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特許7530591メタマテリアル装置、無線送電装置、無線受電装置、及び無線電力電送システム
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】メタマテリアル装置、無線送電装置、無線受電装置、及び無線電力電送システム
(51)【国際特許分類】
   H01P 1/00 20060101AFI20240801BHJP
   H01F 38/14 20060101ALI20240801BHJP
   H01P 7/08 20060101ALI20240801BHJP
   H02J 50/12 20160101ALI20240801BHJP
   H02J 50/70 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
H01P1/00 Z
H01F38/14
H01P7/08
H02J50/12
H02J50/70
【請求項の数】 14
(21)【出願番号】P 2020100286
(22)【出願日】2020-06-09
(65)【公開番号】P2021197565
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000002945
【氏名又は名称】オムロン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(74)【代理人】
【識別番号】100101454
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 卓二
(74)【代理人】
【識別番号】100189555
【弁理士】
【氏名又は名称】徳山 英浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091524
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 充夫
(72)【発明者】
【氏名】小野坂 健
(72)【発明者】
【氏名】長岡 真吾
(72)【発明者】
【氏名】冨田 知志
【審査官】赤穂 美香
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-260965(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0386398(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0062215(US,A1)
【文献】米国特許第07525711(US,B1)
【文献】米国特許出願公開第2005/0200540(US,A1)
【文献】特開平10-270290(JP,A)
【文献】特開2010-010183(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01P 1/00
H01F 38/14
H01P 7/08
H02J 50/12
H02J 50/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置であって、
前記各単位セルは、
互いに対向する第1及び第2の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1及び第2の面の少なくとも一方に形成された複数の導体素子であって、互いに異なるサイズを有しかつ入れ子式に配置されたループの形状をそれぞれ有し、前記各ループの一部にギャップをそれぞれ有する複数の導体素子と、
前記複数の導体素子のうちの互いに隣接する各一対の導体素子にわたって装荷された少なくとも1つの第1の容量結合素子であって、当該一対の導体素子が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該一対の導体素子を互いに容量的に結合する少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備え、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数のチップキャパシタである、
タマテリアル装置。
【請求項2】
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置であって、
前記各単位セルは、
互いに対向する第1及び第2の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1及び第2の面の少なくとも一方に形成された複数の導体素子であって、互いに異なるサイズを有しかつ入れ子式に配置されたループの形状をそれぞれ有し、前記各ループの一部にギャップをそれぞれ有する複数の導体素子と、
前記複数の導体素子のうちの互いに隣接する各一対の導体素子にわたって装荷された少なくとも1つの第1の容量結合素子であって、当該一対の導体素子が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該一対の導体素子を互いに容量的に結合する少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備え、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数の誘電体チップである、
タマテリアル装置。
【請求項3】
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置であって、
前記各単位セルは、
互いに対向する第1及び第2の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1及び第2の面の少なくとも一方に形成された複数の導体素子であって、互いに異なるサイズを有しかつ入れ子式に配置されたループの形状をそれぞれ有し、前記各ループの一部にギャップをそれぞれ有する複数の導体素子と、
前記複数の導体素子のうちの互いに隣接する各一対の導体素子にわたって装荷された少なくとも1つの第1の容量結合素子であって、当該一対の導体素子が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該一対の導体素子を互いに容量的に結合する少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備え、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は、前記導体素子のループに沿って形成された誘電体素子である、
タマテリアル装置。
【請求項4】
前記各導体素子のギャップにわたって装荷された第2の容量結合素子であって、前記ギャップの両側における導体素子の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子の各部分を互いに容量的に結合する第2の容量結合素子をさらに備えた、
請求項1~のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項5】
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置であって、
前記各単位セルは、
互いに対向する第1及び第2の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1及び第2の面の少なくとも一方において渦巻きの形状を有するように形成された導体素子と、
前記導体素子の渦巻きの放射方向において互いに隣接する前記導体素子の各部分にわたって装荷された少なくとも1つの第1の容量結合素子であって、当該導体素子の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子の各部分を互いに容量的に結合する少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備えた、
メタマテリアル装置。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数のチップキャパシタである、
請求項記載のメタマテリアル装置。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数の誘電体チップである、
請求項記載のメタマテリアル装置。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は、前記導体素子の渦巻きに沿って形成された誘電体素子である、
請求項記載のメタマテリアル装置。
【請求項9】
前記各単位セルは、前記誘電体基板の前記第1及び第2の面のそれぞれにおいて、前記導体素子及び前記第1の容量結合素子を備えた、
請求項1~のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項10】
前記誘電体基板は、積層された第1~第3の誘電体層を備え、前記第3の誘電体層は、前記第1及び第2の誘電体層の間に設けられ、前記第1及び第2の誘電体層の誘電率よりも高い誘電率を有する、
請求項記載のメタマテリアル装置。
【請求項11】
前記各単位セルは、
積層された複数の誘電体基板と、
前記複数の誘電体基板のそれぞれに形成された前記導体素子と、
前記複数の誘電体基板のうちの少なくとも1つに形成された前記第1の容量結合素子とを備えた、
請求項1~10のうちの1つに記載のメタマテリアル装置。
【請求項12】
請求項1~11のうちの1つに記載のメタマテリアル装置と、
送電コイルと、
前記送電コイルに高周波電力を供給する送電回路とを備えた、
無線送電装置。
【請求項13】
請求項1~11のうちの1つに記載のメタマテリアル装置と、
受電コイルと、
前記受電コイルを介して高周波電力を受ける受電回路とを備えた、
無線受電装置。
【請求項14】
請求項12記載の無線送電装置と、
請求項13記載の無線受電装置とを含む、
無線電力伝送システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電磁波に対して負の透磁率を有するメタマテリアル装置に関する。本開示はまた、そのようなメタマテリアル装置を備えた無線送電装置、無線受電装置、及び無線電力電送システムに関する。
【背景技術】
【0002】
入射した電磁波に対して負の透磁率を呈するなど、自然界の物質にはない特性を有するメタマテリアル装置が知られている(特許文献1及び2を参照)。メタマテリアル装置は、動作波長よりも小さな構造物を含む単位セルを周期的に配置することによって構成される。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【文献】R. Marques, et al., "Comparative Analysis of Edge- and Broadside-Coupled Split Ring Resonators for Metamaterial Design - Theory and Experiments", IEEE TRANSACTIONS ON ANTENNAS AND PROPAGATION, VOL. 51, NO. 10, OCTOBER 2003
【文献】J. Choi, et al., "HIGH-EFFICIENCY WIRELESS ENERGY TRANSMISSION USING MAGNETIC RESONANCE BASED ON METAMATERIAL WITH RELATIVE PERMEABILITY EQUAL TO -1", Progress In Electromagnetics Research, Vol. 106, 33-47, 2010
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
概して、メタマテリアル装置の共振周波数は単位セルのサイズに依存し、単位セルが小さくなると共振周波数は増大し、単位セルが大きくなると共振周波数は低下する。例えば、スプリットリング共振器(特許文献1を参照)を含む単位セルが約10mm×10mmのサイズを有する場合、メタマテリアル装置の共振周波数は数GHzになる。
【0005】
電磁波を送受信するシステムにメタマテリアル装置を適用する場合、メタマテリアル装置の共振周波数をシステムの動作周波数に合わせる必要がある。従って、単位セルのサイズを変化させることによりメタマテリアル装置の共振周波数を変化させる場合、システムの動作周波数が低下するにつれて、単位セルのサイズが増大し、メタマテリアル装置の全体のサイズも増大する。例えば、数十MHzの動作周波数を有する無線電力伝送システムにメタマテリアル装置を適用しようとする場合、非常にかさばるメタマテリアル装置が必要になり、システムの実用性が損なわれる。このため、サイズを増大させることなく、従来よりも低い共振周波数を達成可能なメタマテリアル装置が求められる。
【0006】
本開示の目的は、サイズを増大させることなく、従来よりも低い共振周波数を達成可能なメタマテリアル装置を提供することにある。本開示の目的はまた、そのようなメタマテリアル装置を備えた無線送電装置、無線受電装置、及び無線電力電送システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置であって、
前記各単位セルは、
互いに対向する第1及び第2の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1及び第2の面の少なくとも一方に形成された複数の導体素子であって、互いに異なるサイズを有しかつ入れ子式に配置されたループの形状をそれぞれ有し、前記各ループの一部にギャップをそれぞれ有する複数の導体素子と、
前記複数の導体素子のうちの互いに隣接する各一対の導体素子にわたって装荷された少なくとも1つの第1の容量結合素子であって、当該一対の導体素子が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該一対の導体素子を互いに容量的に結合する少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備える。
【0008】
これにより、サイズを増大させることなく、従来よりも低い共振周波数を達成可能なメタマテリアル装置を提供することができる。
【0009】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数のチップキャパシタである。
【0010】
これにより、従来よりも低い共振周波数を達成することができる。
【0011】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数の誘電体チップである。
【0012】
これにより、従来よりも低い共振周波数を達成することができる。
【0013】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は、前記導体素子のループに沿って形成された誘電体素子である。
【0014】
これにより、第1の容量結合素子がチップキャパシタ又は誘電体チップである場合よりも、メタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0015】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記各導体素子のギャップにわたって装荷された第2の容量結合素子であって、前記ギャップの両側における導体素子の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子の各部分を互いに容量的に結合する第2の容量結合素子をさらに備える。
【0016】
これにより、第1の容量結合素子のみを備えた場合よりも、メタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0017】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
周期的に配置された複数の単位セルを含むメタマテリアル装置であって、
前記各単位セルは、
互いに対向する第1及び第2の面を有する誘電体基板と、
前記誘電体基板の前記第1及び第2の面の少なくとも一方において渦巻きの形状を有するように形成された導体素子と、
前記導体素子の渦巻きの放射方向において互いに隣接する前記導体素子の各部分にわたって装荷された少なくとも1つの第1の容量結合素子であって、当該導体素子の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子の各部分を互いに容量的に結合する少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備える。
【0018】
これにより、サイズを増大させることなく、従来よりも低い共振周波数を達成可能なメタマテリアル装置を提供することができる。
【0019】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数のチップキャパシタである。
【0020】
これにより、従来よりも低い共振周波数を達成することができる。
【0021】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は複数の誘電体チップである。
【0022】
これにより、従来よりも低い共振周波数を達成することができる。
【0023】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記少なくとも1つの第1の容量結合素子は、前記導体素子の渦巻きに沿って形成された誘電体素子である。
【0024】
これにより、第1の容量結合素子がチップキャパシタ又は誘電体チップである場合よりも、メタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0025】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記各単位セルは、前記誘電体基板の前記第1及び第2の面のそれぞれにおいて、前記導体素子及び前記第1の容量結合素子を備える。
【0026】
これにより、誘電体基板の一方の面にのみ導体素子及び第1の容量結合素子を備える場合よりも、メタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0027】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記誘電体基板は、積層された第1~第3の誘電体層を備え、前記第3の誘電体層は、前記第1及び第2の誘電体層の間に設けられ、前記第1及び第2の誘電体層の誘電率よりも高い誘電率を有する。
【0028】
これにより、メタマテリアル装置の共振周波数をさらに低減することができる。
【0029】
本開示の側面に係るメタマテリアル装置によれば、
前記各単位セルは、
積層された複数の誘電体基板と、
前記複数の誘電体基板のそれぞれに形成された前記導体素子と、
前記複数の誘電体基板のうちの少なくとも1つに形成された前記第1の容量結合素子とを備える。
【0030】
これにより、メタマテリアル装置の共振周波数をさらに低減することができる。
【0031】
本開示の側面に係る無線送電装置によれば、
前記メタマテリアル装置と、
送電コイルと、
前記送電コイルに高周波電力を供給する送電回路とを備える。
【0032】
これにより、送電コイル及び受電コイルの相対位置の変化に対して頑健な無線送電装置を提供することができる。
【0033】
本開示の側面に係る無線受電装置によれば、
前記メタマテリアル装置と、
受電コイルと、
前記受電コイルを介して高周波電力を受ける受電回路とを備える。
【0034】
これにより、送電コイル及び受電コイルの相対位置の変化に対して頑健な無線受電装置を提供することができる。
【0035】
本開示の側面に係る無線電力伝送システムによれば、
前記無線送電装置と、
前記無線受電装置とを含む。
【0036】
これにより、送電コイル及び受電コイルの相対位置の変化に対して頑健な無線電力伝送システムを提供することができる。
【発明の効果】
【0037】
本開示によれば、サイズを増大させることなく、従来よりも低い共振周波数を達成可能なメタマテリアル装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】第1の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セル10の例示的な構成を示す上面図である。
図2図1の単位セル10からなるメタマテリアル装置20の例示的な構成を示す斜視図である。
図3図2のメタマテリアル装置20に入射する磁力線の伝搬を示す概略図である。
図4図2のメタマテリアル装置20を備えた無線電力伝送システム100の例示的な構成を示すブロック図である。
図5】第1の比較例に係る無線電力伝送システムの送電コイル43及び受電コイル51が理想的に配置されているときの磁力線を示す概略図である。
図6】第1の比較例に係る無線電力伝送システムの送電コイル43及び受電コイル51の間の距離が理想状態よりも大きいときの磁力線を示す概略図である。
図7】第1の比較例に係る無線電力伝送システムの送電コイル43及び受電コイル51の中心が互いにずれているときの磁力線を示す概略図である。
図8図4の無線電力伝送システム100の送電コイル43及び受電コイル51の間の距離が理想状態よりも大きいときの磁力線を示す概略図である。
図9図4の無線電力伝送システム100の送電コイル43及び受電コイル51の中心が互いにずれているときの磁力線を示す概略図である。
図10】第1の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Aの例示的な構成を示す上面図である。
図11】第1の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Bの例示的な構成を示す上面図である。
図12】第2の比較例に係るメタマテリアル装置の単位セル70の例示的な構成を示す上面図である。
図13】実施例及び第2の比較例に係るメタマテリアル装置の容量結合素子の比誘電率に対する共振周波数の特性を示すグラフである。
図14】第1の実施形態の第3の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Cの例示的な構成を示す上面図である。
図15】第1の実施形態の第4の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Dの例示的な構成を示す上面図である。
図16】第1の実施形態の第5の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Eの例示的な構成を示す上面図である。
図17】第2の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セル10Fの例示的な構成を示す上面図である。
図18】第2の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Gの例示的な構成を示す上面図である。
図19】第2の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Hの例示的な構成を示す上面図である。
図20】第3の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セル10Iの例示的な構成を示す側面図である。
図21】第3の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Jの例示的な構成を示す側面図である。
図22】第3の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Kの例示的な構成を示す側面図である。
図23】第3の実施形態の第3の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Lの例示的な構成を示す側面図である。
図24】第3の実施形態の第4の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Mの例示的な構成を示す側面図である。
図25】第4の実施形態に係るメタマテリアル装置20Nの例示的な構成を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本開示の一側面に係る実施形態を、図面に基づいて説明する。各図面において、同じ符号は同様の構成要素を示す。
【0040】
[第1の実施形態]
[第1の実施形態の構成]
図1は、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セル10の例示的な構成を示す上面図である。単位セル10は、誘電体基板1、複数の導体素子2a,2b、及び複数の容量結合素子3を備える。
【0041】
誘電体基板1は、互いに対向しかつ互いに平行な2つの面を有する。図1の例では、誘電体基板1の上面のみを示す。誘電体基板1は、例えば、FR4などのガラスエポキシ基板である。
【0042】
誘電体基板1の上面及び下面は、誘電体基板の「第1の面」及び「第2の面」の一例である。
【0043】
導体素子2a,2bは、誘電体基板1の少なくとも一方の面に形成される。図1の例では、導体素子2a,2bは、誘電体基板1の上面のみに形成される。さらに、導体素子2a,2bは、互いに異なるサイズを有しかつ入れ子式に配置されたループの形状をそれぞれ有する。導体素子2a,2bは、例えば、同じ中心Oを有するように配置されてもよい。図1の例では、導体素子2a,2bは円形状をそれぞれ有する。さらに、導体素子2a,2bは、各ループの一部にギャップG1,G2をそれぞれ有する。従って、図1の例では、導体素子2a,2bは、スプリットリング共振器として構成される。導体素子2a,2bは、例えば、銅からなる。
【0044】
複数の容量結合素子3は、導体素子2a,2bにわたって装荷される。各容量結合素子3は、導体素子2a,2bが自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で導体素子2a,2bを互いに容量的に結合する。複数の容量結合素子3は、例えば、中心Oから見たときに所定の角度幅で配置される。各容量結合素子3は、例えば、チップキャパシタである。
【0045】
図1の例では、誘電体基板1は、上から見たときに、縦d×横dの正方形形状を有する。導体素子2aは幅w1及び半径rを有する。導体素子2aのギャップG1は長さg1を有する。導体素子2a,2bの間に幅s1のギャップが形成される。導体素子2bは幅w2及び半径(r-w1-s1)を有する。導体素子2bのギャップG2は長さg2を有する。
【0046】
図2は、図1の単位セル10からなるメタマテリアル装置20の例示的な構成を示す斜視図である。メタマテリアル装置20は、X方向及びY方向に周期的に配置された複数の単位セル10を含む。複数の単位セル10は、例えば、図2に示すように、二次元的に配置されてもよい。各単位セル10は、別個の誘電体基板1の上に形成されてもよく、一体の誘電体基板1の上に形成されてもよい。
【0047】
図3は、図2のメタマテリアル装置20に入射する磁力線の伝搬を示す概略図である。メタマテリアル装置20は、その共振周波数において、負の透磁率μ<0を有する。負の透磁率を有するメタマテリアル装置20を磁束が通過するとき、メタマテリアル装置20は磁束の強度を増大させる。図3の例では、磁束がメタマテリアル装置20の左から右に通過するとき、通過後の磁束密度b2は通過前の磁束密度b1よりも高くなる。
【0048】
図4は、図2のメタマテリアル装置20を備えた無線電力伝送システム100の例示的な構成を示すブロック図である。無線電力伝送システム100は、電源装置30に接続された無線送電装置40と、負荷装置60に接続された無線受電装置50とを含み、無線送電装置40から無線受電装置50に非接触で電力を伝送する。
【0049】
電源装置30は、直流電力又は交流電力を無線送電装置40に供給する。
【0050】
無線送電装置40は、送電回路41、磁性体コア42、送電コイル43、及びメタマテリアル装置20-1を備える。送電回路41は、電源装置30から供給された直流電力又は交流電力を所定周波数の高周波電力に変換して送電コイル43に供給する。磁性体コア42は、漏洩磁束を低減するように、送電回路41及び送電コイル43の間に設けられる。送電コイル43は、送電回路41から供給された高周波電力により磁界を発生する。メタマテリアル装置20-1は、送電コイル43及び無線受電装置50の間に設けられる。メタマテリアル装置20-1は、図2のメタマテリアル装置20と同様に構成される。
【0051】
無線受電装置50は、メタマテリアル装置20-2、受電コイル51、磁性体コア52、及び受電回路53を備える。メタマテリアル装置20-2は、無線送電装置40及び受電コイル51の間に設けられる。メタマテリアル装置20-2は、図2のメタマテリアル装置20と同様に構成される。受電コイル51は、無線送電装置40の送電コイル43によって発生された磁界を受けて励磁電流を発生することにより、無線送電装置40によって発生された高周波電力を受ける。磁性体コア52は、漏洩磁束を低減するように、受電コイル51及び受電回路53の間に設けられる。受電回路53は、受電コイル51を介して高周波電力を受け、負荷装置60の所望電力に応じて、受電コイル51から受けた高周波電力の整流、平滑化、電圧変換、及び/又は周波数変換などを行う。受電回路53は、変換された電力を負荷装置60に供給する。
【0052】
負荷装置60は、無線受電装置50から供給された電力により動作する。
【0053】
負荷装置60は充電池を備えた電子機器(例えば、ノートブック型コンピュータ、タブレット型コンピュータ、携帯電話機など)であってもよく、無線送電装置40はその充電器であってもよい。また、負荷装置60は充電池を備えた電動の車両(例えば、電気自動車又は無人搬送車(automated guided vehicle))であってもよく、無線送電装置40はその充電台であってもよい。また、負荷装置60は、搬送時に荷物に対して何らかの作業を行うために電源を必要とするパレットであってもよく、無線送電装置40は、そのようなパレットに電力を供給可能なコンベアなどであってもよい。また、送電コイル43及び受電コイル51の間の距離が変化しない非接触電力伝送システムにも有効に適用可能である。この場合、例えば、無線送電装置40及び無線受電装置50は、ロボットアームの先端などにおける駆動機構に電力を供給するために、ロボットアームの関節などにおいてスリップリングに代えて設けられてもよい。
【0054】
従来の無線電力伝送システムでは、送電コイルに対して受電コイルが理想的な位置に配置されていないと、送電コイル及び受電コイルの結合係数が理想値よりも低下し、従って、電力伝送の効率が理想値よりも低下する。実施形態に係る無線電力伝送システム100は、メタマテリアル装置20-1,20-2を備えたことにより、送電コイル43及び受電コイル51の結合係数を低下させにくくする。次に、このようなメタマテリアル装置20-1,20-2の効果について説明する。
【0055】
[第1の実施形態の動作]
まず、図5図7を参照して、メタマテリアル装置を持たない第1の比較例に係る無線電力伝送システムの動作について説明する。
【0056】
図5は、第1の比較例に係る無線電力伝送システムの送電コイル43及び受電コイル51が理想的に配置されているときの磁力線を示す概略図である。無線送電装置から無線受電装置に対して最高効率で電力を伝送するためには、送電コイル43及び受電コイル51が互いに近接し、かつ、送電コイル43及び受電コイル51の中心が互いに整列している必要がある。このとき、送電コイル43によって発生された磁束(磁力線m1~m3として示す)の大部分が受電コイル51に鎖交する。
【0057】
図6は、第1の比較例に係る無線電力伝送システムの送電コイル43及び受電コイル51の間の距離が理想状態よりも大きいときの磁力線を示す概略図である。図6の例では、磁力線m1は受電コイル51に鎖交するが、磁力線m2,m3は受電コイル51に鎖交しない。送電コイル43及び受電コイル51の間の距離が増大すると、受電コイル51に鎖交する磁束が減少し、これにより、送電コイル43及び受電コイル51の結合係数が低下し、従って、電力伝送の効率が低下する。
【0058】
図7は、第1の比較例に係る無線電力伝送システムの送電コイル43及び受電コイル51の中心が互いにずれているときの磁力線を示す概略図である。図7の例では、磁力線m1,m3は受電コイル51に鎖交するが、磁力線m2は受電コイル51に鎖交しない。送電コイル43及び受電コイル51の中心が互いにずれていると、受電コイル51に鎖交する磁束が減少し、これにより、送電コイル43及び受電コイル51の結合係数が低下し、従って、電力伝送の効率が低下する。
【0059】
図8は、図4の無線電力伝送システム100の送電コイル43及び受電コイル51の間の距離が理想状態よりも大きいときの磁力線を示す概略図である。図8(及び図9)では、送電回路41及び受電回路53などは、図示の簡単化のために省略している。図6を参照して説明したように、送電コイル43及び受電コイル51の間の距離が理想状態よりも大きいとき、一部の磁力線m2,m3は受電コイル51に鎖交しない。一方、図8の例によれば、メタマテリアル装置20-1,20-2を備えたことにより、磁力線m2,m3は減衰を抑えつつ伝搬し、最終的に受電コイル51に鎖交する。
【0060】
図9は、図4の無線電力伝送システム100の送電コイル43及び受電コイル51の中心が互いにずれているときの磁力線を示す概略図である。図7を参照して説明したように、送電コイル43及び受電コイル51の中心が互いにずれているとき、一部の磁力線m2は受電コイル51に鎖交しない。一方、図9の例によれば、メタマテリアル装置20-1,20-2を備えたことにより、磁力線m2は減衰を抑えつつ伝搬し、最終的に受電コイル51に鎖交する。
【0061】
以上説明したように、実施形態に係る無線電力伝送システム100によれば、メタマテリアル装置20-1,20-2を備えたことにより、送電コイル43に対して受電コイル51が理想的な位置に配置されていなくても、送電コイル43及び受電コイル51の結合係数を低下させにくくすることができる。従って、無線電力伝送システム100の電力伝送の効率を低下させにくくすることができる。これにより、送電コイル43及び受電コイル51の相対位置の変化に対して頑健な無線電力伝送システム100を提供することができる。
【0062】
[第1の実施形態の変形例]
図10は、第1の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Aの例示的な構成を示す上面図である。図10の単位セル10Aは、チップキャパシタである図1の複数の容量結合素子3に代えて、誘電体チップである複数の容量結合素子4を備える。各容量結合素子4は、図1の各容量結合素子3と同様に、導体素子2a,2bが自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で導体素子2a,2bを互いに容量的に結合する。
【0063】
図11は、第1の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Bの例示的な構成を示す上面図である。図11の単位セル10Bは、誘電体チップである図10の複数の容量結合素子4に代えて、導体素子2a,2bのループに沿って形成された誘電体素子である容量結合素子5を備える。容量結合素子5は、図10の各容量結合素子4と同様に、導体素子2a,2bが自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で導体素子2a,2bを互いに容量的に結合する。容量結合素子5は、図10の場合よりも多くの位置において、導体素子2a,2bを互いに容量的に結合する。従って、図11の単位セル10Bからなるメタマテリアル装置は、図10の単位セル10Aからなるメタマテリアル装置の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0064】
次に、図12及び図13を参照して、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置の共振周波数の低減について説明する。
【0065】
図12は、第2の比較例に係るメタマテリアル装置の単位セル70の例示的な構成を示す上面図である。図12の単位セル70は、図1の複数の容量結合素子3に代えて、各導体素子2a,2bのギャップG1,G2にわたってそれぞれ装荷された容量結合素子6を備える。各容量結合素子6は、ギャップG1,G2の両側における導体素子の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子の各部分を互いに容量的に結合する。各容量結合素子6は、図1の容量結合素子3と同様にチップキャパシタであってもよく、図10の容量結合素子4と同様に誘電体チップであってもよい。
【0066】
図12の単位セル70は、非特許文献2のスプリットリング共振器に対応する。
【0067】
図11の単位セル10Bからなるメタマテリアル装置(実施例)と、図12の単位セル70からなるメタマテリアル装置(第2の比較例)とについて、COMSOL(登録商標)Multiphysicsを用いて、容量結合素子の比誘電率に対する共振周波数の特性を計算するシミュレーションを行った。単位セル10B,70の寸法などの各パラメータについて、容量結合素子5,6を除いて、共通の値を設定した。以下、寸法などのパラメータの符号は図1に示したものを用いる。
【0068】
誘電体基板1のサイズ:d×d=10mm×10mm
誘電体基板1の厚さ:1.6mm
導体素子2aの半径:r=3.6mm
導体素子2a,2bの幅:w1=w2=0.9mm
導体素子2a,2bのギャップG1,G2の長さ:g1=g2=0.2mm
導体素子2a,2b間のギャップの幅:s1=0.2mm
導体素子2a,2bの厚さ:0.1mm
導体素子2a,2bの電気抵抗:0Ω
誘電体基板1の比誘電率:3.85
容量結合素子5の比誘電率:1,100,300,500
容量結合素子6の比誘電率:1,100,300,500
【0069】
図13は、実施例及び第2の比較例に係るメタマテリアル装置の容量結合素子の比誘電率に対する共振周波数の特性を示すグラフである。第2の比較例のシミュレーション結果によれば、各導体素子2a,2bのギャップG1,G2にわたって、比誘電率100、300、又は500を有する容量結合素子6をそれぞれ装荷することにより、共振周波数が低減されることがわかる。また、容量結合素子6の比誘電率が増大するほど、すなわち、ギャップG1,G2にわたって装荷される容量が増大するほど、共振周波数が低減されることがわかる。これに対して、実施例のシミュレーション結果によれば、導体素子2a,2bのループに沿って、比誘電率100、300、又は500を有する容量結合素子5を装荷することにより、第2の比較例の場合よりもさらに共振周波数が低減されることがわかる。また、容量結合素子5の比誘電率が増大するほど、すなわち、導体素子2a,2bにわたって装荷される容量が増大するほど、共振周波数が低減されることがわかる。
【0070】
図1の単位セル10又は図10の単位セル10Aからなるメタマテリアル装置の場合も同様に、第2の比較例の場合よりもさらに共振周波数を低減することができ、また、容量結合素子3又は4の容量が増大するほど共振周波数を低減することができる。
【0071】
非特許文献2のように、スプリットリング共振器のギャップ(スプリット)にわたってキャパシタを装荷しても、共振周波数の低下が十分ではないことがある。これに対して、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、導体素子2a,2bにわたって容量結合素子3~5を装荷することにより、従来技術よりも効果的に共振周波数を低減することができる。
【0072】
第1の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、容量結合素子3~5を備えたことにより、サイズを増大させることなく、従来よりも低い共振周波数を達成することができる。言いかえると、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、共振周波数を増大させることなく、従来よりも小さなサイズを有するメタマテリアル装置を提供することができる。
【0073】
一般に、メタマテリアル装置は、例えば数GHz又は数THzなど、高い周波数帯で動作する装置及びシステムに適用する場合について研究される場合が多い。これに対して、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置は、例えば数十MHzなど、より低い周波数帯において動作する装置及びシステムに適用する場合に有益である。
【0074】
次に、第1の実施形態のさらに他の変形例について説明する。
【0075】
図14は、第1の実施形態の第3の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Cの例示的な構成を示す上面図である。図14の単位セル10Cは、図1の単位セル10の各構成要素に加えて、各導体素子2a,2bのギャップG1,G2にわたってそれぞれ装荷された容量結合素子6を備える。図14の容量結合素子6は、図12の容量結合素子6と同様に構成される。図14の単位セル10Cによれば、容量結合素子3及び容量結合素子6の両方を備えたことにより、図1等の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0076】
容量結合素子3は「第1の容量結合素子」の一例であり、容量結合素子6は「第2の容量結合素子」の一例である。
【0077】
図15は、第1の実施形態の第4の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Dの例示的な構成を示す上面図である。図15の単位セル10Dは、図1の単位セル10の各構成要素に加えて、導体素子2cと、導体素子2b,2cにわたって装荷された複数の容量結合素子3とを備える。
【0078】
実施形態に係る単位セルは、3つ以上の導体素子を備えてもよい。図14の単位セル10Dは、3つの導体素子2a~2cを備える。導体素子2a~2cは、誘電体基板1の第1及び第2の面の少なくとも一方に形成され、互いに異なるサイズを有しかつ入れ子式に配置されたループの形状をそれぞれ有し、各ループの一部にギャップをそれぞれ有する。各容量結合素子3は、複数の導体素子2a~2cのうちの互いに隣接する各一対の導体素子にわたって装荷される。各容量結合素子3は、当該一対の導体素子が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該一対の導体素子を互いに容量的に結合する。
【0079】
図15の単位セル10Dによれば、多数の導体素子2a~2c及び多数の容量結合素子3を備えたことにより、図1等の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0080】
図16は、第1の実施形態の第5の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Eの例示的な構成を示す上面図である。図16の単位セル10Eは、図1の円形の導体素子2a,2bに代えて、四角形の導体素子2Ea,2Ebを備える。実施形態に係る単位セルは、円形又は四角形の導体素子に代えて、他の多角形の導体素子を備えてもよい。これにより、高い自由度で導体素子を設計することができる。
【0081】
[第2の実施形態]
図17は、第2の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セル10Fの例示的な構成を示す上面図である。図17の単位セル10Fは、図1の導体素子2a,2bに代えて、導体素子7を備える。
【0082】
導体素子7は、誘電体基板1の少なくとも一方の面において渦巻きの形状を有するように形成される。図17の例では、導体素子7は、誘電体基板1の上面のみに形成される。
【0083】
各容量結合素子3は、導体素子7の渦巻きの放射方向において互いに隣接する導体素子7の各部分にわたって装荷される。各容量結合素子3は、当該導体素子7の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子7の各部分を互いに容量的に結合する。各容量結合素子3は、例えば、チップキャパシタである。
【0084】
第2の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置と同様に、容量結合素子3を備えたことにより、サイズを増大させることなく、従来よりも低い共振周波数を達成することができる。言いかえると、第2の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、共振周波数を増大させることなく、従来よりも小さなサイズを有するメタマテリアル装置を提供することができる。第2の実施形態に係るメタマテリアル装置によれば、第1の実施形態に係るメタマテリアル装置の場合よりも、メタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0085】
図18は、第2の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Gの例示的な構成を示す上面図である。図18の単位セル10Gは、チップキャパシタである図17の複数の容量結合素子3に代えて、誘電体チップである複数の容量結合素子4を備える。各容量結合素子4は、図17の各容量結合素子3と同様に、導体素子7の渦巻きの放射方向において互いに隣接する導体素子7の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子7の各部分を互いに容量的に結合する。
【0086】
図19は、第2の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Hの例示的な構成を示す上面図である。図19の単位セル10Hは、誘電体チップである図18の複数の容量結合素子4に代えて、導体素子7の渦巻きに沿って形成された誘電体素子である容量結合素子8を備える。容量結合素子8は、図18の各容量結合素子4と同様に、導体素子7の渦巻きの放射方向において互いに隣接する導体素子7の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子7の各部分を互いに容量的に結合する。容量結合素子8は、図18の場合よりも多くの位置において、当該導体素子7の各部分を互いに容量的に結合する。従って、図19の単位セル10Hからなるメタマテリアル装置は、図18の単位セル10Gからなるメタマテリアル装置の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0087】
[第3の実施形態]
図20は、第3の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セル10Iの例示的な構成を示す側面図である。単位セル10Iは、誘電体基板1の上面(+Z側の面)及び下面(-Z側の面)のそれぞれにおいて、図1の単位セル10と同様に、複数の導体素子2a,2b及び少なくとも1つの第1の容量結合素子3を備える。図20の単位セル10Iによれば、誘電体基板1の両面に導体素子2a,2b及び容量結合素子3を備えたことにより、図1等の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0088】
図21は、第3の実施形態の第1の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Jの例示的な構成を示す側面図である。図21の単位セル10Jは、図1の単位セル10と同様にそれぞれ構成された複数のサブセル10-1~10-3と、図20の単位セル10Iと同様に構成されたサブセル10Iとを備える。サブセル10-1~10-3及びサブセル10Iは積層される。これにより、単位セル10Jは、複数の誘電体基板1と、複数の誘電体基板1のそれぞれにおいて、複数の導体素子及び少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備える。図21の単位セル10Jによれば、積層された複数のサブセル10J-1~10J-3を備えたことにより、図1等の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0089】
図22は、第3の実施形態の第2の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Kの例示的な構成を示す側面図である。図22の単位セル10Kは、図20の誘電体基板1に代えて、積層された誘電体層1Ka~1Kcを備える誘電体基板1Kを備える。誘電体層1Kcは、誘電体層1Ka,1Kbの間に設けられ、誘電体層1Ka,1Kbの誘電率よりも高い誘電率を有する。図22の単位セル10Kによれば、異なる誘電率を有する多層の誘電体基板1Kを備えたことにより、図1等の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0090】
誘電体層1Ka~1Kcはそれぞれ「第1~第3の誘電体層」の一例である。
【0091】
図23は、第3の実施形態の第3の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Lの例示的な構成を示す側面図である。図23の単位セル10Lは、図22の単位セル10Kと同様にそれぞれ構成された複数のサブセル10K-1~10K-3を備える。サブセル10K-1~10K-3は積層される。これにより、単位セル10Lは、複数の誘電体基板1と、複数の誘電体基板1のそれぞれにおいて、複数の導体素子及び少なくとも1つの第1の容量結合素子とを備える。図23の単位セル10Lによれば、積層された複数のサブセル10K-1~10K-3を備えたことにより、図1等の場合よりもメタマテリアル装置の共振周波数を低減することができる。
【0092】
図20図23の例では、誘電体基板1,1Kの各面に、図1の単位セル10と同様に、複数の導体素子2a,2b及び少なくとも1つの第1の容量結合素子3が形成される場合について説明した。ただし、第3の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セルはこれらに限定されず、誘電体基板の各面には、他の実施形態又は他の変形例に係ると同様に導体素子及び容量結合素子が形成されてもよい。
【0093】
図24は、第3の実施形態の第4の変形例に係るメタマテリアル装置の単位セル10Mの例示的な構成を示す側面図である。メタマテリアル装置の単位セルが複数のサブセルを含む場合、説明した実施形態に係る単位セルと同様に構成されたサブセルと、その一部の構成要素を省略したサブセルとを組み合わせてもよい。図24の単位セル10Mは、積層されたサブセル10,10a-1,10a-2,10Iaを備える。図24のサブセル10は、図1の単位セル10と同様に構成される。サブセル10a-1,10a-2は、図1の単位セル10から容量結合素子3を除去した構成を有する。サブセル10Iaは、図20の単位セル10Iの上面及び下面の一方から容量結合素子3を除去した構成を有する。言い換えると、単位セル10Mは、積層された複数の誘電体基板1と、複数の誘電体基板1のそれぞれに形成された導体素子2a,2bと、複数の誘電体基板1のうちの少なくとも1つに形成された容量結合素子3とを備える。図24の例では、他の誘電体基板1に対抗する各誘電体基板1の面において容量結合素子3を省略することにより、複数のサブセルを容易に積層することができる。
【0094】
図23の単位セル10Lにおいても、図24の単位セル10Mと同様に、他の誘電体基板1に対抗する各誘電体基板1の面において容量結合素子3を省略してもよい。
【0095】
[第4の実施形態]
図25は、第4の実施形態に係るメタマテリアル装置20Nの例示的な構成を示す斜視図である。図25のメタマテリアル装置20Nは、X方向及びY方向に周期的に配置された、立方体形状をそれぞれ有する複数の単位セル10Nを備える。立方体形状の単位セル10Nの各面に、例えば図1の単位セル10が設けられる。複数の単位セル10は、例えば、図25に示すように、三次元的に配置されてもよい。
【0096】
複数の単位セル10は、図25の例とは異なる形態で三次元的に配置されてもよい。
【0097】
図25の例では、立方体形状の単位セル10Nの各面に図1の単位セル10が設けられる場合について説明した。ただし、第4の実施形態に係るメタマテリアル装置の単位セルはこれらに限定されず、立方体形状の単位セル10Nの各面には、他の実施形態又は他の変形例に係ると単位セルが設けられてもよい。
【0098】
[他の変形例]
以上、本開示の実施形態を詳細に説明してきたが、前述までの説明はあらゆる点において本開示の例示に過ぎない。本開示の範囲を逸脱することなく種々の改良や変形を行うことができることは言うまでもない。例えば、以下のような変更が可能である。なお、以下では、上記実施形態と同様の構成要素に関しては同様の符号を用い、上記実施形態と同様の点については、適宜説明を省略した。
【0099】
上述した各実施形態及び各変形例は、任意に組み合わされてもよい。
【0100】
図4では、無線送電装置40及び無線受電装置50の両方にメタマテリアル装置を備える場合について説明したが、無線送電装置40及び無線受電装置50の一方のみがメタマテリアル装置を備えてもよい。
【0101】
図4では、無線送電装置40及び無線受電装置50の両方に磁性体コアを備える場合について説明したが、無線送電装置40及び無線受電装置50の一方又は両方が磁性体コアを備えていなくてもよい。
【0102】
[まとめ]
本開示の各側面に係るメタマテリアル装置、無線送電装置、無線受電装置、及び無線電力電送システムは、以下のように表現されてもよい。
【0103】
本開示の第1の側面に係るメタマテリアル装置は、周期的に配置された複数の単位セル10を含む。各単位セル10は、誘電体基板1、複数の導体素子2a,2b、及び少なくとも1つの第1の容量結合素子3~5を備える。誘電体基板1は、互いに対向する第1及び第2の面を有する。複数の導体素子2a,2bは、誘電体基板1の第1及び第2の面の少なくとも一方に形成され、互いに異なるサイズを有しかつ入れ子式に配置されたループの形状をそれぞれ有し、各ループの一部にギャップをそれぞれ有する。少なくとも1つの第1の容量結合素子3~5は、複数の導体素子2a,2bのうちの互いに隣接する各一対の導体素子にわたって装荷される。少なくとも1つの第1の容量結合素子3~5は、当該一対の導体素子2a,2bが自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該一対の導体素子を互いに容量的に結合する。
【0104】
本開示の第2の側面に係るメタマテリアル装置は、第1の側面に係るメタマテリアル装置において、少なくとも1つの第1の容量結合素子3は複数のチップキャパシタである。
【0105】
本開示の第3の側面に係るメタマテリアル装置は、第1の側面に係るメタマテリアル装置において、少なくとも1つの第1の容量結合素子4は複数の誘電体チップである。
【0106】
本開示の第4の側面に係るメタマテリアル装置は、第1の側面に係るメタマテリアル装置において、少なくとも1つの第1の容量結合素子5は、導体素子2a,2bのループに沿って形成された誘電体素子である。
【0107】
本開示の第5の側面に係るメタマテリアル装置は、第1~第4の側面のうちの1つに係るメタマテリアル装置において、各導体素子2a,2bのギャップにわたって装荷された第2の容量結合素子6であって、ギャップの両側における導体素子の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子の各部分を互いに容量的に結合する第2の容量結合素子6をさらに備える。
【0108】
本開示の第6の側面に係るメタマテリアル装置は、周期的に配置された複数の単位セル10を含む。各単位セル10は、誘電体基板1、導体素子7、及び少なくとも1つの第1の容量結合素子3,4,8を備える。誘電体基板1は、互いに対向する第1及び第2の面を有する。導体素子7は、誘電体基板1の第1及び第2の面の少なくとも一方において渦巻きの形状を有するように形成される。少なくとも1つの第1の容量結合素子3,4,8は、導体素子7の渦巻きの放射方向において互いに隣接する導体素子7の各部分にわたって装荷される。少なくとも1つの第1の容量結合素子3,4,8は、当該導体素子7の各部分が自由空間を介して互いに容量的に結合するときの静電容量よりも高い静電容量で当該導体素子7の各部分を互いに容量的に結合する。
【0109】
本開示の第7の側面に係るメタマテリアル装置は、第6の側面に係るメタマテリアル装置において、少なくとも1つの第1の容量結合素子3は複数のチップキャパシタである。
【0110】
本開示の第8の側面に係るメタマテリアル装置は、第6の側面に係るメタマテリアル装置において、少なくとも1つの第1の容量結合素子4は複数の誘電体チップである。
【0111】
本開示の第9の側面に係るメタマテリアル装置は、第6の側面に係るメタマテリアル装置において、少なくとも1つの第1の容量結合素子8は、導体素子7の渦巻きに沿って形成された誘電体素子である。
【0112】
本開示の第10の側面に係るメタマテリアル装置は、第1~第9の側面のうちの1つに係るメタマテリアル装置において、各単位セル10Iは、誘電体基板1の第1及び第2の面のそれぞれにおいて、導体素子及び第1の容量結合素子を備える。
【0113】
本開示の第11の側面に係るメタマテリアル装置は、第10の側面に係るメタマテリアル装置において、誘電体基板1Kは、積層された第1~第3の誘電体層1Ka~1Kcを備え、第3の誘電体層1Kcは、第1及び第2の誘電体層1Ka,1Kbの間に設けられ、第1及び第2の誘電体層1Ka,1Kbの誘電率よりも高い誘電率を有する。
【0114】
本開示の第12の側面に係るメタマテリアル装置は、第1~第11の側面のうちの1つに係るメタマテリアル装置において、各単位セル10Jは、積層された複数の誘電体基板1と、複数の誘電体基板1のそれぞれに形成された導体素子2a,2bと、複数の誘電体基板1のうちの少なくとも1つに形成された第1の容量結合素子3とを備える。
【0115】
本開示の第13の側面に係る無線送電装置は、第1~第12の側面のうちのに係るメタマテリアル装置20と、送電コイル43と、送電コイル43に高周波電力を供給する送電回路41とを備える。
【0116】
本開示の第14の側面に係る無線受電装置は、第1~第12の側面のうちのに係るメタマテリアル装置20と、受電コイル51と、受電コイル51を介して高周波電力を受ける受電回路53とを備える。
【0117】
本開示の第15の側面に係る無線電力伝送システムは、第13の側面に係る無線送電装置と、第14の側面に係る無線受電装置とを含む。
【産業上の利用可能性】
【0118】
本開示に係るメタマテリアル装置は、例えば、無線送電装置から無線受電装置に非接触で電力を伝送する無線電力伝送システムに適用可能である。
【符号の説明】
【0119】
1,1K 誘電体基板
1Ka~1Kc 誘電体層
2a~2c,2Ea,2Eb 導体素子
3~8 容量結合素子
10,10A~10N 単位セル
20,20N メタマテリアル装置
30 電源装置
40 無線送電装置
41 送電回路
42 磁性体コア
43 送電コイル
50 無線受電装置
51 受電コイル
52 磁性体コア
53 受電回路
60 負荷装置
図1
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