(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】センサの較正
(51)【国際特許分類】
A61B 5/346 20210101AFI20240801BHJP
A61B 5/352 20210101ALI20240801BHJP
A61B 5/332 20210101ALI20240801BHJP
【FI】
A61B5/346
A61B5/352
A61B5/332
(21)【出願番号】P 2022502135
(86)(22)【出願日】2020-07-31
(86)【国際出願番号】 EP2020071616
(87)【国際公開番号】W WO2021019064
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-05-15
(32)【優先日】2019-07-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】590000248
【氏名又は名称】コーニンクレッカ フィリップス エヌ ヴェ
【氏名又は名称原語表記】Koninklijke Philips N.V.
【住所又は居所原語表記】High Tech Campus 52, 5656 AG Eindhoven,Netherlands
(74)【代理人】
【識別番号】100122769
【氏名又は名称】笛田 秀仙
(74)【代理人】
【識別番号】100163809
【氏名又は名称】五十嵐 貴裕
(72)【発明者】
【氏名】ボノミ アルベルト ジョヴァンニ
(72)【発明者】
【氏名】フエイブレフツ ローレンシア ヨハンナ
【審査官】▲高▼木 尚哉
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-516454(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2009/0076340(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2018/0116513(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/05-5/0538
A61B 5/24-5/398
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェアラブルデバイスのセンサを、前記ウェアラブルデバイスを着用している被験者の基準座標系に較正するように配される装置において、
前記ウェアラブルデバイスは、互いに対して所定の配列にある3つ以上のECG電極から構成されるECG電極配列、及び前記被験者の動きを経時的に直接的又は間接的に測定するように配され、前記ECG電極配列に対して所定の向きにある測定軸を持つ前記センサを有し、
前記装置は、
前記ECG電極の夫々の対により得られるECG信号を受信する、
前記ECG電極の夫々の対により得られる前記ECG信号を処理して、前記被験者の基準座標系における前記ECG電極配列の向きを決定し、前記被験者の基準座標系は、前記被験者の心臓に関連する基準軸を含み、前記基準軸は、所定のECG信号特性に関連している、
前記被験者の基準座標系における前記ECG電極配列の前記決定された向きと、前記ECG電極配列に対する前記測定軸の所定の向きとを処理して、前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の関係を決定する、及び
前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の前記決定された関係に基づいて、前記センサを前記被験者の基準座標系に較正する
ように構成される処理ユニットを有する、装置。
【請求項2】
前記処理ユニットは、
前記ECG電極の対により得られるECG信号が前記所定のECG信号特性に関連している基準を満たしている、前記ECG電極配列におけるECG電極の対を特定する、及び
前記特定されたECG電極の対のECG電極により規定される第1の仮想軸と、前記基準軸と前記所定のECG信号特性との間の前記関係とに基づいて、前記被験者の基準座標系に対する前記ECG電極配列の向きを決定する
ことにより、前記ECG電極配列の向きを決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記処理ユニットは、
前記2つの隣接するECG電極の対により得られるECG信号が前記所定のECG信号特性に関連している基準を最も満たしている、前記ECG電極配列における2つの隣接するECG電極の対を特定する、
前記特定されたECG電極の対の一方のECG電極における前記ECG電極により規定される仮想軸と、前記特定されたECG電極の対の他方のECG電極における前記ECG電極により規定される仮想軸との間にある仮想軸として、第1の仮想軸を決定する、及び
前記第1の仮想軸と、前記基準軸と前記所定のECG信号特性との間の前記関係とに基づいて、前記被験者の基準座標系に対する前記ECG電極配列の向きを決定する
ことにより、前記ECG電極配列の向きを決定するように構成される、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記所定のECG信号特性は、QRS群であり、前記基準は、最小のQRS群を持つ、又は最大の電圧振幅と最小の電圧振幅とにおいて最小の差を持つECG信号により満たされる、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項5】
前記所定のECG信号特性は、Rピークであり、前記基準は、最大のRピークを持つ、又は最大の電圧振幅と最小の電圧振幅とにおいて最大の差を持つECG信号により満たされる、請求項2又は3に記載の装置。
【請求項6】
被験者の基準座標系における前記基準軸の向きは、前記被験者の1つ以上の生理学的特性及び/又は前記被験者に関する臨床情報に依存している、請求項2乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
前記処理ユニットは、前記ウェアラブルデバイスを着用する前記被験者の身体の一部の形状に基づいて、前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の前記関係を決定するようにさらに構成される、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記センサの測定軸と前記
被験者の基準座標系との間の前記決定された関係は、
(i)前記センサの基準座標系において前記センサにより得られる測定値を前記被験者の基準座標系に回転させる、及び/又は
(ii)前記被験者の基準座標系において定義される1つ以上のパラメータ又はルールを前記センサの基準座標系に回転させる
のに必要とされる回転である、請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
前記処理ユニットは、
前記センサから測定値を取得し、
前記取得した測定値に前記回転を適用して、前記取得した測定値を前記被験者の基準座標系に回転させ、並びに
前記回転した測定値を評価して、前記被験者の前記基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールを使用して、前記被験者の姿勢を決定する
ように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項10】
前記処理ユニットは、
前記センサから測定値を取得し、
前記被験者の基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールに前記回転を適用して、前記1つ以上のパラメータ及び/又はルールを前記センサの基準座標系に回転させ、並びに
前記取得した測定値を評価して、前記回転した1つ以上のパラメータ及び/又はルールを使用して、前記被験者の姿勢を決定する
ように構成される、請求項8に記載の装置。
【請求項11】
ウェアラブルデバイスのセンサを、ウェアラブルデバイスを着用している被験者の基準座標系に較正するように配されるシステムにおいて、前記システムは、
請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置、及び
前記ウェアラブルデバイス
を有し、前記ウェアラブルデバイスは、
互いに対して所定の配列にある3つ以上のECG電極から構成されるECG電極配列、及び
被験者の動きを経時的に直接的又は間接的に測定するように配され、前記ECG電極配列に対して所定の向きにある測定軸を持つ前記センサ
を有する、システム。
【請求項12】
ウェアラブルデバイスのセンサを、装置によって、前記ウェアラブルデバイスを着用している被験者の基準座標系に較正する方法において、
前記ウェアラブルデバイスは、
互いに対して所定の配列にある3つ以上のECG電極から構成されるECG電極配列、及び
被験者の動きを経時的に直接的又は間接的に測定するように配され、前記ECG電極配列に対して所定の向きにある測定軸を持つ前記センサ
を有し、前記方法は、前記装置が、
前記ECG電極の夫々の対により得られるECG信号を受信するステップ、
前記ECG電極の夫々の対により得られる前記ECG信号を処理して、前記被験者の基準座標系における前記ECG電極配列の向きを決定するステップであり、前記被験者の基準座標系は、前記被験者の心臓に関連する基準軸を含み、前記基準軸は、所定のECG信号特性に関連している、ステップ、
前記被験者の基準座標系における前記ECG電極配列の決定された向きと、前記ECG電極配列に対する前記測定軸の所定の向きとを処理して、前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の関係を決定するステップ、及び
前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の前記決定された関係に基づいて、前記センサを前記被験者の基準座標系に較正するステップ
を有する方法。
【請求項13】
前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の前記決定された関係は、前記センサの基準座標系における前記センサにより得られる測定値を、前記被験者の基準座標系に回転させるのに必要な回転であり、
前記方法は、前記装置が、
前記センサから測定値を取得するステップ、
前記取得した測定値に前記回転を適用して、前記取得した測定値を前記被験者の基準座標系に回転させるステップ、並びに
前記回転した測定値を評価して、前記被験者の基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールを使用して、前記被験者の姿勢を決定するステップ
をさらに有する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の前記決定された関係は、前記被験者の基準座標系において規定される1つ以上パラメータ又はルールを、前記センサの基準座標系に回転させるのに必要な回転であり、
前記方法は、前記装置が、
前記センサから測定値を取得するステップ、
前記被験者の基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールに前記回転を適用して、前記1つ以上のパラメータ及び/又はルールを前記センサの基準座標系に回転させるステップ、並びに
前記取得した測定値を評価して、前記回転した1つ以上のパラメータ及び/又はルールを使用して、前記被験者の姿勢を決定するステップ
をさらに有する、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラムにおいて、前記コンピュータ可読媒体は、その中に具現化されるコンピュータ可読コードを持ち、前記コンピュータ可読コードは、請求項1乃至11の何れか一項に記載の装置により実行されるとき、前記装置が請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法を行うように構成されている、コンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウェアラブルデバイスにあるセンサを較正するための装置、システム及びコンピュータ実施方法に関する。
【背景技術】
【0002】
1つ以上のセンサを含むウェアラブルデバイスは、家にいる又は入院中の患者のバイタルサイン、活動及び姿勢を測定するために使用されることができる。例えば、加速度計は、地球の重力場に対する加速度を測定することができる小型で安価なセンサである。そのようなものとして、加速度計は、動き及び向きを測定するために広く使用される。専用のアルゴリズムと組み合わせて使用されるとき、身体部分に置かれる加速度計は、例えばベッドに横たわっている、座っている、立っている、直立歩行しているような特定の活動を認識するために使用されることができる。身体の人体計測方向に対する加速度計の検知軸の向きに関する情報は、患者の姿勢を決定し、歩行のような特定の活動中の身体の向きを特徴付けるために必要である。例えば、加速度計により検知される重力ベクトルと、人体計測の軸との間の角度を測定し、患者が横になっている、直立している又はもたれかかっている(リクライニングしている)かを決定することができる。
【0003】
身体の姿勢(例えば、立っている、背臥位になっている、仰臥位になっている、横になっている)及び活動情報を決定することは、医療専門家(例えば、臨床医、看護師等)が、例えば、負傷或いは手術後の病院又は家での回復過程で患者の状態を評価するために関連する。身体の姿勢に関する情報には、幾つかの用途がある。例えば、バイタルサイン又は症状と、寝たきりの患者のリクライニングしている角度との間の相関関係は、心不全及び呼吸器疾患の重症度を評価するのに重要である。より多く仰臥位のままでいることができる患者は、通常、ベッドで上半身を起こす必要がある患者よりも危険に曝されにくい。さらに、床ずれのリスクを減らすために、患者の姿勢が正確に及び慎重に監視される必要がある。
【0004】
1つ以上のセンサを持つウェアラブルデバイスは、通常、患者の身体上の単一の場所に位置決められる。例えば、心電図(ECG)測定値及び身体加速度測定値を収集することを目的としたウェアラブルデバイスは、胸部領域上の心臓に近い身体の指定された場所に位置決められる。しかしながら、ウェアラブルデバイスを患者の身体に取り付けるための手続きは、標準化することが難しく、例えば身体の形状及び皮膚の状態が不均一であるならば、患者にとってどの場所が最善であるかを決定することは、医療専門家(又は家庭環境では患者自身)の裁量に委ねられる。これは、ウェアラブルデバイスの向きがしばしば恣意的であり、患者及び操作者に依存して変わり易いことを意味する。さらに、ウェアラブルセンサの利用中の患者の姿勢も、ウェアラブルデバイスでは不明である。これは、センサからの測定値(例えば、加速度計からの加速度測定値)が正確に分析又は解釈されるために、患者の座標系に対する又は世界(例えば、地球)の座標系に対するセンサ/ウェアラブルデバイスの向きを決定することが必要であることを意味する。
【0005】
被験者上のウェアラブルデバイスの向きを決定するための方法は存在する。例えば、WO2017/191036は、ウェアラブルデバイスのセンサから取得される生理学的特性信号の特性が、被験者上にあるウェアラブルデバイスの位置及び/又は向きに依存して異なること、従って、被験者上にあるウェアラブルデバイスの向きは、生理学的特性信号の1つ以上の特性に基づいて決定され得ることを開示している。生理学的特性信号の1つ以上の特性は、被験者上にあるウェアラブルデバイスの向きを決定するために、対応する向きと共に記憶装置に記憶される一連の組と比較される。しかしながら、実際に起こり得る、患者上のセンサ/ウェアラブルデバイスの向きは無限であり、従って、センサを較正するために、患者上のウェアラブルデバイス/センサの向きを決定する改善される方法が有用である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述したように、既存の技術による制限は、所定数の向きの間で明確に区別することだけが可能であり、従って、センサが置かれる向きを考慮せずにセンサを較正することができないことである。従って、これらの制限に対処することを目的とした改善を持つことが有用である。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明、独立請求項によって定義される。従属請求項は、有利な実施形態を定義する。
【0008】
第1の態様によれば、ウェアラブルデバイスを着用している被験者の基準座標系に、ウェアラブルデバイスのセンサを較正するための装置が提供され、前記ウェアラブルデバイスは、互いに対し所定の配列である3つ以上のECG電極を有する心電図(以下、ECG)電極配列、及び前記被験者の経時的な動きを直接的又は間接的に測定するように配され、前記ECG電極配列に対して所定の向きの測定軸を持つ前記センサを有する。前記装置は、ECG電極の夫々の対により取得されるECG信号を処理して、被験者の基準座標系におけるECG電極配列の向きを決定し、ここで前記被験者の基準座標系は前記被験者の心臓に関連する基準軸を含み、前記基準軸は、所定のECG信号特性に関連している、前記被験者の基準座標系におけるECG電極配列の前記決定された向き及び前記ECG電極配列に対する測定軸の所定の向きを処理して、センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の関係を決定する、並びに前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の前記決定された関係に基づいて、前記センサを前記被験者の基準座標系に較正するように構成される処理ユニットを有する。従って、前記装置は、ECG信号に基づいて、ウェアラブルデバイスの向きが決定され、その決定された向きに基づいて、センサが較正される、改善される技術を実施する。
【0009】
幾つかの実施形態において、処理ユニットは、ECG電極の対により得られるECG信号が、所定のECG信号特性に関連している基準を満たしている、ECG電極配列におけるECG電極の対を特定し、この特定されたECG電極の対における、これらECG電極により規定される第1の仮想軸と、前記基準軸と前記所定のECG信号特性との間にある関係とに基づいて、前記被験者の基準座標系に対するECG電極配列の向きを決定することとにより、前記ECG電極配列の向きを決定するように構成される。従って、ECG電極配列の向きは、基準軸と、対応する心臓のECG信号特性とを利用することにより決定され、心臓は、異なる被験者で比較的類似した向きを持つので、心臓からのECG信号は、このECG電極配列の向きを決定するための一貫した基準として使用されることができる。
【0010】
代替の実施形態において、処理ユニットは、2つの隣接するECG電極の対により得られるECG信号が、前記所定のECG信号特性に関連している基準を最も満たしている、前記ECG電極配列における2つの隣接するECG電極の対を特定し、この特定されたECG電極の対の一方における、前記ECG電極により規定される仮想軸と、前記特定されたECG電極の対の他方における、前記ECG電極により規定される仮想軸との間にある仮想軸として、第1の仮想軸を決定し、及び前記第1の仮想軸と、前記基準軸と前記所定のECG信号特性との間の関係とに基づいて、前記被験者の基準座標系に対するECG電極配列の向きを決定することにより、前記ECG電極配列の向きを決定するように構成される。これらの実施形態は、以前の実施形態と同様の利点を持ち、前記基準を最も満たしている2つのECG電極の対の間を補間することにより、ECG電極配列の向きが、より正確に決定されるという利点も持つ。
【0011】
実施形態の何れの組においても、所定のECG信号特性は、QRS群とすることができ、前記基準は、最小のQRS群を持つ、又は最大の電圧振幅及び最小の電圧振幅において最小の差を持つECG信号により満たされることができる。
【0012】
これらの実施形態において、前記基準軸は、被験者の心臓のQRS軸とすることができ、前記第1の仮想軸は、前記QRS軸に垂直又は略垂直であると考えることができる。
【0013】
代替の実施形態において、前記所定のECG信号特性は、Rピークとすることができ、前記基準は、最大のRピークを持つ、又は最大の電圧振幅及び最小の電圧振幅において最大の差を持つECG信号により満たされることができる。
【0014】
これらの実施形態において、前記基準軸は、被験者の心臓のQRS軸とすることができ、前記第1の仮想軸は、前記QRS軸に平行であると考えることができる。
【0015】
前記所定のECG信号特性がQRS群である又はRピークである実施形態の何れにおいても、処理ユニットは、QRS軸の方向を推定し、被験者の左側及び右側に対する前記ECG電極配列の向きを決定するために、前記特定されたECG電極の対により得られるECG信号の極性を決定するようにさらに構成される。これらの実施形態は、ECG信号のみに基づいて、被験者の左側及び右側に対する前記ECG電極配列の向きを決定することが可能であるという利点を持つ。
【0016】
これらの実施形態において、処理ユニットは、被験者の左側及び右側に対する前記ECG電極配列の決定された向きに基づいて、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定するようにさらに構成される。
【0017】
幾つかの実施形態において、被験者の基準座標系における基準軸の向きは、この被験者の1つ以上の生理学的特性及び/又は被験者の臨床情報に依存している。これらの実施形態は、被験者の基準軸の向きが、例えば、心臓が、被験者の体内において異常な角度又は非定型な角度にある場合、被験者の特定の生理機能に基づいて調整されることを提供する。
【0018】
幾つかの実施形態において、処理ユニットは、ウェアラブルデバイスを着用している被験者の身体の一部の形状に基づいて、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定するようにさらに構成される。これらの実施形態は、異なる被験者の様々な身体形状を考慮する、及び/又はウェアラブルデバイスを着用している被験者の身体の部分に依存して、特定のユーザに対し生じるウェアラブルデバイスの異なる向きを考慮することにより、センサがより正確に較正されることができるという利点を持つ。
【0019】
幾つかの実施形態において、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間において決定される関係は、(i)センサの基準座標系における前記センサにより得される測定値を、被験者の基準座標系に回転させる、及び/又は(ii)被験者の基準座標系において規定された1つ以上のパラメータ又はルールをセンサの基準座標系に回転させるのに必要な回転である。
【0020】
これらの実施形態において、処理ユニットは、センサから測定値を取得し、前記取得した測定値に回転を適用して、前記取得した測定値を被験者の基準座標系に回転させ、並びに、前記回転した測定値を評価して、前記被験者の基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールを用いて被験者の姿勢を決定するように構成されることができる。
【0021】
代替の実施形態において、処理ユニットは、センサから測定値を取得し、被験者の基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールに前記回転を適用して、前記1つ以上のパラメータ及び/又はルールをセンサの基準座標系に回転させ、並びに前記取得した測定値を評価して、前記回転した1つ以上のパラメータ及び/又はルールを用いて被験者の姿勢を決定するするように構成される。
【0022】
幾つかの実施形態において、センサは加速度計である。
【0023】
第2の態様によれば、ウェアラブルデバイスを着用している被験者の基準座標系にウェアラブルデバイスのセンサを較正するためのシステムが提供される。このシステムは、第1の態様又はその何れかの実施形態による装置と、互いに対して所定の配列である3つ以上のECG電極を有するECG電極配列、及び被験者の経時的な動きを直接的又は間接的に測定するように配され、前記ECG電極配列に対して所定の向きに測定軸を持つセンサを有するウェアラブルデバイスとを有する。
【0024】
幾つかの実施形態において、前記装置は、ウェアラブルデバイスの一部である。代替の実施形態において、前記装置は、ウェアラブルデバイスから分離している。
【0025】
第3の態様によれば、ウェアラブルデバイスのセンサを、前記ウェアラブルデバイスを着用している被験者の基準座標系に較正する方法が提供され、このウェアラブルデバイスは、互いに対し所定の配列にある3つ以上のECG電極を有する心電図(ECG)電極配列、及び被験者の経時的な動きを直接的又は間接的に測定するように配され、前記ECG電極配列に対して所定の向きにある測定軸を持つセンサを有する。前記方法は、ECG電極の夫々の対により得られるECG信号を処理し、前記被験者の基準座標系における前記ECG電極配列の向きを決定するステップであって、前記被験者の基準座標系は、前記被験者の心臓に関連する基準軸を含み、前記基準軸は、所定のECG信号特性に関連している、ステップ、前記被験者の基準座標系における前記決定されるECG電極配列の向き及び前記ECG電極配列に対する測定軸の所定の向きを処理して、前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の関係を決定するステップ、並びに前記センサの測定軸と前記被験者の基準座標系との間の前記決定された関係に基づいて、前記センサを被験者の基準座標系に較正するステップを有する。従って、前記方法は、ECG信号に基づいてウェアラブルデバイスの向きが決定され、その決定された向きに基づいてセンサが較正される、改善された技術を提供する。
【0026】
幾つかの実施形態において、被験者の基準座標系は、この被験者の心臓に関連する基準軸を含み、この基準軸は、所定のECG信号特性に関連し、ECG電極配列の向きを決定する前記ステップは、ECG電極の対により得られるECG信号が所定のECG信号特性に関連する基準を満たしている、前記ECG電極配列におけるECG電極の対を特定するステップ、前記特定されたECG電極の対のECG電極により規定される第1の仮想軸と、前記基準軸と前記所定のECG信号特性との間の前記関係とに基づいて、被験者の基準座標系に対する前記ECG電極配列の向きを決定するステップを有する。従って、このECG電極配列の向きは、基準軸と対応する心臓のECG信号特性とを利用することにより決定され、心臓は、異なる被験者で比較的類似した向きを持つので、心臓からのECG信号は、このECG電極配列の向きを決定するための一貫した基準として使用されることができる。
【0027】
代替の実施形態において、被験者の基準座標系は、被験者の心臓に関連する基準軸を含み、この基準軸は、所定のECG信号特性に関連し、ECG電極配列の向きを決定する前記ステップは、2つの隣接するECG電極の対により得られるECG信号が、前記所定のECG信号特性に関連する基準を最も満たしている、前記ECG電極配列における2つの隣接するECG電極の対を特定するステップ、前記特定されたECG電極の対の一方のECG電極における、前記ECG電極により規定される仮想軸と、前記特定されたECG電極の対の他方のECG電極における、前記ECG電極により規定される仮想軸との間の仮想軸として、第1の仮想軸を決定するステップ、及び前記第1の仮想軸と、前記基準軸と前記所定のECG信号特性との間の前記関係とに基づいて、前記被験者の基準座標系に対する、前記ECG電極配列の向きを決定するステップを有する。これらの実施形態は、以前の実施形態と同様の利点を持ち、前記基準を最も満たしている2つのECG電極の対の間を補間することにより、ECG電極配列の向きが、より正確に決定されるという利点も持つ。
【0028】
実施形態の何れの組においても、所定のECG信号特性は、QRS群とすることができ、前記基準は、最小のQRS群を持つ、又は最大の電圧振幅及び最小の電圧振幅において最小の差を持つECG信号により満たされることができる。
【0029】
これらの実施形態において、前記基準軸は、被験者の心臓のQRS軸とすることができ、前記第1の仮想軸は、前記QRS軸に垂直又は略垂直であると考えることができる。
【0030】
代替の実施形態において、前記所定のECG信号特性は、Rピークとすることができ、前記基準は、最大のRピークを持つ、又は最大の電圧振幅及び最小の電圧振幅において最大の差を持つECG信号により満たされることができる。
【0031】
これらの実施形態において、前記基準軸は、被験者の心臓のQRS軸とすることができ、前記第1の仮想軸は、前記QRS軸に平行であると考えることができる。
【0032】
前記所定のECG信号特性がQRS群である又はRピークである実施形態の何れにおいても、前記方法は、QRS軸の方向を推定し、被験者の左側及び右側に対する前記ECG電極配列の向きを決定するために、前記特定されたECG電極の対により得られるECG信号の極性を決定するステップをさらに有する。これらの実施形態は、ECG信号のみに基づいて、被験者の左側及び右側に対する前記ECG電極配列の向きを決定することが可能であるという利点を持つ。
【0033】
これらの実施形態において、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定する前記ステップは、被験者の左側及び右側に対する前記ECG電極配列の決定された向きに基づいて、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間の前記関係を決定するステップを有する。
【0034】
幾つかの実施形態において、被験者の基準座標系における基準軸の向きは、この被験者の1つ以上の生理学的特性及び/又は被験者の臨床情報に依存している。これらの実施形態は、被験者の基準軸の向きが、例えば、心臓が、被験者の体内において異常な角度又は非定型な角度にある場合、被験者の特定の生理機能に基づいて調整されることを提供する。
【0035】
幾つかの実施形態において、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定する前記ステップは、ウェアラブルデバイスを着用している被験者の身体の一部の形状に基づいて、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間の前記関係を決定するステップを有する。これらの実施形態は、異なる被験者の様々な身体形状を考慮する、及び/又はウェアラブルデバイスを着用している被験者の身体の一部に依存して、特定のユーザに対し生じるウェアラブルデバイスの異なる向きを考慮することにより、センサがより正確に較正されることができるという利点を持つ。
【0036】
幾つかの実施形態において、センサの測定軸と被験者の基準座標系との間において決定される関係は、(i)センサの基準座標系における、前記センサにより得られる測定値を被験者の基準座標系に回転させる、及び/又は(ii)被験者の基準座標系において規定された1つ以上のパラメータ又はルールをセンサの基準座標系に回転させる、ために必要な回転である。
【0037】
これらの実施形態において、前記方法は、センサから測定値を取得するステップ、前記取得した測定値に回転を適用して、前記取得した測定値を被験者の基準座標系に回転させるステップ、並びに、前記回転した測定値を評価して、被験者の基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールを用いて被験者の姿勢を決定するステップをさらに有する。
【0038】
代替の実施形態において、前記方法は、センサから測定値を取得するステップ、被験者の基準座標系に対して規定される1つ以上のパラメータ及び/又はルールに前記回転を適用して、前記1つ以上のパラメータ及び/又はルールをセンサの基準座標系に回転させるステップ、並びに前記取得した測定値を評価して、前記回転した1つ以上のパラメータ及び/又はルールを用いて被験者の姿勢を決定するステップをさらに有する。
【0039】
幾つかの実施形態において、センサは加速度計である。
【0040】
第4の態様によれば、コンピュータ可読媒体を有するコンピュータプログラム製品を提供する。前記コンピュータ可読媒体は、その中において具現化されるコンピュータ可読コードを持つ。このコンピュータ可読コードは、適切なコンピュータ又は処理器によって実行されると、このコンピュータ又は処理器が上述した方法を行うように構成される。
【0041】
これら及び他の態様は、以下に記載される実施形態から明らかであり、これら実施形態を参照して説明される。
【図面の簡単な説明】
【0042】
例示的な実施形態は、単なるとして、以下の図面を参照して説明される。
【
図1】
図1は、例示的な実施形態による、装置及びウェアラブルデバイスを有するシステムを示すブロック図である。
【
図2】
図2は、ECG電極の3つの例示的な配列を示す。
【
図3】
図3は、一実施形態による方法を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、第1の向きにある、被験者の身体上の
図2(c)のECG電極配列と、ECG電極配列により得られる対応するECG信号とを示す図である。
【
図5】
図5は、第2の向きにある、被験者の身体上の
図2(c)のECG電極配列と、ECG電極配列により得られる対応するECG信号とを示す図である。
【
図6】
図6は、本明細書に記載される技術による一般的な方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
上述したように、本明細書において、ウェアラブルデバイスの一部であるセンサを較正するための改善される技術が提供される。簡潔に言うと、この改善される技術は、ウェアラブルデバイス上にある複数のECG電極により、被験者(例えば、患者)の心電図(ECG)測定を使用して、この被験者の上にあるECG電極の向き(従って、ウェアラブルデバイスの向き)を決定し、この決定されたECG電極の向きと、このECG電極に対する前記センサの所定の向きとから、前記センサの向きと、被験者の向きとの間の関係を決定する。
【0044】
図1は、本明細書が教えていることの例示的な実施形態によるシステム2を示す。本実施形態において、システム2は、被験者により携帯又は着用されるものであり、被験者(例えば、被験者の加速度を含む被験者の動き)及び/又は被験者の周囲の環境側面(例えば、空気圧)を経時的に測定するためのセンサ6含むウェアラブルデバイス4を有する。センサ6は、少なくとも1つの測定軸(例えば、加速度計等の場合、x軸、y軸及び/又はz軸)に対する測定値を提供する。
【0045】
ウェアラブルデバイス4は、被験者のECG信号を得るための複数のECG電極9(及び特に少なくとも3つのECG電極9)から構成されるECG電極配列8も含む。
図1において、夫々9a、9b、9c、...とラベル付けした3つのECG電極9が示される。ECG電極9は、互いに対して所定の(すなわち、固定された)配列であり、ECG電極9がウェアラブルデバイス4に対して所定の向きを持つように、ウェアラブルデバイス4内又はウェアラブルデバイス4上に固定される。ECG電極9は、被験者から複数のECG信号を得ることを可能にし、(対のECG電極9を相互接続している仮想軸により規定される)各"ECGリード"は、ウェアラブルデバイス4に対して夫々の向きを持ち、故に、ウェアラブルデバイス4が被験者により携帯又は着用されているとき、この被験者に対して夫々の向きを持つ。幾つかの例示的なECG電極配列8は、
図2を参照して以下に説明される。
【0046】
センサ6は、ウェアラブルデバイス4内又はこのデバイス上に固定され、これは、センサ6の向き(及び特にセンサ6の測定軸の向き)が、ウェアラブルデバイス4に対して固定され、ECG電極配列8に対して固定されることを意味する。ECG電極配列8の向きに対するセンサ6の向きは既知である。
【0047】
センサ6は、被験者又は環境の経時的な測定値を表す夫々の信号を生成及び出力する。各々の測定信号は、時系列の測定値(サンプル)を有し、従って、これら測定信号は、ある期間における測定値に関連付けることができる。センサ6は、何れかの所望のサンプリング周波数、例えば、毎秒50回の測定値(50Hz)、64Hz又は100Hzを使用することができる。異なるセンサは、異なるサンプリングレートで実行されてもよい。例えば、別のセンサが、2Hz、4Hz、0.4Hz又は1Hzでサンプリングされてもよい。
【0048】
本システムにおけるセンサ6は、被験者の動きを経時的に直接的又は間接的に測定することができるセンサである。例えば、センサ6は、加速度計、空気圧センサ、磁力計又はジャイロスコープの何れかとすることができる。好ましい実施形態において、センサ6は加速度計である。センサ6からの測定信号は、被験者の姿勢を決定する、被験者の動きを特定及び/又は評価するために分析されることができる。
【0049】
センサ6が加速度計である場合、この加速度計は、複数の瞬間における被験者の動きを表す複数の加速度測定サンプルを含む測定信号を生成及び出力することができる。加速度計は、典型的には、3次元の加速度を測定する加速度計であり、この加速度計により生成される測定信号は、これら3次元の各々における加速度を表す夫々の測定値を含む。例えば、加速度計の出力は、3つの測定軸、例えば直交座標系のx軸、y軸及びz軸の1つ以上についての夫々の測定信号を含む。
【0050】
センサ6がジャイロスコープである場合、このジャイロスコープは、複数の瞬間におけるウェアラブルデバイスの回転運動及び/又は向きを表す複数のジャイロスコープ測定サンプルを含む測定信号を生成及び出力することができる。
【0051】
センサ6が空気圧センサである場合、この空気圧センサは、空気圧又は空気圧の変化を測定するための如何なる種類のセンサを含むことができる。この空気圧センサは、空気圧センサにおける空気圧又は空気圧の変化の測定値を表す測定信号を生成及び出力することができる。この測定信号は、時系列の空気圧測定値(サンプル)を有し、従って、これら測定信号は、ある期間における空気圧又は空気圧の変化に関連付けることができる。空気圧センサは、何れかの所望のサンプリング周波数、例えば、1Hz又は50Hzを使用することができる。他の実施形態において、マイクロフォンが使用されてもよい。通例、マイクロフォンは、16kHz以上の周波数でサンプリングされる。
【0052】
図1に戻ると、システム2は、ECG信号を受信し、これらECG信号を分析して、センサ6による測定値が被験者の基準座標系に較正されることを可能にする装置10も有する。幾つかの実施形態において、装置10は、センサ6から測定信号も受信し、前記決定された較正を使用して、例えば、被験者の動き又は身体活動を分析する、被験者の姿勢を決定する、被験者の動きを特定及び/又は評価することができる。
【0053】
ウェアラブルデバイス4は、被験者がウェアラブルデバイス4を携帯又は着用することを可能にするのに適切であり、被験者からECG信号を得ることができる何れかの形態とすることができる。特に、ウェアラブルデバイス4は、胴体又は胸部(例えば、心臓の近く)、或いは首に着用又は携帯することができる。例えば、ウェアラブルデバイス4は、ペンダント、ネックレス、接着パッチ、胸部バンドの形態でもよいし、衣料品等に一体化されてもよい。幾つかの実施形態において、
図1に示されるように、装置10は、ウェアラブルデバイス4から分離することができる。これらの実施形態において、装置10は、ウェアラブルデバイス4と通信することできる、又は別の方法で、ウェアラブルデバイス4からECG信号、及び任意で、測定信号を直接的又は間接的に受信する如何なる種類の電子装置又はコンピューティング装置とすることができる。例えば、装置10は、コンピュータ、ラップトップ、タブレット、スマートフォン、スマートウォッチ等とする又はそれらの一部とすることができ、従って、被験者の自宅又はケア環境にある或いは使用される装置とすることができる。他の実施態様において、装置10は、被験者から離れている、及び被験者の自宅又はケア環境から離れている装置でもよい。例えば、装置10は、サーバ、例えば、("クラウド内"とも呼ばれる)データセンター内のサーバでもよい。代替の実施形態において、装置10(特に、本明細書に記載の装置10の機能)は、ウェアラブルデバイス4と一体化することができる。従って、装置10は、ウェアラブルデバイス4の一部として被験者により携帯又は着用されることもできる。
【0054】
装置10は、この装置10の動作を制御し、本明細書に記載の方法を実施又は実行するように構成される処理ユニット12を含む。特に、処理ユニット12は、ECG信号を取得し、これらECG信号を処理して、センサ6の測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定することができる。処理ユニット12は、本明細書に記載される様々な機能を実行するために、ソフトウェア及び/又はハードウェアを用いて、多数の方法で実装されることができる。処理ユニット12は、必要な機能を行うため、及び/又は処理ユニット12の構成要素を制御して、必要な機能を行うために、ソフトウェア又はコンピュータプログラムコードを用いてプログラムされる、1つ以上のマイクロプロセッサ又はデジタル信号プロセッサ(DSP)を有する。処理ユニット12は、幾つかの機能を行うための専用ハードウェア(例えば、増幅器、前置増幅器、アナログ・デジタル変換器(ADC)及び/又はデジタル・アナログ変換器(DAC))と、他の機能を行うための処理器(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサ、制御器、DSP及び関連する回路)との組合せとして実装される。本開示の様々な実施形態において用いられる構成要素の例は、これらに限定されないが、従来のマイクロプロセッサ、DSP、特定用途向け集積回路(ASIC)及びFPGA(field programmable gate array)を含む。
【0055】
処理ユニット12は、装置10の動作を制御するとき、及び/又は本明細書に記載される方法を実施又は行うとき、処理ユニット12が使用するためのデータ、情報及び/又は(ECG信号を含む)信号を記憶することができるメモリユニット14に接続される。例えば、メモリユニット14は、ECG電極9の互いに対する所定の配列に関する情報、及び/又はECG電極配列8の向きに対するセンサ6の向きに関する情報(例えば、センサ6の測定軸とECG電極配列8のECG電極9により形成されるECGリードの向きとの間の、2次元(2D)又は3Dの空間における角度に関する情報)を記憶することができる。幾つかの実装形態において、メモリユニット14は、処理ユニット12が本明細書に記載される方法を含む1つ以上の機能を行うように、処理ユニット12により実施され得るコンピュータ可読コードを記憶している。特定の実施態様において、プログラムコードは、スマートウォッチ、スマートフォン、タブレット、ラップトップ又はコンピュータ用のアプリケーションの形成とすることができる。メモリユニット14は、揮発性及び不揮発性のコンピュータメモリを含む、例えばキャッシュ又はシステムメモリのような如何なる種類の非一時的な機械可読な媒体、例えばメモリチップの形態で実装される、RAM、SRAM(static RAM)、DRAM(dynamic RAM)、ROM、PROM(programmable ROM)、EPROM(erasable PROM)及びEEPROM(electrically erasable PROM)、光ディスク(例えばCD、DVD又はBlu-Rayディスク)、ハードディスク、テープストレージソリューション、又はメモリスティック、ソリッドステートドライブ(SSD)、メモリーカード等を含むソリッドステートデバイスを有する。
【0056】
図1に示されるシステム2の実施形態において、装置10は、センサ6及びECG電極配列8を含むウェアラブルデバイス4とは分離しているため、装置10は、ウェアラブルデバイス4、並びに任意で、サーバ、データベース、ユーザデバイス及び他のセンサの何れか1つ又はそれ以上を含む他のデバイスとのデータ接続及び/又はデータ交換を可能にするためのインターフェース回路16も含む。この接続は、直接的又は(例えば、インターネットを介して)間接的でもよく、従って、インターフェース回路16は、何れかの所望する有線又は無線通信プロトコルを介して、装置10と例えばインターネットのようなネットワークとの間、又は装置10とウェアラブルデバイス4との間の接続を可能にすることができる。例えば、インターフェース回路16は、WiFi、Bluetooth(登録商標)、Zigbee(登録商標)又は(これらに限定されないが、GSM(登録商標)通信、UMTS(Universal Mobile Telecommunications System)、LTE(Long Term Evolution)、LTELTE-Advanced(登録商標)等を含む)何れかのセルラー通信プロトコルを用いて動作することができる。無線接続の場合、インターフェース回路16(従って、装置10)は、伝送媒体(例えば、空気)を介して送信/受信するための1つ以上の適切なアンテナを含む。その代わりに、無線接続の場合、インターフェース回路16は、このインターフェース回路16が、伝送媒体(例えば、空気)を介して送信/受信するために、装置10の外部にある1つ以上の適切なアンテナに接続されることを可能にするための手段(例えば、コネクタ又はプラグ)を含んでもよい。インターフェース回路16は、処理ユニット12に接続され、インターフェース回路16により受信される情報又はデータが処理ユニット12に供給される、及び/又は処理ユニット12からの情報又はデータがインターフェース回路16により送信されることを可能にする。
【0057】
インターフェース回路16は、ECG電極配列8からECG信号を、及び任意で、センサ6により生成される測定値/測定信号も受信するために使用される。
【0058】
幾つかの実施形態において、インターフェース回路16は、処理ユニット12による処理の結果、例えば、センサ6の測定軸と被験者の基準座標系との間の前記決定された関係の表示を出力するために使用することができる。
【0059】
幾つかの実施形態において、装置10は、この装置10のユーザ(例えば、被験者又は被験者の介護提供者)が、(例えば、本明細書に記載される技術に従って、センサ6を被験者の基準座標系に較正する技術を開始する又は可能にするために)情報、データ及び/又は命令を装置10に入力することを可能にする、及び/又は装置10が、情報又はデータを被験者又は装置10の他のユーザに出力することを可能にする、1つ以上の構成要素を含むユーザインターフェース18を有する。ユーザインターフェース18は、これらに限定されないが、キーボード、キーパッド、1つ以上のボタン、スイッチ又はダイヤル、マウス、トラックパッド、タッチスクリーン、スタイラス、カメラ、マイクロフォン等を含む何れかの適切な入力構成要素を有し、ユーザインターフェース18は、これらに限定されないが、ディスプレイスクリーン、1つ以上のライト又は光学要素、1つ以上のスピーカ、振動要素等を含む何れかの適切な出力構成要素を有することができる。
【0060】
装置10の実際的な実施は、
図1に示される構成要素に対し追加の構成要素を含むことが理解される。例えば、装置10は、バッテリのような電源、又は装置10が主電源に接続されるのを可能にするための構成要素を含むこともできる。
【0061】
上述したように、センサ6及びECG電極配列8は、ウェアラブルデバイス4の一部であり、ウェアラブルデバイス4は、
図1に示される実施形態において、装置10から分離されている。ウェアラブルデバイス4から装置10にECG信号を伝えるために、ウェアラブルデバイス4は、インターフェース回路20を有する。このインターフェース回路20は、装置10のインターフェース回路16と同じように実装されることができる。
【0062】
幾つかの実施形態において、ウェアラブルデバイス4は、このウェアラブルデバイス4の動作を制御するための処理ユニット22を含むこともできる。この処理ユニット22は、センサ6からのECG信号及び/又は測定信号を装置10に伝える前に、これらECG信号及び/又は測定信号に何らかの前処理を行うために使用されることもでき、例えば、ECG信号及び/又は測定信号は、ノイズ成分又はアーチファクトを低減又は除去するためにフィルタリングされることができる。処理ユニット22は、装置10の処理ユニット12と同じように実装されることができる。
【0063】
ウェアラブルデバイス4の実際的な実施は、
図1に示される構成要素に対し追加の構成要素を含むことが理解される。例えば、ウェアラブルデバイス4は、ウェアラブルデバイス4がポータブルであるように、電源、好ましくはバッテリ、又はウェアラブルデバイス4が主電源に接続されるのを可能にするための構成要素を含むこともできる。
【0064】
装置10がウェアラブルデバイス4の一部であるシステム2の代替の実施形態において、1つの処理ユニット12/22だけがあり、測定値/信号を処理ユニット12に伝えるためのインターフェース回路は必要ないことが分かる。
【0065】
上述したように、ECG電極9は、被験者から複数のECG信号を得ることを可能にするために、互いに対して所定の(すなわち、固定された)配列である。ECG電極配列8のECG電極9は、対称的又は非対称的に配されてよい。ECG電極配列8は、"共通の"又は"基準の"ECG電極9として働き、ECG電極9の他のECG電極と共に、順番に複数のECG信号を得るために使用される1つ以上のECG電極9を持ってもよいし、又はECG電極配列8の各ECG電極9が、夫々の対のECG電極9の一部でもよい。本明細書に記載されるECG電極配列8は、複数の短いリードのECG電極配列としても知られる。3つの例示的なECG電極配列8が
図2(a)、
図2(b)及び
図2(c)に示される。
【0066】
図2(a)に示されるECG電極配列8は、9a、9b、9c及び9dとラベル付けした4つのECG電極9を有する。このECG電極配列8において、ECG電極9cは、ECG電極9a、9b及び9dの各々と連動して共通/基準のECG電極として使用される。従って、第1のECG信号は、電極の対9c及び9aにより形成される第1のECGリードを使用して得られ、第2のECG信号は、電極の対9c及び9bにより形成される第2のECGリードを使用して得られ、第3のECG信号は、電極の対9c及び9dにより形成される第3のECGリードを使用して得られる。ECG電極9a~dの互いに対する配列は、第1のECGリード及び第3のECGリードは互いに概ね一列に並んでいるが、第2のECGリードは、第1のECGリード及び第3のECGリードに対し概ね垂直に向けられている。
【0067】
図2(b)に示されるECG電極配列8は、9a~fとラベル付けした6つのECG電極9を有する。このECG電極配列8において、ECG電極9は、概ね円形に配され、各ECG電極9は、この配列において正反対にあるECG電極9と対になっている。従って、第1のECG信号は、電極の対9a及び9dにより形成される第1のECGリードを使用して得られ、第2のECG信号は、電極の対9b及び9eにより形成される第2のECGリードを使用して得られ、第3のECG信号は、電極の対9c及び9fにより形成される第3のECGリードを使用して得られる。ECG電極9は、概ね均等に離間されているので、ECG電極のこの配列は、各ECGリードの向きが、隣接するECGリードと約60°異なることを意味する。
【0068】
図2(c)に示されるECG電極配列8は、9a~fとラベル付けした6つのECG電極9を有する。このECG電極配列8において、ECG電極9fは、ECG電極9a~eの各々と連動して共通/基準のECG電極として使用され、これらECG電極a~eは、この共通/基準のECG電極9fの周りに放射状に配される。従って、第1のECG信号は、電極の対9f及び9aにより形成される第1のECGリードを使用して得られ、第2のECG信号は、電極の対9f及び9bにより形成される第2のECGリードを使用して得られ、第3のECG信号は、電極の対9f及び9cにより形成される第3のECGリードを使用して得られ、第4のECG信号は、電極の対9f及び9dにより形成される第4のECGリードを使用して得られ、第5のECG信号は、電極の対9f及び9eにより形成される第5のECGリードを使用して得られる。ECG電極9a~eは、隣接するECGリードが約36°(180°/5)離れて配向されるように、ECG電極9fの周りに配される。
【0069】
図2(b)のECG電極9a~f及び
図2(c)のECG電極9a~eは、(隣接するECG電極9間の距離及び電極の対であるECG電極9間の距離の両方に関して)均等に離間し、これは、ECGリードにより得られるECG信号の比較をより簡単にすることができることが分かる。しかしながら、ECG電極9間の距離を同じにしないことも可能であるが、ECG電極9からのECG信号を分析するとき、これらの差が考慮されるべきである。
【0070】
図2(a)及び2(c)に示される2つのECG電極配列8は、非対称であるため、これらのECG電極配列8が、特定の向きで又は特定の向きの範囲内にある向きで、被験者に着用又は携帯されることが必要である、或いは有用であることが理解される。この又はこれらの向きは、以下の説明から明らかとなる。
図2(b)に示されるECG電極配列8は対称であるので、ECG電極配列8が被験者に携帯又は着用される向きに関する如何なる制限もない。
【0071】
上述したように、本明細書に記載される技術は、ECG電極配列8により得られるECG信号に基づいて、ウェアラブルデバイス4の向き、従って、ウェアラブルデバイス4にあるセンサ6の向きを自動的に特定するための解決策を提供する。様々な実施形態において、ECG電極配列8により得られるECG信号は、いわゆる"QRS軸"の方向を特定するために使用される。この方向は、房室結節(atrio-ventricular node)と、心室の尖部とを結ぶ心臓のセグメントに対応する。QRS軸は、(その向きは、被験者の母集団から導出される標準値である、又は被験者に特有とすることができる)被験者の身体において既知の向きを持ち、QRS軸に対するECG電極配列8の向きに関する情報は、例えば被験者の身体の尾部から頭部まで延びる軸である身体の尾頭方向(caudo-cranial direction)のような、被験者の基準座標系の他の軸に対するECG電極配列8の向きを決定することを可能にする。例えば、平均的な被験者の場合、QRS軸54は、典型的には、尾頭方向軸から38°左にある。ECG電極配列8に対するセンサ6の測定軸の既知の向き、及び被験者の基準座標系に対するECG電極配列8の決定される向きが、センサ6の測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定することを可能にする。
【0072】
以下の説明において、センサ6は加速度計であるが、センサ6が別の種類のセンサである実施形態においてもこの技術が適用可能であることが理解される。以下の説明において、被験者の基準座標系の関連する軸は、尾頭方向軸であるが、被験者の基準座標系の他の軸にもこの技術が適用可能であることも理解される。
【0073】
図3のフローチャートは、一実施形態による加速度計からの測定値を較正する例示的な方法を示す。前記方法のステップの1つ以上は、必要に応じて、センサ(加速度計)6、ECG電極配列8、メモリユニット14、インターフェース回路16及びユーザインターフェース18の何れかと連動して、装置10の処理ユニット12により行われる。処理ユニット12は、例えばメモリユニット14のようなコンピュータ可読媒体に記憶されるコンピュータプログラムコードの実行に応答して、1つ以上のステップを行うことができる。
【0074】
最初に、ウェアラブルデバイス4が、被験者により着用又は携帯される(例えば、胸部バンドを用いて被験者に着用されるか、又は接着剤等を用いて皮膚に取り付けられる)。被験者に対するウェアラブルデバイス4の向きは分かっていない。ステップ302において、ECG電極配列8におけるECG電極9の対(ECGリード)の各々から、ECG信号が得られる。ステップ304及び306において、QRS軸は、ECGリードにより検知されるように、心周期中の心室の電気的活動を規定する、最小のQRS群を提供する、及び非分極でもある(すなわち、このECG信号におけるQRS群の正及び負の成分は、値が類似している)ECGリードに垂直な方向として決定される。任意であるステップ308において、矢状面(すなわち、身体を左部分と右部分とに分割する面)における前記尾頭方向に対するQRS軸の角度が決定される。(任意である)ステップ310において、異なるECGリードからのECG信号間におけるQRS群の傾向、例えば振幅及び極性の変化が決定される。(ステップ310が行われると行われる)ステップ312において、身体の解剖学的な左(又は右)方向を特定するために、QRS軸の符号(極性)が決定される。ステップ314において、加速度計6の測定軸が尾頭方向軸と(及び任意で、ステップ310及び312が行われる場合、身体の内外左前方向とも)"並べられる"ことを可能にする回転行列(又は他の関係)が決定される。最後に、ステップ316において、前記決定された回転を使用して、加速度計の測定値を被験者の基準座標系に変換する(例えば、測定値が尾頭方向軸に対して示されるように測定値を変換する)。その代わりに、ステップ316において、加速度計の測定値を分析するために使用される、被験者の基準座標系の事前に設定された計算モデル(例えば、加速度計の測定値から被験者の姿勢を決定するために使用される一組のルール又はパラメータ)は、この回転された計算モデルを用いて加速度の測定値が評価されるように、加速度計6の基準座標系に回転される。
【0075】
従って、ステップ302において、複数の方向に向けられたECGリードからECG信号が得られる。ECG電極9の配列によって、ECGリードは、被験者の身体に対して異なる向きからECG形態学的データを得ることができる。
図4及び
図5は、被験者の身体上の夫々の第1及び第2の向きにおける
図2(c)のECG電極配列8、並びにこのECG電極配列8により得られる対応するECG信号の例示である。
【0076】
特に、
図4及び
図5は、被験者50の一部(胴体)の輪郭及び心臓52の輪郭を示す。心臓52のQRS軸は矢印54で示され、この軸は、典型的な被験者50に対し、被験者50の基準座標系において概ね左下に向けられている。被験者50の尾頭方向軸は矢印56で示されている。
【0077】
図4において、
図2(c)のECG電極配列8は、(ECG電極9b及び9fから構成される)第2のECGリードが、QRS軸54と最も平行に近く、(ECG電極9d及び9fから構成される)第4のECGリードが、QRS軸54と最も垂直に近いような第1の向きで被験者50に着用されている。第1から第5のECGリードの各々により得られるECG信号は、
図4に夫々(a)~(e)とラベル付けした信号のグラフに示される。これらのグラフにおいて、振幅軸及び時間軸がラベル付けられていないが、これらのグラフは同じ振幅及び時間スケールを共有している。
【0078】
図4におけるECG信号のグラフから、第4のECGリードにより得られるECG信号が、最も小さく、最も少なく分極したQRS群を持つことが分かる。これは、ECG電極9d及び9fを相互接続する仮想軸(第4のECGリード)が、QRS軸54に最も直交していることを示す。
【0079】
図5において、
図2(c)のECG電極配列8は、(ECG電極9a及び9fから構成される)第1のECGリード及び(ECG電極9e及び9fから構成される)第5のECGリードが、QRS軸54に略平行であり、逆平行であるような第2の向きで被験者50に着用されている。この第2の向きにおいて、(ECG電極9c及び9fから構成される)第3のECGリードが、QRS軸54に最も垂直に近い。第2の向きにおける第1~第5のECGリードの各々により得られるECG信号は、
図5に夫々(a)~(e)とラベル付けした信号のグラフに示される。これらのグラフにおいて、振幅軸及び時間軸がラベル付けられていないが、これらのグラフは同じ振幅及び時間スケールを共有している。
【0080】
図5におけるECG信号のグラフから、第3のECGリードにより得られるECG信号は、最も小さく、最も少なく分極したQRS群を持つことが分かる。これは、ECG電極9c及び9fを相互接続する仮想軸(第3のECGリード)が、QRS軸54に最も直交していることを示す。さらに、ECG信号を第1のECGリードから第5のECGリードまで順番に見るとき、QRS群は正から負に大きく動くことに気が付く。この情報は、第3のECGリードの仮想軸に垂直な軸(ここで、第3のECGリードの仮想軸に垂直な軸は、QRS軸に対応すると考えられる)が、加速度計6の左側又は右側に向けられているかを特定するために使用される。これは、QRS軸54がほとんどの場合、身体の左側を向いていると仮定すると、被験者50の身体の内外左方向を決定する。
【0081】
ECG信号が得られると、ステップ304において、ECG信号が分析され、各々のECG信号における電圧の最大値及び最小値が決定される。この目的は、QRS群に一致する(又は最も一致する)ECG信号を特定することであり、従って、"最も等電"であるECGリード、すなわち、最も小さいQRS群を持ち、その群に対し、(絶対的には)最大値及び最小値が最も類似しているECGリードを特定することである。
【0082】
ステップ304において、最も等電であるECGリードが決定された後、ステップ306において、最も等電であるECGリードに関連付けられる仮想軸に垂直な方向を決定することにより、QRS軸54を特定することができる。例えば、
図5を参照すると、第3のECGリードが最も等電であるECGリードであり、従って、QRS軸54の方向は、ECG電極9c及び9fを相互接続する仮想軸に対して垂直であると決定される。
【0083】
ECG電極配列8のECG電極9の数及びECG電極の夫々の互いに対する配列に依存して、実際のQRS軸54が2つの隣接するECGリード間のどこかに入ることが可能であることが理解される。従って、代替の手法において、最も等電であるECGリードは、ステップ304において、(2番目に低いQRS振幅を持つ2つの隣接するECGリードの一方であるべきである)次に最も等電であるリードと一緒に特定される。QRS軸54に直交すると考えられる中間の仮想軸は、2つの最も等電であるECGリードの仮想軸の幾何平均(又は加重平均)として決定される。この中間の仮想軸は、QRS軸54に直交する方向の良好な近似を提供する傾向がある。
【0084】
この代替の手法の一例として、
図4において、第4のECGリードが最も等電であるECGリードと考える。第4のECGリードは、第5のECGリードから45°の向きとする。第4のECGリードに対するQRS群は、400mVの振幅(-200mVから+200mV)を示し、(第5のECGリードから90°の向きとする)隣接する第3のECGリードは、600mVのQRS振幅(-200mVから+400mV)を示す。従って、(すなわち、QRS軸54と直交するであろうECGリードの方向に一致する)中間の仮想軸は、第3のECGリードと第4のECGリードの間にあり、2つのECGリードのQRS群の振幅に比例する角度を持つ。この中間の仮想軸の(α
ISOで示される)角度は、最も低いQRS振幅を持つ2つの隣接するECGリード(第3のECGリード及び第4のECGリード)からなる角度の加重平均として決定される。与えられる例によれば、第4のECGリードが最も低いQRS群を持ち、第3のECGリードが2番目に低いQRS群を持つ。従って、α
ISOは、
α
ISO=α
fc+V
fc/(V
fd+V
fc).(α
fd-α
fc) (1)
で与えられる。ここで、α
fcは、センサ6の測定軸に対する(すなわち、ECG電極9c及び9fから構成される)第3のECGリードの角度であり、α
fdは、センサ6の測定軸に対する(すなわち、ECG電極9d及び9fから構成される)第4のECGリードの角度であり、V
fcは、第3のECGリードにより測定されるQRS群の電圧であり、V
fdは、第4のECGリードにより測定されるQRS群の電圧である。上述したように、中間の仮想軸の角度(α
ISO)は、ウェアラブルデバイス4の基準座標系におけるQRS軸54に垂直な軸の角度を表す。
【0085】
任意であるステップ308において、ウェアラブルデバイス4の基準座標系における尾頭方向軸56の方向は、ステップ306において特定された最も等電であるECGリードに垂直な方向に、回転角を適用することにより決定される。従って、ウェアラブルデバイス4に対する尾頭方向軸56の(αCAUDO-CRANIALと表される)角度は、
αCAUDO-CRANIAL=αISO-π/2-αQRSax (2)
で与えられる。ここで、αQRSaxは、QRS軸54と尾頭方向軸56との間の角度である。典型的な被験者の場合、αQRSaxは、尾頭方向軸から38°左にある。幾つかの実施形態において、αQRSaxの値は、被験者に個別化することができる。特に、心臓の向き、従って被験者の基準座標系におけるQRS軸54の向きは、例えば、被験者の体重、BMI及び/又は他の要因、例えばQRS軸54と尾頭方向56との間の角度に影響を及ぼす疾患状態(例えば、心不全、心筋症及び構造的心疾患)に従って、被験者によって異なる。幾つかの実施形態において、3本のリード又は12本のリードのECG検査による情報は、被験者の基準座標系におけるQRS軸54の角度(αQRSax)を正確に決定するために使用される。
【0086】
ステップ310において、一連のECGリードを通るQRS信号(QRS群)の極性の変化が決定される。例えば、
図2(c)のECG電極配列8を考えてみると、第5のECGリードまでを第1のECGリードと考えるとき、QRS群が、よりマイナスになるか、又はよりプラスになる傾向を示す場合、これは、QRS軸54が、第1のECGリード又は第5のECGリードにより規定される仮想軸により向かって配向されているかどうかを示すことができる。この情報は、QRS軸の角度(α
QRSax)の符号を調整し、解剖学的左方向を特定する(工程312)ために使用される。
【0087】
(被験者の基準座標系におけるウェアラブルデバイス4の向き(角度)と概念上は同じである)ウェアラブルデバイス4の基準座標系において、尾頭方向の角度及び内外左方向が、決定されると、ステップ314において、加速度計6の基準座標系で得られる加速度の測定値が、被験者の基準座標系(すなわち、QRS軸54、尾頭方向軸56又は被験者の基準座標系における他の何れかの所望する軸)に回転されることを可能にする回転行列(R)を決定することができる。従って、この回転行列は、加速度計6の各軸が、例えば、被験者の基準座標系における尾頭方向、内外方向及び前方向の加速度を測定しているように、加速度の測定値が効果的に処理されることを可能にする。身体の前方向は、ウェアラブルデバイス4に垂直であり、ウェアラブルデバイス4から外側に向いていると仮定されることに留意されたい。
回転行列Rは
【数1】
で与えられる。
【0088】
従って、加速度計6は、被験者の人体測定軸に対して(ウェアラブルデバイス4の平面内で)較正され、配向されることができる。
【0089】
幾つかの実施形態において、ECG電極配列8は、被験者の1つ以上の生理学的特性、例えば心拍数、心拍変動又は(血圧を推定するために使用され得る)脈波到達時間(PAT)を決定するのにも使用される。この場合、最も大きい最大電圧を供給するECGリードからのECG信号のみを分析し、前記生理学的特性の値を決定する。
図5の例において、このECGリードは、ECG電極9e及び9fから構成されるものである。
【0090】
幾つかの実施形態において、ECG電極配列8により得られるECG信号は、被験者50に対するウェアラブルデバイス4の向きが決定されると、被験者の心臓52に対する、被験者50の身体上のウェアラブルデバイス4の位置を推定するために使用することもできる。これは、
図5を参照して説明される。
図5において、(ECG電極9a及び9fから構成される)第1のECGリード並びに(ECG電極9e及び9fから構成される)第5のECGリードは、合わせて1つの直線を形成し、言い換えると、第1のECGリードは、第5のECGリードと同じ方向にある。ECG電極配列8が、
図5に示される被験者50の身体上の位置及び向きにあるとき、(第1のECGリードにより測定されるQRS群の電圧である)V
faの大きさは、(第5のECGリードからの)V
efの大きさよりも小さく、これは
図5のグラフ(a)及び(e)から分かる。上述したように、被験者50上のウェアラブルデバイス4の向きを決定したことに連動して、V
efの大きさがより大きいことは、ECG電極9aがECG電極9eよりも心臓52から離れていることを意味し、従って、ウェアラブルデバイス4は、心臓52よりも高い位置に置かれている。ウェアラブルデバイス4の位置に関する情報は、(被験者が女性である場合の胸の形状を含む)胸部の形状が分かっているときに使用することができる。例えば、胸の場合、ウェアラブルデバイス4が心臓よりも上の高い位置に配されるとき、尾頭方向軸56に対する皮膚の角度は小さくなる。尾頭方向軸56に対する皮膚(及び、従ってウェアラブルデバイス4)の角度に関する情報は、被験者50の姿勢をより正確に決定するために使用される。
【0091】
図6のフローチャートは、本明細書に記載される技術に従ってセンサ6を較正する一般的な方法を示す。前記方法のステップの1つ以上は、必要に応じて、センサ6(例えば加速度計)、ECG電極配列8、メモリユニット14、インターフェース回路16及びユーザインターフェース18の何れかと連動して、装置10の処理ユニット12により行われる。処理ユニット12は、例えばメモリユニット14のようなコンピュータ可読媒体に記憶されるコンピュータプログラムコードの実行に応答して、1つ以上のステップを実行することができる。
【0092】
上述したように、ECG電極配列8の3つ以上のECG電極9は、互いに対して所定の配列であり、センサ6は、ECG電極配列8に対して所定の向きの測定軸を持つ。ECG電極9の互いに対する所定の配列に関する情報は、メモリユニット14に記憶される。所定のECG電極9に対する前記センサ6の測定軸の所定の向きに関する情報も、メモリユニット14に記憶される。
【0093】
最初のステップであるステップ602において、処理ユニット12は、夫々のECG電極9の対により得られるECG信号に基づいて、被験者50の基準座標系におけるECG電極配列8の向きを決定する。
【0094】
ステップ602は、処理ユニット12の制御下で、ECG電極配列8を用いてECG信号が得られるサブステップを有することができる。この場合、少なくとも、このステップ602のサブステップは、ウェアラブルデバイス4が被験者50に携帯又は着用されている間に行われることができ、処理ユニット12は、(装置10がウェアラブルデバイス4の一部である実施形態では)ECG電極配列8から直接、又は(装置10がウェアラブルデバイス4から分離している実施形態では)装置10のインターフェース回路16及びウェアラブルデバイス4のインターフェース回路20を介して、ECG信号を得ることができる。その代わりに、ステップ602は、メモリ又は記憶装置(例えば、メモリユニット14)から事前に得られたECG信号が取り出されるか、又は別の構成要素又はデバイス(例えば、ウェアラブルデバイス4)から受信され、分析されるサブステップを有することができる。この場合、これらECG信号は、処理ユニット12又は(ウェアラブルデバイス4が装置10から分離している場合)ウェアラブルデバイス4の制御下で、ECG電極配列8により得られてもよい。この場合においても、少なくとも、このステップ602のサブステップは、ウェアラブルデバイス4が被験者50に(まだ)携帯又は着用されている間に行われることができるか、又は(例えば、ECG信号の分析及びセンサ6の較正がオフラインで行われる実施形態において)ウェアラブルデバイス4がもはや被験者50に着用又は携帯されていない後の時間に行われることができる。
【0095】
何れの場合においても、ECG電極配列8において規定されるECGリードの各々に対し、夫々のECG信号が得られる。これらECG信号は、(ECG測定の間でウェアラブルデバイス4の向きに変化がないことを確実にするために)全て同じ時間期間に関連付けることができる。その代わりに、ウェアラブルデバイス4の向きが時間の経過と共に変化する可能性が低い場合、すなわち、ウェアラブルデバイス4を着用したら、被験者50に対するウェアラブルデバイス4の向きが変化しない場合、例えば、胸部ストラップ又はバンドを介して、ウェアラブルデバイス4が被験者50に取り付けられる場合、ECGリードの各々に対し得られる夫々のECG信号は、全て同じ時間期間に関連付ける必要はない。
【0096】
ステップ602において、処理ユニット12は、ECG信号を分析して、特定のECG信号特性、例えばQRS群又はRピークを示す或いは最もよく示す1つ以上のECG電極9の対(すなわち、1つ以上のECGリード)を特定する。ECG電極配列8における前記特定されたECGリードの向きは、特定のECG特性が(必要に応じて)最も強い又は最も弱い、被験者50の心臓52に関連付けられる基準軸(例えば、QRS軸)の向きと同様に知られており、これは、被験者50の基準座標系におけるECG電極配列8の向きが決定され得ることを意味する。
【0097】
従って、幾つかの実施形態において、処理ユニット12は、ECG電極の対により得られるECG信号が所定のECG信号特性に関する基準を満たしている、ECG電極配列8におけるECG電極9の対を特定し、この特定されたECG電極の対のECG電極9により規定される第1の仮想軸と、基準軸と所定のECG信号特性との間の関係とに基づいて、被験者50の基準座標系に対するECG電極配列8の向きを決定することにより、ECG電極配列8の向きを決定する。
【0098】
センサ6の較正により高い精度が望まれる場合、ECG電極配列8が少数のECGリードを規定する場合、及び/又はECG電極配列8により規定されるECGリードの向きの間の差が比較的大きい場合に有用である代替の実施形態において、基準軸は、2つの隣接するECG電極9の対により規定される仮想軸の間にあり、精密な仮想軸が決定されるべきであると仮定することができる。従って、処理ユニット12は、夫々のECG信号が、所定のECG信号特性に関する基準を最も満たしている、ECG電極配列8の2つの隣接するECG電極9の対を特定し、これら2つの隣接するECG電極の対の仮想軸の間にある軸として、(基準軸に一致する)第1の仮想軸を決定することにより、ECG電極配列8の向きを決定する。次に、被験者50の基準座標系に対するECG電極配列8の向きは、第1の仮想軸と、基準軸と所定のECG信号特性との間の関係とに基づいて決定される。
【0099】
上記の実施形態の組の何れにおいても、所定のECG信号特性は、QRS群であり、基準は、最小のQRS群、及び/又は最大の電圧振幅及び最小の電圧振幅における最小の差を持つECG信号によって満たされる又は最も満たされる。これらの実施形態において、被験者50の基準座標系における基準軸は、被験者50の心臓52のQRS軸54とすることができる。被験者50の基準座標系におけるウェアラブルデバイス4の向きを決定する際、第1の仮想軸は、QRS軸に垂直又は略垂直であると考えられる。
【0100】
上記の実施形態の組の何れにおいても、所定のECG信号特性は、Rピークであり、基準は、最大のRピーク、及び/又は最大の電圧振幅及び最小の電圧振幅における最大の差を持つECG信号よって満たされる或いは最も満たされる。これらの実施形態において、被験者50の基準座標系の基準軸は、被験者50の心臓52のQRS軸54とすることができる。被験者50の基準座標系におけるウェアラブルデバイス4の向きを決定する際、第1の仮想軸は、QRS軸に平行又は略平行であると考えられる。
【0101】
ステップ602において、被験者50の基準座標系におけるウェアラブルデバイス4/ECG電極配列8の向きが決定されると、ステップ604において、処理ユニット12は、センサ6の測定軸と被験者50の基準座標系との間の関係を決定する。この関係は、ステップ602において決定された被験者の基準座標系におけるECG電極配列8の向き、及びECG電極配列8に対するセンサ6の測定軸の所定の(既知の)向きに基づいて決定される。幾つかの実施形態において、このステップは、(1つ以上の角度として表すことができる)ECG電極配列8に対するセンサ6の測定軸の所定の向きを、ステップ602において決定された向きに適用するステップを有することが理解される。この関係は、被験者50の基準座標系(又は被験者50の基準座標系における軸、例えばQRS軸54又は尾頭方向軸56)の間における回転として決定される。この回転は、被験者50の基準座標系又はセンサ6の基準座標系における1つ以上の軸に対する1つ以上の回転角として、又は回転行列として表すことができる。
【0102】
基準軸がQRS軸54である上記実施形態において、前記方法は、前記基準を最も満たしているECG電極の対により得られるECG信号の極性を決定する処理ユニット12をさらに有する。この極性は、ECG電極配列8の基準座標系におけるQRS軸の向きを示し、従って、処理ユニット12は前記極性を使用して、被験者の左側及び右側に対するECG電極配列8の向きを決定することができる。これらの実施形態において、処理ユニット12は、ステップ604において、被験者の左側及び右側に対する前記決定されたECG電極配列8の向きに基づいて、センサ6の測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定することができる。
【0103】
幾つかの場合において、被験者50の基準座標系における基準軸の向きは、被験者によって異なる。すなわち、ある被験者の尾頭方向軸56に対するQRS軸54の向きは、他の被験者の向きと異なってもよい。従って、ステップ601において、被験者50の基準座標系に対するウェアラブルデバイス4/ECGの向きは、被験者の1つ以上の生理学的特性、及び/又は被験者の臨床情報、例えば被験者50におけるQRS軸54の向き又は被験者の心臓52の向きを考慮に入れることができる。他の実施形態において、QRS軸54の向きは、被験者50の身体に対して標準的な向き、例えば尾頭方向軸56から38°左であると仮定することができる。
【0104】
幾つかの場合において、ウェアラブルデバイス4の向きは、(特に、ウェアラブルデバイス4が胸に携帯又は着用される、及び/又は被験者50が太り過ぎの場合)被験者50の胸部の形状により影響を受ける可能性があり、従って、幾つかの実施形態において、処理ユニット12は、ステップ604において、ウェアラブルデバイスが着用される被験者の身体の一部の形状に基づいて、センサ6の測定軸と被験者の基準座標系との間の関係を決定することができる。特に、ウェアラブルデバイス4が上胸部に着用されるとき、心臓がその面上にある矢状面と、ウェアラブルデバイス4が着用され、ECG信号が測定される身体の表面との間の角度を特定するために、胸部の形状が考慮される。従って、矢状面の最終的な向きは、被験者の基準座標系における尾頭方向軸又は他の軸の方向に対して、皮膚の曲率に比例する角度だけ傾斜させることができる。別の例として、ウェアラブルデバイス4が、左下の肋骨の高さで鎖骨中央に装着されるとき、この場所における身体の形状は、ウェアラブルデバイス4が着用され、ECG信号が測定される身体の表面と、矢状面、前頭面(すなわち、身体を前部分と後部分とに分割する平面)並びに横断面(すなわち、身体を上部分と下部分とに分割する平面)の夫々との間の角度を特定するために考慮される。従って、矢状面、前頭面及び横断面の最終的な向きは、被験者の基準座標系における尾頭方向軸又は他の軸の方向に対して、皮膚の曲率に比例する角度だけ傾斜させることができる。
【0105】
上述したように、ステップ604において決定される関係は、(すなわち、センサ6又は被験者の)ある基準座標系から、(すなわち、被験者又はセンサ6の)他の基準座標系への回転である。この回転は、センサ6の基準座標系におけるセンサ6により得られる測定値を回転させて、被験者50の基準座標系にするために使用される。その代わりに、この回転は、センサ6からの測定値が回転されるパラメータ及び/又はルールを用いて評価されるように、被験者50の基準座標系において定義された1つ以上のパラメータ及び/又はルールを回転させて、センサ6の基準座標系にするために使用される。
【0106】
例えば、前記1つ以上のパラメータ及び/又はルールは、加速度の測定値から被験者50の姿勢を決定するために使用され、第1のルールは、加速度が、被験者50の基準座標系における(例えば、z軸に沿った)垂直方向である場合、被験者50は立っていることであり、第2のルールは、加速度が、被験者50の基準座標系における(例えば、y軸に沿った)水平(前)方向である場合、被験者50は仰臥位であり、第3のルールは、加速度が、被験者50の基準座標系における(例えば、x軸に沿った)水平(横)方向である場合、被験者50は横たわっていることである。ステップ604において決定される回転は、前記ルールを回転させて、加速度計6の基準座標系にするために使用される。
【0107】
幾つかの実施形態において、
図6の方法は、処理ユニット12が、センサ6から測定値を取得する又は得るステップ606をさらに有する。センサ6は、ウェアラブルデバイス4が被験者50により携帯又は着用されている間、被験者50を測定する。被験者の測定値は、(ECG信号が関連している同じ時間期間である)ある時間期間中の被験者に関連している。ステップ606において、処理ユニット12は、(装置10がウェアラブルデバイス4の一部である実施形態では)センサ6から直接、又は(装置10がウェアラブルデバイス4から分離している実施形態では)装置10のインターフェース回路16及びとウェアラブルデバイス4のインターフェース回路20を介して、測定値を得ることができる。その代わりに、ステップ606は、処理ユニット12が、メモリ或いは記憶装置(例えば、メモリユニット14)から以前に得たセンサ測定値を得る又は取り出すこと、又は他の構成要素或いはデバイス(例えば、ウェアラブルデバイス4)から受信されることを有する。この場合、これらの測定値は、処理ユニット12又は(ウェアラブルデバイス4が装置10から分離している場合)ウェアラブルデバイス4の制御下で、センサ6により得られてもよい。
【0108】
幾つかの実施形態において、ステップ608において、ステップ604において決定された回転が、センサ6から取得した測定値に適用され、この取得した測定値を回転させて、被験者50の基準座標系にすることができる。次に、回転した測定値は、被験者50の基準座標系に対して定義される1つ以上のパラメータ及び/又はルールを用いて評価される。例えば、1つ以上のパラメータ及び/又はルールは、被験者の姿勢を決定するためのものである。
【0109】
ステップ608の代替の実施形態において、ステップ604において決定された回転は、1つ以上のパラメータ及び/又はルールに適用され、1つ以上のパラメータ及び/又はルールを回転させて、センサ6の基準座標系にすることができる。次いで、取得した測定値は、回転された1つ以上のパラメータ及び/又はルールを用いて評価される。例えば、1つ以上のパラメータ及び/又はルールは、被験者の姿勢を決定するためのものである。
【0110】
従って、上述技術は、センサを較正するための既存の技術における制限の少なくとも幾つかが対処されることを提供する。特に、センサ6を有するウェアラブルデバイス4が、何れかの向きで被験者50の上に置かれ、そして、その向きを決定し、故に、その向きを考慮してセンサ6を較正することができる。さらに、ウェアラブルデバイス4に対する、被験者50の心臓52のQRS軸54の向きを決定する(任意で、被験者50の尾頭方向軸56の向きを決定する)こと、及びこの決定された向きに基づいて、ウェアラブルデバイス4のセンサ6を較正することは、より信頼性があり、より正確なセンサ6の較正を提供する。さらに、センサ6の較正は、ウェアラブルデバイス4の向きの事前の知識を持つことなく、ECG電極配列8におけるECG電極9の向き及び配列、並びにセンサ6の測定軸に対するECG電極配列8の向きだけで達成することができる。較正は、被験者50が、何らかの特定の活動又は動き(例えば、直立歩行)を行うことを必要とすることなく達成されることもできる。
【0111】
故に、本明細書において、センサを較正するための改善された技術が提供され、この技術が既存の技術に関連する制限に対処する。
【0112】
「するために配される」という表現は、「するための手段を有する」、「に適応する」又は「するように構成される」のような表現と同等であることを意味し、前記装置が単に特定のタスクに適しているわけではないことを示すのに役立つ。
【0113】
開示される実施形態に対する変形例は、図面、本開示及び添付の特許請求の範囲の検討から、本明細書に記載される原理及び技術を実施する際に当業者により理解及び実施され得る。請求項において、「有する」という用語は、他の要素又はステップを排除するものではなく、要素が複数あることを述べなくても、その要素が複数あることを排除するものではない。単一の処理器又は他のユニットが、請求項に挙げられる幾つかのアイテムの機能を果たしてもよい。ある特定の方法が互いに異なる従属請求項に挙げられているという単なる事実は、これらの方法の組み合わせが有利に使用され得ないことを示さない。コンピュータプログラムは、例えば、他のハードウェアと一緒に又はその一部として供給される光記憶媒体又はソリッドステート媒体のような適切な媒体に記憶或いは配布されてよいが、例えば、インターネット又は他の有線若しくは無線電気通信システムを介してのような他の形態で配布されてもよい。請求項における如何なる参照符号も、その範囲を限定すると解釈されるべきではない。