(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】部分機能性フィルム
(51)【国際特許分類】
B32B 3/02 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
B32B3/02
(21)【出願番号】P 2020049196
(22)【出願日】2020-03-19
【審査請求日】2023-03-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000001339
【氏名又は名称】グンゼ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100143085
【氏名又は名称】藤飯 章弘
(72)【発明者】
【氏名】石田 篤志
(72)【発明者】
【氏名】原田 裕也
【審査官】松岡 美和
(56)【参考文献】
【文献】特表2009-522132(JP,A)
【文献】特表2013-523484(JP,A)
【文献】国際公開第2010/032801(WO,A1)
【文献】特開2010-058314(JP,A)
【文献】独国特許出願公開第102008041701(DE,A1)
【文献】特開2015-193192(JP,A)
【文献】特開2016-141210(JP,A)
【文献】特開2018-013693(JP,A)
【文献】特開2015-015322(JP,A)
【文献】特開2014-120461(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1樹脂層と、前記第1樹脂層とは異なる特性を有する第2樹脂層とを幅方向に積層した構造を有するフィルム本体を備える部分機能性フィルムであって、
前記フィルム本体の一方面側における前記第2樹脂層の面積は、前記フィルム本体の他方面側における前記第2樹脂層の面積と異なっており、
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の積層方向に沿った前記フィルム本体の断面視において、前記第2樹脂層は、前記フィルム本体の厚み方向中央部近傍においてクビレ部を備えており、
前記クビレ部は、前記フィルム本体の一方面側及び他方面側に存在する前記第2樹脂層の一部分が、前記第1樹脂層の一部分を、前記第2樹脂層の前記各一部分で前記フィルム本体の厚み方向に挟み込むように形成されることを特徴とする部分機能性フィルム。
【請求項2】
前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の積層方向に沿った前記フィルム本体の断面視において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との境界ラインは連続的な形態を有するように形成されていることを特徴とする請求項1に記載の部分機能性フィルム。
【請求項3】
前記境界ラインは、湾曲状に形成されていることを特徴とする請求項2に記載の部分機能性フィルム。
【請求項4】
前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の積層方向に対して略垂直な方向に沿って延びる帯状に形成されていることを特徴とする請求項1から
3のいずれかに記載の部分機能性フィルム。
【請求項5】
前記特性は、機械的特性、電気的特性、化学的特性、光学的特性、及び、磁気的特性の中の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1から
4のいずれかに記載の部分機能性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、部分機能性フィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、医療用途、包装用途、建材用途、光学用途、電気製品用途、インテリア用途、遮光用途等、種々の分野にて多種多様なフィルムが使用されている。このようなフィルムの一例として、特許文献1に開示されているようなフィルム(部分機能性フィルム)が知られている。このフィルムは、
図10の断面図に示すように、種類の異なる樹脂材料からなる第1樹脂層101及び第2樹脂層102をフィルムの幅方向に交互の積層した構造を有している。なお、第1樹脂層101と第2樹脂層102との各境界は、フィルム100の幅方向に対して垂直な方向に延びるように構成されており、各第1樹脂層101及び各第2樹脂層102は、フィルム100の厚み方向に沿って、同じ幅を有して構成されている。このようなフィルムは、例えば、第2樹脂層に所定の充填剤を加えることにより、特定の機能(電気特性、光透過性、ガス透過性、熱特性、難燃性等の機能)が第2樹脂層において発現するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の従来フィルムは、フィルム幅方向に沿って異なる機能を発揮する部分を備えるものであり、医療、包装、建材等の多様な分野で利用されているが、より有用性が高い部分機能性フィルムの開発が期待されている。
【0005】
そこで、本発明は、より有用性が高い部分機能性フィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、第1樹脂層と、前記第1樹脂層とは異なる特性を有する第2樹脂層とを幅方向に積層した構造を有するフィルム本体を備える部分機能性フィルムであって、前記フィルム本体の一方面側における前記第2樹脂層の面積は、前記フィルム本体の他方面側における前記第2樹脂層の面積と異なっており、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の積層方向に沿った前記フィルム本体の断面視において、前記第2樹脂層は、前記フィルム本体の厚み方向中央部近傍においてクビレ部を備えており、前記クビレ部は、前記フィルム本体の一方面側及び他方面側に存在する前記第2樹脂層の一部分が、前記第1樹脂層の一部分を、前記第2樹脂層の前記各一部分で前記フィルム本体の厚み方向に挟み込むように形成されることを特徴とする部分機能性フィルム。
【0007】
また、この部分機能性フィルムにおいて、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の積層方向に沿った前記フィルム本体の断面視において、前記第1樹脂層と前記第2樹脂層との境界ラインは連続的な形態を有するように形成されていることが好ましい。
【0008】
また、前記境界ラインは、湾曲状に形成されていることが好ましい。
【0010】
また、前記第2樹脂層は、前記第1樹脂層及び前記第2樹脂層の積層方向に対して略垂直な方向に沿って延びる帯状に形成することができる。
【0011】
また、前記特性は、機械的特性、電気的特性、化学的特性、光学的特性、及び、磁気的特性の中の少なくとも1つを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、より有用性が高い部分機能性フィルムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】(a)は、本発明に係る部分機能性フィルムを示す平面図であり、(b)は、その裏面図である。
【
図2】
図1(a)のA-A断面における断面図である
【
図4】(a)(b)共に、
図1に示す部分機能性フィルムの変形例を説明するための断面図である。
【
図5】(a)(b)共に、本発明に係る部分機能性フィルムの効果を説明するための説明図である。
【
図6】(a)は、本発明に係る部分機能性フィルムの変形例を示す平面図であり、(b)は、(a)のB-B断面を示す断面図である。
【
図7】(a)(b)共に、
図1に示す部分機能性フィルムの変形例を説明するための平面図である。
【
図8】(a)(b)(c)共に、
図1に示す部分機能性フィルムの変形例を説明するための断面図である。
【
図9】
図1に示す部分機能性フィルムの変形例を説明するための断面図である。
【
図10】従来の部分機能性フィルムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る部分機能性フィルムについて説明する。なお、各図は、構成の理解を容易ならしめるために部分的に拡大・縮小している。
図1(a)は、本発明に係る部分機能性フィルム1を示す平面図であり、
図1(b)は、その裏面図である。また、
図2は、
図1(a)のA-A断面における断面図であり、
図3は、その要部拡大図である。本発明に係る部分機能性フィルム1は、医療用途、包装用途、建材用途、光学用途、電気製品用途、インテリア用途、遮光用途等、種々の用途・分野で使用することができるフィルムである、この部分機能性フィルム1は、
図1及び
図2に示すようにフィルム本体2を備えている。このフィルム本体2は、第1樹脂層3と第2樹脂層4とをフィルム本体2の幅方向に積層した構造を備えている。第1樹脂層3及び第2樹脂層4は、平面視において帯状(ストライプパターン状)に形成されている。換言すると、第1樹脂層3及び第2樹脂層4のそれぞれは、第1樹脂層3及び第2樹脂層4の積層方向に対して略垂直な方向に沿って延びる帯状に形成されている。
【0015】
また、第1樹脂層3及び第2樹脂層4のそれぞれの層の厚みは、部分機能性フィルム1の用途等に応じて適宜設定されるが、例えば、1~1000μmが好ましく、好ましくは2~500μm、さらに好ましくは3~250μmである。また、第1樹脂層3及び第2樹脂層4のそれぞれの層の厚みは、異なるように構成することもできるが、同じ厚みとして構成することが好ましい。また、第1樹脂層3及び第2樹脂層4のそれぞれの幅も、部分機能性フィルム1の用途等に応じて適宜調整して設定することができ第1樹脂層3及び第2樹脂層4のそれぞれの層の幅は、同じであっても異なっていてもよい。
【0016】
第2樹脂層4は、第1樹脂層3と異なる特性を有するように形成されている。ここで、上記の“特性”とは、例えば、機械的特性、電気的特性、化学的特性、光学的特性、及び、磁気的特性の中の少なくとも1つを含む概念である。機械的特性とは、粘着特性やガス透過特性、伝熱特性、フィルム平面特性、耐熱特性、弾性特性等を意味する。また、電気的特性とは、導電特性、絶縁特性、帯電特性等を意味し、化学的特性とは、特定物質の吸着性、特定物質に対する不活性さ、染色特性等を意味する。光学的特性とは、光透過特性や光反射特性、光吸収特性、光散乱特性等を意味し、磁気的特性とは、透磁特性、磁束密度特性、保磁力特性等を意味する。また、“異なる特性”とは、例えば、第1樹脂層3が粘着性を有さず、第2樹脂層4が粘着性を有する場合や、第1樹脂層3が導電性を有さず、第2樹脂層4が導電性を有する場合のように、第1樹脂層3と第2樹脂層4が有する特性自体が全く異なる場合の他、例えば、第1樹脂層3が低い粘着性を有し、第2樹脂層4が高い粘着性を有する場合や、第1樹脂層3が低い導電性を有し、第2樹脂層4が導電性を有する場合のように、第1樹脂層3と第2樹脂層4とが同一の機能的な特性を有しつつも、その程度(機能の大きさ)に差があるような場合をも含む概念である。
【0017】
本実施形態においては、第2樹脂層4は、第1樹脂層3よりも上記特性が高くなるように構成されている。つまり、第2樹脂層4が、高機能部を構成し、第1樹脂層3が低機能部を構成するように、部分機能性フィルム1は形成されている(なお、第1樹脂層3が、高機能部を構成し、第2樹脂層4が低機能部を構成するようにしてもよいことはいうまでもない)。また、
図2の断面図及び
図3の要部拡大断面図に示すように、任意の第2樹脂層4に着目して、フィルム本体2の一方面側2aにおける第2樹脂層4の面積(露出面積)は、フィルム本体2の他方面側2bにおける第2樹脂層4の面積(露出面積)と異なるように構成されている。本発明の実施形態においては、フィルム本体2の一方面側2aにおける各第2樹脂層4の面積は、フィルム本体2の他方面側2bにおける各第2樹脂層4の面積よりも小さくなるように構成されている。また、フィルム本体2の一方面側2aにおける第2樹脂層4の面積とフィルム本体2の他方面側2bにおける第2樹脂層4の面積の関係(他方面側2bにおける第2樹脂層4の面積/一方面側2aにおける第2樹脂層4の面積)は、部分的機能性フィルム1の用途等に応じて適宜設定されるが、例えば、1.1~20倍が好ましく、好ましくは1.5~10倍、さらに好ましくは2~5倍である。
【0018】
また、第1樹脂層3及び第2樹脂層4の積層方向に沿ったフィルム本体2の断面視において(
図2、及び
図3において)、第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界ライン5は連続的な形態を有するように形成されている。この第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界ライン5は、湾曲状に形成されていることが好ましい。
【0019】
本実施形態においては、第1樹脂層3及び第2樹脂層4の積層方向に沿ったフィルム本体2の断面視において(
図2、及び
図3において)、各第2樹脂層4は、フィルム本体2の厚み方向中央部近傍においてクビレ部を備えるように構成されている。つまり、フィルム本体2の一方面側2a及び他方面側2bに存在する第2樹脂層4の一部分が、第1樹脂層3の一部分の上方及び下方に位置するように配置され、第1樹脂層3の一部分を、第2樹脂層4の各一部分でフィルムの厚み方向(第1樹脂層3の厚み方向)に挟み込むような形態を有している。
【0020】
ここで、
図2、
図3の断面図においては、上述のように、第2樹脂層4は、フィルム本体2の厚み方向中央部近傍においてクビレ部を備えるように構成されているが、このような構成に特に限定されず、
図4(a)の断面図に示すように、断面視における第2樹脂層4の形態が台形状に形成してもよく、
図4(b)の断面図に示すように、第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界ライン5が、フィルム本体2の厚み方向に向けて緩やかなカーブを描くように形成し、第2樹脂層4の幅が、フィルム本体2の他方面側2bから一方面側に向かいに従い、徐々に狭くなるように構成してもよい。
【0021】
第1樹脂層3(低機能部)及び第2樹脂層4(高機能部)は、それぞれの層が発揮する特性が異なるように構成されていれば、各層を構成する樹脂は、特に限定されない。また、本実施形態のように、第2樹脂層4が有する特性が、第1樹脂層3が有する特性よりも高くなるように構成する手法としては、例えば、第2樹脂層4を構成する主剤となる樹脂材料に、機能をより強く発現させるための機能調整用物質を含有させる手法を好ましく採用することができる。なお、第1樹脂層3と第2樹脂層4との密着性や機械的特性等の観点から、第1樹脂層3を形成する樹脂材料と同一の樹脂材料を主剤として選択することが好ましい。また、第2樹脂層4が発現する特性を高める手法としては、上述の機能調整用物質を含有させることに限定されるものではなく、部分機能性フィルム1に付与したい機能によっては、第1樹脂層3及び第2樹脂層4を構成するそれぞれの樹脂材料の架橋度合いを変更することによって、或いは、それぞれの層の樹脂材料の重量平均分子量を変更することによって、第1樹脂層3及び第2樹脂層4がそれぞれ有する特性に差を持たせるように構成することもできる。
【0022】
以下、具体的な用途を有するフィルム構成に関して、第1樹脂層3及び第2樹脂層4を構成する樹脂材料について説明する。まず、例えば、部分機能性フィルム1を粘着フィルムとして構成する場合には、第1樹脂層3(低機能部)及び第2樹脂層4(高機能部)を構成する樹脂として、エポキシ系やアクリル系など一般的な粘着性樹脂材料を主剤として用いつつ、粘着付与樹脂を機能調整用物質として採用し、これを第2樹脂層4を構成する樹脂材料に含ませることにより、第1樹脂層3と第2樹脂層4との間での粘着特性に差を待たせることができる。粘着付与樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ロジン系粘着付与樹脂、テルペン系粘着付与樹脂、フェノール系粘着付与樹脂、炭化水素系粘着付与樹脂、ケトン系粘着付与樹脂、ポリアミド系粘着付与樹脂、エポキシ系粘着付与樹脂、エラストマー系粘着付与樹脂等が挙げられる。粘着付与樹脂は、一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。なお、第1樹脂層3及び第2樹脂層4を構成するそれぞれの樹脂材料の架橋度合いや、それぞれの層の樹脂材料の分子量を変更することによって、第1樹脂層3と第2樹脂層4との間での粘着特性に差を待たせてもよい。
【0023】
また、部分機能性フィルム1を熱伝導性フィルムとして構成する場合には、第1樹脂層3及び第2樹脂層4の主剤として、一般的な押出樹脂を使用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリスチレン等のスチレン系樹脂;ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂;ポリアミド(ナイロン6、ナイロン66等)、ポリm-フェニレンイソフタルアミド、ポリp-フェニレンテレフタルアミド等のポリアミド系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリアリレート等のポリエステル系樹脂;ノルボルネン系重合体、単環の環状オレフィン系重合体、環状共役ジエン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、及びこれらの水素化物等のシクロオレフィン系ポリマー;塩化ビニル;ポリイミド;ポリアミドイミド;ポリフェニレンエーテル;ポリエーテルケトン;ポリエーテルエーテルケトン;ポリカーボネート;ポリスルフォン、ポリエーテルスルフォン等のポリサルフォン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド;シリコーン樹脂;及びこれらの高分子の二種以上の組合せ;等が挙げられる。第2樹脂層4は、上述の樹脂材料に、機能調整用物質としての熱伝導性フィラーや導電性炭素化合物を含有させることにより形成することができる。第2樹脂層4を熱伝導性フィラー等を含有した樹脂材料にて形成することにより、第1樹脂層3と第2樹脂層4との間での伝熱特性に差を待たせることができる。ここで、熱伝導性フィラーとしては特に制限はないが、ニッケル、銅、アルミニウム等の金属から選ばれる少なくとも1種類、シリカ、アルミナ、酸化マグネシウム等の金属酸化物、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化マグネシウム、窒化ホウ素等の金属窒化物を挙げることができる。また、導電性炭素化合物としては、カーボンブラック、カーボンナノチューブ(CNT)、グラフェン、カーボンナノファイバー等から選ばれる少なくとも1種類が好ましい。これらの熱伝導性フィラー及び導電性炭素化合物は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0024】
また、例えば、部分的機能性フィルム1を導電性フィルムとして作成する場合には、上記熱伝導性フィルムとして構成する場合において例示した材料を第1樹脂層3及び第2樹脂層4の主剤として用いることができ、第2樹脂層4に含有させる機能調整用物質として、導電性金属フィラーを例示することができる。導電性金属フィラーの材料としては、特に限定されないが、例えば、アルミニウム、銅、チタン、銀、ニッケル、金、マグネシウム、ステンレス、タングステン、亜鉛、錫、バナジウム、モリブデン、タンタルまたは、これらの合金からなる群から選択される金属材料を挙げることができる。
【0025】
また、例えば、部分的にガスバリア性を発揮するようなフィルムとして部分的機能性フィルム1を構成する場合には、例えば、第1樹脂層3をガスバリア性の低い材料を使用して形成すると共に、第2樹脂層4をガスバリア性の高い材料を使用して形成することができる。ガスバリア性が低い第1樹脂層3としては、例えば、ポリカーボネートや低密度ポリエチレン、シリコーンといったガス透過率が高い材用から形成することができる。また、ガスバリア性が高い第2樹脂層4としては、ガス透過率が低い材料である環状オレフィン・コポリマーやポリフェニレンサルファイド、高密度ポリエチレン、ポリビニルアルコールといった樹脂材料から形成することができる。
【0026】
上記本発明に係る部分機能性フィルム1は、例えば、共押出法や、印刷、3Dプリンタによって作製することができる。
【0027】
本発明に係る部分機能性フィルム1は、上述のように、フィルム本体2の一方面側2aにおける第2樹脂層4(高機能部)の面積が、フィルム本体2の他方面側2bにおける第2樹脂層4(高機能部)の面積と異なるように構成されているため、フィルム本体2の幅方向に沿って機能が異なるのみならず、部分機能性フィルム1の表裏面(一方面側2a及び他方面側2b)で、フィルム本体2の機能の強さを個別に異ならせることが可能となる。つまり、該フィルム1が使用される状況に応じて、その機能の強さを選択的に制御することが可能となる。
【0028】
例えば、部分機能性フィルム1を粘着フィルムとして構成する場合、例えば、部分機能性フィルム1の一方面側2aの粘着力を弱く、他方面側2bの粘着力を強くすることが可能となる。
【0029】
また、例えば、部分機能性フィルム1を熱伝導性フィルムとして構成する場合には、熱伝導機能を有する第2樹脂層4を介して、広い範囲の熱を狭い範囲に伝える、或いは、狭い範囲の熱を広い範囲に伝えることが可能となり、フィルム本体2の一方面側2aから他方面側2b(或いは、他方面側2bから一方面側2a)に向けての熱伝導経路の設計の自由度を向上させることが可能となる。例えば、
図5(a)に示すように、フィルム本体2の一方面側2aに熱暴走に弱い電子部品Zが存在し、フィルム本体2の他方面側2bから一方面側に熱を逃がさなければならないような場合、上記構成を有することにより、熱暴走に弱い電子部品Zを効果的に避けて、当該電子部品Zに熱を伝えない、或いは、伝えにくい構造として熱伝導経路の設計を行うことが可能となる。また、
図5(b)に示すように、フィルム本体2の一方面側2aから他方面側2bに熱を逃がすような場合には、狭い面積を有する第2樹脂層4の一方面側2aから広い面積を有する第2樹脂層4の他方面側2bに熱を移動させることになるので、フィルム本体2の厚み方向の放熱性能を向上させることが可能となる。
【0030】
また、部分機能性フィルム1を部分的にガスバリア性を発揮するようなフィルムとして構成し、例えば、部分機能性フィルム1の一方面側2aから他方面側2bにガスを透過させる場合には、ガスバリア性の低い第1樹脂層3(低機能部)を透過したガスは、広い範囲から狭い範囲へと導かれることとなる。つまり、部分機能性フィルム1を透過するガスの位置を狭い範囲に限定することが可能となり、また、透過したガスの濃度を高めた状態(濃縮された状態)で部分機能性フィルム1の他方面側2bに導くことができる。一方、部分機能性フィルム1の他方面側2bから一方面側2aにガスを透過させる場合には、ガスバリア性の低い第1樹脂層3(低機能部)を透過したガスは、狭い範囲から広い範囲へと導かれることになり、透過したガスの濃度を低下させた状態(希釈された状態)で部分機能性フィルム1の一方面側2aに導かれることとなる。
【0031】
また、本発明に係る部分機能性フィルム1は、第1樹脂層3及び第2樹脂層4の積層方向に沿ったフィルム本体2の断面視において、第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界ライン5は連続的な形態を有するように形成されている。このような形態を有することにより、部分機能性フィルム1を湾曲させた場合に、第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界ライン5(界面)を起点として、第1樹脂層3と第2樹脂層4とが分離剥離することを効果的に抑制することが可能となる。
【0032】
特に、第1樹脂層3及び第2樹脂層4の積層方向に沿ったフィルム本体2の断面視において、第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界ライン5を、
図3や
図4(b)に示すように、湾曲状に形成することにより、第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界で、両者が密接する領域の面積が増大するため、第1樹脂層3と第2樹脂層4とが分離剥離することをより一層抑制することが可能となり、部分的熱伝導フィルム1の強度を向上させることが可能となる。
【0033】
また、
図3に示すように、第1樹脂層3及び第2樹脂層4の積層方向に沿ったフィルム本体2の断面視において、第2樹脂層4が、フィルム本体2の厚み方向中央部近傍においてクビレ部を備えるように構成することにより、上述のように、フィルム本体2の一方面側2a及び他方面側2bにそれぞれ存在する第2樹脂層4の一部分が、第1樹脂層3の一部分の上方及び下方に位置するように配置され、第1樹脂層3の一部分を、第2樹脂層4の各一部分でフィルムの厚み方向(第1樹脂層3の厚み方向)に挟み込むように構成される。このような構成により、部分機能性フィルム1を湾曲させた場合に、第1樹脂層3と第2樹脂層4との境界ライン5(界面)を起点として、第1樹脂層3と第2樹脂層4とが分離剥離することをより一層効果的に抑制することが可能となり、部分機能性フィルム1の強度を向上させることが可能となる。
【0034】
以上、本発明の一実施形態に係る部分機能性フィルム1について説明したが、部分機能性フィルム1の具体的構成は、上記実施形態に限定されない。上記実施形態においては、第1樹脂層3及び第2樹脂層4共に、
図1(a)に示すように、平面視において、フィルム本体2の一方から他方に向けて伸びる帯状として構成しているが、このような構成に特に限定されず、例えば、
図6(a)の平面図に示すように、第2樹脂層4の周囲を第1樹脂層3にて取り囲むような構成として形成してもよい。このような構成を採用する場合であっても、
図6(a)のB-B断面を示す
図6(b)の断面図に示すように、第1樹脂層3と第2樹脂層4とは、フィルム本体2の幅方向に積層した構造を備えている。なお、
図6(b)の断面図に示すように、フィルム本体2の一方面側2aにおける第2樹脂層4の面積は、フィルム本体2の他方面側2bにおける第2樹脂層4の面積と異なるように構成される。また、
図6に示すような態様を採用する場合、第1樹脂層3にて取り囲まれる第2樹脂層4の数が複数となるように構成してもよい。また、
図6(a)においては、フィルム本体2の一方面上にて露出する第2樹脂層4の一方面の形態は平面視楕円形状であるが、このような形態に限定されず、平面視矩形状、平面視円形状、平面視多角形状等、種々の形態を採用することができる。また、
図6(a)における第1樹脂層3と第2樹脂層4との配置関係を入れ替えて、第1樹脂層3の周囲を第2樹脂層4にて取り囲むような構成を採用することもできる。
【0035】
また、上記実施形態においては、
図1及び
図2に示すように、フィルム本体2の互いに対向する一対の側縁部領域が、共に第1樹脂層3となるような構成について示しているが、このような構成に限定されず、
図7(a)の平面図(部分機能性フィルム1の一方面側から見た平面図)に示すように、フィルム本体2の互いに対向する一対の側縁部領域が、共に第2樹脂層4となるように部分的熱伝導フィルム1を構成してもよく、或いは、
図7(b)の平面図(部分機能性フィルム1の一方面側から見た平面図)に示すように、該一対の側縁部領域の一方が第1樹脂層3、他方が第2樹脂層4となるように部分機能性フィルム1を構成してもよい。
【0036】
また、上記実施形態においては、
図1及び
図2に示すように、第1樹脂層3及び第2樹脂層4を交互に幅方向に積層し、複数の第1樹脂層3及び複数の第2樹脂層4を有する部分機能性フィルム1を示しているが、例えば、
図8(a)の断面図に示すように、単一の第2樹脂層4の両側に第1樹脂層3を備えるような構造、あるいは、
図8(b)の断面図に示すように単一の第1樹脂層3の両側に第2樹脂層4を備えるような構造で部分機能性フィルム1を構成してもよい。
【0037】
図8(a)(b)に示すように、フィルム本体2の互いに対向する一対の側縁部領域の両方に第1樹脂層3(又は第2樹脂層4)を備える場合であっても、フィルム本体2の一方面側2aにおける第2樹脂層4の面積(第1樹脂層3の面積)と、フィルム本体2の他方面側2bにおける第2樹脂層4の面積(第1樹脂層3の面積)とが異なるように構成されているため、部分機能性フィルム1の表裏面での機能の強さを変更することができる。
【0038】
また、例えば、
図8(c)に示すように、フィルム本体2の一方面側2aにおいて第2樹脂層4が露出しないように構成してもよい(第2樹脂層4の露出面積をゼロとするように構成してもよい)。このような構成を採用することにより、第2樹脂層4の機能が一方面側に発現しないように部分機能性フィルム1を構成することができる。なお、同様に第1樹脂層3が、フィルム本体2の一方面側2aに露出しないように構成することもできる。
【0039】
また、例えば、
図9の断面図に示すように、フィルム本体2の一対の側面の形状を、断面視において傾斜面となるように形成することにより、フィルム本体2の一方面側2aにおける第2樹脂層4(高機能部)の面積が、フィルム本体2の他方面側2bにおける第2樹脂層4(高機能部)の面積と異なるように構成することもできる。
図9においては、フィルム本体2(部分機能性フィルム1)の一方面側2aの表面積が、他方面側2bの表面積よりも小さくなる態様で、フィルム本体2の側面形状を傾斜面として構成している。このような構成であっても、部分機能性フィルム1の表裏面での機能の強さを変更することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 部分機能性フィルム
2 フィルム本体
2a フィルム本体(部分機能性フィルム)の一方面側
2b フィルム本体(部分機能性フィルム)の他方面側
3 第1樹脂層
4 第2樹脂層
5 境界ライン