(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】フラットケーブルと端子金具の接続構造
(51)【国際特許分類】
H01R 12/61 20110101AFI20240801BHJP
【FI】
H01R12/61
(21)【出願番号】P 2021082090
(22)【出願日】2021-05-14
【審査請求日】2023-09-28
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パーティウッティパット ピパッタナ
【審査官】▲高▼橋 杏子
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-113676(JP,A)
【文献】特開2002-025653(JP,A)
【文献】特開2016-225193(JP,A)
【文献】特開2009-076224(JP,A)
【文献】特開2003-157919(JP,A)
【文献】特開2002-270979(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R 12/61
H01R 12/65
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットケーブルと、前記フラットケーブルに接続される端子金具と、を備え、
前記フラットケーブルは、前記フラットケーブルの前端部に位置する第1接続部と、前記第1接続部よりも後方に位置する第2接続部と、を有し、
前記端子金具は、前記第1接続部に溶接される第1溶接部と、前記第1溶接部よりも後方に位置し、前記第2接続部に溶接される第2溶接部と、を有し、
さらに、
前記フラットケーブルは、前記第1接続部と前記第2接続部との間に屈曲部を有し、
前記端子金具は、前記第1溶接部と前記第2溶接部との間に弾性変形可能な繋ぎ部を有しているフラットケーブルと端子金具の接続構造。
【請求項2】
前記繋ぎ部は、前記第1溶接部および前記第2溶接部のそれぞれに対して第1境界部および第2境界部を介して繋がっており、前記第1境界部および前記第2境界部は、いずれも曲線状に形成されている請求項1に記載のフラットケーブルと端子金具の接続構造。
【請求項3】
前記第2溶接部が前記第2接続部の一方の面に溶接される場合に、前記フラットケーブルは、前記第2接続部の他方の面に重なる第2補強板を有している請求項1または請求項2に記載のフラットケーブルと端子金具の接続構造。
【請求項4】
前記第1溶接部が前記第1接続部の一方の面に溶接される場合に、前記フラットケーブルは、前記第1接続部の他方の面に重なる第1補強板を有している請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のフラットケーブルと端子金具の接続構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、フラットケーブルと端子金具の接続構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、フラットケーブルと端子金具の接続構造を開示している。端子金具は、平板状の導体路接続部を有している。導体路接続部は、フラットケーブルの前端部に半田付けにより接続される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フラットケーブルが後方に引っ張られたときに、端子金具とフラットケーブルとの接続部位には応力が発生する。この応力が大きいと、接続部位がダメージを受けるおそれがある。
【0005】
そこで、本開示は、接続信頼性が低下するのを抑制することが可能なフラットケーブルと端子金具の接続構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、フラットケーブルと、前記フラットケーブルに接続される端子金具と、を備え、前記フラットケーブルは、前記フラットケーブルの前端部に位置する第1接続部と、前記第1接続部よりも後方に位置する第2接続部と、を有し、前記端子金具は、前記第1接続部に溶接される第1溶接部と、前記第1溶接部よりも後方に位置し、前記第2接続部に溶接される第2溶接部と、を有しているフラットケーブルと端子金具の接続構造である。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、接続信頼性が低下するのを抑制することが可能なフラットケーブルと端子金具の接続構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、本開示の実施形態において、フラットケーブルと端子金具の接続構造を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、フラットケーブルと端子金具の接続構造を示す側面図である。
【
図4】
図4は、フラットケーブルの複数の帯状部にそれぞれ端子金具が接続された状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のフラットケーブルと端子金具の接続構造は、
(1)フラットケーブルと、前記フラットケーブルに接続される端子金具と、を備え、前記フラットケーブルは、前記フラットケーブルの前端部に位置する第1接続部と、前記第1接続部よりも後方に位置する第2接続部と、を有し、前記端子金具は、前記第1接続部に溶接される第1溶接部と、前記第1溶接部よりも後方に位置し、前記第2接続部に溶接される第2溶接部と、を有している。
上記構成によれば、フラットケーブルが後方に引っ張られたときに、第2接続部と第2溶接部との接続部位に応力を発生させ、第1接続部と第1溶接部との接続部位に発生する応力を緩和することができる。よって、フラットケーブルに外力が作用しても、第1接続部と第1溶接部との接続を良好に維持することができ、接続信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0010】
(2)前記フラットケーブルは、前記第1接続部と前記第2接続部との間に屈曲部を有し、前記端子金具は、前記第1溶接部と前記第2溶接部との間に弾性変形可能な繋ぎ部を有していることが好ましい。
上記構成によれば、フラットケーブルが後方に引っ張られたときに、屈曲部が伸び方向に変形しつつ繋ぎ部が弾性変形するため、第1接続部と第1溶接部との接続部位に発生する応力をより良好に緩和することができる。
【0011】
(3)前記繋ぎ部は、前記第1溶接部および前記第2溶接部のそれぞれに対して第1境界部および第2境界部を介して繋がっており、前記第1境界部および前記第2境界部は、いずれも曲線状に形成されていると良い。
上記構成によれば、曲線状をなす第1境界部と第2境界部のそれぞれに応力を分散させることができるので、第1接続部と第2接続部との接続部位に発生する応力をより良好に緩和することができる。
【0012】
(4)前記第2溶接部が前記第2接続部の一方の面に溶接される場合に、前記フラットケーブルは、前記第2接続部の他方の面に重なる第2補強板を有していると良い。
上記構成によれば、第2接続部が第2補強板で補強されるので、第2接続部と第2溶接部との接続を強固なものにすることができる。フラットケーブルに外力が作用したときには、フラットケーブルが第2接続部と対応する部位で破断されるのを防止することができる。
【0013】
(5)前記第1溶接部が前記第1接続部の一方の面に溶接される場合に、前記フラットケーブルは、前記第1接続部の他方の面に重なる第1補強板を有していると良い。
上記構成によれば、第1接続部が第1補強板で補強されるので、第1接続部と第1溶接部との接続を強固なものにすることができる。第1接続部が第1補強板で補強されることにより、第1接続部と第1溶接部との電気的な接続信頼性をより向上させることができる。
【0014】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0015】
本実施形態は、フラットケーブル60と端子金具10とを備える。端子金具10は、フラットケーブル60に対して電気的および機械的に接続される。なお、以下の説明において、前後方向については、フラットケーブル60における端子金具10が接続される端部側を前側とし、その反対側を後側とする。
図2の右側が前側になる。幅方向は、左右方向と同義であり、
図3および
図4の左右方向に相当する。
【0016】
<フラットケーブル>
フラットケーブル60は、平型導体であって、本実施形態の場合、フレキシブルプリント基板(Flexible Printed Circuit;FPC)で構成される。フラットケーブル60は、図示はしないが、絶縁フィルムの両面または片面に形成された複数の導電路と、導電路を覆う保護フィルムと、を有している。
【0017】
フラットケーブル60は、
図4に示すように、幅広の本体61と、本体61の前端から前方に櫛歯状に突出する複数の幅狭の接続帯62と、を有している。各接続帯62は、それぞれ導電路を有し、互いに平行に並んで配置されている。接続帯62は、前後方向に延びる帯板状をなし、全長にわたって一定の幅および厚みを有している。
【0018】
フラットケーブル60の前部は、複数の端子金具10とともにコネクタハウジング50に収容される。また、フラットケーブル60は、コネクタハウジング50から後方に引き出される部分を有している。このフラットケーブル60は、本体61に形成された孔63にコネクタハウジング50に形成された突起51を嵌合させることにより、コネクタハウジング50に保持される。
【0019】
<端子金具>
端子金具10は、導電性の金属板材をプレス成形して形成される。この端子金具10は、
図1に示すように、雌型端子であって、前部に、角筒状の箱部11を有している。端子金具10の箱部11には、前方から図示しない雄型端子のタブが挿入されて接続される。
【0020】
端子金具10は、箱部11よりも後方に角筒状の基部12を有している。箱部11と基部12との間には、断面凹状の連結部13が設けられている。箱部11と基部12は、連結部13を介して連結されている。
【0021】
基部12は、
図3に示すように、底板14と、底板14の幅方向両端から立ち上がる一対の側板15と、一対の側板15の上端から幅方向内側に突出する一対の天板16と、を有している。両天板16の幅方向内側の端縁は、基部12の幅方向中央部において、前後方向に沿って突き合わされた状態で対向して配置されている。
【0022】
また、基部12は、
図1に示すように、前部に位置する第1溶接部17と、後部に位置する第2溶接部18と、第1溶接部17と第2溶接部18との間に位置する繋ぎ部19と、を有している。第1溶接部17と第2溶接部18は、一定の形状を維持する剛性を有している。繋ぎ部19は、前後方向と交差する方向に弾性変形可能である。
【0023】
第1溶接部17と第2溶接部18は、いずれも断面矩形状をなし、底板14、両側板15および両天板16を有している。第1溶接部17は、第2溶接部18よりも前後方向に長く形成され、本実施形態の場合、第2溶接部18の2倍以上の長さを有している。第1溶接部17における両側板15の下部と底板14のそれぞれの前端は連結部13に一体に連設されている。
【0024】
第1溶接部17と第2溶接部18は、
図2に示すように、両天板16の上面に、前後方向および幅方向に平坦な第1接合面21と第2接合面22をそれぞれ有している。
【0025】
第1溶接部17における両側板15と両天板16のそれぞれの後端は、上下方向に沿った第1端23を構成している。第2溶接部18における両側板15と両天板16のそれぞれの前端は、上下方向に沿った第2端24を構成している。第1端23と第2端24は、一定の間隔を置いて互いに平行に対向して配置されている。
【0026】
繋ぎ部19は、底板14を有するものの、両天板16を有さず、上方に開放されている。繋ぎ部19の両側板15の高さは、第1溶接部17と第2溶接部18における両側板15の高さの半分以下である。繋ぎ部19の両側板15の上端は、側面視において全体として曲線状に連なる形状になっている。具体的には、
図2に示すように、繋ぎ部19の両側板15の上端は、側面視において、前後方向に沿って直線状に延びる直線部25と、直線部25の前端から第1端23にかけて曲線状、詳細には円弧状に延びる第1境界部26と、直線部25の後端から第2端24にかけて曲線状、詳細には円弧状に延びる第2境界部27と、を有している。直線部25は、繋ぎ部19の前後方向中央部に配置されている。第1境界部26および第2境界部27は、側面視において互いに線対称の形状になっている。
【0027】
<接続構造>
フラットケーブル60の接続帯62は、
図2に示すように、第1接合面21に対面して半田付けされる第1接続部64と、第2接合面22に対面して半田付けされる第2接続部65と、を有している。本実施形態の場合、半田付けは、リフロー方式により行われる。第1接続部64は、接続帯62の前端部に配置されている。第2接続部65は、第1接続部64の後方に第1接続部64から離れて配置されている。
【0028】
接続帯62は、第1接続部64と第2接続部65との間に、上方に山型に屈曲する屈曲部66を有している。屈曲部66は、繋ぎ部19の上方に繋ぎ部19から離れて配置されている。第1接続部64、屈曲部66および第2接続部65は、フラットケーブル60の前端部において、接続帯62の前端から後方に向けて順次連続して形成されている。
【0029】
接続帯62における第1接続部64の両面のうち、第1接合面21に半田付けされる面とは反対側の面である上面には、第1接続部64より高剛性の第1補強板71が設置されている。同様に、接続帯62における第2接続部65の両面のうち、第2接合面22に半田付けされる面とは反対側の面である上面にも、第2接続部65より高剛性の第2補強板72が設置されている。
【0030】
第1補強板71と第2補強板72は、いずれも合成樹脂製であって前後方向に延びる帯板状をなし、第1接続部64と第2接続部65のそれぞれの上面に接着材等を介して貼り付けられている。
第1接続部64は、第1補強板71と第1溶接部17との間に挟まれて保持されている。第2接続部65は、第2補強板72と第2溶接部18との間に挟まれて保持されている。屈曲部66は、第1補強板71の後端と第2補強板72の前端との間に配置されている。
【0031】
第1補強板71は、前後方向に関して第1接続部64と対応する長さを有し、その全体が第1接続部64の全体に重なるように配置されている。第2補強板72は、前後方向に関して第2接続部65を超える長さを有し、前部が第2接続部65の全体に重なり、後部が第2接続部65よりも後方に突出して配置されている。
【0032】
<接続構造の作用>
第1溶接部17と第2溶接部18がフラットケーブル60の接続帯62に半田溶接された後、フラットケーブル60が後方に引っ張られ、フラットケーブル60に後方への外力F(
図2を参照)が作用することがある。このような外力Fがフラットケーブル60に作用すると、第2溶接部18の第2接合面22と第2接続部65との接続部分に応力が発生するが、第2溶接部18と第2接続部65との機械的な接続は維持される。第2接続部65が第2補強板72で補強されているため、第2溶接部18と第2接続部65との接続の安定性も確保される。
【0033】
また、フラットケーブル60が後方に引っ張られたときに、屈曲部66が伸びるように変形しつつ繋ぎ部19が弾性変形することにより、外力Fが第2溶接部18から第1溶接部17側に伝達されるのを抑制することができる。特に、繋ぎ部19の第1境界部26および第2境界部27がいずれも曲線状に形成されているので、繋ぎ部19で発生する応力が第1境界部26と第2境界部27のそれぞれに効率良く分散させられる。
【0034】
上記により、第1溶接部17の第1接合面21と第1接続部64との接続部分に発生する応力が緩和される。また、第1接続部64が第1補強板71で補強されているため、第1溶接部17の第1接合面21と第1接続部64との対面状態が良好に維持される。その結果、第1溶接部17と第1接続部64との電気的な接続も良好に維持されることになる。
【0035】
以上説明したように、本実施形態によれば、フラットケーブル60が後方に引っ張られたときに、第1接続部64と第1溶接部17との接続部位に発生する応力を緩和することができる。よって、フラットケーブル60に外力Fが作用しても、第1接続部64と第1溶接部17との接続を良好に維持することができ、接続信頼性が低下するのを抑制することができる。
【0036】
上記の場合に、屈曲部66が伸び方向に変形しつつ繋ぎ部19が弾性変形することにより、第1接続部64と第1溶接部17との接続部位に発生する応力をより良好に緩和することができる。
【0037】
また、繋ぎ部19において、第1境界部26と第2境界部27のそれぞれの曲線形状に沿って応力を分散させることができるので、第1接続部64と第2接続部65との接続部位に発生する応力をより良好に緩和することができる。
【0038】
さらに、第2接続部65が第2補強板72で補強されているので、第2接続部65と第2溶接部18との接続を強固なものにすることができる。フラットケーブル60に外力Fが作用したときには、フラットケーブル60が第2接続部65と対応する部位で破断されるのを防止することができる。
【0039】
さらにまた、第1接続部64が第1補強板71で補強されているので、第1接続部64と第1溶接部17との接続を強固なものにすることができる。その結果、第1接続部64と第1溶接部17との電気的な接続信頼性をより向上させることができる。
【0040】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態の場合、端子金具は雌型端子であったが、他の実施形態としては、端子金具は雄型端子であっても良い。
上記実施形態の場合、屈曲部は角張るように屈曲していたが、他の実施形態としては、屈曲部は弧状に湾曲するように屈曲していても良い。
上記実施形態の場合、屈曲部は繋ぎ部から離れる上向きに屈曲する形状であったが、他の実施形態としては、屈曲部は繋ぎ部に近づく下向きに屈曲する形状であっても良い。
上記実施形態の場合、端子金具はフラットケーブルに半田溶接により接続されていたが、他の実施形態としては、端子金具はフラットケーブルに超音波溶接や抵抗溶接により接続されていても良い。
上記実施形態の場合、端子金具は第1溶接部と第2溶接部との間に弾性変形可能な繋ぎ部を有していたが、他の実施形態としては、第2溶接部と第2接続部とが機械的に安定して接続される構造であれば、端子金具は第1溶接部と第2溶接部との間に弾性変形可能な繋ぎ部を有していなくても良い。
【符号の説明】
【0041】
10…端子金具
11…箱部
12…基部
13…連結部
14…底板
15…側板
16…天板
17…第1溶接部
18…第2溶接部
19…繋ぎ部
21…第1接合面
22…第2接合面
23…第1端
24…第2端
25…直線部
26…第1境界部
27…第2境界部
50…コネクタハウジング
51…突起
60…フラットケーブル
61…本体
62…接続帯
63…孔
64…第1接続部
65…第2接続部
66…屈曲部
71…第1補強板
72…第2補強板
F…外力