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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】ダイヤフラムバルブ及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 7/12 20060101AFI20240731BHJP
   F16K 1/42 20060101ALI20240731BHJP
   F16J 3/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
F16K7/12 A
F16K1/42 C
F16J3/02 A
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2023118776
(22)【出願日】2023-07-21
【審査請求日】2023-10-25
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000117102
【氏名又は名称】旭有機材株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100151127
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 勝雅
(74)【代理人】
【識別番号】100094190
【弁理士】
【氏名又は名称】小島 清路
(72)【発明者】
【氏名】隈元 康太
【審査官】橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-037329(JP,A)
【文献】特許第7265197(JP,B2)
【文献】特開2023-034749(JP,A)
【文献】特開2018-035234(JP,A)
【文献】特開2022-123855(JP,A)
【文献】特開平04-159337(JP,A)
【文献】再公表特許第2006/121119(JP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16J 3/00- 3/06
F16K 1/00- 1/54
7/00- 7/20
13/00-15/20
25/00-25/04
29/00-29/02
31/12-31/165
31/36-31/42
33/00
39/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁体部及び前記弁体部から外方に延びて移動軸線方向に変形可能な膜部を有するダイヤフラムと、前記膜部の変形により前記移動軸線方向に往復移動する前記弁体部が当接及び離間する弁座部を有するボディと、を備えるダイヤフラムバルブにおいて、
前記弁体部又は前記弁座部のいずれか一方には、他方に向かって突出するリブが設けられており、
前記リブは、その先端から根元までが架橋PFA(但し、未架橋含フッ素エラストマーおよび架橋パーフルオロ樹脂を含有する含フッ素エラストマー組成物を除く)からなり、
前記先端における第三級炭素濃度をM(モル%)とし、前記根元における第三級炭素濃度をM(モル%)とした場合に、M≧0.01、M≧0.01、且つ、0.8≦M/M≦1.2を満たし、
前記ダイヤフラム又は前記ボディのいずれかであって、前記リブを有する一方の部品は、
非架橋フッ素樹脂からなる基部と、
前記基部に対して一体化され、前記リブを備えるとともに前記架橋PFAからなる端部と、を有することを特徴とするダイヤフラムバルブ。
【請求項2】
前記リブは、前記先端と前記根元との間の距離が250μm以上である請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項3】
前記弁体部又は前記弁座部のいずれか他方の部品は、前記一方の部品に設けられた前記リブと当接する当接部を有し、
前記当接部は、架橋フッ素樹脂からなる請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項4】
前記リブは、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片の再成形物からなる請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項5】
前記一方の部品は、前記基部となる非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片の再成形物と、を一体化した複合材から切削されてなる請求項1に記載のダイヤフラムバルブ。
【請求項6】
請求項1乃至5のうちのいずれかに記載のダイヤフラムバルブの製造方法であって、
第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋した架橋PFAフィルムの裁断片を得る裁断工程と、
前記裁断片を再成形して再成形物を得る再成形工程と、
前記再成形物から前記リブを得る形成工程と、を備えることを特徴とするダイヤフラムバルブの製造方法。
【請求項7】
非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、前記再成形物と、を一体化した複合材を得る一体化工程を備える請求項6に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
【請求項8】
前記一体化工程は、前記中間材に設けられたキャビティに、前記裁断片を収容する裁断片収容工程と、
前記キャビティ内で前記裁断片を溶融し、前記再成形物を得るとともに前記中間材と前記再成形物とを一体化する焼成工程と、を含む請求項7に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
【請求項9】
前記一体化工程は、前記中間材に設けられたキャビティに、前記裁断片の溶融物を射出して、前記キャビティ内で前記再成形物を得るとともに前記中間材と前記再成形物とを一体化する射出工程、を含む請求項7に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
【請求項10】
前記一体化工程は、前記中間材に設けられたキャビティに、前記裁断片を収容する裁断片収容工程と、
前記キャビティ内で前記裁断片を圧縮し、前記再成形物を得るとともに前記中間材と前記再成形物とを一体化する圧縮成形工程と、を含む請求項7に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
【請求項11】
非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、予め得られた前記再成形物と、を溶着した複合材を得る溶着工程を備える請求項6に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラムバルブ及びその製造方法に関する。更に詳しくは、流体制御に用いられるダイヤフラムを備えたダイヤフラムバルブ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラムバルブは様々な状況において各種流体の制御に用いることができるが、例えば、半導体製造に用いられる薬液の流通及び流量の制御等に利用される。この場合、ダイヤフラムバルブは、耐薬品性や屈曲耐久性に優れることからポリテトラフルオロエチレン(PTFE)やパーフルオロアルコキシアルカン(PFA)等のフッ素樹脂から形成されたボディとダイヤフラムとを備える。ボディは、複数の流路に連通された弁室を備え、ダイヤフラムは、弁室内で移動軸線方向に往復動可能にされる。これにより、ダイヤフラムを往復動させると、ダイヤフラムの下端に配置された弁体部と、弁室内の流路開口部に設けられた弁座部と、が接離され、この接離によって当該弁座部を備える流路の開閉や流路の大きさの変更を実現する仕組みとされている。
【0003】
このようなダイヤフラムバルブでは、弁体部と弁座部との接離に伴うパーティクル発生を防ぐことが課題となる。即ち、パーティクルは、ダイヤフラムバルブを構成する部品をなす材料が摩耗等により微細化された粒子といえる。接液領域にある弁体部や弁座部でパーティクルを生じると、ダイヤフラムバルブ内を流通する薬液中に混入される。従って、上述した薬液が、例えば、半導体製造時の洗浄液である場合、洗浄液がパーティクルを含むこととなり、洗浄による清浄性が低下してしまうことが問題となる。この問題に対しては、下記特許文献1の技術が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2023-034749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1は、耐摩耗性に優れて発塵量を減らすことを目的として、流路側ボディと弁体とをPFA又はPTFEからなるフッ素樹脂で形成し、弁体側当接部と弁座側当接部とに架橋PTFEからなる環状又は円状のシール部材が接合された流量制御弁を開示している。
しかしながら、架橋PTFEは、非架橋のPTFEやPFAに比べて硬いため、その表面のみが架橋PTFEで形成された弁体部と弁座部とを接離させると、非架橋部が変形するために、弁体部の表面と弁座部の表面とで摺動する部位を生じてしまい、結果として、この摺動域ではやはりパーティクルを生じてしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、従来のダイヤフラムバルブに対して更にパーティクルの発生を抑制することができるダイヤフラムバルブ及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明には、以下が含まれる。
[1]弁体部及び前記弁体部から外方に延びて移動軸線方向に変形可能な膜部を有するダイヤフラムと、前記膜部の変形により前記移動軸線方向に往復移動する前記弁体部が当接及び離間する弁座部を有するボディと、を備えるダイヤフラムバルブにおいて、
前記弁体部又は前記弁座部のいずれか一方には、他方に向かって突出するリブが設けられており、
前記リブは、その先端から根元までが架橋PFAからなり、
前記先端における第三級炭素濃度をM(モル%)とし、前記根元における第三級炭素濃度をM(モル%)とした場合に、M≧0.01、M≧0.01、且つ、0.8≦M/M≦1.2を満たすことを特徴とするダイヤフラムバルブ。
[2]前記ダイヤフラム又は前記ボディのいずれかであって、前記リブを有する一方の部品は、
非架橋フッ素樹脂からなる基部と、
前記基部に対して一体化され、前記リブを備えるとともに前記架橋PFAからなる端部と、を有する上記[1]に記載のダイヤフラムバルブ。
[3]前記リブは、前記先端と前記根元との間の距離が250μm以上である上記[1]又は上記[2]に記載のダイヤフラムバルブ。
[4]前記弁体部又は前記弁座部のいずれか他方の部品は、前記一方の部品に設けられた前記リブと当接する当接部を有し、
前記当接部は、架橋フッ素樹脂からなる上記[1]乃至上記[3]のうちのいずれかに記載のダイヤフラムバルブ。
[5]前記リブは、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片の再成形物からなる上記[1]乃至上記[4]のうちのいずれかに記載のダイヤフラムバルブ。
[6]前記一方の部品は、前記基部となる非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片の再成形物と、を一体化した複合材から切削されてなる上記[2]に記載のダイヤフラムバルブ。
[7]上記[1]乃至上記[6]のうちのいずれかに記載のダイヤフラムバルブの製造方法であって、
第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋した架橋PFAフィルムの裁断片を得る裁断工程と、
前記裁断片を再成形して再成形物を得る再成形工程と、
前記再成形物から前記リブを得る形成工程と、を備えることを特徴とするダイヤフラムバルブの製造方法。
[8]非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、前記再成形物と、を一体化した複合材を得る一体化工程を備える上記[7]に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
[9]前記一体化工程は、前記中間材に設けられたキャビティに、前記裁断片を収容する裁断片収容工程と、
前記キャビティ内で前記裁断片を溶融し、前記再成形物を得るとともに前記中間材と前記再成形物とを一体化する焼成工程と、を含む上記[8]に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
[10]前記一体化工程は、前記中間材に設けられたキャビティに、前記裁断片の溶融物を射出して、前記キャビティ内で前記再成形物を得るとともに前記中間材と前記再成形物とを一体化する射出工程、を含む上記[8]又は上記[9]に記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
[11]前記一体化工程は、前記中間材に設けられたキャビティに、前記裁断片を収容する裁断片収容工程と、
前記キャビティ内で前記裁断片を圧縮し、前記再成形物を得るとともに前記中間材と前記再成形物とを一体化する圧縮成形工程と、を含む上記[8]乃至上記[10]のうちのいずれかに記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
[12]非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、予め得られた前記再成形物と、を溶着した複合材を得る溶着工程を備える上記[7]乃至上記[11]のうちのいずれかに記載のダイヤフラムバルブの製造方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダイヤフラムバルブによれば、従来のダイヤフラムバルブに対して更にパーティクルの発生を抑制することができる。
【0009】
即ち、リブの先端から根元までが架橋PFAからなり、先端における第三級炭素濃度M(モル%)と根元における第三級炭素濃度M(モル%)とがM≧0.01、M≧0.01、且つ、0.8≦M/M≦1.2を満たすダイヤフラムバルブでは、リブの先端から根元までは十分に架橋された架橋PFAから形成されているため、リブを有する一方の部品と、他方の部品と、が当接する際にリブの変形が防止される。これにより、上記M及びMの関係を充足しないダイヤフラムバルブと比較して、本発明のダイヤフラムバルブはパーティクルの発生を抑制することができる。
【0010】
上記ダイヤフラムバルブでは、ダイヤフラム又はボディのいずれかであって、リブを有する一方の部品が、非架橋フッ素樹脂からなる基部と、基部に対して一体化され、リブを備えるとともに架橋PFAからなる端部と、を有する形態を採用することができる。この場合、基部として、架橋PFAに比べて屈曲耐久性においてより優れた非架橋フッ素樹脂を採用できるため、特にダイヤフラムが備える膜部の屈曲耐久性を優れたものとすることができる。また、ダイヤフラム又はボディの全体を架橋PFAから形成する必要がないため、ダイヤフラムバルブの製造コストを低減することができる。
【0011】
上記ダイヤフラムバルブでは、リブ31は、先端31aと根元31bとの間の距離D1(図2参照)が250μm以上であるものとすることができる。通常、厚さの厚い非架橋PFAを表裏にわたって架橋させることは、放射線透過率の観点から困難であるが、後述するダイヤフラムバルブの製造方法によって実現することができる。そして、当該距離が250μm以上のリブを備えることで、当該距離が250μm未満のリブに比べて確実な流動制御を行うことができる。
【0012】
上記ダイヤフラムバルブでは、弁体部又は弁座部のいずれか他方の部品が、一方の部品に設けられたリブと当接する当接部を有し、当接部は架橋フッ素樹脂からなる形成することができる。この場合、耐摩耗性に優れた架橋フッ素樹脂を相手材として採用することになるため、更に耐久性に優れたダイヤフラムバルブとすることができる。
【0013】
上記ダイヤフラムバルブでは、リブを第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片の再成形物からなるものとすることができる。即ち、厚さの厚い非架橋PFAフィルムを表裏全体にわたって、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋させることは、放射線透過率の観点から困難であるが、それが可能な厚さの非架橋PFAフィルムに対して、放射線照射を行い、表裏にわたって第三級炭素濃度を0.01モル%以上にした架橋PFAフィルムを得ることはできる。そのうえで、この架橋PFAフィルムを裁断した裁断片から再成形物した架橋PFAからなる部材であれば、その厚さに関わらず、全体が均一に架橋された架橋PFA部材とすることができる。このような全体が均一な架橋度にされた架橋PFA部材からリブを形成することにより、リブ自体の変形を防止できるため、弁体部と弁座部との接離に伴うパーティクル発生を顕著に抑制することができる。
【0014】
上記ダイヤフラムバルブでは、一方の部品は、基部となる非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片の再成形物と、を一体化した複合材から切削されてなるものとすることができる。この場合、基部として、架橋PFAに比べて屈曲耐久性においてより優れた非架橋フッ素樹脂を採用できるため、特にダイヤフラムが備える膜部の屈曲耐久性を優れたものとすることができる。また、ダイヤフラム又はボディの全体を架橋PFAから形成する必要がないため、ダイヤフラムバルブの製造コストを低減することができる。
【0015】
本発明のダイヤフラムバルブの製造方法によれば、従来のダイヤフラムバルブに対して更にパーティクルの発生を抑制することができるダイヤフラムバルブの製造方法することができる。
【0016】
第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋した架橋PFAフィルムの裁断片を得る裁断工程と、裁断片を再成形して再成形物を得る再成形工程と、再成形物からリブを得る形成工程と、を備える場合には、第三級炭素濃度を0.01モル%以上となるように均一に架橋された架橋PFAフィルムを得ることできる。そして、この均一に架橋された架橋PFAフィルムの裁断片を再成形することにより、その全体が第三級炭素濃度を0.01モル%以上となるように均一に架橋された架橋PFAからなる再成形物(架橋PFA部材)を得ることができる。このような全体が均一な架橋度にされた架橋PFA部材からリブを形成することにより、リブ自体の変形を防止できるため、弁体部と弁座部との接離に伴うパーティクル発生を顕著に抑制できるダイヤフラムバルブを得ることができる。
【0017】
上記ダイヤフラムバルブの製造方法では、非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、再成形物と、を一体化した複合材を得る一体化工程を備えることができる。この場合、架橋PFAに比べて屈曲耐久性においてより優れた非架橋フッ素樹脂を採用できるため、複合材のうちの中間材部分によってダイヤフラムが備える膜部を形成することができ、膜部の屈曲耐久性を優れたものとすることができる。また、ダイヤフラム又はボディの全体を架橋PFAから形成する必要がないため、ダイヤフラムバルブの製造コストを低減することができる。
【0018】
上記ダイヤフラムバルブの製造方法では、一体化工程は、中間材に設けられたキャビティに、裁断片を収容する裁断片収容工程と、キャビティ内で裁断片を溶融し、再成形物を得るとともに中間材と再成形物とを一体化する焼成工程と、を含むことができる。また、上記ダイヤフラムバルブの製造方法では、一体化工程は、中間材に設けられたキャビティに、裁断片の溶融物を射出して、キャビティ内で再成形物を得るとともに中間材と再成形物とを一体化する射出工程、を含むことができる。また、上記ダイヤフラムバルブの製造方法では、一体化工程は、中間材に設けられたキャビティに、裁断片を収容する裁断片収容工程と、キャビティ内で裁断片を圧縮し、再成形物を得るとともに中間材と再成形物とを一体化する圧縮成形工程と、を含むことができる。また、上記ダイヤフラムバルブの製造方法では、非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、予め得られた再成形物と、を溶着した複合材を得る溶着工程を備えることができる。これらの工程を備えることにより、非架橋フッ素樹脂からなる中間材と、再成形物と、を一体化した複合材を得ることができるため、前述の通り、均一に架橋された架橋PFAからのその全体が形成されたリブを備えながら、屈曲耐久性に優れた膜部も備えたダイヤフラムを得ることができる。また、ダイヤフラム又はボディの全体を架橋PFAから形成する必要がないため、ダイヤフラムバルブの製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明について、本発明による典型的な実施形態の非限定的な例を挙げ、言及された複数の図面を参照しつつ以下の詳細な記述にて更に説明するが、同様の参照符号は図面のいくつかの図を通して同様の部品を示す。
【0020】
図1】実施例1のダイヤフラムバルブの縦断面図である。
図2】ダイヤフラムバルブを構成するダイヤフラムの縦断面図である。
図3】ダイヤフラムバルブを構成するボディの縦断面図である。
図4】ダイヤフラムバルブの作用説明図であり、(a)は閉弁状態を示し、(b)は開弁状態を示す。
図5】ダイヤフラムバルブの製造方法を説明するための説明図であり、(a)は架橋PFAフィルムを示し、(b)は架橋PFAフィルムの裁断工程を示し、(c)は架橋PFAフィルムの裁断片の再成形工程を示す。
図6】ダイヤフラムバルブの製造方法(中間材と再成形物の一体化工程)を説明するための説明図であり、(a)は中間材と再成形物の斜視図を示し、(b)は中間材のキャビティに再成形物を収容したものの縦断面図を示す。
図7】ダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたダイヤフラムの縦断面図を示す。
図8】他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたダイヤフラムの縦断面図を示す。
図9】更なる他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたダイヤフラムの縦断面図を示す。
図10】更なる他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたダイヤフラムの縦断面図を示す。
図11】更なる他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(中間材と再成形物の一体化工程)を説明するための説明図である。
図12】実施例2のダイヤフラムバルブの縦断面図である。
図13】ダイヤフラムバルブを構成するダイヤフラムの縦断面図である。
図14】ダイヤフラムバルブを構成するボディの縦断面図である。
図15】ダイヤフラムバルブの作用説明図であり、(a)は閉弁状態を示し、(b)は開弁状態を示す。
図16】ダイヤフラムバルブの製造方法を説明するための説明図であり、(a)は架橋PFAフィルムを示し、(b)架橋PFAフィルムの裁断工程を示し、(c)は架橋PFAフィルムの裁断片の再成形工程を示す。
図17】ダイヤフラムバルブの製造方法(中間材と再成形物の一体化工程)を説明するための説明図であり、(a)は中間材と再成形物の斜視図を示し、(b)は中間材のキャビティに再成形物を収容したものの縦断面図を示す。
図18】ダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたボディの縦断面図を示す。
図19】他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたボディの縦断面図を示す。
図20】更なる他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたボディの縦断面図を示す。
図21】更なる他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたボディの縦断面図を示す。
図22】更なる他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(リブの形成工程)を説明するための説明図であり、(a)は複合材の縦断面図を示し、(b)は複合材を切削して得られたボディの縦断面図を示す。
図23】更なる他の形態のダイヤフラムバルブの製造方法(中間材と再成形物の一体化工程)を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
ここで示される事項は例示的なものおよび本発明の実施形態を例示的に説明するためのものであり、本発明の原理と概念的な特徴とを最も有効に且つ難なく理解できる説明であると思われるものを提供する目的で述べたものである。この点で、本発明の根本的な理解のために必要である程度以上に本発明の構造的な詳細を示すことを意図してはおらず、図面と合わせた説明によって本発明の幾つかの形態が実際にどのように具現化されるかを当業者に明らかにするものである。
【0022】
以下、図面を用いて実施例1、2により本発明を具体的に説明する。
【0023】
<実施例1>
本実施例のダイヤフラムバルブ1Aは、図1に示すように、弁体部3a及び弁体部3aから外方に延びて移動軸線C方向に変形可能な膜部3bを有するダイヤフラム3と、膜部3bの変形により移動軸線C方向に往復移動する弁体部3aが当接及び離間する弁座部5aを有するボディ5と、を備えている(図4参照)。さらに、ダイヤフラムバルブ1Aは、ダイヤフラム3を駆動する駆動部7を備えている。
【0024】
ボディ5には、上部中央に弁室11が形成されていると共に、弁室11に連通する第1の流路及び第2の流路が形成されている。また、ボディ5には、第1の流路から弁室11への開口の周囲に、ダイヤフラム3(具体的に弁体部3a)が接離する環状の弁座部5aが形成されている。本実施例では、第1の流路として、ボディ5の対向する側面の一方に形成された流入口12から延び且つ弁室11の底部中央に開口する入口流路13が形成されている。入口流路13から弁室11への開口の周囲に弁座部5aが形成されている。また、第2の流路として、ボディ5の対向する側面の他方に形成された流出口14から延び且つ弁室11の側面に開口する出口流路15が形成されている。ただし、第1及び第2の流路としては、上述の形態に限定されず、例えば各流路の間にダイヤフラムが接離するウェア部(堰部)が設けられる形態を採用したり、各流路が直線状をなすように配置される形態を採用したりしてもよい。また、本実施例では、第1及び第2の流路が弁室11と接続されているが、弁室11に接続される流路は、これらに限られず、3つ以上の流路を擁してもよい。
【0025】
駆動部7は、ボディ5の上部に取り付けられている。また、駆動部7は、内部に機構収容空間が形成された駆動部筐体17と、駆動部筐体17の上部に取り付けられる蓋部材18と、ダイヤフラム3に連結されるステム19と、機構収容空間に収容され且つステム19を駆動する駆動機構と、を備えている。本実施例では、駆動部筐体17内に機構収容空間としてシリンダ部が形成されており、駆動機構は、シリンダ部内に収容されているピストン21と、付勢部材としてのコイルばね22とによって構成されている。
【0026】
ピストン21は、駆動部筐体17のシリンダ部内に摺動可能に収容されるピストン本体21aと、ピストン本体21aから上方に延びる案内軸21bと、を有している。ピストン本体21aには、ピストン本体21aから下方に向かって延びるようにステム19が連結されている。ピストン本体21aは、外周面がシリンダ部の内周面に上下方向に摺動可能に接触しており、シリンダ部の内部空間を、ピストン本体21aの上面とシリンダ部の内周壁とシリンダ部の天井面(すなわち蓋部材18の下面)によって囲まれた上部空間S1と、ピストン本体21aの下面とシリンダ部の内周壁とシリンダ部の底面(すなわち駆動部筐体17の底部)とによって囲まれた下部空間S2と、に区画している。案内軸21bは、蓋部材18を貫通して設けられた貫通孔に摺動可能に挿入されており、ピストン21の上下動を案内するようになっている。ステム19は、駆動部筐体17の底部を貫通して設けられた貫通孔に摺動可能に挿入されて、弁室11まで延びており、その先端がダイヤフラム3に連結されている。
【0027】
蓋部材18には、上部空間S1を区画するシリンダ部に連通する通気口26が形成されている。通気口26を通して上部空間S1と外部との間で通気を行うことができるようになっている。また、駆動部筐体17の側部には、下部空間S2を区画するシリンダ部の底部に連通する作動流体供給口27が形成されている。作動流体供給口27から下部空間S2内へ作動流体を供給できるようになっている。さらに、蓋部材18の下面(すなわちシリンダ部の天井面)とピストン本体21aの上面との間にコイルばね22が圧縮状態で配置されている。
【0028】
なお、駆動部7としては、上述のように流体圧を利用してダイヤフラム3を駆動する形態に限定されず、例えばモータ、ソレノイド等を備える電動アクチュエータを利用してダイヤフラム3を駆動する形態を採用してもよい。さらに、手動によりダイヤフラム3を駆動する形態を採用してもよい。
【0029】
ダイヤフラム3は、弁室11の上方の開口を塞ぐように配置され、ボディ5に固定されている。また、ダイヤフラム3は、中央に設けられた弁体部3aと、屈曲が容易となるように薄肉に形成され且つ弁体部3aを支持する環状の膜部3bと、膜部3bの外周側に設けられた外周縁部3cと、を有している(図2参照)。弁体部3aは、円柱上に円錐台が連結されたような形状、すなわち上端部がテーパ状になった錘形状を有している。また、弁体部3aは、底面が弁座部5aに対向するように配置されている。また、弁体部3aの底面には、弁座部5aに向かって突出する環状のリブ31が設けられている。また、膜部3bは、弁体部3aの上端部の外周部から半径方向外方に延びるように形成されており、膜部3bの外周は概略円形状を有している。また、外周縁部3cは、少なくとも一部がボディ5の弁室11の上部開口の周囲領域の上面と駆動部筐体17の底面との間に挟持されている。このように、ダイヤフラム3は、膜部3bを介して弁室11内に弁体部3aを支持した状態で、弁室11と駆動部7との間を区画している。
【0030】
なお、弁座部5a、弁体部3a及びリブ31のそれぞれは、膜部3bの変形により移動軸線C方向に往復移動する弁体部3aのリブ31が弁座部5aに接離して、第1の流路(具体的に入口流路13)と第2の流路(具体的に出口流路15)の連通を開閉することができれば、形状を限定されるものではない。
【0031】
ダイヤフラム3の弁体部3aには、上方に開口する連結孔37が設けられている。連結孔37は、駆動部7に近い側に位置する小径孔部37aと、小径孔部37aの下方に連なる大径孔部37bと、を含んでいる。ステム19の先端部(下端部)には中間部よりも拡大された係止部19aが設けられており、係止部19aを小径孔部37aを通して大径孔部37bまで圧入することによって、ダイヤフラム3とステム19とが接続され、ピストン21の上下動に伴って、ステム19を介してダイヤフラム3(具体的に弁体部3a)が弁座部5aに接離できるようになっている。
【0032】
ダイヤフラム3は、図2に示すように、非架橋フッ素樹脂からなる基部33aと、基部33aに対して一体化され、リブ31を備えるとともに架橋PFAからなる端部33bと、を有している。すなわち、膜部3bを含む基部33aは、架橋PFAよりも安価で屈曲耐久性の高い非架橋フッ素樹脂から形成されている。また、リブ31を含む端部33b(具体的に弁体部3aの底部)は、耐摩耗性及び強度の高い架橋PFAから形成されている。さらに、ダイヤフラム3は、基部33aとなる非架橋フッ素樹脂からなる中間材44と、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片42の再成形物43(端部33bとなる再成形物43)と、を一体化した複合材45から切削されてなる(図5図7参照)。
【0033】
上記非架橋フッ素樹脂をなすフッ素樹脂の種類は限定されず、テトラフルオロエチレン〔FC=CF〕、ヘキサフルオロプロペン〔FC=CF-CF〕、ジフルオロエチレン〔HC=CF〕、クロロトリフルオロエチレン〔FC=CFCl〕、パーフルオロアルコキシエチレン(パーフルオロメトキシエチレン〔FC=CF-O-CF〕、パーフルオロエトキシエチレン〔FC=CF-O-CF-CF〕等)などのフッ素置換された重合可能な化合物をモノマーとして用いた重合体(単独重合体、又は、共重合体)を用いることができる。このうち、共重合体用モノマーとしてエチレン(フッ素置換されていないエチレン)を用いることができる。具体的には、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)、PFA(パーフルオロアルコキシアルカン、テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルコキシエチレン共重合樹脂)、FEP(テトラフルオロエチレン・ヘキサフルオロプロペン共重合樹脂)、ETFE(エチレン・テトラフルオロエチレン共重合樹脂)、PVDF(ポリビニリデンフルオライド、ジフルオロエチレン重合体)、PCTFE(ポリクロロトリフルオロエチレン)、ECTFE(エチレン・クロロトリフルオロエチレン共重合樹脂)等を採用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、基部33aとしては、加熱による溶融が抑制され、ゲル化によって形状を維持できるという観点、材料コストを低減できるという観点などから非架橋PTFEが好ましい。
【0034】
また、フッ素樹脂における架橋は、フッ素樹脂を構成している異なる重合体分子同士が炭素-炭素間の結合を形成することを意味する。従って、非架橋PFAには、通常、第三級炭素は存在しないが、架橋PFAには、第三級炭素が存在することになる。このため、第三級炭素の有無が、PFA内の架橋の有無と対応することになり、第三級炭素濃度が高くなるほど、PFA内の架橋も多くなることが分かる。本発明では、第三級炭素濃度が0.01モル%以上である場合に架橋されているものとする。この第三級炭素濃度の上限は限定されないが、通常、0.7モル%以下である。第三級炭素濃度を0.7モル%以下に維持することで、架橋PFAの機械的強度を高く維持できる。
【0035】
第三級炭素濃度は、架橋PFAの19F-NMR測定(測定装置:固体19F-NMR(BrukerBiospin AVANCE III-400WB)、測定条件:376MHz、回転数27kHz)により、下記表1に示すA~Gの各ピークの積分値を測定したうえで、下記計算式(1)を用いて(ピークCに基づいて)算出される。
尚、第三級炭素の存在は、ピークC及び/又はピークGの存在により把握できるが、上述の通り、基本的にはピークCのピーク強度を用いて計算式(1)に従い第三級炭素濃度を算出する。但し、ピークCが検出されず、ピークGのみが検出される場合には、下記計算式(2)を用いて第三級炭素濃度を算出するものとする。計算式(1)により算出される第三級炭素濃度と計算式(2)により算出される第三級炭素濃度とは、通常、実質的に同等の値となる。
【0036】
また、下記計算式に示す[IA/3]、[IB/5]、[IC/6]、[ID/4]、[IE/2]、[IF/1]及び[IG/1]は、各々以下の通りである。
[IA/3]:表1の「A」の構造に含まれる等価なFは3つである為、「A」に基づくピーク強度を「I」とすると、「A」に含まれる1つのFに対するピーク強度は「I/3」であり、この値を[IA/3]と記載する。
[IB/5]:表1の「B」の構造に含まれる等価なFは5つある為、「B」に基づくピーク強度を「I」とすると、「B」に含まれる1つのFに対するピーク強度は「I/5」であり、この値を[IB/5]と記載する。
[IC/6]:表1の「C」の構造に含まれる等価なFは6つである為、「C」に基づくピーク強度を「I」とすると、「C」に含まれる1つのFに対するピーク強度は「I/6」であり、この値を[IC/6]と記載する。
[ID/4]:表1の「D」の構造に含まれる等価なFは4つである為、「D」に基づくピーク強度を「I」とすると、「D」に含まれる1つのFに対するピーク強度は「I/4」であり、この値を[ID/4]と記載する。
[IE/2]:表1の「E」の構造に含まれる等価なFは2つである為、「E」に基づくピーク強度を「I」とすると、「E」に含まれる1つのFに対するピーク強度は「I/2」であり、この値を[IE/2]と記載する。
[IF/1]:表1の「F」の構造に含まれる等価なFは1つである為、「F」に基づくピーク強度を「I」とすると、「F」に含まれる1つのFに対するピーク強度は「I/1」であり、この値を[IF/1]と記載する。
[IG/1]:表1の「G」の構造に含まれる等価なFは1つである為、「G」に基づくピーク強度を「I」とすると、「G」に含まれる1つのFに対するピーク強度は「I/1」であり、この値を[IG/1]と記載する。
【0037】
[計算式(1)]IC/6に基づく第三級炭素濃度
第三級炭素濃度(モル%)=[IC/6]/{[IA/3]+[IB/5]+[ID/4]+[IE/2]+[IF/1]+[IG/1]}×100
[計算式(2)]IG/1に基づく第三級炭素濃度
第三級炭素濃度(モル%)={[IG/1]-[IA/3]}/{[IB/5]+[IC/6]+[ID/4]+[IE/2]+[IF/1]}×100
【0038】
【表1】
【0039】
リブ31は、その先端から根元までが架橋PFAからなり、先端における第三級炭素濃度をM(モル%)とし、根元における第三級炭素濃度をM(モル%)とした場合に、M>0.01、M>0.01、且つ、0.8≦M/M≦1.2を満たす。即ち、リブ31は、その先端における第三級炭素濃度Mが0.01モル%を超えており、同時に、その根元における第三級炭素濃度Mも0.01モル%を超えるものである。加えて、これらMとMとの比(M/M)は0.8以上1.2以下であり、MとMとが近い値を示すものである。従って、リブ31は、その先端から根元までが均一に架橋された架橋PFAから形成されている。また、リブ31は、先端と根元との間の距離が約250~2000μmであり、250μm以上とされている。
【0040】
このような先端から根元までが均一に架橋された架橋PFAからなるリブ31は、どのように形成してもよいが、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋した架橋PFAフィルムの裁断片42の再成形物43から形成できる(図5参照)。
即ち、例えば、250μm未満の薄いフィルム状の非架橋PFAであれば、フィルムの表裏に行きわたるように放射線を照射することができる。その一方、例えば、250μm以上の厚いフィルム状の非架橋PFAになると、放射線を透過させることが難しくなり、表裏の架橋度が異なる架橋PFAフィルムが形成されてしまうことになる。また、放射線の出力を上げて、非架橋PFAフィルムの表裏を透過させることもできるが、結果的に透過時の減衰によって表裏の架橋度が異なるものとなる場合があり、また、出力の高い放射線の利用はコストの急激な増加に繋がり採用が難しくなってしまう。そこで、確実に架橋させつつ、低コストで、形状の自由度が高い架橋PFAを得るため、250μm未満の薄いフィルム状の非架橋PFAに対して、フィルムの表裏に行きわたるように放射線を照射して、当該フィルムを均一に架橋させてから、このフィルムを裁断した裁断片42を再成形することにより、均一に架橋された所望の形状を有する架橋PFAを得ることができるようになる。更に、例えば、フッ素樹脂のなかでも、PTFEは架橋の有無に関わらず、溶融形成が難しい。対して、PFAは架橋後であっても溶融形成が可能であるため、架橋PFAフィルムの裁断片42から、再成形によってブロック状の架橋PFAを得ることも可能である。
【0041】
一方、ボディ5の弁座部5aには、ダイヤフラム3の弁体部3aに設けられたリブ31が当接する当接部39が設けられている。当接部39は環状の面部により構成されている。ただし、当接部39は、リブ31が当接することができれば、形状を限定されるものではない。また、ボディ5は、図3に示すように、非架橋フッ素樹脂からなる基部35aと、基部35aに対して一体化され、当接部39を備えるとともに架橋フッ素樹脂からなる端部35bと、を有している。すなわち、基部35a(具体的にボディ5において端部35bよりも体積が大きな部分)は、架橋フッ素樹脂よりも安価な非架橋PTFEから形成されている。また、当接部39を含む端部35bは、耐摩耗性及び強度の高い架橋フッ素樹脂から形成されている。
尚、基部35aを構成する非架橋フッ素樹脂としては、前述したフッ素樹脂のうち非架橋のものを利用できる。また、端部35bを構成する架橋フッ素樹脂としては、前述したフッ素樹脂のうち架橋したものを利用できるが、特に架橋PFAが好ましい。
【0042】
次に、上記構成のダイヤフラムバルブ1Aの製造方法について説明する。
まず、非架橋フッ素樹脂から、筒状のキャビティ44aを有した中間材44を作製する。この非架橋フッ素樹脂としては、PTFEを採用できる。
第1の実施形態では、図6に示されるような、上端部にキャビティ44aとして機能する凹部を有したカップ形状の中間材44を作製する。中間材44は、どのような方法により形成してもよいが、例えば、フリーベーキング法やホットモールディング法などによって金型を用いて非架橋フッ素樹脂から圧縮成形された棒状体又はプレートの上端部に切削加工により凹部を設けること等により作製することができる。同様にフリーベーキング法やホットモールディング法などによって金型を用いて非架橋フッ素樹脂から上端部に凹部を有したカップ形状の棒状体又はプレートを圧縮成形することによって作製してもよい。
また、中間材44は、一体的に構成される必要はなく、例えば、筒状の管状体とこれの下部に隣接して配置される中実棒状体又は板状体(シート状のものを含む。)とを組み合わせて作製することができる。この場合、管状体と棒状体又は板状体とは螺合や凹凸の嵌合により結合されていてもよい。さらに、管状体と棒状体又は板状体(シート状のものを含む。)とを一体的に構成する場合は、個別に作製された後に溶着により接合されてもよい。溶着は、例えば、レーザ溶着、熱板溶着、熱風溶着、ヒーティングブロック溶着、拡散接合、焼成などによって行うことができる。中間材44を非架橋フッ素樹脂の棒状体から作製する場合には、非架橋フッ素樹脂の棒状体を押出成形により作製してもよい。
【0043】
一方、架橋PFAから、図6に示されているような、中間材44のキャビティ44a(凹部)内に収容可能な形状及び大きさを有した再成形物43を作製する(再成形工程)。再成形物43は、キャビティ44a以外の場所において再成形してもよいし、キャビティ44aの内部で再成形してもよい。
キャビティ44a以外の場所で再成形する場合、外周形状が筒状のキャビティ44aの内周面と相補的形状となった棒状体を、前述した中間材44と同様にして、架橋PFAから再成形することができる。この際、架橋PFAの原料としては、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片42を用いることができる。即ち、例えば、図5(a)に示すように、非架橋PFAからなるフィルム(非架橋PFAフィルム)に対して放射線を照射することによって架橋PFAフィルム41を形成することができる。即ち、フィルム状に薄く形成した非架橋PFAに対して放射線を照射することにより、その表裏にわたって均一に架橋させた架橋PFAフィルムを得ることができる。より具体的には、未架橋PFAの融点以上の温度環境において、照射対象である未架橋PFAフィルムの厚みに対して、照射面の裏面における吸収線量が表面の吸収線量の20%以上(好ましくは60%以上)となる加速電圧で放射線を照射することにより、フィルムの表裏にわたって第三級炭素濃度が0.01モル%以上である架橋PFAフィルムを得ることができる。
【0044】
その後、図5(b)に示すように、その表裏にわたって均一に架橋させた架橋PFAフィルムを裁断して裁断片42を得ることにより、より形状自由度の高い架橋PFA材料を得ることができる。更に、図5(c)に示すように、所定の形状を有する金型46のキャビティ内に架橋PFAフィルムの裁断片42を収容し、加熱溶融した後、固化させることにより再成形物43を得ることができる。この再成形物43は、中間材44のキャビティ44aに収容可能なように切削等により整形を行ったうえで、キャビティ44aに収容することができる。また、例えば、再成形物43の高さは、これを加熱溶融できるという観点から、加熱溶融時にキャビティ44aからあふれでなければ、キャビティ44aの深さと概略等しくてもよく、キャビティ44aの深さよりも短くてもよい。再成形物43は、例えば、架橋PFAから、押出成形や金型を用いた射出成形などにより直接作製することもできる。
【0045】
他方、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形する場合、図11に示すように、前述した架橋PFAフィルムの裁断片42をキャビティ44a内に収容し(裁断片収容工程)、キャビティ44a内で加熱溶融することによって、キャビティ44aの内周面と相補的形状を有する架橋PFAからなる再成形物43を得ることができる。
この場合、キャビティ44a内に収容した架橋PFAフィルムの裁断片42のみを加熱溶融することもできるが、キャビティ44aを含むように加熱することができる。即ち、例えば、中間材44の全体を加熱することができる。この方法は、中間材44が、非架橋PTFEからなる場合に好適に利用できる。非架橋PTFEは、架橋PFAが加熱溶融される温度においてもゲル化され、溶融されない。このため、中間材44及びキャビティ44aとしての概形を維持することができる。そして、架橋PFAフィルムの裁断片42が加熱溶融された後、キャビティ44aに対応する形状に再成形され、その後、冷却・固化されると、同時にキャビティ44aも冷却・固化され、その際に両者(中間材44及び再成形物43)は一体化されて、これらの複合材45が得られることになる(焼成工程)。
【0046】
このように、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形すると、再成形物43の作製と、得られた再成形物43と中間材44との一体化と、を1回の加熱溶融・冷却固化により実現できるため、優れた製造効率を達することができる。また、再成形物43を得るための金型を不要とすることができるため、ダイヤフラムバルブを低コストに製造できる。更に、中間材44の全体を加熱しながらキャビティ44a内で再成形物43を得る場合は、ひずみや残留応力の発生を抑制できるため、両者間で優れた接合強度を得ることができる。その効果は、非加圧下(加圧を特に行わない状態)で加熱を行うことでより顕著に得ることができる。また、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形すると、キャビティ44a及び再成形物43の両者の接触面の全体にわたって接合できるため、例えば、レーザ溶着のように選択的な接合箇所を有する複合材と比較して、中間材44と再成形物43とをより強固に接合できる。また、複合材45に外力が作用した場合であっても両者間に隙間が生じることを防止できる。
上述のように、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形して得た棒状の複合材45をテストピースとして用い、中間材44と再成形物43とを引き離すようにセットして引張試験を行ったところ、中間材44と再成形物43との接合部は破断されず、接合部以外の箇所において破断することが確認された。
【0047】
なお、架橋PFAを得る際に、非架橋PFAフィルムを利用せず、例えば、非架橋PFA粉末等を出発材料として選択することもできる。しかしながら、非架橋PFA粉末から架橋PFA粉末を得た場合、架橋PFA粉末を再成形することになるが、加熱溶融した際に、溶融物が気体を含みやすくなるという問題がある。即ち、架橋されていないPFAよりも架橋されたPFAのような溶融粘度は高くなり、更に、架橋度は高い程、溶融粘度は高くなる。従って、耐摩耗性を優先して得ようとする場合、脱気に手間とコストを要することになるため、加熱溶融時の脱気性に優れるという観点から架橋PFAフィルムの裁断片を利用することが好ましい。また、架橋PFAフィルムは、例えば、粉末状や微粒状に粉砕することもできるが、裁断片とする方が低コストである。更に、架橋により得られた機械強度をより効果的に維持するという観点からも裁断片として利用することが好ましい。
【0048】
また、前述の通り、中間材44全体を加熱して、キャビティ44a内に収容した裁断片42を加熱溶融して再成形物43を得る(焼成工程)場合、その冷却・固化に伴い、一体化工程が同時に行うことができるが、その他にも、下記のような方法により同等の効果を得ることができる。即ち、例えば、中間材44に設けられたキャビティ44aに、架橋PFAフィルムの裁断片42の溶融物を射出して、キャビティ44a内で再成形物43を得るとともに、中間材44と再成形物43とを一体化する射出工程を用いて一体化することができる。また、中間材44に設けられたキャビティ44aに、架橋PFAフィルムの裁断片42を収容(裁断片収容工程)した後、キャビティ44a内で裁断片42を圧縮し、再成形物43を得るとともに中間材44と再成形物43とを一体化する(圧縮成形工程)こともできる。この圧縮時には、同時に加熱を行うことができる。加熱は、必要に応じた温度とすることができ、例えば、架橋PFAの融点より低い温度の加熱でもよいし、架橋PFAの融点より高い温度の加熱でもよい。
【0049】
一方、再成形物43を別途に得た場合、中間材44と、そのキャビティ44a(凹部)内に収容された再成形物43と、を一体化した複合材45を得る一体化工程を行う。一体化は、どのような方法で行ってもよいが、例えば、中間材44を構成する非架橋フッ素樹脂の融点と、再成形物43を構成する架橋PFAの融点と、のうちのより高い方の融点以上の温度にまで両者を同時に加熱することにより、一体化することができる。即ち、中間材44と再成形物43との少なくとも一方のみが、少なくともその表面において溶融することにより両者を接合することができる。
【0050】
また、中間材44と再成形物43との接合は、溶着によって達することもできる。即ち、中間材44と再成形物43とを溶着した複合材を得る溶着工程を備えることにより達することができる。この溶着は、例えば、レーザ溶着、熱板溶着、熱風溶着、ヒーティングブロック溶着、拡散接合などによって行うことができる。なお、これらの各方法は、中間材44と再成形物43との接触領域の少なくとも一部を溶融させて、両者を溶着する方法といえる。
【0051】
図7(a)~図7(b)は、複合材45からダイヤフラム3を作製する方法を示している。図7(a)に破線で示されているように複合材45を切削加工することにより、図7(b)に示されているようなダイヤフラム3を作製することができる。図7(b)に示されているダイヤフラム3は、図1に示されているダイヤフラムバルブ1Aにおいて使用されているものである。ダイヤフラム3において、基部33aを中央部に有した膜部3bは、複合材45において非架橋フッ素樹脂から形成される中間材44から作製されている、なお、中間材44を構成する非架橋フッ素樹脂は、屈曲耐久性が高いという観点からPTFEから形成される。
【0052】
また、ダイヤフラム3の端部33bは、発塵性が低いという観点から架橋PFAから形成されている。また、複合材45において、中間材44と再成形物43とは焼成(一体溶融成形)により一体的に接合されている。このため、ダイヤフラム3の基部33aと端部33bとの境界面(接合面)はその全面が一体的に接合されている。したがって、弁閉時に端部33bが弁座部5aに当接して衝撃を受けて変形しても基部33aと端部33bとの境界面に隙間が生じることがなく、弁室11内の液体が隙間に侵入したことによる強度の低下も防止することができる。また、中間材44と再成形物43とは共に全体的に加熱された後に冷却されているので、熱ひずみの発生が抑制され、熱ひずみによる強度の低下も抑制されている。
【0053】
なお、複合材45から作製する部品は、適宜の位置から切り出すことによって、部品のどの範囲を異なるフッ素樹脂から形成するかを変えることができる。即ち、図7(a)~図7(b)では、弁座部5aに当接する当接面の近傍のみを、発塵性の低い架橋PFAから作製しているが、例えば、図8(a)~図8(b)に示すように、切削位置を変えることにより、架橋PFAから作製された端部33bをより大きく取り、非架橋フッ素樹脂から作製された基部33aをより小さく取ることもできる。一方で、図10(a)~図10(b)に示すように、リブ31のみを架橋PFAから作製し、それ以外の部位を非架橋フッ素樹脂から作製されたものとすることができる。そして、図10(a)~図10(b)に示すように、リブ31のみを架橋PFAから作製する場合には、複合材45内における再成形物43の大きさを小さく抑えることができる。このため、非架橋フッ素樹脂と比較してよりコスト高となる架橋PFAの使用量を低減しつつ、性能に優れたダイヤフラムを得ることができる。
【0054】
次に、上記構成のダイヤフラムバルブ1Aの作用効果について説明する。図1に示すように、作動流体供給口27から駆動部7に作動流体が供給されていない通常時は、駆動部7のピストン21がコイルばね22によって下方に付勢されて押し下げられる。この結果、弁体部3aがステム19を介して弁座部5aに接近する方向に移動して弁体部3aのリブ31が弁座部5aに圧接されて、ダイヤフラムバルブ1Aが閉弁状態となる(図4(a)参照)。これに伴って、弁体部3aを支持する膜部3bも駆動部7から離れる方向に変形する。この状態から、駆動部7の作動流体供給口27に作動流体を供給すると、シリンダ部の下部空間S2に流入した作動流体の流体圧がピストン本体21aに上向きに作用し、ピストン21がコイルばね22の付勢力に抗して押し上げられる。このとき、上部空間S1内の空気は通気口26から外部に放出される。この結果、弁体部3aがステム19を介して弁座部5aから離間する方向に移動させられ、ダイヤフラムバルブ1Aが開弁状態となる(図4(b)参照)。これに伴って膜部3bも駆動部7へ接近する方向に変形する。作動流体供給口27への作動流体の供給が停止されると、コイルばね22により、再びピストン21が下方に付勢されて押し下げられ、弁体部3aのリブ31が弁座部5aに圧接して、再び閉弁状態となる。
【0055】
以上より、本実施例のダイヤフラムバルブ1Aによると、弁体部3aには、弁座部5aに向かって突出するリブ31が設けられており、リブ31は、その先端から根元までが架橋PFAからなり、先端における第三級炭素濃度をM(モル%)とし、根元における第三級炭素濃度をM(モル%)とした場合に、M>0.01、M>0.01、且つ、0.8≦M/M≦1.2を満たす。これにより、リブ31は、その先端から根元までが均一に架橋された架橋PFAから形成されるので、リブ31の耐摩耗性及び強度が高められる。よって、閉弁時に弁体部3aのリブ31が弁座部5aに当接するときに、リブ31が変形して弁座部5aとの間で擦れることが抑制され、パーティクルの発生量を低減することができる。
【0056】
<実施例2>
次に、実施例2のダイヤフラムバルブ1Bについて説明するが、実施例1のダイヤフラムバルブ1Aと略同じ構成部位は同符号を付けて詳説を省略し、両者の相違点を詳説する。両者の主な相違点は、実施例1ではダイヤフラム3の弁体部3aにリブ31が設けられているのに対して、実施例2ではボディ5の弁座部5aにリブ31が設けられていることである。
【0057】
本実施例のダイヤフラムバルブ1Bは、図12に示すように、弁体部3a及び弁体部3aから外方に延びて移動軸線C方向に変形可能な膜部3bを有するダイヤフラム3と、膜部3bの変形により移動軸線C方向に往復移動する弁体部3aが当接及び離間する弁座部5aを有するボディ5と、を備えている(図15参照)。さらに、ダイヤフラムバルブ1Bは、ダイヤフラム3を駆動する駆動部7を備えている。
【0058】
ボディ5には、第1の流路から弁室11への開口の周囲に、ダイヤフラム3(具体的に弁体部3a)が接離する環状の弁座部5aが形成されている(図14参照)。弁座部5aには、弁体部3aに向かって突出する環状のリブ31が設けられている。
【0059】
なお、弁座部5a、弁体部3a及びリブ31のそれぞれは、膜部3bの変形により移動軸線C方向に往復移動する弁体部3aが弁座部5aのリブ31に接離して、第1の流路(具体的に入口流路13)と第2の流路(具体的に出口流路15)の連通を開閉することができれば、形状を限定されるものではない。
【0060】
ボディ5は、図14に示すように、非架橋フッ素樹脂からなる基部35aと、基部35aに対して一体化され、リブ31を備えるとともに架橋PFAからなる端部35bと、を有している。すなわち、基部35a(具体的にボディ5において端部35bよりも体積が大きな部分)は、架橋PFAよりも安価な非架橋フッ素樹脂から形成されている。また、リブ31を含む端部35bは、耐摩耗性及び強度の高い架橋PFAから形成されている。さらに、ボディ5は、基部35aとなる非架橋フッ素樹脂からなる中間材44と、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片42の再成形物43(即ち、端部35bとなる再成形物43)と、を一体化した複合材45から切削されてなる(図16図18参照)。
【0061】
リブ31は、その先端から根元までが架橋PFAからなり、先端における第三級炭素濃度をM(モル%)とし、根元における第三級炭素濃度をM(モル%)とした場合に、M>0.01、M>0.01、且つ、0.8≦M/M≦1.2を満たす。よって、リブ31は、その先端から根元までが均一に架橋された架橋PFAから形成されており、高い耐摩耗性及び強度を有している。
【0062】
上記非架橋フッ素樹脂をなすフッ素樹脂の種類は限定されず、実施例1の場合と同様、テトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロペン、ジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレン、パーフルオロアルコキシエチレン等をモノマーとして用いた重合体(単独重合体、又は、共重合体)を用いることができる。具体的には、フッ素置換された重合可能なモノマーを用いた重合体(単独重合体、又は、共重合体)を用いることができ、具体的には、PTFE、PFA、FEP、ETFE、PVDF、PCTFE、ECTFE等を採用できる。これらは1種のみを用いてもよく2種以上を併用してもよい。このうち、基部35aとしては、加熱による溶融が抑制され、ゲル化によって形状を維持できるという観点、材料コストを低減できるという観点などから非架橋PTFEが好ましい。
【0063】
一方、端部35bは、耐摩耗性及び強度の高い架橋PFAから形成されるが、実施例1の場合と同様に、架橋PFAの第三級炭素濃度は0.01モル%以上であることが好ましく、その上限は限定されないが、通常、0.7モル%以下である。また、第三級炭素濃度の測定についても、実施例1の場合と同様である。
【0064】
リブ31がボディ5に設けられている場合も、実施例1の場合と同様に、リブ31は、その先端から根元までが架橋PFAからなり、先端における第三級炭素濃度をM(モル%)とし、根元における第三級炭素濃度をM(モル%)とした場合に、M>0.01、M>0.01、且つ、0.8≦M/M≦1.2を満たす。即ち、リブ31は、その先端における第三級炭素濃度Mが0.01モル%を超えており、同時に、その根元における第三級炭素濃度Mも0.01モル%を超えるものである。加えて、これらMとMとの比(M/M)は0.8以上1.2以下であり、MとMとが近い値を示すものである。従って、リブ31は、その先端から根元までが均一に架橋された架橋PFAから形成されている。また、リブ31は、先端と根元との間の距離が約250~2000μmであり、250μm以上とされている。
【0065】
このような先端から根元までが均一に架橋された架橋PFAからなるリブ31は、どのように形成してもよいが、実施例1の場合と同様に、架橋PFAフィルムの裁断片42の再成形物43から形成できる(図16参照)。この場合も作用効果についても実施例1の場合と同様である。即ち、図16(a)に示すように、非架橋PFAからなるフィルム(非架橋PFAフィルム)に対して放射線を照射することによって架橋PFAフィルム41を形成し、図16(b)に示すように、その表裏にわたって均一に架橋させた架橋PFAフィルムを裁断して裁断片42を得た後、図16(c)に示すように、所定の形状を有する金型46のキャビティ内に架橋PFAフィルムの裁断片42を収容し、加熱溶融した後、固化させることにより再成形物43を得ることができる。
【0066】
ダイヤフラム3の弁体部3aの底面側には、ボディ5の弁座部5aに設けられたリブ31が当接する当接部39が設けられている。当接部39は環状の面部により構成されている。ただし、当接部39は、リブ31が当接することができれば、形状を限定されるものではない。また、ダイヤフラム3は、図13に示すように、非架橋PTFEからなる基部33aと、基部33aに対して一体化され、当接部39を備えるとともにPTFE、PFAなどの架橋フッ素樹脂からなる端部33bと、を有している。すなわち、膜部3bを含む基部33aは、架橋フッ素樹脂よりも安価で屈曲耐久性の高い非架橋PTFEから形成されている。また、当接部39を含む端部33b(具体的に弁体部3aの底部)は、耐摩耗性及び強度の高い架橋フッ素樹脂から形成されている。
【0067】
次に、上記構成のダイヤフラムバルブ1Bの製造方法について説明する。
最初に、図17(a)~図17(b)に示すように、実施例1の場合と同様、非架橋フッ素樹脂から、筒状のキャビティ44aを有した中間材44を作製する。その一方、図16(a)~図16(c)に示すように、第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋された架橋PFAフィルムの裁断片42を用いてキャビティ44a(凹部)に収容可能な再成形物43を作製する。そして、中間材44のキャビティ44aに再成形物43を収容し、実施例1の場合と同様に、適宜の方法により両者を接合することで、中間材44と再成形物43とが一体化された複合材を得ることができる。
【0068】
他方、実施例1の場合と同様、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形する場合、図23に示すように、架橋PFAフィルムの裁断片42をキャビティ44a内に収容し(裁断片収容工程)、キャビティ44a内で加熱溶融することによって、キャビティ44aの内周面と相補的形状を有する架橋PFAからなる再成形物43を得ることができる。
この場合、キャビティ44a内に収容した架橋PFAフィルムの裁断片42のみを加熱溶融することもできるが、キャビティ44aを含むように加熱することができる。即ち、例えば、中間材44の全体を加熱することができる。この方法は、中間材44が、非架橋PTFEからなる場合に好適に利用できる。非架橋PTFEは、架橋PFAが加熱溶融される温度においてもゲル化され、溶融されない。このため、中間材44及びキャビティ44aとしての概形を維持することができる。そして、架橋PFAフィルムの裁断片42が加熱溶融された後、キャビティ44aに対応する形状に再成形され、その後、冷却・固化されると、同時にキャビティ44aも冷却・固化され、その際に両者(中間材44及び再成形物43)は一体化されて、これらの複合材45が得られることになる(焼成工程)。
【0069】
このように、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形すると、再成形物43の作製と、得られた再成形物43と中間材44との一体化と、を1回の加熱溶融・冷却固化により実現できるため、優れた製造効率を達することができる。また、再成形物43を得るための金型を不要とすることができるため、ダイヤフラムバルブを低コストに製造できる。更に、中間材44の全体を加熱しながらキャビティ44a内で再成形物43を得る場合は、ひずみや残留応力の発生を抑制できるため、両者間で優れた接合強度を得ることができる。その効果は、非加圧下(加圧を特に行わない状態)で加熱を行うことでより顕著に得ることができる。また、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形すると、キャビティ44a及び再成形物43の両者の接触面の全体にわたって接合できるため、例えば、レーザ溶着のように選択的な接合箇所を有する複合材と比較して、中間材44と再成形物43とをより強固に接合できる。また、複合材45に外力が作用した場合であっても両者間に隙間が生じることを防止できる。
上述のように、キャビティ44aの内部で再成形物43を再成形して得た棒状の複合材45をテストピースとして用い、中間材44と再成形物43とを引き離すようにセットして引張試験を行ったところ、中間材44と再成形物43との接合部は破断されず、接合部以外の箇所において破断することが確認された。
【0070】
図18(a)~図18(b)及び図19(a)~図19(b)は、複合材45からボディ5を作製する方法を示している。
図18(a)に破線で示されているように複合材45を切削加工することにより、図18(b)に示されているようなボディ5を作製することができる。図18(b)に示されているボディ5は、図12に示されているダイヤフラムバルブ1Bにおいて使用されているものである。ボディ5では、リブ31が形成される端部35bが、複合材45において再成形物43から作製されている、すなわち発塵性の低い架橋PFAによって形成されている。また、ボディ5の流入口12及び流出口14が形成される基部35aが、複合材45において中間材44から作製されている、すなわち架橋PFAと比較して安価な非架橋フッ素樹脂によって形成されている。入口流路13及び出口流路15は、流入口12及び流出口14から弁室11まで延びるように中間材44から削り出されている。一方、リブ31は、端部35bから削り出されている。したがって、弁の開閉時に当接部39が弁座部5aに当接してもパーティクルの発生を抑制でき、発生したパーティクルによる弁室11内の液体の汚染を低減させることができる。
【0071】
図18(a)~図18(b)の方法によれば、流入口12から入口流路13、弁室11、出口流路15から流出口14までを基部35aから削り出す一方で、弁座部5aのみを端部35bから削り出すことができる。このため、図19(a)~図19(b)に示す方法により切削する場合と比較して、パーティクルの発生は抑制しつつ、低コストでボディ5を製造することができる。
また、図20(a)~図20(b)に示すように、中間材44のキャビティ44aに再成形物43を形成したうえで、更に、他の非架橋フッ素樹脂を用いて他の中間材48を形成することができる。このようにしても、図19(a)~図19(b)に示す方法により切削する場合と比較して、パーティクルの発生は抑制しつつ、低コストでボディ5を製造することができる。
更に、図22(a)~図22(b)に示すように、リブ31のみを架橋PFAから作製し、それ以外の部位を非架橋フッ素樹脂から作製されたものとすることができる。そして、図22(a)~図22(b)に示すように、リブ31のみを架橋PFAから作製する場合には、複合材45内における再成形物43の大きさをとりわけ小さく抑えることができる。このため、非架橋フッ素樹脂と比較してよりコスト高となる架橋PFAの使用量を低減しつつ、性能に優れたダイヤフラムを得ることができる。
【0072】
更に、図21(a)~図21(b)に示すように、中間材44に、流入口12、弁座部5a、流出口14の各々に相当する3箇所にキャビティ44aを設け、当該3つのキャビティ44a内にいずれも、架橋PFAからなる再成形物43及び他の再成形物49を形成することができる。そして、再成形物43から弁座部5aを削り出し、他の再成形物49から流入口12の継手部、及び、流出口14の継手部、を各々削り出すことができる。この場合、当接部39と弁座部5aとの接離に伴う発塵(パーティクルの発生)を抑制しつつ、流入口12及び流出口14のチューブが接続される継手部からの発塵(パーティクルの発生)をも抑制することができる。その一方で、このような低発塵性のボディ5を低コストで製造することができる。
【0073】
次に、上記構成のダイヤフラムバルブ1Bの作用効果について説明する。図12に示すように、作動流体供給口27から駆動部7に作動流体が供給されていない通常時は、駆動部7のピストン21がコイルばね22によって下方に付勢されて押し下げられる。この結果、弁体部3aがステム19を介して弁座部5aに接近する方向に移動して弁座部5aのリブ31に圧接されて、ダイヤフラムバルブ1Bが閉弁状態となる(図15(a)参照)。これに伴って、弁体部3aを支持する膜部3bも駆動部7から離れる方向に変形する。この状態から、駆動部7の作動流体供給口27に作動流体を供給すると、シリンダ部の下部空間S2に流入した作動流体の流体圧がピストン本体21aに上向きに作用し、ピストン21がコイルばね22の付勢力に抗して押し上げられる。このとき、上部空間S1内の空気は通気口26から外部に放出される。この結果、弁体部3aがステム19を介して弁座部5aから離間する方向に移動させられ、ダイヤフラムバルブ1Bが開弁状態となる(図15(b)参照)。これに伴って膜部3bも駆動部7へ接近する方向に変形する。作動流体供給口27への作動流体の供給が停止されると、コイルばね22により、再びピストン21が下方に付勢されて押し下げられ、弁体部3aが弁座部5aのリブ31に圧接して、再び閉弁状態となる。
【0074】
以上より、本実施例のダイヤフラムバルブ1Bによると、弁座部5aには、弁体部3aに向かって突出するリブ31が設けられており、リブ31は、その先端から根元までが架橋PFAからなり、先端における第三級炭素濃度をM1(モル%)とし、根元における第三級炭素濃度をM2(モル%)とした場合に、M1>0.01、M2>0.01、且つ、0.8≦M1/M2≦1.2を満たす。これにより、リブ31は、その先端から根元までが均一に架橋された架橋PFAから形成されるので、リブ31の耐摩耗性及び強度が高められる。よって、閉弁時に弁体部3aが弁座部5aのリブ31に当接するときに、リブ31が変形して弁体部3aとの間で擦れることが抑制されるため、パーティクルの発生量を低減することができる。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明は、流体制御に用いられるダイヤフラムを備えたダイヤフラムバルブ及びその製造方法として広く利用される。
【符号の説明】
【0076】
1A、1B;ダイヤフラムバルブ、
3;ダイヤフラム、
3a;弁体部、3b;膜部、3c;外周縁部、
5;ボディ、5a;弁座部、
7;駆動部、
11;弁室、
12;流入口、13;入口流路、14;流出口、15;出口流路、
17;駆動部筐体、
18;蓋部材、
19;ステム、19a;係止部、
21;ピストン、21a;ピストン本体、21b;案内軸、
26;通気口、27;作動流体供給口、
31;リブ、
33a;基部、33b;端部、35a;基部、35b;端部、
37;連結孔、37a;小径孔部、37b;大径孔部、
39;当接部、
41;架橋PFAフィルム、42;架橋PFAフィルムの裁断片、
43;再成形物、
44;中間材、44a;キャビティ、
45;複合材、
46;金型、
48;他の中間材、49;他の再成形物、
C;移動軸線、
S1;上部空間、S2;下部空間。
【要約】
【課題】パーティクルの発生を抑制するダイヤフラムバルブ及び製法を提供する。
【解決手段】ダイヤフラムバルブ1Aは、弁体部3a及び弁体部から外方に延びて移動軸線C方向に変形可能な膜部3bを有するダイヤフラム3と、移動軸線方向に往復移動する弁体部が当接及び離間する弁座部5aを有するボディ5と、を備え、弁体部又は弁座部のいずれか一方には、他方に向かって突出するリブ31が設けられ、リブは、その先端から根元までが架橋PFAからなり、先端における第三級炭素濃度M(モル%)と根元における第三級炭素濃度M(モル%)がM≧0.01、M≧0.01且つ0.8≦M/M≦1.2を満たす。第三級炭素濃度が0.01モル%以上となるように架橋した架橋PFAフィルムの裁断片を得る工程と、裁断片を再成形して再成形物を得る工程と、再成形物からリブを得る工程とを備える。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17
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図23