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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】管継手及び管継手の製造方法
(51)【国際特許分類】
   F16L 21/08 20060101AFI20240801BHJP
   B29C 45/44 20060101ALI20240801BHJP
   B29C 45/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16L21/08 B
B29C45/44
B29C45/00
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020166092
(22)【出願日】2020-09-30
(65)【公開番号】P2022057702
(43)【公開日】2022-04-11
【審査請求日】2023-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000005278
【氏名又は名称】株式会社ブリヂストン
(73)【特許権者】
【識別番号】597047956
【氏名又は名称】株式会社サイテックス
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】柏又 智明
(72)【発明者】
【氏名】高橋 健司
【審査官】大谷 光司
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-216515(JP,A)
【文献】特開2011-179633(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2018/0313480(US,A1)
【文献】実開昭60-137512(JP,U)
【文献】特開2001-146991(JP,A)
【文献】米国特許第4305608(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16L21/00,21/08
B29C45/00,45/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周側において軸方向に管体を挿し込み可能とされた内筒部と、前記内筒部の径方向外側に設けられると共に前記内筒部と一体的に形成され、前記内筒部との間に前記管体の挿し込み空間を形成する外筒部とを備え、前記内筒部の外周のうち前記外筒部と径方向に対向しない位置に、シール部材を取付け可能な周溝が形成された継手本体と、
前記継手本体の径方向外側に取り付けられたキャップと、
前記外筒部の内周部に、周方向に複数形成され、径方向内側に突出し前記軸方向に延びる突起部と、
を有し、
前記突起部における前記挿し込み空間の開口側の端部には、該突起部の先端に向かって内径が拡大する傾斜面が形成されている管継手。
【請求項2】
前記傾斜面の径方向内側端は前記突起部の頂面に位置し、前記傾斜面の径方向外側端は周方向に隣り合う前記突起部の間の凹部の底部に位置している請求項1に記載の管継手。
【請求項3】
管継手における継手本体の内筒部を形成すると共に、前記内筒部の径方向外側に位置する外筒部の内周部を形成するために用いられるスライド型と、
前記外筒部を前記内筒部と一体的に形成すると共に前記外筒部の外周部を形成するために用いられ、一方に前記スライド型が軸方向に移動可能に支持された一対の第1金型と、
前記内筒部の外周のうち前記外筒部と径方向に対向しない位置に周溝を形成するために用いられ、前記スライド型に対して前記軸方向と交差する方向に挿し込み及び退避可能とされ、前記スライド型と共に前記軸方向に移動可能とされた第2金型と、
前記第2金型に対して係合及び係合解除可能とされ、前記第1金型の型閉め時に前記第2金型と係合し前記第2金型の挿し込みを行うと共に、前記第1金型の型開き前に前記第2金型を退避させる第2金型操作部と、
前記第1金型の他方に固定されると共に前記スライド型に挿通され、前記第1金型の型閉め及び型開きに伴い前記スライド型を前記第1金型の一方に対して前記軸方向に移動させるアンギュラピンと、を用い、
前記スライド型、前記第1金型及び前記第2金型を型閉めし型内に樹脂を射出して前記継手本体を成形した後、
前記第2金型操作部により前記第2金型を退避させ、
前記第1金型の型開きを行うことで、前記アンギュラピンにより前記スライド型及び前記第2金型を前記軸方向に移動させ、前記第2金型操作部と前記第2金型との係合を解除しつつ前記スライド型を前記継手本体から引き抜く、
管継手の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管継手及び管継手の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
被接続用のパイプの端部に挿入される挿入筒部を有する継手本体と、挿入筒部に外嵌されたパイプの外周面に抜け止め状態に内周側が掛止する抜け止めリングとを具備し、パイプの接続作業をワンタッチ動作で完了させることができる管継手が開示されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-31282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来例では、継手本体の凹周溝に取り付けられたシール部材が、被接続用のパイプの内面に接触する内面止水構造とされている。凹周溝の径方向外側にはカバーが設けられており、凹周溝(シール部材)は管継手の内部に位置している。カバーは、継手本体とは別体とされている。これは、凹周溝がアンダーカット部であるためである。具体的には、凹周溝を形成する型を成型後に継手本体の軸方向に抜くことが困難であり、凹周溝を形成する型については径方向に型抜きを行う必要があるためである。凹周溝(シール部材)が管継手の内部に位置する内面止水構造の管継手においては、継手本体とカバーとが、上記した製造上の制約から複数の部品から構成されているため、製造コストが高くなる。また、継手本体とカバーをより少ない部品点数で構成するためには、金型の構造が複雑になり、成形難易度が高くなる。
【0005】
本発明は、内面止水構造の管継手の部品点数を少なくして製造コストを低減させると共に、製造を容易にすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
第1の態様に係る管継手は、外周側において軸方向に管体を挿し込み可能とされた内筒部と、前記内筒部の径方向外側に設けられると共に前記内筒部と一体的に形成され、前記内筒部との間に前記管体の挿し込み空間を形成する外筒部とを備え、前記内筒部の外周のうち前記外筒部と径方向に対向しない位置に、シール部材を取付け可能な周溝が形成された継手本体と、前記継手本体の径方向外側に取り付けられたキャップと、前記継手本体と前記キャップとの間に挟持され、前記挿し込み空間に挿入された前記管体を前記管体の外周側から保持する抜け止め部材と、を有する。
【0007】
この管継手では、継手本体において外筒部が内筒部に一体的に形成されているので、管継手の部品点数を少なくすることができる。また、この管継手では、外筒部と内筒部との間の挿し込み空間に管体を挿し込むと、該管体がその外周側から抜け止め部材によって保持される。
【0008】
第2の態様は、第1の態様に係る管継手において、前記外筒部の内周部には、径方向内側に突出し前記軸方向に延びる突起部が周方向に複数形成されている。
【0009】
この管継手では、継手本体における外筒部の内周部に、径方向内側に突出し軸方向に延びる突起部が周方向に複数形成されている。換言すれば、隣り合う突起部の間が肉抜きされている。このため、継手本体に使用される材料の使用量を低減できる。
【0010】
第3の態様に係る管継手の製造方法は、管継手における継手本体の内筒部を形成すると共に、前記内筒部の径方向外側に位置する外筒部の内周部を形成するために用いられるスライド型と、前記外筒部を前記内筒部と一体的に形成すると共に前記外筒部の外周部を形成するために用いられ、一方に前記スライド型が軸方向に移動可能に支持された一対の第1金型と、前記内筒部の外周のうち前記外筒部と径方向に対向しない位置に周溝を形成するために用いられ、前記スライド型に対して前記軸方向と交差する方向に挿し込み及び退避可能とされ、前記スライド型と共に前記軸方向に移動可能とされた第2金型と、前記第2金型に対して係合及び係合解除可能とされ、前記第1金型の型閉め時に前記第2金型と係合し前記第2金型の挿し込みを行うと共に、前記第1金型の型開き前に前記第2金型を退避させる第2金型操作部と、前記第1金型の他方に固定されると共に前記スライド型に挿通され、前記第1金型の型閉め及び型開きに伴い前記スライド型を前記第1金型の一方に対して前記軸方向に移動させるアンギュラピンと、を用い、前記スライド型、前記第1金型及び前記第2金型を型閉めし型内に樹脂を射出して前記継手本体を成形した後、前記第2金型操作部により前記第2金型を退避させ、前記第1金型の型開きを行うことで、前記アンギュラピンにより前記スライド型及び前記第2金型を前記軸方向に移動させ、前記第2金型操作部と前記第2金型との係合を解除しつつ前記スライド型を前記継手本体から引き抜く。
【0011】
この管継手の製造方法では、スライド型及び第1金型によって内筒部と外筒部を一体的に有する継手本体を形成すると共に、第2金型によって内筒部の外周に周溝を形成する。その後、第2金型操作部により第2金型を退避させてから、スライド型及び第2金型を軸方向に移動させ、第2金型操作部と第2金型との係合を解除しつつスライド型を継手本体から引き抜く。スライド型及び第2金型は、第1金型の型開きを行うことで、アンギュラピンにより軸方向に移動する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、内面止水構造の管継手の部品点数を少なくして製造コストを低減させると共に、製造を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本実施形態に係る管継手を示す断面図である。
図2】本実施形態に係る管継手を示す分解断面図である。
図3】継手本体を内筒部の先端側から見た状態を示す側面図である。
図4】本実施形態に係る管継手に管体を挿し込んだ状態を示す断面図である。
図5】管継手の製造に用いられるスライド型、第2金型、第2金型操作部及びアンギュラピンを示す斜視図である。
図6】スライド型及び第2金型を示す分解斜視図である。
図7】スライド型、第1金型、第2金型の型閉め状態を示す断面図である。
図8】第2金型操作部により第2金型を退避させた状態を示す断面図である。
図9図8の要部を示す拡大断面図である。
図10】第1金型を型開きし、アンギュラピンによりスライド型が継手本体から引き抜かれた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための形態を図面に基づき説明する。
【0015】
(管継手)
【0016】
図1図2において、本実施形態に係る管継手10は、継手本体12と、キャップ14と、抜け止め部材16とを有している。
【0017】
継手本体12は、例えば樹脂により構成され、内筒部18と、外筒部20とを備えている。内筒部18は、外周側において軸方向Sに管体22(図4)を挿し込み可能とされた、例えば円筒状の部位である。内筒部18には、流体が流される流路18Aが軸方向Sに沿って貫通して形成されている。内筒部18の外周において、外筒部20と径方向に対向しない位置には、シール部材24を取付け可能な周溝18Bが、例えば2箇所形成されている。シール部材24は例えばOリングであり、各々の周溝18Bに取り付けられている。外筒部20は、内筒部18の径方向外側に設けられると共に内筒部18と一体的に形成され、内筒部18との間に管体22の挿し込み空間26を形成する部位である。内筒部18と外筒部20とは、結合部28により径方向に結合されている。この結合部28は、管体22が挿し込み空間26の奥まで挿し込まれたとき、管体22の先端が当接する部位である。つまり、結合部28は、管体22の挿し込み深さを定める部位でもある。
【0018】
図1から図3に示されるように、外筒部20の内周部には、径方向内側に突出し軸方向Sに延びる突起部20Aが周方向に複数形成されている。突起部20Aは、例えば周方向に均等に配置されている。また、周方向に隣り合う突起部20Aの間は、凹部20Bとなっている。したがって、外筒部20の内周部に軸方向Sに延びる凹部20Bが形成されていると言い換えることもできる。
【0019】
突起部20Aにおける挿し込み空間26の開口側の端部には、該突起部20Aの先端に向かって内径が拡大する傾斜面20Cが形成されている。一例として、傾斜面20Cの径方向内側端は、突起部20Aの頂面(径方向内側端)に位置している。また、傾斜面20Cの径方向外側端は、凹部20Bの底部(径方向外側端)に位置している。なお、傾斜面20Cを、突起部20Aの軸方向端部に形成された面取り部ということもできる。
【0020】
外筒部20の外周部には、キャップ14と嵌合する突起部20Dが例えば周方向に連続的に形成されている。この突起部20Dは、軸方向Sに並んで例えば2箇所形成されている。更に、突起部20Dは、キャップ14の嵌め込みを許容し、キャップ14の抜けを抑制する断面鉤状に形成されている。キャップ14は、例えば樹脂により構成され、継手本体12の径方向外側に取り付けられている。キャップ14の内周部には、外筒部20の突起部20Dの係合する凹部14Dが形成されている(図2)。また、キャップ14は、外筒部20に取り付けられた状態で、内筒部18のうち外筒部20と径方向に対向しない部位を径方向外側から覆うように張り出している。換言すれば、キャップ14は、内筒部18と径方向に対向している。このキャップ14により、シール部材24の露出が抑制されている。
【0021】
抜け止め部材16は、継手本体12とキャップ14との間に挟持され、挿し込み空間26に挿入された管体22を管体22の外周側から保持する部材である。抜け止め部材16をロック部材、ロック爪と言い換えることもできる。具体的には、図2に示されるように、抜け止め部材16は、円環状の基部16Aと爪部16Bとを有して構成された、例えば金属部材である。基部16Aは、軸方向Sにおいて継手本体12の外筒部20と、キャップ14との間に挟持されている。爪部16Bは、基部16Aの内周縁から、該基部16Aの厚さ方向の一方側かつ該基部16Aの中心側に向かって斜めに延びている。また、爪部16Bは、基部16Aの周方向の複数箇所に設けられ、周方向に均等配置されている。
【0022】
図1図4に示されるように、爪部16Bは挿し込み空間26の奥側に突出するように配置されている。爪部16Bの先端から内筒部18の外周面までの径方向の距離は、管体22の厚さよりも若干小さく設定されている。これにより、爪部16Bは、管体22の挿し込みに伴い基部16Aに対して弾性的に傾動可能とされ、挿し込まれた管体22に対して管体22の引抜き方向に係合するようになっている。爪部16Bが、外周部20の傾斜面20Cに対向している場合、爪部16Bの傾動は、該傾斜面20Cに当接する位置まで許容される。つまり、傾斜面20Cの形状は、爪部16Bの傾動範囲を考慮して設定されている。
【0023】
(作用)
本実施形態は、上記のように構成されており、以下その作用について説明する。図1図4において、本実施形態に係る管継手10では、継手本体12において外筒部20が内筒部18に一体的に形成されているので、管継手10の部品点数を少なくすることができる。また、この管継手10では、外筒部20と内筒部18との間の挿し込み空間26に管体22を挿し込むと、該管体22がその外周側から抜け止め部材16によって保持される。具体的には、抜け止め部材16の爪部16Bが管体22に食い込むことにより、管継手10からの管体22の抜けが抑制される。また、管継手10は、管体22の内面で止水を行う内面止水構造を有し、管体22の内面と内筒部18との間がシール部材24によって止水される。
【0024】
また、継手本体12における外筒部20の内周部には、径方向内側に突出し軸方向Sに延びる突起部20Aが周方向に複数形成されている。換言すれば、周方向に隣り合う突起部20Aの間に凹部20Bが形成されており、該凹部20Bの部分が肉抜きされている。このため、継手本体12に使用される樹脂材料の使用量を低減できる。
【0025】
このように、本実施形態によれば、内面止水構造の管継手10の部品点数を少なくして製造コストを低減させることができる。
【0026】
(管継手の製造方法)
図5から図10において、本実施形態に係る管継手の製造方法は、スライド型30と、一対の第1金型の一例としての下型31及び上型41と、第2金型の一例としての入れ子32,42と、第2金型操作部の一例としての引掛け部34,44と、アンギュラピン36と、を用いて行われる。
【0027】
スライド型30は、管継手10における継手本体12の内筒部18を形成すると共に、内筒部18の径方向外側に位置する外筒部20の内周部を形成するために用いられる。具体的には、スライド型30は、ピン38と、環状部40とを有している。ピン38は、内筒部18の内周部を形成するための型である。環状部40は、内筒部18のうち挿し込み空間26に位置する外周部と、外筒部20の内周部とを形成するための金型である。環状部40の外周部には、外筒部20の内周部に突起部20Aを形成するための凹部40A、凹部20Bを形成するための凸部40B、及び傾斜面20Cを形成するための傾斜面40Dを有している。環状部40の内径は、内筒部18の外径に対応している。
【0028】
スライド型30は、更に本体部46及び保持部52を有している。環状部40は、本体部46の側面に固定され、又は本体部46の側面に一体的に形成されている。また、ピン38は、該ピン38より太い取付け部48と一体的に形成されている。本体部46には、環状部40と同心の取付け穴50が形成されている。取付け部48は、該取付け穴50に挿入されている。ピン38は、取付け穴50から延び出し、環状部40を貫通している。なお、この取付け穴50は、内筒部18の外周面の一部を成形する役割も有している(図9参照)。
【0029】
図6図7に示されるように、本体部46は、環状部40と反対側において、保持部52により保持されている。保持部52には、アンギュラピン36が貫通している。また、本体部46には、入れ子32が挿入される入れ子取付け穴62と、入れ子42が挿入される入れ子取付け穴72と、ガイドピン54,55が取り付けられる取付け穴56,58とが形成されている。入れ子取付け穴62,72は、例えば軸方向Sと直交する方向(上下方向)に沿ってそれぞれ形成され、互いに対向して取付け穴50に開口している。取付け穴56は、入れ子取付け穴62の下側から軸方向Sに沿って形成されている。取付け穴58は、入れ子取付け72の上側から軸方向Sに沿って形成されている。
【0030】
更に、本体部46の下側には、2つのガイド穴63が、入れ子取付け穴62に並んで形成されている。また、本体部46の上側には、2つのガイド穴73が入れ子取付け穴72に並んで形成されている。ガイド穴63には、入れ子32の動きを案内するガイドピン(図示せず)が挿し込まれ、ガイド穴73には、入れ子42の動きを案内するガイドピン(図示せず)が挿し込まれるようになっている。
【0031】
下型31及び上型41は、外筒部20を内筒部18と一体的に形成すると共に外筒部20の外周部を形成するために用いられる(図8)。下型31は一対の第1金型の一方であり、上型41は一対の第1金型の他方である。下型31には、スライド型30が軸方向Sに移動可能に支持されている。下型31は基板51に固定され、上型41は基板61に固定されている。
【0032】
入れ子32,42は、内筒部18の外周のうち外筒部20と径方向に対向しない位置に、周溝18Bを形成するために用いられる(図8)。図6に示されるように、入れ子32の先端には、内筒部18の外周を形成するための半円筒面32Aと、周溝18Bに対応した2本の突条32Bとが形成されている。同様に、入れ子42の先端にも、内筒部18の外周を形成するための半円筒面42Aと、周溝18Bに対応した2本の突条42Bとがそれぞれ形成されている。型締め時には、入れ子32の上端と入れ子42の下端が当接することで、半円筒面32A,42Aが繋がって円筒面状をなし、突条32B,42Bが繋がって円環状をなすようになっている。
【0033】
また、入れ子32,42は、スライド型30に対して軸方向Sと交差する方向に挿し込み及び退避可能とされ、スライド型30と共に軸方向Sに移動可能とされている。具体的には、スライド型30における本体部46に装着された状態で、基板51に対しスライド型30と共に軸方向Sに移動可能とされている。
【0034】
図6図7において、入れ子32には、下側のガイドピン54が挿通される長穴32Cが形成されている。入れ子32の下端には、引掛け部34と係合する張出し部32Dが形成されている。同様に、入れ子42には、上側のガイドピン55が挿通される長穴42Cが形成されている。入れ子42の上端には、引掛け部44と係合する張出し部42Dが形成されている。
【0035】
引掛け部34は、入れ子32に対して係合及び係合解除可能とされ、下型31及び上型41の型閉め時に入れ子32と係合し入れ子32の挿し込みを行うと共に、下型31及び上型41の型開き前に入れ子32の退避を行う部位である。具体的には、入れ子32の挿し込み時には、引掛け部34の本体部34Aが入れ子32の下端を押圧するようになっている。また、入れ子32の退避時には、引掛け部34に形成された張出し部34Dが、入れ子32の張出し部32Dに係合するようになっている。引掛け部34は基板82に固定されている。なお、張出し部32D,34Dの係合及び係合解除を円滑にするために、互いに接触する角部に面取り部を設けてもよい。
【0036】
同様に、引掛け部44は、入れ子42の例えば張出し部42Dに対して係合及び係合解除可能とされ、下型31及び上型41の型閉め時に入れ子42と係合し入れ子42の挿し込みを行うと共に、上型41の型開き前に入れ子42の退避を行う部位である。具体的には、入れ子42の挿し込み時には、引掛け部44の本体部44Aが入れ子42の上端を押圧するようになっている。また、入れ子42の退避時には、引掛け部44に形成された張出し部44Dが、入れ子42の張出し部42Dに係合するようになっている。引掛け部44は基板92に固定されている。なお、張出し部42D,44Dの係合及び係合解除を円滑にするために、互いに接触する角部に面取り部を設けてもよい。
【0037】
図7において、アンギュラピン36は、例えば上端36Aが上型41に固定されると共にスライド型30に挿通され、下型31及び上型41の型閉め及び型開きに伴いスライド型30を例えば下型31に対して軸方向Sに移動させる部材である。具体的には、アンギュラピン36の上端36Aは、上型41が固定される基板61に固定されている。このアンギュラピン36は、スライド型30の保持部52に貫通している。軸方向Sにおいて、アンギュラピン36の上端36Aは引掛け部44に比較的近い位置にあり、アンギュラピン36の下端36Bは引掛け部34から遠い位置にある。これにより、下型31と上型41とが離れると、スライド型30が軸方向Sにおいて下型31から離れる方向に移動するようになっている。また、下型31と上型41とが近づくと、スライド型30が軸方向Sにおいて下型31に接近する方向に移動するようになっている。
【0038】
図7において、一例として、基板92は固定され、他の基板51,61,82は型開き方向及び型締め方向に移動可能となっている。最も下に位置する基板82をアクチュエータ80によって上下動させることで、型開き及び型締めが行われる。具体的には、基板51と基板82の間に、入れ子32を引き戻して退避させるための退避用圧縮ばね74が設けられる。基板61と基板92との間にも、入れ子42を引き戻して退避させるための退避用圧縮ばね76が設けられる。一方、基板51,61の間には、下型31と上型41を型開きするための圧縮ばね78が設けられる。圧縮ばね78のばね定数は、上記退避用圧縮ばね74,76のばね定数よりも小さく設定される。これにより、下型31と上型41を型開きする前に、入れ子32,42が退避するようになっている。また、型締め時には、下型31と上型41が閉じてから、入れ子32,42が挿し込まれるようになっている。なお、入れ子32,42の挿し込みタイミングは同時であってもよいし、異なっていてもよい。圧縮ばね74,76のばね定数に差を設けることで、挿し込みタイミングを異ならせることができる。
【0039】
この管継手の製造方法では、スライド型30及び下型31及び上型41によって内筒部18と外筒部20を一体的に有する継手本体12を形成すると共に、入れ子32,42によって内筒部18の外周に周溝18Bを形成する。具体的には、スライド型30、下型31及び上型41及び入れ子32,42を型閉めする。これによって形成されるキャビティ60内に樹脂を射出して継手本体12を成形する。図9に示されるように、内筒部18の外周面のうち、環状部40及び入れ子32,42が位置しない部分は、本体部46の取付け穴50によって成形される。
【0040】
その後、引掛け部34,44により入れ子32,42を退避させてから(図8図9)、スライド型30及び入れ子32,42を軸方向Sに移動させる(図10)。これにより、引掛け部34,44と入れ子32,42との係合を解除しつつスライド型30を継手本体12から引き抜く。スライド型30及び入れ子32,42は、下型31及び上型41の型開きを行うことで、アンギュラピン36により軸方向Sに移動する。型締め及び型開きの操作は、アクチュエータ80により基板82を上下動させるだけでよいので、管継手10の製造を容易にすることができる。
【0041】
[他の実施形態]
以上、本発明の実施形態の一例について説明したが、本発明の実施形態は、上記に限定されるものでなく、上記以外にも、その主旨を逸脱しない範囲内において種々変形して実施可能であることは勿論である。
【0042】
外筒部20の内周部に、突起部20Aが周方向に複数形成されるものとしたが、該突起部20Aが形成されない構成であってもよい。
【符号の説明】
【0043】
10…管継手、12…継手本体、14…キャップ、16…抜け止め部材、18…内筒部、18B…周溝、20…外筒部、20A…突起部(内周部)、22…管体、24…シール部材、26…挿し込み空間、30…スライド型、31…下型(第1金型)、32…入れ子(第2金型)、34…引掛け部(下)、36…アンギュラピン、41…上型(第1金型)、42…入れ子(第2金型)、44…引掛け部(上)、S…軸方向
図1
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図9
図10