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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/621 20060101AFI20240801BHJP
   H01R 4/34 20060101ALI20240801BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20240801BHJP
   H01R 13/405 20060101ALI20240801BHJP
   H01R 13/6581 20110101ALI20240801BHJP
【FI】
H01R13/621
H01R4/34
H01R13/52 301H
H01R13/405
H01R13/6581
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021043144
(22)【出願日】2021-03-17
(65)【公開番号】P2022142890
(43)【公開日】2022-10-03
【審査請求日】2023-07-25
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【弁理士】
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【弁理士】
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】兼松 佑多
(72)【発明者】
【氏名】椋野 潤一
(72)【発明者】
【氏名】ビョン ソンヒョン
【審査官】高橋 裕一
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-189147(JP,A)
【文献】特開2009-032500(JP,A)
【文献】特開2016-192287(JP,A)
【文献】特開2004-273381(JP,A)
【文献】特開2011-222398(JP,A)
【文献】特表2013-502025(JP,A)
【文献】国際公開第2012/124801(WO,A1)
【文献】特開2011-76886(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01R4/24-4/46
H01R13/40-13/533
H01R13/56-13/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器に設けられた機器側端子部に接続されるコネクタであって、
電線端末に接続されたコネクタ側端子部と、
前記コネクタ側端子部を収容するハウジングと、を備え、
前記ハウジングは、
前記コネクタ側端子部と前記機器側端子部を締結する一組の締結部材の一方が収容された締結部材収容部と、
前記締結部材収容部に対して前記コネクタ側端子部を第1方向で重ね合わせて保持する端子保持部と、
前記端子保持部に対向しており、前記機器側端子部を前記コネクタ側端子部に前記第1方向で重ね合わせ可能に挿通する端子挿通部と、
前記第1方向で前記コネクタ側端子部に対向して配置され、前記コネクタ側端子部を外部に露出して前記一組の締結部材の他方が挿通可能な開口窓と、
前記開口窓を蓋覆するカバー部と、を有する
コネクタ。
【請求項2】
前記コネクタ側端子部は、前記電線に接続された電線接続部と、前記電線接続部から前記第1方向に延びる中間部と、前記中間部の先端から前記第1方向に交差する第2方向に屈曲する第1屈曲部を有し、前記第1屈曲部が前記第1方向で前記締結部材収容部に重ね合わされている、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記コネクタ側端子部は、前記電線接続部と前記中間部の間に位置して、前記中間部の基端から前記第2方向に屈曲する第2屈曲部を有し、
前記第2屈曲部は、前記中間部から前記第1屈曲部と同じ側に突出しており、前記第2屈曲部の突出寸法が前記第1屈曲部の突出寸法よりも小さい、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記ハウジングの前記端子挿通部は、前記機器に設けられて前記機器側端子部が配置された筒状の取付孔に挿入される筒状外面を有し、前記筒状外面に前記取付孔と前記筒状外面との間で挟持される環状のシール部材が装着されている、請求項1から請求項3のいずれか1項に記載のコネクタ。
【請求項5】
前記端子保持部に前記コネクタ側端子部が埋設されて、前記第1屈曲部が前記端子保持部の外面に露出しており、
前記端子保持部の外面に露出した前記第1屈曲部を外方から囲う中空ケース部を有し、前記中空ケース部が前記端子保持部に一体化されており、前記ハウジングが前記中空ケース部を含んでいる、請求項2または請求項3に記載のコネクタ。
【請求項6】
前記ハウジングにおいて、前記第1方向で前記第1屈曲部に対向する前記中空ケース部の第1面に前記開口窓が設けられており、前記第2方向で前記中間部と反対側から前記第1屈曲部に対向する前記中空ケース部の第2面に前記端子挿通部が設けられている、請求項5に記載のコネクタ。
【請求項7】
前記締結部材収容部は、前記端子保持部から露出する前記第1屈曲部に対して前記第1方向で前記中間部側に配置され、前記第2方向で前記中間部と反対側に開口している、請求項5または請求項6に記載のコネクタ。
【請求項8】
前記ハウジングを覆うシールドシェルを備え、
前記シールドシェルは、前記ハウジングの前記開口窓に前記第1方向で対向した部位を貫通して設けられたシェル開口部と、前記シェル開口部に着脱可能に組み付けられるシェル蓋部とを有する、請求項1から請求項7のいずれか1項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、機器に設けられた機器側端子部に電線を接続して配線するコネクタが開示されている。このコネクタは、機器に設けられたコネクタ取付部に対して装着されるコネクタ本体を備えている。機器に設けられたコネクタ取付部は、機器側端子部を保持する端子台を有し、機器側端子部に機器側の配線が接続されている。コネクタ本体は、ハウジングと、ハウジング内に収容された電線端末に接続されたコネクタ側端子部を有している。そして、コネクタ本体を取付部に装着した際に、コネクタ取付部の端子台に内蔵された締結部材により、端子台に保持された機器側端子部とコネクタ本体に収容されたコネクタ側端子部が相互に締結されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-26078号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1に示すコネクタでは、機器のコネクタ取付部を特殊な構造にする必要があり、機器側の構造が複雑になるおそれがあった。さらに、コネクタ取付部に機器側端子部とコネクタ側端子部を締結する締結部材が内蔵されており、機器の大型化や高コスト化を招くという問題を内在していた。
【0005】
そこで、機器側の構造の簡素化や機器の小型化を図ることができる、コネクタを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタは、機器に設けられた機器側端子部に接続されるコネクタであって、電線端末に接続されたコネクタ側端子部と、前記コネクタ側端子部を収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記コネクタ側端子部と前記機器側端子部を締結する一組の締結部材の一方が収容された締結部材収容部と、前記締結部材収容部に対して前記コネクタ側端子部を第1方向で重ね合わせて保持する端子保持部と、前記端子保持部に対向しており、前記機器側端子部を前記コネクタ側端子部に前記第1方向で重ね合わせ可能に挿通する端子挿通部と、前記第1方向で前記コネクタ側端子部に対向して配置され、前記コネクタ側端子部を外部に露出して前記一組の締結部材の他方が挿通可能な開口窓と、前記開口窓を蓋覆するカバー部と、を有するものである。
【発明の効果】
【0007】
本開示のコネクタによれば、機器側の構造の簡素化や機器の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1に係るコネクタを示す全体斜視図である。
図2図2は、図1に示されたコネクタにおける背面図である。
図3図3は、図1に示されたコネクタにおける側面図である。
図4図4は、図1に示されたコネクタにおける分解斜視図である。
図5図5は、図2におけるV-V断面図である。
図6図6は、図3におけるVI-VI断面図である。
図7図7は、図1に示されたコネクタを構成する二次成形品を示す斜視図である。
図8図8は、図7に示された二次成形品を別の角度から示す斜視図である。
図9図9は、図7に示された二次成形品における正面図である。
図10図10は、図7に示された二次成形品を構成する一次成形品を示す斜視図である。
図11図11は、図10に示された一次成形品を別の角度から示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)機器に設けられた機器側端子部に接続されるコネクタであって、電線端末に接続されたコネクタ側端子部と、前記コネクタ側端子部を収容するハウジングと、を備え、前記ハウジングは、前記コネクタ側端子部と前記機器側端子部を締結する一組の締結部材の一方が収容された締結部材収容部と、前記締結部材収容部に対して前記コネクタ側端子部を第1方向で重ね合わせて保持する端子保持部と、前記端子保持部に対向しており、前記機器側端子部を前記コネクタ側端子部に前記第1方向で重ね合わせ可能に挿通する端子挿通部と、前記第1方向で前記コネクタ側端子部に対向して配置され、前記コネクタ側端子部を外部に露出して前記一組の締結部材の他方が挿通可能な開口窓と、前記開口窓を蓋覆するカバー部と、を有するものである。
【0010】
本開示のコネクタによれば、機器側端子部に接続されるコネクタのハウジングにおいて、コネクタ側端子部と機器側端子部を締結する一組の締結部材の一方が収容された締結部材収容部が設けられている。そして、ハウジングに設けられた端子挿通部に対して、機器側端子部を挿通することにより、機器側端子部がハウジングに収容されて締結部材収容部に第1方向で重ね合わされたコネクタ側端子部に対して、同じ第1方向で重ね合わせることができる。さらに、ハウジングに設けられた開口窓は、第1方向でコネクタ側端子部に対向して配置されている。開口窓は、ハウジングに収容された一組の締結部材の一方に締結される一組の締結部材の他方が挿通可能な大きさで設けられている。それゆえ、機器にコネクタを装着した状態で、ハウジングの開口窓から締結部材の他方を締結部材の一方に組み付けることにより、コネクタ側端子部と機器側端子部を強固に締結することができる。したがって、機器側においてコネクタ側端子部と機器側端子部を締結する締結部材を内蔵する必要がなく、機器側の構造の簡素化や機器の小型化を図ることができる。
【0011】
(2)前記コネクタ側端子部は、前記電線に接続された電線接続部と、前記電線接続部から前記第1方向に延びる中間部と、前記中間部の先端から前記第1方向に交差する第2方向に屈曲する第1屈曲部を有し、前記第1屈曲部が前記第1方向で前記締結部材収容部に重ね合わされている、ことが好ましい。コネクタ側端子部が、第1方向に延びる中間部と、中間部の先端から第1方向に交差する第2方向に屈曲する第1屈曲部を有し、第1屈曲部が締結部材収容部に第1方向で重ね合わされている。これにより、L字型のコネクタ側端子部の内部領域を巧く利用して、スペース効率よく締結部材収容部をハウジングに設けることができる。その結果、コネクタの小型化も併せて図ることができる。
【0012】
(3)上記(2)において、前記コネクタ側端子部は、前記電線接続部と前記中間部の間に位置して、前記中間部の基端から前記第2方向に屈曲する第2屈曲部を有し、前記第2屈曲部は、前記中間部から前記第1屈曲部と同じ側に突出しており、前記第2屈曲部の突出寸法が前記第1屈曲部の突出寸法よりも小さい、ことが好ましい。コネクタ側端子部の中間部の先端と基端の両側に同じ側に突出する第1屈曲部と第2屈曲部が設けられており、第2屈曲部の突出寸法が第1屈曲部の突出寸法よりも小さい。これにより、第1方向の投影で、電線接続部に接続された電線とコネクタ側端子部を同心状やそれに近い状態で配置することができる。その結果、締結部材収容部のスペース効率のよい配置に加えて、電線とコネクタ側端子部のスペース効率のよい配置も実現でき、コネクタのさらなる小型化を図ることができる。
【0013】
(4)前記ハウジングの前記端子挿通部は、前記機器に設けられて前記機器側端子部が配置された筒状の取付孔に挿入される筒状外面を有し、前記筒状外面に前記取付孔と前記筒状外面との間で挟持される環状のシール部材が装着されている、ことが好ましい。機器側においては、機器側端子部が配置された筒状の取付孔を設けるだけでよく、機器側の構成の簡素化を図ることができる。また、機器内部のシール性も、コネクタのハウジングの端子挿通部の外面を、機器側の取付孔に対応した筒状外面とし、その外面に、取付孔と端子挿通部との間で挟持される環状のシール部材を装着すればよい。それゆえ、簡単な構造で機器側の防水性の向上も図ることができる。
【0014】
(5)上記(2)または(3)において、前記端子保持部に前記コネクタ側端子部が埋設されて、前記第1屈曲部が前記端子保持部の外面に露出しており、前記端子保持部の外面に露出した前記第1屈曲部を外方から囲う中空ケース部を有し、前記中空ケース部が前記端子保持部に一体化されており、前記ハウジングが前記中空ケース部を含んでいる、ことが好ましい。端子保持部に対してコネクタ側端子部が埋設状態で保持されていることから、端子保持部によりコネクタ側端子部が安定して保持される。また、端子保持部の外面に露出する第1屈曲部を囲う中空ケース部が端子保持部に一体化されていることから、端子保持部と中空ケース部が相互に別体とされて組み付けられる場合に比べて、部材間の隙間を通じての水の浸入が抑制されて、コネクタの防水性を向上させることができる。
【0015】
(6)上記(5)において、前記ハウジングにおいて、前記第1方向で前記第1屈曲部に対向する前記中空ケース部の第1面に前記開口窓が設けられており、前記第2方向で前記中間部と反対側から前記第1屈曲部に対向する前記中空ケース部の第2面に前記端子挿通部が設けられている、ことが好ましい。中空ケース部における第1面に開口窓が設けられると共に、中空ケース部において第1面とは異なる第2面に端子挿通部が設けられる。それゆえ、一組の締結部材の他方が挿通可能な開口窓を比較的大きく形成したり、機器側端子部が挿通される端子挿通部を比較的小さく形成することもできる。開口窓を大きく形成することで、開口窓を通じて挿通される締結部材の選択の自由度を向上させることができる。また、端子挿通部を小さく形成することで、端子挿通部の剛性を向上させたり、加工費を抑えてコストダウンを図ることができる。
【0016】
(7)上記(5)または(6)において、前記締結部材収容部は、前記端子保持部から露出する前記第1屈曲部に対して前記第1方向で前記中間部側に配置され、前記第2方向で前記中間部と反対側に開口している、ことが好ましい。例えば、コネクタ側端子部がインサートされた状態で締結部材収容部および端子保持部を成形した後、締結部材収容部に対して一組の締結部材の一方を、第2方向における中間部と反対側の開口から収容することができる。これにより、例えば、一組の締結部材の一方とコネクタ側端子部における第1屈曲部とが重ね合わされた状態でインサートされて締結部材収容部および端子保持部が成形される場合に比べて、第1屈曲部と一組の締結部材の一方との間に樹脂が入り込んで一組の締結部材の締結機能に悪影響を及ぼすおそれが低減され得る。
【0017】
(8)前記ハウジングを覆うシールドシェルを備え、前記シールドシェルは、前記ハウジングの前記開口窓に前記第1方向で対向した部位を貫通して設けられたシェル開口部と、前記シェル開口部に着脱可能に組み付けられるシェル蓋部とを有する、ことが好ましい。シールドシェルが第1方向でハウジングの開口窓に対応するシェル開口部と、シェル開口部に着脱可能に組み付けられるシェル蓋部を有している。それゆえ、シールドシェルを備えた場合でも、外部からの締結部材によるコネクタ側端子部と機器側端子部の締結を、適時行うことができる。
【0018】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のコネクタの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1のコネクタ10について、図1から図11を用いて説明する。コネクタ10は、インバータ等の機器の取付部11に取り付けられて、後述するコネクタ側端子部28が、機器に設けられた端子台12における機器側端子部14に電気的に接続される。機器側端子部14の先端部には、後述するコネクタ側端子部28と締結するための挿通孔15が形成されている。なお、コネクタ10は、任意の向きで配置することができるが、以下の説明において、上方とは図2中の上方、下方とは図2中の下方、左方とは図2中の左方、右方とは図2中の右方、前方とは図3中の左方、後方とは図3中の右方をいう。また、以下の説明において、上下方向を第1方向、第1方向と直交する方向である前後方向を第2方向という場合がある。さらに、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0020】
機器側端子部14を有するインバータ等の機器側の構造は限定されるものではないが、実施形態1では、機器における取付部11に、外部に向かって突出する筒状の取付孔18が設けられている。この取付孔18は、後述する端子挿通部48に対応する略長円形状の外形を有している。そして、取付孔18には、内孔20が前後方向で貫通して形成されており、当該内孔20を通じて、機器の内部(図3中の左方)から機器の外部(図3中の右方)に向かって機器側端子部14が突出して配置されている。特に、実施形態1では、一対の機器側端子部14,14が設けられており、左右方向で相互に離隔して対向している。これら機器側端子部14,14はそれぞれ、機器に設けられる端子台12によって保持されている。取付部11からは機器の外部に向かって一対の脚部22,22が突出しており、各脚部22の突出先端にボルト挿通孔24が形成されている。なお、図1から図6では、機器における取付部11を略平板状に省略して示している。
【0021】
<コネクタ10>
コネクタ10は、電線26の端末に接続されたコネクタ側端子部28と、コネクタ側端子部28を収容するハウジング30とを備えている。実施形態1では、上下方向に延びる一対の電線26,26が左右方向で相互に離隔して設けられており、各電線26の端末にそれぞれコネクタ側端子部28が接続されている。各電線26は、それぞれ被覆電線であり、芯線32が絶縁被覆34によって被覆されている。そして、各電線26の端部において絶縁被覆34が剥がされて芯線32が露出しており、露出した芯線32がコネクタ側端子部28の一方の端部(下端部)に圧着等の手段で固定されることによって、各電線26の端末にコネクタ側端子部28が電気的に接続されている。なお、各電線26の端末とコネクタ側端子部28との固定手段は限定されるものではなく、図5,6中では、各電線26の端末とコネクタ側端子部28とを単に隣接した状態で示している。
【0022】
<コネクタ側端子部28>
各コネクタ側端子部28は、例えば導電性を有する金属製のバスバー等により形成されており、略一定の幅寸法(左右方向寸法)を有する金属素板を所定の形状に折り曲げることで形成されている。各コネクタ側端子部28は、各電線26に接続された電線接続部36と、電線接続部36から第1方向である上下方向に延びる中間部38と、中間部38の先端から第2方向である前後方向に屈曲する第1屈曲部40とを有している。実施形態1では、所定の上下方向寸法を有する電線接続部36に対して中間部38が上方に延びており、中間部38の先端である上端から第1屈曲部40が前方に突出して延びている。
【0023】
第1屈曲部40の中央部分には、機器側端子部14と締結するための挿通孔41が、板厚方向(上下方向)で貫通して形成されている。また、中間部38の上下方向中間部分には、板厚方向(前後方向)で貫通する貫通孔42が形成されている。これにより、後述する端子保持部46の成形時に、端子保持部46を構成する樹脂材料が、貫通孔42を通じて中間部38を挟んだ一方から他方へ流動することができるようになっている。
【0024】
また、各コネクタ側端子部28は、電線接続部36と中間部38との間に位置して、中間部38の基端である下端から第2方向に屈曲する第2屈曲部43を有している。各第2屈曲部43は、中間部38から第1屈曲部40と同じ側である前方に突出して延びている。そして、第2屈曲部43は、突出先端である前端において、電線接続部36に接続されている。第1屈曲部40および第2屈曲部43はそれぞれ所定の前後方向寸法を有しており、実施形態1では、図5に示されるように、第2屈曲部43における中間部38からの突出寸法Aが、第1屈曲部40における中間部38からの突出寸法Bよりも小さくされている。
【0025】
<ハウジング30>
以下、先ずはハウジング30の構造を簡単に説明する。ハウジング30は、コネクタ側端子部28と機器側端子部14とを締結する一組の締結部材の一方が収容された締結部材収容部44と、締結部材収容部44に対してコネクタ側端子部28を第1方向(上下方向)で重ね合わせて保持する端子保持部46と、を備えている。また、ハウジング30は、端子保持部46に対向すると共に、機器側端子部14をコネクタ側端子部28に第1方向(上下方向)で重ね合わせ可能に挿通する端子挿通部48を備えている。さらに、ハウジング30は、第1方向(上下方向)でコネクタ側端子部28に対して対向して配置されると共に、コネクタ側端子部28を外部に露出して一組の締結部材の他方が挿通可能な開口窓50と、開口窓50を蓋覆するカバー部52とを備えている。
【0026】
実施形態1では、一組の締結部材がナット54およびボルト56である。そして、一組の締結部材の一方であるナット54が締結部材収容部44に収容されると共に、一組の締結部材の他方であるボルト56が開口窓50から挿通可能とされる。
【0027】
ハウジング30は、全体として合成樹脂により形成されている。ハウジング30は、図7から図9にも示されるように、内部空間を有する中空形状であり、中空ケース部58を備えている。そして、中空ケース部58の第1面となる上面が略全面にわたって開口して、前述の開口窓50が形成されている。開口窓50の開口周縁部において、中空ケース部58の外周面における左右方向両側には、左右方向外方に突出するカバー部用係合突部59aが設けられている。また、中空ケース部58の下方部分において、外周面における左右方向両側には、左右方向外方に突出するシェル用係合突部59bが設けられている。
【0028】
中空ケース部58の第2面となる前面において前方に突出する前述の端子挿通部48が形成されている。端子挿通部48は、筒状外面60を有する略筒状であり、取付部11の取付孔18と略対応する長円形状である。実施形態1では、端子挿通部48の長さ方向(前後方向)の略全長にわたって筒状外面60が設けられている。そして、端子挿通部48の筒状外面60には、周方向の全周にわたって外周側に開口する凹溝62が形成されている。この凹溝62には、ゴム等の弾性体からなる環状のシール部材64が装着される。後述するように機器の取付部11にコネクタ10を取り付けた際には、取付孔18に、筒状外面60を有する端子挿通部48が挿入される。これにより、取付孔18の内周面と端子挿通部48の筒状外面60との間でシール部材64が圧縮状態で挟持されて、取付孔18と端子挿通部48との間が液密的に封止されるようになっている。
【0029】
中空ケース部58の内部空間における下方は、電線26および電線26に接続されたコネクタ側端子部28を保持する端子保持部46により閉塞されている。端子保持部46の下方端部からは、電線26においてコネクタ側端子部28に接続された側と反対側が突出して延び出している。ハウジング30においてこれら電線26およびコネクタ側端子部28を保持する部分(端子保持部46)の外周面には、周方向の全周にわたって外周側に開口する凹溝66が形成されている。この凹溝66には、ゴム等の弾性体からなる環状のシール部材68が装着される。そして、後述するようにハウジング30の下端部分に略筒状の後述するシールドシェル106における電線側固定部132が外挿装着された際に、シール部材68が圧縮されて、ハウジング30と電線側固定部132との間が液密的に封止されるようになっている。
【0030】
また、ハウジング30の下方部分における後面には、略円形の収容凹部70が設けられている。収容凹部70にはナット72が収容されており、必要に応じて固定されている。
【0031】
<カバー部52>
ハウジング30において、内部空間の上方開口部となる開口窓50を蓋覆するカバー部52は、上下方向と直交する方向に広がる略矩形板状のベース板部80を備えている。ベース板部80の外周部分には、周方向の全周にわたって下方に突出する周壁82が設けられていると共に、周壁82の下方端部には、周方向の全周にわたって外周側に突出する外周突部84が設けられている。これにより、ベース板部80の外周端部と外周突部84との上下方向間には、周方向の全周にわたって外周側に開口する周溝86が形成されている。この周溝86には、ゴム等の弾性体からなる環状のOリング88が装着されている。また、ベース板部80の外周端部における左右方向両側には、下方に突出する係合枠体90が設けられている。さらに、ベース板部80の上面において、左右方向両側および前後方向両側には、それぞれ所定の長さ寸法をもって上方に突出する位置決め突部92が設けられている。
【0032】
そして、ベース板部80の中央部分には、略筒状の収容筒部94が上方に突出して設けられている。収容筒部94にはナット96が収容されており、必要に応じて固定されている。
【0033】
このようなハウジング30の製造方法は限定されるものではないが、実施形態1では、先ず、図10および図11に示される一次成形品98を形成する。その後、図7から図9に示される二次成形品100を形成して、二次成形品100における上方の開口窓50をカバー部52で蓋覆することで、ハウジング30を形成する。以下、ハウジング30を構成する一次成形品98および二次成形品100の構造について詳細に説明する。
【0034】
<一次成形品98>
図10および図11に示す一次成形品98は、成形用のキャビティの内部に各電線26および各電線26の端末に接続されたコネクタ側端子部28をセット(インサート)した状態で樹脂材料を充填して成形することで、各電線26およびコネクタ側端子部28を備えた一体成形品として形成される。この一次成形品98を構成する合成樹脂が、各電線26およびコネクタ側端子部28を保持する端子保持部46である。
【0035】
この端子保持部46は、電線26におけるコネクタ側端子部28が接続される側の端部と、コネクタ側端子部28における電線接続部36、第2屈曲部43および中間部38の略全体とを覆って固着されている。すなわち、端子保持部46にコネクタ側端子部28が埋設されており、コネクタ側端子部28における第1屈曲部40と中間部38の上端部が、端子保持部46の外面に露出している。なお、中間部38には板厚方向(前後方向)で貫通する貫通孔42が形成されている。これにより、端子保持部46を構成する樹脂が貫通孔42を通じて中間部38を挟んだ内外に流動することができると共に、貫通孔42内に入り込んだ樹脂により、コネクタ側端子部28が端子保持部46に対してより強固に保持される。
【0036】
この一次成形品98に、一組の締結部材の一方であるナット54が収容される締結部材収容部44が設けられている。実施形態1では、締結部材収容部44が第1屈曲部40に第1方向(上下方向)で重ね合わされて形成されている。具体的には、締結部材収容部44が、第1屈曲部40に対して中間部38側となる下方に配置されている。すなわち、端子保持部46の上端部には、上方および前方に開口して略矩形断面を有する凹部が左右方向で相互に離隔して一対設けられており、当該凹部の上方開口部が各コネクタ側端子部28における第1屈曲部40で覆蓋される。これにより、前方に開口する締結部材収容部44が、左右方向で相互に離隔して一対設けられている。したがって、各締結部材収容部44は、第2方向(前後方向)において中間部38と反対側となる前方に開口している(図11参照)。
【0037】
なお、各締結部材収容部44の内面における左右方向両側面には、左右方向内方に突出する圧接リブ102が前後方向に延びて設けられている。実施形態1では、締結部材収容部44の左右方向一方の内面において一対の圧接リブ102,102が上下方向で相互に離隔して設けられており、各締結部材収容部44のそれぞれにおいて合計で4つの圧接リブ102が設けられている。
【0038】
また、一次成形品98における端子保持部46において、前端面には、前方に開口する一対の収容溝部104,104が左右方向で相互に離隔して形成されている。各収容溝部104は、上下方向に延びて形成されており、各収容溝部104の上端部が各締結部材収容部44の下端に開口して相互に連通している。各収容溝部104は、所定の幅寸法(左右方向寸法)と深さ寸法(前後方向寸法)を有している。具体的には、各収容溝部104の幅寸法は、ボルト56の軸部56aにおける外径寸法より僅かに大きくされていると共に、各収容溝部104の深さ寸法は、各収容溝部104が上下方向の投影で第1屈曲部40における挿通孔41と重なるように設定されている。
【0039】
上記の一次成形品98における各締結部材収容部44に対して、前方から一組の締結部材の一方であるナット54が圧入状態で収容される。その際、ナット54の左右方向外面に対して各締結部材収容部44における圧接リブ102の突出先端が僅かに押し潰されることで、各締結部材収容部44内におけるナット54のがたつきが防止される。各締結部材収容部44にナット54が収容された状態では、コネクタ側端子部28における第1屈曲部40とナット54とが上下方向で僅かな隙間をもって対向している。
【0040】
<二次成形品100>
そして、二次成形品100の成形用のキャビティの内部に各ナット54が組み付けられた一次成形品98をセット(インサート)した状態で樹脂材料を充填して成形することで、図7から図9に示す二次成形品100が、一次成形品98および各ナット54を備えた一体成形品として形成される。二次成形品100では、端子保持部46の外面に露出したコネクタ側端子部28における第1屈曲部40と中間部38の上端部とを外方から囲う中空ケース部58が設けられており、中空ケース部58が端子保持部46に一体化されている(図5参照)。なお、端子保持部46を構成する合成樹脂と中空ケース部58を構成する合成樹脂とは、相互に同じであってもよいし、異なっていてもよい。端子保持部46を構成する合成樹脂と中空ケース部58を構成する合成樹脂とは、要求される特性等に応じて適切に選択され得る。
【0041】
この二次成形品100における中空ケース部58の上端は、一次成形品98の上端より上方に位置しており、中空ケース部58の上方開口部である開口窓50が、一次成形品98の上端である第1屈曲部40と上下方向で対向している。換言すれば、コネクタ側端子部28における第1屈曲部40が、開口窓50を通じて外部に露出している。また、中空ケース部58における前面から前方に突出する端子挿通部48は、第1屈曲部40の前方に位置しており、端子挿通部48が、第2方向(前後方向)で中間部38と反対側から第1屈曲部40に対向している。したがって、コネクタ側端子部28における第1屈曲部40が、端子挿通部48を通じて外部に露出している。
【0042】
特に、実施形態1では、第1屈曲部40の下方に重ね合わされるナット54が、端子挿通部48を通じて外部に部分的に露出している。要するに、ナット54の下端が、端子挿通部48における下方の内面よりも下方に位置している。さらに、中空ケース部58は、一次成形品98(端子保持部46)の下方部分を部分的に覆っており、中空ケース部58の下端において、シール部材68を収容する凹溝66が形成されている。
【0043】
このようにして形成された二次成形品100の開口窓50にカバー部52が組み付けられる。すなわち、開口窓50の開口周縁部にカバー部52のベース板部80における外周端部が上下方向で重ね合わされて、カバー部用係合突部59aが係合枠体90に係止される。これにより、開口窓50がカバー部52により蓋覆されてハウジング30が構成される。このようにカバー部52を開口窓50に組み付けることで、カバー部52に設けられたOリング88が、周壁82と中空ケース部58の上端部との径方向間で圧縮されて、二次成形品100とカバー部52との間の隙間が液密的に封止される。
【0044】
<シールドシェル106>
図1から図6に示すように、コネクタ10は、ハウジング30を覆うシールドシェル106を備えている。シールドシェル106は、導電性を有する金属により形成されている。具体的には、シールドシェル106は、ハウジング30において内部に空間を有する中空ケース部58を後方から覆う筐体側固定部107を有している。筐体側固定部107は、相互に離隔して左右方向で対向する一対の側壁部108,108と、これら一対の側壁部108,108を後方において相互に連結する連結壁部110とを備えている。連結壁部110の下端には、下方に突出する接続部112が形成されており、接続部112の中央部分には板厚方向(前後方向)で貫通するボルト挿通孔114が設けられている。筐体側固定部107の上部には、ハウジング30における開口窓50に第1方向(上下方向)で対向した部位を上下方向で貫通するシェル開口部116が形成されている。実施形態1では、筐体側固定部107の上側の壁部の略全体に、上下方向で貫通するシェル開口部116が設けられている。
【0045】
各側壁部108の上端部には前方に突出する取付片118が設けられており、取付片118の突出先端部(前端部)には上下方向で貫通するボルト挿通孔120が形成されている。各側壁部108の下方部分には、板厚方向(左右方向)で貫通する係合孔122が形成されている。なお、シェル開口部116において前後方向中間部分は、開口幅寸法(左右方向幅寸法)が大きくされている。それゆえ、後述するように二次成形品100に筐体側固定部107が固定された状態でも、シェル開口部116を通じて二次成形品100の開口窓50にカバー部52を組み付けることが可能である。
【0046】
シールドシェル106は、シェル開口部116に着脱可能に組み付けられるシェル蓋部124を有している。シェル蓋部124は、下方に開口する略箱状であり、略矩形状の上底壁部126と、上底壁部126の外周縁部から下方に突出する周壁部128とを備えている。上底壁部126の中央部分には、上下方向で貫通するボルト挿通孔130が形成されている。
【0047】
さらに、シールドシェル106は、ハウジング30の下方部分(電線26およびコネクタ側端子部28を保持する部分であって、端子保持部46)に外挿装着される略筒状の電線側固定部132を有している。端子保持部46から下方に突出する各電線26は、電線側固定部132の下方開口部を通じて電線側固定部132よりも下方まで突出している。電線側固定部132の後方部分には、板厚方向(前後方向)で貫通するボルト挿通孔134が形成されている。
【0048】
また、電線側固定部132の下方部分は、上方部分よりも小径であり、当該小径部分には金属製のかしめバンド136が外挿装着されている。すなわち、電線側固定部132の下方部分に、例えば金属製の細線等からなる図示しない編組体が外挿されて、当該編組体の外側からかしめバンド136が装着されて電線側固定部132に編組体が固定される。これにより、電線側固定部132から下方に突出する各電線26が編組体により覆われて、当該編組体をアース接続することで各電線26を電磁的にシールドすることができる。
【0049】
<コネクタ10の組立ておよびコネクタ10の取付部11への取付け>
以下、コネクタ10の組立方法およびコネクタ10を機器における取付部11へ取り付ける方法を説明する。なお、以下に説明するコネクタ10の組立方法や、コネクタ10の取付部11への取付方法は単なる例示であって、限定されるものではない。
【0050】
先ず、二次成形品100を準備して、各凹溝62,66にシール部材64,68を装着する。そして、この二次成形品100の端子挿通部48を相手方である機器の取付部11における取付孔18に挿入する。これにより、取付孔18を通じて機器の内部から外部へ突出する機器側端子部14を、端子挿通部48を通じて二次成形品100の内部空間に挿入して、コネクタ側端子部28における第1屈曲部40に対して上方から重ね合わせる。なお、取付孔18への端子挿通部48の挿入は、取付孔18の突出先端が二次成形品100に対して当接することで規制されて、それ以上の挿入が制限される。そして、このように取付孔18を端子挿通部48への挿入が制限されるまで挿入した状態では、機器側端子部14における挿通孔15と第1屈曲部40における挿通孔41とが第1方向(上下方向)で相互に位置合わせされる。
【0051】
続いて、相互に位置合わせされた両挿通孔15,41に対して各ボルト56を挿通してナット54に締結する。各ナット54を貫通したボルト56の軸部56aは、ナット54の下方に位置する収容溝部104に収容される。これにより、機器側端子部14とコネクタ側端子部28を相互に重ね合わせた状態で固定する。その後、二次成形品100における開口窓50に対してカバー部52を組み付けて固定する。
【0052】
次に、二次成形品100の下方から電線側固定部132およびかしめバンド136を外挿して組み付ける。また、二次成形品100の後方から筐体側固定部107を接近させて、各シェル用係合突部59bを筐体側固定部107の各係合孔122に係合させる。これにより、ナット72の内孔と電線側固定部132のボルト挿通孔134と接続部112のボルト挿通孔114とを前後方向で位置合わせする。これらのボルト挿通孔134,114に対して後方からボルト138を挿通してナット72に締結することで、二次成形品100に対して筐体側固定部107および電線側固定部132を固定する。さらに、カバー部52に対して上方からシェル蓋部124を重ね合わせる。カバー部52の各位置決め突部92がシェル蓋部124の周壁部128に対して内側から当接することで、カバー部52とシェル蓋部124とが簡易的に位置決めされる。これにより、カバー部52のナット96の内孔とシェル蓋部124のボルト挿通孔130とを上下方向で位置合わせして、上方からボルト140を挿通してナット96に締結することで、カバー部52に対してシェル蓋部124を固定する。この結果、コネクタ10が完成する。
【0053】
さらに、取付部11における各脚部22に筐体側固定部107の各取付片118を上方から重ね合わせて、両ボルト挿通孔24,120を相互に位置合わせする。そして、これらボルト挿通孔24,120にボルト142を挿通して締結する。これにより、コネクタ10を機器における取付部11に取り付ける。
【0054】
なお、二次成形品100に対して筐体側固定部107や電線側固定部132、カバー部52、シェル蓋部124を組み付ける順番等は限定されるものではなく、二次成形品100に筐体側固定部107および電線側固定部132を組み付けた後に、カバー部52およびシェル蓋部124を組み付けてもよい。また、メンテナンス等に際して、ボルト56とナット54との締結を解除する際には、二次成形品100に筐体側固定部107を固定した状態でも、シェル開口部116を通じてシェル蓋部124およびカバー部52を取り外すことができる。これにより、開口窓50を通じてボルト56とナット54との締結を解除することができる。
【0055】
実施形態1のコネクタ10によれば、ハウジング30の内部に、一組の締結部材の一方であるナット54と、一組の締結部材の他方であるボルト56の両方が収容配置されている。そして、機器側端子部14とコネクタ側端子部28とが、これらボルト56とナット54とにより締結されることから、機器側端子部14とコネクタ側端子部28とを強固に接続することができる。また、一組の締結部材(ボルト56およびナット54)の両方がコネクタ10に設けられることから、例えば一組の締結部材の何れをも機器側に設けることがなく、機器側の構造を簡単にしたり機器の小型化を図ることができる。特に、ナット54は、機器側端子部14やコネクタ側端子部28とは別体とされている。それゆえ、機器側端子部14やコネクタ側端子部28に特別な加工を行うことを回避しつつ、十分な締結長さをもってボルト56とナット54とを締結させることができる。
【0056】
コネクタ側端子部28は、第1屈曲部40と、第1屈曲部40に対して屈曲する中間部38とを備えており、これら略L字状に配置された第1屈曲部40と中間部38との内部空間に締結部材収容部44が設けられて、ナット54が収容されている。それゆえ、コネクタ側端子部28の内部空間に巧くナット54を配置することができて、コネクタ10の小型化を図ることができる。
【0057】
さらに、コネクタ側端子部28は、第2屈曲部43を備えており、第1屈曲部40と中間部38と第2屈曲部43とで囲まれた領域に、ナット54だけでなく、ナット54に挿通されるボルト56の軸部56aも収容されるようになっている。これにより、更なる構造の簡素化やコネクタ10の小型化が図られる。特に、中間部38からの第1屈曲部40の突出寸法Bに比べて、中間部38からの第2屈曲部43の突出寸法Aが小さくされている。これにより、図5にも示されるように、上下方向の投影で、第1屈曲部40に挿通されるボルト56と第2屈曲部43の突出先端の下方に位置する電線26とが略重なっている。この結果、コネクタ10における前後方向寸法(図5中の左右方向寸法)を小さく抑えることができて、コネクタ10の一層の小型化が図られる。
【0058】
機器側の取付部11には取付孔18が設けられており、コネクタ10を機器側の取付部11に取り付ける際には、コネクタ10の端子挿通部48が取付孔18に挿入されるようになっている。そして、端子挿通部48にはシール部材64が外挿装着されており、端子挿通部48の取付孔18への挿入時にシール部材64が圧縮される。これにより、コネクタ10と機器の取付部分における防水性が確保される。
【0059】
実施形態1では、ハウジング30を製造するに際して、電線26およびコネクタ側端子部28を備える一次成形品98を形成して、一次成形品98にナット54を組み付けた後、二次成形品100を形成している。このように、成形を複数回に分けて行うことで、比較的複雑な構造のハウジング30も容易に形成することができる。特に、二次成形品100において端子保持部46と中空ケース部58とが相互に一体化されることから、端子保持部46と中空ケース部58との間の隙間を通じての水の浸入がより確実に防止され得る。
【0060】
中空ケース部58の第1面となる上面に開口窓50が設けられていると共に、中空ケース部58の第2面となる前面に端子挿通部48が設けられている。このように開口窓50と端子挿通部48とが、それぞれ中空ケース部58における別々の面に設けられていることから、例えば開口窓50を大きく形成したり端子挿通部48を小さく形成することができる。開口窓50を大きく形成することで、開口窓50を通じて挿通される一組の締結部材の他方(実施形態1ではボルト56)における選択の自由度を向上させることができる。また、端子挿通部48を小さく形成することで、端子挿通部48における剛性を向上させることができたり、中空ケース部58に端子挿通部48を形成するための加工費を小さく抑えることができる。それに加えて、取付孔18も小さくできることから、取付孔18における剛性を向上させることができたり、取付部11に取付孔18を形成するための加工費を小さく抑えることもできる。
【0061】
一次成形品98において、締結部材収容部44は第2方向で中間部38と反対側(前方)に開口しており、一次成形品98に対して前方からナット54が組み付けられるようになっている。これにより、例えば一次成形品の成形に際して、成形用のキャビティ内に電線26およびコネクタ側端子部28に加えてナット54をセット(インサート)して成形する場合に比べて、コネクタ側端子部28とナット54との間に樹脂が入り込むおそれが低減される。この結果、コネクタ側端子部28とナット54との間に入り込んだ樹脂により、ボルト56とナット54との締結に悪影響が及ぼされるおそれが低減されて、ボルト56とナット54とをより確実に締結することができる。
【0062】
コネクタ10は、ハウジング30を覆うシールドシェル106を備えている。シールドシェル106は、相互に連結される筐体側固定部107と電線側固定部132とを備えており、例えば電線側固定部132に各電線26を外側から覆う金属製の編組線を電気的に接続することができる。これにより、筐体側固定部107や電線側固定部132、編組線等によって、各電線26やコネクタ側端子部28等を電磁的にシールドすることができる。また、筐体側固定部107のシェル開口部116に着脱可能にシェル蓋部124が組み付けられている。それゆえ、二次成形品100に筐体側固定部107が組み付けられた状態でも、シェル蓋部124およびカバー部52を取り外して、ボルト56とナット54との締結を解除することができる。
【0063】
<変形例>
以上、本開示の具体例として、実施形態1について詳述したが、本開示はこの具体的な記載によって限定されない。本開示の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本開示に含まれるものである。例えば次のような実施形態の変形例も本開示の技術的範囲に含まれる。
【0064】
(1)前記実施形態では、ハウジング30が、一次成形品98にナット54を組み付けた後に二次成形品100を形成して、二次成形品100にカバー部52を組み付けることで構成されていたが、この態様に限定されるものではない。例えば、端子挿通部を大きく形成することで、ハウジングの成形後に端子挿通部を通じて締結部材収容部に対して前方からナットを組み付けることも可能である。その場合、端子保持部と中空ケース部とは前記実施形態のように別々に成形してもよいが、一体成形により形成してもよい。このように、端子挿通部を大きくして、ナットを、端子挿通部を通じて前方から組み付けることで、ハウジングの製造の容易化を図ることができる。あるいは、成形用のキャビティ内に電線およびコネクタ側端子部だけでなく一組の締結部材の一方(前記実施形態ではナット54)をセット(インサート)して端子保持部を成形してもよい。この場合においても、端子保持部と中空ケース部とを順次成形して形成してもよいし、一体成形により形成してもよい。
【0065】
(2)前記実施形態では、一組の締結部材としてボルト56およびナット54が例示されていたが、これに限定されるものではない。また、ボルトとナットが採用される場合であっても、締結部材収容部にナットが収容されて、開口窓を通じてボルトが挿通される態様に限定されるものではない。例えば、締結部材収容部に一組の締結部材の一方であるボルトの頭部を配置して、ボルトの軸部をコネクタ側端子部の第1屈曲部に設けた挿通部を通じて上方に突出させると共に、機器側端子部には、先端部に、ボルトの軸部を挿入可能で外方に開口する凹部を設ける。このようなコネクタを機器の取付部に取り付けることで、機器側端子部の凹部に、上方に突出するボルトの軸部を挿入すると共に、開口窓から一組の締結部材の他方であるナットを挿し入れてボルトに締結する。これにより、機器側端子部とコネクタ側端子部が重ね合わされて締結されて、前記実施形態と同様の効果が発揮され得る。
【符号の説明】
【0066】
10 コネクタ
11 取付部
12 端子台
14 機器側端子部
15 挿通孔
18 取付孔
20 内孔
22 脚部
24 ボルト挿通孔
26 電線
28 コネクタ側端子部
30 ハウジング
32 芯線
34 絶縁被覆
36 電線接続部
38 中間部
40 第1屈曲部
41 挿通孔
42 貫通孔
43 第2屈曲部
44 締結部材収容部
46 端子保持部
48 端子挿通部
50 開口窓
52 カバー部
54 ナット(一組の締結部材の一方)
56 ボルト(一組の締結部材の他方)
56a 軸部
58 中空ケース部
59a カバー部用係合突部
59b シェル用係合突部
60 筒状外面
62 凹溝
64 シール部材
66 凹溝
68 シール部材
70 収容凹部
72 ナット
80 ベース板部
82 周壁
84 外周突部
86 周溝
88 Oリング
90 係合枠体
92 位置決め突部
94 収容筒部
96 ナット
98 一次成形品
100 二次成形品
102 圧接リブ
104 収容溝部
106 シールドシェル
107 筐体側固定部
108 側壁部
110 連結壁部
112 接続部
114 ボルト挿通孔
116 シェル開口部
118 取付片
120 ボルト挿通孔
122 係合孔
124 シェル蓋部
126 上底壁部
128 周壁部
130 ボルト挿通孔
132 電線側固定部
134 ボルト挿通孔
136 かしめバンド
138,140,142 ボルト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11