(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】キャリーバッグ用ストッパー
(51)【国際特許分類】
A45C 5/14 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A45C5/14 G
(21)【出願番号】P 2021034744
(22)【出願日】2021-03-04
【審査請求日】2024-02-15
(73)【特許権者】
【識別番号】391037102
【氏名又は名称】東邦電子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100119297
【氏名又は名称】田中 正男
(72)【発明者】
【氏名】河本 悟
【審査官】宮部 愛子
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-223093(JP,A)
【文献】特開2008-272362(JP,A)
【文献】特開2013-009778(JP,A)
【文献】特開2018-064685(JP,A)
【文献】特開2006-346421(JP,A)
【文献】登録実用新案第3012425(JP,U)
【文献】実開平06-052785(JP,U)
【文献】登録実用新案第3217297(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2019/0307219(US,A1)
【文献】韓国公開特許第10-2018-0053525(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A45C 5/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のキャスターを備えるキャリーバックの少なくとも一つのキャスター周辺に載置板を差込み前記キャスターを浮かせ、前記載置板と所定の離隔をもって形成されている底板で支えることで停止時におけるキャリーバックの不用意な動きを抑えるキャリーバック用ストッパーであって、
矩形のケース本体の前面に上下方向に複数形成された係止窓と、前記ケース本体の上面と下面に形成された矩形の挿通孔と、前記ケース本体の下端部付近から後方に所定の長さ延在する載置板とを備えたガイドケースと、
下端部に後方に所定の長さ延在する底板と、上端部に前方に所定の長さ延在する取手部と、前記下端部と前記上端部との間に前記係止窓に嵌合分離する係止部とを有し、前記矩形の挿通孔を通して前記ガイドケースの内を上下にスライドする板状のスライドバーとを備えたことを特徴とするキャリーバック用ストッパー。
【請求項2】
前記上面の矩形の挿通孔の短手方向の幅は、前記下面の矩形の挿通孔の短手方向の幅よりも幅広に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のキャリーバック用ストッパー。
【請求項3】
前記係止窓の少なくとも一つは、その両端部に弾性体の係合用の係止爪を有し、前記係止部が前記係止窓に嵌合している状態において、前記係止爪が前記係止部を挟圧し、前記係止部の前記係止窓からの抜けを防止することを特徴とする請求項1又は2に記載のキャリーバック用ストッパー。
【請求項4】
前記ガイドケースは、固定用バンド添設部を背面に備えたことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載のキャリーバック用ストッパー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旅行時におけるキャリーバックに装着および取り外しを迅速かつ簡単に行うことができ、軽量で嵩張らず、携帯持参化可能なキャリーバッグ用ストッパーに関する。
【背景技術】
【0002】
旅行者やビジネスマンなどは、衣類、靴、洗面用具、衛生用品、電子機器、紙資料等の入った重い荷物を持ち運ぶため、キャスターを底面に備えるキャリーバッグを使用する頻度が高い。これらのキャリーバッグは、伸縮自在な支柱(ハンドル)により高さを調整することができるハンドルを有するものが好んで使用される。
【0003】
キャリーバッグは、バッグ底面の車輪(キャスター)が回転することで、ハンドルを持って転がして持運ぶことが出来る。キャリーバッグの底面に備わるキャスターにより、重い荷物を持ち運ぶ旅行者やビジネスマンの移動が容易になっている。
【0004】
キャスター付きキャリーバックには、2輪キャスターと4輪キャスターのものがある。2輪のキャリーバックは走行が安定する、停止時に意図しない不用意な動きが少ない、という利点がある。しかし、走行が一方向のみであり、斜めにしか引けないため、人混みや狭い通路では取り回しに苦労する、という問題がある。
【0005】
4輪のキャスターのキャリーバッグは、自在に動くので走行が楽であり、立てて引くことができ人混みや狭い通路でも小回りがきく、というメリットがある。しかし、地面あるいは床面が傾斜している場合、あるいは電車の発車・停車時、エスカレータに乗った時等には、その加速度によりキャリーバッグが意図しない不用意な動きをしないようにハンドルでキャリーバッグを抑え、キャスターの回転を止める必要がある。
【0006】
下記特許文献1に記載の発明は、簡単な操作でキャスターをロック及びロック解除でき、ロック操作時にキャスターの向きを変える必要がない、コイルバネを利用したストッパー付きキャスターの技術を開示している。また、下記特許文献2にはコイルばねを使用しない構成を採用することにより、組み付け作業を容易にすると共に、長期の使用に際しても疲れ変形が少なくて確実なロックが期待できるロック機構付き双輪キャスターの技術が開示されている。
【0007】
しかし、キャスターをロック及びロック解除するストッパーは、そのロック機構が複雑であるためコスト高になる、という問題がある。また、キャリーバッグで最も壊れやすく、摩耗しやすい部分がキャスターであることから、その構造はできるだけシンプルであることが好ましい。このため、ストッパー機構を備えていないキャスターのキャリーバックは、現在も数多く販売されており、多数の利用者が購入使用している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】特開2009-286315号
【文献】特開2000-301905号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
そこで本発明の課題は、傾斜する地面あるいは床面に立ち止まった場合、あるいは電車の発車・停車時、エスカレータに乗った時など、その加速度によりキャリーバッグが意図しない不用意な動きをしないように、簡便にキャスターの回転を止めるキャリーバッグ用ストッパーを提供することにある。また本発明の課題は、既存のキャリーバックに装着および取り外しを迅速かつ簡便に行うことができ、軽量で嵩張らず、携帯持参化可能なキャリーバッグ用ストッパーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、複数のキャスター(2)を備えるキャリーバック(1)の少なくとも一つのキャスター(2)周辺に載置板(122)を差込み前記キャスター(2)を浮かせ、前記載置板(122)と所定の離隔をもって形成されている底板(112)で支えることで停止時におけるキャリーバック(1)の不用意な動きを抑えるキャリーバック用ストッパーであって、
矩形のケース本体(120)の前面に上下方向に複数形成された係止窓(125)と、前記ケース本体の上面と下面に形成された矩形の挿通孔(127)と、前記下面の端部付近から後方に所定の長さ延在する載置板(122)とを備えたガイドケース(12)と、
下端部に後方に所定の長さ延在する底板(112)と、上端部に前方に所定の長さ延在する取手部(110)と、略中央部に前記係止窓(125)に嵌合分離する係止部(111)とを有し、前記矩形の挿通孔(127)を通して前記ガイドケース(12)内を上下にスライドする板状のスライドバー(11)とを備えたことを特徴とするキャリーバック用ストッパーである。
【0011】
矩形のケース本体(120)の前面には、その上下方向に複数の係止窓(125)が形成されている。そのいずれかの係止窓(125)に、スライドバー(11)の係止部(111)を嵌合させると、スライドバー(11)の底板(112)と、ガイドケースの載置板(122)との間に所定のクリアランスが生じる。載置板(122)を、そのクリアランスがキャスターの径よりも大きくなる状態(キャスターの径に応じて係止部(111)を嵌合させる係止窓(125)を選択すること)で、キャスター取付け面の近傍(周辺)に差し込み、底板(112)を接地させると、底板(112)と載置板(122)との離隔により、キャスターが接地面から浮く。浮いたキャスターに代わって底板(112)が地面に接地しているので、底板(112)の地面押圧力と摩擦力とによりキャリーバックが固定される。これにより地面に当接している他のキャスターは回転せず、キャリーバックの意図しない動きを止めることができる。
【0012】
上面の挿通孔(127)の前面側の開口位置を下面の挿通孔の前面側の開口位置と面一とし、前記上面の矩形の挿通孔(127)の短手方向の幅を、前記下面の矩形(127)の挿通孔の短手方向の幅よりも幅広に(上面の挿通孔の前面側を下面の挿通孔よりも広く)形成することは好適である。かかる構成とすることで、スライドバー(11)は、上面の挿通孔(127)が下面の挿通孔(127)より幅広に形成された分、前方に傾斜させることができ。係止窓(125)から係止部(111)の嵌合を解除できる。
【0013】
前方に傾斜している状態で、スライドバー(11)の係止部(111)を所望の係止窓(125)の位置に合わせ、取手(110)を前面側に動かすことで、スライドバー(11)が当接する下面の挿通孔の後方が支点となり、係止部(111)を係止窓(125)に嵌合させることができる。取手(110)を前方に動かすことで係止部(111)を係止窓(125)から外すことができる。
【0014】
前記係止窓(125)の少なくとも一つは、その両端部に弾性体の係合用の係止爪(126)を有し、前記係止爪(126)が嵌合する前記係止部(111)を挟圧する。係止部(111)を係止窓(125)に嵌合させる際に、係止窓(125)に弾性体の係合用の係止爪(126)を設けることで、当該係止窓(125)から係止部(111)の意図しない抜けを防止することができる。
【0015】
前記ガイドケースは、固定用バンド添設部を背面に備えることが好適である。固定用バンドによりキャリーバックとキャリーバック用ストッパーとが一体化される。
【発明の効果】
【0016】
本発明のキャリーバッグ用ストッパーは、嵩張らず軽量であり、不使用時は旅行鞄等に入れて携帯することができる。使用時にはキャリーバッグのキャスターの取付け面の周辺に載置板を差し込むことにより、意図しない不用意な動きを防止することができる。キャスター径の異なる様々なキャリーバックに容易に着脱することができる。本キャリーバック用ストッパーを4輪キャスターのキャリーバックに装着することで、2輪キャスターのキャリーバックのように使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、実施例の図面を参照して、本発明の好ましい実施形態について説明する。
図1は本発明の一実施例であるキャリバー用ストッパー10をキャリーバック1に適用した状態を示した図である。キャリーバック1のキャスター2は、キャリーバック用ストッパー10により地面から浮き、キャリーバック1の底板112(
図2参照)が地面に当接している。底板(112)の地面押圧力と摩擦力とによりキャリーバックが固定され、これにより地面に当接している他のキャスターは回転せず、キャリーバックの意図しない動きを止めることができる。
【0018】
キャリーバック1とキャリーバック用ストッパー10とは、キャリーバック用ストッパー10に形成されている固定バンド添接部を介して固定用バンド100により一体化されている。
図1におけるキャリーバックは4輪キャスターであるが、2輪キャスターのキャリーバックに適用しても良い。停止時におけるキャリーバックをより安定にすることができる。
【0019】
本キャリーバック用ストッパーを使用しないときは、固定用バンド100を取り外してキャリーバックに収納する。なお、
図1においては、ハンドル側のキャスター2を浮かせているが、これを反対側のキャスター3の取付面周辺に適用することで4輪キャスターのキャリーバックを2輪キャスターのキャリーバックのように使用することができる。
【0020】
本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10は、スライドバー11と、ガイドケース12(
図2、3、4参照)とから構成される。
図2は本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10を構成するスライドバー11の構成を示した図であり、
図3はガイドケース12の構成を示した図である。
【0021】
図2に示すようにスライドバー11は、逆S字(クランク)形状であり、一端(上端)に取手110が形成され、他端(下端)に底板112が形成され、上端と下端の間に係止部111が形成されている。
図2(a)がその側面図であり、
図2(b)が正面図である。この実施例では図示されていないが、底板112の地面に当接する部分に、クッション性があり、かつ摩擦抵抗を有するゴムラバー等を積層することは好適である。係止部111はガイドケース12の係止窓125(
図3参照)に嵌合し、底板112と載置板122(
図3参照)との離隔によりキャスター2を地面から浮せ、不用意の回転を防止する。
【0022】
図3は本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10を構成するガイドケース12の構成を示した図である。
図3(a)はその側面図であり、
図3(b)はその正面図である。
図3(a)に示すようにガイドケース12には、矩形の本体ケース120の前面に係止窓125と、本体ケース120の下端後方に形成された載置板122と、固定用バンドとキャリーバックとを一体化する固定バンド添接部121とが形成されている。載置板122をキャリーバック1のキャスター周辺に差し込み、載架させることで、底板112と載置板122との離隔によりキャスターを浮かすことができる。
【0023】
スライドケース12の下面(底面)にはスライドバー11の摺動に抵抗が生じない程度の開口を有する挿通孔127が形成されている。ガイドケース12の上面には下面の挿通孔127―1の短手方向の幅よりも幅広に形成された挿通孔127が形成されている。また、上面の挿通孔127と下面の挿通孔127との前面側の開口位置は面一となるように形成されている。
【0024】
かかる構成とすることで、下面の挿通孔127―1とスライドバー11との隙間は僅かであるのに対し、上面の挿通孔127とスライドバー11との隙間は背面側に広がっている。このため、スライドバー11を前面側に押すと、下面の挿通孔に当接しているスライドバー11の当接部が支点となり係止部111を所望の係止窓125に嵌合させることができる。逆にスライドバー11を背面側に動かすことで、係止部111を係止窓125から外すことができる。
【0025】
スライドケース12は、
図3(b)に示すように、複数の係止窓125を有するが、この実施例では、上側に設けた係止窓125―1が、他の係止窓125と離れて形成されている。かかる係止窓125-1に係止部111が嵌合した状態が、本キャリーバック用ストッパー10を使用しない状態(載置板112がガイドケース12の下面に当接している状態)となる。
【0026】
図4は本発明の一実施例であるガイドケース12の背面図である。スライドケース12の背面には、キャリーバック1と本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10とを一体化させる固定用バンド(ベルト)を添接させる固定バンド添接部129が形成されている。固定用バンド(ベルト)を固定バンド添接部129の内側に挿通し緩みなく、キャリーバックに締め付けることでキャリーバック用ストッパー10とキャリーバックとが一体化する。
【0027】
図5は本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10の構成を示した図である。
図5(a)は正面図、
図5(b)はスライドバー11の底板112がガイドケース12の載置板122に当接している状態の側面図、
図5(c)は底板112が載置板122と所定の間隔離れた状態を示した図である。
【0028】
この実施例においては、
図5(a)、
図5(b)に示すように、係止部111が係止窓125-1に嵌合している状態では、載置板122と底板112とが当接する。キャリーバッグのキャスター径に応じて、キャスター径よりも載置板122と底板112との離隔が大きくなる係止窓125を選定し、かかる係止窓125に係止部111を嵌合させることで、
図5(c)に示すように、載置板122と底板112との離隔をキャスター径よりも大きくすることができる。
【0029】
図5(b)、
図5(c)に示すように、スライドバー11の取手110を前面側に動かすことで、下面の挿通孔に当接するスライドバー11の当接部が支点となり、係止部11を所望の係止窓125に嵌合させることができる。また、取手110を背面側に動かすことで嵌合を解除することができる。
【0030】
図6は、ガイドケース12の係止窓125の部分の断面図である。
図6(a)はガイドケース12の挿通孔127をスライドするスライドバー11に形成された係止部111が、ガイドケース12の係止窓125に嵌合する前の状態を示した図であり、
図6(b)は嵌合した状態を示した図である。
【0031】
図6(a)に示すように係止窓125の両端には、係止部111が嵌合した際にその抜け止めとなる弾性体の係止爪126が形成されている。係止部111の両端は、係止爪126と嵌合しやすいように内側に湾曲した形状となっている。
【0032】
図6(b)に示すように、係止部111を係止窓125に嵌合するように取手110を操作する(前面側に動かす)と、係止爪126が外側に開き、係止部111が係止窓125に収まり、弾性体の係止爪126は係止部111を挟圧するように包接する。これにより、係止部111の係止窓125からの抜けが防止される。取手110を背面側に動かすと、係止爪126が外に開き、係止部111が係止窓から外れる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図2】は本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10を構成するスライドバー11の構成を示した図である。
【
図3】本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10を構成するガイドケース12の構成を示した図である。
【
図4】本発明の一実施例であるガイドケース12の背面図である。
【
図5】本発明の一実施例であるキャリーバック用ストッパー10の構成を示した図である。
【
図6】本発明の一実施例におけるガイドケース12の係止窓125部分の断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1:キャリーバッグ
2:キャスター
3:キャスター
10:キャリーバック用ストッパー
11:スライドバー
12:ガイドケース
100:固定用バンド(ベルト)
110:取手部
111:係止部
112:底板
120:ケース本体
121:固定バンド添接部
122:載置板
123:ガイド部
125;係合窓
126;係止爪(フック)
127:挿通孔
129:固定用バンド添接部
100:固定用バンド