(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】アルカリ土類金属で酸化タンタルを還元することによってコンデンサ用タンタル粉末を製造する方法
(51)【国際特許分類】
B22F 9/20 20060101AFI20240731BHJP
B22F 1/00 20220101ALI20240731BHJP
B22F 1/142 20220101ALI20240731BHJP
B22F 1/145 20220101ALI20240731BHJP
C22C 27/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
B22F9/20 G
B22F1/00 R
B22F1/142
B22F1/145
C22C27/02 103
(21)【出願番号】P 2023564246
(86)(22)【出願日】2022-08-24
(86)【国際出願番号】 CN2022114372
(87)【国際公開番号】W WO2023109170
(87)【国際公開日】2023-06-22
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】202111533332.2
(32)【優先日】2021-12-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】507313113
【氏名又は名称】ニンシア オリエント タンタル インダストリー カンパニー、 リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100118902
【氏名又は名称】山本 修
(74)【代理人】
【識別番号】100106208
【氏名又は名称】宮前 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100196508
【氏名又は名称】松尾 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100112634
【氏名又は名称】松山 美奈子
(72)【発明者】
【氏名】チェン,ユーウェイ
(72)【発明者】
【氏名】ジェン,ジンフェン
(72)【発明者】
【氏名】リアン,ホンユアン
(72)【発明者】
【氏名】グオ,シュン
(72)【発明者】
【氏名】マー,ハイヤン
(72)【発明者】
【氏名】ズオ,ジンイー
(72)【発明者】
【氏名】ジャン,リー
(72)【発明者】
【氏名】キン,ホンジー
(72)【発明者】
【氏名】リウ,トン
(72)【発明者】
【氏名】ワン,イン
【審査官】坂本 薫昭
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-517091(JP,A)
【文献】特開2003-119506(JP,A)
【文献】特開2003-013115(JP,A)
【文献】特開平03-036229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B22F
C22B 1/02,34/24
C22C 23/00,24/00,27/02
H01G
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ土類金属で酸化タンタルを還元することによって、タンタル粉末を製造する方法であって、
(1)酸化タンタルを過剰なアルカリ土類金属還元剤と混合し、同時に、前記酸化タンタルの重量の10~200%に相当する、少なくとも1種のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物と混合し、不活性ガスで満たした加熱炉において、得られた混合物を温度
900~980℃に加熱し、次いで、前記酸化タンタルおよび前記還元剤が十分な還元反応を受けるように保温する工程;
(2)保温の終わりに、前記加熱炉の温度を
650~720℃に下げ、前記加熱炉の内部を10Pa以下に真空化し、負圧下で保温する工程;
(3)その後、不活性ガスの存在下で、前記加熱炉の温度を
900~980℃に上げ、前記タンタル粉末が、溶融塩においてさらに焼結されるように、保温する工程;
(4)次いで、室温に冷却し、不動態化して、ハロゲン化物およびタンタル粉末を含有する混合材料を得る工程;
(5)得られた前記混合物から前記タンタル粉末を分離する工程
を含み、
前記還元剤が、工程(1)において、前記酸化タンタルの完全な還元のための理論量の50~300%を超える量で添加され、
工程(1)において添加されるアルカリ金属のハロゲン化物の量が10~180重量%であり、
B元素、P元素、および/またはN元素を含有する1種または複数の化合物が、工程(1)において、前記タンタル粉末をドープするための1以上の添加剤として添加され、
さらに、
有効な元素の量に基づいて、前記B元素が、1~100ppmの量で添加され;および/または前記P元素が、10~200ppmの量で添加され;および/または前記N元素が、300~2500ppmの量で添加されることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記アルカリ土類金属はマグネシウム粒子であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程(1)において、前記保温は1~10時間行われることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記タンタル粉末は、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥によって分離されることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項5】
前記還元剤が、工程(1)において、前記酸化タンタルの完全な還元のための理論量の70~150%を超える量で添加されることを特徴とする請求項
4に記載の方法。
【請求項6】
工程(1)において添加されるアルカリ金属のハロゲン化物の量が25~120重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
工程(1)におけるアルカリ金属またはアルカリ土類金属の前記ハロゲン化物が、NaClおよびKClの混合物であることを特徴とする請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
有効な元素の量に基づいて、前記B元素が、20~60ppmの量で添加され;および/または前記P元素が、30~90ppmの量で添加され;および/または前記N元素が、500~1200ppmの量で添加されることを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項9】
工程(5)の後、高温高真空熱処理する工程;酸素還元する工程;および分離する工程をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項10】
前記酸素還元は、少量のマグネシウム粒子をドーピングすることにより行われることを特徴とする請求項
9に記載の方法。
【請求項11】
前記分離は、酸洗浄、ろ過および乾燥により行われることを特徴とする請求項
9に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レアメタル機能性材料を製錬する分野に属し、特に、高電圧高信頼性コンデンサを製作するためのタンタル粉末、およびその製造方法に関連する。
【背景技術】
【0002】
タンタル電解コンデンサ(以下、タンタルコンデンサと称する)は、高い容量、小さい体積、強力な自己回復機能、高い信頼性などの利点を有し、通信、コンピュータ、自動車エレクトロニクス、医療機器、レーダー、航空宇宙産業、自動制御装置などのハイテク分野に広く用いられる。タンタル粉末は、タンタルコンデンサを製作するための重要な材料であり、より高い耐電圧を有するコンデンサ用タンタル粉末を使用することによってのみ、より良い信頼性のタンタルコンデンサを製造することができる。それゆえに、より高い耐電圧を有するコンデンサ用タンタル粉末を継続して開発することによってのみ、こうして製造されたタンタルコンデンサが、電子装置および電子回路の、信頼性の高い開発の要求を継続して満たすことができる。
【0003】
現在、コンデンサ等級のタンタル粉末の産業的な調製方法には、主に、ナトリウム還元フッ化タンタル酸カリウム法、マグネシウム還元酸化タンタル法、タンタルインゴット水素化法などが挙げられる。ナトリウム還元フッ化タンタル酸カリウム法は、溶融フッ化タンタル酸カリウムおよび希釈塩(例えば、KCl、NaCl、KFなど)が撹拌される際に、液体金属ナトリウムが注入され、フッ化タンタル酸カリウムが、ナトリウムによって還元されて、タンタル粉末を製造し、次いでコンデンサ用タンタル粉末がその後の処理によって製造されることを特徴とする。しかし、この方法によって製造されるタンタル粉末は、不十分な耐電圧を有する。現在、ナトリウム還元フッ化タンタル酸カリウム法によって製造されたタンタル粉末の耐電圧を改善するために、一般的な方法は、焼結温度を上げること、焼結時間を延長することを含むが、焼結温度の上昇および焼結時間の延長は、必然的に比容量を減らす。タンタルインゴット水素化法は、金属タンタルの脆性を利用することによって、タンタルインゴットが水素化され、次いで、粉末に砕かれて、続いて、その後の処理によって、コンデンサ用タンタル粉末を製造することを特徴とする。この方法によって製造されたタンタル粉末は、優れた耐電圧を有するが、より低い比容量を有する。
【0004】
マグネシウム還元酸化タンタル法は、反応物の状態の変化ゆえに、改善された容量および耐電圧を有するコンデンサ用タンタル粉末を製造することが期待される。
CN1308566A(出願第99808374.7)は、マグネシウム蒸気が通過し得ることを介して、マグネシウム蒸気で酸化タンタルを還元することによってタンタル粉末を製造する方法を開示する。CN105033283A(出願第201510310262.2)もまた、マグネシウム蒸気で酸化タンタルを還元することによってタンタル粉末を製造する方法を開示する。2つの方法は共に、タンタル粉末を製造する可能性を秘めているが、原材料の厳しい要件(原材料は、ガスが通過し得る形態を要求される)および使用される還元剤のガス状態ゆえに、費用がかかり、制御することが難しい。さらに、これらの方法で製造されたタンタル粉末は、大きな比表面積、強い活性、および不十分な耐燃性を有し、製造されたコンデンサ用タンタル粉末は、高電圧通電の後、破壊電圧においてだけでなく、比容量においても不十分であり、コンデンサ用タンタル粉末の耐電圧は、さして改善されない。
【0005】
CN1251325Aは、アルカリ土類金属または希土類金属で酸化タンタルを還元することによってタンタル粉末を製造する方法であって、還元が、制御された温度の下、2段階で実行され、第1段階の還元が、平均組成がTaOx(式中、x=0.5~1.5)に対応するまで実行され、次いで、酸洗浄が実行されて、第1段階の還元生成物における、還元剤の酸化物を取り除き、次いで、第2段階の還元が実行されて、タンタル粉末を製造する、方法を開示する。この方法は、第2段階の還元の前に、還元剤の酸化物を取り除くことを要求し、非効率である。さらに、タンタル粉末を製造する方法は、依然として、コンデンサ用タンタル粉末の耐電圧をさして改善することができない。
【0006】
先行技術において、さらに、タンタル粉末を製造するための自己伝播高温合成法(SHS)がある。しかし、この方法は、少なくとも2000℃以上の温度を要求し、反応が速すぎ、それにより、制御が難しいだけでなく、加工処理装置の高い要件も有する。加えて、得られたタンタル粉末は、均一ではなく、高い信頼性のコンデンサを製作するための要求を満たさない。
【0007】
一般的な理論に束縛されることなく、十分な研究の後、本発明者らは、既存の方法によって調製されたタンタル粉末は、高電圧通電条件下で、より低い比容量および低い破壊電圧を有し、ゆえにコンデンサ用タンタル粉末の耐電圧は、さして改善することができないことを見出した。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、マグネシウムなどのアルカリ土類金属で酸化タンタルを還元することによって、コンデンサ用タンタル粉末を製造する方法を提供することである。他の方法によって製造された、同じ等級のコンデンサ用タンタル粉末と比較すると、本方法によって製造されたコンデンサ用タンタル粉末は、高電圧通電条件下で、高い信頼性、高い比容量、および高い破壊電圧を有し、コンデンサ用タンタル粉末の耐電圧は、著しく改善される。言い換えれば、本発明の方法によって製造されたコンデンサ用タンタル粉末は、より高い電圧に耐えることができ、より高い信頼性を有する。
【0009】
本発明の別の目的は、工程において単純であり、より操作し易く、かつより制御し易い、コンデンサ用タンタル粉末を製造する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
したがって、本発明は、マグネシウムなどのアルカリ土類金属で酸化タンタルを還元することによって、タンタル粉末を製造する方法であって、
(1)酸化タンタルを過剰なアルカリ土類金属還元剤と混合し、同時に、酸化タンタルの重量の10~200%に相当する、少なくとも1種のアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を混合し、得られた混合物を容器中に入れ、容器を加熱炉内に置き、不活性ガスの存在下で、加熱炉の温度を700~1200℃まで上げ、酸化タンタルおよび還元剤が、十分な還元反応を受けるように、例えば、1~10時間保温する(または維持する)工程;
(2)保温させる工程の終わりに、加熱炉の温度を600~800℃に下げ、加熱炉の内部を10Pa以下に真空化し、過剰なマグネシウムとタンタル粉末の混合物を分離するように、例えば、負圧下で1~10時間保温させる工程;
(3)その後、不活性ガスの存在下で、加熱炉の温度を750~1200℃に上げ、タンタル粉末が、溶融塩においてさらに焼結されるように、例えば、1~10時間保温する工程;
(4)次いで、室温に冷却し、不動態化して、ハロゲン化物およびタンタル粉末を含有する混合材料を得る工程;
(5)例えば、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥によって、得られた混合物からタンタル粉末を分離する工程
を含む、方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明に従って得られたタンタル粉末の走査型電子顕微鏡写真。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図は、本発明をより良く理解するために提供される。図は、例示的なものであり、本発明の範囲を限定しようというものではない。
図1は、得られたタンタル粉末が、より均一な粒径、滑らかな粒子、粗い焼結ネック、およびあまり微細ではない粒子を有することを示す。
【0013】
工程(1)のアルカリ土類金属還元剤は、好ましくはマグネシウム、より好ましくはマグネシウム粒子である。マグネシウム粒子の粒径は限定されない。しかし、十分な研究の後、本発明者らは、粒径150~4000μmを有するマグネシウム粒子が、この技術により好適であり、還元によって得られたタンタル粉末は、より良好な耐電圧を有することを見出した。その粒径範囲を有するマグネシウム粒子は、金属マグネシウムの保管および輸送の間の安全性に対して有益であるだけでなく、均一な混合に対しても有益である。マグネシウム粒子が細かすぎる場合、活性が強すぎ、自発的な燃焼および発火が生じ易く、マグネシウム粒子が粗すぎる場合、均一な混合がそう容易ではなく、タンタル粉末の性能最適化が容易ではない。添加される過剰な還元剤の量は、酸化タンタルの完全な還元のための理論量を超える量である。一般に、理論量は、酸化タンタル1キログラムの完全な還元について0.273kgである。本発明において、上記量が、理論量の、50~300%、好ましくは50~200%、より好ましくは100~200%、さらにより好ましくは50~100%または70~150%、さらにより好ましくは90~120%、最も好ましくは100~150%を超えることが好ましい。
【0014】
工程(1)において、タンタル粉末の焼結は、還元熱の発生ゆえに、必然的に、ある程度生じる。十分な研究の後、本発明者らは、一定の還元熱は、過剰な金属マグネシウムおよびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物を添加することによって吸収されることがあり、還元熱によるタンタル粉末の焼結が適切な程度に達するように、還元熱によるタンタル粉末の焼結を調節することができ、タンタル粉末の耐電圧が有利に改善されることを見出した。
【0015】
工程(1)において添加されたアルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物の量は、酸化タンタルの、10~180重量%、好ましくは25~120重量%、より好ましくは70~120重量%または100~180重量%、最も好ましくは15~80重量%、例えば、25~80重量%であることが好ましい。アルカリ金属および/またはアルカリ土類金属のハロゲン化物は、好ましくは粒子形態である。その粒径は限定されないが、本発明者らは、70~4000μmの粒子が、この技術により好適であり、還元によって得られたタンタル粉末は、より良好な耐電圧を有することを見出した。
【0016】
不活性ガスは、一般に、ヘリウム、ネオン、およびアルゴンなどの希ガスを指す。窒素は、その安定な性質ゆえに、時には不活性ガスとして使用されるが、本発明において、還元温度が相対的に高く、窒素の活性がこの高温で極めて強いゆえに、本発明において不活性保護ガスとして適さない。しかし、十分な研究の後、発明者らは、タンタル粉末の窒素ドーピングは、不活性保護雰囲気を損なうことなく、少量の窒素が不活性ガスに含有される場合に実現され得ることを見出した。タンタル粉末のより良好な窒素ドーピング効果を実現する観点から、工程(1)の不活性ガスは、好ましくは、窒素0.5~10%を含有してもよい。
【0017】
好ましくは、工程(1)のアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物は、NaCl、KCl、KF、KI、および/またはMgCl2のうちの1種または複数である。アルカリ金属ハロゲン化物は、塩化ナトリウムおよび/または塩化カリウム、好ましくは、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの混合物、より好ましくは、1:1~10、最も好ましくは約1:1の比の、塩化ナトリウムおよび塩化カリウムの混合物であってもよい。
【0018】
好ましくは、B元素、P元素、および/またはN元素を含有する、1種または複数の化合物は、工程(1)において、タンタル粉末をドープするための添加剤(複数可)として添加され得る。有効な元素の量に基づいて、B元素は、好ましくは、1~100ppm、より好ましくは20~60ppmの量で添加され;P元素は、好ましくは、10~200ppm、より好ましくは30~90ppmの量で添加され;N元素は、好ましくは、300~2500ppm、より好ましくは500~1200ppmの量で添加される。化合物(複数可)が本明細書で添加されるけれども、有効な元素は、B、P、および/またはNであり、本明細書で参照される量は、B、P、および/またはNとして計算されることを理解されたい。
【0019】
好ましくは、工程(1)において、加熱炉は、750~1000℃に加熱される。より好ましくは、加熱炉は、900~1000℃に加熱される。
工程(2)において、金属マグネシウムの融点は相対的に高いゆえに、マグネシウム蒸気は、反応器の外側に拡散することが難しいが、反応器の低温領域で固体に凝縮され、それによって分離が行われる。
【0020】
好ましくは、工程(2)において、加熱炉の温度は650~800℃である。より好ましくは、加熱炉の温度は650~720℃である。好ましくは、加熱炉の内部は、5Pa以下、好ましくは0.5Pa以下に真空化される(または排気される)。
【0021】
工程(3)における不活性ガスは、工程(1)の不活性ガスと同じであっても、異なっていてもよい。好ましくは、工程(1)および/または工程(3)において、炉内で正圧が維持される。
【0022】
好ましくは、工程(3)において、加熱炉は、900~1050℃に加熱される。
好ましくは、本発明の方法は、工程(5)の後、高信頼性タンタルコンデンサを製作するのに好適なタンタル粉末を得るために、高温高真空熱処理などの熱処理、酸素還元、酸洗浄、その後の、例えば、ろ過および乾燥によるタンタル粉末の分離の工程をさらに含む。これらの処理は、全て、当分野で公知の方法である。言い換えれば、これらの処理には、当分野で公知の任意の方法を用いてもよい。例えば、高温高真空熱処理および不動態化を、CN201110039272.9、CN201120077798.1、CN201120077680.9、CN201120077305.4などの特許で示された方法を使用することによって実施してもよく、酸素還元を、CN201420777210.7およびCN201420777210.7の特許で示された方法を使用することによって実施してもよく、酸洗浄を、CN201210548101.3、CN201280077499.5、CN201210548008.2などの特許で示された方法を使用することによって実施してもよい。
【0023】
工程(1)において、N元素、P元素、および/またはB元素をドープする代わりに、例えば、工程(5)の後にこれらの元素を別々にドープする工程もまた本発明に含まれ得る。勿論、これらの元素を含有する原材料がそのまま使用されてもよい。これらの元素は、前述された高温高真空熱処理する工程において添加されてもよい。P元素を添加することが特に好ましい。P元素の添加により、比容量を改善することができ、比容量を改善する効果は、ドープされたPの全量が十分に制御される限り、P元素を添加する場合はどれでも同じである。
【0024】
生成物タンタル粉末を、高電圧条件下で、型に入れて塊にし、焼結し、通電し、通電ブロックを電気性能について試験する。通電ブロックは、より高い比容量を有し、破壊電圧試験において、より高い破壊電圧を示すことが分かる。
【0025】
他の方法によって製造された、同じ等級のコンデンサ用タンタル粉末と比較して、同じ高電圧条件下で通電された後、本発明において製造されたタンタル粉末の通電ブロックは、より高い比容量を有し、破壊電圧試験においてより高い破壊電圧を有する。それゆえに、本発明において製造されたタンタル粉末は、高電圧および高信頼性のタンタルコンデンサを製作するのにより好適である。
【0026】
さらに、本発明の方法は、単純であり、制御し易い。例えば、本発明の任意の工程は、マイクロ波の使用、または1300℃を超える高すぎる温度の使用を含まない。それゆえに、使用される装置は、より単純であり、タンタル粉末製造工程の安全性もより良好である。
【0027】
一般的な理論に束縛されることなく、粉末液体相焼結の理論を組み合わせることによる原理の分析によって、本発明者らは、本発明が優れた効果を実現する理由が、工程(1)において、温度の上昇と共に、金属マグネシウムおよびアルカリ金属またはアルカリ土類金属のハロゲン化物が溶融し、液体相として存在し、液体マグネシウムが、より高い還元可能性を有するために、酸化タンタルを還元し、新たに生じたタンタル粉末粒子が、より強い表面活性を有することにあると考える。本発明の条件の下、一定の程度までタンタル粉末粒子を焼結する工程は、還元熱を使用することによって行われ、コンデンサを製作するのに好適な空間構造が構築され、次いで、溶融塩(主にアルカリ金属ハロゲン化物)の液体相中のさらなる焼結で、タンタル粉末における大きな粒子の角、突起、および超微細タンタル粉末粒子が、液体相において溶解する。工程が継続するとき、タンタルは、飽和濃度を超える液体相中濃度を有し、次いで、優先的には、タンタルの大きな粒子のある特定の部位に付着し、大きな粒子の一部として合体する。したがって、タンタル粉末は、より均一な粒径、滑らかな粒子、粗い焼結ネック、およびあまり微細ではない粒子を有する。その後、得られたタンタル粉末に、先行技術に従って、高温高真空焼結、酸素還元、および酸洗浄処理を施し、それによって、高電圧高信頼性コンデンサを製作するのに好適なタンタル粉末を得る。
【実施例】
【0028】
本発明をさらに説明するために、本発明の好ましい実施形態は、添付された例と組み合わせて記載され、それにより、本発明の目的、特徴、および利点が明らかにされ得る。記載は、本発明の特徴および利点をさらに説明するものとしてのみ意図され、本発明を限定するものではない。例は、特定の条件が明記されない限り、従来の条件下で実行された。使用された試薬および装置は、製造者が明記されない限り、市販の従来品である。
【0029】
本明細書の目的のために、明細書および特許請求の範囲における、成分の量、反応条件などを表す、全ての数は、別段の指示がない限り、全ての場合において、用語「約」によって修飾されるものと理解されたい。したがって、以下の明細書および添付の特許請求の範囲において与えられる数値パラメータは、別段の指示がない限り、本発明によって得られようとする所望の特性に応じて変わることがある近似値である。最低でも、特許請求の範囲に記載の範囲の均等物の原理の適用を限定しようと意図するものではなく、それぞれの数値パラメータは、少なくとも、報告される有意桁の数、および通常の丸め手法(rounding technique)に従って解釈されるべきである。
【0030】
タンタル粉末における不純物の含有量は、中華人民共和国国家標準GB/T15076.1-15076.15に従って分析され、物理的特性は、業界標準YS/T573-2015に従って試験される。タンタル粉末の電気性能は、中華人民共和国国家標準GB/T3137に従って試験される。
【0031】
実施例1
酸化タンタル10.0kgを、金属マグネシウム粒子5.46kgと混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)5.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した(すなわち、排気した)。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉に入れて、温度940℃に加熱し、続いて、酸化タンタルを完全に還元するために4.0時間保温した。次いで、反応容器を温度680℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて6時間保温させ、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を940℃に加熱し、続いて、タンタル粉末が溶融ハロゲン化物において焼結されるように、5時間保温した。保温する工程が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を分離するようにした。
【0032】
次に、タンタル粉末に、50ppmのPをドープし、5.0×10-3Pa未満の圧力で1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、最終のタンタル粉末を得た。得られた最終のタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述された標準GB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0033】
実施例2
酸化タンタル10.0kgを、金属マグネシウム粒子5.46kgと混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)2.5kgおよび塩化ナトリウム(NaCl)2.5kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度940℃に加熱し、続いて1.0時間保温した。次いで、反応容器を温度650℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて8時間保温し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を940℃に加熱し、続いて3時間保温した。保温する工程が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を分離するようにした。
【0034】
次に、タンタル粉末に、50ppmのPをドープし、5.0×10-3Pa未満の圧力で1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、最終のタンタル粉末を得た。得られた最終のタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0035】
実施例3
酸化タンタル10.0kgを、金属マグネシウム粒子4.00kgと混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)3.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度900℃に加熱し、続いて8.0時間保温した。次いで、反応容器を温度680℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて6時間保温し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を900℃に加熱し、続いて6時間保温した。保温する工程が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を分離するようにした。
【0036】
次に、タンタル粉末に、50ppmのPをドープし、5.0×10-3Pa未満の圧力で1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、最終のタンタル粉末を得た。得られた最終のタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0037】
実施例4
酸化タンタル10.0kgを、金属マグネシウム粒子8.00kgと混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)2.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度980℃に加熱し、続いて2.0時間保温した。次いで、反応容器を温度720℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて8時間保温し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を980℃に加熱し、続いて3時間保温した。保温する工程が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を分離するようにした。
【0038】
次に、タンタル粉末に、50ppmのPをドープし、5.0×10-3Pa未満の圧力で1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、最終のタンタル粉末を得た。得られた最終のタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0039】
実施例5
ホウ素50ppmを含む化合物を含む酸化タンタル10.0kgを、金属マグネシウム粒子4.00kgと混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)1.5kgおよび塩化ナトリウム(NaCl)1.5kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度950℃に加熱し、続いて4.0時間保温した。次いで、反応容器を温度680℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるために真空化し、続いて6時間保温し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を950℃に加熱し、続いて1時間保温した。保温する工程が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を分離するようにした。
【0040】
次に、タンタル粉末に、50ppmのPをドープし、5.0×10-3Pa未満の圧力で1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、最終のタンタル粉末を得た。得られた最終のタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0041】
実施例6
窒素1500ppmを含む化合物を含む酸化タンタル10.0kgを、金属マグネシウム粒子4.00kgと混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)1.5kgおよび塩化ナトリウム(NaCl)1.5kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉内に置き、温度900℃に加熱し、続いて4.0時間保温した。次いで、反応容器を温度680℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて6時間保温し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を900℃に加熱し、続いて6時間保温した。保温する工程が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を分離するようにした。
【0042】
次に、タンタル粉末に、50ppmのPをドープし、5.0×10-3Pa未満の圧力で1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、最終のタンタル粉末を得た。
【0043】
得られた最終のタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0044】
実施例7
リン80ppmを含む化合物を含む酸化タンタル10.0kgを、金属マグネシウム粒子4.00kgと混合し、同時に、塩化カリウム(KCl)8.0kgと混合した。均一に混合した後、得られた混合物を反応容器中に入れ、反応容器中の空気を分離した。アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を加熱炉に入れて、温度900℃に加熱し、続いて4.0時間保温した。次いで、反応容器を温度680℃に冷却し、反応容器内の圧力を5.7Paに下げるように真空化し、続いて6時間保温し、真空化を止めた。次いで、アルゴンを反応容器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応容器を900℃に加熱し、続いて6時間保温した。保温する工程が終わった後、反応容器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。その後、得られたハロゲン化物およびタンタル粉末の混合物に、水洗浄、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を分離するようにした。
【0045】
次いで、タンタル粉末は、5.0×10-3Pa未満の圧力で、1400℃の高温高真空熱処理を0.5時間施され、次いで、酸素還元および酸洗いを施されて、最終のタンタル粉末を得た。得られた最終のタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされ、200Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0046】
比較例1
酸化タンタル10.0kgをロータリーキルンリアクター(CN1308566Aにおいて使用された
図3の反応器参照)に入れ、反応器中の空気を排気し、アルゴンを反応器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応器を950℃に加熱した。ロータリーキルンの回転(マグネシウム蒸気および酸化タンタルの完全な反応を容易にする)を用いて、マグネシウム蒸気3.62kgを導入し、続いて4.0時間
保温した。
保温する工程が終わった後、反応器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。得られた材料に、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を得た。タンタル粉末は、実施例のものと同じ条件である1400℃および5.0×10-3Pa未満で熱処理を施した場合に著しく焼結されてしまい粉末に砕くことができなかったので、より低い熱処理温度を使用した。タンタル粉末に、5.0×10-3Pa未満の圧力の下、1250℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、タンタル粉末を得た。得られたタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされた。タンタル粉末を圧縮することによって得られたタンタルブロックは、1450℃および1420℃の焼結後、あまりにも大幅な収縮を有し、重大な変形を生じ、比容量がたった2370μFV/gであったので、アノードブロックの、より低い焼結温度が使用された。タンタル粉末の通電中に、アノードブロックは破壊され、通電電圧110Vで通電することができなかったので、100Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0047】
比較例2
金属マグネシウム4.0kgを、撹拌パドルおよび外部送風冷却装置を備えた反応器(CN1251325Aにおいて使用された反応器参照)に入れ、反応器中の空気を排気し、アルゴンを反応器中に導入し、正圧を保つ条件の下、反応器を780℃に加熱した。撹拌パドルの回転で、特許CN1251325Aの要件に従って、酸化タンタルの全量10.0kgを複数回に分けて反応器中に加え、その一方で、反応器の温度を780~800℃に制御した。反応器を室温に冷却し、不動態化処理を実行した。得られた材料に、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、酸素含有量4%を有するタンタル粉末を得た。酸素含有量4%を有するタンタル粉末は、温度800~815℃で、金属マグネシウム4.0kgを使用することによって再度還元された。得られた材料に、酸洗浄、ろ過、および乾燥を施して、タンタル粉末を得た。タンタル粉末は、実施例のものと同じ条件である1400℃および5.0×10-3Pa未満で熱処理を施した場合に著しく焼結されてしまい粉末に砕くことができなかったので、より低い熱処理温度を使用した。タンタル粉末に、5.0×10-3Pa未満の圧力の下、1250℃の高温高真空熱処理を0.5時間施し、次いで、酸素還元および酸洗いを施して、タンタル粉末を得た。得られたタンタル粉末は、表1に明記された、アノードブロック質量、圧縮密度、アノードブロック焼結温度、焼結時間、および前述されたGB/T3137要件による他の条件に従って、アノードブロックにされた。タンタル粉末を圧縮することによって得られたタンタルブロックは、1450℃および1420℃の焼結後、あまりにも大幅な収縮を有し、重大な変形を生じ、比容量がたった4296μFV/gであったので、アノードブロックのより低い焼結温度が使用された。タンタル粉末の通電中に、アノードブロックは、破壊され、通電電圧123Vで通電することができなかったので、100Vで通電され、次いで、前述されたGB/T3137要件に従って電気特性について試験された。試験結果を表1に列挙する。
【0048】
【0049】
表1から分かるように、他の方法によって製造された、同じ等級のコンデンサ用タンタル粉末と比較して、本発明において製造されたタンタル粉末は、より高い電圧条件の下、通電することができ、得られた通電ブロックは、より高い比容量を有し、破壊電圧試験において、より高い破壊電圧を示す。