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特許7530422眼の生体力学的特性の測定および監視装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】眼の生体力学的特性の測定および監視装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20240731BHJP
   A61B 5/00 20060101ALN20240731BHJP
   G02C 7/04 20060101ALN20240731BHJP
   G16Y 40/20 20200101ALN20240731BHJP
   G16Y 40/10 20200101ALN20240731BHJP
【FI】
A61B3/16
A61B5/00 101M
G02C7/04
G16Y40/20
G16Y40/10
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2022506304
(86)(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-26
(86)【国際出願番号】 EP2019070353
(87)【国際公開番号】W WO2021018376
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2022-06-17
(73)【特許権者】
【識別番号】519447905
【氏名又は名称】センシメド ソシエテ・アノニム
(74)【代理人】
【識別番号】100217434
【弁理士】
【氏名又は名称】万野 秀人
(72)【発明者】
【氏名】パラシヴ・アドリアン
(72)【発明者】
【氏名】シュルンド・マリオ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァリデル・ティエリー
(72)【発明者】
【氏名】フリチ・ラファエル
(72)【発明者】
【氏名】セルボニ・サシャ
【審査官】増渕 俊仁
(56)【参考文献】
【文献】特表2015-521067(JP,A)
【文献】特開2017-191320(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0243645(US,A1)
【文献】M. Leonardi, et al.,A SOFT CONTACT LENS WITH A MEMS STRAIN GAGE EMBEDDED FOR INTRAOCULAR PRESSURE MONITORING,TRANSDUCERS '03. 12th International Conference on Solid-State Sensors, Actuators and Microsystems. Digest of Technical Papers,米国,IEEE,2003年,Vol. 2,pp. 1043-1046,https://ieeexplore.ieee.org/document/1216947
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00-3/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内面および外面を有するコンタクトレンズと、検知ユニットと、を備えるOBP測定および監視装置であって、前記検知ユニットは、前記コンタクトレンズがユーザによって装着されたときに眼の少なくとも第1のOBPおよび第2のOBPを検知するために前記ユーザの前記眼に当てられるように前記コンタクトレンズと一体化され、前記検知ユニットは、前記第1のOBPおよび前記第2のOBPを同時にまたは連続的に測定し、前記第1のOBPおよび前記第2のOBPをCPUに送信するように適合され、それにより、前記測定を受信する前記CPUは、少なくとも前記第1のOBPおよび前記第2のOBPの間の組み合わせに基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを決定することができ、前記第1のOBPが眼内圧であり、前記第2のOBPが幾何学的眼球変化または眼の温度であることを特徴とするOBP測定および監視装置。
【請求項2】
前記検知ユニットが、少なくとも2つの異なるOBPを測定することができる単一のセンサを備えることを特徴とする、請求項1に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項3】
前記検知ユニットが、単一のOBPをそれぞれが測定することができる少なくとも2つの単一のセンサを備えることを特徴とする、請求項1に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項4】
前記少なくとも2つの単一のセンサがそれぞれ、互いに異なる単一のOBPを測定することができることを特徴とする、請求項3に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項5】
前記検知ユニットは、前記第2のOBPが前記幾何学的眼球変化である場合には前記眼の温度であり、前記第2のOBPが前記眼の温度である場合には前記幾何学的眼球変化である第3のOBPを測定することができることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項6】
前記検知ユニットが、円形または円弧形状を有する1つまたは複数のアクティブ歪みゲージとして幾何学的眼球変化センサを備え、コンタクトレンズの内側部分の周りの外側部分に位置する、請求項5に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項7】
前記1つまたは複数のアクティブ歪みゲージが、金属または合金などの抵抗材料で作られた連続した長手方向要素である、請求項6に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項8】
前記幾何学的眼球変化センサが、2つのアクティブゲージおよび2つのパッシブゲージが交互にブリッジに配置されるなどの、ホイートストンブリッジ構成の4つのゲージを備える、請求項6または7に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項9】
前記検知ユニットが、IOPの直接測定を行う圧力センサを備えることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項10】
前記コンタクトレンズが、前記コンタクトレンズの中心にある内側部分と前記内側部分の周りの外側部分と、を備えるソフトコンタクトレンズであり、前記内側部分は前記外側部分よりも剛性であることを特徴とする、請求項9に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項11】
前記圧力センサが、前記内側部分に配置されていることを特徴とする、請求項10に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項12】
前記内側部分が、前記コンタクトレンズが前記ユーザによって装着されたときに前記圧力センサの周りで圧力平衡に達するように、前記圧力センサと接触している前記眼の表面の少なくとも一部を平坦化するように適合された曲率半径で剛性化された内面を維持するように、前記コンタクトレンズの前記内面の中央部分を少なくとも部分的に剛性化するように適合される、請求項10または11に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項13】
前記内側部分が、メニスカスレンズと同様の一般的な形状を有することを特徴とする、請求項10から12のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項14】
前記内側部分が、前記外側部分と比較して寸法が小さいことを特徴とする、請求項10から13のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項15】
前記内側部分が、剛性インサートを備え、前記剛性インサートは、前記内側部分の一部に設けられ、前記内側部分の他の部分の剛性よりも高い剛性を有することを特徴とする、請求項10から14のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項16】
前記剛性インサートが、複数の貫通孔を備えることを特徴とする、請求項15に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項17】
前記剛性インサートが、ポリマー、バイオポリマー、セラミック、ガラス、金属およびRGPの群において選択される材料で作られ、および/または前記コンタクトレンズの前記外側部分が、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲルおよびシリコーンの群において選択される材料で作られることを特徴とする、請求項15または16に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項18】
前記圧力センサが、前記ユーザの前記眼と直接接触または間接的に接触し、前記剛性インサートの内側凹面内に形成されたキャビティ内に配置され、前記キャビティは、圧力伝達充填材料で充填され、前記圧力伝達充填材料は、前記圧力伝達充填材料の層が前記圧力センサと前記コンタクトレンズの前記内面との間に配置されるように、前記圧力センサを覆い、前記圧力伝達充填材料は、前記外側部分の材料と同じ材料であることを特徴とする、請求項15から17のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項19】
前記圧力伝達充填材料が、前記内側部分および/または前記外側部分よりも柔らかい材料であることを特徴とする、請求項18に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項20】
前記キャビティが、前記内側部分内に形成されることを特徴とする、請求項18または19に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項21】
前記キャビティの下の前記コンタクトレンズの前記内面が、前記内側部分の下の前記内面の残りの部分よりも柔らかいまたは同様の表面柔らかさを有することを特徴とする、請求項18から20のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項22】
前記コンタクトレンズの前記内側部分および前記外側部分のいずれか一方が、エラストマー複合材またはシリコーンエラストマーのような剛性が寸法に沿って一定ではない材料で作られることを特徴とする、請求項10から21のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項23】
前記検知ユニットが、同じOBPを測定するように適合された複数のセンサを備えることを特徴とする、請求項1から22のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置。
【請求項24】
キットであって、
請求項1から23のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置と、
前記OBP測定および監視装置と通信し、前記OBP測定および監視装置から受信したデータを記憶するように構成された可搬型記録装置と、
を備える、キット。
【請求項25】
OBP監視システムであって、
請求項1から23のいずれか一項に記載のOBP測定および監視装置と、
前記OBP測定および監視装置と通信し、前記OBP測定および監視装置から受信したデータを記憶するように構成された可搬型記録装置と、
前記可搬型記録装置から受信したデータを受信および/または処理および/または記憶するために、前記可搬型記録装置と通信するように構成されたコンピューティング装置と、
を備える、OBP監視システム。
【請求項26】
前記OBP監視システムが、1つは左眼用、1つは右眼用である2つのOBP測定および監視装置を備え、前記可搬型記録装置が、前記2つのOBP測定および監視装置と通信し、前記2つのOBP測定および監視装置から受信したデータを記憶するように構成される、請求項25に記載のOBP監視システム。
【請求項27】
OBP測定および監視方法であって、請求項24に記載のキットを患者に配置するステップと、前記第1のOBPおよび前記第2のOBPの少なくとも1つの測定を開始するステップと、OBP信号を可搬型記録装置に記録するステップと、前記記録されたOBPデータを、前記可搬型記録装置から受信したデータを受信および/または処理および/または記憶するために前記可搬型記録装置と通信するように構成されたコンピューティング装置に送信するステップと、を含み、前記コンピューティング装置は、少なくとも前記第1のOBPおよび前記第2のOBP間の組み合わせに基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを計算および決定するように適合される、OBP測定および監視方法。
【請求項28】
眼の温度を測定するステップと、前記OBP測定の微調整を実行するために前記温度を使用するステップと、を含む、請求項27に記載のOBP測定および監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の眼の生体力学的特性(OBP)を測定および監視するための装置、キット、システムおよび方法に関する。本発明は、特に、例えば8時間、12時間、24時間またはそれ以上の長時間にわたって複数の眼の生体力学的特性を監視するためにユーザの眼に配置することができる装置に関する。
【背景技術】
【0002】
緑内障は、眼内圧(IOP)上昇を特徴とする広範な疾患である。このIOP上昇は、周辺視野の漸進的な喪失をもたらす。したがって、信頼性の高い診断を提供するために、または新しい治療法を設定するために、緑内障患者のIOPならびに他の関連する眼の生体力学的特性(OBP)の詳細な知識を有する必要がある。
【0003】
緑内障患者のIOPを測定するためのいくつかの解決策が提供されている。いくつかの解決策は、眼内圧を直接検出するために剛性コンタクトレンズを必要とする直接圧力センサを使用し、いくつかの他の解決策は、ソフトコンタクトレンズを必要とする異なるタイプの歪みゲージを使用することによって眼の寸法変化などの異なるパラメータを測定する。これらの解決策の各々は、それらが単一のパラメータを測定するという事実に限定されている。したがって、いくつかのパラメータが必要とされる場合、いくつかの測定セッションが必要とされる。測定が好ましくは少なくとも24時間続くことを考えると、これは患者にとって非常に不快であり得る。
【0004】
例えば、本発明者らは、IOPおよび温度または/およびさらに任意選択で眼の寸法変化などであるがこれらに限定されない異なるOBP間の関係が、新しいバイオマーカの算出を可能にすることを見出した。さらに、IOPが唯一の修正可能なリスク因子であるにもかかわらず、最近の刊行物では、疾患の病因に関連する有益な情報として、別のOBPの有益な役割、眼容積変化(OVC)が強調されている。そのようなOBPは、対応する時間枠内の圧力入力に対する眼の容積応答の結果として新しいバイオマーカを定義する。連続的に監視している圧力の変化および対応する容積の変化を同時に検出することができる装置がないため、IOPおよびOVCはこれまで別々に検討されてきた。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、本発明の主な目的は、測定条件が測定ごとに変化し得るために、本発明者らは2つのOBPを同時にまたは連続的に測定および監視するための新しい装置を探求してきたため、IOP、温度、および任意選択による眼の寸法変化に同時に向けることなどだがこれらに明確に限定されない、2つの異なるOBPを測定することができる装置および方法を提供することである。
【0006】
本出願では、同時にという用語は、記録装置への各信号の正確な到着時間に関係なく、測定されたOBPが同じ時間間隔の間に測定されることを意味する。2つの信号間にわずかな時間位相があっても(数秒以下)、同時とは、OBPが単一の測定期間中に測定されることを意味する。他方で、連続的という用語は、第1のOBPを単独で測定し、次いで、測定および監視装置を交換せずに、第1の測定が完了した後に第2のOBPを測定することを意味する。
【0007】
本発明では、眼の生体力学的特性(OBP)は、眼内圧(IOP)、眼内容積(IOV)、角膜剛性、角膜厚、強膜剛性、眼の幾何学的寸法および/または温度などのパラメータ/特性、より一般的には、特定の濃度のような非生体力学的なものも含めた任意の眼の特性に関する。
【0008】
特定のOBPである眼の柔軟性(OC)は、眼内圧上昇の場合に眼の容積を増加させる眼の能力を測定する。OCの値は、以下のように定義することができる。
【0009】
OC=∂IOV/∂IOP
【0010】
眼組織の粘弾性特性は、一定の眼内容積(IOV)において経時的に眼内圧(IOP)を低下させる傾向がある圧力緩和をもたらすので、これは一定の値ではなく、容積対圧力の関係の所与の時間における勾配である。
【0011】
これに関して、本発明の別の目的は、上記の問題を解決することであり、より具体的には、無線でのデータ送信を可能にしながら、IOPおよび眼の寸法変化を同時に長期間にわたって正確に測定する感圧装置を提供することである。
【0012】
しかし、本発明者らが直面している別の課題は、IOPおよびOVCを測定することができる装置を設計することが困難であることに関連しており、その理由は、これらの2つのOBPは、異なる方法で測定されており、そのような装置がハードコンタクトレンズ部分およびソフトコンタクトレンズ部分の両方を必要とするように異なる硬度環境を必要とするためである。
【0013】
したがって、本発明の別の目的は、それらの欠点なしにハードコンタクトレンズとソフトコンタクトレンズの両方の利点を提供する新しいコンタクトレンズ様OBP感受性装置を提供することである。
【0014】
本発明の別の目的は、IOPと眼の寸法変化との間の関係に基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを提供する新しいコンタクトレンズ様OBP感受性装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明により、上記問題が解決される。
【0016】
本発明の第1の態様は、内面および外面を有するコンタクトレンズと、検知ユニットとを備えるOBP測定および監視装置であって、前記検知ユニットは、前記コンタクトレンズがユーザによって装着されたときに眼の少なくとも第1のOBPおよび第2のOBPを検知するために前記ユーザの前記眼に当てられるように前記コンタクトレンズと一体化され、前記検知ユニットは、第1および第2のOBPを同時にまたは連続的に測定し、これらのOBPをCPUに送信するように適合され、それにより、前記測定を受信する前記CPUは、少なくともこれらの2つのOBPの間の組み合わせに基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを決定することができる、OBP測定および監視装置である。
【0017】
好ましくは、検知ユニットは、少なくとも2つの異なるOBPを測定することができる単一のセンサを備える。そのため、レンズの煩雑さが軽減される。
【0018】
あるいは、検知ユニットは、単一のOBPをそれぞれが測定することができる少なくとも2つの単一のセンサを備える。このようにして、測定を同時に行うことができる。
【0019】
好ましくは、少なくとも2つの単一のセンサはそれぞれ、互いに異なる単一のOBPを測定することができる。
【0020】
好ましい実施形態によれば、第1のOBPは眼内圧であり、第2のOBPは眼の温度である。このようにして、新たなバイオマーカとしてのより正確なIOPを測定することができる。
【0021】
あるいは、第1のOBPは眼内圧であり、第2のOBPは眼の寸法変化である。このようにして、新たなバイオマーカを測定することができる。
【0022】
有利には、検知ユニットは、円形または円弧形状を有するアクティブ歪みゲージとして眼の寸法変化センサを備え、前記ソフトコンタクトレンズの内側部分の周りの外側部分に位置する。したがって、歪ゲージは、ソフトコンタクトレンズの変形を容易に検知することができる。
【0023】
好ましくは、眼の寸法変化センサは、いくつかのアクティブ歪みゲージを備える。
【0024】
好ましい実施形態によれば、前記歪みゲージは、金属または合金などの抵抗材料で作られる。
【0025】
好ましくは、前記歪みゲージは、連続した長手方向要素である。
【0026】
有利には、眼の寸法変化センサは、2つのアクティブゲージおよび2つのパッシブゲージが交互にブリッジに配置されるなどの、ホイートストンブリッジ構成の4つのゲージを備える。これにより、温度偏差を補償し、感度を2倍にすることができる。
【0027】
好ましい実施形態によれば、検知ユニットは、直接圧力センサを備える。
【0028】
好ましくは、コンタクトレンズは、内側部分と外側部分とを備えるソフトコンタクトレンズであり、前記内側部分は前記外側部分よりも剛性である。このように、眼と接触する表面はソフトコンタクトレンズであり、圧力センサとより剛性の高い部分の両方がそのコンタクトレンズ内に封入される。
【0029】
好ましい実施形態によれば、直接圧力センサは、前記内側部分に配置される。したがって、異なる剛性の材料を使用するこの提案された複合構造の結果として、圧力センサはIOPを正確に測定することができる。
【0030】
有利には、内側部分は、前記コンタクトレンズが前記ユーザによって装着されたときに直接圧力センサの周りで圧力平衡に達するように、直接圧力センサと接触している眼表面の少なくとも一部を平坦化するように適合された曲率半径で前記剛性化された内面を維持するように、前記コンタクトレンズの内面の中央部分を少なくとも部分的に剛性化するように適合される。
【0031】
有利には、内側部分は、メニスカスレンズと同様の一般的な形状を有する。このように、内側部分は、コンタクトレンズと同様の一般的な形状を有し、眼の一般的な形状によりぴったりと適合する。
【0032】
好ましくは、内側部分は、外側部分と比較して寸法が小さく、コンタクトレンズの中心にある。したがって、直接圧力センサは、コンタクトレンズの中央部がより厚くなるため、より容易にコンタクトレンズの内部に配置することができる。
【0033】
好ましい実施形態によれば、内側部分は、剛性インサートを備える。
【0034】
好ましくは、剛性インサートは、複数の貫通孔を備える。このようにして、これにより、剛性インサートを介した眼の低酸素を防止し、剛性インサートをコンタクトレンズ内に固定することも可能にする。
【0035】
有利には、剛性インサートは、ポリマー、バイオポリマー、セラミック、ガラス、金属およびRGPの群において選択される材料で作られる。
【0036】
好ましくは、前記コンタクトレンズの外側部分は、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲルおよびシリコーンの群において選択される材料で作られる。
【0037】
有利には、前記コンタクトレンズの内側部分および外側部分のいずれか一方は、調整可能な硬度または硬度勾配を有する材料で作られる。
【0038】
好ましくは、圧力センサは、ユーザがコンタクトレンズを装着しているときにユーザの眼と直接接触する。このようにして、感度を向上させるために、圧力センサと測定インターフェースとの間に良好な接触が確立される。
【0039】
あるいは、圧力センサは、ユーザがコンタクトレンズを装着しているときにユーザの眼と間接的に接触している。したがって、圧力センサは、快適性を向上させるために眼表面への直接接触から保護される。
【0040】
好ましい実施形態によれば、圧力センサは、剛性インサートの内側凹面に形成されたキャビティ内に配置され、キャビティは、圧力伝達充填材料で充填され、この圧力伝達充填材料は、ユーザがコンタクトレンズを装着しているときに充填材料の層が圧力センサとコンタクトレンズの内面との間に配置されるように圧力センサを覆う。このようにして、圧力センサは、剛性インサートと直接接触していない。
【0041】
好ましくは、充填材は、内側部分よりも柔らかい材料である。したがって、圧力センサの完全な機械的絶縁を可能にする。
【0042】
あるいは、充填材料は、外側部分の材料よりも柔らかい。このようにして、コンタクトレンズの柔らかい材料によって伝達される半径方向力は、圧力センサに対する影響または減衰がないものである。
【0043】
あるいは、充填材は、外側部分の材料と同じ材料である。このようにして、装置は、より容易に製造される。
【0044】
好ましくは、キャビティは、内側部分の中心に形成される。したがって、これは、コンタクトレンズのより厚い部分に設けられる。
【0045】
有利には、キャビティの下のコンタクトレンズの内面は、内側部分の下の内面の残りの部分よりも柔らかい表面を有する。このように、IOPは、低減衰で伝達される。
【0046】
あるいは、キャビティの下のコンタクトレンズの内面は、内側部分の下の内面の残りの部分と同様の表面柔らかさを有する。したがって、圧力センサと眼との間の材料の不連続性なしに剛性インサートからの機械的絶縁を達成する。
【0047】
好ましい実施形態によれば、コンタクトレンズは、テレメトリ給電およびデータ転送のためのアンテナおよびマイクロプロセッサをさらに備える。このようにして、これは、データの無線転送を可能にする。
【0048】
好ましくは、検知ユニットは、同じOBPを測定するように適合された複数のOBPセンサを備える。このように、結果を集計することで、測定の精度を向上させることができる。
【0049】
さらに、本発明のOBP測定および監視装置は、異なる眼の形状およびサイズに容易に適合するようにそれらの外形のみが異なるいくつかのサイズを利用可能にすることによって多数の患者に適合させることができるので、ユーザごとにカスタマイズされる必要はない。OBP測定および監視装置は、ユーザに不快感を与えることなく長期間にわたって装着することもできる。
【0050】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のOBP測定および監視装置と、OBP測定および監視装置と通信し、OBP測定および監視装置から受信したデータを記憶するように構成された可搬型記録装置とを備えるキットに関する。本発明のこのキットの特定の利点は、本発明の第1の態様の装置のものと同様であるため、ここでは繰り返さない。
【0051】
好ましくは、可搬型記録装置は、無線誘導通信チャネルを介してOBP測定および監視装置に給電するように構成される。したがって、これにより、眼内での侵襲的配線の使用が防止される。
【0052】
あるいは、OBP測定および監視装置は、その中に埋め込まれた小型化された電源を備える。
【0053】
さらに好ましくは、コンタクトレンズは、その中に埋め込まれたデータ記憶装置をさらに備える。
【0054】
本発明の第3の態様は、OBP監視システムであって、本発明の第1の態様のOBP測定および監視装置と、OBP測定および監視装置と通信し、OBP測定および監視装置から受信したデータを記憶するように構成された可搬型記録装置と、可搬型記録装置から受信したデータを受信および/または処理および/または記憶するために、可搬型記録装置と通信するように構成されたコンピューティング装置とを備える、OBP監視システムに関する。本発明のこのシステムの特定の利点は、本発明の第1の態様の装置のものと同様であるため、ここでは繰り返さない。
【0055】
好ましくは、OBP監視システムは、本発明の第1の態様の、1つは左眼用、1つは右眼用である2つのOBP測定および監視装置を備え、可搬型記録装置は、2つのOBP測定および監視装置と通信し、2つのOBP測定および監視装置から受信したデータを記憶するように構成される。
【0056】
本発明の第4の態様は、OBP測定および監視方法であって、本発明の第2の態様のキットを患者に配置するステップと、2つのOBPの同時測定を開始するステップと、OBP信号を可搬型記録装置に記録するステップと、記録されたOBPデータを、可搬型記録装置から受信したデータを受信および/または処理および/または記憶するために可搬型記録装置と通信するように構成されたコンピューティング装置に送信するステップとを含み、コンピューティング装置は、少なくともこれらの2つのOBP間の関係に基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを計算および決定するように適合される、方法に関する。
【0057】
好ましくは、OBP測定および監視方法は、眼の温度を測定するステップと、OBP測定の微調整を実行するために温度を使用するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0058】
本発明のさらなる特定の利点および特徴は、添付の図面を参照する本発明の少なくとも1つの実施形態の以下の非限定的な説明からより明らかになるであろう。
図1】本発明の第1の実施形態によるOBP測定および監視装置を示す図である。
図2】本発明の第2の実施形態によるOBP測定および監視装置を示す図である。
図3】本発明の第3の実施形態によるOBP測定および監視装置を概略的に示す図である。
図4】本発明によるOBP測定および監視装置を備えるOBP測定および監視システムを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0059】
本発明の詳細な説明は、一実施形態の任意の特徴を別の実施形態の任意の他の特徴と有利な方法で組み合わせることができるため、本発明を非限定的な方法で説明することを意図している。
【0060】
図1は、OBP測定および監視装置11をより詳細に示す。本発明の第1の実施形態によれば、この装置は、内面および外面を有するコンタクトレンズ1と、前記コンタクトレンズ1がユーザによって装着されたときに眼の少なくとも第1のOBPおよび第2のOBPを検知するために前記ユーザの前記眼に当てられるように前記コンタクトレンズ1と一体化される検知ユニットとを備え、前記検知ユニットは、第1および第2のOBPを同時にまたは連続的に測定し、これらのOBPをCPUに送信するように適合され、それにより、前記測定を受信する前記CPUは、少なくともこれらの2つのOBPの間の組み合わせに基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを決定することができる。
【0061】
第1の実施形態では、検知ユニットは、単一のOBPをそれぞれが測定することができる2つの単一のセンサ2および3を備える。このようにして、測定を同時に行うことができる。この好ましい実施形態によれば、第1のOBPは、直接圧力センサ2によって検知される眼内圧であり、第2のOBPは、温度センサ3によって検知される眼の温度である。このようにして、新たなバイオマーカとしてのより正確なIOPを測定することができる。
【0062】
このセンサのおかげで、IOPと同時に眼の温度を測定することができる。これにより、必要に応じて、眼の温度の知識を得ることが可能になり、これは、圧力測定に対するその影響を補正し、測定されたIOPの微調整のためのツールを提供するのに役立ち得る。さらに、このセンサは、眼の温度を測定し、これを新しいバイオマーカとして観察することを可能にする。OBP測定および監視装置内に温度検知素子を設けることで、コンタクトレンズ1内の温度補正手段の回避を可能にすることができ、またはさらに好ましくは、両方の補正を使用するために温度補正手段の追加の使用を可能にすることが留意される必要がある。
【0063】
したがって、装置11は、コンタクトレンズ1と一体化され、コンタクトレンズ1がユーザによって装着されたときに眼の眼内圧(IOP)を検知するためにユーザの眼に当てられるように配置された直接圧力センサ2と、眼温センサ3とを備える。
【0064】
コンタクトレンズ1は、好ましくは、眼球表面への接着性が高いことが知られている不透過性および/またはシリコーン系材料から作られる。これは、好ましくは、外側軟質部分と内側硬質部分とを備える。好ましくは、必須ではないが、剛性インサートによって剛性化されたレンズ部分である剛性部分は、コンタクトレンズ1の内面を少なくとも部分的に剛性化し、剛性化された内面に、コンタクトレンズ1がユーザによって装着されたときに圧力センサの周りで圧力平衡に達するように、圧力センサ2と接触している眼表面の少なくとも一部を平坦化するように適合された曲率半径を提供するように適合される。
【0065】
圧力センサ2は、例えば、セラミック、ガラスまたはシリコンキャリア上にピエゾ抵抗シリコン微細加工圧力センサを備える小型圧力センサである。圧力センサ2は、絶対圧力センサまたは相対圧力センサのいずれかである。
【0066】
本発明のOBP測定および監視装置11において相対圧力センサ2を使用する利点は、ダイヤフラムの裏側の周囲の圧力が周囲圧力または大気圧に対応する場合、圧力センサによって測定される圧力が本質的に眼内圧(IOP)に対応し、例えば高度および/または気象条件の変化に起因する周囲圧力または大気圧の影響がないことである。
【0067】
他方で、絶対圧センサ2を使用する利点は、製造のためにコンタクトレンズ1に埋め込むことがはるかに容易であることである。
【0068】
図2は、検知される第2のOBPが温度ではなく、眼の寸法変化である本発明の第2の実施形態を示す。
【0069】
本実施形態では、本発明のOBP測定および監視装置11のソフトコンタクトレンズ1は、内側部分に配置されたレンズ中心の周りの外側軟質部分に配置された円形のアクティブ歪みゲージであり得る眼の寸法変化センサ4を含む。好ましくは、アクティブ歪みゲージ4は、少なくとも1つの連続した長手方向要素、好ましくはワイヤから作られ、このワイヤは、その部分のいくつかが同心になるように折り畳まれる。
【0070】
直接圧力センサ2を介したIOPと、アクティブ歪みゲージ4を介した眼の寸法変化との同時測定により、これらの2つのOBPの組み合わせを通して、少なくとも1/3データを計算することが可能になり、このデータは、新しいバイオマーカ、すなわち眼の容積および/または形状、すなわち眼の寸法が圧力変化にどのように対処するか、そしてその逆の形でどのように対処するかを表す眼の柔軟性(OC)を与えることができる。
【0071】
さらに、この同時測定は、1つは直接圧力センサ2を用いて、1つはアクティブ歪みゲージ4を用いて、2つではなく単一の測定セッションで2つのOBPを収集することを可能にする。
【0072】
実際、眼内圧(IOP)の変動は、ユーザの眼球の変形を引き起こす。典型的には、IOPが上昇すると眼球が拡張し、IOPが低下すると眼球が収縮する。本発明の装置11がユーザによって装着されると、ユーザの眼球の変形は、眼球に密接しているコンタクトレンズ1の周辺軟質部分の変形を誘発し、コンタクトレンズ1の変形の振幅は、外側部分の周囲の方が内側部分よりも大きい。
【0073】
アクティブ歪みゲージ4は、変形を受けるように、ソフトコンタクトレンズ1の外周部分に構成され、配置される。したがって、アクティブ歪みゲージ4の一部は、コンタクトレンズ1の中心Cの周りの外側軟質部分上に配置され、少なくとも部分的に中心Cを取り囲む。したがって、アクティブ歪みゲージ4は、好ましくはコンタクトレンズ1の中心Cを中心とする円弧を描く、または覆う。
【0074】
しかし、この歪みゲージ部分4の構成は、例えば、アクティブ歪みゲージの求められる電気的特性、その製造に使用される方法、コンタクトレンズ1上で利用可能な場所などに応じて、本発明の枠内で変化し得る。中心Cの周りに配置されるアクティブ歪みゲージ4の部分は、例えば、1つもしくは複数の同心円弧を形成する1つもしくは複数の湾曲もしくは円形セグメント、または例えば多角形、メッシュ、もしくは任意の他の適合形状の1つもしくは複数の部分を形成する1つもしくは複数の直線セグメントで作られる。上記の形状の1つまたは複数の組み合わせも、本発明の枠内で可能である。
【0075】
中心Cの周りに配置されるアクティブ歪みゲージ4の部分は、その構成とは関係なく、好ましくは、前記中心Cの周りの少なくとも180度の弧をカバーしており、したがって、眼の寸法変化に起因するコンタクトレンズの変形の十分かつ信頼性のある検知を提供するために、それによって眼の寸法変化の信頼性のある測定を提供するために、少なくとも180°、すなわちその周囲の少なくとも半分で中心Cを取り囲む。
【0076】
さらにより好ましくは、中心Cの周りに配置されたアクティブ歪みゲージ4の部分の長さを最大にし、それによってアクティブ歪みゲージ4の感度を最大にするために、中心Cの周りに配置されたアクティブ歪みゲージ4の部分は、中心Cの周りの円全体を可能な限り多く覆う。
【0077】
好ましい実施形態では、アクティブ歪みゲージ4は、コンタクトレンズ1の周囲に配置された比較的薄く本質的に円形の導電体である。アクティブ歪みゲージ4の両端は、マイクロプロセッサ6と電気的に接触している。コンタクトレンズ1の中心Cの周りに配置されるアクティブ歪みゲージ4の部分の断面は、眼の寸法変化の影響を受けたときにアクティブ歪みゲージ4が変形可能であるのに十分小さいように選択される。アクティブ歪みゲージ4は、好ましくは、薄い金属箔のエッチング、エンボス加工および/または切断によって作られる。変形実施形態では、アクティブ歪みゲージ4は、薄い金属ワイヤで作られる。さらに変形実施形態では、アクティブ歪みゲージ4は、好ましくは可撓性で透明な基板上、例えばポリイミドフィルム上に、金属および/または任意の他の導電性材料を堆積することによって作られる。
【0078】
本発明によれば、上記で説明したように、アクティブ歪みゲージ4がコンタクトレンズ1に一体化されているとき、コンタクトレンズ1の変形は、アクティブ歪みゲージ4の変形を誘発し、それによってその物理的特性、特にその電気的特性を変更する。例えば、IOPが上昇して眼球が膨張するか、または形状が変化する場合、コンタクトレンズ1は、その周囲において延ばされ、アクティブ歪みゲージ4は、伸張される。これにより、コンタクトレンズ1の中心Cの周りに配置されたアクティブ歪みゲージ4の部分の断面が減少し、したがってその電気抵抗が増大する。したがって、アクティブ歪みゲージ4の電気抵抗の変動を測定することにより、眼の寸法変化を検出および測定することが可能である。
【0079】
しかし、眼球の変形、したがってコンタクトレンズ1の変形以外の要因が、アクティブ歪みゲージ4の電気抵抗、特に温度、湿度、周囲圧力などの環境パラメータに影響を及ぼす場合がある。
【0080】
したがって、眼の寸法変化を検出するための歪みゲージ配置システムは、好ましくは、例えば2つのアクティブゲージおよび2つのパッシブゲージが交互にブリッジに配置される、ホイートストンブリッジ構成の4つのゲージを備える。
【0081】
図2に示すように、外側軟質部分は、好ましくは略メニスカスまたは凹凸レンズ形状を有する内側剛性部分を少なくとも部分的に取り囲む。
【0082】
ここで、剛性部分という用語は、コンタクトレンズ1の一部を剛性化するためにコンタクトレンズ1内に埋め込まれた可能な剛性インサートを示すが、それと共に好ましくはコンタクトレンズ1の中心にある、インサートまたは剛性化部分によって実際に剛性化されたコンタクトレンズ1の可能な剛性化部分も指すことができることを理解されたい。
【0083】
軟質部分の好ましい材料は、ヒドロゲル、シリコーンヒドロゲルおよびシリコーンなどの任意の好ましくは軟質材料、またはコンタクトレンズに適した任意の他の軟質材料を含む群において選択される任意の1つである。結果として、PMMAなどの剛性または半剛性レンズに適合された材料は、回避されなければならない。
【0084】
他方で、剛性部分の好ましい材料は、角膜に形状を課すのに十分な剛性を有する、ポリマー、セラミック、バイオポリマー、ガラス、RGPなどの任意の好ましくは材料、または金属などの材料を含む群において選択される任意の1つである。この材料は、組み立てられる前に成形することができ(剛性インサート)、または組み立てプロセス中に成形することができる。
【0085】
あるいは、前記コンタクトレンズの軟質部分および剛性部分のいずれか1つは、調整可能な硬度または硬度勾配を有する材料で作られる。そのような材料の例は、エラストマー複合材の剛性を可逆的に調整するために、相変化金属合金または形状記憶ポリマーに埋め込まれたエラストマー複合材を含むことができる。
【0086】
別の例は、調整可能な硬度を有するシリコーンエラストマーを含む。本明細書では、シリコーン材料の硬度を調整する能力は、配合物の化学的性質、ネットワーク形成および架橋密度に対する慎重な制御によって行われる。
【0087】
圧力センサ2は、ユーザがコンタクトレンズ1を装着しているときにユーザの眼、そのような場合にはコンタクトレンズ1の内面と直接接触することができる。
【0088】
しかし、圧力センサ2は剛性部分の内側凹面に形成されたキャビティ内に配置することができ、キャビティは、ユーザがコンタクトレンズ1を装着しているときに圧力センサ2と眼の表面との間に充填材料の層が配置されるように圧力センサ2を覆う圧力透明充填材料で充填されるため、必ずしもそうでなくてよい。この場合、ユーザがコンタクトレンズ1を装着しているとき、圧力センサ2は、ユーザの眼に間接的に接触している。充填材料は、剛性部分よりも軟質であり、また軟質部分の材料よりも軟質の材料とすることができる。この場合、キャビティの下のコンタクトレンズ1の内面は、剛性部分の下の内面の残りの部分よりも柔らかい表面を有する。あるいは、充填材料は、軟質部分の材料と同じ柔らかさのものとすることができ、軟質部分の材料と同じ材料とすることもできる。
【0089】
この図に示すように、コンタクトレンズ1は、コンタクトレンズ1と処理ユニットとの間のテレメトリ給電およびデータ転送のためのマイクロプロセッサ6およびアンテナ5をさらに備える。
【0090】
好ましくは、圧力センサ2は、コンタクトレンズ1の中心に配置される。この実施形態によれば、圧力センサ2は、例えば、コンタクトレンズ1の中心に形成された、例えば円形のキャビティ内に配置される。あるいは、キャビティは、コンタクトレンズ1の中心に対して非対称であり、例えば、円形で中心がずれたキャビティ、半環状溝、または任意の他の適合形状である。この場合、マイクロプロセッサ6は、例えばコンタクトレンズ1の内部に配置される。
【0091】
しかし、圧力センサ2および/またはOBP測定および監視装置11の他の要素をコンタクトレンズ1内に配置するための本発明の枠内に他のキャビティ形状および/または位置が可能である。ただし、アクティブ歪みゲージ4の機能を妨げないことを条件とする。
【0092】
ここには示されていないが、装置は、正確な測定のために複数の圧力センサ2を備えることができる。
【0093】
図3は、本発明の第3の実施形態を表し、ここでは、OBP測定および監視装置11は、内面および外面を有するコンタクトレンズ1と、前記コンタクトレンズ1がユーザによって装着されたときに眼の少なくとも第1のOBPおよび第2のOBPを検知するために前記ユーザの前記眼に当てられるように前記コンタクトレンズ1と一体化される検知ユニットとを備え、前記検知ユニットは、第1および第2のOBPを同時にまたは連続的に測定し、これらのOBPをCPUに送信するように適合され、それにより、前記測定を受信する前記CPUは、少なくともこれらの2つのOBPの間の組み合わせに基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを決定することができる。
【0094】
この装置は、第1の実施形態のものと同様であるが、2つの別個のセンサを有する代わりに、IOPおよび眼の温度の両方を測定することができる単一のセンサ2’によって検知ユニットが構成されるという点が異なる。
【0095】
図面には示されていないが、本発明はまた、IOPセンサおよび温度センサが組み合わされているか否かにかかわらず、装置がIOPセンサと、眼の寸法変化センサと、温度センサとを備える実施形態1および2または2および3の組み合わせを対象とする実施形態も対象とする。
【0096】
上記のすべての実施形態では、OBP測定および監視装置11、特にマイクロプロセッサ6および/または圧力センサ2は、好ましくは、アンテナを介して、例えば可搬型記録装置12によって無線誘導で給電される。変形実施形態では、OBP測定および監視装置11は、マイクロプロセッサ6および/または圧力センサ2に給電するために、電源、例えばバッテリもしくはマイクロ燃料電池、または赤外線もしくは太陽電池のような無線エネルギー源、または任意のエネルギーハーベスティングシステムを備える。
【0097】
本発明の別の態様は、上述のOBP測定および監視装置11と、OBP測定および監視装置11と通信し、OBP測定および監視装置11から受信したデータを記憶するように構成された可搬型記録装置12とを備えるキットである。好ましくは、可搬型記録装置12は、無線誘導通信チャネルを介してOBP測定および監視装置11に給電するように構成される。キットが2つ以上のOBP測定および監視装置11、例えば患者の左眼用の1つの装置および患者の右眼用の第2の装置を備える場合、可搬型記録装置12は、すべてのOBP測定および監視装置11と通信し、すべてのOBP測定および監視装置11から受信したデータを記憶するように構成される。
【0098】
本発明の別の態様は、OBP監視システムであって、上記で説明したOBP測定および監視装置11と、OBP測定および監視装置11と通信し、OBP測定および監視装置11から受信したデータを記憶するように構成された可搬型記録装置12と、可搬型記録装置12から受信したデータを受信および/または処理および/または記憶するために可搬型記録装置12と通信するように構成されたコンピューティング装置13とを備える、OBP監視システムである。
【0099】
図4は、本発明のOBP測定および監視装置11を使用する典型的なOBP測定および監視システム10の概略図である。図示する実施形態によれば、OBP測定および監視システム10は、本発明のOBP測定および監視装置11と、OBP測定および監視装置11と通信し、OBP監視期間中に収集された情報を記憶するための可搬型記録装置12と、可搬型記録装置12によって収集および記憶されたデータを記憶、分析、計算および/または表示するための、例えばパーソナルコンピュータなどのコンピューティング装置13とを備える。
【0100】
可搬型記録装置12は、OBP測定および監視装置11と通信するための第1の通信インターフェースを備える。第1の通信インターフェースは、例えば、本発明のOBP測定および監視装置11がユーザによって装着されるときに有利にはコンタクトレンズ1の近くに配置されるアンテナを備える無線通信インターフェースである。アンテナは、例えば、OBP監視期間中にユーザによって装着される、眼鏡および/または例えば使い捨ての可撓性かつ低アレルギー性のパッチ(これも図には示されていない)に組み込まれる。しかし、OBP測定および監視装置11がユーザによって装着されたときにアンテナをOBP測定および監視装置から適切な距離に配置するための他の手段も本発明の枠内で可能である。可搬型記録装置12は、コンピューティング装置13と通信するための第2の通信インターフェースをさらに備える。
【0101】
OBPを監視する場合、ユーザは、通常のコンタクトレンズと同様に、コンタクトレンズ1を眼に配置することによってOBP測定および監視装置11を装着し、可搬型記録装置12を携帯する。アンテナは、OBP測定および監視装置11と可搬型記録装置12との間の第1の無線通信、例えばRFIDなどの誘導通信チャネルの確立を可能にするために、OBP測定および監視装置11を装着したユーザの眼に可能な限り近接して配置される。好ましくは、アンテナは、例えば近距離誘導通信チャネルである通信チャネルを介したマイクロプロセッサ6および/または圧力センサ2の効率的な給電を可能にするために、本発明のOBP測定および監視装置11のアンテナ5の平面に可能な限り平行な平面内にさらに配向される。アンテナは、例えば、眼鏡内、および/または可搬型記録装置の実施形態に応じて記録装置付きまたは無しの眼を取り囲むパッチ内、例えば使い捨ての可撓性かつ低アレルギー性のパッチ、および/またはユーザが着用する帽子もしくは別の衣服もしくはアクセサリ内に一体化される。好ましくは、OBP測定および監視装置11と可搬型記録装置12の両方をユーザが装着している場合、アンテナは、OBP測定および監視装置11のアンテナ5と中心合わせされる。可搬型記録装置12のアンテナの直径は、好ましくは、OBP測定および監視装置11の直径よりも大きい。可搬型記録装置12のアンテナの形状は、例えば、円形、楕円形、長方形、または任意の他の適切な形状である。可搬型記録装置12のアンテナの形状は、好ましくは、それが取り付けられる装置、例えば眼鏡、パッチ、衣服などの形状に適合される。
【0102】
実施形態によれば、OBPを監視しながら、可搬型記録装置12は、例えば規則的に間隔を置いて第1の通信チャネルを介してOBP測定および監視装置11に給電し、OBP測定および監視装置11のアンテナ5を介してマイクロプロセッサ6によって送信されたデータを収集する。収集されたデータは、例えば、圧力センサ2から導出されたIOP値および/または温度センサ3から導出された眼の温度値および/またはOBP測定および監視装置11の眼の寸法変化センサ4の歪みゲージの電気信号を含む。収集されたデータは、可搬型記録装置12の内部メモリに記憶される。OBPは、例えば、1~10分ごとに10~60秒の間に10~100Hzの周波数で測定される。これにより、ユーザが眠っている夜間を含む長期間にわたるOBP変化の正確な監視が可能になる。しかし、これに限られるわけではなく、測定周波数は、例えば1日を通して1Hzの連続OBP測定など、異なることができる。
【0103】
例えば1日に1回、週に1回、または月に1回など、いくつかの好ましくは所定の瞬間に、ユーザおよび/または施術者は、第2の、好ましくは無線の通信チャネル、例えばBluetooth通信チャネルを介して、可搬型記録装置12をコンピューティング装置13、例えばパーソナルコンピュータに接続する。しかし、第2の通信チャネルは、有線通信チャネル、例えばUSBまたは任意の他の適切な通信チャネルとすることもできる。次いで、収集されて可搬型記録装置12の内部メモリに記憶されたデータは、ユーザおよび/または施術者によるさらなる分析および/または計算のために、第2の通信チャネルを介してコンピューティング装置13に転送される。
【0104】
さらなる実施形態によれば、本発明は、OBP測定および監視方法であって、本発明のキットを患者に配置するステップと、OBPの測定を開始するステップと、OBP信号を可搬型記録装置12に記録するステップと、記録されたOBPデータを、可搬型記録装置12から受信したデータを受信および/または処理および/または記憶するために可搬型記録装置12と通信するように構成されたコンピューティング装置13に送信するステップとを含み、コンピューティング装置13は、少なくとも2つのOBPの組み合わせに基づいて少なくとも1つの新しいバイオマーカを計算および決定するように適合される、方法に関する。
【0105】
好ましくは、OBP測定および監視方法は、眼の温度を測定するステップと、OBP測定の微調整を実行するために温度を使用するステップとを含む。
【0106】
変形実施形態では、OBP測定および監視システム10は、例えば長期間にわたって患者の両眼を同時に監視することを可能にするために、2つのOBP測定および監視装置11を備える。好ましくは、OBP測定および監視装置11の両方は、同時におよび/または交互に、例えば2つのアンテナに接続され、および/またはそのアンテナを含む同じ可搬型記録装置12と通信する。したがって、可搬型記録装置12は、好ましくは、OBP測定および監視装置11の両方から受信したデータを記憶または記録する。
【0107】
実施形態をいくつかの実施形態と併せて説明してきたが、多くの代替形態、修正形態および変形形態が、適用可能な技術分野の当業者には明らかであると考えられるか、または明らかであることは明白である。したがって、本開示は、本開示の範囲内にあるすべてのそのような代替形態、修正形態、均等物および変形形態を包含することを意図している。これは、例えば、特に、使用可能な異なる装置に関する場合である。
図1
図2
図3
図4