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特許7530611血管の露出区画を調湿するための調湿デバイス、及び移植用の自家移植材料を採取する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】血管の露出区画を調湿するための調湿デバイス、及び移植用の自家移植材料を採取する方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 90/00 20160101AFI20240801BHJP
【FI】
A61B90/00
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2022504534
(86)(22)【出願日】2020-07-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-10-07
(86)【国際出願番号】 IB2020056750
(87)【国際公開番号】W WO2021014312
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2023-07-12
(31)【優先権主張番号】102019000012537
(32)【優先日】2019-07-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】501193001
【氏名又は名称】ポリテクニコ ディ ミラノ
【氏名又は名称原語表記】POLITECNICO DI MILANO
【住所又は居所原語表記】Piazza Leonardo da Vinci,3220133 MILANO-Italy
(73)【特許権者】
【識別番号】522029349
【氏名又は名称】チェントロ・カルディオロジコ・モンツィーノ・ソチエタ・ペル・アツィオーニ
【氏名又は名称原語表記】CENTRO CARDIOLOGICO MONZINO S.P.A.
(73)【特許権者】
【識別番号】516002716
【氏名又は名称】ウニヴェルシタ デッリ ストゥディ ディ ミラノ
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【弁理士】
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】フィオーレ,ジャンフランコ ベニアミーノ
(72)【発明者】
【氏名】ソンチーニ,モニカ
(72)【発明者】
【氏名】ピオーラ,マルコ
(72)【発明者】
【氏名】ペッシェ,マウリツィオ
(72)【発明者】
【氏名】アグリフォーリオ,マルコ
【審査官】神ノ田 奈央
(56)【参考文献】
【文献】特表2016-531106(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
移植用の生体材料を採取するために血管(3)の露出区画(2)の少なくとも一部分を調湿するための調湿デバイス(1)であって、
- 外被(4)と、
- 前記外被(4)内に完全に延在している少なくとも1つの送達路(7)と、を備え、
- 前記外被(4)が、前記露出区画(2)に面する第1の主面である第1の表面(15’)を含む第1の層(15)、及び前記第1の表面(15)と反対側の第2の主面である第2の表面(16’)を含む第2の層(16)を備え、
- 前記少なくとも1つの送達路(7)が、前記外被(4)から通じる少なくとも1つの第1の開口部(11)を含み、これにより、前記少なくとも1つの送達路(7)には、前記少なくとも1つの第1の開口部(11)を介して作動流体(14)が供給され得、
- 前記第1の層(15)が、前記作動流体(14)の少なくとも1つの成分(14’)に対して透過性であり、その結果、前記作動流体(14)が前記少なくとも1つの送達路(7)内にあるとき、前記第1の層(15)を透過する前記少なくとも1つの成分(14’)が、自身が前記第1の表面(15’)に到達するまで拡散して、前記血管(3)内の前記露出区画(2)に対して調湿作用を加える、
調湿デバイス(1)。
【請求項2】
前記第2の層(16)が、前記作動流体(14)に対して不透過性である、請求項1に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項3】
前記第1の層(15)が、前記少なくとも1つの成分(14’)を除いて、前記作動流体(14)の少なくとも1つの追加成分に対するバリアを形成している、請求項1又は2に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項4】
前記送達路(7)の少なくとも1つの第1の壁(23)が、前記第1の層(15)によって形成され、また、前記送達路(7)の少なくとも1つの第2の壁(23’)が、前記第1の層(15)と前記第2の層(16)との間に介在する内部容積(6)によって形成される、第3の層(6)によって形成され、前記第3の層が、前記作動流体(14)の前記少なくとも1つの成分(14’)に対して透過性であり、その結果、前記少なくとも1つの成分(14’)が、前記第1及び第2の壁(23、23’)の両方を通過して拡散するようになり、その際、実質的に前記第1の表面(15’)全体に前記成分(14’)自体が分散される、請求項1から3のいずれか一項に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項5】
前記外被(4)を所定の幾何学的構成で少なくとも一時的に固定するように適合された、少なくとも1つの固定デバイス(8)をさらに備え、
- 前記所定の幾何学的構成が、前記血管(3)の少なくとも1つの前記露出区画(2)を収容するように適合されたデバイスルーメン(17)を形成している、請求項1から4のいずれか一項に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項6】
前記外被(4)は、内部容積(6)を少なくとも部分的に画定している筐体(5)を含み、少なくとも1つの前記固定デバイス(8)が、前記筐体(5)の辺縁部上に配置されている、請求項5に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項7】
前記送達路(7)が、前記外被(4)の長手方向に沿って蛇行する少なくとも1つの灌流路(28)と、前記外被(4)の前記長手方向に沿って蛇行している、対向する少なくとも2つの経路(28、28’)とを画定している、請求項1から6のいずれか一項に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項8】
前記少なくとも1つの送達路(7)が、前記外被(4)から通じる少なくとも1つの第2の開口部(13)をさらに含み、前記少なくとも1つの第1の開口部(11)が、前記作動流体(14)の吸入開口部として機能し、また前記少なくとも1つの第2の開口部(13)が、前記作動流体(14)の吐出開口部として機能しているため、前記作動流体(14)の流れが前記第1の開口部(11)、前記送達路(7)、及び前記第2の開口部(13)を通過している、請求項1から7のいずれか一項に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項9】
前記送達路(7)の前記少なくとも1つの第1の開口部(11)及び前記少なくとも1つの第2の開口部(13)が、前記外被(4)の同じ長手方向側(30又は30’)に配置されている、請求項8に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項10】
前記第1の層(15)がヒドロゲルを含む、請求項1から9のいずれか一項に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項11】
前記外被(4)が、長手方向(X-X)に対して直角な少なくとも1つの横方向(T-T)に可撓になり、その結果、前記血管(3)の前記露出区画(2)を取り囲むように前記露出区画(2)の周りに巻き付けられるようになる、請求項1から10のいずれか一項に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項12】
前記送達路(7)に前記作動流体(14)を供給するために前記送達路(7)の前記第1の開口部(11)又は前記第2の開口部(13)のうちの少なくとも1つに結合された、少なくとも1つの流体供給デバイス(18)を備える、請求項8又は9に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項13】
前記流体供給デバイス(18)が、前記少なくとも1つの第1の開口部(11)を前記作動流体(14)が通過する前に、前記作動流体(14)の温度及び/又は組成を調整するように適合された、少なくとも1つの作動流体調整システム(21)を含み、前記作動流体調整システム(21)が、前記作動流体(14)の温度を調整するように適合された、少なくとも1つの熱交換器(31)を選択的に含む、請求項12に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項14】
前記少なくとも1つの流体供給デバイス(18)が、前記作動流体(14)が流れる再循環路(19)を形成するように、前記送達路(7)の前記少なくとも1つの第1の開口部(11)及び前記少なくとも1つの第2の開口部(13)の両方に結合されている、請求項12又は13に記載の調湿デバイス(1)。
【請求項15】
前記少なくとも1つの流体供給デバイス(18)が、前記流体供給デバイス(18)を自動化するための制御信号を送信するための少なくとも1つの制御デバイス(26)を含む、請求項12、13又は14に記載の調湿デバイス(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿デバイスに関する。
【0002】
本発明による調湿デバイスは、特に血管の露出区画を調湿するように適合されている。
【0003】
本発明による調湿デバイスは、冠動脈バイパスを非限定的な例として、自家移植用の材料を採取する外科手術を行うために、伏在静脈の露出区画を調湿するのに適用可能である。
【0004】
本発明はさらに、自家移植用の生体材料を採取する方法に関する。
【背景技術】
【0005】
心臓組織の血管再生のための外科手術が一般に知られており、この手術では、患者の伏在静脈の一部を露出させ、自家移植、例えば冠動脈バイパス又は血管バイパスを行うための区画を切断する。この伏在静脈は、足背静脈弓と鼠径部との間の脚の表在部に延在しており、踝、膝、及び大腿の領域を通っている。
【0006】
典型的には、これらの外科手術では、伏在静脈の遊離端を形成している外果付近で伏在静脈を切断した後、伏在静脈の主要部分が引き出され、かつ露出される細長いスリットを生成するために、患者の脚部の実質的に内側全体に長手方向の切開を行う。このようにして、外科チームは、前記細長いスリットを介して伏在静脈の主要区画を一時的に引き出し、その結果これを露出させることができる。
【0007】
伏在静脈の当該区画を露出させることにより、外科チームは、例えば冠動脈バイパス及び/又は血管バイパスなどの用途のために、自家移植用の基材を形成することを意図した生体材料を採取することができる。
【0008】
通常は手術に必要となる伏在静脈の切片(外科的必要性に応じて、数センチメートルの長さ)である、生体材料を採取した後、伏在静脈の断端を踝及び脚部又は大腿に縫合し(採取した区画の長さに応じて)、創傷の外科的縫合が層状に行われる。
【0009】
典型的には、この統合された外科手術では、主要な伏在静脈の区画をある時間間隔において露出させることが必要になり、この時間間隔の間、露出される伏在静脈区画には、生理学的平衡が一時的に中断されることで、移植片材料の形質の劣化をもたらし、当該移植片の耐用年数を制限する可能性もある、望ましくない現象が発生する恐れがある。例えば、伏在静脈を露出させることにより、静脈の露出区画に酸化ストレスが加えられ、これにより、静脈壁を形成している内皮組織の機能障害が引き起こされ、この機能障害は、静脈壁のリモデリングや慢性炎症性現象へと発展する恐れがある。
【0010】
数年という期間でさえ、このような壁のリモデリングが、新生の脈管内膜層(新生内膜)の形成やアテローム動脈硬化性プラークの形成を招く可能性があり、これらによって、移植片の開存性が早期に低下し、早期の不全が引き起こされ、また、移植片へのステントの埋め込みや、新たな外科手術によるその置換が強いられることになる。
【0011】
こうした血管壁の望ましくないリモデリングを招くメカニズムの発生を防止し、血管の採取手術による損傷を最小限に抑える必要性が増大している。
【0012】
この血管採取手術による損傷を抑えるために、例えば、生理食塩水に浸漬したガーゼを使用することで、伏在静脈の露出区画を湿潤状態に保ち、その結果、脱水症状を回避するなどのいくつかの緩和療法が、外科診療に導入されている。
【0013】
例えば、米国特許第9579224号明細書から、ステントに隣接する範囲に炎症性細胞を集積させるべく、炎症反応を促すために、ステントを伏在静脈の切片の周りにインサイチュで配置するように適合された解決策も知られている。
【0014】
これとは反対に、血管移植の技術分野では、例えば、国際公開第98/20027号から、血管移植片の外側に有効成分を投与するためのデバイスの作製について知られており、このデバイスは、移植が行われ、かつ移植片が固定される血管の部分に取り付けられて、移植片を含む血管分岐部の外壁間に隔離チャンバを形成する不透過性閉鎖システムによって、血管移植片を取り囲むようにしている不透過性キャップから実質的に構成されている。その後、血管内皮細胞増殖因子(vascular endothelial growth factor:VEGF)を含有する溶液が、このような密閉されたチャンバに注入されて、移植片の区域における組織血管新生が促進される。
【0015】
自家移植片の採取以外の臨床用途ではあるが、このようなデバイスは、例えば、血管自体の1つ又は複数の区画を圧迫する弾性バンドを含む不透過性閉鎖システムによって、血管壁に圧迫が加えられるなど、生理学的平衡の局所的変化を示唆するため、当該課題を解決するものではない。こうした圧迫によって、血管壁の望ましくないリモデリングを招くメカニズムの発生が防止されるわけではないので、そのような解決策は、伏在静脈に対する自家移植用の材料採取には適していない。
【0016】
これとは対照的に、選択的に透過性の材料、具体的にはウイルや細菌に対しては不透過性の材料で作製されたパッチを使用して、汚染のリスクを抑えるバリアを形成することにより、創傷におけるウイルス感染や細菌感染の蔓延リスクを低減する方法が、一般に知られている。
【0017】
このタイプのパッチは、治療対象の創傷周辺の皮膚に緊密に接着するように作製されており、また、典型的には、その一端が治療対象の創傷に結合され、かつ滲出液回収容器内にある対向端へとつながる流体吸引管を設けることにより、ヒドロゲル体を通って容器内に回収される創傷滲出液の回収を促進することで、治療対象の創傷内部の組織に接触するようになっている、ヒドロゲル層を備える。負圧発生器は通常、吸引ラインに結合されている。上述のタイプの解決策は、例えば、国際公開第2004/37334号にも開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
しかしながら、これらの解決策では、創傷の滲出液用の吸引システムを設けることが必要になるため、例えば、伏在静脈などの血管の露出区画から移植片を採取する手順には適用することができない。
【0019】
したがって、移植片自体の耐用年数を伸長するために、一時的ではあるが、移植用材料の形質の劣化をもたらす生理学的平衡の中断に起因する、望ましくない現象の発生を回避又は少なくとも最小限に抑えることができる解決策を提供する必要がある。
【0020】
同時に、自家移植片の採取が想定される血管の露出区画において、生理学的平衡状態を維持する必要性も増している。
【課題を解決するための手段】
【0021】
本発明の目的は、記載している従来技術の欠点を解決し、上述した必要性に対する解決策を提供することである。
【0022】
これら及び他の目的は、請求項1に記載のデバイス及び請求項16に記載の方法によって達成される。
【0023】
いくつかの有利な実施形態は、従属請求項の目的である。
【0024】
本発明の一態様によれば、移植用の生体材料を採取するために血管の露出区画の少なくとも一部分を調湿するための調湿デバイスであって、外被と、この外被内に完全に延在している少なくとも1つの送達路と、を備え、前記外被は、前記露出区画に対向するようになっている第1の表面を含む第1の層、及び前記第1の表面に対向している第2の表面を含む第2の層を備え、前記少なくとも1つの送達路は、外被から通じる少なくとも1つの第1の開口部を含み、これにより、前記少なくとも1つの送達路には、前記少なくとも1つの第1の開口部を介して作動流体が供給され得る、調湿デバイスが提供される。前記第1の層は、作動流体の少なくとも1つの成分に対して透過性であり、その結果、前記作動流体が前記少なくとも1つの送達路内にあるとき、前記第1の層を透過する前記少なくとも1つの成分は、自身が前記第1の表面に到達するまで拡散して、血管内の前記露出区画に対して調湿作用を加える。
【0025】
提案している解決策により、移植片材料の採取中に血管、例えば伏在静脈の露出区画を調湿するという点で、成果の向上がもたらされている。
【0026】
提案している解決策は、移植片材料の採取中、伏在静脈などの血管の露出区画の調湿に対する制御を向上させている。
【0027】
本デバイス及び本方法のさらなる特徴並びに利点は、添付の図面を参照した、非限定的な例によって、その好ましい実施形態の以下の説明から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】作動モードに応じた、採取方法のステップの概略図である。
図2】作動状態にあるときの、一実施形態による調湿デバイスの概略不等角投影図である。
図3】血管の露出区画が示されている、図2の調湿デバイスの不等角投影図であり、別個の部分図でもある。
図4A】一実施形態による、調湿デバイス内の弾性デバイスを断面視した図である。
図4B図2の矢印IV-IV-IV-IVによって示されるプロット平面に沿った断面図である。
図5A】一実施形態による、調湿デバイス内の弾性デバイスを断面視した図である。
図5B】別の実施形態を示す、図4Bと同様の断面図である。
図6】一実施形態による、調湿デバイスの部品を分離した状態の不等角投影図である。
図7図6の本調湿デバイスを示す不等角投影図である。
図8】いくつかの実施形態による、流体供給デバイスを備える調湿デバイスを示す概略図である。
図9】いくつかの実施形態による、流体供給デバイスを備える調湿デバイスを示す概略図である。
図10】いくつかの実施形態による、流体供給デバイスを備える調湿デバイスを示す概略図である。
図11】いくつかの実施形態による、流体供給デバイスを備える調湿デバイスを示す概略図である。
図12】本調湿デバイスの作動流体調整システムの一実施形態を示すブロック図である。
図13】一実施形態による、再循環路を備える調湿デバイスの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
概略的な一実施形態によれば、調湿デバイス1が提供される。
【0030】
前記調湿デバイス1は、血管3の露出区画2の少なくとも一部を調湿するように適合されている。
【0031】
好ましくは、前記調湿デバイス1は、移植用の生体材料の採取に使用されている。
【0032】
好ましくは、「露出区画」という用語は、患者の体外に一時的に取り出される血管3の区画を意味する。
【0033】
好ましくは、「露出区画」という用語は、現在の外科診療によれば、血管区画3の一端が依然として患者の身体37の内側に結合され、好ましくは他端24が、典型的には外科医である術者9によって切断され、カニューレ39が挿入された状態で、体外位置に一時的に配置される、患者の伏在静脈の区画を意味する。
【0034】
前記調湿デバイス1は、外被4又は外袋4を備える。
【0035】
好ましくは、調湿デバイス1の前記外被4は、内部容積6を少なくとも部分的に画定している筐体5を含む。このように、前記内部容積6は、調湿デバイス1の前記外被4の内側に位置する。好ましくは、前記筐体5は前記内部容積6を包囲している。好ましくは、前記筐体5は、例えばフィルムの形態の可撓性材料で作製されている。
【0036】
そのような調湿デバイス1は、完全に外被4の前記内部容積6内に延在する、少なくとも1つの送達路7、即ち灌流路7を備える。
【0037】
前記外被4は、前記露出区画2に対向するようになっている第1の層表面15’又は第1の表面15’若しくは第1の面15’を含む、第1の層15を備える。
【0038】
一実施形態によれば、前記第1の層15及び前記第1の表面15’は前記筐体5の一部であるため、外被4の前記筐体5は前記第1の層15を含む。
【0039】
前記外被4は、前記第1の表面15’に対向している第2の層16’又は第2の表面16’若しくは第2の面16’を含む、第2の層16をさらに備える。
【0040】
一実施形態によれば、前記第2の層16及び前記第2の表面16’は前記筐体5の一部であるため、外被4の前記筐体5は、前記内部容積6において第1の層15の前記第1の表面15’に対向している、前記第2の表面16’をさらに含む。
【0041】
前記少なくとも1つの送達路7は、外被4から通じる、即ち筐体5から通じる少なくとも1つの第1の開口部11を含み、これにより、前記少なくとも1つの送達路7には、前記少なくとも1つの第1の開口部11を介して作動流体14が供給され得る。このように、前記少なくとも1つの第1の開口部11は内部容積6から通じている。
【0042】
一実施形態によれば、送達路7は単一の開口部11を含み、作動流体捕集容器14として機能している。
【0043】
有利には、前記第1の層15は、作動流体14の少なくとも1つの成分14’に対して透過性である。
【0044】
このようにして、前記作動流体14は、前記少なくとも1つの送達路7内に存在するとき、前記少なくとも1つの成分14’で外被4の前記第1の層15’を透過し、その結果、前記少なくとも1つの成分14’が外被4の前記第1の表面15’に到達して、血管3内の前記露出区画2に対して調湿作用を加える。
【0045】
換言すれば、作動状態下では、前記作動流体14が前記少なくとも1つの送達路7内にあるとき、前記作動流体14の前記少なくとも1つの成分14’は、外被4の第1の層15における前記第1の表面15’に拡散して、血管3内の前記露出区画2に対して調湿作用を加える。
【0046】
このように、必要に応じて、前記第1の成分14’によって前記第1の表面15’を湿潤させることができる。
【0047】
好ましくは、前記第1の層15は、前記少なくとも1つの成分14’を除いて、前記作動流体14の少なくとも1つの追加成分に対するバリアを形成する。有利には、前記第1の層15は、作動流体14の少なくとも1つの成分14’に対して選択的に透過性である。
【0048】
好ましくは、「調湿作用」という用語は、露出区画2に加えられる恒常性の調湿作用を意味する。
【0049】
好ましくは、「調湿作用」という用語は、温度及び/又は湿度並びに/若しくは化学組成などの環境パラメータを調整する作用を示すことを意図する。
【0050】
前記送達路7をプレビジョンすることにより、送達路7内で前記作動流体14の対流送達を実現することが可能になる。
【0051】
前記第1の層15が作動流体14の前記少なくとも1つの成分14’に対して透過性であることにより、送達路7から第1の表面15’に向かって、作動流体14の前記少なくとも1つの成分14’を拡散的に、又は主として拡散的に、あるいは緩やかに対流させて送達することができるようになる。
【0052】
好ましくは、前記第2の層16は、前記作動流体14に対して不透過性である。好ましい一実施形態によれば、前記第2の層16は、前記作動流体14に対して不透過性である、送達路7の不透過壁23’’の少なくとも一部分を形成している。
【0053】
前記第2の不透過層16を設けることにより、作動流体14及び/又はその種々の成分14’がそれぞれ、外被4、即ち筐体5の外側に送達されるのを防止するバリアが形成され得る。例えば、作動流体14の蒸発が防止される。このようにして、血管3の露出区画2の近傍で、所定の湿度レベルが維持される。
【0054】
このような第2の層16を設けることにより、前記調湿作用の効率を高めることができる。
【0055】
一実施形態によれば、前記送達路7は、作動流体14の前記少なくとも1つの成分14’に対して透過性の前記第1の層15によって、少なくとも部分的に画定されている。このようにして、送達路7の壁23の少なくとも一部は、前記第1の層15から作製されている。一実施形態によれば、外被4の前記内部容積6は、送達路7の壁23’の少なくとも一部分を形成している。
【0056】
一実施形態によれば、外被4の前記内部容積6は、前記第1の層15と接触している。
【0057】
一実施形態によれば、前記第1の層15’により、前記成分14’が毛細管現象によって前記第1の表面15’に向かって透過することができる。
【0058】
一実施形態によれば、前記第1の層15’により、前記成分14’が拡散によって前記第1の表面15’に向かって透過することができる。
【0059】
例えば、前記作動流体14の前記少なくとも1つの成分14’は、液状の水、水蒸気、溶存酸素、気体酸素、結合酸素、気体二酸化炭素、溶存二酸化炭素、結合二酸化炭素、溶解溶質、イオン溶質、結合溶質、不溶性物質、ガス状物質、溶解担体に結合した薬物分子、懸濁状態の薬物分子、コロイド状態の薬物分子、ガス状態の薬物分子、ナノ粒子、小胞、又は上記の組合せのうちの少なくとも1つを含む。
【0060】
例えば、前記作動流体14は、混合物及び/又は溶液並びに/若しくは懸濁液である。
【0061】
例えば、前記作動流体14は、前記成分14’に加えて、好ましくは液状の水、又は生理食塩水のいずれかの少なくとも一方を含む。
【0062】
例えば、前記作動流体14は、ガス状又は気体状であり、水蒸気及び/又は気体混合物を含む。
【0063】
内部容積6及び/又は第1の層15の本体内に相互結合された細孔を作成することが想定されてもよく、そのような相互結合された細孔は、前記送達路7の一部と見なされないことが好ましい。
【0064】
このような調湿デバイス1を設けることにより、作動流体14の少なくとも1つの成分14’を、その化学的・物理的状態を制御している第1の表面15’に送達することができるようになる。このように、化学的・物理的状態を制御している部分は、前記第1の表面15’の近傍に、又はこれと接触して配置された血管3の露出区画2に対向している。
【0065】
例えば、前記第1の層15により、作動流体14の水性成分が第1の表面15’に送達されるようになり、その結果、第1の表面15’を湿潤させることができる。このようにして、調湿デバイス1の湿らせたか、又は潤おわせた面である、前記第1の表面15’の近傍に、又はこれと接触して配置された血管3の露出区画2が監視されている。したがって、血管3、例えば伏在静脈の露出区画2が脱水状態になるリスクが回避されるか、又は少なくとも最小限に抑えられる。
【0066】
そのような作動流体14は、湿度及び/又は温度など、血管3、例えば伏在静脈の露出区画2における調湿因子を送達するための担体要素として機能している。
【0067】
そのような作動流体14はまた、血管3、例えば伏在静脈の露出区画2を調湿するために、可溶性成分及び/又は懸濁化学成分並びに/若しくは生化学成分を送達するための担体要素として機能してもよい。
【0068】
実行状態下では、第1の表面15’、好ましくは第1の層15は、血管3の露出区画2と化学的平衡をとっていることが好ましい。例えば、第1の表面15’内及び血管3の露出区画2の壁40内において、酸素飽和値は実質的に同じである。
【0069】
好ましい一実施形態によれば、前記少なくとも1つの送達路7は、外被4の前記筐体5から通じる少なくとも1つの第2の開口部13をさらに含む。このように、前記少なくとも1つの第1の開口部11と前記少なくとも1つの第2の開口部13とは、筐体5から通じている。好ましくは、前記少なくとも1つの第1の開口部11は、作動流体14の吸入開口部として機能し、また前記少なくとも1つの第2の開口部13は、作動流体14の吐出開口部として機能しているため、作動流体14の流れは前記第1の開口部11、前記送達路7、及び前記第2の開口部13を通過している。
【0070】
前記吸入開口部11と前記吐出開口部13とを設けることにより、前記吸入開口部11を通過する作動流体14の対流は前記外被4の内部を流れ、前記送達路7に流入し、次いで前記吐出開口部13から、そして外被4から、即ち内部容積6から、かつ/又は筐体5から流出する。
【0071】
前記少なくとも1つの送達路7を画定している壁23’は、同じ前記内部容積6から作製されてもよく、また湿潤性である気孔を含んでもよく、例えばこれらの気孔は、作動流体14の少なくとも1つの成分及び/又は作動流体流の一部を吸収するように適合され得る。
【0072】
例えば図5-Aに例示として示す一実施形態では、前記内部容積6は、前記第1の層15と前記第2の層16との間に挟まれた実質的に第3の層として機能し、ここで、前記内部容積6によって形成された前記第3の層は、作動流体14の前記少なくとも1つの成分14’に対して透過性である。例えば、前記内部容積6によって形成された前記第3の層はシリコーン材料からなり、また、前記第1の層15はヒドロゲルからなる。前記内部容積6によって形成され、前記少なくとも1つの成分14’に対する透過性をも有する第3の層を設けることにより、前記第1の表面15’において送達路7からさらに離隔した部分に、前記少なくとも1つの成分14’が拡散するようになる。換言すれば、送達路7の少なくとも1つの第1の壁23は、前記第1の層15によって形成され、また、送達路7の少なくとも1つの第2の壁23’は、前記少なくとも1つの成分14’に対して透過性の前記内部容積6によって形成され、これらをプレビジョンすることにより、少なくとも1つの成分14’が、前記第1及び第2の壁23、23’の両方を通過して拡散するようになり、その際、好ましくは実質的に均一になるように、第1の面15’全体に成分14’自体が分散される。作動流体14の前記少なくとも1つの成分14’に対する内部容積6又は第3の層6の透過性は、第1の層15の透過性よりも低くてもよいし、等しくてもよいし、又は高くてもよい。例えば、前記成分14’に対する内部容積6の透過性は、第1の層15の透過性及び第2の層16の透過性の中間である。
【0073】
一実施形態によれば、前記筐体5は、前記少なくとも1つの吸入開口部11及び前記少なくとも1つの吐出開口部13においてのみ中断される。このようにして、筐体5は、内部容積6が前記作動流体14又はその成分14’によって透過されても、この内部容積6を包囲し、かつ密閉している。
【0074】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの送達路7は、前記少なくとも1つの第1の開口部11に結合されている少なくとも1つの吸入管路10と、前記少なくとも1つの吐出開口部13に結合されている少なくとも1つの吐出管路12とに結合されており、前記少なくとも1つの吐出管路10と前記少なくとも1つの吐出管路12とは、外被4の前記内部容積6の外側に、好ましくは前記筐体5を通って延在している。好ましくは、いわゆる管路10及び12は、可撓性スリーブによって形成されている。
【0075】
一実施形態によれば、前記送達路7は、第2の層16を掘り込むことによって作製されている。例えば、第2の層16はポリマー材料、例えばポリウレタン及び/又はポリエステルで作製されている。
【0076】
一実施形態によれば、前記送達路7は、前記第2の表面16’に対向している第2の層16の側で、前記第2の層16から材料を除去することによって作製されている。例えば、前記結合路7は、レーザエッチングによって作製されている。
【0077】
一実施形態によれば、前記送達路7は、成形又は鋳造によって作製されている。例えば、前記送達路7の幾何学的形状は、金型上で凹状に作製されている。
【0078】
一実施形態によれば、前記送達路7は、作動流体14が実質的に層流で流れる少なくとも1つの管路を含む。
【0079】
一実施形態によれば、前記送達路は、熱エンボス加工によって作製されている。
【0080】
好ましくは、第1の層15と第2の層16とは、少なくとも1つ又は複数の層、例えば前記内部容積6から構成された第3の層を重ねることにより、直接的又は間接的に接着されており、かつ/又は溶接されている。
【0081】
好ましい一実施形態によれば、前記調湿デバイス1は、前記外被4を所定の幾何学的構成で少なくとも一時的に固定するように適合された、少なくとも1つの固定デバイス8又は閉鎖デバイス8をさらに備える。
【0082】
好ましくは、前記所定の幾何学的構成は、血管3の前記少なくとも1つの露出区画2を収容するように適合されたデバイスルーメン17を形成している、閉鎖幾何学的構成である。このようにして、調湿デバイス1における前記第1の層15の前記第1の表面15’を、血管3の露出区画2の外壁40周辺に配置することができる。
【0083】
好ましくは、前記デバイスルーメン17は、露出区画2が通過する長手方向空洞を形成している。前記デバイスルーメン17の形状は先細状であってもよく、又はいずれの場合にも、天然血管の露出区画2の容積構造を収容するように、適切に成形されてもよい。
【0084】
一実施形態によれば、前記デバイスルーメン17は、血管3の露出区画2上に配置されるか、又はその周りを包み込むように適合された、長手方向の空洞を形成している。このようにして、前記外被4は、前記露出区画2を取り囲むスリーブを実質的に形成している。
【0085】
一変形形態によれば、デバイスルーメン17は貫通ルーメンではなく、即ち、ルーメン17のアクセス開口部に対向している底部を含む容器であり、前記露出区画2のためのキャップを形成している。
【0086】
好ましくは、前記外被4において、血管3の前記露出区画2の長手方向展開軸と実質的に平行であるか、又はこれに一致する長手方向X-Xが、前記調湿デバイス1が作動状態にあるときに画定され、次いで長手方向X-Xに直交し、かつこれに入射する横方向T-Tと、長手方向X-X及び横方向T-Tの両方に直交し、外被厚さ33を画定している厚さ方向とが画定される。好ましくは、前記筐体5は、前記外被厚さ33を画定している。好ましくは、前記外被厚さ33は、前記外被4を長手方向X-Xに伸長した長さや、横方向T-Tに伸長した長さよりもはるかに短く、その結果、前記外被4が本質的にシートを形成している。
【0087】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定デバイス8は、前記外被4の横方向辺縁部22、22’上に配置されている。好ましくは、「横方向辺縁部」という用語は、前記外被4の横方向縁部の近傍に、又はそこに配置される前記外被4の一部を示し、外被4の長手方向寸法は、前記外被4を横方向に伸張した長さよりも大幅に長く、好ましくははるかに長くなっている。前記横方向辺縁部22、22’が外被4の縁部35に配置されるとは限らないが、好ましい一実施形態によれば、そのように配置される。
【0088】
前記固定デバイス8により、調湿デバイス1の前記外被4を、スリーブのような巻回構成で露出区画2周辺に維持することが可能になる。
【0089】
調湿デバイス1の前記外被4を血管3の露出区画2の周りに巻き付け、前記第2の不透過層16と前記固定デバイス8とを共に設けることにより、デバイスルーメン17内、ひいてはデバイスルーメン17内に収容され、前記第1の表面15’に対向している血管3の露出区画2内に、所望の化学的・物理的状態を維持するのに役立つ封じ込めバリアを形成することが可能になり、調湿デバイス1が血管3の露出区画2に対して加える調湿作用に対する制御を向上させることができる。
【0090】
閉鎖巻回構成にあるとき、第2の層16は、露出区画2を調湿するための作動流体14に対する不透過性バリアを形成する。
【0091】
好ましい一実施形態によれば、調湿デバイス1の前記外被4の内部容積6は、前記外被4と同様に、長手方向に対して直角な少なくとも横方向に可撓になり、その結果、血管3、例えば伏在静脈の露出区画2を取り囲むように露出区画2の周りに巻回され、即ち巻き付けられるようになる。固定デバイス8を設けることにより、外被4を血管3の露出区画2の周りに巻付け構成で固定することができるようになる。
【0092】
好ましくは、前記外被4は、各横方向辺縁部22、22’上に固定デバイス8を含み、これにより、少なくとも作動状態下で、例えば移植片の採取作業中に、外被4が巻き付けられて、血管3の前記露出区画2を取り囲み、この幾何学的構成で固定され得る。
【0093】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定デバイス8は、解放可能な結合を形成している。このように、外被4は、必要に応じて、例えば移植片の採取作業が終了したときに、再度開放され得る。
【0094】
一実施形態によれば、前記固定デバイス8は、スロットフック式結合を形成するように適合されている。
好ましくは、前記少なくとも1つの固定デバイス8は面ファスナを含む。
【0095】
一実施形態によれば、前記固定デバイスはスナップ結合システムを含む。
【0096】
一実施形態によれば、少なくとも1つの固定デバイス8と呼ばれるものは、接着結合を形成するように適合され、また好ましくは、少なくとも部分的に接着材料で作製されている。前記少なくとも1つの固定デバイス8が必ずしも接着剤を含むとは限らないが、接着剤を含む一実施形態によるものを記載している。一実施形態によれば、前記固定デバイス8は、固定デバイス8の材料の選択、同じ材料又は異なる材料に対するある材料の表面親和性などの表面特徴を調整することにより、接着結合を形成するように適合されている。
【0097】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定デバイス8は、磁気結合を形成するように適合されている。好ましくは、前記少なくとも1つの固定デバイス8は永久磁石を含む。一実施形態によれば、前記少なくとも1つの固定デバイス8は、必要に応じて作動させることができる、少なくとも1つの電磁石を含む。
【0098】
外被4が閉鎖幾何学的構成をとり、血管3の露出区画2の周りに巻き付けられる作動状態では、デバイスルーメン17は、実質的にX-X長手方向に方向付けられる。
【0099】
固定デバイス8により、外被4は、図4-Aに図示されているような開放構成から、図4-Bに図示されているような閉鎖巻回構成に切り替わることができ、ここで、巻回構成にあるとき、外被の横方向寸法36は、開放構成にあるときと比較して減少するが、代わりに、外被4の長手方向伸長長さは実質的に一定のままとなる。
【0100】
このような固定デバイス8を設けることにより、一方で閉鎖及び巻回構成で外被4をしっかりと固定しながら、外被4を血管3の露出区画2の周りに、閉鎖及び巻回構成で迅速に固定することができるようになる。
【0101】
一実施形態によれば、前記送達路7は、外被4の内部容積6と送達路7との交換面積を最大化するために、少なくとも1つのコイル状灌流路28、28’を画定している。一実施形態によれば、前記送達路7は、外被4の長手方向X-Xの伸長長さに沿って延在し、好ましくは外被4の本体の長手方向側30又は30’に配置されたユニオン管29によって接合された、対向する少なくとも2つのコイル状経路28、28’を画定している。
【0102】
一実施形態によれば、前記送達路7は、デバイス1の前記第1の表面15’に向かって、したがって血管3の前記露出区画2に向かって前記少なくとも1つの成分14’の拡散を促進するために、例えば断面が増大した滞留領域を画定している。一実施形態によれば、前記送達路7は、前記作動流体14の混合効果を得るために、混合領域を画定し、例えば蛇行性を強めている。
【0103】
一実施形態によれば、前記送達路7は、外被4の長手方向伸長長さ全体に実質的に沿って延在している。
【0104】
一実施形態によれば、前記送達路7は、少なくとも1つの分岐を画定している。例えば、少なくとも1つの分岐は、吸入管路10のすぐ下流に位置している。
【0105】
一実施形態によれば、送達路7の前記吸入開口部11及び前記吐出開口部13は、外被4の同じ長手方向側30又は30’に配置され、好ましくは両方とも、作動状態にあるとき、血管3、例えば伏在静脈3の露出区画2の遊離端24に対向するように適合された、外被4の長手方向側30に配置されている。
【0106】
好ましい一実施形態によれば、前記第1の層15はヒドロゲルを含み、これにより、ヒドロゲル本体が前記送達路7と第1の表面15’との間に介在して、少なくとも1つの成分14’が前記送達路7から、前記ヒドロゲルを通って血管3、例えば伏在静脈の露出区画2に対向している前記第1の表面15’に送達されるようにしている。
【0107】
一実施形態によれば、外被4の内側の内部容積6は、好ましくは前記送達路7と前記第1の層15との間に、かつ接触した状態でヒドロゲルを含む。
【0108】
一実施形態によれば、前記ヒドロゲルは、光重合され得る、例えば紫外線への曝露によって架橋され得るヒドロゲルである。
【0109】
第1の透過性表面15’は、血管3の露出区画2の近傍で、又はこれと接触して調湿作用を付勢するように、波形を付けられ得る。
【0110】
第1の層15と内部容積6とは、種々の材料及び方法を用いて作製され得る。
【0111】
一実施形態によれば、前記第1の層15は複合材料で作製されている。例えば、第1の層15の前記複合材料は、前記少なくとも1つの成分14’に対して透過性の材料で含浸された、本質的に多孔質のマトリクスを含む。一実施形態によれば、第1の層15の前記複合材料は、ヒドロゲルを含浸させた不織布を含む。
【0112】
一実施形態によれば、前記第1の層15は半透過膜を含む。例えば、前記第1の層15は選択的透過膜を含む。
【0113】
一実施形態によれば、前記第1の層15及び/又は前記内部容積6は、ガス透過性ポリマー材料で作製され、例えばシリコーン材料の層を含む。
【0114】
一実施形態によれば、前記第1の層15及び/又は前記内部容積6は、シリコーンゲルを含む。
【0115】
一実施形態によれば、前記第1の層15及び/又は前記内部容積6は、シルクを含む。「シルク」という用語はまた、シルクフィブロインなどのシルク誘導体を意味する。
【0116】
一実施形態によれば、前記第1の層15及び/又は前記内部容積6は、電界紡糸によって作製された少なくとも1つの層を含む。例えば、前記内部容積6内に電界紡糸足場が配置され得る。
【0117】
一実施形態によれば、前記第1の層15及び/又は前記内部容積6は、細胞内ナノメッシュを含む。
【0118】
一実施形態によれば、前記第1の層15及び/又は前記内部容積6は不織布を含む。
【0119】
一実施形態によれば、前記調湿デバイス1は、前記送達路7に作動流体14を供給するために前記開口部11、13のうちの少なくとも1つに結合された、少なくとも1つの流体供給デバイス18を備える。好ましくは、前記供給デバイス18は、前記作動流体14を処理するために圧力差を発生させるように適合された、少なくとも1つのポンプ25を含む。一実施形態によれば、前記供給デバイス18は、所定量の作動流体14を収容するように適合された、少なくとも1つの貯留槽27を含む。
【0120】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの流体供給デバイス18は、例えば前記少なくとも1つの送達路7に作動流体14が流れる前に、この作動流体14の温度及び/又は組成を調整するように適合された、少なくとも1つの作動流体調整システム21を含む。
【0121】
一実施形態によれば、前記作動流体調整システム21は、作動流体14の温度を調整するように適合された、少なくとも1つの熱交換器31を含む。一実施形態によれば、前記作動流体調整システム21は、少なくとも1つの物質交換器32、例えばガス交換器を含む。一実施形態によれば、作動流体21の前記調整システムは、調湿デバイス1の吸入管路10内に、かつ/又は吸入管路10から所定量の流体を送達し、かつ/又は引き出すように適合された、例えばシリンジ又は補助ポンプシステムを含む、少なくとも1つの吐出及び/又は捕集デバイス34を備える。好ましくは、前記吐出及び/又は捕集デバイス34は、送達路7内に、したがって外被4の内部容積6内に、ひいては第1の層15を通って血管3の露出区画2上に、所定量の有効成分を吐出するように適合されている。
【0122】
一実施形態によれば、前記熱交換器31及び/又は前記物質交換器32を含む前記作動流体調整システム21は、外被4の外側、即ち筐体5の外側に位置している。
【0123】
一実施形態によれば、前記少なくとも1つの流体供給デバイス18は、例えば前記ポンプ25及び/又は前記作動流体調整システム21に対して、前記流体供給デバイス18を自動化するための制御信号を送信するための少なくとも1つの制御デバイス26、例えばプログラマブル・ロジック・コントローラPLCを含む。
【0124】
一実施形態によれば、例えば、対象化学種の流量計並びに/若しくは水位センサ及び/又は温度センサ及び/又は湿度センサ及び/又は濃度センサなどのセンサを含む検知デバイスが、そのような制御デバイス26に結合されているものとする。
一実施形態によれば、作動流体路14を画定するために、逆止弁などの弁38が前記流体供給デバイス18内に設けられている。
【0125】
一実施形態によれば、送達路7の前記吐出開口部13から流出する作動流体14を捕集するために、捕集槽20が設けられている。
【0126】
好ましい一実施形態によれば、前記少なくとも1つの流体供給デバイス18は、作動流体14が流れる再循環路19を形成するように、送達路7の前記少なくとも1つの開口部11、13の両方に結合されている。この再循環路19内に、ろ過デバイスが配置され得る。
【0127】
一実施形態によれば、前記流体供給デバイス18は、調湿デバイス1の前記外被4に結合され得る、ハンドピースの本体内部に一体化されている。
【0128】
移植用、例えば冠動脈バイパスを行うための自家生体材料を採取する方法を、以下に記載する。
【0129】
移植用の自家生体材料を採取する本方法は、血管3の露出区画2、例えば伏在静脈の区画を露出させるステップを含む。
【0130】
移植用の自家生体材料を採取する本方法は、上記の実施形態のいずれかによる調湿デバイス1を設けるステップをさらに含む。
【0131】
移植用の自家生体材料を採取する本方法は、調湿デバイス1の第1の表面15’を露出区画2に対向させるステップをさらに含む。
【0132】
移植用の自家生体材料を採取する本方法は、調湿デバイス1の送達路7内に作動流体14を供給するステップをさらに含む。
【0133】
移植用の自家生体材料を採取する本方法は、作動流体14の少なくとも1つの成分14’が第1の層15の前記第1の表面15’に拡散するように、この少なくとも1つの成分14’を前記第1の層15に透過させるステップをさらに含む。
【0134】
そのような方法により、第1の層15の前記第1の表面15’を介して、血管3の前記露出区画2に調湿作用が加えられる。
【0135】
実行可能な作動モードによれば、移植用の自家生体材料を採取する本方法は、前記調湿デバイス1を血管3の露出区画2の周りに一時的に巻き付けるステップをさらに含む。
このようにして、伏在静脈3の露出区画2のための調湿チャンバとして機能する、デバイスルーメン17が形成される。
【0136】
実行可能な作動モードによれば、移植用の自家生体材料を採取する本方法は、前記デバイスルーメン17内の謙虚さを調整するステップをさらに含む。
【0137】
実行可能な作動モードによれば、移植用の自家生体材料を採取する本方法は、デバイスルーメン17内の酸塩基平衡、並びに酸素及び/又は二酸化炭素及び/又は他の物質の濃度を調整するステップを含む。
【0138】
実行可能な作動モードによれば、移植用の自家生体材料を採取する本方法は、前記送達路7内における伏在静脈の露出区画2に調湿デバイス1を供給することによって、薬理学的薬剤を投与するステップを含む。
【0139】
実行可能な作動モードによれば、移植用の自家生体材料を採取する本方法は、自家移植用の生体材料の採取を、前記露出区画2から始めるステップをさらに含む。
【0140】
上記の特徴が個別に、又は組み合わせて提供されるため、適用可能な場合は、上記の必要性に応答して、列挙している利点、とりわけ以下の利点を得ることができる。
【0141】
- 従来の外科用ガーゼなどを使用する既知の解決策と比較して、伏在静脈の露出区画の化学的・物理的特性による調湿作用に対する制御が向上し、適用手順が簡略化され、かつ再現性が向上している調湿デバイス1が作製され、
【0142】
- それと同時に、損傷を引き起こす、露出した血管区画に対する望ましくない機械的ストレスが回避されるか、又は少なくとも最小限に抑えられ、
【0143】
- 調湿デバイス1は、伏在静脈の露出区画に向けて設けられ、自家移植用の材料を採取する手順中に、露出区画を取り巻く生理学的状態、又はいずれの場合にも化学的・物理的保護状態を反復可能かつ自動化された方法で維持することが可能になっており、
【0144】
- それと同時に、こうした維持ができることで、調湿デバイスが既知の標準的な心血管灌流及び外科的処置での使用に適合するようになり、手術室チームに特定の訓練を課す必要性が回避され、
【0145】
- 伏在静脈又は他の血管の露出区画を取り巻く温度、湿度、並びに当該組織と相互作用する物質の酸塩基平衡及び濃度の制御が可能になり、
【0146】
- 作動流体の少なくとも1つの成分14’に対して透過性の材料(例えばヒドロゲル)を準備することにより、作動流体の少なくとも1つの成分14’が、前記送達路から露出区画に対向している前記第1の表面まで、この露出区画を調湿するために拡散するようになり、一方でそれと同時に、作動流体が灌流路内に流入し、対流送達が加わるようになる。
【0147】
当業者であれば、添付の特許請求の範囲から逸脱することなく、偶発的な必要性を満たすために、上述の実施形態に対して多くの変更及び適応をなすことができ、あるいは機能的に等価な要素を他の要素と置き換えることもできる。
【符号の説明】
【0148】
1 調湿デバイス
2 露出区画
3 血管、例えば伏在静脈
4 外被又は外袋
5 筐体
6 内部容積又は第3の層
7 送達路又は灌流路
8 固定デバイス又は再閉鎖デバイス
9 術者
10 吸入管路
11 第1の開口部
12 吐出管路
13 第2の開口部
14 作動流体
14’ 作動流体成分
15 第1の層
15’ 第1の層の第1の表面又は第1の面
16 第2の層
16’ 第2の層の第2の表面又は第2の面
17 デバイスルーメン
18 流体供給デバイス
19 再循環路
20 捕集槽
21 作動流体調整システム
22,22’ 横方向辺縁部
23,23’ 送達路の第1及び第2の壁
23’’ 送達路の不透過壁部分
24 血管の遊離端
25 ポンプ
26 制御デバイス
27 貯留槽
28,28’ 蛇行経路
29 ユニオン管
30,30’ 長手方向側
31 熱交換器
32 物質交換器
33 厚さ
34 吐出及び/又は捕集デバイス
35 外被縁部
36 外被の横方向寸法
37 患者
38 弁
39 カニューレ
40 露出区画の外壁
X-X 長手方向
T-T 横方向
図1
図2
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13