IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビー.ブラウン ミートケ ゲーエムベーハー ウント コーカーゲーの特許一覧

特許7530458埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム
<>
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図1
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図2
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図3
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図4
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図5
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図6
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図7
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図8
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図9
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図10
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図11
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図12
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図13
  • 特許-埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】埋め込まれた注入装置に治療薬を供給するための方法およびシステム
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/142 20060101AFI20240731BHJP
   A61M 39/04 20060101ALI20240731BHJP
   A61M 37/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
A61M5/142 524
A61M39/04
A61M37/00 560
【請求項の数】 9
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023019294
(22)【出願日】2023-02-10
(62)【分割の表示】P 2021540332の分割
【原出願日】2020-02-25
(65)【公開番号】P2023065444
(43)【公開日】2023-05-12
【審査請求日】2023-03-10
(31)【優先権主張番号】62/811,161
(32)【優先日】2019-02-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】521305077
【氏名又は名称】ビー.ブラウン ミートケ ゲーエムベーハー ウント コーカーゲー
【氏名又は名称原語表記】B. BRAUN MIETHKE GMBH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Ulanenweg 2, 14469 Potsdam Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ブランドン ラウダーミルク
(72)【発明者】
【氏名】マイケル ソレンセン
【審査官】竹下 晋司
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2014/0207085(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0116665(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/142
A61M 39/04
A61M 37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
埋め込み型注入装置のための再充填針であって、
近位端から遠位端まで延在しており、前記遠位端から離れて配置された磁性部を含む、長尺ボディを備えており、
記磁性部は、1ビットの情報を符号化するために、選択可能な磁場の向きおよび/または強度を有しており、
前記再充填針は、
前記注入装置の下側チャンバを再充填するように構成され、前記磁性部としての第1の磁性部と、前記針の前記遠位端から第1の軸方向距離だけ離れて配置された下側針開口部と、前記近位端から前記下側針開口部まで延在する流体チャネルと、を有する下側チャンバ針と、
前記注入装置の上側チャンバを再充填するように構成され、前記磁性部としての第2の磁性部と、前記針の前記遠位端から前記第1の軸方向距離よりも大きい第2の軸方向距離だけ離れて配置された上側針開口部と、前記近位端から前記上側針開口部まで延在する流体チャネルと、を有する上側チャンバ針と、を含む群の中から選択され、
前記第1の磁性部における磁場の向きおよび/または強度は、前記第2の磁性部における磁場の向きおよび/または強度とは異なり、
前記磁性部において符号化された情報は、前記針を前記下側チャンバ針または前記上側チャンバ針のいずれかとして識別するために用いられる、再充填針。
【請求項2】
前記磁場は、磁極が互いに軸方向に離間するように、軸方向に配向される、請求項1の再充填針。
【請求項3】
前記磁場は、磁極が互いに半径方向の内側および外側に配置されるように、前記半径方向に配向される、請求項1の再充填針。
【請求項4】
前記磁場は、磁極が円周方向で互いに対向して配置されるように、直径方向に配向される、請求項1の再充填針。
【請求項5】
前記長尺ボディは、成形プラスチックで作られており、
前記磁性部は、前記プラスチック内でオーバーモールドされた永久磁石によって形成される、請求項1から4の何れか一項の再充填針。
【請求項6】
前記長尺ボディは、1ビットの情報を記憶するために、第1の磁場の向きまたは第2の磁場の向きにおいて選択的に磁性である、2つ以上の前記磁性部を含む、請求項1から5の何れか一項の再充填針。
【請求項7】
前記下側チャンバ針の前記第1の磁性部は、前記遠位端から距離dmagnet1だけ離れて配置された第1の磁石と、前記遠位端から距離dmagnet2だけ離れて配置された第2の磁石と、を含み、
前記第1の磁石は、第1のビットの情報を符号化するために、選択可能な第1の磁場強度を有しており、
前記第2の磁石は、第2のビットの情報を符号化するために、選択可能な第2の磁場強度を有する、請求項1から6の何れか一項の再充填針。
【請求項8】
前記上側チャンバ針の前記第2の磁性部は、前記遠位端から距離dmagnet3だけ離れて配置された第3の磁石と、前記遠位端から距離dmagnet4だけ離れて配置された第4の磁石と、を含み、
前記第3の磁石は、第3のビットの情報を符号化するために、選択可能な第3の磁場強度を有しており、
前記第4の磁石は、第4のビットの情報を符号化するために、選択可能な第4の磁場強度を有する、請求項1から7の何れか一項の再充填針。
【請求項9】
前記長尺ボディは、前記近位端に流体接続しており、前記長尺ボディの前記遠位端から離れて配置されている針開口部を含む、請求項1から8の何れか一項の再充填針。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、埋め込み型医療装置、特に、埋め込み型マルチチャンバ注入装置、ならびに埋め込み型注入装置を再充填するための方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
埋め込み型注入装置は、患者に治療薬の長期注入を提供するために使用される。埋め込み型注入装置は、例えば、慢性疼痛の治療のための髄腔内薬物送達システム(IDDS)に使用される。これらのシステムは、麻酔薬をリザーバからカテーテルを通して脊髄後角に送達する。
【0003】
埋め込み型注入装置は、隔壁によって密閉され、隔壁を通してアクセス可能なリザーバを含む。リザーバは、通常、患者の皮膚および隔壁を通して皮下注射針をリザーバ内に挿入することによって再充填される。
【0004】
埋め込み型血管アクセスポート(VAP)は、患者の循環系への治療薬の頻繁な注入が長期間にわたって必要とされる場合、医療現場で使用される。そのようなVAPは、一般的に、リザーバおよび隔壁を収容するハウジングを含み、カテーテルがハウジングから延在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
米国特許出願公開第2004/0073196号は、針検出器を有する血管アクセスポートを開示している。これにより、医療専門家は、針が隔壁を通してVAPの内部リザーバ内に正しく挿入されたことを確認することができる。VAPシステムは、針が誤って抜去された場合、患者および/または医療専門家に通知する。米国特許出願公開第2004/0073196号の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0006】
米国特許出願公開第2014/0228765号は、埋め込み型注入装置の薬物リザーバの隔壁に対する針の位置を検出して表示する針侵入検出器を含む、再充填可能な埋め込み型注入装置および方法を開示する。針位置データを用いて、医療専門家は、より確実に薬物リザーバ内に薬物を注射してもよく、したがって、患者の安全性を向上してもよい。米国特許出願公開第2014/0228765号の内容は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0007】
公知の針検出システムは、単一リザーバ注入装置および血管アクセスポートと共に働くように設計されている。これらの公知のシステムは、2つ以上の治療薬を受け取る、より複雑なマルチリザーバ注入装置またはVAPの複雑さおよび潜在的な故障モードに対処していない。
【課題を解決するための手段】
【0008】
埋め込み型注入装置は、ハウジングを含む。再充填チャンバは、ハウジング内に配置される。再充填チャンバは、再充填ポートを通してアクセス可能である。自己密封型の外部隔壁(self-sealing external septum)は、再充填ポートに配置され、再充填チャンバにおける上側チャンバのアクセス開口部を形成する。自己密封型の内部隔壁(self-sealing inner septum)は、外部隔壁の下方で再充填チャンバ内に配置される。内部隔壁は、上側チャンバを下側チャンバから分離する。1つのセンサまたは第1のセンサおよび第2のセンサは、再充填チャンバに配置される。プロセッサは、第1のセンサおよび第2のセンサに動作可能に接続される。プロセッサは、第1のセンサおよび第2のセンサから受信した信号に応じて、再充填チャンバにおける針の存在を検出するように構成される。プロセッサは、針開口部の位置を下側チャンバまたは上側チャンバに関連付けるようにさらに構成される。
【0009】
無線送信機は、プロセッサに動作可能に接続されてもよく、プロセッサは、針開口部の位置と下側チャンバまたは上側チャンバとの関連付けに関する信号を外部装置に送信するように構成されてもよい。
【0010】
第1のセンサは、再充填チャンバの底部に配置された接触センサであってもよく、第2のセンサは、再充填チャンバに隣接してハウジング内に配置されたホール効果センサ(Hall Effect sensor)または微小電気機械システム磁場センサ( microelectromechanical systems magnetic field sensor)であってもよい。
【0011】
第1のセンサおよび/または第2のセンサは、多軸測定してもよい。第1および/または第2のセンサは、1次元、2次元および/または3次元で測定してもよい。この結果、針の強度測定が改善される。さらに、針の方向、すなわちそのベクトルの検出が改善される。
【0012】
代替の単一センサ埋め込み型注入装置は、ハウジングと、ハウジング内に配置された再充填チャンバとを含んでもよい。再充填チャンバは、再充填ポートを通してアクセス可能である。自己密封型の外部隔壁は、再充填ポートに配置され、再充填チャンバにおいて上側チャンバのアクセス開口部を形成する。自己密封型の内部隔壁は、外部隔壁の下方で再充填チャンバ内に配置され、上側チャンバを下側チャンバから分離する。磁場センサは、再充填チャンバに配置され、プロセッサに動作可能に接続される。プロセッサは、磁場センサから受信した信号に応じて、再充填チャンバにおける針の存在を検出し、磁場センサにおける磁場の向きおよび/または強度を評価することによって、針開口部の位置を下側チャンバまたは上側チャンバと関連付けるように構成される。
【0013】
埋め込み型注入装置を再充填するためのシステムは、埋め込み型注入装置を含む。埋め込み型注入装置は、ハウジング内に配置された再充填チャンバを含む。再充填チャンバは、再充填ポートを通してアクセス可能である。上側チャンバは、再充填チャンバ内に形成され、再充填ポートに配置された自己密封型の外部隔壁を通してアクセス可能である。下側チャンバは、再充填チャンバ内に形成される。下側チャンバは、再充填チャンバ内に配置された自己密封型の内部隔壁によって上側チャンバから分離されている。磁場センサは、再充填チャンバの底部から距離dsensorだけ離れて配置される。プロセッサは、磁場センサに動作可能に接続される。
【0014】
システムは、再充填針をさらに含む。再充填針は、近位端から遠位端まで延在する長尺ボディを有する。針は、遠位端から距離dmagnetだけ離れて配置された磁性部を含む。近位端と流体接続する針開口部は、長尺ボディの遠位端から離れて配置される。ユーザインターフェース装置は、埋め込み型注入装置と無線通信する。dsensorは、dmagnetに対して位置決めされ、換言すれば、距離dsensorは、dmagnetに対して調整され、換言すれば、dsensorおよびdmagnetは、互いに適合される。磁場センサおよび磁石は、略同じ高さに配置され、すなわち、dsensorは、dmagnetに少なくとも略等しく、具体的には0,5*dmagnet≦dsensor≦1,6*dmagnet、より具体的には0,75*dmagnet≦dsensor≦1,5*dmagnet、より具体的には1,0*dmagnet≦dsensor≦1,3*dmagnetである。一実施形態では、dsensorはdmagnetに等しい。別の実施形態では、磁性部が挿入されたときにセンサを通過するように、dsensorは、dmagentよりもわずかに長い。プロセッサは、磁場センサから受信された信号に応じて、針開口部の位置を下側チャンバまたは上側チャンバに関連付けるように構成される。ユーザインターフェース装置は、上側チャンバまたは下側チャンバ内の針開口部の位置を表示するように構成される。
【0015】
プロセッサは、下側閾値を上回る磁場強度を有する磁場が磁場センサによって検出された場合に、針が正しく挿入されたことを認識するように構成されてもよい。プロセッサは、磁性部における磁場の向きおよび/または強度に応じて、針開口部の位置を下側チャンバまたは上側チャンバに関連付けるようにさらに構成されてもよい。治療薬で満たされた再充填容器は、長尺ボディの近位端において分離不能に接続されてもよい。
【0016】
このシステムは、針の位置を検出することができるだけでなく、複数の針を区別することができる。
【0017】
磁場センサは、ホール効果センサであってもよい。代替的に、または付加的に、磁場センサは、微小電気機械システム磁場センサであってもよい。
【0018】
埋め込み型注入装置は、再充填チャンバの底部から距離dsensor2だけ離れて配置された第2の磁場センサをさらに含んでもよい。再充填針の長尺ボディは、遠位端から距離dmagnet2だけ離れて配置された第2の磁性部を含んでもよく、具体的には0,5*dmagnet2≦dsensor2≦1,6*dmagnet2、より具体的には0,75*dmagnet2≦dsensor2≦1,5*dmagnet2、より具体的には1,0*dmagnet2≦dsensor2≦1,3*dmagnet2である。第2のセンサおよび第2の磁性部は、針が埋め込み型注入装置に完全に挿入されたとき、すなわち、dsensor2=dmagnet2のとき、同じ位置に並べられてもよい。別の実施形態では、dsensor2は、第2の磁性部が挿入されたときに第2のセンサを通過するように、dmagent2よりもわずかに長い。プロセッサは、磁性部における第1の磁場の向きおよび/または強度、および第2の磁性部における第2の磁場の向きおよび/または強度に関する情報を伝達するように構成されてもよい。
【0019】
埋め込み型注入装置のための再充填針は、近位端から遠位端まで延在する長尺ボディを有する。再充填針は、遠位端から距離dmagnet1だけ離れて配置された第1の磁性部と、遠位端から距離dmagnet2だけ離れて配置された第2の磁性部とを含む。第1の磁性部は、第1のビットの情報を符号化するための選択可能な第1の磁場の向きおよび/または強度を有し、第2の磁性部は、第2のビットの情報を符号化するための選択可能な第2の磁場の向きおよび/または強度を有する。
【0020】
第1および第2の磁場は、磁性部において、磁極が互いに軸方向に離間するように、軸方向に配向されてもよい。または、第1および第2の磁場は、磁極が互いに半径方向の内側および外側に配置されるように、半径方向に配向されてもよい。または、第1および第2磁場は、各磁性部の磁極が円周方向で互いに対向して配置されるように、直径方向に配向されてもよい。
【0021】
長尺ボディは、成形プラスチックで作られてもよく、磁性部は、プラスチック内でオーバーモールドされた永久磁石によって形成されてもよい。再充填針の長尺ボディは、1ビットの情報を記憶するために、第1の磁場の向きおよび/または強度、または第2の磁場の向きおよび/または強度において選択的に磁性である、3つ以上の複数の磁性部を含んでもよい。
【0022】
長尺ボディは、長尺ボディの遠位端から第1の距離dlまたは第2の距離duだけ離れて配置されており、円周方向に離間している複数の開口部を含んでもよい。長尺ボディは、近位端から、長尺ボディの遠位端から距離dlだけ離れた開口部まで延在する第1の流体チャネルと、近位端から、長尺ボディの遠位端から距離duだけ離れた開口部まで延在する第2の流体チャネルとを含んでもよい。
【0023】
マルチリザーバ注入ポンプに治療薬を再充填するための方法は、第1のリザーバを充填するための以下のステップ、すなわち、マルチリザーバ注入ポンプの第1のリザーバに再充填される第1の治療薬を選択するステップと、第1の治療薬が入った第1の再充填容器と第1の再充填針とを結合するステップであって、第1の再充填針は、再充填針の遠位端から第1の距離dlだけ離れて配置された第1の針開口部を有しており、前記第1の針開口部は、マルチリザーバ注入ポンプの再充填ポートに完全に挿入されると、第1のリザーバと流体連通する、結合するステップと、第1の再充填針を再充填ポートに挿入するステップと、第1の治療薬を第1の再充填容器から第1のリザーバに送達、例えば送達するステップと、を含む。
【0024】
本方法は、第2のリザーバを再充填するための以下のステップ、すなわち、マルチリザーバ注入ポンプの第2のリザーバに再充填される第2の治療薬を選択するステップと、第2の治療薬が入った第2の再充填容器と第2の再充填針とを結合するステップであって、第2の再充填針は、再充填針の遠位端から第2の距離duだけ離れて配置された第2の針開口部を有しており、前記第2の針開口部は、マルチリザーバ注入ポンプの再充填ポートに完全に挿入されると、第2のリザーバと流体連通する、結合するステップと、第2の再充填針を再充填ポートに挿入するステップと、第2の治療薬を第2の再充填容器から第2のリザーバに送達するステップと、をさらに含む。
【0025】
本方法は、再充填ポートに配置された磁場センサを用いて、第1の再充填針および第2の再充填針の磁性部における磁場の向きおよび/または強度を特定するステップと、磁場の向きおよび/または強度に基づいて、第1の再充填針と第2の再充填針を区別するステップと、をさらに含んでもよい。
【0026】
本方法はまた、磁場センサを用いて、最大許容閾値よりも強い磁場の存在を特定するステップと、最大許容閾値よりも強い磁場を検出することに応じて、マルチリザーバ注入ポンプを無効にするステップと、を含んでもよい。本方法は、磁場センサの基準測定値を特定するために初期化測定を行うステップを含んでもよい。本方法は、再充填ポートにおいて、軸方向に離間している複数の2つ以上の磁場センサを用いて、第1の再充填針および第2の再充填針の磁性部内の等しい数の2つ以上の磁場の向きおよび/または強度を特定するステップをさらに含んでもよい。次に、本方法は、2つ以上の磁場センサからルックアップテーブルを介して検索された情報を関連付けてもよく、ルックアップテーブルから検索された情報を外部のユーザインターフェース装置に伝達してもよい。外部のユーザインターフェース装置は、スマートフォン、コンピュータ、またはタブレットコンピュータであってもよい。外部ユーザインターフェース装置は、下側リザーバおよび上側リザーバのどちらが再充填されているかをリアルタイムで表示してもよい。本発明の以下の詳細な説明は、当然に単に例示的なものであり、本発明または本発明の用途および使用を限定することを意図するものではない。さらに、本発明の前述の背景または以下の本発明の詳細な説明に提示される理論は、本発明を拘束することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0027】
図1】埋め込み型注入装置を再充填するためのシステムを示す図である。
図2】上側チャンバ再充填針を示す図である。
図3】下側チャンバ再充填針を示す図である。
図4】両チャンバ再充填針を示す図である。
図5】別の下側チャンバ再充填針を示す図である。
図6】別の上側チャンバ再充填針を示す図である。
図7図6の分解図である。
図8】軸方向配向の磁性部を示す図である。
図9】半径方向配向の磁性部を示す図である。
図10】直径方向配向の磁性部を示す図である。
図11】斜め配向の磁性部を示す図である。
図12】埋め込み型注入装置を再充填するためのシステムの斜視断面図である。
図13】埋め込み型注入装置を再充填するためのシステムの上面図である。
図14図13のB-B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、ハウジング110を有する埋め込み型マルチチャンバ注入装置100を再充填するためのシステムを概略的に示す。埋め込み型注入装置100は、再充填チャンバ120内に2つの異なる治療薬を保持する埋め込み型注入ポンプであってもよい。再充填チャンバ120は、上側チャンバ122と下側チャンバ124とに分割されている。治療薬は、チャンバ122、124から、埋め込み型カテーテルを通って、治療薬が投与される投与領域へと、経時的にポンプ輸送されてもよい。例えば、埋め込み型注入装置は、疼痛管理用途において、2つの代替麻酔薬をチャンバからカテーテルを通して脊髄の後角に送達してもよい。
【0029】
チャンバ122、124は、治療薬の供給を保持するリザーバであってもよい。その場合、チャンバ122、124は、例えば、毎月1回など特定の期間で、または各治療薬の使用量の測定に基づいて必要に応じて、再充填される必要がある。チャンバ122、124は、1ヶ月にわたる投与のために十分な治療薬を保持するような大きさであってもよく、1ヶ月にわたる投与の後に、再充填される必要がある。チャンバ122、124の再充填は、患者の皮膚を通して、埋め込み型注入装置100の再充填ポート130に針200を挿入することによって行われてもよい。その目的のために、再充填ポート130は、針200が貫通することができる自己密封型の外部隔壁132を含む。自己密封型の外部隔壁132は、針200をチャンバから引き抜く際にチャンバを再密封する。同様に、上側チャンバ122と下側チャンバ124は、自己密封型の内部隔壁134によって分離されてもよい。
【0030】
あるいは、再充填ポート130内のチャンバ122、124は、小さくてもよく、治療薬の供給を貯蔵するように設計されていなくてもよく、むしろ、流体出口142、144を通して、別々に形成されたリザーバまたはタンクと流体接続するように設計されていてもよい。代替の構成では、再充填ポート130内のチャンバのうちの1つは、埋め込み型注入ポンプのタンクに結合されてもよく、一方、別のチャンバは、埋め込み型カテーテルに結合され、カテーテルアクセスポイントとして機能する。
【0031】
上側チャンバおよび下側チャンバは、異なる治療薬で充填されることが好ましく、こうすることで、単一リザーバ埋め込み型注入ポンプが提供し得る治療と比べて、非常に柔軟性の高い治療が可能となる。例えば、上側再充填チャンバ122内に貯蔵された第1の治療薬は、日中に投与されてもよく、一方、下側再充填チャンバ124内に貯蔵された第2の治療薬は、夜間に投与されてもよい。マルチリザーバ埋め込み型装置の使用は、医療専門家に独自の治療選択肢を提供し、埋め込み型注入装置においてプログラムされた規則に基づいて、異なる治療薬が投与されることを可能にする。
【0032】
異なるチャンバは、下側チャンバ124または上側チャンバ122のいずれかを再充填するように特に構成された針200を使用することによって、別々に再充填されてもよい。図2に示すように、上側チャンバ再充填針230は、針230の遠位端202にある先端から軸方向距離duoだけ離れて配置された上側開口部212を有する。軸方向距離duoは、針が再充填チャンバ120に完全に挿入されたときに、上側針開口部212が上側チャンバ122内に位置するように選択される。好ましくは、距離duoは、針230が再充填チャンバ120に完全に挿入されたときに、上側針開口部212が外部隔壁132と内部隔壁134との間で軸方向中央に位置するように選択される。
【0033】
自己密封型の外部隔壁132は、上側チャンバ122の上側境界を形成する。自己密封型の内部隔壁134は、上側チャンバ122の下側境界および下側チャンバ124の上側境界を形成する。外部隔壁132および内部隔壁134は、円板形状であってもよく、円筒形の再充填チャンバ120内に保持されてもよい。円筒形の再充填チャンバ120は、壁111に沿って底部113から再充填ポート130まで延在してもよい。外部隔壁132および内部隔壁134は、互いに軸方向にオフセットした平行な平面に配置されてもよい。
【0034】
図3は、下側チャンバ124を再充填するように構成された下側チャンバ針240を示す。下側針開口部211は、針の遠位端に、先端から距離dloだけ離れて配置されている。距離dloは、再充填チャンバ120の底部113から内部隔壁134までの距離以下であるべきである。距離dloは、可能な限り短くなるように選択されてもよい。
【0035】
図4は、上側チャンバ122および下側チャンバ124を同時に再充填するために使用され得る両チャンバ針250を示す。この目的のために、両チャンバ針250は、下側針開口部211と上側針開口部212の両方を有する。再充填チャンバ120に完全に挿入されると、下側針開口部211は、下側チャンバ124において内部隔壁134の下方に位置する。上側針開口部212は、上側チャンバ122において内部隔壁134の上方に位置する。第1の流体チャネル231は、針250の近位端から下側針開口部211への流体接続を提供する。第2の流体チャネル232は、針250の近位端から上側針開口部212への流体接続を提供する。
【0036】
再充填チャンバ120は、1つの内部隔壁134および2つのチャンバのみを有するように図示されているが、当業者は、2つ以上の内部隔壁を使用して、再充填チャンバを3つ以上のチャンバに分離することができるということを認識するであろう。その結果、再充填針は、追加のチャンバを再充填するために2つの内部隔壁の間に位置するように軸方向に離間した針開口部を有することによって、3つ以上のチャンバを再充填するように構成されてもよい。
【0037】
当業者はまた、開示された埋め込み型注入装置が、埋め込み型ポンプ、または外部ポンプと組み合わせて動作する埋め込み型血管アクセスポートであり得るということも認識するであろう。
【0038】
埋め込み型注入システムのための針検出システムは、一般的に知られている。しかしながら、公知のシステムは、マルチチャンバシステムの複雑さおよび潜在的な故障モードに対処していない。特に、マルチチャンバシステムは、各チャンバが正しい治療薬で充填されることを確実にするために、再充填中に多大な注意を必要とする。医療プロセスは、適切な治療薬が患者に投与されることを確実にしなければならないだけでなく、2つ以上の治療薬の各々が、マルチチャンバシステム内の正しいチャンバ内に充填されることも確実にしなければならない。
【0039】
したがって、マルチチャンバ注入システムは、針検出および針識別システムを含むことが好ましい。針検出および針識別システムは、再充填チャンバ120に配置された1つ以上のセンサに基づく。底部センサ156は、再充填チャンバの底部113に配置されてもよい。底部センサ156は、針200が再充填チャンバ120に完全に挿入されたことを検出するための、圧力感知スイッチなどの接触センサであってもよい。この構成では、底部センサ156は、針200の存在を検出するためだけに機能し、針200を識別するためには機能しない。
【0040】
あるいは、底部センサ156は、針の磁性部220に関連する磁場を検出するように構成された磁場センサであってもよい。つまり、針200は、その長尺ボディ201内に磁性部220を含んでもよい。磁性部220は、針200のボディ201内に組み込まれた永久磁石によって形成されてもよい。永久磁石は、プラスチック製の針ボディ201内でオーバーモールドされ、軸方向に磁化された永久リング磁石であってもよい。針検出および針識別システムの基本的な実施において、単一の磁性部220は、底部磁場センサ156と相互作用してもよい。磁場センサ156は、磁場センサ156からの信号を読み取り評価するように構成されたマイクロプロセッサに動作可能に接続されてもよい。これにより、マイクロプロセッサは、センサ156における磁場強度が閾値を超えたときに、再充填チャンバ120内の針200の存在を検出してもよい。閾値は、所定の固定値であってもよく、または、針200が挿入される前に実行される磁場強度の測定値に依存してもよい。
【0041】
磁場センサ156は、さらに、針200を下側チャンバ針240または上側チャンバ針230であるとして識別および区別するために使用されてもよい。この目的のために、上側チャンバ針230は、対応する下側チャンバ針240の磁場と反対向きの極性を持つ下側磁性部224を有してもよい。図2に示すように、上側チャンバ針230は、N極が針の遠位端に向かって配置されている磁性部224を有する。図3に示される対応する下側チャンバ針240は、針の先端から同じ距離に配置されるが、反対向きの極性をもつ磁性部220を有する。下側チャンバ針240のS極は、針の遠位端から、上側チャンバ針230のN極と同じ距離にある。底部磁場センサ156と通信するプロセッサ(図示せず)は、磁場の極性に関係なく、十分な強度の磁場の存在を確認することによって、針が完全に挿入されているかどうかを特定することができる。同じ底部センサ156は、針における磁場の極性を特定することによって、針を下側チャンバ針または上側チャンバ針として識別するために使用され得る。
【0042】
図1に示すように、複数のセンサが使用され得る。例えば、上側磁場センサ152および下側磁場センサ154が、再充填チャンバ120に配置されてもよい。上側磁場センサ152および下側磁場センサ154は、ホール効果センサ素子または微小電気機械システム磁場センサ素子を含んでもよい。各磁場センサは、複数のホール効果センサ素子または微小電気機械システム磁場センサ素子を含んでもよく、例えば、再充填チャンバの底部113から軸方向に同じ距離または異なる距離だけ離れたところで、再充填チャンバの周りに円周方向に分布する2つまたは3つのホール効果センサ素子または微小電気機械システム磁場センサ素子を含んでもよい。
【0043】
微小電気機械システム(MEMS)磁場センサは、小規模装置である。MEMS磁場センサは、磁場を検出し、測定することができる。このようなセンサは、ローレンツ力(Lorentz force)の影響を検出してもよく、例えば、電圧または共振周波数の変化を電子的に測定してもよく、または、機械的変位を光学的に測定してもよい。温度の影響は補償されるはずである。MEMS磁場センサは、例えば、共振周波数(resonance frequency)、モード形状(mode shape)、応答性(responsivity)、品質係数(quality factor)、または分解能(resolution)などの様々なパラメータを備える。
【0044】
共振周波数は、MEMS磁場センサの振動振幅が最も高いか、または最も長くなる周波数である。センサの振動のパターンは、モード形状である。同じ外部条件で得られる振動の大きさは、応答性によって表される。品質係数は、振動中に共振器によってどれだけのエネルギーが維持されるかを表す。分解能は、測定可能な最小の磁場を表す。
【0045】
MEMS磁気センサは非常に小さく、非常に小さな磁場を検出してもよい。したがって、MEMS磁場センサによる磁場測定は、高い分解能を有する。さらに、MEMS磁場センサは、磁場の発生源の近く、すなわち、再充填針の位置の近くに配置されてもよい。
【0046】
磁場センサは、磁場の強度および/または向きを検出するように構成された1つ以上の感知素子から成るものであってもよい。
【0047】
磁場センサ152、154の使用および磁場センサごとに複数のセンサ素子を使用することによって、センサ信号の複雑な処理において三角測量を用いることが可能になり、それによって、再充填チャンバ内の針の位置をより正確に特定することが可能になる。
【0048】
さらに、埋め込み型装置は、2つ以上の磁場センサを備えてもよい。例えば、第3の磁場センサは、埋め込みおよび再充填ポートの周囲の磁場を特定してもよい。つまり、第3の磁場センサは、埋め込み型注入装置のハウジングにおいて配置されてもよい。
【0049】
再充填針は、互いに軸方向に離間した2つ以上の磁性部を含んでもよい。好ましくは、針における磁性部の軸方向の位置は、再充填チャンバにおける磁場センサの軸方向の位置に対応する。図1に示すように、針200の上側磁性部222は、針が完全に挿入されると、上側磁場センサ152と軸方向でほぼ同じ位置に並べられる。下側磁性部224は、針200が完全に挿入されると、下側磁場センサ154と軸方向で同じ位置に並べられる。
【0050】
好ましくは、図5に示すように、さらなる下側チャンバ再充填針240’が示される。その例では、下側チャンバ再充填針240’は、下側磁性部224および上側磁性部223を含んでもよい。ボールであってもよい距離要素225は、下側磁性部224を上側磁性部223から離間させてもよい。
【0051】
密封要素226は、少なくとも1つの下側針開口部211を下側磁性部224および上側磁性部223から分離してもよい。したがって、下側針開口部211は、下側磁性部224および上側磁性部223より近位に配置される。
【0052】
下側磁性部224の磁場は、上側磁性部222の磁場と反対向きの極性を持つ。その例では、下側磁性部224は、近位端にS極を備えており、遠位端にN極を備える。上側磁性部222は、近位端にN極を備えており、遠位端にS極を備える。
【0053】
キャップ227は、下側磁性部224より遠位に配置される。キャップ227および密封要素226は、下側磁性部224および上側磁性部222を適所に保持する。
【0054】
再充填針240’の遠位端202は、中央先端を備えてもよい。中央先端は、3つの鋭利な面を備えてもよい。
【0055】
図6は、別の上側チャンバ再充填針230’を示す。この例では、上側チャンバ再充填針230’は、下側磁性部220および上側磁性部222を含んでもよい。ボールであってもよい距離要素225は、下側磁性部220を上側磁性部222から離間させてもよい。
【0056】
密封要素226は、少なくとも1つの上側針開口部212を下側磁性部220および上側磁性部222から分離してもよい。したがって、上側針開口部212は、下側磁性部220および上側磁性部222より近位に配置される。さらに、上側針開口部212の位置は、下側チャンバ再充填針240’の下側針開口部211の位置よりも上側チャンバ再充填針230’の近位端に近い。
【0057】
下側磁性部220の磁場は、上側磁性部222の磁場と反対向きの極性を持つ。さらに、極性は、図5の例とは反対である。図6では、下側磁性部220は、近位端にN極を備えており、遠位端にS極を備える。上側磁性部222は、近位端にS極を備えており、遠位端にN極を備える。したがって、図6に示す例の磁性部の極性は、図5に示す例の磁性部の極性と反対である。
【0058】
キャップ227は、下側磁性部220より遠位に配置される。キャップ227および密封要素226は、下側磁性部220および上側磁性部222を適所に保持する。
【0059】
再充填針230’の遠位端202は、中央先端を備えてもよい。中央先端は、3つの鋭利な側面を備えてもよい。
【0060】
図7は、図6の上側チャンバ再充填針230’の分解図を示す。再充填針を製造するために、密封要素226、上側磁性部222、距離要素225、および下側磁性部220は、再充填針230’のカニューレの遠位開口部に押し込まれる。密封要素226、上側磁性部222、距離要素225、および下側磁性部220は、カニューレの直径よりもわずかに大きい直径を備えてもよい。その場合、密封要素226、上側磁性部222、距離要素225、および下側磁性部220をカニューレに押し込むことによって、再充填針におけるそれらの位置が固定される。
【0061】
キャップ227は、カニューレ内のものを固定するために、カニューレの遠位開口部に押し込まれてもよい。しかしながら、キャップ227は、別の方法によってカニューレに固定されてもよい。
【0062】
次いで、中央先端は、再充填針の遠位端202の遠位開口部に押し込まれる。あるいは、中央先端は、遠位端にある遠位開口部に接着または溶接されてもよい。
【0063】
上述の製造は、下側チャンバ再充填針240’にも適用される。
【0064】
図5および図6の例の磁性部220、222の構成は、距離要素225のところでセンサに対して90°回転した磁場をもたらす。これは、再充填針を注入装置に挿入するときに、磁力線の向きが、再充填針の軸に平行な方向から、再充填針の軸に直交する方向に転じることを意味する。これにより、センサは、距離要素225に近接して並ぶ磁場の位置を高精度で検出することができる。
【0065】
再充填針は、0.4mmから1.0mmの範囲内の外径を備えてもよく、好ましくは0.7mmの外径を備えてもよい。再充填針の内径は、0.2mmから0.8mmの範囲内であってもよく、好ましくは0.5mmであってもよい。
【0066】
針開口部の直径は、0.1mmから0.7mmの範囲内であってもよく、好ましくは0.35mmであってもよい。中央先端から針開口部の中心までの距離は、少なくとも6.0mmから80.0mmの範囲内であってもよい。
【0067】
距離要素225、上側磁性部222、および下側磁性部224の直径は、0.2mmから0.6mmの範囲内であってもよく、好ましくは0.4mmであってもよい。中央先端から距離要素225までの距離は、2.0mmから3.7mmの間であってもよく、好ましくは3.15mmであってもよい。
【0068】
磁性部220には様々な磁場構成を採用することができる。例えば、図8に示すように、磁場は、磁性部において磁極が互いに軸方向に離間するように、軸方向に配向され得る。あるいは、図9に示すように、磁場は、磁極が互いに半径方向の内側および外側に配置されるように、半径方向に配向され得る。図10に示すように、磁場は、各磁性部の磁極が円周方向で互いに対向して配置されるように、直径方向に配向され得る。図11に示すように、磁場は、斜めにされ得る。
【0069】
図9および図10は、直線磁化および斜め磁化の2極構成を示すが、多極構成も使用され得る。
【0070】
さらに、図8から図11は、軸方向に穴を備えている磁性部を示す。しかしながら、これらの穴は任意である。したがって、図8から図11に示すような磁性部は、穴がなくてもよい。
【0071】
針内で2つ以上の磁性部220、222を使用することによって、2ビット以上の情報を符号化することが可能になる。例えば、軸方向の磁場の向きを使用するときには、1ビットの情報は、「遠位がN」の構成、または「遠位がS」の構成を選択することによって符号化され得る。同様に、半径方向の磁場の向きにおいても、1ビットの情報は、「外側がN」の構成、または「外側がS」の構成を選択することによって符号化され得る。直径方向に配向された磁場の相対的な円周方向の向きは、1ビット以上の情報を符号化するために使用され得る。磁場の欠如は、情報を符号化するために使用され得る。針内で磁気的に符号化された情報は、針を識別するために、例えば、針を上側チャンバ針または下側チャンバ針として認識するために使用されてもよい。追加の情報は、針内で磁気的に符号化されてもよく、注入装置、または注入装置と無線通信する外部装置におけるプロセッサ内に記憶されたルックアップテーブルに関連付けられてもよい。追加の情報は、さらなる潜在的な故障モードを排除するために使用されてもよい。例えば、針は、治療薬で予め充填された再充填リザーバにしっかりと、分離不能に取り付けられてもよい。その場合、治療薬を識別するために、針は符号化され得る。注入装置は、その2つ以上の磁場センサを介して、針内で磁気的に符号化された情報を読み取り、その情報を外部装置に伝達してもよい。注入装置内のプロセッサは、正しくない針がその再充填チャンバに挿入された場合に、警告を提供するようにプログラムされてもよい。例えば、注入装置は、治療薬Aで下側再充填チャンバ124が満たされるであろうこと、および治療薬Bで上側チャンバ122が満たされるであろうことを認識するようにプログラムされてもよい。もし治療薬Cと関連付けられるように符号化された針が再充填チャンバ120に挿入されると、警告が発せられる。同様に、治療薬Aを収容するように符号化された上側チャンバ針230が挿入されると、警告が発せられ、薬剤とチャンバとの正しくない関連付けを医療プロセスに警告する。
【0072】
注入装置は、例えば触覚フィードバックによって、針の正しい挿入または正しくない挿入を患者に直接伝達するために、例えば振動要素のような、フィードバックアクチュエータを含んでもよい。
【0073】
再充填中、針200の下側磁性部224は、外部隔壁132の近くに配置された上側磁場センサ152と相互作用してもよい。特に、再充填ポート130に配置された2つ以上のホール効果センサまたは微小電気機械システム磁場センサ152を使用して、理想的には患者の皮膚を穿刺して再充填ポート130内の中心に針を適当に位置決めする前であっても、針200の位置を三角測量することができる。この目的のために、プロセッサは、2つ以上のホール効果センサまたは微小電気機械システムの磁場センサ素子において磁場の磁場強度を評価し、外部ユーザインターフェース装置を介して、全てのセンサにおいて等しい磁場強度を得るための位置決め指示を提供してもよい。その目的のために、埋め込み型注入装置は、プロセッサに動作可能に接続された無線送信機を含んでもよい。
【0074】
上側磁場センサ152と下側磁場センサ154は、同一平面内で感度が良くある必要はない。例えば、上側磁場センサ152は、針200の上側磁性部222における半径方向に配向された磁場を感知するように構成され得る。同時に、下側磁場センサ154は、下側磁性部220の軸方向に配向された磁場を感知するように構成されてもよい。もちろん、磁場センサは、磁場の種類(軸方向、半径方向、多極など)を利用して、針200内のさらなる情報を符号化することができるように、複数の異なる磁場の向きおよび/または強度を感知するように構成され得る。
【0075】
経時的にセンサ出力を評価し、したがって、符号化された必要なものが再充填ポート130に挿入されるときのセンサの周囲の磁場の変化を分析することによって、各磁場センサ152、154から導出される情報を最大化することは、有益であり得る。磁場センサ152、154に接続されたプロセッサは、例えば、センサ出力を毎秒複数回サンプリングして、センサの周りの磁場の最大磁場強度、または針の磁性部の長さを特定してもよい。n≧1個の磁界センサは、より多くのm≧1個の針の磁性部を分析するために使用されてもよい。
【0076】
注入装置の1つ以上の磁場センサを使用して、装置がMRI装置内にあることを示す強い磁場の存在を検出することができる。プロセッサは、装置がMRI装置の磁場に曝されている間、治療薬の投薬量が正しくない量になることを防止するために、過度の磁場を検出すると、装置内のポンプを停止し、および/または弁を閉じるように構成されてもよい。
【0077】
ここで、図12から図14を参照する。埋め込み型注入装置100のためのポートの異なる図が示されている。埋め込み型注入装置100は、埋め込み型注入ポンプの態様を、単一のポート130を有するカテーテルアクセスポート(CAP)の態様と組み合わせてもよい。ここで、注入装置100は、比較的細いほぼ円筒形のポートチャンバ120を含む。図示するように、ポートチャンバ120の直径は、再充填針200の直径よりわずかに大きいだけである。ポートチャンバ120の直径は、再充填針の直径の2倍未満であってもよく、再充填針の直径の1.5倍未満であってもよく、または再充填針の直径の1.2倍未満であってもよい。
【0078】
ポートチャンバ120に針を導入するために、外部ポートガイド131が設けられる。外部ポートガイド131は、円筒形の開口部で終端する円錐台形状を有する。外部ポートガイド131は、一般的に、漏斗のような形状および機能を有する。外部ポートガイド131の外径は、針200の直径の10倍を超えてもよく、20倍を超えてもよく、または30倍を超えてさえあってもよい。外部隔壁132は、外部ポートガイド131の下側の内側端部に配置される。
【0079】
外部隔壁132は、上側壁と下側壁との間のポートチャンバ120の幅広部内に保持された円板状のシリコーンの塊であってもよい。上側壁は、外部ポートガイド131の一部であってもよい。外部隔壁空洞137は、外部隔壁132の下方において、その直径が外部隔壁132の直径よりも小さく、かつ、針200の直径よりも大幅に大きくなるように形成されてもよい。
【0080】
流体出口142、144は、ポートチャンバ120の縦軸に垂直に配置される。第1の流体出口、例えば、下側流体出口144は、埋め込み型カテーテルに直接結合されてもよい。したがって、下側流体出口に関しては、埋め込み型注入装置100は、カテーテルアクセスポート、例えば、血管アクセスポートとして作用し、カテーテルアクセスポートは、針200がポートに挿入され、治療薬が外部から供給されている間に、治療薬を投与するために使用され得る。
【0081】
第2の流体出口、例えば、上側流体出口142は、埋め込み型注入ポンプの再充填可能なタンクと流体連通していてもよい。タンクは、その中にある治療薬の量に応じて伸び縮みする蛇腹のように形成されてもよい。
【0082】
再充填針の1つ以上の磁性部220は、最も低い位置の流体開口部の下方で、針200の遠位端に向かって配置されてもよい。この場合、磁性部220は、針200内の中空の空間に挿入される中実の円筒形の磁石によって形成され得る。1つ以上の磁場センサ154は、針200の磁性部220とほぼ同じ位置に並ぶように、下側チャンバの下方のポートチャンバの底部より近位に、底部から離間して配置されてもよい。2つ以上の磁場センサ(図示せず)は、再充填ポート130の下側端部にあるセンサチャンバ151内で軸方向に延在する針に沿って積み重ねられ得る。
【0083】
再充填ポート130は、互いに積み重ねられて、ネジ165によって一緒に保持される、別々に機械加工された部材161、162、163から作られてもよい。図示するように、外部隔壁132は、ポート130の上側部161内に保持されてもよい。内部隔壁134および上側流体出口142は、再充填ポートの中央部162内に配置されてもよい。下側流体出口144は、ポート130の下側部163内に配置されてもよい。隔壁空洞137、138は、それぞれの隔壁を上方の部内に保持し、針200が隔壁に挿入されたときに、隔壁が拡がるための空間を設けるために、中央部162および下側部163の上側端部に形成されてもよい。
【0084】
本明細書および以下の特許請求の範囲全体を通して、不定冠詞「a」または「an」は、「1つ以上の」を意味し、「第1の要素」という表現は、第2の要素の存在を必須とするものではない。
【0085】
本発明は、例示的な実施形態を参照して説明されてきたが、本発明は、開示または図示された実施形態に限定されず、逆に、以下の特許請求の範囲の趣旨および範囲内に含まれる多数の他の修正、置換、変形、および広範な同等の構成を包含することが意図されるということは、当業者にとって容易に理解されるであろう。
以下の項目は、出願当初の特許請求の範囲に記載されていた項目である。
(項目1)
埋め込み型注入装置であって、
ハウジングと、
前記ハウジング内に配置されており、再充填ポートを通してアクセス可能である、再充填チャンバと、
前記再充填ポートに配置されており、前記再充填チャンバにおける上側チャンバのアクセス開口部を形成する自己密封型の外部隔壁と、
前記再充填チャンバ内において、前記外部隔壁の下方に配置されており、前記上側チャンバを下側チャンバから分離する、自己密封型の内部隔壁と、
前記再充填チャンバに配置されたセンサと、
前記センサに動作可能に接続され、前記センサから受信した信号に応じて、前記再充填チャンバにおける針の存在を検出し、針開口部の位置を前記下側チャンバまたは前記上側チャンバに関連付けるように構成されたプロセッサと、を備える、埋め込み型注入装置。
(項目2)
前記再充填チャンバに配置された第2のセンサをさらに備えており、
前記プロセッサは、前記センサから受信した信号および前記第2のセンサから受信した信号に応じて、前記再充填チャンバにおける前記針の前記存在を検出し、前記針開口部の前記位置を前記下側チャンバまたは前記上側チャンバに関連付けるように構成されており、
特に、前記第2のセンサは、前記再充填チャンバに隣接して前記ハウジング内に配置された磁場センサであり、好ましくはホール効果センサまたは微小電気機械システム磁場センサである、項目1の埋め込み型注入装置。
(項目3)
前記センサは、前記再充填チャンバに隣接して前記ハウジング内に配置された磁場センサであり、好ましくはホール効果センサまたは微小電気機械システム磁場センサであり、
前記プロセッサは、前記磁場センサから受信した信号に応じて、前記再充填チャンバにおける針の存在を検出し、前記磁場センサにおける磁場の向きおよび/または強度を評価することによって、針開口部の位置を前記下側チャンバまたは前記上側チャンバと関連付けるように構成されており、または、
前記センサは、前記再充填チャンバの底部に配置された接触センサである、項目1または2の埋め込み型注入装置。
(項目4)
前記プロセッサに動作可能に接続された無線送信機をさらに備えており、
前記プロセッサは、前記針開口部の前記位置と前記下側チャンバまたは前記上側チャンバとの前記関連付けに関する信号を外部装置に送信するように構成される、項目1から3の何れか一項の埋め込み型注入装置。
(項目5)
埋め込み型注入装置を再充填するためのシステムであって、前記システムは、
項目3の埋め込み型注入装置であって、
前記再充填チャンバ内に配置されており、前記再充填ポートに配置された自己密封型の外部隔壁を通してアクセス可能である、上側チャンバと、
前記再充填チャンバ内に配置されており、前記再充填チャンバ内に配置された自己密封型の内部隔壁によって前記上側チャンバから分離されている、下側チャンバと、
前記再充填チャンバの底部から約距離dsensorだけ離れて配置された、磁場センサ、好ましくはホール効果センサまたは微小電気機械システム磁場センサと、
前記磁場センサに動作可能に接続されたプロセッサと、を含む埋め込み型注入装置と、
再充填針であって、
近位端から遠位端まで延在しており、前記遠位端から約距離dmagnetだけ離れて配置された磁性部を含む、長尺ボディと、
前記近位端に流体接続しており、前記長尺ボディの前記遠位端から離れて配置されている、針開口部と、を含む前記再充填針と、
前記埋め込み型注入装置と無線通信するユーザインターフェースと、を備えており、
dsensorは、dmagnetに対して位置決めされており、
前記プロセッサは、前記磁場センサから受信した信号に応じて、前記針開口部の位置を前記下側チャンバまたは前記上側チャンバに関連付けるように構成されており、
前記ユーザインターフェース装置は、前記上側チャンバまたは前記下側チャンバにおける前記針開口部の前記位置を表示するように構成されており、
前記プロセッサは、好ましくは、前記磁場センサによって、下側閾値を上回る磁場強度を有する磁場が検出された場合に、針が正しく挿入されたことを認識するように構成されており、
前記プロセッサは、さらに好ましくは、前記磁性部における磁場の向きおよび/または強度に応じて、前記針開口部の位置を前記下側チャンバまたは前記上側チャンバに関連付けるように構成される、システム。
(項目6)
前記長尺ボディの前記近位端に分離不能に接続されており、治療薬で満たされた再充填容器をさらに備える、項目5のシステム。
(項目7)
前記埋め込み型注入装置は、前記再充填チャンバの前記底部から約距離dsensor2だけ離れて配置された第2の磁場センサをさらに含んでおり、
前記再充填針の前記長尺ボディは、前記遠位端から約距離dmagnet2だけ離れて配置された第2の磁性部を含んでおり、
dsensor2は、dmagnet2に対して位置決めされており、
前記プロセッサは、前記磁性部における第1の磁場の向きおよび/または強度、および前記第2の磁性部における第2の磁場の向きおよび/または強度に関する情報を伝達するように構成される、項目5または6のシステム。
(項目8)
埋め込み型注入装置のための再充填針であって、
近位端から遠位端まで延在しており、前記遠位端から距離dmagnet1だけ離れて配置された第1の磁性部を含む、長尺ボディを備えており、
前記第1の磁性部は、第1のビットの情報を符号化するために、選択可能な第1の磁場の向きおよび/または強度、または第2の磁場の向きおよび/または強度を有する、再充填針。
(項目9)
前記第1の磁場は、磁極が互いに軸方向に離間するように、軸方向に配向されており、または、
前記第1の磁場は、磁極が互いに半径方向の内側および外側に配置されるように、半径方向に配向されており、または、
前記第1の磁場は、磁極が円周方向で互いに対向して配置されるように、直径方向に配向されている、項目8の再充填針。
(項目10)
前記長尺ボディは、成形プラスチックで作られており、
前記第1の磁性部は、前記プラスチック内でオーバーモールドされた永久磁石によって形成され、および/または、
前記長尺ボディは、1ビットの情報を記憶するために、第1の磁場の向きまたは第2の磁場の向きにおいて選択的に磁性である、複数の2つ以上の磁性部を含み、および/または、
前記長尺ボディは、前記長尺ボディの遠位端から第1の距離dlまたは第2の距離duだけ離れて配置されており、円周方向に離間している複数の開口部を含む、項目8または9の再充填針。
(項目11)
前記長尺ボディは、
近位端から、前記長尺ボディの前記遠位端から距離dlだけ離れた開口部まで延在する第1の流体チャネルと、
近位端から、前記長尺ボディの前記遠位端から距離dlよりも大きい距離duだけ離れた開口部まで延在する第2の流体チャネルと、を含む、項目8から10の何れか一項の再充填針。
(項目12)
マルチリザーバ注入ポンプに治療薬を再充填するための方法であって、
マルチリザーバ注入ポンプの第1のリザーバに再充填される第1の治療薬を選択するステップと、
前記マルチリザーバ注入ポンプの第2のリザーバに再充填される第2の治療薬を選択するステップと、
前記第1の治療薬が入っている第1の再充填容器と、第1の再充填針とを結合するステップであって、前記第1の再充填針は、前記再充填針の遠位端から第1の距離dlだけ離れて配置された第1の針開口部を有しており、前記第1の針開口部は、前記第1の再充填針が前記マルチリザーバ注入ポンプの前記再充填ポートに完全に挿入されたときに、前記第1のリザーバと流体連通する、結合するステップと、
前記第1の再充填針を前記再充填ポートに挿入するステップと、
前記第1の治療薬を前記第1の再充填容器から前記第1のリザーバに送達するステップと、
前記第2の治療薬が入っている第2の再充填容器と、第2の再充填針とを結合するステップであって、前記第2の再充填針は、前記再充填針の遠位端から第2の距離duだけ離れて配置された第2の針開口部を有しており、前記第2の針開口部は、前記第2の再充填針が前記マルチリザーバ注入ポンプの前記再充填ポートに完全に挿入されたときに、前記第2のリザーバと流体連通する、結合するステップと
前記第2の再充填針を前記再充填ポートに挿入するステップと、
前記第2の治療薬を前記第2の再充填容器から前記第2のリザーバに送達するステップと、を備える方法。
(項目13)
前記再充填ポートに配置された磁場センサを用いて、前記第1の再充填針および前記第2の再充填針の磁性部における磁場の向きおよび/または強度を特定するステップと、
前記磁場の前記向きおよび/または強度に基づいて、前記第1の再充填針と前記第2の再充填針を区別するステップと、をさらに備える、項目12の方法。
(項目14)
前記磁場センサを用いて、最大許容閾値よりも強い磁場の存在を特定するステップと、
前記最大許容閾値よりも強い前記磁場を検出することに応じて、前記マルチリザーバ注入ポンプを無効にするステップと、をさらに備える、項目13の方法であって、
好ましくは、
前記磁場センサの基準測定値を特定するために、初期化測定を行うステップをさらに備える、項目13の方法。
(項目15)
前記再充填ポートにおいて、軸方向に離間している複数の2つ以上の磁場センサを用いて、前記第1の再充填針および前記第2の再充填針の磁性部における等しい数の2つ以上の磁場の前記向きおよび/または強度を特定するステップと、
前記2つ以上の磁場センサからルックアップテーブルを介して検索された情報を関連付けるステップと、
前記ルックアップテーブルから検索された情報を外部のユーザインターフェース装置に伝達するステップと、をさらに備える、項目14の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14