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特許7530469熱分解油の水素処理のための方法及び装置
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  • 特許-熱分解油の水素処理のための方法及び装置 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】熱分解油の水素処理のための方法及び装置
(51)【国際特許分類】
   C10G 1/00 20060101AFI20240731BHJP
   C10J 3/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C10G1/00 C
C10J3/00 A
【請求項の数】 12
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023041009
(22)【出願日】2023-03-15
(62)【分割の表示】P 2020518766の分割
【原出願日】2018-10-08
(65)【公開番号】P2023088947
(43)【公開日】2023-06-27
【審査請求日】2023-04-11
(31)【優先権主張番号】1751273-2
(32)【優先日】2017-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】SE
(73)【特許権者】
【識別番号】520109243
【氏名又は名称】コルトゥス アクティエボラーグ
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100128495
【弁理士】
【氏名又は名称】出野 知
(74)【代理人】
【識別番号】100146466
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 正俊
(74)【代理人】
【識別番号】100087413
【弁理士】
【氏名又は名称】古賀 哲次
(72)【発明者】
【氏名】ロルフ ユンググレーン
【審査官】齊藤 光子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2011/060556(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0340322(US,A1)
【文献】西独国特許出願公開第03217040(DE,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C10G 1/00-99/00
C10J 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマスから炭化水素を生成する方法であって、以下の工程、
-乾燥バイオマス(B)を不活性環境中で350-500℃の温度に加熱して、熱分解生成物(PP)及びチャー(C)を生成する熱分解工程、
-熱分解生成物(PP)からチャー(C)を分離する熱分解分離工程、
-分離されたチャー(C)を、水蒸気(Wst)を含むが、酸素又はハロゲンを実質的に含まない環境中で900―1300℃の温度に加熱して、チャー(C)を還元して合成ガス(S)を生成するガス化工程、
-生成された合成ガス(S)を冷却及び精製して、精製合成ガス(S)を生成する工程、及び
-精製合成ガス(S)から水素ガス(H)を分離するガス分離工程、
を含む、方法において、
-熱分解生成物(PP)を冷却して熱分解油(PO)を回収する熱分解油回収工程、及び
-ガス分離工程で分離した水素ガス(H)の少なくとも一部の存在において熱分解油(PO)を水素化させ、酸素を実質的に含まない炭化水素(BO )を生成する水素化工程、をさらに含み、
少なくとも1つの熱交換の工程が前記方法に含まれ、少なくとも1つの工程の過剰の熱が少なくとも1つの他の工程の熱要求工程で利用されること、及び
ガス分離工程で生成された残留ガス(RG)を熱交換器(10)で利用して、分離されたチャー(C)のガス化工程のための熱(Hgf)及び/又は熱分解工程のための熱(Hpd)を生成すること、
を特徴とする方法。
【請求項2】
熱分解工程の前に、湿潤バイオマス(B)を乾燥バイオマス(B)に乾燥する工程を実施する、請求項1記載の方法。
【請求項3】
分離されたチャー(C)を加熱して合成ガス(S)を生成する工程を除く前記方法のすべての工程は、前記方法の他の工程からの過剰の熱によって加熱される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記方法のすべての工程は、前記方法の他の工程又は前記方法の他の工程で生成された残留生成物の発熱反応からの過剰の熱によって加熱される、請求項1記載の方法。
【請求項5】
水素化工程で副生成物として生成される残留ガス(RG)を熱交換器(10)で利用して、分離されたチャー(C)のガス化工程のための熱(Hgf)及び/又は熱分解工程のための熱(Hpd)を生成する、請求項1記載の方法。
【請求項6】
熱分解生成物(PP)を凝縮器(8)で冷却し、それにより過剰の熱(HR)を生成し、その過剰の熱(HR)を湿潤バイオマス(B)を乾燥する工程で利用する、請求項2記載の方法。
【請求項7】
生成された炭化水素(BO)を冷却デバイス(9)で冷却し、過剰の熱(HR)を冷却デバイス(9)で生成して、それを湿潤バイオマス(B)を乾燥する工程で利用する、請求項2記載の方法。
【請求項8】
バイオマスから炭化水素を生成するための装置であって、
-酸素及びハロゲンを実質的に含まない環境中で乾燥バイオマス(B)を350-500℃の温度に加熱して、熱分解生成物(PP)及びチャー(C)を生成する熱分解反応器(2)、
-分離されたチャー(C)を、水蒸気(Wst)を含むが、酸素及びハロゲンを実質的に含まない環境中で900―1300℃の温度に加熱して、チャー(C)を還元して合成ガス(S)を生成するガス化反応器(3)、
-生成された合成ガス(S)を冷却して、冷却された合成ガス(Srt)にするガス冷却器(4)、
-冷却された合成ガス(Srt)を精製して、精製合成ガス(S)を生成する調整及び圧力システム(5)、
-水素ガス(H)を精製合成ガス(S)から分離するガス分離デバイス(6)
を含む、装置において、
前記装置は水素化デバイス(7)も含み、その中に、熱分解生成物(PP)から回収された熱分解油(PO)、及び、ガス分離デバイス(6)から取り戻された、分離された水素ガス(H)の少なくとも一部を、水素化工程のために導入し、熱分解油(PO)を水素ガス(H)の存在により水素化し、実質的に酸素を含まない炭化水素(BO )を生成すること、
少なくとも1つの熱交換器(10)が設けられ、前記装置の少なくとも一部分の過剰の熱が前記装置の少なくとも1つの他の部分の熱要求工程で利用されること、
ガス分離デバイス(6)で生成された残留ガス(RG)を熱交換器(10)で利用して、ガス化反応器(3)における分離されたチャー(C)のガス化工程のための熱(Hgf)及び/又は熱分解反応器(2)における熱分解工程のための熱(Hpd)を生成すること
を特徴とする装置。
【請求項9】
前記装置は凝縮器(8)をさらに含み、凝縮器において、熱分解反応器(2)からの熱分解生成物(PP)を冷却して、熱分解油(PO)及び熱分解ガス(PG)を生成し、熱分解油(PO)は、水素化デバイス(7)に運ばれるように構成されている、請求項8記載の装置。
【請求項10】
湿潤バイオマス(B)を乾燥して乾燥バイオマス(B)にするためにバイオマスドライヤ(1)を配置し、その乾燥バイオマス(B)を熱分解反応器(2)に運ぶ、請求項8又は9記載の装置。
【請求項11】
ガス化反応器を除く前記装置のすべての部分は前記装置の他の部分からの過剰の熱によって加熱される、請求項8,9又は10記載の装置。
【請求項12】
前記装置のすべての部分は、前記装置の他の部分又は前記装置の他の部分で生成された残留生成物の発熱反応からの過剰の熱によって加熱される、請求項8,9又は10記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスからの熱分解油の水素処理のための方法及び装置に関し、特に、バイオマス、水、空気及び調節された量の熱以外の他のインプットが必要とされない自己平衡化された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスの使用は、「グリーン」エネルギーの生産において重要になっており、例えば、電気エネルギーの生産の形で、又は、輸送用の環境に優しい燃料を提供するのに重要になっている。従来技術より、バイオマスから合成ガス又は水素を生成することが知られている。組成が様々でありそしてエネルギー密度が比較的に低いために、合成ガスは保存可能な製品としては適切ではない。水素は合成ガスよりもエネルギー密度が高く、今日では乗物の燃料として一般的に使用されている。しかしながら、水素で走行する乗物の割合は依然として非常に低く、燃料としての水素の需要は依然として比較的に低い。
【0003】
バイオマスから合成ガスを製造するための方法及び装置は、WO2008/073021A1に記載されており、この方法は反応の成果を最大化するための熱交換工程を含む。したがって、この方法は、合成ガスを生成するために非常にわずかなエネルギーしかプロセスに追加する必要がないという点で有利である。
【0004】
しかしながら、上記のように、合成ガスはしばしば使用前にさらに処理される。したがって、より精製された最終製品をバイオマスから提供できるエネルギー効率の良い方法を提供することは有利であろう。
【0005】
統合されたバイオマスガス化ユニットからの熱分解油の水素処理方法は、バイオマスなどの再生可能な天然資源から純粋な炭化水素、すなわち、実質的に酸素、窒素又は硫黄を含まないものを得るという問題に取り組んでいる。
【0006】
バイオマスは、典型的に、約50%の炭素、7%の水素、42%の酸素を含み、残部が塩及び灰などの無機物であるセルロース製品に基づく。この天然バイオマスから高エネルギー密度の製品を生成するための鍵は、最終製品から酸素を分離することである。
【0007】
バイオマスのガス化において、最先端の技術により最大60%の水素含有量を持つ高価値の合成ガスを生成できるが、残部は一般に酸素を含む。
【0008】
バイオマスの熱分解方法は、固体チャー、熱分解ガス及び液体熱分解油を生成する。熱分解油は、タールと通常呼ばれる酸素化炭化水素から主に構成されている。そのようなタール製品中に存在する酸素は油を不安定にし、さらに、すでに部分的に酸化されているため、炭化水素のエネルギー値を制限する。熱分解生成物を生成する様々な方法があり、バイオマスをどの位速く加熱するかに基づいて、高速熱分解及び低速熱分解との間でしばしば区別される。急速熱分解では、高収率の液体チャーが生成され、低速法では、高収率の固体チャーが生成される。
【0009】
熱分解油の下流処理は、一般に、酸素除去によってエネルギー値を増加させるために実施される。それを行う方法は、水素を消費し、副生成物として水を生成する。これは、酸素の除去によりエネルギー値が増加するときに、熱分解油の質量収量が低下することも意味する。この方法は、典型的に、高温高圧で行われる触媒法である。
【0010】
従来から、熱分解油の脱酸素化で消費される水素は、典型的に、非再生可能水素源に由来する。すなわち、従来から、支配的な水素源は天然ガスからの水性ガスシフトであり、これは再生可能な水素源ではなく、二酸化炭素を生成し、そのグローバルバランスを高める化石源である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
したがって、化石ベースの資源を使用せず、二酸化炭素のグローバルバランスを乱すことなく、バイオマスからバイオオイルを生産する、環境に優しいエネルギー効率の良い方法を見出すことが望まれている。
【0012】
本発明の目的は、エネルギー効率のよい方法でバイオマスから炭化水素を提供することである。統合されたバイオマスガス化ユニットからの熱分解油の水素処理の本発明の方法は、これらの問題を解決し、再生可能プロセスで高いエネルギー収率で酸素を全く含まず又は非常に低い含有量で含む炭化水素を生成する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様によれば、本発明は、バイオマスから炭化水素を生成する方法であって、以下の工程、
-乾燥バイオマスを不活性環境中で加熱して、熱分解生成物及びチャーを生成する熱分解工程、
-前記熱分解生成物から前記チャーを分離する熱分解分離工程、
-分離されたチャーを、水蒸気を含むが、酸素又はハロゲンを実質的に含まない環境中で加熱して、前記チャーを還元して合成ガスを生成するガス化工程、
-生成された合成ガスを冷却及び精製して、精製合成ガスを生成する工程、
-前記精製合成ガスから水素ガスを分離するガス分離工程、
を含む、方法において、
前記水素ガスの少なくとも一部を分離して熱分解油を回収し、前記水素ガスを水素化工程に戻し、前記水素ガスの存在により前記熱分解油を水素化させ、酸素を実質的に含まない炭化水素を生成することを特徴とする方法に関する。
【0014】
本方法はまた、湿潤バイオマスを乾燥バイオマスに乾燥する工程を含むことができ、この工程は熱分解工程の前に実施される。
【0015】
前記熱分解生成物を凝縮器で冷却することができ、それにより過剰の熱が生成され、それを前記湿潤バイオマスを乾燥する工程で利用することができる。さらに、生成された炭化水素を冷却デバイスで冷却することができ、前記冷却デバイスで生成される過剰の熱を、前記湿潤バイオマスを乾燥する工程で利用することができる。
【0016】
好ましい実施形態において、熱交換の少なくとも1つの工程が本方法に含まれ、少なくとも1つの工程の過剰の熱が少なくとも1つの他の工程の熱要求工程で利用される。
【0017】
1つの特定の実施形態において、分離されたチャーを加熱して合成ガスを生成するガス化工程を除く、本方法のすべての工程は、本方法の他の工程からの過剰の熱によって加熱される。
【0018】
本方法のすべての工程は、本方法の他の工程からの過剰の熱、又は本方法の他の工程で生成された残留生成物の発熱反応からの過剰の熱によって加熱されうる。
【0019】
特定の実施形態において、ガス分離工程で副生成物として生成される残留ガスは熱交換器で利用され、分離されたチャーのガス化工程のための熱及び/又は熱分解工程のための熱を生成する。
【0020】
特定の実施形態において、水素化工程で副生成物として生成される残留ガスは熱交換器で利用され、分離されたチャーのガス化工程のための熱及び/又は熱分解工程のための熱を生成する。
【0021】
第二の態様によれば、本発明はバイオマスから炭化水素を生成するための装置であって、
【0022】
-乾燥バイオマスが、酸素及びハロゲンを実質的に含まない環境中で加熱され、熱分解生成物及びチャーが生成される熱分解反応器、
-分離されたチャーを、水蒸気を含むが、酸素及びハロゲンを実質的に含まない環境中で加熱して、前記チャーを還元して合成ガスを生成するガス化反応器、
-生成された合成ガスを冷却して、冷却された合成ガスとするガス冷却器、
-冷却された合成ガスを精製して、精製合成ガスを生成する調整及び圧力システム、
-水素ガスを精製合成ガスから分離する分離デバイス、
を含む、装置において、
前記装置は水素化デバイスも含み、その中に、前記熱分解生成物から回収された熱分解油、及び、前記分離デバイスから取り戻された、分離された水素ガスの少なくとも一部を、水素化工程のために導入し、該工程において、前記熱分解油を水素ガスの存在により水素化し、実質的に酸素を含まない炭化水素を生成することを特徴とする装置に関する。
【0023】
特定の実施形態において、前記装置は凝縮器をさらに含み、該凝縮器中で、前記熱分解反応器からの熱分解生成物を冷却して、熱分解油及び熱分解ガスを生成し、該熱分解油は水素化デバイスに運ぶように構成されている。
【0024】
特定の実施形態において、バイオマスドライヤは湿潤バイオマスを乾燥バイオマスに乾燥するために配置され、該乾燥バイオマスは前記熱分解反応器に運ばれる。
【0025】
好ましくは、少なくとも1つの熱交換器が設けられ、前記装置の少なくとも1つの部分の過剰の熱は、前記装置の少なくとも1つの他の部分の熱要求工程で利用される。
【0026】
特定の実施形態において、ガス化反応器を除く前記装置のすべての部分は、前記装置の他の部分からの過剰の熱によって加熱される。
【0027】
別の特定の実施形態において、前記装置のすべての部分は、前記装置の他の部分からの過剰の熱又は前記装置の他の部分で生成された残留生成物の発熱反応からの過剰の熱によって加熱される。
【0028】
他の実施形態及び利点は詳細な説明及び添付の図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
以下において、本発明に関連する例示的な実施形態を添付の図面を参照して説明する。
図1図1は本発明の特定の実施形態による方法のフローチャートを示し、該フローチャートに、該方法を実施するためのプラントの装置を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
図1に、本発明の特定の実施形態による方法の概略フローチャートを示す。1つの態様によれば、本方法は高収率の閉鎖系であり、バイオマスを含む原料とは別に、実質的に水及び空気以外の追加材料は本方法に必要ない。本方法のすべての工程は当該技術分野で個別に知られており、したがって簡単に説明するだけである。1つの態様によれば、本発明は、高いエネルギー収率で、他の資源を使用せずにバイオマスから炭化水素を生成することができる、プロセス工程の組み合わせ及び順序にある。本方法は、有利には、バイオマスの連続供給及びバイオオイルの連続生産を伴う連続法であることができ、このバイオオイルは純粋な炭化水素を含む(comprised of pure hydrocarbons)。本出願の関係において、「純粋な炭化水素」とは、炭化水素が窒素、硫黄又は酸素などの他の含有分を実質的に含まないことを意味する。
【0031】
図1は、本方法を実施するためのプラントを形成する多数のユニットも概略的に示している。デバイスのユニットを接続する接続体、チューブなどは詳細に説明又は表示されない。接続体、パイプなどは、それらの機能を発揮するように、つまり、プラントのユニット間で気体、液体及び固体を輸送するように適切に設計されている。当業者は、これらの部品の寸法を決定する方法を知っているため、本出願では詳細に説明しない。本発明は、プラントの機能及びプラントに含まれるユニットの相互作用に基づいている。
【0032】
図1に、統合バイオマスガス化ユニットからの熱分解油の水素処理のプロセスソリューションを示す。ガス化は湿潤バイオマスBをバイオマスドライヤ1に入れることから始まり、乾燥バイオマスBを生成する。また、ドライヤ1は、方法の後段の工程で生成された熱を利用してドライヤ1を加熱する点でヒートシンクとして機能することができる。示された実施形態において、水蒸気の形態の温水Woutは方法の後段の工程に配置されている冷却デバイス9から回収される。ドライヤ1の熱交換において、入ってくる温水Woutは凝縮水Wcdに凝縮され、ここで、水の冷却及び相変化からの熱放出を利用して湿潤バイオマスBを加熱する。
【0033】
乾燥工程は、提供されるバイオマスが本方法の第二の工程に直接供給されうる乾燥性を有する場合に省略されうるので、任意工程である。前記第二の工程において、乾燥バイオマスBは間接加熱型熱分解反応器2に供給され、熱分解生成物PP及びチャーCが生成される。熱分解工程において、乾燥バイオマスBは酸素又はあらゆるハロゲンの非存在下に約350~500℃に加熱され、ここで、酸素含有量の高い炭化水素から主になる熱分解生成物PP及びチャーCが生成される。熱分解生成物PPは凝縮器8に運ばれ、これについては以下でさらに詳しく説明する。
【0034】
熱分解工程において生成されたチャーCは、続いて間接加熱型ガス化反応器3、典型的にはセラミックライニングされた反応器に注入される。水蒸気Wがガス化反応器3に供給される。このような反応器は、それ自体、当業者に知られており、とりわけWO2009/151369A1に記載されており、それを参照により本出願に含める。
【0035】
ガス化反応器3が間接加熱されるということはガス化反応器3中に実質的に酸素が存在しないことを意味する。それにより、チャーの生来的なエネルギーは、保存されて最終製品の一部を形成するように、保持される。つまり、酸素が存在するならば、チャーの少なくとも一部は燃焼され、それにより、エネルギーを損失し、二酸化炭素が生成される。これは、再生可能な方法において高エネルギー収率で酸素を含まず又は非常に低い含有量で含む炭化水素を生成するという本発明の目的に反する。
【0036】
ガス化反応器3内の温度は典型的には900~1300℃であり、圧力は大気圧から最大100バールという非常に高い圧力までの間で制御することができる。典型的に、ガス化反応器は加熱される必要がある。好ましい態様においては、この加熱は本方法の他の工程の残留生成物によって達成され、したがって外部資源を必要としないが、又は、あまり好ましくない実施形態において、これは、典型的に熱の形態の外部資源が本方法に提供される本方法の唯一の工程である。示される実施形態において、ガス化反応器3のための熱は、熱交換デバイス10内のプロセスの残留生成物から生成され、これは以下により詳細に説明される。
【0037】
ガス化反応器3内の雰囲気は、実質的に酸素及びハロゲンを含まない。ガス化反応器3において、チャーC及び供給された水蒸気Wから高温合成ガスSが生成される。このようなチャーのガス化によって生成される合成ガスは純粋なガスではなく、一般に、約25~30%の一酸化炭素、約55~60%の水素、約5~15%の二酸化炭素及び0~5%のメタンの混合物を含む。また、より少量の他のガスを含むこともできる。
【0038】
ガス化装置の下流に、ガス冷却器4が配置されている。ガス冷却器4の内部で、高温合成ガスSは冷却されて、冷却された合成ガスSrtになる。ガス冷却器4はまた、高温合成ガスSからの熱が回収されるように熱交換器として機能する。これは様々な様式で実現できる。図示の実施形態において、ガス化プロセスで消費された水蒸気Wstは、ガス冷却器4内部で水Winから沸騰される。したがって、ガス冷却器4の熱交換において生成される生成水蒸気Wstはガス化反応器3に運ばれる。
【0039】
ガス冷却器4からの冷却された合成ガスSrtはガス調整及び加圧システム5に供給され、そこで精製合成ガスSを生成し、典型的には、主に一酸化炭素CO及び水素Hを含む。この精製合成ガスSは、典型的に圧力スイング吸着(PSA)又は膜システムであるガス分離デバイス6に運ばれ、そこで精製合成ガスSから水素Hが分離される。
【0040】
ガス分離デバイス6からの残留ガスRGは、典型的に、エネルギーガスであり、それはガス化反応器3におけるガス化プロセスのための熱源Hgfとして使用されうる。
【0041】
熱交換デバイス10において回収された残留ガスRGの燃焼は、同様に、過剰の熱Hpdの少なくとも一部を生成し、ドライヤ1及び/又は熱分解反応器2の加熱に利用される。
【0042】
生成された熱分解生成物PPは凝縮器8で冷却され、該凝縮器は熱分解ガスPG及び液体熱分解油POを生成すると同時に熱交換器として機能する。凝縮器8での凝縮により過剰の熱HRが発生し、これは、予備乾燥、又は地域暖房などの他の低温用途に利用できる。熱分解ガスPGは、残留ガスRGと同様にガス化反応器3の加熱に利用される。図示の実施形態において、残留ガスRG及び熱分解ガスPGの両方は熱交換器10に運ばれ、その燃焼により、ドライヤ1及び熱分解反応器2の加熱に利用される過剰の熱Hpdと、ガス化プロセス3のための熱源Hgfを生成する。
【0043】
凝縮器8から回収された熱分解油PO及びガス分離デバイス6から回収された水素Hは水素化反応器7に供給される。水素化反応器7は、好ましくは、水素Hによる熱分解油POの水素化のために設計された触媒プロセスを備える。熱分解油POは、典型的に、通常にタールと呼ばれる酸素化炭化水素である。熱分解油POは、セルロース、ヘミセルロース及び/又はリグニンなどのバイオマス中の化合物のいずれかに由来し、典型的には熱分解プロセス2でタールを形成する。本発明の装置の水素化反応器7における所望の反応は、水素Hによる熱分解油POからの酸素の制御された除去であり、それにより、純粋な炭化水素及び水が生成される。前記水素化反応器内では他の反応も起こってよい。触媒反応を高温高圧を用いて最適化し、熱分解油POを純粋なバイオオイルBOとしての純粋な炭化水素(無酸素炭化水素)に完全に転化させることができる。
【0044】
触媒反応が高温で行われる場合に、好ましくは、水素化反応器7の下流に冷却デバイス9を提供して、抽出された高温バイオオイルBOの温度を、通常の取り扱い温度のバイオオイルBOに下げ、水Woutを抽出する。冷却デバイス9において発生した過剰の熱HRは、予備乾燥又は他の低温用途、すなわち地域暖房に利用することができる。水素化反応器7で起こる反応において、残留ガスRGは生成される。この残留ガスRGは水素が豊富であり、熱交換器10内において、ガス分離デバイス6から回収された残留ガスRGを補完するものとして使用することができる。
【0045】
高温合成ガスSを冷却して冷却合成ガスSrtにするガス冷却器4に必要な水Winは、冷却デバイス9からの生成水Woutのリサイクルから回収することができる。さらに、凝縮水Wcdは、ドライヤ1において、入ってくる湿潤バイオマスBの生来の水からも回収されてよい。凝縮水Wcdはまた、ガス冷却器4に循環させることもできる。
【0046】
上記では、特定の実施形態を参照して本発明を説明してきた。しかしながら、本発明はこれらの実施形態に限定されない。添付の特許請求の範囲内で他の実施形態が可能であることは当業者に明らかである。
図1