(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】通信制御装置、通信制御方法、通信制御プログラム
(51)【国際特許分類】
H04W 48/02 20090101AFI20240731BHJP
H04W 84/06 20090101ALI20240731BHJP
【FI】
H04W48/02
H04W84/06
(21)【出願番号】P 2023525356
(86)(22)【出願日】2021-11-09
(86)【国際出願番号】 JP2021041156
(87)【国際公開番号】W WO2022254744
(87)【国際公開日】2022-12-08
【審査請求日】2023-07-11
(31)【優先権主張番号】P 2021093455
(32)【優先日】2021-06-03
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021098488
(32)【優先日】2021-06-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】319010088
【氏名又は名称】楽天モバイル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【氏名又は名称】森下 賢樹
(72)【発明者】
【氏名】青柳 健一郎
(72)【発明者】
【氏名】藤井 ゆい子
【審査官】岡本 正紀
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05862480(US,A)
【文献】特開平09-200834(JP,A)
【文献】特表2001-503589(JP,A)
【文献】特表2019-531615(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0287124(US,A1)
【文献】米国特許第06018660(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B 7/24- 7/26
H04W 4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に設置される地上基地局に対する通信機の第1接続権限を管理する第1接続権限管理部と、
飛行する非地上基地局に対する通信機の第2接続権限を管理する第2接続権限管理部と、
前記第1接続権限を有しない通信機の前記地上基地局への接続を制限し、前記第2接続権限を有しない通信機の前記非地上基地局への接続を制限する接続制御部と、
前記地上基地局が地上に提供する地上通信セルおよび前記非地上基地局が地上に提供する非地上通信セルの重複エリアを特定する重複エリア特定部と、
を備え
、
前記接続制御部は、前記重複エリア内の通信機が前記第1接続権限を有する場合、前記第2接続権限の有無によらず、当該通信機を前記地上基地局に接続させ、
前記第1接続権限管理部は、前記地上基地局が地上に提供する地上通信セルを少なくとも一つ含む第1位置登録エリアに対する通信機の第1接続権限を管理し、
前記第2接続権限管理部は、前記非地上基地局が地上に提供する非地上通信セルを少なくとも一つ含む第2位置登録エリアに対する通信機の第2接続権限を管理し、
前記第1接続権限管理部および前記第2接続権限管理部の少なくともいずれかは、通信機がいる場所における法規制情報に基づいて、前記第1接続権限および前記第2接続権限の少なくともいずれかを登録し、
前記第2接続権限管理部は前記法規制情報に基づいて前記第2接続権限を登録し、
前記非地上基地局は宇宙空間を飛行する通信衛星であり、
前記重複エリア特定部は、前記第1位置登録エリアおよび前記第2位置登録エリアの重複エリアを特定すると共に、5Gのコアネットワークとしての5GCにおけるNWDAF(Network Data Analytics Function)から得られる当該重複エリア内の通信機の接続状況および位置を示唆する情報に基づいて推定される当該通信機の位置に基づいて、当該通信機が当該重複エリア内にいるか否かを判定し、
前記第1接続権限管理部は、前記第1位置登録エリアに対する通信機の第1接続権限を少なくとも「接続許容」「接続非推奨」「接続禁止」の三つの分類に基づいて管理し、
前記第2接続権限管理部は、前記第2位置登録エリアに対する通信機の第2接続権限を少なくとも「接続許容」「接続非推奨」「接続禁止」の三つの分類に基づいて管理し、
前記接続制御部による各通信機の接続制御は、当該各通信機からの接続要求を受けたコアネットワークにおけるAMF(Access and Mobility Management Function)が、前記第1接続権限管理部および前記第2接続権限管理部の少なくともいずれかに対して当該各通信機の前記第1接続権限および前記第2接続権限の少なくともいずれかを問い合わせることによって開始し、
前記AMFは、前記重複エリア特定部によって前記重複エリア内にいることが検知されている通信機については、最初に前記第1接続権限のみを問い合わせ、この問合せの結果、前記第1接続権限が「接続許容」であった場合は、前記AMFが前記第2接続権限管理部に前記第2接続権限を問い合わせることなく、前記接続制御部が当該通信機を前記地上基地局に接続させる一方で、当該通信機の前記第1接続権限が「接続非推奨」または「接続禁止」であった場合は、前記AMFは前記第2接続権限管理部に前記第2接続権限を問い合わせ、この問合せの結果、前記第1接続権限が「接続非推奨」で前記第2接続権限が「接続許容」の場合、あるいは、前記第1接続権限が「接続禁止」で前記第2接続権限が「接続非推奨」または「接続許容」の場合、前記接続制御部は当該通信機を前記通信衛星に接続させ、
前記地上基地局のみと接続可能な前記地上通信セル内の通信機については、前記AMFが前記第1接続権限管理部に前記第1接続権限のみを問い合わせ、
前記非地上基地局のみと接続可能な前記非地上通信セル内の通信機については、前記AMFが前記第2接続権限管理部に前記第2接続権限のみを問い合わせる通信制御装置。
【請求項2】
地上に設置される地上基地局に対する通信機の第1接続権限を管理する第1接続権限管理ステップと、
飛行する非地上基地局に対する通信機の第2接続権限を管理する第2接続権限管理ステップと、
前記第1接続権限を有しない通信機の前記地上基地局への接続を制限し、前記第2接続権限を有しない通信機の前記非地上基地局への接続を制限する接続制御ステップと、
前記地上基地局が地上に提供する地上通信セルおよび前記非地上基地局が地上に提供する非地上通信セルの重複エリアを特定する重複エリア特定ステップと、
を備え
、
前記接続制御ステップは、前記重複エリア内の通信機が前記第1接続権限を有する場合、前記第2接続権限の有無によらず、当該通信機を前記地上基地局に接続させ、
前記第1接続権限管理ステップは、前記地上基地局が地上に提供する地上通信セルを少なくとも一つ含む第1位置登録エリアに対する通信機の第1接続権限を管理し、
前記第2接続権限管理ステップは、前記非地上基地局が地上に提供する非地上通信セルを少なくとも一つ含む第2位置登録エリアに対する通信機の第2接続権限を管理し、
前記第1接続権限管理ステップおよび前記第2接続権限管理ステップの少なくともいずれかは、通信機がいる場所における法規制情報に基づいて、前記第1接続権限および前記第2接続権限の少なくともいずれかを登録し、
前記第2接続権限管理ステップは前記法規制情報に基づいて前記第2接続権限を登録し、
前記非地上基地局は宇宙空間を飛行する通信衛星であり、
前記重複エリア特定ステップは、前記第1位置登録エリアおよび前記第2位置登録エリアの重複エリアを特定すると共に、5Gのコアネットワークとしての5GCにおけるNWDAF(Network Data Analytics Function)から得られる当該重複エリア内の通信機の接続状況および位置を示唆する情報に基づいて推定される当該通信機の位置に基づいて、当該通信機が当該重複エリア内にいるか否かを判定し、
前記第1接続権限管理ステップは、前記第1位置登録エリアに対する通信機の第1接続権限を少なくとも「接続許容」「接続非推奨」「接続禁止」の三つの分類に基づいて管理し、
前記第2接続権限管理ステップは、前記第2位置登録エリアに対する通信機の第2接続権限を少なくとも「接続許容」「接続非推奨」「接続禁止」の三つの分類に基づいて管理し、
前記接続制御ステップによる各通信機の接続制御は、当該各通信機からの接続要求を受けたコアネットワークにおけるAMF(Access and Mobility Management Function)が、当該各通信機の前記第1接続権限および前記第2接続権限の少なくともいずれかを問い合わせることによって開始し、
前記AMFは、前記重複エリア特定ステップによって前記重複エリア内にいることが検知されている通信機については、最初に前記第1接続権限のみを問い合わせ、この問合せの結果、前記第1接続権限が「接続許容」であった場合は、前記AMFが前記第2接続権限を問い合わせることなく、前記接続制御ステップが当該通信機を前記地上基地局に接続させる一方で、当該通信機の前記第1接続権限が「接続非推奨」または「接続禁止」であった場合は、前記AMFは前記第2接続権限を問い合わせ、この問合せの結果、前記第1接続権限が「接続非推奨」で前記第2接続権限が「接続許容」の場合、あるいは、前記第1接続権限が「接続禁止」で前記第2接続権限が「接続非推奨」または「接続許容」の場合、前記接続制御ステップは当該通信機を前記通信衛星に接続させ、
前記地上基地局のみと接続可能な前記地上通信セル内の通信機については、前記AMFが前記第1接続権限のみを問い合わせ、
前記非地上基地局のみと接続可能な前記非地上通信セル内の通信機については、前記AMFが前記第2接続権限のみを問い合わせる通信制御方法。
【請求項3】
地上に設置される地上基地局に対する通信機の第1接続権限を管理する第1接続権限管理ステップと、
飛行する非地上基地局に対する通信機の第2接続権限を管理する第2接続権限管理ステップと、
前記第1接続権限を有しない通信機の前記地上基地局への接続を制限し、前記第2接続権限を有しない通信機の前記非地上基地局への接続を制限する接続制御ステップと、
前記地上基地局が地上に提供する地上通信セルおよび前記非地上基地局が地上に提供する非地上通信セルの重複エリアを特定する重複エリア特定ステップと、
をコンピュータに実行させ
、
前記接続制御ステップは、前記重複エリア内の通信機が前記第1接続権限を有する場合、前記第2接続権限の有無によらず、当該通信機を前記地上基地局に接続させ、
前記第1接続権限管理ステップは、前記地上基地局が地上に提供する地上通信セルを少なくとも一つ含む第1位置登録エリアに対する通信機の第1接続権限を管理し、
前記第2接続権限管理ステップは、前記非地上基地局が地上に提供する非地上通信セルを少なくとも一つ含む第2位置登録エリアに対する通信機の第2接続権限を管理し、
前記第1接続権限管理ステップおよび前記第2接続権限管理ステップの少なくともいずれかは、通信機がいる場所における法規制情報に基づいて、前記第1接続権限および前記第2接続権限の少なくともいずれかを登録し、
前記第2接続権限管理ステップは前記法規制情報に基づいて前記第2接続権限を登録し、
前記非地上基地局は宇宙空間を飛行する通信衛星であり、
前記重複エリア特定ステップは、前記第1位置登録エリアおよび前記第2位置登録エリアの重複エリアを特定すると共に、5Gのコアネットワークとしての5GCにおけるNWDAF(Network Data Analytics Function)から得られる当該重複エリア内の通信機の接続状況および位置を示唆する情報に基づいて推定される当該通信機の位置に基づいて、当該通信機が当該重複エリア内にいるか否かを判定し、
前記第1接続権限管理ステップは、前記第1位置登録エリアに対する通信機の第1接続権限を少なくとも「接続許容」「接続非推奨」「接続禁止」の三つの分類に基づいて管理し、
前記第2接続権限管理ステップは、前記第2位置登録エリアに対する通信機の第2接続権限を少なくとも「接続許容」「接続非推奨」「接続禁止」の三つの分類に基づいて管理し、
前記接続制御ステップによる各通信機の接続制御は、当該各通信機からの接続要求を受けたコアネットワークにおけるAMF(Access and Mobility Management Function)が、当該各通信機の前記第1接続権限および前記第2接続権限の少なくともいずれかを問い合わせることによって開始し、
前記AMFは、前記重複エリア特定ステップによって前記重複エリア内にいることが検知されている通信機については、最初に前記第1接続権限のみを問い合わせ、この問合せの結果、前記第1接続権限が「接続許容」であった場合は、前記AMFが前記第2接続権限を問い合わせることなく、前記接続制御ステップが当該通信機を前記地上基地局に接続させる一方で、当該通信機の前記第1接続権限が「接続非推奨」または「接続禁止」であった場合は、前記AMFは前記第2接続権限を問い合わせ、この問合せの結果、前記第1接続権限が「接続非推奨」で前記第2接続権限が「接続許容」の場合、あるいは、前記第1接続権限が「接続禁止」で前記第2接続権限が「接続非推奨」または「接続許容」の場合、前記接続制御ステップは当該通信機を前記通信衛星に接続させ、
前記地上基地局のみと接続可能な前記地上通信セル内の通信機については、前記AMFが前記第1接続権限のみを問い合わせ、
前記非地上基地局のみと接続可能な前記非地上通信セル内の通信機については、前記AMFが前記第2接続権限のみを問い合わせる通信制御プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通信システムにおける通信制御技術に関する。
【背景技術】
【0002】
スマートフォンやIoT(Internet of Things)デバイスに代表される無線通信デバイスの数、種類、用途は増加の一途を辿っており、無線通信規格の拡張や改善が続けられている。例えば「5G」として知られる第5世代移動通信システムの商用サービスは2018年に開始したが、現在も3GPP(Third Generation Partnership Project)で規格策定が進められている。また、5Gに続く次世代の無線通信規格としての「6G」または第6世代移動通信システムの規格策定に向けた取り組みも始まっている。
【0003】
スマートフォンや携帯電話等の移動体または携帯通信機器(以下では通信機と総称する)向けの移動通信(以下ではモバイル通信ともいう)ネットワークは、地上に設置される基地局(以下では地上基地局ともいう)が提供する通信セル(以下では地上通信セルともいう)によって構築されるのが一般的であった。しかし、地域によっては様々な理由で十分な数の地上基地局を設置することが難しい場合もあり、モバイル通信の品質が相対的に低くなってしまうという問題があった。
【0004】
このような地域によるモバイル通信の品質格差の問題や、地域によっては通信機がモバイル通信できないといういわゆる「圏外」の問題を解決するために、非地上系ネットワーク(NTN:Non-Terrestrial Network)の検討が進められている。NTNでは、宇宙空間や成層圏等の大気圏を飛行する通信衛星や無人航空機が基地局(以下では非地上基地局ともいい、特に通信衛星を衛星基地局ともいう)となって、地上に通信セル(以下では非地上通信セルともいい、特に通信衛星が提供する通信セルを衛星通信セルともいう)を提供する。非地上通信セル内にいる通信機は直接的または他の通信機器を介して間接的に非地上基地局と通信する。地上通信セルが不足している地域に非地上通信セルを提供することで、当該地域におけるモバイル通信の品質を向上させることができる。
【0005】
モバイル通信システムでは、通信機のおおよその位置を追跡または検知するために、位置登録エリアまたはトラッキングエリア(TA: Tracking Area)が設定されている。位置登録エリアは一または複数の基地局によって構成され、当該各基地局が地上に提供する各通信セルを合わせた領域全体が当該位置登録エリアに相当する。例えば、日本のある移動体通信事業者(MNO:Mobile Network Operator)は、数十の位置登録エリアによって日本全国をカバーしている。
【0006】
従来、無線通信システムに対する通信機の接続権限を管理するために、EIR(Equipment Identity Register)がコアネットワークに設けられている。EIRは、通信機のデータベースであり、各通信機を特定するIMEI(International Mobile Equipment Identity)等の通信機特定情報または通信機IDに加え、各通信機の無線通信システム(特に5G無線通信システム等の地上系通信システム)に対する接続権限の有無または「White」「Black」「Grey」等の分類が記録されている。例えば、接続権限を持つ「White」な通信機は無線通信システムに対する接続が許容され、接続権限を持たない「Black」な通信機は無線通信システムに対する接続が禁止される。また、接続権限の有無が未確定の「Grey」な通信機もEIRに登録されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来のEIRは、5G無線通信システム等の地上系通信システムを念頭に置いて設計されているため、地上系通信システムと衛星通信システム等の非地上系通信システムが併存する無線通信システムに適用すると不具合が生じる可能性がある。
【0009】
本発明はこうした状況に鑑みてなされたものであり、その目的は、地上系通信システムおよび非地上系通信システムが併存する無線通信システムに対する通信機の接続権限を効果的に管理できる通信制御装置等を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明のある態様の通信制御装置は、地上に設置される地上基地局に対する通信機の第1接続権限を管理する第1接続権限管理部と、飛行する非地上基地局に対する通信機の第2接続権限を管理する第2接続権限管理部と、第1接続権限を有しない通信機の地上基地局への接続を制限し、第2接続権限を有しない通信機の非地上基地局への接続を制限する接続制御部と、を備える。
【0011】
この態様では、個別に設けられる第1接続権限管理部および第2接続権限管理部によって、地上基地局に対する通信機の(第1)接続権限および非地上基地局に対する通信機の(第2)接続権限を効果的に管理できる。
【0012】
本発明の別の態様は、通信制御方法である。この方法は、地上に設置される地上基地局に対する通信機の第1接続権限を管理する第1接続権限管理ステップと、飛行する非地上基地局に対する通信機の第2接続権限を管理する第2接続権限管理ステップと、第1接続権限を有しない通信機の地上基地局への接続を制限し、第2接続権限を有しない通信機の非地上基地局への接続を制限する接続制御ステップと、を備える。
【0013】
なお、以上の構成要素の任意の組合せ、本発明の表現を方法、装置、システム、記録媒体、コンピュータプログラムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、地上系通信システムおよび非地上系通信システムが併存する無線通信システムに対する通信機の接続権限を効果的に管理できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】通信制御装置が適用される無線通信システムの概要を模式的に示す。
【
図2】地上通信セルおよび非地上通信セルによって構成される位置登録エリアの例を模式的に示す。
【
図3】第1実施形態に係る通信制御装置の機能ブロック図である。
【
図4】第1実施形態に係る通信制御装置の通信制御処理を示すフローチャートである。
【
図5】第2実施形態に係る通信制御装置の機能ブロック図である。
【
図6】第3実施形態に係る通信制御装置の機能ブロック図である。
【
図7】第4実施形態に係る通信制御装置の機能ブロック図である。
【
図8】通信機管理部が通信機をEIRに登録して管理する処理を模式的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る通信制御装置が適用される無線通信システム1の概要を模式的に示す。無線通信システム1は、無線アクセス技術(RAT: Radio Access Technology)としてNR(New Radio)または5G NR(Fifth Generation New Radio)を使用し、コアネットワーク(CN:Core Network)として5GC(Fifth Generation Core)を使用する第5世代移動通信システム(5G)に準拠する5G無線通信システム11と、無線アクセス技術としてLTE(Long Term Evolution)やLTE-Advancedを使用し、コアネットワークとしてEPC(Evolved Packet Core)を使用する第4世代移動通信システム(4G)に準拠する4G無線通信システム12と、通信衛星131を介した衛星通信を担う衛星通信システム13を含む。図示は省略するが、無線通信システム1は、4Gより前の世代の無線通信システムを含んでもよいし、5Gより後の世代(6G等)の無線通信システムを含んでもよいし、Wi-Fi(登録商標)等の世代と関係づけられない任意の無線通信システムを含んでもよい。
【0017】
5G無線通信システム11は、地上に設置されてUE(User Equipment)とも呼ばれるスマートフォン等の通信機2A、2B、2C、2D(以下、通信機2と総称することがある)と5G NRによって通信可能な複数の5G基地局111A、111B、111C(以下、5G基地局111と総称することがある)を含む。5Gにおける基地局111はgNodeB(gNB)とも呼ばれる。各5G基地局111A、111B、111Cの通信可能範囲またはサポート範囲はセルと呼ばれ、それぞれ112A、112B、112C(以下、5Gセル112と総称することがある)として図示される。
【0018】
各5G基地局111の5Gセル112の大きさは任意であるが、典型的には半径数メートルから数十キロメートルである。確立した定義はないものの、半径数メートルから十メートルのセルはフェムトセルと呼ばれ、半径十メートルから数十メートルのセルはピコセルと呼ばれ、半径数十メートルから数百メートルのセルはマイクロセルと呼ばれ、半径数100メートルを超えるセルはマクロセルと呼ばれることがある。5Gではミリ波等の高い周波数の電波が使用されることも多く、直進性の高さ故に電波が障害物に遮られて通信可能距離が短くなる。このため、5Gでは4G以前の世代に比べて小さいセルが多用される傾向がある。
【0019】
通信機2は、複数の5Gセル112A、112B、112Cの少なくとも一つの内部にあれば、5G通信を行える。図示の例では、5Gセル112Aおよび112B内にある通信機2Bは、5G基地局111Aおよび111Bのいずれとも5G NRによって通信可能である。また、5Gセル112C内にある通信機2Cは、5G基地局111Cと5G NRによって通信可能である。通信機2Aおよび2Dは、全ての5Gセル112A、112B、112Cの外にあるため、5G NRによる通信ができない状態にある。各通信機2と各5G基地局111の間の5G NRによる5G通信は、コアネットワークである5GCによって管理される。例えば、5GCは、各5G基地局111との間のデータの授受、EPC、衛星通信システム13、インターネット等の外部ネットワークとの間のデータの授受、通信機2の移動管理等を行う。
【0020】
4G無線通信システム12は、地上に設置されて通信機2とLTEやLTE-Advancedによって通信可能な複数の4G基地局121(
図1では一つのみを示す)を含む。4Gにおける基地局121はeNodeB(eNB)とも呼ばれる。各5G基地局111と同様に、各4G基地局121の通信可能範囲またはサポート範囲もセルと呼ばれ122として図示される。
【0021】
通信機2は4Gセル122の内部にあれば4G通信を行える。図示の例では、4Gセル122内にある通信機2Aおよび2Bは、4G基地局121とLTEやLTE-Advancedによって通信可能である。通信機2Cおよび2Dは、4Gセル122の外にあるため、LTEやLTE-Advancedによる通信ができない状態にある。各通信機2と各4G基地局121の間のLTEやLTE-Advancedによる4G通信は、コアネットワークであるEPCによって管理される。例えば、EPCは、各4G基地局121との間のデータの授受、5GC、衛星通信システム13、インターネット等の外部ネットワークとの間のデータの授受、通信機2の移動管理等を行う。
【0022】
各通信機2A、2B、2C、2Dに着目すると、図示の例では、通信機2Aは4G基地局121との4G通信が可能な状態にあり、通信機2Bは5G基地局111A、111Bとの5G通信および4G基地局121との4G通信が可能な状態にあり、通信機2Cは5G基地局111Cとの5G通信が可能な状態にある。通信機2Bのように通信可能な基地局(111A、111B、121)が複数ある場合は、コアネットワークである5GCおよび/またはEPCによる管理の下、通信品質等の観点で最適と判断された一つの基地局が選択されて通信機2Bとの通信を行う。また、通信機2Dはいずれの5G基地局111および4G基地局121とも通信が可能な状態にないため、次に説明する衛星通信システム13による通信を行う。
【0023】
衛星通信システム13は、地表から500km~700km程度の高さの低軌道の宇宙空間を飛行する低軌道衛星としての通信衛星131を非地上基地局として用いる無線通信システムである。5G基地局111および4G基地局121と同様に、通信衛星131の通信可能範囲またはサポート範囲もセルと呼ばれ132として図示される。このように、非地上基地局としての通信衛星131は、非地上通信セルとしての衛星通信セル132を地上に提供する。地上の通信機2は衛星通信セル132の内部にあれば衛星通信を行える。5G無線通信システム11における5G基地局111および4G無線通信システム12における4G基地局121と同様に、衛星通信システム13における基地局としての通信衛星131は、衛星通信セル132内の通信機2と直接的にまたは航空機等を介して間接的に無線通信可能である。通信衛星131が衛星通信セル132内の通信機2との無線通信に使用する無線アクセス技術は、5G基地局111と同じ5G NRでもよいし、4G基地局121と同じLTEやLTE-Advancedでもよいし、通信機2が使用可能な任意の他の無線アクセス技術でもよい。このため、通信機2には衛星通信のための特別な機能や部品を設けなくてもよい。
【0024】
衛星通信システム13は、地上に設置されて通信衛星131と通信可能な地上局としてのゲートウェイ133を備える。ゲートウェイ133は、通信衛星131と通信するための衛星アンテナを備え、地上系ネットワーク(TN:Terrestrial Network)を構成する地上基地局としての5G基地局111および4G基地局121と接続されている。このように、ゲートウェイ133は、通信衛星131によって構成されるNTNと地上基地局111、121によって構成されるTNを相互通信可能に接続する。通信衛星131が5G NRによって衛星通信セル132内の通信機2と5G通信する場合は、ゲートウェイ133およびTNにおける5G基地局111(または5G無線アクセスネットワーク)を介して接続される5GCをコアネットワークとして利用し、通信衛星131がLTEやLTE-Advancedによって衛星通信セル132内の通信機2と4G通信する場合は、ゲートウェイ133およびTNにおける4G基地局121(または4G無線アクセスネットワーク)を介して接続されるEPCをコアネットワークとして利用する。このように、ゲートウェイ133を介して5G通信、4G通信、衛星通信等の異なる無線通信システムの間で適切な連携が取られる。
【0025】
通信衛星131による衛星通信は、主に、5G基地局111や4G基地局121等の地上基地局が設けられないまたは少ない地域をカバーするために利用される。図示の例では、全ての地上基地局の通信セル外にいる通信機2Dが通信衛星131と通信する。一方、いずれかの地上基地局と良好に通信できる状態にある通信機2A、2B、2Cも、衛星通信セル132内にいるため通信衛星131と通信可能ではあるが、原則として衛星基地局としての通信衛星131ではなく地上基地局と通信を行うことで、通信衛星131の限られた通信リソース(電力を含む)が通信機2D等のために節約される。通信衛星131は、ビームフォーミングによって通信電波を衛星通信セル132内の通信機2Dに向けることで、通信機2Dとの通信品質を向上させる。
【0026】
衛星基地局としての通信衛星131の衛星通信セル132の大きさは、通信衛星131が発するビームの本数に応じて任意に設定することができ、例えば、最大2,800本のビームを組み合わせることで直径約24kmの衛星通信セル132を形成できる。図示されるように、衛星通信セル132は、典型的には5Gセル112や4Gセル122等の地上通信セルより大きく、その内部に一または複数の5Gセル112および/または4Gセル122を含みうる。なお、以上では飛行する非地上基地局として、地表から500km~700km程度の高さの低軌道の宇宙空間を飛行する通信衛星131を例示したが、より高い静止軌道等の高軌道の宇宙空間を飛行する通信衛星や、より低い(例えば地表から20km程度)成層圏等の大気圏を飛行する無人または有人の航空機を非地上基地局として、通信衛星131に加えてまたは代えて使用してもよい。
【0027】
以上のように、本実施形態に係る無線通信システム1は、地上に設置される地上基地局111、121が地上に提供する地上通信セル112、122内の通信機2と通信可能な地上系ネットワーク(TN)11、12、および、飛行する非地上基地局131が地上に提供する非地上通信セル132内の通信機2と通信可能な非地上系ネットワーク(NTN)13を含む。そして、本実施形態に係る通信制御装置は、TNおよびNTNを制御する。
【0028】
以下では、
図2を共通して参照しながら、本発明を実施するための複数の実施形態を個別に説明する。各実施形態の作用や効果を阻害しない限り、各実施形態の全部または一部の構成要素は任意に組み合わせることができる。また、複数の実施形態で共通または同様の構成要素には同一の符号を付して重複した説明を省略する。
【0029】
図2は、地上に設置される地上基地局111、121が地上に提供する地上通信セル112、122(
図2では「TN Cell」と表記される)および飛行する非地上基地局131が地上に提供する非地上通信セル132(
図2では「NTN Cell」と表記される)によって構成される位置登録エリアまたはトラッキングエリア(
図2では「TA」と表記される)の例を模式的に示す。第1位置登録エリアTA1は、地理的に隣接または近接する一または複数(
図2では複数)の地上通信セル112、122によって構成される位置登録エリアであり、第2位置登録エリアTA2は、地理的に隣接または近接する一または複数(
図2では一つ)の非地上通信セル132によって構成される位置登録エリアであり、第3位置登録エリアTA3は、地理的に隣接または近接する一または複数(
図2では複数)の地上通信セル112、122によって構成される位置登録エリアである。
【0030】
各位置登録エリアTA1~TA3には、TAC(Tracking Area Code)と呼ばれる位置登録エリアを一意的に特定するコードまたはIDが付与されており、
図2では簡易的に「#1」~「#3」と示されている。具体的には、第1位置登録エリアTA1のTACまたはIDは「#1」であり、第2位置登録エリアTA2のTACまたはIDは「#2」であり、第3位置登録エリアTA3のTACまたはIDは「#3」である。但し、後述するように、第2位置登録エリアTA2のTACまたはIDが第1位置登録エリアTA1と同じ「#1」に設定される場合もある。このように、一つの位置登録エリアは種別の異なる通信セル(地上通信セル112、122および非地上通信セル132)を含んでもよい。
図2の例では、通信機2Eが第1位置登録エリアTA1内にあり、通信機2Fが第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2の重複エリア内にあり、通信機2Gが第2位置登録エリアTA2内にあり、通信機2Hが第2位置登録エリアTA2および第3位置登録エリアTA3の重複エリア内にあり、通信機2Iが第3位置登録エリアTA3内にある(以下では通信機2E~2Iも通信機2と総称する)。
【0031】
図3は、第1実施形態に係る通信制御装置3の機能ブロック図である。通信制御装置3は、推定部301と、接続検知部302と、重複エリア特定部303と、接続変更制限部304と、接続制御部305と、エリア変更検知部306と、エリア変更通知部307と、接続履歴情報保持部308を備える。これらの機能ブロックは、コンピュータの中央演算処理装置、メモリ、入力装置、出力装置、コンピュータに接続される周辺機器等のハードウェア資源と、それらを用いて実行されるソフトウェアの協働により実現される。コンピュータの種類や設置場所は問わず、上記の各機能ブロックは、単一のコンピュータのハードウェア資源で実現してもよいし、複数のコンピュータに分散したハードウェア資源を組み合わせて実現してもよい。特に本実施形態では、通信制御装置3の機能ブロックの一部または全部を、通信機2(2F等)、地上基地局111、121、非地上基地局131、コアネットワークCNに設けられるコンピュータやプロセッサで分散的または集中的に実現してもよい(
図3では便宜上これら全てを別体として示している)。
【0032】
本実施形態では、地上基地局によって構成される第1位置登録エリアTA1および非地上基地局によって構成される第2位置登録エリアTA2に、異なるTACまたはID「#1」および「#2」が付与されている。すなわち、当該地上基地局が地上に提供する地上通信セルおよび当該非地上基地局が地上に提供する非地上通信セルは、互いに異なる位置登録エリアTA1およびTA2に属する。この場合、第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2の重複エリアOA内の通信機2Fは、第1位置登録エリアTA1内の地上基地局および第2位置登録エリアTA2内の非地上基地局の両方と通信可能である。当該重複エリアOA内の通信機2Fの接続先が地上基地局と非地上基地局の間で頻繁に切り替わると、そのたびに通信機2Fが属する位置登録エリアが変更されるため、後述するエリア変更通知部307によるエリア変更通知が頻発してしまう。本実施形態に係る通信制御装置3は、このような地上通信セルと非地上通信セルの重複エリアOAにおける位置登録エリアの変更またはエリア変更通知の頻発を抑制するものである。
【0033】
推定部301は、重複エリアOA内の通信機2Fの接続状況(地上基地局および非地上基地局のいずれと接続されているか等)や位置(重複エリアOA内にいるか否か等)を推定する。推定部301は、重複エリアOA内の通信機2Fの接続状況や位置を示唆する情報を、通信機2(2F等)、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局、第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局、コアネットワークCN、無線通信システム1外の任意のデータベース4等から取得する。
【0034】
例えば、5GのコアネットワークCNとしての5GCに導入されたNWDAF(Network Data Analytics Function)やLMF(Location Management Function)から、重複エリアOA内の通信機2Fの接続状況や位置を示唆する情報が得られる。NWDAFは、5Gを含むネットワーク上のデータの収集と分析を担う。具体的には、NWDAFは、ネットワークに接続された多数の通信機2がネットワーク上で行った各種の活動に関する活動履歴情報(通信機2の接続先の基地局や通信機2の位置に関する履歴情報を含む)を収集および蓄積し、それらの分析結果を例えばネットワーク上のトラフィック制御に活用する。LMFは、5Gを含むネットワーク上の各通信機2の物理的な位置を管理する。なお、5Gより後の世代の無線通信システムを含む他の無線通信システムにおいて、NWDAFおよび/またはLMFと同様の機能が異なる名称で提供されることも想定されるが、本実施形態ではそのような類似機能をNWDAFおよび/またはLMFに代えてまたは加えて利用してもよい。
【0035】
また、無線通信システム1外のデータベース4は、ネットワークに接続された多数の通信機2について地図サービスや位置追跡サービスを提供するサービス事業者が使用するサーバを含み、ここからも重複エリアOA内の通信機2Fの位置等を示唆する情報が得られる。これらのサービスでは、ネットワークに接続された多数の通信機2の位置データをGPSモジュール等から収集および蓄積し、それらの分析に基づいて例えば各地域の時間帯毎の混雑状況に関するデータを生成することで、サービス品質向上等に活用している。
【0036】
以上のように、コアネットワークCN(NWDAF等)および/またはデータベース4からは、主として不特定多数の通信機2のネットワーク上の活動に関する統計情報(接続先の基地局に関する統計情報を含む)および/または物理的位置に関する履歴情報が取得可能である。
図3の例では、重複エリアOAおよび非重複エリア(例えば通信機2Eや2Gがいるエリア)のそれぞれにおける各時間帯の混雑状況や通信トラフィック等の活動履歴情報を、重複エリアOA内の通信機2Fの現在の接続状況や位置を示唆する情報として、推定部301がコアネットワークCNやデータベース4から取得できる。例えば、推定部301が通信機2Fの現在の接続状況や位置の推定を行う時間帯において、重複エリアOA内の通信機2の数や通信量が非重複エリア内の通信機2の数や通信量よりも平均的に多いことや、当該重複エリアOA内の通信機2の大半が地上基地局に接続されていたことを、コアネットワークCNやデータベース4からの活動履歴情報が示唆している場合、通信機2Fは重複エリアOA内にいる可能性が高く、かつ、地上基地局(第1位置登録エリアTA1)に接続されている可能性が高いと推定できる。
【0037】
なお、コアネットワークCNやデータベース4からの不特定多数の通信機2の活動履歴情報に限らず、推定対象の通信機2F自身の活動履歴情報を通信機2F自身、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局、第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局、コアネットワークCN、データベース4等から取得できる場合、通信機2Fの接続状況や位置を高精度に推定できる。例えば、推定部301が通信機2Fの現在の接続状況や位置の推定を行う時間帯において、通信機2Fが過去に非重複エリアより重複エリアOA内にいた頻度が高いことや、重複エリアOA内にいた通信機2Fが過去に地上基地局に接続されていた頻度が高いことを、取得した活動履歴情報が示唆している場合、通信機2Fは重複エリアOA内にいる可能性が極めて高く、かつ、地上基地局(第1位置登録エリアTA1)に接続されている可能性が極めて高いと推定できる。
【0038】
また、このような過去の別日の活動履歴情報に加えてまたは代えて、推定部301が通信機2Fの現在の接続状況や位置の推定を行う直前(例えば1時間以内)の通信機2Fの活動履歴情報を利用してもよい。例えば、推定部301が通信機2Fの現在の接続状況や位置の推定を行う30分前以内に、通信機2Fが重複エリアOA内にいて地上基地局に接続されていたことを、取得した活動履歴情報が示唆している場合、通信機2Fが引き続き重複エリアOA内にいて地上基地局(第1位置登録エリアTA1)に接続されている可能性が極めて高いと推定できる。
【0039】
主に不特定多数の通信機2の活動履歴情報を収集するNWDAFやデータベース4に対して、LMFは特定の通信機2Fのネットワーク上の活動に関する統計情報および/または物理的位置に関する履歴情報を収集可能である。例えば、推定部301が通信機2Fの現在の接続状況や位置の推定を行う時間帯において、通信機2Fが過去に非重複エリアより重複エリアOA内にいた頻度が高いことや、重複エリアOA内にいた通信機2Fが過去に地上基地局に接続されていた頻度が高いことを、LMFから得られた活動履歴情報が示唆している場合、通信機2Fは重複エリアOA内にいる可能性が極めて高く、かつ、地上基地局(第1位置登録エリアTA1)に接続されている可能性が極めて高いと推定できる。また、推定部301が通信機2Fの現在の接続状況や位置の推定を行う30分前以内に、通信機2Fが重複エリアOA内にいて地上基地局に接続されていたことを、LMFから得られた活動履歴情報が示唆している場合、通信機2Fが引き続き重複エリアOA内にいて地上基地局(第1位置登録エリアTA1)に接続されている可能性が極めて高いと推定できる。なお、以上のような特定の通信機2Fの活動履歴情報は、通信機2Fに搭載されたGPSモジュールやメモリ等、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局、第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局等から推定部301が直接的に取得してもよい。
【0040】
なお、推定部301の推定対象である通信機2Fの接続状況が、後述する接続制御部305から直接的にリアルタイムで認識できる場合は、推定部301は通信機2Fの接続状況を推定しなくてもよい。同様に、推定部301の推定対象である通信機2Fの位置が、通信機2Fに搭載されたGPSモジュール等から直接的にリアルタイムで認識できる場合は、推定部301は通信機2Fの位置を推定しなくてもよい。
【0041】
接続検知部302は、重複エリアOA内の通信機2Fが第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局および第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局のいずれと接続されているかを検知する。接続検知部302は、推定部301で推定された通信機2Fの接続状況や、接続制御部305で認識された通信機2Fのリアルタイムの接続状況に基づいて、重複エリアOA内の通信機2Fが接続されている基地局を検知してもよい。
【0042】
重複エリア特定部303は、第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2の重複エリアOAを特定すると共に、通信機2Fが重複エリアOA内にいるか否か検知する。重複エリア特定部303は、推定部301で推定された通信機2Fの位置や、通信機2Fに搭載されたGPSモジュール等で認識された通信機2Fのリアルタイムの位置に基づいて、通信機2Fが重複エリアOA内にいるか否かを判定してもよい。
【0043】
接続変更制限部304は、重複エリア特定部303によって通信機2Fが重複エリアOA内にいることが確認されている間は、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局および第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局の一方の基地局から他方の基地局への当該通信機2Fの接続先の変更を制限する。例えば、接続変更制限部304は、重複エリアOA内の通信機2Fから受信した他方の基地局への接続先の変更の要求を少なくとも一回拒否する。また、接続変更制限部304は、重複エリアOA内の通信機2Fに対して、他方の基地局が含まれる位置登録エリアを遷移禁止エリアとして通知してもよい。
【0044】
具体的には、重複エリアOA内の通信機2Fが第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局に接続されている場合、第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局への当該通信機2Fの接続先の変更が制限される。逆に、重複エリアOA内の通信機2Fが第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局に接続されている場合、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局への当該通信機2Fの接続先の変更が制限される。これによって、通信機2Fが重複エリアOA内にいることが確認されている間は、位置登録エリアの変更に直結する接続先の基地局種別の変更が制限される。このように、本実施形態によれば、重複エリアOAにおける位置登録エリアの変更の頻発および後述するエリア変更通知部307によるエリア変更通知の頻発を抑制できる。
【0045】
接続制御部305は、各通信機2を各基地局に接続させ、各基地局の通信品質の変動や各通信機2の移動に応じて、各通信機2の接続先の基地局を変更する。重複エリアOA内の通信機2Fについては、前述のように重複エリアOA内での基地局種別の変更が制限されるが、重複エリアOA内で接続中の一方の種別の基地局の通信品質が極度に悪化した場合や、通信機2Fが重複エリアOA外に移動した場合(重複エリア特定部303によって検知される)は、他方の種別の基地局に接続先を変更することが許容される。
【0046】
エリア変更検知部306は、各通信機2が接続されている位置登録エリアの変更を検知する。例えば、重複エリアOA内で第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局に接続されていた通信機2Fが重複エリアOA外に移動し、第1位置登録エリアTA1外かつ第2位置登録エリアTA2内のエリアに移動した場合、接続制御部305は通信機2Fを第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局に接続する。この時、通信機2Fの接続先の位置登録エリアは、第1位置登録エリアTA1から第2位置登録エリアTA2に変更され、エリア変更検知部306によって検知される。
【0047】
エリア変更通知部307は、エリア変更検知部306によって各通信機2の接続先の位置登録エリアの変更が検知された際にエリア変更通知(TA Update)を生成する。エリア変更検知部306およびエリア変更通知部307は典型的には通信機2Fに設けられる。具体的には、通信機2Fは、接続変更先の非地上基地局が発信する報知情報に含まれるTAC「#2」に基づいて自身が第2位置登録エリアTA2に接続されたことを認識すると共に、接続変更元の地上基地局が発信していた報知情報に含まれていた第1位置登録エリアTA1のTAC「#1」との相違に基づいて、自身の接続先の位置登録エリアが変更されたことを検知する(エリア変更検知部306)。そして、通信機2Fは自身の接続先の位置登録エリアが変更されたことをエリア変更通知の形でコアネットワークCNに通知する(エリア変更通知部307)。
【0048】
接続履歴情報保持部308は、重複エリアOA内の通信機2Fの接続先が一方の種別の基地局(例えば地上基地局)から他方の種別の基地局(例えば非地上基地局)に変更された場合、一方の種別の基地局への接続履歴情報を保持する。典型的には通信機2Fに設けられる接続履歴情報保持部308は、通信機2Fが一方の種別の基地局に接続されていたことを表す接続履歴情報を、少なくとも所定時間に亘って保持する。エリア変更通知部307は、接続履歴情報保持部308が接続履歴情報を保持している間、かつ、重複エリア特定部303によって通信機2Fが重複エリアOA内にいることが確認されている間に、通信機2Fの接続先が他方の種別の基地局から接続履歴情報が保持されている一方の種別の基地局に再び変更された場合はエリア変更通知を生成しない。例えば、重複エリアOA内の通信機2Fの接続先が、地上基地局から非地上基地局に変更された後に再び地上基地局に変更された場合、接続履歴情報保持部308が保持している接続履歴情報に基づいて、第2位置登録エリアTA2(非地上基地局)から第1位置登録エリアTA1(地上基地局)へのエリア変更通知が生成されないため、重複エリアOAにおけるエリア変更通知の頻発を抑制できる。
【0049】
図4は、第1実施形態に係る通信制御装置3の通信制御処理を示すフローチャートである。フローチャートにおける「S」はステップまたは処理を意味する。S1では、重複エリア特定部303が、第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2の重複エリアOAを特定すると共に、通信機2Fが重複エリアOA内にいるか否かを判定する。S1でYesの場合はS2に進み、推定部301が、重複エリアOA内の通信機2Fの接続状況を推定する。S3では、接続検知部302が、S2で推定された通信機2Fの接続状況や、接続制御部305で認識された通信機2Fのリアルタイムの接続状況に基づいて、重複エリアOA内の通信機2Fが、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局および第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局のいずれと接続されているかを検知する。
【0050】
S4では、接続変更制限部304が、S1によって通信機2Fが重複エリアOA内にいることが確認されている間は、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局および第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局の一方の基地局から他方の基地局への当該通信機2Fの接続先の変更を制限する。S5では、接続制御部305によって通信機2Fの接続先の基地局が変更されたか否かが判定される。S5でYesの場合はS6に進み、エリア変更検知部306が、通信機2Fが接続されている位置登録エリアの変更を検知し、エリア変更通知部307が、エリア変更通知(TA Update)を生成する。S7では、重複エリア特定部303が、通信機2Fが重複エリアOA内にいるか否かを判定する。
【0051】
S7でNoの場合は、通信機2Fが重複エリアOA外に移動したことによって、S5における接続先の基地局の変更が発生したことを意味する。S7でYesの場合は、通信機2Fが重複エリアOA内に留まっている状態で、S5における接続先の基地局の変更が発生したことを意味する。この場合は続くS8において、接続履歴情報保持部308が、重複エリアOA内の通信機2FがS5における接続先変更の前に一方の種別の基地局に接続されていたことを表す接続履歴情報を生成して保持する。S9では、接続制御部305によって重複エリアOA内の通信機2Fの接続先の基地局が再び変更されたか否かが判定される。S9でYesの場合はS10に進むが、エリア変更通知部307は、S8で生成された接続履歴情報が接続履歴情報保持部308によって保持されている間は、S9における接続先変更に伴うエリア変更通知を生成しない。
【0052】
図5は、第2実施形態に係る通信制御装置3の機能ブロック図である。通信制御装置3は、第1実施形態(
図3)と同様の推定部301と、接続検知部302と、重複エリア特定部303を備え、第1ページング制御部309と、第2ページング制御部310と基地局種別記録部311を追加的に備える。第1実施形態と共通する機能ブロックについての重複した説明は省略する。
【0053】
本実施形態では、地上通信セル112、122によって構成される第1位置登録エリアTA1と、非地上通信セル132によって構成される第2位置登録エリアTA2に、同一のTACまたはID「#1」が付与されている。つまり、第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2は、「#1」のTACまたはIDが付与された一つの大きな統合位置登録エリアTA0を構成する。
【0054】
一般的に、ある位置登録エリア内の通信機に対して通話呼び出しやショートメッセージ配信を行う場合、当該通信機を呼び出すためのページング信号が当該位置登録エリア内の全ての基地局から一斉に送信される。このため、統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hを呼び出すためのページング信号は、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局111、121からだけでなく、第2位置登録エリアTA2を構成する通信衛星131からも一斉に送信される。統合位置登録エリアTA0は広範なエリアであり、含まれる基地局および在圏する通信機の数も多いため、ページング信号の送信のためのネットワーク負荷が増大してしまう。また、前述の通り、一般的に通信機2は地上基地局111、121に優先的に接続されるため、多くの地域で通信衛星131に通信機2が接続されている可能性は相対的に低いと考えられる。通信衛星131に搭載されたソーラーパネルが太陽光から発電した限られた電力を、呼び出し成功確率が相対的に低いと考えられるページング信号の送信に浪費させることは好ましくない。本実施形態に係る通信制御装置3は、地上通信セルおよび非地上通信セルをそれぞれ少なくとも一つ含む統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hに対するページング信号を効率的に送信させるものである。
【0055】
基地局推定部としての推定部301は、統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hが接続されている基地局を推定する。推定部301は、
図3の第1実施形態の推定部301と同様に構成できる。第1実施形態の推定部301は、重複エリアOA内の通信機2Fの接続状況や位置を推定するものであったが、本実施形態の推定部301は、重複エリアOA内に限らない統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hの接続状況として、接続先の基地局の種別(地上基地局111、121または非地上基地局131)を推定する。なお、本実施形態の推定部301は、第1実施形態と同様に、統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hのその他の接続状況や位置を推定してもよい。
【0056】
推定部301は、統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hの性能情報、対応周波数情報、契約情報、位置情報、通信状況情報、活動履歴情報、統合位置登録エリアTA0内の不特定多数の通信機2の活動履歴情報の少なくとも一つに基づいて、統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hが接続されている基地局の種別を推定する。統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hの接続先の基地局の種別を示唆するこれらの情報は、推定対象の通信機2自身、第1位置登録エリアTA1を構成する地上基地局、第2位置登録エリアTA2を構成する非地上基地局、コアネットワークCN、無線通信システム1外の任意のデータベース4等から推定部301が取得する。
【0057】
例えば、推定対象の通信機2の性能情報、対応周波数情報、契約情報、通信状況情報、活動履歴情報は、地上基地局111、121を通じた地上通信および非地上基地局131を通じた非地上通信それぞれへの通信機2の対応の可否や傾向を表すため、通信機2の接続先の基地局の種別に関する有益な示唆が得られる。また、コアネットワークCNのLMFや通信機2のGPSモジュール等から得られる推定対象の通信機2の位置情報によれば、当該通信機2の統合位置登録エリアTA0内の位置を検知または推定できるため、第1位置登録エリアTA1内かつ重複エリアOA外の通信機2Eの接続先は地上基地局111、121であると推定または断定でき、第2位置登録エリアTA2内かつ重複エリアOA外の通信機2G、2Hの接続先は非地上基地局131であると推定または断定できる。重複エリアOA内の通信機2Fについては、第1実施形態と同様に、コアネットワークCNのNWDAFやデータベース4から得られる不特定多数の通信機2の活動履歴情報等も参照しながら、推定部301が接続先の基地局の種別を推定する。
【0058】
接続検知部302は、推定部301の推定結果も参照しながら、統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hが接続されている基地局(の種別)を検知する。重複エリア特定部303は、第1位置登録エリアTA1(地上通信セル112、122)および第2位置登録エリアTA2(非地上通信セル132)の重複エリアOAを特定すると共に、当該重複エリアOA内の通信機2Fを検知する。
【0059】
第1ページング制御部309は、地上通信セル112、122および非地上通信セル132をそれぞれ少なくとも一つ含む統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2H宛ての通話呼び出しやショートメッセージをコアネットワークCNから受信すると、当該通信機2E、2F、2G、2Hに対する第1ページング信号を地上基地局111、121および非地上基地局131の一方の種別の基地局から送信させる。
【0060】
例えば、図示されるように、第1ページング制御部309は、地上基地局111、121(第1位置登録エリアTA1)から第1ページング信号を送信させる。この第1ページング信号によって、第1位置登録エリアTA1内で地上基地局111、121に接続されている通信機2E、2F等を正常に呼び出すことができる。第1ページング信号による呼び出しが成功すれば、後述する通信衛星131からの第2ページング信号の送信が不要になるため、通信衛星131の限られた電力を節約できる。また、統合位置登録エリアTA0に含まれる一部の基地局のみから第1ページング信号を送信させることで、ページング信号の送信のためのネットワーク負荷を低減できる。
【0061】
第1ページング制御部309は、非地上基地局としての通信衛星131(第2位置登録エリアTA2)から第1ページング信号を送信させてもよい。この第1ページング信号によって、第2位置登録エリアTA2内で通信衛星131に接続されている通信機2F、2G、2H等を正常に呼び出すことができる。
【0062】
第1ページング制御部309は、推定部301が推定した種別の基地局および/または接続検知部302が検知した種別の基地局から第1ページング信号を送信させるのが好ましい。例えば、第1位置登録エリアTA1(地上通信セル112、122)内かつ重複エリアOA外にいるため地上基地局111、121に接続されている可能性が高い通信機2Eを呼び出す場合は、地上基地局111、121から第1ページング信号を送信させる。また、第2位置登録エリアTA2(衛星通信セル132)内かつ重複エリアOA外にいるため通信衛星131に接続されている可能性が高い通信機2G、2Hを呼び出す場合は、通信衛星131から第1ページング信号を送信させる。
【0063】
第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2の重複エリアOA内にいる通信機2Fを呼び出す場合は、重複エリア特定部303によって当該通信機2Fが重複エリアOA内に実際にいることを確認した上で、推定部301の推定結果および/または接続検知部302の検知結果に基づいて、当該通信機2Fが接続されている可能性の高い種別の基地局(地上基地局111、121または非地上基地局131)から第1ページング信号を送信させる。なお、第1ページング制御部309は、重複エリアOA内の通信機(2F等)を呼び出す場合のみに推定部301の推定結果を利用してもよい。前述のように、重複エリアOA外の通信機(2E、2G、2H等)については、GPSモジュール等によって当該通信機の位置が分かっている限り、いずれの種別の基地局に接続されている可能性が高いかは推定せずとも明らかだからである。
【0064】
第2ページング制御部310は、第1ページング信号に対する統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hからの応答がない場合、当該通信機2E、2F、2G、2Hに対する第2ページング信号を地上基地局111、121および非地上基地局131の他方の種別の基地局から送信させる。
【0065】
例えば、図示されるように、第1ページング制御部309が地上基地局111、121(第1位置登録エリアTA1)から送信させた第1ページング信号に対する応答が所定時間以内になかった場合、第2ページング制御部310は通信衛星131(第2位置登録エリアTA2)から第2ページング信号を送信させる。この第2ページング信号によって、第2位置登録エリアTA2内で通信衛星131に接続されている通信機2F、2G、2H等を正常に呼び出すことができる。
【0066】
また、第1ページング制御部309が通信衛星131(第2位置登録エリアTA2)から送信させた第1ページング信号に対する応答が所定時間以内になかった場合、第2ページング制御部310は地上基地局111、121(第1位置登録エリアTA1)から第2ページング信号を送信させる。この第2ページング信号によって、第1位置登録エリアTA1内で地上基地局111、121に接続されている通信機2E、2F等を正常に呼び出すことができる。
【0067】
基地局種別記録部311は、統合位置登録エリアTA0内の通信機2E、2F、2G、2Hが通信状態(接続状態ともいう)から非通信状態(待ち受け状態ともいう)に遷移する際に、当該遷移直前に接続されていた基地局の種別を接続検知部302から取得して記録する。第1ページング制御部309は、基地局種別記録部311が記録した種別の基地局から第1ページング信号を送信させてもよい。基地局種別記録部311が接続先の基地局の種別を記録した通信機2は、待ち受け状態に遷移した後も少なくとも所定時間は遷移する前の基地局と接続可能な状態に留まっていると考えられるため、第1ページング信号による呼び出し成功確率を高めることができる。基地局種別記録部311による記録後の所定時間経過前の呼び出しの際は、基地局種別記録部311が記録した種別の基地局から第1ページング信号を送信させ、基地局種別記録部311による記録後の所定時間経過後の呼び出しの際は、推定部301の推定結果および/または接続検知部302の検知結果に基づく種別の基地局から第1ページング信号を送信させてもよい。
【0068】
図6は、第3実施形態に係る通信制御装置3の機能ブロック図である。通信制御装置3は、第1実施形態(
図3)および/または第2実施形態(
図5)と同様の推定部301と、接続検知部302と、重複エリア特定部303と、接続制御部305を備え、接続可否判定部312と、接続確立情報保持部313を追加的に備える。第1実施形態および/または第2実施形態と共通する機能ブロックについての重複した説明は省略する。
【0069】
本実施形態では、地上通信セル112、122によって構成される第1位置登録エリアTA1と、非地上通信セル132によって構成される第2位置登録エリアTA2に、異なるTAC「#1」「#2」または同一のTAC「#1」が付与されている。つまり、第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2は、第1実施形態と同様に互いに異なる位置登録エリアを構成してもよいし、第2実施形態と同様に一つの大きな統合位置登録エリアを構成してもよい。本実施形態は、位置登録エリアの構成に関わらず、地上通信セル112、122(第1位置登録エリアTA1等)および非地上通信セル132(第2位置登録エリアTA2等)の重複エリアOAにおける通信制御に関する。
【0070】
重複エリアOA内の通信機2Fは、地上通信セル112、122を提供する地上基地局111、121および衛星通信セル132を提供する通信衛星131のいずれか一方に接続される。例えば、重複エリアOA内の通信機2Fが地上基地局111、121に接続されている間は、通信衛星131に接続されていない。この状態で、地上基地局111、121が属するTN(地上系ネットワーク)に災害や事故等による通信障害が発生すると、TNに接続不可能となった重複エリアOA内の通信機2Fは、通信衛星131が属するNTN(非地上系ネットワーク)への接続を試みる。このような接続先のネットワークの切り替えは、一般的に、コアネットワークCNにおける通信機2Fの契約情報や通信事業者(キャリア)のネットワーク情報(TNについてはPLMN(Public Land Mobile Network)番号とも呼ばれる)の確認を伴うため時間を要する。災害発生時等の緊急時には、このような長いネットワーク切替時間が許容されない可能性がある。本実施形態に係る通信制御装置3は、地上通信セルおよび非地上通信セルの重複エリアにおけるネットワーク切替時間を短縮するものである。
【0071】
本実施形態に係る通信制御装置3の機能ブロックのうち、推定部301、接続検知部302、重複エリア特定部303は、第1実施形態(
図3)および/または第2実施形態(
図5)と同様であるため、説明を省略する。
【0072】
接続可否判定部312は、地上通信セル112、122(第1位置登録エリアTA1)および非地上通信セル132(第2位置登録エリアTA2)の重複エリアOA内で地上基地局111、121および非地上基地局131の一方の基地局に接続されている通信機2Fに対して、地上基地局111、121および非地上基地局131の他方の基地局への接続可否判定を行う。重複エリアOA内の通信機2Fが接続されている一方の基地局(の種別)は、接続検知部302によって検知される。接続検知部302によって地上基地局111、121に接続されていることが検知された通信機2Fに対して、接続可否判定部312は他方の基地局である通信衛星131への接続可否判定を行う。逆に、接続検知部302によって通信衛星131に接続されていることが検知された通信機2Fに対して、接続可否判定部312は他方の基地局である地上基地局111、121への接続可否判定を行う。
【0073】
このように他方の基地局への接続可否判定を予め行うことによって、一方の基地局が接続不可能となるような不測の事態が発生した場合、通信機2Fの接続先を他方の基地局に迅速に切り替えることができる。なお、他方の基地局も接続不可能となってしまった場合に通信機2Fが無駄な接続を試みるようなことを防止するために、接続可否判定部312は、通信機2Fの他方の基地局への接続可否判定を一定または可変の頻度で行い、接続可否判定結果を更新するのが好ましい。
【0074】
接続確立情報保持部313は、接続可否判定部312によって重複エリアOA内の通信機2Fが他方の基地局に接続可能と判定された場合、当該通信機2Fと当該他方の基地局の接続を確立する接続確立情報を保持する。一方の基地局が接続不可能となるような不測の事態が発生した場合、重複エリアOA内の通信機2Fは、接続確立情報保持部313が保持する接続確立情報を利用して、他方の基地局との接続を迅速に確立できる。接続確立情報保持部313は、コアネットワークCN、接続切替元の一方の基地局、接続切替先の他方の基地局で実現してもよいが、通信機2F自身で実現することで通信機2Fが迅速かつ主体的に接続先を切り替えられるようにするのが好ましい。
【0075】
通信機2F外に接続確立情報保持部313が設けられる場合は、コアネットワークCNおよび/または接続切替元の一方の基地局が通信機2Fに対して、接続確立情報保持部313の所在と、そこに他方の基地局との接続を確立するための接続確立情報が保持されている旨を通知する。この通知を受けた通信機2Fは、他方の基地局に接続先を切り替えられるということを予め認識でき、不測の事態が発生した場合には通知された所在の接続確立情報に基づいて迅速に他方の基地局との接続を確立できる。
【0076】
少なくともコアネットワークCN外に接続確立情報保持部313を設けることで、接続先のネットワークの切り替えのためにコアネットワークCNへの時間のかかる問合せを行う必要がなくなるため、従来に比べてネットワーク切替時間を短縮できる。なお、接続確立情報保持部313は、接続可否判定部312が接続可否判定結果を更新するたびに、接続確立情報を更新するのが好ましい。接続可否判定部312の接続可否判定結果が「他方の基地局への接続不可」に更新された場合、接続確立情報保持部313は、保持していた接続確立情報を破棄してもよいし、接続可否判定部312の接続可否判定結果が「他方の基地局への接続可」に再び更新される場合に備えて、保持していた接続確立情報を保持し続けてもよい。
【0077】
接続制御部305は、重複エリアOA内の通信機2Fが接続中だった一方の基地局(例えば、地上基地局111、121)に接続不可能となった場合、接続確立情報保持部313に保持されている接続確立情報に基づいて、接続可否判定部312で接続可能と判定された他方の基地局(例えば、通信衛星131)に当該通信機2Fを接続させる。
【0078】
図7は、第4実施形態に係る通信制御装置3の機能ブロック図である。通信制御装置3は、第1実施形態(
図3)、第2実施形態(
図5)および/または第3実施形態(
図6)と同様の重複エリア特定部303と、接続制御部305を備え、通信機管理部314を追加的に備える。第1実施形態、第2実施形態および/または第3実施形態と共通する機能ブロックについての重複した説明は省略する。
【0079】
本実施形態では、地上通信セル112、122によって構成される第1位置登録エリアTA1と、非地上通信セル132によって構成される第2位置登録エリアTA2に、異なるTAC「#1」「#2」または同一のTAC「#1」が付与されている。つまり、第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2は、第1実施形態(
図3)と同様に互いに異なる位置登録エリアを構成してもよいし、第2実施形態(
図5)と同様に一つの大きな統合位置登録エリアを構成してもよい。本実施形態は、位置登録エリアの構成や通信機2の所在に関わらず、地上通信セル112、122(第1位置登録エリアTA1等)および非地上通信セル132(第2位置登録エリアTA2等)の少なくともいずれかの種別の通信セルと接続可能な任意の通信機2(
図7では通信機2E~2I等)の接続権限の管理と通信制御に関する。
【0080】
従来、無線通信システム1に対する通信機2の接続権限を管理するために、EIR(Equipment Identity Register)がコアネットワークCNに設けられている。EIRは、通信機2(UE)のデータベースであり、各通信機2を特定するIMEI(International Mobile Equipment Identity)等の通信機特定情報または通信機IDに加え、各通信機2の無線通信システム1(特に5G無線通信システム11等の地上系通信システム)に対する接続権限の有無または「White」「Black」「Grey」等の分類が記録されている。例えば、接続権限を持つ「White」な通信機2は無線通信システム1に対する接続が許容され、接続権限を持たない「Black」な通信機2は無線通信システム1に対する接続が禁止される。また、接続権限の有無が未確定の「Grey」な通信機2もEIRに登録されている。
【0081】
従来のEIRは、5G無線通信システム11等の地上系通信システムを念頭に置いて設計されているため、地上系通信システムと衛星通信システム13等の非地上系通信システムが併存する無線通信システム1に適用すると不具合が生じる。例えば、地上系通信システムの一部である第1位置登録エリアTA1および非地上系通信システムの一部である第2位置登録エリアTA2の重複エリアOA内の通信機2FがEIRで「White」と分類されていた場合、地上系通信システムおよび非地上系通信システムの両方に対する接続権限を持つのか、いずれか一方に対する接続権限を持つのか不明である。同様に、重複エリアOA内の通信機2FがEIRで「Black」と分類されていた場合、地上系通信システムおよび非地上系通信システムの両方に対する接続権限を持たないのか、いずれか一方に対する接続権限を持たないのか不明である。本実施形態に係る通信制御装置3は、地上系通信システムおよび非地上系通信システムそれぞれに対する接続権限を個別に管理するものである。
【0082】
通信機管理部314は、地上系通信システムおよび非地上系通信システムの少なくともいずれかと通信可能な任意の通信機2(
図7では通信機2E~2I等)を、コアネットワークCN内のEIRまたは通信機固有情報保持部に登録して管理する。通信機管理部314は、地上基地局111、121(地上系通信システム/第1位置登録エリアTA1等)に対する通信機2の第1接続権限(TN接続権限)を登録して管理する第1接続権限管理部315と、非地上基地局131(非地上系通信システム/第2位置登録エリアTA2等)に対する通信機2の第2接続権限(NTN接続権限)を登録して管理する第2接続権限管理部316を備える。
【0083】
図8は、通信機管理部314が通信機2FをEIRに登録して管理する処理を模式的に示す。なお、
図7において通信機2Fは第1位置登録エリアTA1および第2位置登録エリアTA2の重複エリアOA内にいるが、
図8においてEIRへの登録処理を行う際の通信機2Fの場所は任意であり、
図7に図示または不図示の任意の地上通信セル112、122、非地上通信セル132の内部にいて、地上基地局111、121、非地上基地局131によって構成される無線アクセスネットワーク(RAN:Radio Access Network)と通信可能な状態にあればよい。通信機2Fは、接続中のRANを介して、コアネットワークCNにおける接続・移動管理機能(AMF:Access and Mobility Management Function)に対して、登録リクエスト(Registration Request)を送信する。
【0084】
通信機2Fからの登録リクエストを受けたAMFまたはコアネットワークCNは、通信機2Fの性能情報、対応周波数情報、契約情報、位置情報、活動履歴情報や、通信機2Fがいる地域や国(場所)における法規制情報の少なくとも一つを参照し、地上系通信システムに対するTN接続権限および非地上系通信システムに対するNTN接続権限を個別にEIRに登録する。ここで、第1接続権限としてのTN接続権限は第1接続権限管理部315によって登録され、第2接続権限としてのNTN接続権限は第2接続権限管理部316によって登録される。
図8の例では、通信機2FのTN接続権限およびNTN接続権限がいずれも「White」と登録された結果、通信機2Fは地上系通信システムおよび非地上系通信システムのいずれとも接続可能である。
【0085】
なお、通信機2の性能情報、対応周波数情報、契約情報、活動履歴情報等が、当該通信機2が例えば衛星通信システム13と接続または通信する能力を持っていることを示していたとしても、当該通信機2がいる地域や国における法規制のために衛星通信システム13との接続または通信が合法化されていない場合も想定される。このような場合、第2接続権限管理部316は、通信機2がいる地域や国における法規制情報を参照し、当該通信機2の衛星通信システム13に対する接続の禁止を意味する「Black」や、非推奨を意味する「Grey」のNTN接続権限(第2接続権限)をEIRに登録する。
図8の例では、通信機2G、2H、2I等がこれに該当する。
【0086】
接続制御部305は、「White」の第1接続権限(TN接続権限)を有しない「Black」または「Grey」の通信機2E、2Iの地上基地局111、121への接続を制限し、「White」の第2接続権限(NTN接続権限)を有しない「Black」または「Grey」の通信機2G、2H、2Iの非地上基地局131への接続を制限する。例えば、
図7および
図8の例の通信機2Eは、第1位置登録エリアTA1(地上通信セル112、122)内にいるが、TN接続権限が「Black」であるため地上基地局111、121への接続が禁止される。通信機2Gは、第2位置登録エリアTA2(衛星通信セル132)内にいるが、NTN接続権限が「Grey」であるため通信衛星131への接続が制限される。通信機2Hは、第2位置登録エリアTA2(衛星通信セル132)および第3位置登録エリアTA3(地上通信セル112、122)の重複エリア内にいるが、NTN接続権限が「Black」であるため通信衛星131への接続が禁止され、地上基地局111、121への接続のみが許容される。通信機2Iは、第3位置登録エリアTA3(地上通信セル112、122)内にいるが、TN接続権限が「Grey」であるため地上基地局111、121への接続が制限される。
【0087】
第1位置登録エリアTA1(地上通信セル112、122)および第2位置登録エリアTA2(衛星通信セル132)の重複エリアOA内の通信機2Fは、TN接続権限およびNTN接続権限が共に「White」であるため、地上基地局111、121および通信衛星131のいずれとも接続できる。このような重複エリアOA内の通信機2Fは重複エリア特定部303によって検知される。そして、接続制御部305は、重複エリアOA内の通信機2Fが「White」のTN接続権限(第1接続権限)を有する場合、NTN接続権限(第2接続権限)の有無または如何によらず、当該通信機2Fを地上基地局111、121に接続させる。このように重複エリアOA内の通信機2Fを地上基地局111、121に優先的に接続させることで、通信衛星131の限られた通信リソース(電力を含む)を節約できる。なお、変形例として、通信機2FのTN接続権限およびNTN接続権限が共に「White」である場合、TNおよびNTNの通信品質を比較して優れている方に通信機2Fを接続させてもよい。
【0088】
以上のような接続制御部305による各通信機2の接続制御は、当該各通信機2からの接続要求を受けたコアネットワークCNにおけるAMFが、EIRに対して当該各通信機2のTN接続権限および/またはNTN接続権限を問い合わせることによって開始する。このAMFからEIRへの問合せは、
図8で「N5g-eir_MEIdentityCheck」として示されている。
図8の例では、通信機2Fからの接続要求に応じたAMFからEIRへの問合せの結果、TN接続権限およびNTN接続権限が共に「White」であることが分かる。
【0089】
前記のように、重複エリア特定部303によって重複エリアOA内にいることが検知されている通信機2Fは優先的にTNに接続されるため、AMFは最初に通信機2FのTN接続権限(第1接続権限)のみをEIRに問い合わせてもよい。この問合せの結果、TN接続権限が「White」であった場合は、AMFがEIRにNTN接続権限(第2接続権限)を問い合わせることなく、接続制御部305が通信機2Fを地上基地局111、121に接続させる。一方、通信機2FのTN接続権限が「Grey」または「Black」であった場合は、AMFはEIRにNTN接続権限(第2接続権限)を問い合わせる。この問合せの結果、TN接続権限よりも強いNTN接続権限が確認された場合(具体的には、TN接続権限が「Grey」でNTN接続権限が「White」の場合、あるいは、TN接続権限が「Black」でNTN接続権限が「Grey」または「White」の場合)、接続制御部305は通信機2Fを通信衛星131に接続させる。
【0090】
また、
図7の通信機2E、2G、2Iのように、TNおよびNTNのいずれか一方のみと接続可能な場所にいる通信機2については、接続可能性のあるネットワークのみについての接続権限をAMFがEIRに問い合わせてもよい。具体的には、地上通信セル112、122内の通信機2EについてはTN接続権限のみを問い合わせ、衛星通信セル132内の通信機2GについてはNTN接続権限のみを問い合わせ、地上通信セル112、122内の通信機2IについてはTN接続権限のみを問い合わせる。
【0091】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明した。実施形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組合せにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0092】
なお、実施形態で説明した各装置の機能構成はハードウェア資源またはソフトウェア資源により、あるいはハードウェア資源とソフトウェア資源の協働により実現できる。ハードウェア資源としてプロセッサ、ROM、RAM、その他のLSIを利用できる。ソフトウェア資源としてオペレーティングシステム、アプリケーション等のプログラムを利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明は、通信システムにおける通信制御技術に関する。
【符号の説明】
【0094】
1 無線通信システム、2 通信機、3 通信制御装置、4 データベース、11 5G無線通信システム、12 4G無線通信システム、13 衛星通信システム、111 5G基地局、112 5Gセル、121 4G基地局、122 4Gセル、131 通信衛星、132 衛星通信セル、133 ゲートウェイ、301 推定部、302 接続検知部、303 重複エリア特定部、304 接続変更制限部、305 接続制御部、306 エリア変更検知部、307 エリア変更通知部、308 接続履歴情報保持部、309 第1ページング制御部、310 第2ページング制御部、311 基地局種別記録部、312 接続可否判定部、313 接続確立情報保持部、314 通信機管理部、315 第1接続権限管理部、316 第2接続権限管理部、TA1 第1位置登録エリア、TA2 第2位置登録エリア、TA3 第3位置登録エリア。