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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】内燃機関のピストン及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   F02F 3/00 20060101AFI20240801BHJP
   F02F 3/10 20060101ALI20240801BHJP
   F16J 1/04 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F02F3/00 M
F02F3/00 G
F02F3/10 Z
F16J1/04
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020207560
(22)【出願日】2020-12-15
(65)【公開番号】P2022094593
(43)【公開日】2022-06-27
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【弁理士】
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100125380
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 綾子
(74)【代理人】
【識別番号】100142996
【弁理士】
【氏名又は名称】森本 聡二
(74)【代理人】
【識別番号】100166268
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 祐
(74)【代理人】
【識別番号】100170379
【弁理士】
【氏名又は名称】徳本 浩一
(74)【代理人】
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】増原 真也
(72)【発明者】
【氏名】藤田 昌弘
【審査官】稲本 遥
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-052451(JP,A)
【文献】特開2008-223663(JP,A)
【文献】特開2006-016982(JP,A)
【文献】特開2016-211415(JP,A)
【文献】特開2021-076050(JP,A)
【文献】国際公開第2004/105980(WO,A1)
【文献】特開平02-101181(JP,A)
【文献】中国実用新案第208669453(CN,U)
【文献】国際公開第2013/022062(WO,A1)
【文献】特開2012-017742(JP,A)
【文献】特開2016-113926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02F 3/00- 3/28
F16J 1/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線状の長手軸線に沿って延びるシリンダボア内にて前記シリンダボアの内周部に対して前記長手軸線に沿った長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、
前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカートと
を備え、
前記2つのスカートが、これらを対向させた方向であるスカート対向方向にてスラスト側に位置する第1スカートと、前記スカート対向方向にて反スラスト側に位置する第2スカートとから成り、
前記シリンダボアの内周部に対向する前記第1スカートの外周部上に第1被膜層が形成され、
前記シリンダボアの内周部に対向する前記第2スカートの外周部上に第2被膜層が形成される、内燃機関のピストンであって、
前記第1スカートの外周部の凹部に倣って前記第1被膜層の凹部が形成され、
前記第2スカートの外周部の凹部に倣って前記第2被膜層の凹部が形成され、
前記第1被膜層には、前記第2被膜層よりも多くの凹部が形成され、
前記第1被膜層の中央の特定部分にて単位面積中に前記凹部により占められる領域の大きさが、前記特定部分以外の前記第1被膜層の残部分にて単位面積中に前記凹部により占められる領域の大きさよりも大きくなっており、前記特定部分が前記残部分に囲まれている、内燃機関のピストン。
【請求項2】
直線状の長手軸線に沿って延びるシリンダボア内にて前記シリンダボアの内周部に対して前記長手軸線に沿った長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカートとを含む粗材を備え、前記2つのスカートが、前記スカート対向方向にてスラスト側に位置する第1スカートと、前記スカート対向方向にて反スラスト側に位置する第2スカートとから成り、かつ前記第1及び第2スカートのそれぞれの外周部上に被膜層が形成される、内燃機関のピストンの製造方法であって、
前記ピストンの粗材を形作るべく、金属溶湯を前記第1スカートの外周部の一部分に対応するように配置された金型の流出口から、前記ピストンの粗材の形状に適合するように形成された前記金型のキャビティ部に流し込む工程と、
形作られた前記ピストンの粗材を前記金型のキャビティ部から取り出す工程と、
取り出された前記ピストンの粗材の表面に露出したシリコンをウォータージェット噴射によって除去する工程と、
前記シリコンを除去した前記ピストンの粗材の表面上に前記被膜層を形成する工程と
を含む内燃機関のピストンの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリンダボアの内周部に対して摺動可能である外周部を有する内燃機関のピストンに関する。本発明はまた、このような内燃機関のピストンの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
自動車等の車両に設けられるエンジン等の内燃機関において、ピストンは、直線状の長手軸線に沿って延びるシリンダボア内を長手軸線に沿った方向にて往復移動する。このとき、ピストンの外周部はシリンダボアの内周部に対して摺動する。典型的に、ピストンは、シリンダボアの内周部に対して摺動可能である外周部を有するピストン本体と、このピストン本体の外周部からシリンダボアの底側に延びる2つのスカートとを含んでおり、さらに、ピストンにおいては、シリンダボアの内周部に対するピストンの外周部の摩擦抵抗を低減するために、各スカートの外周部上に被膜層が形成されている。
【0003】
しかしながら、ピストンにおいては、被膜層による摩擦抵抗の低減効果に加えて、さらなる摩擦抵抗の低減効果を得ることが望まれる。そのため、さらなる摩擦抵抗の低減効果を得るために種々のピストンが提案されている。
【0004】
このようなピストンの一例としては、鋳造により形作られたピストンにおける2つのスカートの外周部に、複数のディンプルを形成するように、硬質粒子等のショット材をショットピーニングによって均一に吹き付けて、その後、2つのスカートの外周部上に、被膜層を形成するように樹脂を被膜させたピストンが挙げられる。このピストンにおいては、2つのスカートの外周部における複数のディンプルに倣うように、これらの外周部上における被膜層の外表面から凹む複数の凹部が形成されており、これら複数の凹部の大きさは互いに等しくなっており、かつ複数の凹部は被膜層全体にて均一に分布している。(例えば、特許文献1を参照。)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-160293号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ピストンにおいて、2つのスカートのうちスラスト側のスカートに作用する荷重は、これらのうち反スラスト側のスカートに作用する荷重よりも大きくなる。そのため、上記ピストンの一例のように、2つのスカートの被膜層における複数の凹部の大きさを互いに等しくし、かつ複数の凹部を被膜層全体にて均一に分布させたピストンにおいては、長期間の使用後に、スラスト側のスカートの被膜層における特定の領域の摩耗、特に、中央の領域の摩耗が、他の領域の摩耗よりも早くなる。この場合、ピストンの初期状態の摺動性能を長期間に亘って維持することが困難となる。
【0007】
例えば、このようなピストンにおいては、長期間の使用後に、2つのスカートに作用する荷重のバランスが崩れて、これによって、上記特定の領域における摩耗が、他の領域の摩耗よりも早期に促進し、ピストンの往復移動時に生じる振動が増大するおそれがある。
【0008】
また、上記ピストンの一例においては、ショットピーニングによって吹き付けられたショット材が、スカートの外周部に残存するおそれがある。このようなスカートの外周部には被膜層が密着し難い。この場合、ピストンの摩擦抵抗が増大するおそれがあり、かつピストンの摺動性能が低下するおそれがある。
【0009】
さらに、アルミニウム合金製のピストンの鋳造時において、ピストンの粗材の表面にシリコンが晶出することがある。そのため、このようなピストンの製造時においては、晶出したシリコンを除去するために、混酸処理が行われる。しかしながら、混酸処理においては、シリコンのみならずピストンの粗材が溶解するおそれがある。この場合、ピストンの粗材の形状精度が低下して、ひいては、ピストンの摩擦抵抗が増大するおそれがあり、かつピストンの摺動性能が低下するおそれがある。
【0010】
このような実情を鑑みると、内燃機関のピストン及びその製造方法においては、ピストンの摺動性能を効率的に向上させることが望まれる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
課題を解決するために、一態様に係る内燃機関のピストンは、直線状の長手軸線に沿って延びるシリンダボア内にて前記シリンダボアの内周部に対して前記長手軸線に沿った長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカートとを備え、前記2つのスカートが、これらを対向させた方向であるスカート対向方向にてスラスト側に位置する第1スカートと、前記スカート対向方向にて反スラスト側に位置する第2スカートとから成り、前記シリンダボアの内周部に対向する前記第1スカートの外周部上に第1被膜層が形成され、前記シリンダボアの内周部に対向する前記第2スカートの外周部上に第2被膜層が形成される、内燃機関のピストンであって、前記第1被膜層には、前記第2被膜層よりも多くの凹部が形成され、前記第1被膜層の特定部分にて単位面積中に前記凹部により占められる領域の大きさが、前記特定部分以外の前記第1被膜層の残部分にて単位面積中に前記凹部により占められる領域の大きさよりも大きくなっている。
【0012】
課題を解決するために、一態様に係る内燃機関のピストンの製造方法は、直線状の軸線に沿って延びるシリンダボア内にて前記シリンダボアの内周部に対して前記長手軸線に沿った長手方向に摺動可能に構成される外周部を有するピストン本体と、前記ピストン本体の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体の外周部から前記シリンダボアの底に向かって延びる2つのスカートとを含む粗材を備え、前記2つのスカートが、前記スカート対向方向にてスラスト側に位置する第1スカートと、前記スカート対向方向にて反スラスト側に位置する第2スカートとから成り、かつ前記第1及び第2スカートのそれぞれの外周部上に被膜層が形成される、内燃機関のピストンの製造方法であって、前記ピストンの粗材を形作るべく、金属溶湯を前記第1スカートの外周部の一部分に対応するように配置された金型の流出口から、前記ピストンの粗材の形状に適合するように形成された前記金型のキャビティ部に流し込む工程と、形作られた前記ピストンの粗材を前記金型のキャビティ部から取り出す工程と、取り出された前記ピストンの粗材の表面に露出したシリコンをウォータージェット噴射によって除去する工程と、前記シリコンを除去した前記ピストンの粗材の表面上に前記被膜層を形成する工程とを含む。
【発明の効果】
【0013】
一態様に係る内燃機関のピストン及びその製造方法においては、ピストンの摺動性能を効率的に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係るピストンとシリンダボアの縦断面とを正面視した状態で概略的に示す一部断面正面図である。
図2図2は、一実施形態に係るピストンを概略的に示すスラスト側の側面図である。
図3図3は、一実施形態に係るピストンを概略的に示す反スラスト側の側面図である。
図4図4は、一実施形態に係るピストンの製造方法を説明するためのフローチャートである。
図5図5は、一実施形態に係るピストンの製造方法において、鋳造工程に用いられる鋳造装置の一例を模式的に示す断面図である。
図6図6は、一実施形態に係るピストンの製造方法において、シリコン除去工程に用いられるウォータージェット噴射装置を、ピストンの粗材と共に模式的に示す正面図である。
図7図7(a)は、一実施形態に係るピストンの製造方法において、シリコン除去工程前のピストンの粗材における第1スカートの流出口対応部分の表面を模式的に示す拡大図であり、かつ図7(b)は、一実施形態に係るピストンの製造方法において、シリコン除去工程後のピストンの粗材における第1スカートの流出口対応部分の表面を模式的に示す拡大図である。
図8図8(a)は、一実施形態に係るピストンの製造方法において、表面処理工程前のピストンの粗材における第1スカートの流出口対応部分を模式的に示す断面図であり、かつ図8(b)は、一実施形態に係るピストンの製造方法において、表面処理工程後のピストンの粗材における第1スカートの流出口対応部分を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
一実施形態に係る内燃機関のピストン及びその製造方法について、以下に説明する。本実施形態に係るピストンは、自動車のエンジンに用いられるものとなっている。しかしながら、ピストンは、自動車のエンジン以外の内燃機関に用いられるものであってもよい。例えば、ピストンは、船外機のエンジン、小型芝刈り機や発電機等に搭載される汎用エンジン等に用いられるものであってもよい。
【0016】
「ピストンの概略について」
最初に、図1図3を参照して、本実施形態に係るピストン1の概略について説明する。すなわち、ピストン1は、概略的には次のように構成される。特に図1図3に示すように、ピストン1は、直線状の長手軸線Lに沿って延びるシリンダボア2内にて長手軸線L(一点鎖線により示す)に沿った長手方向(図1図3にて、2つの片側矢印P1,P2により示す)にて往復移動可能に構成される。なお、図1図3においては、シリンダボア2の頂上側を向く長手方向の頂上側を片側矢印P1により示し、かつシリンダボア2の底側を向く長手方向の底側を片側矢印P2により示す。
【0017】
ピストン1は、シリンダボア2内にてシリンダボア2の内周部2aに対して長手方向に摺動可能に構成される外周部11aを有するピストン本体11を有する。ピストン1は、ピストン本体11の1つの径方向にて互いに対向する2つのスカート12,13を有する。2つのスカート12,13は、ピストン本体11の外周部11aからシリンダボア2の底に向かって延びる。なお、以下においては、径方向は、ピストン本体11の径方向を指すものとして定義する。
【0018】
2つのスカート12,13は、これらを対向させた方向であるスカート対向方向にてスラスト側(図1にて片側矢印Q1により示す)に位置する第1スカート12と、スカート対向方向にて反スラスト側(図1にて片側矢印Q2により示す)に位置する第2スカート13とから成る。スカート対向方向は1つの径方向である。第1及び第2スカート12,13のそれぞれは、シリンダボア2の内周部2aに対向する外周部12a,13aを有する。図1において、スカート対向方向は、2つの片側矢印Q1,Q2により示される。
【0019】
図1及び図2に示すように、第1スカート12の外周部12a上には第1被膜層20が形成される。図1及び図3に示すように、第2スカート13の外周部13a上には第2被膜層30が形成される。第1被膜層20には、第2被膜層30よりも多くの凹部21が形成される。
【0020】
図2に示すように、第1被膜層20の特定部分20aにて単位面積中に凹部21により占められる領域の大きさが、特定部分20a以外の第1被膜層20の残部分20bにて単位面積中に凹部21により占められる領域の大きさよりも大きくなっている。第1被膜層20の特定部分20aは、長手方向にて、第1及び第2スカート12,13の外周部12a,13a上で規定される基準径を有する基準部分1aに配置することができる。なお、図2において、特定部分20aは、仮想線、すなわち、二点鎖線によって囲まれている。
【0021】
「ピストンの詳細について」
図1図3を参照すると、本実施形態に係るピストン1は、詳細には次のように構成することができる。ピストン1は、金属製の鋳造品である粗材10を有する。粗材10を構成する金属は、アルミニウム合金とすることができる。特に、金属は、Al(アルミニウム)-Si(ケイ素)系のアルミニウム合金とすることができる。しかしながら、粗材の金属はこれに限定されない。例えば、粗材の金属は、アルミニウム、鉄、鉄合金、チタン、チタン合金、マグネシウム、マグネシウム合金等とすることもできる。
【0022】
ピストン1は、ピストン本体11の周方向にて2つのスカート12,13を連結するように形成される2つのサイドウォール14,15を有する。ピストン1は、ピストンピン(図示せず)を保持するように構成される2つのピンボス16,17を有する。2つのピンボス16,17は、それぞれ2つのサイドウォール14,15に設けられる。なお、以下においては、周方向は、ピストン本体11の周方向を指すものとして定義する。
【0023】
このようなピストン1において、粗材10は、ピストン本体11と、第1及び第2スカート12,13と、2つのサイドウォール14,15と、2つのピンボス16,17とを含むことができる。
【0024】
さらに、ピストン1において、ピストン本体11の外周部11aは、略円柱形状に形成される。その長手方向の頂上側端に位置するクラウン部11bを有する。ピストン本体11は、クラウン部11bに対して長手方向の底側に位置するリングランド部11cを有する。ピストン本体11は、その外周部11aから凹むようにリングランド部11cに形成される複数のリング溝11dを有する。複数のリング溝11dは、長手方向に互いに間隔を空けている。各リング溝11dには、ピストンリング(図示せず)が嵌合される。
【0025】
第1及び第2スカート12,13の外周部12a,13aのそれぞれは、バレル形状の曲面に沿って形成される。基準径は、ピストン1の基準となる外径である。基準径は、ピストン1及びシリンダボア2間の嵌め合いの関係で、スカート12,13の外周部12a,13aにて上記スカート対向方向に沿ってそれぞれ設けられるスラスト側端区域及び反スラスト側端区域に基づいて、スカート12,13の長手方向の指定高さにて規定される外径である。図1図3においては、この指定高さに位置する基準面Cが示されている。
【0026】
第1スカート12を配置したスカート対向方向のスラスト側は、エンジンの稼働時において、ピストン1が上死点を通過した直後にシリンダボア2の内周部2aから側圧を受ける方向である。第2スカート13を配置したスカート対向方向の反スラスト側は、スカート対向方向にてスラスト側とは反対側を向く方向である。
【0027】
第1及び第2スカート12,13のそれぞれは、長手方向で見て、スカート対向方向に延びるスラスト軸線M(一点鎖線により示す)を基準として周方向にて略対称に形成される。スラスト軸線Mは、スカート12,13の周方向の略中心を通るように直線状に延びる。スラスト軸線Mは、スカート12,13の長手方向の指定高さに位置する。
【0028】
2つのピンボス16,17は、スラスト対向方向とは別の1つの径方向であるボス対向方向(図2及び図3にて、2つの片側矢印R1,R2により示す)にて対向する。なお、図2及び図3においては、ボア対向方向の一方側を片側矢印R1により示し、かつボア対向方向の他方側を片側矢印R2により示す。ボス対向方向は、長手方向及びスラスト対向方向と略直交する。スラスト対向もまた、長手方向及びボス対向方向と略直交する。
【0029】
2つのサイドウォール14,15の外周部14a,15aは、第1及び第2スカート12,13の外周部12a,13aよりも径方向の中心寄りに配置される。2つのサイドウォール14,15のそれぞれは、長手方向で見て、ボア対向方向に延びるボア軸線N(一点鎖線により示す)を基準として周方向にて略対称に形成される。ボア軸線Nは、長手方向にてピストン本体11のクラウン部11bの基準位置から所定のコンプレッション高さ離れて位置する。
【0030】
2つのピンボス16,17は、ボア軸線Nに沿って延びる貫通孔16a,17aを有する。貫通孔16a,17aは、ピストンピン(図示せず)が嵌合可能となるように形成される。
【0031】
第1及び第2被膜層20,30のそれぞれは、樹脂材料を含有する。この樹脂材料は、PAI(ポリアミドイミド)、PI(ポリイミド)、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)等のような低い摩擦抵抗性及び高い耐熱性を有する樹脂材料とすることができる。しかしながら、樹脂材料は、これに限定されない。
【0032】
第1及び第2被膜層20,30のそれぞれは、上記樹脂材料と、グラファイト、二硫化モリブデン等のような固体潤滑剤と、酸化チタン等のような微小粒子とを含有することができる。第1及び第2被膜層20,30は、同様の成分によって構成することができる。しかしながら、第1及び第2被膜層は、異なる成分によって構成することもできる。
【0033】
図1及び図2を参照すると、第1被膜層20は、複数の凹部21を有する。第1被膜層20の各凹部21は、第1被膜層20の外表面から第1スカート12の外周部12aに向かって凹むように形成される。
【0034】
第1被膜層20における特定部分20aの径方向の中心は、スラスト軸線Mと略一致させることができる。特定部分20aの長手方向の中心は、基準面Cと略一致させることができる。スラスト軸線Mは、基準面Cに沿って位置する。第1被膜層20の凹部21は、特定部分20a及び残部分20bの両方に配置されている。特定部分20aに位置する凹部21は、残部分20bに位置する凹部21よりも大きくなっている。しかしながら、第1被膜層の凹部は、特定部分のみに配置することができる。特定部分に位置する凹部は、残部分に位置する凹部と実質的に同じ大きさにすることもできる。
【0035】
図1及び図3を参照すると、第2被膜層30は、複数の凹部31を有する。第2被膜層30の各凹部31は、第2被膜層30の外表面から第2スカート13の外周部13aに向かって凹むように形成される。第2被膜層30に位置する凹部31は、第1被膜層20の特定部分20aに位置する凹部21よりも小さくなっている。しかしながら、第1被膜層の凹部は、特定部分のみに配置することもできる。第2被膜層に位置する凹部は、第1被膜層の特定部分に位置する凹部と実質的に同じ大きさにすることもできる。
【0036】
「ピストンの製造方法の概略について」
次に、図4図8を参照して、本実施形態に係るピストン1の製造方法の概略について説明する。すなわち、ピストン1の製造方法は、概略的には次のようになっている。図4及び図5を参照すると、ピストン1の製造方法は、ピストン1の粗材10を形作るべく、図5にて片側矢印Fによって示すように、金属溶湯Eを金型40の流出口41から、金型40のキャビティ部42に流し込む工程(鋳造工程)S1を含む。
【0037】
図5に示されるように、鋳造工程S1にて用いられる金型40の流出口41は、粗材10における第1スカート12の外周部12aの一部分(以下、必要に応じて「流出口対応部分」という)12bに対応するように配置される。この流出口対応部分12bは、第1被膜層20の特定部分20aに対応する。金型40のキャビティ部42は、粗材10の形状に適合するように形作られる。
【0038】
図4に示されるように、ピストン1の製造方法は、形作られたピストン1の粗材10を金型40のキャビティ部42から取り出す工程(取り出し工程)S2を含む。図4図6、及び図7を参照すると、ピストン1の製造方法は、取り出された粗材10の表面に露出したシリコンGをウォータージェット噴射によって除去する工程(シリコン除去工程)S5を含む。図4及び図8を参照すると、ピストン1の製造方法は、シリコンGを除去したピストン1の粗材10の表面上に第1及び第2被膜層20,30を形成する工程(表面処理工程)S6を含む。
【0039】
「ピストンの製造方法の詳細について」
次に、図4図8を参照すると、ピストン1の製造方法は、詳細には次のようにすることができる。図4及び図5を参照すると、鋳造工程S1にて用いられる金属溶湯Eは、上述した粗材10を構成する金属と同様の金属から構成される。鋳造工程S1においては、重力鋳造法が用いられる。
【0040】
このような重力鋳造法を用いる場合、金型40にて強制的に冷却水を循環させずに自然冷却が行われる。そのため、多くの場合において、ピストン1の粗材10内で最終的に冷え固まる部分は、高温の金属溶湯Eが金型40のキャビティ部42に向かって流出する流出口41に対向する部分12b、すなわち、流出口対応部分12bとなる。この部分には、例えば、Al-Si系のアルミニウム合金中の成分であるシリコンG、特に、初晶シリコンGが粗大化し、かつ高密度に晶出する傾向がある。
【0041】
さあに、図4に示すように、ピストン1の製造方法は、取り出し工程S2にて金型40から取り出された粗材10の強度、硬さ等を調整すべく、粗材10に対して加熱処理、冷却処理等を施す工程(熱処理工程)S3を含む。例えば、熱処理工程S3は、人工時効硬化処理のみを行うT5熱処理、溶体化処理、及び人工時効硬化処理を行うT6熱処理等とすることができる。
【0042】
ピストン1の製造方法は、熱処理工程S3を施された粗材10の形状を整えるために粗材10に対して切削加工を施す工程(機械加工工程)S4を含む。例えば、機械加工工程S4においては、粗材10の内径、外径、第1及び第2スカート12,13の表面粗さ等の寸法精度、粗材10のリング溝11d、第1及び第2スカート12,13等の形状精度等を高めるべく、粗材10を、精密旋盤等を用いた切削加工によって仕上げることができる。機械加工工程S4の切削加工によって、第1及び第2スカート12,13の表面は、条痕を有するように形作られる。
【0043】
図7(a)に示すように、シリコン除去工程S5前のピストン1の粗材10における第1及び第2スカート12,13の外周部12a,13aの表面、特に、第1スカート12の流出口対応部分12bの表面には、点線で示すようにシリコンG、特に、初晶シリコンGが晶出している。
【0044】
図6に示すように、シリコン除去工程S5のウォータージェット噴射においては、このような表面に対して、ウォータージェット噴射機のノズル50から略垂直に水Wを噴射する。一例として、ウォータージェット噴射における水Wの噴射圧力は、約100MPa~約200MPaとすることができる。しかしながら、噴射圧力はこれに限定されない。噴射圧力は、ノズルと粗材との距離等に応じて適宜設定することができる。
【0045】
その結果、図7(b)及び図8(a)に示すように、シリコン除去工程S5後のピストン1の粗材10における第1スカート12の外周部12aの表面、特に、第1スカート12の流出口対応部分12bの表面には、シリコンGを除去した部分に凹部12c(図2図7(a)、図7(b)、図8(a)、及び図8(b)に示す)が形成される。凹部12cは、アンカー形状に形成される。第2スカート13の外周部13aの表面にもまた、シリコンGを除去した部分に凹部13b(図3に示す)が形成される。
【0046】
図4及び図8を参照すると、表面処理工程S6においては、第1及び第2被膜層20,30は、バインダーである樹脂材料に固体潤滑剤及び微小粒子を分散させた薬剤を、スクリーン法、スプレー法等によって第1及び第2スカート12,13の外周部12a,13aに印刷した後に、これらを焼成することによって形成することができる。しかしながら、表面処理工程においては、これ以外の工程によって、第1及び第2被膜層を形成することもできる。
【0047】
図8(b)に示すように、表面処理工程S6によって、第1スカート12の外周部12aの凹部12cに倣って第1被膜層20の凹部21が形成される。特に、第1スカート12の流出口対応部分12bの凹部12cに倣って第1被膜層20の特定部分20aの凹部21が形成される。第1被膜層20は、アンカー形状の凹部12cによってもたらされるアンカー効果によって第1スカート12と密着する。
【0048】
また、表面処理工程S6によって、第2スカート13の外周部13aの凹部13bに倣って第2被膜層30の凹部31が形成される。第2被膜層30は、アンカー形状の凹部13bによってもたらされるアンカー効果によって第2スカート13と密着する。
【0049】
以上、本実施形態に係る内燃機関のピストン1は、直線状の長手軸線Lに沿って延びるシリンダボア2内にて前記シリンダボア2の内周部2aに対して前記長手軸線Lに沿った長手方向に摺動可能に構成される外周部11aを有するピストン本体11と、前記ピストン本体11の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体11の外周部11aから前記シリンダボア2の底に向かって延びる2つのスカート12,13とを備え、前記2つのスカート12,13が、これらを対向させた方向であるスカート対向方向にてスラスト側に位置する第1スカート12と、前記スカート対向方向にて反スラスト側に位置する第2スカート13とから成り、前記シリンダボア2の内周部2aに対向する前記第1スカート12の外周部12a上に第1被膜層20が形成され、前記シリンダボア2の内周部2aに対向する前記第2スカート13の外周部13a上に第2被膜層30が形成される、内燃機関のピストン1であって、前記第1被膜層20には、前記第2被膜層30よりも多くの凹部21が形成され、前記第1被膜層20の特定部分20aにて単位面積中に前記凹部21により占められる領域の大きさが、前記特定部分20a以外の前記第1被膜層20の残部分20bにて単位面積中に前記凹部21により占められる領域の大きさよりも大きくなっている。
【0050】
このようなピストン1においては、第1スカート12上の第1被膜層20の凹部21、特に、第1被膜層20の特定部分20aの凹部21に溜まるオイルが、第2スカート13上の第2被膜層30の凹部31に溜まるオイルよりも多くなる。そのため、スラスト側の第1スカート12に作用する荷重が、反スラスト側の第2スカート13に作用する荷重よりも大きくなったとしても、スラスト側の第1被膜層20の耐焼き付き性能を、反スラスト側の第2被膜層30の耐焼き付き性能よりも高めることができる。
【0051】
そして、このようなピストン1を長期間に亘って使用したとしても、スラスト側の第1被膜層20の摩耗量と、反スラスト側の第2被膜層30の摩耗量とを実質的に等しくすることができる。そのため、ピストン1の初期状態の摺動性能を長期間に亘って維持することができる。よって、本実施形態に係るピストン1においては、ピストン1の摺動性能を効率的に向上させることができる。
【0052】
本実施形態に係るピストン1においては、前記第1被膜層20の特定部分20aが、前記長手方向にて、前記第1及び第2スカート12,13の外周部12a,13a上で規定される基準径を有する基準部分1aに配置されている。
【0053】
このようなピストン1においては、他の部分よりも大きな荷重を受ける基準部分1aに配置される第1被膜層20の特定部分20aに溜まるオイル溜まりを、他の部分のオイル溜まりよりも多くすることができる。そのため、スラスト側の第1被膜層20の特定部分20aにおける耐焼き付き性能を、第1被膜層20の残部分20b及び反スラスト側の第2被膜層30における耐焼き付き性能よりも高めることができる。よって、ピストン1の初期状態の摺動性能を長期間に亘って維持することができる。すなわち、ピストン1の摺動性能を効率的に向上させることができる。
【0054】
本実施形態に係る内燃機関のピストン1の製造方法は、直線状の長手軸線Lに沿って延びるシリンダボア2内にて前記シリンダボア2の内周部2aに対して前記長手軸線Lに沿った長手方向に摺動可能に構成される外周部11aを有するピストン本体11と、前記ピストン本体11の径方向に互いに対向しており、かつ前記ピストン本体11の外周部11aから前記シリンダボア2の底に向かって延びる2つのスカート12,13とを含む粗材10を備え、前記2つのスカート12,13が、前記スカート対向方向にてスラスト側に位置する第1スカート12と、前記スカート対向方向にて反スラスト側に位置する第2スカート13とから成り、かつ前記第1及び第2スカート12のそれぞれの外周部12a,13a上に被膜層20,30が形成される、内燃機関のピストン1の製造方法であって、前記ピストン1の粗材10を形作るべく、金属溶湯Eを前記第1スカート12の外周部12aの一部分12bに対応するように配置された金型40の流出口41から、前記ピストン1の粗材10の形状に適合するように形成された前記金型40のキャビティ部42に流し込む工程S1と、形作られた前記ピストン1の粗材10を前記金型40のキャビティ部42から取り出す工程S2と、取り出された前記ピストン1の粗材10の表面に露出したシリコンGをウォータージェット噴射によって除去する工程S5と、前記シリコンGを除去した前記ピストン1の粗材10の表面上に前記被膜層20,30を形成する工程S6とを含む。
【0055】
このような製造方法によって作製されるピストン1においては、第1スカート12上の第1被膜層20の凹部21、特に、第1被膜層20の特定部分20aの凹部21に溜まるオイルが、第2スカート13上の第2被膜層30の凹部31に溜まるオイルよりも多くなる。そのため、スラスト側の第1スカート12に作用する荷重が、反スラスト側の第2スカート13に作用する荷重よりも大きくなったとしても、スラスト側の第1被膜層20の耐焼き付き性能を、反スラスト側の第2被膜層30の耐焼き付き性能よりも高めることができる。
【0056】
そして、このようなピストン1を長期間に亘って使用したとしても、スラスト側の第1被膜層20の摩耗量と、反スラスト側の第2被膜層30の摩耗量とを実質的に等しくすることができる。そのため、ピストン1の初期状態の摺動性能を長期間に亘って維持することができる。よって、本実施形態に係るピストン1においては、ピストン1の摺動性能を効率的に向上させることができる。
【0057】
さらに、ピストン1の粗材10の表面に晶出したシリコンGを除去するために用いられるウォータージェット噴射は、ショットピーニング、混酸処理等と比較して、ピストン1の粗材10に与えるダメージを少なくできる。そのため、ピストン1の形状精度を高くすることができる。よって、本実施形態に係るピストン1の製造方法においては、ピストン1の摺動性能を効率的に向上させることができる。
【0058】
ここまで本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明は、その技術的思想に基づいて変形及び変更可能である。
【実施例
【0059】
「実施例」
実施例について説明する。実施例においては、上記実施形態に係る製造方法によって、Al-Si系のアルミニウム合金製の上記実施形態に係るピストン1を製造した。さらなる条件としては、鋳造工程S1においては、金属溶湯EをAl-Si系のアルミニウム合金の溶湯Eとした。熱処理工程S3においては、T6熱処理を実施した。シリコン除去工程S5においては、第1及び第2スカート12,13に対してのみウォータージェット噴射を施した。なお、ウォータージェット噴射における水Wの噴射圧力を約160MPaとした。
【0060】
このような実施例において、表面処理工程S6前のピストン1の粗材10における第1及び第2スカート12,13の表面を、約200倍の倍率に設定した光学顕微鏡によって観察した。さらに、第1スカート12の流出口対応部分12bに形成される複数の凹部12c及び第2スカート13に形成される複数の凹部13bのそれぞれの寸法を、その凹部13bの輪郭から任意に抽出された3点の測定点から導き出される直径によって得て、さらに、これらの寸法の平均値を算出した。表面処理工程S6後のピストン1における第1及び第2スカート12,13上の第1及び第2被膜層20,30の表面を、約40倍の倍率に設定したSEM(走査電子顕微鏡)によって観察した。
【0061】
「比較例」
比較例について説明する。比較例においては、シリコン除去工程を実施しない点を除いて実施例と同様の製造方法によって、Al-Si系のアルミニウム合金製のピストンの粗材を製造した。このような比較例において、表面処理工程前のピストンの粗材における第1及び第2スカートの表面を、約200倍の倍率に設定した光学顕微鏡によって観察した。表面処理工程後のピストンにおける第1及び第2スカート上の第1及び第2被膜層の表面を、約40倍の倍率に設定したSEMによって観察した。
【0062】
これら実施例及び比較例における光学顕微鏡の観察結果を対比すると、次のようなことが確認できた。実施例においては、第1スカート12の表面上における多数の凹部12cの存在と、第2スカート13の表面上における多数の凹部13bの存在とを確認できた。その一方で、比較例においては、第1及び第2スカートの表面が滑らかであることを確認した。すなわち、比較例においては、第1及び第2スカートの表面上における凹部の存在を確認できなかった。そのため、ウォータージェット噴射を行う表面処理工程によって、第1及び第2被膜層20,30の凹部21,31を形成するように、第1スカート12の凹部12c及び第2スカート13の凹部13bを確実に形成できることが確認できた。
【0063】
実施例において、第1スカート12の流出口対応部分12bの凹部12c及び第2スカート13の凹部13bにおける寸法の平均値を対比すると、次のようなことが確認できた。第1スカート12の流出口対応部分12bの凹部12cにおける寸法の平均値は、約44μmであった。第2スカート13の凹部13bにおける寸法の平均値は、約33μmであった。さらに、実施例における光学顕微鏡の観察結果によれば、第1スカート12の流出口対応部分12bに形成されるにおける複数の凹部12cが、第2スカート13における複数の凹部13bよりも密集していることが確認できた。そのため、実施例においては、第1被膜層20の特定部分20aに、良好なオイル溜まりをもたらす凹部21を形成するように、第1スカート12の流出口対応部分12bに凹部12cを確実に形成できることが確認できた。
【0064】
実施例及び比較例におけるSEMの観察結果を対比すると、次のようなことが確認できた。実施例においては、第1被膜層20における多数の凹部21の存在と、第2被膜層30における多数の凹部31の存在とを確認できた。比較例においては、第1及び第2被膜層の表面が滑らかであることを確認した。すなわち、比較例においては、第1及び第2被膜層における凹部の存在を確認できなかった。そのため、ウォータージェット噴射を行う表面処理工程によって、第1及び第2被膜層20,30の凹部21,31を確実に形成できることが確認できた。
【符号の説明】
【0065】
1…ピストン、1a…基準部分
2…シリンダボア、2a…内周部
10…粗材、11…ピストン本体、11a…外周部、12…第1スカート(スカート)、12a…外周部、12b…一部分(流出口対応部分)、13…第2スカート(スカート)、13a…外周部
20…被膜層、第1被膜層、20a…特定部分、20b…残部分、21…凹部
30…被膜層、第2被膜層
40…金型、41…流出口、42…キャビティ部
L…長手軸線、E…金属溶湯、G…シリコン、初晶シリコン
S1…鋳造工程(工程)、S2…取り出し工程(工程)、S5…シリコン除去工程(工程)、S6…表面処理工程(工程)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8