(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】センサ支持具およびそれを備える流体制御装置
(51)【国際特許分類】
G01K 1/14 20210101AFI20240801BHJP
F16K 37/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
G01K1/14 E
F16K37/00 H
(21)【出願番号】P 2020134729
(22)【出願日】2020-08-07
【審査請求日】2023-06-07
(73)【特許権者】
【識別番号】390033857
【氏名又は名称】株式会社フジキン
(74)【代理人】
【識別番号】100183380
【氏名又は名称】山下 裕司
(72)【発明者】
【氏名】張 兆宏
(72)【発明者】
【氏名】稲田 敏之
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2014/136557(WO,A1)
【文献】特開平09-096567(JP,A)
【文献】実開昭62-062935(JP,U)
【文献】米国特許第06334707(US,B1)
【文献】国際公開第2018/180886(WO,A1)
【文献】登録実用新案第3213665(JP,U)
【文献】実開昭58-097536(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01K 1/14
F16K 27/00
F16K 37/00-27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体制御機器に装着され、熱電対を有する熱センサを支持するセンサ支持具であって、
円筒状をなし、軸方向の一方の端部から軸方向の他方の端部まで延びるスリットを有する本体部と、
前記本体部の径方向において前記スリットに対する反対側に設けられ、前記熱電対が挿通される挿通孔が形成された挿通部と、を備え
、
前記本体部の前記一方の端部および/または前記他方の端部には、内方へ突出する突起が設けられているセンサ支持具。
【請求項2】
流体制御機器に装着され、熱電対を有する熱センサを支持するセンサ支持具であって、
円筒状をなし、軸方向の一方の端部から軸方向の他方の端部まで延びるスリットを有する本体部と、
前記本体部の径方向において前記スリットに対する反対側に設けられ、前記熱電対が挿通される挿通孔が形成された挿通部と、を備え、
前記挿通部の前記挿通孔には、環状の弾性部材が嵌入されているセンサ支持具。
【請求項3】
前記本体部は、前記スリットを形成する一対の端面を有し、
各端面から前記挿通部までの、前記本体部の周方向の距離は略等しく構成されている、請求項1
または請求項2に記載のセンサ支持具。
【請求項4】
流体制御機器と、
熱電対を有する熱センサと、
前記流体制御機器に装着され、前記熱センサを支持する請求項1から請求項
3のいずれか一項に記載のセンサ支持具と、を備える流体制御装置。
【請求項5】
前記流体制御機器は、バルブであり、
前記バルブは、
流路が形成されたボディと、
円柱状のケーシングを有し、前記流路を開閉するアクチュエータと、を有し、
前記センサ支持具の前記本体部は、前記ケーシングに対し周方向に回動可能に装着される、請求項
4に記載の流体制御装置。
【請求項6】
前記ボディには、前記熱電対の先端が挿入される挿入孔が形成され、
前記ケーシングの中心軸から前記挿入孔の中心軸までの距離と、前記ケーシングの中心軸から前記挿通孔の中心軸までの距離は異なるように構成されている、請求項
5に記載の流体制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、半導体製造装置等に使用される流体制御装置で用いられるセンサ支持具およびそれを備える流体制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、複数のガスラインを備える流体制御装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1記載の流体制御装置では、流体の温度を測定するために、支持部材を用いて、熱電対を開閉弁のアクチュエータのケーシングに固定している。
【0003】
支持部材は、スリットが設けられた環状の本体と、スリットを画定する一対の突出部とを備える。一対の突出部には、ねじ挿通孔が形成され、ねじを締め付けることで、スリットの幅が狭められ、支持部材がケーシングに固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の支持部材は、その構造が複雑であるためコストが高くなる。特許文献1の支持部材は、ケーシングに固定するためのねじ施工が必要であるため、作業効率がよくなかった。
【0006】
そこで本開示は、流体制御機器に容易に装着可能であり、かつ安価なセンサ支持具およびそれを備える流体制御装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を解決するために、本開示の一態様であるセンサ支持具は、流量制御機器に装着され、熱電対を有する熱センサを支持するセンサ支持具であって、円筒状をなし、軸方向の一方の端部から軸方向の他方の端部まで延びるスリットを有する本体部と、前記本体部の径方向において前記スリットに対する反対側に設けられ、前記熱電対が挿通される挿通孔が形成された挿通部と、を備える。
【0008】
前記本体部は、前記スリットを形成する一対の端面を有し、各端面から前記挿通部までの、前記本体部の周方向の距離は略等しく構成されていてもよい。
【0009】
前記本体部の前記一方の端部および/または前記他方の端部には、内方へ突出する突起が設けられていてもよい。
【0010】
前記挿通部の前記挿通孔には、環状の弾性部材が嵌入されていてもよい。
【0011】
本開示の一態様である流体制御装置は、流体制御機器と、熱電対を有する熱センサと、前記流体制御機器に装着され、前記熱センサを支持する上記のセンサ支持具と、を備える。
【0012】
前記流体制御機器は、バルブであり、前記バルブは、流路が形成されたボディと、円柱状のケーシングを有し、前記流路を開閉するアクチュエータと、を有し、前記センサ支持具の前記本体部は、前記ケーシングに対し周方向に回動可能に装着されてもよい。
【0013】
前記ボディには、前記熱電対の先端が挿入される挿入孔が形成され、前記ケーシングの中心軸から前記挿入孔の中心軸までの距離と、前記ケーシングの中心軸から前記挿通孔の中心軸までの距離は異なるように構成されていてもよい。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、流体制御機器に容易に装着可能であり、かつ安価なセンサ支持具およびそれを備える流体制御装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本実施形態に係るセンサ支持具を備える流体制御装置の側面図を示す。
【
図2】センサ支持具が装着されたバルブの斜視図である。
【
図3】センサ支持具が装着されたバルブの上面図である。
【
図4】センサ支持具が装着されたバルブの下面図である。
【
図7】センサ支持具を挿通部側から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の実施形態に係るセンサ支持具1を備える流体制御装置20について、図面を参照して説明する。以下の説明における上下は、
図1の上下とする。
【0017】
図1は、センサ保持具1を備える流体制御装置20の側面図を示している。
【0018】
流体制御装置20は、基盤21と、複数(
図1では一つのみ表示)のガスライン22と、ガスアウトマニホールド23と、パージマニホールド33とを備える。各ガスライン22は、複数の継手24と、複数の流体制御機器25~31と、センサ保持具1と、熱センサ2とを備える。複数の継手24は、基盤21上に一列に並ぶように設けられ、図示せぬボルトにより基盤21に固定されている。各継手24には、図示せぬ流路が形成されている。
【0019】
複数の流体制御機器25~31は、バルブ(例えば流体駆動式の自動弁)25~28と、手動式のレギュレータ(減圧弁)29と、フィルタ30と、流量制御機器(例えば、マスフローコントローラ)31とにより構成されている。各流体制御機器25~31は、ボルト32(図の簡略化のため一つのボルト32にのみ参照番号を付している。)により、継手24、ガスアウトマニホールド23、およびパージマニホールド33に対しそれぞれ連結されている。
【0020】
そして、プロセスガスは、流体制御機器25~31、複数の継手24、およびガスアウトマニホールド23を通過して、図示せぬチャンバへ供給される。
【0021】
パージマニホールド33は、三方弁であるバルブ27の下側に設けられ、各ガスライン22を横切るように配置され、各バルブ27に対し連結されている。パージマニホールド33には、ガスライン22に対し直交するように延びる図示せぬ共通流路と、図示せぬ共通流路から各バルブ27に向かって延びる流路とが形成されている。パージマニホールド33を介して、各ガスライン22にパージガスが供給される。
【0022】
次に、センサ支持具1および熱センサ2について
図2~
図4を参照して説明する。
【0023】
図2は、センサ支持具1が装着されたバルブ27の斜視図である。
図3は、センサ支持具1が装着されたバルブ27の上面図である。
図4は、センサ支持具1が装着されたバルブ27の下面図である。
【0024】
バルブ27は、ボディ27Aと、アクチュエータ27Bとを備える。ボディ27Aには、ガス流入路27c、ガス流出路27d、パージガス流路27e、およびリークポート27fが形成されている。ガス流入路27cおよびガス流出路27dは、プロセスガスおよびパージガスを流すための流路である。パージガス流路27eは、パージガスを流すための流路である。リークポート27fは、バルブ27のガス漏れ試験で使用され、ボディ27Aの張出し部に上下方向に貫通するように形成されている。ボディ27Aには、図示せぬ弁室が形成され、弁室には弁体であるダイヤフラムが設けられている。
【0025】
アクチュエータ27Bは、ケーシング27Gと、図示せぬステムと、図示せぬ駆動部とを備える。ケーシング27Gは、円柱状をなし、図示せぬステムおよび図示せぬ駆動部を内蔵している。図示せぬ駆動部を駆動させることにより、ガス流入路27cおよびガス流出路27dと、パージガス流路27eとの間の連通または遮断が行われる。
【0026】
図5は、センサ支持具1の上方斜視図である。
図6は、センサ支持具1の下方斜視図である。
図7は、センサ支持具1を挿通部11側から見た正面図である。
【0027】
センサ支持具1は、樹脂材料(例えば、ポリプロピレン(PP))により構成され、本体部10と、挿通部11とを備える。本体部10は、円筒状をなし、軸方向の上端部10Aから下端部10Bまで延びるスリット10cを有する。スリット10cは、本体部10の周方向の両端に位置する一対の端面10Dにより画定されている。本実施形態では、上端部10Aは軸方向の一方の端部に相当し、下端部10Bは軸方向の他方の端部に相当する。
【0028】
本体部10の上端部10Aには、本体部10の内方へ突出する上突起10Eが設けられている。上突起10Eは、上端部10Aのスリット10cを除く全周に設けられている。本体部10の下端部10Bには、本体部10の内方へ突出する下突起10Fが設けられている。下突起10Fは、下端部10Bの周方向の両端部にのみ設けられている。本体部10の内径は、ケーシング27Gの外径よりも僅かに大きく構成されている。本体部10の上突起10Eと下突起10Fとの距離は、ケーシング27Gの軸方向の長さよりも僅かに長く構成されている。
【0029】
挿通部11は、本体部10の径方向においてスリット10cに対する反対側に設けられている。本実施形態では、各端面10Dから挿通部11までの、本体部10の周方向の距離は略等しく構成されている。挿通部11には、軸方向に貫通する挿通孔11aが形成されている。挿通孔11aの上端はザグリ状をなし、当該ザグリ状の部分に環状のゴム部材12が嵌入されている。ゴム部材12の内径は、熱センサ2の熱電対2Aの外径よりも小さく構成されている。ゴム部材12を構成する材料としては、フッ素ゴムが挙げられる。
【0030】
センサ支持具1の本体部10は、ケーシング27Gに対し周方向に回動可能に装着される。ケーシング27Gの中心軸からリークポート27fの中心軸までの距離と、ケーシング27Gの中心軸から挿通孔11aまでの距離は異なるように構成されている。本実施形態では、ケーシング27Gの中心軸からリークポート27fの中心軸までの距離は、ケーシング27Gの中心軸から挿通孔11aまでの距離よりも短く構成されている。本実施形態では、例えば、ケーシング27Gの中心軸からリークポート27fの中心軸までの距離は、ケーシング27Gの中心軸から挿通孔11aまでの距離よりも約2.6mm短く構成されている。熱電対2Aの径およびリークポート27fの内径は例えば約0.5mmである。
【0031】
図2に示すように、熱センサ2の熱電対2Aは、センサ支持具1の挿通部11の挿通孔11a(
図5)に挿通されている。熱電対2Aの先端部は、挿入孔であるリークポート27fに挿入されている。
【0032】
熱電対2Aが挿通部11に挿通された状態で、センサ支持具1はケーシング27Gに装着される。センサ支持具1をケーシング27Gに装着する際には、センサ支持具1の下端部10B側を径方向に少し広げ、ケーシング27Gの上側から下側に向かってセンサ支持具1を移動させる。この時、熱電対2Aの先端部がリークポート27fに挿入するようにセンサ支持具1を移動させる。センサ支持具1の上突起10Eがケーシング27Gの上面に当接し、センサ支持具1の下突起10Fがケーシング27Gの下面に当接することにより、センサ支持具1のケーシング27Gに対する装着が完了する。
【0033】
なお、センサ支持具1の下端部10B側を径方向に少し広げ、ケーシング27Gの下側から上側に向かってセンサ支持具1を移動させることにより、センサ支持具1をケーシング27Gから外すことができる。
【0034】
上記のセンサ支持具1によれば、円筒状をなし、上端部10Aから下端部10Bまで延びるスリット10cを有する本体部10と、本体部10の径方向においてスリット10cに対する反対側に設けられ、熱電対2Aが挿通される挿通孔11aが形成された挿通部11と、を備える。
【0035】
かかる構成によれば、センサ支持具1は単純な構成であるので、安価なセンサ支持具1を提供することができる。センサ支持具1の本体部10を、スリット10cを広げながら、円柱部であるケーシング27Gに装着するだけで、センサ支持具1をバルブ27に容易に装着することができる。挿通部11は、本体部10の径方向においてスリット10cに対する反対側に設けられているので、センサ支持具1の装着時の挿通部11の変位を抑制することができ、熱電対2Aをリークポート27fに容易に挿入することができる。
【0036】
各端面10Dから挿通部11までの、本体部10の周方向の距離は略等しく構成されているので、センサ支持具1の装着時の挿通部11の変位をより抑制することができ、熱電対2Aをリークポート27fにより容易に挿入することができる。センサ支持具1が熱膨張しても、挿通部11とリークポート27fとの位置ずれの影響を少なくすることができる。
【0037】
本体部10の上端部10Aには、本体部10の内方へ突出する上突起10Eが設けられ、本体部10の下端部10Bには、本体部10の内方へ突出する下突起10Fが設けられている。これにより、センサ支持具1がケーシング27Gから抜けるのを抑制することができる。
【0038】
挿通孔11aには環状のゴム部材12が嵌入されているので、熱電対2Aが挿通孔11aから抜けるのを抑制することができる。
【0039】
センサ支持具1の本体部10は、ケーシング27Gに対し周方向に回動可能に装着されているので、挿通部11の挿通孔11aとリークポート27fとの位置合わせを容易に行うことができる。
【0040】
ケーシング27Gの中心軸からリークポート27fの中心軸までの距離と、ケーシング27Gの中心軸から挿通孔11aまでの距離は異なるように構成されている。これにより、熱電対2Aは、挿通孔11aおよびリークポート27fの軸に対して傾斜した状態で、挿通孔11aおよびリークポート27fに挿入されるので、熱電対2Aがリークポート27fから抜けるのを抑制することができる。
【0041】
なお、本開示は、上述した実施例に限定されない。当業者であれば、本開示の範囲内で、種々の追加や変更等を行うことができる。
【0042】
例えば、上記の実施形態では、センサ支持具1の本体部10に上突起10Eおよび下突起10Fを設けていたが、いずれか一方のみを設けた構成であってもよく、いずれも設けない構成であってもよい。上突起10Eは、上端部10Aのスリット10cを除く全周に設けられていたが、上端部10Aの一部に上突起10Eを設けた構成であってもよい。下突起10Fは、下端部10Bの周方向の両端部にのみ設けられていたが、下突起10Fを当該両端部以外の部分に設けてもよいし、下突起10Fを下端部10Bのスリット10cを除く全周に設けてもよい。
【0043】
センサ支持具1は、バルブ27のアクチュエータ27Bのケーシング27Gに装着したが、他の流体制御機器の円柱部に装着してもよい。熱電対2Aは、バルブ27のリークポート27fに挿入したが、他の流体制御機器のリークポートに挿入してもよい。
【符号の説明】
【0044】
1:センサ保持具
2:熱センサ
2A:熱電対
10:本体部
10A:上端部
10B:下端部
10c:スリット
10D:端面
10E:上突起
10F:下突起
11:挿通部
11a:挿通孔
12:ゴム部材
20:流体制御装置
27:バルブ
27A:ボディ
27B:アクチュエータ
27f:リークポート
27G:ケーシング