(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】導電性粒子、導電材料及び接続構造体
(51)【国際特許分類】
H01B 5/00 20060101AFI20240731BHJP
H01B 1/00 20060101ALI20240731BHJP
H01B 1/22 20060101ALI20240731BHJP
H01B 5/16 20060101ALI20240731BHJP
H01R 11/01 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
H01B5/00 C
H01B1/00 C
H01B5/00 G
H01B1/00 G
H01B1/22 D
H01B5/16
H01R11/01 501E
(21)【出願番号】P 2023551188
(86)(22)【出願日】2023-07-25
(86)【国際出願番号】 JP2023027151
(87)【国際公開番号】W WO2024034386
(87)【国際公開日】2024-02-15
【審査請求日】2024-05-15
(31)【優先権主張番号】P 2022126226
(32)【優先日】2022-08-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001232
【氏名又は名称】弁理士法人大阪フロント特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】白石 翔大
【審査官】小林 秀和
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/138521(WO,A1)
【文献】特開2015-130328(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01B 5/00
H01B 1/00
H01B 1/22
H01B 5/16
H01R 11/01
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材粒子と、
ニッケルと錫とを含むNi-Sn導電層とを備え、
前記基材粒子の表面上に、前記Ni-Sn導電層が配置されており、
前記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満であり、
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み20%以上の領域において、錫が含まれ、
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上であ
り、
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、前記Ni-Sn導電層の全体に含まれる錫の合計100重量%中の80重量%以上の錫が含まれる、導電性粒子。
【請求項2】
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み10%以上かつ50%未満の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれる、請求項
1に記載の導電性粒子。
【請求項3】
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、
前記Ni-Sn導電層の厚み10%以上かつ50%未満の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれ、かつ、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上40重量%以下である、請求項
1に記載の導電性粒子。
【請求項4】
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み30%以下の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれる、請求項
1に記載の導電性粒子。
【請求項5】
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、10重量%以上である、請求項
1に記載の導電性粒子。
【請求項6】
TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、
前記Ni-Sn導電層の厚み30%以下の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれ、かつ、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、10重量%以上である、請求項
1に記載の導電性粒子。
【請求項7】
前記導電性粒子の粒子径が、0.1μm以上1000μm以下である、請求項1~
6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項8】
前記Ni-Sn導電層の外表面に複数の突起を有する、請求項1~
6のいずれか1項に記載の導電性粒子。
【請求項9】
請求項1~
6のいずれか1項に記載の導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料。
【請求項10】
第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、
第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、
前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、
前記接続部が、請求項1~
6のいずれか1項に記載の導電性粒子により形成されているか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されており、
前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電層とを有する導電性粒子に関する。また、本発明は、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
異方性導電ペースト及び異方性導電フィルム等の異方性導電材料が広く知られている。該異方性導電材料では、バインダー樹脂中に導電性粒子が分散されている。また、導電性粒子として、基材粒子と、該基材粒子の表面上に配置された導電部とを有する導電性粒子が用いられることがある。
【0003】
上記異方性導電材料は、各種の接続構造体を得るために用いられている。上記異方性導電材料を用いる接続としては、フレキシブルプリント基板とガラス基板との接続(FOG(Film on Glass))、半導体チップとフレキシブルプリント基板との接続(COF(Chip on Film))、半導体チップとガラス基板との接続(COG(Chip on Glass))、並びにフレキシブルプリント基板とガラスエポキシ基板との接続(FOB(Film on Board))等が挙げられる。
【0004】
導電性粒子が酸の存在下に晒されると、ニッケル等を含む導電層の腐食が生じることがある。また、そのような導電性粒子を用いて電極間を接続して接続構造体を得た場合には、接続構造体が酸の存在下に晒されると、電極間の接続抵抗が上昇することがある。このような理由から、酸の存在下に晒されても、導電層の腐食が生じ難い導電性粒子の開発が検討されている。
【0005】
上記導電性粒子の一例として、下記の特許文献1には、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置されており、かつニッケルを含む導電層とを備える導電性粒子が開示されている。上記導電性粒子では、上記ニッケルを含む導電層の融点が300℃以上である。上記導電性粒子では、上記ニッケルを含む導電層が、ニッケルと錫とを含む合金層であり、上記ニッケルを含む導電層の全体100重量%中、錫の平均含有量が5重量%以上、50重量%以下である。
【0006】
下記の特許文献2には、基材粒子と、上記基材粒子の表面上に配置されており、かつニッケルを含む導電層とを備え、上記ニッケルを含む導電層が、ニッケルとスズ及びインジウムの内の少なくとも1種とを含む合金層である導電性粒子が開示されている。上記導電性粒子では、上記ニッケルを含む導電層の外表面から内側に向かって厚み1/2までの領域の100重量%中、スズとインジウムとの合計の平均含有量が5重量%未満である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2015-130328号公報
【文献】WO2017/138521A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
近年、スマートウォッチやスマートグラス等のウェアラブルディスプレイや、各種センサー等に用いられる導電材料が注目されている。ウェアラブルディスプレイは、様々な環境で長時間連続して使用されることが前提であるので、ウェアラブルディスプレイに用いられる導電性粒子及び接続構造体には、高温、高湿かつ高電圧に長時間曝されても耐え得る性能が求められる。
【0009】
特許文献1に記載のような従来の導電性粒子を用いて、電極間を電気的に接続して接続構造体を得た場合には、錫の平均含有量が多いため、接続抵抗が高くなることがある。また、高温下に晒された導電性粒子を用いたり、導電性粒子を用いた接続構造体が高温下に晒されたりすると、接続抵抗が高くなりやすいという問題がある。
【0010】
一方、特許文献2に記載のような錫をごく微量で含む導電性粒子を用いて、接続構造体を得た場合、初期の接続抵抗及び低濃度の酸存在下での接続抵抗を比較的低くすることができるものの、より高濃度の酸の存在下では、接続抵抗を十分に低くすることは困難なことがある。さらに、特許文献2に記載のような導電性粒子は、高温かつ高湿な環境下で高電圧に長時間曝されると、金属腐食が発生し、導電層の電荷が移動することがある。結果として、ショートが発生したり、導通信頼性が低下したりすることがある。
【0011】
本発明の目的は、電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗を低くすることができ、高温かつ高湿な環境下で高電圧に長時間曝されても、Ni-Sn導電層における電荷の移動を防ぐことができる導電性粒子を提供することである。また、本発明の目的は、上記導電性粒子を用いた導電材料及び接続構造体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の広い局面によれば、基材粒子と、ニッケルと錫とを含むNi-Sn導電層とを備え、前記基材粒子の表面上に、前記Ni-Sn導電層が配置されており、前記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満であり、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である、導電性粒子が提供される。
【0013】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、前記Ni-Sn導電層の全体に含まれる錫の合計100重量%中の80重量%以上の錫が含まれる。
【0014】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み15%以上の領域において、錫が含まれる。
【0015】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み10%以上かつ50%未満の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれる。
【0016】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み10%以上かつ50%未満の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれ、かつ、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上40重量%以下である。
【0017】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み30%以下の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれる。
【0018】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、10重量%以上である。
【0019】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、TEM-EDXにより前記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、前記Ni-Sn導電層の厚み30%以下の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれ、かつ、前記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、10重量%以上である。
【0020】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子の粒子径が、0.1μm以上1000μm以下である。
【0021】
本発明に係る導電性粒子のある特定の局面では、前記導電性粒子は、前記Ni-Sn導電層の外表面に複数の突起を有する。
【0022】
本発明の広い局面によれば、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む、導電材料が提供される。
【0023】
本発明の広い局面によれば、第1の電極を表面に有する第1の接続対象部材と、第2の電極を表面に有する第2の接続対象部材と、前記第1の接続対象部材と前記第2の接続対象部材とを接続している接続部とを備え、前記接続部が、上述した導電性粒子により形成されているか、又は前記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されており、前記第1の電極と前記第2の電極とが前記導電性粒子により電気的に接続されている、接続構造体が提供される。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、ニッケルと錫とを含むNi-Sn導電層とを備える。本発明に係る導電性粒子では、上記基材粒子の表面上に、上記Ni-Sn導電層が配置されており、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満である。本発明に係る導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である。本発明に係る導電性粒子では、上記の構成が備えられているので、本発明に係る導電性粒子を用いて電極間を電気的に接続した場合に、接続抵抗を低くすることができ、高温かつ高湿な環境下で高電圧に長時間曝されても、Ni-Sn導電層における電荷の移動を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【
図1】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図2】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図3】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【
図4】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子におけるNi-Sn導電層の各領域を説明するための模式図である。
【
図5】
図5は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0027】
(導電性粒子)
従来、導電層がニッケルを含む場合に、ニッケルは腐食しやすいので、ニッケルが析出すると、電極間の接続抵抗が高くなりやすい。また、導電層にニッケルを含む導電性粒子が、高温かつ高湿な環境下で高電圧に曝されると、金属腐食が発生し、導電層の電荷が移動することがある。結果として、ショートが発生したり、導通信頼性が低下したりすることがある。
【0028】
本発明者は、ニッケルを含んでいても、初期の接続抵抗だけでなく、酸の存在下に晒された後の接続抵抗をも低くすることができ、高温かつ高湿な環境下で導電性粒子が高電圧に長時間曝されても、導電層における電荷の移動を抑制することができる導電性粒子について検討した。鋭意検討の結果、本発明者は、導電層内の錫の含有量及び分布に着目した。本発明者は、導電層全体での錫の含有量を抑えつつ、導電層中の錫の分布を工夫することにより、上記問題が解決することを見出した。
【0029】
本発明に係る導電性粒子は、基材粒子と、ニッケルと錫とを含むNi-Sn導電層とを備え、上記基材粒子の表面上に、上記Ni-Sn導電層が配置されている。本発明に係る導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満である。本発明に係る導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である。
【0030】
本発明に係る導電性粒子における上述した構成の採用により、本発明に係る導電性粒子を用いて、電極間を電気的に接続した場合に、初期の接続抵抗を低くすることができる。さらに、酸の存在下に晒された後の接続抵抗を低くすることができる。さらに、高温(例えば、85℃)かつ高湿(たとえば、85%RH)な環境下で導電性粒子が高電圧(例えば、15V)に長時間(例えば、500時間)曝されても、Ni-Sn導電層における電荷の移動を防ぐことができる。
【0031】
本発明では、高温かつ高湿な環境下などに長期間保管された導電性粒子を用いて、接続構造体を作製したときに、接続抵抗の上昇を抑えることができる。
【0032】
上記導電性粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上であり、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは30μm以下である。上記導電性粒子の粒子径が、上記下限以上及び上記上限以下であると、上記導電性粒子を用いて電極間を接続した場合に、導電性粒子と電極との接触面積が十分に大きくなり、かつ導電部を形成する際に凝集した導電性粒子が形成され難くなる。また、導電性粒子を介して接続された電極間の間隔が大きくなりすぎず、かつ導電部が基材粒子の表面から剥離し難くなる。
【0033】
上記導電性粒子の粒子径は、導電性粒子が真球状である場合には直径を意味し、導電性粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。
【0034】
上記導電性粒子の粒子径は、平均粒子径であることが好ましく、数平均粒子径であることが好ましい。上記導電性粒子の粒子径は、例えば、任意の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各導電性粒子の粒子径の平均値を算出することや、粒度分布測定装置を用いて求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの導電性粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の導電性粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。粒度分布測定装置では、1個当たりの導電性粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記導電性粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて算出することが好ましい。
【0035】
上記導電性粒子の粒子径の変動係数(CV値)は、好ましくは10%以下、より好ましくは5%以下である。上記導電性粒子の粒子径の変動係数が、上記上限以下であると、電極間の導通信頼性及び絶縁信頼性をより一層効果的に高めることができる。上記導電性粒子の粒子径の変動係数の下限は特に限定されない。上記導電性粒子の粒子径の変動係数は、0%であってもよく、0%以上であってもよく、5%以上であってもよい。
【0036】
上記変動係数(CV値)は、以下のようにして測定できる。
【0037】
CV値(%)=(ρ/Dn)×100
ρ:導電性粒子の粒子径の標準偏差
Dn:導電性粒子の粒子径の平均値
【0038】
上記導電性粒子の形状は特に限定されない。上記導電性粒子の形状は、球状であってもよく、球状以外の形状であってもよく、扁平状等の形状であってもよい。
【0039】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。なお、参照した図面では、大きさ及び厚みなどは、図示の便宜上、実際の大きさ及び厚みから適宜変更している。
【0040】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0041】
図1に示す導電性粒子1は、基材粒子2と、Ni-Sn導電層3とを有する。Ni-Sn導電層3は、ニッケルと錫とを含む。Ni-Sn導電層3は、基材粒子2の表面上に配置されている。第1の実施形態では、Ni-Sn導電層3は、基材粒子2の表面に接している。導電性粒子1は、基材粒子2の表面がNi-Sn導電層3により被覆された被覆粒子である。
【0042】
導電性粒子1では、Ni-Sn導電層3は、単層の導電層である。上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層が上記基材粒子の表面の全体を覆っていてもよく、上記Ni-Sn導電層が上記基材粒子の表面の一部を覆っていてもよい。上記導電性粒子は、上記Ni-Sn導電層以外の導電層を有していてもよい。上記導電性粒子は、複数の導電層を有していてもよい。
【0043】
導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、芯物質を有さない。導電性粒子1は表面に突起を有さない。導電性粒子1は球状である。Ni-Sn導電層3は外表面に突起を有さない。このように、本発明に係る導電性粒子はNi-Sn導電層の表面に突起を有していなくてもよく、球状であってもよい。また、導電性粒子1は、後述する導電性粒子11,21とは異なり、絶縁性物質を有さない。但し、導電性粒子1は、Ni-Sn導電層3の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。
【0044】
導電性粒子1では、Ni-Sn導電層3の全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満である。導電性粒子1では、TEM-EDXによりNi-Sn導電層3の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、Ni-Sn導電層3の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である。
【0045】
図2は、本発明の第2の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0046】
図2に示す導電性粒子11は、基材粒子2と、Ni-Sn導電層12と、複数の芯物質13と、複数の絶縁性物質14とを有する。Ni-Sn導電層12は、基材粒子2の表面上に基材粒子2に接するように配置されている。
【0047】
導電性粒子11では、Ni-Sn導電層12は、単層の導電層である。上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層が上記基材粒子の表面の全体を覆っていてもよく、上記Ni-Sn導電層が上記基材粒子の表面の一部を覆っていてもよい。上記導電性粒子は、上記Ni-Sn導電層以外の導電層を有していてもよい。上記導電性粒子は、多層の導電層を有していてもよい。
【0048】
導電性粒子11は表面に、複数の突起11aを有する。Ni-Sn導電層12は外表面に、複数の突起12aを有する。複数の芯物質13が、基材粒子2の表面上に配置されている。複数の芯物質13は、Ni-Sn導電層12内に埋め込まれている。芯物質13は、突起11a,12aの内側に配置されている。Ni-Sn導電層12は、複数の芯物質13を被覆している。複数の芯物質13によりNi-Sn導電層12の外表面が隆起されており、突起11a,12aが形成されている。
【0049】
導電性粒子11は、Ni-Sn導電層12の外表面上に配置された絶縁性物質14を有する。Ni-Sn導電層12の外表面の少なくとも一部の領域が、絶縁性物質14により被覆されている。絶縁性物質14は絶縁性を有する材料により形成されており、絶縁性粒子である。このように、本発明に係る導電性粒子は、Ni-Sn導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を有していてもよい。但し、本発明に係る導電性粒子は、絶縁性物質を必ずしも有していなくてもよい。
【0050】
導電性粒子11では、Ni-Sn導電層12の全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満である。導電性粒子11では、TEM-EDXによりNi-Sn導電層12の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、Ni-Sn導電層12の外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である。
【0051】
図3は、本発明の第3の実施形態に係る導電性粒子を示す断面図である。
【0052】
図3に示す導電性粒子21は、基材粒子2と、Ni-Sn導電層22A(第1の導電層)と、複数の芯物質13と、複数の絶縁性物質14とを有する。導電性粒子21は、基材粒子2側とは反対側にNi-Sn導電層22A(第1の導電層)と、基材粒子2側に第2の導電層22Bとを有する。
【0053】
導電性粒子11と導電性粒子21とでは、第2の導電層22Bのみが異なっている。すなわち、導電性粒子11では、1層構造の導電層が形成されているのに対し、導電性粒子21では、2層構造の導電層が形成されている。導電性粒子11では、Ni-Sn導電層12が形成されているのに対し、導電性粒子21では、Ni-Sn導電層22A(第1の導電層)及び第2の導電層22Bが形成されている。導電性粒子21では、Ni-Sn導電層22A(第1の導電層)と第2の導電層22Bとは別の導電層として形成されている。
【0054】
第2の導電層22Bは、基材粒子2の表面上に配置されている。基材粒子2とNi-Sn導電層22A(第1の導電層)との間に、第2の導電層22Bが配置されている。第2の導電層22Bは、基材粒子2に接している。Ni-Sn導電層22A(第1の導電層)は、第2の導電層22Bに接している。従って、基材粒子2の表面上に第2の導電層22Bが配置されており、第2の導電層22Bの表面上にNi-Sn導電層22A(第1の導電層)が配置されている。導電性粒子21は表面に、複数の突起21aを有する。Ni-Sn導電層22A(第1の導電層)は外表面に、複数の突起22Aaを有する。第2の導電層22Bは外表面に、複数の突起22Baを有する。
【0055】
導電性粒子21では、Ni-Sn導電層22Aの全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満である。導電性粒子21では、TEM-EDXによりNi-Sn導電層22Aの厚み方向における錫の含有量を測定したときに、Ni-Sn導電層22Aの外側の厚み1/2の領域において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である。
【0056】
以下、基材粒子及びNi-Sn導電層の詳細を説明する。
【0057】
(基材粒子)
上記基材粒子の材料は特に限定されない。上記基材粒子の材料は、有機材料であってもよく、無機材料であってもよい。上記有機材料のみにより形成された基材粒子としては、樹脂粒子等が挙げられる。上記無機材料のみにより形成された基材粒子としては、金属を除く無機粒子等が挙げられる。上記有機材料と上記無機材料との双方により形成された基材粒子としては、有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。基材粒子の圧縮特性をより一層良好にする観点からは、上記基材粒子は、樹脂粒子又は有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましく、樹脂粒子であることがより好ましい。
【0058】
上記有機材料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン樹脂;ポリメチルメタクリレート及びポリメチルアクリレート等のアクリル樹脂;ポリカーボネート、ポリアミド、フェノールホルムアルデヒド樹脂、メラミンホルムアルデヒド樹脂、ベンゾグアナミンホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、飽和ポリエステル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリスルホン、ポリフェニレンオキサイド、ポリアセタール、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルスルホン、及びジビニルベンゼン重合体等が挙げられる。上記ジビニルベンゼン重合体は、ジビニルベンゼン共重合体であってもよい。上記ジビニルベンゼン共重合体等としては、ジビニルベンゼン-スチレン共重合体及びジビニルベンゼン-(メタ)アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記基材粒子の圧縮特性を好適な範囲に容易に制御できるので、上記基材粒子の材料は、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を1種又は2種以上重合させた重合体であることが好ましい。
【0059】
上記基材粒子を、エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させて得る場合、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体としては、非架橋性の単量体と架橋性の単量体とが挙げられる。
【0060】
上記非架橋性の単量体としては、ビニル化合物として、スチレン、α-メチルスチレン、クロルスチレン等のスチレン単量体;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、プロピルビニルエーテル等のビニルエーテル化合物;酢酸ビニル、酪酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル等の酸ビニルエステル化合物;塩化ビニル、フッ化ビニル等のハロゲン含有単量体;(メタ)アクリル化合物として、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート化合物;2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレン(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の酸素原子含有(メタ)アクリレート化合物;(メタ)アクリロニトリル等のニトリル含有単量体;トリフルオロメチル(メタ)アクリレート、ペンタフルオロエチル(メタ)アクリレート等のハロゲン含有(メタ)アクリレート化合物;α-オレフィン化合物として、ジイソブチレン、イソブチレン、リニアレン、エチレン、プロピレン等のオレフィン化合物;共役ジエン化合物として、イソプレン、ブタジエン等が挙げられる。
【0061】
上記架橋性の単量体としては、ビニル化合物として、ジビニルベンゼン、1,4-ジビニロキシブタン、ジビニルスルホン等のビニル単量体;(メタ)アクリル化合物として、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジアクリレート、テトラメチロールメタントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物;アリル化合物として、トリアリル(イソ)シアヌレート、トリアリルトリメリテート、ジアリルフタレート、ジアリルアクリルアミド、ジアリルエーテル;シラン化合物として、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、シクロヘキシルトリメトキシシラン、n-ヘキシルトリメトキシシラン、n-オクチルトリエトキシシラン、n-デシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジイソプロピルジメトキシシラン、トリメトキシシリルスチレン、γ-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、1,3-ジビニルテトラメチルジシロキサン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン等のシランアルコキシド化合物;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルビニルシシラン、ジメトキシエチルビニルシラン、ジエトキシメチルビニルシラン、ジエトキシエチルビニルシラン、エチルメチルジビニルシラン、メチルビニルジメトキシシラン、エチルビニルジメトキシシラン、メチルビニルジエトキシシラン、エチルビニルジエトキシシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の重合性二重結合含有シランアルコキシド;デカメチルシクロペンタシロキサン等の環状シロキサン;片末端変性シリコーンオイル、両末端シリコーンオイル、側鎖型シリコーンオイル等の変性(反応性)シリコーンオイル;(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸等のカルボキシル基含有単量体等が挙げられる。
【0062】
上記基材粒子は、上記エチレン性不飽和基を有する重合性単量体を重合させることによって得ることができる。上記の重合方法としては特に限定されず、ラジカル重合、イオン重合、重縮合(縮合重合、縮重合)、付加縮合、リビング重合、及びリビングラジカル重合等の公知の方法が挙げられる。また、他の重合方法としては、ラジカル重合開始剤の存在下での懸濁重合が挙げられる。
【0063】
上記無機材料としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア、カーボンブラック、ケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、鉛ガラス、ソーダ石灰ガラス及びアルミナシリケートガラス等が挙げられる。
【0064】
上記基材粒子は、有機無機ハイブリッド粒子であってもよい。上記基材粒子は、コアシェル粒子であってもよい。上記基材粒子が有機無機ハイブリッド粒子である場合に、上記基材粒子の材料である無機物としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム、ジルコニア及びカーボンブラック等が挙げられる。上記無機物は金属ではないことが好ましい。上記シリカにより形成された基材粒子としては特に限定されないが、加水分解性のアルコキシシリル基を2つ以上持つケイ素化合物を加水分解して架橋重合体粒子を形成した後に、必要に応じて焼成を行うことにより得られる基材粒子が挙げられる。上記有機無機ハイブリッド粒子としては、架橋したアルコキシシリルポリマーとアクリル樹脂とにより形成された有機無機ハイブリッド粒子等が挙げられる。
【0065】
上記有機無機ハイブリッド粒子は、コアと、該コアの表面上に配置されたシェルとを有するコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。上記コアが有機コアであることが好ましい。上記シェルが無機シェルであることが好ましい。上記基材粒子は、有機コアと上記有機コアの表面上に配置された無機シェルとを有する有機無機ハイブリッド粒子であることが好ましい。
【0066】
上記有機コアの材料としては、上述した有機材料等が挙げられる。
【0067】
上記無機シェルの材料としては、上述した基材粒子の材料として挙げた無機物が挙げられる。上記無機シェルの材料は、シリカであることが好ましい。上記無機シェルは、上記コアの表面上で、金属アルコキシドをゾルゲル法によりシェル状物とした後、該シェル状物を焼成させることにより形成されていることが好ましい。上記金属アルコキシドはシランアルコキシドであることが好ましい。上記無機シェルはシランアルコキシドにより形成されていることが好ましい。
【0068】
上記基材粒子の粒子径は、好ましくは0.1μm以上、より好ましくは1μm以上である。上記基材粒子の粒子径は、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下、さらに好ましくは100μm以下、特に好ましくは30μm以下、最も好ましくは10μm以下である。上記基材粒子の粒子径が上記下限以上であると、導電性粒子と電極との接触面積が大きくなるため、電極間の導通信頼性を高めることができ、導電性粒子を介して接続された電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。さらに、基材粒子の表面に導電部を無電解めっきにより形成する際に、凝集した導電性粒子を形成され難くすることができる。上記基材粒子の粒子径が上記上限以下であると、導電性粒子が十分に圧縮されやすく、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができ、さらに電極間の間隔をより小さくすることができる。
【0069】
上記基材粒子の粒子径は、基材粒子が真球状である場合には、直径を示し、基材粒子が真球状以外の形状である場合には、その体積相当の真球と仮定した際の直径を意味する。
【0070】
上記基材粒子の粒子径は、数平均粒子径を示す。上記基材粒子の粒子径は、任意の基材粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、各基材粒子の粒子径の平均値を算出することや、粒度分布測定装置を用いて求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察では、1個当たりの基材粒子の粒子径は、円相当径での粒子径として求められる。電子顕微鏡又は光学顕微鏡での観察において、任意の50個の基材粒子の円相当径での平均粒子径は、球相当径での平均粒子径とほぼ等しくなる。粒度分布測定装置では、1個当たりの基材粒子の粒子径は、球相当径での粒子径として求められる。上記基材粒子の平均粒子径は、粒度分布測定装置を用いて算出することが好ましい。
【0071】
導電性粒子において、上記基材粒子の粒子径を測定する場合には、例えば、以下のようにして測定できる。導電性粒子の含有量が30重量%となるように、Kulzer社製「テクノビット4000」に添加し、分散させて、導電性粒子検査用埋め込み樹脂体を作製する。検査用埋め込み樹脂体中に分散した導電性粒子の基材粒子の中心付近を通るようにイオンミリング装置(日立ハイテクノロジーズ社製「IM4000」)を用いて、導電性粒子の断面を切り出す。そして、電界放射型走査型電子顕微鏡(FE-SEM)を用いて、画像倍率を25000倍に設定し、50個の導電性粒子を無作為に選択し、各導電性粒子の基材粒子を観察する。各導電性粒子における基材粒子の粒子径を計測し、それらを算術平均して基材粒子の粒子径とする。
【0072】
(Ni-Sn導電層)
上記導電性粒子は、ニッケルと錫とを含むNi-Sn導電層を備える。上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量が5重量%未満である。上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である。上記領域R1は、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み50%の領域である。
【0073】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子におけるNi-Sn導電層の各領域を説明するための模式図である。
図4は、導電性粒子1におけるNi-Sn導電層3の各領域を説明するための模式図である。
【0074】
上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)は、Ni-Sn導電層の外表面から内側に向かって、Ni-Sn導電層の厚みの1/2までの領域である。上記領域R1は、
図4において、Ni-Sn導電層3の破線L1よりも外側の領域である。上記領域R1は、Ni-Sn導電層3の外表面部分である。上記領域R1は、Ni-Sn導電層3の基材粒子2側の領域とは異なる領域である。
【0075】
上記Ni-Sn導電層の内側の厚み1/2の領域(R2)は、Ni-Sn導電層の内表面から外側に向かって、Ni-Sn導電層の厚みの1/2までの領域である。上記領域R2は、
図4において、Ni-Sn導電層3の破線L1よりも内側の領域である。上記領域R2は、Ni-Sn導電層3の基材粒子2側の領域である。上記領域R2は、Ni-Sn導電層3の外表面部分とは異なる領域である。
【0076】
上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量は、5重量%未満である。上記導電性粒子では、上記の構成が備えられているので、初期抵抗を低くすることができる。初期抵抗をより一層低くする観点からは、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量は、好ましくは4.5重量%以下、より好ましくは4.0重量%以下、さらに好ましくは3.5重量%以下である。酸の存在下に晒された後の接続抵抗をより一層低くする観点からは、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の平均含有量は、0重量%を超え、好ましくは0.1重量%以上、より好ましくは0.5重量%以上である。
【0077】
上記Ni-Sn層は、ニッケルを主金属として含むことが好ましい。上記Ni-Sn導電層の全体の領域におけるニッケルの平均含有量は、好ましくは50重量%以上、より好ましくは80重量%以上であり、好ましくは99.9重量%以下、より好ましくは99.5重量%以下である。
【0078】
上記Ni-Sn導電層の全体の領域におけるニッケル及び錫の平均含有量は、ICP-MS法等により測定することができる。
【0079】
上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上である。上記導電性粒子では、上記の構成が備えられているので、高温かつ高湿な環境下で高電圧に長時間曝されても、Ni-Sn導電層における電荷の移動を防ぐことができる。
【0080】
上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の錫の含有量の最大値が、上記領域R1に存在することが好ましい。上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の含有量の最大値が、上記領域R1に存在することが好ましい。上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の全体の領域における錫の含有量の最大値が存在する領域が、上記領域R1であることが好ましい。上記導電性粒子では、錫の含有量が、上記領域R1において最大値となることが好ましい。上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記領域R1における錫の含有量の最大値が、上記領域R2における錫の含有量の最大値より大きいことが好ましい。上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の錫の含有量の最大値が、上記領域R1における錫の含有量の最大値であることが好ましい。
【0081】
上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の厚み方向において、錫が偏在している。上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の厚み方向において、錫の分布に偏りがある。
【0082】
上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層において、上記領域R2の錫の含有量よりも上記領域R1の錫の含有量の方が多いように、錫の含有量が異なることが好ましく、錫の含有量が勾配を有することが好ましい。上記Ni-Sn導電層において、錫が、上記領域R2よりも上記領域R1の方で多く存在するように偏在していることが好ましい。上記Ni-Sn導電層において、上記領域R1における錫の平均含有量が、上記領域R2における錫の平均含有量より大きいことが好ましい。このような濃度差及び濃度勾配の存在により、酸の存在下に晒された後の接続抵抗をより一層低くすることができ、高温かつ高湿な環境下で導電性粒子が高電圧に長時間曝されても、Ni-Sn導電層における電荷の移動をより一層効果的に防ぐことができる。
【0083】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記領域R1の全体100重量%中、上記領域R1における錫の平均含有量は、好ましくは0.5重量%以上、より好ましくは1.0重量%以上、さらに好ましくは3.0重量%以上であり、好ましくは10重量%以下、より好ましくは9.0重量%以下、さらに好ましくは8.0重量%以下である。
【0084】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記領域R2の全体100重量%中、上記領域R2における錫の平均含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。上記領域R2の全体100重量%中、上記領域R2における錫の平均含有量の下限は、特に限定されない。上記領域R2の全体100重量%中、上記領域R2における錫の平均含有量は、3重量%以上であってもよい。
【0085】
本発明に係る導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層に含まれる錫の厚み方向における分布を制御することが、非常に重要である。
【0086】
TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の全体に含まれる錫の合計100重量%中、上記領域R1における錫の含有量は、好ましくは65重量%以上、より好ましくは70重量%以上、より一層好ましくは80重量%以上である。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、上記Ni-Sn導電層の全体に含まれる錫の合計100重量%中の80重量%以上の錫が含まれることが好ましい。上記Ni-Sn導電層の全体に含まれる錫の合計100重量%中、上記領域R1における錫の含有量は、さらに好ましくは85重量%以上、さらに一層好ましくは90重量%以上、特に好ましくは95重量%以上、最も好ましくは100重量%(全量)である。上記Ni-Sn導電層の全体に含まれる錫の合計100重量%中、上記領域R1における錫の含有量が、上記下限以上であると、酸の存在下に晒された後の接続抵抗をより一層低くすることができ、高温かつ高湿な環境下で導電性粒子が高電圧に長時間曝されても、Ni-Sn導電層における電荷の移動をより一層効果的に防ぐことができる。
【0087】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記導電性粒子では、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合は、好ましくは5%以上、より好ましくは15%以上であり、好ましくは95%以下、より好ましくは80%以下、さらに好ましくは50%以下である。本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、上記Ni-Sn導電層の厚み15%以上の領域において、錫が含まれることが好ましい。従来の導電性粒子では、TEM-EDXにより導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、該導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合は、10%程度である。本発明に係る導電性粒子において、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合が上記下限以上及び上記上限以下であると、酸の存在下に晒された後の接続抵抗をより一層低くすることができ、高温かつ高湿な環境下で導電性粒子が高電圧に長時間曝されても、Ni-Sn導電層における電荷の移動をより一層効果的に防ぐことができる。
【0088】
本発明に係る導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、錫を含む領域の厚み(分布曲線におけるピーク幅)と、該領域における錫の含有量の最大値(分布曲線におけるピーク高さ)との関係を制御することが、非常に重要である。すなわち、上記導電性粒子では、TEM-EDXにより測定した錫の含有量の分布曲線において、横軸を上記Ni-Sn導電層の厚みを100%としたときの外表面からの厚み方向の距離(%)とし、縦軸を錫の含有量(重量%)としたときに、分布曲線のピーク幅とピーク高さとを制御することが、非常に重要である。
【0089】
上記錫の含有量の分布曲線の形状は、山型であってもよく、山型の一部分であってもよい。上記錫の含有量の分布曲線は、単峰性であってもよく、多峰性であってもよい。上記錫の含有量の分布曲線は、1つのピークを有していてもよく、複数のピークを有していてもよい。上記錫の含有量の分布曲線が複数のピークを有している場合に、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合は、各ピーク幅の合計である。なお、上記錫の含有量の分布曲線は、1つのピークを有することが好ましく、上述した通り、該ピーク(上記Ni-Sn導電層の錫の含有量の最大値)は、上記領域R1に存在することが好ましく、上記Ni-Sn導電層の最表面に存在することがより好ましい。
【0090】
上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、錫が上記Ni-Sn導電層の厚み方向において広い領域に分布し、かつ上記Ni-Sn導電層の錫の含有量の最大値が小さくてもよい。上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、錫が上記Ni-Sn導電層の厚み方向において広い領域に分布し、かつ上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値が小さくてもよい。また、上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、錫が上記Ni-Sn導電層の厚み方向において狭い領域に分布し、かつ錫の含有量の最大値が大きくてもよい。上記導電性粒子では、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定したときに、錫が上記Ni-Sn導電層の厚み方向において狭い領域に分布し、かつ上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値が大きくてもよい。
【0091】
錫が上記Ni-Sn導電層の厚み方向において広い領域に分布し、かつ上記Ni-Sn導電層の錫の含有量の最大値(上記領域R1における錫の含有量の最大値)が小さい場合には、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合は、特に好ましくは20%以上、最も好ましくは25%以上である。また、上記の場合には、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合は、特に好ましくは50%以下、最も好ましくは40%以下である。上記の場合に、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定する。この測定において、上記Ni-Sn導電層の厚み10%以上かつ50%未満の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれることが好ましい。上記の測定において、錫の含有量が5重量%以上である領域は、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、好ましくは8%以上、より好ましくは10%以上、さらに好ましくは12.5%以上であり、好ましくは50%未満、より好ましくは40%以下、さらに好ましくは30%以下である。また、上記の場合に、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定する。この測定において、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値は、5重量%以上、好ましくは7重量%以上、より好ましくは10重量%以上であり、好ましくは50重量%以下、より好ましくは40重量%以下、さらに好ましくは30重量%以下、特に好ましくは20重量%以下である。なお、上記の測定において、上記Ni-Sn導電層の厚み10%以上かつ50%未満%以上の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれ、かつ、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値が、5重量%以上40重量%以下であることがより好ましい。
【0092】
錫が上記Ni-Sn導電層の厚み方向において狭い領域に分布し、かつ上記Ni-Sn導電層の錫の含有量の最大値(上記領域R1における錫の含有量の最大値)が大きい場合には、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合は、特に好ましくは5%以上、最も好ましくは10%以上である。また、上記の場合には、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合は、さらに好ましくは40%以下、特に好ましくは30%以下、最も好ましくは25%以下である。上記の場合に、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定する。この測定において、上記Ni-Sn導電層の厚み30%以下の領域において、5重量%以上の含有量で錫が含まれることが好ましい。上記の測定において、錫の含有量が5重量%以上である領域は、上記Ni-Sn導電層の厚み100%中、好ましくは0.1%以上、より好ましくは0.5%以上、さらに好ましくは1.0%以上であり、好ましくは30%以下、より好ましくは25%以下、さらに好ましくは20%以下、最も好ましくは10%以下である。また、上記の場合に、TEM-EDXにより上記Ni-Sn導電層の厚み方向における錫の含有量を測定する。この測定において、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値は、5重量%以上、好ましくは10重量%以上、より好ましくは15重量%以上である。また、この測定において、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値は、好ましくは95重量%以下、より好ましくは90重量%以下、さらに好ましくは80重量%以下、特に好ましくは50重量%以下、最も好ましくは40重量%以下である。なお、上記の測定において、上記Ni-Sn導電層の厚み30%以下の領域において、錫の含有量が5重量%以上であり、かつ、上記Ni-Sn導電層の外側の厚み1/2の領域(R1)において、錫の含有量の最大値が、10重量%以上であることがより好ましい。
【0093】
上記領域R1におけるニッケル及び錫の平均含有量、上記領域R2におけるニッケル及び錫の平均含有量、上記領域R1における錫の含有量の最大値、及び上記領域R2における錫の含有量の最大値は、TEM-EDXにより測定することができる。具体的に、集束イオンビームを用いて、上記導電性粒子の薄膜切片を作製する。次いで、透過型電子顕微鏡FE-TEM(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、Ni-Sn導電層の厚み方向におけるニッケル及び錫の各含有量を測定する。なお、得られる重量分析図において、Ni-Sn導電層に含まれる全ての金属の含有量を示す曲線上の変曲点のうち、最も外側の変曲点をNi-Sn導電層の厚み方向の起点(厚み0%)とし、最も内側の変曲点をNi-Sn導電層の厚み方向の終点(厚み100%)とする。
【0094】
上記Ni-Sn導電層は、ニッケルと、錫と、ニッケル及び錫以外の金属とを含んでいてもよい。上記ニッケル及び錫以外の金属としては、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、アルミニウム、コバルト、インジウム、パラジウム、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、タリウム、ゲルマニウム、カドミウム、ケイ素、タングステン、モリブデン及び錫ドープ酸化インジウム(ITO)等が挙げられる。これらの金属は、1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0095】
上記Ni-Sn導電層の全体の領域における上記ニッケル及び錫以外の金属の平均含有量は、好ましくは10重量%以下、より好ましくは5重量%以下、さらに好ましくは3重量%以下である。上記Ni-Sn導電層の全体の領域における上記ニッケル及び錫以外の金属の平均含有量の下限は、特に限定されない。上記Ni-Sn導電層の全体の領域における上記ニッケル及び錫以外の金属の平均含有量は、0.01重量%以上であってもよく、0.1重量%以上であってもよい。
【0096】
なお、上記Ni-Sn導電層が、上記ニッケル及び錫以外の金属を含む場合に、上記領域R1及び上記領域R2におけるニッケルの平均含有量及び錫の平均含有量は、ニッケルの含有量と錫の含有量との合計を100重量%として算出する。
【0097】
上記Ni-Sn導電層の厚みは、好ましくは5nm以上、より好ましくは10nm以上、さらに好ましくは80nm以上であり、好ましくは500nm以下、より好ましくは300nm以下である。上記Ni-Sn導電層の厚みが上記下限以上及び上記上限以下であると、接続抵抗をより一層低くすることができる。上記Ni-Sn導電層の厚みは、導電性粒子におけるNi-Sn導電層の平均厚みを示す。
【0098】
上記Ni-Sn導電層を形成する方法は特に限定されない。上記Ni-Sn導電層を形成する方法としては、例えば、無電解めっきによる方法、電気めっきによる方法、物理的蒸着による方法、並びに金属粉末もしくは金属粉末とバインダーとを含むペーストを粒子の表面にコーティングする方法等が挙げられる。なかでも、上記Ni-Sn導電層の形成が簡便であるので、無電解めっきによる方法が好ましい。上記物理的蒸着による方法としては、真空蒸着、イオンプレーティング及びイオンスパッタリング等の方法が挙げられる。
【0099】
上記Ni-Sn導電層におけるニッケル、及び錫の含有量及び分布を制御する方法としては、例えば、無電解めっきにおいて、めっき液中の錫及び錯化剤の濃度を調整する方法、及び反応液のpHを調整する方法等が挙げられる。
【0100】
上記導電性粒子は、複数の導電層を備えていてもよい。上記導電性粒子は、上記Ni-Sn導電層以外の導電層(他の導電層)を備えていてもよい。上記導電性粒子が複数の導電層を備える場合、上記Ni-Sn導電層は、上記導電性粒子の最外層であることが好ましい。上記導電性粒子が複数の導電層を備える場合、上記Ni-Sn導電層は、最外層の導電層であることが好ましい。
【0101】
上記Ni-Sn導電層以外の導電層の構成は、特に限定されない。上記Ni-Sn導電層以外の導電層の材料は、上記Ni-Sn導電層の材料と同一であってもよく、異なっていてもよい。
【0102】
本発明に係る導電性粒子は、表面に突起を有することが好ましい。上記Ni-Sn導電層は、外表面に突起を有することが好ましい。導電性粒子により接続される電極の表面には、酸化被膜が形成されていることが多い。導電性の突起を有する導電性粒子の使用により、電極間に導電性粒子を配置した後、圧着させることにより、突起により酸化被膜が効果的に排除される。このため、電極と導電性粒子とをより一層確実に接触させることができ、電極間の接続抵抗をより一層低くすることができる。さらに、導電性粒子が表面に絶縁性物質を有する場合、又は導電性粒子が樹脂中に分散されて導電材料として用いられる場合に、導電性粒子の突起によって、導電性粒子と電極との間の絶縁性物質又は樹脂を効果的に排除できる。このため、電極間の導通信頼性を高めることができる。
【0103】
上記突起は複数であることが好ましい。上記導電性粒子1個当たりの上記導電層の外表面の突起は、好ましくは3個以上、より好ましくは5個以上である。上記突起の数の上限は特に限定されない。上記突起の数は、好ましくは1000個以下、より好ましくは800個以下である。突起の数の上限は導電性粒子の粒子径等を考慮して適宜選択できる。
【0104】
複数の上記突起の平均高さは、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記突起の平均高さが上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。上記突起の平均高さは、以下の方法で算出できる。本発明の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、観察された導電性粒子の周縁部の突起全ての高さを測定する。突起が形成されていない面を基準表面として凸部の高さを測定し、平均値を算出することにより求められる。
【0105】
本発明の効果をより一層効果的に発揮する観点からは、上記Ni-Sn導電層の外表面の全表面積100%中、上記突起がある部分の表面積は好ましくは10%以上、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上である。上記Ni-Sn導電層の外表面の全表面積100%中、上記突起がある部分の表面積の占める割合の上限は特に限定されないが、通常100%以下、好ましくは99%以下である。
【0106】
上記突起がある部分の表面積の比率は、以下の方法で算出できる。本発明の導電性粒子50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、正投影面において突起として現れている部分の面積の比率を測定し、平均値を算出することにより求められる。
【0107】
(芯物質)
上記芯物質が上記Ni-Sn導電層中に埋め込まれていることによって、上記Ni-Sn導電層が外表面に複数の突起を有するようにすることが容易である。但し、導電性粒子及びNi-Sn導電層の外表面に突起を形成するために、芯物質を必ずしも用いなくてもよく、芯物質を用いないことが好ましい。上記導電性粒子は、上記Ni-Sn導電層の内部及び内側に、上記Ni-Sn導電部の外表面を隆起させるための芯物質を有さないことが好ましい。上記Ni-Sn導電層が、上記Ni-Sn導電層の内部及び内側に、上記Ni-Sn導電層の外表面を隆起させるための芯物質を含まないことが好ましい。
【0108】
上記突起を形成する方法としては、基材粒子の表面に芯物質を付着させた後、無電解めっきによりNi-Sn導電層を形成する方法、並びに基材粒子の表面に無電解めっきによりNi-Sn導電層を形成した後、芯物質を付着させ、さらに無電解めっきによりNi-Sn導電層を形成する方法等が挙げられる。上記突起を形成する他の方法としては、基材粒子の表面上にNi-Sn導電層を形成する途中段階で、芯物質を添加する方法等が挙げられる。
【0109】
上記基材粒子の表面上に芯物質を配置する方法としては、例えば、基材粒子の分散液中に、芯物質を添加し、基材粒子の表面に芯物質を、例えば、ファンデルワールス力により集積させ、付着させる方法、並びに基材粒子を入れた容器に、芯物質を添加し、容器の回転等による機械的な作用により基材粒子の表面に芯物質を付着させる方法等が挙げられる。なかでも、付着させる芯物質の量を制御しやすいため、分散液中の基材粒子の表面に芯物質を集積させ、付着させる方法が好ましい。
【0110】
上記芯物質を構成する物質としては、導電性物質及び非導電性物質が挙げられる。上記導電性物質としては、例えば、金属、金属の酸化物、黒鉛等の導電性非金属及び導電性ポリマー等が挙げられる。上記導電性ポリマーとしては、ポリアセチレン等が挙げられる。上記非導電性物質としては、シリカ、アルミナ、チタン酸バリウム及びジルコニア等が挙げられる。なかでも、導電性を高めることができ、さらに接続抵抗を効果的に低くすることができるので、金属が好ましい。上記芯物質は金属粒子であることが好ましい。
【0111】
上記金属としては、例えば、金、銀、銅、白金、亜鉛、鉄、鉛、錫、アルミニウム、コバルト、インジウム、ニッケル、クロム、チタン、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム及びカドミウム等の金属、並びに錫-鉛合金、錫-銅合金、錫-銀合金、錫-鉛-銀合金及び炭化タングステン等の2種類以上の金属で構成される合金等が挙げられる。なかでも、ニッケル、銅、銀又は金が好ましい。上記芯物質を形成するための金属は、上記導電層を形成するための金属と同じであってもよく、異なっていてもよい。上記芯物質を形成するための金属は、上記導電層を形成するための金属を含むことが好ましい。上記芯物質を形成するための金属は、ニッケルを含むことが好ましい。
【0112】
上記芯物質の材料の具体例としては、チタン酸バリウム(モース硬度4.5)、ニッケル(モース硬度5)、シリカ(二酸化珪素、モース硬度6~7)、酸化チタン(モース硬度7)、ジルコニア(モース硬度8~9)、アルミナ(モース硬度9)、炭化タングステン(モース硬度9)及びダイヤモンド(モース硬度10)等が挙げられる。上記無機粒子は、ニッケル、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが好ましく、シリカ、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがより好ましい。上記無機粒子は、酸化チタン、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることがさらに好ましく、ジルコニア、アルミナ、炭化タングステン又はダイヤモンドであることが特に好ましい。上記芯物質の材料のモース硬度は好ましくは5以上、より好ましくは6以上、さらに好ましくは7以上、特に好ましくは7.5以上である。
【0113】
上記芯物質の形状は特に限定されない。芯物質の形状は塊状であることが好ましい。芯物質としては、例えば、粒子状の塊、複数の微小粒子が凝集した凝集塊、及び不定形の塊等が挙げられる。
【0114】
上記芯物質の平均径(平均粒子径)は、好ましくは0.001μm以上、より好ましくは0.05μm以上、好ましくは0.9μm以下、より好ましくは0.2μm以下である。上記芯物質の平均径が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の接続抵抗が効果的に低くなる。
【0115】
上記芯物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。芯物質の平均径は、例えば、任意の芯物質50個を電子顕微鏡又は光学顕微鏡にて観察し、平均値を算出することにより求めることができる。
【0116】
(絶縁性物質)
本発明に係る導電性粒子は、上記Ni-Sn導電層の外表面上に配置された絶縁性物質を備えることが好ましい。この場合には、導電性粒子を電極間の接続に用いると、隣接する電極間の短絡を防止できる。具体的には、複数の導電性粒子が接触したときに、複数の電極間に絶縁性物質が存在するので、上下の電極間ではなく横方向に隣り合う電極間の短絡を防止できる。なお、電極間の接続の際に、2つの電極で導電性粒子を加圧することにより、導電性粒子のNi-Sn導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。導電性粒子がNi-Sn導電層の外表面に複数の突起を有する場合には、導電性粒子のNi-Sn導電層と電極との間の絶縁性物質を容易に排除できる。
【0117】
電極間の圧着時に上記絶縁性物質をより一層容易に排除できることから、上記絶縁性物質は、絶縁性粒子であることが好ましい。
【0118】
上記絶縁性物質の材料である絶縁性樹脂の具体例としては、ポリオレフィン類、(メタ)アクリレート重合体、(メタ)アクリレート共重合体、ブロックポリマー、熱可塑性樹脂、熱可塑性樹脂の架橋物、熱硬化性樹脂及び水溶性樹脂等が挙げられる。
【0119】
上記ポリオレフィン類としては、ポリエチレン、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びエチレン-アクリル酸エステル共重合体等が挙げられる。上記(メタ)アクリレート重合体としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート及びポリブチル(メタ)アクリレート等が挙げられる。上記ブロックポリマーとしては、ポリスチレン、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、SB型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、及びSBS型スチレン-ブタジエンブロック共重合体、並びにこれらの水素添加物等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、ビニル重合体及びビニル共重合体等が挙げられる。上記熱硬化性樹脂としては、エポキシ樹脂、フェノール樹脂及びメラミン樹脂等が挙げられる。上記水溶性樹脂としては、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン、ポリエチレンオキシド及びメチルセルロース等が挙げられる。上記絶縁性樹脂は、水溶性樹脂を含むことが好ましく、ポリビニルアルコールを含むことがより好ましい。
【0120】
上記Ni-Sn導電層の表面上に絶縁性物質を配置する方法としては、化学的方法、及び物理的もしくは機械的方法等が挙げられる。上記化学的方法としては、例えば、界面重合法、粒子存在下での懸濁重合法及び乳化重合法等が挙げられる。上記物理的もしくは機械的方法としては、スプレードライ、ハイブリダイゼーション、静電付着法、噴霧法、ディッピング及び真空蒸着による方法等が挙げられる。なかでも、絶縁性物質が脱離し難いことから、上記導電層の表面に、化学結合を介して上記絶縁性物質を配置する方法が好ましい。
【0121】
上記Ni-Sn導電層の外表面、及び絶縁性粒子の表面はそれぞれ、反応性官能基を有する化合物によって被覆されていてもよい。導電層の外表面と絶縁性粒子の表面とは、直接化学結合していなくてもよく、反応性官能基を有する化合物によって間接的に化学結合していてもよい。導電層の外表面にカルボキシル基を導入した後、該カルボキシル基がポリエチレンイミンなどの高分子電解質を介して絶縁性粒子の表面の官能基と化学結合していてもよい。
【0122】
上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は、導電性粒子の粒子径及び導電性粒子の用途等によって適宜選択できる。上記絶縁性物質の平均径(平均粒子径)は好ましくは0.005μm以上、より好ましくは0.01μm以上、好ましくは1μm以下、より好ましくは0.5μm以下である。絶縁性物質の平均径が上記下限以上であると、導電性粒子がバインダー樹脂中に分散されたときに、複数の導電性粒子における導電層同士が接触し難くなる。絶縁性粒子の平均径が上記上限以下であると、電極間の接続の際に、電極と導電性粒子との間の絶縁性物質を排除するために、圧力を高くしすぎる必要がなくなり、高温に加熱する必要もなくなる。
【0123】
上記絶縁性物質の「平均径(平均粒子径)」は、数平均径(数平均粒子径)を示す。絶縁性物質の平均径は、粒度分布測定装置等を用いて求められる。
【0124】
(導電材料)
本発明に係る導電材料は、上述した導電性粒子と、バインダー樹脂とを含む。上記導電性粒子は、バインダー樹脂中に分散されて用いられることが好ましく、バインダー樹脂中に分散されて導電材料として用いられることが好ましい。上記導電材料は、異方性導電材料であることが好ましい。上記導電材料は、電極間の電気的な接続に用いられることが好ましい。上記導電材料は、回路接続材料であることが好ましい。
【0125】
上記バインダー樹脂は特に限定されない。上記バインダー樹脂として、公知の絶縁性の樹脂が用いられる。
【0126】
上記バインダー樹脂としては、例えば、ビニル樹脂、熱可塑性樹脂、硬化性樹脂、熱可塑性ブロック共重合体及びエラストマー等が挙げられる。上記バインダー樹脂は1種のみが用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0127】
上記ビニル樹脂としては、例えば、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂及びスチレン樹脂等が挙げられる。上記熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、エチレン-酢酸ビニル共重合体及びポリアミド樹脂等が挙げられる。上記硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂及び不飽和ポリエステル樹脂等が挙げられる。なお、上記硬化性樹脂は、常温硬化型樹脂、熱硬化型樹脂、光硬化型樹脂又は湿気硬化型樹脂であってもよい。上記硬化性樹脂は、硬化剤と併用されてもよい。上記熱可塑性ブロック共重合体としては、例えば、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体、スチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体、スチレン-ブタジエン-スチレンブロック共重合体の水素添加物、及びスチレン-イソプレン-スチレンブロック共重合体の水素添加物等が挙げられる。上記エラストマーとしては、例えば、スチレン-ブタジエン共重合ゴム、及びアクリロニトリル-スチレンブロック共重合ゴム等が挙げられる。
【0128】
上記導電材料は、上記導電性粒子及び上記バインダー樹脂の他に、例えば、充填剤、増量剤、軟化剤、可塑剤、重合触媒、硬化触媒、着色剤、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤及び難燃剤等の各種添加剤を含んでいてもよい。
【0129】
本発明に係る導電材料は、導電ペースト及び導電フィルム等として使用され得る。本発明に係る導電材料が、導電フィルムである場合には、導電性粒子を含む導電フィルムに、導電性粒子を含まないフィルムが積層されていてもよい。上記導電ペーストは、異方性導電ペーストであることが好ましい。上記導電フィルムは、異方性導電フィルムであることが好ましい。
【0130】
上記導電材料100重量%中、上記バインダー樹脂の含有量は好ましくは10重量%以上、より好ましくは30重量%以上、さらに好ましくは50重量%以上、特に好ましくは70重量%以上、好ましくは99.99重量%以下、より好ましくは99.9重量%以下である。上記バインダー樹脂の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間に導電性粒子が効率的に配置され、導電材料により接続された接続対象部材の接続信頼性がより一層高くなる。
【0131】
上記導電材料100重量%中、上記導電性粒子の含有量は、好ましくは0.01重量%以上、より好ましくは0.1重量%以上、好ましくは40重量%以下、より好ましくは20重量%以下、さらに好ましくは10重量%以下である。上記導電性粒子の含有量が上記下限以上及び上記上限以下であると、電極間の導通信頼性がより一層高くなる。
【0132】
(接続構造体)
上記導電性粒子を用いて、又は上記導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料を用いて、接続対象部材を接続することにより、接続構造体を得ることができる。
【0133】
上記接続構造体は、第1の接続対象部材と、第2の接続対象部材と、第1,第2の接続対象部材を接続している接続部とを備え、該接続部が上述した導電性粒子により形成されているか、又は上述した導電性粒子とバインダー樹脂とを含む導電材料により形成されている接続構造体であることが好ましい。上記接続構造体では、上記第1の電極と上記第2の電極とが上述した導電性粒子により電気的に接続されていることが好ましい。導電性粒子が用いられた場合には、接続部自体が導電性粒子である。すなわち、第1,第2の接続対象部材が導電性粒子により接続される。
【0134】
図5に、本発明の第1の実施形態に係る導電性粒子を用いた接続構造体を模式的に断面図で示す。
【0135】
図5に示す接続構造体51は、第1の接続対象部材52と、第2の接続対象部材53と、第1,第2の接続対象部材52,53を接続している接続部54とを備える。接続部54は、導電性粒子1を含む導電材料を硬化させることにより形成されている。なお、
図5では、導電性粒子1は、図示の便宜上、略図的に示されている。導電性粒子1にかえて、導電性粒子11,21等を用いてもよい。
【0136】
第1の接続対象部材52は表面(上面)に、複数の第1の電極52aを有する。第2の接続対象部材53は表面(下面)に、複数の第2の電極53aを有する。第1の電極52aと第2の電極53aとが、1つ又は複数の導電性粒子1により電気的に接続されている。従って、第1,第2の接続対象部材52,53が導電性粒子1により電気的に接続されている。
【0137】
上記接続構造体の製造方法は特に限定されない。接続構造体の製造方法の一例としては、第1の接続対象部材と第2の接続対象部材との間に上記導電材料を配置し、積層体を得た後、該積層体を加熱及び加圧する方法等が挙げられる。上記加圧の圧力は9.8×104Pa~4.9×106Pa程度である。上記加熱の温度は、120℃~220℃程度である。
【0138】
上記接続対象部材としては、具体的には、半導体チップ、コンデンサ及びダイオード等の電子部品、並びにプリント基板、フレキシブルプリント基板、ガラスエポキシ基板及びガラス基板等の回路基板などの電子部品等が挙げられる。上記接続対象部材は電子部品であることが好ましい。上記導電性粒子は、電子部品における電極の電気的な接続に用いられることが好ましい。
【0139】
上記接続対象部材に設けられている電極としては、金電極、ニッケル電極、錫電極、アルミニウム電極、銅電極、銀電極、モリブデン電極及びタングステン電極等の金属電極が挙げられる。上記接続対象部材がフレキシブルプリント基板である場合には、上記電極は金電極、ニッケル電極、錫電極又は銅電極であることが好ましい。上記接続対象部材がガラス基板である場合には、上記電極はアルミニウム電極、銅電極、モリブデン電極又はタングステン電極であることが好ましい。なお、上記電極がアルミニウム電極である場合には、アルミニウムのみで形成された電極であってもよく、金属酸化物層の表面にアルミニウム層が積層された電極であってもよい。上記金属酸化物層の材料としては、3価の金属元素がドープされた酸化インジウム及び3価の金属元素がドープされた酸化亜鉛等が挙げられる。上記3価の金属元素としては、Sn、Al及びGa等が挙げられる。
【0140】
以下、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例のみに限定されない。
【0141】
導電性粒子を得るために、下記の基材粒子を用意した。
【0142】
基材粒子A:粒子径が3.0μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP-203」)
基材粒子B:基材粒子Aと粒子径のみが異なり、粒子径が2.5μmである基材粒子
基材粒子C:基材粒子Aと粒子径のみが異なり、粒子径が10.0μmである基材粒子
基材粒子D:粒子径が3.0μmであるコアシェル型の有機無機ハイブリッド粒子(下記の合成例1に従って作製)
基材粒子E:粒子径が3.0μmである有機無機ハイブリッド粒子(下記の合成例2に従って作製)
【0143】
(合成例1)
粒子径が2.5μmであるジビニルベンゼン共重合体樹脂粒子(積水化学工業社製「ミクロパールSP-202」)の表面を、ゾルゲル反応による縮合反応を用いてシリカシェル(厚み250nm)により被覆して、基材粒子Dを得た。
【0144】
(合成例2)
撹拌機及び温度計が取り付けられた500mLの反応容器内に、0.13重量%のアンモニア水溶液300gを入れた。次に、反応容器内のアンモニア水溶液中に、メチルトリメトキシシラン4.1gと、ビニルトリメトキシシラン19.2gと、シリコーンアルコキシオリゴマー(信越化学工業社製「X-41-1053」)0.7gとの混合物をゆっくりと添加した。撹拌しながら、加水分解及び縮合反応を進行させた後、25重量%アンモニア水溶液2.4mLを添加し、アンモニア水溶液中から粒子を単離して、得られた粒子を酸素分圧10-17atm、350℃で2時間焼成して、基材粒子Eを得た。
【0145】
(実施例1)
パラジウム触媒液を5重量%含むアルカリ溶液100重量部に、上記基材粒子A10重量部を、超音波分散器を用いて分散させた後、溶液をろ過することにより、基材粒子Aを取り出した。次いで、基材粒子Aをジメチルアミンボラン1重量%溶液100重量部に添加し、基材粒子Aの表面を活性化させた。表面が活性化された基材粒子Aを十分に水洗した後、蒸留水500重量部に加え、分散させることにより、懸濁液(0)を得た。
【0146】
また、硫酸ニッケル0.14mol/Lと、ジメチルアミンボラン0.46mol/Lと、クエン酸ナトリウム0.2mol/Lとを含むニッケルめっき液(1)(pH8.5)を用意した。上記懸濁液(0)を60℃で撹拌しながら、上記ニッケルめっき液(1)を上記懸濁液(0)に徐々に滴下し、無電解ニッケル-ボロン合金めっきを行い、懸濁液(1)を得た。
【0147】
次に、硫酸ニッケル0.14mol/Lと、ヒドラジン0.45mol/Lとを含むニッケルめっき液(2)(pH8.0)を用意した。上記懸濁液(1)を65℃で撹拌しながら、上記ニッケルめっき液(2)を上記懸濁液(1)に徐々に滴下し、無電解ニッケルめっきを行い、懸濁液(2)を得た。
【0148】
硫酸ニッケル0.14mol/Lと、スズ酸ナトリウム三水和物0.09mol/Lと、グルコン酸ナトリウム0.45mol/Lとを含むニッケルめっき液(3)(pH8.0)を用意した。上記懸濁液(2)を65℃で撹拌しながら、上記ニッケルめっき液(3)を上記懸濁液(2)に徐々に滴下し、無電解ニッケル-錫合金めっきを行い、懸濁液(3)を得た。
【0149】
その後、上記懸濁液(3)をろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、乾燥させることにより、基材粒子Aの表面にNi-Sn導電層(厚み136nm)が配置された導電性粒子を得た。
【0150】
(実施例2)
硫酸ニッケル0.07mol/Lと、スズ酸ナトリウム三水和物0.045mol/Lと、グルコン酸ナトリウム0.225mol/Lとを含むニッケルめっき液(pH8.0)を用意した。このニッケルめっき液をニッケルめっき液(3)の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0151】
(実施例3)
上記懸濁液(1)に、上記ニッケルめっき液(2)及び上記ニッケルめっき液(3)を同時に滴下したこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0152】
(参考例4)
上記懸濁液(0)に、上記ニッケルめっき液(1)、上記ニッケルめっき液(2)及び上記ニッケルめっき液(3)を同時に滴下したこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0153】
(参考例5)
上記懸濁液(0)に、上記ニッケルめっき液(1)、上記ニッケルめっき液(2)のpHを8.5に変更したニッケルめっき液及び上記ニッケルめっき液(3)のpHを8.5に変更したニッケルめっき液を同時に滴下したこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0154】
(実施例6)
上記ニッケルめっき液(1)、上記ニッケルめっき液(2)及び上記ニッケルめっき液(3)の滴下量を1.3倍としたこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0155】
(実施例7)
上記ニッケルめっき液(1)、上記ニッケルめっき液(2)及び上記ニッケルめっき液(3)の滴下量を0.8倍としたこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0156】
(実施例8)
上記ニッケルめっき液(3)のスズ酸ナトリウム三水和物の濃度を0.09mоl/Lから0.15mol/Lに変更し、かつグルコン酸ナトリウムの濃度を0.45mоl/Lから0.75mol/Lに変更したニッケルめっき液を用意した。このニッケルめっき液をニッケルめっき液(3)の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0157】
(実施例9)
上記ニッケルめっき液(3)のスズ酸ナトリウム三水和物の濃度を0.09mоl/Lから0.30mol/Lに変更しかつグルコン酸ナトリウムの濃度を0.45mоl/Lから0.90mol/Lに変更したニッケルめっき液を用意した。このニッケルめっき液をニッケルめっき液(3)の代わりに用いたこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0158】
(実施例10)
上記懸濁液(0)に、Ni粒子スラリー(平均粒子径150nm)2gを3分間かけて添加し、芯物質が付着された基材粒子を含む懸濁液を得た。得られた懸濁液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子のNi-Sn導電層の外表面には、突起が形成されていた。
【0159】
(実施例11)
上記懸濁液(0)に、アルミナ粒子スラリー(平均粒子径150nm)0.5gを3分間かけて添加し、芯物質が付着された基材粒子を含む懸濁液を得た。得られた懸濁液を用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子のNi-Sn導電層の外表面には、突起が形成されていた。
【0160】
(実施例12)
上記懸濁液(0)に、Ni粒子スラリーを用いずに、導電部の形成時に部分的に析出量がかわるように調整して突起を形成して、Ni-Sn導電層の外表面に突起を形成したこと以外は、実施例1と同様にして、導電性粒子を得た。
【0161】
(実施例13~16)
基材粒子を下記の表3に示すように変更したこと以外は、実施例10と同様にして、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子のNi-Sn導電層の外表面には、突起が形成されていた。
【0162】
(実施例17)
(1)絶縁性粒子の作製
4ツ口セパラブルカバー、撹拌翼、三方コック、冷却管及び温度プローブが取り付けられた1000mLのセパラブルフラスコを用意した。該セパラブルフラスコに、メタクリル酸メチル100mmolと、N,N,N-トリメチル-N-2-メタクリロイルオキシエチルアンモニウムクロライド1mmolと、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩1mmolとを含むモノマー組成物を、固形分率が5重量%となるようにイオン交換水に秤取した。その後、200rpmで撹拌し、窒素雰囲気下70℃で24時間重合を行った。反応終了後、凍結乾燥させ、表面にアンモニウム基を有する絶縁性粒子(平均粒子径220nm、CV値10%)を得た。得られた絶縁性粒子を超音波照射下でイオン交換水に分散させ、絶縁性粒子の10重量%水分散液を得た。
【0163】
(2)導電性粒子の作製
実施例10で得られた導電性粒子10gをイオン交換水500mLに分散させ、上記分散液4gを添加し、室温で6時間撹拌した。3μmのメッシュフィルターでろ過した後、更にメタノールで洗浄し、乾燥させ、導電性粒子を得た。得られた導電性粒子を走査型電子顕微鏡(SEM)により観察したところ、Ni-Sn導電層の外表面が絶縁性粒子で被覆されていた。画像解析により、絶縁性粒子の被覆面積(絶縁性粒子の粒子径の投影面積)の、半径3.0μmの球の表面積に対する割合(%)を算出したところ、被覆率は30%であった。
【0164】
(比較例1)
ニッケルめっき液(3)を用いる無電解ニッケル-錫合金めっきの工程を除いてめっきを行ったこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0165】
(比較例2)
ニッケルめっき液(2)を用いる無電解ニッケルめっき及びニッケルめっき液(3)を用いる無電解ニッケル-錫合金めっきを先に行った後に、ニッケルめっき液(1)を用いて無電解ニッケル-ボロン合金めっきを行ったこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0166】
(比較例3)
硫酸ニッケル0.14mol/Lと、ヒドラジン1.45mol/Lと、スズ酸ナトリウム三水和物0.90mol/Lと、グルコン酸ナトリウム0.60mol/Lとを含むニッケルめっき液(pH8.0)を用意した。ニッケルめっき液(1)、(2)、及び(3)の代わりに、このニッケルめっき液を用いて58℃で無電解ニッケル-錫合金めっきを行ったこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0167】
(比較例4)
硫酸ニッケル0.14mol/Lと、ヒドラジン1.05mol/Lと、スズ酸ナトリウム三水和物0.30mol/Lと、グルコン酸ナトリウム0.30mol/Lとを含むニッケルめっき液(pH8.5)を用意した。ニッケルめっき液(1)、(2)、及び(3)の代わりに、このニッケルめっき液を用いて65℃で無電解ニッケル-錫合金めっきを行ったこと以外は、実施例1と同様にして導電性粒子を得た。
【0168】
(評価)
(1)Ni-Sn導電層の領域R1及び領域R2におけるニッケル及び錫の分布
集束イオンビームを用いて、得られた導電性粒子の薄膜切片を作製した。上記Ni-Sn導電層の全体の領域におけるニッケル及び錫の平均含有量を、ICP-MS法により測定した。透過型電子顕微鏡FE-TEM(日本電子社製「JEM-2010FEF」)を用いて、エネルギー分散型X線分析装置(EDS)により、上記領域R1におけるニッケル及び錫の平均含有量、上記領域R2におけるニッケル及び錫の平均含有量、上記領域R1における錫の含有量の最大値、及び上記領域R2における錫の含有量の最大値を求めた。また、同様にして、Ni-Sn導電層の全体に含まれる錫の合計100重量%中、領域R1における錫の含有量を求めた。さらに、上記領域R1及び上記領域R2における錫の含有量の最大値より、錫の含有量の最大値が存在する領域を調べ、Ni-Sn導電層の厚み100%中、錫を含む領域の割合を求めた。
【0169】
(2)初期の接続抵抗(A)
得られた導電性粒子を含有量が10重量%となるように、三井化学社製「ストラクトボンドXN-5A」に添加し、分散させて、異方性導電ペーストを作製した。
【0170】
L/Sが20μm/20μmであるITO電極パターンを上面に有する透明ガラス基板を用意した。また、L/Sが20μm/20μmである金電極パターンを下面に有する半導体チップを用意した。
【0171】
上記透明ガラス基板上に、作製直後の異方性導電ペーストを厚さ30μmとなるように塗工し、異方性導電ペースト層を形成した。次に、異方性導電ペースト層上に上記半導体チップを、電極同士が対向するように積層した。その後、異方性導電ペースト層の温度が185℃となるようにヘッドの温度を調整しながら、半導体チップの上面に加圧加熱ヘッドを載せ、1MPaの圧力をかけて異方性導電ペースト層を185℃で硬化させて、接続構造体を得た。
【0172】
得られた接続構造体の上下の電極間の接続抵抗を、4端子法により測定した。2つの接続抵抗の平均値を算出した。なお、電圧=電流×抵抗の関係から、一定の電流を流した時の電圧を測定することにより接続抵抗を求めることができる。初期の接続抵抗(A)を下記の基準で判定した。
【0173】
[初期の接続抵抗(A)の判定基準]
○○○:接続抵抗が2.0Ω以下
○○:接続抵抗が2.0Ωを超え、3.0Ω以下
○:接続抵抗が3.0Ωを超え、5.0Ω以下
△:接続抵抗が5.0Ωを超え、10Ω以下
×:接続抵抗が10Ωを超える
【0174】
(3)酸の存在下に晒された後の接続抵抗(B)
得られた導電性粒子を8%の硫酸水溶液に室温(23℃)で45分間浸した。その後、ろ過することにより、粒子を取り出し、水洗し、エタノール置換して10分間放置して粒子を乾燥させることで、酸に晒された導電性粒子を得た。得られた導電性粒子を用いて上記(2)と同様にして接続構造体を作製し、上記初期の接続抵抗(A)と同様にして接続抵抗を測定した。酸の存在下に晒された後の接続抵抗(B)を下記の基準で判定した。
【0175】
[酸の存在下に晒された後の接続抵抗(B)の判定基準]
○○○:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの1.0倍以上1.5倍未満、かつ、10Ω以下
○○:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの1.5倍以上2.0倍未満、かつ、10Ω以下
○:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの2.0倍以上5.0倍未満、かつ、10Ω以下
△:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの5.0倍以上10倍未満、かつ、10Ω以下
×:接続抵抗Bが、接続抵抗Aの10倍以上、又は、10Ωを超える
【0176】
(4)Ni-Sn導電層における電荷の移動
上記(2)で得られた接続構造体の、互いに絶縁された測定端子間に、85℃かつ85%RHの条件で15Vの電圧を500時間印加した。次いで、マイクロスコープ(キーエンス社製「VHX6000」)で導電性粒子を観察し、Ni-Sn導電層において金属腐食を防ぎ、電荷の移動を防ぐことができているか否かを、下記の基準で判定した。
【0177】
[Ni-Sn導電層における電荷の移動の判定基準]
○:導電層が黒色化しておらず、かつ、消失していない
×:導電層の表面の一部又は導電層全体が、黒色化又は消失している
【0178】
結果を下記の表1~4に示す。
【0179】
【0180】
【0181】
【0182】
【符号の説明】
【0183】
1,11,21…導電性粒子
2…基材粒子
3,12,22A…Ni-Sn導電層
11a…突起
12a…突起
13…芯物質
14…絶縁性物質
21a,22a,22Aa,22Ba…突起
22B…第2の導電層
51…接続構造体
52…第1の接続対象部材
52a…第1の電極
53…第2の接続対象部材
53a…第2の電極
54…接続部