(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】三次元物体の付加製造方法及び装置、記憶媒体、コンピュータ機器
(51)【国際特許分類】
B29C 64/165 20170101AFI20240731BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20240731BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20240731BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20240731BHJP
B29C 64/295 20170101ALI20240731BHJP
B29C 64/393 20170101ALI20240731BHJP
【FI】
B29C64/165
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
B29C64/295
B29C64/393
(21)【出願番号】P 2023508595
(86)(22)【出願日】2021-05-25
(86)【国際出願番号】 CN2021095862
(87)【国際公開番号】W WO2022033112
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-02-07
(31)【優先権主張番号】202010802200.4
(32)【優先日】2020-08-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】519314847
【氏名又は名称】チューハイ セイルナー スリーディー テクノロジー カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】ZHUHAI SAILNER 3D TECHNOLOGY CO., LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】何 興▲バン▼
(72)【発明者】
【氏名】楊 前程
【審査官】田村 佳孝
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-502713(JP,A)
【文献】特開2017-210620(JP,A)
【文献】特表2019-521015(JP,A)
【文献】特開2016-168704(JP,A)
【文献】国際公開第2009/145069(WO,A1)
【文献】特表2019-513596(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0318250(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第101616785(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 64/165
B33Y 10/00
B33Y 30/00
B33Y 50/02
B29C 64/295
B29C 64/393
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末材料を利用して粉末材料層を形成するステップと、
層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与するステップであって、前記液体材料が前記粉末材料の少なくとも一部を溶解し、前記液体材料が重合反応の発生可能な活性成分を含
み、前記活性成分が第1活性成分及び第2活性成分を含み、前記第1活性成分及び前記第2活性成分が活性基を有し、前記第1活性成分が前記粉末材料の少なくとも一部を溶解し、前記第2活性成分が前記粉末材料を溶解しない、ステップと、
前記層印刷データに基づいて前記液体材料を前記粉末材料層に付与するステップの前に、前記粉末材料層を予熱するステップと、
エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料の自体が重合反応せず且つ前記活性成分と重合反応せず、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を得るステップと、を含む、
ことを特徴とする三次元物体の付加製造方法。
【請求項2】
前記粉末材料は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン-アクリレートコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリオレフィン、前記活性成分によって溶解されることができるブロックコポリマー、前記活性成分によって溶解されることができるグラフトコポリマー、ヒドロキシル基を含有するポリビニルアルコール、セルロース、変性セルロースから選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記活性成分は重合反応に関与することができる活性基を有し、前記活性基は、炭素-炭素二重結合、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チイラン基、イソシアネート基、カーボネート系基、エポキシ基、環状アミド基、環状ラクトン構造、環状酸無水物構造、環状アセタール構造のうちの少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記活性成分の前記液体材料における質量比率は50%~100%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記活性成分は活性基を有する第1活性成分及び第2活性成分を含み、前記第1活性成分の前記液体材料における質量比率は10%~95%であり、前記第2活性成分の前記液体材料における質量比率は0%~90%である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1活性成分は炭素-炭素二重結合を含有するモノマー、エポキシ基含有物質とエポキシ基の開環重合を促進する物質との組成物、液体の環状ラクトン、チオ複素環化合物、カーボネート系化合物、環状アミド系化合物から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項
1又は
5に記載の方法。
【請求項7】
前記第2活性成分は、炭素-炭素二重結合を含有するモノマー及び/又はプレポリマー、エポキシ基含有の希釈剤及び/又はプレポリマー、エポキシ基の開環重合を促進するモノマー及び/又はプレポリマー、ポリオール、固体の環状ラクトン、チオ複素環化合物、環状アミド系化合物から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項
1又は
5に記載の方法。
【請求項8】
前記第1活性成分及び/又は前記第2活性成分は膨潤性基を有し、前記膨潤性基は重合反応に関与することができ、前記膨潤性基はスピロ環状エーテル構造、スピロオルトカーボナート構造、スピロ環状オルトエステル構造、ビシクロオルトエステル構造、ビシクロラクトン構造から選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項
1に記載の方法。
【請求項9】
前記第1活性成分及び/又は前記第2活性成分は活性基の組み合わせを有し、前記活性基の組み合わせは重合反応において前記膨潤性基を形成することができる、
ことを特徴とする請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
前記活性基の組み合わせはポリオール系基とオルト炭酸ジエステル系基の組み合わせ、エポキシ基と環状ラクトン構造の組み合わせのいずれか1種を含む、
ことを特徴とする請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記液体材料はさらに第1助剤を含み、前記第1助剤はラジカル開始剤、アニオン開始剤、カチオン開始剤及び触媒のうちの少なくとも1種を含み、及び/又は、前記第1助剤の前記液体材料における質量比率は0%~10%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記液体材料はさらに第2助剤を含み、前記第2助剤はレベリング剤、消泡剤、重合禁止剤、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤のうちの少なくとも1種を含み、及び/又は、前記第2助剤の前記液体材料における質量比率は0.1%~30%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記液体材料はさらに着色剤を含み、前記着色剤の前記液体材料における質量比率は0%~10%である、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項14】
層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与するステップの後、前記方法は、さらに、
前記液体材料が付与された後の粉末材料層を加熱し、前記液体材料における活性成分が前記粉末材料を溶解することを促進するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記エネルギーは放射エネルギー、熱エネルギーのうちの少なくとも1種を含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項16】
エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を取得するステップの後、前記方法は、さらに、
粉末材料層の形成及び液体材料の付与を繰り返し、且つ液体材料が少なくとも部分的に付与された粉末材料層にエネルギーを供給し、取得した複数のスライス層を層ごとに重ねて三次元物体を形成するステップを含む、
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項17】
三次元物体を形成した後に、前記方法は、さらに、
形成された三次元物体を熱処理し、前記三次元物体の機械的強度を向上させるステップを含む、
ことを特徴とする請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
上記請求項1~
16のいずれか一項に記載の三次元物体の付加製造方法を実施するために用いられる三次元物体の付加製造装置であって、
粉末材料を供給して粉末材料層を形成するために用いられる粉末供給部材と、
前記粉末材料層を担持するために用いられる成形プラットフォームと、
層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与するために用いられる材料ディスペンサであって、前記液体材料が前記粉末材料の少なくとも一部を溶解し、前記液体材料が重合反応の発生可能な活性成分を含む材料ディスペンサと、
エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料の自体が重合反応せず且つ前記活性成分と重合反応せず、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を得るために用いられるエネルギー供給装置と、を含む、
ことを特徴とする三次元物体の付加製造装置。
【請求項19】
前記三次元物体の付加製造装置は、さらに、前記成形プラットフォームに接続され、前記成形プラットフォームを駆動して垂直方向に上昇又は下降させる昇降機構を含む、
ことを特徴とする請求項
18に記載の装置。
【請求項20】
前記三次元物体の付加製造装置は、さらに予熱部材及び/又は加熱部材を含み、前記予熱部材は前記粉末材料層を予熱するために用いられ、前記加熱部材は前記液体材料を付与した後の前記粉末材料層を加熱し、前記液体材料における活性成分が前記粉末材料を溶解することを促進するために用いられる、
ことを特徴とする請求項
18又は
19に記載の装置。
【請求項21】
前記エネルギー供給装置、前記予熱部材及び前記加熱部材はそれぞれ紫外線ランプ、赤外線ランプ、マイクロ波放射器、加熱ワイヤ、加熱シート、加熱プレートから選択される少なくとも1種である、
ことを特徴とする請求項
20に記載の装置。
【請求項22】
前記三次元物体の付加製造装置は、さらに、前記粉末材料層の温度を監視するために用いられる温度モニタを含む、
ことを特徴とする請求項
20に記載の装置。
【請求項23】
前記三次元物体の付加製造装置は、さらに、前記粉末供給部材、前記材料ディスペンサ、前記エネルギー供給装置、前記予熱部材、前記加熱部材、前記温度モニタのうちの少なくとも1つの動作を制御するために用いられるコントローラを含む、
ことを特徴とする請求項
22に記載の装置。
【請求項24】
非一時的なコンピュータで読み取り可能な記憶媒体であって、前記記憶媒体は記憶されたプログラムを含み、前記プログラムが実行されるとき、前記記憶媒体の所在する機器を制御して請求項1~
17のいずれか一項に記載の三次元物体の付加製造方法を実行させる、
ことを特徴とする非一時的なコンピュータで読み取り可能な記憶媒体。
【請求項25】
メモリ、プロセッサ及び前記メモリに記憶され且つ前記プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含むコンピュータ機器であって、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを実行するとき、請求項1~
17のいずれか一項に記載の三次元物体の付加製造方法を実現する、
ことを特徴とするコンピュータ機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は三次元物体成形技術分野に関し、特に三次元物体の付加製造方法及び装置、記憶媒体、コンピュータ機器に関する。
【背景技術】
【0002】
三次元物体の付加製造技術は、その主な過程が三次元物体のデジタルモデルを取得し、且つ前記デジタルモデルに対してスライス階層化を行い及び各スライス層に対してデータ処理及び変換を行って各スライス層の印刷データを取得し、印刷装置はスライス層の印刷データに基づいて層ごとに印刷し且つ重ねて三次元物体を製造することである。
【0003】
既存の三次元物体の付加製造技術は、インクジェット印刷技術及び粉末とインクジェット印刷とを組み合わせた技術を含む。そのうち、インクジェット印刷技術は主に支持プラットフォームにおいて印刷ヘッドが印刷データとも呼ばれる三次元物体の層パターン化データに基づいて、感光性樹脂材料を選択的に噴射し、放射源が既に噴射された感光性樹脂材料を照射して硬化した層を形成し、しかしながら、インクジェット印刷技術において材料の選択範囲が比較的狭く、高強度の物体を製造することが困難であり、それの工業分野、宇宙分野における応用を制限する。
【0004】
従来の粉末とインクジェット印刷とを組み合わせる技術は、粉末材料層において印刷ヘッドが三次元物体の層印刷データに基づいて液体材料を選択的に噴射し、そのうち、粉末材料に第1活性成分を含有し、液体材料に第2活性成分を含有し、第1活性成分と第2活性成分が接触して化学反応が発生し、それによって硬化したスライス層を形成する。しかしながら、このような成形方式には材料の選択範囲が比較的狭く、且つ粉末材料が化学反応に関与するため、反応の不均一による成形精度の低下が起こりやすい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の実施例は三次元物体の付加製造方法及び装置、記憶媒体、コンピュータ機器を提供し、三次元物体の機械的強度を効果的に向上させ、三次元物体の空隙率を低減させ、三次元物体の緻密度を高めることができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1態様において、本願の実施例は三次元物体の付加製造方法を提供し、前記方法は、
粉末材料を利用して粉末材料層を形成するステップと、
層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与し、前記液体材料が前記粉末材料の少なくとも一部を溶解し、前記液体材料が重合反応の発生可能な活性成分を含むステップと、
エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料の自体が重合反応せず且つ前記活性成分と重合反応せず、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を得るステップと、を含む。
【0007】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記粉末材料は、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン-アクリレートコポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリオレフィン、前記活性成分によって溶解されることができるブロックコポリマー、前記活性成分によって溶解されることができるグラフトコポリマー、ヒドロキシル基を含有するポリビニルアルコール、セルロース、変性セルロースから選択される少なくとも1種である。
【0008】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記活性成分は重合反応に関与することができる活性基を有し、前記活性基は炭素-炭素二重結合、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チイラン基、イソシアネート基、カーボネート基、エポキシ基、環状アミド基、環状ラクトン構造、環状酸無水物構造、環状アセタール構造のうちの少なくとも1種を含む。
【0009】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記活性成分は第1活性成分を含み、前記第1活性成分は活性基を有し、前記第1活性成分は前記粉末材料の少なくとも一部を溶解する。
【0010】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記活性成分はさらに第2活性成分を含み、前記第2活性成分は活性基を有し、前記第2活性成分は前記粉末材料を溶解しない。
【0011】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記活性成分の前記液体材料における質量比率は50%~100%である。
【0012】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記活性成分は活性基を有する第1活性成分及び第2活性成分を含み、前記第1活性成分の前記液体材料における質量比率は10%~95%であり、前記第2活性成分の前記液体材料における質量比率は0%~90%である。
【0013】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記第1活性成分は、炭素-炭素二重結合を含有するモノマー、エポキシ基含有物質とエポキシ基の開環重合を促進する物質との組成物、液体の環状ラクトン、チオ複素環化合物、カーボネート系化合物、環状アミド系化合物から選択される少なくとも1種である。
【0014】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記第2活性成分は、炭素-炭素二重結合を含有するモノマー及び/又はプレポリマー、エポキシ基含有の希釈剤及び/又はプレポリマー、エポキシ基の開環重合を促進するモノマー及び/又はプレポリマー、ポリオール、固体の環状ラクトン、チオ複素環化合物、環状アミド系化合物から選択される少なくとも1種である。
【0015】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記第1活性成分及び/又は前記第2活性成分は膨潤性基を有し、前記膨潤性基は重合反応に関与することができ、前記膨潤性基はスピロ環状エーテル構造、スピロオルトカーボナート構造、スピロ環状オルトエステル構造、ビシクロオルトエステル構造、ビシクロラクトン構造から選択される少なくとも1種である。
【0016】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記第1活性成分及び/又は前記第2活性成分は活性基の組み合わせを有し、前記活性基の組み合わせは重合反応において前記膨潤性基を形成することができる。
【0017】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記活性基の組み合わせはポリオール基とオルト炭酸ジエステル系基の組み合わせ、エポキシ基と環状ラクトン構造の組み合わせのいずれか1種を含む。
【0018】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記液体材料はさらに第1助剤を含み、前記第1助剤はラジカル開始剤、アニオン開始剤、カチオン開始剤及び触媒のうちの少なくとも1種を含み、及び/又は、前記第1助剤の前記液体材料における質量比率は0%~10%である。
【0019】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記液体材料はさらに第2助剤を含み、前記第2助剤はレベリング剤、消泡剤、重合禁止剤、界面活性剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤のうちの少なくとも1種を含み、及び/又は、前記第2助剤の前記液体材料における質量比率は0.1%~30%である。
【0020】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記液体材料はさらに着色剤を含み、前記着色剤の前記液体材料における質量比率は0%~10%である。
【0021】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与するステップの前に、前記方法は、さらに、
前記粉末材料層を予熱するステップを含む。
【0022】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与するステップの後、前記方法は、さらに、
前記液体材料が付与された後の粉末材料層を加熱し、前記液体材料における活性成分が前記粉末材料を溶解することを促進するステップを含む。
【0023】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記エネルギーは放射エネルギー、熱エネルギーのうちの少なくとも1種を含む。
【0024】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を取得するステップの後、前記方法は、さらに、
粉末材料層の形成及び液体材料の付与を繰り返し、且つ液体材料が少なくとも部分的に付与された粉末材料層にエネルギーを供給し、取得した複数のスライス層を層ごとに重ねて三次元物体を形成するステップを含む。
【0025】
第1態様に関連して、実行可能な一実施形態において、三次元物体を形成した後、前記方法は、さらに、形成された三次元物体を熱処理し、前記三次元物体の機械的強度を向上させるステップを含む。
【0026】
第2態様において、本願の実施例は三次元物体の付加製造装置を提供し、上記三次元物体の付加製造方法を実施するために用いられ、装置は、
粉末材料を供給して粉末材料層を形成するために用いられる粉末供給部材と、
前記粉末材料層を担持するために用いられる成形プラットフォームと、
層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与するために用いられる材料ディスペンサであって、前記液体材料が前記粉末材料の少なくとも一部を溶解し、前記液体材料が重合反応の発生可能な活性成分を含む材料ディスペンサと、
エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料の自体が重合反応せず且つ前記活性成分と重合反応せず、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を得るために用いられるエネルギー供給装置と、を含む。
【0027】
第2態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記三次元物体の付加製造装置は、さらに、前記成形プラットフォームに接続され、前記成形プラットフォームを駆動して垂直方向に上昇又は下降させる昇降機構を含む。
【0028】
第2態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記三次元物体の付加製造装置は、さらに予熱部材及び/又は加熱部材を含み、前記予熱部材は前記粉末材料層を予熱するために用いられ、前記加熱部材は前記液体材料を付与した後の前記粉末材料層を加熱し、前記液体材料における活性成分が前記粉末材料を溶解することを促進するために用いられる。
【0029】
第2態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記エネルギー供給装置、前記予熱部材及び前記加熱部材はそれぞれ紫外線ランプ、赤外線ランプ、マイクロ波放射器、加熱ワイヤ、加熱シート、加熱プレートから選択される少なくとも1種であり得る。
【0030】
第2態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記三次元物体の付加製造装置は、さらに、前記粉末材料層の温度を監視するために用いられる温度モニタを含む。
【0031】
第2態様に関連して、実行可能な一実施形態において、前記三次元物体の付加製造装置は、さらに、前記粉末供給部材、前記材料ディスペンサ、前記エネルギー供給装置、前記予熱部材、前記加熱部材、前記温度モニタのうちの少なくとも1つの動作を制御するために用いられるコントローラを含む。
【0032】
第3態様において、本願の実施例は非一時的なコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供し、前記記憶媒体は記憶されたプログラムを含み、前記プログラムが実行されるとき前記記憶媒体の所在する機器を制御して上記三次元物体の付加製造方法を実行させる。
【0033】
第4態様において、本願の実施例は、メモリ、プロセッサ及び前記メモリに記憶され且つ前記プロセッサで実行可能なコンピュータプログラムを含むコンピュータ機器を提供し、前記プロセッサが前記コンピュータプログラムを実行するとき上記三次元物体の付加製造方法を実現する。
【発明の効果】
【0034】
本願の技術的手段は以下の有益な効果を少なくとも有する。本願の実施例の提供する三次元物体の付加製造方法及び装置、記憶媒体、コンピュータ機器は、粉末材料層に活性成分を含む液体材料を付与し、活性成分は粉末材料の少なくとも一部を溶解し、且つ前記活性成分は重合反応して高分子ポリマーを形成し、形成された高分子ポリマーは粉末材料とブレンドを形成し、特に溶解された粉末材料と分子レベルの混合を達成し、高分子合金を形成し、粉末材料の間、粉末材料と活性成分のポリマーの間、成形された三次元物体のスライス層の間にいずれも良好な接続作用を有する。また、形成された高分子ポリマーは粉末材料と混合して界面結合が良好な「海-島構造」又は均一相構造を得ることができ、三次元物体の機械的強度を向上させる。
【0035】
本願の液体材料における活性成分は粉末材料の間の隙間を充填し、粉末材料を溶解し、さらに三次元物体内部の空隙率を低減させ、三次元物体の緻密度を向上させる。活性成分は重合反応して高分子ポリマーを形成して粉末材料と分子レベルの混合を達成し、無色又は淡色透明の三次元物体を得やすい。
【0036】
本願の液体材料における活性成分は重合反応して三次元物体の層を形成し及び製造された三次元物体に小分子物質の残留がほとんどなく、使用過程に小分子物質の析出もほとんどなく、安全で環境にやさしい要求を達成することができる。
【0037】
本願においてさらに液体材料の噴射量を調整することにより、異なる領域の異なる性能の三次元物体を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
本願の実施例における技術的解決手段をより明確に説明するために、以下は実施例の説明に用いる必要な図面を簡単に紹介し、明らかなように、以下の説明における図面は単に本願のいくつかの実施例であり、当業者にとって、創造的な労働をしない前提で、さらにこれらの図面に基づいて他の図面を取得することができる。
【
図1】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の付加製造方法のフローチャートである。
【
図2】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の付加製造装置の構造概略図である。
【
図3】本願の別の実施例における三次元物体の付加製造方法のフローチャートである。
【
図4a】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の形成過程の構造概略図である。
【
図4b】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の形成過程の構造概略図である。
【
図4c】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の形成過程の構造概略図である。
【
図4d】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の形成過程の構造概略図である。
【
図4e】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の形成過程の構造概略図である。
【
図4f】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の形成過程の構造概略図である。
【
図4g】本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の形成過程の構造概略図である。
【
図5】本願の実施例の提供する記憶媒体の構造概略図である。
【
図6】本願の実施例の提供するコンピュータ機器の構造概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本願の技術的解決手段をよりよく理解するために、以下は図面を参照して本願の実施例を詳細に説明する。
【0040】
説明された実施例は本願の実施例の一部に過ぎず、全ての実施例ではないことは明らかである。本願における実施例に基づき、当業者が創造的な労働をしない前提で得た全ての他の実施例は、いずれも本願の保護範囲に属する。
【0041】
本願の実施例で使用される用語は、特定の実施例を説明することのみを目的とし、本願を限定することを意図しない。本願の実施例及び添付の特許請求の範囲で使用される単数形の「1種」、「前記」及び「当該」はまた、文脈が他の意味を明確に指示しない限り、複数形を含むことが意図される。
【0042】
理解すべきものとして、本明細書で使用される用語「及び/又は」は関連対象を説明する関連関係のみであり、3種類の関係が存在することを示し、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在する場合と、AとBが同時に存在する場合と、Bが単独で存在する場合とを示すことができる。なお、本文において記号「/」は、一般的に前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0043】
図1は本実施例の提供する三次元物体の付加製造方法のフローチャートであり、
図1を参照すると、本実施例は三次元物体の付加製造方法を提供し、以下のステップS10~S30を含む。
【0044】
ステップS10において、粉末材料を利用して粉末材料層を形成する。
【0045】
ステップS20において、層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与し、前記液体材料が前記粉末材料の少なくとも一部を溶解し、前記液体材料が重合反応の発生可能な活性成分を含む。
【0046】
ステップS30において、エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料の自体が重合反応せず且つ前記活性成分と重合反応せず、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を得る。
【0047】
本解決手段において、液体材料における活性成分は重合反応して高分子ポリマーを形成し、形成された高分子ポリマーは粉末材料とブレンドを形成し、特に液体材料に溶解された粉末材料と分子レベルの混合を達成し、高分子合金を形成し、粉末材料の間、粉末材料と活性成分のポリマーの間、成形された三次元物体のスライス層の間にいずれも良好な接続作用を有し、ブレンドは「海-島構造」又は均一相構造を呈し、三次元物体の機械的強度を向上させることができる。
【0048】
なお、海-島構造はブレンドの二相系であり、そのうち、一相は連続相であり、一相は分散相であり、粒子状の粉末材料は連続的なポリマーに分散し、強い接続を形成し、三次元物体の機械的強度を向上させることができる。
【0049】
具体的には、粉末材料は粉末状の材料粒子であり、液体材料における活性成分と重合反応せず、粉末材料の自体も重合反応しない。任意選択的に、粉末材料はポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル(PVC)、ポリアクリロニトリル、アクリロニトリル-スチレン-アクリレートコポリマー(ASA)、ポリアミド(PA)、ポリエステル、ポリウレタン(PU)、ポリ(メタ)アクリレート、ポリフッ化ビニル、塩素化ポリオレフィン、前記活性成分によって溶解されることができるブロックコポリマー、前記活性成分によって溶解されることができるグラフトコポリマー、ヒドロキシル基を含有するポリビニルアルコール(PVA)、セルロース、変性セルロースから選択される少なくとも1種である。
【0050】
本実施例における粉末材料の融点又は溶融温度は60℃~300℃とすることができる。粉末材料の粒子形状及び粒子サイズは特に限定されない。本実施例の提供する粉末材料は粉末材料層を形成するとき、粉末材料の流動性は使用要求を満たすことができ、粉末材料の間に形成された隙間は付与された液体材料で満たすことができ、且つ付与された液体材料は粉末材料の表面を湿潤することができ及び/又は少なくとも一部の粉末材料は液体材料に溶解することができる。
【0051】
任意選択的に、粉末材料の製造プロセスの違いにより、本実施例における粉末材料は球状、樹枝状、シート状、ディスク状、針状及び棒状等の形状であってもよい。粉末材料の平均粒径は1μm~400μmであり、例えば、1μm、5μm、10μm、30μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm又は400μmであってもよく、好ましくは、粉末材料の平均粒径は30μm~200μmである。粉末材料中の粒子隙間はおよそ5nm~100μmであり、例えば、5nm、10nm、100nm、250nm、500nm、1μm、5μm、10μm、25μm、50μm、75μm又は100μmであってもよいが、ここでは限定しない。本実施例における粉末材料の粒子間の隙間は5nm~100μmの範囲であり、粉末材料層に液体材料を選択的に付与する場合、隙間を介して液体材料が粉末材料層の内部に速やかに浸透し及び一部を表層に残留し、それにより選択された領域内の粉末材料の表面を湿潤し、且つ粉末材料を少なくとも部分的に溶解することができる。なお、本実施例における溶解とは、全く溶解しない場合を除く全ての可能な場合を意味する。
【0052】
任意選択的に、粉末材料層の厚さは10μm~500μmであり、例えば、10μm、25μm、50μm、75μm、100μm、125μm、150μm、200μm、300μm、400μm又は500μmであってもよい。粉末材料層の厚さは、50μm~150μmであることが好ましい。理解できるように、粉末材料層の厚さが薄い場合、解像度の高い物体を形成することができるが、物体の製造にかかる時間が大幅に長くなり、製造コストが高くなり、粉末材料層の厚さが厚い場合、液体材料が粉末材料を浸潤する時間が長くなり、且つ製造される物体の解像度が低下し、予想効果を達成することが困難になる。
【0053】
本願における粉末材料はさらに添加剤を含むことができ、前記添加剤は流動助剤、フィラーのうちの少なくとも1種を含む。ここで、流動助剤は粉末材料の流動性を改善するために用いられ、流動助剤は、例えば、シリカ、タルク等であってもよく、フィラーは三次元物体の機械的強度を向上させるために用いられ、フィラーは、例えば、グラフェン、カーボンナノチューブ、ガラス繊維、カオリン等であってもよく、本実施例では限定されない。
【0054】
本実施例において、液体材料は重合反応が発生可能な活性成分を含み、前記活性成分は粉末材料の少なくとも一部を溶解する。好ましくは、前記活性成分は前記活性成分と接触する粉末材料を完全に溶解する。
【0055】
また、液体材料における活性成分は重合反応に関与することができる活性基を有し、前記活性基は炭素-炭素二重結合、ヒドロキシル基、カルボキシル基、チイラン基、イソシアネート基、カーボネート基、エポキシ基、環状アミド基、環状ラクトン構造、環状酸無水物構造、環状アセタール構造のうちの少なくとも1種を含む。なお、活性成分と粉末材料とは重合反応しない。本実施例において、液体材料の全質量を100%で計量し、前記活性成分の前記液体材料における質量比率は50%~100%である。
【0056】
前記活性成分は第1活性成分を含み、前記第1活性成分は活性基を有し、前記第1活性成分は前記粉末材料の少なくとも一部を溶解する。具体的には、第1活性成分は1つの溶解可能な粉末材料のみを含む物質であってもよく、又は複数の溶解可能な粉末材料を含む物質の混合物であってもよく、複数の物質は粉末材料に対する溶解度が異なっても同じであってもよい。
【0057】
なお、本実施例において、前記溶解とは、全く溶解しない場合を除く全ての可能な場合を意味する。例えば、1gの粉末材料を100gの活性成分に入れると、0gよりも多い粉末材料が溶解し、且つ最大1gの粉末材料が溶解する。好ましくは、第1活性成分は粉末材料を完全に溶解する。前記溶解は常温に限定されず、加熱及び/又は撹拌の場合に実現される活性成分が粉末材料を溶解することであってもよい。前記溶解は一次溶解に限定されず、活性成分が粉末材料と接触したときにゆっくりと溶解するような何回かに分けて段階的な溶解であってもよく、粉末材料を加熱して溶解速度を速めることができる。
【0058】
本実施例において、液体材料の全質量を100%で計量し、前記第1活性成分の前記液体材料における質量比率は10%~95%である。例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は95%であってもよく、当然のことながら、その質量比率は実際の使用状況に応じて配合してもよく、ここでは限定しない。好ましくは、前記第1活性成分の前記液体材料における質量比率は30%~95%である。本実施例において第1活性成分の液体材料における質量比率は30%以上であり、液体材料における第1活性成分の比率を向上させることによって第1活性成分の粉末材料に対する溶解速度及び溶解程度を向上させることができ、それにより印刷物体の機械的強度を向上させる。
【0059】
前記第1活性成分は炭素-炭素二重結合を含有するモノマー、エポキシ基含有物質とエポキシ基の開環重合を促進する物質との組成物、環状ラクトン、チオ複素環化合物、カーボネート系化合物、環状アミド系化合物から選択される少なくとも1種であってもよい。具体的には、前記炭素-炭素二重結合含有のモノマーは(メタ)アクリレート系、ビニルエーテル系、アリルエーテル系、スチレン、アクリロイルモルホリン、N-ビニルピロリドン等であってもよい。前記エポキシ基含有物質とエポキシ基の開環重合を促進する物質との組成物は、エポキシ希釈剤と、ヒドロキシル基を含有する小分子及びヒドロキシル基を含有するプレポリマーのうち少なくとも1種と、を含む組成物であってもよいし、エポキシ希釈剤と、カルボキシル基を含有する小分子及びカルボキシル基を含有するプレポリマーのうち少なくとも1種と、を含む組成物であってもよい。前記環状ラクトンは液体の環状ラクトンであり、γ-ブチロラクトン、δ-バレロラクトン、ε-カプロラクトン等であってもよく、前記チオ複素環化合物はチオ複素環プロパン、チオ複素環ブタン等であってもよく、前記カーボネート系化合物はジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート等であってもよく、環状アミド系化合物はカプロラクタム等であってもよい。
【0060】
例示的に、第1活性成分はスチレン又はγ-ブチロラクトンであってもよく、粉末材料はスチレン又はγ-ブチロラクトンに溶解されることができるポリスチレンであってもよい。
【0061】
第1活性成分はさらに(メタ)アクリレート系モノマーであってもよく、粉末材料は(メタ)アクリレート系モノマーに溶解されるポリ(メタ)アクリレート、セルロース、変性セルロース、ヒドロキシル基を含有するポリビニルアルコール、ポリエステル、ポリウレタン、変性ポリアミド等であってもよい。
【0062】
第1活性成分はさらにアクリロイルモルホリンであってもよく、粉末材料はアクリロイルモルホリンによって部分的に溶解されることができるポリウレタン、セルロース、変性セルロース、ヒドロキシル基を含有するポリビニルアルコール等であってもよい。
【0063】
第1活性成分は、さらに、エピクロロヒドリン、エポキシ希釈剤であってもよく、粉末材料は、さらに、エピクロロヒドリン又はエポキシ希釈剤に溶解されることができるポリカーボネート、変性ポリアミド、セルロースエステル、セルロースエーテル等であってもよい。
【0064】
第1活性成分はγ-ブチロラクトンであってもよく、粉末材料はγ-ブチロラクトンに溶解されることができるポリアクリロニトリル、酢酸繊維、ポリメチルメタクリレート、ポリフッ化ビニル、及びポリスチレン等であってもよい。
【0065】
第1活性成分は、さらに、ε-カプロラクトンであってもよく、粉末材料は、さらに、ε-カプロラクトンに溶解されることができる塩素化ポリオレフィン、ポリウレタン等であってもよい。
【0066】
さらに、前記活性成分はさらに第2活性成分を含むことができ、前記第2活性成分は活性基を有し、前記第2活性成分は前記粉末材料を溶解せず、即ち、第2活性成分は粉末材料を全く溶解しない。任意選択的に、第2活性成分は、それ自体で重合反応することができ、又は第1活性成分と一緒に重合反応に関与することができる。
【0067】
本実施例において、液体材料の全質量を100%で計量し、前記第2活性成分の前記液体材料における質量比率は0%~90%である。例えば0%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%又は90%であってもよく、当然のことながら、その質量比率は実際の使用状況に応じて配合してもよく、ここでは限定しない。好ましくは、前記第2活性成分の前記液体材料における質量比率は20%~70%である。液体材料における第2活性成分の比率を制御することにより、第1活性成分が粉末材料を溶解することを保証する前提で、第2活性成分は第1活性成分と性能相補を形成し、三次元物体は第1活性成分のみを含有する場合より良い性能を有し、例えば、収縮率を低下させる。なお、三次元物体の付加製造過程において、第2活性成分を粉末材料の粒子間又は粉末粒子内部の空隙に充填することができ、成形物体の空隙率を低減させ、物体の成形密度を向上させる。さらに、第2活性成分は、三次元物体が第1活性成分のみを含有する場合より良い性能を有するように、さらに第1活性成分と性能相補を形成することもできる。
【0068】
具体的な実施例において、前記第2活性成分は、炭素-炭素二重結合を含有するモノマー及び/又はプレポリマー、エポキシ基含有の希釈剤及び/又はプレポリマー、エポキシ基の開環重合を促進するモノマー及び/又はプレポリマー、ポリオール、環状ラクトン、チオ複素環化合物、環状アミド系化合物から選択される少なくとも1種である。
【0069】
例示的に、前記炭素-炭素二重結合を含有するプレポリマーは、例えば、エポキシ又は(変性)アクリレート系プレポリマー、ポリエステルアクリレート系プレポリマー、ポリウレタンアクリレート系プレポリマー、純アクリレート系プレポリマー等であってもよい。前記エポキシ基含有のプレポリマーは、例えば、E-51、E-41等であってもよく、前記ポリオールプレポリマーは、例えば、ポリエステルジオール、ポリエーテルジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリカーボネートジオール等であってもよい。環状ラクトンは、例えば、ラクチド、グリコリド等であってもよく、環状ラクトン自体が固体であり、溶解力が低い。環状アセタール構造を有する一部の化合物、例えばメタホルムアルデヒドは、それ自体が固体である。(メタ)アクリレート系モノマーはその構造が異なるため、ポリマーに対する溶解能力が異なり、例えば、アクリル酸イソボルニル、メタクリル酸イソボルニル、アクリル酸ラウリル、メタクリル酸ラウリル、シクロトリメチロールプロパンホルマールアクリレート等はポリウレタン系粉末に対する溶解効果が低く、基本的に溶解しない。
【0070】
さらに、前記第1活性成分及び/又は前記第2活性成分は膨潤性基を有し、前記膨潤性基は重合反応に関与することができ、前記膨潤性基はスピロ環状エーテル構造、スピロオルトカーボナート構造、スピロ環状オルトエステル構造、ビシクロオルトエステル構造、ビシクロラクトン構造から選択される少なくとも1種である。例えば、膨潤性基を含有する活性成分は、3,9-ジエチル-3,9-プロペノキシメチル-1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、3,9-ジヒドロキシエチル-3’9’-ジフェニルメチル-1,5,7,11-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン等であってもよい。
【0071】
又は、前記第1活性成分及び/又は前記第2活性成分は活性基の組み合わせを有し、前記活性基の組み合わせは重合反応において前記膨潤性基を形成することができる。
【0072】
前記活性基の組み合わせはポリオール系基とオルト炭酸ジエステル系基の組み合わせ、エポキシ基と環状ラクトン構造の組み合わせのいずれか1種を含む。
【0073】
理解されるように、第1活性成分及び/又は第2活性成分は膨張性基又は膨張性基を形成することができる活性基の組み合わせを有し、第1活性成分及び/又は第2活性成分が重合反応する過程において、膨張性基も化学反応し、形成されたポリマーの体積を膨張させ、硬化過程による物体の体積収縮を引き起こさず、最終的に成形された三次元物体の寸法精度がより高い。また膨張性基による体積膨張は粉末材料の空隙率を低減することができ、ポリマー粉末を緻密化させ、物体の力学的性能と機械的強度を向上させる。
【0074】
本実施例において、第1活性成分及び/又は第2活性成分の分子構造にさらに重合反応に関与しない機能性基を含むことができ、機能性基は親水性基であってもよく、理解できるように、親水性基は第1活性成分及び/又は第2活性成分の水溶性を向上させることができる。具体的には、親水性基はヒドロキシル基、カルボキシル基等であってもよい。機能性基はさらにリン酸エステル系基等の難燃機能を含む基であってもよく、機能性基はさらに四級アンモニウム塩基等の殺菌機能を含む基であってもよい。
【0075】
さらに、液体材料はさらに第1助剤を含み、第1助剤は前記活性成分の重合反応を開始し又は触媒するために用いられ、前記第1助剤はラジカル開始剤、アニオン開始剤、カチオン開始剤及び触媒のうちの少なくとも1種を含む。具体的には、液体材料の全質量を100%で計量し、前記第1助剤の前記液体材料における質量比率は0%~10%であり、例えば、0%、1%、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%又は10%であってもよい。当然のことながら、その質量比率は実際の使用状況に応じて配合してもよく、ここでは限定しない。
【0076】
前記ラジカル開始剤は高温ラジカル開始剤であってもよく、例えば、ラウロイルパーオキサイド、t-アミルパーオキシ2-エチルへキシル酸、t-ブチルパーオキシ2-エチルへキシル酸、t-ブチルパーオキシ(TBHP)、t-アミルパーオキシ(TAHP)、ジ-t-ブチルパーオキサイド(DTBP)、t-アミルヘドロパーオキサイド(DTAP)、ジクミルパーオキサイド(DCP)、3,3-ビス(t-ブチルパーオキシ)酪酸エチル、3,3-ビス(t-アミルパーオキシ)酪酸エチル、t-ブチルパーオキシベンゾエート(TBPB)、パーオキシ3,3,5-トリメチルヘキサン酸t-ブチルエステル(TBPMH)、過酸化安息香酸t-アミル(TAPB)、過酸化酢酸t-アミル(TAPA)等のうちの1種又は多種である。
【0077】
前記ラジカル開始剤はさらに光ラジカル開始剤であってもよく、例えば、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインα,α-ジメチルベンジルケタール、α,α-ジエトキシアセトフェノン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパノン、1-ヒドロキシ-シクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-p-ヒドロキシエチルエーテルフェニルプロパノン-1、[2-メチル1-(4-メチルチオフェニル)-2-モルフォリノプロパノン-1]、[2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)ブタノン-1]、ベンゾイルホルメート、2,4,6-トリメチルフェニルアシル-エトキシ-フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルフェニルアシル-ジフェニルホスフィンオキシド、ビス(2,4,6-トリメチルフェニルアシル)フェニルホスフィンオキシド、4-p-トルエンメルカプトジフェニルケトン等のうちの1種又は多種である。
【0078】
前記アニオン開始剤はブチルリチウム、ブチルオキシリチウム等であってもよい。
【0079】
前記カチオン開始剤はトリアリールスルホニウムヘキサフルオロホスフェート混合物、密閉型リン酸塩カチオン開始剤、4-(フェニルチオ)フェニルジフェニルスルホニウムヘキサフルオロホスフェート、4-イソブチルフェニル-4’-メチルフェニルヨードニウムヘキサフルオロホスフェート、η6-イソプロピルフェロセン(II)ヘキサフルオロホスフェート混合液であってもよい。
【0080】
前記触媒はエチレングリコール、イソオクタン酸第一スズ、オクタン酸第一スズ、ジラウリン酸ジブチルスズ、メチルフルオロスルホン酸、エチルフルオロスルホン酸、メチルニトロベンゼンスルホン酸、メチルスルホン酸メチル又はテトラフェニルポルフィリンアルミニウム化物等であってもよい。
【0081】
さらに、液体材料はさらに第2助剤を含み、前記第2助剤はレベリング剤、消泡剤、界面活性剤、重合禁止剤、酸化防止剤、可塑剤、分散剤から選択される少なくとも1種である。具体的には、液体材料の全質量を100%で計量し、前記第2助剤の前記液体材料における質量比率は0.1%~30%であり、例えば、0.1%、1%、5%、10%、15%、20%、25%又は30%であってもよい。当然のことながら、その質量比率は実際の使用状況に応じて配合してもよく、ここでは限定しない。
【0082】
例示的に、レベリング剤の液体材料における質量比率は0.01%~3%であり、消泡剤の液体材料における質量比率は0.01%~3%であり、界面活性剤の液体材料における質量比率は0%~5%であり、重合禁止剤の液体材料における質量比率は0.05%~3%であり、酸化防止剤の液体材料における質量比率は0.05%~3%であり、可塑剤の液体材料における質量比率は0%~25%であり、分散剤の液体材料における質量比率は0%~5%である。
【0083】
なお、前記レベリング剤の役割は、液体材料の流動性及び粉末材料に対する湿潤性能を向上させ、同時に液体材料の表面張力を調整して液体材料を正常に印刷させることができることである。本願において使用されるレベリング剤が上記性能要求を満たすことができれば、具体的にどのようなレベリング剤を選択するかは限定されず、例えばビック社のBYK333、BYK377、BYK1798、BYK-UV3530、BYK-UV3575、BYK-UV3535等、テゴウ社のTEGO wet 500、TEGO wet 270、TEGO Glide450、TEGO RAD 2010、TEGO RAD 2011、TEGO RAD 2100、TEGO RAD 2200等であってもよい。
【0084】
消泡剤の役割は液体材料中の泡を抑制、低減、解消することであり、本願において使用される消泡剤が上記効果を達成することができれば、具体的にどのような消泡剤を選択するかは限定されず、例えばビック社のBYK055、BYK088、BYK020、BYK025等、テゴウ社のTEGO Airex 920、TEGO Airex 921、TEGO Airex 986、TEGO Foamex 810、TEGO Foamex N等、エフカ社のEfka 7081、Efka 7082等であってもよい。
【0085】
重合禁止剤の役割は、活性成分の高温での安定性を向上させることであってもよく、非印刷状態における活性成分の重合反応を阻止し、液体材料の貯蔵安定性を向上させることであってもよい。例えば、ハイドロキノン、p-ヒドロキシアニソール、p-ベンゾキノン、2-t-ブチルハイドロキノン、フェノチアジン等であってもよく、REONのGENORAD*16、GENORAD*18、GENORAD*20、GENORAD*22等、BASFのTinuvin234、Tinuvin770、Irganox245、CytecS100、Cytec130等、チバのIrgastab UV10、Irgastab UV 22等であってもよい。
【0086】
界面活性剤の役割は、活性成分の表面張力をインクジェット印刷に適するように調整し、組成物の流動性及び粉末材料に対する湿潤性能を向上させることである。例えば、BYK社のBYK333、BYK325N、BYK345、BYK346、BYK370、BYK800D、テゴウ社のTEGO 4000、TEGO WET 260、TEGO WET 270、TEGO WET KL245、TEGO Airex 920、TEGO Airex 921であってもよい。
【0087】
酸化防止剤の役割は、主にポリマーの酸化を遅延又は抑制することであり、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール、β-テトラキス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオン酸]ペンタエリスリトール、β-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートn-オクタデシル、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-tert-ブチルフェニル)ブタン、4-[(4,6-ジオクチルチオ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]-2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、ビスラウリルチオジプロピオネート、トリス(ノニルフェニル)亜リン酸エステル、亜リン酸トリフェニル、2-メルカプトベンゾイミダゾール等であってもよい。
【0088】
可塑剤の役割は、主に三次元物体完成品の靭性を改善することであり、例えばフタル酸ジオクチル、フタル酸ブチルベンジル、フタル酸ジイソノニル、フタル酸ジイソデシル、アジピン酸ジエチル、アジピン酸ジブチル、アジピン酸ジイソブチル、アジピン酸ジ(2-ブトキシエチル)エステル、アジピン酸ジ(2-エチルヘキシル)エステル、クエン酸トリエチル、アセチルクエン酸トリエチル、クエン酸トリブチル、アセチルクエン酸トリブチルであってもよい。
【0089】
分散剤の役割は、主に着色剤の分散安定性を向上させ及び改善することである。例えば、具体的にどのような分散剤を選択すればよいかは限定されず、現在市販されている製品が多く、BYK102、BYK108、BYK110、BYK180、BYK9133、BYK9076、BYK9131、テゴウDispers 655、Dispers675、Dispers 688、Dispers750、Dispers 670等であってもよい。
【0090】
さらに、液体材料はさらに着色剤を含み、着色剤の液体材料における質量比率は0~10%であり、例えば0%、1%、2%、4%、6%、8%又は10%であってもよい。当然のことながら、その質量比率は実際の使用状況に応じて配合してもよく、ここでは限定しない。
【0091】
液体材料に着色剤を含まない場合、活性成分が粉末材料を溶解するため、活性成分が重合反応して形成された高分子ポリマーが粉末材料と分子レベルの混合を達成し、この時無色又は淡色透明の三次元物体を得やすい。
【0092】
液体材料に着色剤を含む場合、カラー三次元物体を実現することができる。着色剤は染料又は顔料であってもよい。顔料は、具体的には、C.I.Pigment White 6、C.I.Pigment Red 3、C.I.Pigment Red 5、C.I.Pigment Red 7、C.I.Pigment Red 9、C.I.Pigment Red 12、C.I.Pigment Red 13、C.I.Pigment Red 21、C.I.Pigment Red 31、C.I.Pigment Red49:1、C.I.Pigment Red 58:1、C.I.Pigment Red 175、C.I.Pigment Yellow 63、C.I.Pigment Yellow 3、C.I.Pigment Yellow 12、C.I.Pigment Yellow 16、C.I.Pigment Yellow 83、C.I.Pigment Blue 1、C.I.Pigment Blue 10、C.I.Pigment Blue B、Phthalocyanine Blue BX、Phthalocyanine Blue BS、C.I.Pigment Blue61:1等から選択される1種又は多種であってもよい。
【0093】
染料は、具体的には、C.I.アシッドレッド37、C.I.アシッドレッド89(トラシッドレッド3B、2BS)、C.I.アシッドレッド145(トラシッドブリリアントレッドGL)、C.I.アシッドオレンジ67(トラシッドイエローRXL)、C.I.アシッドオレンジ116(アシッドオレンジAGT)、C.I.アシッドオレンジ156(トラシッドオレンジ3G)、C.I.アシッドイエロー42(トラシッドイエローRs、アシッドイエローR)、C.I.アシッドイエロー49(アシッドイエローGR200)、C.I.アシッドブルー277、C.I.アシッドブルー344、C.I.アシッドブルー350、C.I.アシッドブルー9(ブリリアントブルーFCF)、C.I.グリーン17、C.I.アシッドグリーン28、C.I.アシッドグリーン41、C.I.アシッドグリーン81、C.I.アシッドバイオレット17(アシッドバイオレット4BNS)、C.I.アシッドバイオレット54(トラシッドブリリアントレッド10B)、C.I.アシッドバイオレット48、C.I.アシッドブラウン75、C.I.アシッドブラウン98、C.I.アシッドブラウン165、C.I.アシッドブラウン348、C.I.アシッドブラウン349、C.I.アシッドブラック26、C.I.アシッドブラック63、C.I.アシッドブラック172、C.I.アシッドブラック194、C.I.アシッドブラック210、C.I.アシッドブラック234、C.I.アシッドブラック235、C.I.アシッドブラック242等から選択されることができる。
【0094】
本実施例における三次元物体の付加製造過程において、活性成分が重合反応して三次元物体のスライス層を形成し、製造された三次元物体に小分子物質が残留せず、使用過程において小分子物質も析出せず、安全で環境にやさしい要求を達成する。
【0095】
表1は本願における一部の液体材料の組成例を列挙する。
【表1】
【0096】
上記表に示すように、そのうち、例1の液体材料はいくつかのポリウレタン粉末、ポリ(メタ)アクリレート、酢酸セルロース等の粉末材料に対して優れた成形効果を有する。例2の液体材料はいくつかのポリウレタン粉末、塩素化ポリオレフィンに対して優れた成形効果を有する。例3の液体材料はいくつかのポリアクリロニトリル、酢酸繊維、ポリメタクリル酸メチル、ポリフッ化ビニル、及びポリスチレン等の粉末に対して優れた成形効果を有する。例4の液体材料はいくつかのポリウレタン粉末、酢酸セルロース等の粉末に対して優れた成形効果を有し、ここで、エポキシ樹脂E-41とε-カプロラクトンは反応により膨張性基を形成することができる。
【0097】
図2は本願の具体的な実施例の提供する三次元物体の付加製造装置の構造概略図であり、
図2に示すように、本願の実施例はさらに三次元物体の付加製造装置を提供し、上記三次元物体の付加製造方法を実施するために用いられ、装置は、
粉末材料を供給して粉末材料層を形成するために用いられる粉末供給部材2と、
前記粉末材料層を担持するために用いられる成形プラットフォーム3と、
層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与するために用いられる材料ディスペンサ6であって、前記液体材料が前記粉末材料の少なくとも一部を溶解し、前記液体材料が重合反応の発生可能な活性成分を含む材料ディスペンサ6と、
エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料の自体が重合反応せず且つ前記活性成分と重合反応せず、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を得るために用いられるエネルギー供給装置8と、を含む。
【0098】
本実施例において、粉末供給部材2は粉末貯蔵室23、昇降器22及び粉末敷き器21を含み、粉末貯蔵室は粉末材料0を貯蔵するために用いられ、粉末貯蔵室23の内部に移動可能な支持板231を有し、昇降器22は支持板231に接続され、支持板231を連動してZ方向に上昇又は下降させることができ、粉末敷き器21は粉末貯蔵室23内の粉末材料0を成形プラットフォーム3に敷いて粉末材料層L0を形成するために用いられ、通常使用される粉末敷き器21は粉末敷きローラ又はスキージであってもよい。
【0099】
材料ディスペンサ6はインクジェット印刷ヘッドであり、印刷ヘッドはシングルパス印刷ヘッド又はマルチパス印刷ヘッドであってもよく、本実施例における印刷ヘッドの数は使用する液体材料の種類及び付与する必要がある液体材料の量に関わり、例えば、液体材料は異なる色の機能材料を含む場合、異なる色の液体材料は異なる印刷ヘッド又は同じ印刷ヘッドの異なるチャネルを介して噴射する。例えば、付与する必要がある液体材料の量が多く、単一のインク滴の体積がニーズを満たすことができない場合、印刷効率を向上させるために、複数の印刷ヘッド又は複数のチャネルを同時に使用して同じ種類の材料を噴射することができる。
【0100】
エネルギー供給装置8が提供するエネルギーは放射エネルギー又は熱エネルギーであってもよく、前記エネルギー供給装置は紫外線ランプ、赤外線ランプ、マイクロ波放射器、加熱ワイヤ、加熱シート、加熱プレートから選択される少なくとも1種であり得る。なお、具体的にどのような形態のエネルギー供給装置を選択することは液体材料における活性成分の種類又は活性成分の種類及び第1助剤の種類に関わり、液体材料における活性成分が光重合反応する場合、この時エネルギー供給装置8は、放射エネルギー、例えば紫外線放射を提供し、紫外線放射によって活性成分が光重合反応することを開始する。液体材料における活性成分が熱重合反応する場合、この時エネルギー供給装置は赤外線ランプ、マイクロ波、加熱ワイヤ、加熱シート、加熱プレート等の熱エネルギーを供給し、熱エネルギーによって活性成分が熱重合反応することを開始する。
【0101】
任意選択的に、前記三次元物体の付加製造装置はさらに昇降機構4を含み、前記昇降機構4は前記成形プラットフォーム3に接続され、前記成形プラットフォーム3を駆動して垂直方向に上昇又は下降させる。
【0102】
任意選択的に、前記三次元物体の付加製造装置はさらに予熱部材5及び/又は加熱部材10を含み、前記予熱部材5は前記粉末材料層を予熱し、前記液体材料における活性成分が前記粉末材料を溶解することを促進するために用いられ、加熱部材10は前記液体材料が付与された後の粉末材料層を加熱し、前記液体材料における活性成分が前記粉末材料を溶解することを促進するために用いられる。予熱部材5及び加熱部材10はそれぞれ紫外線ランプ、赤外線ランプ、マイクロ波放射器、加熱ワイヤ、加熱シート、加熱プレートから選択される少なくとも1種であり得る。
【0103】
本実施例において、予熱部材5、材料ディスペンサ6、加熱部材10及びエネルギー供給装置8はガイドレール11に順番に取り付けられ、且つガイドレール11において移動することができる。本実施例において、エネルギー供給装置8が熱エネルギーを供給する装置である場合、加熱部材10をキャンセルし、液体材料が付与された粉末材料層をエネルギー供給装置8で加熱し且つ重合反応を開始させることができる。
【0104】
三次元物体の付加製造装置は、さらに、温度モニタを含み(図示せず)、前記温度モニタは前記粉末材料層の温度を監視するために用いられる。
【0105】
また、三次元物体の付加製造装置は、さらに、コントローラ9を含み、コントローラ9は前記粉末供給部材2、前記材料ディスペンサ6、前記エネルギー供給装置8、前記予熱部材5、前記加熱部材10、前記温度モニタのうちの少なくとも1つの動作を制御するために用いられる。例えば、温度モニタは監視された温度をコントローラ9にフィードバックし、コントローラは、温度モニタによってフィードバックされた情報に基づいて予熱部材5及び/又は加熱部材10ならびにエネルギー供給装置8によって供給されるエネルギーの量を制御する。
【0106】
図3は本願の別の実施例における三次元物体の付加製造方法のフローチャートであり、
図3に示すように、以下は三次元物体の付加製造装置と組み合わせて三次元物体の付加製造方法をさらに詳細に説明する。
【0107】
ステップS01において、三次元物体のデジタルモデルを取得し、前記三次元物体のデジタルモデルをスライス階層化し、複数のスライス層及び層画像データを取得し、且つ前記層画像データに基づいて層印刷データを生成する。
【0108】
具体的な実現形態において、走査方式により三次元物体のオリジナルデータを取得し且つ三次元モデリングを行って三次元物体のデジタルモデルを取得することができ、又は、三次元物体モデルを設計構築することにより三次元物体のデジタルモデルを取得し、デジタルモデルに対してデータフォーマット変換を行い、例えばSTLフォーマット、PLYフォーマット、WRLフォーマット等のスライスソフトウェアによって識別可能なフォーマットに変換し、さらにスライスソフトウェアを用いてモデルに対してスライス階層化を行ってスライス層画像データを取得し、且つ層画像データを処理し、物体を表す層印刷データを取得する。層印刷データは物体の形状を示す情報及び/又は物体の色を示す情報を含む。
【0109】
ステップS10において、粉末材料を利用して粉末材料層を形成する。
図4aに示すように、具体的な実施例において、粉末供給部材2を用いて粉末材料0を成形プラットフォーム3に供給して粉末材料層L0を形成することができる。
【0110】
ステップS11において、前記粉末材料層を予熱する。
図4bに示すように、具体的な実施例において、粉末材料層L0を形成した後、予熱部材5は粉末材料層L0を予熱し、粉末材料の温度を高め、ステップS20において粉末材料層L0に液体材料を付与するときに活性成分の粉末材料に対する溶解速度を促進することに役立つ。予熱の温度は使用される粉末材料の属性に関わり、好ましくは、予熱温度は粉末材料の融点又は溶融温度より低い。理解できるように、本実施例において予熱温度を粉末材料の融点又は溶融温度より低く制御することにより、粉末材料の粘着を防止することができ、液体材料が粉末材料の粒子間の隙間に浸透することに役立ち、それにより活性成分の粉末材料に対する溶解速度を向上させる。
【0111】
ステップS20において、層印刷データに基づいて液体材料を前記粉末材料層に付与する。
図4cに示すように、具体的な実施例において、材料ディスペンサ6は層印刷データに基づいて液体材料7を粉末材料層L0に付与して層パターン化領域31を形成することができ、液体材料7は粉末材料の間隙に浸透して粉末材料の表面を覆い、それにより粉末材料の表面を湿潤する。
【0112】
液体材料7は重合反応が発生可能な活性成分を含み、前記活性成分は粉末材料の少なくとも一部を溶解する。
図4dに示すように、層パターン化領域31における粉末材料は活性成分に溶解され、粉末材料と活性成分とが分子レベルの混合を達成するようにする。
【0113】
ステップS21において、前記液体材料が付与された後の粉末材料層を加熱し、前記液体材料における活性成分が前記粉末材料を溶解することを促進する。
図4eに示すように、液体材料7が付与された粉末材料層L0において加熱部材10が粉末材料層L0を加熱し、さらに活性成分が粉末材料を溶解することを促進し、粉末材料を短時間で完全に溶解させることができ、粉末材料と活性成分とが分子レベルの混合を達成し且つ均一に混合し、活性成分を重合反応させ、形成されたポリマーと粉末材料も分子レベルの混合を達成し、それにより高分子合金を形成し、形成された三次元物体の機械的強度を向上させる。
【0114】
ステップS30において、エネルギーを前記粉末材料層に供給し、前記液体材料における活性成分を重合反応させ、前記粉末材料層における前記液体材料を付与する領域を成形し、三次元物体のスライス層を得る。
図4fに示すように、具体的な実施例において、エネルギー供給部8はエネルギーを粉末材料層L0に供給し、活性成分を重合反応させて高分子ポリマーを形成することによって三次元物体のスライス層Lwを形成する。
【0115】
図4fに示すように、エネルギー供給装置8が提供するエネルギーはさらに活性成分が粉末材料を溶解することを促進することができ、前記活性成分は重合反応して高分子ポリマーを形成し、形成された高分子ポリマーは粉末材料とブレンドを形成し、特に溶解された粉末材料と分子レベルの混合を達成し、高分子合金を形成し、粉末材料の間、粉末材料と活性成分のポリマーの間、
成形された三次元物体のスライス層の間にいずれも良好な接続作用を有する。また、形成された高分子ポリマーは粉末材料と混合して界面結合が良好な「海-島構造」又は均一相構造を得ることができ、三次元物体の機械的強度を向上させる。
【0116】
本実施例は三次元物体の付加製造過程において、材料ディスペンサ6は層印刷データに基づいて粉末材料層L0に液体材料7を付与し、液体材料の噴射量を調整することにより、異なる領域の異なる性能の三次元物体を実現することができる。
【0117】
ステップS30の後、前記方法は、さらに、現在のスライス層が最後の層であるか否かを確認するステップS40を含む。
【0118】
現在のスライス層が最後の層ではないことが確認されると、粉末材料層の形成及び液体材料の付与を繰り返し、且つ液体材料が少なくとも部分的に付与された粉末材料層にエネルギーを供給し、取得した複数のスライス層を層ごとに重ねて三次元物体を形成する。
【0119】
図4gに示すように、三次元物体の印刷過程において、1つの三次元物体のスライス層L
Wを形成するたびに、成形プラットフォーム3は昇降機構4の駆動で少なくとも1つの層厚の距離を降下し、粉末供給部材2は1つの新たな粉末材料層L0を先に形成された層の上に提供し、液体材料ディスペンサ6は層印刷データに基づいて液体材料7を付与して粉末材料層L0に新たな層パターン化領域31を形成し、エネルギー供給装置8はエネルギーを層パターン化領域31に供給して三次元物体の新たなスライス層を形成し、この過程を繰り返して行い、三次元物体Wを形成する。
【0120】
ステップS50において、現在のスライス層が最後の層であることが確認されると、前記三次元物体の機械的強度を向上させるために、形成された三次元物体に対して熱処理を行う。
【0121】
具体的な実施例において、三次元物体wを取得した後、予熱部材5及び/又は加熱部材10を用いて三次元物体w全体を加熱し、又は三次元物体w全体を取り出して加熱炉(図示せず)に置いて加熱し、一方では粉末の溶解効果をより高くさせ、粉末材料間の空隙率を低下させ、成形物品の緻密度をより高くさせ、他方では活性成分をさらに重合反応させ、それにより三次元物体wの引張強度を向上させる。
【0122】
本願の実施例はさらに非一時的なコンピュータで読み取り可能な記憶媒体を提供し、
図5に示すように、前記記憶媒体91は記憶されたプログラム911を含み、前記プログラムが実行されるとき、前記記憶媒体91の所在する装置を制御して上記三次元物体の付加製造方法を実行させる。
【0123】
本願の実施例はさらにコンピュータ機器を提供し、
図6に示すように、当該実施例のコンピュータ機器100は、プロセッサ101、メモリ102及びメモリ102に記憶され且つプロセッサ101で実行可能なコンピュータプログラム103を含み、プロセッサ101がコンピュータプログラム103を実行するとき、実施例における三次元物体の付加製造方法を実現し、重複しないために、ここでは説明を省略する。
【0124】
コンピュータ機器100はデスクトップコンピュータ、ノートブックコンピュータ、パームトップコンピュータ及びクラウドサーバ等のコンピューティング機器であってもよい。コンピュータ機器は、プロセッサ101、メモリ102を含むが、これらに限定されない。当業者に理解されるように、
図6はコンピュータ機器100の例に過ぎず、コンピュータ機器100を限定するものではなく、図示より多い又は少ない部品を含み、又はいくつかの部品を組み合わせ、又は異なる部品を含むことができ、例えばコンピュータ機器はさらに入出力機器、ネットワークアクセス機器、バス等を含むことができる。
【0125】
言及されるプロセッサ101は中央処理ユニット(Central Processing Unit、CPU)であってもよく、他の汎用プロセッサ、デジタル信号プロセッサ(Digital Signal Processor、DSP)、専用集積回路(Application Specific Integrated Circuit、ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(Field-Programmable Gate Array、FPGA)又は他のプログラマブル論理デバイス、ディスクリートゲート又はトランジスタ論理デバイス、ディスクリートハードウェアコンポーネント等であってもよい。汎用プロセッサはマイクロプロセッサであってもよく、又は当該プロセッサは任意の従来のプロセッサ等であってもよい。
【0126】
メモリ102はコンピュータ機器100のハードディスク又はメモリ等のコンピュータ機器100の内部記憶ユニットであってもよい。メモリ102はコンピュータ機器100に搭載されたプラグインハードディスク、スマートメモリカード(Smart Media(登録商標) Card、SMC)、セキュアデジタル(Secure Digital、SD)カード、フラッシュカード(Flash Card)等のコンピュータ機器100の外部記憶装置であってもよい。さらに、メモリ102はさらにコンピュータ機器100の内部記憶ユニットを含むとともに外部記憶装置を含んでもよい。メモリ102はコンピュータプログラム及びコンピュータ機器に必要な他のプログラムとデータを記憶するために用いられる。メモリ102はさらに出力された又は出力されようとするデータを一時的に記憶するために用いられることができる。
【0127】
以上は本願の好適な実施例に過ぎず、本願を限定するものではなく、本願の精神と原則内で、行われたいかなる修正、均等置換、改善等は、いずれも本願の保護範囲内に含まれるべきである。
【0128】
本願は、2020年08月11日に中国国家知識産権局に提出された、出願番号が202010802200.4で、出願名称が「三次元物体の付加製造方法及び装置、記憶媒体、コンピュータ機器」の中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は、参照により本願に組み込まれる。