(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】遠隔操作型作業機械システム及び作業機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/20 20060101AFI20240731BHJP
E02F 9/26 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
E02F9/20 N
E02F9/26 B
(21)【出願番号】P 2023024742
(22)【出願日】2023-02-20
【審査請求日】2024-02-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000005522
【氏名又は名称】日立建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001829
【氏名又は名称】弁理士法人開知
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 慧
(72)【発明者】
【氏名】伊東 英明
【審査官】五十幡 直子
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-219748(JP,A)
【文献】特開2021-155936(JP,A)
【文献】特開2014-173258(JP,A)
【文献】特許第7158874(JP,B2)
【文献】特開2020-119031(JP,A)
【文献】特開平10-280485(JP,A)
【文献】特開2018-145604(JP,A)
【文献】特開2011-120166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02F 9/20
E02F 9/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原動機を有し遠隔操作信号の受信によって遠隔操作されることが可能な作業機械と、前記作業機械に遠隔操作信号を送信して前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置と、を含む遠隔操作型作業機械システムであって、
前記作業機械は、前記作業機械の周囲状況に関する情報である周囲情報を検知する周囲検知装置と、前記作業機械の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、を含む遠隔操作型作業機械システムにおいて、
前記作業機械又は前記遠隔操作装置は、前記遠隔操作信号に基づいて前記作業機械の動作制御を行うシステム制御装置を有し、
前記システム制御装置は、
前記遠隔操作装置から送信される前記遠隔操作信号が前記作業機械を起動させるための
前記原動機の停止時におけるシステムの起動指示である遠隔起動操作信号又は前記作業機械を停止させるための
前記原動機の駆動時におけるシステムの停止指示である遠隔停止操作信号である場合、
前記原動機の始動又は停止を実行する前に、
前記周囲検知装置及び前記姿勢検出装置により検出された前記周囲情報及び前記姿勢情報を取り込み、
前記周囲情報及び前記姿勢情報に基づいて、前記原動機の始動又は停止の可否を判定
し、
前記原動機の始動又は停止を許可することを判定した場合、当該許可判定を示す情報が前記遠隔操作装置に出力されて、前記遠隔操作装置から前記原動機の始動指示又は停止指示が入力可能な状態となり、
前記原動機の始動指示又は停止指示が入力可能な状態で、前記遠隔操作装置から当該原動機の始動指示又は停止指示が入力された場合、前記原動機を始動又は停止させ、当該原動機が始動又は停止したことの確認結果を前記遠隔操作装置に出力する
ことを特徴とする遠隔操作型作業機械システム。
【請求項2】
請求項1に記載の遠隔操作型作業機械システムにおいて、
前記システム制御装置は、
前記遠隔操作装置から送信される前記遠隔操作信号が前記遠隔起動操作信号である場合、
前記姿勢検出装置により検出された前記姿勢情報であって前記原動機の直近の停止時における前記作業機械の姿勢としての停止姿勢に関する情報を取り込むとともに、
前記周囲検知装置により検出された前記周囲情報に基づいて、前記作業機械の周囲の前記作業機械の起動を妨げる要因である起動阻害要因の有無を判定し、
前記起動阻害要因の有無と、前記遠隔起動操作信号を取得した際の前記作業機械の姿勢である起動姿勢と、前記作業機械の前記直近の停止姿勢と、に基づいて、前記原動機の始動の可否を判定する
ことを特徴とする遠隔操作型作業機械システム。
【請求項3】
請求項1に記載の遠隔操作型作業機械システムにおいて、
前記システム制御装置は、
前記遠隔操作装置から送信される前記遠隔操作信号が前記遠隔停止操作信号である場合、
前記周囲情報に基づいて、前記作業機械の周囲の前記作業機械の駐機を妨げる要因である駐機阻害要因の有無を判定し、
前記駐機阻害要因の有無と、前記姿勢情報を基に得られる前記作業機械の水平面に対する傾きと、に基づいて、前記原動機の停止の可否を判定する
ことを特徴とする遠隔操作型作業機械システム。
【請求項4】
請求項1に記載の遠隔操作型作業機械システムにおいて、
前記システム制御装置は、前記作業機械に搭載された第1制御装置と、前記遠隔操作装置に組み込まれている第2制御装置と、を有し、
前記第1制御装置は、前記周囲検知装置により検知された前記周囲情報及び前記姿勢検出装置により検出された前記姿勢情報を取り込んで前記第2制御装置に送信し、
前記第2制御装置は、
前記周囲情報及び前記姿勢情報を前記遠隔操作装置の出力装置に提示すると共に前記原動機の起動又は停止の可否の操作入力を受け付け、
当該受け付けられた操作入力が前記原動機の起動又は停止を許可する操作入力である場合には、前記第1制御装置に前記原動機の始動又は停止を実行させる
ことを特徴とする遠隔操作型作業機械システム。
【請求項5】
請求項1に記載の遠隔操作型作業機械システムにおいて、
前記作業機械は、多関節型の作業装置と、前記作業装置に掛かる負荷に関する情報である負荷情報を検出する負荷検出装置と、を備え、
前記システム制御装置は、前記原動機の停止を実行する前に、
前記負荷情報、前記周囲情報、前記姿勢情報を取り込み、
取り込んだ前記負荷情報、前記周囲情報及び前記姿勢情報に基づき、前記作業装置が作業対象物を保持しているか否かを判定し、
前記作業装置が作業対象物を保持していないと判定した場合に、前記原動機の停止を実行する前に、前記作業装置を所定の駐機姿勢に変更させる
ことを特徴とする遠隔操作型作業機械システム。
【請求項6】
請求項1に記載の遠隔操作型作業機械システムにおいて、
前記作業機械は、主電源および予備電源を搭載し、
前記作業機械は、前記原動機の停止時には前記予備電源を電力源として前記遠隔操作信号を受信する一方、前記原動機の駆動時には前記主電源を電力源として前記遠隔操作信号を受信するように構成されている
ことを特徴とする遠隔操作型作業機械システム。
【請求項7】
原動機を有し遠隔操作装置からの遠隔操作信号の受信によって遠隔操作されることが可能な作業機械であって、
前記作業機械の周囲状況に関する情報である周囲情報を検知する周囲検知装置と、前記作業機械の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、を含む作業機械において、
前記遠隔操作信号に基づいて前記作業機械の動作制御を行う制御装置を有し、
前記制御装置は、
前記遠隔操作装置から、前記遠隔操作信号として前記作業機械を起動させるための
前記原動機の停止時におけるシステムの起動指示である遠隔起動操作信号又は前記作業機械を停止させるための
前記原動機の駆動時におけるシステムの停止指示である遠隔停止操作信号を受信した場合、
前記原動機の始動又は停止を実行する前に、
前記周囲検知装置及び前記姿勢検出装置により検出された前記周囲情報及び前記姿勢情報を取り込み、
前記周囲情報及び前記姿勢情報に基づいて、前記原動機の始動又は停止の可否を判定し、
前記原動機の始動又は停止を許可することを判定した場合、当該許可判定を示す情報が前記遠隔操作装置に出力されて、前記遠隔操作装置から前記原動機の始動指示又は停止指示が入力可能な状態となり、
前記原動機の始動指示又は停止指示が入力可能な状態で、前記遠隔操作装置から当該原動機の始動指示又は停止指示が入力された場合、前記原動機を始動又は停止させ、当該原動機が始動又は停止したことの確認結果を前記遠隔操作装置に送信する
ことを特徴とする作業機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作により作業機械の起動及び停止の実行が可能な遠隔操作型作業機械システム及び遠隔操作による起動及び停止が可能な作業機械に関する。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルやブルドーザなどの作業機械の中には、遠隔操作が可能なものがある。遠隔操作が可能な作業機械の中には、当該機械に作業員が搭乗して当該機械の起動や作業終了後の停止の操作を行うように構成されているものがある。このような構成の作業機械は、有害なガスが発生している場所や災害地のような人が立ち入ると危険な場所では使用することができない。しかし、このような場所で作業機械を使用したいという要求がある。
【0003】
このような要求に対して、最初のエンジン起動から作業終了後の機械停止までの作業機械に関する操縦の全てを遠隔で行う技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載の建設機械の遠隔制御装置においては、遠隔操縦用の送信装置から送信される建設機械の動作を制御する指令を受信する受信装置が常に給電されて能動状態に保持されており、当該受信装置は起動指令又は停止指令を受けたときに電源投入のスイッチをオン・オフするように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
遠隔操作が可能な作業機械のうち、作業員が作業機械に搭乗して当該機械の起動及び停止の操作を行う作業機械では、当該機械の周囲の状況や当該機械自体の状態(姿勢など)を作業機械に搭乗した作業員の目視によって確認することができる。一方、特許文献1に記載の技術は、作業員が作業機械に接近することなく遠隔制御により当該機械の起動及び停止が可能であるが、遠隔制御による起動及び停止の際に作業機械の周囲の状況や当該機械自体の状態を確認する手順を示していない。
【0006】
もし、作業機械の周囲の状況や当該機械自体の状態を確認せずに遠隔制御により作業機械を停止させた場合、当該機械の停止の際の周囲の状況や機械の状態によっては、作業機械をその後起動したときに当該機械の移動が難しいことがある。この場合、作業機械の起動後から作業開始までに時間を要して作業効率が低下することがある。また、作業機械を遠隔制御により起動させようとする場合、周囲の状況や機械自体の状態によっては、作業機械による作業が難しい状態で作業機械の起動を実行しない方が好ましい場合がある。そのような場合に作業機械を起動させても、結局、無駄な操作が生じるだけで作業効率が低下する懸念がある。そのため、作業機械の起動及び停止の遠隔制御を実行するときに当該機械の周囲の状況や機械自体の状態を確認することが好ましい。
【0007】
本発明は、上述の事柄に基づいてなされたもので、その目的は、作業機械の周囲の状況及び当該機械自体の状態を確認した上で遠隔制御による作業機械の起動及び停止を可能とする遠隔操作型作業機械システム及び作業機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願は、上記課題を解決する手段を複数含んでいる。その一例を挙げるならば、原動機を有し遠隔操作信号の受信によって遠隔操作されることが可能な作業機械と、前記作業機械に遠隔操作信号を送信して前記作業機械を遠隔操作する遠隔操作装置と、を含む遠隔操作型作業機械システムであって、前記作業機械は、前記作業機械の周囲状況に関する情報である周囲情報を検知する周囲検知装置と、前記作業機械の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢検出装置と、を含む遠隔操作型作業機械システムにおいて、前記作業機械又は前記遠隔操作装置は、前記遠隔操作信号に基づいて前記作業機械の動作制御を行うシステム制御装置を有し、前記システム制御装置は、前記遠隔操作装置から送信される前記遠隔操作信号が前記作業機械を起動させるための前記原動機の停止時におけるシステムの起動指示である遠隔起動操作信号又は前記作業機械を停止させるための前記原動機の駆動時におけるシステムの停止指示である遠隔停止操作信号である場合、前記原動機の始動又は停止を実行する前に、前記周囲検知装置及び前記姿勢検出装置により検知された前記周囲情報及び前記姿勢情報を取り込み、前記周囲情報及び前記姿勢情報に基づいて、前記原動機の始動又は停止の可否を判定し、前記原動機の始動又は停止を許可することを判定した場合、当該許可判定を示す情報が前記遠隔操作装置に出力されて、前記遠隔操作装置から前記原動機の始動指示又は停止指示が入力可能な状態となり、前記原動機の始動指示又は停止指示が入力可能な状態で、前記遠隔操作装置から当該原動機の始動指示又は停止指示が入力された場合、前記原動機を始動又は停止させ、当該原動機が始動又は停止したことの確認結果を前記遠隔操作装置に出力することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遠隔操作装置の起動・停止の遠隔操作信号に対して、原動機の始動・停止を実行する前に、周囲検知装置により検知された周囲情報及び姿勢検出装置により検出された姿勢情報に基づく原動機の始動・停止の可否の判定を行うので、作業機械の周囲の状況及び当該機械自体の状態を確認した上で遠隔制御による作業機械の起動・停止の実行が可能である。
上記した以外の課題、構成及び効果は、以下の実施形態の説明により明らかにされる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムを構成する遠隔操作装置及び作業機械の一例としての油圧ショベルを示す概略図である。
【
図2】第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける遠隔操作装置及び作業機械の構成を示すブロック図である。
【
図3】
図2に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔起動の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図4】
図3に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔起動の制御手順のうちの起動禁止判定の表示画面を示す図である。
【
図5】
図3に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔起動の制御手順のうちの起動許可判定の表示画面を示す図である。
【
図6】
図3に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔起動の制御手順のうちの原動機の始動確認の表示画面を示す図である。
【
図7】
図2に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔停止の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図8】
図7に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの周囲状況判定による駐機場所確保指示の表示画面を示す図である。
【
図9】
図7に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの機体状態判定による駐機場所確保指示の表示画面を示す図である。
【
図10】
図7に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの原動機の停止確認の表示画面を示す図である。
【
図11】
図7に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの自動駐機の詳細な制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図12】本発明の第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける遠隔操作装置及び作業機械の構成を示すブロック図である。
【
図13】
図12に示す第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔起動の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【
図14】
図12に示す第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔停止の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の遠隔操作型作業機械システム及び作業機械の実施形態について図面を用いて説明する。本実施の形態においては、遠隔操作型作業機械システムを構成する作業機械の一例として、油圧ショベルを例に挙げて説明する。
【0012】
[第1の実施形態]
まず、第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの概略構成について
図1を用いて説明する。
図1は第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムを構成する遠隔操作装置及び作業機械の一例としての油圧ショベルを示す概略図である。ここでは、運転席に着座した作業員から見た方向を用いて説明する。
【0013】
図1において、遠隔操作型作業機械システム1は、作業機械としての油圧ショベル10と、油圧ショベル10に遠隔操作信号を送信して油圧ショベル10を遠隔操作する遠隔操作装置70とを備えたシステムである。油圧ショベル10は、油圧ショベル10から離れた場所にある遠隔操作装置70からの遠隔操作信号の受信によって遠隔操作が可能に構成されている。遠隔操作装置70の構成は後述する。
【0014】
油圧ショベル10は、掘削作業等を行うためのフロント作業装置11と、フロント作業装置11が回動可能に取り付けられた機体12とを備えている。機体12は、自走可能な下部走行体13と、下部走行体13上に旋回可能に搭載された上部旋回体14とで構成されている。
【0015】
フロント作業装置11は、掘削作業等を行うための複数の被駆動部材を垂直方向に回動可能に連結することで構成された多関節型の作業装置である。複数の被駆動部材は、例えば、ブーム21、アーム22、作業具としてのバケット23で構成されている。ブーム21の基端部は、上部旋回体14の前部に回動可能に支持されている。ブーム21の先端部には、アーム22の基端部が回動可能に支持されている。アーム22の先端部には、バケット23が回動可能に支持されている。ブーム21、アーム22、バケット23はそれぞれ、油圧アクチュエータであるブームシリンダ25、アームシリンダ26、バケットシリンダ27によって駆動される。
【0016】
下部走行体13は、例えば、左右にクローラ式の走行装置29(左側のみ図示)を備えている。走行装置29は、油圧アクチュエータである走行油圧モータ29aによって駆動する。
【0017】
上部旋回体14は、例えば、油圧アクチュエータである旋回油圧モータ(図示せず)によって下部走行体13に対して旋回駆動されるように構成されている。上部旋回体14は、作業員が搭乗する運転室31と、各種機器を収容する建屋32と、建屋32の後端部に取り付けられたカウンタウェイト33とを備えている。運転室31には、作業員が着座する運転席や油圧ショベル10を操作するための操作装置(共に図示せず)などが配置されている。建屋32には、フロント作業装置11や機体12(下部走行体13及び上部旋回体14)を動作させるための各種の油圧機器35、原動機36、各種の電気機器37(共に後述の
図2参照)などが収容されている。カウンタウェイト33は、フロント作業装置11との重量バランスをとるためのものである。
【0018】
次に、第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械及び遠隔操作装置の構成について
図2を用いて説明する。
図2は第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける遠隔操作装置及び作業機械の構成を示すブロック図である。
【0019】
図2において、遠隔操作型作業機械システム1の遠隔操作装置70は、油圧ショベル10の遠隔操作の指示を入力するための遠隔操作入力装置71と、油圧ショベル10と双方向で通信可能な通信装置72と、油圧ショベル10の遠隔操作に関する情報を表示する表示装置73とを備えている。遠隔操作入力装置71は、例えば、油圧ショベル10の運転室31内の操作装置(図示せず)と同様なものである。通信装置72は、遠隔操作入力装置71に入力された遠隔操作の指示に応じた遠隔操作信号を油圧ショベル10へ送信すると共に、油圧ショベル10から送信されてくる油圧ショベル10に関する情報を受信する。表示装置73は、通信装置72が受信した油圧ショベル10に関する情報を表示画面に表示するものであり、油圧ショベル10に関する情報を遠隔操作のオペレータに提示する出力装置としての機能を有している。表示装置73は、また、タッチパネルを含んで構成されており、タッチパネルに対する操作に応じて油圧ショベル10の遠隔操作の指示を入力する入力装置としても機能する。
【0020】
遠隔操作型作業機械システム1の油圧ショベル10は、油圧ショベル10を動作させるための油圧システムを構成する各種の油圧機器35と、油圧システムを駆動するための原動機36と、油圧ショベル10を動作させるための各種の電気機器37と、各種の電気機器37に電力を供給する主電源38と備えている。各種の油圧機器35は、例えば、圧油を吐出する油圧ポンプ(図示せず)と、ブームシリンダ25、アームシリンダ26、バケットシリンダ27、走行油圧モータ29aなどの複数の油圧アクチュエータと、油圧ポンプから各油圧アクチュエータに供給される圧油の流れを制御する制御弁(図示せず)とを含んでいる。油圧機器35の一部は、主電源38から電力供給を受ける。原動機36は、油圧機器35としての油圧ポンプ(図示せず)などを駆動するものであり、例えば、エンジンや電動モータである。また、原動機36として、エンジンや電動モータ以外の動力源を用いる構成も可能である。各種の電気機器37は、例えば、運転室31内の操作装置(図示せず)の操作に応じて油圧ショベル10の動作を制御する車体コントローラや各種の電動補機などを含んでいる。車体コントローラは、例えば、油圧ポンプや制御弁などの油圧機器35を制御することで油圧ショベル10の動作を制御する。主電源38は、例えば、バッテリである。原動機36には、例えば、発電機(図示せず)が機械的に接続されており、原動機36により駆動された発電機の電力により主電源38としてのバッテリが充電される。
【0021】
油圧ショベル10には、遠隔操作装置70の通信装置72と双方向で通信可能な通信装置41、及び、遠隔操作信号に基づいて油圧ショベル10の動作制御を行うシステム制御装置としての遠隔操作信号処理装置42が搭載されている。通信装置41及び遠隔操作信号処理装置42には、主電源38及び予備電源43が電気的に切換え可能に接続されている。通信装置41及び遠隔操作信号処理装置42は、原動機36の停止時には予備電源43に接続される一方、原動機36の駆動時には主電源38に接続されるように構成されている。つまり、通信装置41及び遠隔操作信号処理装置42は、常に給電状態が維持されて作動状態であるように構成されている。遠隔操作信号処理装置42は、車体コントローラとは別体で構成されているが、車体コントローラの一部の機能として実装する構成も可能である。遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)の機能の詳細については後述する。
【0022】
油圧ショベル10には、油圧ショベル10の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢検出装置45、及び、油圧ショベル10の周囲の状況に関する情報である周囲情報を検知する周囲検知装置46が設けられている。姿勢検出装置45は、フロント作業装置11の姿勢に関する物理量(例えば、各構成部材21、21、23間の相対角度など)を検出するフロント姿勢センサ(図示せず)や機体12の姿勢に関する物理量(水平面に対する傾きや基準線からの旋回角など)を検出する機体姿勢センサ(図示せず)などで構成されている。フロント姿勢センサは、例えば、角度センサやストロークセンサ、ジャイロセンサなどで構成することが可能である。機体姿勢センサは、例えば、角度センサやジャイロセンサなどで構成することが可能である。なお、油圧ショベル10の姿勢情報は、油圧ショベル10の位置の情報を含むようにしてもよい。周囲検知装置46は、油圧ショベル10の周囲の地形、油圧ショベル10の周囲に位置する別の作業機械や作業員、障害物などを検知するものである。周囲検知装置46は、カメラセンサやLiDARなどで構成することが可能である。姿勢検出装置45及び周囲検知装置46は、主電源38及び予備電源43に電気的に切換え可能に接続されている。姿勢検出装置45及び周囲検知装置46は、例えば、原動機36が停止中であっても、予備電源43に接続されることで常に給電状態が維持されるように構成されている。なお、姿勢検出装置45及び周囲検知装置46は、遠隔操作装置70からの起動指示の遠隔操作信号が通信装置41により受信された後に予備電源43に接続されるように構成することも可能である。つまり、姿勢検出装置45及び周囲検知装置46は、起動指示の遠隔操作の受信前は予備電源43から切り離されるように構成することも可能である。
【0023】
油圧ショベル10には、また、フロント作業装置11に掛かる負荷に関する情報である負荷情報を検出する負荷検出装置47が設けられている。負荷検出装置47は、例えば、フロント作業装置11を動作させる油圧アクチュエータであるブームシリンダ25、アームシリンダ26、バケットシリンダ27の各油室の圧力を検出する圧力センサより構成されている。負荷検出装置47は、主電源38に電気的に接続される一方、予備電源43には接続されておらず、原動機36の停止中に無給電状態となる構成である。
【0024】
本実施の形態の遠隔操作型作業機械システム1は、遠隔操作装置70から送信される遠隔操作信号が油圧ショベル10を起動させるための遠隔起動操作信号又は油圧ショベル10を停止させるための遠隔停止操作信号である場合に、姿勢検出装置45と周囲検知装置46と負荷検出装置47の検出情報に基づいて、システム制御装置としての遠隔操作信号処理装置42が油圧ショベル10の起動及び停止の遠隔制御を行うものである。遠隔操作信号処理装置42は、ハード構成として例えば、RAMやROM等からなる記憶装置51と、CPUやMPU等からなる処理装置52とを含むマイクロコンピュータにより構成されている。記憶装置51には、油圧ショベル10の起動及び停止の遠隔制御のために必要なプラグラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置52は、記憶装置51からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで後述の各種機能を実現する。遠隔操作信号処理装置42は、姿勢情報処理部61、周囲情報処理部62、負荷情報処理部63、機械状態判定部64、周囲状況判定部65、積荷状態判定部66、起動停止制御部67の各機能部を有している。
【0025】
姿勢情報処理部61は、遠隔操作装置70の遠隔起動操作信号又は遠隔停止操作信号が受信された場合に、姿勢検出装置45により検出された姿勢情報を取り込むものである。取り込んだ姿勢情報は機械状態判定部64へ出力される。
【0026】
周囲情報処理部62は、遠隔操作装置70の遠隔起動操作信号又は遠隔停止操作信号が受信された場合に、周囲検知装置46により検知された周囲情報を取り込むものである。取り込んだ周囲情報は周囲状況判定部65へ出力される。
【0027】
負荷情報処理部63は、遠隔操作装置70の遠隔停止操作信号が受信された場合に、負荷検出装置47により検出されたフロント作業装置11の負荷情報を取り込むものである。取り込んだ負荷情報は積荷状態判定部66へ出力される。
【0028】
機械状態判定部64は、遠隔操作装置70の遠隔起動操作信号が受信されている場合には、姿勢情報処理部61からの姿勢情報を基に、遠隔起動操作信号を取得した際の油圧ショベル10(フロント作業装置11及び機体12)の姿勢である起動姿勢を演算する。また、姿勢検出装置45により検出された姿勢情報であって、原動機36の直近の停止時における油圧ショベル10の姿勢である停止姿勢に関する情報を取り込む。油圧ショベル10の直近の停止姿勢は、当該遠隔起動操作信号の直近の油圧ショベル10の停止操作のときに、姿勢検出装置45により検出された姿勢情報を基に演算された油圧ショベル10の姿勢が記憶装置51に記憶されたものである。さらに、演算結果の油圧ショベル10の起動姿勢を、取り込んだ油圧ショベル10の直近の停止姿勢と比較する。つまり、油圧ショベル10の起動姿勢と油圧ショベル10の直近の停止姿勢との差異が許容範囲内であるか否かを判定する。この判定を姿勢情報に基づき油圧ショベル10の起動(原動機36の始動)の可否を判定する第2判定と称する。この判定は、例えば、がけ崩れなどの不測の事態の発生によって油圧ショベル10の転倒や移動が生じていないかを確認し、不要な起動フローの実行を防止するためのものである。一方、遠隔操作装置70の遠隔停止操作信号が受信されている場合には、姿勢情報処理部61からの姿勢情報を基に得られる油圧ショベル10の機体12の水平面に対する傾きが許容範囲内であるか否かを判定する。この判定を姿勢情報に基づき油圧ショベル10(原動機36)の停止の可否を判定する第2判定と称する。この判定は、油圧ショベル10(機体12)の状態を確認することで、油圧ショベル10の周囲が駐機に適切な場所であるかを見極め、急勾配の場所に駐機することを回避するものである。機械状態判定部64の判定結果(起動・停止を許可する許可判定又は起動・停止を禁止する禁止判定)は、起動停止制御部67へ出力される。
【0029】
周囲状況判定部65は、遠隔操作装置70の遠隔起動操作信号が受信された場合には、周囲情報処理部62からの周囲情報を基に油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に油圧ショベル10の起動を妨げる要因である起動阻害要因が存在しているか否かを判定する。起動阻害要因は、例えば、油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に存在する作業員や別の作業機械、障害物などである。この判定を周囲情報に基づき油圧ショベル10の起動(原動機36の始動)の可否を判定する第1判定と称する。また、遠隔操作装置70の遠隔停止操作信号が受信された場合には、周囲情報処理部62からの周囲情報を基に油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に油圧ショベル10の駐機を妨げる要因である駐機阻害要因が存在しているか否かを判定する。駐機阻害要因は、例えば、油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に作業員や別の作業機械、障害物などが存在する場合や油圧ショベル10が駐機姿勢に変更不能な状況な場合などである。この判定を周囲情報に基づき油圧ショベル10(原動機36)の停止の可否を判定する第1判定と称する。この判定は、油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に駐機可能な場所が存在するかを見極めるものである。周囲状況判定部65の判定結果(起動・停止を許可する許可判定又は起動・停止を禁止する禁止判定)は、起動停止制御部67へ出力される。
【0030】
積荷状態判定部66は、周囲情報に基づく上述の第1判定が油圧ショベル10の停止を許可する許可判定である場合かつ姿勢情報に基づく上述の第2判定が油圧ショベル10の停止を許可する許可判定である場合に、負荷情報処理部63からの負荷情報、周囲情報処理部62からの周囲情報、姿勢情報処理部61からの姿勢情報のうちの少なくとも1つの情報に基づき、フロント作業装置11の作業具としてバケット23が作業対象物である土砂などの積荷を保持しているか否かを判定する。積荷状態判定部66の判定結果は、起動停止制御部67へ出力される。
【0031】
起動停止制御部67は、遠隔操作装置70の遠隔起動操作信号が受信された場合には、機械状態判定部64の判定結果(第2判定)及び周囲状況判定部65の判定結果(第1判定)に応じた起動制御を実行する。具体的には、機械状態判定部64の判定結果が許可判定かつ周囲状況判定部65の判定結果が許可判定である場合には、原動機36を始動させる始動指令を原動機36へ出力すると共に、原動機36の始動確認を通信装置41へ出力する。また、油圧ショベル10の主電源38を接続する一方、予備電源43を遮断する制御を行う。一方、機械状態判定部64の判定結果(第2判定)が禁止判定である場合又は周囲状況判定部65の判定結果(第1判定)が禁止判定である場合には、油圧ショベル10の起動禁止判定を通信装置41へ出力する。
【0032】
起動停止制御部67は、遠隔操作装置70の遠隔停止操作信号が受信された場合には、機械状態判定部64の判定結果(第2判定)及び周囲状況判定部65の判定結果(第1判定)に応じた遠隔停止制御を実行する。機械状態判定部64の判定結果(第2判定)が禁止判定である場合又は周囲状況判定部65の判定結果(第1判定)が禁止判定である場合には、油圧ショベル10の駐機場所確保の要求を通信装置41へ出力する。油圧ショベル10の駐機場所確保の要求は、通信装置41を介して遠隔操作装置70へ送信される。一方、機械状態判定部64の判定結果(第2判定)が許可判定である場合かつ周囲状況判定部65の判定結果(第1判定)が許可判定である場合には、油圧ショベル10の自動駐機フローを実行する。自動駐機フローは、油圧ショベル10のフロント作業装置11を所定の駐機姿勢に変更するものである。自動駐機フローの詳細は後述する。さらに、当該自動駐機フローの終了後に、原動機36を停止させる停止指令を原動機36へ出力すると共に、原動機36の停止確認を通信装置41へ出力する。
【0033】
次に、第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける油圧ショベルの起動及び停止の遠隔制御の手順について説明する。先ず、当該遠隔操作型作業機械システムにおける油圧ショベルの遠隔起動の制御手順について
図2~
図6を用いて説明する。
図3は
図2に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔起動の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0034】
図3において、
図2に示す遠隔操作型作業機械システム1では、オペレータの操作によって遠隔操作装置70の遠隔操作入力装置71又は表示装置73から油圧ショベル10の「システム起動」の指示が入力された場合、システムの起動指示である遠隔起動操作信号を通信装置72が送信する(ステップS10)。
【0035】
遠隔操作装置70からの遠隔起動操作信号は、油圧ショベル10側の通信装置41が受信する(ステップS210)。通信装置41は、原動機36の停止中において予備電源43に接続されており、遠隔操作装置70からの遠隔操作信号を常に受信可能な状態に維持されている。
【0036】
通信装置41が遠隔起動操作信号を受信すると、遠隔操作信号処理装置42の姿勢情報処理部61が姿勢検出装置45から油圧ショベル10の姿勢情報を取り込むと共に、記憶装置51に記憶されていた油圧ショベル10の直近の停止姿勢を取り込む。(ステップS220)。遠隔操作信号処理装置42は、原動機36の停止中において予備電源43に接続されており、遠隔操作装置70からの遠隔操作信号を常に処理可能な状態に維持されている。姿勢検出装置45も原動機36の停止中において予備電源43に接続されている。なお、姿勢検出装置45は、遠隔起動操作信号の受信後に遠隔操作信号処理装置42の指令により予備電源43に接続されてもよい。
【0037】
次に、遠隔操作信号処理装置42の機械状態判定部64は、姿勢情報処理部61が取得した姿勢情報を基にフロント作業装置11及び機体12の姿勢を演算し、演算結果の姿勢が所定の許容範囲内であるか否かの第2判定を行う(ステップS230)。具体的には、演算結果の油圧ショベル10の起動姿勢と記憶装置51に記憶されていた油圧ショベル10の直近の停止姿勢との差異が許容範囲内であるか否かを判定する。ステップS230において、YESの場合にはステップS240に進む一方、NOの場合にはステップS260に進む。
【0038】
ステップS230においてYESの場合、すなわち、油圧ショベル10の起動の姿勢や位置に異常が無いと判定した許可判定の場合、遠隔操作信号処理装置42の周囲情報処理部62が周囲検知装置46から油圧ショベル10の周囲情報を取り込む(ステップS240)。周囲検知装置46は、原動機36の停止中において予備電源43にされている。なお、周囲検知装置46は、遠隔起動操作信号の受信後に遠隔操作信号処理装置42の指令により予備電源43に接続されてもよい。
【0039】
次いで、遠隔操作信号処理装置42の周囲状況判定部65は、周囲情報処理部62が取得した周囲情報を基に、油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に油圧ショベル10の起動を妨げる要因である起動阻害要因(作業員や別の油圧ショベル、障害物)が存在していないかを判定する(ステップS250)。ステップS250において、YESの場合にはステップS270に進む一方、NOの場合にはステップS260に進む。
【0040】
ステップS230においてNOの場合又はステップS250においてNOの場合、すなわち、油圧ショベル10の姿勢や位置に異常が生じている可能性があると判定した禁止判定の場合又は油圧ショベル10の周囲に起動阻害要因が存在していると判定した禁止判定の場合、通信装置41が起動禁止判定を遠隔操作装置70へ送信する(ステップS260)。
【0041】
油圧ショベル10(通信装置41)からの起動禁止判定は、遠隔操作装置70の通信装置72によって受信される(ステップS20)。通信装置72が起動禁止判定を受信すると、遠隔操作装置70の表示装置73が起動禁止判定を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS30)。例えば、油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に障害物(起動阻害要因)が存在していた場合(ステップS250においてNOの場合)には、
図4に示す表示画面が表示装置73に表示される。
図4は
図3に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔起動の制御手順のうちの起動禁止判定の表示画面を示す図である。遠隔操作型作業機械システム1は、
図4に示すような起動禁止判定を示す情報を表示装置73に表示した後、遠隔起動の制御フローを終了する。
【0042】
一方、ステップS230においてYESの場合かつS250においてYESの場合、すなわち、油圧ショベル10の起動の姿勢や位置に異常が無いと判定した許可判定の場合、且つ、油圧ショベル10の周囲に起動阻害要因が存在していない許可判定の場合、通信装置41が起動許可判定を送信する(ステップS270)。
【0043】
油圧ショベル10(通信装置41)からの起動許可判定は、遠隔操作装置70の通信装置72によって受信される(ステップS40)。通信装置72が起動許可判定を受信すると、遠隔操作装置70の表示装置73が起動許可判定を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS50)。例えば、
図5に示す表示画面が表示装置73に表示される。
図5は
図3に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔起動の制御手順のうちの起動許可判定の表示画面を示す図である。起動許可判定を示す情報が表示装置73に表示された場合、遠隔操作装置70のオペレータは油圧ショベル10の原動機36の始動指示を入力することが可能になる。オペレータの操作により遠隔操作入力装置71又は表示装置73から原動機36の始動指示が入力されると、原動機36の始動指示の遠隔操作信号を通信装置72が送信する(ステップS110)。
【0044】
遠隔操作装置70からの始動指示の遠隔操作信号は、油圧ショベル10側の通信装置41によって受信される(ステップS310)。始動指示の遠隔操作信号が受信されると、遠隔操作信号処理装置42の起動停止制御部67は、主電源38を接続状態に切り換えると共に、予備電源43の接続を遮断する(ステップS320)。これにより、通信装置41、遠隔操作信号処理装置42、姿勢検出装置45、周囲検知装置46、負荷検出装置47、各種の電気機器37に対して主電源38から電力が供給される。
【0045】
次に、起動停止制御部67は、原動機36を始動させる(ステップS330)。原動機36が始動すると、起動停止制御部67が原動機36の始動確認を示す信号を受け取って通信装置41を介して原動機36の始動確認を送信する(ステップS340)。
【0046】
油圧ショベル10(通信装置41)からの原動機36の始動確認の信号は、遠隔操作装置70の通信装置72によって受信される(ステップS120)。原動機36の始動確認が受信されると、遠隔操作装置70の表示装置73が原動機36の始動確認を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS130)。例えば、
図6に示す情報が表示装置73の表示画面に表示される。
図6は
図3に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔起動の制御手順のうちの原動機の始動確認の表示画面を示す図である。遠隔操作型作業機械システム1は、
図6に示すような原動機の始動確認を示す情報を表示装置73に表示した後、遠隔起動の制御フローを終了する。
【0047】
次に、第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける油圧ショベルの遠隔停止の制御手順について
図2及び
図7~
図10を用いて説明する。
図7は
図2に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔停止の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0048】
図7において、
図2に示す遠隔操作型作業機械システム1では、オペレータの操作によって遠隔操作装置70の遠隔操作入力装置71又は表示装置73から油圧ショベル10の「システム停止」の指示が入力された場合、システムの停止指示である遠隔停止操作信号を通信装置72が送信する(ステップS410)。
【0049】
遠隔操作装置70からの遠隔停止操作信号は、油圧ショベル10側の通信装置41が受信する(ステップS610)。通信装置41が遠隔停止操作信号を受信すると、遠隔操作信号処理装置42の周囲情報処理部62が周囲検知装置46から油圧ショベル10の周囲情報を取り込む(ステップS620)。
【0050】
次に、周囲状況判定部65は、周囲情報処理部62が取得した周囲情報を基に油圧ショベルの周囲の所定範囲内に駐機可能な場所の有無を判定する(ステップS630)。具体的には、周囲情報処理部62からの周囲情報を基に油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に駐機阻害要因(障害物や別の作業機械、作業員、又は、油圧ショベル10の駐機姿勢への変更が不能な状況)が存在していないかを判定する。ステップS630において、YESの場合にはステップS640に進む一方、NOの場合にはステップS660に進む。
【0051】
ステップS630においてYESの場合、すなわち、油圧ショベル10の周囲の所定範囲内に駐機可能な場所があると判定した場合、姿勢情報処理部61が姿勢検出装置45から油圧ショベル10の姿勢情報を取り込む(ステップS640)。
【0052】
次いで、機械状態判定部64は、姿勢情報処理部61が取得した姿勢情報を基に、油圧ショベル10の機体12の姿勢(水平面に対する傾き)が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS650)。ステップS650において、YESの場合にはステップS670に進む一方、NOの場合にはステップS660に進む。
【0053】
ステップS630においてNOの場合又はステップS650においてNOの場合、すなわち、油圧ショベルの周囲に駐機阻害要因があって駐機不適格であると判定した禁止判定の場合又は油圧ショベル10の機体12の姿勢(傾き)が許容範囲外であって駐機不適格であると判定した禁止判定の場合、通信装置41が駐機場所確保の要求を送信する(ステップS660)。
【0054】
油圧ショベル10(通信装置41)からの駐機場所確保の要求は、遠隔操作装置70の通信装置72によって受信される(ステップS420)。通信装置72が駐機場所確保の要求を受信すると、遠隔操作装置70の表示装置73が駐機場所確保の要求を示す情報を表示画面に表示する(ステップS430)。例えば、油圧ショベル10の周囲に障害物(駐機阻害要因)が存在していた場合(ステップS630においてNOの場合)には、
図8に示す表示画面が表示装置73に表示される。
図8は
図7に示す遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの周囲状況判定による駐機場所確保指示の表示画面を示す図である。また、油圧ショベル10の機体12の傾きが許容範囲外の場合(ステップS650においてNOの場合)には、
図9に示す表示画面が表示装置73に表示される。
図9は
図7に示す遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの機体状態判定による駐機場所確保指示の表示画面を示す図である。
【0055】
駐機場所確保の要求が表示装置73に表示された場合、遠隔操作装置70のオペレータは、油圧ショベル10の移動、油圧ショベル10による障害物の除去、油圧ショベル10による周囲の整地を行う動作指示を遠隔操作入力装置71の操作により入力する。オペレータの操作による遠隔操作入力装置71からの油圧ショベル10の動作指示が通信装置72によって遠隔操作信号として送信される(ステップS440)。
【0056】
遠隔操作装置70からの油圧ショベル10の動作指示の遠隔操作信号を油圧ショベル10側の通信装置41が受信する。受信された動作指示の遠隔操作信号に応じて起動停止制御部67は油圧ショベル10を動作させ、最終的に駐機場所の情報を通信装置41が送信する(ステップS665)。
【0057】
油圧ショベル10からの駐機場所の情報は遠隔操作装置70の通信装置72により受信されて表示装置73に表示される(ステップS440)。表示装置73に表示される駐機場所の情報は、例えば、周囲検知装置46により検知された油圧ショベル10の周囲情報である。表示装置73の情報を基に当該駐機場所が駐機可能であると判断したオペレータの操作によりシステム停止の指示が再び入力されると、遠隔操作装置70が再入力された停止指示の遠隔停止操作信号を送信する。
【0058】
遠隔操作装置70からの遠隔停止操作信号が油圧ショベル10側の通信装置41に再受信されると、遠隔操作信号処理装置42などは上述のステップS610~S650を繰り返す。ステップS630においてYESの場合かつS650においてYESの場合、すなわち、油圧ショベル10の周囲に駐機阻害要因がなく駐機場所として適格であると判定した許可判定の場合かつ油圧ショベル10の機体12の姿勢(傾き)が許容範囲内であって駐機場所として適格であると判定した許可判定の場合、通信装置41が停止許可判定を送信する(ステップS670)。
【0059】
油圧ショベル10(通信装置41)からの停止許可判定は、遠隔操作装置70の通信装置72によって受信される(ステップS450)。通信装置72が停止許可判定を受信すると、表示装置73が停止許可判定を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS460)。
【0060】
停止許可判定を示す情報が表示装置73に表示された場合、遠隔操作装置70のオペレータは油圧ショベル10の原動機36の停止指示を入力することが可能になる。オペレータの操作により遠隔操作入力装置71又は表示装置73から原動機36の停止指示が入力されると、原動機36の停止指示の遠隔操作信号を通信装置72が送信する(ステップS510)。
【0061】
遠隔操作装置70からの停止指示の遠隔操作信号は、油圧ショベル10側の通信装置41によって受信される(ステップS710)。停止指示の遠隔操作信号が受信されると、遠隔操作信号処理装置42の起動停止制御部67は、油圧ショベル10の自動駐機フローを実行する(ステップS720)。当該自動駐機フローの詳細は後述する。
【0062】
自動駐機フローが実行されて油圧ショベル10が所定の駐機姿勢になると、起動停止制御部67は、通信装置41及び遠隔操作信号処理装置42を予備電源43に接続状態に切り換え(ステップS730)、原動機36を停止させる(ステップS740)。次いで、主電源38の接続を遮断する(ステップS750)。これにより、主電源38の放電が防止されることでバッテリ上がりを防ぐ。原動機36が停止すると、起動停止制御部67が原動機36の停止確認の信号を受け取って通信装置41を介して送信する(ステップS760)。
【0063】
油圧ショベル10(通信装置41)からの原動機36の停止確認の信号は、遠隔操作装置70の通信装置72によって受信される(ステップS520)。原動機36の停止確認が受信されると、遠隔操作装置70の表示装置73が原動機36の停止確認を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS530)。例えば、
図10に示す情報が表示装置73に表示される。
図10は
図7に示す遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの原動機の停止確認の表示画面を示す図である。遠隔操作型作業機械システム1は、例えば、
図10に示す「ログアウト」がタッチ操作されることで、油圧ショベル10の遠隔停止の制御フローを終了する。
【0064】
次に、第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける油圧ショベルの自動駐機の遠隔制御の手順について
図2及び
図11を用いて説明する。
図11は
図7に示す第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムの遠隔停止の制御手順のうちの自動駐機の詳細な制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0065】
遠隔操作信号処理装置42は、
図11に示す自動駐機フローを実行する。まず、負荷情報処理部63が負荷検出装置47からフロント作業装置11の負荷情報を取り込み、姿勢情報処理部61が姿勢検出装置45から油圧ショベル10の姿勢情報を取り込み、周囲情報処理部62が周囲検知装置46から油圧ショベル10の周囲情報を取り込む(ステップS721)。
【0066】
次に、積荷状態判定部66がバケット23に作業対象物としての土砂などの積荷を保持しているか否かを判定する(ステップS722)。ステップS722において、YESの場合にはステップS724に進む一方、NOの場合にはステップS723に進む。
【0067】
例えば、負荷情報処理部63が取得した負荷情報(フロント作業装置11用の油圧シリンダ25、26、27の油室の圧力)を基にフロント作業装置11に掛かる負荷を演算し、演算結果の負荷に基づきバケット23内の積荷(土砂)の保持の有無を判定する。また、周囲情報処理部62が取得した周囲情報としての画像情報を基にバケット23内の積荷(土砂)の保持の有無を判定する。また、姿勢情報処理部61が取得した姿勢情報を基にフロント作業装置11の姿勢を演算し、演算結果のフロント作業装置11の姿勢を基にバケット23内の積荷(土砂)の保持の有無を判定する。また、これらの情報を組わせることでバケット23内の積荷(土砂)の保持の有無を判定する構成も可能である。
【0068】
ステップS722においてNOの場合、すなわち、バケット23内に積荷が保持されていると遠隔操作信号処理装置42が判定した場合には、起動停止制御部67はバケット23のダンプ動作を実行させることで放土を行い(ステップS723)、再びステップS721~S722の処理を行う。ステップS722においてYESの判定になるまで、ステップS721~S722の処理を繰り返す。
【0069】
ステップS722においてYESの場合、すなわち、バケット23内に積荷(土砂)が保持されていないと遠隔操作信号処理装置42が判定した場合には、起動停止制御部67がフロント作業装置11の姿勢を所定の駐機姿勢に変更する。具体的には、第1に、ブーム21を所定位置まで上昇させるブーム上げ動作を実行させ(ステップS724)、第2に、アーム22を所定位置まで回動させるアーム動作を実行させ(ステップS725)、第3に、バケット23を所定位置まで回動させるバケット動作を実行させ(ステップS726)、第4に、ブーム21を所定速度で下降させるブーム下げ動作を実行させる(ステップS727)。
【0070】
さらに、起動停止制御部67は、バケット23が着地したか否かを判定する(ステップS728)。具体的には、例えば、負荷情報処理部63が負荷検出装置47からブームシリンダ25のロッド圧を取り込み、取得された当該ロッド圧が予め設定された圧力閾値以上であるか否かを判定する。圧力閾値は、例えば、記憶装置51に予め記憶されている。ブームシリンダ25のロッド圧が圧力閾値以上である場合には、バケット23が着地したと判定する。一方、それ以外の場合には、バケット23が未着地であると判定する。ステップS728においてNOの場合には、ステップS728においてYESになるまで、ステップS727~S727を繰り返す。すなわち、ブーム21の下げ動作を継続させる。
【0071】
ステップS728においてYESと判定した場合には、この駐機時点における油圧ショベル10の位置やフロント作業装置11及び機体12の姿勢を記憶装置51に記憶させる(ステップS729)。遠隔操作信号処理装置42は、ステップS729の処理後に自動駐機フローを終了する。
【0072】
なお、遠隔操作信号処理装置42は、ブーム21、アーム22、バケット23の動作指令を直接的に油圧システムへ出力する構成でも、車体コントローラを介して油圧システムへ出力する構成でも可能である。
【0073】
上述したように、第1の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システム1は、原動機36し遠隔操作信号の受信によって遠隔操作されることが可能な油圧ショベル10(作業機械)と、油圧ショベル10(作業機械)に遠隔操作信号を送信して油圧ショベル10(作業機械)を遠隔操作する遠隔操作装置70とを含む。油圧ショベル10(作業機械)は、油圧ショベル10(作業機械)の周囲状況に関する情報である周囲情報を検知する周囲検知装置46と、油圧ショベル10(作業機械)の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢検出装置45とを含む。油圧ショベル10(作業機械)は、遠隔操作信号に基づいて油圧ショベル10(作業機械)の動作制御を行うシステム制御装置としての遠隔操作信号処理装置42を有する。遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)は、遠隔操作装置70から送信された遠隔操作信号が油圧ショベル10(作業機械)を起動させるための遠隔起動操作信号又は油圧ショベル10(作業機械)を停止させるための遠隔停止操作信号である場合、周囲検知装置46及び姿勢検出装置45により検知された周囲情報及び姿勢情報を取り込み、周囲情報及び姿勢情報に基づき原動機36の始動又は停止の可否を判定するように構成されている。
【0074】
この構成よれば、遠隔操作装置70の起動・停止の遠隔操作信号に対して、原動機36の始動・停止を実行する前に、周囲検知装置46により検知された周囲情報及び姿勢検出装置45により検出された姿勢情報に基づく原動機36の始動・停止の可否の判定を行うので、油圧ショベル10(作業機械)の周囲の状況及び当該機械自体の状態を確認した上で遠隔制御による油圧ショベル10(作業機械)の起動・停止の実行が可能である。
【0075】
さらに、本実施の形態に係る遠隔操作型作業機械システム1の遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)は、遠隔操作装置70から送信される遠隔操作信号が遠隔起動操作信号である場合、姿勢検出装置45により検出された姿勢情報であって原動機36の直近の停止時における油圧ショベル10(作業機械)の姿勢としての停止姿勢に関する情報を取り込むとともに、周囲検知装置46により検出された周囲情報に基づいて、油圧ショベル10(作業機械)の周囲の油圧ショベル10(作業機械)の周囲の油圧ショベル10(作業機械)の起動を妨げる要因である起動阻害要因の有無を判定し、起動阻害要因の有無と遠隔起動操作信号を取得した際の油圧ショベル10(作業機械)の姿勢である起動姿勢と、油圧ショベル10(作業機械)の直近の停止姿勢とに基づいて、原動機36の始動の可否を判定するように構成されている。
【0076】
この構成によれば、遠隔操作装置70からの遠隔起動操作信号に対して遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)自らが原動機36の始動の可否の判定を行うので、遠隔操作装置70のオペレータが油圧ショベル10(作業機械)の周囲状況及び当該機械自体の状態を確認して油圧ショベル10(作業機械)の起動の可否を判断する必要がなく、オペレータの操作負担を軽減することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態に係る遠隔操作型作業機械システム1の遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)は、遠隔操作装置70から送信される遠隔操作信号が遠隔停止操作信号である場合、周囲情報に基づいて油圧ショベル10(作業機械)の周囲の油圧ショベル10(作業機械)の駐機を妨げる要因である駐機阻害要因(作業員や他の作業機械、障害物など)の有無を判定し、駐機阻害要因の有無と姿勢情報を基に得られる油圧ショベル10(作業機械)の水平面に対する傾きとに基づいて、原動機36の停止の可否を判定するように構成されている。
【0078】
この構成によれば、遠隔操作装置70からの遠隔停止操作信号に対して遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)自らが原動機36の停止の可否の判定を行うので、遠隔操作装置70のオペレータが油圧ショベル10(作業機械)の周囲状況及び当該機械自体の状態を確認して油圧ショベル10(作業機械)の停止の可否を判断する必要がなく、オペレータの操作負担を軽減することができる。
【0079】
また、本実施の形態においては、油圧ショベル10(作業機械)が多関節型のフロント作業装置11(作業装置)と、フロント作業装置11(作業装置)に掛かる負荷に関する情報である負荷情報を検出する負荷検出装置47とを備えている。また、遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)は、原動機36の停止を実行する前に、負荷情報、周囲情報、姿勢情報を取り込み、取り込んだ負荷情報、周囲情報、姿勢情報に基づきフロント作業装置11(作業装置)が作業対象物(土砂など)を保持しているか否かを判定し、フロント作業装置11(作業装置)が作業対象物を保持していないと判定した場合には、原動機36の停止を実行する前に、フロント作業装置11(作業装置)を所定の駐機姿勢に変更させるように構成されている。
【0080】
この構成によれば、遠隔操作信号処理装置42(システム制御装置)がフロント作業装置11(作業装置)の所定の駐機姿勢への変更制御を実行するので、遠隔操作装置70のオペレータがフロント作業装置11(作業装置)の所定の駐機姿勢への変更操作を行う必要がなく、オペレータの操作負担を軽減することができる。
【0081】
また、本実施の形態においては、油圧ショベル10(作業機械)が主電源38および予備電源43を搭載している。油圧ショベル10(作業機械)は、原動機36の停止時には予備電源43を電力源として遠隔操作信号を受信する一方、原動機36の駆動時には主電源38を電力源として遠隔操作信号を受信するように構成されている。
【0082】
この構成によれば、原動機36の停止時に主電源38ではなく予備電源43から電力が供給されることで遠隔操作信号を受信するので、油圧ショベルのシステム停止(待機状態)のときの主電源38の放電を防止することができる。
【0083】
また、上述したように、本実施の形態に係る油圧ショベル10(作業機械)は、原動機36し遠隔操作装置70からの遠隔操作信号の受信によって遠隔操作されることが可能なものであり、油圧ショベル10(作業機械)の周囲状況に関する情報である周囲情報を検知する周囲検知装置46と、油圧ショベル10(作業機械)の姿勢に関する情報である姿勢情報を検出する姿勢検出装置45とを含み、遠隔操作信号に基づいて油圧ショベル10(作業機械)の動作制御を行う制御装置としての遠隔操作信号処理装置42を有する。遠隔操作信号処理装置42(制御装置)は、遠隔操作装置70から、遠隔操作信号として油圧ショベル10(作業機械)を起動させるための遠隔起動操作信号又は油圧ショベル10(作業機械)を停止させるための遠隔停止操作信号を受信した場合、周囲情報及び姿勢情報に基づいて原動機36の始動又は停止の可否を判定し、原動機36の始動又は停止の可否の判定結果を遠隔操作装置70に送信するように構成されている。
【0084】
この構成よれば、遠隔操作装置70の起動・停止の遠隔操作信号に対して、原動機36の始動・停止を実行する前に、周囲情報及び姿勢情報に基づく原動機36の始動・停止の可否の判定を行うので、油圧ショベル10(作業機械)の周囲の状況及び当該機械自体の状態を確認した上で遠隔制御による油圧ショベル10(作業機械)の起動・停止の実行が可能である。
【0085】
[第2の実施形態]
次に、本発明の遠隔操作型作業機械システムの第2の実施形態について
図12~
図14を用いて説明する。なお、
図12~
図14において、
図1~
図11に示す符号と同符号のものは、同様な部分であるので、その詳細な説明は省略する。
図12は第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける遠隔操作装置及び作業機械の構成を示すブロック図である。
【0086】
図12に示す第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システム1Aが第1の実施形態に対して相違する点は、第1の実施形態に係るシステム制御装置としての遠隔操作信号処理装置42の機械状態判定部64、周囲状況判定部65、積荷状態判定部66の3つの判定部の機能を遠隔操作装置70Aに組み込まれた第2遠隔操作信号処理装置75(第2制御装置)に実装したこと及びそれに伴い油圧ショベル10Aに対する遠隔制御の手順が変更されていることである。
【0087】
具体的には、本実施形態に係る遠隔操作型作業機械システム1Aにおけるシステム制御装置は、油圧ショベル10に搭載された第1遠隔操作信号処理装置42A(第1制御装置)と、遠隔操作装置70Aに組み込まれた第2遠隔操作信号処理装置75(第2制御装置)とで構成されている。第1遠隔操作信号処理装置42Aは、第1の実施形態の遠隔操作信号処理装置42が有する機械状態判定部64、周囲状況判定部65、積荷状態判定部66以外の姿勢情報処理部61、周囲情報処理部62、負荷情報処理部63、起動停止制御部67の各機能部を有している。油圧ショベル10Aに搭載されたそれ以外の構成は第1の実施形態の場合と同様である。
【0088】
本実施形態の遠隔操作装置70Aは、第1の実施形態の場合の遠隔操作入力装置71、通信装置72,表示装置73に加えて、第1の実施形態の遠隔操作信号処理装置42の3つの判定部と同様な機能を有する第2遠隔操作信号処理装置75を備えている。第2遠隔操作信号処理装置75は、各種情報に基づいて行う判定を油圧ショベル10A側の第1遠隔操作信号処理装置42Aではなく、遠隔操作装置70A側で実行可能となるように構成されたものである。詳細には、第2遠隔操作信号処理装置75は、第1の実施形態の機械状態判定部64と同様な機能を有する機械状態判定部64Aと、第1の実施形態の周囲状況判定部65と同様な機能を有する周囲状況判定部65Aと、第1の実施形態の積荷状態判定部66と同様な機能を有する積荷状態判定部66Aとを有している。第2遠隔操作信号処理装置75は、ハード構成として例えば、RAMやROM等からなる記憶装置76と、CPUやMPU等からなる処理装置77とを含むマイクロコンピュータにより構成されている。記憶装置76には、油圧ショベル10Aの起動及び停止の遠隔制御のために必要なプラグラムや各種情報が予め記憶されている。処理装置77は、記憶装置76からプログラムや各種情報を適宜読み込み、当該プログラムに従って処理を実行することで上述の各種機能を実現する。
【0089】
次に、第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける油圧ショベルの起動及び停止の遠隔制御の手順について説明する。先ず、当該遠隔操作型作業機械システムにおける油圧ショベルの遠隔起動の制御手順について
図12及び
図13を用いて説明する。
図13は
図12に示す第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔起動の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0090】
図13において、
図12に示す遠隔操作型作業機械システム1Aでは、オペレータの操作によって遠隔操作装置70Aの遠隔操作入力装置71又は表示装置73から油圧ショベル10Aの「システム起動」の指示が入力された場合、遠隔起動操作信号を通信装置72が送信する(ステップS10)。遠隔操作装置70Aからの遠隔起動操作信号は、油圧ショベル10A側の通信装置41によって受信される(ステップS210)。こられのステップは、第1の実施形態の場合と同様である。
【0091】
通信装置41が遠隔起動操作信号を受信すると、第1遠隔操作信号処理装置42Aの姿勢情報処理部61が姿勢検出装置45から油圧ショベル10Aの姿勢情報を取り込むと共に(ステップS220)、周囲情報処理部62が周囲検知装置46から油圧ショベル10Aの周囲情報を取り込む(ステップS240)。第1遠隔操作信号処理装置42Aにより取得された油圧ショベル10Aの姿勢情報及び周囲情報を通信装置41が送信する(ステップS280)。本実施の形態の第1遠隔操作信号処理装置42Aは、第1の実施形態とは異なり、油圧ショベル10Aの姿勢や位置の異常の有無の判定(
図3に示すフローチャートのステップS230)及び油圧ショベルの周囲の起動阻害要因の存在の有無の判定(
図3に示すフローチャートのステップS250)を実行しない構成である。
【0092】
遠隔操作装置70Aは、油圧ショベル側の通信装置41から油圧ショベル10Aの姿勢情報及び周囲情報を受信する(ステップS12)。遠隔操作装置70Aの第2遠隔操作信号処理装置75の機械状態判定部64Aは、受信した姿勢情報を基にフロント作業装置11及び機体12の姿勢を演算し、演算結果の起動姿勢が所定の許容範囲内であるか否かの第2判定を行う(ステップS14)。ステップS14において、YESの場合にはステップS16に進む一方、NOの場合にはステップS30に進む。本ステップS14は、第1の実施形態の遠隔操作信号処理装置42の機械状態判定部64の
図3に示すステップS230の判定処理と同様な処理なので、その詳細な説明は省略する。
【0093】
ステップS14においてYESの場合、第2遠隔操作信号処理装置75の周囲状況判定部65Aは、受信した周囲情報を基に、油圧ショベル10Aの周囲の所定範囲内に起動阻害要因が存在していないか否かを判定する(ステップS16)。ステップS16において、YESの場合にはステップS50に進む一方、NOの場合にはステップS30に進む。本ステップS16は、第1の実施形態の遠隔操作信号処理装置42の周囲状況判定部65の
図3に示すステップS250の判定処理と同様な処理ので、その詳細な説明は省略する。
【0094】
ステップS14においてNOの場合又はステップS16においてNOの場合、すなわち、周囲情報に基づく第1判定が禁止判定の場合又は姿勢情報に基づく第2判定が禁止判定の場合、起動禁止判定を示す情報を表示装置73の表示画面に表示し(ステップS30)、遠隔起動の制御フローを終了する。一方、ステップS14においてYESの場合且つステップS16においてYESの場合、すなわち、周囲情報に基づく第1判定が許可判定の場合かつ姿勢情報に基づく第2判定が許可判定の場合、起動許可判定を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS50)。
【0095】
起動許可判定を示す情報が表示装置73に表示された場合、オペレータの操作により遠隔操作入力装置71又は表示装置73から原動機36の始動指示が入力されると、原動機36の始動指示の遠隔操作信号を通信装置72が送信する(ステップS110)。原動機36の始動指示の遠隔操作信号の送信後、油圧ショベル10A側の原動機36の始動の一連の処理(ステップS310~S340)及び遠隔操作装置70A側の原動機36の始動の一連の処理(ステップSS120~S130)は第1の実施形態の場合と同様である。
【0096】
次に、遠隔操作型作業機械システムにおける油圧ショベルの遠隔停止の制御手順について
図12及び
図14を用いて説明する。
図14は
図12に示す第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システムにおける作業機械の遠隔停止の制御手順の一例を示すフローチャートである。
【0097】
図14において、
図12に示す遠隔操作型作業機械システム1Aでは、オペレータの操作によって遠隔操作装置70Aの遠隔操作入力装置71又は表示装置73から油圧ショベル10Aの「システム停止」の指示が入力された場合、遠隔停止操作信号を通信装置72が送信する(ステップS410)。遠隔操作装置70Aからの遠隔停止操作信号は油圧ショベル10A側の通信装置41によって受信される(ステップS610)。こられのステップは、第1の実施形態の場合と同様である。
【0098】
遠隔停止操作信号が受信されると、第1遠隔操作信号処理装置42Aの周囲情報処理部62が周囲検知装置46から油圧ショベル10Aの周囲情報を取り込むと共に(ステップS620)、姿勢情報処理部61が姿勢検出装置45から油圧ショベル10Aの姿勢情報を取り込む(ステップS640)。第1遠隔操作信号処理装置42Aにより取得された油圧ショベル10Aの周囲情報及び姿勢情報を通信装置41が送信する(ステップS680)。本実施の形態の第1遠隔操作信号処理装置42Aは、第1の実施形態の遠隔操作信号処理装置42とは異なり、油圧ショベル10Aの周囲の駐機阻害要因の有無の判定(
図7に示すフローチャートのステップS630)及びや機体12の姿勢(傾き)の異常の有無の判定(
図7に示すフローチャートのステップS650)を実行しない構成である。
【0099】
遠隔操作装置70Aは、油圧ショベル側の通信装置41から油圧ショベル10Aの周囲情報及び姿勢情報を受信する(ステップS412)。遠隔操作装置70Aの第2遠隔操作信号処理装置75の周囲状況判定部65Aは、受信した周囲情報を基に油圧ショベル10Aの周囲の所定範囲内に駐機可能な場所の有無を判定する(ステップS414)。ステップS414において、YESの場合にはステップS416に進む一方、NOの場合にはステップS430に進む。本ステップS414は、第1の実施形態の遠隔操作信号処理装置42の周囲状況判定部65の
図7に示すステップS630の判定処理と同様な処理なので、その詳細な説明は省略する。
【0100】
ステップS414においてYESの場合、第2遠隔操作信号処理装置75の機械状態判定部64Aは、受信した姿勢情報を基に油圧ショベル10Aの機体12の姿勢(水平面に対する傾き)が許容範囲内であるか否かを判定する(ステップS416)。ステップS416において、YESの場合にはステップS460に進む一方、NOの場合にはステップS430に進む。本ステップS416は、第1の実施形態の遠隔操作信号処理装置42の機械状態判定部64の
図7に示すステップS650の判定処理と同様な処理なので、その詳細な説明は省略する。
【0101】
ステップS414又はステップS416においてNOの場合、すなわち、周囲情報に基づく第1判定が禁止判定の場合又は姿勢情報に基づく第2判定が禁止判定の場合には、油圧ショベル10Aの駐機場所確保の要求を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS430)。
【0102】
駐機場所確保の要求が表示された場合、遠隔操作装置70のオペレータによって油圧ショベル10Aの動作指示が遠隔操作入力装置71から入力されると、油圧ショベル10Aの動作指示の遠隔操作信号が通信装置72から送信される(ステップS440)。当該遠隔操作信号を油圧ショベル10A側の通信装置41が受信し、受信した動作指示の遠隔操作信号に応じて起動停止制御部67が油圧ショベル10Aを動作させ、最終的に駐機場所の情報を通信装置41が送信する(ステップS665)。油圧ショベル10Aからの駐機場所の情報は遠隔操作装置70により受信されて表示される(ステップS440)。これらの一連のステップS430~S440、S665は、第1の実施形態と同様なので、その詳細な説明は省略する。
【0103】
遠隔操作装置70のオペレータによりシステムの停止指示が再び入力されると、上述したステップS610、S620、S640、S680、S412、S414、S416を繰り返す。ステップS414においてYESの場合且つステップS416においてYESの場合、すなわち、周囲情報に基づく第1判定が許可判定の場合かつ姿勢情報に基づく第2判定が許可判定の場合、停止許可判定を示す情報を表示装置73の表示画面に表示する(ステップS460)。
【0104】
停止許可判定を示す情報が表示装置73に表示された場合、オペレータの操作により遠隔操作入力装置71又は表示装置73から原動機36の停止指示が入力されると、第1の実施形態の場合と同様な油圧ショベル10A側の一連の処理(ステップS710~S760)及び遠隔操作装置70A側の一連の処理(ステップSS520~S530)を実行し、油圧ショベル10Aの遠隔停止の制御フローを終了する。
【0105】
上述した第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システム1Aによれば、前述した第1の実施形態と同様に、遠隔操作装置70Aの起動・停止の遠隔操作信号に対して、原動機36の始動・停止を実行する前に、周囲検知装置46により検知された周囲情報及び姿勢検出装置45により検出された姿勢情報に基づく原動機36の始動・停止の可否の判定を行うので、油圧ショベル10A(作業機械)の周囲の状況及び当該機械自体の状態を確認した上で遠隔制御による油圧ショベル10A(作業機械)の起動・停止の実行が可能である。
【0106】
[その他の実施の形態]
なお、上述した実施の形態においては、遠隔操作が可能な油圧ショベル10、10Aに本発明を適用した例を示したが、遠隔操作が可能な油圧ショベル以外の各種の作業機械に広く適用することができる。
【0107】
また、本発明は本実施の形態に限られるものではなく、様々な変形例が含まれる。上記した実施形態は本発明をわかり易く説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。ある実施形態の構成の一部を他の実施の形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施の形態の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加、削除、置換をすることも可能である。
【0108】
例えば、第2の実施形態においては、システム制御装置の一部を構成する遠隔操作装置70A側の第2遠隔操作信号処理装置75自らが、油圧ショベル10A側の第1遠隔操作信号処理装置42Aによって取り込まれた周囲情報に基づき油圧ショベル10Aの起動及び停止(原動機36の始動及び停止)の可否を判定する第1判定を行うと共に、第1遠隔操作信号処理装置42Aによって取り込まれた姿勢情報に基づき油圧ショベル10Aの起動及び停止(原動機36の始動及び停止)の可否を判定する第2判定を行うように構成されている。さらに、第2遠隔操作信号処理装置75は、当該第1判定及び第2判定の両判定が油圧ショベル10Aの起動又は停止(原動機36の始動及び停止)を許可する許可判定である場合に、原動機36の始動又は停止を実行する始動指示又は停止指示の送信を可能としている。それに対して、遠隔操作装置70A側の第2遠隔操作信号処理装置を、周囲情報に基づく第1判定及び姿勢情報に基づく第2判定までは行わずに、当該周囲情報に基づく第1判定及び当該姿勢情報に基づく第2判定を行うことが可能な状態に処理することまでに止める構成も可能である。すなわち、遠隔操作装置70A側の第2遠隔操作信号処理装置は、周囲情報に基づく第1判定が可能な情報を遠隔操作装置70Aの出力装置としての表示装置73に提示すると共に、姿勢情報に基づく第2判定が可能な情報を遠隔操作装置70Aの出力装置としての表示装置73に提示するように構成されている。
【0109】
このような構成の場合、第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システム1Aにおける油圧ショベルの遠隔起動の制御手順に対して、例えば、次の点が異なる。
【0110】
図13に示す第2の実施形態に係る制御フローのステップS14においては、第2遠隔操作信号処理装置75は、受信した姿勢情報を基にフロント作業装置11及び機体12の姿勢を演算し、演算結果の油圧ショベル10Aの起動姿勢が所定の許容範囲内か否かを判定する。それに対して、第2の実施形態の変形例の第2遠隔操作信号処理装置は、受信した姿勢情報を基にフロント作業装置11及び機体12の姿勢を演算し、演算結果の油圧ショベル10Aの起動姿勢の情報及び起動姿勢に関する油圧ショベル10Aの起動(原動機36の始動)の可否を判定する第2判定のための情報を出力装置としての表示装置73に表示して遠隔操作装置70Aのオペレータに提示する。さらに、変形例の第2遠隔操作信号処理装は、遠隔操作装置70Aのオペレータによる当該第2判定(油圧ショベル10Aの起動の可否)の操作入力を受け付ける。受け付けた第2判定の操作入力がYES(油圧ショベル10Aの起動を許可する許可判定)の場合には
図13に示すステップS16に進む一方、受け付けた第2判定の操作入力がNO(油圧ショベル10Aの起動を禁止する禁止判定)の場合には
図13に示すステップS30に進む。
【0111】
また、
図13に示す第2の実施形態に係る制御フローのステップS16においては、第2遠隔操作信号処理装置75が、受信した周囲情報を基に油圧ショベル10Aの周囲の所定範囲内に起動阻害要因が存在していないか否かを判定する。それに対して、第2の実施形態の変形例の第2遠隔操作信号処理装置は、受信した周囲情報を基に得られる油圧ショベル10Aの周囲の起動阻害要因の有無の情報(第1判定が可能な情報)を出力装置としての表示装置73に表示して遠隔操作装置70Aのオペレータに提示する。さらに、変形例の第2遠隔操作信号処理装は、遠隔操作装置70Aのオペレータによる油圧ショベル10Aの起動(原動機36の始動)の可否(第1判定)の操作入力を受け付ける。受け付けた第1判定の操作入力がYES(油圧ショベル10Aの起動を許可する許可判定)の場合には
図13に示すステップS50に進む一方、受け付けた第1判定の操作入力がNO(油圧ショベル10Aの起動を禁止する禁止判定)の場合には
図13に示すステップS30に進む。
【0112】
この変形例においては、第2遠隔操作信号処理装置が、姿勢情報を基に得られる油圧ショベル10Aの起動姿勢の情報及び周囲情報を基に得られる油圧ショベル10Aの周囲の起動阻害要因の有無の情報を表示装置73に表示して遠隔操作装置70Aのオペレータに提示すると共に、遠隔操作装置70Aのオペレータによる油圧ショベル10Aの起動(原動機36の始動)の可否の操作入力を受け付けることは、システム制御装置が周囲情報及び姿勢情報に基づいて油圧ショベル10Aの起動(原動機36の始動)の可否を判定することに相当するものと規定する。
【0113】
また、第2の実施形態に係る遠隔操作型作業機械システム1Aにおける油圧ショベルの遠隔停止の制御手順に対して、例えば、次の点が異なる。
【0114】
図14に示す第2の実施形態に係る制御フローのステップS414においては、第2遠隔操作信号処理装置75が受信した周囲情報を基に油圧ショベル10Aの駐機可能な場所の有無を判定する。それに対して、第2の実施形態の変形例の第2遠隔操作信号処理装置は、受信した周囲情報を基に得られる油圧ショベル10Aの周囲の駐機阻害要因の有無(油圧ショベル10A(原動機36)の停止の可否を判定する第1判定を行うことが可能な情報)を出力装置としての表示装置73に表示して遠隔操作装置70Aのオペレータに提示する。さらに、変形例の第2遠隔操作信号処理装は、遠隔操作装置70Aのオペレータによる油圧ショベル10A(原動機36)の停止の可否(第1判定)の操作入力を受け付ける。受け付けた第1判定の操作入力がYES油圧ショベル10Aの停止を許可する許可判定)の場合には
図14に示すステップS416に進む一方、受け付けた第1判定の操作入力がNO(油圧ショベル10Aの停止を禁止する禁止判定)の場合には
図14に示すステップS430に進む。
【0115】
また、
図14に示す第2の実施形態に係る制御フローのステップS416においては、第2遠隔操作信号処理装置75が受信した姿勢情報を基に油圧ショベル10Aの機体12の姿勢(水平面に対する傾き)が許容範囲内であるか否かを判定する。それに対して、変形例の第2遠隔操作信号処理装置は、受信した姿勢情報を基に得られる油圧ショベル10Aの水平面に対する傾きが許容範囲内であるか否か(油圧ショベル10A(原動機36)の停止の可否を判定する第2判定)の情報を出力装置としての表示装置73に表示して遠隔操作装置70Aのオペレータに提示する。さらに、変形例の第2遠隔操作信号処理装は、遠隔操作装置70Aのオペレータによる油圧ショベル10A(原動機36)の停止の可否(第2判定)の操作入力を受け付ける。受け付けた第2判定の操作入力がYES(油圧ショベル10Aの停止を許可する許可判定)の場合には
図14に示すステップS460に進む一方、受け付けた第2判定の操作入力がNO(油圧ショベル10Aの停止を禁止する禁止判定)の場合には
図14に示すステップS430に進む。
【0116】
この変形例においては、第2遠隔操作信号処理装置が、油圧ショベル10Aの姿勢情報及び周囲情報を基に得られる駐機阻害要因の有無の情報を表示装置73に表示して遠隔操作装置70Aのオペレータに提示すると共に、遠隔操作装置70Aのオペレータによる油圧ショベル10A(原動機36)の停止の可否の操作入力を受け付けることは、システム制御装置が周囲情報及び姿勢情報に基づいて油圧ショベル10A(原動機36)の停止の可否を判定することに相当するものと規定する。
【0117】
このように、第2の実施形態の変形例に係るシステム制御装置は、油圧ショベル10A(作業機械)に搭載された第1制御装置としての第1遠隔操作信号処理装置42Aと、遠隔操作装置70Aに組み込まれている第2制御装置としての第2遠隔操作信号処理装置を有する。油圧ショベル10A(作業機械)側の第1遠隔操作信号処理装置42A(第1制御装置)は、周囲検知装置46により検知された周囲情報及び姿勢検出装置45により検出された姿勢情報を取り込んで第2遠隔操作信号処理装置75に送信する。遠隔操作装置70A側の第2遠隔操作信号処理装置(第2制御装置)は、周囲情報及び姿勢情報を遠隔操作装置70Aの出力装置としての表示装置73に提示すると共に原動機36の始動又は停止の可否の操作入力を受け付ける。受け付けられた操作入力が原動機36の始動又は停止を許可する操作入力である場合には、第1遠隔操作信号処理装置42A(第1制御装置)に原動機36の始動又は停止を実行させる。
【0118】
この構成によれば、前述した第2の実施形態と同様に、遠隔操作装置70Aの起動・停止の遠隔操作信号に対して、原動機36の始動・停止を実行する前に、周囲検知装置46により検知された周囲情報及び姿勢検出装置45により検出された姿勢情報に基づく原動機36の始動・停止の可否の判定を行うので、油圧ショベル10(作業機械)の周囲の状況及び当該機械自体の状態を確認した上で遠隔制御による油圧ショベル10A(作業機械)の起動・停止の実行が可能である。
【符号の説明】
【0119】
1、1A…遠隔操作型作業機械システム、 10、10A…油圧ショベル(作業機械)、 11…フロント作業装置(作業装置)、 36…原動機、 38…主電源、 42…遠隔操作信号処理装置(システム制御装置;制御装置)、 42A…第1遠隔操作信号処理装置(システム制御装置;第1制御装置)、 43…予備電源、 45…姿勢検出装置、 46…周囲検知装置、 47…負荷検出装置、 70、70A…遠隔操作装置、 73…表示装置(出力装置)、 75…第2遠隔操作信号処理装置(システム制御装置;第2制御装置)
【要約】
【課題】作業機械の周囲状況及び当該機械自体の状態を確認した上で遠隔制御による作業機械の起動停止を可能とする遠隔操作型作業機械システム及び作業機械を提供する。
【解決手段】遠隔操作されることが可能な油圧ショベル10と油圧ショベル10を遠隔操作する遠隔操作装置70とを含む遠隔操作型作業機械システム1は、遠隔操作装置70からの遠隔操作信号に基づいて油圧ショベル10の動作制御を行うシステム制御装置としての遠隔操作信号処理装置42を有する。システム制御装置42は、遠隔操作信号が油圧ショベ10を起動させる遠隔起動操作信号又は停止させる遠隔停止操作信号の場合、油圧ショベル10の周囲検知装置46により検出された周囲情報及び姿勢検出装置45により検出された姿勢情報を取り込で原動機36の始動又は停止の可否を判定する。
【選択図】
図3