(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】唐揚げ粉
(51)【国際特許分類】
A23L 7/157 20160101AFI20240731BHJP
A23L 5/10 20160101ALI20240731BHJP
A23L 13/50 20160101ALN20240731BHJP
【FI】
A23L7/157
A23L5/10 E
A23L13/50
(21)【出願番号】P 2023144786
(22)【出願日】2023-09-06
【審査請求日】2023-10-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591018534
【氏名又は名称】奥本製粉株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浦上 裕子
(72)【発明者】
【氏名】谷口 友啓
(72)【発明者】
【氏名】久下 善弘
【審査官】高山 敏充
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/087730(WO,A1)
【文献】業務用プレミックス 新製品発明のご案内『簡単料理!竜田風からあげ粉』,奥本製粉株式会社 News Release[オンライン],[2024年1月25日検索],2022年05月26日,https://www.om-group.co.jp/wp-content/uploads/2022/05/%E7%B0%A1%E5%8D%98%E8%AA%BF%E7%90%86%EF%BC%81%E7%AB%9C%E7%94%B0%E9%A2%A8%E3%81%8B%E3%82%89%E3%81%82%E3%81%92%E7%B2%89.pdf
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
日経テレコン
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
でん粉、及び脱脂大豆粉を含有する
まぶしタイプの唐揚げ粉であって、
でん粉、及び脱脂大豆粉の総量100質量%中、でん粉の割合が75~
85質量%、脱脂大豆粉の割合が
15~25質量%であることを特徴とする、
まぶしタイプの唐揚げ粉
;
但し、脱脂大豆20質量部、分離大豆蛋白10質量部、でん粉70質量部、炭酸カルシウム2質量部、及び炭酸マグネシウム0.4質量部からなる粒状澱粉組成物を除く;
ここでまぶしタイプの唐揚げ粉は、対象の食材の表面にそのまままぶして用いられる唐揚げ粉である。
【請求項2】
でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉を含有する
まぶしタイプの唐揚げ粉であって、
でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉の総量100質量%中、でん粉の割合が60~85質量%、脱脂大豆粉の割合が5~25質量%、乾燥パン粉の割合が5~25質量%であることを特徴とする、
まぶしタイプの唐揚げ粉
;
ここでまぶしタイプの唐揚げ粉は、対象の食材の表面にそのまままぶして用いられる唐揚げ粉である。
【請求項3】
さらに小麦粉を含有する、請求項2に記載する
まぶしタイプの唐揚げ粉であって、
でん粉、大豆粉、乾燥パン粉、及び小麦粉の総量100質量%中、小麦粉の割合が20重量%以下であることを特徴とする、
まぶしタイプの唐揚げ粉。
【請求項4】
対象食材の表面にまぶした後、当該食材に水を加えて混ぜることで、対象食材の表面にソボロ状の衣を形成するために使用される、
請求項1又は2に記載する
まぶしタイプの唐揚げ粉。
【請求項5】
請求項1~3のいずれかに記載する
まぶしタイプの唐揚げ粉の使用方法であって、
対象の食材の表面にまぶした後、
当該食材に水を加えて混ぜることで、食材の表面にソボロ状の衣を形成する、
前記使用方法。
【請求項6】
下記の工程を有する、唐揚げの製造方法:
請求項1~3のいずれかに記載する唐揚げ粉を対象の食材の表面にまぶす工程、
前記工程で得られた食材に水を加えて混ぜ、食材表面にソボロ状の衣を形成する工程、及び
前記工程で得られた衣付き食材を油調する工程。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、唐揚げ粉、より詳細には、水に溶くことなく、揚種に直接まぶす所謂「まぶしタイプ」の唐揚げ粉に関する。また、本発明は、まぶしタイプの唐揚げ粉の使用方法、及び当該唐揚げ粉を用いた唐揚げの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
唐揚げ粉は、一般的に、小麦粉又は片栗粉を主成分とし、必要に応じて調味料、香辛料等を配合して調製されている。唐揚げの一般的な調理方法として、唐揚げ粉を直接、肉や魚介類等の揚種にまぶすか(まぶしタイプ)、又は唐揚げ粉を水に溶いたものを揚種に被覆して、油調する方法が知られている。
【0003】
前者のまぶしタイプによる調理は、サクサクとした食感の唐揚げをつくるために好適に使用される。サクサクとした食感の唐揚げを得る方法として、例えば、ガリガリとした硬さやひきがなく、軽く、サクミがあり、かつ口溶けが良好な衣を得るために、馬鈴薯澱粉を主体とし、馬鈴薯澱粉の95重量%以上が粒径20μm以上であることを特徴とする唐揚げ粉が提案されている(例えば、特許文献1参照)。 また、α化澱粉を含有することを特徴とするまぶしタイプの唐揚げ粉用顆粒粉が知られている(例えば特許文献2参照)。また、サクサクとした食感が付与でき時間がたってもサクサクとした食感が維持できるまぶしタイプの唐揚げ粉として、目開き2.38mmの篩を抜け目開き0.35mmの篩上に残る粒度の澱粉を含む唐揚げ粉が提案されている(例えば特許文献3参照)。 また、具材に対する付着性が良好で、厚みのある好ましい外観と、サクサクした歯もろさのある良好な食感とを有する衣を備え、且つ揚げてから時間が経過しても品質の低下が少ない竜田揚げを製造し得る竜田揚げ用ミックスとして、澱粉及びソルガム粉を含有し、ソルガム粉の含有量が1~30質量%である竜田揚げ用ミックスが提案されている(例えば特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2000-350561号公報
【文献】特開2005-333861号公報
【文献】特開2021-000063号公報
【文献】特開2015-149979号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、まぶしタイプの唐揚げ粉であって、特徴のある外観と特徴ある食感を有する新たな唐揚げの製造に好適に使用できるまぶしタイプの唐揚げ粉を提供することを課題とする。より詳細には、本発明は、ゴツゴツした外観とザクザクした食感を有する新たな唐揚げの製造に使用されるまぶしタイプの唐揚げ粉を提供することを課題とする。
【0006】
また本発明は、かかるまぶしタイプの唐揚げ粉を用いて、ゴツゴツした外観とザクザクした食感を有する新たな唐揚げを製造する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、前記課題を解決するために、鋭意検討を重ねたところ、でん粉に所定の割合で脱脂大豆粉を混合することで調製した唐揚げ粉を、そのまま揚種にまぶし、次いで、それに水を加えて混ぜることで、唐揚げ粉が揚種表面に付着した状態で水分を含んで粒状(ダマ状、ソボロ状)になり、次いで、それを油調することでゴツゴツとした外観を有し、ザクザクとした食感を有する、新たな唐揚げが製造できることを見出した。
【0008】
さらに、でん粉及び大豆粉に加えて、乾燥パン粉を配合した唐揚げ粉、並びに乾燥パン粉及び小麦粉を配合した唐揚げ粉を用いても、前記の方法で、同様に、ゴツゴツとした外観を有し、ザクザクとした食感を有する、新たな唐揚げが製造できることを確認した。
【0009】
本発明は、これらの知見に基づいて、さらに検討を重ねて完成したものであり、下記の実施態様を包含するものである。
(I)唐揚げ粉
(I-1)でん粉、及び脱脂大豆粉を含有する唐揚げ粉であって、
でん粉、及び大豆粉の総量100質量%中、でん粉の割合が75~89質量%、大豆粉の割合が11~25質量%であることを特徴とする、唐揚げ粉。
(I-2)でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉を含有する唐揚げ粉であって、
でん粉、大豆粉、及び乾燥パン粉の総量100質量%中、でん粉の割合が60~85質量%、大豆粉の割合が5~25質量%、乾燥パン粉の割合が5~25質量%であることを特徴とする、唐揚げ粉。
(I-3)さらに小麦粉を含有する、(I-2)に記載する唐揚げ粉であって、
でん粉、大豆粉、乾燥パン粉、及び小麦粉の総量100質量%中、小麦粉の割合が20重量%以下であることを特徴とする、唐揚げ粉。
(I-4)対象の食材の表面にそのまままぶして用いられる、まぶしタイプの唐揚げ粉であって、
対象食材の表面にまぶした後、当該食材に水を加えて混ぜることで、対象食材の表面にソボロ状の衣を形成するために使用される、(I-1)~(I-3)のいずれかに記載する唐揚げ粉。
【0010】
(II)唐揚げ粉の使用方法
(II-1)(I-1)~(I-4)のいずれかに記載する唐揚げ粉の使用方法であって、
対象の食材の表面にまぶした後、
当該食材に水を加えて混ぜることで、食材の表面にソボロ状の衣を形成する、
前記使用方法。
【0011】
(III)唐揚げの製造方法
(III-1)下記の工程を有する、唐揚げの製造方法:
(I-1)~(I-4)のいずれかに記載する唐揚げ粉を対象の食材の表面にまぶす工程、
前記工程で得られた食材に水を加えて混ぜ、食材表面にソボロ状の衣を形成する工程、及び
前記工程で得られた衣付き食材を油調する工程。
【発明の効果】
【0012】
本発明の唐揚げ粉によれば、ゴツゴツした外観とザクザクした食感を有する新たな唐揚げの製造に使用されるまぶしタイプの唐揚げ粉を提供することができる。
また本発明の製造方法によれば、ゴツゴツした外観とザクザクした食感を有する新たな唐揚げを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(I)唐揚げ粉
本発明の唐揚げ粉(以下、「本唐揚げ粉」と称する)は、少なくともでん粉、及び脱脂大豆粉を含有することを特徴とする。
この唐揚げ粉のうち、乾燥パン粉及び小麦粉を含まない唐揚げ粉を、後述する乾燥パン粉及び/又は小麦粉を含む唐揚げ粉と区別するために、便宜上、「本唐揚げ粉1」と称する。
【0014】
(A)でん粉
本唐揚げ粉で使用されるでん粉は、本発明の効果を妨げないものであればよく、その限りにおいて、その原料に特に制限されるものではない。例えば、トウモロコシでん粉(コーンスターチ)、米でん粉、小麦でん粉、タピオカでん粉、サツマイモでん粉、及び馬鈴薯でん粉等を例示することができる。なお、この並びは、でん粉尺の考えに基づいて、糊化温度の高いでん粉から順に並べたものである。これらに制限されることなく、その他、さごでん粉、くずでん粉なども用いることができる。好ましくは、トウモロコシでん粉、及び馬鈴薯でん粉であり、より好ましくはトウモロコシでん粉である。なお、でん粉は、本発明の効果を妨げない限り、化学的処理(例えば、アセチル化処理、リン酸加工処理、酸化処理等)、物理的処理(例えば、加熱処理、α化処理等)、又は酵素的処理により変性させた加工でん粉であってもよい。制限されないものの、これらの加工でん粉のうち、好ましくは化学的処理でん粉である。好ましくは、非加工でん粉である。
【0015】
本唐揚げ粉で使用されるでん粉は、制限されないものの、目開き1.0mmの篩を抜ける粒度の範囲にあるものであることが好ましい。こうした粒度を有するでん粉は、でん粉を撹拌造粒法、流動層造粒法、押し出し造粒法等の公知の方法で造粒した後、目開き1.0mmの篩で分級することで調整することができる。また前記の粒度範囲にある市販のでん粉を使用する、又は市販のでん粉を目開き1.0mmの篩に供して前記粒度範囲にあるでん粉を調整することで得ることができる。
【0016】
(B)脱脂大豆粉
本唐揚げ粉には、前記でん粉に加えて、脱脂処理を施した大豆粉末(脱脂大豆粉)が使用される。
大豆は15~20質量%程度の油脂分を含むが、サラダオイルの原料油を採るために、大豆を圧ぺんし、ヘキサンで油分を溶出した後の残渣が脱脂大豆であり、油溶性成分をほとんど含まない。後述する実験例2に示すように、大豆粉として、脱脂大豆粉に代えて全脂大豆粉を用いて調製した唐揚げ粉を用いて唐揚げを作製すると、揚種表面に形成されるソボロ(ダマ)の大きさが大きくなる傾向が認められる。また、大豆たん白を用いて調製した唐揚げ粉を用いて唐揚げを作製すると、揚種に対する衣の付着性が著しく低下する傾向が認められる。このため、本唐揚げ粉の成分として、でん粉を組み合わせて用いられる大豆粉は、前述する脱脂大豆粉であることが好ましい。
【0017】
本唐揚げ粉で使用される脱脂大豆粉の粒度は、制限されないものの、目開き1.2mmの篩を抜ける粒度の範囲にあるものであることが好ましい。こうした粒度を有する脱脂大豆粉は、市販の脱脂大豆粉を目開き1.2mmの篩で分級することで調整することができる。また前記の粒度範囲にある市販の脱脂大豆粉を使用することもできる。
【0018】
でん粉及び脱脂大豆粉を含有する本唐揚げ粉1において、でん粉及び脱脂大豆粉の総量100質量%に対するでん粉の割合は、75~89質量%、好ましくは75~85質量%、より好ましくは80~85質量%である。一方、本唐揚げ粉1において、でん粉及び脱脂大豆粉の総量100質量%に対する脱脂大豆粉の割合は、11~25質量%、好ましくは15~25質量%、より好ましくは15~20質量%である。前記範囲を超えてでん粉の割合を多く且つ脱脂大豆粉の割合を少なくすると、揚種に対する衣の付着率が低下する傾向が認められる。また逆に、前記範囲を超えてでん粉の割合を少なく且つ脱脂大豆粉の割合を多くした場合も、同様に、揚種に対する衣の付着率が低下する傾向が認められる(実験例1、表1参照)。
【0019】
本唐揚げ粉は、前述するでん粉、及び脱脂大豆粉に加えて、乾燥パン粉を含有するものであってもよい。でん粉、及び脱脂大豆粉に加えて乾燥パン粉を含有し、且つ小麦粉を含まない唐揚げ粉を、後述する小麦粉を含む唐揚げ粉と区別するために、便宜上、「本唐揚げ粉2」と称する。
また、本唐揚げ粉は、でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉に加えて、小麦粉を含有するものであってもよい。でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉に加えて小麦粉を含有する唐揚げ粉を、便宜上、「本唐揚げ粉3」と称する。
【0020】
(C)乾燥パン粉
日本農林規格(JAS規格)(平成28年2月24日農林水産省告示第489号)によると、パン粉とは、小麦粉又はこれに穀粉類を加えたものを主原料とし、これにイーストを 加えたもの又はこれらに食塩、野菜及びその加工品、砂糖類、食用油脂 、乳製品等を加えたものを練り合わせ、発酵させたものを培焼等の加熱をした後、粉砕したものである。また、乾燥パン粉とは、当該パン粉のうち、水分が14質量%以下になるように乾燥したものである。
【0021】
ここで規定される水分含量は、日本農林規格(JAS規格)に基づいて、下記の方法によって測定される:
(a)アルミ製蓋付ひょう量缶(直径約55mm、深さ25mm)をあらかじめ恒量とし、これに試料約3gを正確に量りとる。
(b)定温乾燥器(温度制御幅が±2℃以内のもの)を135℃に加熱し、乾燥器に入れて180分間乾燥する。
(c)乾燥が終了した後、デシケーター(日本工業規格R 3503(2007)に規定するもので、乾燥剤としてシリカゲルを入れたもの)内で放冷し、ひょう量する。
(d)次式により水分を求める。
水分(%)=
(乾燥前の試料及びひょう量缶の重量(g)-乾燥後の試料及びひょう量缶の重量(g))/(乾燥前の試料及びひょう量缶の重量(g)-ひょう量缶の重量(g)) ×100
【0022】
本唐揚げ粉2及び3で使用される乾燥パン粉は、制限されないものの、10メッシュ以上の細目の粒度を有するものであることが好ましい。好ましくは100~10メッシュの範囲、より好ましくは100~20メッシュの範囲である。こうした粒度を有する乾燥パン粉は、市販の乾燥パン粉を篩や分級機で分級することで調整することができる。また前記の粒度範囲にある市販の乾燥パン粉を使用することもできる。前記粒度を下回る乾燥パン粉を用いると、形成されるダマの大きさが大きくなる傾向があり、衣の付着に偏りが認められる(実験例2、表3)。
【0023】
でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉を含有する本唐揚げ粉2において、でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉の総量100質量%に対するでん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉の割合は、下記の通りである:
でん粉:60~85質量%、好ましくは60~80質量%、より好ましくは60~75質量%。
脱脂大豆粉:5~25質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは5~15質量%。
乾燥パン粉:5~25質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~20質量%。
【0024】
(D)小麦粉
本唐揚げ粉3で使用される小麦粉は、でん粉、脱脂大豆粉、及び乾燥パン粉とともに唐揚げ粉の成分として使用された場合に、本発明の効果を妨げないものであればよく、その限りにおいて、特に制限されない。このため、強力小麦粉、中力小麦粉、及び薄力小麦粉のいずれも使用することができるが、好ましくは、軟質小麦を原料として調製され、タンパク質含量が約7~8.5%である薄力小麦粉である。また、加熱処理することで小麦粉に含まれるタンパク質(グルテン等)を変性させた小麦粉(加熱処理小麦粉)を使用することもできる。
【0025】
本唐揚げ粉3で使用される小麦粉は、制限されないものの、目開き1.0mmの篩を抜ける粒度の範囲にあるものであることが好ましい。こうした粒度を有する小麦粉は、当該粒度範囲にある市販の小麦粉を使用する、又は市販の小麦粉を目開き1.0mmの篩に供して前記粒度範囲にある小麦粉に調整することで得ることができる。
【0026】
でん粉、脱脂大豆粉、乾燥パン粉、及び小麦粉を含有する本唐揚げ粉3において、でん粉、脱脂大豆粉、乾燥パン粉、及び小麦粉の総量100質量%に対するでん粉、脱脂大豆粉、乾燥パン粉、及び小麦粉の割合は、下記の通りである:
でん粉:60~80質量%、好ましくは60~75質量%、より好ましくは60~70質量%。
脱脂大豆粉:5~25質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは5~15質量%。
乾燥パン粉:5~25質量%、好ましくは5~20質量%、より好ましくは10~20質量%。
小麦粉:1~20質量%以下、好ましくは1~15質量%以下、より好ましくは1~10質量%以下。
後述する実験例3(表4)に示すように、小麦粉の割合を30質量%にまで増量した唐揚げ粉を用いて唐揚げを作製すると、衣の歯応え及び歯切れ感が低下する傾向があり、また衣のダマ形成に偏りが生じる傾向が認められる。このため、小麦粉の配合割合は、前述するように20質量%以下に抑えることが好ましい。
【0027】
(E)他の成分
本唐揚げ粉(唐揚げ粉1~3)は、前述する各々の粉体成分に加えて、本発明の効果を妨げないことを限度として、各種の調味成分を配合することができる。調味成分としては、制限されないものの、例えば、食塩、粉末醤油、糖類(例えば、砂糖、オリゴ糖、デキストリン、糖アルコール等)、うま味調味料(例えば、グルタミン酸ナトリウム、イノシン酸ナトリウム等)、天然調味料(例えば、粉末鰹節エキス、粉末鰹節、粉末シイタケエキス、粉末昆布エキス、粉末発酵エキス、魚介類エキス等)、及び香辛料(例えば、胡椒粉末、唐辛子粉末、ガーリックパウダー、ジンジャーパウダー等)などを例示することができる。また、必要に応じて、色素、添加剤(例えば、膨張剤、乳化剤)等を配合することもできる。
これらの成分の配合量は、本発明の効果を妨げないことを限度として、適宜選択することができる。例えば、前記調味成分は、調製する唐揚げの味に応じて、本唐揚げ粉の全量100質量%あたり5~25質量%の割合で、適宜組みあわせて適量配合することができる。
【0028】
本唐揚げ粉(唐揚げ粉1~3)は、対応する各成分をできるだけ均質になるように混合することで調製される。混合方法は、特に制限されず、人力を用いた混合方法のほか、リボンミキサー、ナウターミキサー、カスケードミキサー、ドラムミキサー、V型ミキサー等の混合機を用いて行うこともできる。
【0029】
斯くして調製される本唐揚げ粉は、揚種(揚げる対象の食材)に直接まぶして使用される。
用いられる揚種は、制限されないものの、例えば、鶏肉や豚肉等の肉類、魚やエビ等の魚介類を挙げることができる。好ましくは鶏肉である。揚種は、必要に応じて、食塩、醤油、みりん、糖類、ガーリック、ショウガ等の調味成分を用いて下味をつけておいてもよい。本唐揚げ粉をまぶす前には、ペーパータオル等で軽く、揚種表面の水分をふき取っておくことが好ましい。本唐揚げ粉を揚種表面にまんべんなく、ほぼ均一にまぶした後、これに水を加えて混ぜることで、水を含んだ本唐揚げ粉が揚種表面でくっつきあうことで、揚種表面にソボロ状(ダマ状、粒状)の衣を形成することができる。
このように、本唐揚げ粉は、対象の食材(揚種)の表面にそのまままぶして用いられる、まぶしタイプの唐揚げ粉であって、揚種の表面にまぶした後、当該食材に水を加えて混ぜることで、揚種の表面にソボロ状の衣を形成するために使用される。
なお、使用する水の温度は、28℃以下(0~28℃)であればよく、特に制限されない。好ましくは5~28℃、より好ましくは10~25℃、さらに好ましくは10~20℃である。
また、水添加後の混合工程は、前述するように、揚種表面にソボロ状(「ダマ状」又は「粒状ともいう)の衣を形成させる工程であるため、それが実行できる方法であればよいが、例えば、後述する実施例に記載するように、本唐揚げ粉をまぶした揚種に水を添加したボウル内に手を入れて円弧を描くように、複数回混ぜる方法を例示することができる。混ぜる回数は、揚種表面にソボロ状の衣が形成され、それが損なわれない限り、制限されないものの、5~20回、10~18回程度を例示することができる。また、その後、そのまま3~10分程度放置して、揚種に衣を馴染ませることが好ましい。
【0030】
揚種に対して用いられる本唐揚げ粉の量は、揚種の表面の全体に本唐揚げ粉がまんべんなく付着する量であればよい。制限されないが、例えば、揚種が鶏肉である場合、鶏肉100g(およそ表面積が200cm2)に対して、10~25gの本唐揚げ粉を用いることができる。鶏肉に限らず、一般的に揚種の表面積100cm2あたりに使用される本唐揚げ粉の量としては5~12.5g、好ましくは7~10gを例示することができる。
また、本唐揚げ粉を揚種表面にまぶした後に配合する水の量は、使用した本唐揚げ粉100質量部に対して40~70質量部の割合を例示することができる。
【0031】
(II)唐揚げの製造方法
本発明は、前述する本唐揚げ粉を用いる唐揚げの製造方法を提供する。
本発明の製造方法は、下記の工程により実施することができる。
(1)本唐揚げ粉を対象の食材(揚種)の表面にまぶす工程、
(2)前記工程で得られた食材(揚種)に水を加えて混ぜ、食材表面にソボロ状の衣を形成する工程、及び
(3)前記工程で得られた衣付き食材を油調する工程。
【0032】
これらの工程のうち、(1)及び(2)の工程、各工程で使用される本唐揚げ粉及びその製造方法、及び対象の食材(揚種)等の説明は前述した通りであり、その記載はここに援用することができる。
(3)の工程において、油調方法は、特に制限されず、揚種の種類に応じて、唐揚げに通常使用される油の種類、油の温度、揚げ時間を採用することができる。例えば、油の温度としては、130~200℃、好ましくは150~180℃、揚げ時間としては、1~15分、好ましくは1~7分の範囲を例示することができる。
これらの(1)~(3)の工程により、揚種表面にソボロ状の衣が万遍なく付着した唐揚げを製造することができる。ここで揚種表面に付着したソボロの大きさは、制限されないものの、直径2~8mm程度を挙げることができる。なお、ソボロは通常完全な球状体でないため、ここで「直径」とは、短径と長径の平均値を意味するものとする(以下の実施例においても同じ。)。こうした直径2~8mm程度のソボロが揚種表面面積の50~80%程度、万遍なく付着することで、目で見たときにゴツゴツした外観を有し、また、食べたときにザクザクした食感に有する唐揚げを得ることができる。
【0033】
以上、本明細書において、「含む」及び「含有する」の用語には、「からなる」及び「から実質的になる」という意味が含まれる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の構成及び効果について、その理解を助けるために、実験例を用いて本発明を説明する。但し、本発明はこれらの実験例によって何ら制限を受けるものではない。以下の実験は、特に言及しない限り、室温(25±5℃)、及び大気圧条件下で実施した。なお、特に言及しない限り、以下に記載する「%」は「質量%」、「部」は「質量部」を意味する。
【0035】
1.実験材料
下記の実験例1~3において使用した材料は、以下の通りである。
[でん粉]
コーンスターチ:「昭和コーンスターチ」昭和産業(株)製、粒径0.4mm以下
馬鈴薯澱粉:「馬鈴しょ澱粉なかしゃり」斜里町農業協同組合製、粒径0.9mm以下
加工でん粉:「SF-420」昭和産業(株)製、粒径0.4mm以下
[大豆粉]
脱脂大豆粉:「ソーヤフラワーFT-N」(株)日清オイリオグループ製、粒径1.0mm以下
全脂大豆粉:「ソーヤフラワーNSA」(株)日清オイリオグループ製、粒径1.1mm以下
大豆たん白:「サンラバー10」不二製油(株)製、粒径1.0mm以下
[乾燥パン粉]
ドライ100メッシュ:「ホワイトフラワー100M」共栄フード(株)製、粒径0.2mm以下
ドライ20メッシュ:「ホワイトフラワー20M」共栄フード(株)製、粒径0.8mm以下
ドライ7メッシュ:「ホワイトフラワー7M」共栄フード(株)製、粒径2.5mm以下
[小麦粉]
薄力粉:「白水車」奥本製粉(株)製、粒径0.2mm以下
加熱処理粉:「MK」昭和産業(株)製、粒径0.9mm以下(加熱処理によりグルテンを変性させた小麦粉)
【0036】
2.実験方法
後述する実験例1~3において、下記の方法で、スクリーニングテストと鶏唐揚げ加工テストを実施した。
【0037】
2-1.スクリーニングテスト
スクリーニングテストとして、簡易的に、唐揚げ粉と水道水を混ぜ合わせてソボロ(ダマ)を作製し、ソボロの大きさを評価した。
【0038】
(1)ソボロの作製方法
1)ボウル(直径15cm)の中に唐揚げ粉60gを入れ、これに20℃の水道水40g加える。
2)2本の箸で、ボウル内で円弧を描くように、10回かき混ぜて、ソボロを作製する。
【0039】
(2)ソボロの大きさの評価方法
上記方法で作製されたソボロの大きさとその割合を下記の方法で測定した。
1)目開き9.5mmの篩(篩の直径20cm)にて篩い分けし、網の上に残ったものの重量を測定し、これを「重量a」とする。
2)9.5mmの篩からすり抜けたものについて、次は、目開き2.0mmの篩(篩の直径20cm)にてふるい分けし、網の上に残ったもの、及びすり抜けたものについて、それぞれ重量測定する。篩上に残ったものの重量を「重量b」、すりぬけたものの重量を「重量c」とする。
3)上記1)2)にて測定した各重量(重量a、重量b、重量c)について、それらの総量(重量a+重量b+重量c)100%当たりに対するそれぞれの百分率を算出する。これらをそれぞれの重量比率とする。
【0040】
[ソボロの評価基準]
得られた結果をもとに、下記の基準に従って評価した。
適(〇):2mm以上のソボロの重量比率(重量a+重量bの比率)が70%以上で、且つ9.5mm以上のソボロの重量比率(重量aの比率)が35%未満
不適(×):2mm以上のソボロの重量比率(重量a+重量bの比率)が70%未満
不適(×):9.5mm以上のソボロの重量比率(重量aの比率)が35%以上
【0041】
2-2.鶏唐揚げ加工テスト
唐揚げ粉を用いて鶏唐揚げを作製し、鶏肉への衣の付着性、鶏唐揚げの食感、及び鶏唐揚げの衣の状態を評価した。
【0042】
(1)鶏唐揚げの作製方法
1)鶏肉(もも肉、皮は全て取り除いた身のみ)を、1片の重量が約25gになるようにカットする。鶏肉表面の水分は、予めペーパータオルで軽くふき取っておく。
2)前記でカットした鶏肉を8片、ボウル(直径18cm)に入れ、この中に、鶏肉100質量部に対して唐揚げ粉を15質量部の割合で加え、鶏肉の表面全体に唐揚げ粉がほぼ均一に付着するように混ぜ合わせる。
3)次いで、前記ボウルに、20℃の水道水を、鶏肉100質量部に対して10質量部の割合で加え(唐揚げ粉が付着した鶏肉表面にできるだけ均等になるように振りかける)、ボウル内に手を入れて円弧を描くように、15回混ぜ合わせる。
4)その後、ボウル内に5分間放置して、鶏肉に衣を馴染ませる。
5)5分後、ボウルから鶏肉を1片ずつ取り出し、175℃に熱したサラダ油に投入して3分30秒間油調する。
6)ボウル内に残った衣材料(水を含んだ唐揚げ粉)の重量を測定する。
【0043】
(2)鶏肉に対する衣付着性の評価方法
下記の式に従って、鶏肉の衣付着率を算出し、それに基づいて鶏肉への衣付着性を評価する。
[数1]
鶏肉の衣付着率(%)={(A-B)/A}×100
A:仕込みに使用した衣材料(唐揚げ粉+水道水)の総量
B:ボウルに残った衣材料の重量
【0044】
[衣付着性の評価基準]
上記で算出した衣付着率から、鶏肉への衣付着性を下記の基準に従って評価する。
適(〇):鶏肉の衣付着率が75%より大きい。
不適(×):鶏肉の衣付着率が75%以下。
【0045】
(3)鶏唐揚げの食感評価
9名の官能評価の専門パネルで、作製した鶏唐揚げを試食し、鶏唐揚げ表面の衣の歯応えと歯切れ感を評価した。各鶏唐揚げの評価(歯応え、歯切れ感)は、衣材料として被験の唐揚げ粉に代えてコーンスターチ100%を用いて作製した鶏唐揚げ(対照品)の食感(対照食感)を「スコア3点」として、これを基準として、各専門パネルに点数化してもらうことで実施した。なお、鶏唐揚げは油調後、ペーパータオルの上に載せて、室温下で30分間放置した後に試食に供した。
各専門パネルの評価スコアの平均値を算出し、平均値が4点以上を「良(◎)」、3点より大きく4点未満を「適(〇)」、3点以下を「不適(×)」と、評価した。
【0046】
[歯応えの評価]
5点:対照食感よりも歯応えがあり、噛み初め及び咀嚼時にザクザクした感覚がある。
4点:対照食感よりもやや歯応えがあり、噛み初め及び咀嚼時にザクザクした感覚がややある。
3点:対照食感と同等の歯応え(硬さ)
2点:ヘナっとして対照食感と比較すると明確に劣るが、歯応えはやや残っている。
1点:ヘナっとしており歯応えはほぼない。
【0047】
[歯切れ感の評価]
5点:対照食感よりも崩壊感があり、噛んだ際に歯の通りがよい。
4点:対照食感よりもやや崩壊感があり、噛んだ際に歯の引っかかりを感じにくい。
3点:対照食感と同等の崩壊感(歯切れ感)
2点:崩壊感はあるが、噛んだ際に歯に引っ掛かりを感じる。
1点:崩壊感は全くなく、歯に引っ掛かりを強く感じ、歯の通りが悪い。
【0048】
[専門パネル間のすり合わせ]
専門パネル間で、評価判断に偏りが生じないように、事前に下記のことを実施した。
(A)事前に食感差がわかりやすい試験区をいくつか選定して、各パネルで試験的に評価を行い、各パネルの評価結果をパネル間ですり合わせることで、各パネルの内的な評価基準を統一させた。
(B)試食する鶏唐揚げについて、歯で噛む部位として、衣が均一に付着しているところを選定するように、パネル間で統一した。
(C)噛み初め及び咀嚼時に感じるザクザクした感覚を、口腔内の咀嚼音(ザクザクした音)を基準としてパネル間で統一した。
【0049】
(4)鶏唐揚げの衣の状態の評価
作製した鶏唐揚げの衣の状態(外観)を、9名の専門パネルで目視により評価した。評価は、衣の厚み、付着したソボロの大きさ、付着したソボロの量、及び付着したソボロの偏在性の観点から、下記の基準で実施し、結果は9名の専門パネル全員で話し合って総意により決定した。
[評価基準]
・適正:適度なサイズ(直径2~8mm程度)のソボロ状の衣が、鶏肉表面に対し全体的に万遍なく付着しており(鶏肉表面面積の50~80%程度)、凸凹感がありゴツゴツとした外観になっている。
・のっぺりと薄い:「のっぺり」は、衣の表面に凸凹感が無く滑らかな形状であることを意味する。「薄い」は、衣の付着が少なく厚みが薄いことを意味する。
・ややのっぺり:衣の表面に少し凸凹感はあるものの、概ね滑らかな形状であることを意味する。
・ややソボロ少ない:衣の表面にソボロ状の衣は付着しているが、付着している量がやや少なく(鶏肉表面面積の20~50%程度)、凸凹感がやや弱い。
・ソボロ少ない:衣の表面にソボロ状の衣は付着しているが、付着している量が少なく(鶏肉表面面積の0~20%程度)、凸凹感が弱い
・大きなダマ偏りあり:大きな塊状(直径8~20mm程度)の衣が付着しているが、衣の付着が少ない個所もあり、付着に偏りがある
・やや偏りあり:衣の表面にソボロ状の衣は付着しているが、衣の付着が少ない個所もあり、付着にやや偏りがある
・ダマが小さい:万遍なく付着しているが、衣のソボロが細かく(直径2mm以下)、凸凹感が弱い
【0050】
実験例1
表1に記載する処方からなる唐揚げ粉(比較例1-1~1-10、実施例1-1~1-2)を調製し、前記方法でスクリーニングテスト及び鶏唐揚げ加工テストを実施した。
結果を表1に示す。
【0051】
【0052】
表1に示すように、唐揚げ粉としてでん粉と脱脂大豆粉を用いた場合、でん粉及び脱脂大豆粉の総量100質量%中、でん粉の割合を75~89質量%、好ましくは75~85質量%、より好ましくは80~85質量%、及び脱脂大豆粉の割合を11~25質量%、好ましくは15~25質量%、より好ましくは15~20質量%に調整することで、本発明の所望の特性を有する唐揚げが作製できることが確認された。具体的には、上記の割合ででん粉と脱脂大豆粉を含む唐揚げ粉を、そのまま揚種として用いた鶏肉の表面にまぶし、次いで、それに水を加えて混ぜることで、唐揚げ粉が揚種表面に付着した状態で水分を含んでソボロ状になり、次いで、それを油調することでゴツゴツとした外観を有し、ザクザクとした食感を有する、唐揚げを作製することができた。
【0053】
実験例2
表2~3に記載する処方からなる唐揚げ粉(比較例2-1~2-7、実施例2-1~2-12)を調製し、前記方法でスクリーニングテスト及び鶏唐揚げ加工テストを実施した。
結果を表2~3に示す。
【0054】
【0055】
表2に示すように、唐揚げ粉としてでん粉と脱脂大豆粉と乾燥パン粉を用いた場合、でん粉、脱脂大豆粉及び乾燥パン粉の総量100質量%中、でん粉の割合を60~85質量%、脱脂大豆粉の割合を5~25質量%、乾燥パン粉の割合を5~25質量%に調整することで、本発明の所望の特性を有する唐揚げが作製できることが確認された。具体的には、上記の割合ででん粉と脱脂大豆粉と乾燥パン粉を含む唐揚げ粉を、そのまま揚種として用いた鶏肉の表面にまぶし、次いで、それに水を加えて混ぜることで、唐揚げ粉が揚種表面に付着した状態で水分を含んでソボロ状になり、次いで、それを油調することでゴツゴツとした外観を有し、ザクザクとした食感を有する、唐揚げを作製することができた。
【0056】
【0057】
表3に示すように、でん粉として、コーンスターチに代えて馬鈴薯澱粉を用いた場合も、同様に所望の特性を有する唐揚げが作製できることが確認された(実施例2-11)。このことから、でん粉は、原料の由来に関わらず広く用いることができると考えられる。
一方、大豆粉として、脱脂大豆粉に代えて、全脂大豆粉を用いると、形成されるソボロの大きさが大きくなる傾向が認められ、大豆たん白を使用すると、揚種に対する衣の付着性が著しく低下する傾向が認められた(比較例2-5及び2-6)。
また、乾燥パン粉として、ドライ100メッシュ品に代えて、ドライ20メッシュ品を用いた場合も、同様に所望の特性を有する唐揚げが作製できることが確認された(実施例2-12)。しかし、ドライ7メッシュ品を用いた場合は、形成されるソボロの大きさが大きくなる傾向があり、衣の付着に偏りが認められた。このことから、乾燥パン粉は、10メッシュ以下のサイズのものを用いることが望ましいと考えられる。
【0058】
実験例3
表4に記載する処方からなる唐揚げ粉(比較例3-1~3-2、実施例3-1~3-4)を調製し、前記方法でスクリーニングテスト及び鶏唐揚げ加工テストを実施した。
結果を表4に示す。
【0059】
【0060】
表4に示すように、唐揚げ粉としてでん粉と脱脂大豆粉と乾燥パン粉と小麦粉を用いた場合、でん粉、脱脂大豆粉、乾燥パン粉及び小麦粉の総量100質量%中、小麦粉の割合を10~20質量%に調整することで、本発明の所望の特性を有する唐揚げが作製できることが確認された(実施例3-1及び3-2)。具体的には、でん粉と脱脂大豆粉と乾燥パン粉と小麦粉を含む唐揚げ粉を、そのまま揚種として用いた鶏肉の表面にまぶし、次いで、それに水を加えて混ぜることで、唐揚げ粉が揚種表面に付着した状態で水分を含んでソボロ状になり、次いで、それを油調することでゴツゴツとした外観を有し、ザクザクとした食感を有する、唐揚げを作製することができた。また小麦粉として、加熱処理することでタンパク質を変性させた小麦粉(加熱処理小麦粉)を用いた場合であっても、同様に所望の特性を有する唐揚げが作製できることが確認された(実施例3-3及び3-4)。一方、小麦粉の割合を30質量%に増量すると、歯応えや歯切れ感が低下する傾向、及び衣の付着に偏りが生じる傾向が認められた。
【0061】
処方例1~5
表5に記載する割合で、各成分を混合して、前述する効果を発揮する本唐揚げ粉を各種調製した。
【0062】
【要約】
【課題】水に溶くことなく、揚種に直接まぶす所謂「まぶしタイプ」の唐揚げ粉、当該唐揚げ粉の使用方法、及び唐揚げ粉を用いた唐揚げの製造方法を提供する。
【解決手段】でん粉、及び大豆粉;でん粉、大豆粉、及び乾燥パン粉;又はでん粉、大豆粉、乾燥パン粉、及び小麦粉を含有する唐揚げ粉であって、
でん粉、及び大豆粉の総量100質量%中、でん粉の割合が75~89質量%、大豆粉の割合が11~25質量%;
でん粉、大豆粉、及び乾燥パン粉の総量100質量%中、でん粉の割合が60~85質量%、大豆粉の割合が5~25質量%、乾燥パン粉の割合が5~25質量%;又は
でん粉、大豆粉、及び乾燥パン粉の総量100質量%中、でん粉の割合が60~85質量%、大豆粉の割合が5~25質量%、乾燥パン粉の割合が5~25質量%、小麦粉の割合が20重量%以下である。
【選択図】なし