが、キャロブエキスを、少なくとも2つの弱陰イオン交換樹脂および少なくとも2つの強陽イオン交換樹脂に通すことによって脱塩される。
【0044】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスが、キャロブエキスを、2つの弱陰イオン交換樹脂および2つの強陽イオン交換樹脂に通すことによって脱塩される。
【0045】
好ましくは、キャロブエキスを弱陰イオン交換樹脂に少なくとも1回通した後、強陽イオン交換樹脂に通す前に、キャロブエキスを強陰イオン交換樹脂に通す。
【0046】
好ましくは、キャロブエキスを弱陰イオン交換樹脂に前記少なくとも1回通す通過は、最後の通過である。
【0047】
好ましい実施形態では、脱塩が、キャロブエキスを、
i.キャロブエキスを弱陰イオン交換樹脂に1回目に通す工程と、
ii.キャロブエキスを強陽イオン交換樹脂に1回目に通す工程と、
iii.キャロブエキスを弱陰イオン交換樹脂に2回目に通す工程と、
iv.キャロブエキスを強陰イオン交換樹脂に通す工程と、
v.キャロブエキスを強陽イオン交換樹脂に2回目に通す工程と、に順に行なうことによって行なわれる。
【0048】
公知のように、強イオン交換樹脂は0~12のpH範囲にわたって作用可能であるが、弱イオン交換樹脂による交換はより狭い範囲でのみ可能である。弱陽イオン交換樹脂は酸性領域で作用し、弱陰イオン交換樹脂は塩基性領域で作用する。
【0049】
本発明に好適な弱陰イオン交換樹脂としては、Relite RAM1(登録商標)(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)、Dowex(登録商標)MWA-1(日本国ダウ・ケミカル・カンパニー)、Purolite(商標)A100(日本国ダウ・ケミカル・カンパニー)などが挙げられる。
【0050】
本発明に適した強陰イオン交換樹脂としては、Relite RAP1(登録商標)(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)、Amberlite(商標)IRA900(オランダ国Lenntech BV)、Purolite(登録商標)A500(オランダ国Lenntech BV)が挙げられる。
【0051】
本発明に適した強陽イオン交換樹脂としては、Relite RPS(登録商標)(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)、Amberlite(商標)IRC200(オランダ国Lenntech BV)、Purolite(登録商標)A150(オランダ国Lenntech BV)などが挙げられる。
【0052】
好ましくは、脱塩工程が、連続的に、すなわち脱塩プロセスを中断することなく行なわれる。
【0053】
好ましくは、脱塩工程は、エキスに存在する不純物およびイオンを100%除去する。
【0054】
好ましくは、脱塩工程から出る溶液のpHは3~5である。実際、このpH値の範囲内であれば、エキスの褐色化を防ぐことができる。
【0055】
適切な樹脂およびプロセスパラメータの選択は当業者の技術の範囲内である。
【0056】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスのブリックス値は少なくとも65である。
【0057】
ブリックス(Bx)とは、液体に溶解している固体状態の物質の割合(%w/w)を表す指標である。本発明において、ブリックス度の測定は、当該分野で公知の方法の1つに従って、例えば屈折計を用いて行なうことができる。本発明の目的に適した屈折計は、アタゴRX-9000CXモデル(米国Atago USA, Inc.)である。
【0058】
好ましくは、工程a)のエキスの導電率値は、70~110μS/cm、より好ましくは90~100μS/cmである。導電率の測定は、当該分野で公知の方法に従って、例えば導電率計を用いて行なうことができる。
【0059】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスのpHは、2~4.5、より好ましくは2.5~3.5である。
【0060】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスの吸光度値は、石英キュベット、光路長1cm、430nmでの測定値で、0.005~0.030、より好ましくは0.010~0.020である。
【0061】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスは、エキスの重量に基づく重量パーセントで5~20%、より好ましくは10~15%のピニトールを含む。
【0062】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスは、エキスの重量に基づく重量パーセントで5~15%、より好ましくは8~10%のスクロースを含む。
【0063】
好ましくは、工程a)のキャロブエキスは、エキスの重量に基づく重量パーセントで、5~15%、より好ましくは8~10%のスクロース;5~20%、より好ましくは10~15%のピニトール;20~50%、より好ましくは30~40%のフルクトース;20~50%、より好ましくは30~40%のグルコースを含む。
【0064】
好ましくは、工程b)は、工程a)のキャロブエキスを、例えばDiaion(商標)UBK530樹脂(イタリア国ミラノResindion Srl)などの強陽イオン交換樹脂(Na+)に通すことによって行なわれる。本発明の目的に適した他の樹脂としては、Diaion(商標)UBK535、UBK550、およびUBK555(イタリア国ミラノResindion Srl)の各樹脂が挙げられる。
【0065】
好ましくは、工程b)が、(連続)擬似移動床クロマトグラフィー(SMBクロマトグラフィー)法によって、より好ましくは、改良(連続)クロマトグラフィー分離(「改良擬似移動床」(ISMB))、例えばISMB(登録商標)(改良擬似移動床、三菱化成工業株式会社)によって行なわれる。
【0066】
好ましくは、前述の模擬移動床クロマトグラフィー法(SMBクロマトグラフィー)、好ましくは前述の連続クロマトグラフィー分離ISMB、特にISMB(登録商標)は、4本のカラムを用いて行なわれる。
【0067】
公知のように、模擬移動層クロマトグラフィーは、連続的なマルチカラムクロマトグラフィープロセスであり、1961年より公知の技術であり、精製された二元混合物を連続的に調製する際に用いられる。
【0068】
三菱化学工業(日本国東京)が開発した前述のISMB法は、上記のSMB法を改良したもので、2成分を分離することができる。
【0069】
好ましくは、工程b)において、溶出が脱塩水により行なわれる。
【0070】
好ましくは、工程b)で得られる水溶液のブリックス値は15以下、より好ましくは10以下である。
【0071】
好ましくは、工程b)で得られる上記水溶液のピニトール含有量は、溶液の総重量に基づく重量パーセントで50~70%、より好ましくは60~70%である。
【0072】
好ましくは、工程b)で得られる上記水溶液のスクロース含有量は、溶液の総重量に基づく重量パーセントで2~8%である。
【0073】
好ましくは、工程b)で得られる上記水溶液は、溶液の総重量に基づく重量パーセントで、スクロース含有量が2~8%、グルコース含有量が20~32%、ピニトール含有量が50~70%、より好ましくは60~70%、フルクトース含有量が0~6%である。
【0074】
好ましくは、工程b)の最後に、ブリックス値が25~40である第2の溶液(廃液)も得られる。
【0075】
好ましくは、前記第2の溶液のピニトール含有量は、溶液の総重量に基づく重量パーセントで10%以下である。
【0076】
好ましくは、この第2の溶液は、溶液の総重量に基づく重量パーセントで、スクロース含有量が0~4%、グルコース含有量が2~10%、ピニトール含有量が2~7%、フルクトース含有量が85~95%である。
【0077】
好ましくは、精製工程c)が、工程b)で得られた溶液を、好ましくは熱により濃縮する工程を含む。
【0078】
好ましくは、溶液を熱により濃縮する上記工程は、ブリックス値が60以上、より好ましくは70以上、さらに好ましくは70~75に達するまで、溶液を25~60℃の温度に加熱することを含む。
【0079】
好ましくは、工程c)において、溶液の濃縮の後に、得られた溶液の結晶化工程を行なう。
【0080】
好ましくは、結晶化工程は、結晶が形成されて沈降するまで、濃縮された溶液を18~25℃の温度に3~10日間保持することによって行なわれる。
【0081】
好ましくは、工程c)において、純粋な結晶が形成されるまで、得られた濃縮物にエチルアルコール(例えば71体積%のエチルアルコール水溶液)を加えたのち、結晶を沈降させることで、結晶化を完了させる。
【0082】
所望の結果を得るために、精製工程c)で使用するパラメータおよび材料を変更することは、当業者の能力の範囲内である。
【0083】
好ましくは、精製工程c)の最後に、少なくとも70%、より好ましくは少なくとも80%、さらに好ましくは少なくとも85%、さらに好ましくは少なくとも90%、最も好ましくは少なくとも95%の純度でピニトールを含む濃縮物が得られる。
【0084】
本特許出願においては、ある成分の純度は、当該成分を含む溶液または結晶の重量に基づく当該成分の重量パーセントとして表されることが理解される。
【0085】
好ましくは、ピニトールを純度55%超で含む工程c)で得られた濃縮物を遠心分離し、ピニトールを含む沈殿物と、グルコースを含む上澄みとを得る。
【0086】
好ましくは、得られた沈殿物を、加熱下、より好ましくは約45℃で少なくとも2日間除湿することにより、純度が少なくとも95%の白色粉末の形態でピニトールを得る。
【0087】
好ましくは、工程c)の後に、工程c)で得られた水溶液、またはピニトールを含む沈殿物の除湿後に得られたピニトールに対し、ピニトールの酸加水分解を行ない、D-チロ-イノシトールを含む水溶液を得て、次に、D-チロ-イノシトールを含む水溶液を強陰イオン交換樹脂に少なくとも1回通すことにより、D-チロ-イノシトールを含む水溶液からD-チロ-イノシトールをクロマトグラフィー分離することにより、好ましくは、D-チロ-イノシトールを、溶液の総重量に基づく重量パーセントで少なくとも95%含み、好ましくはブリックス値が1以下である水溶液を得る工程d)が行なわれる。
【0088】
好ましくは、工程d)において、酸加水分解は、ピニトールの水溶液に(例えば33%(v/v)の)HClを添加することにより行なわれる。
【0089】
好ましくは、HClの添加に続いて、得られた水溶液を少なくとも12時間、より好ましくは少なくとも24時間の間沸騰させる工程が行なわれる。
【0090】
好ましくは、工程d)において、強陰イオン交換樹脂は、RAP1(登録商標)(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)、Amberlite(商標)IRA900(オランダ国Lenntech BV)、およびPurolite(登録商標)A500(オランダ国Lenntech BV)から選択され、好ましくはRAP1(登録商標)である。
【0091】
好ましくは、工程d)において、水溶液を強陰イオン交換樹脂に通す前に、水溶液の脱色の工程が、より好ましくは、溶液に活性炭を加えることによって行なわれる。
【0092】
好ましくは、活性炭は、溶液1ヘクトリットル当たり50~150g、より好ましくは溶液1ヘクトリットル当たり80~120gの濃度で溶液に添加される。
【0093】
活性炭は、メジアン径が4~50μm、より好ましくは8~15μmの活性炭から選択されるのが好ましい。
【0094】
好ましくは、活性炭のBETは、1200~2000m2/g、より好ましくは、1500~1800m2/gである。
【0095】
本発明の目的に適した活性炭としては、例えばPicapure HP 120(イタリア国Pica Italia SpA)やDecoran(登録商標)(イタリア国AEB(登録商標))が挙げられる。
【0096】
メジアン径(MT50またはd50)とは、レーザー粒子計を用いて測定されると理解され、50重量パーセントの直径の小さい粒子および50重量パーセントの重量の大きな粒子に対応する直径である。直径とは、前述のようにレーザー粒子計で測定した粒子のサイズを意味する。
【0097】
BET表面積(surface)とは、ASTM D-3037/89の手順によって測定されたものを意図する。
【0098】
好ましくは、工程d)において、強陰イオン交換樹脂に導入される水溶液のブリックス値は6.5以上である。
【0099】
好ましくは、工程d)において、強陰イオン交換樹脂から出る水溶液のpH値は、塩基性のpH値、より好ましくは8~12である。
【0100】
好ましくは、工程d)で得た、強陰イオン交換樹脂から出るD-チロ-イノシトールを含む水溶液を酸性化処理することにより、pHが3~5、より好ましくは約4の酸性化水溶液を得る。
【0101】
好ましくは、酸性化工程は、弱酸、例えばクエン酸によって行なわれる。
【0102】
好ましくは、工程d)で得たD-チロ-イノシトールを含む水溶液を濃縮することにより、ブリックス値が60以上、より好ましくは65以上、さらに好ましくは70以上の濃縮水溶液を得る。
【0103】
好ましくは、得られた濃縮水溶液に結晶化を行なう、より好ましくは、濃縮水溶液を約7~10℃の温度で2~6時間保持する。
【0104】
好ましくは、結晶化の後、D-チロ-イノシトールに除湿、より好ましくは吸収処理を実施することにより、少なくとも90%、より好ましくは少なくとも95%に精製されたD-チロ-イノシトールを得る。
【0105】
好ましくは、ピニトールの収率は、ピニトールを抽出したキャロブのさやの重量に基づく重量パーセントで、少なくとも3%、より好ましくは少なくとも5%、さらに好ましくは少なくとも7%、最も好ましくは7~10%である。
【0106】
好ましくは、ピニトールの収率は、ピニトールを抽出したキャロブのさやの重量に基づく重量パーセントで15%以下である。
【0107】
好ましくは、ピニトールの収率は、(さやの中に含まれる)出発物質のピニトールの重量に基づく重量パーセントで80%以上である。
【0108】
好ましくは、本発明のプロセスは連続的に行なわれる。
【0109】
したがって、本発明のプロセスは、ピニトールの分離、D-チロ-イノシトールの分離、またはその両方の分離を指す。実際、プロセスを工程c)まで実施することによりピニトールを得ることも、プロセスを継続することによりピニトールからD-チロ-イノシトールを得ることも可能である。また、ピニトールの一部を使用してD-チロ-イノシトールを得ることにより、ピニトールとD-チロ-イノシトールとの両方を得ることも可能である。
【0110】
驚くべきことに、本発明のプロセスにより、従来技術のプロセスよりも、ピニトールおよび/またはD-チロ-イノシトールをより簡潔、より迅速、より安価に、かつ高純度で入手することができることが発見された。
【0111】
実際、本発明のプロセスでは、先行技術に比べて比較的少ない数の通過を想定している。
【0112】
さらに、脱塩工程の存在により、特に本発明の好ましい実施形態に従って行なわれる場合には、ピニトールを比較的高濃度で含む比較的高濃度の水溶液からピニトールの分離を行なうことが可能である。これにより、(ピニトールの含有量が同じであれば)水溶液の量が比較的少量で済むため、プロセスの合理化をより促進することができる。また、クロマトグラフィーに通すたび希釈に要する水の量が比較的少なくて済むため、コストおよび廃棄物の削減にもつながる。
【0113】
好ましい実施形態では、脱塩工程において、特定の樹脂の配列、特に、i)弱陰イオン樹脂、ii)強陽イオン樹脂、iii)弱陰イオン樹脂、iv)強陰イオン樹脂、最後にv)強陽イオン樹脂をこの順で含む好適な配列i~vが特に有利である。
【0114】
陰イオン樹脂と陽イオン樹脂とを交互に使用するとともに、強イオン交換樹脂と弱イオン交換樹脂とを交互に使用することにより、特に高いピニトールの回収率を実現することができる。また、最後に強陽イオン樹脂に通すことで、排出される溶液のpHが酸性となり、溶液の褐色化を回避でき、別途の脱色工程が不要となるため、特に有利である。
【0115】
本発明の方法のさらなる利点は、連続実施が可能であることにある。これにより、非連続的なプロセスと比べて簡潔化および自動化を向上でき、処理速度が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0116】
【
図1】本発明のプロセスの一部の好ましい実施形態を示すブロック図であり、キャロブのさやから、ピニトール含有量が、溶液の総重量に基づく重量パーセントで35~70%であり、ブリックス値が20以下である工程b)の水溶液を得るまでを示す。
【
図2】実施例1に記載した浸漬および圧搾されたキャロブエキスの組成の決定に関連するHPLC分析の結果を示す。
【
図3】本発明の好ましい実施形態(実施例1)に係る脱塩工程に関連する通過の図である。
【
図4】実施例1に記載した濾過、脱色、調整(脱塩)、および濃縮を経たキャロブエキスの組成の決定に関連するHPLC分析の結果を示す。
【
図5】本発明のプロセスの一部の好ましい実施形態のブロック図であり、ピニトール含有量が、溶液の総重量に基づく重量パーセントで35~70%であり、ブリックス値が20以下である工程b)の水溶液から、工程c)の精製水溶液を得るまでを示す(実施例1)。
【
図6】実施例1の分画1として記載する、ピニトール含有量が35~70%であり、ブリックス値が20以下である工程b)で得た水溶液の組成の決定に関連するHPLC分析の結果を示す。
【
図7】実施例1に記載の分画2の決定に関連するHPLC分析の結果を示す。
【
図8】実施例1に記載する、ピニトール含有量が溶液の総重量に基づく重量パーセントで55%超である工程c)で得た精製水溶液の組成の決定に関連するHPLC分析の結果を示す。
【
図9】本発明のプロセスの一部の好ましい実施形態を示すブロック図であり、工程c)の精製水溶液から、D-チロ-イノシトールを含み、ブリックス値が1以下である工程d)の水溶液を得るまでを示す。(実施例2)。
【
図10】実施例2のD-チロ-イノシトールを含み、ブリックス値が1以下である工程d)の水溶液の組成決定に関連するHPLC分析の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0117】
次に、例示および非限定的な目的のために提供される実施形態の例を参照して、本発明をさらに説明する。
【0118】
(実施例1)
ピニトールの分離プロセス(
図1~
図8)
【0119】
500kgのキャロブのさやを刻んで約1cmの断片にし、さや1部に対し水3部の割合で水と混合して75℃で断片を浸漬した。次に断片を圧搾して、組成が(果汁の乾燥重量に基づく乾燥重量パーセントで)スクロース62.5%、グルコース11.2%、ピニトール10.1%、フルクトース16.1%、不純物0.5%(
図2の組成)の組成のキャロブエキスを得た。
【0120】
上記の組成は、HPLCによって、溶出液H2O、流速0.6ml/分、カラム温度75℃、カラムサイズ8mmI.D.、カラム長300mm、官能基Ca、陽イオン交換樹脂を用いて決定した。
【0121】
また、得られたエキスのブリックス値は18であった。
【0122】
このエキスを、真空下でロータリーフィルターにより、Perlite Randalite(登録商標)W24(フランス国Ceca Arkema Group)をフィルター助剤として用いて濾過した。
【0123】
続いて、濾液を、垂直に配置されたフィルターエレメントを有し、珪藻土、詳細にはDicalite Speedplus(イタリア国Palumbo Trading Srl)を助材として使用したベルフィルターで2回目の濾過にかけた。
【0124】
次に、濾液を、フィルターエレメントとして孔径約0.45μmの膜を用いたタンジェンシャルフィルターに通して3回目の濾過にかけた。
【0125】
濾過したエキスを、Sepabeads(登録商標)SP207(イタリア国Resindion S.r.l.)の吸着性樹脂に通して脱色した後、下記の樹脂に以下の順で通して脱塩(または調整)した(
図3の図を参照)。
1)カラム1:Relite RAM1/M(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)(弱陰イオン)
2)カラム2:Relite RPS(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)(強陽イオン)
3)カラム3:Relite RAM1/M(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)(弱陰イオン)
4)カラム3:Relite RAP1(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)(強陰イオン)
5)カラム4:Relite RPS(イタリア国ミラノResindion S.r.l.)(強陽イオン)
【0126】
表1にそれぞれの樹脂の特性を示す。
【0127】
【0128】
それぞれのカラムの作用条件を表2に示す。
【0129】
【0130】
【0131】
前述の4種類の樹脂の作用条件を表4に示す。
【0132】
【0133】
エキスの導電率は100μS/cm、pHは3.10であり、色については、測定値が0.015であった(430、石英キュベットの光路長1cmでの吸光度(Abs)の測定値)。
【0134】
次に、得られたエキスを加熱して、真空条件下で、温度80℃の入口から温度45℃の出口まで通過させて濃縮したところ、65°Bxを得た。このエキスの組成は、(果汁の乾燥重量に基づく乾燥重量パーセントで)スクロース5%、グルコース38%、ピニトール15%、フルクトース38%、不純物4%であった(
図4参照)。
【0135】
上記の組成は、上述のように、HPLCによって、溶出液H2O、流速0.6ml/分、カラム温度75℃、カラムサイズ8mmI.D.、カラム長300mm、官能基Ca、陽イオン交換樹脂を用いて決定した。
【0136】
次に、得られた濃縮エキスを、4本のUBK 530カラム(イタリア国ミラノResindion srl)からなるISMB(登録商標)プラント(改良擬似移動床、三菱化成工業株式会社)に供給し、脱塩水を用いて溶出させた。
【0137】
その他の作動パラメータを表5に示す
【0138】
【0139】
凡例:
W:水の流速
F:供給速度
P:精製溶液の体積
R:濃縮液の体積(「廃液」)
【0140】
表6にISBMの作動条件を示す
【0141】
【0142】
このクロマトグラフィーから、表7に示す組成の2つの液体画分が得られた(それぞれ
図6および
図7参照)。
【0143】
【0144】
上記の組成は、前述のようにHPLCによって決定した。
【0145】
次に、70%のピニトールを含む分画1を、真空条件下で温度80℃の入口から温度45℃の出口まで通過させて、ブリックス値が73になるまで加熱により濃縮し、5日間20℃に保持することで、ピニトールの結晶を生成させた。
【0146】
結晶が生成して沈降した後、71体積%のエチルアルコールを、濃縮液5部に対しアルコール2部の割合で濃縮液に加えて結晶を精製し、純度95%超のピニトールを得た。得られた結晶の組成は、(濃縮液の重量に基づく重量パーセントで)グルコース3%、ピニトール96.5%、スクロース0%、フルクトース0%であった(
図8参照)。
【0147】
上記の組成は、前述の条件でHPLCによって決定した。
【0148】
この精製溶液を4000rpmで遠心分離すると、ピニトールおよびアルコールを含む沈殿物と、グルコースおよびアルコールを含む上澄みとを得た。
【0149】
沈殿物を加熱下で2日間45℃に保持して除湿し、ピニトールの純度が95%超の白色粉末30gを得た。
【0150】
この結果は、出発原料のさやに含まれるピニトールの重量に対して、90重量パーセントのピニトールの収率に相当する。
【0151】
次に、得られた白色粉末試料と標準ピニトール試料とを比較し、物質がピニトールであることを確認した。
【0152】
この目的のため、各試料の等分量を、MeOH/H2Oを80/20の割合で混合した混合物に溶解させ、各試料の濃度を15ppm(μg/ml)とした。
【0153】
試料を、Luna NH2カラム(150×2.2、3μm)を用いたLC/MS(液体クロマトグラフィー/質量分析計)で分析した。分析は、アセトニトリル(80%)および水(20%)からなる移動相を用いたイソクラティック溶出法にて行なった。この分析方法は15分間実施した。使用流速は300μl/分であった。
【0154】
使用機器:Water Micromass Q-TOF Premier質量分析計。
【0155】
分析により2つの試料の一致を確認した。
【0156】
(実施例2)
D-チロ-イノシトールの分離プロセス(
図9、
図10)
実施例1で得られた純度95%超の粉末ピニトール30gを1リットルのフラスコに加え、16gの水に入れ、この溶液に104gの33%塩酸を加えた。
【0157】
この溶液を20分間加熱し(45℃~60℃)、40mlの7.2N塩酸を加えた。定還流下で50mlの水を加えた。次に、この溶液を沸騰させ、定還流を保ちながら24時間沸騰を続けた。
【0158】
24時間後、溶液を60分間撹拌させながら、溶液に活性炭を加えて(100~150g/h)脱色を行ない、ブリックス値6.5の溶液1160mlを得た。
【0159】
次に、溶液を濾過して、加熱中に生じた褐色の成分を除去した。50重量パーセントのDicalite Speedplus(登録商標)(イタリア国Palumbo Trading, Srl)珪藻土と、助剤として50重量パーセントのRandalite(登録商標) W24(フランス国Ceca Arkema Group)パーライトとの混合物を用いて、真空下でロータリーフィルターにより濾過を行なった。
【0160】
この段階での溶液は、pHが1、NTU値(ネフェロ分析濁度ユニット)の透明度が2であり、無色であった。
【0161】
次に溶液を中和した。
【0162】
次に、この溶液を強陰イオン交換樹脂(Relite RAP1)に通してpHを9~10にした後、溶液をクエン酸によりpHが4.0になるまで酸性化した。
【0163】
得られた溶液のブリックス値は0.3であり、続いてブリックス値が70になるまで濃縮した。
【0164】
次に、溶液を8℃の温度に24時間保持して、D-チロ-イノシトールの結晶化を行なった。
【0165】
この濃縮液のD-チロ-イノシトールの含有量は95%以上であった。
【0166】
最後に、濃縮液を吸収により除湿し、純度95%超のD-チロ-イノシトールの白色粉末29gを得た。
【0167】
この結果は、ほぼ100%の収率に相当する。
【0168】
次に、上述の実施例1の方法を用いて、得られた白色粉末試料とD-チロ-イノシトールの標準試料とを比較し、物質がD-チロ-イノシトールであることを確認した。
【0169】
分析により2つの試料の一致を確認した。