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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】入浴装置
(51)【国際特許分類】
   A61H 33/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61H33/00 310G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020173087
(22)【出願日】2020-10-14
(65)【公開番号】P2022064451
(43)【公開日】2022-04-26
【審査請求日】2023-07-10
(73)【特許権者】
【識別番号】591127825
【氏名又は名称】株式会社アマノ
(74)【代理人】
【識別番号】100130281
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 道幸
(74)【代理人】
【識別番号】100214813
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 幸江
(72)【発明者】
【氏名】小川 隆弘
【審査官】齊藤 公志郎
(56)【参考文献】
【文献】特開平04-193175(JP,A)
【文献】特開2006-014854(JP,A)
【文献】特開2007-135938(JP,A)
【文献】特開平09-285518(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61H 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入浴者が、移動可能な座部に着座したままの状態で入浴可能な入浴装置において、
長手方向の1面である正面開口を開閉する扉を有し、該扉が開いた状態で、該入浴者が該座部に着座したままで、該座部と共に該入浴者が背中方向から侵入可能な浴槽本体を備え、
該扉が、該正面開口に対向する壁状で下方から上方に渡って垂直に起立する垂直壁と、該垂直壁の左右それぞれから該浴槽本体の該正面開口方向に突出し、直角部が上方に位置すると共に斜辺が該浴槽本体の該正面開口側に位置する略直角三角形状の側面壁と、該垂直壁の上辺全体から該浴槽本体の該正面開口方向に突出する上方鍔部とからなり、
該浴槽本体の該正面開口の開口面が、上部から下部に向かって突出するように傾斜し、
該浴槽本体の該正面開口の開口面の左右の傾斜する斜辺が、該扉の該側面壁の斜辺と密接し、
該浴槽本体の該正面開口の開口面の下辺が、該扉の該垂直壁の下方と密接することで、
該浴槽本体の該正面開口が、該扉によって塞がれることを特徴とする入浴装置。
【請求項2】
前記扉の前記垂直壁の上辺と前記扉の前記側面壁の上辺とからなる該扉の上部開口が、該上部開口の一部が該扉の前記上方鍔部によって塞がれているものの、該扉の該側面壁の上辺から前記正面開口の前記開口面の上辺までの長さ比で50%以上開放されていることを特徴とする請求項1記載の入浴装置。
【請求項3】
前記扉の前記上方鍔部が、該扉の前記垂直壁の外側面から50mm~150mm、前記正面開口の前記開口面方向に突出していることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の入浴装置。
【請求項4】
前記浴槽本体の側面視で、前記扉が斜め上方向に上昇しつつ開くことを特徴とする請求項1~請求項3のいずれかに記載の入浴装置。
【請求項5】
前記浴槽本体の前記正面開口の前記開口面の左右の斜辺が、下方に向かって該浴槽本体から突出する方向に18度~45度、傾斜していることを特徴とする請求項1~請求項4のいずれかに記載の入浴装置。
【請求項6】
前記扉の前記側面壁の上辺が、前記浴槽本体の前記正面開口方向から反対方向に向かって下がるように傾斜していることを特徴とする請求項1~請求項5のいずれかに記載の入浴装置。
【請求項7】
前記扉の前記側面壁の前記上辺の傾斜角度が、8度~45度であることを特徴とする請求項6記載の入浴装置。
【請求項8】
床面から前記扉の前記垂直壁の前記上辺までの高さが、800mm~900mmであることを特徴とする請求項1~請求項7のいずれかに記載の入浴装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入浴者が、移動可能な座部に着座したままの状態で入浴可能な入浴装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、入浴者が、移動可能な座部に着座したままの状態で入浴可能な入浴装置が提案されている。この入浴装置は、特許文献1や特許文献2に示されているように、浴槽本体の長手方向の1面である正面開口を開閉する扉を有し、扉が開いた状態で、入浴者が座部に着座したままで、座部と共に入浴者が背中方向から浴槽本体に侵入可能な浴槽本体を備える構成である。
【0003】
但し、扉の形態には、複数のものがあり、特許文献1の入浴装置では、特許文献1の図1及び図2に示されるように、略厚板状で、扉の表面と裏面とが略平行で、扉自体が全体として上部から下方に向かって浴槽本体から外側に傾斜して浴槽本体の正面開口を開閉可能に塞ぐものである。
【0004】
また、特許文献2の入浴装置の扉は、特許文献1の図1及び図2に示されるように、扉の外観や配置は特許文献1と同様であるが、裏面に凹部を有している。
【0005】
さらに、従来の同様な入浴装置の扉の形態としては、図7の従来の入浴装置の断面の一例を示す説明図に示すような、扉120が断面略椀状で、入浴装置100の浴槽本体110の正面開口114に覆い被さるように正面開口114を開閉自在に塞ぐものもある。この場合、扉120の凹部122が、完全にお湯で満たされることになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開2016-41159号公報
【文献】特開2018-57738号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の入浴装置では、介助者が入浴状態の入浴者の爪先付近をケアしたいとき、扉の上部が邪魔をして介助者の手が爪先付近に届きにくく、介助者が入浴者のケアを充分に行えない場合がある。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、介助者が入浴状態の入浴者の全身のケアを充分に行える入浴装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1記載の入浴装置は、長手方向の1面である正面開口を開閉する扉を有し、扉が開いた状態で、入浴者が座部に着座したままで、座部と共に入浴者が背中方向から侵入可能な浴槽本体を備え、扉が、正面開口に対向する壁状で下方から上方に渡って垂直に起立する垂直壁と、垂直壁の左右それぞれから浴槽本体の正面開口方向に突出し、直角部が上方に位置すると共に斜辺が浴槽本体の正面開口側に位置する略直角三角形状の側面壁と、垂直壁の上辺全体から浴槽本体の正面開口方向に突出する上方鍔部とからなり、浴槽本体の正面開口の開口面が、上部から下部に向かって突出するように傾斜し、浴槽本体の正面開口の開口面の左右の傾斜する斜辺が、扉の側面壁の斜辺と密接し、浴槽本体の正面開口の開口面の下辺が、扉の垂直壁の下方と密接することで、浴槽本体の正面開口が、扉によって塞がれることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の入浴装置は、扉の垂直壁の上辺と扉の側面壁の上辺とからなる扉の上部開口が、上部開口の一部が扉の上方鍔部によって塞がれているものの、扉の側面壁の上辺から正面開口の開口面の上辺までの長さ比で50%以上開放されていることを特徴とする。
【0011】
請求項3記載の入浴装置は、扉の上方鍔部が、扉の垂直壁の外側面から50mm~150mm、正面開口の開口面方向に突出していることを特徴とする。
【0012】
請求項4記載の入浴装置は、浴槽本体の側面視で、扉が斜め上方向に上昇しつつ開くことを特徴とする。
【0013】
請求項5記載の入浴装置は、浴槽本体の正面開口の開口面の左右の斜辺が、下方に向かって浴槽本体から突出する方向に18度~45度、傾斜していることを特徴とする。
【0014】
請求項6記載の入浴装置は、扉の側面壁の上辺が、浴槽本体の正面開口方向から反対方向に向かって下がるように傾斜していることを特徴とする。
【0015】
請求項7記載の入浴装置は、扉の側面壁の上辺の傾斜角度が、8度~45度であることを特徴とする。
【0016】
請求項8記載の入浴装置は、床面から扉の垂直壁の上辺までの高さが、800mm~900mmであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本願発明によれば、このような事情に鑑みてなされたもので、介助者が入浴状態の入浴者の全身のケアを充分に行える入浴装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る入浴装置の一例を示す斜視説明図である。
図2】同入浴装置の浴槽本体の正面開口の傾斜の一例を示す説明図である。
図3】同入浴装置の上方鍔部による開放の度合い等を断面で示す説明図である。
図4】同入浴装置の上方鍔部の突出の長さを断面で示す説明図である。
図5】同入浴装置の扉の上辺の傾きを断面で示す説明図である。
図6】同入浴装置の使用の様子を断面で示す説明図である。
図7】従来の入浴装置の断面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。図1は、本発明に係る入浴装置の一例を示す斜視説明図である。図2は、同入浴装置の浴槽本体の正面開口の傾斜の一例を示す説明図である。図3は、同入浴装置の上方鍔部による開放の度合い等を断面で示す説明図である。図4は、同入浴装置の上方鍔部の突出の長さを断面で示す説明図である。図5は、同入浴装置の扉の上辺の傾きを断面で示す説明図である。図6は、同入浴装置の使用の様子を断面で示す説明図である。
【0020】
本発明に係る入浴装置1は、入浴者Bが、移動可能な座部32に着座したままの状態で入浴可能な入浴装置である。具体的には、入浴装置1は、長手方向の1面である正面開口14を開閉する扉20を有し、扉20が開いた状態で、入浴者Bが座部32に着座したままで、座部32と共に入浴者Bが背中方向から侵入可能な浴槽本体10から構成されている。
【0021】
座部32は、実際には、図6に示すように、入浴用車椅子30の一部であり、入浴用車椅子30が、座部32、背部34、脚部36、フットレスト38及び図示していない台車等から構成された車椅子形状を有している。尚、入浴用車椅子30は、座部32、背部34、脚部36、及びフットレスト38からなる部分と台車とが分離する形態でも分離しない形態でもよい。
【0022】
扉20は、垂直壁22、側面壁24及び上方鍔部26から形成されている。尚、垂直壁22、側面壁24及び上方鍔部26のそれぞれは、扉20が浴槽本体10の正面開口14を塞いだ状態で浴槽本体内部12に湯が溜められても破壊しない厚板状で所定の強度が必要であるが、その材質等により制限されるものではなく、例えば、中実な板材でも良いし、各図に示されるように中空で厚板状に形成されているものでも良い。また、各図の例では、好ましい形態として垂直壁22、側面壁24及び上方鍔部26が一体で成形されて1つの扉20を構成しているが、垂直壁22、側面壁24及び上方鍔部26をそれぞれ別部材とし、それらを組み合わせることで扉20が構成させることも可能である。
【0023】
扉20の垂直壁22は、扉20が浴槽本体10の正面開口14を塞いだ状態で外側面22aが略垂直になるように、正面開口14に対向する面をなすものである。側面壁24は、垂直壁22の左右それぞれから浴槽本体10の正面開口14方向に突出し、直角部が上方に位置すると共に斜辺24aが浴槽本体10の正面開口14側に位置する略直角三角形状の面をなすものである。上方鍔部26は、垂直壁22の上辺22b全体から浴槽本体10の正面開口14方向に突出するものである。尚、上方鍔部26は、側面壁24の上辺24bの浴槽本体10の正面開口14側の端部まで突出しているものではない。
【0024】
そして、浴槽本体10の正面開口14の開口面14aが、上部から下部に向かって突出するように傾斜し、浴槽本体10の正面開口14の開口面14aの左右の傾斜する斜辺16が、扉20の側面壁24の斜辺24aと密接し、浴槽本体10の正面開口14の開口面14aの下辺が、扉20の垂直壁の下辺22cと密接することで、浴槽本体10の正面開口14が、扉20によって塞がれるものである。
【0025】
尚、浴槽本体10の正面開口14の開口面14aの左右のいずれかの斜辺16と、扉20のいずれかの側面壁24の斜辺24aとに図示しない蝶番が設けられており、扉20は、浴槽本体10の正面開口14の開口面14aに対して開閉自在となっている。但し、入浴時は、浴槽本体内部12が湯で満たされることから、この際には、扉20が開かないように図示しない機構により、扉20が浴槽本体10の正面開口14の開口面14aに固定されることになる。
【0026】
尚、図では、扉20の垂直壁22の下方の下辺22cが、浴槽本体10の正面開口14の開口面14aの下辺方向に屈曲しているが、これは、単に、入浴者Bの支援を行う介助者の爪先部分が入浴装置1の下方に入りやすくすることで、介助者による入浴者Bのケアをしやすくするための構造にしか過ぎず、この部分の形態により制限されるものではないが、このような形態にすることが好ましい。
【0027】
以上のような構成の入浴装置1によれば、扉20の垂直壁22の上辺22bと扉20の側面壁24の上辺24bとからなる扉20の上部開口が、上部開口の一部が扉20の上方鍔部26によって塞がれているものの、塞がれているのは一部にしか過ぎず、上方鍔部26が扉20の剛性を確保しつつ、介助者が入浴者Bの爪先T付近をケアしたいとき、扉20の上部が邪魔することなく介助者の手が爪先T付近に届き、介助者が入浴者Bのケアを充分に行うことができる。
【0028】
さらに、扉20の垂直壁22の上辺22bと扉20の側面壁24の上辺24bとからなる扉20の上部開口が、上部開口の一部が扉20の上方鍔部26によって塞がれているものの、扉20の側面壁24の上辺24bから正面開口14の開口面14aの上辺までの長さ比(図3の長さB1に対し長さB2)で50%以上開放されていることが望ましく、介助者による入浴者Bのケアをよりしやすくすることになる。また、扉20の上方鍔部26が、扉20の垂直壁22の外側面22aから50mm~150mm(図4の長さB)、正面開口14の開口面14a方向に突出していることが、好ましい。
【0029】
さらに、扉20の側面壁24の上辺24bが、浴槽本体10の正面開口14方向から反対方向に向かって下がるように傾斜させることが好ましく、具体的には、扉20の側面壁24の上辺24bの傾斜角度(図5の角度β)が、8度~45度であることが望ましく、この傾斜により、介助者による入浴者Bのケアがよりしやすくなる。
【0030】
さらに、介助者による入浴者Bのケアをよりしやすくするために、床面から扉20の垂直壁22の上辺22bまでの高さ(図3の長さA)が、800mm~900mmであることが好ましい。
【0031】
さらに、浴槽本体10の側面視で、扉20が斜め上方向に上昇しつつ開くことが好ましく、このため、浴槽本体10の正面開口14の開口面14aの左右の斜辺16が、下方に向かって浴槽本体10から突出する方向に18度~45度(図2の角度α)、傾斜していることが望ましい。扉20が斜め上方向に上昇しつつ開くことで、扉20が開放した時の回転半径は平面視で抑えられ、入浴装置1の設置場所の面積を抑えることが可能となる。
【0032】
本発明は、本発明の広義の精神と範囲を逸脱することなく、様々な実施の形態及び変形が可能とされるものである。また、上述した実施の形態は、この発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、請求の範囲によって示される。そして、請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、この発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明によれば、介助者が入浴状態の入浴者の全身のケアを充分に行える入浴装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0034】
1・・・・・入浴装置
10・・・・浴槽本体
12・・・・浴槽本体内部
14・・・・正面開口
14a・・・開口面
16・・・・斜辺
20・・・・扉
22・・・・垂直壁
22a・・・外側面
22b・・・上辺
22c・・・下辺
24・・・・側面壁
24a・・・斜辺
24b・・・上辺
26・・・・上方鍔部
30・・・・入浴用車椅子
32・・・・座部
34・・・・背部
36・・・・脚部
38・・・・フットレスト
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7