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特許7530429分岐状ファーサイドエアバッグアセンブリ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】分岐状ファーサイドエアバッグアセンブリ
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/207 20060101AFI20240731BHJP
   B60R 21/233 20060101ALI20240731BHJP
   B60R 21/2338 20110101ALI20240731BHJP
【FI】
B60R21/207
B60R21/233
B60R21/2338
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2022541603
(86)(22)【出願日】2021-01-08
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-03-15
(86)【国際出願番号】 US2021012832
(87)【国際公開番号】W WO2021146121
(87)【国際公開日】2021-07-22
【審査請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】16/742,680
(32)【優先日】2020-01-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】598122843
【氏名又は名称】オートリブ エー・エス・ピー・インク
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】パーカー、ドン ラリー
(72)【発明者】
【氏名】ホリデー、アンドリュー ローレンス
(72)【発明者】
【氏名】ウィスコム、ディレク ジョン
(72)【発明者】
【氏名】スミス、アダム
【審査官】田邉 学
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第102010027401(DE,A1)
【文献】特表2002-511358(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102018202417(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/207
B60R 21/233
B60R 21/2338
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート(20)のインボード部分に取り付けられたハウジング(102)と、
前記ハウジング(102)内に少なくとも部分的に配置されたインフレータアセンブリ(104)と、
前記ハウジング(102)内にパッケージ化された状態にあるエアバッグであって、膨張ガスを受容して膨張し、前記ハウジングから展開状態へと展開する、エアバッグと、を備えるエアバッグアセンブリ(100)であって、
前記展開状態にある前記エアバッグが、
車両(10)の長手方向に延びた第1の膨張可能チャンバ(110)と、
上方から見たときに、前記第1の膨張可能チャンバ(110)に対して第1の角度(θ)で離れる方向に展開する第2の膨張可能チャンバ(120)と、
上方から見たときに、前記第1の膨張可能チャンバ(110)に対して第2の角度(θ)で離れる方向に展開する第3の膨張可能チャンバ(130)と、を含み、
前記第1の角度(θ)が、前記第2の角度(θ)とは異なり、
前記第2の膨張可能チャンバ(120)が、前記シート(20)に横方向に隣接する第2のシート(30)の第2のシートバック(36)の前に配置され、
前記第3の膨張可能チャンバ(130)が、前記シート(20)に横方向に隣接する前記第2のシートバック(36)の後方に配置される、エアバッグアセンブリ(100)。
【請求項2】
前記第2の膨張可能チャンバ(120)と前記第3の膨張可能チャンバ(130)が、分岐状構成を形成する、請求項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項3】
シート(20)のインボード部分に取り付けられたハウジング(102)と、
前記ハウジング(102)内に少なくとも部分的に配置されたインフレータアセンブリ(104)と、
前記ハウジング(102)内にパッケージ化された状態にあるエアバッグであって、膨張ガスを受容して膨張し、前記ハウジングから展開状態へと展開する、エアバッグと、を備えるエアバッグアセンブリ(100)であって、
前記展開状態にある前記エアバッグが、
車両(10)の長手方向に延びた第1の膨張可能チャンバ(110)と、
上方から見たときに、前記第1の膨張可能チャンバ(110)に対して第1の角度(θ )で離れる方向に展開する第2の膨張可能チャンバ(120)と、
上方から見たときに、前記第1の膨張可能チャンバ(110)に対して第2の角度(θ )で離れる方向に展開する第3の膨張可能チャンバ(130)と、を含み、
前記第1の角度(θ )が、前記第2の角度(θ )とは異なり、
テザー(140)を更に備え、前記テザー(140)の第1の端(142)が、前記第2の膨張可能チャンバ(120)に結合され、前記テザー(140)の第2の端(144)が、前記第3の膨張可能チャンバ(130)に結合される、エアバッグアセンブリ(100)。
【請求項4】
前記テザー(140)が、前記シート(20)に横方向に隣接する第2のシート(30)の第2のシートバック(36)と係合し、前記テザー(140)が前記第2のシートバック(36)に前記係合することによって、前記第2の膨張可能チャンバ(120)と前記第3の膨張可能チャンバ(130)が互いに引き合う、請求項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項5】
前記テザー(140)が、前記第2のシートバック(36)と前記係合することによって、前記第2の膨張可能チャンバ(120)を前記第2のシートバック(36)の前面と係合させ、前記第3の膨張可能チャンバ(130)を前記第2のシートバック(36)の裏面と係合させる、請求項記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項6】
前記テザー(140)が、前記シート(20)に横方向に隣接する第2のシート(30)の第2のシートバック(36)と係合し、前記テザー(140)が前記第2のシートバック(36)と係合することによって、前記第2の膨張可能チャンバ(120)と前記第3の膨張可能チャンバ(130)とに前記第2のシートバック(36)を挟ませる、請求項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項7】
前記第2のシート(30)が、前記シート(20)と横方向に並んでいないときに、前記第2の膨張可能チャンバ(120)と前記第3の膨張可能チャンバ(130)とが、前記第2のシートバック(36)を挟む、請求項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項8】
前記第2のシート(30)が、前記シート(20)のシートバック(26)よりも前方に配置されたときに、前記第2の膨張可能チャンバ(120)と前記第3の膨張可能チャンバ(130)とが、前記第2のシートバック(36)を挟む、請求項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項9】
前記第2のシート(30)が、前記シート(20)のシートバック(26)よりも後方に配置されたときに、前記第2の膨張可能チャンバ(120)と前記第3の膨張可能チャンバ(130)とが、前記第2のシートバック(36)を挟む、請求項6に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項10】
前記第2の膨張可能チャンバ(120)を前記第3の膨張可能チャンバ(130)に結合する複数のテザー(140)を更に備える、請求項1~のいずれか一項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項11】
前記シート(20)が、運転席である、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項12】
前記シート(30)が、助手席である、請求項1~10のいずれか一項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【請求項13】
前記第1の膨張可能チャンバ(110)が、前記シート(20)のシート底部(24)から前記シート(20)のシートバック(26)の頂部まで垂直に延びる、請求項1~12のいずれか一項に記載のエアバッグアセンブリ(100)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、概して、自動車保護システムの分野に関する。より具体的には、本開示は、前面、斜め、及び側面衝突事象に応じて展開するように構成されたファーサイドエアバッグアセンブリ及びシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
膨張可能なエアバッグは、車両内に取り付けられ、衝突事象中に展開し得る。展開されたエアバッグは、乗員に対する衝撃を和らげ、他の車両構造及び他の乗員との損傷を及ぼす衝突を防止することができる。いくつかのエアバッグは、1つ以上の欠点を有する、又は1つ以上の点で最適には機能し得ない。本明細書に開示される特定の実施形態は、これらの問題のうちの1つ以上に対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【0003】
本実施形態は、添付の図面と併せて、以下の説明及び添付の特許請求の範囲からより完全に明らかになる。添付の図面は、典型的な実施形態のみを示し、したがって、本開示の範囲を限定すると考えられるべきでないことを考慮して、実施形態について、添付の図面を参照して、具体的かつ詳細に記載及び説明する。
図1】本開示の一実施形態による、展開されていない構成で描かれた膨張可能なエアバッグシステムを有する車両の内部の正面切断図である。
図2】展開された構成にある図1の膨張可能なエアバッグシステムの正面図である。
図3】展開された構成にある図1の膨張可能なエアバッグアセンブリの背面図である。
図4】本開示の一実施形態による、運転席と助手席とが横方向に並んだ状態で、展開された構成にある、膨張可能なエアバッグシステムの上面図である。
図5】本開示の一実施形態による、運転席が横方向において助手席の前に配置された状態で、展開された構成にある、膨張可能なエアバッグシステムの上面図である。
図6】本開示の一実施形態による、運転席が横方向において助手席の後ろに配置された状態で、展開された構成にある、膨張可能なエアバッグシステムの上面図である。
【発明を実施するための形態】
【0004】
本明細書に概して記載及び図示されている実施形態の構成要素は、多種多様な異なる構成において配置及び設計され得ることが容易に理解されよう。よって、図示されている様々な実施形態の以下のより詳細な説明は、特許請求されている本開示の範囲を限定することは意図されておらず、単に様々な実施形態を示す。実施形態の様々な態様が図面に示されているが、図面は、具体的に示されない限り、必ずしも縮尺とおりに示されていない。
【0005】
膨張可能なエアバッグシステムは、衝突事象中に乗員の損傷を低減又は最小限にとどめるために広く使用されている。エアバッグモジュールは、車両内の様々な場所に設置されており、これらの場所としては、ステアリングホイール内、ダッシュボード及び/又はインストルメントパネル内、サイドドア又はサイドシート内、車両のルーフレールに隣接して、頭上位置、又は膝若しくは脚位置が挙げられるが、これらに限定されない。以下の開示において、「エアバッグ」は、一般に、例えば、車両のシートに典型的に収容されるエアバッグなどの膨張可能なサイドエアバッグを指すが、論じられた原理は、他のタイプのエアバッグ(例えば、ステアリングホイール内又は他の運転者近くに収容される運転者エアバッグ、ドア、ルーフ又はピラー内に収容されるサイドエアバッグ、ニーエアバッグ、及び助手席エアバッグ)に適用され得る。
【0006】
設置時には、開示されたエアバッグは、典型的には、パッケージ化された状態で(例えば、巻かれた状態で、折り畳まれた状態で、及び/又は、別様に圧縮された状態で)、すなわち、コンパクトな構成で、ハウジングの内部に配置され、カバーの背後にパッケージ化された状態で保持され得る。衝突事象中に、インフレータがトリガされ、これにより、エアバッグが膨張ガスで急速に充填される。エアバッグは、コンパクトな構成のパッケージ化された状態から、展開された構成の膨張状態へ急速に移行することができる。例えば、膨張するエアバッグは、エアバッグカバーを開放することにより(例えば、破裂シームを引き裂くことにより、あるいは、ドア状構造体を開放することにより)、ハウジングから飛び出すことができる。インフレータは、任意の好適なデバイス又はシステムによってトリガされてもよく、トリガは、1つ以上の車両センサへの応答であってもよく、及び/又は1つ以上の車両センサによって影響されてもよい。
【0007】
側部衝撃中に、乗員が別の隣接する乗員に向かって、主に横方向に移動することがあり得る。例えば、車両前列の同乗者は、車両前列の車両の運転者に向かって横方向に移動し得る。あるいは、車両前列の運転者は、車両前列の同乗者に向かって横方向に移動し得る。同じ列の隣接する乗員が互いに接触する場合、重傷又は死亡に至り得る。ファーサイドエアバッグ、又はフロントセンターエアバッグが、乗員と乗員との相互作用を防止するために開発されてきたが、現在のバージョンは、乗員(複数可)の急激な移動によって理想的な位置から容易に外れる場合がある。本明細書に開示されるエアバッグアセンブリの特定の実施形態は、前席の同乗者に対する衝撃を和らげるために特に好適であり、車両のシートに取り付けられ得る。
【0008】
ファーサイドエアバッグ及びフロントセンターエアバッグは現在、車両に使用されている。ほとんどの単一面による手段は、乗員と接触したときに所定位置から外れる場合がある。いくつかの単一面による手段は、シートが並んでいる場合の反対側シートとの相互作用に大きく依存しているが、助手席が運転席の横方向前方又は後方にあるときなど、シートが並んでいないときを考慮に入れていない。他のバージョンは、2つのエアバッグを使用し、運転席と助手席のそれぞれから1つのエアバッグが展開するため効果的であるが、費用、ばらつき及び複雑さが増大する。
【0009】
本開示の分岐状ファーサイドエアバッグアセンブリの利点としては、2つのモジュールを使用する代替例と対照的に、単一のモジュールであることが挙げられる。本開示の分岐状ファーサイドエアバッグアセンブリのもう1つの利点は、アセンブリが運転席と助手席の横方向の相対的な位置に依存しないことであり、他の代替例よりも信頼性が高い。
【0010】
図1は、本開示の実施形態による、膨張可能なエアバッグアセンブリ100を有する車両10の内部を描いた正面切断図である。車両10は、複数の車両着座位置を含む。例えば、車両10は、車両10の前列に両方とも位置する運転者車両着座位置20と同乗者車両着座位置30とを含み得る。車両着座位置20及び30はシートアセンブリ22、32によって画定され、シートアセンブリ22、32は、シート24、34、シートバック26、36、及び拘束ハーネス28、38(例えば、シートベルト)を含み得る。乗員40、50は、参照のために車両着座位置20及び30において示されている。運転者車両着座位置20における乗員40は、車両10の運転者であり得る。いくつかの実施形態では、車両10は自動運転車であり、したがって乗員40は単に同乗者であり得る。同乗者車両着座位置30の乗員50はまた、同乗者であり得る。
【0011】
膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、ハウジング102と、運転者車両着座位置20の乗員40と同乗者車両着座位置30の乗員50との間に取り付けられたインフレータ104と、を備える。図示の実施形態では、ハウジング102は、運転者車両着座位置20のシートバック26のインボード部分に取り付けられ得る。インフレータ104は、ハウジングに結合することもでき、部分的又は完全にハウジング102内に配置してもよい。
【0012】
ハウジング102は、運転者車両着座位置20の乗員40と同乗者車両着座位置30の乗員との間のいくつかの異なる位置に取り付けられてもよい。いくつかの実施形態では、ハウジング102は、運転者車両着座位置20のシート24のインボード部分に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、ハウジング102は、同乗者車両着座位置30のシートバック36のインボード部分に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、ハウジング102は、同乗者車両着座位置30のシート34のインボード部分に取り付けられ得る。いくつかの実施形態では、ハウジング102は、運転者車両着座位置20及び同乗者車両着座位置30と共に配置されたコンソール12に取り付けられ得る。
【0013】
図1及び他の図は、拘束ハーネス28、38を使用している乗員40、50を示す場合があるが、膨張可能なエアバッグアセンブリ100の動作は、拘束ハーネス28、38とは関係なく、拘束ハーネス28、38に全く依存していない。
【0014】
図2及び図3は、展開された構成にある膨張可能なエアバッグアセンブリ100を示す。図2は、車両10の内部に向いた正面図であり、展開され少なくとも部分的に膨張している膨張可能なエアバッグアセンブリ100を示している。図2のこの正面図は、車両10の内部の後方視野を提供する。図3は、車両10の内部の背面図であり、展開され少なくとも部分的に膨張している膨張可能なエアバッグアセンブリ100を示している。車両10の内部のこの背面図は、車両着座位置20、30の後方からの前方視野を提供する(図1参照)。
【0015】
膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、複数の膨張可能なチャンバを備え得る。一実施形態では、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、第1のチャンバ110、第2のチャンバ120、及び第3のチャンバ130を備え得る。いくつかの実施形態では、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、3つの別個のチャンバ110、120、130の機能を果たす単一のチャンバを備え得る。いくつかの実施形態では、チャンバ110、120、及び130は、別個のチャンバであり得る。インフレータ104は、3つのチャンバ110、120、及び130を同時に膨張させてもよく、いくつかの実施形態では、インフレータ104は、膨張可能なエアバッグアセンブリ100への、又は3つのチャンバ110、120、及び130内の通気孔(又はそのパターンもしくは配置)を通した膨張ガスの流れに基づいてチャンバ110、120、及び130を特定の順序で膨張させてもよい。
【0016】
第2のチャンバ120を図2に示し、第3のチャンバ130を図3に示す。チャンバ110、120、130は、インフレータポートを介して膨張圧力に膨張させることができる。膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、例えば、車両10が衝突事象に遭ったことを検出する1つ以上のセンサによって作動され得るインフレータ104の動作によって展開され得る。インフレータ104は、インフレータポートを介して膨張可能なエアバッグアセンブリ100に膨張ガスを提供することができ、それによって膨張可能なエアバッグアセンブリ100をハウジング102から展開させ、膨張を開始させることができる。
【0017】
膨張可能なエアバッグアセンブリ100の第1のチャンバ110は、運転者車両着座位置20と同乗者車両着座位置30における、乗員40と50との間の障壁として機能し得る。例えば、側面衝突の間、乗員(例えば、乗員40)が、隣接する別の乗員(例えば、乗員50)に向かって主に横方向に移動することがあり得る。したがって、衝突事象中に乗員のひとりが他の乗員に向かって横方向に移動する場合、展開された第1のチャンバ110が障壁として機能し、乗員が他の乗員にぶつかるのを防止する。
【0018】
展開された構成では、第1のチャンバ110は、車両10の実質的に長手方向に延び得る。例えば、一実施形態では、第1のチャンバ110は、運転者車両着座位置20のシートバック26から車両10のダッシュボード(図3を参照)に向かって、長手方向に延びる。いくつかの実施形態では、第1のチャンバ110は、車両10のダッシュボードと係合することができる。第1のチャンバ110は、車両10に実質的に垂直な方向に延び得る。例えば、図示の実施形態では、第1のチャンバ110は、運転者車両着座位置20のシート24から車両10のルーフ14に向かって垂直に延び得る。いくつかの実施形態では、第1のチャンバ110は、車両のルーフ14と係合する。いくつかの実施形態では、第1のチャンバ110は、車両のシートバック26の上に延びているが、車両のルーフ14と係合しない。言い換えれば、第1のチャンバ110の高さは、第1のチャンバ110が最も近い乗員40の頭部に対する障壁として機能するために十分な高さであることができる。
【0019】
第1のチャンバ110は、いくつかの異なる形状を有し得る。例えば、いくつかの実施形態では、第1のチャンバ110の側面図は、長方形の形状を示すであろう。しかしながら、本開示は、そのように限定されず、第1のチャンバ110は、楕円形、多角形、円形などを有し得る。第1のチャンバ110の形状は、衝突事象中に隣接する乗員40と50との間の接触を防止するための障壁を単に提供する。第1のチャンバ110のサイズ及び形状は、ファーサイドエアバッグに対して提案されたユーロNCAP被覆率要件を満たすように設計されている。
【0020】
図2に示すように、展開された構成にある第2のチャンバ120は、同乗者車両着座位置30のシートバック36の前に部分的に展開される。乗員50が同乗者車両着座位置30に配置され又は存在する状況では、図2に示すように、第2のチャンバ120は、乗員50の前に延びるように構成され得る。エアバッグアセンブリが同乗者車両着座位置30のインボード側に配置されている場合、第2のチャンバ120が運転者車両着座位置20のシートバック26の前に展開される点において、第2のチャンバ120の展開は逆になり得る。
【0021】
第2のチャンバ120は、同乗者が所定位置から外れた場合に乗員50との望ましくない相互作用を防止し得る、適応型通気孔及び/又は内部圧力差チャンバを更に含み得る。第2のチャンバ120の展開は、乗員の存在/位置とは関係なく発生し、第1のチャンバ110がそれによって乗員と乗員との相互作用を制限又は防止する反応面を提供する。
【0022】
第2のチャンバ120は、様々な異なる形状を有し得る。いくつかの実施形態では、第2のチャンバ120は、円形の形状を有し得る。他の実施形態では、第2のチャンバ120は、長方形形状、多角形、三角形などを有し得る。
【0023】
図3に示すように、展開された構成にある第3のチャンバ130は、同乗者車両着座位置30のシートバック36の後ろに部分的に展開される。エアバッグアセンブリが同乗者車両着座位置30のインボード側に配置されている場合、第3のチャンバ130が運転者車両着座位置20のシートバック26の後ろに展開される点において、第3のチャンバ130の展開は逆になり得る。
【0024】
第3のチャンバ130は、車両10の2列目にいる、所定位置から外れた同乗者との望ましくない相互作用を防止し得る、適応型通気孔及び/又は内部圧力差チャンバをさらに含み得る。
【0025】
第3のチャンバ130は、様々な異なる形状を有し得る。いくつかの実施形態では、第3のチャンバ130は、円形の形状を有し得る。他の実施形態では、第2のチャンバ120は、長方形形状、多角形、三角形などを有し得る。いくつかの実施形態では、第3のチャンバ130は、第2のチャンバ120よりも小さい。いくつかの実施形態では、第2のチャンバ120は、第3のチャンバ130よりもより高く垂直に延び得る。第3のチャンバ130は、可能な限り最小量の膨張ガスを必要とするように設計されている。
【0026】
図4は、展開された構成にある膨張可能なエアバッグアセンブリ100の上面図である。前述のように、第1のチャンバ110は、車両10の運転者車両着座位置20のシートバック36から車両10のダッシュボードに向かって車両10の長手方向に延びる。第1のチャンバ110は、アウトボード側112及びインボード側114を含む。第1のチャンバ110の長手方向軸116は、車両10の長手方向に対して実質的に平行であり得る。
【0027】
前述のように、展開された構成では、第2のチャンバ120は、隣接する着座位置30のシートバック36の前に部分的に配置され、第3のチャンバ130は、隣接する着座位置30のシートバック36の後ろに部分的に配置される。第2のチャンバ120は、前面122及び背面124、及び先端126を含む。第2のチャンバ120は、第1のチャンバ110のインボード側114上に配置されている。第2のチャンバ120は、第1のチャンバ110の軸116を横切る方向(非平行)に第1のチャンバ110から離れて延びるように、第1の角度θに向けられている。
【0028】
第3のチャンバ130は、前面132及び背面134、並びに先端136を含む。第3のチャンバ130は、第1のチャンバ110のインボード側114上に配置されている。第3のチャンバ130は、第1のチャンバ110の軸116を横切る方向、かつ第2のチャンバ120を横切る方向に第1のチャンバ110から離れて延びるように、第2の角度θに向けられている。第1の角度θは、第2の角度θと異なり得る。いくつかの実施形態では、第1の角度θは、第1のチャンバ110の軸116に対して鋭角を形成し、第2の角度θは、第1のチャンバ110の軸116に対して鈍角を形成する。いくつかの実施形態では、第2の角度θと第1の角度θとの間の差は、90度未満であり得る。第2のチャンバ120の向きと第3のチャンバ130の向きは、チャンバ120とチャンバ130との間の分岐状構成を提供する。
【0029】
膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、第2のチャンバ120を第3のチャンバ130に結合するテザー140を更に備える。テザー140の第1の端142は、第2のチャンバ120の後側124に結合し、テザーの第2の端144は、第3のチャンバ130の前側132に結合する。テザー140の第1の端142は、第2のチャンバ120の先端126の近くに結合されている。テザー140の第2の端144は、第3のチャンバ130の先端136の近くに結合されている。いくつかの実施形態では、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、第2のチャンバ120及び第3のチャンバ130に結合された複数のテザーを備え得る。各テザーは、異なる長さを有し得る。例えば、隣接するシートバック36に近いテザーは、隣接するシートバック36からより遠いテザーよりも長くてもよい。
【0030】
第2のチャンバ120、第3のチャンバ130、及びテザー140は、一緒に作用して、衝突事象中に第1のチャンバ110を安定させる。展開中、テザー140は、図示の実施形態において隣接するシートバックと係合し、隣接するシートバックは、同乗者車両着座位置30のシートバック36である。テザー140が隣接するシートバック36と係合するとき、テザー140は、第2のチャンバ120を第3のチャンバ130に向かって引く。したがって、第2のチャンバ120と第3のチャンバ130が、隣接するシートバック36を挟む。言い換えれば、第2のチャンバ120は、シートバック36の前面と係合し、第3のチャンバ130は、シートバック36の裏面と係合する。
【0031】
図4は、運転者車両着座位置20と同乗者車両着座位置30とが横方向に並んでいることを示している。膨張可能なエアバッグアセンブリ100の利点のうちの1つは、車両着座位置20、30が横方向に並んでいるか否かにかかわらず、膨張可能なエアバッグアセンブリ100が正しく展開するように設計されていることである。
【0032】
図5では、運転者車両着座位置20は、同乗者車両着座位置30と横方向に並んでいない。運転者車両着座位置20は、同乗者車両着座位置30の長手方向前方に配置されている。しかしながら、車両着座位置20、30が横方向に並んでいないという事実にもかかわらず、第2のチャンバ120、第3のチャンバ130、及びテザー140の分岐状構成が、隣接する車両着座位置、例えば同乗者車両着座位置30のシートバック36と係合することができるため、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は正しく展開する。
【0033】
図6でも、運転者車両着座位置20は、同乗者車両着座位置30と横方向に並んでいない。運転者車両着座位置20は、同乗者車両着座位置30の長手方向後方又は後ろに配置されている。しかしながら、車両着座位置20、30が横方向に並んでいないという事実にもかかわらず、第2のチャンバ120、第3のチャンバ130、及びテザー140の分岐状構成が、隣接する車両着座位置、例えば同乗者車両着座位置30のシートバック36と係合することができるため、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は正しく展開する。
【0034】
図4図6は、同乗者車両着座位置30に同乗者50を示していない。しかしながら、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、同乗者車両着座位置30に同乗者が存在するかしないかには依存しない。いくつかの実施形態では、同乗者車両着座位置30は、同乗者50が同乗者車両着座位置30に座っているかどうかを検出するためのセンサを含み得る。いくつかの実施形態では、センサが同乗者50を検出した場合、膨張可能なエアバッグアセンブリ100が展開され、センサが同乗者50を検出しなかった場合、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は展開しない。いくつかの実施形態では、膨張可能なエアバッグアセンブリ100は、同乗者50が同乗者車両着座位置30にいるか否かにかかわらず展開する。
【0035】
本明細書全体を通して、「結合された」及び「連通する」という語句は、機械的な、電気的な、磁気的な、電磁的な、流体的な、及び熱的な相互作用を含めて、2つ以上のエンティティ間の、任意の形態での相互作用を指す。2つの構成要素は、2つの構成要素が互いに直接接触していなくても、互いに結合され得る。「当接する」及び「当接している」という用語は、互いに直接物理的に接触している物品を指すが、物品は必ずしも一緒に取り付けられていなくてもよい。
【0036】
本明細書で使用される場合、「インボード」とは、車両の中心線に向かう方向を指し、「アウトボード」とは、車両の中心線から離れる、車両から外への方向を指す。
【0037】
「取り付けられた」及び「直接取り付けられた」という語句は、任意の好適な種類のファスナ(例えば、取付金物若しくは接着剤)のみによって互いに直接接触し、かつ/又は互いに分離される、2つ以上のエンティティ間の相互作用を指す。
【0038】
「流体連通」という語句は、この語句の通常の意味で使用され、要素が互いに流体連通するとき、流体(例えば、ガス又は液体)が1つの要素から別の要素に流れることができる構成を示すのに十分に広義である。
【0039】
「a」及び「an」という用語は、単数として記載し得るが、単数に限定されるものではない。例えば、本開示は、「チャンバ」を有するエアバッグを記載し得るが、本開示はまた、エアバッグが2つ以上のチャンバを有し得ることも想定している。
【0040】
「長手方向の」及び「長手方向に」という用語は、車両の前部と車両の後部との間に延びる又は広がる方向又は向きを指す。
【0041】
本明細書で使用される場合、「前方」及び「後方」という用語は、関連する車両の前面及び背面を参照して使用される。例えば、後方方向に展開するエアバッグクッションは、車両の背面に向かって展開する。更に、「水平」などの他の参照用語は、異なる座標系が意図されていることが文脈から明らかでない限り、エアバッグアセンブリが設置されている車両に関係して使用される。よって、「水平」などの用語は、車両自体が水平に向けられている(例えば、平地上に直立して位置する)又は真の水平に対して傾いている(例えば、丘上に位置する)かどうかにかかわらず、車両に関係して使用される。
【0042】
別途記載しない限り、全ての範囲は、端点と、端点間の全ての数値との両方を含む。
【0043】
車両着座位置は、乗員が車両のシートに着座しているときに一般に位置する位置を指す。「乗員」という用語は、車両内の人又は衝突試験ダミーを指す。
【0044】
本明細書全体における「一実施形態(an embodiment)」又は「実施形態(the embodiment)」への言及は、その実施形態に関連して記載されている特定の特徴、構造、又は特性が少なくとも1つの実施形態に含まれることを意味する。よって、本明細書全体において記載されている語句、又は語句の変形は、必ずしも全てが同じ実施形態に言及してはいない。
【0045】
同様に、実施形態の上記の説明において、本開示を合理化するために、様々な特徴は、これらの特徴の単一の実施形態、図、又は説明に一緒にグループ化されていることがあることを理解されたい。しかしながら、開示のこの方法は、任意の請求項が当該請求項に明示的に記載された特徴よりも多くの特徴を必要とするという意図を反映すると解釈されるべきではない。むしろ、以下の特許請求の範囲が反映するように、本発明の態様は、いずれの単一の前述の開示された実施形態の全ての特徴よりも少ない特徴の組み合わせにある。よって、この発明を実施するための形態に続く特許請求の範囲は、この発明を実施するための形態に明示的に組み込まれており、請求項のそれぞれは、別個の実施形態としてそれ自体で成立する。本開示は、独立請求項と独立請求項の従属請求項との全ての並べ替えを含む。
【0046】
特徴又は要素に関する「第1の」という用語の特許請求の範囲における記載は、第2の又は追加のこのような特徴又は要素の存在を必ずしも示唆しない。変更が、本発明の根本的な原理から逸脱することなく、上記の実施形態の詳細になされてもよいことが、当業者には明らかである。排他的な所有権又は特権が請求されている本発明の実施形態は、以下のように定義される。

図1
図2
図3
図4
図5
図6