(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】ポリオレフィン発泡体の製造方法、包装用包材の製造方法、ポリオレフィン発泡体、及び食品向け包装用包材
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20240801BHJP
B65D 65/02 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C08J9/12 CES
B65D65/02 E
(21)【出願番号】P 2020063981
(22)【出願日】2020-03-31
【審査請求日】2023-02-22
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 (1)展示会名:展示商談会2020 開催日 :令和2年2月12日 (2)刊行物名:TOTAL FOOD PACKAGE GUIDE 2020 中央化学プラスチック製食品包装容器 総合カタログ 発行日 :令和2年3月30日
(73)【特許権者】
【識別番号】391011825
【氏名又は名称】中央化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167117
【氏名又は名称】打越 佑介
(72)【発明者】
【氏名】保苅 武
【審査官】芦原 ゆりか
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-249666(JP,A)
【文献】特開平06-345889(JP,A)
【文献】特開2001-200087(JP,A)
【文献】特開2006-257307(JP,A)
【文献】特開2004-269583(JP,A)
【文献】特開2001-200086(JP,A)
【文献】特開2003-253032(JP,A)
【文献】特表2003-522052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 9/00-9/42
B29C 44/00-44/60
B29C 48/00-48/96
B65D 65/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品向け包装用包材として用いられるポリオレフィン発泡体の製造方法であって、
少なくともポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとを混練した樹脂組成物を加熱して溶融物を生成する工程と、
前記溶融物100重量%に対して水0.5重量%~3重量%加えてさらに混合して含水溶融物を生成する工程と、
前記含水溶融物に含まれる水分を気化して
端面視波型のシート状の発泡体を生成する工程と、を含む
ことを特徴とするポリオレフィン発泡体の製造方法。
【請求項2】
前記樹脂組成物は、化学発泡剤を含まず、
前記樹脂組成物に対する前記発泡体の発泡倍率は、4倍以上である
ことを特徴とする請求項1に記載のポリオレフィン発泡体の製造方法
【請求項3】
前記ポリオレフィン系樹脂と前記無機フィラーとの重量比は、85:15~30:70である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のポリオレフィン発泡体の製造方法。
【請求項4】
少なくともポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとを混練した樹脂組成物を加熱して溶融物を生成する工程と、
前記溶融物100重量%に対して水0.5重量%~3重量%加えてさらに混合して含水溶融物を生成する工程と、
前記含水溶融物に含まれる水分を気化して厚さ500μm~3000μm
かつ端面視波型のシート状の発泡体を生成する工程と、
前記シート状の発泡体を成型する工程と、を含む
ことを特徴とする
食品向け包装用包材の製造方法。
【請求項5】
食品向け包装用包材として用いられ、少なくともポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとを混練した樹脂組成物を加熱した溶融物と水とを含む含水溶融物中の水分が気化された状態におけるポリオレフィン発泡体であって、
前記含水溶融物は、前記溶融物100重量%に対して前記水0.5~3重量%を含み、
前記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を含み、
前記無機フィラーは、タルクを含み、
前記ポリプロピレン系樹脂と前記無機フィラーとの重量比は、85:15~30:70であ
り、
端面視波型のシート状である
ことを特徴とするポリオレフィン発泡体。
【請求項6】
請求項5に記載のポリオレフィン発泡体をシート状にしたポリオレフィン発泡体製シートで形成された食品向け包装用包材であって、
前記ポリオレフィン発泡体製シートの厚さは、500μm~3000μmで、
食品を載置する底部と、
前記底部の外周端縁から連続して上方向に設けられた側壁部と、を備えた
ことを特徴とする食品向け包装用包材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば食品向け包装分野に好適な樹脂組成物を原料とするポリオレフィン発泡体の製造方法、製造した発泡体を用いた包装用包材の製造方法、上記樹脂組成物製のポリオレフィン発泡体、及び上記発泡体製の食品向け包装用包材とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建材分野では、断熱材・緩衝材・遮音材・保冷材として、合成樹脂等を配合した樹脂組成物を原料とする発泡体が活用されていた。しかしながら、例えば断熱材では、廃棄時の焼却で煤煙や有毒ガスが発生しやすかったり、燃料カロリーが高かったり、発泡量の不足により所望の幅寸法に成形できなかったり、断熱性が不足してしまったりする問題を抱えていた。
【0003】
そこで、特許文献1では、発泡体の原料として発泡性ポリプロピレンを採用した場合、ポリスチレン樹脂とポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン樹脂とポリエチレン樹脂)とを混合した再生樹脂を配合することで、焼却時に煤煙が発生しにくく、燃焼カロリーが低く、所望の発泡性及び断熱性を有する発泡体が開示されている。発泡体の具体的な成分は、所定配合による紙ペレット、上記再生樹脂、上記発泡性ポリプロピレン、及び水である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方、食品向け包装分野でも、包装した食品に加わる衝撃の緩和、上記食品の滑りによる位置ずれの抑制、食品を含む総重量の軽減等を期待して、所定の合成樹脂等を配合した樹脂組成物を原料とする発泡体製の包装体が採用されている。すなわち、上記包装体には食品を載置するため、上記発泡体は衛生性も不可欠なことから、食品向け包装分野では実績の乏しい特許文献1の発泡体を採用しにくい。
【0006】
近年、食品向け包装分野での発泡体には、包装体としての強度や剛性・その他各種耐性の発現や原料費の低減を狙い、樹脂組成物に無機フィラーが配合されている。無機フィラーは多種類存在し、包装体の機能や用途に応じて配合する種類や比率が適宜決定されている。また、環境問題への関心が高まるにつれて、合成樹脂の使用量削減に向けた取り組みが盛んになっている。
【0007】
一般的に、合成樹脂や無機フィラーを混練した樹脂組成物は、ペレットとして流通されていることがある。発泡体の原料に用いられる樹脂組成物のペレットは、生成時に配合する水の吸水率を高めて発泡体の発泡倍率を上げるために、多孔質に生成されることもある。しかしながら、ペレットが多孔質につき吸水性を伴うと、季節に伴う温湿度等の変動に応じた品質管理に手間が生じかねない。
【0008】
そこで、本発明の目的は、食品向け包装用包材として採用しやすく、環境対策も考慮され、生成前の品質管理の手間を回避するポリオレフィン発泡体の製造方法、包装用包材の製造方法、ポリオレフィン発泡体、及び食品向け包装用包材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は、食品向け包装用包材として用いられるポリオレフィン発泡体の製造方法であって、少なくともポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとを混練した樹脂組成物を加熱して溶融物を生成する工程と、上記溶融物100重量%に対して水0.5重量%~3重量%加えてさらに混合して含水溶融物を生成する工程と、上記含水溶融物に含まれる水分を気化して端面視波型のシート状の発泡体を生成する工程と、を含むことを特徴とする。
【0010】
上記樹脂組成物は、化学発泡剤を含まず、上記樹脂組成物に対する上記発泡体の発泡倍率は、4倍以上であることが望ましい。
【0011】
上記ポリオレフィン系樹脂と上記無機フィラーとの重量比は、85:15~30:70であることが望ましい。
【0012】
また、本発明における食品向け包装用包材の製造方法は、少なくともポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとを混練した樹脂組成物を加熱して溶融物を生成する工程と、上記溶融物100重量%に対して水0.5重量%~3重量%加えてさらに混合して含水溶融物を生成する工程と、上記含水溶融物に含まれる水分を気化して厚さ500μm~3000μmかつ端面視波型のシート状の発泡体を生成する工程と、上記シート状の発泡体を成型する工程と、を含むことを特徴とする。
【0013】
また、本発明におけるポリオレフィン発泡体は、食品向け包装用包材として用いられ、少なくともポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとを混練した樹脂組成物を加熱した溶融物と水とを含む含水溶融物中の水分が気化された状態におけるポリオレフィン発泡体であって、上記含水溶融物は、上記溶融物100重量%に対して上記水0.5~3重量%を含み、上記ポリオレフィン系樹脂は、ポリプロピレン系樹脂を含み、上記無機フィラーは、タルクを含み、上記ポリプロピレン系樹脂と上記無機フィラーとの重量比は、85:15~30:70であり、端面視波型のシート状であることを特徴とする。
【0014】
また、本発明における食品向け包装用包材は、上記ポリオレフィン発泡体をシート状にしたポリオレフィン発泡体製シートで形成された食品向け包装用包材であって、上記ポリオレフィン発泡体製シートの厚さは、500μm~3000μmで、食品を載置する底部と、上記底部の外周端縁から連続して上方向に設けられた側壁部と、を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、食品向け包装用包材として採用しやすく、環境対策も考慮され、生成前の品質管理の手間を回避する効果を期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態におけるポリオレフィン発泡体の製造方法で用いる押出機の一例である。
【
図2】本発明の一実施形態における食品向け包装用包材の製造方法で用いられる発泡体製シートの一例である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態におけるポリオレフィン発泡体の製造方法、食品向け包装用包材の製造方法、ポリオレフィン発泡体、及び食品向け包装用包材について説明する。
【0018】
<ポリオレフィン発泡体の製造方法の概要>
ポリオレフィン発泡体の製造方法は、少なくともポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとを混練した樹脂組成物を加熱して溶融物を生成する第1工程と、上記溶融物100重量%に対して水0.5~3重量%加えてさらに混合して含水溶融物を生成する第2工程と、上記含水溶融物に含まれる水分を気化して発泡体を生成する第3工程と、を含む。
【0019】
これらの工程によれば、樹脂組成物に多孔質(吸水性)は不要なため、季節に伴う温湿度等の変動に応じた品質管理の手間を回避すると共に、水分が均一に分散するため均一な気泡を得られ、樹脂組成物として無機フィラーを混ぜ合わせることで、合成樹脂の使用量の削減や生成される発泡体の剛性や強度の向上を期待できる。
【0020】
「溶融物」とは、第1工程にて加熱して樹脂組成物を融解して流動性を備えた状態のものである。「含水溶融物」とは、第2工程にて供給された水が溶融物に分散された状態のものである。「発泡体」とは、第3工程にて含水溶融物を大気圧下に開放することで、上記含水溶融物の水分の全部又は一部が気化することにより気泡となり、その後、冷却されることによって、固まった状態のものである。発泡体は、食品向け包装用包材や緩衝材や断熱材に採用されるが、使用可能な限り用途を問わないものとする。
【0021】
<樹脂組成物の詳細>
樹脂組成物は、合成樹脂のうち少なくともポリオレフィン系樹脂と、充填剤としての無機フィラーとを混練されていれば特に制限はなく、混練する合成樹脂は、ポリオレフィン系樹脂に加え、必要に応じて例えば、ポリスチレン系樹脂を添加してもよい。
【0022】
樹脂組成物は、予め別工程にて製造されたコンパウンドとして供給されてもよい。ここで、コンパウンドとは、合成樹脂のうち少なくともポリオレフィン系樹脂と、充填剤としての無機フィラーとを加熱しながら混練して、押出して、ペレット状にしたものをいう。本発明において、コンパウンドの含水率は1重量%以下、好ましくは0.5重量%以下、さらに好ましくは0.1重量%以下であることが好ましい。
【0023】
ポリオレフィン系樹脂は、ポリエチレン系樹脂(PE)やポリプロピレン系樹脂(PP)が該当し、ポリエチレン系樹脂とポリプロピレン系樹脂との混合物でもよいが、好ましくはポリプロピレン系樹脂のみである。
【0024】
ポリプロピレン系樹脂は、例えば、ホモポリプロピレン樹脂、プロピレン-エチレンランダム共重合体、プロピレン-エチレンブロック共重合体、プロピレン-αオレフィン共重合体である。
【0025】
無機フィラーは、例えば、10nm~100μmの粒子状のもので、タルク、炭酸カルシウム、シリカ、クレー、ウォラストナイト、チタン酸カリウム、ゾノトライト、石膏繊維、アルミボレート、繊維状マグネシウム化合物(MOS)、アラミド繊維、カーボンファイバー(炭素繊維)、グラスファイバー(ガラス繊維)、マイカ、ガラスフレーク、ポリオキシベンゾイルウイスカーであり、1種類でも2種類以上の混合物でもよく、好ましくは食品向け包装分野にて実績のあるタルクであり、その平均粒径は、5μm~15μmであってもよく、6μm~10μmであってもよく、7μm~9μmであってもよい。
【0026】
<水の割合>
水は、溶融物100重量%に対して、0.5重量%~3重量%でもよいが、好ましくは0.6重量%~1.5重量%、より好ましくは0.8重量%~1.2重量%であり、0.5重量%より少ないと発泡せず所望の物性が得られず、3重量%より多いと均一な気泡が得られず発泡体の物性が不安定になってしまうことが懸念される。
【0027】
<ポリオレフィン発泡体の製造方法の別の特徴>
また、上述の樹脂組成物は、化学発泡剤を含まず、樹脂組成物に対する上記発泡体の発泡倍率は、4倍以上である。
【0028】
これによれば、化学発泡剤の使用に伴う環境負荷を回避すると共に、化学発泡剤を樹脂組成物に混練しなくても所望の発泡倍率の発泡体を得られる。すなわち、発泡倍率が4倍未満の発泡体は硬く、食品向け包装用包材に適した強度・剛性・弾性等の物性を伴わないことから、食品向け包装用包材としては不向きである。
【0029】
なお、化学発泡剤は、有機系発泡剤及び無機系発泡剤並びに熱分解型及び反応系を含み、例えば、ジニトロペンタメチレンテトラミン(DPT)、アゾジカルボンアミド(ADCA)、4,4′‐オキシビスベンゾスルホニルヒドラジド(OBSH)、炭酸水素塩、炭酸塩、炭酸水素ナトリウム(重曹)、炭酸水素ナトリウムとクエン酸との組合せであり、水等の天然由来の発泡剤を除き、全て含む。
【0030】
さらに、ポリオレフィン系樹脂と無機フィラーとの重量比は、85:15~30:70であり、好ましくは70:30~35:65であり、より好ましくは60:40~40:60である。
【0031】
これによれば、85:15よりポリオレフィン系樹脂の重量比が高いと、柔らかくなりすぎてしまい、食品向け包装用包材に適した強度・剛性・弾性等の物性を発泡体が伴いにくく、30:70より無機フィラーの重量比が高いと、シートが得られない。そして、より好ましくはポリオレフィン系樹脂がポリプロピレン系樹脂、無機フィラーがタルクである。
【0032】
<食品向け包装用包材の製造方法の概要>
食品向け包装用包材の製造方法は、ポリオレフィン発泡体の製造方法で製造されたポリオレフィン発泡体を、押し出して厚さ500μm~3000μmのシート状の発泡体を得る第3工程と、上記シート状の発泡体を成型する第4工程と、を含む。
【0033】
これらの工程によれば、所望の強度・剛性・弾性等の物性を伴う食品向け包装用包材を得られる効果を期待できる。シートが500μmより薄いと成型時又は使用時に破損しやすく、3000μmより厚いと製造コスト高となり費用対効果の低下を招く恐れがある。
【0034】
「食品向け包装用包材」とは、例えば、食品を載置する底部と、上記底部の外周端縁から連続して上方向に設けられた側壁部と、を少なくとも備えた包装体であり、好ましくは上記側壁部の上端縁から連続して外方向に延出しているフランジ部を備え、より好ましくは上記フランジ部の外周端縁から連続して外方向に延出していて上記側壁部の上端縁で形成された開口を覆う蓋部を備えたものである。上記包装体は、いわゆる容器であってもなくてもよく、平面視で矩形状でも円形状でもよく、限定しない。「食品」とは、例えば、精肉や鮮魚等の生鮮品であり、サラダやケーキのようなふんわり感を演出するものと比較して、相対的に高密度かつ重めのものであれば、全て含む。
【0035】
<各工程同士の関係>
第1工程~第4工程は、時系列であり、製造効率の向上の観点から、各工程同士の間隔は、所望の発泡体及び食品向け包装用包材の生成に影響しない限りいずれでもよいが、好ましくは直前の工程完了直後に次の工程を開始すると共に、各工程を別々の装置で行ってもよいが、好ましくは第1工程~第3工程を所定の装置1台、第4工程を別の装置1台で行い、より好ましくは第1工程~第3工程を押出機、第4工程を成型機で行う。
【0036】
<押出機の詳細>
図1に示すように、ポリオレフィン発泡体の製造方法で用いられる押出機Mは、内部に単軸のスクリュー111を備えた加熱冷却式のシリンダー101と、シリンダー101の上流端側に設けられて樹脂組成物が投入される投入口121と、シリンダー101の下流端側に設けられて含水溶融物が押し出されるダイ131と、シリンダー101の上流端側から下流端側までの間に設けられて内部に水を注入する注水部141と、を備えている。
【0037】
ダイ131は、シリンダー101の出口から原料を押し出して発泡体を所望の形状にて生成する吐出孔を有する治具で、例えば、Tダイやサーキュラーダイであるが、好ましくは発泡体Sをシートに生成しやすい吐出孔を有するTダイである。上記吐出孔の大きさや形状には、特に制限はないが例えばTダイの場合、厚さ(クリアランス)0.01~0.3mm、幅500mm~2000mmの長方形状やであってもよい。サーキュラーダイの場合は、直径150~650mm、厚さ(クリアランス)0.01~0.3mmの円環形状であってもよい。
【0038】
Tダイ131は、吐出孔を丸孔にしてもよく、こうした丸孔を複数個隣接させて備えていてもよい。こういった構成よれば、押出された棒状の発泡体(棒状発泡体ともいう)が隣接する棒状発泡体と溶融状態で密着結合し、棒状発泡体の集合体を得ることができる。丸孔の配列によってシート状の集合体を得ることもできるし、円筒状の集合体を得ることもできる。ここで、吐出孔としての丸孔の大きさは、直径0.01~0.3mmであってもよい。
【0039】
注水部141は、詳細には図示しないが、シリンダー101の外部から内部に通ずる孔に設けられた逆止弁と、別機である定量ポンプから逆止弁を介してスクリュー111付近に向かって水を供給する。換言すれば、注水部141は、樹脂組成物をシリンダー101内で加熱しつつスクリュー111で下流端側に押し進めて融解した溶融物に水を供給して含水溶融物を生成しやすくするものであり、逆止弁は、好ましくはシリンダー101のうちスクリュー111により下流端側に押し進められた樹脂組成物が溶融物に融解し切る箇所に設けられたものである。
【0040】
<成型機の詳細>
食品向け包装用包材の製造方法で用いられる成型機は、例えば、プレス成型、真空成型、熱板圧空成型、真空圧空成型、両面真空成型、深絞り成型を行う装置である。
【0041】
<各工程と装置との関係>
第1工程~第3工程を上記押出機で行う場合、第1工程は、樹脂組成物を投入口121からシリンダー101内に投入するところから、シリンダー101内の加熱及びスクリュー111の回転により上記樹脂組成物を融解して溶融物を生成するまでであり、第2工程は、第1工程で生成した溶融物に注水部141の注水により水を供給するところから、シリンダー101内の加熱及びスクリュー111の回転により上記溶融物及び水を分散させて含水溶融物を生成するところまでであり、第3工程は、第2工程で生成した含水溶融物をシリンダー101内からダイ131に送り出すところから、上記含水溶融物の水分の気化によって発泡体を生成するところまで、が該当する。
【0042】
第3工程においてダイ131として長方形状の吐出孔を有するTダイを用いることもできる。すなわち、第3工程にてダイ131に送り出された含水溶融物がダイ131の吐出孔を通過することで大気圧下に開放されてシート状の発泡体を得ることもできる。
【0043】
また、第3工程においてTダイ131の吐出孔を丸孔にしてもよく、こうした丸孔を複数個隣接して形成してもよい。こういった構成によれば、押出された棒状発泡体が隣接する棒状発泡体と溶融状態で密着結合し、棒状発泡体の集合体を得ることができる。
【0044】
第4工程を上記成型機で行う場合、第4工程は、第3工程で得たシート状の発泡体を上記押出機から成型機に供給するところから、上記シート状の発泡体を成型するところまで、が該当する。
【0045】
<シート状の発泡体の詳細>
図2に示すように、シート状の発泡体S(以下、「シートS」ともいう。)は、端面視波型である。
図2(a)の平面図に示すように、直線状の細線は波型の山側及び谷側の頂点を示す稜線であり、上記稜線間の横幅(隣接する山同士の距離)は不規則であるが、平均200μm~500μmであり、上記平面図のX-X部分における
図2(b)の端面図に示すように、波型の各々の山側及び谷側の縦幅(山の頂点と隣の谷の頂点との垂直方向の距離)は不規則であるが、平均500μm~1500μmである。シートSの厚みは、特に制限はないが、200μm~1500μmであってもよいし、300μm~800μmであってもよい。シートSの形状は、ポリオレフィン発泡体の製造方法及び食品向け包装用包材の製造方法に基づくが、特に、発泡体の発泡倍率、押し出し時のダイの吐出孔の大きさや形状、含水溶融物内の水分量のいずれか1つ又は2つ以上の組み合わせに基づく。シートSは、発泡体の構造上、上記稜線方向に裂けやすいことから、上記稜線方向と平行に伸縮しやすく折り曲げたり丸めたりしやすく、換言すれば、上記稜線方向に沿って伸縮しにくく折り曲げたり丸めたりしにくい。
【実施例】
【0046】
以下に、本発明におけるポリオレフィン発泡体の製造方法で製造したポリオレフィン発泡体及び上記ポリオレフィン発泡体により食品向け包装用包材の製造方法で製造した食品向け包装用包材の評価試験について説明する。
【0047】
<評価試験の概要>
評価試験は、実施例及び比較例として、樹脂組成物の配合、上記配合における重量比、及び溶融物100重量%に対する水の重量%を変えて行った。評価試験における共通条件及び各評価項目の評価方法は、以下のとおりである。
【0048】
<評価試験の共通条件>
ポリオレフィン発泡体の製造方法は、東芝機械社製の押出機にて実施し、シリンダーの加熱温度は160~220℃、Tダイの吐出孔は厚さ(クリアランス)0.05mm・幅1000mmとし、シート状の発泡体を得るものとする。樹脂組成物は、少なくとも合成樹脂としてポリプロピレン系樹脂、無機フィラーとして平均粒径8μmのタルクを成分とし、化学発泡剤を含んでおらず、多孔質や形状に基づく吸水性を伴っていないコンパウンドとして供給される。
【0049】
食品向け包装用包材の製造方法は、プレス成型を行う成型機にて実施し、製造された食品向け包装用包材は、一般的な生鮮品の包装用であり、少なくとも底部及び側壁部を備えており、上記側壁部の上端縁で形成される開口から上記底部までの高さに相当する包装材の深さは25mmである。
【0050】
<発泡体の評価方法>
坪量は、JIS P8124「紙及び板紙-坪量の測定方法」を参考にし、シートから打ち抜いた100mm×100mmの試験片にて測定する。比重及び発泡倍率は、JIS Z8807「固体の密度及び比重の測定方法」を参考にし、島津製作所社製の比重計を使用し、水中置換法で測定する。
【0051】
<シート及び食品向け包装用包材の評価方法>
シートの縦幅は、ミツトヨ社製のシックネスゲージで測定する。弾性率は、インストロン社製の万能材料試験機を使用し測定する。弾性率を測定するシートの向きは、波型の稜線方向を基準とし、上記稜線方向をMD、MDと直交する方向をTDとする。引張弾性率は、JIS K7161「プラスチック-引張特性の求め方」を転用し、シートから打ち抜いた140mm×15mmの試験片にて測定する。曲げ弾性率は、JIS K7171「プラスチック-曲げ特性の求め方」を転用し、シートから打ち抜いた70mm×15mmの試験片にて測定する。山の数は、シートから打ち抜いた上記TDで50mmの試験片にて目視で算定する。
【0052】
最終的に、シートの状態として、成形可能かつ上記山の凹凸が均一である場合を『○』、成形可能だが上記凹凸が不均一である場合を『△』、成形不可能な場合を『×』で評価する。また、作業者による包装用包材のパッキングのしやすさとして、問題ない場合を『○』、硬すぎて折り曲げられない場合を『×』で評価する。
【0053】
実施例1~4、比較例1及び2の個別条件は、以下のとおりである。
【0054】
<実施例1>
合成樹脂=PP、無機フィラー=タルク、重量比=PP:タルク=45:55、水=1重量%
【0055】
<実施例2>
合成樹脂=PP+PE、無機フィラー=タルク、重量比=PP:PE:タルク=35:10:55、水=1重量%
【0056】
<実施例3>
合成樹脂=PP、無機フィラー=タルク、重量比=PP:タルク=85:15、水=2重量%
【0057】
<実施例4>
合成樹脂=PP、無機フィラー=タルク、重量比=PP:タルク=90:10、水=1.5重量%
【0058】
<比較例1>
合成樹脂=PP、無機フィラー=タルク、重量比=PP:タルク=45:55、水=0.3重量%
【0059】
<比較例2>
合成樹脂=PP、無機フィラー=タルク、重量比=PP:タルク=45:55、水=5重量%
【0060】
<実施例1~4の個別条件の相違点>
実施例1を基準にする。実施例2は、実施例1に対し、ポリプロピレン系樹脂の重量比を減らし、かつポリエチレン系樹脂を加えたものである。実施例3及び4は、実施例1に対し、樹脂組成物におけるポリプロピレン系樹脂とタルクとの重量比や含水溶融物における水の重量%を変えたものであり、上記重量比の臨界的意義を検討するものでもある。
【0061】
<実施例1と比較例1及び2との個別条件の相違点>
比較例1及び2は、実施例1に対し、含水溶融物における水の重量%を0.5重量%~3重量%の範囲外にしたものであり、上記範囲の臨界的意義を検討するものでもある。
【0062】
<評価結果>
実施例1~4並びに比較例1及び2の評価結果を表1に示す。参照の便宜上、同表には上述した個別条件も記載してある。上記評価方法における各評価結果は、上記TDにおける所定の直線上に位置する任意の3点をサンプリングし、その相加平均値にて算定したものである。
【0063】
【0064】
<実施例1~4の考察>
実施例1を基準にして対比すると、実施例2により、ポリプロピレン系樹脂の減量分をポリエチレン系樹脂で代替し、また、実施例3及び4により、樹脂組成物におけるポリプロピレン系樹脂の重量比を多めにしても、略同等の評価となった。一方、実施例3に対し、実施例4では、上記重量比が85:15~30:70の範囲外だと、含水溶融物における水の重量%が0.5~3重量%の範囲内であっても、シートの成形性としては、成形可能だが山の凹凸が不均一である『△』と評価された。
【0065】
<比較例1及び2の考察>
含水溶融物における水の重量%の許容範囲を0.5重量%~3重量%として考察する。比較例1では、水の重量%を上記許容範囲の最低値を下回るようにしたところ、発泡体の発泡倍率が4倍未満であり、シートの厚みが500μm~3000μmの範囲外で薄くなり過ぎてしまうことから、シートの状態としては、成形可能だが上記凹凸が不均一である『△』、包装用包材のパッキングのしやすさとしては、硬過ぎて折り曲げられない『×』と評価された。比較例2では、水の重量%を上記許容範囲の最大値を上回るようにしたところ、発泡しすぎてしまい成型可能なシートが得られなかった。
【0066】
<参考例>
説明の便宜上、比較例とは異なる条件にて行った試験の評価結果を表2に示す。
【0067】
【0068】
参考例1では、樹脂組成物の配合及び重量比が実施例3と同等であるものの、シートの層構成を2種3層(ポリプロピレン系樹脂とタルクとの樹脂組成物層/ポリプロピレン発泡層/ポリプロピレン系樹脂とタルクとの樹脂組成物層)にすると、発泡倍率が4倍未満で、シートとしては硬過ぎてしまう。参考例2では、樹脂組成物の配合及び重量比が実施例1と同等であるものの、発泡体の発泡倍率を1(非発泡)にすると、硬いシートとなる。
【符号の説明】
【0069】
M 押出機、S 発泡体、101 シリンダー、111 スクリュー、121 投入口、131 ダイ、141 注水部