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特許7530450一体成形された繊維強化プラスチック製のバッテリートレイ
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】一体成形された繊維強化プラスチック製のバッテリートレイ
(51)【国際特許分類】
   B60K 1/04 20190101AFI20240731BHJP
   H01M 50/227 20210101ALI20240731BHJP
   H01M 50/249 20210101ALI20240731BHJP
   H01M 50/289 20210101ALI20240731BHJP
   H01M 50/244 20210101ALI20240731BHJP
   H01M 50/229 20210101ALI20240731BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
H01M50/227
H01M50/249
H01M50/289
H01M50/244 Z
H01M50/244 A
H01M50/229
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022574557
(86)(22)【出願日】2021-06-30
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-07-10
(86)【国際出願番号】 US2021039859
(87)【国際公開番号】W WO2022006252
(87)【国際公開日】2022-01-06
【審査請求日】2022-12-02
(31)【優先権主張番号】63/047,971
(32)【優先日】2020-07-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】000003001
【氏名又は名称】帝人株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】518153036
【氏名又は名称】テイジン オートモーティブ テクノロジーズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】新井 司
(72)【発明者】
【氏名】手島 雅智
(72)【発明者】
【氏名】田村 俊介
(72)【発明者】
【氏名】フォーラン,ヒュー
【審査官】塚本 英隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-094476(JP,A)
【文献】特開平10-162797(JP,A)
【文献】特開2012-126058(JP,A)
【文献】特開2012-169171(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
H01M 50/227
H01M 50/249
H01M 50/289
H01M 50/244
H01M 50/229
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両駆動用バッテリーを搭載するバッテリートレイであって、
底部、
前記底部の外周に立てられた周壁、
前記周壁の上部に接続され、前記周壁の外側に伸びるフランジ、および
前記底部および前記周壁に囲まれるバッテリートレイの内部を区画する内部分割壁を備え、
前記内部分割壁は、
前記底部に屈曲して接続された第1の内壁であって、前記第1の内壁と底部との間の屈曲角が90度以上135度以下である第1の内壁、
前記底部に屈曲して接続された第2の内壁であって、前記第2の内壁と前記底部との間の屈曲角が90度以上135度以下である第2の内壁、および、
前記第1の内壁および前記第2の内壁の両方に接続され、前記底部の上方に設けられたスタッドボルト台座、
を備え、
前記底部、前記周壁、前記フランジ、前記第1の内壁、前記第2の内壁、および前記スタッドボルト台座は、不連続繊維を含む繊維強化プラスチックから一体成形される、
バッテリートレイ。
【請求項2】
前記底部の上面に、バッテリーを固定するためのリブまたはボスをさらに含む、請求項1に記載のバッテリートレイ。
【請求項3】
前記第1の内壁または前記第2の内壁の少なくとも一方が、前記バッテリーの形状に嵌るように構成された形状を有する、請求項1に記載のバッテリートレイ。
【請求項4】
前記底部と前記周壁との境界領域は、曲率半径が1mm以上10mm以下の内側コーナー部を有する、請求項1に記載のバッテリートレイ。
【請求項5】
前記底部と前記第1の内壁との境界領域、前記底部と前記第2の内壁との境界領域、および前記底部と前記周壁との境界領域において、前記不連続繊維が連続的に分散している、請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリートレイ。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか一項に記載のバッテリートレイであって、
電気自動車の車体下部に搭載されるように構成され、
前記第1の内壁および前記第2の内壁は、車体の横方向または前後方向のいずれかに沿って設けられる、バッテリートレイ。
【請求項7】
底面からフランジまでの高さH1と、スタッドボルト台座の底面から上面までの高さH2とが、H1×0.3<H2<H1×2.0の関係を満たす、請求項1に記載のバッテリートレイ。
【請求項8】
請求項7に記載のバッテリートレイであって、さらに、
前記第1の内壁、前記第2の内壁および前記スタッドボルト台座に接続されたデッキ、を備え、
前記デッキは前記底部より高く、前記スタッドボルト台座の厚さt1と前記デッキの厚さt2は、t2<t1の関係を満たす、バッテリートレイ。
【請求項9】
前記第1の内壁と前記第2の内壁とは、前記スタッドボルト台座または前記デッキを介して互いに接続される、請求項8に記載のバッテリートレイ。
【請求項10】
前記スタッドボルト台座には、バッテリーブラケットを取り付けるためのスタッドボルトが設けられる、請求項1に記載のバッテリートレイ。
【請求項11】
前記スタッドボルト台座は非貫通の挿入孔を含み、前記スタッドボルトは前記挿入孔に挿入される、請求項10に記載のバッテリートレイ。
【請求項12】
前記第1の内壁、前記周壁、前記第2の内壁、および前記スタッドボルト台座は、前記バッテリーブラケットを固定するための貫通孔を含まない、請求項10に記載のバッテリートレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
この出願は、参照によりこれに援用される2020年7月3日に出願された米国特許仮出願第63/047,791号の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、一体成形された繊維強化プラスチック製のバッテリートレイに関する。
【背景技術】
【0003】
電気自動車では車載バッテリーがかなりの重量および搭載スペースを占めるため、その構造について数々の検討がなされている。
【0004】
例えば、特許文献1には、バッテリーを取り付けるためのクランプボルトの係止機構を備えた、繊維強化プラスチック製のバッテリートレイが記載されている。
【0005】
特許文献2では、バッテリーが収納されるケースを繊維強化プラスチックで作成し、バッテリートレイの軽量化を試みている。
【0006】
特許文献3では、複数個のバッテリーが収納され、バッテリー同士を連結させてバッテリートレイに固定されている電池パックが記載されている。
特許文献4では、金属製枠状フレームでバッテリートレイの強度及び剛性を高めたバッテリーケースが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】実公平7-43950号公報
【文献】特開2013-201112号公報
【文献】特開2018-156825号公報
【文献】特開2011-124101号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に記載のバッテリートレイでは、バッテリーが大きい場合や、複数のバッテリーを搭載したりする場合、バッテリートレイの周囲に設けられた係止機構のみではバッテリーを留めるのは難しい。
【0009】
特許文献2に記載のバッテリートレイはバッテリートレイの両サイドに大きなバッテリーブラケットを設ける必要がでるため、バッテリートレイの大きさが大きくなってしまう。このような大きなバッテリーブラケットを設けると、同じバッテリー量・個数を搭載するためには車そのものの幅を広げる必要が生じてしまう(したがって、車両の設計の自由度が下がる)。
【0010】
特許文献3に記載のバッテリートレイの場合、バッテリー間に補強部材であるクロスメンバを設け、これにバッテリーは固定されている。バッテリートレイに対してバッテリーが相対的に移動することは無いが、クロスメンバを別体で設ける必要があり、バッテリートレイが重くなる。更には別の部品であるクロスメンバの取り付け工程が必要になり、製造工程が煩雑になる。
【0011】
特許文献4に記載のバッテリートレイの場合、繊維で補強されていないため、金属の枠上フレームで補強しておく必要があり、バッテリーボックスを軽量化できない。
【0012】
そこで本発明は従来技術の有する問題点を鑑み、別体でバッテリーを固定するためのクロスメンバなどが不要で、バッテリーの固定が容易となる一体成形された繊維強化プラスチックを用いたバッテリートレイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
車両駆動用のバッテリーを搭載するバッテリートレイが提供される。バッテリートレイは、底部;前記底部の外周に立てられた周壁;前記周壁の上部に接続され、前記周壁の外側に延びるフランジ;前記底部に接続された第1の内壁、を含み、前記第1の内壁と前記底部との間の屈曲角度が90度以上135度以下である。バッテリートレイは、前記底部に接続された第2の内壁を有し、前記第2の内壁と前記底部との間の屈曲角度は90度以上135度以下である。スタッドボルト台座は、前記第1の内壁と前記第2の内壁の両方に接続され、前記底部の上方に設けられる。前記底部、前記周壁、前記フランジ、前記第1の内壁、前記第2の内壁、および前記スタッドボルト台座は、不連続繊維を含む繊維強化プラスチックで一体成形されている。
【0014】
本発明の特定の態様を示すことを意図したが、本発明の実施を制限するものとして解釈されるべきではない以下の図面に関して、本発明はさらに詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態によるバッテリートレイを使用したバッテリーボックスの分解斜視図である。
図2】発明の一実施形態によるエネルギー吸収部材が設けられたバッテリートレイの斜視図である。
図3】本開示の一実施形態によるバッテリートレイの斜視図である。
図4】本開示の一実施形態に係るバッテリートレイの断面図(スタッドボルト台座が存在する図3のIV-IV線に沿った断面)である。
図5】本開示の一実施形態によるバッテリートレイの断面図である。
図6】本開示の一実施形態に係るバッテリートレイの断面図(スタッドボルト台座を除いた図3のVI-VI線断面図)である。
図7A】本開示の一実施形態によるバッテリートレイに設けられたエネルギー吸収部材の斜視図である。
図7B】本開示の一実施形態によるバッテリートレイに設けられたエネルギー吸収部材の斜視図である。
図7C】本開示の一実施形態によるバッテリートレイに設けられたエネルギー吸収部材の斜視図である。
図8A】バッテリートレイに設けられたハット形状のエネルギー吸収部材(図2の符号202の一例)を車両幅方向上方から見た模式図である。
図8B図8Aのハット形状のエネルギー吸収部材を車両幅方向斜め上方から見た斜視図である。
図8C図8Aのハット形状のエネルギー吸収部材を車両幅方向から見た正面図である。
図8D図8Aのハット形状のエネルギー吸収部材を上から見た平面図である。
図9A】ハット形状のエネルギー吸収部材を車幅方向上方から見た模式図である。
図9B図9Aのハット形状のエネルギー吸収部材を車幅方向斜め上方から見た斜視図である。
図9C図9Aのハット形状のエネルギー吸収部材を車幅方向から見た正面図である。
図9D図9Aのハット形状のエネルギー吸収部材を上から見た平面図である。
図10図9A図9Dに示すハット形状のエネルギー吸収部材を上から見た平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、車両にエネルギーを供給するためのバッテリーを取り付けるためのバッテリートレイとして有用である。バッテリートレイは、底部;前記底部の外周に立てられた周壁;前記周壁の上部に接続され、前記周壁の外側に延びるフランジ;前記底部に接続された第1の内壁、を含み、前記第1の内壁と前記底部との間の屈曲角度が90度以上135度以下である。バッテリートレイは、前記底部に接続された第2の内壁を有し、前記第2の内壁と前記底部との間の屈曲角度は90度以上135度以下である。スタッドボルト台座は、前記第1の内壁と前記第2の内壁の両方に接続され、前記底部の上方に設けられる。前記底部、前記周壁、前記フランジ、前記第1の内壁、前記第2の内壁、および前記スタッドボルト台座は、不連続繊維を含む繊維強化プラスチックで一体成形されている。
【0017】
本発明の効果のうち、バッテリートレイは一体成形された繊維強化プラスチックを利用しているため、繊維強化プラスチックの成形が完了した時点で、バッテリーを固定するためのスタッドボルトが既に設けられている。したがって、複数のバッテリーを固定する際に、スタッドボルト台座と隔壁を別体で設ける必要がない。
【0018】
理解されるものとするが、値の範囲が提供されている場合においては、その範囲が、範囲の端点の値だけでなく、範囲内に明示的に含まれ、かつその範囲の最下位の数字によって変動することから、範囲の中間の値も含むことが意図されている。例として述べれば、1から4までと述べられている範囲は、1-2、1-3、2-4、3-4、および1-4を含むことが意図されている。
【0019】
別段の定義がない限り、本明細書で使用されるすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。本発明の明細書で使用される用語は、特定の実施形態を説明することのみを目的としており、本発明を限定することを意図するものではない。
【0020】
明確にまたは文脈によって別段の指示がない限り、以下の用語は、本明細書では以下に示すように使用される。
【0021】
本発明の明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかにそうでないことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。
【0022】
以下に、本発明の一実施形態について説明する。しかし、本開示はこれらに制限されるものではない。
【0023】
[バッテリートレイ]
図1に示すように、バッテリーボックスは、バッテリートレイ20とバッテリーカバー40とを含む。バッテリーボックスは、車両に電力を供給して車両を駆動するためのバッテリー50を収容する。本開示において、バッテリートレイ20は、強化繊維および樹脂を含む繊維強化プラスチックからなる。
【0024】
図4に示すように、本開示によるバッテリートレイ401は、フランジ402、底部403、底部403の外周に立てられた周壁404、底部403に連結された第1の内壁405、底部403に連結され第2の内壁406、および第1の内壁405および第2の内壁406の両方に接続されたスタッドボルト台座407を含む。スタッドボルト台座407は、底部403から上げ底されている。
【0025】
[底部]
図4に示すように、底部403は、バッテリートレイ401の最下面である下面を有する。バッテリー50は、底部403の上面に配置されてもよい。バッテリー50と底部403との間に冷却機構(図1の符号70および図4の符号414)を提供するために、バッテリー50は底部403から離間されてもよい。底部403は、完全な平板である必要はなく、波形状や湾曲形状であってもよい。
【0026】
[周壁]
図3及び図4に示すように、底部403の外周には周壁404が立設されている。周壁404は底部403と連続して形成されていることが好ましい。
【0027】
[フランジ]
図4に示されるように、フランジ402は、周壁404の上部に接続され、周壁404の外側に延在する。バッテリートレイ401をバッテリーカバー40にボルトや接着剤で固定する際にバッテリートレイ401のフランジ402が用いられる。
【0028】
[第1の内壁および第2の内壁]
図4に示される第1の内壁405は、底部403に接続される。底部403と第1の内壁405は、一体的に継ぎ目なく形成される。底部403の内面は、第1の内壁405の表面に連続的に接続される。バッテリートレイ401は、底部403と第1の内壁405との間の接続部で曲がる。
【0029】
同様に、図4に示す第2の内壁406は、底部403に接続されている。底部403と第2の内壁405は、一体的に継ぎ目なく形成されている。底部403の内面は、第2の内壁406の表面に連続的に接続される。バッテリートレイ401は、底部403と第2の内壁406との間の接続部で曲がる。
【0030】
第1の内壁405は、底部403と交差した状態で底部403に接続されていることが好ましい。同様に、第2の内壁406は、底部403と交差した状態で底部403に接続されていることが好ましい。ここで、「交差する」とは、バッテリートレイ401の2次元断面が、底部403が第1の内壁405および第2の内壁406と交差することを示す状態を意味する。
【0031】
[内部分割壁]
図1に示すように、第1の内壁405と第2の内壁406は、バッテリートレイ401の内部を区画する内部分割壁29を形成する。内部分割壁29は2つ以上あってもよい。図3では、4つの内部分割壁がY軸方向に延びている。図3のX軸方向を車軸方向(車両進行方向)とし、Y軸方向を車幅方向とすることが好ましい。
【0032】
[スタッドボルト台座]
図4に示すスタッドボルト台座407は、第1の内壁405と第2の内壁406の両方に接続されており、スタッドボルト台座407の底部は底部403よりも上方に設けられている。つまり、第1の内壁405および第2の内壁406は、スタッドボルト台座407を介して互いに接続されている。
【0033】
[一体成形]
フランジ402、底部403、周壁404、第1の内壁405、第2の内壁406、スタッドボルト台座407は、繊維強化プラスチックで一体成形されている。ここで、一体成形とは、これらの部材を連続して継ぎ目なく成形することをいう。一体成形された繊維プラスチックは、別々の部材を互いに接合することによって形成されるわけではない。このような一体成形は、一体化した繊維強化プラスチックを一度の成形で作製することができ、プレス成形により好適に実現することができる。一体型繊維強化プラスチックは、シートモールディングコンパウンド(SMCともいう)を用いた一体成型により作製することができる。
【0034】
このように一体成形で作製することにより、別々の部品を1つの部品として加工することができ、部品単価を下げることができる。また、組立工数が減り、部品点数の減少により在庫にかかるコストを削減することができる。特に、本開示では、バッテリー50を固定するためのスタッドボルト台座407を一体成形することができる。
【0035】
[角度]
底部403と第1の内壁405とがなす角度は、図4において参照符号αによって例示される。底部403と第2の内壁406とがなす角度は、図4においてβによって例示される。
【0036】
底部403と第1の内壁405とがなす角度αおよび底部403と第2の内壁406とがなす角度βは、それぞれ90度以上および135度以下である。これらの角度α、βが90度未満であると、成形後のバッテリートレイ401の成形体を金型から取り出すことが困難となる。逆に、これらの角度αおよびβが135度を超えると、第1の内壁405および第2の内壁406を、直方体形状または立方体形状等を有するバッテリー410の形状に嵌めることが困難になる。換言すれば、上記角度の範囲内で、バッテリートレイ401の単位面積当たりのバッテリー50のサイズを大きくすることが可能である。
【0037】
底部403と第1の内壁405とがなす角度α、および底部403と第2の内壁406とがなす角度βは、それぞれ、90度以上120度以下であることが好ましく、90度以上100度以下であることがより好ましい。
【0038】
底部403と第1の内壁405との間に形成される角度α、および底部403と第2の内壁406との間に形成される角度βを測定するために、バッテリートレイ401の断面を観察してもよい。このような断面観察の方向は、底部403および第1の内壁405に垂直な方向、または底部403および第2の内壁406に垂直な方向であることが好ましい。観察する断面は、例えば図4である。
【0039】
底部403、第1の内壁405、または第2の内壁406が断面において湾曲した形状を有する場合、曲線に接線を引くことによって角度を測定し、測定された角度のうち、最大角度および最小角度を平均化して角度αまたは角度βを計算する。
【0040】
[スタッドボルトおよびスタッドボルト台座]
図4に示すように、本開示によるバッテリートレイ401は、バッテリーブラケット411をスタッドボルト台座407に取り付けるためのスタッドボルト409を備えることが好ましい。さらに、スタッドボルト台座407は、非貫通の挿入孔412を含んでもよく、スタッドボルト409は、挿入孔412に挿入されてもよい。
【0041】
スタッドボルト409は、両端にねじ部を有するボルトであり、スタッドボルト409の一端がスタッドボルト台座407の挿入孔412にねじ込まれている。スタッドボルトの他端には、バッテリーを固定するためのバッテリーブラケット411が締結されている。
【0042】
スタッドボルトの形状は特に限定されない。
【0043】
[バッテリーブラケット固定用貫通穴]
従来のバッテリートレイの場合、バッテリーをバッテリートレイに固定するために、バッテリーブラケットを固定するための貫通穴をバッテリートレイに設ける必要があった。
【0044】
本開示では、フランジ402、底部403、周壁404、第1の内壁405、第2の内壁406、スタッドボルト台座407が繊維強化プラスチックで一体成形されているため、第1の内壁405、第2の内壁406、底部403、スタッドボルト台座407から、バッテリーブラケットを固定するための貫通穴を省略することができる。このような貫通穴が設けられていないため、バッテリーボックス20の密閉性が向上し、バッテリーボックス10内の湿度が安定し、電池寿命が長くなる。
【0045】
また、周壁404にもバッテリーブラケットを固定するための貫通穴を設けないことが好ましい。
【0046】
[スタッドボルト台の高さ]
底部403からフランジまでの高さH1と、底部403からスタッドボルト台座407の上面までの高さH2が、H1×0.3<H2<H1×2.0の関係を満たすことが好ましい。
【0047】
底部403は一定の厚みを有するため、高さH1は、底部403の垂直方向の中心を基準として測定される。底部403がコールゲート形状または湾曲した形状の場合、最大の高さが、高さH1および高さH2として測定される。
【0048】
高さH1およびH2を図4に例示する。
【0049】
H1×0.3<H2の関係を満たせば、スタッドボルト台座407の位置は底部403から十分に高いので、スタッドボルト台座407にバッテリーブラケット411を取り付けるのに十分な高さにスタッドボルト409の位置を設定することができる。これにより、バッテリーを固定するバッテリーブラケット411の固定位置を高く設定し、バッテリーブラケット411の高さを低くできる。バッテリーブラケット411は一般にアルミニウムなどの金属製であるため、この低い高さは軽量化に寄与する。
【0050】
高さH2の下限は、H1×0.5以上であることが好ましく、H1×0.6以上であることがより好ましく、H1×0.7以上であることがさらに好ましい。すなわち、高さH1、H2は、H1×0.5<H2の関係を満たすことが好ましく、H1×0.6<H2の関係を満たすことがより好ましく、H1×0.7<H2の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0051】
高さH2の上限値は、H1×1.8未満であることが好ましく、H1×1.5未満であることがより好ましく、H1×1.2未満であることがさらに好ましく、H1×1.0未満であることが最も好ましい。すなわち、高さH1、H2は、H2<H1×1.8の関係を満たすことが好ましく、H2<H1×1.5の関係を満たすことがより好ましく、H2<H1×1.2の関係を満たすことがさらに好ましく、H2<H1×1.0の関係を満たすことが最も好ましい。
【0052】
H1×0.3<H2<H1×2.0の関係を満たす場合、図4に示すように、第1の内壁405、第2の内壁406、およびスタッドボルト台座407で囲まれた空間領域413が大きくなる。
【0053】
[本開示の別態様]
本開示の別の態様として、上記の角度α、βが90度以上135度以下である構成を省略した、以下の態様のバッテリートレイ401を採用してもよい。
【0054】
すなわち、本開示の別の態様は、以下を含む、車両駆動用バッテリーを搭載するためのバッテリートレイであって:
底部;
前記底部の外周に立てられた周壁;
前記周壁の上部に接続され、前記周壁の外側に延びるフランジ;
前記底部に接続された第1の内壁であって、前記第1の内壁と前記底部との間の接続部は屈曲している第1の内壁;
前記底部に接続された第2の内壁であって、前記第2の内壁と前記底部との間の接続部は屈曲している第2の内壁;および
第1の内壁と第2の内壁の両方に接続され、前記底部の上方に設けられたスタッドボルト台座、
を含み、
前記底部、前記周壁、前記フランジ、前記第1の内壁、前記第2の内壁および前記スタッドボルト台座は、不連続繊維を含む繊維強化プラスチックで一体成形され、
前記底部からの高さH1および前記底部から前記スタッドボルト台座の上面までの高さH2は、H1×0.3<H2<H1×2.0の関係を満たす、バッテリートレイを提供する。
【0055】
[バッテリーを固定するためのリブおよびボス]
バッテリートレイ401の底部403の上面には、バッテリーを固定するためのリブまたはボスが設けられていることが好ましい。底部403の上面は、バッテリートレイ401上にバッテリーを載置するための面である。下面は、上面の反対側の面である。リブまたはボスは、バッテリー50だけでなく、配線および冷却機構414をも固定することが好ましい。
【0056】
ここで、「固定する」とは、バッテリーの移動を抑制するものであり、完全な固定を意味しない。
【0057】
リブまたはボスの高さHrおよびバッテリーの高さHbは、Hb×0.3<Hrの関係を満たすことが好ましく、Hb×0.5<Hrの関係を満たすことがより好ましい。より具体的には、高さHrは、20mm~70mmが好ましく、30mm~60mmがより好ましく、40mm~50mmがさらに好ましい。高さHrが上記範囲内であれば、リブまたはボスもバッテリートレイ401の剛性向上に寄与する。
【0058】
バッテリーを固定するためのリブまたはボスは、繊維強化プラスチックで一体成形されていることが好ましい。繊維強化プラスチックで一体成形されたリブまたはボスは、バッテリー50をバッテリートレイ401に容易かつしっかりと固定することができる。
【0059】
[第1の内壁および第2の内壁の形状]
1.バッテリーの追従形状
第1の内壁405または第2の内壁406の少なくとも一方が、バッテリー50の形状に追従する形状を有することが好ましい。第1の内壁405および第2の内壁406の両方が、バッテリー50の形状に追従する形状を有することがより好ましい。
【0060】
「バッテリーの形状に追従した形状」とは、バッテリー50の形状に第1の内壁405または第2の内壁406が追従する形状に設計されたものであり、例えば、バッテリーの形状が立方体または直方体である場合、第1の内壁または第2の内壁は平坦な壁を有する。
【0061】
2.車体下部へのバッテリートレイの取り付け
本開示に係るバッテリートレイ401は、電気自動車の車体下部に搭載されることが好ましく、バッテリートレイ401の第1の内壁405及び第2の内壁406は、車体の横方向または前後方向の少なくとも一方に沿って設けられることが好ましい。
【0062】
ここで、車体左右方向とは、例えば図1ではY軸方向であり、車幅方向である。例えば図1では、バッテリートレイ20は、車体の左右方向に延びる第1の内壁405と第2の内壁406によって形成されえる内部分割壁29を含む。
【0063】
[繊維強化プラスチック]
1.強化繊維
本開示に用いられる強化繊維は、特に限定されないが、炭素繊維、ガラス繊維、アラミド繊維、ボロン繊維、玄武岩繊維からなる群より選ばれる1種以上の強化繊維であることが好ましい。強化繊維はガラス繊維であることがより好ましい。強化繊維としてガラス繊維を用いる場合、ガラス繊維の平均繊維径は、1μm~50μmが好ましく、5μm~20μmがより好ましい。平均繊維径が大きいと樹脂の繊維への含浸性が向上し、上限以下であると成形性、加工性に優れる。
【0064】
2.不連続繊維
本開示において、強化繊維は不連続繊維を含む。不連続繊維を用いると、連続繊維のみを用いた繊維強化プラスチックに比べて成形性が向上し、複雑な成形体の作製が容易になる。
【0065】
3.強化繊維の重量平均繊維長
強化繊維の重量平均繊維長は、1mm以上100mm以下であることが好ましい。強化繊維の重量平均繊維長は、1mm~70mmがより好ましく、1mm~50mmが更に好ましい。
【0066】
近年、車載用バッテリーは大型化しており、バッテリーボックスの縦横寸法は、1m×1m、1.5m×1.5m等となっている。重量平均繊維長が1mm以上であれば、このような大型の電池ボックスを作製した場合でも、大型バッテリーを収納するための機械的特性を確保しやすい。
【0067】
射出成形により繊維強化プラスチックを作製する場合、強化繊維の重量平均繊維長は、通常、0.1mm~0.3mm程度である。プレス成形により繊維強化プラスチックを作製する場合、強化繊維の重量平均繊維長は0.1mm~0.3mmの範囲に限定されない。したがって、強化繊維の重量平均繊維長が1mm以上100mm以下の範囲の場合、プレス成形により繊維強化プラスチックを作製することが好ましい。
【0068】
強化繊維の重量平均繊維長が100mm以下であると、流動性に優れるため好ましい。本開示では、繊維長の異なる不連続強化繊維を併用してもよい。換言すれば、本開示で使用される不連続繊維は、重量平均繊維長分布において単一のピークを有していてもよいし、複数のピークを有していてもよい。
【0069】
4.繊維体積割合
強化繊維の繊維体積割合Vfは特に限定されないが、好ましくは20%~70%、より好ましくは25%~60%、さらに好ましくは30%~55%である。
【0070】
繊維体積割合(Vf、単位:体積%)とは、強化繊維とマトリクス樹脂だけではなく、その他の添加剤も含めた全体の体積に対する強化繊維の体積の割合をいう。
【0071】
5.樹脂
本開示において、樹脂の種類は特に限定されず、熱硬化性樹脂または熱可塑性樹脂が用いられる。熱硬化性樹脂を用いる場合、不飽和ポリエステル樹脂、ビニルエステル樹脂、エポキシ樹脂、フェノール樹脂が好ましい。
【0072】
樹脂は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0073】
6.その他の添加剤
本開示で使用される繊維強化プラスチックは、有機繊維または無機繊維からなる種々の繊維状フィラー、または、無機フィラーなどの非繊維状フィラー、難燃剤、紫外線防止剤、安定剤、、離型剤、顔料、軟化剤、可塑剤、界面活性剤等の添加剤を、本開示の目的を損なわない範囲で含んでいてもよい。
【0074】
また、熱硬化性樹脂を用いる場合、増粘剤、硬化剤、重合開始剤、重合禁止剤などを含有させてもよい。
【0075】
添加剤は、1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0076】
7.シート成形材料
繊維強化プラスチックは、不連続な強化繊維を用いたシート成形材料(SMCとも呼ばれる)で製造されることが好ましい。バッテリーボックス10がSMC製の繊維強化プラスチック製の場合、金属製のバッテリーボックスに比べて軽量化することができる。
【0077】
シート成形材料の成形性が高いため、バッテリートレイやバッテリーカバーのような複雑な形状をSMCから容易に成形することができる。
【0078】
すなわち、シート成形材料を成形して凹部と凸部を有するバッテリーボックスの部品を製造することにより、繊維強化プラスチックを製造することができる。シート成形材料は、連続繊維を含む繊維強化プラスチックに比べて流動性、成形性に優れているため、リブやボスの加工が容易である。
シート成形材料(SMC)を用いた繊維強化プラスチックとしては、Continental Structural Plastics(略してCSPともいう)製のシート成形材料を用いることができる。
【0079】
[特許文献4との比較]
特許文献1に開示された薄肉樹脂製のバッテリートレイは、射出成形により作製され、隔壁はバッテリートレイの底部から突出するリブである。特許文献1の樹脂が繊維を含む場合、重量平均繊維長が1mm以上100mm以下の強化繊維をリブの先端に注入することが困難である。射出成形ではなく、プレス成形の場合でも、繊維を含む隔壁が下から突出しているため、隔壁のリブを高く設計すると、リブの先端はリブの下端よりも樹脂が多くなり、リブの物性が低下する。
【0080】
[境界領域における不連続繊維の分散]
本開示において、不連続繊維は、底部と第1の内壁との境界領域、底部と第2の内壁との境界領域、及び底部と周壁との境界領域に連続的に分散していることが好ましい。
【0081】
底部、周壁、第1の内壁、第2の内壁が一体成形された繊維強化プラスチックであるため、不連続繊維を境界領域に連続的に分散させやすくなる。
【0082】
ここで、「連続的に分散」とは、不連続な繊維同士が連続的に絡み合っている状態をいう。強化繊維が境界領域に連続的に分散するためには、境界領域の少なくとも一部で強化繊維同士が連続的に絡み合っていればよく、境界領域全体にわたって強化繊維同士が連続的に絡み合っている必要はない。境界領域において強化繊維が面内方向に連続的に分散していると、境界領域の力学特性が従来技術に比べて向上する。
【0083】
従来、(内部分割壁、いわゆる隔壁を形成する)第1の内壁および第2の内壁を別部品として取り付ける場合、底部への締結が必要であった。しかしながら、内部隔壁を別部品として取り付けると、内部分割壁と底部との締結力が必然的に低下し、締結力が不安定になる。
【0084】
[デッキ]
図3の第1の内壁405および第2の内壁406は、内部分割壁29を形成する。第1の内壁405と第2の内壁406である。本開示によるバッテリートレイ401では、第1の内壁405と第2の内壁406とが、図4のスタッドボルト台座407を介して互いに接続される。すなわち、スタッドボルト台座407は、内部分割壁29の頂部に設けられている。
【0085】
図4のスタッドボルト409の挿入孔412を内部分割壁29に設ける必要がない場合、内部分割壁29は、スタッドボルト台座407の代わりに、図6に示すデッキ601を有していてもよい。すなわち、本開示に係るバッテリートレイでは、第1の内壁405と第2の内壁406とは、図6のデッキ601を介して連結されることが好ましく、デッキ601は、第1の内壁405および第2の内壁406によって底部403から持ち上げられていることが好ましい。図6は、第1の内壁405と第2の内壁406によって形成される内部分割壁29の頂部にスタッドボルト台座407がない、図3の線VI-VIに沿った断面図である。
【0086】
ここで、図5に示すスタッドボルト台座407の厚みT1と、図6に示すデッキ601の厚みT2とは、T2<T1の関係を満たすことが好ましい。すなわち、第1の内壁405と第2の内壁406とで形成される内部分割壁29の頂部(図3の符号304)の厚みは、図3のY軸方向(車幅方向)に向かって不均一な厚みを有することが好ましい。内部分割壁29の頂部304は、スタッドボルト台座407とデッキ601との繰り返し構造であることが好ましい。スタッドボルト台座407の厚みT1を小さくすることにより、バッテリートレイ401の重量を軽減することができる。厚さT1およびT2は、T2×0.8<T1の関係を満たすことが好ましく、T2×0.5<T1の関係を満たすことがより好ましい。
【0087】
デッキ601は、フランジ402、底部403、周壁404、第1の内壁405、第2の内壁406およびスタッドボルト台座407と一体成形されることが好ましい。
【0088】
デッキ601は、剛性を向上させるために金属カバー602で覆われていてもよい。
【0089】
[デッキの高さ]
フランジ402の底部403からの高さH1と、デッキ601の底部403からの高さH3とは、H1×0.3<H3<H1×2.0の関係を満たすことが好ましい。高さH1およびH3は、図6に例示されている。デッキ601が曲面等である場合、最高高さH3を測定する。
【0090】
H1×0.3<H3の関係を満たすと、内部分割壁29の高さが高くなるため、バッテリー50を安定して保持することができる。高さH3の下限は、H1×0.5より大きいことが好ましく、H1×0.6より大きいことがより好ましく、H1×0.7より大きいことがさらに好ましい。すなわち、高さH1およびH3は、H1×0.5<H3の関係を満たすことが好ましく、H1×0.6<H3の関係を満たすことがより好ましく、H1×0.7<H3の関係を満たすことがさらに好ましい。
【0091】
高さH3の上限は、H1×1.8未満であることが好ましく、H1×1.5未満であることがより好ましく、H1×1.2未満であることがさらに好ましく、H1×1.0未満であることが最も好ましい。すなわち、高さH1、H3は、H3<H1×1.8の関係を満たすことが好ましく、H3<H1×1.5の関係を満たすことがより好ましく、H3<H1×1.2の関係を満たすことがさらに好ましく、H3<H1×1.0の関係を満たすことが最も好ましい。
【0092】
底部403からスタッドボルト台座407の上面までの高さH2と、底部403からデッキ601の高さH3とは、H2×0.8<H3<H1×1.2の関係を満たすことが好ましく、H2×0.9<H3<H1×1.1の関係を満たすことがより好ましく、H2=H3の関係を満たすことが更に好ましい。
【0093】
[繊維強化プラスチックの平均厚み]
本開示において、繊維強化プラスチックの平均厚みTaveは、1.5mm以上5mm未満であることが好ましい。厚みが5mm以下であると、バッテリーボックス10の軽量化の観点から好ましい
【0094】
繊維強化プラスチックの平均厚みTaveは、2~5mmが好ましく、3~5mmがより好ましい。
【0095】
[内側コーナー部の曲率半径]
底部403の上面と周壁404の内面との境界領域は、曲率半径1mm以上10mm以下の内側コーナー部を有することが好ましい。曲率半径は、1mm以上7mm以下がより好ましく、2mm以上4mm以下がさらに好ましい。
【0096】
底部403の上面と周壁404の内面との境界領域における内側コーナー部は、例えば、図5の符号R501に例示される。
【0097】
底部403の上面と第1の内壁405の内面との境界領域は、曲率半径1mm以上10mm以下の内側コーナー部を有することが好ましい。底部403の上面と第1の内壁405の内面との境界領域における内側コーナー部は、例えば、図5の符号R520で例示される。曲率半径は、1mm以上7mm以下がより好ましく、2mm以上4mm以下が更に好ましい。
【0098】
底部403の上面と第2の内壁406の内面との境界領域は、曲率半径1mm以上10mm以下の内側コーナー部を有することが好ましい。底部403の上面と第2の内壁406の内面との境界領域における内側コーナー部は、例えば、図5の符号R530に例示される。曲率半径は、1mm以上7mm以下がより好ましく、2mm以上4mm以下が更に好ましい。
【0099】
[外側コーナー部の曲率半径]
底部403の下面と周壁404の外面との境界領域は、曲率半径が2mm以上11mm以下の外側コーナー部を有することが好ましい。曲率半径は2mm以上8mm以下がより好ましく、3mm以上7mm以下がさらに好ましい。
【0100】
底部403の下面と周壁404の外面との境界領域における外側コーナー部は、例えば、図5の符号R502に例示される。
【0101】
底部403の下面と第1の内壁405の外面との境界領域は、曲率半径が2mm以上11mm以下の外側コーナー部を有することが好ましい。底部403の下面と第1の内壁405の外面との境界領域における外側コーナー部は、例えば、図5の符号R521に例示される。曲率半径は2mm以上8mm以下がより好ましく、3mm以上7mm以下がさらに好ましい。
【0102】
底部403の下面と第2の内壁406の外面との境界領域は、曲率半径12mm以上22mm以下の外側コーナー部を有することが好ましい。底部403の下面と第2の内壁406の外面との境界領域における外側コーナー部は、例えば、図5の符号R531に例示される。曲率半径は2mm以上8mm以下がより好ましく、3mm以上7mm以下がさらに好ましい。
【0103】
外側コーナー部の曲率半径は、内側コーナー部の曲率半径よりも大きい方が好ましい。
【0104】
[車両駆動用のバッテリー]
本開示による電池は、車両に電力を供給し、車両を駆動するためのバッテリーであり、好ましくは、自動車に電力を供給し、自動車を駆動するための電池である。
【0105】
[エネルギー吸収部材]
本開示に係るバッテリートレイ20、401は、エネルギー吸収部材(図1および図2の符号30)を含むことが好ましい。
【0106】
自動車用バッテリーの搭載量の増加に伴い、バッテリーケースのサイズが年々大きくなっている。バッテリーケースの車幅方向の長さは、自動車の幅の70%以上であることが多く、80%以上になることもある。このため、自動車の下部に大型のバッテリーケースを搭載すると、衝突時に従来よりも大きな荷重がバッテリーケースに入力される。したがって、衝突時の衝撃エネルギーを吸収してバッテリーを保護するエネルギー吸収構造を設けることが好ましい。
【0107】
エネルギー吸収部材30は、車体横方向からの衝撃エネルギーを吸収するために設けられることが好ましく、エネルギー吸収部材30が周壁404の車体前後方向外側に沿って設けられることが好ましい。図2のY軸方向が車体方向である。
【0108】
エネルギー吸収部材30の形状は、図2に示すようなハット形状の繰り返しであることが好ましい。ハット形状を有するエネルギー吸収部材30は、プレス成形により作製することができる。
【0109】
ハット形状の繰り返しを有するエネルギー吸収部材の形状において、エネルギー吸収開始側のハット上面の端部の長さL1とバッテリートレイ側の端部の長さL2との関係が、L2>Lであることが好ましい。長さL1およびL2は、車軸方向に測定される(図9A~9D)。
【0110】
すなわち、ハット形状のエネルギー吸収部材の上面は、車幅方向(図2のY軸方向)に対して角度γでエネルギー吸収開始側に向かって狭まり、角度γは3度以上が好ましく、10度以上がより好ましい。角度γは、図7Aから図7Cおよび図10に例示されている。
【符号の説明】
【0111】
10 バッテリーボックス
20 バッテリートレイ
22 バッテリートレイの底
24、24’ バッテリートレイの側壁
26、26’ バッテリートレイの端壁
28 キャビティ
29 第1の内壁と第2の内壁とで形成される内部分割壁
30、30’、201 エネルギー吸収部材
32 ファスナー(エネルギー吸収部材とバッテリートレイの固定用)
40 バッテリーカバー
50 バッテリー
52 電圧線
60 強化フレーム
70 温度制御システム(冷却機構)
304:内部分割壁の上部
401:バッテリートレイ
402:フランジ
403:底部
404、301:周壁
405:第1の内壁
406:第2の内壁
407:スタッドボルト台座
408:スタッドボルト台座の上面
409:スタッドボルト
410:バッテリー
411:バッテリーブラケット
412:挿入孔
413:第1の内壁、第2の内壁、およびスタッドボルト台座で囲まれた空間領域
414:冷却機構
α:底部と第1の内壁とがなす角度
β:底部と第2の内壁とがなす角度
H1:底部からフランジまでの高さ
H2:底部からスタッドボルト台座の上面までの高さ
H3:底部から第2底部までの高さ
601:第2底部
602:金属カバー
R501:底部と周壁の境界領域における内側コーナー部
R502:底部と周壁の境界領域における外側コーナー部
R520:底部と第1の内壁の境界領域における内側コーナー部
R521:底部と第1の内壁の境界領域における外側コーナー部
R530:底部と第2の内壁の境界領域における内側コーナー部
R531:底部と第2の内壁の境界領域における外側コーナー部
γ:ハット形状のエネルギー吸収部材の上面がエネルギー吸収開始側に向けて狭まる角度
L1:ハット形状のエネルギー吸収部材の上面における、エネルギー吸収開始側の端部の長さ
L2:ハット形状のエネルギー吸収部材の上面における、バッテリートレイ側の端部の長さ
【0112】
本明細書で言及される特許文献および刊行物は、本発明が関係する当業者のレベルを示すものである。これらの文献および刊行物は、個々の文献または刊行物が具体的かつ個別に参照により本明細書に組み込まれるのと同程度に、参照により本明細書に組み込まれる。
【0113】
以上の説明は、本発明の特定の実施形態を例示するものであるが、その実施を限定することを意味するものではない。以下の特許請求の範囲は、そのすべての均等物を含めて、本発明の範囲を定義することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図8C
図8D
図9A
図9B
図9C
図9D
図10