(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】抗コクシジウム植物性製剤
(51)【国際特許分類】
A61K 36/282 20060101AFI20240731BHJP
A61P 33/02 20060101ALI20240731BHJP
A61K 31/216 20060101ALI20240731BHJP
A61K 36/28 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/20 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/48 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20240731BHJP
A61K 9/16 20060101ALI20240731BHJP
A23K 10/30 20160101ALI20240731BHJP
【FI】
A61K36/282
A61P33/02 173
A61K31/216
A61K36/28
A61K9/20
A61K9/48
A61K9/08
A61K9/16
A23K10/30
(21)【出願番号】P 2022503907
(86)(22)【出願日】2020-07-18
(86)【国際出願番号】 US2020042692
(87)【国際公開番号】W WO2021016141
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-05-11
(32)【優先日】2019-07-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596118493
【氏名又は名称】アカデミア シニカ
【氏名又は名称原語表記】ACADEMIA SINICA
【住所又は居所原語表記】128 Sec 2,Academia Road,Nankang,Taipei 11529 TW
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】ヤン,ウェン-チン
【審査官】堂畑 厚志
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0272975(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0333447(US,A1)
【文献】YANG, Wen-Chin et al.,Anti-coccidial properties and mechanisms of an edilble herb, Bidens pilosa, and its active compounds for coccidiosis,Scientific Reports,2019年02月27日,volume 9, Article number:2896,<DOI: 10.1038/s41598-019-39194-2>
【文献】RUWALI, Pushpa et al.,In vitro immunomodulatory potential of Artemisia indica Willd. in chicken lymphocytes,Vet World,2018年,11(1):80-87,<DOI: 10.14202/vetworld.2018.80-87>
【文献】DEL CACHO, Emilio, et al.,Effect of artemisinin on oocyst wall formation and sporulation during Eimeria tenella infection,Parasitology International,vol. 59,2010年,pp. 506-511,<DOI: 10.1016/j.parint.2010.04.001>
【文献】HUANG, Wu-Yang, et al.,A Potential Antioxidant Resource: Endophytic Fungi from Medicinal Plants,Economic Botany,2007年,61(1),pp. 14-30
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 36/
A61P 33/
A61K 9/
A23L 33/
A23K 10/
CAplus/BIOSIS/MEDLINE/EMBASE(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物と、
(b)有効量のビデンスピローサ抽出物と、
(c)薬学的に許容されるビヒクル、賦形剤又は担体と、
を含む、抗コクシジウム組成物。
【請求項2】
経口剤形である、請求項1に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項3】
前記経口剤形は、錠剤、丸薬、ソフトジェルカプセル、ハードカプセル、顆粒剤、粉剤、濃縮物、液剤、モールドボール及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれる、請求項2に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項4】
動物飼料をさらに含む、請求項1に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項5】
前記動物飼料は、家禽飼料、魚用飼料、両生類用飼料、爬虫類用飼料、鳥用飼料及び非ヒト哺乳動物飼料からなる群から選ばれる、請求項4に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項6】
前記アルテミシアインディカ抽出物と前記ビデンスピローサ抽出物とは
、0.0001:1.0から1.0:1.0の比率で存在する、請求項1又は4に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項7】
前記アルテミシアインディカ抽出物の量は、重量で前記組成物の重量の0.0001%から0.01%である、請求項1又は4に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項8】
前記ビデンスピローサ抽出物の量は、重量で前記組成物の重量の0.01%から0.1%である、請求項6又は7に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項9】
前記アルテミシアインディカ抽出物は、クロロゲン酸を含む、請求項1に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項10】
(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物と、
(b)有効量のビデンスピローサ抽出物と、
を含む、抗コクシジウム組成物。
【請求項11】
非水性液体、水性液体、懸濁液又は粉末形態である、請求項1又は10に記載の抗コクシジウム組成物。
【請求項12】
コクシジウムオーシストを死滅させ、及びコクシジウムオーシストの胞子形成を阻害するため
の、請求項1、6から8、10から11のいずれか1項に記載の抗コクシジウム組成
物。
【請求項13】
コクシジウムオーシストを死滅させ、オーシストの胞子形成を阻止し、スポロゾイトの侵入を減少させ、及び血便を軽減するため
の、請求項1から11のいずれか1項に記載の抗コクシジウム組成
物。
【請求項14】
コクシジウム症を緩和又は治療するため
の、請求項1から11のいずれか1項に記載の抗コクシジウム組成
物。
【請求項15】
コクシジウムオーシストを死滅させ、コクシジウムオーシストの胞子形成及びスポロゾイトの侵入を阻害するための
抗コクシジウム製剤であって、有効量のアルテミシアインディカ抽出物及び薬学的に許容されるビヒクルを含む抗コクシジウム製
剤。
【請求項16】
(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物と、
(b)有効量のビデンスピローサ抽出物と、
(c)非ヒト動物用飼料又は食料と、
から構成される、抗コクシジウム組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コクシジウム症の治療に使用される植物性製剤に関し、より具体的には、アルテミシアインディカとビデンスピローサの組み合わせを含む抗コクシジウム植物性製剤に関する。
【背景技術】
【0002】
コクシジウム症は家禽の主要な寄生虫病であり、家禽産業にかなりの経済的損失を引き起こす。コクシジウムのサブクラスであるアイメリア(Eimeria)属は、胞子形態であり、単細胞の原生動物の寄生生物に属し、腸内寄生虫であり、魚、爬虫類、鳥、哺乳類に感染することができる。鶏は少なくとも11種のアイメリアに感染されやすい。そのうち、E.tenella、E.necatrix、E.brunetti及びE.maximaは、鶏に対して毒性が比較的高い種であり、E.acervulina、E.praecox及びE.mitisは、毒性が比較的低い種である。アイメリア感染は、通常無症候性であるが、若い又は免疫力が低下した動物において下痢、血性下痢、脱水症、垂れ下がり、倦怠感、食欲不振、顔面蒼白、羽毛の波打ち及び巻き上がりなどの重篤な臨床症状を示す。
【0003】
アイメリアのライフサイクルには、細胞内、細胞外、無性、性的な段階がある。鶏がアイメリアに感染すると、寄生虫が鶏に発生し、微細な卵(オーシストと呼ばれる)を生み出し、糞便を介して広がる。適切な温度と湿度の条件下で、オーシストは1~2日以内に発生し、他の鶏に感染可能な胞子形成オーシストを形成する。 この段階では、オーシストには8つのボディ(スポロゾイトと呼ばれる)が含まれ、オーシストが食べられると、それぞれのボディは鶏の腸内の細胞に入ることができる。これらの細胞に入った後、スポロゾイトは、複数回分裂して後代(メロゾイト)を繁殖する。それぞれのメロゾイトは、さらに別の腸細胞に入ることができる。このサイクルは数回繰り返され、多数の腸細胞の破壊を招く恐れがある。最終的に、サイクルが停止し、性細胞(雌性と雄性)が産生される。雄性は雌性を受精させてオーシストを生成し、オーシストは腸の細胞から破裂し、糞便に伴って排出される。何千ものオーシストは、感染した鶏の糞便を介して広がる。したがって、混雑又は非衛生な条件下で飼育される家禽は、感染のリスクが非常に高くなる。
【0004】
植物は、人間や動物の薬の優れた供給源として考えられている。キク科のビデンスピローサは、コクシジウム症を治療するための抗コクシジウムハーブとして言われている。米国特許第9,072,312号には、コクシジウム症の予防と治療に適用されるビデンスピローサ及びポリアセチレン化合物が開示されている。しかしながら、ビデンスピローサ及びその活性化合物は、コクシジウム症を予防及び治療できるが、この予防と治療は、汚れた鶏舎では効果がない場合がある。
【発明の概要】
【0005】
一態様では、本発明は、(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物と、(b)有効量のビデンスピローサ抽出物と、(c)薬学的に許容されるビヒクル、賦形剤又は担体とを含む抗コクシジウム組成物に関する。
【0006】
別の態様では、本発明は、(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物又は粉末と、(b)有効量のビデンスピローサ抽出物又は粉末とを含む抗コクシジウム組成物に関する。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記抗コクシジウム組成物は、(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物と、(b)有効量のビデンスピローサ抽出物とを含み、又は(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物と、(b)有効量のビデンスピローサ粉末とを含み、又は(a)有効量のアルテミシアインディカ粉末と、(b)有効量のビデンスピローサ抽出物とを含み、又は(a)有効量のアルテミシアインディカ粉末と、(b)有効量のビデンスピローサ粉末とを含む。前記抗コクシジウム組成物は、薬学的に許容されるビヒクル、賦形剤又は担体をさらに含んでもよい。
【0008】
一実施形態において、前記抗コクシジウム組成物は、経口剤形である。前記経口剤形は、錠剤、丸薬、ソフトジェルカプセル、ハードカプセル、顆粒剤、粉剤、濃縮物、液剤、モールドボール及びこれらの組み合わせからなる群から選ばれ得る。
【0009】
他の実施形態において、前記抗コクシジウム組成物は、動物飼料、又は非ヒト動物用飼料若しくは食料をさらに含む。
【0010】
他の実施形態において、前記動物飼料は、家禽飼料、魚用飼料、両生類用飼料、爬虫類用飼料、鳥用飼料及び非ヒト哺乳動物飼料からなる群から選ばれる。
【0011】
他の実施形態において、前記アルテミシアインディカ抽出物と前記ビデンスピローサ抽出物は、約0.0001:1.0から1.0:1.0の比率で存在する。
【0012】
他の実施形態において、前記アルテミシアインディカ抽出物の量は、重量で前記組成物の重量の0.0001%から0.01%である。前記アルテミシアインディカの重量は、約0.00005%から約0.005%(w/w)又は約0.001%から約0.01%(w/w)であってもよい。
【0013】
他の実施形態において、ビデンスピローサ抽出物の量は、重量で前記組成物の重量の0.01%から0.1%である。前記ビデンスピローサの重量は、約0.005%から約0.05%であってもよい。
【0014】
他の実施形態において、前記アルテミシアインディカ抽出物は、クロロゲン酸を含む。
【0015】
本発明は、(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物又は粉末と、(b)有効量のビデンスピローサ抽出物又は粉末と、(c)非ヒト動物用飼料又は食料とから実質的に構成され、又はこれらから構成される抗コクシジウム組成物にも関する。
【0016】
本発明は、(a)有効量のアルテミシアインディカ抽出物又は粉末と、(b)有効量のビデンスピローサ抽出物又は粉末から実質的に構成され、又はこれらから構成される抗コクシジウム組成物にも関する。
【0017】
本発明の一実施形態において、前記抗コクシジウム組成物は、非水性液体、水性液体、懸濁液又は粉末形態である。
【0018】
別の態様では、本発明は、コクシジウムオーシストを死滅させ、及びコクシジウムオーシストの胞子形成を阻害するための医薬品の製造における本発明の抗コクシジウム組成物の使用に関する。
【0019】
別の態様では、本発明は、必要とする被験体においてコクシジウムオーシストを死滅させ、オーシストの胞子形成を阻害し、スポロゾイトの侵入を軽減し、血便を緩和し、又はコクシジウム症を予防若しくは治療するための医薬品の製造における、本発明の抗コクシジウム組成物の使用に関する。
【0020】
さらなる態様では、本発明は、コクシジウムオーシストを死滅させ、コクシジウムオーシストの胞子形成及びスポロゾイトの侵入を阻害するための医薬品の製造における、有効量のアルテミシアインディカ抽出物と、薬学的に許容されるビヒクルとを含む抗コクシジウム製剤の使用に関する。
【0021】
これら及び他の態様は、以下の図面と併せて取られる好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるが、その中の変形及び修正は、本開示の新規の概念の精神及び範囲から逸脱することなく影響を受ける可能性がある。
【0022】
添付の図面は、本発明の1つ又は複数の実施形態を示し、書面による説明とともに、本発明の原理を説明するのに役立つ。可能な場合は、一実施形態の同じ又は同様の要素を参照するために、図面全体で同じ参照番号が使用される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】
図1Aから1Cは、アイメリアテネラ(ET)オーシストの生存能力に対するA.インディカ(AI)、B.ピローサ(BP)又はA.インディカ(AI)とB.ピローサ(BP)の混合物を含む製剤のインビトロ効果を示す顕微鏡写真(上図)及び棒グラフ(下図)である。前記オーシストをPBS(陰性対照,NC)、沸騰(陽性対照,PC)、又はAI(1A)、BP(1B)若しくはAIとBPの両方(1C)を含む植物抽出物により所定の用量で30min前処理した。ヨウ化プロピジウム(PI)染色後、蛍光顕微鏡(左下図)又は光学顕微鏡(左上図)を用いて前記オーシストの生存能力を観察した。明視野はオーシストの数を示した。PI陽性オーシストの百分率を平均値±SEで表し、棒グラフ(スケールバー100μm;右図)を作成した。
【
図2】
図2Aから2Cは、E.テネラ(ET)オーシストの生存能力及びその胞子形成に対する、A.インディカ(AI)、B.ピローサ(BP)、又はA.インディカ(AI)とB.ピローサ(BP)との混合物を含む製剤のインビトロ効果を示す顕微鏡写真(上図)及び棒グラフ(下図)である。前記オーシストを、PBS,亜ジチオン酸ナトリウム(SD)、オーシスト胞子形成の阻害剤、又はAI(2A)、BP(2B)若しくはAIとBPの両方(2C)を含む植物抽出物により、所定の用量で48時間前処理した。前記オーシストに対して二クロム酸カリウムにより胞子形成を2日間誘導した。顕微鏡(左図)を用いて胞子形成オーシストの百分率を測定し、棒グラフ(右図;スケールバー200μm)を作成した。矢印↓は胞子形成オーシストを示し、矢印▼は非胞子形成オーシストを示す。
【
図3】
図3Aから3Cは、E.テネラ(ET)スポロゾイトの侵入に対するA.インディカ(AI)、B.ピローサ(BP)又はA.インディカ(AI)とB.ピローサ(BP)の混合物を含む製剤のインビトロ効果を示す顕微鏡写真(左図)及び棒グラフ(右図)である。マディンダービーウシ腎臓(MDBK)細胞をサリノマイシン(Sal)、又はA.インディカ(AI)(3A)、B.ピローサ(BP)(3B)若しくはAIとBPの両方(3C)を含む植物抽出物と所定の用量で0.5時間インキュベートした。前記スポロゾイトをMDBK細胞に2時間かけて追加した。洗浄後、MDBK細胞をヘマトキシリン及びエオシン(H&E)で染色して計数した。侵入率(%)を棒グラフに作成した。挿入図は拡大た領域を表す。100x及び40x(挿入図)の顕微鏡スケールバーは、それぞれ10μm及び50μm(挿入図)である。矢印は、スポロゾイトに感染したMDBK細胞を示す。
【
図4A】インビボ研究に使用される実験プロトコルを示す概略図である。未治療群の鶏に毎日標準飼料を投与し、治療群の鶏にサリノマイシン、A.インディカ(AI)、B.ピローサ(BP)又はAI+BPを含む飼料を投与した。7日目に、強制経口投与により鶏をPBS又はE.テネラ(ET)胞子形成オーシスト(1x10
4)でチャレンジした。感染後の1日目から7日目、各群に対して生存率を監視した。
【
図4B】
図4Aに示される各群の生存率を示す図である。鶏を8群に分けた。群1(G1)では、未感染で標準飼料で飼育した。群2(G2)では、ETに感染させ、標準飼料で飼育した。群3(G3)から群8(G8)では、ETに感染させ、サリノマイシン、BP単独、BPと異なる用量のAIとの組み合わせ、又はAI単独(BPなし)を含む飼料で飼育した。各群には15匹の鶏があり、P値が示された。
【
図5】E.テネラ(ET)感染後の7日目での
図4A、4Bに示される各鶏群の血便百分率を示す棒グラフである。鶏糞は感染後の1日目から7日目に分類された。
【発明を実施するための形態】
【0024】
定義
本明細書で使用される用語は、一般に、当技術分野において、本発明の文脈内で、及び各用語が使用される特定の文脈において、それらの通常の意味を有する。本発明を説明するために使用される特定の用語は、本発明の説明に関して実施者に追加のガイダンスを提供するために、以下又は本明細書の他の場所で説明される。便宜上、たとえばイタリックや引用符を使用して、特定の用語をハイライトする場合がある。ハイライトの使用は、用語の範囲と意味に影響を与えない。用語の範囲と意味は、ハイライトされているかどうかに関係なく、同じコンテキストにおいて同じである。同じことが複数の方法で言えることを理解されたい。したがって、代替の言語及び同義語を、本明細書で論じられる用語のいずれか1つ又は複数に使用することができ、用語が本明細書で詳述又は論じられるにもかかわらず特別な意味を置くこともできない。特定の用語の同義語が提供されている。1つ以上の同義語のリサイタルは、他の同義語の使用を除外しない。本明細書で論じられる任意の用語の例を含む本明細書の任意の場所での例の使用は、例示にすぎず、本発明又は任意の例示された用語の範囲及び意味を決して制限するものではない。同様に、本発明は、本明細書で与えられる様々な実施形態に限定されない。
【0025】
別段の定義がない限り、本明細書で使用される全ての技術用語及び科学用語は、本発明が関係する当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、定義を含む本明細書が優先される。
【0026】
本明細書において、「おおよそ」、「約」又は「ほぼ」は、一般に、所与の値又は範囲の20パーセント以内、好ましくは10パーセント以内、より好ましくは5パーセント以内を意味する。本明細書に記載の数値は概算であり、明示的に述べられていない限り、「おおよそ」、「約」又は「ほぼ」という用語を推測できることを意味する。
【0027】
約0.00005%~約0.005%は、この範囲内の10万分の1、1万分の1、1000分の1、100分の1、10分の1、及び整数単位量が全て本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。したがって、0.00005%、0.00006%、0.00007%・・・0.00009%、0.0001%、0.0002%・・・及び0.0009%、0.001%、0.0011%・・及び0.0048、0.0049、0.005%の単位量が全て本発明の実施形態として含まれる。
【0028】
約0.0001%~約0.01%は、1万分の1、1000分の1、100分の1、10分の1、及び整数単位量が全て本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。したがって、0.0001%、0.0002%、0.0003%・・・0.0009%、0.001%、0.0011%・・・及び0.0098、0.0099、0.01%の単位量が全て本発明の実施形態として含まれる。
【0029】
約0.005%~約0.05%は、1000分の1、100分の1、10分の1、及び整数単位量が全て本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。したがって、0.005%、0.006%、0.007%・・・0.0099、0.01%、0.011%・・・及び0.048%、0.049%、0.05%の単位量が全て本発明の実施形態として含まれる。
【0030】
約0.01%~約0.1%は、100分の1、10分の1、及び整数単位量が全て本発明の一部として具体的に開示されていることを意味する。したがって、0.01%、0.02%、0.03%・・・及び0.08%、0.09%、0.1%の単位量が全て本発明の実施形態として含まれる。
【0031】
用語「混合物」は、一般に、異なる種類の任意の組み合わせ又はブレンドを意味する。
【0032】
本発明は、ビデンスを含む植物性製剤の抗コクシジウム活性に関する。
【0033】
B.ピローサ及びアルテミシアインディカ抽出物の製造
アルテミシアインディカ抽出物
アルテミシアインディカ植物は、台湾の苗栗県のキャンパスから収集された。約1kgの乾燥植物全体を10Lの100℃の水中で2時間還流した。水相を除去した後、不溶性物質を再び10Lの水で2時間還流した。水溶液を合わせて凍結乾燥し、粗抽出物(0.15kg)を得た。クロロゲン酸は、バッチの一貫性のマーカーとして使用された。クロロゲン酸を取得し、1H NMR及び13C NMRにより特徴付けた。
【0034】
ビデンスピローサ抽出物
上記と同様な方法によりB.ピローサ植物を収集して処理した。約1kgの乾燥植物全体を10Lの100℃の水中で2時間還流し、抽出を1回繰り返した。水溶液を合わせて凍結乾燥し、粗抽出物(0.12kg)を得た。サイトピロイン(cytopiloyne)は、バッチの一貫性のマーカーとして使用された。ポリアセチレン化合物を取得して1H NMR及び13C NMRにより特徴付けた。このようにして得られた純粋な化合物をさらに誘導体化して、他の多くのポリアセチレン化合物を提供することができる(米国特許第7,763,285号及びKusano et al(JP2004083463);参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)。
【0035】
A.インディカ及びB.ピローサの抽出物は、粉末の形態として使用される。植物抽出物粉末の百分率は、以下の通り計算する。植物粉末重量/植物粉末重量±基本的な鶏飼料=植物粉末の%
【0036】
本発明は、抗コクシジウム特性を有するアルテミシアインディカ及びアルテミシアインディカとビデンスピローサとを含む製剤に関する。
【0037】
実施例
材料と方法
化学品
サリノマイシン、PBS及びH&E染色は、SIGMA-ALDRICHTMから購入された。アルテミシアインディカ及びB.ピローサを沸騰した水中で抽出し、後の使用するために様々な比率で混合した。
【0038】
侵入アッセイ
マディンダービーウシ腎臓(MDBK,ATCC(登録商標)CCL-22)細胞をウシ胎児血清(10%)及びサプリメントを含むDMEMで培養した後、2×105細胞/ウェルで24ウェルのガラスカバースリップに接種した。1日後、細胞をサリノマイシン又は所定量の植物抽出物とファイトケミカルを含むDMEM培地中で0.5時間プレインキュベートした。新鮮なスポロゾイト(2×105)を細胞に加え、さらに4時間インキュベートした。大量のPBSで洗浄した後、細胞を固定してH&Eで染色した。顕微鏡にて写真を撮影した。侵入率(%)は、算式:100%×(スポロゾイトが侵入した細胞の数/総細胞数)により得られた。
【0039】
生存能力試験
E.テネラスポロゾイトを植物抽出物又はサリノマイシンと4.5時間インキュベートした。顕微鏡を用いてスポロゾイトでの生細胞及び死細胞を区分した(
図3)。生存率(%)は、死細胞の数を総細胞数で割って100%をかけることで得られた。
【0040】
胞子形成アッセイ
E.テネラオーシストをPBSで前処理し、沸騰処理(100℃、30min)し、又は所定量の植物抽出物で48時間前処理した。胞子形成の前にオーシストを2%二クロム酸カリウムと2日間インキュベートした。胞子形成オーシストの百分率(%)を計算した。
【0041】
E.テネラスポロゾイトのヨウ化プロピジウム(PI)染色
ETオーシストをPBSで1時間処理し、沸騰処理(100℃、30min)し、又は所定用量の植物抽出物と1時間インキュベートした。オーシストをPIで染色した。PBSで洗浄した後、顕微鏡を用いてオーシストを観察した。
【0042】
鶏、飼料及び実験設計
1日齢のローマンブロイラーの雛は、台中孵化場(台湾)から購入し、到着後、羽を結い、体重を測り、スPetersimeターターブローダーユニット(Petersime starter brooder unit)にランダムに入れた。孵化後の1日から2日に鶏に水と餌を自由に摂取させた。飼料は、標準飼料と担体単独(対照飼料)又は所定用量の植物性製剤(アルテミシアインディカ(AI)、B.ピローサ(BP)又はAIとBPの両方を含む)とを混合したものである。群分け後、鶏にアイメリアオーシストを強制経口投与して感染させた。成長状況(体重及び飼料要求率)、病理学(血便及び消化管形態計測)及び生存率を測定して検査した(
図4A)。全ての鶏は、施設内の動物施設で飼育され、施設内のガイドラインに従って取り扱われた。
【0043】
免疫組織化学的染色
対照飼料、及びアルテミシアインディカ(AI)、B.ピローサ(BP)、又は両者を含む飼料で14日間飼育した鶏から盲腸を摘出し、急速凍結して複数の平行切片を切り出した。切片をH&E又は抗インスリン抗体で染色し、ジアミノベンジジン四塩酸塩で現像した後、画像分析を行った(Yang et al.Research in Veterinary Science(2015)98:74-81)。
【0044】
統計分析
3つ以上の独立した実験の結果を平均値±S.E.で表した。データをANOVAで分析した。P値が0.05未満の場合、統計的に有意差があると見なされた。
【0045】
結果
E.テネラオーシストの生存、オーシストの胞子形成及びスポロゾイトの侵入に対する植物抽出物の影響
A.インディカ(AI)抽出物、B.ピローサ(BP)抽出物、及びAI抽出物とBP抽出物との混合物の影響を調べるために、E.テネラ(ET)オーシストに対するAI、BP及びAIとBPの組み合わせの直接死滅活性をそれぞれ調べた。ヨウ化プロピジウム(PI)染色(沸騰処理,
図1A)により、陽性対照とする沸騰処理が30%のETオーシストを効果的に死滅させたことが実証された。AIは、ETオーシストを用量依存的に死滅させた(
図1A,右図)。BPは、オーシストを死滅できなかった(
図1B)。AIとBPの組み合わせは、ETオーシストを直接死滅させた(
図1C)。
【0046】
E.ETオーシストの胞子形成に対する植物抽出物の影響を試験した。70%のETオーシストは、インビトロ培養において胞子を形成できた(PBS,
図2A)。陽性対照として亜ジチオン酸ナトリウム(SD)で処理することにより、PBS治療群に比べてE.ETオーシストの胞子形成が40%減少した(SD,
図2A,右図)。A.インディカ(AI)は、E.ETオーシストの胞子形成を用量依存的に減少させた(
図2A)。B.ピローサ(BP)もETオーシストの胞子形成を用量依存的に阻害した(
図2B)。AIとBPの組み合わせは、ETオーシストの胞子形成を相乗的に阻害した(
図2C)。
【0047】
MDBK細胞へのETスポロゾイトの侵入に対するB.ピローサsの影響を調べた。Yangらの報告(Scientific Reports(2019)9:2896)によると、ETスポロゾイトは20%の細胞に侵入することができる(
図3A,右図)。50μg/mlの抗コクシジウム薬であるサリノマイシンは、ETスポロゾイトの侵入を10%に減少させた。A.インディカ(AI)は、ETスポロゾイトの侵入を用量依存的に減少させた(
図3A,右図)。B.ピローサ(BP)もMDBK細胞へのETスポロゾイトの侵入を用量依存的に減少させた(
図3B,右図)。AIとBPの組み合わせは、ETスポロゾイトの侵入を相乗的に減少させた(
図3C,右図)。これらのデータにより、AIとBPの組み合わせは、オーシスト、オーシストの胞子形成、及びスポロゾイトの侵入の段階でETのライフサイクルに干渉できることが実証された。AI又はBPの単独に比べて、AIとBPの組み合わせは、ETオーシストの胞子形成及びETスポロゾイトの侵入をより効果的に阻害することができる。これらのデータは、AIとBPは、抗コクシジウムのメカニズムが異なることを示している。
【0048】
E.テネラチャレンジ鶏の生存率、体重増加及び飼料要求率に対する植物抽出物の影響
A.インディカ(AI)抽出物、B.ピローサ(BP)抽出物、及び両者の組み合わせの抗コクシジウム効果をインビボで調べた。鶏をランダムに8群に分け、毎日(1日目から14日目)標準鶏飼料(群1、2)、サリノマイシンを含む飼料(群3)、又は所定用量の植物抽出物を含む飼料(群4から8)で飼育した(
図4A)。
【0049】
図4Bに示されるように、標準飼料で飼育された鶏は、ETに感染した後に、生存率が100%(CTR,群1)から60%(Et,群2)に減少した。サリノマイシンを含む飼料で飼育された感染鶏(群3)の生存率100%であった。同様に、の生存率は、AI、BP又はAIとBPの組み合わせを含む飼料で飼育された感染鶏(群4から8)の生存率はいずれも100%であった。
【0050】
表1は、ETチャレンジ鶏の体重増加に対する植物抽出物の影響を示す。
図4Bに示されるように、鶏の体重(BW)を1、7及び14日目に測定し、体重(BW)増加を7、14日目に計算した。7日目(ET感染前)に、異なる群の鶏は、体重増加(7日目のBWマイナス1日目のBW)は大体同じであった。群2から8(G2からG8)の鶏をETオーシスト(1x10
4)に感染させ、対照群(G1)の鶏をPBSで処理した。14日目(ET感染後)に、非感染非投薬鶏(群1)、感染非投薬鶏(群2)、サリノマイシン投与感染鶏(群3)、0.01%BP(群4)、0.0001%AI+0.01%BP(群5)、0.001%AI+0.01%BP(群6)、0.01%AI+0.01%BP(群7)、及び0.01%AI(群8)の平均体重増加(14日目のBWマイナス1日目のBW)は、それぞれ88.84g、50.80g、56.33g、61.98g、62.91g、64.65g、67.66g、及び59.78gであった。これらのデータは、AIとBPの組み合わせの体重増加の効果がそれぞれの単独よりも高いことを示している。
【0051】
【0052】
表2は、ETチャレンジ鶏の飼料要求率(FCR)に対する植物抽出物の影響を示す。14日目(ET感染後)に、対照鶏(群1)、感染鶏(群2)、サリノマイシン投与感染鶏(群3)、0.01%BP(群4)、0.0001%AI+0.01%BP(群5)、0.001%AI+0.01%BP(群6)、0.01%AI+0.01%BP(群7)、及び0.01%AI(群8)の平均FCRは、それぞれ2.24、3.38、3.05、2.60、3.01、3.04、2.88及び2.96であった。これらの結果から分かるように、AI、BP、及びAIとBPとの組み合わせは、サリノマイシン又は対照飼料単独に比べて、ET感染による体重減少及びFCR増加を大幅に改善することができる。改善の一部は、植物抽出物の体重増加効果によるものである。
【0053】
【0054】
E.テネラチャレンジ鶏の糞便オーシスト排出量に対する植物抽出物の影響
表3は、各群の糞便オーシスト排出量を示す。ET感染鶏の糞便中のアイメリアオーシストの排出量は、アイメリア増殖の指標である。
図4Bのニワトリの糞便1gあたりのオーシスト(OPG)は、ET感染後3日目から7日目までカウントされた。非感染非投薬対照群では、糞便からオーシストが検出されなかった(群1,表3)。全てのET感染群では、感染後の4日目に初めて糞便オーシストの排出が検出され、感染後の7日目にピークになった(群2)。サリノマイシンが投与された感染鶏(群3)は、感染非投薬鶏(群2)に比べて、糞便1gあたりのオーシストがわずかに少なかった。0.01%BP、0.0001%AI+0.01%BP、0.001%AI+0.01%BP、0.01%AI+0.01%BP、及び0.01%AI(群4から8)が投与された鶏は、それぞれ感染非投薬鶏(群2)に比べて糞便1gあたりのオーシストが顕著に少なった。このデータは、AIとBPとの組み合わせがそれぞれの単独よりも多くのOPGを減少できることを示している。
【0055】
【0056】
E.テネラチャレンジ鶏の腸病変に対する植物抽出物の影響
表4は、ET感染後の7日目の肉眼的盲腸病変スコアを示す。
図4Bに示される鶏の盲腸における肉眼的病変を観察して採点した。非感染非投薬対照鶏(群1,表4)は、盲腸に病変がなかった(スコア=0)。非投薬鶏は、感染後の7日目の平均病変スコアが4点(群2)であり、ET感染が腸においてより多くの肉眼的盲腸病変を引き起こしたことを示している。サリノマイシンが投与された感染鶏は、平均病変スコアが3.86点(群3)であった。0.01%BP、0.0001%AI+0.01%BP、0.001%AI+0.01%BP、0.01%AI+0.01%BP、及び0.01%AIが投与された感染鶏(群4から8)は、それぞれ感染非投薬鶏(群2)に比べて病変スコアが顕著に少なかった。このデータは、AIとBPの組み合わせがそれぞれの単独よりも鶏の腸における肉眼的病変を減少できることを示している。
【0057】
【0058】
表5は、
図4BにおけるET感染後の7日目での鶏の盲腸の顕微鏡的病変スコアを示す。顕微鏡を用いてコクシジウムによる粘膜損傷を観察し、鶏盲腸の粘膜損傷の分布と重症度に基づいて顕微鏡的盲腸病変に対して採点した。
【0059】
非感染非投薬対照群(群1)では、顕微鏡的盲腸病変が観察されなかった(スコア=0)。感染非投薬鶏(群2)では、ET感染後の7日目に盲腸に重篤な顕微鏡的病変が観察された(スコア=7.2)。盲腸には重篤な潰瘍形成、出血及び絨毛減少も観察された(データ示せず)。オーシスト、生殖母細胞及びシゾントが盲腸上皮内に現れた(データ示せず)。感染サリノマイシン投与鶏(群3)は、感染非投薬鶏(群2)に比べて、盲腸の顕微鏡的病変(スコア=6.29)に軽度の改善を示した。しかし、B.ピローサ、B.ピローサとAIの組み合わせ、又はAI単独が投与された感染鶏(群4から8,表5)は、盲腸における顕微鏡的病変が顕著に減少した(スコア:4.78から5.80)。一貫して、B.ピローサは潰瘍と出血を減少させ、対照飼料よりも多くの粘膜と絨毛が鶏盲腸に保存された(データ示せず)。B.ピローサはまた、サリノマイシン及び対照飼料に比べて、盲腸上皮内のオーシスト、生殖母細胞及びシゾントの数を大幅に減少させた(データ示せず)。よって、B.ピローサ、B.ピローサとAIの組み合わせ、又はAI単独は、ET感染後の鶏の腸の病理を顕著に軽減した。このデータは、AIとBPの組み合わせがそれぞれの単独よりも鶏の腸における顕微鏡的病変をさらに減少できることを示している。
【0060】
【0061】
E.テネラチャレンジ鶏の血便に対する植物抽出物の影響
図5は、E.テネラ(ET)感染後の7日目の各鶏群の血便百分率を示す。非感染対照鶏(群1)では、血便が観察された。ET感染は、100%の血便(群2)を引き起こした。サリノマイシンが投与された鶏(群3)は、血便の百分率が顕著に減少した。0.01%BP、0.0001%AI+0.01%BP、0.001%AI+0.01%BP、0.01%AI+0.01%BP、及び0.01%AIが投与された感染鶏(群4から8)は、それぞれ感染非投薬鶏(群2)に比べて血便の百分率が顕著に減少した。このデータは、AIとBPの組み合わせがそれぞれの単独よりも血便をさらに減少できることを示している。
【0062】
本明細書で引用及び論じられている全ての参考文献は、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、各参考文献が参照により個別に組み込まれた場合と同程度である。