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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】貨幣処理装置
(51)【国際特許分類】
   G07D 11/24 20190101AFI20240801BHJP
   G07D 11/25 20190101ALI20240801BHJP
   G07D 11/34 20190101ALI20240801BHJP
【FI】
G07D11/24
G07D11/25
G07D11/34
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021042312
(22)【出願日】2021-03-16
(65)【公開番号】P2022142218
(43)【公開日】2022-09-30
【審査請求日】2023-06-23
(73)【特許権者】
【識別番号】000116079
【氏名又は名称】ローレルバンクマシン株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500267170
【氏名又は名称】ローレル機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500265501
【氏名又は名称】ローレル精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(72)【発明者】
【氏名】下野 芳彦
(72)【発明者】
【氏名】野崎 武
(72)【発明者】
【氏名】前崎 渉
【審査官】小島 哲次
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-022037(JP,A)
【文献】特開2019-066975(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G07D 9/00-13/00
G07D 1/00- 3/16
G07F 19/00
G07G 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
貨幣を識別して計数する識別部と、
前記識別部にて計数した貨幣を保留すると共に繰り出し可能なプールカセットと、
貨幣を収納すると共に繰り出し可能な金種別カセットと、
前記金種別カセットに収納しない少なくとも損券貨幣及びオーバーフロー貨幣の何れか一方を収納すると共に繰り出し可能な混合カセットと、
前記金種別カセットまたは前記混合カセットに収納された全ての貨幣を繰り出して前記プールカセットに保留した後、当該プールカセットに保留した貨幣を全て繰り出して前記金種別カセット及びまたは混合カセットへ収納する過程において前記識別部で前記全ての貨幣を識別して計数する再勘処理を実行する再勘手段と、
前記金種別カセット及び前記混合カセットから繰り出されて前記プールカセットに収納される貨幣の限度枚数を前記貨幣の収納を保証するように設定した値である再勘可能在高と、
前記再勘可能在高に基づいて、前記再勘手段による再勘処理の実行可否の判定を行う事前チェック手段と、
を備え、
前記事前チェック手段により、再勘処理が実行可能と判定されると、前記再勘手段によって前記再勘処理を開始する前に、さらに、前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数と前記再勘可能在高を比較して前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数の方が多い場合には、まず前記金種別カセットに収納された貨幣の一部を繰り出して前記プールカセットに保留した後、当該プールカセットに保留した貨幣を全て繰り出して前記混合カセットへ収納した後、最初に前記金種別カセット、次に混合カセットの順に一つずつ前記再勘処理を行うこと、
を特徴とする貨幣処理装置。
【請求項2】
前記事前チェック手段により、再勘処理が実行可能と判定されると、前記再勘手段によって前記再勘処理を開始する前に、さらに、前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数と前記再勘可能在高を比較して前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数の方が多くないとき、前記金種別カセットに収納された貨幣の一部を繰り出すことなく、直ちに、最初に前記金種別カセット、次に混合カセットの順に一つずつ前記再勘処理を行うこと、
を特徴とする請求項1に記載の貨幣処理装置。
【請求項3】
前記事前チェック手段は、混合カセットに収納された貨幣の枚数が、前記再勘可能在高と超えず、且つ、前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数が前記再勘可能在高を超える余剰分の貨幣の枚数の合計と、前記混合カセットに収納された貨幣の枚数と、を合計した総枚数が、前記再勘可能在高を超えないとき、前記再勘処理を実行可能と判定すること
を特徴とする請求項1または請求項2に記載の貨幣処理装置。
【請求項4】
さらに、前記金種別カセットの貨幣満杯状態を検知する満杯検知手段を備え、
前記再勘手段による前記再勘処理は、最初に金種別カセットに対して行われて最後に混合カセットに対して行われ、前記金種別カセットの前記再勘処理において前記プールカセットに保留した貨幣を全て繰り出して前記金種別カセットに収納する際に、前記満杯検知手段が前記金種別カセットの満杯を検知すると、前記再勘手段は、前記プールカセットに保留した残りの貨幣の収納先を全て前記混合カセットへ切り換えること、
を特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項5】
前記金種別カセットは複数備えられ、前記再勘可能在高も前記金種別カセット毎に個別に設定されていること、
を特徴とする請求項1から請求項の何れか1項に記載の貨幣処理装置。
【請求項6】
貨幣を識別して計数する識別部と、
前記識別部にて計数した貨幣を保留すると共に繰り出し可能なプールカセットと、
貨幣を収納すると共に繰り出し可能な金種別カセットと、
前記金種別カセットに収納しない少なくとも損券貨幣及びオーバーフロー貨幣の何れか一方を収納すると共に繰り出し可能な混合カセットと、
前記金種別カセットに収納された貨幣を全て繰り出して前記プールカセットへ収納した後、再度繰り出した金種別カセットに収納し直す過程において前記識別部で該全ての貨幣を識別して計数する再勘処理を実行する再勘手段と、
前記金種別カセット及び前記混合カセットから繰り出されて前記プールカセットに収納される貨幣の限度枚数を前記貨幣の収納を保証するように設定した値である再勘可能在高と、
前記再勘可能在高に基づいて、前記再勘手段による再勘処理の実行可否の判定を行う事前チェック手段と、
を備え、
前記事前チェック手段により、再勘処理が実行可能と判定されると、前記再勘手段によって前記再勘処理を開始する前に、さらに、前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数と前記再勘可能在高を比較して前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数の方が多い場合には、まず前記金種別カセットに収納された貨幣の一部を繰り出して前記混合カセットへ収納した後、最初に前記金種別カセット、次に混合カセットの順に一つずつ前記再勘処理を行うこと、
を特徴とする貨幣処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貨幣処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、金種別カセット内の紙幣を全て一旦プールカセット内へ移動し、その後、元の金種別カセット内に戻す際に、紙幣の金種と枚数を識別する再勘又は自己精査と呼ばれる機能を備える貨幣処理装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2012-234491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
再勘動作では、金種別カセット内の紙幣を全て一旦プールカセット内へ移動する過程において、プールカセットの容量が満杯となってしまい、金種別カセット内の紙幣を全てプールカセット内へ移動できずに結果的に再勘処理が停止してしまう可能性がある。
【0005】
そこでこの発明は、上述した解題を解決する貨幣処理装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、貨幣処理装置は、貨幣を識別して計数する識別部と、前記識別部にて計数した貨幣を保留すると共に繰り出し可能なプールカセットと、貨幣を収納すると共に繰り出し可能な金種別カセットと、前記金種別カセットに収納しない少なくとも損券貨幣及びオーバーフロー貨幣の何れか一方を収納すると共に繰り出し可能な混合カセットと、前記金種別カセットまたは前記混合カセットに収納された全ての貨幣を繰り出して前記プールカセットに保留した後、当該プールカセットに保留した貨幣を全て繰り出して前記金種別カセット及びまたは混合カセットへ収納する過程において前記識別部で前記全ての貨幣を識別して計数する再勘処理を実行する再勘手段と、前記金種別カセット及び前記混合カセットから繰り出されて前記プールカセットに収納される貨幣の限度枚数を前記貨幣の収納を保証するように予め設定された再勘可能在高と、前記再勘可能在高に基づいて、前記再勘手段による再勘処理の実行可否の判定を行う事前チェック手段と、を備え、前記事前チェック手段により、再勘処理が実行可能と判定されると、前記再勘手段によって前記再勘処理を開始する前に、さらに、前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数と前記再勘可能在高を比較して前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数の方が多い場合には、まず前記金種別カセットに収納された貨幣の一部を繰り出して前記プールカセットに保留した後、当該プールカセットに保留した貨幣を全て繰り出して前記混合カセットへ収納した後、最初に前記金種別カセット、次に混合カセットの順に一つずつ前記再勘処理を行うこと、を特徴とする。
【0008】
本発明の一態様によれば、貨幣処理装置は、貨幣を識別して計数する識別部と、前記識別部にて計数した貨幣を保留すると共に繰り出し可能なプールカセットと、貨幣を収納すると共に繰り出し可能な金種別カセットと、前記金種別カセットに収納しない少なくとも損券貨幣及びオーバーフロー貨幣の何れか一方を収納すると共に繰り出し可能な混合カセットと、前記金種別カセットに収納された貨幣を全て繰り出して前記プールカセットへ収納した後、再度繰り出した金種別カセットに収納し直す過程において前記識別部で該全ての貨幣を識別して計数する再勘処理を実行する再勘手段と、前記金種別カセット及び前記混合カセットから繰り出されて前記プールカセットに収納される貨幣の限度枚数を前記貨幣の収納を保証するように予め設定された再勘可能在高と、前記再勘可能在高に基づいて、前記再勘手段による再勘処理の実行可否の判定を行う事前チェック手段と、を備え、前記事前チェック手段により、再勘処理が実行可能と判定されると、前記再勘手段によって前記再勘処理を開始する前に、さらに、前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数と前記再勘可能在高を比較して前記金種別カセットに収納された貨幣の枚数の方が多い場合には、まず前記金種別カセットに収納された貨幣の一部を繰り出して前記混合カセットへ収納した後、最初に前記金種別カセット、次に混合カセットの順に一つずつ前記再勘処理を行うこと、を特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、再勘処理を開始した後に、処理の途中で停止することを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る紙幣処理装置を含む出納機を示す斜視図である。
図2】実施形態に係る紙幣処理装置を概略的に示す側断面図である。
図3】同紙幣処理装置の側断面図であって、再勘処理の往路ルートを示す図である。
図4】同紙幣処理装置の側断面図であって、再勘処理の復路ルートを示す図である。
図5】実施形態に係る再勘処理前の紙幣の収納状態の一例を示す図である。
図6】実施形態の事前チェックにおいて再勘不可と判定される場合の紙幣の収納状態の一例を示す第1の図である。
図7】実施形態の事前チェックにおいて再勘不可と判定される場合の紙幣の収納状態の一例を示す第2の図である。
図8】実施形態の事前チェックにおいて再勘不可と判定される場合の紙幣の収納状態の一例を示す第3の図である。
図9】実施形態に係る再勘処理における動作について説明する第1の図である。
図10】実施形態に係る再勘処理における動作について説明する第2の図である。
図11】実施形態に係る再勘処理における動作について説明する第3の図である。
図12】実施形態に係る再勘処理における動作について説明する第4の図である。
図13】実施形態に係る再勘処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<実施形態>
(構成)
以下、本発明の一実施形態による再勘処理について、図1図13を参照して説明する。図1は、紙幣および硬貨等を取り扱う出納機を示している。この出納機は、銀行等の金融機関の店舗に設置されて店舗全体の貨幣処理を管理するものである。出納機は、例えば、大口顧客に対する係員による入金、出金等の取引処理、係員による渉外先への持ち出し金の出金処理や、渉外先からの持ち帰り金の入金処理、さらには、営業終了後の金融機関店舗全体での入出金状況の締め上げ管理等を行うものである。出納機は、紙幣についての入出金処理等を行う本実施形態に係る紙幣処理装置11と、紙幣の特に新券についての出金処理等を行う新券処理装置12と、硬貨についての入出金処理等を行う硬貨処理装置13とが左右に並設されて構成されており、硬貨処理装置13の上部に、操作者によって操作入力がなされる操作部14と、操作者に対して表示を行う表示部15とが設けられている。
【0012】
次に、図2を参照して本実施形態に係る紙幣処理装置11の全体構成を説明する。紙幣処理装置11は、その前面側の上部に、機外からバラ紙幣が投入されるとともに機内から出金用のバラ紙幣が繰り出される入出金部(入金部,出金部)21が設けられている。入出金部21は、その底部を構成する載置板22が後下がりに傾斜した姿勢で昇降可能に設けられており、その奥側の支承面23が載置板22と直交するように後上がりに傾斜して設けられている。入出金部21には、紙幣が長さ方向を左右方向に沿わせた姿勢で載置板22上に集積されることになり、紙幣は載置板22の傾斜により後端縁が支承面23に当接する。入出金部21の上部の後側には、載置板22上に集積されたバラ紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して所定の間隔をあけて機内へ繰り出すとともに機内からの紙幣を入出金部21に繰り出す繰出部21aが設けられている。
【0013】
入出金部21の下側には、紙幣処理装置11の前面位置に、受け付け不可と識別された入金リジェクト紙幣が機内から繰り出される入金リジェクト部26が設けられている。入金リジェクト部26は、繰り出された紙幣を下から上に順次集積させて機外に取り出し可能となるように保持する。入出金部21および入金リジェクト部26の後側には、出金不可と識別された出金リジェクト紙幣を収納する出金リジェクト部27が設けられており、出金リジェクト部27の後方の下部には紙幣を識別する識別部28が設けられている。出金リジェクト部27も、繰り出された紙幣を下から上に順次集積させて収納する。
【0014】
また、出金リジェクト部27の後方の上部には紙幣を整列させて所定の結束枚数下から上に順次集積させる整列部30が設けられており、この整列部30の上部には、整列部30で集積された所定の結束枚数の紙幣に結束テープを巻き回し結束して小束紙幣とする結束部31が設けられている。この結束部31の前側には結束部31で作成された小束紙幣を機外に出金可能に繰り出す束出金部32が設けられている。束出金部32は、結束部31で結束した小束紙幣を複数束、機体前後方向に集積可能であり、複数の小束紙幣を一度に機外に取り出し可能となるように出金させるようになっている。
【0015】
また、紙幣処理装置11の下部には、奥側から順に、入金確定後の所定の単一金種のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する金種別カセット35、同様の金種別カセット36、同様の金種別カセット37、入金確定後のバラ紙幣を上下に集積させた状態で収納する混合カセット38、および入金された入金確定前の金種混合のバラ紙幣を上下に集積させた状態で一時貯留(保留)するプールカセット39が上下左右の位置を合わせて一列状の並列状態に配置されている。
【0016】
混合カセット38は、複数の金種別カセット35~37に収納しない他金種のバラ紙幣と、金種別カセット35~37に収納しきれないオーバーフロー紙幣と、損傷や汚れがある紙幣である損券とを収納する。例えば、金種別カセット35が千円券、金種別カセット36が万円券、金種別カセット37が五千円券を収納し、混合カセット38は、これら金種のオーバーフロー紙幣と二千円券とを収納する。プールカセット39は、入金処理や入金された紙幣を金種別カセット35~37、混合カセット38へ収納する収納処理において紙幣が一時貯留される領域であって、例えば、本実施形態に係る再勘処理の実行前の時点ではプールカセット39は空となっている。
【0017】
金種別カセット35の上部には、その内部に紙幣を繰り出すとともに内部の紙幣を上端のものから一枚ずつ分離して繰り出す繰出部35aが設けられており、金種別カセット36の上部にも同様の繰出部36aが、金種別カセット37の上部にも同様の繰出部37aが、混合カセット38の上部にも同様の繰出部38aが、プールカセット39の上部にも同様の繰出部39aが、それぞれ設けられている。
【0018】
紙幣処理装置11の内部には、紙幣を搬送する紙幣搬送路41が各部を適宜繋ぐように設けられている。紙幣搬送路41は、繰出部21aから後上がりに延出した後、後下がりに延出し、さらに鉛直下方に延出し、その後、前側に一端延出した後、下側にて後側に折り返し、後方に延出し、途中上側に凸状に屈曲して識別部28を通って下方に若干延出する搬送路41Aと、搬送路41Aに連続して下側に若干延出した後に前方に延出し前端から下方に若干延出する搬送路41Bと、搬送路41Bに連続するようにプールカセット39に設けられた搬送路41Cとを有している。
【0019】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの途中から分岐する搬送路41Dと、搬送路41Dに連続するように金種別カセット35に設けられた搬送路41Eと、搬送路41Bの搬送路41Dよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Fと、搬送路41Fに連続するように金種別カセット36に設けられた搬送路41Gと、搬送路41Bの搬送路41Fよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Hと、搬送路41Hに連続するように金種別カセット37に設けられた搬送路41Iと、搬送路41Bの搬送路41Hよりもプールカセット39側から分岐する搬送路41Jと、搬送路41Jに連続するように混合カセット38に設けられた搬送路41Kと、搬送路41Bの搬送路41Jよりもプールカセット39側から分岐して上方に延出する搬送路41Lと、搬送路41Lに繋がって屈曲し後方に延出して搬送路41Aの入出金部21と識別部28との間に繋がる搬送路41Mとを有している。
【0020】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Bの搬送路41Jの分岐位置と搬送路41Lの分岐位置との間位置から分岐して上方に延出する搬送路41Nと、搬送路41Nに繋がって上方に延出し搬送路41Mの途中位置に繋がる搬送路41Oと、搬送路41Mにおける搬送路41Oの接続位置と搬送路41Aへの接続位置との間位置から分岐して入金リジェクト部26に繋がる搬送路41Pと、搬送路41Aにおける搬送路41Mの接続位置と入出金部21との間位置から分岐し前方に延出して搬送路41Pの途中位置に繋がる搬送路41Qと、搬送路41Pにおける搬送路41Qの接続位置と入金リジェクト部26との間位置から上方に分岐し後上がりに延出して出金リジェクト部27に繋がる搬送路41Rとを有している。
【0021】
また、紙幣搬送路41は、搬送路41Aにおける入出金部21と搬送路41Qの分岐位置との間位置と、搬送路41Mの接続位置と識別部28との間位置とを繋ぐ搬送路41Sと、搬送路41Aにおける搬送路41Sの接続位置と入出金部21との間位置から後方に分岐して整列部30に繋がる搬送路41Tとを有している。搬送路41Sには、紙幣の表裏を反転させる表裏反転部43が設けられている。
【0022】
ここで、上記した搬送路41A~41Mは正逆両方向に紙幣を搬送可能となっており、搬送路41N~41Tは一方向にのみ紙幣を搬送可能となっている。
【0023】
また、紙幣処理装置11は制御部50を備える。制御部50は、例えばCPU等が搭載されたマイクロコンピュータで構成され、フラッシュメモリ等の記憶部51を備えている。制御部50は、紙幣処理装置11の全体を制御する。例えば、制御部50は、繰出部35a~38a等の動作を制御することにより、金種別カセット35~37および混合カセット38とプールカセット39との間で紙幣を搬送しつつ、識別部28に紙幣を識別計数させる再勘処理を制御する。制御部50は、再勘処理の実行可否を判定したり、再勘処理が開始できない場合に紙幣の回収を促すメッセージを表示部15に表示したりする。記憶部51には、例えば紙幣処理装置11に各種の演算処理を実行させるためのプログラムや判定用の閾値などの各種データ等が予め格納されている。また、記憶部51は、識別部28によって識別計数された紙幣の枚数などを記憶する。
【0024】
入出金部21、入金リジェクト部26、出金リジェクト部27、識別部28、整列部30、結束部31、束出金部32、表裏反転部43および搬送路41A,41M,41O~41T、制御部50が本体45内に配置されており、その下部にある、搬送路41B,41D,41F,41H,41J,41L,41Nが、本体45から前面側に引き出し可能な引出体46内に配置されている。さらに、搬送路41Eは、引出体46に対し着脱可能な金種別カセット35内に、搬送路41Gは同様の金種別カセット36内に、搬送路41Iは同様の金種別カセット37内に、搬送路41Kは同様の混合カセット38内に、搬送路41Cは同様のプールカセット39内に、それぞれ配置されている。
【0025】
なお、金種別カセット35~37、混合カセット38、プールカセット39には、満杯状態を検知するセンサが備えられていてもよい。制御部50は、このセンサが検知する内容に基づいて、各カセットの満杯状態を検知することができる(ハードウェアによる満杯検知手段)。あるいは、制御部50は、識別部28が識別計数する紙幣の枚数に基づいて、各カセットの満杯状態を検知してもよい(ソフトウェアによる満杯検知手段)。
【0026】
(再勘処理の往路ルート)
図3の太線は、操作部14へ入力された再勘処理の実行を指示する操作に基づいて、金種別カセット35~37および混合カセット38に収納されている紙幣を自己精査(紙幣の金種を識別し、金種別に枚数を数える)する再勘処理の往路ルートを示している。つまり、再勘処理では、図3に太実線で示すように、金種別カセット35~37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されている紙幣を上端のものから繰出部35a~38aの対応するものが繰り出すことになり、繰り出した紙幣を、搬送路41D~41Kの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送し、識別部28で識別計数しつつ、搬送路41M,41L,41B,41Cを介してプールカセット39に搬送する。そして、金種別カセット35~37および混合カセット38のうちの設定された一つに収納されていた紙幣をすべて繰り出して、プールカセット39に搬送する。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図3に太破線で示すように、搬送路41A,41Q,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。この搬送動作や識別部28は、制御部50によって制御される。識別部28による識別計数された値は、制御部50へ通知され、制御部50はこの値を記憶部51に記録する。
【0027】
(再勘処理の復路ルート)
図4の太線は、上記した再勘処理の復路ルートを示している。上記したようにプールカセット39に一旦移した紙幣を、図4に太実線で示すように、搬送路41C,41B,41L,41M,41Aによって、識別部28に搬送し、識別部28で識別計数するとともに、識別部28の識別結果に基づいて、搬送路41B,41D~41Kの対応するものを介して、金種別カセット35~37および混合カセット38の対応する金種のものに収納する。なお、この搬送中、識別部28で重送等と識別した紙幣については、図9に太破線で示すように、搬送路41B,41N,41O,41M,41P,41Rによって出金リジェクト部27に搬送し、出金リジェクト部27に収納する。この搬送動作や識別部28による識別計数、適切なカセットへの紙幣の収納などは、制御部50によって制御される。識別部28による識別計数された値は、制御部50へ通知され、制御部50はこの値を記憶部51に記録する。
【0028】
以上により、識別部28の計数結果と、金種別カセット35~37および混合カセット38の再勘処理を行ったものに収納された紙幣の枚数とが一致することになり、このような再勘処理を、金種別カセット35~37および混合カセット38のうちの設定されたものについて、それぞれ個別に行うことになる。後述するように、本実施形態の再勘処理では、例えば、金種別カセット35に収納された紙幣が全てプールカセット39に搬送され、そこから再び、金種別カセット35へと搬送されて戻される。次に金種別カセット36について同様の動作を行い、最後に金種別カセット37について同様の動作が行われる。そして、金種別カセット35~37の再勘処理が終了した後に、混合カセット38に収納された紙幣が全てプールカセット39に搬送され、そこから再び、混合カセット38へと搬送されて戻されることにより混合カセット38の再勘処理が行われる。
【0029】
(再勘処理)
次に再勘処理の動作について説明する。本実施形態に係る再勘処理では、再勘処理開始後の途中停止を防ぐために、(A)事前に金種別カセット35~37および混合カセット38の空き容量をチェックし、空き容量が十分ではない場合、紙幣を回収するよう操作者へ促し、空き容量を確保してから再勘処理を開始する。(B)また、再勘処理では、最初に金種別カセット35~37、次に混合カセット38の順に紙幣を搬送して紙幣の識別計数を行う。
【0030】
(A)事前チェック
まず、図5図8を参照して(A)事前チェックの処理について説明する。図5に再勘処理前の金種別カセット35~37、混合カセット38およびプールカセット39における紙幣の収納状態の一例を示す。図5のフル枚数TH2は、各カセットの最大収納可能枚数を示している。金種別カセット35~37、混合カセット38およびプールカセット39の容量は異なっている場合があるが、便宜上、ここでは、全カセットの容量は同じ、つまり、フル枚数TH2が同一であるとする。再勘処理中に、あるカセットへ収納しようとする紙幣の枚数が、フル枚数TH2を超過すると、オーバーフローが発生する。オーバーフローが発生すると再勘処理は途中停止する。また、カセットに収納されている枚数がフル枚数TH2未満であったとしても、紙幣の集積状態や紙幣のカールやV折れ等の癖状態によってはオーバーフローが発生する。このような場合にも再勘処理は途中停止する。再勘処理の途中停止を防止するために、本実施形態では、再勘可能在高TH1を設定する。図5の再勘可能在高TH1は、再勘処理の実行可否、換言すれば、再勘処理中のオーバーフローの発生の有無を判定するための閾値である。再勘可能在高TH1には、再勘処理前に各カセットに収納されている紙幣の枚数に関して、再勘処理中にオーバーフローが生じないような値が設定される。例えば、本実施形態の再勘処理では、一旦プールカセット39に再勘対象の紙幣を収納するが、このときにカールした紙幣や折れ癖等の有る紙幣のプールカセット39での集積状況によっては、プールカセット39の満杯枚数が、フル枚数TH2よりも少なくなってしまう可能性がある。再勘可能在高TH1には、このような悪条件でも収納を保証することができる紙幣の限度枚数が実験データなどに基づいて設定される。再勘可能在高TH1の設定値は、記憶部51に記録される。
【0031】
一例として、フル枚数TH2が2400枚、再勘可能在高TH1が2000枚とする。
なお、入金時に識別部28によって各種紙幣の識別計数が行われており、記憶部51には、各カセット35~39に収納されている紙幣の枚数が記録されている。例えば、金種別カセット35には千円券が2200枚、金種別カセット36には万円券が1100枚、金種別カセット37には五千円券が2200枚、混合カセット38にはオーバーフロー紙幣などが1300枚、プールカセット39には紙幣が0枚収納されているとする。
【0032】
(A)の事前チェックでは、再勘処理中におけるオーバーフローを防止するために2つのチェックを行う。(A-1)制御部50は、混合カセット38の収納枚数と再勘可能在高TH1とを比較し、混合カセット38に収納された紙幣の枚数が再勘可能在高TH1を上回っていれば、再勘処理は不可と判定する。(A-2)制御部50は、混合カセット38の収納枚数に金種別カセット35~37の余剰枚数を合計した合計枚数と、再勘可能在高TH1とを比較し、合計枚数が再勘可能在高TH1を上回っていれば、再勘処理は不可と判定する。ここで、金種別カセット35~37の余剰枚数とは、各カセットにおいて再勘可能在高TH1を超えて収納している紙幣の枚数のことである。図5の例では、金種別カセット35~37の収納枚数はそれぞれ2200枚、1100枚、2200枚なので、金種別カセット35の余剰枚数は200枚、金種別カセット36の余剰枚数は0枚、金種別カセット37の余剰枚数は200枚となる。制御部50は、(A-1)と(A-2)の判定のうち、何れかで再勘処理は不可と判定すると、再勘処理を開始せず、紙幣の回収を操作者へ促す。(A-1)と(A-2)の判定の両方で再勘処理は不可と判定しなかった場合には、制御部50は、再勘処理が可能と判定する。
【0033】
図5に例示する収納枚数についての判定は以下のようになる。
(A-1)2000枚(再勘可能在高TH1)>1300枚(混合カセット38)のため再勘処理の実行は可能。
(A-2)2000枚(再勘可能在高TH1)>1300枚(混合カセット38)+200枚(金種別カセット35の余剰枚数)+200枚(金種別カセット37の余剰枚数)のため再勘処理の実行は可能。
制御部50は、(A-1)と(A-2)の何れの判定でも再勘処理が不可と判定されなかったため、再勘処理を開始する。再勘処理の方法については後述する。
【0034】
再勘処理が不可と判定される場合の例を図6図8に示す。
図6に、(A-1)について、混合カセット38に収納された紙幣が再勘可能在高TH1を上回る場合の例を示す。混合カセット38の収納枚数は2100枚、再勘可能在高TH1は2000枚のため、制御部50は、(A-1)の判定において再勘処理は不可と判定する。この場合、制御部50は、混合カセット38からの紙幣回収を操作者へ促す。
【0035】
図7図8に、(A-2)について、混合カセット38に収納された紙幣の枚数と金種別カセット35~37の余剰枚数の合計が再勘可能在高TH1を上回る場合の例を示す。図7(a)、図8(a)は紙幣の収納状態の一例を示したものであるが、(A-1)の判定については、何れにおいても混合カセット38の収納枚数は再勘可能在高TH1未満である。一方、図7(b)、図8(b)には、(A-2)の判定についての判定結果を示す。図7(b)の例では、混合カセット38の紙幣枚数が1800枚、金種別カセット35、37の余剰枚数が共に200枚のため、それらの合計2200枚は、再勘可能在高TH1の2000枚を上回る結果となっている。図8(b)の例では、混合カセット38の紙幣枚数が900枚、金種別カセット35~37の余剰枚数が全て390枚のため、それらの合計2070枚は、再勘可能在高TH1の2000枚を上回る結果となっている。これらの場合、制御部50は、(A-2)の判定において再勘処理は不可と判定する。
【0036】
後に詳しく説明するように、本実施形態では、金種別カセット35~37の余剰分(再勘可能在高TH1を超えた紙幣)を一旦、混合カセット38へ搬送してから、金種別カセット35~37、混合カセット38の順に再勘処理を行う。その際、金種別カセット35~37から混合カセット38へ余剰分の紙幣を搬送した段階で、混合カセット38のオーバーフローが発生する可能性がある。また、混合カセット38にて収納される紙幣の枚数がフル枚数TH2未満であっても、紙幣の折れ状態などによっては、オーバーフローが発生する可能性がある。上述の通り、プールカセット39についても同様のことが言える。そこで、紙幣の集積状態や折れ等を考慮してもオーバーフローが生じないよう再勘可能在高TH1を設定し、この値に基づいて(A-1)、(A-2)の判定を行う。これにより、再勘処理中に混合カセット38でオーバーフローが発生することを予防する。
【0037】
また、(A-1)、(A-2)の何れかで再勘不可と判定されると、オーバーフローの原因となり得る紙幣を紙幣処理装置11の外へと回収して、紙幣の枚数を減らしてから、再度(A)事前チェックを行う。紙幣の回収は、金種別カセット35~37および混合カセット38のうちの対象とするものから必要な枚数だけ、繰出部35a~38aの対応するものによって繰り出され、繰り出された紙幣は搬送路41D~41Kの対応するものと、搬送路41B,41Aとで識別部28に搬送される。そして、識別部28の識別結果に基づいて、表裏反転が必要でないものは搬送路41Aで入出金部21に、表裏反転が必要なものは搬送路41Sを介して表裏反転部43で表裏反転させた後、搬送路41Aによって入出金部21まで搬送される。混合カセット38または金種別カセット35~37からの紙幣の回収においては、このような入出金部21への繰り出し搬送による回収が実行されるが、この繰り出し搬送には時間が掛かる。そのため、回収を行う対象は少ない方が好ましい。そこで、混合カセット38の収納枚数に対して、各金種別カセット35~37の余剰枚数の合計を比較し、混合カセット38の在高の方が少ない場合には、混合カセット38に収納された紙幣について、例えば、全回収(収納枚数がゼロになるまで回収)を実行する。これに対し、各金種別カセット35~37の余剰枚数の合計の方が少ない場合には、各金種別カセット35~37のいずれかの中から紙幣の一部回収を行う。例えば、制御部50は、余剰枚数の一番多い金種別カセットから順に、(A-2)の条件が満たされる(つまり、混合カセット38の収納枚数と各金種別カセット35~37の余剰枚数の合計が再勘可能在高TH1以下となる)まで、余剰枚数分または余剰枚数にさらなる枚数を加算した分ずつを繰り出し搬送により回収するようにしてもよい。これにより、金種別カセット35~37および混合カセット38の紙幣の収納状態を(A)事前チェックにて再勘処理が可能と判定される状態とすることができる。
【0038】
(B)再勘処理
(A)の事前チェックにて、再勘処理が可能と判定されると、制御部50は、再勘処理を開始する。再勘処理の動作について、図9図12を参照して説明する。まず、制御部50は、金種別カセット35~37の余剰分の紙幣を混合カセット38へ搬送する。余剰分の紙幣とは、金種別カセット35~37および混合カセット38に収納されている紙幣のうち、再勘可能在高TH1を超える分の紙幣である。例えば、金種別カセット35に2200枚の千円券が収納されていて、再勘可能在高TH1が2000枚に設定されている場合、金種別カセット35の余剰紙幣は200枚である。制御部50は、余剰分の千円券200枚をプールカセット39経由で混合カセット38へ搬送する。図3等に示す構成では、金種別カセット35~37から混合カセット38へ直接紙幣を搬送することができない為、図9(a)に示すように、まず、金種別カセット35~37から余剰分をプールカセット39へ移動させる。その後、図9(b)に示すように、プールカセット39から混合カセット38へ余剰分の紙幣を搬送する。例えば、制御部50は、繰出部35a等を制御して、余剰分の千円券を、図3に太線で示すルート(搬送路41E、41D、41B、41A、41M、41L、41B、41C)によってプールカセット39へ搬送し、図4に太線で示すルート(搬送路41C、41B、41L、41M、41A、41B、41J、41K)によって、プールカセット39から混合カセット38へ搬送する。同様に制御部50は、繰出部37a等を制御して、金種別カセット37の余剰分の五千円券をプールカセット39経由で混合カセット38へ搬送する。搬送の順番は、金種別カセット35の余剰紙幣をプールカセット39経由で混合カセット38へ搬送してから金種別カセット37の余剰紙幣をプールカセット39経由で混合カセット38へ搬送してもよいし、金種別カセット35、37の余剰紙幣をプールカセット39へ搬送し、その後、プールカセット39の紙幣を混合カセット38へ搬送してもよい。この間、往路のルートと復路のルートの少なくとも一方(両方でもよい。)で、識別部28は、搬送された紙幣の識別計数を行い、その結果を、制御部50へ通知する。制御部50は、混合カセット38へ搬送された紙幣の識別計数の結果を記憶部51に記録する。なお、(A-2)の判定を通過している為、この搬送動作において、混合カセット38やプールカセット39でオーバーフローが検知されることは無い。
【0039】
金種別カセット35~37における余剰分の紙幣の混合カセット38への搬送が終了すると(図9(b))、制御部50は、金種別カセット35~37の再勘処理を1カセットずつ実行する。ここで、図10を参照する。ここでは、金種別カセット35、36、37の順に再勘処理するとする。まず、制御部50は、図3の太線で示す往路のルートにて、金種別カセット35の千円券をプールカセット39へ搬送する。搬送後の各カセットの紙幣の収納状態を図10(a)に示す。次に、制御部50は、図4の太線で示す復路のルートにて、プールカセット39の千円券を金種別カセット35へ搬送する。搬送後の各カセットの紙幣の収納状態を図10(b)に示す。この間、往路のルートと復路のルートの少なくとも一方で、識別部28は、搬送された千円券の識別計数を行い、その結果を、制御部50へ通知する。制御部50は、搬送された千円券の識別計数の結果を記憶部51に記録する。図9で説明した処理により、搬送対象の紙幣の枚数は再勘可能在高TH1以下となっている。この為、金種別カセット35、プールカセット39の何れにおいても紙幣のオーバーフローが発生することが無い。制御部50は、同様にして、金種別カセット36について再勘処理を実行し、その後、金種別カセット37について再勘処理を実行する。なお、金種別カセット35~37について、再勘処理を実行する順番は任意であってよく、例えば、金種別カセット37、36、35の順に実行してもよい。
【0040】
金種別カセット35~37の再勘処理が完了すると、制御部50は、混合カセット38の再勘処理を実行する。ここで、図11を参照する。まず、制御部50は、図3の太線で示す往路のルートにて、混合カセット38に収納された各種紙幣をプールカセット39へ搬送する。搬送後の各カセットの紙幣収納状態を図11(a)に示す。次に、制御部50は、図4の太線で示す復路のルートにて、プールカセット39の各種紙幣を紙幣の種類に応じて、金種別カセット35~37および混合カセット38の何れかへ搬送する。例えば、再勘処理に先立って行われる図9に示す処理によって、余剰分として混合カセット38へ搬送された千円券と五千円券はそれぞれ、金種別カセット35と金種別カセット37へ搬送される。搬送後の各カセットの紙幣の収納状態を図11(b)に示す。この間、往路のルートと復路のルートの少なくとも一方で、識別部28は、搬送された各種紙幣の識別計数を行い、その結果を、制御部50へ通知する。制御部50は、各種紙幣の識別計数の結果を記憶部51に記録する。混合カセット38における復路動作においては、損券は元の混合カセットに収納するが、オーバーフロー券として収納されていた紙幣については、各金種別カセット35~37が満杯ではない事を条件として、対応する金種別カセットへ収納するようにしてもよい。この場合、再勘処理の開始前(図4)に混合カセット38に収納されていたオーバーフロー券の中に千円券や5千円券が混在していた場合、それらが金種別カセット35や金種別カセット37へ搬送され、収納される可能性がある。すると、元々、金種別カセット35や金種別カセット37に収納されていた紙幣の枚数や紙幣の曲がり癖などによっては、オーバーフローを起こす可能性があるが、例えば、金種別カセット35が満杯様態になった後は、残りの千円券は、金種別カセット35ではなく、混合カセット38まで搬送され、混合カセット38に収納するように制御部50によって制御される。これにより、オーバーフローによる再勘処理の途中停止は回避され、再勘処理は最後まで実行される。この動作を図12に示す。
【0041】
(動作)
図13を参照して、本実施形態に係る再勘処理の流れを説明する。
図13は、実施形態に係る再勘処理の一例を示すフローチャートである。
記憶部51には、金種別カセット35~37、混合カセット38およびプールカセット39に収納されている紙幣の収納枚数、再勘可能在高TH1、フル枚数TH2の各値が記録されている。カセットの満杯状態の検知については、フル枚数TH2による判定ではなく、金種別カセット35~37、混合カセット38に紙幣の満杯状態を検知するセンサを設け、制御部50は、このセンサによって、各カセットが満杯状態かどうかを検知してもよい。
【0042】
操作部14に対する再勘処理の開始を指示する操作が行われると、又は、待機時などにおいて自動再勘モードが起動すると、制御部50は以下の処理を実行する。まず、制御部50は、記憶部51から混合カセット38の収容枚数と再勘可能在高TH1とを読み出して、混合カセット38の収容枚数が再勘可能在高TH1より大きいか否かを判定する(ステップS10)。この判定は、上記の(A-1)の判定に該当する。混合カセット38の収容枚数が再勘可能在高TH1より大きい場合(ステップS10;Yes)、制御部50は、混合カセット38からの紙幣の回収を催促する(ステップS15)。例えば、制御部50は、混合カセット38から一部の紙幣を機外へ回収する操作が必要であること、又は、全回収が必要であることなどを示す注意メッセージを表示部15へ表示する。
【0043】
混合カセット38の収容枚数が再勘可能在高TH1以下の場合(ステップS10;No)、制御部50は、各金種別カセット35~37の余剰枚数を算出する(ステップS11)。制御部50は、記憶部51から金種別カセット35~37に収納されている紙幣の枚数を読み出して、それぞれの値から再勘可能在高TH1を減算して、金種別カセット35~37それぞれの余剰枚数を算出する。次に制御部50は、混合カセット在高と各金種別カセット35~37の余剰枚数を合計する(ステップS12)。制御部50は、記憶部51から混合カセット38に収納されている紙幣の枚数を読み出して、読み出した値にステップS11で算出した金種別カセット35~38の余剰枚数を全て足し合わせる。次に制御部50は、再勘可能在高TH1から、ステップS12で算出した混合カセット38の収容枚数と各金種別カセット35~38の余剰枚数の合計を減算した値が0未満か否かを判定する(ステップS13)。この判定は、上記の(A-2)の判定に該当する。
【0044】
再勘可能在高TH1からステップS12で算出した合計を減算した値が0未満の場合(ステップS13;Yes)、制御部50は、混合カセット38の収容枚数が各金種別カセット35~37の余剰枚数を合計した値以上となるか否かを判定する(ステップS14)。この判定は、どのカセットから紙幣を回収すると効率が良いかを判定する為のものである。混合カセット38の収容枚数の方が大きい場合(ステップS14;Yes)、制御部50は、金種別カセット35~37からの紙幣の回収を催促する(ステップS16)。例えば、制御部50は、金種別カセット35~37から紙幣を機外へ回収することを促すメッセージを表示部15へ表示する。金種別カセット35~37の余剰枚数を合計した値の方が大きい場合(ステップS14;No)、制御部50(報知手段)は、混合カセット38からの紙幣の回収を催促する(ステップS15)。例えば、制御部50は、混合カセット38から紙幣を全回収することを促すメッセージを表示部15へ表示する(報知)。操作者は、これらの表示に従って、催促されたカセットからの紙幣の回収を指示する操作を操作部14に対して行う。制御部50は、指定されたカセットから入出金部21への紙幣の繰り出し搬送を行う。これにより、金種別カセット35~37および混合カセット38における紙幣の収納枚数は、再勘処理が実行可能な状態となる。
【0045】
再勘可能在高TH1からステップS12で算出した合計を減算した値が0以上の場合、(ステップS13;No)。制御部50は、再勘処理の実行が可能であると判定し、ステップS17以降の処理を行う。まず、制御部50は、余剰枚数が0より大きい金種別カセット35~37が存在するか否かを判定する(ステップS17)。そのような金種別カセット35~37が存在する場合(ステップS17;Yes)、余剰分を混合カセット38へ退避する(ステップS18)。制御部50は、金種別カセット35~37のうちのステップS11で算出した余剰枚数が0より大きいカセットについて、繰出部35a~39a等を制御することにより、その金種別カセットに収納された紙幣の余剰分を図3に示す往路ルートでプールカセット39まで搬送し、図4に示す復路ルートでプールカセット39から混合カセット38へ搬送する。図9に例示するように、制御部50は、余剰枚数が0より大きい全ての金種別カセット35~37について、この動作を行う。
【0046】
次に制御部50(再勘手段)は、金種別カセット35~37の再勘処理を実行する(ステップS19)。例えば、制御部50は、図10を用いて説明したように、金種別カセット35の紙幣を、金種別カセット35とプールカセット39との間で往復させる過程で、金種別カセット35の再勘処理を行う。往路ルートと復路ルートの何れか一方、または両方で識別部28による識別計数を行う。制御部50は、識別計数の結果を記憶部51に記録する。制御部50は、金種別カセット35~37を1つずつ処理する。
【0047】
次に制御部50(再勘手段)は、混合カセット38の再勘処理を実行する(ステップS20)。例えば、制御部50は、図11を用いて説明したように、混合カセット38の紙幣を、プールカセット39へ移し、その後プールカセット39から券種に応じた他のカセットへ分配する過程で混合カセット38の再勘処理を行う。往路ルートと復路ルートの何れか一方、または両方で識別部28による識別計数を行う。制御部50は、識別計数の結果を記憶部51に記録する。制御部50は、金種別カセット35~37について紙幣がフル枚数TH2まで収納されると(あるいは、センサによって満杯状態が検知されると)、図12で説明したように収納しきれない紙幣を混合カセット38まで搬送する。これにより再勘処理が完了する。
【0048】
(効果)
以上説明したように本実施形態の貨幣処理装置(紙幣処理装置11)によれば、(A)事前チェックにより、再勘処理を途中停止せざるを得ないリスクがある場合には、そのリスクを事前に検知し、紙幣の機外への回収によって再勘処理を途中で停止せざるを得ない状況を回避することができる。具体的には、金種別カセット35~37の余剰分の紙幣を、混合カセット38に搬送したときに、混合カセット38が満杯となってしまい、再勘動作を停止せざるをえない状況を回避することができる。金種別カセット35~37、混合カセット38の紙幣の再勘処理中に往路動作でプールカセット39が満杯となってしまい、再勘動作を停止せざるをえない状況を回避することができる。また、復路動作で金種別カセット35~37が満杯になったとしても、満杯を超えた分は混合カセット38に収納先を切り換えれば良いので、再勘処理の途中停止を防止することができる。これにより、再勘処理を開始した後に、再勘処理を継続できないことが判明し、再勘処理を途中停止し、必要とする処置(金種別カセットの紙幣の一部を機外へ回収して収納枚数を減らす)を行った後に再度、再勘処理をやり直すといった煩雑な作業から解放される。
【0049】
<変形例1>
上記の実施形態では、紙幣処理装置11が、混合カセット38を備える構成としたが、例えば、釣銭機等のように混合カセット38を備えないカセット構成でも、上記の再勘処理を適用することが可能である。この場合、オーバーフロー分の紙幣の行き先が無くなるので、「再勘可能在高TH1<金種別カセット内の紙幣の枚数」を(A)事前チェックにおける再勘不可条件とする。再勘処理開始前に、金種別カセットに収納された紙幣の枚数と再勘可能在高TH1を比較して、金種別カセットに収納された紙幣の枚数の方が多い場合には、金種別カセットの紙幣を所定枚数分、機外へ回収する旨の表示を行う。そして、操作者が、金種別カセット35~37から必要な量の紙幣の回収を行うと、再勘処理の開始が可能となる。
【0050】
混合カセット38を備えないカセット構成の場合の再勘処理の動作例を、図13のフローチャートに沿って説明する。まず、ステップS10において、混合カセット38の在高に代えて、各金種別カセット35~37の収納枚数と再勘可能在高TH1とを比較する。金種別カセット35~37のうちの何れかの収納枚数が再勘可能在高TH1を上回る場合、ステップS15に代えてステップS16の処理を実行する。つまり、制御部50が、金種別カセットからの紙幣の回収を催促するメッセージを表示する。金種別カセット35~37の在高が何れも再勘可能在高TH1以下の場合、ステップS11、S12、S13、S14、S17、S18の処理を行わずに、ステップS19の金種別カセット35~37の再勘処理を行う。再勘処理では、金種別カセット35~37に収納された紙幣を図3の往路ルートに従ってプールカセット39へ搬送し、図4の復路ルートに従ってプールカセット39から金種別カセット35~37へ搬送する。そして、往路・復路の何れか又は両方で識別部28による識別計数を行う。ステップS20は実行しない。
【0051】
なお、上記の実施形態では、3つの金種別カセットを備える構成例で説明したが、金種別カセットは単金種専用で1つのみを備える構成であっても良い。また、プールカセット39については、単純に計数して識別された紙幣をプールするだけではなく、装填/回収可能な一括庫(着脱可能なカセット)であってもよい。
【0052】
<変形例2>
上記の実施形態では、金種別カセット35~37、混合カセット38、プールカセット39の容量が同一であるとしたが、各カセットの容量は同一でなく、大小異なるカセットであっても良い。その場合は、各カセットの大きさに応じて、個別に再勘可能在高TH1を設定する。また、例えば、両替機のように、万円紙幣の金種別カセットには官封券(新券)をセットする仕様であっても、再勘可能在高TH1が個別に設定できるので、官封券(新券)は流通券よりも紙幣の厚みが薄くて満杯容量が多くなるが、それに応じて、例えば、流通券を収納する場合よりも大きな値を再勘可能在高TH1に設定しておくことで対応することができる。また、例えば、混合カセット38やプールカセット39の容量が少なければ、それらの容量に応じた再勘可能在高TH1を設定し、金種別カセット35~37においても、この再勘可能在高TH1に基づいて(A)事前チェックを行うことで、再勘処理の途中停止を防止することができる。
【0053】
<変形例3>
上記の実施形態では、搬送路41の構造上、金種別カセット35~37からプールカセット39への搬送は可能であるが、金種別カセット35~37から混合カセット38へ直接紙幣を搬送することができない。金種別カセット35~37から混合カセット38への搬送が可能な搬送路の構造とすることにより、金種別カセット35~37の余剰分の紙幣を直接、混合カセット38に搬送するようにしてもよい。例えば、搬送路41Bを介して、プールカセット39と混合カセット38とを行き来できる構成とし、完全周回状搬送路(各カセットから搬送路41Bへは、時計廻りでも反時計廻りでも搬送可能に出し入れできる)とすることで、プールカセット39を経由せずに、ステップS18の動作において、金種別カセット35~37から混合カセット38へ紙幣を移動させるようにしてもよい。
【0054】
<変形例4>
以上の実施例では、バラ紙幣を処理する場合について説明したが、これに限定されず、硬貨、紙幣束、硬貨棒金に対する再勘処理に対しても、本実施形態の制御を適用することができる。
【0055】
その他、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、上記した実施の形態における構成要素を周知の構成要素に置き換えることは適宜可能である。また、この発明の技術範囲は上記の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【符号の説明】
【0056】
11 紙幣処理装置
12 新券処理装置
13 硬貨処理装置
14 操作部
15 表示部
35~37 金種別カセット
38 混合カセット
39 プールカセット
41 搬送路
45 本体
46 引出体
50 制御部
51 記憶部
図1
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