(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】光電センサ及び発光器装置
(51)【国際特許分類】
G01S 7/481 20060101AFI20240731BHJP
H01H 35/00 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
G01S7/481 A
H01H35/00 E
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023060842
(22)【出願日】2023-04-04
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】10 2022 114 792.4
(32)【優先日】2022-06-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591005615
【氏名又は名称】ジック アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】弁理士法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ ウルリッヒ ニューブリング
【審査官】安井 英己
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2005/0001168(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0043309(US,A1)
【文献】特開2014-219352(JP,A)
【文献】THE INFRARED HANDBOOK revised edition,米国,The Infrared Information Analysis(IRIA) Center, Environmental Research Institute of Michigan.,1985年,p.9-24,22-99,22-100
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01S 7/48- 7/51,
G01S 17/00-17/95,
G01V 8/26,
G01B 11/00,
G02B 5/00,
H01H 35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光入射開口と、受信光信号を捕らえて該受信光信号を電気的な受信信号に変換するための少なくとも1つの受光器(24、24.1、24.2)とを含む光電センサ(110~510)であって、前記光入射開口と前記少なくとも1つの受光器(24、24.1、24.2)との間に受信光路が延在しており、該受信光路が表側反射面(14)と裏側反射面(16)を有する方向転換素子(112~512)を備え、該方向転換素子(112~512)が、前記受信信号の一部が前記表側反射面(14)で反射され、前記受信信号の別の一部が前記裏側反射面(16)で反射されるように構成されている光電センサにおいて、
前記表側反射面(14)が少なくとも部分的にフィルタ層(18)を備えており、該フィルタ層が受信光信号をその波長及び/又は偏光方向に応じて反射する又は通過させること
、及び
前記フィルタ層(18)が前記表側反射面(14)の複数の部分領域にのみ設けられ、該複数の部分領域がリング状に又は縞状に又は市松模様のように配置されること
を特徴とする光電センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の光電センサ(110~510)において、
該光電センサ(110~510)が第1の受光器(24.1)及び第2の受光器(24.2)を含み、前記表側反射面(14)で反射された受信光信号が前記第1の受光器(24.1)により捕らえられ、前記裏側反射面(16)で反射された受信光信号が前記第2の受光器(24.2)で捕らえられるように、各受光器(24.1、24.2)と前記方向転換素子(112~512)が構成及び配置されていることを特徴とする、光電センサ。
【請求項3】
前記表側反射面(14)と前記裏側反射面(16)が互いに平行に延在していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電センサ(110~510)。
【請求項4】
前記表側反射面(14)と前記裏側反射面(16)が互いに傾斜して延在していることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電センサ(110~510)。
【請求項5】
前記表側反射面(14)と前記裏側反射面(16)が平坦であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電センサ(110~510)。
【請求項6】
前記反射面(14、16)の少なくとも1つ、好ましくは前記裏側反射面(16)が湾曲しており、好ましくは凹面状であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電センサ(110~510)。
【請求項7】
前記受信光信号を方向転換させる方向転換角が90度又は180度であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電センサ(110~510)。
【請求項8】
前記裏側反射面(16)が反射性の被覆(20)を備えていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電センサ(110~510)。
【請求項9】
波長及び/又は偏光方向の選択性に関する前記フィルタ層(18)の反射特性が電気的な制御信号に応じて可変であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の光電センサ(110~510)。
【請求項10】
監視領域内へ発射光を送出するための発光器装置において、光出射開口と、第1の波長で発射光を生成するために調整された第1の発光器と、該第1の発光器から間隔を置いて配置され、前記第1の波長とは異なる第2の波長の発射光を生成するために調整された第2の発光器とを含み、
各発光器と前記光出射開口の間に発射光路が延在しており、該発射光路が、互いに傾斜して延在する表側反射面(14)と裏側反射面(16)を有する方向転換素子(112~512)を備えており、
前記表側反射面(14)が発射光をその波長に応じて反射する又は通過させるフィルタ層(18)を備えており、
前記フィルタ層(18)が前記表側反射面(14)の複数の部分領域にのみ設けられ、該複数の部分領域がリング状に又は縞状に又は市松模様のように配置されており、
各発光器と前記方向転換素子(112~512)が、前記第1の発光器により生成された発射光が前記表側反射面(14)で反射され、前記第2の発光器により生成された発射光が前記裏側反射面(16)で反射され、各反射面(14、16)で反射された発射光が共通の発射光軸に沿って伝播するように、構成及び配置されている発光器装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光入射開口と、受信光信号を捕らえて該受信光信号を電気的な受信信号に変換するための少なくとも1つの受光器とを含む光電センサであって、前記光入射開口と前記少なくとも1つの受光器との間に受信光路が延在しており、該受信光路が表側反射面と裏側反射面を有する方向転換素子を備え、該方向転換素子が、前記受信光信号の一部が前記表側反射面で反射され、前記受信光信号の別の一部が前記裏側反射面で反射されるように構成されている光電センサに関する。
【背景技術】
【0002】
該当の種類及び類似の種類の光電センサは多様なやり方で仕上げて様々な利用目的で用いることができる。光電式のセンサ装置は例えば発光器を含んでおり、該発光器は光信号を監視領域へ送出し、該光信号は監視領域内に物体があればそれにより光電センサの方向へと直反射又は拡散反射されて該センサの受光器により捕らえられる。かなり多くの形態では、監視領域における物体の存在だけでなく、物体の特定の属性、例えばその表面特性又は大きさも追加的に捕らえることができる。このような装置は光センサとも呼ばれる。別のセンサ装置では発射光線が反射器(特に再帰反射器)の方向へ送出され、該反射器により光電センサの方向へ反射される。光路が遮断されると光電センサによりそれを確認することができる。このようなセンサ装置は光遮断機とも呼ばれる。複数の光遮断機を配置したものは光カーテン又は光格子と呼ばれる。更に別の模範的なセンサ装置はいわゆるレーザスキャナを含む。レーザスキャナでは例えば回転鏡又は揺動鏡を用いて発射光信号が周期的に様々な空間方向へ偏向させられる。これにより、より大きな2次元又は3次元の空間領域でも位置分解して監視することができる。
【0003】
多くの光電式のセンサ装置では、例えば光伝播時間若しくは位相位置の算出又は三角法により、捕らえられた物体の距離も追加的に算出できるようになっている。
【0004】
光電式のセンサ装置ではしばしば、光学的な光線経路を有利に方向転換させたり折り畳んだりするために、発射光路及び/又は受信光路に方向転換鏡又は折り畳み鏡が配置される。これにより、特にセンサ装置のために必要な組立て空間を小さくしたり、特定の複雑な組み込み状況に適合させたりすることができる。更に、様々な光学素子を光線経路内に加えるために光学的な光線経路の方向転換又は折り畳みが必要となることもある。「折り畳み鏡」とは、ここで通例180度の方向転換が生じるように、即ち光線経路が元の方向へ折り返されるように光学的な光線経路内に統合された1枚の鏡と大抵は理解される。「方向転換鏡」は通例180度と異なる角度で方向転換を生じさせる。それは好ましくは90度であるが、0度より大きく180度より小さい範囲内の他の角度もある。
【0005】
特許文献1には、撮像装置を用いて構造物を光学的に捕らえる方法及び装置であって、結像光線経路内に配置された光学素子が、撮像装置の互いに離れ且つ互いにずれた少なくとも2つの領域に構造物の像を結ぶものが記載されている。これにより、大きな長さを持つ構造物を連続する複数の部分に分解し、撮像装置による1回の撮影だけで捕らえることができる。この分解は例えば2重に反射する平行平面型の方向転換板を用いて行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の課題は、光線経路内に方向転換素子を有し、該方向転換素子の機能及び性能が従来のセンサに比べて改善された光電センサを作り出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
その解決は請求項1の特徴を有する光電センサにより成される。本発明では、前記表側反射面が少なくとも部分的にフィルタ層を備えており、該フィルタ層が受信光信号をその波長及び/又は偏光方向に応じて反射する又は通過させるようになっている。
【0009】
従って、本発明に係る光電センサでは、第1の波長及び/又は偏光方向の受信光信号を表側反射面で反射し、第2の波長及び/又は偏光方向の受信光信号を裏側反射面において反射することができる。ここで、方向転換素子は、裏側反射面で反射される受信光信号が表側反射面を2回、しかも裏側反射面への往路及び同反射面からの復路において通過するように構成されている。受信光信号をその波長及び/又は偏光方向に応じて表側又は裏側の反射面において反射することにより、受信光信号を特に空間的に互いに分離させ、それを利用して、例えば受信光信号を波長に応じて及び/又は偏光方向に応じて評価することができる。当然ながら表側と裏側の反射面は互いにある程度間隔を置いている。ここで「光」という概念は応用によっては電磁放射を含み、特に可視、紫外及び/又は赤外波長域からの放射を含む。
【0010】
前記光電センサは、前記の各要素に加えて、受信光信号の伝播方向に関して方向転換素子の手前及び/又は背後に配置されたレンズ、プリズム又は鏡等の他の光学素子を備えることができる。例えば、先に挙げた光入射開口は、受信光路に配置された光学系若しくはレンズによって又は絞りによって明確に定めることができる。
【0011】
所望の機能に応じて構成されたフィルタ層は基本的に公知の方法で製造することができる。例えばフィルタ層は単層又は複層構造で適宜の物質の加熱蒸着又は真空蒸着により方向転換素子上に直接作り出すことができる。また、フィルタ層をフィルムの形で方向転換素子に貼り付けることもできる。方向転換素子そのものは受信光の波長範囲(これは例えば発光素子を用いる場合にはそれにより予め決まっている)に対して透明であることが好ましく、例えばガラス又は合成物質(例えばPMMA)で製造することができる。
【0012】
本発明に係る光電センサの1つの応用例は受信光信号をその偏光方向によって区別するというものである。これは例えば、監視領域内に物体が存在する場合にそれを捕らえるための光センサにおいて、物体の表面状態によって追加的な区別を行うために利用することができる。無偏光の発射光が光沢のある物体の表面で反射されると少なくとも部分的に偏光が生じるのに対し、光沢のない物体表面での反射では反射された発射光の偏光は変化しないのが普通である。
【0013】
本発明に係る光電センサは、特に先に列挙した該当の種類及び類似の種類の光電センサに対応して、多様なやり方で更に仕上げてゆくことができる。ただし、列挙したものは単なる模範例であって、それらが全てではない。該当の種類及び類似の種類の光電センサの利用分野は当業者には知られており、その構造的な形態は関連する従来技術に記載されている。
【0014】
有利な実施形態では前記光電センサが第1の受光器及び第2の受光器を含み、表側反射面で反射された受信光信号が第1の受光器により捕らえられ、裏側反射面で反射された受信光信号が第2の受光器で捕らえられるように、各受光器と方向転換素子が構成及び配置されている。これにより、波長及び/又は偏光方向に応じて分離された受信光信号を互いに分離したまま捕らえて評価することができる。2つの受光器は例えば共通の平面内、例えば共通の回路基板上に配置することができ、これにより製造コストが低減される。第1及び第2の受光器の間には、方向転換素子の形態及び光電センサの各要素の幾何学的な配置に応じて一定の間隔を設けることができる。
【0015】
別の有利な実施形態では、フィルタ層が表側反射面の少なくとも1つの部分領域にのみ設けられている。前記少なくとも1つの部分領域は例えばリング状、特に複数の同心リングの形にすることができる。また、縞状の配置も可能であり、その場合、各縞がそれぞれ1つの部分領域とみなされる。また、部分領域を市松模様のように配置することも可能である。表側反射面のうち残りの部分にはフィルタ層は設けられないが、先に挙げたフィルタ層とは異なる別の種類の被覆を更に設けることもできる。一又は複数の部分領域だけをフィルタ層で被覆することにより、例えば近接区域と遠隔区域への分割等、受信光信号に対して様々な検出区域を実現することができる。
【0016】
別の有利な実施形態では、表側反射面と裏側反射面が平坦である。この場合、受信光信号の収束角又は発散角は方向転換素子による影響を受けない。収束性の光線経路の場合、受信光信号はどちらの反射面で反射されたかに応じて互いに間隔を置いた焦点面又は焦点に像を結び、その際、焦点面の間隔はとりわけ方向転換素子内の光路長に依存する。
【0017】
別の有利な実施形態では、表側反射面と裏側反射面が互いに傾斜して延在している。これは特に、光電センサが第1及び第2の受光器を含むという前述の実施形態に関して、波長及び/又は偏光方向に応じて分けられた受信光信号が2つの受光器に当たるようにする上で有利であることが実証されている。好ましくは、2つの反射面が共に平坦であるものの、傾斜のため互いに非平行に延在している。もっとも、代案の実施形態では両方の反射面が互いに平行に延在しているものとすることができる。
【0018】
別の有利な実施形態では、前記反射面の少なくとも1つ、好ましくは裏側反射面が湾曲しており、好ましくは凹面状である。これにより特に、受信光信号がその波長又は偏光方向に応じて像を結ぶ各焦点面を、例えば方向転換素子内の光路(これは該素子の角度方向と厚さにより決まる)だけにより可能な程度よりも大きく互いに引き離すことができる。もっとも、原理的には方向転換素子は方向転換及び分離の機能に加えて光線成形機能も果たすことが可能であり、これにより必要な光学的な光線成形素子の数を減らし、特にまた組立て長さ又は組立て空間を小さくすることもできる。両方の反射面を、好ましくは異なる曲率半径で湾曲させることで、2つの反射面の焦点距離が互いに異なるようにすることも可能である。
【0019】
別の有利な実施形態では、受信光信号を方向転換させる方向転換角が90度若しくは180度又は少なくとも実質的に90度若しくは180度である。方向転換角が例えば90度であれば、方向転換素子は古典的な方向転換鏡の機能を果たし、入射及び出射の光線経路が互いに直角になる。方向転換角が180度であればそれは折り畳み鏡の機能に相当し、該鏡のところで出射の光線経路が入射の光線経路の方向へ折り返される。これは主に組立て長さを短縮するために用いられる。
【0020】
別の有利な実施形態では、裏側反射面が反射性の被覆、例えば蒸着された金属層を備えている。これにより、裏側反射面で反射される受信光の割合を大きくすることができる。
【0021】
別の有利な実施形態では、波長及び/又は偏光方向の選択性に関する前記フィルタ層の反射特性が電気的な制御信号に応じて可変である。そうすれば、表側反射面のこのような能動性の被覆に対して例えばフィルタ層に印加される電圧を用いて影響を及ぼすことで、光電センサの光学的特性を所望のやり方で適合化することができる。
【0022】
別の有利な実施形態では、裏側反射面を段状に形成することができる。このようにすれば、方向転換素子内の光路も該方向転換素子上での受信光信号の入射位置に依存する。これにより、例えば更に別の焦点面を生成することができる。
【0023】
本発明は別の観点において、監視領域内へ発射光を送出するための発光器装置に関し、該装置は、光出射開口と、第1の波長で発射光を生成するために調整された第1の発光器と、該第1の発光器から間隔を置いて配置され、前記第1の波長とは異なる第2の波長の発射光を生成するために調整された第2の発光器とを含み、各発光器と光出射開口の間に発射光路が延在しており、該発射光路が、互いに傾斜して延在する表側反射面と裏側反射面を有する方向転換素子を備えており、表側反射面が発射光をその波長に応じて反射する又は通過させるフィルタ層を備えており、各発光器と前記方向転換素子が、第1の発光器により生成された発射光が表側反射面で反射され、第2の発光器により生成された発射光が裏側反射面で反射され、各反射面で反射された発射光が共通の発射光軸に沿って伝播するように、構成及び配置されている。
【0024】
これによれば、各発光器と方向転換素子の間で、発射光路の別々の部分区間が波長毎に異なる伸び方をした発射光軸を有して延在している。これらの発射光路又は発射光軸は方向転換素子により一体化され、その結果、方向転換素子と光出射開口の間で発射光路の共通の部分区間が共通の発射光軸を有して延在している。本発明に係る発光器装置の基礎となる思想は、上述した本発明に係る光電センサで実現された基本思想を発光器装置にも同様に転用できるということであり、その際に言わば光路の伝播方向が逆になる。
【0025】
その際、先に説明した本発明に係る光電センサの有利な実施形態、特に方向転換素子に関係するものは、本発明に係る発光器装置の場合でもそれに相応した有利なやり方で適用することができる。
【0026】
本発明は更に、本発明に係る光電センサ並びに本発明に係る発光器装置を含む光電式のセンサ装置にも関する。
【0027】
方向転換素子は光電センサ又は発光器装置の他の構成部品に対して固定的に配置することも、位置変更可能に(特に回転可能に)配置することもできる。
【0028】
本発明の更に別の有利な実施形態は、従属請求項、明細書及び図面から分かる。
【0029】
以下、本発明について、実施例に基づき、図面を参照して説明する。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、同一又は同種の要素又は構成部品は同じ符号で示している。
【0032】
図1~5は構成の異なる方向転換素子112~512をそれぞれ含む光電センサ110~510を示している。方向転換素子112~512はいずれも表側反射面14とそれから間隔を置いた裏側反射面16とを備えている。表側反射面14上にはフィルタ層18が全面に又は一又は複数の部分領域内にそれぞれ被着されている。この層は入射光、即ち受信光信号及び/又は発射光信号をその波長及び/又は偏光方向に応じて反射する又は通過させる。裏側反射面16は反射性の被覆20を備えることができる。
【0033】
図1~5には光電センサ110~510により捕らえられる受信光28.1及び28.2の光線経路が純粋に概略的に描かれている。ここで受信光28.1は第1の波長を持ち、受信光28.2は第1の波長と異なる第2の波長を持っている。原理的には、受信光28.1が第1の波長範囲、受信光28.2が第2の波長範囲を持つものとすることもできる。ここで2つの波長範囲は重なり合わない。受信光28.1、28.2は、詳しく図示していない光入射開口を通ってそれぞれの光電センサ110~510に入る。光電センサ110~510は、入ってくる受信光28.1、28.2を光線成形するための受信光学系22をそれぞれ備えている。更に光電センサ110~510は受光器24を1つだけ備えているか、あるいは、入射してくる受信光28.1乃至は28.2を電気信号に変換するように調整された第1の受光器24.1と第2の受光器24.2を備えている。
図2には受信光学系22と受光器24、24.1、24.2は描かれていない。
【0034】
全ての実施例で、図示した受信光28.1と受信光28.2の間の相違はそれらの波長に関するものである。もっとも、その代わりに又はそれに加えて、各受信光28.1、28.2の間の相違はそれらの偏光方向に関するものとすることもできる。例えば、受信光28.1は水平偏光、受信光28.2は垂直偏光とすることができる。ただし以下では、理解を容易にするため、波長又は波長範囲だけが異なり得るという場合を対象とする。
【0035】
場合によって受信光学系22により収束された後、受信光28.1、28.2は方向転換素子112~512に当たり、第1の波長を持つ受信光28.1は表側反射面14で反射され、第2の波長を持つ受信光28.2は裏側反射面16で反射される。
【0036】
以下、個々の図を参照して光電センサ110~510の具体的な相違について詳しく説明する。
【0037】
図1の光電センサ110では方向転換素子112が平行平面板として構成されている。第2の波長を持つ受信光28.2は方向転換素子112を2回通過しなければならないため、受信光28.2の焦点面30.2は、光の伝播方向に見て、第1の波長を持つ受信光28.1の焦点面30.1の手前にある。図示した幾何学的構成では、第1の波長を持つ受信光28.1は焦点が合った状態で受光器24に捕らえられ、第2の波長を持つ受信光28.2は焦点が合わない状態で捕らえられる。波長による受信光28.1、28.2の識別は例えば位置解像型及び/又は色解像型の受光器24の使用とそれに相応した評価により行うことができる。
【0038】
図2の光電センサ210では、方向転換素子212が、その裏側反射面16が凹状に湾曲していることによって
図1の方向転換素子112と違っている。これにより方向転換素子212は受信光28.2に関して追加的に光線成形機能を持つことになり、その結果、裏側反射面16で反射された第2の波長を持つ受信光28.2は焦点30.2に収束される一方、表側反射面14で反射された受信光28.1は平行な光線経路を維持する。
【0039】
図示せぬ実施例では、先に既に述べたように、
図2の光電センサ210に変更を加えて、光路の伝播方向を逆転させるとともに受光器24.1、24.2をそれぞれ発光器に置き換えることにより、発光器装置を作ることができる。
【0040】
図3の光電センサ310では、今度は平行平面板として構成された方向転換素子312が使用されているが、表側反射面14がその全面ではなくリング状の部分領域18にのみフィルタ層18を備えている。ただし
図3は断面図であるためそれが2つの部分領域18として現れている。始めに説明したように、表側反射面14の更に別の部分領域にもフィルタ層18を設けることができる。この実施例でも受信光28.1、28.2はそれぞれの反射面14、16に応じて異なる焦点30.1、30.2を示す。
【0041】
図4の光電センサ410は単一の受光器ではなく第1の受光器24.1と第2の受光器24.2を備えている。これらは互いに間隔を置いて共通の基板32又は回路基板上に配置されている。方向転換素子412の表側反射面14と裏側反射面16は両方とも平坦で互いに傾斜して延在しており、その結果、方向転換素子412はくさび状になっている。
【0042】
受光器24.1、24.2の間隔、反射面14、16の間の傾斜角、並びに光線経路中での方向転換素子412の配置と向きは、受信光28.1が第1の受光器24.1により、そして受信光28.2が第2の受光器24.2により捕らえられるように選ばれている。焦点30.1、30.2はそれぞれ割り当てられた受光器24.1、24.2上にある。
【0043】
図5の光電センサ510は(レーザ)スキャナとして構成されている。ケーシング34内に、始めに説明した構成部品に加えて、発光器38(例えばレーザ)と回転式の方向転換鏡36が設けられており、これが、発光器38から発せられる発射光40と受信光28.1、28.2をそれぞれ90度の角度で方向転換させ、その結果、平たい円形の監視領域を周期的に走査することができる。ケーシング34は、少なくとも光が入射及び出射する領域において、使用される光線の波長範囲に対して透明である。リング状の受信光学系22は発光器38を収容するために中心に開口部を備えている。
【0044】
方向転換素子512は
図2の方向転換素子212と同様に凹状に湾曲した裏側反射面16を備えている。受光器24は方向転換素子512と発光器38の間に配置されており、発光器38、受信光学系22、受光器24及び方向転換素子512は光軸Aに沿って同軸に配置されている。この光電センサ510では、
図1~3の実施例の場合と同様に、焦点30.1、30.2が受光器24に対して異なる距離にある。
【符号の説明】
【0045】
110~510 光電センサ
112~512 方向転換素子
14 表側反射面
16 裏側反射面
18 フィルタ層
20 被覆
22 受信光学系
24、24.1、24.2 受光器
28.1 第1の波長を持つ受信光
28.2 第2の波長を持つ受信光
30.1、30.2 焦点
32 基板
34 ケーシング
36 方向転換鏡
38 発光器
40 発射光
A 光軸