(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】耐熱複合材料及び該耐熱複合材料を用いた炉壁
(51)【国際特許分類】
F27D 1/00 20060101AFI20240731BHJP
F27D 1/08 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
F27D1/00 G
F27D1/08
(21)【出願番号】P 2023198444
(22)【出願日】2023-11-22
【審査請求日】2024-03-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】391009419
【氏名又は名称】美濃窯業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】田中 洋介
(72)【発明者】
【氏名】中根 僚宏
(72)【発明者】
【氏名】田口 広宣
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和也
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】中国実用新案第209782669(CN,U)
【文献】実公昭63-040784(JP,Y2)
【文献】特開昭58-087233(JP,A)
【文献】特開2010-249461(JP,A)
【文献】特公昭46-039825(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F27D 1/00 - 1/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
耐熱性材料である質量比でアルミナを70%以上含む高アルミナ含有ファイバーの集積体と、加熱炉の内張り炉材として用いられている六面体の定形耐火物が複合化されて一体化されてなる複合体である、耐火用・断熱用の内張り炉材として用いられる耐熱複合材料であって、
前記六面体の定形耐火物の1つの側面と2つの平面が、前記集積体で覆われ、且つ、他の3つの側面が露出した状態で複合化されており、且つ、前記集積体で覆われた1つの側面以外の3つの側面において、前記集積体の端面と前記
定形耐火物の端面とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成してなることを特徴とする耐熱複合材料。
【請求項2】
さらに、前記複合体が複数積層された積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料であって、前記積層構造が、前記平面を覆う集積体同士が重なる方向で積層されて、積層方向に前記集積体からなる層と前記定形耐火物からなる層が連続して形成され、且つ、前記集積体で覆われた前記定形耐火物の1つの側面以外の3つの側面において、前記集積体の端面と前記
定形耐火物の端面とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成してなり、積層方向の長さが150mm以上である請求項1に記載の耐熱複合材料。
【請求項3】
前記集積体の使用温度が1600℃以上であり、前記定形耐火物の使用温度が1600℃以上である請求項1又は2に記載の耐熱複合材料。
【請求項4】
前記集積体が、嵩密度が200kg/m
3以下の高アルミナ含有ファイバーからなるブランケットであり、且つ、前記定形耐火物の嵩密度が2000kg/m
3以下である請求項1又は2に記載の耐熱複合材料。
【請求項5】
前記定形耐火物が、室温から1600℃以上の加熱状態を経て室温状態に戻るまでの焼成過程で高い残存線膨張率を示す、加熱で膨張する材料である請求項1又は2に記載の耐熱複合材料。
【請求項6】
前記複合体の材料構成が、体積比で、前記高アルミナ含有ファイバーが30~70%であり、前記定形耐火物が30%~70%である請求項1又は2に記載の耐熱複合材料。
【請求項7】
前記複合体の形状が、縦50~350mm、横50~350mm、厚み50~300mmである請求項1又は2に記載の耐熱複合材料。
【請求項8】
さらに、前記複合体が複数積層された積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料から前記定形耐火物が脱落することを防止するための脱落防止ピンが設けられており、該脱落防止ピンは、複数積層された前記複合体を構成している前記集積体と前記定形耐火物の両方を貫通した状態で配置されている請求項2に記載の耐熱複合材料。
【請求項9】
耐火用・断熱用の内張り炉材からなる炉壁であって、前記耐火用・断熱用の内張り炉材として前記請求項1又は2に記載の耐熱複合材料を複数用いてなり、且つ、炉内側に前記集積体が配置されるように構成されていることを特徴とする炉壁。
【請求項10】
耐火用・断熱用の内張り炉材からなる炉壁であって、前記耐火用・断熱用の内張り炉材として前記請求項1又は2に記載の耐熱複合材料を複数用いてなり、炉内側に前記集積体が配置され、且つ、該集積体で覆われた定形耐火物のそれぞれが垂直方向の一直線上に配置
されるように構成され
ているか、或いは、隣接する耐熱複合材
料同士における
該集積体で覆われた定形耐火物の位置が、垂直方向と水平方向が交互に配置
されるように構成されている
ことを特徴とする炉壁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、工業用加熱炉等に用いられる内張り炉材として有用な耐熱複合材料及び耐熱複合材料を用いてなる炉壁に関する。本発明は、高アルミナ含有ファイバーの集積体を効果的に利用する技術に関するが、本発明では、以下、セラミックスファイバーの集積体の代表例として「セラミックブランケット」を挙げて説明する。
【背景技術】
【0002】
従来、加熱炉や熱処理炉等の工業炉では、耐火用・断熱用の内張り炉材として、耐火物と呼ばれる耐熱材料が用いられてきた。一方、近年、従来の耐火物の代替品として、軽量性、低蓄熱性及び断熱性等の諸機能性に優れるセラミックスファイバーの集積体からなるブランケットを用いて形成した耐熱ブロックが開発され、多く用いられるようになってきている。
【0003】
セラミックブランケットからなる耐熱ブロックついては、例えば、下記に挙げるような種々の提案がされている。特許文献1では、セラミックブランケットと耐熱性クロスの積層物を、長繊維アルミナファイバー製紐状体で縫い合わせて一体化してなる耐熱ブロックが提案されている。また、特許文献2では、嵩密度が60~80kg/m3の結晶アルミナファイバーマットからなる内層体と、嵩密度が100~130kg/m3の結晶アルミナファイバーブランケットからなる外層体と、該外層体の外側に貼り付けられたガーゼとからなる3層積層体を、葛折り状(アコーディオン状)に連続的に折り畳んだセラミックファイバーブロックが提案されている。
【0004】
また、特許文献3では、結晶アルミナファイバーブランケットである外層体と、アルミナ繊維が3次元ランダムに配向し、かつ相互に絡み合う状態にある結晶アルミナファイバーマットである内層体との2層構造になっており、前記外層体が内層体の折り目部に挟み込まれた状態で内層体の外表面を覆い、該外層体の外側にクロスを貼り付けた3層積層体のセラミックファイバーブロックが提案されている。そして、結晶アルミナファイバーマットの嵩密度が50~80kg/m3で、結晶アルミナファイバーブランケットの嵩密度が100~130kg/m3であり、内層体と外層体と、外層体の外側に貼り付けられたクロスとからなる、葛折り状(アコーディオン状)に連続的に折り畳んだセラミックファイバーブロックが提案されている。
【0005】
また、特許文献4では、最高使用温度が50℃以上異なる2種類のセラミックブランケットを積層させて耐熱性を維持しつつ、低コストで製造可能な耐熱ブロックが提案されている。さらに、特許文献5では、1400℃以上の高耐熱性セラミックファイバーを40~60質量%含有し、平均粒径100nm以下の金属酸化物粒子からなる無機フィラーを40~60質量%含有してなる気孔容積が30%以上60%以下である断熱材が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-145260号公報
【文献】特許第3806395号公報
【文献】特開2007-278590号公報
【文献】特開2015-38400号公報
【文献】特開2019-78337号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、前記したような耐熱ブロックや断熱材を構成するセラミックブランケットは、高温で加熱するとセラミックファイバーの焼結により寸法収縮が発生することが知られている。そのため、セラミックブランケットを使用してなる耐熱ブロックや断熱材自体も、1600℃以上の温度で繰り返し使用すると寸法が収縮する。このことは、セラミックブランケットを使用してなる耐熱ブロックや断熱材を、1600℃以上の高温で使用する必要がある加熱炉等の内張り炉材として使用するとブロック間に隙間が発生し、その隙間から火漏れ等の不具合が発生することを意味している。従って、セラミックブランケットを使用してなる耐熱ブロックや断熱材は、前記した高い温度で使用するための炉材としては適用できない。
【0008】
一方、1600℃以上で使用される加熱炉等の内張り炉材には、高温でも寸法変化が少ない、所謂、耐火物と呼ばれる耐火れんがや、耐火断熱れんが等を用いることが一般的である。しかしながら、一般的に耐火物は、先に説明したセラミックファイバー系の材料を用いてなる耐熱ブロックと比較して熱容量が大きく、さらに熱伝導率も高いことから、加熱炉の内張り炉材として使用した場合に、省エネルギー効果が低いといった課題がある。限りある資源の有効活用が重要な社会問題となっている近年においては、エネルギー効率の向上は、改善すべき急務の課題になっている。また、一般的な耐火断熱れんがは耐熱ブロックと比較して、嵩密度が高く、施工方法が複雑で、さらに、本発明者らの検討によれば、加熱炉操業時の加熱冷却の繰り返しにより、亀裂が入り、場合によっては破片が表面から脱落するといった実用上の課題がある。また、耐火断熱れんがは、耐熱ブロックと比較して比熱が高い、即ち、それ自体を加熱するのに必要なエネルギーが高くなるため、加熱炉自体の加熱効率の低減をまねく。これらの課題を簡便に改善できれば、工業上極めて有用である。
【0009】
従って、本発明の目的は、上記した従来技術の課題に鑑みてなされたものであって、加熱炉等の内張り炉材として使用されている一般的な耐火物を別の材料と複合化させることで、従来にない優れた特性を有する耐熱複合材料を提供することである。本発明の最終的な目的は、上記した一般的な耐火物と、該一般的な耐火物に比較して、軽量で作業性に優れ、耐久にも優れ、しかも低熱容量である、耐熱ブロックに使用されている高アルミナ含有ファイバーの集積体(セラミックブランケット)を効果的に利用することで、1600℃以上の高温での使用に際しても、優れた寸法安定性を確保した耐火用・断熱用の内張り炉材(炉壁の内張材)として炉壁に効果的に使用でき、一般的な耐火断熱れんがに比較して炉壁の施工が簡便であり、亀裂が入って破片が表面から脱落するといったことも抑制できる、耐熱複合材料を提供できる有用な技術を開発することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った。その結果、耐熱ブロックに使用されるセラミックブランケットと、例えば、室温から1600℃以上の加熱状態を経て室温状態に戻るまでの焼成過程で高い残存線膨張率(即ち、熱膨張する)を示すような定形耐火物を、特定の形態となるようにして複合化してなる耐熱材料とすることで、体積収縮により寸法変化を生じるため耐熱ブロックが使用できない1600℃以上の加熱炉においても使用可能な耐熱複合材料の提供を実現でき、上記した種々の課題を解決し得ることを見出して本発明を完成するに至った。
【0011】
即ち、本発明は、下記の耐熱複合材料を提供するものである。
[1]耐熱性材料である質量比でアルミナを70%以上含む高アルミナ含有ファイバーの集積体と、加熱炉の内張り炉材として用いられている六面体の定形耐火物が複合化されて一体化されてなる複合体である、耐火用・断熱用の内張り炉材として用いられる耐熱複合材料であって、
前記六面体の定形耐火物の1つの側面と2つの平面が、前記集積体で覆われ、且つ、他の3つの側面が露出した状態で複合化されており、且つ、前記集積体で覆われた1つの側面以外の3つの側面において、前記集積体の端面と前記耐火物の端面とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成してなることを特徴とする耐熱複合材料。
【0012】
上記本発明の耐熱複合材料の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[2]さらに、前記複合体が複数積層された積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料であって、前記積層構造が、前記平面を覆う集積体同士が重なる方向で積層されて、積層方向に前記集積体からなる層と前記定形耐火物からなる層が連続して形成され、且つ、前記集積体で覆われた前記定形耐火物の1つの側面以外の3つの側面において、前記集積体の端面と前記耐火物の端面とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成してなり、積層方向の長さが150mm以上である上記[1]に記載の耐熱複合材料。
[3]前記集積体の使用温度が1600℃以上であり、前記定形耐火物の使用温度が1600℃以上である上記[1]又は[2]に記載の耐熱複合材料。
[4]前記集積体が、嵩密度が200kg/m3以下の高アルミナ含有ファイバーからなるブランケットであり、且つ、前記の定形耐火物の嵩密度が2000kg/m3以下である上記[1]~[3]のいずれか1に記載の耐熱複合材料。
[5]前記定形耐火物が、室温から1600℃以上の加熱状態を経て室温状態に戻るまでの焼成過程で高い残存線膨張率(即ち、熱膨張する)を示す、加熱で膨張する材料である上記[1]~[4]のいずれか1に記載の耐熱複合材料。
[6]前記複合体の材料構成が、体積比で、前記高アルミナ含有ファイバーが30~70%であり、前記定形耐火物が30%~70%である上記[1]~[5]のいずれか1に記載の耐熱複合材料。
[7]前記複合体の形状が、縦50~350mm、横50~350mm、厚み50~300mmである上記[1]~[6]のいずれか1に記載の耐熱複合材料。
[8]さらに、前記複合体が複数積層された積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料から前記定形耐火物が脱落することを防止するための脱落防止ピンが設けられており、該脱落防止ピンは、複数積層された前記複合体を構成している前記集積体と前記定形耐火物の両方を貫通した状態で配置されている上記[2]~[7]のいずれか1に記載の耐熱複合材料。
【0013】
本発明の別の実施形態としては、下記が挙げられる。
[9]耐火用・断熱用の内張り炉材からなる炉壁であって、前記耐火用・断熱用の内張り炉材として上記[1]~[8]のいずれか1に記載の耐熱複合材料を複数用いてなり、且つ、炉内側に前記集積体が配置されるように構成されていることを特徴とする炉壁。
【0014】
上記本発明の炉壁の好ましい形態としては、下記が挙げられる。
[10]前記複数の耐熱複合材料が、前記積層体を構成する定形耐火物が垂直方向の一直線上に配置され、或いは、隣接する耐熱複合材同士における前記積層体を構成する定形耐火物の位置が、垂直方向と水平方向が交互に配置されている上記[9]に記載の炉壁。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、1600℃以上の高温での使用に際し、加熱炉等の内張り炉材として使用されている一般的な耐火物を別の材料と複合化させることで、従来にない特性を有する耐熱複合材料の提供を実現することが可能になる。より具体的には、本発明によれば、上記した一般的な耐火物と、該一般的な耐火物に比較して、軽量で作業性に優れ、耐久にも優れ、しかも低熱容量である、耐熱ブロックに使用されているセラミックブランケットを、良好な状態に複合化することが実現され、一般的な耐火物における省エネルギー効果が低いといった課題が解決され、また、一般的な耐火断熱れんがに比較して炉壁の施工が簡便で、耐火断熱れんがに亀裂が入って破片が表面から脱落するといったことが効果的に抑制できる優れた工業上有用な耐熱複合材料の提供が可能になる。また、本発明の好ましい形態によれば、上記した効果に加え、1600℃以上の温度で繰り返し使用すると寸法が収縮するセラミックブランケットを使用したものでありながら、上記温度以上で使用した場合にも優れた寸法安定性を確保することができる、耐火用・断熱用の内張り炉材(炉壁の内張材)として炉壁に効果的に使用できる優れた耐熱複合材料の提供が可能になる。本発明の好ましい形態によれば、上記した耐熱ブロックに使用されるセラミックブランケットと、室温から1600℃以上の加熱状態を経て室温状態に戻るまでの焼成過程で高い残存線膨張率(即ち、熱膨張する)を示す定形耐火物を巧みに複合化して耐熱材料とすることで、耐熱ブロックが使用できない1600℃以上の加熱炉においても使用可能な耐熱複合材料の提供が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1A】セラミックブランケット1(集積体)と定形耐火物2を複合化した本発明の耐熱複合材料の一例の複合体を説明するための模式的な斜視図である。
【
図1B】セラミックブランケット1(集積体)と定形耐火物2を複合化した本発明の耐熱複合材料の別の一例の複合体を説明するための模式的な斜視図である。
【
図2】
図1に例示した複合体を複数積層してなる本発明の耐熱複合材料3の構成を説明するための模式的な斜視図である。
【
図3A】
図2に例示した、
図1の複合体を複数積層した積層構造を有する本発明の耐熱複合材料3の、加熱前と加熱中(1600℃)及び加熱後(室温)における集積体と定形耐火物の形状変化を説明するための模式的な断面図である。
【
図3B】
図2に例示した、
図1の複合体を複数積層した積層構造を有するブロック状の本発明の耐熱複合材料3において、定形耐火物2が脱落することをより確実に防止するための脱落防止ピン5を設けた一例を説明するための模式的な斜視図である。
【
図4】
図2に例示したブロック状の本発明の耐熱複合材料3を加熱炉の内張り炉材として使用する際の配置状態を説明するための模式的な斜視図である。複数の積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料3を加熱炉の缶体4に沿うように配置して固定することで炉壁として使用される。
【
図5】
図2に例示したブロック状の本発明の耐熱複合材料3を加熱炉の内張り炉材として使用する際の炉材の積み方の一例を説明するための模式図である。この例では、耐熱複合材料を構成するセラミックブランケット1と定形耐火物2がそれぞれ垂直方向の一直線上に並んで配置されている。
【
図6】
図2に例示したブロック状の本発明の耐熱複合材料3を加熱炉の内張り炉材として使用する際の炉材の積み方の別の一例を説明するための模式図である。この例では隣接する耐熱複合材3同士における、該耐熱複合材3を構成している集積体及び定形耐火物の位置が、垂直方向と水平方向が交互に繰り返されるように配置されている。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明を詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されず、その発明特定事項を有する全ての対象を含むものである。本発明の耐熱複合材料は、耐熱性材料である体積比でアルミナを70%以上含む高アルミナ含有ファイバーの集積体と、加熱炉の内張り炉材として用いられている六面体の定形耐火物が複合化されて一体化されてなる複合体である、耐火用・断熱用の内張り炉材として用いられる耐熱複合材料である。該耐熱複合材料は、前記六面体の定形耐火物の1つの側面と2つの平面が、前記集積体で覆われ、且つ、他の3つの側面が露出した状態で複合化されており、且つ、前記集積体で覆われた前記定形耐火物の1つの側面以外の3つの側面において、前記集積体と前記耐火物とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成してなることを特徴とする。
【0018】
上記した通り、本発明の耐熱複合材料は、本発明で規定する特定の材料からなるセラミックブランケットと、一般的に加熱炉の内張り炉材として用いられている六面体の定形耐火物(単に定形耐火物とも呼ぶ)とが複合化されて一体化されてなる。本発明の耐熱複合材料は、例えば、
図1A、
図1Bに例示したように、セラミックブランケット1と定形耐火物2を複合化させてなる複合材料であり、また、
図1Aに例示した構成の耐熱複合材料を、
図2に例示したように複数積層させて積層構造体としたブロック状のものが挙げられる。これらの詳細については後述する。まず、本発明の耐熱複合材料を構成するセラミックブランケットと定形耐火物について説明する。
【0019】
<高アルミナ含有ファイバーの集積体(セラミックブランケットを代表例とする)>
本発明では、複合化して形成した耐熱複合材料の耐熱性の観点から、耐熱性材料であるアルミナを質量比で70%以上含む高アルミナ含有ファイバー(繊維)の集積体を使用する。上記構成としたことで、最高使用温度が1600℃以上の炉内に露出する部分での使用にも耐え得る、高い耐熱性のセラミックブランケットとすることができる。最高使用温度の上限は特に限定されないが、製造コストを考慮すると最高使用温度が1800℃以下のセラミックブランケットを使用することが好ましく、1700℃以下のセラミックブランケットを使用することがさらに好ましい。
【0020】
上記したように、本発明を構成するセラミックブランケットは高アルミナ含有ファイバーの集積体であるが、本発明において「高アルミナ含有ファイバー」とは、アルミナ含有率が質量比で70%以上のアルミナ質セラミック繊維を意味する。アルミナ含有率の上限は特に限定されず、アルミナ含有率が100質量%のものを用いることもできる。本発明者らの検討によれば、製造コストと、得られる耐熱複合材料の耐熱性とのバランスを考慮すれば、80質量%以下とすることが好ましい。
【0021】
本発明を構成するセラミックブランケットの、上記アルミナ質セラミック繊維におけるアルミナ以外の成分については特に限定されない。例えばシリカ等を挙げることができ、好ましく使用できる。即ち、本発明を構成する高アルミナ含有ファイバーは、アルミナ-シリカ質のものが好ましい。さらに、本発明において使用する高アルミナ含有ファイバーが高耐熱性のアルミナ-シリカ質のものである場合、アルミナとシリカの合計含有率が、重量基準で98質量%以上であることが好ましい。また、99質量%以上であることがさらに好ましい。
【0022】
さらに、本発明の耐熱複合材料は耐火用・断熱用の内張り炉材からなる炉壁に好適に利用できるが、炉材としては低熱容量であることが好ましい。これに対し、本発明を構成するセラミックブランケットは、嵩密度が小さい、即ち、軽量であればあるほど低熱容量となり、炉材として使用した際の加熱炉の加熱効率が高くなる。このため炉材の加熱に必要になるエネルギーの削減を考慮すると、本発明を構成するセラミックブランケットは、嵩密度が200kg/m3以下である高アルミナ含有ファイバーからなるものであることが望ましい。
【0023】
本発明を構成するセラミックブランケットを形成する高耐熱性の高アルミナ含有ファイバー自体は高融点材料ではあるが、その製法上、結晶性を持たない非晶質ファイバーとなる。非晶質のファイバーは、1000℃以上の高温で加熱されると体積収縮を伴いながら結晶質ファイバーへと変化する。この体積収縮は、高耐熱性の高アルミナ含有ファイバーの集積体自体の体積収縮となるため、このような材料を加熱炉の炉材として使用すると、炉材と炉材の間に隙間が発生し火漏れの原因となる(「鉄と鋼」、第69年(1983)第16号、19~24頁参照)。この高アルミナ含有ファイバーの加熱時に生じる体積収縮は、ファイバーの材質にもよるが、約1000℃から始まり、1600℃以上になるとさらに顕著となる。このため、セラミックブランケットからなる耐熱ブロックや断熱材自体も、1600℃以上の温度で繰り返し使用すると寸法が収縮する。本発明の耐熱複合材料は、この点を、セラミックブランケットと一般的な定形耐火物とを巧みに複合化することで、セラミックブランケットの寸法が収縮する問題を改善し、1600℃以上の使用温度においても使用できる有用な耐熱複合材料の実用化を可能にしている。
【0024】
本発明を構成するセラミックブランケットの形状は特に限定されない。セラミックブランケットと複合化させて本発明の耐熱複合材料とする際に用いる、定形耐火物の形状との兼ね合いで適宜に決定すればよい。本発明の耐熱複合材料は、六面体の定形耐火物の1つの側面と2つの平面が、セラミックブランケットで覆われ、且つ、他の3つの側面が露出した状態で複合化されており、且つ、前記セラミックブランケットで覆われた1つの側面以外の定形耐火物の3つの露出した側面において、セラミックブランケットと六面体の定形耐火物とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成してなることを特徴とする。上記のようにして2種の材料が複合化されてなる本発明の耐熱複合材料を炉材に適用した場合の炉材の形状は、例えば、縦50~350mm、横50~350mm、厚み50~300mmの寸法を有するブロック形状である。従って、本発明の耐熱複合材料の形状は、この点を考慮して、上記範囲内で適宜に設計すればよい。その場合に、本発明の耐熱複合材料の単体の形態としては、
図1Aや
図1Bに例示したものが挙げられるので、この点を考慮して設計すればよい。また、本発明の耐熱複合材料を炉材に適用する場合、
図2に示したように、例えば、
図1に示した形状の単体を複数積層してブロック状にした積層構造を有するものが好適であるので、この点を考慮して、本発明の耐熱複合材料の単体の形態を決定すればよい。
【0025】
<定形耐火物>
本発明を構成する定形耐火物は、加熱炉の内張り炉材として用いられている一般的な六面体の定形耐火物(耐火れんが)である。本発明を構成する定形耐火物も、先に述べたセラミックブランケットと同様に、耐熱性の観点から使用温度が1600℃以上であることが好ましい。また、本発明を構成する定形耐火物を炉材に適用することに鑑み、炉材の低熱容量化の観点から、本発明を構成する定形耐火物は嵩密度が2000kg/m3以下のものであることが好ましい。さらには、嵩密度が1500kg/m3以下であることがより好ましい。
【0026】
また、本発明者らの検討によれば、本発明を構成する定形耐火物が、1600℃以上の加熱状態から室温状態になるまでの冷却過程で3%以上の残存線膨張率を示す耐火物である場合に、セラミックブランケットと複合化させてなる構成の本発明の耐熱複合材料において得られる本発明の効果が、より効果的なものになる。即ち、上記残存線膨張率を示す定形耐火物を適用することで、本発明の耐熱複合材料を1600℃以上の温度で使用される加熱炉の炉材とした場合に、本発明を構成するセラミックブランケットにおいて生じる体積収縮分を、該セラミックブランケットと複合化させる本発明を構成する定形耐火物が膨張することで効果的に補うことが可能になる。先に説明したように、本発明を構成するセラミックブランケットを使用してなる耐熱ブロックや断熱材を1600℃以上の高温で使用する必要がある加熱炉等の内張り炉材として使用すると、耐熱ブロック間に隙間が発生し、その隙間から火漏れ等の不具合が発生することがある。本発明者らの検討によれば、本発明を構成するセラミックブランケットと上記した特性を有する定形耐火物を、本発明で規定する状態で複合化させることで、セラミックブランケットの体積収縮に起因して生じるブロック間に生じる隙間の発生を効果的に抑制することができる。従って、特に、本発明の耐熱複合材料を1600℃以上の温度で使用される加熱炉の炉材として利用する場合は、本発明を構成する定形耐火物に、室温から1600℃以上の加熱状態を経て室温状態に戻るまでの焼成過程で高い残存線膨張率(即ち、熱膨張する)の特性のものを用いることが有用である。この場合に用いる定形耐火物の材質については、1600℃以上の耐熱温度となるような酸化物原料であればよく、特に限定されることはない。
【0027】
ここで、耐火物とは、高温度に耐え、化学的に安定な非金属無機物質或いはその製品の総称であり、材質的には酸化物系材料が多く用いられる。本発明で使用される定形耐火物は、耐火物の一種であり、一般的な耐火物の製造方法であれば作製することが可能であり特にその手法が限定されることはない。本発明の耐熱複合材料を構成する定形耐火物としては、製造コストや量産性を考慮すると、フリクションプレス等を使用したプレス成形で製造されたものであることが好ましい。
【0028】
先述したように、本発明の耐熱複合材料を、1600℃以上の温度で使用される加熱炉の炉材として使用する場合は、複合化するセラミックブランケットの体積収縮分を定形耐火物の膨張で補うことが必要になるので、この場合に用いる定形耐火物は、室温から1600℃以上の加熱状態を経て室温状態に戻るまでの焼成過程で3%以上の残存線膨張率を有するものを使用することが望まれる。定形耐火物に、1600℃以上の加熱状態から室温状態になるまでの冷却過程で3%以上の残存線膨張率を付与する方法としては、下記の方法などが挙げられる。具体的には、例えば、酸化マグネシウムのように高い残存線膨張率を示す材料を定形耐火物の原料に使用する方法や、アルミナ(Al2O3)とシリカ(SiO2)が高温で反応してムライト(3Al2O3・2SiO2)化する際の膨張を利用することなどが挙げられるが、特に限定されることはない。
【0029】
図3Aに、
図2に例示した
図1の耐熱複合材料を複数積層した構成の本発明の耐熱複合材料3の、加熱前と加熱中(1600℃)及び加熱後(室温)における形状の変化を説明するための模式的な断面図を示した。
図3Aにあるように、加熱前(室温)では、セラミックブランケットは厚み方向に収縮することはなく、寸法変化は発生しない。一方で、
図3Aに示したように、セラミックブランケットは、加熱前と比較して、加熱中(1600℃以上)及び冷却後(室温)に厚み方向に収縮する。本発明の耐熱複合材料3の好ましい形態では、このセラミックブランケット1の熱による体積収縮による寸法変化を補うために、定形耐火物2が1600℃以上の高温で膨張し、その膨張が冷却後まで残存することで、ブロック状の炉材に見かけ上の寸法変化が発生しないように構成する。
【0030】
<複合体>
添付の図面に、
図1A及び
図1Bとして例示した本発明の耐熱複合材料(複合体)は、70質量%以上のアルミナを含む高アルミナ含有ファイバーの集積体(セラミックブランケット)1と、加熱炉の内張り炉材として用いられている六面体の定形耐火物2が複合化されて一体化されている。本発明の耐熱複合材料は、
図1A及び
図1Bにある通り、六面体の定形耐火物の1つの側面と2つの平面が、前記セラミックブランケット1で覆われ、且つ、セラミックブランケット1の他の3つの側面が露出した状態で複合化されており、且つ、前記セラミックブランケット1で覆われた1つの側面以外の3つの側面において、前記セラミックブランケット1と前記六面体の定形耐火物2とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成していることを特徴とする。本発明の耐熱複合材料(複合体)の材料構成としては、体積比(体積%)で、前記高アルミナ含有ファイバーが30%~70%であり、前記定形耐火物が30%~70%であることが好ましい。本発明者らの検討によれば、体積比で、セラミックブランケット(高アルミナ含有ファイバー)が60%~40%であり、定形耐火物が40%~60%であることがより好ましい。さらには、セラミックブランケットが60%~50%であり、定形耐火物が40%~50%であることがより好ましい。この点については後述する。
【0031】
<積層体>:
さらに、
図3に示したように、本発明の耐熱複合材料は、例えば、
図1Aに例示したような複合体を複数使用して積層することでブロック状の耐熱複合材料とすることが可能である。具体的には、積層構造は、定形耐火物の前記平面を覆うセラミックブランケット同士が重なる方向で本発明の耐熱複合材料が積層されて、積層方向に前記セラミックブランケットからなる層と前記定形耐火物からなる層が連続して形成され、且つ、前記セラミックブランケットで覆われた1つの側面以外の3つの側面において、前記セラミックブランケットと前記定形耐火物とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成しており、さらに積層方向の長さが150mm以上となるように作製されたものが挙げられる。
【0032】
本発明の耐熱複合材料は、加熱炉の炉材として利用する場合における低熱容量化を考慮した場合、前記セラミックブランケットの使用比率が高いほど軽量となり有効である。一方、その場合は加熱時の体積収縮も大きくなり、炉材としての使用が困難になる傾向がある。従って、本発明の耐熱複合材料は、体積比(体積%)で、前記セラミックブランケットが30%~70%、前記定形耐火物2が70~30%の範囲となるようにして耐熱複合材料を作製することが好ましい。さらに、前記したように、体積比で、セラミックブランケット(高アルミナ含有ファイバー)が60%~40%であり、定形耐火物が40%~60%であることがより好ましい。セラミックブランケットが60%~50%であり、定形耐火物が40%~50%であることがさらに好ましい。
【0033】
最終的に本発明の耐熱複合材料を加熱炉の炉材として使用することを想定した場合、炉への施工性等を考慮すると、例えば、300mm×300mm×300mmの立方体からなるブロック状となるように、複合体の形成材料であるセラミックブランケット1や定形耐火物2の形状、単体の複合体の形状や形成材料のバランス、単体の複合体である本発明の耐熱複合材料の積層の数及び積層構造などを調整することが好ましい。
【0034】
<脱落防止ピン>:
本発明の耐熱複合材料の好ましい形態としては、
図2に示したように、例えば、
図1Aに示した形状からなる単体の複合体を複数積層して、ブロック状の積層体3とすることが挙げられる。その場合に、
図3Bに示すように、積層物であるブロック状の積層体3から定形耐火物2が脱落することを防止するため、積層体3に脱落防止ピン5を備えた構造とすることが好ましい。その場合に
図3Bに示したように、脱落防止ピン5は、セラミックブランケット1と定形耐火物2の双方を貫通するように配置され、脱落防止ピン5が両端で固定された状態となるようにすることがより好ましい。即ち、脱落防止ピン5を、定形耐火物2だけでなく、セラミックブランケット1にも通して固定することで、例えば、定形耐火物2に亀裂が発生することが起きた場合でも、炉内に破片が脱落(落下)することが有効に防止される。従って、上記のように構成すれば、加熱炉の天井に耐熱複合材料を適用することが可能となり、加熱炉の天井に施工された耐熱複合材料の耐久性の向上が図られる。
【0035】
上記で用いる脱落防止ピン5の材質は特に限定されない。但し、脱落防止ピン5は、加熱炉の操業時には600℃前後になることが想定されるため、高い耐熱性を有する材質であることが好ましい。例えば、金属等を挙げることができ、例えば、SUS310Sやインコネルなどの耐熱金属を使用することができる。しかし、これに限定されるものではない。
【0036】
また、上記で用いる脱落防止ピン5の形状も特に限定されない。例えば、丸棒状、角棒状等を挙げることができ、中でも丸棒状とすることが好ましい。脱落防止ピン5のサイズは、耐熱複合材料のサイズ等を考慮した上で、セラミックブランケット1や定形耐火物2を固定可能な強度を有するサイズのものを適宜選択して用いればよい。例えば、本発明の耐熱複合材料を、1辺300mm程度の立方体形状とする場合には、外径が6~12mmφ、長さが260~290mmのものを用いることが好ましい。脱落防止ピン5の本数も特に限定されず、各構成部材を固定するのに必要な本数だけ使用して、所望の位置に設置すればよい。即ち、少なくとも1本の脱落防止ピン5を使用すれば各構成部材を固定することができる。例えば、
図3Bに図示されているように、より安定して各構成部材を固定するためには、2本以上の脱落防止ピン5を使用することがより好ましい。
【0037】
脱落防止ピン5の配置方法は特に限定されない。例えば、予め積層体にピン挿入用の貫通孔を形成しておき、前記貫通孔に脱落防止ピン5を挿入して配置する方法を挙げることができる。但し、脱落防止ピン5が十分な強度を有する場合には、前記積層体に前記貫通孔を予め設けることなく、前記積層体に直接、脱落防止ピン5を突き刺して配置する方法を採用してもよい。
【0038】
また、前記脱落防止ピン5は、
図3Bに示されているように、その留め具として一般的なL字金物を使用することが可能であるが、特に限定はされない。さらに、L字金物には、加熱炉の缶体4の壁面と、耐熱複合材料を固定するための固定ピン5を取り付けるためにも利用されるが、いずれも一般的なものであり、これに関しても特に限定されない。
【0039】
<耐熱複合材料の炉壁への適応例>
図4は、本発明の耐熱複合材料3を加熱炉の内張り炉材として使用する場合の一例である。複数の耐熱複合材料を加熱炉の缶体4の内壁全体に沿うように配置することで炉壁として使用される。また、本発明の耐熱複合材料は、
図5に示したような積み方にすることが可能である。
図5に示した積み方の場合は、耐熱複合材料3を構成するセラミックブランケット1と定形耐火物2が、それぞれ垂直方向の一直線上に配置されて積まれた状態で壁炉を構成する。本発明の耐熱複合材料3は、
図6に示したような積み方をすることが可能である。
図6に示した積み方の場合は、隣接する耐熱複合材3同士における積層体を構成する定形耐火物2の位置が、垂直方向と水平方向が交互に配置された状態で壁炉を構成する。上記したように、本発明の耐熱複合材料3の炉材としての積み方は、構成する定形耐火物2の材質や加熱炉の操業条件によって適宜に使い分けることが可能であり、特に限定されるものではない。
【0040】
<耐熱複合材料の製造方法>
本発明の耐熱複合材料の製造方法の一例について、図を参照しながら説明する。本発明の耐熱複合材料の単体は、
図1A及び
図1Bに示したように、一般的な耐火物製造方法で作製された六面体の定形耐火物2の1つの側面と2つの平面を、シート状のセラミックブランケット2でそれぞれ覆い、且つ、定形耐火物2の他の3つの側面が露出した状態となるようにして複合化する。このようにすることで、
図1A及び
図1Bに示したように、セラミックブランケット1で覆われた1つの側面以外の定形耐火物2の露出した3つの側面において、セラミックブランケット1の端面と前記定形耐火物2の端面とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成する状態になる。上記した構成の本発明の耐熱複合材料の単体を簡便に得るためには、シート状のセラミックブランケット2の幅を、六面体の定形耐火物2の平面の縦或いは横の辺の長さと同じにする必要がある。
【0041】
次に、上記した単体の本発明の耐熱複合材料を複数用いて、ブロック状の積層体とする場合について説明する。前記したようにして得た単体の本発明の耐熱複合材料を複数用いて、
図2に示したように、定形耐火物2の平面を覆うセラミックブランケット同士を突き合わすように複数積層させることで、積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料を容易に作製することができる。
図2に示した例では、本発明の単体の耐熱複合材料を6つ用いて、積層方向の長さが150mm以上となるように作製した。
【0042】
さらに、
図3Bに示したように、
図2に示したようにして作製した耐熱複合材料3に貫通孔(不図示)を空け、貫通孔に脱落防止ピン5を挿入して、6つの単体の本発明の耐熱複合材料が積層された状態で固定されるようにした。
図3Bに示した例では、脱落防止ピン5は、L字金物によって留められて固定されており、かかる構成によって6つの単体が積層されてなる耐熱複合材料3が、脱落を生じることがなく、加熱炉の缶体に強固に固定することが実現されている。
【0043】
<耐熱複合材料の用途>
本発明の耐熱複合材料は、耐火用・断熱用の内張り炉材として好適であり、例えば、1600℃以上に加熱される加熱炉の炉壁の材料として、効果的に使用できる。
【実施例】
【0044】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。但し、本発明は、下記の実施例の構成のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
実施例1として、
図1Aに示した単体の耐熱複合材料が4つ積層されてなる、
図2に示した積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料を作製した。上記で用いた単体の耐熱複合材料は、セラミックブランケット1と定形耐火物2を、表1に示した体積割合になるように設計し、
図1Aに示したようにして複合体を作製した。この際に用いた定形耐火物2は、縦300mm×横300mm×厚み25mmである平板状のものを用いた。また、セラミックブランケット1として、厚みが25mmの、上記定形耐火物2の縦300mm×横300mm2つの平面と、300mm×25mmの1つの側面を覆うことができる形状(サイズ)のシート状材料を用いた。上記で得た積層構造を有する耐熱複合材料の、セラミックブランケット1と定形耐火物2の材料構成は、体積比で、セラミックブランケット1が70%、定形耐火物2が30%をそれぞれ占める。
【0046】
上記において、セラミックブランケット1には、耐熱温度が1600℃で、嵩密度が200kg/m3であり、1600℃での加熱による体積収縮率が3%のものを使用した。また、定形耐火物2には、耐熱温度が1600℃で、嵩密度が2000kg/m3、1600℃の加熱状態から室温状態になるまでの冷却過程での残存線膨張率が3%のものを使用した。そして、上記のセラミックブランケット1と定形耐火物2を用いて調製した単体の耐熱複合材料を4つ積層することで、300mm×325mm×300mmの略立方体形状の耐熱複合材料を作製した。これを実施例1の積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料とした。
【0047】
(実施例2~5)
実施例2~5では、実施例1の積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料の製造で用いた、先に述べたセラミックブランケット1と定形耐火物2と同様の特性の材料をそれぞれ用いた。そして、セラミックブランケット1と定形耐火物2の厚みを変えた以外は実施例1で行ったのと同様にして、セラミックブランケット1と定形耐火物2の材料構成が、体積比(体積%)で、60:40、50:50、40:60、30:70であるブロック状の耐熱複合材料をそれぞれ作製した。これらを実施例2~5の積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料とした。
【0048】
(比較例1)
比較例1では、実施例1で用いた定形耐火物と同様の特性(材質)の、300mm×325mm×300mmの形状の定形耐火物のみからなる材料を用いた。
【0049】
(評価)
先のようにして作製した実施例1~5の耐熱複合材料を加熱炉の炉材として、
図6に示した積み方で、試験用の加熱炉の炉壁を施工した。また、比較例1の定形耐火物のみのものを炉材とし、実施例の場合と同様に炉壁として加熱炉に施工した。各実施例及び比較例の材料を炉材としてそれぞれに用いて加熱炉の炉壁を施工後、それぞれの炉内を約32時間かけて1600℃まで加熱し、1600℃で4時間温度保持、約40時間かけて室温まで冷却した。そして、実施例ごとに加熱に要した燃料使用量を測定し、比較例1の炉材を施工した加熱炉において測定した燃料使用量を基準として算出した相対的な燃料使用量の指標を表1中に示した。また、それぞれの加熱炉内に施工されている配置が同じ4箇所の炉材について、実施例1~5の各耐熱複合材(炉材)については、加熱前後における上記4箇所に配置されている各耐熱複合材料の積層方向の厚みをそれぞれ測定した。比較例1の定形耐火物のみからなる炉材については、実施例の炉材と同様の方向の厚みをそれぞれ測定した。そして、測定した4箇所の炉材の平均寸法から寸法変化率をそれぞれ算出して、その結果を表1に示した。収縮をマイナスの数値で示し、膨張をプラスの数値で示した。
【0050】
【0051】
表1に示したように、比較例1の定形耐火物のみからなる炉材と比べて、すべての実施例において、実施例の炉材を用いることで加熱炉の燃料使用量を減少させることができることが確認された。即ち、本発明の耐熱複合材料を加熱炉の炉材に適用することで、加熱炉の加熱効率を向上させることができることがわかった。また、本発明の実施例の耐熱複合材料を炉材とした場合の加熱前後における寸法変化率は、表1に示したように、比較例1の定形耐火物のみからなる炉材を使用した場合に比べて、格段に改善されることが確認できた。そして、今回の実施例1~5における寸法変化率の範囲内であれば、加熱炉の操業中に火漏れすることはないと想定された。特に、寸法変化率の低減を考慮すると、セラミックブランケット(高アルミナ含有ファイバー集積体)と、定形耐火物の材料割合を体積%で、60~40:40~60とすることが効果的であることがわかった。また、燃料使用量の減少を考慮すると、セラミックブランケットと、定形耐火物の材料割合を、体積%で、60~50:40~50程度とすることがより好ましいことがわかった。
【符号の説明】
【0052】
1:高アルミナ含有ファイバーの集積体(セラミックブランケット)
2:六面体の定形耐火物
3:積層構造を有するブロック状の耐熱複合材料
4:加熱炉の缶体
5:脱落防止ピン
【要約】
【課題】一般的な耐火物と、軽量で作業性に優れ、耐久にも優れる低熱容量の高アルミナ含有ファイバーの集積体を効果的に利用し、1600℃以上の高温の使用でも優れた寸法安定性を確保した、炉壁の内張材として効果的に使用でき一般的な耐火物に比較して炉壁の施工が簡便で、亀裂が入って破片が脱落することも抑制できる耐熱複合材料の提供。
【解決手段】質量比でアルミナを70%以上含む高アルミナ含有ファイバーの集積体と、六面体の定形耐火物が一体化されてなる、耐火用・断熱用の内張り炉材として用いられる耐熱複合材料(複合体)で、前記定形耐火物の1つの側面と2つの平面が、前記集積体で覆われ、且つ、他の3つの側面が露出した状態で複合化されており、且つ、定形耐火物の集積体で覆われた1つの側面以外の3つの側面において、前記集積体の端面と前記耐火物の端面とが面一の状態で突き合わされて同一平面を形成してなる耐熱複合材料及び炉壁。
【選択図】
図1A