(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】がんの治療のためのEZH2阻害併用療法
(51)【国際特許分類】
A61K 31/4412 20060101AFI20240731BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20240731BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20240731BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240731BHJP
A61K 31/4166 20060101ALI20240731BHJP
A61K 33/243 20190101ALI20240731BHJP
A61K 31/4745 20060101ALI20240731BHJP
A61P 35/04 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61K31/4412
A61P35/00
A61K45/00
A61P43/00 111
A61K31/4166
A61K33/243
A61K31/4745
A61P35/04
A61P43/00 121
(21)【出願番号】P 2022504541
(86)(22)【出願日】2020-07-23
(86)【国際出願番号】 US2020043163
(87)【国際公開番号】W WO2021016409
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-07-19
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】513137422
【氏名又は名称】コンステレーション・ファーマシューティカルズ・インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】CONSTELLATION PHARMACEUTICALS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100157923
【氏名又は名称】鶴喰 寿孝
(72)【発明者】
【氏名】ブラッドリー,ウィリアム・ディー
【審査官】伊藤 幸司
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-506985(JP,A)
【文献】国際公開第2015/141616(WO,A1)
【文献】カナダ国特許出願公開第3002436(CA,A1)
【文献】国際公開第2017/018499(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/204490(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K
A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象における固形腫瘍を治療する方法
に用いるための薬学的組成物であって
、以下の式を有する化合物
【化1】
またはその薬学的に許容される塩
を含有し、該方法は、対象に、有効量の該化合物と、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAアルキル化剤、およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される有効量の第2の薬剤と、を投与することを含む、
薬学的組成物。
【請求項2】
前記第2の薬剤が、アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤である、請求項1に記載の
薬学的組成物。
【請求項3】
前記第2の薬剤が、ビカルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、フルタミド、ニルタミド、ダロルタミド、および酢酸アビラテロンから選択されるアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤である、請求項1または2に記載の
薬学的組成物。
【請求項4】
前記第2の薬剤が、エンザルタミドである、請求項1~3のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項5】
前記第2の薬剤が、DNAアルキル化剤である、請求項1に記載の
薬学的組成物。
【請求項6】
前記DNAアルキル化剤が、ブスルファン、シクロホスファミド、ベンダムスチン、カルボプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シスプラチン、テモゾロミド、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イフォサミド、チオテパ、トラベクテジン、アルトレタミン、メクロレタミン、プロカルバジン、およびストレプトゾシンから選択される、請求項1または5に記載の
薬学的組成物。
【請求項7】
前記DNAアルキル化剤が、シスプラチンである、請求項1または5に記載の
薬学的組成物。
【請求項8】
前記第2の薬剤が、トポイソメラーゼ阻害剤である、請求項1に記載の
薬学的組成物。
【請求項9】
前記トポイソメラーゼ阻害剤が、トポイソメラーゼI阻害剤である、請求項1または8に記載の
薬学的組成物。
【請求項10】
前記トポイソメラーゼ阻害剤が、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリン、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸、HU-331、エピルビシン、バルルビシン、イダルビシン、ピキサントロン、テニポシド、ベロテカン、ギマテカン、インドテカン、インジミテカンから選択される、請求項1または8に記載の
薬学的組成物。
【請求項11】
前記トポイソメラーゼ阻害剤が、イリノテカンである、請求項1、8、および9のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項12】
前記固形腫瘍が、前立腺がん、小細胞肺がん(SCLC)、胃または胃食道接合部(GEJ)腺がん、および漿液性卵巣がんから選択される、請求項1~11のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項13】
前記固形腫瘍が、小細胞肺がん(SCLC)、胃または胃食道接合部(GEJ)腺がん、および漿液性卵巣がんから選択される、請求項1~12のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項14】
前記固形腫瘍が、前立腺がんである、請求項1~12のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項15】
前記固形腫瘍が、進行した腫瘍として特徴付けられる、請求項1~14のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項16】
前記固形腫瘍が、再発固形腫瘍として特徴付けられる、請求項1~15のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項17】
前記化合物が、前記第2の薬剤と同時に投与される、請求項1~16のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項18】
前記化合物が、以下の式
【化2】
を有する化合物であるか、またはその薬学的に許容される塩である、請求項1~17のいずれか一項に記載の
薬学的組成物。
【請求項19】
7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩を
含む、進行した再発固形腫瘍を治療する方法
に用いるための、薬学的組成物。
【請求項20】
前記進行した再発固形腫瘍が、進行した再発尿路上皮がん腫、進行した再発卵巣明細胞がん腫、または進行した再発子宮内膜がん腫である、請求項19に記載の
薬学的組成物。
【請求項21】
前記7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドが、(2R)-7-クロロ-2-(trans-4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドである、請求項19または20に記載の
薬学的組成物。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本出願は、2019年7月24日に出願された米国仮出願第62/878,021号に対する優先権を主張し、その内容全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【背景技術】
【0002】
EZH2(Enhancer of Zeste Homolog 2)は、血液悪性腫瘍および非血液悪性腫瘍の両方の発病に関与しているヒストンリジンメチルトランスフェラーゼである。EZH2は、ヒストン3のリジン27(H3K27)への1個、2個および3個のメチル基の移動を触媒する。EZH2は、ポリコーム抑制複合体2(PRC2)と呼ばれる大きな複数タンパク質の複合体の触媒成分であり、一般的に、転写抑制において機能する(Margueron,R.,and Reinberg,D.(2011).The Polycomb complex PRC2 and its mark in life.Nature 469,343-349)。多くの場合、PRC2による転写サイレンシングは、EZH2の触媒活性に依存するが、特定の遺伝子とのPRC2複合体の物理的会合も、転写抑制に重要であることは明らかである。代替的に、PRC2複合体は、EZH1として知られるEZH2の密接に関連するホモログを含有し得る。PRC2複合体のこれらの2つの触媒サブユニットは、H3K27メチル化を触媒することが知られている唯一の酵素である。EZH1およびEZH2は、それらの触媒活性に加えて、タンパク質-タンパク質およびタンパク質-核酸の相互作用を介して他の生物学的効果を媒介する複数ドメインタンパク質である。H3K27ジメチル化およびトリメチル化(H3K27me2およびH3K27me3)は、転写抑制遺伝子と良好に相関するが、H3K27モノメチル化(H3K27me1)は、転写活性遺伝子上に見出される(Barski,A.,et al.(2007).High-resolution profiling of histone methylations in the human genome.Cell 129,823-837、Ferrari,K.J.,et al.(2014).Polycomb-dependent H3K27me1 and H3K27me2 regulate active transcription and enhancer fidelity.Mol.Cell 53,49-62)。最近の遺伝学的研究は、EZH1含有PRC2が、H3K27me1レベルを制御することを示唆している(Hidalgo,I.,et al.(2012).Ezh1 is required for hematopoietic stem cell maintenance and prevents senescence-like cell cycle arrest.Cell Stem Cell 11,649-662、Xie,H.,et al.(2014).Polycomb repressive complex 2 regulates normal hematopoietic stem cell function in a developmental-stage-specific manner.Cell Stem Cell 14,68-80)。このことは、転写伸長におけるEZH1の推定的な役割と一致する(Mousavi,K.,et al.(2012).Polycomb protein Ezh1 promotes RNA polymerase II elongation.Mol.Cell 45,255-262)。したがって、PRC2依存性H3K27メチルトランスフェラーゼ活性は、複合体の組成に応じて、転写抑制および活性化の両方に関与する。
【0003】
(EZH1ではなく)EZH2は、ヒトがんにおいて頻繁に過剰発現される。がんにおけるEZH2過剰発現の分子的基盤としては、(1)EZH2をコードする遺伝子の遺伝子座のゲノム増幅(Tiffen,J.,et al.(2016).Somatic Copy Number Amplification and Hyperactivating Somatic Mutations of EZH2 Correlate With DNA Methylation and Drive Epigenetic Silencing of Genes Involved in Tumor Suppression and Immune Responses in Melanoma.Neoplasia 18(2),121-132.,Ding,L.,et al.(2006).Identification of EZH2 as a molecular marker for a precancerous state in morphologically normal breast tissues.Cancer Research 66(8),4095-4099.、Saramaki,O.R.,et al.(2006).The gene for polycomb group protein enhancer of zeste homolog 2(EZH2)is amplified in late-stage prostate cancer.Genes Chromosomes Cancer 45(7),639-645.)、(2)EZH2発現を減弱させるマイクロRNAの欠失およびエピジェネティクス的サイレンシング(Varambally,S.,et al.(2008).Genomic loss of microRNA-101 leads to overexpression of histone methyltransferase EZH2 in cancer.Science 322(5908),1695-1699)、ならびに(3)転写因子のE2Fファミリーによって発揮される遺伝子制御の異常調節(Santos,M.,et al.(2014).In vivo disruption of an Rb-E2F-Ezh2 signaling loop causes bladder cancer.Cancer Research 74(22),6565-6577.,Coe,B.P.,et al.(2013).Genomic deregulation of the E2F/Rb pathway leads to activation of the oncogene EZH2 in small cell lung cancer.PLoS One 8(8),e71670.、Bracken,A.P.,et al.(2003).EZH2 is downstream of the pRB-E2F pathway,essential for proliferation and amplified in cancer.EMBO J 22(20),5323-5335)、例えば、RB1遺伝子の欠失の観点でのものを含む。したがって、EZH2過剰発現を引き起こすがんにおけるいくつかの再発ゲノム異常が存在し、このことが、EZH2レベルの増加が腫瘍進行を促進することを証明している。この目的のために、EZH2は、血液悪性腫瘍および固形腫瘍などの多数のがん標的に関連している。例えば、WO2014/124418を参照されたい。
【0004】
その抗腫瘍活性およびPRC2複合体における長時間の滞留(約101日間)に起因して注目を集めているEZH2阻害剤は、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドである。例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれる、PCT/US2019/027932を参照されたい。その治療的可能性、およびがんなどの疾患の有病率を考慮すると、例えば、組み合わせに基づく治療に使用するための、この化合物のための代替的な療法的使用の必要性が存在する。
【発明の概要】
【0005】
7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAアルキル化剤、およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される第2の薬剤と、を用い、がんを治療する方法が本明細書で提供される。
【0006】
また、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩を単剤療法として使用して、進行した再発固形腫瘍を治療する方法が本明細書で提供される。
【0007】
また、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、トポイソメラーゼ阻害剤、DNAアルキル化剤、およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される第2の薬剤と、任意選択的に、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が本明細書で提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1A】シスプラチンでの単回治療に対するシスプラチン感受性および耐性のA2780(卵巣がん)およびHT1376(膀胱がん)細胞株の表現型応答を示す。示されるデータは、平均細胞生存率±平均の標準誤差(SEM)であり、n=2~3であり、複製物の独立した実験の代表例である。
【
図1B】化合物1での単回治療に対するシスプラチン感受性および耐性のA2780(卵巣がん)およびHT1376(膀胱がん)細胞株の表現型応答を示す。示されるデータは、平均細胞生存率±平均の標準誤差(SEM)であり、n=2~3であり、複製物の独立した実験の代表例である。
【
図2A】シスプラチン感受性および耐性のA2780卵巣がん細胞株における、シスプラチン単独、および化合物1の用量滴定との組み合わせについての代表的な成長曲線を示す。複製物の独立した実験の代表例、平均±SDが示されている。
【
図2B】A2780-PおよびA2780-CRにおけるシスプラチンについてのGI
50未満用量と、16nMの化合物1のGI
50未満用量の組み合わせを示す。複製物の独立した実験の代表例、平均±SDが示されている。
【
図3A】シスプラチン感受性および耐性のHT1376膀胱がん細胞株における、シスプラチン単独、および化合物1の用量滴定との組み合わせについての代表的な成長曲線を示す。複製物の独立した実験の代表例、平均±SDが示されている。
【
図3B】HT1376-DMFおよびHT1376-CRにおけるシスプラチンおよび化合物1についての近GI
50用量の組み合わせを示す。複製物の独立した実験の代表例、平均±SDが示されている。
【
図4】CB17 SCIDマウスのHT1376腫瘍における化合物1、シスプラチン、および両方の組み合わせの抗腫瘍効果を示す。示されるデータは、平均腫瘍サイズ±SEMであり、n=6である。PO=経口投与、IV=静脈内投与、QD=1日に1回、QW=1週間に1回。
【
図5】前立腺がんのCTG-2428患者由来異種移植片(PDX)モデルにおける化合物1、エンザルタミド、および両方の組み合わせの抗腫瘍効果を示す。示されるデータは、平均腫瘍サイズ±SEMであり、アーム当たりn=5である。矢印は、最大腫瘍体積の達成に起因する予定外の死亡または動物の最後を示しており、nは、アーム当たりの残りの動物を示す。PO=経口投与、QD=1日に1回。
【
図6】前立腺がんのCTG-2440 PDXモデルにおける化合物1、エンザルタミド、および両方の組み合わせの抗腫瘍効果を示す。示されるデータは、平均腫瘍サイズ±SEMであり、PO=経口投与、QD=1日に1回である。矢印は、グループサイズの減少を引き起こす、組み合わせアームにおける動物の死、および最大腫瘍体積に起因する個々の動物の物質の取り除きを示し、n=アームにおける残りの動物である。
【
図7】前立腺がんのCTG-2441 PDXモデルにおける化合物1、エンザルタミド、および両方の組み合わせの抗腫瘍効果を示す。示されるデータは、平均腫瘍サイズ±SEMであり、n=5である。矢印は、グループサイズの減少を引き起こす動物の死を示し、n=アームにおける残りの動物である。PO=経口投与、QD=1日に1回。
【発明を実施するための形態】
【0009】
第1の実施形態において、対象におけるがんを治療する方法であって、対象に、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される有効量の第2の薬剤と、を投与することを含む、方法が提供される。代替的に、第1の実施形態の一部として、対象におけるがんを治療するための医薬の製造のための、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される有効量の第2の薬剤との使用が提供される。別の代替例において、第1の実施形態の一部として、対象におけるがんの治療に使用するための、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される有効量の第2の薬剤が提供される。
【0010】
7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、以下の化学式
【化1】
を有し、その内容が参照により本明細書に組み込まれる国際出願第PCT/US2019/027932号に開示される。「化合物1」は、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドと互換的に使用され、各々が立体異性体形態および幾何異性体形態を含む。
【0011】
本方法のトポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼ(トポイソメラーゼIおよびIIを含む)の作用を阻止する化学薬剤または生物学的薬剤を指す。第2の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のトポイソメラーゼ阻害剤としては、限定されないが、イリノテカン、トポテカン、カンプトテシン、ラメラリン、エトポシド、テニポシド、ドキソルビシン、ダウノルビシン、ミトキサントロン、アムサクリン、エリプチシン、アウリントリカルボン酸、HU-331、エピルビシン、バルルビシン、イダルビシン、ピキサントロン、テニポシド、ベロテカン、ギマテカン、インドテカン、インジミテカンが挙げられる。代替的に、第2の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のトポイソメラーゼ阻害剤は、トポイソメラーゼI阻害剤である。別の代替例において、第2の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のトポイソメラーゼ阻害剤は、イリノテカンである。別の代替例において、第2の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のトポイソメラーゼ阻害剤は、トポテカンである。
【0012】
本方法のDNAアルキル化剤とは、DNAの鎖がそうあるべきように連結することを防止することによって作用する化学薬剤または生物学的薬剤を指す。第3の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のDNAアルキル化剤は、ブスルファン、シクロホスファミド、ベンダムスチン、カルボプラチン、クロラムブシル、シクロホスファミド、シスプラチン、テモゾロミド、メルファラン、カルムスチン、ロムスチン、ダカルバジン、オキサリプラチン、イフォサミド、チオテパ、トラベクテジン、アルトレタミン、メクロレタミン、プロカルバジン、およびストレプトゾシンから選択される。代替的に、第3の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のDNAアルキル化剤は、シスプラチンである。
【0013】
本方法のアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤は、アンドロゲン受容体(AR)を阻止し、アンドロゲン産生を阻害もしくは抑制する化学薬剤または生物学的薬剤を指す。第4の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤は、ビカルタミド、エンザルタミド、アパルタミド、フルタミド、ニルタミド、ダロルタミド、および酢酸アビラテロンから選択される(酢酸アビラテロンは、単独で、またはプレドニゾンと組み合わせて含まれ得る)。代替的に、第4の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤は、エンザルタミドである。別の代替例において、第4の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1の実施形態のような)のアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤は、酢酸アビラテロンである(酢酸アビラテロンは、単独で、またはプレドニゾンと組み合わせて含まれ得る)。
【0014】
本明細書で使用される場合、「治療」、「治療する」、および「治療すること」という用語は、本明細書に記載されるように、がん、またはそれらの1つ以上の症状を回復させるか、緩和するか、またはその進行を抑制することを指す。
【0015】
がんを定義するために使用される場合、「進行したがん」または「進行した前立腺がん」などの「進行した」という用語は、列挙されたがんが、切除不可能であること、すなわち、がんが、手術によって完全に除去することができないものであるか、またはがんが転移性であるか、あるいはその両方であるとして定義されることを意味する。一態様において、「進行したがん」は、がんが、切除不可能であることを意味する。
【0016】
また、本明細書に記載のがんは、「再発」がんであってもよい。「再発がん」という用語は、以前に寛解しており、復活したがん、またはがんの徴候および症状が復活しているがんを指す。寛解には、部分的な寛解(がんの一部またはすべてではない徴候および症状が消失している)および完全寛解(がんのすべての徴候および症状が消失しているが、がんはまだ体内に残っている可能性がある)の両方が含まれる。したがって、「進行した再発」がんは、がんが寛解しており、復活し、切除不可能であることを意味する。
【0017】
本方法(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)によって治療される例示的な種類のがんとしては、例えば、副腎がん、腺房細胞がん腫、聴神経腫、末端性黒子性黒色腫、先端汗腺腫、急性好酸球性白血病、急性赤白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性巨核芽球性白血病、急性単球性白血病、急性前骨髄球性白血病、腺がん、腺様嚢胞がん、腺腫、腺腫様歯原性腫瘍、腺扁平上皮がん腫、脂肪組織新生物、副腎皮質がん腫、成人T細胞白血病/リンパ腫、アグレッシブNK細胞白血病、AIDS関連リンパ腫、肺胞横紋筋肉腫、胞巣状軟部肉腫、エナメル上皮線維腫、未分化大細胞型リンパ腫、未分化甲状腺がん、血管免疫芽球性T細胞リンパ腫、血管筋脂肪腫、血管肉腫、星細胞腫、非定型奇形腫様ラブドイド腫瘍、B細胞慢性リンパ性白血病、B細胞前リンパ球性白血病、B細胞リンパ腫、基底細胞がん腫、胆道がん、膀胱がん、芽細胞腫、骨がん、ブレンナー腫瘍、ブラウン腫瘍、バーキットリンパ腫、乳がん、脳がん、がん腫、非浸潤性がん腫、がん肉腫、軟骨腫瘍、セメントーマ、骨髄肉腫、軟骨腫、コルドーマ、絨毛がん腫、脈絡叢乳頭腫、腎臓の明細胞肉腫、頭蓋咽頭腫、皮膚T細胞性リンパ腫、子宮頸がん、結腸直腸がん、デゴス病、線維形成性小円形細胞腫瘍、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫、胚芽異形成性神経上皮腫瘍、未分化胚細胞腫、胎児性がん腫、内分泌腺新生物、内胚葉洞腫瘍、腸疾患関連T細胞リンパ腫、食道がん、封入胎児、線維腫、線維肉腫、濾胞性リンパ腫、甲状腺濾胞がん、神経節細胞腫、胃腸がん、胚細胞腫瘍、妊娠性絨毛がん腫、巨細胞線維芽腫、骨の巨細胞腫瘍、グリア腫瘍、多形性膠芽細胞腫、グリオーマ、大脳神経膠腫症、グルカゴノーマ、性腺芽細胞腫、顆粒膜細胞腫瘍、男性胚細胞腫、胆嚢がん、胃がん、有毛細胞白血病、血管芽腫、頭頸部がん、血管周皮腫、血液悪性腫瘍、肝芽腫、肝脾T細胞リンパ腫、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、浸潤性小葉がん腫、腸がん、腎臓がん、喉頭がん、悪性黒子、致死性正中がん腫、白血病、ライディッヒ細胞腫瘍、脂肪肉腫、肺がん、リンパ管腫、リンパ管肉腫、リンパ上皮腫、リンパ腫、急性リンパ性白血病、急性骨髄性白血病、慢性リンパ性白血病、肝臓がん、小細胞肺がん、非小細胞肺がん、MALTリンパ腫、悪性線維性組織球腫、悪性末梢神経鞘腫瘍、悪性トリトン腫瘍、マントル細胞リンパ腫、辺縁帯B細胞リンパ腫、マスト細胞白血病、縦隔胚細胞腫瘍、乳房の髄様がん腫、甲状腺髄様がん、髄芽腫、黒色腫、髄膜腫、メルケル細胞がん、中皮腫、転移性尿路上皮がん腫、ミュラー管混合腫瘍、粘液性腫瘍、多発性骨髄腫、筋肉組織新生物、菌状息肉症、粘液型脂肪肉腫、粘液腫、粘液肉腫、鼻咽腔がん腫、神経鞘腫、神経芽腫、神経線維腫、神経腫、結節型黒色腫、眼がん、乏突起星細胞腫、乏突起膠腫、オンコサイトーマ、視神経鞘髄膜腫、視神経腫瘍、口腔がん、骨肉腫、卵巣がん、パンコースト腫瘍、甲状腺乳頭がん、傍神経節腫、松果体芽腫、松果体細胞腫、下垂体細胞腫、下垂体腺腫、下垂体腫瘍、形質細胞腫、多胚腫、前駆Tリンパ芽球性リンパ腫、原発性中枢神経系リンパ腫、原発性滲出性リンパ腫、原発性腹膜がん、前立腺がん、膵臓がん、咽頭がん、腹膜偽粘液腫、腎臓細胞がん腫、腎髄様がん腫、網膜芽腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、リヒタートランスフォーメーション、直腸がん、肉腫、神経鞘腫症、セミノーマ、セルトリ細胞腫瘍、性索性腺間質腫瘍、印環細胞がん腫、皮膚がん、スモールブルーラウンドセル腫瘍、小細胞がん腫、軟部肉腫、ソマトスタチノーマ、煤煙性イボ、脊髄腫瘍、脾辺縁帯リンパ腫、扁平上皮がん腫、滑膜肉腫、セザリー病、小腸がん、扁平上皮腫、胃がん、T細胞リンパ腫、精巣がん、莢膜細胞種、甲状腺がん、移行上皮がん腫、喉頭がん、尿膜管がん、泌尿生殖器がん、尿路上皮がん腫、ブドウ膜黒色腫、転移性去勢抵抗性前立腺がん、卵巣明細胞がん腫、子宮がん、疣状がん腫、視覚路神経膠腫、外陰がん、膣がん、ワルデンシュトレームマクログロブリン血症、ワルチン腫瘍、およびウィルムス腫瘍が挙げられる。
【0018】
一態様において、第5の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)によって治療されるがんは、固形腫瘍である。本明細書に提示されるように、固形腫瘍は、典型的には嚢胞または液体領域を含まない組織の異常な塊を指す。固形腫瘍は、良性または悪性であってもよく、それらを形成する細胞の種類によって分類される。固形腫瘍の例としては、例えば、肉腫、がん腫、およびリンパ腫が挙げられる。
【0019】
一態様において、第6の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)によって治療されるがんは、固形悪性腫瘍である。代替的に、第5の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)によって治療される固形腫瘍は、膀胱がん、乳がん、子宮頸がん、結腸がん、直腸がん、子宮がん、腎臓がん、口唇がん、口腔がん、肝臓がん、皮膚がん、肺がん、卵巣がん、膵臓がん、前立腺がん、および胃または胃食道がんから選択される。別の代替例において、第6の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1、第2、または第3の実施形態のような)によって治療される固形腫瘍は、前立腺がん、小細胞肺がん(SCLC)、胃または胃食道接合部(GEJ)腺がん、および漿液性卵巣がんから選択される。別の代替例において、第6の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)によって治療される固形腫瘍は、小細胞肺がん(SCLC)、胃または胃食道接合部(GEJ)腺がん、および漿液性卵巣がんから選択される。別の代替例において、第6の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)によって治療される固形腫瘍は、前立腺がんである。別の代替例において、第6の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)によって治療される固形腫瘍は、尿路上皮がん腫、卵巣明細胞がん腫、および子宮内膜がん腫から選択される。
【0020】
一態様において、第7の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1~第6の実施形態のような)によって治療されるがんは、再発がんである。したがって、第6の実施形態の一部として、本方法(例えば、第1~第6の実施形態のような)によって治療されるがんは、再発前立腺がん、再発小細胞肺がん(SCLC)、再発胃または胃食道接合部(GEJ)腺がん、および再発漿液性卵巣がんなどの再発固形腫瘍である。
【0021】
一態様において、本明細書に記載のがん(例えば、第4~第7の実施形態のような)は、進行したがん、例えば、進行した前立腺がん、進行した小細胞肺がん(SCLC)、進行した胃または胃食道接合部(GEJ)腺がん、および進行した漿液性卵巣がんである。
【0022】
特に示されない限り、本明細書に記載の投与は、本明細書に記載の開示されたトポイソメラーゼ阻害剤またはアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤(例えば、第1、第2、第3、または第4の実施形態のような)の投与の前、投与と同時、または投与の後に、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドを投与し、列挙されたがんを治療すること(例えば、第5~第7の実施形態のような)を含む。したがって、同時投与は、治療目的のために必要ではない。しかしながら、一態様において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、トポイソメラーゼ阻害剤またはアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤と同時に投与される。
【0023】
第8の実施形態において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩を使用して、進行した再発固形腫瘍を治療する方法が本明細書で提供される。代替的に、第7の実施形態の一部として、対象における進行した再発固形腫瘍を治療するための医薬の製造のための、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩の使用が提供される。別の代替例において、第8の実施形態の一部として、対象における進行した再発固形腫瘍の治療に使用するための、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩が提供される。
【0024】
本明細書に記載の進行した再発固形腫瘍(例えば、第7の実施形態のような)としては、限定されないが、進行した再発尿路上皮がん腫、進行した再発卵巣明細胞がん腫、および進行した再発子宮内膜がん腫が挙げられる。
【0025】
第9の実施形態において、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される有効量の第2の薬剤と、任意選択的に、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物が本明細書で提供される。本明細書に記載の1つ以上のがんを治療するための、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、トポイソメラーゼ阻害剤およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤から選択される有効量の第2の薬剤と、任意選択的に、薬学的に許容される担体とを含む、薬学的組成物の使用(例えば、第5~第7の実施形態のような)も含まれる。進行した再発固形腫瘍を治療するために、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩を含む薬学的組成物の使用において、さらに提供される。
【0026】
一態様において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、13.3°、14.9°、20.2°、20.8°、22.2°、および22.5°から選択される2θ角での少なくとも3個のX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。代替的に、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、13.3°、14.9°、20.2°、20.8°、22.2°、および22.5°から選択される2θ角での少なくとも4個のX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、13.3°、14.9°、20.2°、20.8°、22.2°、および22.5°から選択される2θ角での少なくとも5個のX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、13.3°、14.9°、20.2°、20.8°、22.2°、および22.5°から選択される2θ角での少なくとも6個のX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、13.3°、14.9°、20.2°、20.8°、22.2°、および22.5°から選択される2θ角でのX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、10.2°、12.3°、12.7°、13.3°、14.9°、15.3°、20.2°、20.8°、21.3°、22.2°、22.5°、および23.8°から選択される2θ角でのX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、10.2°、11.0°、11.4°、11.8°、12.3°、12.7°、13.3°、14.9°、15.3°、16.1°、17.4°、20.2°、20.8°、21.3°、22.2°、22.5°、および23.8°から選択される2θ角でのX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、14.9°、20.2°、および20.8°から選択される2θ角でのX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、14.9°、20.2°、および20.8°から選択される2θ角でのX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、14.9°、20.2°、20.8°、および22.2°から選択される2θ角でのX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。別の代替例において、7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、10.0°、13.3°、14.9°、20.2°、20.8°、および22.2°から選択される2θ角でのX線粉末回折ピークを特徴とする結晶形態1のものである。
【0027】
一態様において、本明細書に記載の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドは、(2R)-7-クロロ-2-(trans-4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミドである。
【0028】
「薬学的に許容される担体」という用語は、担体ともに配合される化合物の薬理学的活性に悪影響を与えず、ヒトへの使用にも安全である、非毒性の担体、アジュバント、またはビヒクルを指す。本開示の組成物で使用され得る薬学的に許容される担体、アジュバント、またはビヒクルとしては、限定されないが、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、ステアリン酸マグネシウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝物質、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩もしくは電解質、例えば、硫酸プロタミン、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイド状シリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質(例えば、微結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ラクトース一水和物、ラウリル硫酸ナトリウム、およびクロスカルメロースナトリウム)、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリレート、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂が挙げられる。
【0029】
本明細書に記載の化合物は、薬学的に許容される塩の形態で存在し得る。医薬での使用に関して、本明細書に記載される化合物の塩は、非毒性の「薬学的に許容される塩」を指す。薬学的に許容される塩形態には、可能な場合、薬学的に許容される酸性/アニオン性または塩基性/カチオン性塩が含まれる。
【0030】
本明細書の組成物および投与の方法は、経口的に、非経口的に、吸入噴霧によって、局所的に、直腸的に、経鼻的に、口腔的に、腟的に、または埋め込まれたリザーバを介して投与され得る。本明細書で使用される「非経口」という用語は、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、くも膜下腔内、肝内、病巣内、および頭蓋内注射または注入技術を含む。
【0031】
任意の特定の患者用の特定の投薬量および治療計画は、年齢、体重、全身の健康状態、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組み合わせ、治療する医師の判断、および治療される特定の疾患の重症度を含む、多様な因子に依存することも理解されたい。組成物中の提供される化合物の量は、組成物中の特定の化合物にも依存するであろう。
【0032】
「対象」および「患者」という用語は、互換的に使用され得、治療を必要とする哺乳動物、例えば、コンパニオンアニマル(例えば、イヌ、ネコなど)、家畜(例えば、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギなど)、および実験動物(例えば、ラット、マウス、モルモットなど)を意味する。典型的には、対象は、治療を必要とするヒトである。
【0033】
「有効量」または「治療有効量」という用語は、対象の生物学的または医学的応答を誘導するであろう本明細書に記載の化合物の量、例えば、0.01~100mg/体重kg/日の投与量を指す。一態様において、有効量の7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチル-N-((6-メチル-4-(メチルチオ)-2-オキソ-1,2-ジヒドロピリジン-3-イル)メチル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボキサミド、またはその薬学的に許容される塩と、有効量の本明細書に記載のトポイソメラーゼ阻害剤またはアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤は、合わせて、本明細書に記載の1つ以上のがんを測定可能に治療するための組み合わせ効果を誘発するようなものである。
【0034】
例示
ここで、本発明は、以下の非限定的な実施例によって説明される。
【0035】
化合物1を、以下の手順を使用して、単一エナンチオマー、単一幾何異性体として調製することができる。
【0036】
中間体1:7-クロロ-2,4-ジメチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸メチル
【化2】
【0037】
ステップ1:5-クロロ-3,4-ジヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチルの合成
3,4-ジヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル(5.11g、27.9mmol)のテトラヒドロフラン(199mL)溶液に、-20℃で塩化スルフリル(2.45mL、30.6mmol)を滴加した。反応混合物を-20℃で3時間撹拌し、次いで塩化アンモニウムの飽和水溶液(50mL)でクエンチした。所望の生成物を酢酸エチル(25mL×3)で抽出した。合わせた有機層をブライン(25mL)で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン中0%~60%の勾配の酢酸エチル)によって精製して、表題化合物(4.117g、収率68%)をベージュ色の固体として得た。LCMS[M+H]+m/z:計算値217.0、実測値217.1(Cl同位体パターン)。
【0038】
ステップ2:7-クロロ-2,4-ジメチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)-2H-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボン酸メチルの合成
5-クロロ-3,4-ジヒドロキシ-2-メチル安息香酸メチル(1.2g、5.53mmol)、トリルテニウムドデカカルボニル(176mg、276μmol)、およびトリフェニルホスフィン(145mg、553μmol)の混合物を真空下で脱気し、窒素でパージした(3サイクル)。トルエン(8.1mL)を添加し、反応混合物を加熱して30分間環流させた。次いで、4-エチニルシクロヘキサン-1-オン(1.34g、11.0mmol)のトルエン(17mL)溶液を滴加し、反応物を還流状態で23時間撹拌した。最後に、反応混合物を室温に冷却し、減圧下で濃縮乾固させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ヘプタン中0~60%の勾配の酢酸エチル)によって精製して、表題化合物(1.327g、収率70%)を黄色の油状物として得た。LCMS[M+Na]+m/z:計算値361.1、実測値361.1(Cl同位体パターン)。
【0039】
ステップ3:(R)-7-クロロ-2,4-ジメチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸メチルと(S)-7-クロロ-2,4-ジメチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸メチルとの分離
7-クロロ-2,4-ジメチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)ベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸メチル(4.4g、13mmol)のラセミ混合物を分取SFC[カラム:Daicel chemical industriesのChiralPak AY(内径250mm×50mm、10μm)によって分割した。移動相A:CO2/移動相B:メタノール中0.1%のNH4OH。無勾配(85%の移動相Aおよび15%の移動相B)。流速:80mL/分。カラム温度:40℃]。中間体1(ピーク1)(不要なエナンチオマー/ディストマー):保持時間=6.2分。回収=1.4g、4.05mmol、収率31%、90%ee、純度98%(黄色の固体)。1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.48(s,1H),3.78(s,3H),2.44-2.36(m,2H),2.35-2.25(m,6H),2.19(tdd,J=2.8,5.6,13.1Hz,2H),1.70-1.57(m,5H)。中間体1(ピーク2)(所望のエナンチオマー/ユートマー):保持時間=7.0分。回収=1.1g、3.08mmol、収率23.75%、99%ee、純度95%(黄色の固体)。1H NMR(400MHz,クロロホルム-d)δ7.49(s,1H),3.78(s,3H),2.44-2.36(m,2H),2.36-2.25(m,6H),2.20(tdd,J=2.8,5.6,13.1Hz,2H),1.72-1.59(m,5H)。SFC分析方法:[カラム:ChiralPak AY-3(内径150×4.6mm、3μm)。移動相A:CO2/移動相B:iPrOH中0.05%のEt2NH。勾配:5%から40%の移動相B(5.5分より長い)。流速:2.5mL/分。カラム温度:40℃]。中間体1(ピーク1-不要なエナンチオマー/ディストマー):保持時間=2.853分。中間体1(ピーク2-所望のエナンチオマー/ユートマー):保持時間=2.979分。
【0040】
中間体2:7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸
【化3】
【0041】
ステップ1:7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸メチルの合成
3-メトキシアゼチジン塩酸塩(8g、64.75mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(12mL、68.9mmol)のメタノール(30mL)溶液を室温で30分間撹拌した後、7-クロロ-2,4-ジメチル-2-(4-オキソシクロヘキシル)-1,3-ベンゾジオキソール-5-カルボン酸メチル(中間体1-ピーク2)(4.1g、12.10mmol)の別のテトラヒドロフラン(30mL)の溶液の溶液を添加した。反応混合物を室温で1時間撹拌し、次いで-70℃に冷却した。水素化ホウ素リチウム(500mg、22.96mmol)を添加し、反応物を-70℃で30分間[または出発物質の完全な消費がTLC、酢酸エチル/メタノール5:1によって観察されるまで]撹拌した。次に、反応物の2つのバッチを合わせ、0℃の塩化アンモニウムの飽和水溶液(120mL)でクエンチし、所望の生成物をジクロロメタン(200mL×3)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固させた。残渣をフラッシュクロマトグラフィー(シリカゲル、ジクロロメタン中0%から14%の勾配のメタノール)によって精製して、表題化合物(8.05g、67%収率、83%純度)を淡黄色の油状物として得た。分取薄層クロマトグラフィー(シリカゲル、酢酸エチル:メタノール15:1)によって、試料(50mg)をさらに精製した。LCMS[M+H]+m/z:計算値410.2、実測値410.1。1H NMR(400MHz,メタノール-d4)δ7.39(s,1H),3.95-3.91(m,1H),3.73(s,3H),3.59-3.51(m,2H),3.16(s,3H),2.97(br dd,J=6.4,8.0Hz,2H),2.26(s,3H),2.11-2.02(m,1H),1.91-1.73(m,5H),1.54(s,3H),1.22-1.12(m,2H),0.98-0.86(m,2H)。
【0042】
ステップ2:7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸の合成
7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸メチル(4g、9.75mmol)のメタノール(48mL)溶液に、水酸化リチウム水和物(4.03g、96.06mmol)の水(12mL)溶液を添加した。反応物を70℃で2時間撹拌し、次いで2つのバッチを合わせ、減圧下で濃縮した。水(50mL)を添加し、0℃のクエン酸の飽和水溶液でpHを6に調整した。所望の生成物を、ジクロロメタンとイソプロパノールとの3:1混合物(300mL×5)で抽出した。合わせた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥させ、濾過し、減圧下で濃縮乾固させて、表題化合物(6.1g、粗生成物)をオフホワイト色の固体として得て、これをさらに精製することなく次のステップで使用した。LCMS[M+H]
+m/z:計算値396.2、実測値396.1。
1H NMR(400MHz,メタノール-d
4)δ7.07(s,1H),4.05-4.10(m,2H),3.76-3.88(m,1H),3.67(br dd,J=10,3.6Hz,2H),3.22(s,3H),2.71-2.81(m,1H),2.19(s,3H),1.91-1.99(m,4H),1.75-1.85(m,1H),1.52(s,3H),1.18-1.28(m,2H),1.06-1.14(m,2H)。
化合物1
【化4】
【0043】
7-クロロ-2-(4-(3-メトキシアゼチジン-1-イル)シクロヘキシル)-2,4-ジメチルベンゾ[d][1,3]ジオキソール-5-カルボン酸(中間体2-単一エナンチオマーおよび幾何異性体)(5g、12.63mmol)のN,N-ジメチルホルムアミド(50mL)溶液に、O-(7-アザベンゾトリアゾール-1-イル)-N,N,N’,N’-テトラメチルウロニウムヘキサフルオロホスフェート(5.7g、14.99mmol)およびN,N-ジイソプロピルエチルアミン(11mL、63.15mmol)を添加した。混合物を20℃で30分間撹拌した後、3-(アミノメチル)-6-メチル-4-(メチルチオ)ピリジン-2(1H)-オン塩酸塩(中間体1)(4.2g、19.03mmol)を添加した。反応混合物を室温でさらに1.5時間撹拌し、次いで濾過した。濾液を分取HPLC[カラム:Phenomenex Gemini C18(250mm×50mm、10μm)、移動相A:水(0.04%の水酸化アンモニウムv/vおよび10mMの炭酸水素アンモニウム)/移動相B:アセトニトリル。勾配(75%から44%の移動相A/25%から56%の移動相B、23分より長い)。カラム温度:30℃]によって精製して、表題化合物(4.4g、収率60%、純度96%)を白色の固体として得た。LCMS[M+H]+m/z:計算値562.2、実測値562.2。1H NMR(400MHz,メタノール-d4)δ6.91(s,1H),6.29(s,1H),4.50(s,2H),4.01(六重線,J=6Hz,1H),3.58(dd,J=8.8,6.4Hz,2H),3.26(s,3H),2.92-3.02(m,2H),2.54(s,3H),2.31(s,3H),2.21(s,3H),2.01-2.11(m,1H),1.79-2.00(m,5H),1.62(s,3H),1.19-1.34(m,2H),0.91-1.08(m,2H)。
【0044】
1.一次インビトロ薬理学
A.作用機序
生化学アッセイにおいて、化合物1は、野生型およびY641N変異体EZH2含有PRC2複合体、ならびにEZH1含有PRC2複合体の触媒活性を抑制し、野生型およびY641N変異体EZH2についての半数阻害濃度(IC50)値はそれぞれ0.02nMおよび0.03nM、EZH1については0.06nMである。例えば、PCT/US2019/027932を参照されたい。生化学的効力は、化合物1の真の親和性を過小評価したものであり、動態アッセイによる結合のさらなる特性決定は、EZH2についておよそ0.11pMの阻害定数、EZH2についてEZH1よりもおよそ70倍の選択性を裏付けている。動態解析に基づいて、化合物1は、長い滞留時間(約101日間)でPRC2に結合することが決定された。例えば、PCT/US2019/027932を参照されたい。
【0045】
B.全体的なH3K27me3細胞内レベルおよび遺伝子発現に対する効果
化合物1が、全体的なH3K27me3細胞内レベルを低下させる能力を、野生型EZH2含有子宮頸がん細胞株(HeLa)で評価した。4日間の治療後、化合物1は、H3K27me3の全体的なレベルを、0.40nMのEC50まで低下させることができた。例えば、PCT/US2019/027932を参照されたい。化合物1は、膀胱がん(639VおよびHT1197)、ならびに卵巣がんTOV21G細胞株を含む他の固形腫瘍細胞株においても同様な効力を示すことができ、3日目のEC50値は、それぞれ、0.09nM、0.14nM、および0.26nMであった。
【0046】
H3K27me3レベルの低下は、遺伝子発現の変化をもたらす。化合物1による4日間の治療後の膀胱がん細胞株のRNA配列決定から、複数の遺伝子の発現レベルが有意に変化している。主な変化は、遺伝子発現の増加であり、有意に減少した遺伝子は極めて少なかった。遺伝子発現の増加は、用量および時間の両方に依存し、より高い濃度の化合物1で、また、より後の時間点で、発現の増加が観察される。このことは、メチルマークの変化が、化合物1の治療1日後に観察されたため、H3K27me3の低下とは対照的である。注目すべきことに、高度に上方調節された遺伝子の1つは、既知の腫瘍抑制因子であり、EZH2標的遺伝子であると以前に報告されている細胞周期の負の調節因子であるCDKN1C(p57またはKip2としても知られる)であった。Yang X,Karuturi RK,Sun F,et al.CDKN1C(p57)is a direct target of EZH2 and suppressed by multiple epigenetic mechanisms in breast cancer cells.PLoS One.2009;4(4):e5011を参照されたい。CDKN1Cの低い発現は、進行した膀胱がんおよび乳がんでみられ、予後不良と相関する。Yang above and Hoffmann MJ,Florl AR,Seifert HH,et al.Multiple mechanisms downregulate CDKN1C in human bladder cancer.Int J Cancer.2005 Apr 10;114(3):406-13を参照されたい。
【0047】
2.抗増殖効果
A.化合物1とシスプラチン(DNAアルキル化剤)との相乗作用
シスプラチンの有無にかかわらず、化合物1の抗増殖活性に対する複数の固形腫瘍がん細胞株の感度を評価した。本願発明者らは、まず、卵巣がん細胞株A2780(A2780-CR)および膀胱がん細胞株(HT1376-CR)のシスプラチン耐性態様が、親(A2780-P)または年齢を合わせたDMF対照(HT1376-DMF)細胞株よりも、シスプラチンに対して感度が低く(
図1Aを参照されたい)、一方、A2780およびHT1376のシスプラチン耐性態様が、化合物1に対して感度が強いままである(
図1Bを参照されたい)を見出した。しかしながら、化合物1およびシスプラチンによる併用治療は、50%を超える成長の低下をもたらした。
図2Aおよび
図2Bを参照されたい。
【0048】
HT1376膀胱がん細胞株においても、同様の結果がみられた。例えば、シスプラチン感受性(-DMF)および耐性(-CR)HT1376細胞株は、シスプラチン治療を化合物1と組み合わせたときに、細胞成長に対する増強された効果を示した。
図3Aおよび
図3Bを参照されたい。加えて、化合物1単独と、シスプラチンとの組み合わせは、腫瘍成長を低下させるのに有効であった。
図4を参照されたい。まとめると、このデータは、化合物1を他の化学療法剤と組み合わせて、膀胱がんおよび卵巣がんなどの固形腫瘍を相乗的に治療することができることを実証している。
【0049】
B.化合物1とエンザルタミド(アンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤)との相乗作用
NOGマウスのCTG 2428 PDX腫瘍において、化合物1単独、およびアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤エンザルタミドとの組み合わせの抗腫瘍効果を評価した。
図5に示されるように、化合物1とエンザルタミドの組み合わせにより、化合物1またはエンザルタミド単独よりも絶対腫瘍体積を良好な方に低下させる。同様の結果は、NOGマウスのCTG-2440 PDX(
図6)腫瘍およびCTG-2441 PDX腫瘍(
図7)においてもみられた。このデータは、化合物1を、エンザルタミドなどのアンドロゲン受容体シグナル伝達阻害剤と組み合わせて、前立腺がんなどの固形腫瘍がんを治療することができることを確立する。
【0050】
3.一次インビボ薬理学(単剤療法および併用療法)
6つの疾患特異的用量拡大コホートにおける、化合物1単剤療法、およびイリノテカンとの組み合わせの安全性、忍容性、および予備臨床活性を評価するための第1/2相試験を、以下に概説する一般的な手順に従って実施する。第1相は、進行した再発固形腫瘍を有する患者における、化合物1の単剤療法用量漸増および併用療法(化合物1+イリノテカン)用量漸増期間から構成され、第2相は、6つの疾患特異的用量拡大コホートにおける単剤療法用量漸増および併用療法用量漸増期間を含む。
【0051】
A.単剤の有効性
以下のコホートに登録された患者は、経口化合物1単剤療法を受ける。
・進行した再発固形腫瘍を有する患者における、単剤療法用量漸増コホート。
・尿路上皮がん腫を有する患者における、用量拡大コホート1。
・卵巣明細胞がん腫を有する患者における、用量拡大コホート2。
・子宮内膜がん腫を有する患者における、用量拡大コホート3。
【0052】
この試験は、2相にわたって、進行した固形腫瘍を有する評価可能な患者を登録する。適格性には、例えば、標準療法の後に再発したか、または標準療法の間に進行したなどの特定の基準が含まれる。第1相は、進行した固形腫瘍を有する患者において、単剤療法としての化合物1の最大耐用用量(MTD)および/または推奨される第2相用量(RP2D)を決定することを意図している。副次的な目的には、化合物1の安全性および忍容性、化合物1の薬物動態(PK)および薬力学(PD)プロファイル、ならびに化合物1の予備臨床活性が含まれる。第2相は、選択された固形腫瘍(例えば、尿路上皮がん腫、卵巣明細胞がん腫、および子宮内膜がん腫)を有する患者における単剤療法としての化合物1の抗腫瘍活性を評価するように設計される。
【0053】
本試験の単剤療法用量漸増部分に登録される患者は、連続した4週間(28日間)のサイクルにおいて、化合物1を1日に1回(QD)、経口(PO)で受ける。化合物1の開始用量は、50mgである。化合物1の用量を、少なくとも1つのグレード2の試験薬に関連する有害事象(貧血またはリンパ球減少症を除く)が報告されるまで、100%以下まで漸増させ、その後、化合物1の用量を、40%以下まで漸増させてもよい。新たな安全性、PK、またはPDデータのレビューに基づいて推奨される場合、中間または追加の用量レベルを評価してもよい。300mg QDを超える化合物1の用量レベルは、25%以下まで漸増される。
【0054】
B.併用の有効性
以下のコホートに登録された患者は、経口化合物1単剤療法を受ける。
・進行した再発固形腫瘍を有する患者における、併用療法用量漸増コホート
・小細胞肺がん(SCLC)を有する患者における、用量拡大コホート4。
・胃または胃食道接合部(GEJ)腺がんを有する患者における、用量拡大コホート5。
・漿液性卵巣がんを有する患者における、用量拡大コホート6。
【0055】
この試験は、選択された固形腫瘍が、小細胞肺がん、胃または胃食道接合部、および漿液性卵巣がんであることを除き、単剤療法用量と同じ2相にわたって、進行した固形腫瘍を有する評価可能な患者を登録する。適格性には、例えば、標準療法の後に再発したか、または標準療法の間に進行したなどの特定の基準が含まれる。
【0056】
本開示のいくつかの実施形態を説明してきたが、本開示の化合物および方法を利用する他の実施形態を提供するために、本願発明者らの基本的な実施例が変更され得ることは明らかである。したがって、本開示の範囲は、例によって表された特定の実施形態によってではなく、添付の特許請求の範囲によって定義されることを理解されたい。
【0057】
本出願全体で引用されるすべての参考文献(参考文献、発行された特許、公開特許出願、および同時係属中の特許出願を含む)の内容は、それらの全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。別段定義されない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語には、当業者に一般的に知られる意味が付与される。