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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】動物の模造品およびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A63H 3/16 20060101AFI20240801BHJP
   A63H 9/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
A63H3/16
A63H9/00 L
A63H9/00 S
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2019136549
(22)【出願日】2019-07-25
(65)【公開番号】P2021019685
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-07-08
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 展示会(第57回 徳島県発明工夫展)に出品、開催日:2018年10月11日~同年同月13日
(73)【特許権者】
【識別番号】519271160
【氏名又は名称】有限会社鳳凰機械工業
(74)【代理人】
【識別番号】100149870
【弁理士】
【氏名又は名称】芦北 智晴
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 正明
【審査官】柳 重幸
(56)【参考文献】
【文献】実開昭56-087214(JP,U)
【文献】実開昭60-030290(JP,U)
【文献】ステンレス折り紙の展示会,猫庵ジェントリー・式古のブログのブログ,2015年03月18日,https://ameblo.jp/nekoshiki08/entry-12521425960.html,[online], 2023年11月29日検索
【文献】ステンレス折り紙のワークショップin東急ハンズ梅田 3/18(日),関西材料店マップ,2012年03月14日,http://kansaizairyou.sblo.jp/article/54438575.html,[online], 2023年11月29日検索
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63H 3/16
9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板に対して所定形状の板を抜き出すことができるように切断加工を施し、
前記薄板から前記所定形状の板を抜き出し、
抜き出された所定形状の板に対して曲げ加工を施すことにより、触角又は冠羽を有する動物の模造品を製造する方法であって、
前記曲げ加工を施す工程において、板幅5mm以下の所定の部位を2つに折り曲げることにより前記動物の後端部となる折曲部を形成し、
前記折曲部一方に延設された一側が前記動物の体の上部を形成し、前記折曲部他方に延設された他側が前記動物の体の下部を形成し、
前記体の上部および下部を形成する工程において、前記体の上部および/または下部を断面弧状に湾曲させ、
前記折り曲げ加工を施す工程において、前記一側および他側に、互いに係合する係合部および被係合部を形成する工程が含まれ、
前記薄板は、ステンレス製であり、
前記係合部は、前記他側に設けられた、前記動物の前記触角又は前記冠羽に相当する部分であり、
前記被係合部は、前記一側に設けられ、前記薄板の展開状外形において、前記動物の眼に相当する部分の近傍において当該眼に相当する部分よりも前記体の中心線側に凹んだ凹部である、ことを特徴とする動物の模造品の製造方法。
【請求項2】
所定形状の薄板が曲げ加工により形成された触角又は冠羽を有する動物の模造品であって、
前記動物の体の後端部が、板幅5mm以下の折曲部によって形成され、
前記体の上部が、前記折曲部一方に延設された一側に形成され、
前記体の下部が、前記折曲部他方に延設された他側に形成されており、
前記体の上部および/または下部は、断面弧状に湾曲しており、
前記一側および他側には、互いに係合した係合部および被係合部が形成されており、
前記薄板は、ステンレス製であり、
前記係合部は、前記他側に設けられた、前記動物の前記触角又は前記冠羽に相当する部分であり、
前記被係合部は、前記一側に設けられ、前記薄板の展開状外形において、前記動物の眼に相当する部分の近傍において当該眼に相当する部分よりも前記体の中心線側に凹んだ凹部である、ことを特徴とする動物の模造品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、蝶や孔雀等の動物の模造品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、動物を模造した模造品は置物として周知である。かかる置物としては、紙製のもの以外に強度性に優れている金属製の模造品が提案されている(例えば、特許文献1参照)。かかる金属製の置物は、鶴の模造品であり、複数の部品から構成されている。即ち、鶴の模造品は、首部と胴部と羽根部と尾部とがそれぞれ別体の部品として製作されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2004-262053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の模造品は、複数の部品から構成されているため、各部品をそれぞれ製作し、各部品同士を固定させるリベットや溶接等の接着工程が必要となり、製造工程が複雑となる。また、部品点数も多くなる欠点がある。
【0005】
そこで、本発明は、一枚の板で立体感が出しやすく、簡単に製造することができる動物の模造品およびその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の発明は、薄板に対して所定形状の板を抜き出すことができるように切断加工を施し、前記薄板から前記所定形状の板を抜き出し、抜き出された所定形状の板に対して曲げ加工を施すことにより、動物の模造品を製造する方法であって、
前記曲げ加工を施す工程において、板幅5mm以下の所定の部位を2つに折り曲げることにより前記動物の後端部となる折曲部を形成し、前記折曲部一方に延設された一側が前記動物の体上部を形成し、前記折曲部他方に延設された他側が前記動物の体下部を形成し、前記体の上部および下部を形成する工程において、前記体の上部および/または下部を断面弧状に湾曲させることを特徴とする動物の模造品の製造方法である。
【0007】
かかる動物の模造品の製造方法は、一枚の薄板を使用しているにも関わらず、体の頭部や胴部等の各部分を立体的に形成することができる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の動物の模造品の製造方法において、前記折り曲げ加工を施す工程において、前記一側および他側に、互いに係合する係合部および被係合部を形成する工程が含まれる、ことを特徴とする動物の模造品の製造方法である。
【0009】
かかる動物の模造品の製造方法は、前記一側および他側の自由端側を、係合部と被係合部とにより固定することができ、動物の形状を維持できる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、所定形状の薄板が曲げ加工により形成された動物の模造品であって、前記動物の体の後端部が、板幅5mm以下の折曲部によって形成され、前記体の上部が、前記折曲部一方に延設された一側に形成され、前記体の下部が、前記折曲部他方に延設された他側に形成されている、ことを特徴とする動物の模造品である。
【0011】
かかる動物の模造品は、請求項1に記載の動物の模造品の製造方法を実施して容易に製造することができる。
【0012】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の動物の模造品において、前記一側および他側には、互いに係合した係合部および被係合部が形成されている、ことを特徴とする動物の模造品である。
【0013】
かかる動物の模造品は、前記一側および他側の自由端側を、係合部と被係合部とにより固定することができ、動物の形状を維持できる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、一枚の薄板から製造できるため、溶接や接着剤が不要となり、製造工程の簡素化を図り容易に製造することができるとともに部品点数が最小となる。また、薄板を曲げ加工して折曲部一方に延設された一側が動物の体上部を形成し、折曲部他方に延設された他側が動物の体下部を形成するため、ボリュームを有し立体感が出しやすくなる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態に係る蝶の側面図である。
図2】蝶の頭部を示す平面図である。
図3】蝶の正面図である。
図4】蝶の原板を示す平面図である。
図5】展開状態の蝶の要部を示す平面図である。
図6】展開状態の蝶の平面図である。
図7】蝶の一側と他側とを重ね合わせた状態の平面図である。
図8】蝶の胴体の断面図である。
図9】蝶の断面側面図である。
図10】本発明の他の実施形態に係る孔雀の原板を示す平面図である。
図11】展開状態の孔雀の平面図である。
図12】孔雀正面の概略を示す斜視図である。
図13】本発明の更に他の実施形態に係るカマキリの原板を示す平面図である。
図14】展開状態のカマキリの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明を実施形態に基づき、図面を参照して説明する。
図1図9は本発明の一実施の形態を示す。本実施形態は、動物1として蝶1Aを例示する。蝶1Aは、金属製の薄板から切断加工を施すことにより所定形状に抜き出して製作されたもので、図1図3に示すように頭部2および胴部3から構成される体4と、左右一対の翅(羽)5とを備えている。頭部2は、左右一対の複眼(眼)8と吸収管である口吻9とを備えている。頭部2から上方に一対の触角7が伸長している。
【0017】
胴部3は、胸部10と腹部11とから構成されている。胸部10には、前記翅5と3対の脚12(前脚12aと中脚12bと後脚12c)とが設けられている。
【0018】
次に、前記蝶1Aの製造方法について図4図9を参照しながら説明する。先ず、図4に示すように、ステンレス製の原板Gにレーザー加工を施すことにより蝶1Aの原板を製作する。かかる原板Gの製作は、従来周知のレーザー加工機を使用することができる。作業者が動物(蝶1A)から展開図をイメージしてソフト(CAD)で展開図を描き、その展開図のデータに基づきレーザー加工機で切断加工を行う。
【0019】
原板Gの厚さは、0.5mm~0.8mmが好ましい。原板Gの厚さが1mm以上を有していると、原板Gを手で曲げるのが困難となる。また、原板Gの厚さが0.5mm未満になるとレーザー加工時に一部が不用意に抜け落ちてしまう可能性があるため、原板Gは曲げやすく加工しやすい厚さ0.5mm~0.8mmの原板が採用されている。
【0020】
展開状態の蝶1Aは、一側15と他側16との二つの部分が折曲部18により連結されている。すなわち、折曲部18一方(図4の上方)には一側15が延設されている。また、折曲部18他方(図4の下方)には他側16が延設されている。本実施形態では、折曲部18の板幅Hは、5mm以下に設定されている(図5参照)。ここで、板幅Hを5mm以下に設定したのは、板幅Hが5mmを超えると折曲部18を曲げ加工するのが難しくなる場合があるからである。なお、折曲部18の板幅Hは、5mm以下であることが望ましいが、10mm以下、15mm以下とする場合もあり得る。
【0021】
一側15は、頭部2の上部と胴部3の上部等の体上部を形成する部分である。一側15には複眼8と口吻9とが設けられている。両方の複眼8は、一側15の先端部から両方に突出している。また、複眼8と一側15の幅が狭くなった先端部との間には、被係合部となる凹部19が形成されている。一側15先端には口吻9が延設されている。
【0022】
他側16は、頭部2の下部と胴部3の下部等の体下部を形成する部分である。他側16の先端には線状の触角7が略ハの字状(先端に向けて広がる状態)に延設され、他側16の両側には前脚12aと中脚12bと後脚12cとがそれぞれ延設されている。
【0023】
次に、レーザー加工機で抜いた後、展開状態の蝶1Aの周囲に部分的に連結している連結部20をペンチ等の工具でそれぞれ切り離す。このように手とペンチだけで、展開状態の蝶1Aを原板Gから分離する(図5参照)。その後、表面の汚い部分を洗浄処理する。さらに展開状態の蝶1Aの表面を適宜メッキ処理する場合もある。
【0024】
原板Gと展開状態の蝶1Aを連結する連結部20は必要である。このように連結部20を展開状態の蝶1Aの適宜位置に設けることにより、レーザー加工時の熱変形による蝶1Aのずれを防止することができる。
【0025】
原板Gから抜いた展開状態の蝶1Aの一側15および他側16の頭部2とから胴部3に相当する部分を湾曲形成して曲げ加工を施す。具体的には、一側15および他側16の所定部分の両側を上げるようにして断面弧状に湾曲形成する。次に、胴部3の尾部に相当するように折曲部18を折り曲げて、断面弧状に湾曲形成した一側15および他側16を二つ折りに重ね合わす(図8参照)。一側15の両端部が他側16の両端部を上方から被覆するように、断面弧状に湾曲形成した部分同士を対向させることにより、頭部2、胸部10および腹部11を立体的に形成することができる。また、細かい装飾部分を適宜曲げることにより形成する。
【0026】
さらに、他側16の2本の触角7を、上方に曲げて一側15の凹部19に係合させる。すなわち、頭部2上部を構成する一側15側に被係合部としての凹部19を形成し、凹部19に頭部2下部を構成する他側16側の触角7を係合部として引っ掛けて係合させる。このように蝶1Aの構成部分同士を利用して係合させることにより、自由端となっている頭部2側の固定が確実なものとなり、二つ折りされた蝶1Aの形状を確実に維持することができる(図9参照)。
【0027】
また、胸部10および腹部11をそれぞれ所定形状に断面弧状に湾曲形成しているので、蝶1Aに立体感が出せるとともに、尾部に相当するように折曲部18を折り曲げているため、尾部の形状を出しやすい。また、頭部2、胸部10および腹部11をそれぞれ所定形状に曲げ加工できることから、蝶1Aが脚で立った時の重量バランスも取りやすい。
【0028】
本実施の形態の蝶1Aは、一枚の薄板から製作しているとともに動物1の一部を利用して係合部と被係合部に利用しているため、部品点数を最小にでき、各部分の溶接や接着剤が不要となり、製造工程の簡素化が図れて容易に製造することができる。また、蝶1A等の動物の構成部分は、一側15および/または他側16側にそれぞれ形成することができるため、複雑な動物の模造品を立体的でかつ詳細に製造することができる。
【0029】
図10図12は本発明の他の実施形態を示す。本実施形態は動物1として孔雀1Bを例示する。蝶1Aと同一部分は同一符号を付してそれぞれの説明は省略する。前記蝶1Aと同様に先ず、孔雀1Bの原板Gを製作する(図10参照)。孔雀1Bも一側15に被係合部としての凹部19が形成され、飾り羽26が延設されている。他側16先端には係合部としての冠羽25が延設されている。脚12は左右一本が他側16に延設されている。
【0030】
次に、図11に示すように孔雀1Bを原板Gから分離する。さらに、一側15および他側16の所定部分の両側を上げるようにして断面弧状に湾曲形成する。次に、胴部3の尾部に相当するように折曲部18を折り曲げて、断面弧状に湾曲形成した一側15および他側16を二つ折りに重ね合わす。さらに、冠羽25を凹部19に係合して孔雀1Bを完成する(図12参照)。
【0031】
図13および図14は本発明の更に他の実施形態を示す。本実施形態は動物1としてカマキリ1Cを例示する。蝶1Aと同一部分は同一符号を付してそれぞれの説明は省略する。先ず、カマキリの原板Gを製作する(図13参照)。
【0032】
図14に示すようにカマキリ1Cを原板Gから分離する。さらに、一側15および他側16の所定部分の両側を上げるようにして断面弧状に湾曲形成する。次に、折曲部18を折り曲げて、断面弧状に湾曲形成した一側15および他側16を二つ折りに重ね合わす。他側16の2本の触角7を、一側15の凹部19に係合して完成する。
【0033】
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明したが、本発明は、上記の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、上記の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。前記それぞれの実施形態では、一側15および他側16の両方を断面弧状に湾曲形成したが、何れか一方のみ断面弧状に曲げ加工を施すことも可能である。また、動物は、蝶、孔雀、カマキリに限らずその他の昆虫や鳥類を挙げることができる。
【符号の説明】
【0034】
1 動物
1A 蝶
1B 孔雀
1C カマキリ
2 頭部
3 胴部
4 体
5 翅
7 触角(係合部)
8 複眼(眼)
9 口吻
10 胸部
11 腹部
12 脚
15 一側
16 他側
18 折曲部
19 凹部(被係合部)
20 連結部
25 冠羽
26 飾り羽(係合部)
G 原板(薄板)
H 板幅
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14