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特許7530537化合物および化合物の製造方法、硬化性樹脂組成物およびその硬化物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-30
(45)【発行日】2024-08-07
(54)【発明の名称】化合物および化合物の製造方法、硬化性樹脂組成物およびその硬化物
(51)【国際特許分類】
   C08F 12/34 20060101AFI20240731BHJP
   C08L 25/02 20060101ALI20240731BHJP
【FI】
C08F12/34
C08L25/02
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2024527799
(86)(22)【出願日】2024-03-18
(86)【国際出願番号】 JP2024010524
【審査請求日】2024-05-13
(31)【優先権主張番号】P 2023046177
(32)【優先日】2023-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023137647
(32)【優先日】2023-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023137648
(32)【優先日】2023-08-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023204993
(32)【優先日】2023-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023214747
(32)【優先日】2023-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004086
【氏名又は名称】日本化薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】遠島 隆行
(72)【発明者】
【氏名】関 允諭
(72)【発明者】
【氏名】近藤 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】橋本 昌典
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2022-167558(JP,A)
【文献】国際公開第02/083610(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第112824432(CN,A)
【文献】国際公開第2022/207741(WO,A1)
【文献】特表2007-528916(JP,A)
【文献】特開2003-283076(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 12/00-12/36
C08F 112/00-112/36
C08F 212/00-212/36
C08L 25/00-25/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物。
【化1】
(上記式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するlはそれぞれ独立して1~4の整数を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。)
【化2】
(上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1の炭化水素基を表す。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。nは1~5の整数を表す。)
【請求項2】
前記式(a)で表される炭化水素基が下記式(a-1)~(a-6)から選択される1種以上である請求項1に記載の化合物。
【化3】
(上記式(a-1)~(a-6)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するR はそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1の炭化水素基を表す。nは1~5の整数を表す。
【請求項3】
下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とを反応して得られる化合物。
【化4】
(上記式(A)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。)
【化5】
(上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1の炭化水素基を表す。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。nは1~5の整数を表す。)
【化6】
(上記式(B)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。lは1~4の整数を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか一項に記載の化合物を硬化して得られる硬化物。
【請求項6】
請求項4に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
【請求項7】
下記式(A)で表される化合物と、下記式(B)で表される化合物とを塩基性触媒存在下、非プロトン性極性溶媒中で反応させて得られる化合物の製造方法。
【化7】
(上記式(A)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。)
【化8】
(上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1の炭化水素基を表す。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。nは1~5の整数を表す。)
【化9】
(上記式(B)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。lは1~4の整数を表す。Xはハロゲン原子を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有する化合物および化合物の製造方法、硬化性樹脂組成物およびその硬化物に関するものであり、半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板などの電気・電子部品、炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチックなどの軽量高強度材料、3Dプリンティング用途に好適に使用される。
【背景技術】
【0002】
近年、電気・電子部品を搭載する積層板はその利用分野の拡大により、要求特性が広範かつ高度化している。従来の半導体チップは金属製のリードフレームに搭載することが主流であったが、中央処理装置(以下、CPUと表す。)などの処理能力の高い半導体チップは高分子材料で作られる積層板に搭載されることが多くなってきている。
【0003】
現在開発が加速している第5世代通信システム「5G」では、さらなる大容量化と高速通信が進むことが予想されている。5Gでは使用する周波数の高周波化が進むことになるが、高周波を利用した高速通信の実現には伝送損失の低減が重要であり、基板材料の更なる低誘電特性が求められることとなる。プリント基板上で発生する伝送損失は導体損失と誘電体損失に由来する。非特許文献1で述べられている通り、誘電損失αは誘電体の比誘電率εの平方根および誘電正接tanδに比例するため、伝送損失低減には比誘電率ε以上に寄与度の高い誘電正接tanδを改善することが効果的であると言える。低誘電正接の材料としてはPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)やLCP(液晶ポリマー)に代表される熱可塑性材料が挙げられるが、熱硬化性樹脂と比較し成形性に乏しい。これを踏まえ、低誘電特性に優れた熱硬化性樹脂の開発が望まれている。
【0004】
このような背景を受けて、誘電特性に優れる高分子材料が検討されている。例えば、特許文献1ではマレイミド基を有するイミド化合物と脂肪族不飽和結合を有するフェノールアラルキル樹脂を含む熱硬化性樹脂組成物が提案されている。しかしながら、一方で硬化反応時に反応に関与しないフェノール性水酸基が残存するため、電気特性が十分とは言えない。また特許文献2ではフェノール性水酸基とともにアリル基を付加したアリルエーテル変性ビフェニルアラルキルノボラック樹脂が開示されている。しかしながら、アリルエーテル変性ビフェニルアラルキルノボラック樹脂は190℃においてクライゼン転位が起こることが示されており、一般的な基板の成型温度である200℃においては、硬化反応に寄与しないフェノール性水酸基が生成することから電気特性を満足できるものではない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【文献】「プリント基板上高速信号伝送における信号損失要因」、第29回エレクトロニクス実装学会春季講演大会、セッションID:16P1-17、2015年
【特許文献】
【0006】
【文献】日本国特開平04-359911号公報
【文献】国際公開2016/002704号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、優れた低誘電特性を有する化合物、硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち本発明は、下記[1]~[7]に関する。なお、本発明において「(数値1)~(数値2)」は上下限値を含むことを示す。
[1]
下記式(1)で表される化合物。
【0009】
【化1】
【0010】
上記式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するlはそれぞれ独立して1~4の整数を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。
【0011】
【化2】
【0012】
上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。nは1~5の整数を表す。
[2]
前記式(a)で表される炭化水素基が下記式(a-1)~(a-6)から選択される1種以上である前項[1]に記載の化合物。
【0013】
【化3】
【0014】
上記式(a-1)~(a-6)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。複数存在するnはそれぞれ独立して1~5の整数を表す。
[3]
下記式(A)で表される化合物と下記式(B)で表される化合物とを反応して得られる化合物。
【0015】
【化4】
【0016】
上記式(A)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。
【0017】
【化5】
【0018】
上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。nは1~5の整数を表す。
【0019】
【化6】
【0020】
上記式(B)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。複数存在するlはそれぞれ独立して1~4の整数を表す。Xはハロゲン原子を表す。
[4]
前項[1]~[3]のいずれか一項に記載の化合物を含有する硬化性樹脂組成物。
[5]
前項[1]~[3]のいずれか一項に記載の化合物を硬化して得られる硬化物。
[6]
前項[4]に記載の硬化性樹脂組成物を硬化して得られる硬化物。
[7]
下記式(A)で表される化合物と、下記式(B)で表される化合物とを塩基性触媒存在下、非プロトン性極性溶媒中で反応させて得られる化合物の製造方法。
【0021】
【化7】
【0022】
上記式(A)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。
【0023】
【化8】
【0024】
上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。nは1~5の整数を表す。
【0025】
【化9】
【0026】
上記式(B)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。複数存在するlはそれぞれ独立して1~4の整数を表す。Xはハロゲン原子を表す。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、優れた低誘電特性を有する化合物、及び硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】実施例1のHP-LCチャートを示す。
図2】実施例1のH-NMRチャートを示す。
図3】実施例2のHP-LCチャートを示す。
図4】実施例2のH-NMRチャートを示す。
図5】実施例3のHP-LCチャートを示す。
図6】実施例3のH-NMRチャートを示す。
図7】実施例4のHP-LCチャートを示す。
図8】実施例4のH-NMRチャートを示す。
図9】実施例5のHP-LCチャートを示す。
図10】実施例5のH-NMRチャートを示す。
図11】実施例6のHP-LCチャートを示す。
図12】実施例6のH-NMRチャートを示す。
図13】実施例7のHP-LCチャートを示す。
図14】実施例7のH-NMRチャートを示す。
図15】実施例8のHP-LCチャートを示す。
図16】実施例8のH-NMRチャートを示す。
図17】実施例9のHP-LCチャートを示す。
図18】実施例9のH-NMRチャートを示す。
図19】実施例10のHP-LCチャートを示す。
図20】実施例10のH-NMRチャートを示す。
図21】実施例11のHP-LCチャートを示す。
図22】実施例11のH-NMRチャートを示す。
図23】実施例12のHP-LCチャートを示す。
図24】実施例12のH-NMRチャートを示す。
図25】実施例13のHP-LCチャートを示す。
図26】実施例13のH-NMRチャートを示す。
図27】実施例14のHP-LCチャートを示す。
図28】実施例14のH-NMRチャートを示す。
図29】比較合成例1のHP-LCチャートを示す。
図30】比較合成例1のH-NMRチャートを示す。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る実施形態(以下、「本実施形態」とも記す)について、さらに詳細に説明する。
【0030】
本実施形態の化合物は、下記式(1)で表される。
【0031】
【化10】
【0032】
上記式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。炭素数が5以下であると、高周波に晒された際に分子振動をしにくいため、電気特性に優れる。また、水素原子である場合は高温放置試験時のアルキル基の酸化反応に由来する極性基生成に伴う誘電特性や吸水特性の悪化を抑制できる。複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するlはそれぞれ独立して1~4の整数を表し、好ましくは1である。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。maveは、原料の仕込み比率から計算しても良いし、NMR分析結果より算出しても良い。溶剤溶解性および耐熱性の観点から、0<mave≦3であることが好ましく、0<mave≦2であることがより好ましい。mave=0の場合と比較し、maveが0より大きい場合では溶剤溶解性、誘電特性に優れる。一方、maveが4より大きい場合、立体障害が大きくなり硬化性が低下する恐れがある。
【0033】
【化11】
【0034】
上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。炭素数が5以下であると、高周波に晒された際に分子振動をしにくいため、電気特性に優れる。また、水素原子である場合は高温放置試験時のアルキル基の酸化反応に由来する極性基生成に伴う誘電特性や吸水特性の悪化を抑制できる。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表し、炭素数1~5の炭化水素基はメチル基であるときが好ましい。nは1~5の整数を表し、好ましくは1である。
【0035】
上記式(a)で表される炭化水素基は下記式(a-1)~(a-6)から選択される1種以上であることが好ましい。
【0036】
【化12】
【0037】
上記式(a-1)~(a-6)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。炭素数が5以下であると、高周波に晒された際に分子振動をしにくいため、電気特性に優れる。また、水素原子である場合は高温放置試験時のアルキル基の酸化反応に由来する極性基生成に伴う誘電特性や吸水特性の悪化を抑制できる。複数存在するnはそれぞれ独立して1~5の整数を表す。
【0038】
上記式(a-1)~(a-6)はいずれか1種のみであっても、複数種混合していてもよい。たとえば、上記式(a-2)で表される置換基の導入数(X)を、上記式(a-1)で表される置換基の導入数(Y)で除した値(X/Y)は、0.25≦(X/Y)≦8であることが好ましく、0.5≦(X/Y)≦6であることがさらに好ましく、0.75≦(X/Y)≦4であることが特に好ましく、0.75≦(X/Y)≦2であることが最も好ましい。式(a-2)で表される置換基の含有量が多いほど耐熱性・低吸水性・低誘電特性に優れる。(X/Y)の値は後述する式(A)で表される化合物を合成する際の原料の仕込み比率より計算することができる。
【0039】
上記式(1)で表される化合物の製法は特に限定されないが、下記式(A)で表される化合物と、下記式(B)で表される化合物と、を反応して得ることができる。
【0040】
【化13】
【0041】
上記式(A)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表す。mの平均値maveは0<mave≦4である。maveは、原料の仕込み比率から計算しても良いし、NMR分析結果より算出しても良い。溶剤溶解性および耐熱性の観点から、0<mave≦3.0であることが好ましく、0<mave≦2であることがより好ましい。mave=0の場合と比較し、maveが0より大きい場合では溶剤溶解性、誘電特性に優れる。一方、maveが4より大きい場合、立体障害が大きくなり硬化性が低下する恐れがある。
【0042】
【化14】
【0043】
上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。炭素数が5以下であると、高周波に晒された際に分子振動をしにくいため、電気特性に優れる。また、水素原子である場合は高温放置試験時のアルキル基の酸化反応に由来する極性基生成に伴う誘電特性や吸水特性の悪化を抑制できる。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表し、炭素数1~5の炭化水素基はメチル基であるときが好ましい。nは1~5の整数を表し、好ましくは1である。
【0044】
上記式(a)で表される炭化水素基は上記式(a-1)~(a-6)から選択される1種以上であるときが好ましく、上記式(a-1)~(a-6)はいずれか1種のみであっても、複数種混合していてもよい。たとえば、上記式(a-2)で表される置換基の導入数(X)を、上記式(a-1)で表される置換基の導入数(Y)で除した値(X/Y)は、0.25≦(X/Y)≦8であることが好ましく、0.5≦(X/Y)≦6であることがさらに好ましく、0.75≦(X/Y)≦4であることが特に好ましく、0.75≦(X/Y)≦2であることが最も好ましい。式(a-2)で表される置換基の含有量が多いほど耐熱性・低吸水性に優れる。
【0045】
【化15】
【0046】
上記式(B)中、Rは水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、さらに好ましくは水素原子である。炭素数が5以下であると、高周波に晒された際に分子振動をしにくいため、電気特性に優れる。また、水素原子である場合は高温放置試験時のアルキル基の酸化反応に由来する極性基生成に伴う誘電特性や吸水特性の悪化を抑制できる。Xはハロゲン原子を表し、反応性および廃棄物生成抑制の観点から臭素原子または塩素原子であることが好ましく、塩素原子であることが更に好ましい。lは1~4の整数を表し、好ましくは1である。
【0047】
上記式(1)で表される化合物を合成する場合において、上記式(A)で表される化合物のmol数をα、上記式(B)で表される化合物のmol数をβとしたとき、β/αが1.8以上2.1以下であることが好ましく、1.8以上2.0mоl以下であるときがさらに好ましく、1.8以上1.95以下であることが特に好ましい。β/αが1.8より小さい場合は上記式(A)で表される化合物が未反応のまま残存するため、硬化膜の靭性が低下するおそれがあるほか、誘電特性が悪化するおそれがある。これは未反応の上記式(A)で表される化合物は架橋できる構造を有していないこと、および上記式(A)で表される化合物の9位のメチレン構造に対して酸素が反応することでケトンが生成し、極性が高まるためである。β/αが2.1より大きい場合は、精製により完全に除去できなかった上記式(B)で表される化合物のハロゲン元素が、硬化時(例えば175℃以上の温度)や高温高湿試験時(85℃、湿度85%や120℃、湿度100%等)に脱離して、銅配線の腐食を招くおそれがある。本実施形態の化合物中に含まれる残存ハロゲン量は1~10000ppmが好ましく、より好ましくは1~3000ppm、さらに好ましくは1~2000ppmである。
【0048】
上記式(A)で表される化合物と、上記式(B)で表される化合物との反応について詳細に説明する。上記式(1)で表される化合物は、上記式(A)で表される化合物と、上記式(B)で表される化合物とを塩基性触媒存在下、非プロトン性極性溶媒中で反応させることによって得られる。非プロトン性極性溶媒としては例えば、ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、N-メチルピロリドンなどが挙げられ、2種以上を併用しても良い。また、必要に応じて非水溶性溶媒を併用してもよい。非水溶性溶媒としては例えばトルエン、キシレンなどの芳香族溶剤、シクロヘキサン、n-ヘキサンなどの脂肪族溶剤、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテルなどのエーテル類、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶剤、メチルイソブチルケトン、シクロペンタノンなどのケトン系溶剤などの非水溶性溶剤が挙げられるがこれらに限定されるものではなく、2種以上を併用しても良い。触媒は特に限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等の塩基性触媒が挙げられる。上記式(A)で表される化合物、上記式(B)で表される化合物、塩基の仕込み順は必要に応じて変えることができるが、上記式(A)で表される化合物、非プロトン性極性溶媒、塩基を加え、上記式(A)で表される化合物を十分イオン化させた後、上記式(B)で表される化合物を添加する方法が好ましい。非プロトン性極性溶媒を用いずに反応させる場合、反応速度が著しく低下する。非プロトン性極性溶媒を用いない場合、一般には層間移動触媒を用いて反応が行われる。この場合、トルエン等の非水溶性溶媒に原料を溶解させ、水酸化ナトリウム水溶液等の塩基触媒、テトラブチルアンモニウムブロミド等の層間移動触媒存在下で上記式(A)で表される化合物、上記式(B)で表される化合物を反応させる。この場合、テトラブチルアンモニウムブロミドのような層間移動触媒を完全に除去することが困難であり、低誘電特性(低誘電率・低誘電正接)の実現が困難となるほか、残存した層間移動触媒が原因となり、本実施形態の化合物を用いた基板材料を長期湿熱信頼性試験等にかけた際に、イオンマイグレーション等の問題が発生する恐れがある。反応温度としては0~120℃が好ましく、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは0~80℃である。上記上限以上では本実施形態の化合物の自己重合が進行しゲル化のおそれがある。上記下限以下では十分に反応が進行しないおそれがある。反応後の後処理としては、任意の酸化合物により中和を行ってもよい。また、必要に応じて反応溶液にアルコール化合物や水等を加え結晶として目的物を回収しても良い。また得られた反応溶液、もしくは結晶を任意の溶剤に再溶解し抽出工程を実施してもよい。抽出工程についてはトルエンやキシレン等の芳香族炭化水素溶媒を単独で用いてもよいし、シクロヘキサンやトルエン等の非芳香族炭化水素を併用しても良い。抽出後、排水が中性になるまで有機層を水洗し、エバポレータ等を用いて溶剤を留去することで目的の化合物を得ることができる。
【0049】
上記式(A)で表される化合物は、フルオレンと下記式(c)または(d)で表される化合物から誘導される。
【0050】
【化16】
【0051】
上記式(c)および(d)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表し、好ましくは水素原子又は炭素数1~3の炭化水素基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。炭素数が5以下であると、高周波に晒された際に分子振動をしにくいため、電気特性に優れる。また、水素原子である場合は高温放置試験時のアルキル基の酸化反応に由来する極性基生成に伴う誘電特性や吸水特性の悪化を抑制できる。複数存在するnはそれぞれ独立して1~5の整数を表し、好ましくは1である。Zは水酸基、またはハロゲン原子を表し、反応性および廃棄物生成抑制の観点から水酸基、臭素原子または塩素原子であることが好ましく、水酸基または塩素原子であることが更に好ましい。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表し、炭素数1~5の炭化水素基はメチル基であるときが好ましい。上記式(c)または(d)で表される化合物は、原料の自己重合反応抑制の観点から上記式(c)で表される化合物を用いることが好ましい。
【0052】
上記式(c)で表される化合物は、下記式(c-1)~(c-6)から選択されることが好ましい。
【化17】
【0053】
フルオレンと上記式(c)または(d)で表される化合物を反応する際、フルオレン1mоlに対し、上記式(c)または(d)で表される化合物を0.01~10mоl反応させることが好ましく、より好ましくは0.1~7.5mоlであり、さらに好ましくは0.2~5mоlであり、0.3~4mоlが最も好ましい。フルオレンに反応させる(c)または(d)の化合物のモル数が0.01mоlよりも少ない場合、溶剤溶解後長時間放置した際に結晶が析出してくる等、溶剤溶解後の保管安定性が悪化する懸念があり、10mоlよりも大きい場合では耐熱性が低下する恐れや、上記式(c)または(d)で表される化合物が過剰となり、自己重合し、目的の生成物純度が低下する恐れがある。
【0054】
フルオレンと上記式(c)または(d)で表される化合物を反応する際、必要により、触媒として塩酸、燐酸、硫酸、蟻酸、p-トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸のほか、塩化アルミニウム、塩化亜鉛等のルイス酸、活性白土、酸性白土、ホワイトカーボン、ゼオライト、シリカアルミナ等の固体酸、酸性イオン交換樹脂等を用いることができる。これらは単独でも二種以上併用しても良い。触媒の使用量は、使用されるフルオレンおよび上記式(c)または(d)で表される化合物の合計重量に対し、0.1~40重量%、好ましくは0.1~20重量%の添加が好ましい。触媒の使用量が多すぎると反応溶液の粘度が高すぎて攪拌が困難になる恐れがあり、少なすぎると反応の進行が遅くなる恐れがある。反応はヘキサン、シクロヘキサン、オクタン、トルエン、キシレンなどの有機溶剤を必要により選択して使用して行っても良く、無溶剤で行っても良い。例えば、フルオレン、上記式(c)または(d)で表される化合物、および溶剤(もしくは無溶媒)の混合溶液に酸性触媒を添加した後、触媒が水を含む場合は共沸等により水を系内から除く。しかる後に、40~300℃、好ましくは50~250℃で0.5~40時間反応を行う。反応終了後、アルカリ水溶液で酸性触媒を中和してもよいが、中和せずに水洗工程に進むこともできる。水洗工程については油層に非水溶性有機溶剤を加えて廃水が中性になるまで水洗を繰り返す。
【0055】
また、上記反応で得られた上記式(A)で表される化合物に関しては、反応後の溶液にアルカリ等の中和剤、非プロトン性極性溶媒を添加後、塩基触媒、上記式(B)で表される化合物を加え、連続的に上記式(1)で表される化合物へ誘導しても良い。
【0056】
上記式(A)で表される化合物の軟化点は150℃以下が好ましく、120℃以下がより好ましい。軟化点が150℃以下であると上記式(1)で表される化合物へ誘導した際の粘度が低くなる。これにより、流動性の確保が容易となり、ガラスクロスや炭素繊維などへの含浸性が損なわれない上に、プリプレグ化などBステージ化が容易となる。希釈溶剤を増やして粘度を下げた場合、含浸工程において樹脂が繊維状材料に対して十分に付着しない可能性がある。
【0057】
上記式(1)で表される化合物は、加熱等により単独で硬化させることができるが、各種材料を添加して硬化性樹脂組成物とすることで性能向上を図ることもできる。
【0058】
[硬化促進剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、硬化促進剤を添加することにより硬化性を向上させることもできる。硬化促進剤としては、紫外線や可視光の照射または加熱によりアニオンを発生することで硬化反応を促すアニオン系硬化促進剤、もしくは紫外線や可視光の照射または加熱によりカチオンを発生することで硬化反応を促すカチオン系硬化促進剤が好ましい。
【0059】
アニオン系硬化促進剤としては、例えば、2-メチルイミダゾール、2-エチルイミダゾール、2-エチル-4-メチルイミダゾール等のイミダゾール類、トリエチルアミン、トリブチルアミン等のトリアルキルアミン、4-ジメチルアミノピリジン、ベンジルジメチルアミン、2,4,6,-トリス(ジメチルアミノメチル)フェノール、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン等が挙げられ、4-ジメチルアミノピリジン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセンが好ましい。その他、トリフェニルホスフィン等のホスフィン類、テトラブチルアンモニウム塩、トリイソプロピルメチルアンモニウム塩、トリメチルデカニルアンモニウム塩、セチルトリメチルアンモニウム塩、ヘキサデシルトリメチルアンモニウムヒドロキシドなどの4級アンモニウム塩等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0060】
カチオン系硬化促進剤としては例えば、トリフェニルベンジルフォスフォニウム塩、トリフェニルエチルフォスフォニウム塩、テトラブチルフォスフォニウム塩などの4級フォスフォニウム塩(4級塩のカウンターイオンはハロゲン、有機酸イオン、水酸化物イオンなど、特に指定は無いが、特に有機酸イオン、水酸化物イオンが好ましい。)、オクチル酸スズ、カルボン酸亜鉛(2-エチルヘキサン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛、ベヘン酸亜鉛、ミリスチン酸亜鉛)、リン酸エステル亜鉛(オクチルリン酸亜鉛、ステアリルリン酸亜鉛)等の遷移金属化合物(遷移金属塩)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0061】
硬化促進剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量に対し、0.01~5.0質量部が必要に応じて用いられる。
【0062】
[無機充填材]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、無機充填材を含有しても良い。無機充填材としては、例えば、溶融シリカ、結晶シリカ、多孔質シリカ、アルミナ、ジルコン、珪酸カルシウム、炭酸カルシウム、石英粉、炭化珪素、窒化珪素、窒化ホウ素、ジルコニア、窒化アルミニウム、グラファイト、フォルステライト、ステアタイト、スピネル、ムライト、チタニア、タルク、クレー、酸化鉄、アスベスト、ガラス粉末等の粉体、またはこれらを球形状あるいは破砕状にした無機充填材等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0063】
無機充填材を半導体封止用の硬化性樹脂組成物を得る場合の使用量は硬化性樹脂組成物100質量部中、好ましくは80~92質量部であり、さらに好ましくは83~90質量部である。また、層間絶縁層形成材料、銅張積層板やプリプレグ、RCC等の基板材料用の硬化性樹脂組成物を得る場合、上記の無機充填材の使用量は硬化性樹脂組成物100質量部中、好ましくは5~80質量部、さらに好ましくは10~60質量部である。
【0064】
[重合開始剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、重合開始剤を添加することにより硬化性を向上させることもできる。重合開始剤とは、エチレン性不飽和結合等のオレフィン官能基を重合させることが可能な化合物であり、オレフィンメタセシス重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤、ラジカル重合開始剤等が挙げられる。このなかでも硬化性および適度な安定性を有するラジカル重合開始剤を使用することが好ましい。ラジカル重合開始剤とは紫外線や可視光の照射または加熱によりラジカルを生じ、連鎖重合反応を開始させる化合物をいう。用い得るラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物、アゾ系化合物、ベンゾピナコール類等が挙げられ、硬化温度制御やアウトガス抑制、分解物の電気特性への影響が少ないことから有機過酸化物を使用することが好ましい。
【0065】
上記有機過酸化物としては、例えば、メチルエチルケトンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類、過酸化ベンゾイル等のジアシルパーオキサイド類、ジクミルパーオキサイド、1,3-ビス-(t-ブチルパーオキシイソプロピル)-ベンゼン等のジアルキルパーオキサイド類、t-ブチルパーオキシベンゾエート、1,1-ジ-t-ブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、α-クミルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルパーオキシネオデカノエート、t-ブチルペルオキシピバレート、1,1,3,3-テトラメチルブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-2-エチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-ブチルパーオキシ-3,5,5-トリメチルヘキサノエート、t-アミルパーオキシベンゾエート等のアルキルパーエステル類、ジ-2-エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ビス(4-t-ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t-ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、1,6-ビス(t-ブチルパーオキシカルボニルオキシ)ヘキサン等のパーオキシカーボネート類、t-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t-ブチルパーオキシオクトエート、ラウロイルパーオキサイド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。上記有機過酸化物の中でも、ケトンパーオキサイド類、ジアシルパーオキサイド類、ハイドロパーオキサイド類、ジアルキルパーオキサイド類、パーオキシケタール類、アルキルパーエステル類、パーオキシカーボネート類等が好ましく、ジアルキルパーオキサイド類がより好ましい。
【0066】
上記アゾ系化合物としては、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、4,4’-アゾビス(4-シアノ吉草酸)、2,2’-アゾビス(2,4-ジメチルバレロニトリル)、等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0067】
重合開始剤の添加量としては、硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.01~5質量部が好ましく、0.01~3質量部が特に好ましい。用いる重合開始剤の量が0.01質量部未満であると重合反応時に分子量が十分に伸長しない恐れがあり、5質量部より多いと誘電率、誘電正接等の誘電特性を損なう恐れがある。
【0068】
[重合禁止剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、重合禁止剤を含有しても良い。重合禁止剤を含有することで保管安定性が向上するとともに、反応開始温度を制御することができる。反応開始温度を制御することで、流動性の確保が容易となり、ガラスクロスなどへの含浸性が損なわれない上に、プリプレグ化などBステージ化が容易となる。プリプレグ化時に重合反応が進行しすぎると積層工程で積層が困難となるなどの不具合が発生しやすい。
【0069】
重合禁止剤は、本実施形態の化合物を合成するときに添加しても、合成後に添加してもよい。重合禁止剤の使用量は、本実施形態の化合物100重量部に対して、0.008~1質量部、好ましくは0.01~0.5質量部である。
【0070】
重合禁止剤としては、例えば、フェノール系、イオウ系、リン系、ヒンダードアミン系、ニトロソ系、ニトロキシルラジカル系等が挙げられる。また、重合禁止剤は1種類で用いても、複数併用してもよい。これらのうち本実施形態では、フェノール系、ヒンダードアミン系、ニトロソ系、ニトロキシルラジカル系が好ましい。
【0071】
上記フェノール系重合禁止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-p-エチルフェノール、ステアリル-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、イソオクチル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート、2,4-ビス-(n-オクチルチオ)-6-(4-ヒドロキシ-3,5-ジ-t-ブチルアニリノ)-1,3,5-トリアジン、2,4-ビス[(オクチルチオ)メチル]-o-クレゾール等のモノフェノール類、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、トリエチレングリコール-ビス[3-(3-t-ブチル-5-メチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、1,6-ヘキサンジオール-ビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、N,N’-ヘキサメチレンビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシ-ヒドロシンナマミド)、2,2-チオ-ジエチレンビス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルフォスフォネート-ジエチルエステル、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-{β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ}エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、ビス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジルスルホン酸エチル)カルシウム等のビスフェノール類、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、トリス-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-イソシアヌレイト、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-s-トリアジン-2,4,6-(1H,3H,5H)トリオン、トコフェロール等の高分子型フェノール類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0072】
上記イオウ系重合禁止剤としては、例えば、ジラウリル-3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル-3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル-3,3’-チオジプロピオネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0073】
上記リン系重合禁止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールホスファイト、トリス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(オクタデシル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチルフェニル)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4-ジ-t-ブチル-4-メチルフェニル)ホスファイト、ビス[2-t-ブチル-6-メチル-4-{2-(オクタデシルオキシカルボニル)エチル}フェニル]ヒドロゲンホスファイト等のホスファイト類、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10-デシロキシ-9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のオキサホスファフェナントレンオキサイド類等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0074】
上記ヒンダードアミン系重合禁止剤としては、例えば、アデカスタブ(登録商標)LA-40MP、アデカスタブLA-40Si、アデカスタブLA-402AF、アデカスタブLA-87、アデカスタブLA-82、アデカスタブLA-81、アデカスタブLA-77Y、アデカスタブLA-77G、アデカスタブLA-72、アデカスタブLA-68、アデカスタブLA-63P、アデカスタブLA-57、アデカスタブLA-52(以上、株式会社ADEKA製)、Chimassorb(登録商標)2020FDL、Chimassorb944FDL、Chimassorb944LD、Tinuvin(登録商標)622SF、TinuvinPA144、Tinuvin765、Tinuvin770DF、TinuvinXT55FB、Tinuvin111FDL、Tinuvin783FDL、Tinuvin791FB(以上、BASF社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0075】
上記ニトロソ系重合禁止剤としては、例えば、p-ニトロソフェノール、N-ニトロソジフェニルアミン、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアンモニウム塩、(クペロン)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。これらのうち、好ましくは、N-ニトロソフェニルヒドロキシアミンのアンモニウム塩(クペロン)である。
【0076】
上記ニトロキシルラジカル系重合禁止剤としては、例えば、ジ-tert-ブチルニトロキサイド、2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-オキソ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アミノ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-アセトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル、4-ベンゾイルオキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-オキシル等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0077】
[難燃剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、難燃剤を用いてもよい。難燃剤としては、例えば、ハロゲン系難燃剤、無機系難燃剤(アンチモン化合物、金属水酸化物、窒素化合物、ホウ素化合物等)、リン系難燃剤等が挙げられるが、ハロゲンフリー難燃性を達成する観点からリン系難燃剤が好ましい。
【0078】
上記リン系難燃剤としては反応型のものでも添加型のものでもよい。具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシリレニルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、クレジル-2,6-ジキシリレニルホスフェート、1,3-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)等のリン酸エステル類、9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド、10(2,5-ジヒドロキシフェニル)-10H-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキサイド等のホスファン類のほか、エポキシ樹脂と上記ホスファン類の活性水素とを反応させて得られるリン含有エポキシ化合物、赤リン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。上記例示物質のうち、リン酸エステル類、ホスファン類またはリン含有エポキシ化合物が好ましく、1,3-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、1,4-フェニレンビス(ジキシリレニルホスフェート)、4,4’-ビフェニル(ジキシリレニルホスフェート)またはリン含有エポキシ化合物が特に好ましい。
【0079】
難燃剤の含有量は硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.1~0.6質量部の範囲であることが好ましい。0.1質量部未満では難燃性が不十分となる恐れがあり、0.6質量部より多いと硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0080】
[光安定剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、光安定剤を用いてもよい。光安定剤としては、ヒンダードアミン系の光安定剤(Hindered Amine Light Stabilizers、HALS)等が好適である。HALSとしては、例えば、ジブチルアミン・1,3,5-トリアジン・N,N’-ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)-1,6-ヘキサメチレンジアミンとN-(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)ブチルアミンの反応物、コハク酸ジメチル-1-(2-ヒドロキシエチル)-4-ヒドロキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン反応物、ポリ〔{6-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)アミノ-1,3,5-トリアジン-2,4-ジイル}{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}ヘキサメチレン{(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)イミノ}〕、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)〔〔3,5-ビス(1,1-ジメチルエチル)-4-ヒドロキシフェニル〕メチル〕ブチルマロネート、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1-オクチロキシ-2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、2-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)-2-n-ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0081】
光安定剤の含有量は硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.001~0.1質量部の範囲であることが好ましい。0.001質量部未満では光安定効果を発現するのに不十分となる恐れがあり、0.1質量部より多いと硬化物の吸湿性、誘電特性に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0082】
[バインダー樹脂]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、バインダー樹脂を用いてもよい。バインダー樹脂としては、例えば、ブチラール系樹脂、アセタール系樹脂、アクリル系樹脂、エポキシ-ナイロン系樹脂、NBR-フェノール系樹脂、エポキシ-NBR系樹脂、シリコーン系樹脂等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0083】
バインダー樹脂の配合量は、硬化物の難燃性、耐熱性を損なわない範囲であることが好ましく、硬化性樹脂組成物100質量部に対し、0.05~50質量部であることが好ましく、さらに好ましくは0.05~20質量部が必要に応じて用いられる。
【0084】
[添加剤]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、添加剤を用いてもよい。添加剤としては、例えば、アクリロニトリル共重合体の変性物、ポリエチレン、フッ素樹脂、シリコーンゲル、シリコーンオイル、シランカップリング剤のような充填材の表面処理剤、離型剤、カーボンブラック、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等の着色剤が挙げられる。
【0085】
添加剤の配合量は、硬化性樹脂組成物100質量部に対して好ましくは30質量部以下、より好ましくは20質量部以下、特に好ましくは10質量部以下の範囲である。
【0086】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、さらに、エポキシ樹脂、活性エステル化合物、フェノール樹脂、ポリフェニレンエーテル化合物、アミン樹脂、エチレン性不飽和結合を有する化合物、イソシアネート樹脂、ポリアミド樹脂、マレイミド化合物、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂、ポリブタジエンおよびこの変性物、ポリスチレンおよびこの変性物、ポリエチレンおよびこの変性物等を用いてもよく、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。これらの化合物のうち、耐熱性、密着性、誘電特性のバランスから、ポリフェニレンエーテル化合物、エチレン性不飽和結合を有する化合物、シアネートエステル樹脂、ポリブタジエンおよびこの変性物、ポリスチレンおよびこの変性物を含有することが好ましい。これらの化合物を含有することによって、硬化物の脆さの改善および金属への密着性を向上でき、はんだリフロー時や冷熱サイクルなどの信頼性試験におけるパッケージのクラックを抑制できる。
【0087】
上記化合物の使用量は、特に断りがない場合、本実施形態の化合物に対して、好ましくは10質量倍以下、さらに好ましくは5質量倍以下、特に好ましくは3質量倍以下の質量範囲である。また、好ましい下限値は0.1質量倍以上、より好ましくは0.25質量倍以上、更に好ましくは0.5質量倍以上である。上記範囲内であることにより、本実施形態の化合物の低誘電特性の効果を活かしつつ、添加する各化合物の効果を付加することができる。これらの成分については、以下に例示するものを使用することができる。
【0088】
[エポキシ樹脂]
エポキシ樹脂として好ましいものを以下に例示するがこれらに限定されるものではない。なお、エポキシ樹脂の性状は液状であっても固形であってもよく、1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0089】
液状エポキシ樹脂としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、グリシジルエステル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂、シクロヘキサン型エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、及びブタジエン構造を有するエポキシ樹脂等を挙げることができる。具体例としては、「RE310S」、「RE410S」(以上、日本化薬社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「RE303S」、「RE304S」、「RE403S」、「RE404S」(以上、日本化薬社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「HP4032」、「HP4032D」、「HP4032SS」(以上、DIC社製、ナフタレン型エポキシ樹脂)、「828US」、「jER828EL」、「825」、「828EL」(以上、三菱ケミカル社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jE807」、「1750」(以上、三菱ケミカル社製、ビスフェノールF型エポキシ樹脂)、「jER(登録商標)152」(三菱ケミカル社製、フェノールノボラック型エポキシ樹脂)、「630」、「630LSD」(以上、三菱ケミカル社製、グリシジルアミン型エポキシ樹脂)、「ZX1059」(新日鉄住金化学社製、ビスフェノールA型エポキシ樹脂とビスフェノールF型エポキシ樹脂の混合品)、「EX-721」(ナガセケムテックス社製、グリシジルエステル型エポキシ樹脂)、「セロキサイド2021P」(ダイセル社製、エステル骨格を有する脂環式エポキシ樹脂)、「PB-3600」(ダイセル社製、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂)、「ZX1658」、「ZX1658GS」(以上、新日鉄住金化学社製、液状1,4-グリシジルシクロヘキサン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0090】
固形エポキシ樹脂としては、例えば、ビキシレノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、トリスフェノール型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、アントラセン型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂が好ましく、ナフトール型エポキシ樹脂、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、及びビフェニル型エポキシ樹脂を挙げることができる。具体例としては、「HP4032H」(DIC社製、ナフタレン型エポキシ樹脂)、「HP-4700」、「HP-4710」(以上、DIC社製、ナフタレン型4官能エポキシ樹脂)、「N-690」(DIC社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「N-695」(DIC社製、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「HP-7200」(DIC社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「HP-7200」、「HP-7200HH」、「HP-7200H」(以上、DIC社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「EXA-7311」、「EXA-7311-G3」、「EXA-7311-G4」、「EXA-7311-G4S」、「HP-6000」(以上、DIC社製、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂)、「EPPN-502H」(日本化薬社製、トリスフェノール型エポキシ樹脂)、「NC-7000L」、「NC-7300」(以上、日本化薬社製、ナフトール-クレゾールノボラック型エポキシ樹脂)、「NC-3000H」、「NC-3000」、「NC-3000L」、「NC-3100」(以上、日本化薬社製、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂)、「XD-1000-2L」、「XD-1000-L」、「XD-1000-H」、「XD-1000-H」(以上、日本化薬社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂)、「ESN475V」(新日鉄住金化学社製、ナフトール型エポキシ樹脂)、「ESN485」(新日鉄住金化学社製、ナフトールノボラック型エポキシ樹脂)、「YX-4000H」、「YX-4000」、「YL6121」(以上、三菱ケミカル社製、ビフェニル型エポキシ樹脂)、「YX-4000HK」(三菱ケミカル社製、ビキシレノール型エポキシ樹脂)、「YX-8800」(三菱ケミカル社製、アントラセン型エポキシ樹脂)、「PG-100」、「CG-500」(大阪ガスケミカル社製、フルオレン系エポキシ樹脂)、「YL-7760」(三菱ケミカル社製、ビスフェノールAF型エポキシ樹脂)、「YL-7800」(三菱ケミカル社製、フルオレン型エポキシ樹脂)「jER1010」(三菱ケミカル社製、固体状ビスフェノールA型エポキシ樹脂)、「jER1031S」(三菱ケミカル社製、テトラフェニルエタン型エポキシ樹脂)等が挙げられる。これらは1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0091】
[活性エステル化合物]
活性エステル化合物とは、構造体中にエステル結合を少なくとも1つ含み、かつ、エステル結合の両側に脂肪族鎖、脂肪族環又は芳香族環が結合している化合物をいう。活性エステル化合物としては、例えば、フェノールエステル類、チオフェノールエステル類、N-ヒドロキシアミンエステル類、複素環ヒドロキシ化合物のエステル類等の反応活性の高いエステル基を1分子中に2個以上有する化合物を挙げることができ、カルボン酸化合物、酸塩化物、またはチオカルボン酸化合物の少なくともいずれかの化合物と、ヒドロキシ化合物またはチオール化合物の少なくともいずれかの化合物との縮合反応によって得られる。特に、耐熱性向上の観点から、カルボン酸化合物または酸塩化物とヒドロキシ化合物から得られるときが好ましく、ヒドロキシ化合物としてはフェノール化合物またはナフトール化合物が好ましい。活性エステル化合物は1種単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0092】
上記カルボン酸化合物としては、例えば、安息香酸、酢酸、コハク酸、マレイン酸、イタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸等が挙げられる。
【0093】
上記酸塩化物としては、例えば、アセチルクロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、マロニルクロリド、こはく酸ジクロリド、ジグリコリルクロリド、グルタル酸ジクロリド、スベリン酸ジクロリド、セバシン酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、ドデカンジオイルジクロリド、アゼラオイルクロリド、2,5-フランジカルボニルジクロリド、フタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリド、トリメシン酸クロリド、ビス(4-クロロカルボニルフェニル)エーテル、4,4’-ジフェニルジカルボニルクロリド、4,4’-アゾジベンゾイルジクロリド等が挙げられる。
【0094】
上記フェノール化合物及び上記ナフトール化合物としては、例えば、ハイドロキノン、レゾルシン、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールS、フェノールフタリン、メチル化ビスフェノールA、メチル化ビスフェノールF、メチル化ビスフェノールS、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、カテコール、α-ナフトール、β-ナフトール、1,5-ジヒドロキシナフタレン、1,6-ジヒドロキシナフタレン、2,6-ジヒドロキシナフタレン、ジヒドロキシベンゾフェノン、トリヒドロキシベンゾフェノン、テトラヒドロキシベンゾフェノン、フロログルシン、ベンゼントリオール、ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物、フェノールノボラック、後述するフェノール樹脂等が挙げられる。ここで、「ジシクロペンタジエン型ジフェノール化合物」とは、ジシクロペンタジエン1分子にフェノール2分子が縮合して得られるジフェノール化合物をいう。
【0095】
活性エステル化合物の好ましい具体例としては、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物、国際公開第2020/095829号実施例2に記載の化合物、国際公開第2020/059625号にて開示されている化合物等が挙げられる。中でも、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物がより好ましい。ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造とは、フェニレン-ジシクロペンチレン-フェニレンからなる2価の構造単位を表す。
【0096】
活性エステル化合物の市販品としては、例えば、ジシクロペンタジエン型ジフェノール構造を含む活性エステル化合物として、「EXB9451」、「EXB9460」、「EXB9460S」、「HPC-8000-65T」、「HPC-8000H-65TM」、「EXB-8000L-65TM」、「EXB-8150-65T」(DIC社製)、ナフタレン構造を含む活性エステル化合物として「EXB9416-70BK」(DIC社製)、フェノールノボラックのアセチル化物を含む活性エステル化合物として「DC808」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのベンゾイル化物を含む活性エステル化合物として「YLH1026」、「YLH1030」、「YLH1048」(三菱化学社製)、フェノールノボラックのアセチル化物である活性エステル系硬化剤として「DC808」(三菱化学社製)、リン原子含有活性エステル系硬化剤としてDIC社製の「EXB-9050L-62M」等が挙げられる。
【0097】
活性エステル化合物およびエポキシ樹脂の配合比に関しては、活性エステル当量(α)とエポキシ当量(β)の比率(α/β)が0.5~1.5であることが好ましく、より好ましくは0.8~1.2、さらに好ましくは、0.90~1.10である。上記範囲を外れる場合、過剰となったエポキシ基もしくは活性エステル基が系中に残存するおそれがあり、高温放置試験(150℃、1000時間など)や高温高湿条件下(温度:85℃、湿度:85%など)での長期信頼性試験等で特性が悪化するおそれがある。
【0098】
[フェノール樹脂]
フェノール樹脂とは、分子内に2つ以上フェノール性水酸基を有する化合物である。フェノール樹脂としては、例えば、フェノール類とアルデヒド類との反応物、フェノール類とジエン化合物との反応物、フェノール類とケトン類との反応物、フェノール類と置換ビフェニル類との反応物、フェノール類と置換フェニル類との反応物、ビスフェノール類とアルデヒド類との反応物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
上記各原料の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
<フェノール類>
フェノール、アルキル置換フェノール、芳香族置換フェノール、ハイドロキノン、レゾルシン、ナフトール、アルキル置換ナフトール、ジヒドロキシベンゼン、アルキル置換ジヒドロキシベンゼン、ジヒドロキシナフタレン等。
<アルデヒド類>
ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、アルキルアルデヒド、ベンズアルデヒド、アルキル置換ベンズアルデヒド、ヒドロキシベンズアルデヒド、ナフトアルデヒド、グルタルアルデヒド、フタルアルデヒド、クロトンアルデヒド、シンナムアルデヒド、フルフラール等。
<ジエン化合物>
ジシクロペンタジエン、テルペン類、ビニルシクロヘキセン、ノルボルナジエン、ビニルノルボルネン、テトラヒドロインデン、ジビニルベンゼン、ジビニルビフェニル、ジイソプロペニルビフェニル、ブタジエン、イソプレン等。
<ケトン類>
アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、フルオレノン等。
<置換ビフェニル類>
4,4’-ビス(クロロメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル、4,4’-ビス(ヒドロキシメチル)-1,1’-ビフェニル等。
<置換フェニル類>
1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン、1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等。
【0099】
[ポリフェニレンエーテル化合物]
ポリフェニレンエーテル化合物としては、耐熱性と電気特性の観点から、エチレン性不飽和結合を有するポリフェニレンエーテル化合物であることが好ましく、アクリル基、メタクリル基、又はスチレン構造を有するポリフェニレンエーテル化合物であることがさらに好ましい。市販品としては、SA-9000(SABIC社製、メタクリル基を有するポリフェニレンエーテル化合物)やOPE-2St-1200(三菱瓦斯化学社製、スチレン構造を有するポリフェニレンエーテル化合物)などが挙げられる。
ポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量(Mn)は、500~5000であることが好ましく、2000~5000であることがより好ましく、2000~4000であることがより好ましい。分子量が500未満であると、硬化物の耐熱性としては充分なものが得られない傾向がある。また、分子量が5000より大きいと、溶融粘度が高くなり、充分な流動性が得られないため、成形不良となりやすくなる傾向がある。また、反応性も低下して、硬化反応に長い時間を要し、硬化系に取り込まれずに未反応のものが増加して、硬化物のガラス転移温度が低下し、硬化物の耐熱性が低下する傾向がある。
ポリフェニレンエーテル化合物の数平均分子量が500~5000であれば、優れた誘電特性を維持したまま、優れた耐熱性及び成形性等を発現させることができる。なお、ここでの数平均分子量は、具体的には、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー等を用いて測定することができる。
【0100】
ポリフェニレンエーテル化合物は、重合反応により得られたものであっても、数平均分子量10000~30000程度の高分子量のポリフェニレンエーテル化合物を再分配反応させて得られたものであってもよい。また、これらを原料として、メタクリル酸クロリド、アクリル酸クロリド、クロロメチルスチレン等、エチレン性不飽和結合を有する化合物と反応させることでラジカル重合性を付与してもよい。再分配反応によって得られたポリフェニレンエーテル化合物は、例えば、高分子量のポリフェニレンエーテル化合物をトルエン等の溶媒中で、フェノール化合物とラジカル開始剤との存在下で加熱し再分配反応させて得られる。このように再分配反応により得られるポリフェニレンエーテル化合物は、分子鎖の両末端に硬化に寄与するフェノール系化合物に由来する水酸基を有するために、さらに高い耐熱性を維持することができることに加え、エチレン性不飽和結合を有する化合物で変性した後も分子鎖の両末端に官能基を導入できる点から好ましい。また、重合反応により得られたポリフェニレンエーテル化合物は、優れた流動性を示す点から好ましい。
【0101】
ポリフェニレンエーテル化合物の分子量の調整は、重合反応により得られたポリフェニレンエーテル化合物の場合、重合条件等を調整することにより行うことができる。また、再分配反応によって得られたポリフェニレンエーテル化合物の場合は、再分配反応の条件等を調整することにより、得られるポリフェニレンエーテル化合物の分子量を調整することができる。より具体的には、再分配反応において用いるフェノール系化合物の配合量を調整すること等が考えられる。すなわち、フェノール系化合物の配合量が多いほど、得られるポリフェニレンエーテル化合物の分子量が低くなる。この際、再分配反応を受ける高分子量のポリフェニレンエーテル化合物としては、ポリ(2,6-ジメチル-1,4-フェニレンエーテル)等を用いることができる。また、上記再分配反応に用いられるフェノール系化合物としては、特に限定されないが、例えば、ビスフェノールA、フェノールノボラック、クレゾールノボラック等のように、フェノール性水酸基を分子中に2個以上有する多官能のフェノール系化合物が好ましく用いられる。これらは、単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0102】
ポリフェニレンエーテル化合物の含有量は、特に限定されないが、硬化性樹脂組成物100質量部に対し、5~1000質量部であることが好ましく、10~750質量部であることがより好ましい。ポリフェニレンエーテル化合物の含有量が上記範囲であると、耐熱性等に優れるだけではなく、ポリフェニレンエーテル化合物の有する優れた誘電特性を充分に発揮された硬化物が得られる点で好ましい。
【0103】
[アミン樹脂]
アミン樹脂とは、分子内に2つ以上アミノ基を有する化合物である。アミン樹脂としては、例えば、ジアミノジフェニルメタン、ジアミノジフェニルスルホン、イソホロンジアミン、ナフタレンジアミン、アニリンノボラック(アニリンとホルマリンの反応物)、N-メチルアニリンノボラック(N-メチルアニリンとホルマリンの反応物)、オルソエチルアニリンノボラック(オルソエチルアニリンとホルマリンの反応物)、2-メチルアニリンとホルマリンの反応物、2,6-ジイソプロピルアニリンとホルマリンの反応物、2,6-ジエチルアニリンとホルマリンの反応物、2-エチル-6-エチルアニリンとホルマリンの反応物、2,6-ジメチルアニリンとホルマリンの反応物、アニリンとキシリレンクロライドとの反応により得られるアニリン樹脂、日本国特許第6429862号公報に記載のアニリンと置換ビフェニル類(4,4’-ビス(クロロメチル)-1,1’-ビフェニル及び4,4’-ビス(メトキシメチル)-1,1’-ビフェニル等)の反応物、アニリンと置換フェニル類(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、1,4-ビス(メトキシメチル)ベンゼン及び1,4-ビス(ヒドロキシメチル)ベンゼン等)の反応物、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、アニリンとジイソプロペニルベンゼンの反応物、ダイマージアミン等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0104】
[エチレン性不飽和結合を含有する化合物]
エチレン性不飽和結合を含有する化合物とは、重合開始剤の使用・不使用を問わず、熱もしくは光により重合可能なエチレン性不飽和結合を分子内に1つ以上有する化合物である。
エチレン性不飽和結合を含有する化合物としては、例えば、上記のフェノール樹脂とエチレン性不飽和結合含有のハロゲン系化合物(クロロメチルスチレン、アリルクロライド、メタリルクロライド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド等)の反応物、エチレン性不飽和結合含有フェノール類(2-アリルフェノール、2-プロペニルフェノール、4-アリルフェノール、4-プロペニルフェノール、オイゲノール、イソオイゲノール等)とハロゲン系化合物(1,4-ビス(クロロメチル)ベンゼン、4,4’-ビス(クロロメチル)ビフェニル、4,4’-ジフルオロベンゾフェノン、4,4’-ジクロロベンゾフェノン、4,4’-ジブロモベンゾフェノン、塩化シアヌル等)の反応物、エポキシ樹脂若しくはアルコール類と(メタ)アクリル酸類(アクリル酸、メタクリル酸等)の反応物及びこれらの酸変性化物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0105】
[イソシアネート樹脂]
イソシアネート樹脂とは、分子内に2つ以上イソシアネート基を有する化合物である。イソシアネート樹脂としては、例えば、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-キシレンジイソシアネート、m-キシレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート類、イソホロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、水添キシレンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート、リジンジイソシアネート等の脂肪族又は脂環構造のジイソシアネート類、イソシアネートモノマーの一種類以上のビュレット体、又は上記ジイソシアネート化合物を3量化したイソシアネート体等のポリイソシアネート、上記イソシアネート化合物とポリオール化合物とのウレタン化反応によって得られるポリイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0106】
[ポリアミド樹脂]
ポリアミド樹脂としては、例えば、ジアミン、ジイソシアネート、オキサゾリンのいずれか1種以上とジカルボン酸の反応物、ジアミンと酸塩化物の反応物、ラクタム化合物の開環重合物が挙げられる。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
上記各原料の具体例を以下に例示するが、これらに限定されるものではない。
<ジアミン>
エチレンジアミン、トリメチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ペンタメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ヘプタメチレンジアミン、オクタメチレンジアミン、ノナメチレンジアミン、デカンジアミン、ウンデカンジアミン、ドデカンジアミン、トリデカンジアミン、テトラデカンジアミン、ペンタデカンジアミン、ヘキサデカンジアミン、ヘプタデカンジアミン、オクタデカンジアミン、ノナデカンジアミン、エイコサンジアミン、2-メチル-1,5-ジアミノペンタン、2-メチル-1,8-ジアミノオクタン、ダイマージアミン、シクロヘキサンジアミン、ビス-(4-アミノシクロヘキシル)メタン、ビス(3-メチル-4-アミノシクロヘキシル)メタン、キシリレンジアミン、ノルボルナンジアミン、イソホロンジアミン、ビスアミノメチルトリシクロデカン、フェニレンジアミン、ジエチルトルエンジアミン、ナフタレンジアミン、ジアミノジフェニルメタン、ビス(4-アミノ-3,5-ジメチルフェニル)メタンビス(4-アミノ-3,5-ジエチルフェニル)メタン、4,4’-メチレンビス-о-トルイジン、4,4’-メチレンビス-о-エチルアニリン、4,4’-メチレンビス-2-エチル-6-メチルアニリン、4,4’-メチレンビス-2,6-ジイソプロピルアニリン、4,4-エチレンジアニリン、ジアミノジフェニルスルホン、ジアミノジフェニルエーテル、1,3-ビス(3-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]スルホン、2,2-ビス(3-アミノ-4-ヒドロキシフェニル)プロパン、2,2-ビス(4-アミノフェニル)ヘキサフルオロプロパン、4,4’-(1,3-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、4,4’-(1,4-フェニレンジイソプロピリデン)ビスアニリン、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、2,7-ジアミノフルオレン、アミノベンジルアミン、ジアミノベンゾフェノン等。
<ジイソシアネート>
ベンゼンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,3-ビス(イソシアナトメチル)ベンゼン、1,3-ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、ビス(4-イソシアナトフェニル)メタン、イソホロンジイソシアネート、1,3-ビス(2-イソシアナト-2-プロピル)ベンゼン、2,2-ビス(4-イソシアナトフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアナート等。
<ジカルボン酸>
シュウ酸、マロン酸、スクシン酸、グルタル酸、アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、5-ヒドロキシイソフタル酸、2-クロロテレフタル酸、2-メチルテレフタル酸、5-メチルイソフタル酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、ヘキサヒドロテレフタル酸、ヘキサヒドロイソフタル酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ビフェニルジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、ベンゾフェノンジカルボン酸、フランジカルボン酸、4,4’-ジカルボキシジフェニルエーテル、4,4’-ジカルボキシジフェニルスルフィド等。
<酸塩化物>
アセチルクロリド、アクリル酸クロリド、メタクリル酸クロリド、マロニルクロリド、こはく酸ジクロリド、ジグリコリルクロリド、グルタル酸ジクロリド、スベリン酸ジクロリド、セバシン酸ジクロリド、アジピン酸ジクロリド、ドデカンジオイルジクロリド、アゼラオイルクロリド、2,5-フランジカルボニルジクロリド、フタロイルクロリド、イソフタロイルクロリド、テレフタロイルクロリド、トリメシン酸クロリド、ビス(4-クロロカルボニルフェニル)エーテル、4,4’-ジフェニルジカルボニルクロリド、4,4’-アゾジベンゾイルジクロリド等。
<ラクタム>
ε-カプロラクタム、ω-ウンデカンラクタム、ω-ラウロラクタム等。
【0107】
[ポリイミド樹脂]
ポリイミド樹脂としては、例えば、上記ジアミンと以下に例示するテトラカルボン酸二無水物の反応物が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
<テトラカルボン酸二無水物>
4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物、5-(2,5-ジオキソテトラヒドロ-3-フラニル)-3-メチル-シクロヘキセン-1,2ジカルボン酸無水物、ピロメリット酸二無水物、1,2,3,4-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、メチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、2,2’-プロピリデン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-トリメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,4-テトラメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,5-ペンタメチレン-4,4’-ジフタル酸二無水物、4,4’-オキシジフタル酸二無水物、チオ-4,4’-ジフタル酸二無水物、スルホニル-4,4’-ジフタル酸二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)ベンゼン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,4-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ベンゼン二無水物、1,3-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、1,4-ビス[2-(3,4-ジカルボキシフェニル)-2-プロピル]ベンゼン二無水物、ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]メタン二無水物、2,2-ビス[3-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、2,2-ビス[4-(3,4-ジカルボキシフェノキシ)フェニル]プロパン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシ)ジメチルシラン二無水物、1,3-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)-1,1,3,3-テトラメチルジシロキサン二無水物、2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,4,5,8-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,4,9,10-ペリレンテトラカルボン酸二無水物、2,3,6,7-アントラセンテトラカルボン酸二無水物、1,2,7,8-フェナントレンテトラカルボン酸二無水物、エチレンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,3,4-テトラカルボン酸二無水物、シクロヘキサン-1,2,4,5-テトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビシクロヘキシルテトラカルボン酸二無水物、カルボニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、メチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,2-エチレン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、1,1-エチリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、2,2-プロピリデン-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、オキシ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、チオ-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、スルホニル-4,4’-ビス(シクロヘキサン-1,2-ジカルボン酸)二無水物、ビシクロ[2,2,2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、rel-[1S,5R,6R]-3-オキサビシクロ[3,2,1]オクタン-2,4-ジオン-6-スピロ-3’-(テトラヒドロフラン-2’,5’-ジオン)、4-(2,5-ジオキソテトラヒドロフラン-3-イル)-1,2,3,4-テトラヒドロナフタレン-1,2-ジカルボン酸無水物、エチレングリコール-ビス-(3,4-ジカルボン酸無水物フェニル)エーテル、4,4’-ビフェニルビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、9,9’-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)フルオレン二無水物等。
【0108】
[マレイミド化合物]
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、マレイミド化合物を含有しても良い。マレイミド化合物とは分子内に1つ以上マレイミド基を有する化合物である。マレイミド化合物としては、例えば、4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、ポリフェニルメタンマレイミド、m-フェニレンビスマレイミド、2,2’-ビス〔4-(4-マレイミドフェノキシ)フェニル〕プロパン、3,3’-ジメチル-5,5’-ジエチル-4,4’-ジフェニルメタンビスマレイミド、4-メチル-1,3-フェニレンビスマレイミド、4,4’-ジフェニルエーテルビスマレイミド、4,4’-ジフェニルスルフォンビスマレイミド、1,3-ビス(3-マレイミドフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-マレイミドフェノキシ)ベンゼン)、ザイロック型マレイミド化合物(アニリックス マレイミド、三井化学ファイン社製)、ビフェニルアラルキル型マレイミド化合物(日本国特開2009-001783号公報の実施例4に記載のマレイミド化合物(M2)を含む樹脂溶液を減圧下溶剤留去することにより固形化したもの)、ビスアミノクミルベンゼン型マレイミド(国際公開第2020/054601号記載のマレイミド化合物)、日本国特許6629692号または国際公開第2020/217679号記載のインダン構造を有するマレイミド化合物、MATERIAL STAGE Vоl.18,Nо.12 2019 『~続・エポキシ樹脂CAS番号物語~硬化剤CAS番号備忘録 第31回 ビスマレイミド(1)』やMATERIAL STAGE Vоl.19,Nо.2 2019 『~続・エポキシ樹脂CAS番号物語~硬化剤CAS番号備忘録 第32回 ビスマレイミド(2)』に記載されているマレイミド化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
【0109】
[シアネートエステル樹脂]
シアネートエステル樹脂は、フェノール樹脂をハロゲン化シアンと反応させることにより得られるシアネートエステル化合物であり、具体例としては、ジシアナートベンゼン、トリシアナートベンゼン、ジシアナートナフタレン、ジシアナートビフェニル、2、2’-ビス(4-シアナートフェニル)プロパン、ビス(4-シアナートフェニル)メタン、ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)メタン、2,2’-ビス(3,5-ジメチル-4-シアナートフェニル)プロパン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)エタン、2,2’-ビス(4-シアナートフェニル)ヘキサフロロプロパン、ビス(4-シアナートフェニル)スルホン、ビス(4-シアナートフェニル)チオエーテル、フェノールノボラックシアナート、フェノール・ジシクロペンタジエン共縮合物の水酸基をシアネート基に変換したもの等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。
また、日本国特開2005-264154号公報に合成方法が記載されているシアネートエステル化合物は、低吸湿性、難燃性、誘電特性に優れているためシアネートエステル化合物として特に好ましい。
シアネートエステル樹脂は、必要に応じてシアネート基を三量化させてsym-トリアジン環を形成するために、ナフテン酸亜鉛、ナフテン酸コバルト、ナフテン酸銅、ナフテン酸鉛、オクチル酸亜鉛、オクチル酸錫、鉛アセチルアセトナート、ジブチル錫マレエート等の触媒を含有させることもできる。
【0110】
触媒は、シアネートエステル樹脂および硬化性樹脂組成物100質量部に対して0.0001~0.10質量部、好ましくは0.00015~0.0015質量部使用することが好ましい。
【0111】
[ポリブタジエンおよびこの変性物]
ポリブタジエンおよびこの変性物とは、ポリブタジエン、もしくはポリブタジエンに由来する構造を分子内に有する化合物である。ポリブタジエンに由来する構造は水素添加により、不飽和結合を一部、もしくは全て単結合に変換されていても良い。
ポリブタジエンおよびこの変性物としては、例えば、ポリブタジエン、水酸基末端ポリブタジエン、末端(メタ)アクリレート化ポリブタジエン、カルボン酸末端ポリブタジエン、アミン末端ポリブタジエン、スチレンブタジエンゴム等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。これらのうち、誘電特性の観点からポリブタジエンもしくはスチレンブタジエンゴムが好ましい。スチレンブタジエンゴム(SBR)としては例えば、RICON-100、RICON-181、RICON-184(いずれもクレイバレー社製)、1,2-SBS(日本曹達社製)などが挙げられ、ポリブタジエンとしては、B-1000、B-2000、B-3000(いずれも日本曹達社製)等が挙げられる。ポリブタジエンおよびスチレンブタジエンゴムの分子量としては重量平均分子量500~10000が好ましく、より好ましくは750~7500、さらに好ましくは1000~5000である。上記範囲の下限以下では揮発量が多く、プリプレグ作成時の固形分調整が困難となり、上記範囲の上限以上では、他の硬化性樹脂との相溶性が悪化する。一般に、ビスマレイミドやポリマレイミドのような酸素や窒素などのヘテロ原子を含む化合物の場合、その極性に起因し、主に炭化水素から構成される化合物もしくは炭化水素のみからなる化合物のような低極性化合物との相溶性の担保が困難である。一方、本実施形態の化合物は、それ自体が酸素や窒素などのヘテロ原子を積極的に導入した骨格設計ではないことに起因し、低極性かつ低誘電特性を有する材料や、炭化水素のみで構成される化合物との相溶性にも優れる。
【0112】
[ポリスチレンおよびこの変性物]
ポリスチレンおよびこの変性物とは、ポリスチレン、もしくはポリスチレンに由来する構造を分子内に有する化合物である。
ポリスチレンおよびこの変性物としては、例えば、ポリスチレン、スチレン・2-イソプロペニル-2-オキサゾリン共重合体(エポクロス RPS-1005、RP-61 いずれも日本触媒社製)、SEP(スチレン-エチレン・プロピレン共重合体:セプトン(登録商標)1020 クラレ社製)、SEPS(スチレン-エチレン・プロピレン-スチレン共重合体:セプトン2002、セプトン2004F、セプトン2005、セプトン2006、セプトン2063、セプトン2104 いずれもクラレ社製)、SEEPS(スチレン-エチレン/エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体:セプトン4003、セプトン4044、セプトン4055、セプトン4077、セプトン4099 いずれもクラレ社製)、SEBS(スチレン-エチレン・ブチレン-スチレン ブロック共重合体:セプトン8004、セプトン8006、セプトン8007L いずれもクラレ社製)、SEEPS-ОH(スチレン-エチレン/エチレン・プロピレン-スチレンブロック共重合体の末端に水酸基を有する化合物:セプトンHG252 クラレ社製)、SIS(スチレン-イソプレン-スチレン ブロック共重合体:セプトン5125、セプトン5127 いずれもクラレ社製)、水添SIS(水添スチレン-イソプレン-スチレン ブロック共重合体:ハイブラー(登録商標)7125F、ハイブラー7311F いずれもクラレ社製)、SIBS(スチレン-イソブチレン-スチレンブロック共重合体:SIBSTAR073T、SIBSTAR102T、SIBSTAR103T いずれもカネカ社製)、セプトンV9827(クラレ社製)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。ポリスチレンおよびこの変性物は、より高い耐熱性を有し、かつ酸化劣化しにくいため、不飽和結合を有さないものが好ましい。また、ポリスチレンおよびこの変性物の重量平均分子量は10000以上であれば特に制限はないが、大きすぎるとポリフェニレンエーテル化合物のほか、重量平均分子量50~1000程度の低分子量成分および、重量平均分子量1000~5000程度のオリゴマー成分との相溶性が悪化し、混合および溶剤安定性の担保が困難になることから、10000~300000程度であることが好ましい。
【0113】
[ポリエチレンおよびこの変性物]
ポリエチレンおよびこの変性物とは、ポリエチレン、もしくはポリエチレンに由来する構造を分子内に有する化合物である。ポリエチレンおよびこの変性物としては、例えば、エチレン-プロピレン共重合体、エチレン-スチレン共重合体、エチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体(三井化学社製EBT:K-8370EM、K-9330M等)、エチレン-プロピレン-ビニルノルボルネン共重合体(三井化学社製VNB-EPT:PX-006M、PX-008M、PX-009M等)、エチレン-ビニルアルコール共重合体、エチレン-酢酸ビニル共重合体等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。耐熱性向上の観点から、架橋可能な構造を含有するエチレン-プロピレン-エチリデンノルボルネン共重合体、エチレン-プロピレン-ビニルノルボルネン共重合体を用いることが好ましい。また、これらは1種類で用いても、複数併用してもよい。ポリエチレンおよびこの変性物の重量平均分子量は10000以上であれば特に制限はないが、大きすぎるとポリフェニレンエーテル化合物のほか、重量平均分子量50~1000程度の低分子量成分および、重量平均分子量1000~5000程度のオリゴマー成分との相溶性が悪化し、混合および溶剤安定性の担保が困難になることから、10000~300000程度であることが好ましい。
【0114】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、上記各成分を所定の割合で調製することにより得られ、130~180℃で30~500秒の範囲で予備硬化し、更に、150~200℃で2~15時間、後硬化することにより充分な硬化反応が進行し、本実施形態の硬化物が得られる。また、硬化性樹脂組成物の成分を溶剤等に均一に分散または溶解させ、溶媒を除去した後硬化させることもできる。
【0115】
本実施形態の硬化性樹脂組成物の調製方法は特に限定されないが、各成分を均一に混合するだけでも、あるいはプレポリマー化してもよい。例えば本実施形態の化合物を配合した混合物に対し硬化促進剤や重合開始剤の存在下または非存在下、溶剤の存在下または非存在下において加熱することによりプレポリマー化する。同様に、アミン化合物、エチレン性不飽和結合を有する化合物、マレイミド化合物、シアネートエステル化合物、ポリブタジエンおよびこの変性物、ポリスチレンおよびこの変性物などの化合物、無機充填材、及びその他添加剤を追加してプレポリマー化してもよい。各成分の混合またはプレポリマー化は溶剤の非存在下では例えば押出機、ニーダ、ロールなどを用い、溶剤の存在下では攪拌装置つきの反応釜などを使用する。
【0116】
均一に混合する手法としては50~100℃の範囲内の温度でニーダ、ロール、プラネタリーミキサー等の装置を用いて練りこむように混合し、均一な樹脂組成物とする。得られた樹脂組成物は粉砕後、タブレットマシーン等の成型機で円柱のタブレット状に成型、もしくは顆粒状の粉体、もしくは粉状の成型体とする、もしくはこれら組成物を表面支持体の上で溶融し0.05mm~10mmの厚みのシート状に成型し、硬化性樹脂組成物成型体とすることもできる。得られた成型体は0~20℃でべたつきのない成型体となり、-25~0℃で1週間以上保管しても流動性、硬化性をほとんど低下させない。
得られた成型体についてトランスファー成型機、コンプレッション成型機にて硬化物に成型することができる。
【0117】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、有機溶剤を添加してワニス状の組成物(以下、単にワニスという。)とすることもできる。本実施形態の硬化性樹脂組成物を必要に応じてトルエン、キシレン、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等の溶剤に溶解させてワニスとし、ガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維、紙などの基材に含浸させて加熱乾燥して得たプリプレグを熱プレス成形することにより、本実施形態の硬化性樹脂組成物の硬化物とすることができる。この際の溶剤は、本実施形態の硬化性樹脂組成物と該溶剤の混合物中で10~70重量%、好ましくは15~70重量%を占める量を用いる。また液状組成物であれば、そのまま例えば、RTM方式でカーボン繊維を含有する硬化物を得ることもできる。
【0118】
また、本実施形態の硬化性樹脂組成物をフィルム型組成物の改質剤としても使用できる。具体的にはB-ステージにおける柔軟性等を向上させる場合に用いることができる。このようなフィルム型の樹脂組成物は、本実施形態の硬化性樹脂組成物をワニスとして剥離フィルム上に塗布し、加熱下で溶剤を除去した後、Bステージ化を行うことによりシート状の接着剤として得られる。このシート状接着剤は多層基板などにおける層間絶縁層として使用することができる。
【0119】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、加熱溶融し、低粘度化してガラス繊維、カーボン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アルミナ繊維などの強化繊維に含浸させることによりプリプレグを得ることもできる。その具体例としては、例えば、Eガラスクロス、Dガラスクロス、Sガラスクロス、Qガラスクロス、球状ガラスクロス、NEガラスクロス、及びTガラスクロス等のガラス繊維、更にガラス以外の無機物の繊維やポリパラフェニレンテレフタラミド(ケブラー(登録商標)、デュポン社製)、全芳香族ポリアミド、ポリエステル、ポリパラフェニレンベンズオキサゾール、ポリイミド及び炭素繊維などの有機繊維が挙げられるが、これらに特に限定されない。基材の形状としては、特に限定されないが、例えば、織布、不織布、ロービング、チョップドストランドマットなどが挙げられる。また、織布の織り方としては、平織り、ななこ織り、綾織り等が知られており、これら公知のものから目的とする用途や性能により適宜選択して使用することができる。また、織布を開繊処理したものやシランカップリング剤などで表面処理したガラス織布が好適に使用される。基材の厚さは、特に限定されないが、好ましくは0.01~0.4mm程度である。また、上記ワニスを、強化繊維に含浸させて加熱乾燥させることによりプリプレグを得ることもできる。
【0120】
また、上記プリプレグを用いて積層板を製造することもできる。積層板はプリプレグを1枚以上備えるものであれば特に限定されず、他のいかなる層を有していてもよい。積層板の製造方法としては、一般に公知の方法を適宜適用でき、特に限定されない。例えば、金属箔張積層板の成形時には多段プレス機、多段真空プレス機、連続成形機、オートクレーブ成形機などを用いることができ、上記プリプレグ同士を積層し、加熱加圧成形することで積層板を得ることができる。このとき、加熱する温度は、特に限定されないが、65~300℃が好ましく、120~270℃がより好ましい。また、加圧する圧力は、特に限定されないが、加圧が大きすぎると積層板の樹脂の固形分調整が難しく品質が安定せず、また、圧力が小さすぎると、気泡や積層間の密着性が悪くなってしまうため2.0~5.0MPaが好ましく、2.5~4.0MPaがより好ましい。本実施形態の積層板は、金属箔からなる層を備えることにより、後述する金属箔張積層板として好適に用いることができる。
上記プリプレグを所望の形に裁断、必要により銅箔などと積層後、積層物にプレス成形法やオートクレーブ成形法、シートワインディング成形法などで圧力をかけながら硬化性樹脂組成物を加熱硬化させることにより電気電子用積層板(プリント配線板)や、炭素繊維強化材を得ることができる。
【0121】
本実施形態の硬化性樹脂組成物は、樹脂シートにすることもできる。本実施形態の硬化性樹脂組成物から樹脂シートを得る方法としては、例えば、支持フィルム(支持体)上に硬化性樹脂組成物を塗布したのち、乾燥させて、支持フィルムの上に樹脂組成物層を形成する方法が挙げられる。本実施形態の硬化性樹脂組成物を樹脂シートに用いる場合、該フィルムは、真空ラミネート法におけるラミネートの温度条件(70℃~140℃)で軟化し、回路基板のラミネートと同時に、回路基板に存在するビアホール或いはスルーホール内の樹脂充填が可能な流動性(樹脂流れ)を示すことが肝要であり、このような特性を発現するよう上記各成分を配合することが好ましい。なお、得られる樹脂シートや回路基板(銅張積層板等)においては、相分離などに起因する、局所的に異なる特性値を示すといった現象を生じさせず、任意の部位において、一定の性能を発現させるため、外観均一性が要求される。
【0122】
ここで、回路基板のスルーホールの直径は0.1~0.5mm、深さは0.1~1.2mmであり、この範囲で樹脂充填を可能とするのが好ましい。なお回路基板の両面をラミネートする場合はスルーホールの1/2程度充填されることが望ましい。
【0123】
上記樹脂シートを製造する具体的な方法としては、有機溶剤を配合してワニス化した樹脂組成物を調製した後、支持フィルム(Y)の表面に、上記ワニス化した樹脂組成物を塗布し、更に加熱、あるいは熱風吹きつけ等により有機溶剤を乾燥して、樹脂組成物層(X)を形成する方法が挙げられる。
【0124】
ここで用いる有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン等を用いることが好ましく、また、不揮発分が全体の30~60質量%となる割合で有機溶剤を使用することが好ましい。
【0125】
なお、形成される上記樹脂組成物層(X)の厚さは、上記樹脂組成物層(X)をラミネートする回路基板が有する導体層の厚さ以上とする必要がある。回路基板が有する導体層の厚さは5~70μmの範囲であるので、上記樹脂組成物層(X)の厚さは10~100μmの厚みを有するのが好ましい。なお、本実施形態における上記樹脂組成物層(X)は、後述する保護フィルムで保護されていてもよい。保護フィルムで保護することにより、樹脂組成物層(X)の表面へのゴミ等の付着やキズを防止することができる。
【0126】
上記支持フィルム及び保護フィルムは、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル、ポリカーボネート、ポリイミド、更には離型紙や銅箔、アルミニウム箔等の金属箔などを挙げることができる。なお、支持フィルム及び保護フィルムはマッド処理、コロナ処理の他、離型処理を施してあってもよい。支持フィルムの厚さは特に限定されないが、10~150μmであり、好ましくは25~50μmの範囲で用いられる。また保護フィルムの厚さは1~40μmとするのが好ましい。
【0127】
上記支持フィルム(Y)は、回路基板に上記樹脂組成物層(X)をラミネートした後に、あるいは、上記樹脂組成物層(X)を加熱硬化することにより、絶縁層を形成した後に、剥離される。樹脂シートを構成する樹脂組成物層(X)が加熱硬化した後に支持フィルム(Y)を剥離すれば、硬化工程でのゴミ等の付着を防ぐことができる。上記樹脂組成物層(X)の硬化後に剥離する場合、支持フィルム(Y)には予め離型処理が施される。
【0128】
なお、上記のようにして得られた樹脂シートから多層プリント回路基板を製造することができる。例えば、上記樹脂組成物層(X)が保護フィルムで保護されている場合は保護フィルムを剥離した後、上記樹脂組成物の層(X)を回路基板に直接接するように回路基板の片面又は両面に、例えば真空ラミネート法によりラミネートする。ラミネートの方法はバッチ式であってもロールでの連続式であってもよい。また必要により、ラミネートを行う前に樹脂シート及び回路基板を必要により加熱(プレヒート)しておいてもよい。ラミネートの条件は、圧着温度(ラミネート温度)を70~140℃とすることが好ましく、圧着圧力を1~11kgf/cm(9.8×10~107.9×10N/m)とすることが好ましく、空気圧を20mmHg(26.7hPa)以下の減圧下でラミネートすることが好ましい。
【0129】
また、本実施形態の硬化性樹脂組成物を用いて半導体装置を製造することができる。半導体装置としては、例えばDIP(デュアルインラインパッケージ)、QFP(クワッドフラットパッケージ)、BGA(ボールグリッドアレイ)、CSP(チップサイズパッケージ)、SOP(スモールアウトラインパッケージ)、TSOP(シンスモールアウトラインパッケージ)、TQFP(シンクワッドフラットパッケージ)等が挙げられる。
【0130】
本実施形態の硬化性樹脂組成物およびその硬化物は、広範な分野で用いることができる。具体的には、成型材料、接着剤、複合材料、塗料など各種用途に使用できる。本実施形態記載の硬化性樹脂組成物の硬化物は優れた耐熱性と誘電特性を示すため、半導体素子用封止材、液晶表示素子用封止材、有機EL素子用封止材、積層板(プリント配線板、BGA用基板、ビルドアップ基板など)等の電気・電子部品や炭素繊維強化プラスチック、ガラス繊維強化プラスチック等の軽量高強度構造材用複合材料、3Dプリンティング等に好適に使用される。
【実施例
【0131】
次に本発明を実施例により更に具体的に説明する。以下、特に断わりのない限り、部は質量部である。尚、本実施形態はこれら実施例に限定されるものではない。
【0132】
以下に実施例で用いた各種分析方法について記載する。
<高速液体クロマトグラフィー(HP-LC)>
HP-LC:送液ユニット(LC-20AB)、オンラインデガッサ(DGU-20A3)、オートサンプラ(SIL-20A)、カラムオーブン(CTO-20A)、システムコントローラ(CBM-20A)(いずれも島津製作所製)
カラム:ОDS-2(ジーエルサイエンス社製)
連結溶離液:テトラヒドロフラン:水=3:1(グラジエントなし)
流速:0.5ml/min.
カラム温度:40℃
検出:フォトダイオードアレイ検出器(SPD-M20A)(島津製作所製)
【0133】
[実施例1]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、ベンジルアルコール32.4部、メタンスルホン酸2.45部を加え、130℃まで昇温し、生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら6時間反応させた。80℃まで冷却後、水酸化ナトリウム1.1部を加え、30分攪拌した。内温を60℃まで冷却後、ジメチルスルホキシド(以下、DMSОとも記載する。)100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を2時間かけて滴下し、65℃で4時間反応させた。トルエン200部を加え、水100部で有機層を4回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、下記式(f-1)で表される化合物(F1)を59.1部得た。得られた化合物(F1)のHP-LCチャートを図1に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図2に示す。H-NMRチャートの5.05-5.65ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、2.36ppmにベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するピークの積分値は6.04であった。ここから計算される下記式(f-1)中のmの値の平均値maveは1.51であった。
【0134】
【化18】
【0135】
(上記式(f-1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(f-a-1)で表される炭化水素基を表す。
【0136】
【化19】
【0137】
(上記式(f-a-1)中、*は式(f-1)のフルオレン構造への結合位置を表す。)
【0138】
[実施例2]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、メチルシクロヘキサン50部、フルオレン33.3部、ベンジルアルコール10.8部、メタンスルホン酸2.2部を加え、107℃まで昇温し、生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら3時間反応させた。80℃まで冷却後、水酸化ナトリウム1.0部を加え、30分攪拌した。内温を60℃まで冷却後、ジメチルスルホキシド200部、水酸化ナトリウム24部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)58.0部を0.5時間かけて滴下し、65℃で4時間反応させた。トルエン200部を加え、水100部で有機層を4回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、前記式(f-1)で表される化合物(F2)を90.5部得た。得られた化合物(F2)のHP-LCチャートを図3に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図4に示す。H-NMRチャートの5.05-5.65ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、2.36ppmにベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するピークの積分値は2.22であった。ここから計算される前記式(f-1)中のmの値の平均値maveは0.56であった。
【0139】
[実施例3]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、メチルシクロヘキサン9.1部、メタンスルホン酸2.8部を加え、内温を95℃まで昇温した。内温を95-100℃に保ちながら、ベンジルアルコール10.8部を1時間かけて滴下し、生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら98℃で3時間反応させた。続いて内温を95-100℃に保ちながら、ベンジルアルコール10.8部を1時間かけて滴下し、生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら98℃で6時間反応させた。内温を80℃まで冷却後、水酸化ナトリウム1.3部を加え、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を30分かけて滴下し、65℃で2時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、前記式(f-1)で表される化合物(F3)を51.4部得た。得られた化合物(F3)のHP-LCチャートを図5に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図6に示す。H-NMRチャートの4.92-5.53ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、3.60-4.20ppmにベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.08、ベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するピークの積分値は3.80であった。ここから計算される前記式(f-1)中のmの値の平均値は1.02であった。
【0140】
[実施例4]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、メチルシクロヘキサン9.1部、メタンスルホン酸2.8部を加え、内温を95℃まで昇温した。内温を95-100℃に保ちながら、ベンジルアルコール10.8部を1時間かけて滴下し、生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら98℃で3時間反応させた。続いて内温を95-100℃に保ちながら、ベンジルアルコール5.4部を30分かけて滴下し、生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら98℃で3時間反応させた。さらに、内温を95-100℃に保ちながら、ベンジルアルコール2.7部を15分かけて滴下し、生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら98℃で2時間反応させた。内温を80℃まで冷却後、水酸化ナトリウム1.3部を加え、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を1時間かけて滴下し、65℃で2時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、前記式(f-1)で表される化合物(F4)を29.4部得た。得られた化合物(F4)のHP-LCチャートを図7に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図8に示す。H-NMRチャートの5.03-5.62ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、3.60-4.20ppmにベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するピークの積分値は3.34であった。ここから計算される前記式(f-1)中のmの値の平均値は0.84であった。
【0141】
[実施例5]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンシュターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、メチルシクロヘキサン54.8部、メタンスルホン酸2.8部を加え、内温を95℃まで昇温した。内温を95-100℃に保ちながら、ベンジルアルコール10.8部を1時間かけて滴下し、生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら98℃で6時間反応させた。続いて、内温を95-100℃に保ちながら、ベンジルアルコール10.8部を1時間かけて滴下し、生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら98℃で5時間反応させた。内温を80℃まで冷却後、水酸化ナトリウム2.0部を加え、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を2時間かけて滴下し、65℃で3時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、前記式(f-1)で表される化合物(F5)を43.8部得た。得られた化合物(F5)のHP-LCチャートを図9に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図10に示す。H-NMRチャートの5.03-5.62ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、3.60-4.20ppmにベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するピークの積分値は3.98であった。ここから計算される前記式(f-1)中のmの値の平均値は0.99であった。
【0142】
[実施例6]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、ベンジルアルコール43.3部、メタンスルホン酸3.0部を加え、内温を130℃まで昇温した。生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら130℃で4時間反応させた。内温を80℃まで冷却後、水酸化ナトリウム1.4部を加え、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を1時間かけて滴下し、65℃で3時間反応させた。トルエン200部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、前記式(f-1)で表される化合物(F6)を71.3部得た。得られた化合物(F6)のHP-LCチャートを図11に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図12に示す。H-NMRチャートの5.03-5.62ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、3.60-4.20ppmにベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンジルアルコールにより変性したベンジル基のメチレン結合に由来するピークの積分値は8.02であった。ここから計算される前記式(f-1)中のmの値の平均値は2.01であった。
【0143】
[実施例7]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、ベンズヒドロール18.4部、メチルシクロヘキサン70部、メタンスルホン酸1.8部を加え、100℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら6時間反応させた。30%水酸化ナトリウム水溶液2.6gを加え、内温が140℃に到達するまでメチルシクロヘキサンを回収した。内温80℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を2時間かけて滴下し、65℃で3時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、下記式(f-2)で表される化合物(F7)を50部得た。得られた化合物(F7)のHP-LCチャートを図13に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図14に示す。H-NMRチャートの4.80-5.80ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、2.80-3.30ppmにベンズヒドロールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンズヒドロールにより変性したメチン基の各水素に由来するピークの積分値は1.04であった。ここから計算される下記式(f-2)中のmaveは0.52であった。
【0144】
【化20】
【0145】
上記式(f-2)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(f-a-2)で表される炭化水素基を表す。
【0146】
【化21】
【0147】
上記式(f-a-2)中、*は式(f-2)のフルオレン構造への結合位置を表す。
【0148】
[実施例8]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、ベンズヒドロール18.4部、メチルシクロヘキサン70部、メタンスルホン酸1.8部を加え、100℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら4時間反応させた。内温を60まで冷却後、ベンズヒドロール9.2部を加え、100℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンシュタークを用いて系外へ除きながら3時間反応させた。内温を60まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液2.8部を加え、内温が140℃に到達するまでメチルシクロヘキサンを回収した。内温を80℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を30分かけて滴下し、65℃で4時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、上記式(f-2)で表される化合物(F8)を62.3部得た。得られた化合物(F8)のHP-LCチャートを図15に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図16に示す。H-NMRチャートの4.80-5.80ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、2.80-3.30ppmにベンズヒドロールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンズヒドロールにより変性したメチン基の各水素に由来するピークの積分値は2.75であった。ここから計算される上記式(f-2)中のmaveは1.38であった。
【0149】
[実施例9]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、ベンズヒドロール18.4部、メチルシクロヘキサン70部、メタンスルホン酸2.2部を加え、98℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら4時間反応させた。内温を60まで冷却後、ベンズヒドロール9.2部を加え、98℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら3時間反応させた。内温を60まで冷却後、30%水酸化ナトリウム水溶液3.4部を加え、内温が140℃に到達するまでメチルシクロヘキサンを回収した。内温を80℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)30.0部を1.5時間かけて滴下し、65℃で4時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、上記式(f-2)で表される化合物(F9)を60.3部得た。得られた化合物(F9)のHP-LCチャートを図17に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図18に示す。H-NMRチャートの4.80-5.80ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、2.80-3.30ppmにベンズヒドロールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンズヒドロールにより変性したメチン基の各水素に由来するピークの積分値は2.78であった。ここから計算される上記式(f-2)中のmaveは1.39であった。
【0150】
[実施例10]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、メチルシクロヘキサン82部、メタンスルホン酸2.1部を加え、95℃まで昇温し、内温が100℃を越えないようにしながら1.5時間かけて1-フェニルエチルアルコール12.2部を滴下し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら4時間反応させた。続いて内温を95℃まで冷却し、内温が100℃を越えないようにしながら0.5時間かけて1-フェニルエチルアルコール6.1部を滴下し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら3時間反応させた。その後、内温を95℃まで冷却し、内温が100℃を越えないようにしながら0.5時間かけて1-フェニルエチルアルコール6.1部を滴下し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら7時間反応させ、内温を60℃まで冷却した。30%水酸化ナトリウム水溶液3.2部を加え、内温が140℃に到達するまでメチルシクロヘキサンを回収した。内温を80℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を2時間かけて滴下し、65℃で3時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、下記式(f-3)で表される化合物(F10)を53部得た。得られた化合物(F10)のHP-LCチャートを図19に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図20に示す。H-NMRチャートの5.30-6.00ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、1.20-2.30ppmに1-フェニルエチルアルコールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、1-フェニルエチルアルコールにより変性したメチル基の各水素に由来するピークの積分値は5.60であった。ここから計算される下記式(f-3)中のmaveは0.93であった。
【0151】
【化22】
【0152】
上記式(f-3)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(f-a-3)で表される炭化水素基を表す。
【0153】
【化23】
【0154】
上記式(f-a-3)中、*は式(f-3)のフルオレン構造への結合位置を表す。
【0155】
[実施例11]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、メチルシクロヘキサン9.6部、メタンスルホン酸2.9部を加え、125℃まで昇温し、内温が130℃を越えないようにしながら1時間かけて1-フェニルエチルアルコール12.2部を滴下し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら130℃で3時間反応させた。内温を125℃まで冷却し、内温が130℃を越えないようにしながら30分かけて1-フェニルエチルアルコール6.1部を滴下し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら130℃で1時間反応させた。続いて、内温を125℃まで冷却し、内温が130℃を越えないようにしながら15分かけて1-フェニルエチルアルコール3.1部を滴下し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら130℃で3時間反応させた。内温を80℃まで冷却し、水酸化ナトリウム1.3部を加え、内温が140℃に到達するまでメチルシクロヘキサンを回収した。内温を80℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を1時間かけて滴下し、65℃で3時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、上記式(f-3)で表される化合物(F11)を51.1部得た。得られた化合物(F11)のHP-LCチャートを図21に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図22に示す。H-NMRチャートの5.00-5.60ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、1.00-1.90ppmに1-フェニルエチルアルコールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は5.00、1-フェニルエチルアルコールにより変性したメチル基の各水素に由来するピークの積分値は5.44であった。ここから計算される上記式(f-3)中のmaveは0.68であった。
【0156】
[実施例12]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、メチルシクロヘキサン57.4部、2-フェニルエチルアルコール24.4部、メタンスルホン酸4.1部を加え、180℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら28時間反応させた。続いて内温を80℃まで冷却し、水酸化ナトリウム2.0部を加えた。その後、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を1.5時間かけて滴下し、65℃で2時間反応させた。トルエン300部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、下記式(f-4)で表される化合物(F12)を22.8部得た。得られた化合物(F12)のHP-LCチャートを図23に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図24に示す。H-NMRチャートの5.15-5.97ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、2.68-4.06ppmに2-フェニルエチルアルコールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、2-フェニルエチルアルコールにより変性したメチレン部位の各水素に由来するピークの積分値は8.50であった。ここから計算される下記式(f-4)中のmaveは1.06であった。
【0157】
【化24】
【0158】
上記式(f-4)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(f-a-4)で表される炭化水素基を表す。
【0159】
【化25】
【0160】
上記式(f-a-4)中、*は式(f-4)のフルオレン構造への結合位置を表す。
【0161】
[実施例13]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、ベンズヒドロール18.4部、メチルシクロヘキサン70部、メタンスルホン酸1.8部を加え、100℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら6時間反応させた。70℃まで冷却後、ベンジルアルコール10.8部を加え、100℃まで再度昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら4時間反応させた。30%水酸化ナトリウム水溶液2.6gを加え、内温が140℃に到達するまでメチルシクロヘキサンを回収した。内温80℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を2時間かけて滴下し、65℃で4時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、下記式(f-5)で表される化合物(F13)を60部得た。得られた化合物(F13)のHP-LCチャートを図25に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図26に示す。H-NMRチャートの5.40-6.10ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、3.50-4.60ppmにベンジルアルコールおよびベンズヒドロールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンジルアルコールおよびベンズヒドロールにより変性したベンジル基およびメチン基の各水素に由来するピークの積分値は3.20であった。ここから計算される下記式(f-5)中のmaveは1.07であった。また、ベンズヒドロールおよびベンジルアルコールの仕込み量から計算される下記式(f-a-5)で表される置換基の導入数を、下記式(f-b-5)で表される置換基の導入数で除した値は1.0であった。
【0162】
【化26】
【0163】
上記式(f-5)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(f-a-5)または(f-b-5)で表される炭化水素基を表す。
【0164】
【化27】
【0165】
上記式(f-a-4)および(f-b-5)中、*は式(f-4)のフルオレン構造への結合位置を表す。
[実施例14]
温度計、冷却管、撹拌機、ディーンスターク管を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、フルオレン16.6部、ベンズヒドロール18.4部、メチルシクロヘキサン70部、メタンスルホン2.2部を加え、98℃まで昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら4時間反応させた。内温を70℃まで冷却後、ベンズヒドロール9.2部を加え、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら98℃で3時間反応させた。内温を70℃まで冷却後、ベンジルアルコール5.4部を加え98℃まで再度昇温し、共沸脱水により生成水をディーンスターク管を用いて系外へ除きながら3時間反応させた。30%水酸化ナトリウム水溶液3.4部を加え、内温が140℃に到達するまでメチルシクロヘキサンを回収した。内温80℃まで冷却し、ジメチルスルホキシド100部、水酸化ナトリウム12部を加え、60℃で30分攪拌した。その後、内温を65℃以下に保ったままCMS-14(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=95:5(mol比)、純度96.87重量%)29.0部を2時間かけて滴下し、65℃で2時間反応させた。トルエン150部を加え、水100部で有機層を5回洗浄した。得られた有機層を濃縮し、上記式(f-5)で表される化合物(F14)を63.4部得た。得られた化合物(F14)のHP-LCチャートを図27に示す。また、得られた化合物のH-NMRデータ(重クロロホルム)を図28に示す。H-NMRチャートの5.00-5.80ppmにビニル基の末端水素(ビニル基1つに対し水素2つ分)由来のシグナルが観測され、3.10-4.30ppmにベンジルアルコールおよびベンズヒドロールにより変性した構造に由来するシグナルが観測された。ビニル基の末端水素に由来するピークの積分値は4.00、ベンジルアルコールおよびベンズヒドロールにより変性したベンジル基およびメチン基の各水素に由来するピークの積分値は4.21であった。ここから計算される上記式(f-5)中のmaveは0.84であった。また、ベンズヒドロールおよびベンジルアルコールの仕込み量から計算される上記式(f-a-5)で表される置換基の導入数を、上記式(f-b-5)で表される置換基の導入数で除した値は3.0であった。
【0166】
[比較合成例1]
温度計、冷却管、撹拌機を取り付けたフラスコに窒素パージを施しながら、メチルイソブチルケトン133部、フルオレン33.3部、テトラブチルアンモニウムブロミド1.9部、ハイドロキノン0.49部、50wt%水酸化ナトリウム水溶液64部を加え、内温を60℃に昇温した。その後、CMS-P(AGCセイミケミカル社製、4-クロロメチルスチレンおよび3-クロロメチルスチレンの混合物、4-クロロメチルスチレン:3-クロロメチルスチレン=1:1(mol比)、純度95.59重量%)71.2部を1時間かけて滴下し、60℃で9時間反応させた。35wt%塩酸水溶液41.6部で中和し、水100部で有機層を3回洗浄した。トルエンおよびメタノールで再結晶し、下記式(f-6)で表される化合物(F15)を35.6部得た。得られた化合物(F15)のHP-LCチャートを図29に示し、H-NMRデータ(重クロロホルム)を図30に示す。
【0167】
【化28】
【0168】
[実施例15~27、比較例1、2]
実施例1、3~14、及び比較合成例1で得られた各化合物(F1、F3~F15)、およびОPE-2St(三菱瓦斯化学社製、ポリフェニレンエーテル化合物)を表1に示す量用いて、鏡面銅箔(T4X:福田金属銅箔社製)で挟み込みながら真空プレス成型し、220℃で2時間硬化させた。この際、スペーサとして厚さ250μmのクッション紙の中央を縦横150mmにくり抜いたものを用いた。評価にあたっては、必要に応じてレーザーカッターを用いて所望のサイズに試験片を切り出し、評価を実施した。
【0169】
<誘電率試験・誘電正接試験>
(株)AET社製の10GHz空洞共振器を用いて、25℃において空洞共振器摂動法にてテストを行った。サンプルサイズは幅1.7mm×長さ100mmとし、厚さは0.1mmで試験を行った。評価結果は表1に示す。
【0170】
【表1】
【0171】
表1の結果より、本発明の化合物は低誘電正接であり、誘電特性に優れることが確認された。
【0172】
[実施例28~35]
実施例1、3~5、7、10、12、13で得られた各化合物(F1、F3~F5、F7、F10、F12、F13)を表2に示す量用いて、鏡面銅箔(T4X:福田金属銅箔社製)で挟み込みながら真空プレス成型し、220℃で2時間硬化させた。この際、スペーサとしてクッション紙の中央を縦横150mmにくり抜いたものを用いた。評価にあたっては、必要に応じてレーザーカッターを用いて所望のサイズに試験片を切り出し、評価を実施した。試験片の厚さはクッション紙の厚さにより調節した。
<ガラス転移温度(Tg)>
動的粘弾性測定器:TA-instruments、DMA-2980
測定温度範囲:-30~280℃
昇温速度:2℃/分
周波数:10Hz
試験片サイズ:5mm×50mmに切り出した物を使用した(厚さは0.1mm)。
Tg:tanδ(=損失弾性率/貯蔵弾性率)のピーク点をガラス転移温度(Tg)とした。
【0173】
【表2】
【0174】
本願は、2023年3月23日付出願の日本国特願2023-046177号、2023年8月28日付出願の日本国特願2023-137647号、2023年8月28日付出願の日本国特願2023-137648号、2023年12月5日付出願の日本国特願2023-204993号、および2023年12月20日付出願の日本国特願2023-214747号に基づく優先権を主張する。
【産業上の利用可能性】
【0175】
本発明の化合物は、半導体封止材、プリント配線基板、ビルドアップ積層板などの電気・電子部品に好適に使用される。
【要約】
本発明は、優れた低誘電特性を有する下記式(1)で表される化合物、この化合物を含有する硬化性樹脂組成物及びその硬化物を提供する。
【化1】
上記式(1)中、複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、下記式(a)で表される炭化水素基を表す。複数存在するlはそれぞれ独立して1~4の整数を表す。複数存在するmはそれぞれ独立して0~4の整数を表し、mの平均値maveは0<mave≦4である。
【化2】
上記式(a)中、*は式(1)のフルオレン構造への結合位置を表す。複数存在するRはそれぞれ独立して、水素原子又は炭素数1~5の炭化水素基を表す。Eは直接結合又はメチレン基を表す。EおよびEは水素原子、炭素数1~5の炭化水素基、又は置換もしくは無置換のフェニル基を表す。nは1~5の整数を表す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
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図28
図29
図30