(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】配列類似性19、メンバーA5抗体を有する抗ファミリー及びその使用方法
(51)【国際特許分類】
C12N 15/13 20060101AFI20240801BHJP
A61K 39/395 20060101ALI20240801BHJP
A61P 25/04 20060101ALI20240801BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20240801BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20240801BHJP
C07K 16/18 20060101ALI20240801BHJP
C07K 16/46 20060101ALI20240801BHJP
C07K 19/00 20060101ALI20240801BHJP
C12N 1/15 20060101ALI20240801BHJP
C12N 1/19 20060101ALI20240801BHJP
C12N 1/21 20060101ALI20240801BHJP
C12N 5/10 20060101ALI20240801BHJP
C12N 15/63 20060101ALI20240801BHJP
C12P 21/08 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C12N15/13 ZNA
A61K39/395 D
A61K39/395 N
A61P25/04
A61P25/28
A61P43/00 121
C07K16/18
C07K16/46
C07K19/00
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
C12N15/63 Z
C12P21/08
(21)【出願番号】P 2020557278
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(86)【国際出願番号】 IB2019053895
(87)【国際公開番号】W WO2019215702
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2020-10-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-30
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518156428
【氏名又は名称】ニューラクル サイエンス カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】弁理士法人 HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】キム,ボンチョル
(72)【発明者】
【氏名】キム,ウォンキュム
(72)【発明者】
【氏名】ヨン,ジョンウォン
(72)【発明者】
【氏名】チョン,ジュンホ
(72)【発明者】
【氏名】ジン,ジュンヨン
(72)【発明者】
【氏名】ユ,エウンウォイ
【合議体】
【審判長】長井 啓子
【審判官】小金井 悟
【審判官】高堀 栄二
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0118230(US,A1)
【文献】Current Opinion in Pharmacology,2008年,vol.8,p.620-626
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07K 1/00-19/00
C12N 15/00-15/90
A61K 39/00-39/44
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含むヒトFAM19A5タンパク質に特異的に結合する単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)であって、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR2はSEQ ID NO:6に提示されたアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR3はSEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列を含み;(iv)軽鎖CDR1はSEQ ID NO:13に提示されたアミノ酸配列を含み;(v)軽鎖CDR2はSEQ ID NO:14に提示されたアミノ酸配列を含み;及び(vi)軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする、単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分。
【請求項2】
重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含むヒトFAM19A5タンパク質に特異的に結合する単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)であって、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR2はSEQ ID NO:27に提示されたアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR3はSEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列を含み;(iv)軽鎖CDR1はSEQ ID NO:13に提示されたアミノ酸配列を含み;(v)軽鎖CDR2はSEQ ID NO:29に提示されたアミノ酸配列を含み;及び(vi)軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする、単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分。
【請求項3】
重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ヒトFAM19A5タンパク質に特異的に結合する単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)であって、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR2はSEQ ID
NO:28に提示されたアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR3はSEQ ID
NO:7に提示されたアミノ酸配列を含み;(iv)軽鎖CDR1はSEQ ID NO:13に提示されたアミノ酸配列を含み;(v)軽鎖CDR2はSEQ ID NO:29に提示されたアミノ酸配列を含み;及び(vi)軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする、単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分。
【請求項4】
重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、VHはSEQ ID NO:17、30又は31に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み;及び/又は、VLはSEQ ID NO:18又は32に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項1~3のいずれかに記載の抗体。
【請求項5】
抗体は
、SEQ ID NO:30に提示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び
SEQ ID NO:32に提示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合
することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の抗体。
【請求項6】
抗体は
、SEQ ID NO:31に提示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び
SEQ ID NO:32に提示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合
することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の抗体。
【請求項7】
抗体は
、SEQ ID NO:17に提示されたアミノ酸配列を含む重鎖可変領域(VH)及び
SEQ ID NO:18に提示されたアミノ酸配列を含む軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合
することを特徴とする、請求項1~4のいずれかに記載の抗体。
【請求項8】
抗体はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、その変異体及びこれらの任意の組合せからなる群から選ばれることを特徴とする、請求項1~7のいずれかに記載の抗体。
【請求項9】
キメラ抗
体又はヒト化した抗体である、請求項1~8のいずれかに記載の抗体。
【請求項10】
Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv又は単鎖Fv(scFv)を含む、請求項1~9のいずれかに記載の抗体。
【請求項11】
scFVである、請求項10に記載の抗体。
【請求項12】
scFvはVH及びVLを含み、VHはSEQ ID NO:17、30又は31に提示されたアミノ酸配列を含み、及びVLはSEQ ID NO:18又は32に提示されたアミノ酸配列を含むことを特徴とする、請求項11に記載の抗体。
【請求項13】
次の特性のいずれか1つ以上を表す、請求項1~12のいずれかに記載の抗体:
(a)酵素結合免疫吸着分析(ELISA)によって測定される時、10nM以下のK
D
で、可溶性ヒトFAM19A5に結合し;
(b)ELISAによって測定される時、10nM以下のK
D
で、膜結合したヒトFAM19A5に結合し;
(c)反応性神経膠症の発病を減少、逆転、遅延及び/又は予防し;
(d)反応性星状細胞の過度な増殖を抑制し;
(e)ニューロカン及びニューロン膠抗原2(NG2)を含むコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現を減少させ;
(f)ニューロンの核でc-fos及びpERKの発現を増加させ;
(g)ニューロンの生存を促進し;
(h)ニューロンでGAP43の発現を増加させ;
(i)軸索の再成長を促進し;
及び
(
j)大食細胞又は小膠細胞の食作用を向上さ
せる。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項の抗体を暗号化する核酸。
【請求項15】
請求項14の核酸を含むベクター。
【請求項16】
請求項15のベクターを含む細胞。
【請求項17】
製剤に連結された請求項1~13のいずれか一項の抗体を含む免疫接合体。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか一項の抗体、請求項14の核酸、請求項15のベクター、請求項16の細胞又は請求項17の免疫接合体及び担体を含む組成物。
【請求項19】
請求項1~13のいずれか一項の抗体、請求項14の核酸、請求項15のベクター、請求項16の細胞又は請求項17の免疫接合体及び使用説明書を含むキット。
【請求項20】
適切な条件下で請求項16の細胞を培養して抗体を単離させる段階を含む、ヒトFAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体の製造方法。
【請求項21】
必要とする対象で疾患又は病態を治療する、請求項1~13のいずれかに記載の抗体。
【請求項22】
追加の治療剤を投与することを特徴とする、請求項
21に記載の抗体。
【請求項23】
追加の治療剤が化学療法、免疫療法、放射線療法又はこれらの組合せを含むことを特徴とする、請求項
22に記載の抗体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願と共に提出されたASCIIテキストファイル(ファイル名:3763_011PC02_SeqListing_ST25.txt;サイズ:34,309バイト;及び生成日:2019年5月10日)に電子的に提出された配列目録の内容はその全体が本明細書に参照として含まれる。
【0002】
本発明は、配列類似性19、メンバーA5(FAM19A5)を有するファミリーに特異的に結合する(例えば、脱免疫化された)抗体、該抗体を含む組成物、及び中枢神経系損傷のようなものによる障害又は疾患を予防又は治療するために対象に当該抗体を使用する方法を提供する。
【背景技術】
【0003】
FAM19A5は5個の高度に相同性である小さなタンパク質で構成されたタンパク質のTAFAサブファミリーのメンバーである。Tang T.Y.et al.,Genomics 83(4):727-34(2004)。これらのタンパク質は固定した位置に保存されたシステイン残基を含有し、CC-ケモカインファミリーのメンバーである大食細胞炎症性タンパク質1-アルファ(MIP-1-アルファ)と遠い関係にある。TAFAタンパク質は主に脳及び脊髄の特定領域で発現する。これらのタンパク質は神経発生過程で成体神経幹細胞によって生成され分泌されると考えられる。
【0004】
FAM19A5は脊椎動物の脳で主に発現し、FAM19A5は完全な中枢神経系の発達、分化、形成に重要であり、中枢神経系の損傷及び/又は疾病の予防又は治療に利用可能なものと考えられる。米国特許公開第2015/0118230号。
【0005】
FAM19A5を抑制することは中枢神経系を治療するのに重要な役割を果たし得るが、FAM19A5に特異的に結合してFAM19A5活性を調節できる抗体を開発する必要が依然として残っている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、配列類似性19、メンバーA5(FAM19A5)タンパク質を有するヒトファミリーに特異的に結合する抗体又はその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)を提供する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:5、6及び7に提示されたアミノ酸配列を含み、これらのそれぞれは任意に1個、2個又は3個の突然変異を有し;ここで、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:8、9及び10のアミノ酸配列を含み;軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3のうち少なくとも1つは1個、2個又は3個の突然変異を含み;並びに、ここで、抗体はSEQ ID NO:11として提示されたVH及びSEQ ID NO:12として提示されたVLを含む基準抗体に比べてヒトにおいて免疫原性が減少している。一部の実施形態において、重鎖CDR3はSEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列(GSASYITAATIDA)を含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1はSEQ ID NO:5(SYQMG)に提示されたアミノ酸配列を任意に1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。一部の実施形態において、重鎖CDR2はSEQ ID NO:6に提示されたアミノ酸配列(VINKSGSDTS)を任意に1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。
【0007】
一部の実施形態において、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列(GNDDYSSDSGYVGV)を任意に1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。
【0008】
一部の実施形態において、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:8に提示されたアミノ酸配列(SGGGSSGYGYG)を1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:8のアミノ酸4においてグリシンが脂肪族アミノ酸に置換されたものを含む。特定の実施形態において、脂肪族アミノ酸はアラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンを含む。
【0009】
一部の実施形態において、軽鎖CDR2は1個、2個又は3個の突然変異と共にSEQ ID NO:9(WNDKRPS)に提示されたアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:9のアミノ酸1においてトリプトファン(Tryptophan)が塩基性アミノ酸に置換されたものを含む。特定の実施形態において、塩基性アミノ酸はアルギニン、ヒスチジン又はリシンを含む。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:9のアミノ酸2においてアスパラギンが酸性アミノ酸に置換されたものを含む。一部の実施形態において、酸性アミノ酸はアスパラギン酸又はグルタミン酸を含む。一部の実施形態において、突然変異はSEQ ID NO:9のアミノ酸4においてリシンが酸性アミノ酸に置換されたものを含む。特定の実施形態において、酸性アミノ酸はアスパラギン酸又はグルタミン酸を含む。
【0010】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、重鎖(heavy chain)CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖(light chain)CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を含み、(ii)重鎖CDR2はSEQ ID NO:6に提示されたアミノ酸配列を含み、(iii)重鎖CDR3はSEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列を含み、(iv)軽鎖CDR1はSEQ ID NO:13に提示されたアミノ酸配列を含み、(v)軽鎖CDR2はSEQ ID NO:14に提示されたアミノ酸配列を含み、及び(vi)軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を含む。
【0011】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHはSEQ ID NO:11に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み;及び/又は、ここで、VLはSEQ ID NO:12に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含む。
【0012】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合し、ここで、VHはSEQ ID NO:11に提示されたアミノ酸配列を含み、及びVLはSEQ ID NO:12に提示されたアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合し、ここで、VHはSEQ ID NO:30に提示されたアミノ酸配列を含み、及びVLはSEQ ID NO:32に提示されたアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合し、ここで、VHはSEQ ID NO:31に提示されたアミノ酸配列を含み、及びVLはSEQ ID NO:32に提示されたアミノ酸配列を含む。更なる実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合し、ここで、VHはSEQ ID NO:31に提示されたアミノ酸配列を含み、VLはSEQ ID NO:32に提示されたアミノ酸配列を含む。
【0013】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、その変異体及びこれらの任意の組合せからなる群から選ばれる。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、キメラ抗体、ヒト抗体又はヒト化した抗体である。
【0014】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv又は単鎖(single chain)Fv(scFv)を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はscFvである。特定の実施形態において、scFvはVH及びVLを含み、ここで、VHはSEQ ID NO:17に提示されたアミノ酸配列を含み、及びVLはSEQ ID NO:18に提示されたアミノ酸配列を含む。
【0015】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、次の特性のいずれか1つ以上を表す:(a)酵素結合免疫吸着分析(ELISA)によって測定される時、10nM以下のKDを有する可溶性ヒトFAM19A5に結合し;(b)ELISAによって測定される時、10nM以下のKDを有する膜結合したヒトFAM19A5に結合し;(c)反応性神経膠症(gliosis)の発病を減少、逆転、遅延及び/又は予防し;(d)反応性星状細胞(astrocytes)の過度な増殖を抑制し;(e)ニューロカン(neurocan)及びニューロン膠(neuron-glial)抗原2(NG2)を含むコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現を減少させ;(f)ニューロンの核でc-fos及びpERKの発現を増加させ;(g)ニューロンの生存を促進し;(h)ニューロンでGAP43の発現を増加させ;(i)軸索(axon)の再成長を促進し;(j)例えば、腫瘍で血管の正常化を誘導し;(k)腫瘍の成長を抑制し;(l)免疫細胞の腫瘍への浸潤(infiltration)を向上させ;(m)ニューロン細胞の腫瘍への浸潤を向上させ;(n)大食細胞又は小膠細胞(microglia)の食作用(phagocytic activity)を向上させ;(o)大食細胞又は小膠細胞のミトコンドリア膜電位を増加させ;(p)骨髄由来抑制細胞(MDSC)の腫瘍への補充(recruitment)を減少させ;(q)腫瘍で壊死(necrosis)及び浮腫(edema)を減少させ;(r)腫瘍の組織透過性を減少させ;及び(s)腫瘍で血流量を増加させる。
【0016】
本発明ではまた、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体、核酸を含むベクター、ベクターを含む細胞及び本明細書に開示された抗FAM19A5抗体を含む免疫接合体(immunoconjugates)を暗号化する核酸が提供される。本明細書に開示された抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体を含む組成物及び担体も本明細書に開示される。本発明はまた、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は本発明の免疫接合体を含むキット及び使用説明書を提供する。
【0017】
本発明はまた、適切な条件下で本明細書に開示された細胞を培養して抗体を単離させることを含み、ヒトFAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体を生成する方法も提供する。
【0018】
本発明は、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体を投与することを含む、これを必要とする対象で疾患又は病態(condition)を治療する方法をさらに提供する。一部の実施形態において、疾患又は病態は、腫瘍、線維症、緑内障、気分障害、神経退行性疾患(例えば、アルツハイマー病)、脳卒中又は神経病性疼痛を含む。特定の実施形態において、疾患又は病態は腫瘍である。
【0019】
一部の実施形態において、腫瘍は、黒色腫(melanoma)、膵癌、神経膠腫(glioma)、乳癌、リンパ腫、肺癌、腎臓癌、前立腺癌、線維肉腫(fibrosarcoma)、結腸腺癌腫(colon adenocarcinoma)、肝癌又は卵巣癌を含む。特定の実施形態において、神経膠腫は多形膠芽細胞腫(GBM)である。
【0020】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、血管の正常化を誘導する。特定の実施形態において、血管の正常化は、増加した連結性、増加した壁厚、減少した血管径、より規則的な血管方向及び分布パターン、増加した血管数、漏れ及び透過性の減少、血管での血管周囲細胞適用範囲(pericyte coverage)及び近接性の増加、酸素化増加又はこれらの組合せを含む血管の特性変化を伴う。
【0021】
一部の実施形態において、本明細書の抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、腫瘍の成長を抑制する。
【0022】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、免疫細胞の腫瘍への浸潤を向上させる。特定の実施形態において、免疫細胞は大食細胞、樹状(dendritic)細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、自然殺害(NK)細胞又はこれらの組合せを含む。一部の実施形態において、免疫細胞は肥大(hypertrophy)をさらに示す。一部の実施形態において、腫瘍への免疫細胞の強化された浸潤は、腫瘍へのニューロン細胞の浸潤増加を伴う。特定の実施形態において、ニューロン細胞は、星状細胞、神経膠細胞(glial cell)又はこれらの組合せを含む。
【0023】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、大食細胞又は小膠細胞の食作用を向上させる。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、大食細胞又は小膠細胞のミトコンドリア膜電位を増加させる。
【0024】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、骨髄由来抑制細胞(MDSC)の腫瘍への補充(recruitment)を減少させる。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、腫瘍の壊死及び浮腫を減少させる。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、腫瘍の組織透過性を減少させる。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体、核酸、ベクター、細胞又は免疫接合体は、腫瘍で血流速度を増加させる。
【0025】
一部の実施形態において、疾患又は障害を治療する方法は追加の治療剤を投与する段階をさらに含む。特定の実施形態において、治療方法は、化学療法、免疫療法、放射線療法又はこれらの組合せを含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1A】
図1A及び
図1Bは、下記脱免疫化された1-65抗体に対する1-65抗体の重鎖可変領域(
図1A)及び軽鎖可変領域(
図1B)の配列整列を提供する:(i)SS01-13;(ii)SS01-13-s5;及び(iii)S5-SG(本明細書においてS5-2.GKNG抗体又は1-65-S53G抗体とも記述される。)。重鎖及び軽鎖CDR及びFRは
図1A及び
図1Bに表示されている。
【
図1B】
図1A及び
図1Bは、下記脱免疫化された1-65抗体に対する1-65抗体の重鎖可変領域(
図1A)及び軽鎖可変領域(
図1B)の配列整列を提供する:(i)SS01-13;(ii)SS01-13-s5;及び(iii)S5-SG(本明細書においてS5-2.GKNG抗体又は1-65-S53G抗体とも記述される。)。重鎖及び軽鎖CDR及びFRは
図1A及び
図1Bに表示されている。
【
図2】
図2は、1-65抗体の軽鎖可変領域(VL)(上位3行)及び重鎖可変領域(VH)(下位3行)の潜在的免疫原性部位を確認する。VLはSEQ ID NO:12に該当し、VHはSEQ ID NO:11に該当する。1-65抗体のフレームワーク領域に用いられたヒトジャームライン(germline)に対する配列も提示されている:VL=免疫グロブリンラムダ可変3-25(IGLV3-25
*02)及び免疫グロブリンラムダ結合2(IGLJ2
*01;VH=免疫グロブリン重鎖可変3-23(IGHV3-23
*02)及び免疫グロブリン重鎖結合1(IGHJ1
*01)。用いられたヒトジャームラインは1-65クローンに対して最も相同的なヒトジャームライン(IgBLAST、NCBI)であった。ITOPE
TM分析によって決定されたように、高い及び中間程度の免疫原性潜在力を有する無差別(promiscuous)MHCクラスII結合ペプチドが提示されている。具体的に、高い免疫原性潜在力を有するMHCII結合ペプチドは次の通りである:(i)ペプチド#2:SEQ ID NO:12の残基46-54(IYWNDKRPS)、(ii)ペプチド#8:SEQ ID NO:48-56の残基:11(VGVINKSGS)、(iii)ペプチド#10:SEQ ID NO:11の残基79-87(VRLQLNNLR);及び(iv)ペプチド#13:SEQ ID NO:11の残基103-111(YITAATIDA)。適当な免疫原性潜在力を有するMHCII結合性ペプチドは次の通りである:(i)ペプチド#1:SEQ ID NO:12の残基16-24(VKITCSGGG);(ii)ペプチド#3:SEQ ID NO:12の残基71-79(LTITGVQAE);(iii)ペプチド#4:SEQ ID NO:11の残基18-26(LSLVCKASG);(iv)ペプチド#5:SEQ ID NO:11の残基20-28(LVCKASGFT);(v)ペプチド#6:SEQ ID NO:11の残基32-40(YQMGWVRQA);(vi)ペプチド#7:SEQ ID NO:11の残基45-53(LEWVGVINK);(vii)ペプチド#9:SEQ ID NO:11の残基64-72(VKGRATISR);(viii)ペプチド#11:SEQ ID NO:11の残基81-87(LQLNNLR);(ix)ペプチド#12:SEQ ID NO:11の残基86-94(LRAEDTGTY)。T細胞エピトープデータベースからの相同性ペプチドは次の通りである:ペプチド#5、ペプチド#6、ペプチド#9及びペプチド#12。総13個の結合ペプチドが確認され、これはペプチド#1~#13と表示される。それぞれの結合ペプチドに対する“P1”は第1アンカー位置を示す。
【
図3A】
図3A及び
図3Bは、脱免疫化された1-65抗体の結合分析を提供する。抗体を脱免疫化させるために、クローン1-65のMHCクラスII結合領域で同一でないアミノ酸残基は、ヒトジャームライン配列で相応するアミノ酸に置換された。
図3Aは、次のうち、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)の配列比較を提供する:(i)正常1-65抗体(“クローン1-65”)、(ii)完全に脱免疫化された1-65抗体(“完全脱免疫化されたクローン1-65”)、及び(iii)2個のアミノ酸(残基23(FR1領域)及び残基54(HCDR2領域)及びVH(SEQ ID NO:11)の残基54(HCDR2領域)を除いて脱免疫化されたもの(“脱免疫化されたクローン3-2”)。“脱免疫化されたクローン3-2”抗体はまた、本明細書において“SS01-13-s5”抗体と記述される(例えば、
図1A及び
図1B参照)。ITOPE
TM分析によって決定された通り、高い及び中間程度の免疫原性潜在力を有するアミノ酸残基はボックスで表示され、それぞれ“1”及び“2”と表示される。
図3Bは、(i)正常1-65抗体、(ii)完全に脱免疫化された1-65抗体、及び(iii)一つのアミノ酸を除いて重鎖CDR2(“脱免疫化されたクローン-1-65”)抗体ELISAによって測定されたFAM19A5タンパク質に対する抗体。(iii)ELISAによって測定された通り、FAM19A5タンパク質に対する重鎖CDR2抗体を有する一つのアミノ酸を除いて脱免疫化されたもの(“脱免疫化されたクローン-1-65”)の結合比較を示す。ファージを表示するそれぞれの単鎖可変断片(scFv)をFAM19A5(黒四角)又は抗HA抗体(□)でコーティングされた微量定量(microtiter)プレートのウェルに添加した。BSAでコーティングされた対照ウェルで背景信号を測定した。ウェルをHRP-共役結合した(conjugated)抗M13抗体で調査(probe)した。405nmでの吸光度を測定した。結果は、4回行われた実験から得られた平均±SDとして表示される。
【
図3B】
図3A及び
図3Bは、脱免疫化された1-65抗体の結合分析を提供する。抗体を脱免疫化させるために、クローン1-65のMHCクラスII結合領域で同一でないアミノ酸残基は、ヒトジャームライン配列で相応するアミノ酸に置換された。
図3Aは、次のうち、軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)の配列比較を提供する:(i)正常1-65抗体(“クローン1-65”)、(ii)完全に脱免疫化された1-65抗体(“完全脱免疫化されたクローン1-65”)、及び(iii)2個のアミノ酸(残基23(FR1領域)及び残基54(HCDR2領域)及びVH(SEQ ID NO:11)の残基54(HCDR2領域)を除いて脱免疫化されたもの(“脱免疫化されたクローン3-2”)。“脱免疫化されたクローン3-2”抗体はまた、本明細書において“SS01-13-s5”抗体と記述される(例えば、
図1A及び
図1B参照)。ITOPE
TM分析によって決定された通り、高い及び中間程度の免疫原性潜在力を有するアミノ酸残基はボックスで表示され、それぞれ“1”及び“2”と表示される。
図3Bは、(i)正常1-65抗体、(ii)完全に脱免疫化された1-65抗体、及び(iii)一つのアミノ酸を除いて重鎖CDR2(“脱免疫化されたクローン-1-65”)抗体ELISAによって測定されたFAM19A5タンパク質に対する抗体。(iii)ELISAによって測定された通り、FAM19A5タンパク質に対する重鎖CDR2抗体を有する一つのアミノ酸を除いて脱免疫化されたもの(“脱免疫化されたクローン-1-65”)の結合比較を示す。ファージを表示するそれぞれの単鎖可変断片(scFv)をFAM19A5(黒四角)又は抗HA抗体(□)でコーティングされた微量定量(microtiter)プレートのウェルに添加した。BSAでコーティングされた対照ウェルで背景信号を測定した。ウェルをHRP-共役結合した(conjugated)抗M13抗体で調査(probe)した。405nmでの吸光度を測定した。結果は、4回行われた実験から得られた平均±SDとして表示される。
【
図4A】
図4A、
図4B、
図4C、及び
図4Dは、下記のように2個の異なる脱免疫化された1-65抗体の分析を提供する:(i)
図3A及び
図3Bに示したのと同じ脱免疫化された抗体である“脱免疫化されたクローン1-65”;及び(ii)HCDR2で潜在的なN-グリコシル化部位を除去するように変形された以外は“脱免疫化されたクローン1-65”と同じ“脱免疫化されたクローンS5-SG”(“S5-SG”)(HCDR2のアミノ酸5においてS~G(すなわち、SEQ ID NO:11の残基54)、“*”で識別される。)。
図4A及び
図4Bは、SDS-PAGEを用いて測定された抗体のサイズ及び発現レベルを示す。
図4Aで、レーン“1”及び“2”はそれぞれ、抗体SS01-13-S5及びS5-SGに相応する。レーン“1”及び“2”内で、“A”及び“B”はそれぞれ、遠心分離前及び遠心分離後に相応する。
図4Bで、左側パネルは減少するSDS-PAGEを示し、右側パネルは非減少SDS-PAGEを示す。
図4Cは、抗体の軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)の配列比較を提供する。
図4Dは、(i)正常1-65抗体(“クローン1-65”)、(ii)脱免疫化された1-65抗体(本発明においてSS01-13-S5抗体とも記述される。)及び(iii)ELISAによって測定された通り、FAM19A5タンパク質に対する脱免疫化されたクローンS5-SG抗体の結合比較を示す。ファージを表す各単鎖可変断片(scFv)をFAM19A5(黒四角)又は抗HA抗体(□)でコーティングされた微量定量プレートのウェルに添加した。BSAでコーティングされた対照ウェルで背景信号を測定した。ウェルはHRP-共役結合した抗M13抗体で調査された。405nmで吸光度を測定した。結果は、4回行われた実験から得られた平均±SDとして表示される。
【
図4B】
図4A、
図4B、
図4C、及び
図4Dは、下記のように2個の異なる脱免疫化された1-65抗体の分析を提供する:(i)
図3A及び
図3Bに示したのと同じ脱免疫化された抗体である“脱免疫化されたクローン1-65”;及び(ii)HCDR2で潜在的なN-グリコシル化部位を除去するように変形された以外は“脱免疫化されたクローン1-65”と同じ“脱免疫化されたクローンS5-SG”(“S5-SG”)(HCDR2のアミノ酸5においてS~G(すなわち、SEQ ID NO:11の残基54)、“*”で識別される。)。
図4A及び
図4Bは、SDS-PAGEを用いて測定された抗体のサイズ及び発現レベルを示す。
図4Aで、レーン“1”及び“2”はそれぞれ、抗体SS01-13-S5及びS5-SGに相応する。レーン“1”及び“2”内で、“A”及び“B”はそれぞれ、遠心分離前及び遠心分離後に相応する。
図4Bで、左側パネルは減少するSDS-PAGEを示し、右側パネルは非減少SDS-PAGEを示す。
図4Cは、抗体の軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)の配列比較を提供する。
図4Dは、(i)正常1-65抗体(“クローン1-65”)、(ii)脱免疫化された1-65抗体(本発明においてSS01-13-S5抗体とも記述される。)及び(iii)ELISAによって測定された通り、FAM19A5タンパク質に対する脱免疫化されたクローンS5-SG抗体の結合比較を示す。ファージを表す各単鎖可変断片(scFv)をFAM19A5(黒四角)又は抗HA抗体(□)でコーティングされた微量定量プレートのウェルに添加した。BSAでコーティングされた対照ウェルで背景信号を測定した。ウェルはHRP-共役結合した抗M13抗体で調査された。405nmで吸光度を測定した。結果は、4回行われた実験から得られた平均±SDとして表示される。
【
図4C】
図4A、
図4B、
図4C、及び
図4Dは、下記のように2個の異なる脱免疫化された1-65抗体の分析を提供する:(i)
図3A及び
図3Bに示したのと同じ脱免疫化された抗体である“脱免疫化されたクローン1-65”;及び(ii)HCDR2で潜在的なN-グリコシル化部位を除去するように変形された以外は“脱免疫化されたクローン1-65”と同じ“脱免疫化されたクローンS5-SG”(“S5-SG”)(HCDR2のアミノ酸5においてS~G(すなわち、SEQ ID NO:11の残基54)、“*”で識別される。)。
図4A及び
図4Bは、SDS-PAGEを用いて測定された抗体のサイズ及び発現レベルを示す。
図4Aで、レーン“1”及び“2”はそれぞれ、抗体SS01-13-S5及びS5-SGに相応する。レーン“1”及び“2”内で、“A”及び“B”はそれぞれ、遠心分離前及び遠心分離後に相応する。
図4Bで、左側パネルは減少するSDS-PAGEを示し、右側パネルは非減少SDS-PAGEを示す。
図4Cは、抗体の軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)の配列比較を提供する。
図4Dは、(i)正常1-65抗体(“クローン1-65”)、(ii)脱免疫化された1-65抗体(本発明においてSS01-13-S5抗体とも記述される。)及び(iii)ELISAによって測定された通り、FAM19A5タンパク質に対する脱免疫化されたクローンS5-SG抗体の結合比較を示す。ファージを表す各単鎖可変断片(scFv)をFAM19A5(黒四角)又は抗HA抗体(□)でコーティングされた微量定量プレートのウェルに添加した。BSAでコーティングされた対照ウェルで背景信号を測定した。ウェルはHRP-共役結合した抗M13抗体で調査された。405nmで吸光度を測定した。結果は、4回行われた実験から得られた平均±SDとして表示される。
【
図4D】
図4A、
図4B、
図4C、及び
図4Dは、下記のように2個の異なる脱免疫化された1-65抗体の分析を提供する:(i)
図3A及び
図3Bに示したのと同じ脱免疫化された抗体である“脱免疫化されたクローン1-65”;及び(ii)HCDR2で潜在的なN-グリコシル化部位を除去するように変形された以外は“脱免疫化されたクローン1-65”と同じ“脱免疫化されたクローンS5-SG”(“S5-SG”)(HCDR2のアミノ酸5においてS~G(すなわち、SEQ ID NO:11の残基54)、“*”で識別される。)。
図4A及び
図4Bは、SDS-PAGEを用いて測定された抗体のサイズ及び発現レベルを示す。
図4Aで、レーン“1”及び“2”はそれぞれ、抗体SS01-13-S5及びS5-SGに相応する。レーン“1”及び“2”内で、“A”及び“B”はそれぞれ、遠心分離前及び遠心分離後に相応する。
図4Bで、左側パネルは減少するSDS-PAGEを示し、右側パネルは非減少SDS-PAGEを示す。
図4Cは、抗体の軽鎖可変領域(VL)及び重鎖可変領域(VH)の配列比較を提供する。
図4Dは、(i)正常1-65抗体(“クローン1-65”)、(ii)脱免疫化された1-65抗体(本発明においてSS01-13-S5抗体とも記述される。)及び(iii)ELISAによって測定された通り、FAM19A5タンパク質に対する脱免疫化されたクローンS5-SG抗体の結合比較を示す。ファージを表す各単鎖可変断片(scFv)をFAM19A5(黒四角)又は抗HA抗体(□)でコーティングされた微量定量プレートのウェルに添加した。BSAでコーティングされた対照ウェルで背景信号を測定した。ウェルはHRP-共役結合した抗M13抗体で調査された。405nmで吸光度を測定した。結果は、4回行われた実験から得られた平均±SDとして表示される。
【
図5A】
図5A、
図5B及び
図5Cは、FAM19A5タンパク質に対する抗体1-65(
図5A)、SS01-13-S5(
図5B)及びS5-SG(
図5C)の結合に対するSPR試験結果を提供する。各
図5A~
図5Cにおいて、センサグラムは上段に提供され、抗体の結合親和度の定量的値(ka、kd、K
D及びRmax)は下段の表に提供される。
【
図5B】
図5A、
図5B及び
図5Cは、FAM19A5タンパク質に対する抗体1-65(
図5A)、SS01-13-S5(
図5B)及びS5-SG(
図5C)の結合に対するSPR試験結果を提供する。各
図5A~
図5Cにおいて、センサグラムは上段に提供され、抗体の結合親和度の定量的値(ka、kd、K
D及びRmax)は下段の表に提供される。
【
図5C】
図5A、
図5B及び
図5Cは、FAM19A5タンパク質に対する抗体1-65(
図5A)、SS01-13-S5(
図5B)及びS5-SG(
図5C)の結合に対するSPR試験結果を提供する。各
図5A~
図5Cにおいて、センサグラムは上段に提供され、抗体の結合親和度の定量的値(ka、kd、K
D及びRmax)は下段の表に提供される。
【
図6A】
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dは、FAM19A5タンパク質に対する1-65、SS01-13-S5及びS5-SG抗体の結合に対するELISA結果を提供する。
図6A、
図6B及び
図6Cはそれぞれ、様々な濃度の抗体に対する棒グラフであり、抗体1-65、SS01-13-S5及びS5-SGに対する結果を示す。
図6Dは、抗体に対するEC50値を含む表を提供する。
【
図6B】
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dは、FAM19A5タンパク質に対する1-65、SS01-13-S5及びS5-SG抗体の結合に対するELISA結果を提供する。
図6A、
図6B及び
図6Cはそれぞれ、様々な濃度の抗体に対する棒グラフであり、抗体1-65、SS01-13-S5及びS5-SGに対する結果を示す。
図6Dは、抗体に対するEC50値を含む表を提供する。
【
図6C】
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dは、FAM19A5タンパク質に対する1-65、SS01-13-S5及びS5-SG抗体の結合に対するELISA結果を提供する。
図6A、
図6B及び
図6Cはそれぞれ、様々な濃度の抗体に対する棒グラフであり、抗体1-65、SS01-13-S5及びS5-SGに対する結果を示す。
図6Dは、抗体に対するEC50値を含む表を提供する。
【
図6D】
図6A、
図6B、
図6C及び
図6Dは、FAM19A5タンパク質に対する1-65、SS01-13-S5及びS5-SG抗体の結合に対するELISA結果を提供する。
図6A、
図6B及び
図6Cはそれぞれ、様々な濃度の抗体に対する棒グラフであり、抗体1-65、SS01-13-S5及びS5-SGに対する結果を示す。
図6Dは、抗体に対するEC50値を含む表を提供する。
【
図7A】
図7A、
図7B及び
図7Cは、処理後、BV2細胞によるPHRODO
TM Green E.coli BioParticlesの食細胞(phagocytic)吸収の比較を提供する。BV2細胞は次のいずれか一つで処理された:(i)PBS、(ii)ヒトFAM19A5-Fcタンパク質単独(0μg/mLグループ)、又は(iii)1-65(
図7A)、SS01-13-S5(
図7B)又はS5-SG(
図7C)抗体の様々な濃度(3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL又は25μg/mL)と組み合わせられたヒトFAM19A5-Fcタンパク質。データは平均±S.Dとして表示される。
【
図7B】
図7A、
図7B及び
図7Cは、処理後、BV2細胞によるPHRODO
TM Green E.coli BioParticlesの食細胞(phagocytic)吸収の比較を提供する。BV2細胞は次のいずれか一つで処理された:(i)PBS、(ii)ヒトFAM19A5-Fcタンパク質単独(0μg/mLグループ)、又は(iii)1-65(
図7A)、SS01-13-S5(
図7B)又はS5-SG(
図7C)抗体の様々な濃度(3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL又は25μg/mL)と組み合わせられたヒトFAM19A5-Fcタンパク質。データは平均±S.Dとして表示される。
【
図7C】
図7A、
図7B及び
図7Cは、処理後、BV2細胞によるPHRODO
TM Green E.coli BioParticlesの食細胞(phagocytic)吸収の比較を提供する。BV2細胞は次のいずれか一つで処理された:(i)PBS、(ii)ヒトFAM19A5-Fcタンパク質単独(0μg/mLグループ)、又は(iii)1-65(
図7A)、SS01-13-S5(
図7B)又はS5-SG(
図7C)抗体の様々な濃度(3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL又は25μg/mL)と組み合わせられたヒトFAM19A5-Fcタンパク質。データは平均±S.Dとして表示される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本明細書には、配列類似性19、メンバーA5(FAM19A5)タンパク質を有するヒトファミリーに特異的に結合し、本明細書に開示の1つ以上の特性を示す単離した単クローン性抗体又はその抗原結合部分(“抗FAM19A5抗体”)が開示されている。具体的に、抗FAM19A5抗体はヒト対象において免疫原性を減少させるために脱免疫化された。
【0028】
本明細書に記述された開示内容の理解を容易にするために、多数の用語及び語句が定義される。追加の定義は詳細な説明全体にわたって提示されている。
【0029】
I.定義
本明細書全体において、単数の表現は、1つ以上を意味する。例えば、“抗体”は1つ以上の抗体を表すものと理解される。このように、本明細書において単数の表現は“1つ以上の”及び“少なくとも1つの”と同じ意味で使用可能である。
【0030】
また、“及び/又は“は、明示された二つの特徴又は成分のそれぞれがもう一つと共に又は単独で具体的に開示されるものと解釈されるべきである。したがって、“A及び/又はB”は“A及びB”、“A又はB”、“A”(単独)、及び“B”(単独)を含むものと意図される。また、“A、B及び/又はC”は、A、B及びC;A、B又はC;A又はC;A又はB;B又はC;A及びC;A及びB;B及びC;A(単独);B(単独);及びC(単独)の態様をそれぞれ含むものと意図される。
【0031】
ある態様が“含む”と述べられた場合、“構成される”及び/又は“本質的に構成される”と説明された他の類似の態様も提供されるものと理解される。
【0032】
特に言及がない限り、本明細書で用いられた全ての技術及び科学用語は、本発明の当業者に通常理解されるのと同じ意味を有する。例えば、文献(the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology,Juo,Pei-Show,2nd ed,2002,CRC Press;The Dictionary of Cell and Molecular Biology,3rd ed,1999,Academic Press;and the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology,Revised,2000,Oxford University Press)は、本明細書で用いられた大部分の用語に対する一般の辞典的意味を当業者に提供する。
【0033】
単位、接頭辞及び記号は、Systeme International de Unites(SI)で承認された形態で表示される。数値範囲はその範囲を限定する数字を包括的に含む。特に言及がない限り、アミノ酸配列は、アミノからカルボキシ配向に左側から右側へと書かれる。開示された表題は、本発明の様々な態様の制限ではなく、これらは明細書全般を参照したものであり得る。したがって、下記定義された用語はその全体が明細書を参照してより詳細に説明される。
【0034】
本明細書において用語“約”は、概略(approximately)、おおよそ(roughly)、近傍(around)、又は近傍の領域内を意味する。用語“約”が数値範囲と共に使われるとき、それは、提示された数値の上と下に境界を拡張させることによって当該範囲を変形する。一般に、用語“約”は、例えば上や下に(より高かく或いは低く)10パーセントまで、言及された値の上と下に数値を変えることができる。
【0035】
用語“配列類似性19、メンバーA5を有するファミリー”又は“FAM19A5”は、5個の高度に相同性であるタンパク質のTAFAファミリー(“FAM19ファミリー”とも知られている)に属し、脳と脊髄で優勢に発現するタンパク質のことを指す。FAM19A5はまた、TAFA5又はケモカイン様タンパク質TAFA-5(Chemokine-like protein TAFA-5)とも知られている。
【0036】
ヒトにおいて、FAM19A5を暗号化する遺伝子は染色体22に位置する。選択的スプライシング(splicing)によって生成されるものと推定される多数のヒトFAM19A5(UniProt:Q7Z5A7)アイソタイプが存在する:132個のアミノ酸で構成されたアイソタイプ1(UniProt:Q7Z5A7-1);125個のアミノ酸で構成されたアイソタイプ2(UniProt:Q7Z5A7-2);及び53個のアミノ酸で構成されたアイソタイプ3(UniProt:Q7Z5A7-3)。ヒトFAM19A5タンパク質は膜結合形態及び可溶性(分泌された)形態で存在すると推定される。アイソタイプ1は一つの硬膜領域を有する膜タンパク質であると推定される。アイソタイプ2は、分泌されたタンパク質(可溶性)としてTang T Y et al.,Genomics 83(4):727-34(2004)に報告されており、アミノ酸位置1-25に信号ペプチドを含有する。アイソタイプ1は膜タンパク質であると推定される。次は3つの公知されたヒトFAM19A5アイソタイプのアミノ酸配列である。
【0037】
(I)アイソタイプ1(UniProt:Q7Z5A7-1、硬膜タンパク質):このアイソタイプは標準配列として選択された。
MAPSPRTGSR QDATALPSMS STFWAFMILA
SLLIAYCSQL AAGTCEIVTL DRDSSQPRRT
IARQTARCAC RKGQIAGTTR ARPACVDARI
IKTKQWCDML PCLEGEGCDL LINRSGWTCT
QPGGRIKTTT VS(SEQ ID NO:1)
(II)アイソタイプ2(UniProt:Q7Z5A7-2、可溶性タンパク質):
MQLLKALWAL AGAALCCFLV LVIHAQFLKE
GQLAAGTCEI VTLDRDSSQP RRTIARQTAR
CACRKGQIAG TTRARPACVD ARIIKTKQWC
DMLPCLEGEG CDLLINRSGW TCTQPGGRIK
TTTVS(SEQ ID NO:2)
(III)アイソタイプ3(UniProt:Q7Z5A7-3):
MYHHREWPAR IIKTKQWCDM LPCLEGEGCD
LLINRSGWTC TQPGGRIKTT TVS(SEQ ID NO:3)
用語“FAM19A5”は、細胞によって自然的に発現するFAM19A5の任意の変異体又はアイソタイプを含む。したがって、本明細書に開示された抗体は同種の異なるアイソタイプ(例えば、ヒトFAM19A5の各アイソタイプ)と交差反応できるか、又はヒト以外の種のFAM19A5(例えば、マウスFAM19A5)と交差反応することができる。代案として、抗体はヒトFAM19A5に特異的であり得、他の種とは交差反応性を示さないことがある。FAM19A5又はその任意の変異体及びアイソタイプは、それらを自然的に発現する細胞又は組織から単離したり又は組換え的に生成され得る。ヒトFAM19A5を暗号化するポリヌクレオチドはGenBank受託番号BC039396を有し、次の配列を有する:
【0038】
【0039】
用語“FAM19A5タンパク質に対する拮抗剤”は、FAM19A5タンパク質の発現を抑制する全ての拮抗剤のことを指す。このような拮抗剤は、ペプチド、核酸、又は化合物であり得る。より具体的に、拮抗剤は、アンチセンス-オリゴヌクレオチド、siRNA、shRNA、miRNA、dsRNA、アプタマー、FAM19A5標的化PNA(ペプチド核酸)、又はこれらを含むベクターであり得る。一部の実施形態において、拮抗剤は、FAM19A5タンパク質に特異的に結合する抗体、又はその抗原結合部分であり得る。
【0040】
用語“抗体(antibody)”及び“抗体(antibodies)”は当業界の用語であり、本明細書で同じ意味で使用可能であり、抗原に特異的に結合する抗原結合部位を有する分子を指す。本明細書で使われた用語は全抗体及び任意の抗原結合断片(すなわち“抗原結合部分”)又はこれらの単鎖を含む。一部の実施形態において、“抗体”は二硫化物結合によって相互連結された少なくとも2本の重鎖(H)と2本の軽鎖(L)を含む糖タンパク質、又はその抗原結合部分を指す。他の実施形態において、“抗体”は単一可変ドメイン、例えばVHHドメインを含む単鎖抗体を指す。各重鎖は重鎖可変領域(VHと略称)と重鎖定常領域とからなる。特定自然発生抗体において、重鎖定常領域は3個のドメインCH1、CH2及びCH3からなる。特定自然発生抗体において、各軽鎖は軽鎖可変領域(VLと略称)と軽鎖定常領域とからなる。軽鎖定常領域は一つのドメインCLからなる。
【0041】
VH及びVL領域は、フレームワーク領域(FR)と称する、より保存された領域と散在している相補性決定領域(CDR)と称する、超可変性の領域にさらに細分化され得る。それぞれのVH及びVLは3個のCDR及び4個のFRからなり、これらはFR1、CDR1、FR2、CDR2、FR3、CDR3、及びFR4の順にアミノ末端からカルボキシ末端に向かって配列される。重鎖及び軽鎖の可変領域は抗原と相互作用する結合ドメインを含有する。抗体の定常領域は、免疫システムの様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)及び伝統補体(classical complement)システムの第1成分(C1q)を含む宿主組織又は因子と免疫グロブリンの結合を媒介し得る。
【0042】
用語“Kabatナンバリング”及び類似用語は当業界で認定され、抗体、又はその抗原結合部分の重鎖及び軽鎖可変領域においてアミノ酸残基をナンバリングするシステムを指す。特定態様において、抗体のCDRは、Kabatナンバリングシステムによって決定され得る(例えば、Kabat EA & Wu TT(1971)Ann NY Acad Sci 190:382-391 and Kabat EA et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,U.S. Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242参照)。Kabatナンバリングシステムを用いると、抗体重鎖分子内におけるCDRは典型的にアミノ酸位置31~35(これは、選択的に35以降に1個又は2個の追加のアミノ酸を含み得る;Kabatナンバリング方式において35A及び35Bと言及される。)(CDR1)、アミノ酸位置50~65(CDR2)、及びアミノ酸位置95~102(CDR3)に存在する。Kabatナンバリングシステムを用いると、抗体軽鎖分子内からCDRは典型的にアミノ酸位置24~34(CDR1)、アミノ酸位置50~56(CDR2)、及びアミノ酸位置89~97(CDR3)に存在する。特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体のCDRはKabatナンバリング方式によって決定されている。
【0043】
用語“Kabatでのアミノ酸位置ナンバリング”、“Kabat位置”、及びこれらの変形用語は、文献(Kabat et al.,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed.Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda,Md(1991))で抗体編集の重鎖可変ドメイン又は軽鎖可変ドメインに対して使われたナンバリングシステムをいう。このナンバリングシステムを用いると、実際線形アミノ酸配列はより少ない又は追加のアミノ酸を含有することができるが、これは、可変ドメインのFW又はCDRの短縮、又は可変ドメインのFW又はCDRへの挿入に該当する。例えば、重鎖可変ドメインは、H2の残基52以降の単一アミノ酸挿入(Kabatによれば残基52a)及び重鎖FW残基82以降に挿入された残基(Kabatによれば残基82a、82b、及び82cなど)を含むことができる(表1B参照)。
【0044】
【0045】
残基のKabatナンバリングは、“標準”Kabatナンバリングされた配列と抗体の配列の相同性の領域で整列によって与えられた抗体に対して決定され得る。Chothiaは、構造ループの位置を代わりに参照する(Chothia and Lesk,J.Mol.Biol.196:901-917(1987))。Chothia CDR-H1ループの端部は、Kabatナンバリング慣例を用いてナンバリングされたとき、ループの長さによってH32~H34の間で変わる(これは、Kabatナンバリング方式がH35AとH35Bに挿入を位置させるためである;35Aも35Bも存在しなければ、ループは32で終わる;35Aだけ存在すれば、ループは33で終わる;35Aと35Bがともに存在すればループは34で終わる)。AbM超可変領域はKabat CDRとChothia構造ループ間の折衝点を表示し、Oxford Molecular’s AbM抗体モデリングソフトウェアによって用いられる。
【0046】
IMGT(ImMunoGeneTics)はまた、CDRを含む免疫グロブリン可変領域に対するナンバリングシステムを提供する。例えば、Lefranc,M.P. et al.,Dev Comp Immunol.27:55-77(2003)を参照し、これは本明細書に参照として含まれる。IMGTナンバリングシステムは5,000個を越える配列の整列、構造データ、及び超可変ループの特性化に基づており、全種に対して可変領域とCDR領域を容易に比較する。IMGTナンバリングスキーマ(schema)によれば、VH-CDR1は位置26~35にあり、VH-CDR2は位置51~57にあり、VH-CDR3は位置93~102にあり、VL-CDR1は位置27~32にあり、VL-CDR2は位置50~52にあり、そしてVL-CDR3は位置89~97にある。
【0047】
本明細書に開示された全ての重鎖定常領域アミノ酸位置に対して、ナンバリングは、配列化された最初のヒトIgG1である骨髄腫タンパク質EUのアミノ酸配列を説明した文献(Edelman et al.,1969,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 63(1):78-85)に最初に提示されたEUインデックスに従う。EdelmanなどのEUインデックスはまた、文献(Kabat et al.,1991,Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Ed,United States Public Health Service,National Institutes of Health,Bethesda)にも提示される。したがって、用語“Kabatに提示されたEUインデックス”又は“KabatのEUインデックス”及び“Kabatに提示されたEUインデックスによる位置…”及び文法的に変形された用語は、Kabat 1991に提示のEdelmanなどのヒトIgG1EU抗体に基づく残基ナンバリングシステムのことをいう。
【0048】
可変ドメイン(重鎖及び軽鎖の両方)及び軽鎖定常領域アミノ酸配列に用いられたナンバリングシステムは、Kabat 1991に提示されたものである。
【0049】
抗体は、免疫グロブリン分子の任意のタイプ(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY)、任意の類型(例えば、IgD、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1又はIgA2)、又は任意の亜型(例えば、ヒトにおいてIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4;及びマウスにおいてIgG1、IgG2a、IgG2b及びIgG3)を有することができる。免疫グロブリン、例えばIgG1はいくつかのアロタイプで存在し、これらは最大でいくつかのアミノ酸が互いに異なる。本明細書に開示された抗体は、通常知られたアイソタイプ、類型、亜型、又はアロタイプのいずれかから由来し得る。特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体はIgG1、IgG2、IgG3、又はIgG4亜型又はこれらの任意のハイブリッドである。特定の実施形態において、抗体はヒトIgG1亜型、ヒトIgG2亜型、ヒトIgG4亜型、又はヒトIgG2/IgG4亜型のものである。
【0050】
“抗体”は、例えば、自然発生及び非自然発生抗体;単クローン性及び多クローン性抗体;キメラ及びヒト化した抗体;ヒト及び非ヒト抗体、全体合成抗体;単鎖抗体;単一特異的抗体;多重特異的抗体(二重特異的抗体を含む);2本の重鎖と2本の軽鎖分子を含むテトラマー抗体;抗体軽鎖モノマー;抗体重鎖モノマー;抗体軽鎖ダイマ-;抗体重鎖ダイマ-;抗体軽鎖-抗体重鎖対;イントラボディー;ヘテロ共役結合抗体;1価抗体;単鎖抗体;ラクダ化(camelized)抗体;アフィボディー(affybodies);抗イディオタイプ(抗Id)抗体(例えば、抗抗Id抗体を含む)、及び十分に抗原結合可能な単一モノマー可変抗体ドメイン(例えば、VHドメイン又はVLドメイン)で構成された結合分子を含む単一ドメイン抗体(sdAb)を含む(Harmen M.M.and Haard H.J.Appl Microbiol Biotechnol.77(1):13-22(2007))。
【0051】
本明細書において用語“抗体の抗原結合部分”又は“抗体の抗原結合断片”とは、抗原(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する能力を保有した抗体の1つ以上の断片を指す。このような“断片”は、例えば、約8個~約1,500個のアミノ酸長、好適には約8個~約745個のアミノ酸長、より好適には約8個~約300個、約8個~約200個のアミノ酸長、又は約10個~約50個、又は100個のアミノ酸長である。抗体の抗原結合機能は全長(full-length)抗体の断片によって行われ得るということが明らかにされた。抗体、例えば本明細書に開示の抗FAM19A5抗体の“抗原結合部分”に含まれる結合断片の例は、(i)VL、VH、CL、及びCH1ドメインで構成された1価断片であるFab断片;(ii)ヒンジ領域において二硫化物ブリッジによって連結された2個のFab断片を含む2価断片であるF(ab’)2断片;(iii)VH及びCH1ドメインで構成されたFd断片;(iv)抗体の単一腕のVL及びVHドメインで構成されたFv断片、及び二硫化物-連結されたFvs(sdFv);(v)VHドメインで構成されたdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544-546);及び(vi)単離した相補性決定領域(CDR)又は(vii)合成リンカーによって選択的につながり得る2以上の単離したCDRの組合せを含む。また、Fv断片の2ドメインであるVLとVHは別個の遺伝子によってコードされるが、これらは合成リンカーによって、組換え方法を用いて、つながり得、これによってVLとVH領域が対をなして1価分子を形成した単一タンパク質鎖(単鎖Fv(scFv)という。)になり得る(例えば、Bird et al.,(1988)Science 242:423-426;及びHuston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883参照)。このような単鎖抗体もまた、抗体の“抗原結合部分”に含まれる。これらの抗体断片は当業者に公知の従来の技術によって得られ、断片は無損傷抗体と同じ方式で有用性に対してスクリーニングされる。抗原結合部分は組換えDNA技術によって、又は無損傷免疫グロブリンの酵素又は化学切断によって生成され得る。
【0052】
本明細書において用語“可変領域”又は“可変ドメイン”は当業界で通常同じ意味で使用される。可変領域は典型的に抗体の一部分、一般的に軽鎖又は重鎖の一部分、典型的に成熟した重鎖において約アミノ末端110~120個アミノ酸及び成熟した軽鎖において約90~115個アミノ酸を指し、抗体のうち、配列が広範囲に互いに異なり、特定抗原に対する特定抗体の結合及び特異性と関連して用いられる。配列変動性は相補性決定領域(CDR)と呼ばれる領域に集中し、可変ドメインにおいてより高度に保存された領域はフレームワーク領域(FR)と呼ばれる。
【0053】
特定メカニズムや理論に拘わらず、軽鎖及び重鎖のCDRは抗原と抗体の相互作用及び特異性を主に担当するものと推定される。特定の実施形態において、可変領域はヒト可変領域である。特定の実施形態において、可変領域は、齧歯類又はマウスCDRとヒトフレームワーク領域(FR)を含む。特定の実施形態において、可変領域は霊長類(例えば、非ヒト霊長類)可変領域である。特定の実施形態において、可変領域は齧歯類又はマウスCDRと霊長類(例えば、非ヒト霊長類)フレームワーク領域(FR)を含む。
【0054】
本明細書において、用語“重鎖”(HC)は、抗体と関連して用いられた場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、任意の異なるタイプ、例えば、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)を指すことができ、これらはそれぞれIgGの亜型、例えばIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含み、抗体のIgA、IgD、IgE、IgG及びIgM類型を発生させる。
【0055】
本明細書において、用語“軽鎖”(LC)は、抗体と関連して用いられた場合、定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて任意の互いに異なるタイプ、例えばカッパ(κ)及びラムダ(λ)を指すことができる。軽鎖アミノ酸配列は当業界に公知されている。特定の実施形態において、軽鎖はヒト軽鎖である。
【0056】
用語“VL”及び“VLドメイン”は同じ意味で使用され、抗体の軽鎖可変領域のことを指す。
【0057】
用語“VH”及び“VHドメイン”は同じ意味で使用され、抗体の重鎖可変領域のことを指す。
【0058】
本明細書において、用語“定常領域”又は“定常ドメイン”は同じ意味で使用可能であり、当業界における通常の意味を有する。定常ドメインは抗体部分であり、例えば抗体と抗原の結合には直接関係しないが、Fc受容体との相互作用のような様々なエフェクター機能を示し得る軽鎖及び/又は重鎖のカルボキシ末端部分である。免疫グロブリン分子の定常領域は一般に、免疫グロブリン可変ドメインに比べてより保存されたアミノ酸配列を有する。
【0059】
“Fc領域”(断片決定化可能な領域)又は“Fcドメイン”又は“Fc”は、免疫システムの様々な細胞(例えば、エフェクター細胞)上に位置したFc受容体又は伝統補体システムの第1成分(C1q)との結合を含み、宿主組織又は因子と免疫グロブリンの結合を媒介する抗体の重鎖のC末端領域をいう。したがって、Fc領域は、第1定常領域免疫グロブリンドメイン(例えばCH1又はCL)以外の抗体の定常領域を含む。IgG、IgA及びIgD抗体イソタイプにおいて、Fc領域は、抗体の両重鎖の第2(CH2)及び第3(CH3)定常ドメインから由来した2個の同じタンパク質断片を含む;IgM及びIgE Fc領域は、各ポリペプチド鎖に3個の重鎖定常ドメイン(CHドメイン2~4)を含む。IgGの場合、Fc領域は、免疫グロブリンドメインCγ2及びCγ3、並びにCγ1とCγ2との間のヒンジを含む。免疫グロブリン重鎖のFc領域の境界は様々であるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は一般に、位置C226又はP230にあるアミノ酸残基(又は、これら両アミノ酸間のアミノ酸)から重鎖のカルボキシ末端まで伸びたものに限定され、ここで、ナンバリングはKabatにおけるようなEUインデックスに従う。ヒトIgG Fc領域のCH2ドメインは、約アミノ酸231から約アミノ酸340まで延長され、CH3ドメインはFc領域においてCmドメインのC末端側に位置するが、これはIgGの約アミノ酸341から約アミノ酸447まで延長される。Fc領域は、任意のアロタイプ変異体を含む自生配列Fc、又は変異体Fc(例えば、非自然発生Fc)であり得る。また、Fcは単離した状態の領域を指すか、或いは“Fc融合タンパク質”(例えば、抗体又は免疫癒着(immunoadhesion))とも呼ばれる、“Fc領域を含む結合タンパク質”のような含Fcタンパク質ポリペプチドと関係している領域のことを指す。
【0060】
“自生配列Fc領域”又は“自生配列Fc”は自然で発見されたFc領域のアミノ酸配列と同じアミノ酸配列を含む。自生配列ヒトFc領域は、自生配列ヒトIgG1Fc領域;自生配列ヒトIgG2Fc領域;自生配列ヒトIgG3Fc領域;及び自生配列ヒトIgG4Fc領域だけでなく、これらの自然発生変異体を含む。自生配列FcはFeの様々なアロタイプを含む(例えば、Jefferis et al.,(2009)mAbs 1:1;Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)
“Fc受容体”又は“FcR”は、免疫グロブリンのFc領域に結合する受容体である。IgG抗体に結合するFcRはFcγRファミリーの受容体を含み、これらの受容体の対立形質変異体及び他の方式でスプライシングされた形態を含む。FcγRファミリーは、3個の活性化受容体(マウスにおいてFcγRI、FcγRIII、及びFcγRIV;ヒトにおいてFcγRIA、FcγRIIA、及びFcγRIIIA)と一つの抑制受容体(FcγRIIB)で構成される。ヒトIgG1は大部分のヒトFc受容体と結合し、最も強いFcエフェクター機能を導出する。ヒトIgG1が結合する活性化Fc受容体の種類に対してはマウスIgG2aと同等であると見なされる。一方、ヒトIgG4は最小限のFcエフェクター機能を導出する(Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。
【0061】
定常領域は1つ以上のエフェクター機能を除去するために、例えば組換え技術によって操作され得る。“エフェクター機能”は、抗体Fc領域とFc受容体又はリガンドの相互作用、又はこれに起因する生化学的事例(event)のことを指す。例示的な“エフェクター機能”は、C1q結合、補体依存性細胞毒性(CDC)、Fc受容体結合、FcγR媒介エフェクター機能、例えばADCC及び抗体依存性細胞媒介食作用(phagocytosis)(ADCP)、及び細胞表面受容体(例えば、B細胞受容体;BCR)の下向き調節を含む。このようなエフェクター機能は一般に、Fc領域が結合ドメイン(例えば、抗体可変ドメイン)と組み合わせられることを必要とする。したがって、用語“Fc機能のない定常領域”は、Fc領域によって媒介された1つ以上のエフェクター機能が減少した或いはない定常領域を含む。
【0062】
抗体のエフェクター機能は個別の接近法によって減少又は回避され得る。抗体のエフェクター機能は、Fc領域を欠如した抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、単鎖Fv(scFv)、又はモノマーVH又はVLドメインで構成されたsdAb)を用いて減少又は回避し得る。代案として、Fc領域の他の価値ある属性(例えば、延長された半減期及びヘテロダイマ-化)は保有しながら抗体のエフェクター機能を減少させるために、いわゆる無グリコシル化(aglycosylated)抗体がFc領域で特定残基に連結された糖を除去することによって生成され得る。無グリコシル化抗体は、例えば、糖の付着した残基を欠失又は変更することによって、糖を酵素的に除去することによって、グリコシル化抑制剤の存在の下に培養された細胞で抗体を生成することによって、又はタンパク質をグリコシル化できない細胞(例えば、バクテリア宿主細胞)で抗体を発現することによって生成され得る(例えば、米国特許公開第20120100140号参照)。他の接近法は、エフェクター機能の減少したIgG亜型からのFc領域を利用することであるが、例えば、IgG2及びIgG4抗体はIgG1及びIgG3に比べてより低いレベルのFcエフェクター機能を有することを特徴とする。Fc部分のCH2ドメインにおいてヒンジ領域に最も近接している残基が抗体のエフェクター機能を担当し、それは先天免疫システムのエフェクター細胞上でC1q(補体)及びIgG-Fc受容体(FcγR)に対して相当重なった結合部位を含有する(Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開))。したがって、Fcエフェクター機能が減少した又はない抗体は、例えば、IgG4イソタイプのIgG抗体からのCH2ドメインとIgG1イソタイプのIgG抗体からのCH3ドメインを含むキメラFc領域、又はIgG2からのヒンジ領域とIgG4からのCH2領域を含むキメラFc領域(例えば、Lau C et al.,J Immunol.191:4769-4777(2013)参照)、又は変更されたFcエフェクター機能、例えばFc機能が減少した又はない突然変異を有するFc領域を生成することによって製造され得る。突然変異を有するかかるFc領域は、当業界に公知されている。例えば、米国特許公開第20120100140号とそこに引用された米国出願及びPCT出願、及びAn et al.,mAbs 1:6,572-579(2009)を参照し、これらの開示はその全体が本明細書に参照として含まれる。
【0063】
“ヒンジ”、“ヒンジドメイン”又は“ヒンジ領域”又は“抗体ヒンジ領域”は、CH1ドメインをCH2ドメインと結合し、ヒンジの上部、中央、及び下部部分を含む重鎖定常領域のドメインのことを指す(Roux et al.,J.Immunol 1998 161:4083)。ヒンジは、抗体の結合領域とエフェクター領域間に可撓性のレベルを変化させ、また2本の重鎖定常領域間に分子間二硫化物結合のための部位を提供する。本明細書に開示されたヒンジは、全てのIgGイソタイプに対してGlu216から始まってGly237で終わる(Roux et al.,1998 J Immunol 161:4083)。野生型IgG1、IgG2、IgG3及びIgG4ヒンジの配列が当業界に公知されている(例えば、Kabat E.A., et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242;Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。
【0064】
用語“CH1ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいて可変ドメインとヒンジを連結する重鎖定常領域のことを指す。本明細書に開示されたCH1ドメインはA118から始まってV215で終わる。用語“CH1ドメイン”は、野生型CH1ドメインの他に、その自然的に存在する変異体(例えば、アロタイプ)も含む。(野生型及びアロタイプを含む)IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のCH1ドメイン配列は当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上)及びVidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。例示的なCH1ドメインは、抗体の生物学的活性、例えば半減期を変形する突然変異を有するCH1ドメインを含み、これらは、例えば米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許及び公報とPCT公報に開示される。
【0065】
用語“CH2ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいてヒンジとCH3ドメインを連結する重鎖定常領域のことを指す。本明細書に開示されたCH2ドメインはP238から始まってK340で終わる。用語“CH2ドメイン”は、野生型CH2ドメインの他に、その自然的に存在する変異体(例えば、アロタイプ)も含む。(野生型及びアロタイプを含む)IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のCH2ドメイン配列は当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上)及びVidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。例示的なCH2ドメインは、抗体の生物学的活性、例えば半減期及び/又は減少したFcエフェクター機能を変形する突然変異を有するCH2ドメインを含み、これらは、例えば米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許及び公報とPCT公報に開示される。
【0066】
用語“CH3ドメイン”は、重鎖定常ドメインにおいてCH2ドメインに対してC末端である重鎖定常領域のことを指す。本明細書に開示されたCH3ドメインはG341から始まってK447で終わる。用語“CH3ドメイン”は野生型CH3ドメインの他に、その自然的に存在する変異体(例えば、アロタイプ)も含む。(野生型及びアロタイプを含む)IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のCH3ドメイン配列は当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上)及びVidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開)参照)。例示的なCH3ドメインは、抗体の生物学的活性、例えば半減期を変形する突然変異を有するCH3ドメインを含み、これらは、例えば米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許及び公報とPCT公報に開示される。
【0067】
本明細書において用語“アイソタイプ”は、重鎖定常領域遺伝子によって暗号化される抗体類型(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgM、IgA1、IgA2、IgD、及びIgE抗体)を指す。
【0068】
用語“アロタイプ”は、いくつかのアミノ酸が異なる特定のアイソタイプグループ内で自然発生した変異体のことを指す(例えば、Jefferis et al.,(2009)mAbs 1:1参照)。本明細書に開示された抗体は任意のアロタイプを有することができる。IgG1、IgG2、IgG3、及びIgG4のアロタイプは当業界に公知されている(例えば、Kabat EA et al.,(1991)(同上);Vidarsson G et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日オンライン公開);及びLefranc MP,mAbs 1:4,1-7(2009)参照)。
【0069】
用語“抗原を認識する抗体”及び“抗原に特異的な抗体”は、用語“抗原に特異的に結合する抗体”と共に本明細書において同じ意味で使われる。
【0070】
本明細書において、用語“単離した抗体”は、異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体を指す。例えば、FAM19A5に特異的に結合する単離した抗体は、FAM19A5以外の抗原に特異的に結合する抗体が実質的に存在しない。しかし、FAM19A5のエピトープに特異的に結合する単離した抗体は、異なる種からの他のFAM19A5タンパク質に対して交差反応性を有することができる。
【0071】
“結合親和性”は一般に、分子(例えば、抗体)の単一結合部位とその結合パートナー(例えば、抗原)間の非共有相互作用の全体の合計強度を指す。特に言及がない限り、用語“結合親和性”は、結合対のメンバー(例えば、抗体と抗原)間の1:1相互作用を反映する固有の結合親和性のことを指す。パートナーYに対する分子Xの親和性は一般に解離定数(KD)によって表示され得る。親和性は、制限されないが、平衡解離定数(KD)、及び平衡結合定数(KA)を含む、当業界に公知の多数の方式で測定及び/又は表示され得る。KDは、koff/konの商から計算され、モル濃度(M)で表示され、KAはkon/koffの商から計算される。konは、例えば抗原に対する抗体の結合速度定数を指し、koffは、例えば、抗原に対する抗体の解離速度定数を指す。kon及びkoffは免疫分析(例えば、酵素結合免疫吸着分析(ELISA))、BIACORE(登録商標)又は力学的排除分析(KinExA)のような、当業者に公知の技術によって決定され得る。
【0072】
本明細書において、用語“特異的に結合する”、“特異的に認識する”、“特異的結合”、“選択的結合”及び“選択的に結合する”とは、抗体と関連して類似の用語であり、抗原(例えば、エピトープ又は免疫複合体)に結合する分子(例えば、抗体)をいい、このような結合は当業者にとって理解される通りである。抗原に特異的に結合する分子は、例えば、免疫分析、BIACORE(登録商標)KinExA 3000機器(Sapidyne Instruments,Boise,ID)、又は当業界に公知の他の分析によって決定されたとき、通常、より低い親和性で他のペプチド又はポリペプチドに結合し得る。特定の実施形態において、抗原に特異的に結合する分子は、この分子が他の抗原に結合する時のKAに比べて少なくとも2ログ(log)、2.5ログ、3ログ、4ログ又はそれ以上のKAでその抗原に結合する。
【0073】
抗体は典型的に10-5~10-11M以下の解離定数(KD)によって反映される、高い親和性で同族抗原に特異的に結合する。約10-4Mを超えるKDは、通常、非特異的結合を示すと見なされる。抗原と“特異的に結合する”抗体は、高い親和性で抗原及び実質的に同じ抗原に結合する抗体のことを指し、これは、例えば定められた抗原を用いて免疫分析(例えば、ELISA)又はBIACORE 2000機器で表面プラズモン共鳴(SPR)技術によって決定された時、10-7M以下、好ましくは10-8M以下、より好ましくは10-9M以下、及び最も好ましくは10-8M~10-10M以下のKDを有するものを意味し、これは、関連していない抗原には高い親和性で結合しない。
【0074】
本明細書において、用語“抗原”は、任意の天然又は合成免疫原性物質、例えばタンパク質、ペプチド又はハプテンのことを指す。抗原はFAM19A5又はその断片であり得る。
【0075】
本明細書において、“エピトープ”は当業界の用語であり、抗体が特異的に結合し得る抗原の局所化された領域のことを指す。エピトープは、例えばポリペプチドの連続(contiguous)アミノ酸(線形又は連続エピトープ)であり得るか、又はエピトープは、例えばポリペプチド又はポリペプチドの2以上の非連続領域が合わせられたもの(立体形態的、非線形、不連続、又は非連続エピトープ)であり得る。連続アミノ酸から形成されたエピトープは、いつもそうであるわけではないが、典型的に変性溶媒に露出時に保有され、3次フォルディングによって形成されたエピトープは典型的に変性溶媒で処理時に喪失される。エピトープは典型的に独特の空間的立体形態において少なくとも3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、又は20個のアミノ酸を含む。エピトープが与えられた抗体によって結合したものを決定する方法(すなわち、エピトープマッピング)が当業界に公知されており、これは、例えば免疫ブロット及び免疫沈殿分析を含み、例えばFAM19A5からの重複又は連続ペプチドが与えられた抗体(例えば、抗FAM19A5抗体)との反応性に対して試験される。エピトープの空間的立体形態を決定する方法は、当業界の技術及び本明細書に開示されたものを含み、例えば、X線結晶学、2次元核磁気共鳴及びHDX-MSを含む(例えば、Epitope Mapping Protocols in Methods in Molecular Biology,Vol 66,G.E.Morris,Ed.(1996)参照)。
【0076】
特定の実施形態において、抗体が結合したエピトープは、例えばNMR分光法、X線回折結晶学研究、ELISA分析、質量分光法と結合した水素/重水素交換(例えば、液体クロマトグラフィー電子噴霧質量分光法)、アレイ基盤オリゴ-ペプチドスキャニング分析、及び/又は突然変異誘発マッピング(例えば、部位指定突然変異誘発マッピング)によって決定され得る。X線結晶学の場合、結晶化は当業界に公知の方法のいずれかを用いて達成され得る(例えば、Giege R et al.,(1994)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 50(Pt4):339-350;McPherson A(1990)Eur J Biochem 189:1-23;Chayen NE(1997)Structure 5:1269-1274;McPherson A(1976)J Biol Chem 251:6300-6303)。抗体:抗原結晶は、公知のX線回折技術を用いて研究でき、X-PLOR(Yale University,1992,Molecular Simulations,Inc.によって配布;例えば、Meth Enzymol(1985)volumes 114 & 115,eds Wyckoff HW et al.,;米国特許公開第2004/0014194号参照)、及びBUSTER(Bricogne G(1993)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 49(Pt1):37-60;Bricogne G(1997)Meth Enzymol 276A:361-423,ed Carter CW;Roversi P et al.,(2000)Acta Crystallogr D Biol Crystallogr 56(Pt 10):1316-1323)のようなコンピュータソフトウェアを用いて研究できる。突然変異誘発マッピング研究は、当業者に公知の任意の方法で行うことができる。アラニンスキャニング突然変異誘発技術を含む突然変異誘発技術に関する説明は、例えばChampe M et al.,(1995)J Biol Chem 270:1388-1394及びCunningham BC & Wells JA(1989)Science 244:1081-1085を参照する。
【0077】
用語“エピトープマッピング”は、抗体-抗原認識に対する分子決定基(determinant)の確認過程を指す。
【0078】
2つ以上の抗体と関連して用語“同じエピトープに結合する”とは、与えられた方法によって決定された時、抗体がアミノ酸残基の同じセグメントに結合するということを意味する。抗体が本明細書に開示の抗体と“FAM19A5上の同じエピトープ”に結合するか否かを決定する技術は、エピトープマッピング方法、例えば、エピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体の結晶のX線分析及び水素/重水素交換質量分光法(HDX-MS)を含む。他の方法は、抗体と抗原断片又は抗原の突然変異された変異体の結合をモニタリングし、ここで、抗原配列内でアミノ酸残基の変形による結合の損失が主にエピトープ成分の表示として見なされる。これに加えて、エピトープマッピング用コンピュータ組合せ方法が用いられてもよい。これらの方法は組合せファージディスプレイペプチドライブラリーから特定の短いペプチドを親和性分離できる関心抗体の能力に依存する。同じVH及びVL又は同じCDR1、2及び3配列を有する抗体は同じエピトープに結合すると予想される。
【0079】
“標的との結合のために他の抗体と競合する”抗体は、残り抗体と標的の結合を(部分的に又は完全に)抑制する抗体を指す。2つの抗体が標的との結合に対して互いに競合するか否か、すなわち、一つの抗体がもう一つの抗体と標的の結合を抑制するか否かと抑制する程度は、公知の競合実験によって決定され得る。特定の実施形態において、抗体は他の抗体と標的の結合に対して競合し、この結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%まで抑制する。抑制又は競合のレベルは、抗体が“遮断抗体”(すなわち、標的とまずインキュベーションされた低温抗体)であるか否かによって変わり得る。競合分析は、例えば、Ed Harlow and David Lane,Cold Spring Harb Protoc;2006;doi:101101/pdb.prot 4277又はEd Harlow and David Laneによる“Using Antibodies”(Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,USA1999)の第11章に説明された通りに行われ得る。競合抗体は、同じエピトープ、重複エピトープ又は隣接エピトープ(例えば、立体障害によって証明されたとおり)に結合する。
【0080】
他の競合結合分析は、固体相直接又は間接放射性免疫分析(RIA)、固体相直接又は間接酵素免疫分析(EIA)、サンドウィッチ競合分析(Stahli et al.,Methods in Enzymology 9:242(1983)参照);固体相直接ビオチン-アビジンEIA(Kirkland et al.,J.Immunol.137:3614(1986)参照);固体相直接標識化分析、固体相直接標識化サンドウィッチ分析(Harlow and Lane,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Press(1988)参照);1-125ラベルを使用した固体相直接標識されたRIA(Morel et al.,Mol Immunol.25(1):7(1988)参照);固体相直接ビオチン-アビジンEIA(Cheung et al.,Virology 176:546(1990));及び直接標識化RIA(Moldenhauer et al.,Scand J Immunol.32:77(1990))を含む。
【0081】
“二重特異的”又は“二重機能性抗体”は、2つの異なる重鎖/軽鎖対と2つの異なる結合部位を有する人工ハイブリッド抗体である。二重特異的抗体はハイブリドーマの融合又はFab’断片の連結を含む様々な方法によって生成され得る(例えば、Songsivilai & Lachmann,Clin.Exp.Immunol.79:315-321(1990);Kostelny et al,J.Immunol.148,1547-1553(1992)を参照)。
【0082】
本明細書において、用語“単クローン性抗体”は、特定エピトープに対して単一結合特異性及び親和性を示す抗体又は全ての抗体が特定エピトープに対して単一結合特異性及び親和性を示す抗体の組成物を指す。したがって、用語“ヒト単クローン性抗体”は、単一結合特異性を示し、ヒトジャームライン(germline)免疫グロブリン配列から由来した可変及び選択的定常領域を有する抗体又は抗体組成物をいう。一部の実施形態において、ヒト単クローン性抗体は、遺伝子導入(transgenic)非ヒト動物、例えば不滅化細胞に融合されたヒト重鎖導入遺伝子と軽鎖導入遺伝子を含むゲノムを有する、遺伝子導入マウスから得られたB細胞を含むハイブリドーマによって生成される。
【0083】
本明細書において、用語“組換えヒト抗体”は、(a)ヒト免疫グロブリン遺伝子に対して遺伝子導入或いは染色体導入(transchromosomal)された動物(例えば、マウス)から単離した抗体又はこれによって製造されたハイブリドーマ、(b)抗体を発現するように形質転換された宿主細胞から、例えばトランスフェクトーマ(transfectoma)から単離した抗体、(c)組換え、組合せヒト抗体ライブラリーから単離した抗体、及び(d)他のDNA配列に対するヒト免疫グロブリン遺伝子配列をスプライシングを伴う任意の他の手段によって製造、発現、生成又は単離した抗体のような、組換え手段によって製造、発現、生成又は単離した全てのヒト抗体を含む。このような組換えヒト抗体はジャームライン遺伝子によって暗号化されるが、例えば抗体成熟化の間に発生する後続再配列及び突然変異を含む特定のヒトジャームライン免疫グロブリン配列を利用する可変及び定常領域を含む。当業界に公知のとおり(例えば、Lonberg(2005)Nature Biotech.23(9):1117-1125参照)、可変領域は、外来抗原に対して特異的な抗体を形成するように再配列した様々な遺伝子によって暗号化された、抗原結合ドメインを含有する。再配列に加えて、可変領域は、外来抗原に対する抗体の親和性を増加させるために多数の単一アミノ酸変化(体細胞突然変異又は超突然変異という。)によってさらに変形され得る。定常領域は抗原に対する追加の反応(すなわちアイソタイプスイッチ)で変わるだろう。したがって、抗原に反応して軽鎖及び重鎖免疫グロブリンポリペプチドを暗号化する再配列され体細胞突然変異された核酸分子は元来の核酸分子と配列同一性を有することができないが、実質的に同一又は類似であろう(すなわち、少なくとも80%同一の性を有する)。
【0084】
用語“ヒト抗体(HuMAb)”は、フレームワークとCDR領域が両方も、ヒトジャームライン免疫グロブリン配列から由来した可変領域を有する抗体を指す。また、この抗体が定常領域を含有すると、定常領域もヒトジャームライン免疫グロブリン配列から由来する。本明細書に開示された抗体はヒトジャームライン免疫グロブリン配列(例えば、試験管内無作為又は部位特定突然変異誘発によって又は生体内体細胞突然変異によって導入された突然変異)によって暗号化されないアミノ酸残基を含むことができる。しかし、本明細書に開示された“ヒト抗体”は、マウスのような他の哺乳類種のジャームラインから由来したCDR配列がヒトフレームワーク配列に結び付けられた抗体は含まない。用語“ヒト抗体”と“完全なヒト抗体”は同じ意味で使われる。
【0085】
用語“ヒト化した抗体”は、非ヒト抗体のCDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分又は全部がヒト免疫グロブリンから由来した相応するアミノ酸に置換された抗体を指す。抗体のヒト化した形態の一部の実施形態において、CDRドメイン外のアミノ酸の一部、大部分又は全部がヒト免疫グロブリンからのアミノ酸に置換され、1以上のCDR領域内のアミノ酸の一部、大部分又は全部はそのまま残る。アミノ酸の小さな添加、欠失、挿入、置換又は変形は、抗体が特定抗原に結合する能力をなくさない限り許容される。“ヒト化した抗体”は元来の抗体と類似の抗原特異性を保有する。
【0086】
本明細書において用語“脱免疫化された”又は“脱免疫化”とは、例えばヒト対象においてその免疫原性を減少させるために抗体又はその抗原結合部分が変形される過程のことを指す。例えば、元来の抗体からの重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)配列を分析することができ、そしてヒトT細胞エピトープ“マップ”は相補性決定領域(CDR)及び配列内の他の主要残基と関連してエピトープの位置を示す各V領域から生成され得る。T細胞エピトープマップから個別T細胞エピトープは、最終抗体の活性変更危険の低い代案的なアミノ酸置換を確認するために分析される。アミノ酸置換の組合せを含む様々な代案のVH及びVL配列が設計され、これらの配列は、本明細書に後述する診断及び治療方法に用いるための範囲のFAM19A5特異的抗体又はその抗原結合部分に導入され、次いでそれらは機能に対する試験をする。次に、変形されたV及びヒトC領域を含む完全な重鎖及び軽鎖遺伝子を発現ベクターにクローニングし、後続プラスミドを全抗体の生成のために細胞株に導入する。次に、抗体を適切な生化学的及び生物学的分析で比較し、最適の変異体を確認する。本明細書に記載された方法又は当業界に公知の任意の他の方法、例えばWO98/52976又はWO00/34317を用いて抗体を脱免疫化させることができる。
【0087】
“キメラ抗体”は、一つの種から可変領域が由来し、他の種から定常領域が由来した抗体、例えば、マウス抗体から可変領域が由来し、ヒト抗体から定常領域が由来した抗体のことを指す。
【0088】
本明細書で用語“交差反応する”とは、異なる種からのFAM19A5に結合する本明細書に開示された抗体の能力をいう。例えば、ヒトFAM19A5に結合する本明細書に開示された抗体はまた、他の種のFAM19A5(例えば、マウスFAM19A5)にも結合可能である。交差反応性は結合分析(例えば、SPR、ELISA)で精製された抗原との特異的反応性を検出することによって又はFAM19A5を生理学的に発現する細胞との結合、又は機能的相互作用を検出することによって測定され得る。交差反応性を決定する方法は、本明細書に開示の標準結合分析、例えば、BIACORE(登録商標)2000 SPR機器(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を使用したBIACORE(登録商標)表面プラズモン共鳴(SPR)分析、又は流細胞計数(flow cytometric)技術を含む。
【0089】
用語“自然発生”は、自然で発見可能であることを指す。例えば、自然の出処から分離可能であり、実験室で人間によって意図的に変形されない有機体(ウイルスを含む。)に存在するポリペプチド又はポリヌクレオチド配列は自然発生的である。
【0090】
用語“ポリペプチド”は、少なくとも2つの連続連結されたアミノ酸残基を含む鎖のことを指し、鎖の長さに上限はない。タンパク質における1つ以上のアミノ酸残基は、制限されないが、グリコシル化、リン酸化又は二硫化物結合形成のような変形を含有し得る。“タンパク質”は、1つ以上のポリペプチドを含むことができる。
【0091】
本明細書において用語“核酸分子”は、DNA分子及びRNA分子を含む。核酸分子は一本鎖又は二本鎖であり得、cDNAであり得る。
【0092】
本明細書において用語“ベクター”は、それが連結された他の核酸を輸送できる核酸分子のことを指す。ベクターの一種類は“プラスミド”であり、これは、追加のDNAセグメントがライゲーション(ligation)され得る円形の二本鎖DNAループのことを指す。ベクターの他の種類は、追加のDNAセグメントがウイルスゲノムにライゲーションされ得るウイルスベクターである。特定のベクター(例えば、バクテリア複製起源を有するバクテリアベクター及びエピゾーム哺乳類ベクター)は、それらが導入された宿主細胞で自己複製可能である。他のベクター(例えば、非エピゾーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に導入時に宿主細胞のゲノムに統合可能であり、これによって宿主ゲノムと共に複製される。また、特定のベクターは、それらが作動可能に連結された遺伝子の発現を指示することができる。このようなベクターは本明細書において“組換え発現ベクター”(又は、簡単に“発現ベクター”)と言及される。一般に、組換えDNA技術において有用性を有する発現ベクターは主にプラスミドの形態である。本明細書において、“プラスミド”と“ベクター”は、プラスミドがベクターの最も多く用いられる形態であることから、同じ意味で使用可能である。しかし、ウイルス(例えば、複製結合レトロウイルス、アデノウイルス及びアデノ関連ウイルス)ベクターのような他の形態の発現ベクターも含まれ、これらは同等の機能を果たす。
【0093】
本明細書において、用語“組換え宿主細胞”(又は、簡単に“宿主細胞”)は、細胞に自然的に存在しない核酸を含む細胞のことを指し、組換え発現ベクターが導入された細胞であり得る。かかる用語は、特定の該当細胞の他にそれら細胞の子孫も言及するものとして理解されるべきである。突然変異や環境的影響によってつながった世代では特定の変形が起こり得るので、このような子孫は実際に母細胞と同一であるとは言えなくとも、相変らず用語“宿主細胞”の範囲内に含まれる。
【0094】
本明細書において、用語“連結された”とは、2つ以上の分子のアソシエーションをいう。連結は、共有結合又は非共有結合であり得る。連結はまた、遺伝子連結(すなわち、組換え的に融合される。)であり得る。このような連結は化学的共役結合(conjugation)及び組換えタンパク質生成のような当業界に公知の様々な技術を用いて達成され得る。
【0095】
本明細書において、用語“投与”は、当業者に公知の様々な方法及び伝達システム(delivery systems)のいずれかを用いて、治療剤又は治療剤を含む組成物を対象に物理的に注入することを指す。本明細書に開示された抗体の好ましい投与経路は、静脈内、腹腔内、筋肉内、皮下、脊椎又は他の非経口投与経路、例えば、注射又は注入によるものを含む。本明細書において、用語“非経口投与”とは、一般に注射による、腸(enteral)及び局部的(topical)投与を除く他の投与方式を意味し、制限されないが、静脈内、腹腔内、筋肉内、動脈内、脊椎腔内、リンパ内、病巣内、嚢内(intracapsular)、眼窩内(intraorbital)、心臓内、皮内(intradermal)、気管支経(transtracheal)、皮下(subcutaneous)、表皮下、関節内、皮膜下、脊髄腔内、硬膜外、及び胸骨内注射及び注入の他に、生体内電気穿孔も含む。代案として、本明細書に開示された抗体は、非経口的ではない経路を通じて、例えば局部的、上皮又は粘膜投与経路を通じて、例えば鼻内、経口、膣、直腸、舌下又は局部的経路を通じて投与され得る。また、投与は、例えば、1回、複数回、及び/又は1回以上の延長された期間にわたって行われ得る。
【0096】
本明細書において、用語“治療する(treat)”、“治療する(treating)”及び“治療(treatment)”は、疾患と関連した症状、合併症、病態又は生化学的指標の進行、発生、深刻性又は再発を反転、改善、緩和、抑制又は遅延させる目的で対象に対して行われた任意の種類の介入又は過程、若しくは対象に活性剤を投与することをいう。治療は、疾患を持つ対象又は疾患を持たない対象(例えば、予防のために)に対して行われ得る。
【0097】
本明細書において、用語“対象”は、任意のヒト又は非ヒト動物を含む。用語“非ヒト動物”は、全ての脊椎動物、例えば哺乳類及び非哺乳類、例えば非ヒト霊長類、ヤギ、イヌ、ウシ、ニワトリ、両棲類、爬虫類などを含む。
【0098】
本明細書において用語“神経膠症の発病(onset)”又は“反応性神経膠症の発病”は、神経膠症の始まり又は開始を含む。神経膠症は、例えば、外傷、脳脊髓損傷、脳腫瘍、感染、虚血(ischemia)、脳卒中、自己免疫反応、及び/又は神経退行性疾患による損傷又は傷害に応じた、中枢神経系における神経膠細胞の非特異性反応変化であり、星状細胞、小膠細胞、希突起膠細胞(oligodendrotcytes)を含む様々な類型の神経膠細胞の増殖又は肥大(hypertrophy)を含む。神経膠症の発病は傷跡の形成につながることがあり、これは傷ついたり損傷したCNSの部分で軸索再生を抑制する。神経膠症発病の有害な影響は、ニューロンに取り返しのつかない又は永久的な損傷及び/又は周辺ニューロンの回復を防止することを含む。したがって、用語“神経膠症の発病遅延”及び“反応性神経膠症の発病遅延”は、神経膠症の始まり又は開始及びこれと関連したCNSの有害効果を抑制、鈍化、阻止又は予防することを含む。
【0099】
本明細書において用語“反応性星状細胞の過度な増殖”は、例えば、CNS傷害、外傷、損傷、脳脊髓損傷、脳腫瘍、感染、虚血、脳卒中、自己免疫反応及び/又は神経退行性疾患から近くのニューロンの破壊による星状細胞数の異常増加を含む。反応性星状細胞の過度な増殖は、傷跡の形成を含めてCNSに有害な影響を与えることがあるが、これは、負傷又は損傷したCNSの一部における軸索再生、炎症の悪化、反応性酸素種の神経毒性レベルの生成及び放出、潜在的な興奮毒性グルタメートの放出、発作発生(seizure genesis)に対する潜在的寄与、血液-脳障壁機能の損傷(compromise)、外傷と脳卒中の間に細胞毒性浮腫、星状細胞の慢性サイトカイン活性化が慢性疼痛に寄与する可能性、及びCNS損傷後の2次変性を抑制する。Sofroniew,Michael V.(2009)Trends in Neurosciences,32(12):638-47;McGraw,J.et al.,(2001)Journal of Neuroscience Research 63(2):109-15;及びSofroniew,M.V.(2005)The Neuroscientist 11(5):400-7。したがって、用語“反応性星状細胞の過度な増殖抑制”は、反応性星状細胞の過度又は異常増殖及びこれに関連しているCNSの有害な影響を抑制、鈍化、低下、制限又は防止することを含む。
【0100】
本明細書において用語“コンドロイチン硫酸プロテオグリカン”は、タンパク質コア及びコンドロイチン硫酸で構成されたプロテオグリカンを含む。CSPGとも知られたコンドロイチン硫酸プロテオグリカンは、発達及び成体CNSにわたって広範囲に発現する細胞外マトリックス分子である。CSGPは神経発達及び膠細胞傷跡形成に重要な役割を果たし、CNSにおいて損傷後軸索再生を抑制する。知られたCSPGは、アグレカン(CSPG1)、ベルシカン(CSPG2)、ニューロカン(CSPG3)、CSPG4(又はニューロン膠細胞抗原2(NG2))、CSPG5、SMC3(CSPG6、染色体3の構造的維持)、ブレビカン(CSPG7)及びCD44(CSPG8、分化44のクラスター)、ホスファカンニューロカン(CSPG3)を含む。Rhodes,K.E.及びFawcett,J.W.(2004)Journal of Anatom.204(1):33-48。したがって、用語“コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現減少”は、1つ以上のCSGPのレベル下落、抑制、減少、又は1つ以上のCSGPの活性減少又は不活性化を含む。特定の実施形態において、前記用語は、ニューロカン、NG2又はこれら両方のレベルを下落、抑制、減少させたり、ニューロカン、NG2又はこれら両方の活性を減少させたり不活性化させることを含む。
【0101】
本明細書において用語“ニューロン”は、電気的及び化学的信号を通じて情報を処理し伝送する電気的励起可能な細胞を含む。ニューロンはCNSの脳及び脊髄及び末梢神経系(PNS)の神経節(spinal cord)の主要構成要素であり、互いに連結されて神経ネットワークを形成することができる。典型的なニューロンは、細胞体(ソーマ)、樹状突起(dendrite)及び軸索で構成される。ニューロンのソーマ(細胞体)は核を含有する。ニューロンの樹状突起は、ニューロンに対する大部分の入力が発生する多くの枝を有する細胞延長である軸索は、ソーマから延長されるより微細なケーブルのような突起であり、ソーマから神経信号を伝達し、特定類型の情報をソーマに戻す。用語“ニューロンの再成長促進”は、好ましくは損傷又は傷害後にニューロンを刺激、促進、増加又は活性化させることを含む。
【0102】
本明細書において用語“c-fos”は、神経伝達物質の刺激によって速く誘導される原核生物c-fosを含む。c-fosは、マウス及びヒトを含む多数の種に存在する。c-fos遺伝子及びタンパク質は公知であり、特性化されている。Curran,T,The c-fos proto-oncogene,pp307-327(The Oncogene Handbook,Reddy EP et al.,(eds.)Elsevier)(1988)参照。c-fosの発現は、当業界に公知の方法、例えばノーザンブロット、定量的PCR又は免疫組織化学によって決定され得る。用語“c-fosの発現増加”は、c-fos mRNA、c-fosタンパク質又はc-fosタンパク質活性レベルを増加させることを含む。
【0103】
本明細書において用語“pERK”は、リン酸化された細胞外信号調節キナーゼを含む。細胞外信号調節キナーゼ又はERKは、ERK1及びERK2を含み、分裂促進因子活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)ファミリーのメンバーである。ERKはそれの上流キナーゼによってリン酸化によって活性化されてpERKを形成し、これは、次いで下流標的を活性化させる。ERKは、学習及び記憶と疼痛過敏に基づく神経及びシナプス塑性に関与する。Ji R.R.et al.,Nat Neurosci(1999)2:1114-1119。ERK遺伝子、タンパク質、リン酸化及び活性化は公知されており、特性化され、ERK及びpERKの発現は、当業界に公知の方法(例えば、ノーザンブロット、定量的PCR又は免疫組織化学)によって決定され得る。Gao Y.J.及びJi R.R.,Open Pain J.(2009)2:11-17参照。用語“pERKの発現増加”は、ERK mRNA、ERKタンパク質又はpERK活性のレベルを増加させることを含む。
【0104】
本明細書において用語“GAP43”は、“成長関連タンパク質43”とも知られており、神経突起の形成、再生及び塑性を促進させる神経組織特異的タンパク質である。Benowitz L.I.and Routtenberg A.(1997)Trends in Neurosciences 20(2):84-91;Aarts L.H.et al.,(1998)Advances in Experimental Medicine and Biology 446:85-106。ヒトGAP43は、GAP43遺伝子によって暗号化される。ヒトGAP43ポリペプチド配列(UniProt:KB-P 17677)及びポリペプチドを暗号化するcDNA配列は当業界に公知されている。Kosik K.S.et al.,(1988)Neuron 1(2):127-32;Ng S.C.et al.,(1988)Neuron 1(2):133-9。GAP43の発現は当業界に公知の方法(例えば、ノーザンブロット、定量的PCR又は免疫組織化学)によって決定され得る。用語“ニューロンでGAP43増加”は、GAP43 mRNA、GAP43タンパク質のレベルを向上又は増加させたり又はGAP43タンパク質の活性を増加させることを含む。
【0105】
本明細書において、用語“治療的有効量”は、対象の疾患又は障害を“治療”したり又は疾患又は障害(例えば、中枢神経系損傷)の危険、潜在性、可能性又は発生を減少するのに効果的な薬物の、単独又は他の治療剤と組み合わせられた量のことを指す。“治療的有効量”は、疾患又は障害(例えば、外傷性脳損傷又は本明細書に開示された他の疾患のような中枢神経系損傷)を持っていたり或いは持つ危険がある対象に若干の改善又は利点を提供する薬物又は治療剤の量を含む。したがって、“治療的有効量”は、疾患の危険、潜在性、可能性又は発生を減少させたり又は一部緩和、軽減させ、及び/又は少なくとも1つの指標(例えば、反応性神経膠症の発病)を減少させ、及び/又は疾患又は障害の少なくとも1つの臨床症状を減少させる量である。
【0106】
II.抗FAM19A5抗体
本発明では、特定の機能的特徴又は特性を特徴とする抗体、例えば単クローン性抗体(monoclonal antibody)を開示する。例えば、ヒトFAM19A5に特異的に結合する抗体は、ヒトにおいて免疫性が高い(すなわち、脱免疫化された)領域又は残基を除去及び/又は変形することによって突然変異(例えば、置換又は除去)された。したがって、本明細書に開示された抗体、すなわち抗FAM19A5抗体は、基準抗体(例えば、脱免疫化されていない相応する抗体、例えば1-65抗体)と比較して、ヒト対象に投与される時に免疫原性を減少させた。
【0107】
また、本明細書に記載された抗体は、下記機能的特性のいずれか1つ以上を表す:
(a)10nM以下のKDを有する可溶性ヒトFAM19A5に結合し;
(b)10nM以下のKDを有する膜結合したヒトFAM19A5に結合し;
(c)反応性神経膠症の発病を減少、逆転、遅延及び/又は予防し;
(d)反応性星状細胞の過度な増殖を抑制し;
(e)ニューロカン及びニューロン膠細胞抗原2(NG2)を含むコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現を減少させ;
(f)ニューロンの核でc-fos及びpERKの発現を増加させ;
(g)ニューロンの生存を促進し;
(h)ニューロンでGAP43の発現を増加させ;及び
(i)軸索の再成長を促進する。
【0108】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はヒト対象に投与される時に基準抗体(例えば、免疫化されていない相応する抗体、例えば抗体1-65)に比べて、抗体が比較的少なく免疫原性となるように免疫化された。一部の実施形態において、抗体の免疫原性は基準抗体(例えば、免疫化されていない、相応する抗体、例えば抗体1-65)と比較して少なくとも5%、少なくとも10%、少なくとも15%、少なくとも20%、少なくとも25%、少なくとも30%、少なくとも35%、少なくとも40%、少なくとも45%、少なくとも50%、少なくとも60%、少なくとも70%、少なくとも80%、少なくとも90%又は少なくとも100%減少した。一部の実施形態において、脱免疫化過程は抗体の結合親和性を変更させない。
【0109】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、例えば、10-7M以下、10-8M以下、10-9M(1nM)以下、10-10M(0.1nM)以下、10-11M以下、又は10-12M以下、例えば10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、又は10-9M~10-7M、例えば10-12M、5×10-12M、10-11M、5×10-11M、10-10M、5×10-10M、10-9M、5×10-9M、10-8M、5×10-8M、10-7M、又は5×10-7MのKDを有する高い親和性で可溶性ヒトFAM19A5又は膜結合ヒトに特異的に結合する。様々な種のヒトFAM19A5に対する抗体の結合能力を評価する標準分析は、当業界に公知であり、例えばELISA、ウェスタンブロット、及びRIAを含む。適切な分析が実施例に詳細に説明される。抗体の結合動力学(例えば、結合親和性)がまた、ELISA、BIACORE(登録商標)分析又はKinExAのような当業界に公知の標準分析によって評価され得る。FAM19A5の機能的特性(例えば、リガンド結合)に対する抗体の効果を評価する分析が下記及び実施例にさらに詳細に説明される。
【0110】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、例えばELISAによって決定された時、10-7M以下、10-8M(10nM)以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、10-9M~10-7M、又は10-8M~10-7MのKDを有する可溶性ヒトFAM19A5と特異的に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、10nM以下、例えば0.1~10nM、0.1~5nM、0.1~1nM、0.5~10nM、0.5~5nM、0.5~1nM,1~10nM、1~5nM、又は5~10nMのKDを有する可溶性FAM19A5と特異的に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、ELISAによって決定された時、約1pM、2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、又は900pM、又は約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、又は9nM、又は約10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、又は90nMのKDを有する可溶性ヒトFAM19A5と特異的に結合する。
【0111】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、例えばELISAによって決定される時、10-7M以下、10-8M(10nM)以下、10-9M(1nM)以下、10-10M以下、10-12M~10-7M、10-11M~10-7M、10-10M~10-7M、10-9M~10-7M、又は10-8M~10-7MのKDを有する膜結合したヒトと特異的に結合する。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、ELISAによって決定される時、10nM以下、例えば0.1~10nM、0.1~5nM、0.1~1nM、0.5~10nM、0.5~5nM、0.5~1nM、1~10nM、1~5nM、又は5~10nMのKDを有する膜結合したヒトFAM19A5と特異的に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、ELISAによって決定される時、約1pM、2pM、3pM、4pM、5pM、6pM、7pM、8pM、9pM、10pM、20pM、30pM、40pM、50pM、60pM、70pM、80pM、90pM、100pM、200pM、300pM、400pM、500pM、600pM、700pM、800pM、又は900pM、又は約1nM、2nM、3nM、4nM、5nM、6nM、7nM、8nM、又は9nM、又は約10nM、20nM、30nM、40nM、50nM、60nM、70nM、80nM、又は90nMのKDを有する膜結合したヒトFAM19A5と特異的に結合する。
【0112】
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、神経膠腫の発病を遅延又は抑制することができ、例えば外傷、脳脊髓損傷、脳腫瘍、感染、虚血、脳卒中、自己免疫反応及び/又は神経退行性疾患による損傷又は損傷に反応して中枢神経系(CNS、例えば、脳及び/又は脊髄)で神経膠細胞の非特異的反応性変化の開始又は発病を遅延、鈍化又は制限することができる。
【0113】
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、反応性星状細胞の過度又は異常増殖及びこれと関連したCNSの有害な効果を遅延、抑制、鈍化、制限、低下又は予防することができる。例えば、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、例えばCNS損傷、外傷、負傷、脳脊髓損傷、脳腫瘍、感染、虚血、脳卒中、自己免疫反応及び/又は神経退行性疾患からニューロンの破壊による星状細胞数の異常増加を抑制又は予防でき、CNSにおいて傷跡形成を抑制又は予防でき、反応性酸素種の神経毒性レベルの放出又は潜在的に興奮毒性グルタメートの放出を抑制又は減少させることができ、CNS損傷後発作、疼痛及び/又は2次変性を減少又は抑制させることができる。本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、好ましくはCNS損傷又は負傷後ニューロン及び/又は軸索の再成長を促進、刺激、増加又は活性化させることができる。
【0114】
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、タンパク質コア及びコンドロイチン硫酸(CSGP)、例えばアグレカン(CSPG1)、ベルシカン(CSPG2)、ニューロカン(CSPG3)、CSPG4(又はニューロン膠細胞抗原2(NG2))、CSPG5、SMC3(CSPG6、染色体3の構造的維持)、ブレビカン(CSPG7)、CD44(CSPG8、分化クラスター44)及びホスファカンニューロカン(CSPG3)で構成されたプロテオグリカンを含むコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現を抑制することができる。一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、ニューロカン及び/又はNG2のレベル、又はニューロカン及び/又はNG2の活性を抑制、下落又は減少させる。
【0115】
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、ニューロンの核でc-fos及びpERKの発現を増加させることができ、例えば、c-fos及びpERKのmRNA、タンパク質及び/又はタンパク質活性を増加させることができる。本開示内容の抗FAM19A5抗体はまた、GAP43mRNA、GAP43タンパク質の発現レベルを増加又は向上させたり、或いはGAP43タンパク質活性を増加又は向上させることができる。
【0116】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、及び軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:5、6及び7に提示されたCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、これらのそれぞれは任意に1個、2個又は3個の突然変異を含み;ここで、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3はそれぞれ、SEQ ID NO:8、9及び10のCDR1、CDR2及びCDR3配列を含み、軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3のうち少なくとも1つは1個、2個又は3個の突然変異を含み;並びに、ここで、抗体はSEQ ID NO:11に提示されたVH及びSEQ ID NO:12に提示されたVLを含む基準抗体に比べてヒト対象において減少した免疫原性を有する。
【0117】
一部の実施形態において、抗体に含まれた突然変異は、置換、欠失及び/又は挿入である。一実施形態において、突然変異は置換、例えば保存的置換である。本発明で使われた“保存的置換”(保存的代替とも呼ばれる。)は、与えられたアミノ酸を類似の生化学的特性(例えば、電荷、疎水性及びサイズ)を有する異なるアミノ酸に変化させるアミノ酸置換を意味する。
【0118】
アミノ酸を分類する方法には様々なものがあるが、しはじば構造及びR基の一般的な化学的特性を基準に6個の主要グループに分類される。
【0119】
【0120】
逆に、ラジカル置換又はラジカル代替は、互いに異なる物理化学的特性を有する最終アミノ酸に初期アミノ酸を交換するアミノ酸置換である。特定の実施形態において、FAM19A5抗体におけるアミノ酸突然変異はラジカル置換である。他の実施形態において、FAM19A5抗体におけるアミノ酸突然変異は、保存的置換及びラジカル置換の組合せである。
【0121】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体の重鎖CDR3は、SEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列(GSASYITAATIDA)を含む。特定の実施形態において、重鎖CDR3は、SEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列を1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。一部の実施形態において、重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列(SYQMG)を含む。特定の実施形態において、重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。一部の実施形態において、重鎖CDR2はSEQ ID NO:6に提示されたアミノ酸配列(VINKSGSDTS)を含む。特定の実施形態において、重鎖CDR2はSEQ ID NO:6に提示されたアミノ酸配列を1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。特定の実施形態において、突然変異はSEQ ID NO:6のアミノ酸1においてバリンが脂肪族アミノ酸に置換されたものを含む。特定の実施形態において、脂肪族アミノ酸はアラニンを含む。一部の実施形態において、突然変異はSEQ ID NO:6のアミノ酸5においてセリンが脂肪族アミノ酸に置換されたものを含む。特定の実施形態において、脂肪族アミノ酸はグリシンを含む。
【0122】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体の軽鎖CDR1は、SEQ ID NO:8に提示されたアミノ酸配列(SGGGSSGYGYG)を含む。特定の実施形態において、軽鎖CDR1はSEQ ID NO:8に提示されたアミノ酸配列を1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:8のアミノ酸4においてグリシンが脂肪族アミノ酸に置換されたものを含む。一部の実施形態において、脂肪族アミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン又はイソロイシンを含む。特定の実施形態において、脂肪族アミノ酸はアラニンである。
【0123】
一部の実施形態において、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:9に提示されたアミノ酸配列(WNDKRPS)を含む。特定の実施形態において、軽鎖CDR2はSEQ ID NO:9に提示されたアミノ酸配列を1個、2個、3個又は4個の突然変異と共に含む。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:9のアミノ酸1においてトリプトファンが塩基性アミノ酸に置換されたものを含む。一部の実施形態において、塩基性アミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン又はリシンを含む。特定の実施形態において、塩基性アミノ酸はリシンである。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:9のアミノ酸2においてアスパラギンが酸性アミノ酸に置換されたものを含む。特定の実施形態において、酸性アミノ酸はアスパラギン酸又はグルタミン酸を含む。一部の実施形態において、酸性アミノ酸はアスパラギン酸である。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:9のアミノ酸3においてアスパラギン酸がヒドロキシル又は硫黄/セレニウム含有アミノ酸に置換されたものを含む。特定の実施形態において、ヒドロキシル又は硫黄/セレニウム含有アミノ酸は、セリンを含む。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:9のアミノ酸4においてリシンが酸性アミノ酸に置換されたものを含む。一部の実施形態において、酸性アミノ酸はアスパラギン酸又はグルタミン酸を含む。一部の実施形態において、酸性アミノ酸はグルタミン酸である。
【0124】
一部の実施形態において、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列(GNDDYSSDSGYVGV)を含む。特定の実施形態において、軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を1個、2個又は3個の突然変異と共に含む。
【0125】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体はヒト化する。他の実施形態において、ヒト化した抗FAM19A5は、ヒト抗体のフレームワーク領域を含む。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、抗体のフレームワーク領域(すなわち、VHのFR1、FR2、FR3及びFR4及び/又はVLのFR1、FR2、FR3及びFR4)内に1つ以上(例えば1、2、3、4、5、6、7個以上)の突然変異を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、VHのFR1内に突然変異を含む。特定の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:11の残基21においてアミノ酸置換(例えば、バリンが脂肪族アミノ酸、例えばセリンに)を含む。一部の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:11の残基19においてアミノ酸置換(例えば、セリンが塩基性アミノ酸、例えばアルギニンに)を含む。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体はVHのFR2内に1つ以上の突然変異を含む。特定の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:11の残基49においてアミノ酸置換(例えば、グリシンがヒドロキシル又は硫黄/セレニウム含有アミノ酸、例えばセリンに)を含む。一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、VHのFR3内に1つ以上の突然変異(例えば1、2、3、4、5、6又は7個の突然変異)を含む。特定の実施形態において、突然変異は、SEQ ID NO:11の残基79(例えば、バリンが塩基性アミノ酸、例えばリシンに)、残基80(例えば、アルギニンが芳香族アミノ酸、例えばチロシンに)、残基83(例えば、リシンがヒドロキシル又は硫黄/セレニウム含有アミノ酸、例えばメチオニンに)、残基85(例えば、アスパラギンがヒドロキシル又は硫黄/セレニウム含有アミノ酸、例えばセリンに)、残基92(例えば、グリシンが脂肪族アミノ酸、例えばアラニンに)、及び/又は残基93(例えばトレオニンが脂肪族アミノ酸、例えばバリンに)においてアミノ酸置換を含む。
【0126】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、VLのFR1内に突然変異(例えば、1個又は2個の突然変異)を含む。特定の実施形態において、突然変異は、残基16においてアミノ酸置換(例えば、バリンが脂肪族アミノ酸、例えばアラニンに)を含む。特定の実施形態において、突然変異はSEQ ID NO:12の残基17においてアミノ酸置換(例えば、リシンが塩基性アミノ酸、例えばアルギニンに)を含む。一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、VLのFR2内に1つ以上の突然変異を含む。特定の実施形態において、突然変異はSEQ ID NO:12のアミノ酸残基37の欠失を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はVLのFR3内に突然変異を含む。特定の実施形態において、突然変異はSEQ ID NO:12のアミノ酸残基64において置換(例えば、リシンがヒドロキシル又は硫黄/セレニウム含有アミノ酸、例えばセリンに)を含む。一部の実施形態において、突然変異はSEQ ID NO:12の残基73において置換(例えば、トレオニンがヒドロキシル又は硫黄/セレニウム含有アミノ酸、例えばセリンに)を含む。
【0127】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR2はSEQ ID NO:6に提示されたアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR3はSEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列を含み;(iv)軽鎖CDR1はSEQ ID NO:13に提示されたアミノ酸配列を含み;(v)軽鎖CDR2はSEQ ID NO:14に提示されたアミノ酸配列を含み;及び(vi)軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を含む。
【0128】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR2はSEQ ID NO:27に提示されたアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR3はSEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列を含み;(iv)軽鎖CDR1はSEQ ID NO:13に提示されたアミノ酸配列を含み;(v)軽鎖CDR2はSEQ ID NO:29に提示されたアミノ酸配列を含み;及び(vi)軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を含む。
【0129】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、重鎖CDR1、CDR2及びCDR3、並びに軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、ここで、(i)重鎖CDR1はSEQ ID NO:5に提示されたアミノ酸配列を含み;(ii)重鎖CDR2はSEQ ID NO:28に提示されたアミノ酸配列を含み;(iii)重鎖CDR3はSEQ ID NO:7に提示されたアミノ酸配列を含み;(iv)軽鎖CDR1はSEQ ID NO:13に提示されたアミノ酸配列を含み;(v)軽鎖CDR2はSEQ ID NO:29に提示されたアミノ酸配列を含み;及び(vi)軽鎖CDR3はSEQ ID NO:10に提示されたアミノ酸配列を含む。
【0130】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHはSEQ ID NO:11に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、及び/又は、ここで、VLはSEQ ID NO:12に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、ここで、抗体はSEQ ID NO:11に提示されたVH及びSEQ ID NO:12に提示されたVLを含む基準抗体に比べて減少した免疫原性を有する。
【0131】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHはSEQ ID NO:17に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同じアミノ酸配列を含み、及び/又は、ここで、VLはSEQ ID NO:18に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、ここで、抗体はSEQ ID NO:11に提示されたVH及びSEQ ID NO:12に提示されたVLを含む基準抗体に比べて減少した免疫原性を有する。
【0132】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHはSEQ ID NO:30に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、及び/又は、ここで、VLはSEQ ID NO:32に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、ここで、抗体は、SEQ ID NO:11に提示されたVH及びSEQ ID NO:12に提示されたVLを含む基準抗体に比べて減少した免疫原性を有する。
【0133】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含み、ここで、VHはSEQ ID NO:31に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、及び/又は、ここで、VLはSEQ ID NO:32に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、ここで、抗体は、SEQ ID NO:11に提示されたVH及びSEQ ID NO:12に提示されたVLを含む基準抗体に比べて減少した免疫原性を有する。
【0134】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)を含む基準抗体と交差競合し、ここで、VHはSEQ ID NO:11に提示されたアミノ酸配列を含み、及びVLはSEQ ID NO:12に提示されたアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、VH及びVLを含む基準抗体と同じヒトFAM19A5エピトープに結合し、ここで、VHはSEQ ID NO:11に提示されたアミノ酸配列を含み、及びVLはSEQ ID NO:12に提示されたアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトFAM19A5エピトープはSEQ ID NO:15に提示されたアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、ヒトFAM19A5エピトープはアミノ酸GCDLLINR(SEQ ID NO:16)を含む。
【0135】
特定の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は基準抗体(例えば、1-65抗体)を有するヒトFAM19A5エピトープと結合するために(又は、結合を抑制するために)交差競合する。
【0136】
特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は当該基準抗体(例えば、1-65抗体)のヒトFAM19A5との結合を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%まで抑制する。競合抗体は同一エピトープ、重複エピトープ又は隣接エピトープに結合する(例えば、立体障害によって立証される。)。2個の抗体が標的に結合するために互いに競合するか否かは、RIA及びEIAのように当業界に公知の競合実験を用いて決定され得る。
【0137】
2個の抗体が同一エピトープに結合するか否かを決定する技術は、例えばエピトープマッピング方法、例えばエピトープの原子分解能を提供する抗原:抗体複合体結晶のx線分析、水素/重水素交換質量分析法(HDX-MS)、及び抗原断片に対する抗体の結合又は抗原の突然変異された変異をモニタリングする方法を含み、ここで、抗原配列内のアミノ酸残基の変形による結合損失は、しばしばエピトープ成分の表示であるエピトープマッピングのための計算組合せ方法が考慮される。
【0138】
本発明の方法に有用な抗FAM19A5抗体は、例えば抗体をヒトFAM19A5の断片に結合させることによって、決定されたように、成熟したヒトFAM19A5の1つ以上のエピトープに結合し得る。一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、CDMLPCLEGEGCDLLINRSGのアミノ酸配列(SEQ ID NO:15又はSEQ ID NO:2のアミノ酸90~109)、例えば、SEQ ID
NO:15の少なくとも1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19又は20個のアミノ酸を有するエピトープに位置する断片に結合する。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、1つ以上のアミノ酸残基99~107(すなわち、EGCDLLINR)、例えばアミノ酸残基102、103、105及び107(すなわち、DL-I-R)においてSEQ ID NO:15に結合する。
【0139】
一部の実施形態において、少なくとも1つのエピトープは、SEQ ID NO:15と少なくとも90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同じアミノ酸配列を有する。一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体はその天然形態(すなわち、未変性)でSEQ ID NO:15又はその断片に結合する。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はグリコシル化及びグリコシル化していないヒトFAM19A5の両方に結合する。
【0140】
一部の実施形態において、本発明は、例えば免疫分析(例えば、ELISA)、表面プラズモン共鳴又は動力学的排除分析によって測定される時、FAM19A5ファミリーの他のタンパク質に比べて20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%又はより高い親和度でFAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に結合する抗体又はその抗原結合断片を提供する。特定の実施形態において、抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片は、例えば免疫分析によって測定されるように、FAM19Aファミリーにおいて他のタンパク質との交差反応性無しでFAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に結合する。
【0141】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、天然抗体でないか、自然発生抗体でない。例えば、一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、より多い、より少ない又は異なる類型の翻訳(translation)後修飾を有することによって、自然的に発生する抗体のものとは異なる翻訳後修飾を有する。
【0142】
本開示内容の例示的な抗体のVH及びVL CDRのアミノ酸配列はそれぞれ表3及び表4に提供される。VH及びVLアミノ酸配列はそれぞれ表5及び表6に提供される。
【0143】
【0144】
【0145】
【0146】
【0147】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域(VH)はSEQ ID NO:17の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、及び/又は軽鎖可変領域(VL)はSEQ ID NO:18の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体はSEQ ID NO:17のアミノ酸配列に提示されたVHを含み、及び/又はVLはSEQ ID NO:18のアミノ酸配列を含む。
【0148】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域(VH)はSEQ ID NO:30の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、及び/又は軽鎖可変領域(VL)はSEQ ID NO:32の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体はSEQ ID NO:30のアミノ酸配列に提示されたVHを含み、及び/又はVLはSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含む。
【0149】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は重鎖及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域(VH)はSEQ ID NO:31の重鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含み、及び/又は軽鎖可変領域(VL)はSEQ ID NO:32の軽鎖CDR1、CDR2及びCDR3を含む。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体はSEQ ID NO:31のアミノ酸配列に提示されたVHを含み、及び/又はVLはSEQ ID NO:32のアミノ酸配列を含む。
【0150】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は重鎖可変領域及び軽鎖可変領域を含み、ここで、重鎖可変領域はSEQ ID NO:17、30又は31に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%又は約100%同じアミノ酸配列を含み、及び/又は軽鎖可変領域はSEQ ID NO:18又は32に提示されたアミノ酸配列と少なくとも約80%、少なくとも約85%、少なくとも約90%、少なくとも約95%、少なくとも約96%、少なくとも約97%、少なくとも約98%、少なくとも約99%、又は約100%同じアミノ酸配列を含み、ここで、VHはSEQ ID NO:17、30又は31のCDR1、CDR2及びCDR3を含み、及びVLはSEQ ID NO:18又は32のCDR1、CDR2及びCDR3を含む。
【0151】
本明細書に記述されたVHドメイン又はその1つ以上のCDRは、重鎖、例えば全長重鎖を形成するための定常のドメインに連結され得る。類似に、本明細書に記載されたVLドメイン又はその1つ以上のCDRは、軽鎖、例えば全長軽鎖を形成するための定常ドメインに結合され得る。全長重鎖及び全長軽鎖が結合して全長抗体を形成する。
【0152】
したがって、特定の実施形態において、本発明は、抗体軽鎖及び重鎖、例えば別途の軽鎖及び重鎖を含む抗体を提供する。軽鎖と関連して、特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体の軽鎖はカッパ軽鎖である。他の特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体の軽鎖はラムダ軽鎖である。さらに他の特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体の軽鎖は、ヒトカッパ軽鎖又はヒトラムダ軽鎖である。特定の実施形態において、FAM19A5ポリペプチド(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本発明の抗体は、本明細書に記載された任意のVL又はVL CDRアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、ここで、軽鎖の定常領域はヒトカッパ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。特定の実施形態において、FAM19A5ポリペプチド(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本発明の抗体は、本明細書に記載されたVL又はVL CDRアミノ酸配列を含む軽鎖を含み、ここで、軽鎖の定常領域はヒトラムダ軽鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。ヒト定常領域配列の非制限的な例は当業界に記述されており、例えば、特許第5,693,780号及びカバット(Kabat)EA et al.,(1991)を参照する。
【0153】
重鎖と関連して、一部の実施形態において、本明細書に記載された抗体の重鎖は、アルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)重鎖であり得る。他の特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体の重鎖は、ヒトアルファ(α)、デルタ(δ)、エプシロン(ε)、ガンマ(γ)及びミュー(μ)重鎖を含むことができる。一実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載された抗体は、本明細書に記載されたVH又はVH CDRアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、重鎖の定常領域はヒトガンマ(γ)重鎖定常領域のアミノ酸配列を含む。他の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載された抗体は、本明細書に開示されたVH又はVH CDRアミノ酸配列を含む重鎖を含み、ここで、重鎖の定常領域は、本明細書に記述又は当業界に公知のヒト重鎖のアミノ酸を含む。ヒト定常領域配列の非制限的な例は当業界に記述されており、例えば米国特許第5,693,780号及びKabat EA et al.,(1991)を参照する。
【0154】
一部の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記載された抗体は、VH又はVH CDR及びVL及びVL CDRを含むVLドメイン及びVHドメインを含み、ここで、定常領域はIgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子又はヒトIgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子の定常領域のアミノ酸配列を含む。他の特定の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本発明の抗体は、本明細書に記載された任意のアミノ酸配列を含むVLドメイン及びVHドメインを含み、ここで、定常領域はIgG、IgE、IgM、IgD、IgA又はIgY免疫グロブリン分子、免疫グロブリン分子の任意のサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1及びIgA2)の定常領域のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、定常領域はサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3又はIgG4)及びアロタイプ(例えば、G1m、G2m、G3m及びnG4m)及びその変異体を含んで自然発生するヒトIgGの定常領域のアミノ酸配列を含む。例えば、Vidarsson G.et al.,Front Immunol.5:520(2014年10月20日にオンライン掲示)及びJefferis R.及びLefranc MP,mAbs 1:4,1-7(2009)参照。一部の実施形態において、定常領域はヒトIgG1、IgG2、IgG3又はIgG4の定常領域のアミノ酸配列又はその変異体を含む。
【0155】
特定の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、Fcエフェクター機能、例えば補体依存性細胞毒性(CDC)及び/又は抗体依存性細胞性食作用(ADCP)を有しない。エフェクター機能はFc領域によって媒介され、Fc領域のCH2ドメインでヒンジ領域に最も近接した残基は先天免疫系のエフェクター細胞上でClq(補体)及びIgG-Fc受容体(FcγR)に対して非常に重なった結合部位を含むので、抗体のエフェクター機能を担当する。また、IgG2及びIgG4抗体は、IgG1及びIgG3抗体に比べてより低いレベルのFcエフェクター機能を有する。抗体のエフェクター機能は次のように当業界に公知の個別の接近法によって減少又は回避され得る:(1)Fc領域を欠如した抗体断片(例えば、Fab、F(ab’)2、単鎖Fv(scFv)、又はモノマーVH又はVLドメインで構成されたsdAb)の使用;(2)糖付着残基の欠失又は変更、酵素的に糖を除去、グリコシル化抑制剤の存在の下に培養された細胞で抗体の生成、又はタンパク質をグリコシル化できない細胞(例えば、バクテリア宿主細胞)における抗体の発現(バクテリア宿主細胞、米国特許公開第20120100140号参照)によって生成可能な、無グリコシル化抗体の生成;(3)エフェクター機能が減少したIgG亜型からのFc領域の利用(例えば、IgG2又はIgG4抗体からのFc領域又はIgG2又はIgG4抗体からのCH2ドメインを含むキメラFc領域、例えば、米国特許公開第20120100140号及びLau C et al.,J Immunol.191:4769-4777(2013)参照);及び(4)Fc機能が減少又は不存在している突然変異を持つFc領域の生成(米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国出願及びPCT出願とAn et al.,mAbs 1:6,572-579(2009)参照)。
【0156】
したがって、一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、単鎖Fv(scFv)、又は単量体性VH又はVLドメインで構成されたsdAbである。このような抗体断片は当業界に公知されており、上記に説明されている。
【0157】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は単鎖Fvである。例示的な抗FAM19A5 scFvのアミノ酸配列は、下記表7に提供される。
【0158】
【0159】
一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は、Fcエフェクター機能が減少又は不存在しているFc領域を含む。一部の実施形態において、定常領域はヒトIgG2又はIgG4のFc領域のアミノ酸配列を含む。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はIgG2/IgG4アイソタイプのものである。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体はIgG4アイソタイプのIgG抗体からのCH2ドメインとIgG1アイソタイプのIgG抗体からのCH3ドメインを含むキメラFc領域、又はIgG2からのヒンジ領域とIgG4からのCH2領域を含むキメラFc領域、又は減少又は不存在しているFc機能をもたらす突然変異を持つFc領域を含む。Fcエフェクター機能が減少又は不存在しているFc領域は当業界に公知のものを含む(例えば、Lau C et al.,J Immunol.191:4769-4777(2013);An et al.,mAbs 1:6,572-579(2009);及び米国特許公開第20120100140号及びそこに引用された米国特許と特許公開及びPCT公開を参照)また、Fcエフェクター機能が減少又は不存在しているFc領域は当業者にとって容易に製造可能である。
【0160】
III.核酸分子
本発明の他の態様は、明細書で記述された抗体のいずれか一つを暗号化する1つ以上の核酸分子に関する。核酸は全体細胞に、細胞溶解物に、又は部分的に精製された形態や実質的に純粋な形態で存在し得る。核酸は、アルカリ性/SDS処理、CsClバンディング(banding)、カラムクロマトグラフィー、制限酵素、寒天ゲル電気泳動及び当業界に公知の他の技術を含む標準技術によって、他の細胞成分又は他の汚染物、例えば他の細胞核酸(例えば、他の染色体DNA、例えば自然で単離したDNAに連結された染色体DNA)又はタンパク質から精製されたとき、“単離したり”又は“実質的に純粋である”(F Ausubel,et al,,ed.(1987)Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing and Wiley Interscience,New York参照)。本明細書に開示された核酸は、例えばDNA又はRNAであり得、イントロン配列を含有してもよく、含有しなくてもよい。特定の実施形態において、核酸はcDNA分子である。
【0161】
本明細書に開示された核酸は、標準分子生物学技術を用いて得ることができる。ハイブリドーマ(例えば、下記説明されるヒト免疫グロブリン遺伝子を有する遺伝子導入マウスから製造されたハイブリドーマ)によって発現した抗体の場合、ハイブリドーマによって製造された抗体の軽鎖及び重鎖を暗号化するcDNAは、標準PCR増幅又はcDNAクローニング技術によって得ることができる。免疫グロブリン遺伝子ライブラリー(例えば、ファージディスプレイ技術を利用)から得られた抗体の場合、この抗体を暗号化する核酸がライブラリーから回収され得る。
【0162】
本明細書に開示された特定核酸分子は、本発明の抗FAM19A5抗体のVH及びVL及びVL配列を暗号化するものである。このような抗体のVH及びVL及びVL配列を暗号化する例示的なDNA配列は、それぞれ表8及び表9に提示されている。
【0163】
【0164】
【0165】
明細書に開示された抗FAM19A5抗体を製造する方法は、信号ペプチドと共に重鎖及び軽鎖を暗号化するヌクレオチド配列、例えば、それぞれSEQ ID NO:21及び22を含む細胞株で重鎖及び軽鎖を発現することを含むことができる。これらのヌクレオチド配列を含む宿主細胞は本発明に含まれる。
【0166】
VH及びVLセグメントを暗号化するDNA断片が得られた後、これらのDNA断片は、例えば可変領域遺伝子を全長抗体鎖遺伝子、Fab断片遺伝子又はscFv遺伝子に転換するために、標準組換えDNA技術によってさらに操作され得る。それらの操作において、VL-又はVH-暗号化DNA断片は、抗体定常領域又は可撓性リンカーのような他のタンパク質を暗号化する他のDNA断片に作動可能に連結される。本明細書において用語“作動可能に連結された”とは、2個のDNA断片によって暗号化されたアミノ酸配列がイン-フレーム(in-frame)を維持するように2個のDNA断片がつながることを意味する。
【0167】
VH領域を暗号化する単離したDNAは、VH-暗号化DNAを重鎖定常領域(ヒンジ、CH1、CH2及び/又はCH3)を暗号化する他のDNA分子に作動可能に連結することによって全長重鎖遺伝子に転換され得る。ヒト重鎖定常領域遺伝子の配列は当業界に公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242参照)、これらの領域を含むDNA断片を標準PCR増幅によって得ることができる。重鎖定常領域はIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、IgE、IgM又はIgD定常領域、例えばIgG2及び/又はIgG4定常領域であり得る。Fab断片重鎖遺伝子の場合、VH-暗号化DNAは単に重鎖CH1定常領域のみを暗号化する他のDNA分子に作動可能に連結され得る。
【0168】
VL領域を暗号化する単離したDNAは、VL-暗号化DNAを軽鎖定常領域CLを暗号化する他のDNA分子に作動可能に連結することによって全長軽鎖遺伝子(のみならず、Fab軽鎖遺伝子)に転換され得る。ヒト軽鎖定常領域遺伝子の配列は当業界に公知であり(例えば、Kabat,E.A.,et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest、Fifth Edition,US Department of Health and Human Services,NIH Publication No 91-3242参照)、これらの領域を含むDNA断片を標準PCR増幅によって得ることができる。軽鎖定常領域はカッパ又はラムダ定常領域であり得る。
【0169】
scFv遺伝子を生成するために、VH-及びVL-暗号化DNA断片は可撓性リンカーを暗号化する、例えば、アミノ酸配列(Gly4-Ser)3を暗号化する他の断片に作動可能に連結され、これによってVLとVH領域が可撓性リンカーによって結合された状態でVH及びVL配列は連続単鎖タンパク質として発現し得る(例えば、Bird et al.,(1988)Science242:423-426;Huston et al.,(1988)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 85:5879-5883;McCafferty et al.,(1990)Nature 348:552-554参照)。例示的な抗FAM19A5 scFvのアミノ酸及びヌクレオチド配列はそれぞれ表7(上記)及び表10に提供される。
【0170】
【0171】
一部の実施形態において、本発明は、抗体を暗号化するヌクレオチド配列を含む単離した核酸分子を含むベクターを提供する。他の実施形態において、ベクターは遺伝子治療法に用いられ得る。
【0172】
本発明に好適なベクターは、発現ベクター、ウイルスベクター、及びプラスミドベクターを含む。一実施形態において、ベクターはウイルスベクターである。
【0173】
本発明で用いられたように、発現ベクターは、適切な宿主細胞に導入されたとき、挿入されたコーディング配列の転写及び遺伝子暗号解読のための必須要素、又はRNAウイルスベクターの場合、複製及び遺伝子暗号解読のための必須要素を含有する任意の核酸構成物のことを指す。発現ベクターはプラスミド、ファージミド、ウイルス、及びこれらの誘導体を含むことができる。
【0174】
本開示内容の発現ベクターは、本明細書に開示された抗体を暗号化するポリヌクレオチドを含むことができる。一実施形態において、抗体に対するコーディング配列は発現制御配列に作動可能に連結される。本発明に用いられた通り、2個の核酸配列は、各成分核酸配列がその機能性を維持するようにする方式で共有結合する時に作動可能に連結される。コーディング配列及び遺伝子発現制御配列は、遺伝子発現制御配列の影響又は制御の下にコーディング配列の発現又は転写及び/又は翻訳を配置する方式で共有結合する時に作動可能に連結されるという。5’遺伝子発現配列においてプロモーターの誘導がコーディング配列の転写を招く場合及び2つのDNA配列間の結合特性が(1)フレームシフト突然変異の導入を招かないか、(2)プロモーター領域がコーディング配列の転写を指示する能力を妨害しないか、(3)相応するRNA転写体がタンパク質に解読される能力を妨害しない場合、2個のDNA配列は作動可能に連結されているという。したがって、遺伝子発現配列がコーディング核酸配列の転写に影響を与えて、生成された転写物が所望の抗体に翻訳され得る場合、遺伝子発現配列はコーディング核酸配列に作動可能に連結されるだろう。
【0175】
ウイルスベクターは、非制限的であるが、次のウイルスから核酸配列を含む:レトロウイルス、例えばモロニー(Moloney)マウス白血病ウイルス、ハーベイ(Harvey)マウス肉腫ウイルス、マウス乳癌ウイルス及びラウス(Rous)肉腫ウイルス;レンチウイルス;アデノウイルス;アデノ関連ウイルス;SV40型ウイルス;ポリオーマウイルス;エプスタインバール(Epstein-Barr)ウイルス;乳頭腫ウイルス;ヘルペスウイルス;ワクシニアウイルス;小児痲痺ウイルス;及びレトロウイルスのようなRNAウイルス。当業界に公知の他のベクターを容易に用いることができる。特定ウイルスベクターは非必須遺伝子が関心遺伝子に代替された非細胞病原性真核ウイルスに基づく。非細胞病原性ウイルスはレトロウイルスを含み、そのライフサイクルは宿主細胞DNAへの後続するウイルス統合と共にゲノムウイルスRNAのDNAへの逆転写を含む。レトロウイルスはヒト遺伝子治療試験のために承認された。複製が不十分な(すなわち、所望のタンパク質の合成を指示することはできるが、感染性粒子を製造できない)レトロウイルスが最も有用である。このような遺伝子変形されたレトロウイルス発現ベクターは、生体内で遺伝子の高効率形質導入に対する一般的な有用性を有する。複製欠乏レトロウイルスを生成するための標準プロトコル(外因性遺伝物質をプラスミド内に混入、プラスミドにパッケージング細胞株の形質感染、パッケージング細胞株による組換えレトロウイルスの生成、組織培養培地からウイルス粒子の収集及びウイルス粒子に標的細胞の感染の段階を含む。)は、Kriegler,M.,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,W.H.Freeman Co.,New York(1990)及びMurry,E.J.,Methods in Molecular Biology,Vol.7,Humana Press,Inc.,Cliffton,N.J.(1991)に提供される。
【0176】
一実施形態において、ウイルスはアデノ関連ウイルスである二本鎖DNAウイルスである。アデノ関連ウイルスは、複製不十分に操作可能であり、広範囲な細胞類型及び種を感染させることができる。また、熱及び脂質溶媒安定性;造血細胞を含めて様々な系統の細胞において高い形質導入頻度;及び重複感染(superinfection)抑制の欠如による多数の形質導入(transduction)許容といった長所がある。報告された通り、アデノ関連ウイルスは部位特異的方式でヒト細胞DNAに統合可能であり、これによって、挿入突然変異誘発の可能性及びレトロウイルス感染の挿入された遺伝子発現特性の可変性を最小化することができる。また、野生型アデノ関連ウイルス感染は、選択的圧迫がない時、100回以上組織で追跡され、これは、アデノ関連ウイルスゲノム統合が比較的安定した事例であることを暗示する。アデノ関連ウイルスはまた、染色体外(extrachromosomal)方式で機能することもできる。
【0177】
他の実施形態において、ベクターはレンチウイルスから由来する。特定の実施形態において、ベクターは非分裂細胞を感染させ得る組換えレンチウイルスのベクターである。
【0178】
レンチウイルスゲノム及びプロウイルスDNAは、典型的にレトロウイルスから発見される3個の遺伝子:gag、pol及びenvを有し、これらは2個の長い末端反復(LTR)配列によって側面に位置する。gag遺伝子は、内部構造(マトリックス、カプシド及びヌクレオカプシド)タンパク質を暗号化し;pol遺伝子はRNA指示されたDNAポリメラーゼ(逆転写酵素)、プロテアーゼ及びインテグラーゼを暗号化し;env遺伝子はウイルス外皮糖タンパク質を暗号化する。5’及び3’LTR’sは、ビリオンRNA’sの転写及びポリアデニル化を促進させる役割を担う。LTRは、ウイルス複製に必要な他の全てのシス-作用(cis-acting)配列を含む。レンチウイルスは、vif、vpr、tat、rev、vpu、nef及びvpx(HIV-1、HIV-2及び/又はSIVにおいて)を含む追加遺伝子を有している。
【0179】
5’LTRに隣接してゲノム(tRNAプライマー結合部位)の逆転写及びウイルスRNAの粒子内への効率的なカプセル化(Psi部位)に必要な配列である。カプセル化(又は、レトロウイルスRNAの感染性ビリオンへのパッケージング)に必要な配列がウイルスゲノムから欠落すると、シス欠陥はゲノムRNAのカプセル化を防止する。
【0180】
しかし、生成された突然変異体は、全てのビリオンタンパク質の合成を指示できる状態に残っている。本発明は、パッケージング機能、すなわちgag、pol及びenvだけでなく、rev及びtatを保有する2以上のベクターに適切な宿主細胞を形質感染させる段階を含む非分裂細胞を感染させることができる組換えレンチウイルスの製造方法を提供する。以下に開示されるように、機能的tat遺伝子を欠如したベクターは、特定適用に好ましい。したがって、例えば、第1ベクターは、ウイルスgag及びウイルスpolを暗号化する核酸を提供でき、他のベクターは、パッケージング細胞を生成するためにウイルスenvを暗号化する核酸を提供できる。本明細書において伝達ベクターとして確認された異種性(heterologous)遺伝子をパッケージング細胞内に提供するベクターを導入すれば、関心のある外来遺伝子を保有する感染性ウイルス粒子を放出する生産細胞が生成される。
【0181】
前述したベクター及び外来遺伝子の構成によれば、第2ベクターはウイルス外皮(env)遺伝子を暗号化する核酸を提供することができる。env遺伝子はレトロウイルスを含めてほとんど全ての適切なウイルスから由来し得る。一部の実施形態において、envタンパク質はヒト及び他の種の細胞の形質導入を許容する両種性外皮タンパク質である。
【0182】
レトロウイルス由来したenv遺伝子の例は、モロニーマウス白血病ウイルス(MoMuLV又はMMLV)、ハーベイマウス肉腫ウイルス(HaMuSV又はHSV)、マウス乳癌ウイルス(MuMTV又はMMTV)、テナガザル白血病ウイルス(gibbon ape leukemia virus)(GalV又はGALV)、ヒト免疫欠乏ウイルス(HIV)、及びラウス肉腫ウイルス(RSV)を含むが、これに制限されない。水疱性口内炎ウイルス(Vesicular stomatitis virus)(VSV)タンパク質G(VSV G)のような他のenv遺伝子、肝炎ウイルス及びインフルエンザーの遺伝子も用いられ得る。
【0183】
ウイルスenv核酸配列を提供するベクターは、本明細書の他の所に記述された調節配列と作動可能に関連される。
【0184】
特定の実施形態において、ベクターは、ベクターが非分裂細胞を形質導入させる能力を損傷させずにHIV毒性遺伝子env、vif、vpr、vpu及びnefが欠失されたレンチウイルスベクターを含む。
【0185】
一部の実施形態において、ベクターは3’LTRのU3領域の欠失を含むレンチウイルスベクターを含む。U3領域の欠失は全体削除又は部分削除であり得る。
【0186】
一部の実施形態において、本明細書に開示されたFVIIIヌクレオチド配列を含む本発明のレンチウイルスベクターは、(a)gag、pol又はgag及びpol遺伝子を含む第1ヌクレオチド配列、及び(b)異種性env遺伝子を含む第2ヌクレオチド配列で細胞において形質感染され得;ここで、レンチウイルスベクターは機能性tat遺伝子が欠如している。他の実施形態において、細胞は、rev遺伝子を含む第4ヌクレオチド配列でさらに形質感染される。特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、vif、vpr、vpu、vpx及びnef、又はこれらの組合せから選択された機能性遺伝子が欠如している。
【0187】
特定の実施形態において、レンチウイルスベクターは、gagタンパク質、Rev反応要素、中心ポリプリントラック(cPPT)、又はこれらの任意の組合せを暗号化する1つ以上のヌクレオチド配列を含む。
【0188】
レンチウイルスベクターの例は、W09931251、W09712622、W09817815、W09817816及びW09818934に開示されており、これらはその全文が本明細書に参照として含まれる。
【0189】
他のベクターはプラスミドベクターを含む。プラスミドベクターは本技術分野で広範囲に記述されており、当業者に広く公知されている。例えば、Sambrook el al.,Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989参照。ここ数年間、プラスミドベクターは宿主ゲノム内で複製して宿主ゲノムに統合できないことから、生体内で細胞に遺伝子を伝達するのに特に有利なものとして明らかになった。しかし、宿主細胞と交換性であるプロモーターを有するこれらのプラスミドは、プラスミド内に作動可能に暗号化された遺伝子からペプチドを発現することができる。商業用供給社から入手でき、一般的に用いられる一部のプラスミドは、pBR322、pUC18、pUC19、様々なpcDNAプラスミド、pRC/CMV、様々なpCMVプラスミド、pSV40及びpBlueScriptを含む。特定プラスミドの追加例は、pcDNA3.1、カタログ番号V79020;pcDNA3.1/hygro、カタログ番号V87020;pcDNA4/myc-His、カタログ番号V86320;及びpBudCE4.1、カタログ番号V53220があり、これらはいずれもInvitrogen(Carlsbad,CA)社製である。他のプラスミドは当業者によく知られている。また、プラスミドはDNAの特定断片を除去及び/又は追加するために標準分子生物学技術を用いてカスタマイズ設計され得る。
【0190】
IV.抗体生成
FAM19A5に免疫特異的に結合する抗体又はその断片(例えば、ヒトFAM19A5)は、抗体の合成のために当業界に公知の任意の方法、例えば化学的合成又は組換え発現技術によって生成され得る。本明細書に開示された方法は、特に言及がない限り、分子生物学、微生物学、遺伝子分析、組換えDNA、有機化学、生化学、PCR、オリゴヌクレオチド合成及び変形、核酸混成化、及び当業界技術範囲内の関連分野の従来の技術を利用する。これらの技術は、例えば本明細書で引用された参考文献に詳細に説明されている(例えば、Maniatis T et al.,(1982)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sambrook J et al.,(1989),Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Second Edition,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Sambrook J et al.,(2001)Molecular Cloning:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY;Ausubel FM et al.,Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons(1987 and annual updates);Current Protocols in Immunology,John Wiley & Sons(1987 and annual updates)Gait(ed.)(1984)Oligonucleotide Synthesis:A Practical Approach,IRL Press;Eckstein(ed.)(1991)Oligonucleotides and Analogues:A Practical Approach,IRL Press;Birren B et al.,(eds.)(1999)Genome Analysis:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press参照)。
【0191】
特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体は、例えば、合成、DNA配列の遺伝子操作を用いた生成を伴う任意の手段によって製造、発現、生成又は単離した抗体(例えば、組換え抗体)である。特定の実施形態において、このような抗体は生体内動物又は哺乳類(例えば、ヒト)の抗体ジャームライン(germline)レパートリー内に自然的に存在しない配列(例えば、DNA配列又はアミノ酸配列)を含む。一部の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体は脱免疫化された。
【0192】
実施例(例えば、実施例2)に記載されるように、抗FAM19A5抗体は、ニワトリを合成FAM19A5ペプチドで免疫化させることによって初期に生成された。したがって、ヒト対象に投与される時に免疫原性の危険を最小化するために、抗FAM19A5抗体(例えば、1-65)はヒト抗体の免疫原性配列とより類似になるように変形された。一部の実施形態において、本明細書に開示された脱免疫化された抗FAM19A5抗体は、脱免疫化されていない相応する対応抗体に比べてヒトFAM19A5と類似の結合親和度を有する。抗体を脱免疫化させる方法は本発明に開示されており、当業界に公知されている。
【0193】
特定の態様において、本発明は、本明細書に開示された細胞又は宿主細胞を培養することを含め、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片の製造方法を提供する。特定の態様において、本発明は、本明細書に開示された細胞又は宿主細胞(例えば、本明細書に開示された抗体を暗号化するポリヌクレオチドを含む細胞又は宿主細胞)を用いて抗体又はその抗原結合断片を発現(例えば、組換え発現)させることによって、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に免疫特異的に結合する抗体又はその抗原結合断片を製造する方法を提供する。特定の実施形態において、細胞は単離した細胞である。特定の実施形態において、外因性ポリヌクレオチドは細胞内に導入された。特定の実施形態において、本発明の方法は、細胞又は宿主細胞から得られた抗体又はその抗原結合断片を精製する段階をさらに含む。
【0194】
多クローン性抗体を生成する方法は当業界に公知されている(例えば、Chapter 11,in,Short Protocols in Molecular Biology,(2002)5th Ed.,Ausubel FM et al.,eds.,John Wiley and Sons,New York)。
【0195】
単クローン性抗体は、ハイブリドーマ、組換え及びファージディスプレイ技術又はこれらの組合せを用いる当業界に公知の様々な技術を用いて製造することができる。例えば、単クローン性抗体は当業界に公知されており、例えば、Harlow E & Lane D,Antibodies:A Laboratory Manual,(Cold Spring Harbor Laboratory Press,2nd ed.1988);Hammerling GJ et al.,in :Monoclonal Antibodies and T-Cell Hybridomas 563 681(Elsevier,N.Y.,1981)に開示されたハイブリドーマ技術を用いて生成され得る。本明細書において用語“単クローン性抗体”は、ハイブリドーマ技術によって生成された抗体に制限されない。例えば、単クローン性抗体は、本明細書に開示された抗体又はその断片、例えば当該抗体の軽鎖及び/又は重鎖を外因的に発現させる宿主細胞から組換え的に生成され得る。
【0196】
特定の実施形態において、本明細書において“単クローン性抗体”は、単一細胞(例えば、ハイブリドーマ又は組換え抗体を生成する宿主細胞)によって生成された抗体であり、ここで、抗体は、例えばELISA又は当業界に公知されているか、本明細書の実施例に記載された他の抗原結合又は競合的結合分析によって決定されたように、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に免疫特異的に結合する。特定の実施形態において、単クローン性抗体はキメラ抗体又はヒト化した抗体であり得る。特定の実施形態において、単クローン性抗体は1価抗体又は多価(例えば、2価)抗体である。特定の実施形態において、単クローン性抗体は単一特異的又は多重特異的抗体(例えば、二重特異的抗体)である。本明細書に開示された単クローン性抗体は、例えばKohler G & Milstein(1975)Nature 256:495に記載されたハイブリドーマ方法によって製造され得るか、或いは、例えば本明細書に記載のような技術を用いてファージライブラリーから単離し得る。クローン細胞株及びこれによって発現した単クローン性抗体の製造のための他の方法は当業界に公知されている(例えば、Chapter 11 in:Short Protocols in Molecular Biology,(2002)5th Ed.,Ausubel FM et al.,supra参照)。
【0197】
ハイブリドーマ技術を用いて特定抗体を生成しスクリーニングする方法は日常的で且つ当業界に公知である。例えば、ハイブリドーマ方法において、マウス又はヒツジ、ヤギ、ウサギ、ネズミ、ハムスター又はマカクザルのような他の適切な宿主動物は、免疫化に使用されるタンパク質(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する抗体を生成したり生成し得るリンパ球を誘導するように免疫化される。代案として、リンパ球は試験管内で免疫化され得る。次いで、リンパ球をポリエチレングリコールのような適切な融合剤を用いて骨髄腫細胞と融合させてハイブリドーマ細胞を形成する(Goding JW(Ed)、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,pp.59-103(Academic Press,1986))。また、RIMMS(反復免疫化多重部位)技術を用いて動物を免疫化させることができる(Kilpatrick KE et al.,(1997)Hybridoma 16:381-9、全体内容が参照として含まれる。)。
【0198】
一部の実施形態において、マウス(又は他の動物、例えばニワトリ、ネズミ、サル、ロバ、ブタ、ヒツジ、ハムスター又はイヌ)は、抗原(例えば、FAM19A5、例えばヒトFAM19A5)で免疫化され得、免疫反応が検出され、例えば抗原に特異的な抗体がマウス血清から検出されると、マウス脾臓を取り入れて脾臓細胞を分離する。次いで、脾臓細胞を公知の技術によって任意の適切な骨髄腫細胞、例えばAmerican Type Culture Collection(ATCC(登録商標))(Manassas,VA)から入手可能な細胞株SP20の細胞に融合させてハイブリドーマを形成する。ハイブリドーマは、制限された希釈によって選択されクローニングされる。特定の実施形態において、免疫化されたマウスのリンパ節を取り入れ、NSO骨髄腫細胞と融合される。
【0199】
こうして製造されたハイブリドーマ細胞は、好ましくは、融合されていない親骨髄腫細胞の成長又は生存を抑制する1つ以上の物質を含有する適切な培養培地に接種され成長される。例えば、親骨髄腫細胞に酵素ハイポキサンチン(hypoxanthine)グアニンホスホリボシル転移酵素(HGPRT又はHPRT)を欠如している場合、ハイブリドーマの培養培地は典型的にハイポキサンチン、アミノプテリン及びチミジン(HAT培地)を含むはずであり、これらの物質はHGPRT欠乏細胞の成長を防止する。
【0200】
特定の実施形態は効率的に融合し、選択された抗体生成細胞による安定した高レベルの抗体生産を支援し、HAT培地のような培地に敏感な骨髄腫細胞を用いる。これらのうち、骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫細胞(myeloma line)、例えばNSO細胞株又はSalk Institute Cell Distribution Center,San Diego,CA,USAから入手可能なMOPC-21及びMPC11マウス腫瘍、及びAmerican Type Culture Collection,Rockville,MD,USAから購入可能なSP-2又はX63-Ag8.653細胞から由来したものである。ヒト骨髄腫及びマウス-ヒト異種骨髄腫細胞株はまた、ヒト単クローン性抗体の生成に対して記述されている(Kozbor D(1984)J Immunol 133:3001-5;Brodeur et al.,Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications,pp.51-63(Marcel Dekker,Inc.,New York,1987))。
【0201】
ハイブリドーマ細胞が成長する培養培地は、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に対する単クローン性抗体の生成に対して分析される。ハイブリドーマ細胞によって生成された単クローン性抗体の結合特異性は、当業界に公知の方法、例えば免疫沈殿又は試験管内結合分析、例えば放射線免疫分析(RIA)又は酵素結合免疫吸収分析(ELISA)によって決定される。
【0202】
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を生成するハイブリドーマ細胞が確認された後、制限希釈手順によってクローンをサブクローニングし、標準方法(Goding JW(Ed)、Monoclonal Antibodies:Principles and Practice,supra)によって成長させることができる。このような目的に適した培養培地は、例えばD-MEM又はRPMI1640培地を含む。また、ハイブリドーマ細胞は動物において腹水(ascites)腫瘍として生体内で成長し得る。
【0203】
サブクローンによって分泌された単クローン性抗体は、例えばタンパク質A-セファロース、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又は親和性クロマトグラフィーのような通常の免疫グロブリン精製手順によって培養培地、腹水(ascites)又は血清から適切に分離される。
【0204】
本明細書に記載された抗体は、特異的FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)を認識し、当業者に公知の任意の技術によって生成され得る抗体断片を含む。例えば、本明細書に開示されたFab及びF(ab’)2断片は、パパイン(Fab断片を生成するために)又はペプシン(F(ab’)2断片を生成するために)のような酵素を用いて免疫グロブリン分子のタンパク質分解切断によって生成され得る。Fab断片は、抗体分子の2個の同じアーム(arm)のいずれか一方に相応し、重鎖のVH及びCH1ドメインと対をなす完全な軽鎖を含有する。F(ab’)2断片は、ヒンジ領域で二硫化物結合によって連結された抗体分子の2個の抗原結合アームを含有する。
【0205】
また、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合断片はまた、当業界に公知の様々なファージディスプレイ方法を用いて生成され得る。ファージディスプレイ方法において、機能的抗体ドメインはそれらを暗号化するポリヌクレオチド配列を保有するファージ粒子の表面に表示される。特に、VH及びVLドメインを暗号化するDNA配列は、動物cDNAライブラリー(例えば、影響を受けた組織のマウス又はニワトリcDNAライブラリーのようなヒト又は非ヒト)から増幅される。VH及びVLドメインを暗号化するDNAはPCRによってscFvリンカーと共に組み換えられ、ファージミドベクター内にクローニングされる。大腸菌においてベクターを電気穿孔し、大腸菌をヘルパーファージに感染させる。これらの方法に用いられたファージは、典型的にfd及びM13を含む糸状(filamentous)ファージであり、そしてVH及びVLドメインは一般にファージ遺伝子III又は遺伝子VIIIに組換え的に融合される。特定抗原に結合する抗原結合ドメインを発現させるファージは、例えば標識された抗原又は固体表面又はビーズに結合したり捕獲された抗原を用いて抗原によって選択又は確認され得る。本明細書に開示された抗体を製造するために利用可能なファージディスプレイ方法の例は、次の文献に記載されている:Brinkman U et al.,(1995)J Immunol Methods 182:41-50;Ames RS et al.,(1995)J Immunol Methods 184:177-186;Kettleborough CA et al.,(1994)Eur J Immunol 24:952-958;Persic L et al.,(1997)Gene 187:9-18;Burton DR & Barbas CF(1994)Advan Immunol 57:191-280;PCT出願番号PCT/GB91/001134;国際公開番号WO90/02809号、WO91/10737号、WO92/01047号、WO92/18619号、WO93/11236号、WO95/15982号、WO95/20401号、及びWO97/13844号;及び米国特許番号第5,698,426号、第5,223,409号、第5,403,484号、第5,580,717号、第5,427,908号、第5,750,753号、第5,821,047号、第5,571,698号、第5,427,908号、第5,516,637号、第5,780,225号、第5,658,727号、第5,733,743号及び第5,969,108号。
【0206】
前記参照文献に記載されたように、ファージ選択後、ファージからの抗体コーディング領域は単離して、ヒト抗体又は任意の他の所望の抗原結合断片を含む全抗体を生成し、任意の所望の宿主で発現するように用いられ得るが、哺乳動物細胞、昆虫細胞、植物細胞、酵母及びバクテリアを含む任意の所望の宿主において、例えば下記記載のように発現する。Fab、Fab’及びF(ab’)2断片のような抗体断片を組換え的に生成する技術は、PCT公開WO92/22324;Mullinax RL et al.,(1992)BioTechniques 12(6):864-9;Sawai H et al.,(1995)Am J Reprod Immunol 34:26-34;及びBetter M et al.,(1988)Science240:1041-1043に記載されたような公知の方法によって実施され得る。
【0207】
一態様において、全抗体を生成するために、VH又はVLヌクレオチド配列、制限部位、及び制限部位を保護するための側面に位置する(flanking)配列を含むPCRプライマーを用いて、鋳型(template)からVH又はVL配列、例えばscFvクローンを増幅させることができる。当業者に公知のクローニング技術を用いて、PCR増幅されたVHドメインはVH定常領域を発現させベクター内にクローニングされ得、そしてPCR増幅されたVLドメインはVL定常領域、例えばヒトカッパ又はラムダ定常領域を発現させるベクター内にクローニングされ得る。VH及びVLドメインはまた、必要な定常領域を発現させる一つのベクター内にクローニングされ得る。重鎖転換ベクター及び軽鎖転換ベクターは続いて細胞株に共同形質感染され、当業者に公知の技術を用いて全長抗体、例えばIgGを発現させる安定的な又は一時的な細胞株を生成する。
【0208】
キメラ抗体は、抗体の互いに異なる部分が互いに異なる免疫グロブリン分子から由来した分子である。例えば、キメラ抗体は、ヒト抗体の定常領域に融合された非ヒト動物(例えば、マウス、ネズミ又はニワトリ)単クローン性抗体の可変領域を含有し得る。キメラ抗体を生成する方法は当業界に公知されている。例えば、Morrison SL(1985)Science 229:1202-7;Oi VT & Morrison SL(1986)BioTechniques 4:214-221;Gillies SD et al.,(1989)J Immunol Methods 125:191-202;及び米国特許番号第5,807,715号、第4,816,567号、第4,816,397号及び第6,331,415号参照。
【0209】
ヒト化した抗体はあらかじめ決定された抗原に結合でき、ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するフレームワーク領域及び非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を実質的に有するCDR(例えば、マウス又はニワトリ免疫グロブリン)を含む。特定の実施形態において、ヒト化した抗体はまた、免疫グロブリン定常領域(Fc)の少なくとも一部、典型的にヒト免疫グロブリンの一部を含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3及びCH4領域を含むことができる。ヒト化した抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA及びIgEを含む全ての種類の免疫グロブリン、及びIgG1、IgG2、IgG3及びIgG4を含む任意のアイソタイプから選択され得る。ヒト化した抗体は、次のように当業界に公知の様々な技術を用いて生産され得るが、これに制限されない:CDR-グラフティング(ヨーロッパ特許EP239400;国際公開番号WO91/09967;及び米国特許第5,225,539号、第5,530,101号及び第5,585,089号)、ベニヤリング(veneering)又は再舗装(resurfacing)(ヨーロッパ特許EP592106及びEP519596;Padlan EA(1991)Mol Immunol 28(4/5):489-498;Studnicka GM et al.,(1994)Prot Engineering 7(6):805-814;及びRoguska MA et al.,(1994)PNAS 91:969-973)、チェーンシャッフリング(米国特許第5,565,332号)、並びに、例えば米国特許第6,407,213号、米国特許第5,766,886号、国際公開WO93/17105;Tan P et al.,(2002)J Immunol 169:1119-25;Caldas C et al.,(2000)Protein Eng.13(5):353-60;Morea V et al.,(2000)Methods 20(3):267-79;Baca M et al.,(1997)J Biol Chem 272(16):10678-84;Roguska MA et al.,(1996)Protein Eng 9(10):895904;Couto JR et al.,(1995)Cancer Res.55(23 Supp):5973s-5977s;Couto JR et al.,(1995)Cancer Res 55(8):1717-22;Sandhu JS(1994)Gene 150(2):409-10及びPedersen JT et al.,(1994)7 Mol Biol 235(3):959-73に記載の技術。また、米国出願公開US2005/0042664A1(2005年2月24日)はその全文が本明細書に参照として含まれる。
【0210】
多重特異的(例えば、二重特異的抗体)を製造する方法は、例えば米国特許第7,951,917号;第7,183,076号;第8,227,577号;第5,837,242号;第5,989,830号;第5,869,620号;第6,132,992号及び第8,586,713号に記載されている。
【0211】
単一ドメイン抗体、例えば軽鎖を欠如している抗体は、当業界に公知の方法によって生成され得る。Riechmann L & Muyldermans S(1999)J Immunol 231:25-38;Nuttall SD et al.,(2000)Curr Pharm Biotechnol 1(3):253-263;Muyldermans S,(2001)J Biotechnol 74(4):277-302;米国特許第6,005,079号;及び国際公開番号WO94/04678、WO94/25591及びWO01/44301参照。
【0212】
また、FAM19A5抗原に免疫特異的に結合する抗体は結局、当業者に公知の技術を用いて抗原を“摸倣”する抗イディオタイプ抗体を生成するのに用いられ得る(例えば、Greenspan NS & Bona CA(1989)FASEB J7(5):437-444;及びNissinoff A(1991)J Immunol 147(8):2429-2438参照)。
【0213】
特定の実施形態において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体と同じFAM19A5のエピトープ(例えば、ヒトFAM19A5)に結合する本明細書に開示された抗体は、ヒト抗体又はその抗原結合断片である。特定の実施形態において、本明細書に開示の抗体がFAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に結合することを競合的に遮断する(例えば、容量依存的方式で)抗体(例えば、1-65)はヒト抗体又はその抗原結合断片である。
【0214】
ヒト抗体は当業界に公知の任意の方法を用いて生成され得る。例えば、機能性内因性免疫グロブリンを発現させることはできないが、ヒト免疫グロブリン遺伝子を発現させ得る遺伝子導入マウスが用いられ得る。特に、ヒト重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子複合体は無作為に又は相同組換えによってマウス胚性幹細胞内に導入され得る。代案として、ヒト可変領域、定常領域及び多様性領域は、ヒト重鎖及び軽鎖遺伝子以外にマウス胚性幹細胞内に導入され得る。マウス重鎖及び軽鎖免疫グロブリン遺伝子は相同組換えによってヒト免疫グロブリン遺伝子坐の導入と共に個別的に又は同時に非機能的になり得る。特に、JH領域の同型接合性(homozygous)欠失は、内因性抗体生成を防止する。変形された胚性幹細胞を拡張させ、胚盤胞(blastocysts)内に微細注射してキメラマウスを生産する。次いで、キメラマウスを育ててヒト抗体を発現させる同型子孫を生産する。遺伝子導入マウスは、選択された抗原、例えば抗原(例えば、FAM19A5)の全部又は一部によって正常な方式で免疫化される。抗原に対して指示された単クローン性抗体は、従来のハイブリドーマ技術を用いて免疫化された遺伝子導入マウスから得られる。形質転換マウスによって取り入れられたヒト免疫グロブリン転移遺伝子はB細胞分化の間に再配列され、続いてクラス転換及び体細胞突然変異を行う。したがって、このような技術を用いて治療的に有用なIgG、IgA、IgM及びIgE抗体を生成することができる。ヒト抗体を生成するためのこの技術に対する概要は、Lonberg N & Huszar D(1995)Int Rev Immunol 13:65-93を参照する。ヒト抗体及びヒト単クローン性抗体を生成するための当該技術及びこのような抗体を生成するためのプロトコルに対する詳細な議論は、例えば、国際公開WO98/24893、WO96/34096及びWO96/33735;及び米国特許第5,413,923号、第5,625,126号、第5,633,425号、第5,569,825号、第5,661,016号、第5,545,806号、第5,814,318号及び第5,939,598号を参照する。ヒト抗体を生成できるマウスの例は、XENOMOUSETM(Abgenix,Inc.;米国特許第6,075,181号及び第6,150,184号)、HUAB-MOUSETM(Mederex,Inc./Gen Pharm;米国特許第5,545,806号及び第5,569,825号)、TRANS CHROMO MOUSETM(Kirin)及びKM MOUSETM(Medarex/Kirin)を含む。
【0215】
FAM19A5に特異的に結合するヒト抗体(例えば、ヒトFAM19A5)は、ヒト免疫グロブリン配列から由来した抗体ライブラリーを用いて、上述したファージディスプレイ方法を含めて当業界に公知の様々な方法によって製造され得る。また、米国特許第4,444,887号、第4,716,111号及び第5,885,793号;及び国際公開WO98/46645、WO98/50433、WO98/24893、WO98/16654、WO96/34096、WO96/33735及びWO91/10741参照。
【0216】
一部の実施形態において、ヒト抗体はマウス-ヒトハイブリドーマを用いて生成され得る。例えば、エプスタインバールウイルス(EBV)で形質転換されたヒト末梢血液リンパ球は、マウス骨髄腫細胞と融合してヒト単クローン性抗体を分泌するマウス-ヒトハイブリドーマを生成することができ、そしてこれらのマウス-ヒトハイブリドーマは、標的抗原に免疫特異的に結合するヒト単クローン性抗体を分泌するもの(例えば、ヒトFAM19A5のようなFAM19A5)を決定するためにスクリーニングされ得る。かかる方法は当業界に公知及び記述されている。例えば、Shinmoto H et al.,(2004)Cytotechnology 46:19-23;Naganawa Y et al.,(2005)Human Antibodies 14:27-31参照。
【0217】
V.抗体の操作(engineering)方法
上記論議された通り、本明細書に開示されたVH及びVL配列を有する抗FAM19A5抗体は、VH及び/又はVL配列、又はこれに付着された定常領域を変形させることによって新しい抗FAM19A5抗体を生成するために利用可能である。したがって、本明細書に開示された他の態様において、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体の構造的特徴は、本明細書に開示された抗体の少なくとも1つの機能的特性、例えばヒトFAM19A5への結合を保有する構造的に関連した抗FAM19A5抗体を生成するために用いられる。例えば、操作方法の出発物質は、本明細書に提供のVH及び/又はVL配列、又はその1つ以上のCDR領域である。操作された抗体を生成するために、本明細書に提供された1つ以上のVH及び/又はVL配列又はその1つ以上のCDR領域を有する抗体を実際に製造(すなわち、タンパク質として発現)する必要はない。むしろ、配列に含まれた情報は出発物質として用いられて、元来の配列から由来した“第2世代”配列を生成した後、“第2世代”配列を製造し、タンパク質として発現する。
【0218】
したがって、本発明は次の段階を含む抗FAM19A5抗体の製造方法を提供する:
(a)(i)表3に提示されたCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列、又は表5に提示された重鎖可変領域のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む重鎖可変領域配列;及び(ii)表4に提示されたCDR1、CDR2及び/又はCDR3配列、又は表6に提示された重鎖可変領域のCDR1、CDR2及び/又はCDR3を含む軽鎖可変領域配列を提供する段階;
(b)少なくとも1つの変更された抗体配列を生成するために重鎖可変領域配列及び/又は軽鎖可変領域配列内に少なくとも1つのアミノ酸残基を変更させる段階;及び
(c)変更された抗体配列をタンパク質として発現させる段階。
【0219】
標準分子生物学技術を用いて変更された抗体配列を製造し発現させることができる。
【0220】
一部の実施形態において、変更された抗体配列によって暗号化された抗体は、本明細書に記載された抗FAM19A5抗体の機能的特性の一つ、一部又は全部を保有する抗体であり、これは次のを含む:
(1)ヒト対象で減少した免疫原性;
(2)例えば、Biacoreによって測定される時、10nM以下(例えば、0.01nM~10nM)のKDを有する可溶性ヒトFAM19A5への結合;
(3)例えば、ELISAによって測定される時、10nM以下(例えば、0.01nM~1nM)のKDを有する膜結合したヒトFAM19A5への結合;
(4)例えば、ELISAによって測定される時、1nM以下(例えば、0.01nM~1nM)のEC50を有する膜結合したヒトFAM19A5への結合;
(5)反応性神経膠症の発病減少、逆転、遅延及び/又は予防;
(6)反応性星状細胞の過度な増殖抑制;
(7)ニューロカン及びニューロン-神経膠抗原2(NG2)を含むコンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現減少;
(8)ニューロンの核でc-fos及びpERKの発現増加;
(9)ニューロンの生存促進;
(10)ニューロンでGAP43の発現増加;
(11)軸索の再成長促進;及び
(12)本明細書に開示された抗FAM19A5抗体を有するヒトFAM19A5に結合するためのいずれか一方向又は両方向競合。
【0221】
変更された抗体は、1以上、2以上、3以上、4以上、5以上、6以上、7以上、8以上、9以上、10以上、11、又は前記(1)~(12)に提示された全ての機能的特性を示すことができる。変形された抗体の機能的特性は当業界で利用可能であり及び/又は本明細書に記載の標準分析、例えば実施例(例えば、ELISA、FACS)に記載されたような標準分析を用いて評価され得る。
【0222】
本明細書に提示された抗体操作方法の特定の実施形態において、突然変異は抗FAM19A5抗体コーディング配列の全部又は一部に沿って無作為に又は選択的に導入され得、その結果として生成されて変形された抗FAM19A5抗体は、結合活性及び/又は本明細書に提示された他の機能的特性のためにスクリーニングされ得る。突然変異方法は当業界の技術分野に記述されている。例えば、ShortのPCT公開WO02/092780は、飽和突然変異誘発、合成ライゲーションアセンブリー又はこれらの組合せを用いて抗体突然変異を生成及びスクリーニングする方法を記述する。代案として、Lazar等のPCT公開WO03/074679では、抗体の物理化学的特性を最適化するために電算スクリーニング方法を用いる方法を記述する。
【0223】
VI.細胞及びベクター
特定の態様において、本発明は、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)及び関連ポリヌクレオチド及び発現ベクターに特異的に結合する本明細書に記述された抗体(又はその抗原結合断片)を発現させる(例えば、組換え的に)細胞(例えば、宿主細胞)(又はその抗原結合断片)を提供する。本発明は抗FAM19A5抗体を暗号化するヌクレオチド配列又は宿主細胞、例えば哺乳動物細胞における組換え発現のための断片を含むポリヌクレオチドを含むベクター(例えば、発現ベクター)を提供する。本発明はまた、本明細書に記述された抗FAM19A5抗体(例えば、ヒト又はヒト化した抗体)を組換え的に発現させるための当該ベクターを含む宿主細胞を提供する。特定の態様において、本発明は、宿主細胞からこのような抗体を発現させる、本明細書に記載された抗体の製造方法を提供する。
【0224】
FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に特異的に結合する本明細書に記述された抗体(例えば、全長抗体、抗体の重鎖及び/又は軽鎖、又は単鎖抗体)の組換え発現は、抗体を暗号化するポリヌクレオチドを含有する発現ベクターの構成を含む。本明細書に記載された抗体分子、重鎖及び/又は軽鎖、又はその断片(例えば、重鎖及び/又は軽鎖可変ドメイン)を暗号化するポリヌクレオチドが得られると、抗体分子を生成するためのベクターは当業界に公知の技術を利用する組換えDNA技術によって生成され得る。したがって、ヌクレオチド配列を暗号化する抗体又は抗体断片(例えば、軽鎖又は重鎖)を含有するポリヌクレオチドを発現させてタンパク質を製造する方法が本明細書に記載されている。当業者に公知の方法を用いて抗体又は抗体断片(例えば、軽鎖又は重鎖)コーディング配列及び適切な転写及び翻訳制御信号を含有する発現ベクターを構築することができる。これらの方法は、例えば、試験管内組換えDNA技術、合成技術及び生体内遺伝子組換えを含む。本発明はまた、本明細書に記載された抗体分子、抗体の重鎖又は軽鎖、抗体又はその断片の重鎖又は軽鎖可変ドメイン、又は作動可能にプロモーターに連結された重鎖又は軽鎖CDRを暗号化するヌクレオチド配列を含む複製可能なベクターを提供する。当該ベクターは、例えば抗体分子の定常領域を暗号化するヌクレオチド配列を含み(例えば、国際公開番号WO86/05807及びWO89/01036;及び米国特許番号第5,122,464号参照)、そして、抗体の可変ドメインは、全体重鎖、全体軽鎖、又は全体重鎖及び軽鎖の両方の発現のために当該ベクターにクローニングされ得る。
【0225】
発現ベクターは通常の技術によって細胞(例えば、宿主細胞)に伝達され得、次いで、生成された細胞は通常の技術によって培養されて本明細書に記載の抗体(例えば、本発明の抗FAM19A5抗体のVH及び/又はVL、又はVH及び/又はVL CDRのいずれか1つ以上を含む抗体)又はその断片を生成することができる。したがって、本発明は、本明細書に記載された抗体又はその断片、又はその重鎖又は軽鎖、又はその断片、又は宿主細胞において当該配列の発現のためのプロモーターに作動可能に連結された本発明の単鎖抗体を暗号化するポリヌクレオチドを含有する宿主細胞を提供する。特定の実施形態において、二本鎖連結された抗体の発現のために、重鎖及び軽鎖の両方を個別的に暗号化するベクターは、下記に詳述されるように、全体免疫グロブリン分子の発現のために宿主細胞で共同発現し得る。特定の実施形態において、宿主細胞は、本明細書に記載された抗体の重鎖及び軽鎖の両方を暗号化するポリヌクレオチド又はその断片を含むベクターを含有する。特定の実施形態において、宿主細胞は2個の異なるベクターを含有するが、第1ベクターは、本明細書に記載された抗体の重鎖又は重鎖可変領域を暗号化するポリヌクレオチド又はその断片を含み、及び第2ベクターは、本明細書に記載された抗体の軽鎖又は軽鎖可変領域をコーディングするポリヌクレオチド又はその断片を含む。他の実施形態において、第1宿主細胞は、本明細書に記載された抗体の重鎖又は重鎖可変領域を暗号化するポリヌクレオチドを含む第1ベクター又はその断片を含み、及び第2宿主細胞は、本明細書に記載された抗体の軽鎖又は軽鎖可変領域を暗号化するポリヌクレオチドを含む第2ベクターを含む。特定の実施形態において、重鎖/重鎖可変領域は、本明細書に記載された抗FAM19A5抗体又はその抗原結合断片を形成するために第2細胞の軽鎖/軽鎖可変領域と関連した第1細胞によって発現する。特定の実施形態において、本発明は、当該第1宿主細胞及び第2宿主細胞を含む宿主細胞の集団(population)を提供する。
【0226】
特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載された抗FAM19A5抗体の軽鎖/軽鎖可変領域を暗号化するポリヌクレオチドを含む第1ベクター、及び本明細書に記載された抗FAM19A5抗体の重鎖/重鎖可変領域を暗号化するポリヌクレオチドを含む第2ベクターを含むベクターの集団を提供する。
【0227】
様々な宿主発現ベクターシステムを用いて本明細書に記載の抗体分子を発現させることができる。当該宿主発現システムは、関心のあるコーディング配列が生成され、後続的に精製され得るビークルを表し、さらに、適切なヌクレオチドコーディング配列で形質転換又は形質感染される時、本明細書に記載の抗体分子を現場で発現させ得る細胞を表す。これらは次を含むが、これらに制限されない:組換えバクテリオファージDNA、プラスミドDNA又は抗体コーディング配列を含有するコスミドDNA発現ベクターで形質転換されたバクテリア(例えば、大腸菌及びB.サブチリス)のような微生物;抗体コーディング配列を含有する組換え酵母発現ベクターで形質転換された酵母(例えば、サッカロマイセスピキア);抗体コーディング配列を含有する組換えウイルス発現ベクター(例えば、バキュロウイルス)で感染された昆虫細胞システム;組換えウイルス発現ベクター(例えば、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV);タバコモザイクウイルス(TMV))で感染されたり抗体コーディング配列を含有する組換えプラスミド発現ベクター(例えば、Tiプラスミド)で形質転換された植物細胞システム(例えば、クラミドモナスレインハーディのような緑藻類);又は哺乳動物細胞のゲノム(例えば、メタルロチオネインプロモーター)又は哺乳動物ウイルス(例えば、アデノウイルス後期プロモーター;ワクシニアウイルス7.5Kプロモーター)から由来したプロモーターを含有する組換え発現構成物を収得する哺乳動物細胞システム(例えばCOS(例えば、COS1又はCOS)、CHO、BHK、MDCK、HEK293、NSO、PER.C6、VERO、CRL7030、HsS78Bst、HeLa及びNIH3T3、HEK-293T、HepG2、SP210、R1.1、B-W、L-M、BSC1、BSC40、YB/20及びBMT10細胞)。特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合断片を発現させるための細胞は、CHO細胞、例えばCHO GS SYSTEMTM(Lonza)のCHO細胞である。特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体を発現させるための細胞は、ヒト細胞、例えばヒト細胞株である。特定の実施形態において、哺乳動物発現ベクターは、POPTIVECTM又はpcDNA3.3である。特定の実施形態において、特に全体組換え抗体分子の発現のために大腸菌のようなバクテリア細胞又は真核細胞(例えば、哺乳動物細胞)が組換え抗体分子の発現に用いられる。例えば、ヒトサイトメガロウイルスからの主要中間初期遺伝子プロモーター要素のようなベクターと共に中国ハムスター卵巣(CHO)細胞のような哺乳動物細胞は、抗体に対する効果的な発現システムである(Foecking MK & Hofstetter H(1986)Gene 45:101-5;及びCockett MI et al.,(1990)Biotechnology 8(7):662-7)。特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体は、CHO細胞又はNSO細胞によって生成される。特定の実施形態において、FAM19A5(例えば、ヒトFAM19A5)に免疫特異的に結合する本発明の抗体を暗号化するヌクレオチド配列の発現は、構成的プロモーター、誘導性プロモーター又は組織特異的プロモーターによって調節される。
【0228】
バクテリアシステムにおいて、発現する抗体分子に意図された用途によって多数の発現ベクターが有利に選択され得る。例えば、大量の当該抗体が生成される時、抗体分子の薬学組成物の生成のために、容易に精製された高いレベルの融合タンパク質生成物の発現を指示するベクターが好ましいだろう。このようなベクターは、大腸菌発現ベクターpUR278(Ruether U & Mueller-Hill B(1983)EMBO J2:1791-1794)を含むが、これに制限されず、ここで、抗体コーディング配列は、融合タンパク質が生成されるようにlac Zコーディング領域のフレーム内ベクター;pINベクター(Inouye S & Inouye M(1985)Nuc Acids Res 13:3101-3109;Van Heeke G & Schuster SM(1989)J Biol Chem 24:5503-5509);などに個別的にライゲーションされ得る。例えば、pGEXベクターは、グルタチオン5-転移酵素(GST)との融合タンパク質として外来ポリペプチドを発現させるために用いられ得る。一般に、このような融合タンパク質は可溶性であり、マトリックスグルタチオンアガロース(agarose)ビーズに吸着及び結合した後、ガラスグルタチオンの存在の下に溶離させることによって、溶菌(lysed)された細胞から容易に精製され得る。pGEXベクターは、クローニングされた標的遺伝子生成物がGSTモイエティ(moiety)から放出され得るようにトロンビン又は因子Xaプロテアーゼ切断部位を含むように設計される。
【0229】
昆虫システムにおいて、オートグラファカルフォルニカ(Autographa californica)核ポリヘドリンウイルス(AcNPV)は、例えば外来遺伝子を発現させるベクターとして用いられ得る。ウイルスは、スポドプテラフルギペルダ(Spodoptera frugiperda)細胞で成長する。抗体コーディング配列はウイルスの非必須領域(例えば、ポリヘドリン遺伝子)に個別的にクローニングされ得、AcNPVプロモーター(例えば、ポリヘドリンプロモーター)の制御下に置かれ得る。
【0230】
哺乳動物宿主細胞において、多数のウイルス基盤発現システムが用いられ得る。アデノウイルスが発現ベクターとして用いられる場合、関心のある抗体コーディング配列は、アデノウイルス転写/翻訳制御複合体、例えば後期プロモーター及び3重リーダー配列に連結され得る。続いて、このキメラ遺伝子は試験管内又は生体内組換えによってアデノウイルスゲノムに挿入され得る。ウイルスゲノムの非必須領域(例えば、領域E1又はE3)における挿入は、感染された宿主で抗体分子を発現可能であり且つ生存可能な組換えウイルスを招くだろう(例えば、Logan J & Shenk T(1984)PNAS 81(12):3655-9参照)。挿入された抗体コーディング配列の効率的な翻訳のために特定開始信号が必要であることもある。これらの信号は、ATG開始コドン及び隣接配列を含む。また、開始コドンは全体挿入物の翻訳を保障するために所望のコーディング配列の判読フレームと同じ位相でなければならない。これらの外因性翻訳制御信号及び開始コドンは天然及び合成両方の様々な起源であり得る。適切な転写増進因子(enhancer)要素、転写終結因子(terminator)などを含めることによって発現効率を向上させることができる(例えば、Bitter G et al.,(1987)Methods Enzymol.153:516-544参照)。
【0231】
また、挿入された配列の発現を調節したり、所望の特定方式で遺伝子生成物を変形及び加工する宿主細胞菌株を選択することができる。タンパク質生成物の当該変形(例えば、グリコシル化)及び加工(例えば、切断)はタンパク質の機能に重要であり得る。個別の宿主細胞はタンパク質及び遺伝子生成物の翻訳後加工及び変形のための特徴的で且つ特異的なメカニズムを有する。発現した外来タンパク質の正確な変形及び加工を保障するために適切な細胞株又は宿主システムが選択され得る。そのために、遺伝子生成物の一次転写、グリコシル化及びリン酸化の適切な処理のための細胞機構(cellular machinery)を保有する真核生物(eukaryotic)宿主細胞が用いられ得る。このような哺乳動物宿主細胞は次のようなものを含むが、これらに制限されない:CHO、VERO、BHK、Hela、MDCK、HEK293、NIH3T3、W138、BT483、Hs578T、HTB2、BT20及びT47D、NSO(任意の免疫グロブリン鎖を内生的に生成しないマウス骨髄腫細胞株)、CRL7030、COS(例えば、COS1又はCOS)、PER.C6、VERO、HsS78Bst、HEK-293T、HepG2、SP210、R1.1、B-W、L-M、BSC1、BSC40、YB/20、BMT10及びHsS78Bst細胞。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗FAM19A5抗体は、哺乳動物細胞、例えばCHO細胞で生成される。
【0232】
特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合部分はフコース含有量が減少したり或いはフコース含有量がない。このような抗体は当業者に公知の技術を用いて生成され得る。例えば、抗体はフコシル化能力がないか不足する細胞で発現し得る。特定例において、1,6-フコシル転移酵素の両側対立遺伝子のノックアウト(knockout)を有する細胞株は、フコース含有量が減少した抗体又はその抗原結合部分を生成するのに用いられ得る。POTELLIGENT(登録商標)システム(Lonza)は、フコース含有量が減少した抗体又はその抗原結合部分を生成するのに用いられ得る当該システムの例である。
【0233】
組換えタンパク質の長期間、高収率生産のために、安定した発現細胞が生成され得る。例えば、本明細書に記載の抗FAM19A5抗体を安定的に発現する細胞株は、その抗原結合部分を操作することができる。特定の実施形態において、本明細書に提供された細胞は、本明細書に記載の抗体又はその抗原結合部分を形成するようにアソシエートされた軽鎖/軽鎖可変ドメイン及び重鎖/重鎖可変ドメインを安定的に発現する。
【0234】
特定の態様において、ウイルス複製起源を含有する発現ベクターを使用する代わりに、宿主細胞は適切な発現制御要素(例えば、プロモーター、増進因子、配列、転写終結因子、ポリアデニル化部位など)及び選択可能なマーカーによって制御されるDNAで形質転換され得る。外来DNA/ポリヌクレオチドの導入後、操作された細胞は濃縮培地で1~2日間成長した後、選択培地に転換され得る。組換えプラスミドで選別可能なマーカーは選別に対する耐性を付与し、細胞がプラスミドをそれらの染色体に安定的に統合し成長して病巣(foci)を形成し、結果として細胞株にクローニングされ拡張され得るようにする。この方法は、本明細書に記載の抗FAM19A5抗体又はその抗体結合部分を発現する細胞株を操作するのに有利に用いられ得る。このような操作された細胞株は、特に抗体分子と直接又は間接的に相互作用する組成物のスクリーニング及び評価に有用であり得る。
【0235】
ヘルペスシンプレックスウイルスチミジンキナーゼ(Wigler M et al.,(1977)Cell 11(1):223-32)、ハイポキサンチングアニンホスホリボシル転移酵素(Szybalska EH & Szybalski W(1962)PNAS 48(12):2026-2034)及びアデニンホスホリボシル転移酵素(Lowy I et al.,(1980)Cell 22(3):817-23)遺伝子を非制限的に含む数多くの選択システムがそれぞれ、tk-、hgprt-又はaprt-細胞に用いられ得る。また、抗代謝物質耐性は次の遺伝子に対する選択の基礎として用いられ得る:メトトレキサートに対する耐性を付与するdhfir(Wigler M et al.,(1980)PNAS 77(6):3567-70;O’Hare K et al.,(1981)PNAS 78:1527-31);ミコフェノール酸に対する耐性を付与するgpt(Mulligan RC & Berg P(1981)PNAS 78(4):2072-6);アミノグリコシドG-418に対する耐性を付与するneo(Wu GY & Wu CH(1991)Biotherapy 3:87-95;Tolstoshev P(1993)Ann Rev Pharmacol Toxicol 32:573-596;マリガンRC(1993)Science 260:926-932;及びMorgan RA & Anderson WF(1993)Ann Rev Biochem 62:191-217;Nabel GJ & Feigner PL(1993)Trends Biotechnol 11(5):211-5);及びハイグロマイシンに対する耐性を付与するhygro(Santerre RF et al.,(1984)Gene 30(1-3):147-56)。組換えDNA技術分野で通常の公知された方法は所望の組換えクローンを選択するために日常的に適用可能であり、当該方法は、例えば次の文献に記述され、それらはその全文が本明細書に参照として含まれる:Ausubel FM et al.,(eds.)、Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley & Sons,NY(1993);Kriegler M,Gene Transfer and Expression,A Laboratory Manual,Stockton Press,NY(1990);及びChapters 12 and 13,Dracopoli NC et al.,(eds.)、Current Protocols in Human Genetics,John Wiley & Sons,NY(1994);Colbere-Garapin F et al.,(1981)J Mol Biol 150:1-14。
【0236】
抗体分子の発現レベルはベクター増幅によって増加され得る(検討のためにBebbington CR & Hentschel CCG参照、DNAクローニングにおいて哺乳動物細胞でクローニングされた遺伝子の発現のための遺伝子増幅に基づくベクターの使用、Vol 3(Academic Press,New York,1987)。抗体を発現するベクターシステムでマーカーが増幅され得る場合、宿主細胞培養に存在する抑制剤レベルの増加はマーカー遺伝子の複製数を増加させるだろう。増幅された領域は抗体遺伝子と関連しているので、抗体の生成も増加するだろう(Crouse GF et al.,(1983)Mol Cell Biol 3:257-66)。
【0237】
宿主細胞は、本明細書に記述の2個以上の発現ベクター、すなわち重鎖由来ポリペプチドを暗号化する第1ベクター及び軽鎖由来ポリペプチドを暗号化する第2ベクターで共同形質感染され得る。2個のベクターは重鎖及び軽鎖ポリペプチドの同一発現を可能にする、同一で且つ選択可能なマーカーを含有し得る。宿主細胞は異なる量の2個以上の発現ベクターで共同形質感染され得る。例えば、宿主細胞は第1発現ベクター及び第2発現ベクターのうち、次のいずれかの比率で形質感染され得る:1:1、1:2、1:3、1:4、1:5、1:6、1:7、1:8、1:9、1:10、1:12、1:15、1:20、1:25、1:30、1:35、1:40、1:45又は1:50。
【0238】
代案として、重鎖及び軽鎖ポリペプチドの両方を暗号化し発現できる単一ベクターが用いられ得る。このような状況で、過量の無毒性重鎖を避けるために軽鎖を重鎖の前に位置させなければならない(Proudfoot NJ(1986)Nature 322:562-565;及びKohler G(1980)PNAS 77:2197-2199)。重鎖及び軽鎖に対するコーディング配列はcDNA又はゲノムDNAを含むことができる。発現ベクターはモノシストロン性又はマルチシストロン性であり得る。マルチシストロン性核酸構成物は、2、3、4、5、6、7、8、9、10以上、又は2~5、5~10又は10~20遺伝子/ヌクレオチド配列の範囲を暗号化できる。例えば、バイシストロン性核酸構成物は次の順序にプロモーター、第1遺伝子(例えば、本明細書に記述された抗体の重鎖)、及び第2遺伝子(例えば、本明細書に記述された抗体の軽鎖)を含むことができる。このような発現ベクターにおいて、両遺伝子の転写はプロモーターによって駆動され得るが、第1遺伝子からのmRNAの翻訳はキャップ依存的スキャニングメカニズムによって行われ得、第2遺伝子からのmRNAの翻訳は、例えば、IRESによるキャップ独立的メカニズムによって行われ得る。
【0239】
本明細書に記載された抗体分子が組換え発現によって生成されると、抗体分子は免疫グロブリン分子の精製のために当業界に公知の任意の方法、例えばクロマトグラフィー(例えば、イオン交換、親和度、特にタンパク質A後の特定抗原に対する親和度、及びサイジングカラムクロマトグラフィー)、遠心分離、差等溶解度、又はタンパク質精製のための任意の他の標準技術によって精製され得る。また、本明細書に記載された抗体は、精製を容易にするために、本明細書に記載又は当業界に公知の異種ポリペプチド配列に融合され得る。
【0240】
特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合部分は単離又は精製される。一般に、単離した抗体は、単離した抗体と異なる抗原特異性を有する他の抗体が実質的にない抗体である。例えば、特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体の製剤は、実質的に細胞物質及び/又は化学前駆体がない。“細胞物質が実質的にない”という語句は、抗体が単離したり組換え的に生成される細胞の細胞成分から抗体が分離される抗体の製剤を含むという意味である。したがって、実質的に細胞物質がない抗体は、異種性タンパク質(本明細書において“汚染タンパク質”とも呼ばれる。)が約30%、20%、10%、5%、2%、1%、0.5%又は0.1%未満(乾燥重量基準)である抗体の製剤及び/又は抗体の変異体、例えば、異なる翻訳後修飾形態の抗体又は異なるバージョンの抗体(又は抗体結合部分)を有する抗体の製剤を含む。抗体が組換え的に生成される時、また一般的に培養培地が実質的になく、すなわち、培養培地はタンパク質製剤の体積の約20%未満、10%未満、2%、1%、0.5%又は0.1%を示す。抗体が化学的合成によって生成される場合、一般的に化学的前駆体又は他の化学物質が実質的になく、すなわち、タンパク質の合成に関与する化学的前駆体又は他の化学物質から分離される。したがって、このような抗体の製剤は関心抗体以外の化学的前駆体又は化合物の約30%、20%、10%又は5%未満(乾燥重量基準)を有する。特定の実施形態において、本明細書に記載の抗体は単離又は精製される。
【0241】
VII.分析
本明細書に記載された抗体は、例えば標準ELISAによってFAM19A5への結合に対して試験できる。簡単にいうと、微量定量(microtiter)プレートをPBS中の1~2μg/ml精製FAM19A5でコーティングした後、PBS中の5%ウシ血清アルブミンで遮断した。抗体の希釈液(例えば、FAM19A5-免疫化されたマウスからの血漿の希釈液)を各ウェルに添加して37℃で1~2時間培養する。プレートをPBS/Tweenで洗浄した後、37℃で1時間ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)に共役結合した2次試薬(例えば、ヒト抗体の場合、ヤギ-抗ヒトIgG Fc特異的多クローン性試薬)と共に培養する。洗浄後、プレートにABTS基質(Moss Inc.、製品:ABTS-1000)を展開し、OD 415~495で分光光度計で分析した。免疫化されたマウスからの血清は次に、ヒトFAM19A5を発現する細胞株に結合するために流動細胞測定法によってさらにスクリーニングされるが、FAM19A5を発現しない対照群細胞株には結合しない。簡単にいうと、1:20希釈でFAM19A5発現CHO細胞を抗FAM19A5抗体と共に培養することによって抗FAM19A5抗体の結合を評価する。細胞を洗浄し、PE標識された抗ヒトIgG Abで結合を検出した。流細胞(flow cytometric)分析はFACScan流細胞分析(Becton Dickinson,San Jose,CA)を用いて行われる。好ましくは、最高の力価を発生させるマウスが融合に用いられるだろう。
【0242】
上述したようなELISA分析法は、FAM19A5免疫源と陽性反応性を表す抗体を生成する抗体及びハイブリドーマをスクリーニングするために用いることができる。好ましくは、FAM19A5に高い親和力で結合する抗体を生成するハイブリドーマをサブクローニングし、さらに特性化することができる。(ELISAによって)親細胞の反応性を維持する各ハイブリドーマから一つのクローンが細胞バンクを作り、抗体精製のために選択され得る。
【0243】
抗FAM19A5抗体を精製するために、選択されたハイブリドーマは単クローン性抗体精製のために2リットルスピンナーフラスコで成長することができる。タンパク質Aセファロース(Pharmacia,Piscataway,NJ)への親和性クロマトグラフィー前に上澄液を濾過し濃縮させることができる。溶離されたIgGはゲル電気泳動及び高性能液体クロマトグラフィーで確認して純度を保障することができる。緩衝溶液はPBSに交換され、濃度は1.43消滅係数を用いてOD 280によって決定され得る。単クローン性抗体は分取され、-80℃で保存され得る。
【0244】
選択された抗FAM19A5単クローン性抗体が独特のエピトープに結合するかどうかを決定するために、各抗体は市販の試薬(Pierce,IL)を用いてビオチン化され得る。ビオチン化されたMAb結合はストレプトアビジン標識されたプローブ(probe)で検出され得る。非標識された単クローン性抗体及びビオチン化された単クローン性抗体を使用した競合研究は、前記記載されたFAM19A5コーティングされたELISAプレートを用いて行うことができる。
【0245】
精製された抗体のアイソタイプを決定するために、アイソタイプELISAは、特定アイソタイプの抗体に特異的な試薬を用いて行うことができる。例えば、ヒト単クローン性抗体のアイソタイプを決定するために、微量定量プレートのウェルを4℃で一晩中1μg/mlの抗ヒト免疫グロブリンでコーティングすることができる。1% BSAで遮断した後、プレートを周囲温度で1~2時間1μg/ml以下の試験単クローン性抗体又は精製されたアイソタイプ対照群と反応させる。続いて、ウェルをヒトIgG1又はヒトIgM特異的アルカリ性ホスファターゼ共役結合したプローブと反応させることができる。プレートには前述の通りに展開され分析される。
【0246】
FAM19A5を発現する生きている細胞に対する単クローン性抗体の結合を試験するために、実施例に記載されるように流細胞分析法を用いることができる。簡単にいうと、膜結合FAM19A5(標準成長条件下で成長)を発現する細胞株は4℃で1時間0.1% BSAを含有するPBSで様々な濃度の単クローン性抗体と混合される。洗浄後、細胞を1次抗体染色と同じ条件下でフルオレセイン(Fluorescein)標識された抗IgG抗体と反応させる。サンプルは、単一細胞上にゲートするために光及び側面散乱特性を用いてFACScan機器によって分析することができ、標識された抗体の結合が決定される。蛍光顕微鏡法を用いる他の分析法が流細胞分析法に加えて又は代案として用いられ得る。細胞は、前記記述された通りに正確に染色され、蛍光顕微鏡によって検査され得る。この方法を用いると個別の細胞を視角化できるが、抗原の密度によって感度が減少し得る。
【0247】
ウェスタンブロットによってFAM19A5抗原との反応性に対して抗FAM19A5抗体をさらに試験することができる。簡単にいうと、FAM19A5を発現する細胞からの細胞抽出物を製造し、ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリラミドゲル電気泳動することができる。電気泳動後、分離された抗原をニトロセルロース膜に移し、20%マウス血清で遮断し、試験する単クローン性抗体で調査する。IgG結合は抗IgGアルカリ性ホスファターゼを用いて検出され、BCIP/NBT基質錠剤(Sigma Chem.Co.,St.Louis,MO)で現像され得る。
【0248】
様々な抗FAM19A5抗体の結合親和度、交差反応性及び結合動力学を分析する方法は、当業界に公知の標準分析法、例えばBIACORETM2000SPR機構(Biacore AB,Uppsala,Sweden)を使用するBIACORETM表面プラズモン共鳴(SPR)分析を含む。
【0249】
一実施形態において、抗体は、可溶性形態のヒトFAM19A5に特異的に結合する。一実施形態において、抗体は膜結合形態のヒトFAM19A5に特異的に結合する。抗体はFAM19A5の特定エピトープに特異的に結合できる(例えば、SEQ ID NO:15又はSEQ ID NO:15内の断片)。特定の実施形態において、抗体は好ましくは高い親和度でヒトFAM19A5に結合し、タンパク質のFAM19サブファミリーの他のメンバーと交差反応しない。
【0250】
VIII.二重特異的分子
本明細書に記載された抗体は、二重特異的分子を形成するのに用いられ得る。抗FAM19A5抗体又はその抗原結合部分は、他の機能性分子、例えば他のペプチド又はタンパク質(例えば、受容体に対する他の抗体又はリガンド)に誘導されたり連結されて少なくとも2個の互いに異なる結合部位又は標的分子に結合する二重特異性分子を生成することができる。IL-6、CNTF、LIF、EGF及びTGFaのようなサイトカインはタンパク質信号トランスデューサー(transducer)及び転写3の活性化剤(STAT3)を活性化させることによって神経膠症及び/又は反応性星状膠細胞症(astrogliosis)の発病のトリガーとして関与してきており(Balasingam et al.,J.Neurosci.l4(2):846-56(1994);Winter et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.U SA 20;92(13):5865-9(1995))、これは、CNS損傷後反応性星状膠細胞症の多い様相を調節する。Herrmann J.E.et al.,J.Neurosci.28(28):7231-7243(2008)。例えば、STAT3の不在又は減少は膠細胞繊維酸性タンパク質(GFAP)の弱化した上向き調節、星状細胞肥大の失敗、及び炎症の拡散増加、病変体積増加及びCNS損傷後部分的に弱化した運動回復を招く。Herrmann J.E.et al.,J.Neurosci.28(28):7231-7243(2008)。したがって、例えば、抗FAM19A5抗体は、組合せ治療のための神経膠症の発病及び/又は反応性星状膠細胞症の過度な増殖に関与する任意のタンパク質に特異的に結合する抗体又はscFv、例えばIL-6、CNTF、LIF、EGF又はTGFaに対する抗体に連結され得る。
【0251】
また、抗FAM19A5抗体は、対象の中枢神経系損傷(例えば、外傷性脳損傷、脳脊髓損傷、脳卒中又は脳腫瘍)、脳脊髓系損傷、退行性脳障害(例えば、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ALS)、退行性脳脊髓又は神経障害又は神経病性疼痛を含む疾患又は障害を治療する抗体又はscFvに連結され得る(セクションXIIの疾患又は障害参照)。例えば、抗FAM19A5抗体は、多発性硬化症を治療する抗体又はscFv、例えばNatalizumab(TYSABRI(登録商標))、Alemtuzumab(LEMTRADA(登録商標))に連結され得る。
【0252】
本明細書に記述された抗体は、実際に2個以上の互いに異なる結合部位及び/又は標的分子に結合する多重特異的分子を生成するために、1つ以上の他の機能性分子に誘導されたり連結され得;このような多重特異的分子はまた、本明細書に用いられた用語“二重特異的分子”によって含まれるように意図される。本明細書に記載の二重特異的分子を生成するために、本明細書に記載された抗体は、1つ以上の他の結合分子、例えばさらに他の抗体、その抗体結合部分、ペプチド又は摸倣結合体(binding mimetic)に機能的に連結され得る(例えば、化学的結合、遺伝子融合、非共有結合又はその他の方式によって)。一実施形態において、二重特異的分子はFAM19A5及びVEGFに結合する。他の実施形態において、二重特異的分子はFAM19A5及びEGFに結合する。
【0253】
したがって、本発明は、FAM19A5に対する少なくとも1つの第1結合特異性及び第2標的エピトープに対する第2結合特異性を含む二重特異的分子を提供する。二重特異的分子が多重特異的である本発明の実施形態において、分子は第3結合特異性をさらに含むことができる。
【0254】
一実施形態において、本明細書に記載された二重特異的分子は、例えばFab、Fab’、F(ab’)2、Fv、又は単鎖Fv(scFv)を含む1つ以上の抗体又はその抗体結合部分を結合特異性として含む。抗体はまた、軽鎖又は重鎖二量体、又はその任意の最小断片、例えばLadner等の米国特許第4,946,778号に記述されたようなFv又は単鎖構成物であり得、前記特許の内容は参照として含まれる。
【0255】
ヒト単クローン性抗体が好ましいが、本明細書に記載の二重特異的分子に用いられ得る他の抗体は、マウス、キメラ及びヒト化した単クローン性抗体である。
【0256】
本明細書に記載の二重特異的分子は、当業界に公知の方法を用いて構成成分結合特異性を共役結合することによって製造され得る。例えば、二重特異性分子の各結合特異性は個別的に生成された後に互いに共役結合し得る。結合特異性がタンパク質又はペプチドである場合、共有共役結合のために様々なカップリング剤又は架橋剤が用いられ得る。架橋剤の例には、タンパク質A、カルボジイミド、N-スクシンイミジル-S-アセチル-チオアセテート(SATA)、5,5’-ジチオビス(2-ニトロベンゾ酸)(DTNB)、o-フェニレンジマレイミド(oPDM)、N-スクシンイミジル-3-(2-ピリジルジチオ)プロピオネート(SPDP)及びスルホスクシンイミジル4-(N-マレイミドメチル)シクロヘキサン-1-カルボキシレート(スルホ-SMCC)がある(例えば、Karpovsky et al.,(1984)J.Exp.Med. 160:1686;Liu,MA et al.,(1985)Proc.Natl Acad.Sci.USA 82:8648参照)。他の方法は、Paulus(1985)Behring Ins.Mitt.78,118-132;Brennan et al.,(1985)Science 229:81-83)及びGlennie et al.,(1987)J.Immunol.139:2367-2375参照)。好ましい共役結合剤(conjugating agents)は、Pierce Chemical Co.(Rockford,IL)から入手可能なSATA及びスルホ-SMCCである。
【0257】
結合特異性が抗体である場合、これらは2個の重鎖のC末端ヒンジ領域のスルフヒドリル結合によって共役結合し得る。特に好ましい実施形態において、ヒンジ領域は、共役結合前に奇数、好ましくは一つのスルフヒドリル残基を含有するように変形される。
【0258】
代案として、両結合特異性は同一ベクターで暗号化され、同一宿主細胞で発現及び集合され得る。この方法は、二重特異性分子がmAb x mAb、mAb x Fab、mAb x(scFv)2、Fab x F(ab’)2又はリガンド x Fab融合タンパク質である場合に特に有用である。二重特異的抗体は、各重鎖のC末端にscFvを有する抗体を含むことができる。本明細書に記載された二重特異的分子は、一つの単鎖抗体及び結合決定因子を含む単鎖分子、又は2個の結合決定因子を含む単鎖二重特異的分子であり得る。二重特異的分子は少なくとも2個の単鎖分子を含むことができる。二重特異的分子の製造方法は、例えば米国特許番号5,260,203;米国特許番号5,455,030;米国特許番号4,881,175;米国特許番号5,132,405;米国特許番号5,091,513;米国特許番号5,476,786;米国特許番号5,013,653;米国特許番号5,258,498;及び米国特許番号5,482,858に記述されている。
【0259】
二重特異的分子のそれらの特異的標的に対する結合は、酵素結合免疫吸着分析(ELISA)、放射線免疫分析(RIA)、FACS分析、生体分析(例えば、成長抑制)又はウェスタンブロット分析のような当業界に公知の方法を用いて確認され得る。これらの各分析は、一般に、関心のある複合体に特異的な標識された試薬(例えば、抗体)を使用することによって、特に関心のあるタンパク質-抗体複合体の存在を検出する。
【0260】
IX.診断
一実施形態において、抗FAM19A5抗体に付着されたモイエティは、結合モイエティ、標識モイエティ及び生物学的活性モイエティからなる群から選ばれる。
【0261】
本明細書に記載された抗体は、サンプル試験及び生体内映像化を含めて診断目的に用いることができ、そのために、抗体(又はその結合部分)を適切な検出試薬(agent)に共役結合させて免疫接合体を形成することができる。診断目的のために、適切な試薬は、全身映像化のための放射性同位元素、及び放射性同位元素、酵素、蛍光ラベル及びサンプル試験に適した他の抗体タグを含む検出可能なラベルである。
【0262】
検出可能なラベルは、試験管内診断分野で現在用いられる様々な類型のいずれであってもよく、その例には、コロイド性金のような金属ゾル、N2S2、N3S又はN4タイプのペプチドキレート剤と共に提供されたI125又はTc99のような同位元素を含む微粒子ラベル、蛍光マーカー、発光マーカー、燐光マーカーなどを含む発色団、与えられた物質を検出可能なマーカーに転換させる酵素ラベル、及び増幅後に例えばポリメラーゼ連鎖反応によって現れるポリヌクレオチドタグがある。適切な酵素ラベルは、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼなどを含む。例えば、ラベルは、アダマンチルメトキシホスホリルオキシフェニルジオキセタン(AMPPD)、ジナトリウム3-(4-(メトキシスピロ{1,2-ジオキセタン-3,2’-(5’-クロロ)トリシクロ{3.3.1,13,7}デカン}-4-イル)フェニルホスフェート(CSPD)のような1,2-ジオキセタン物質の転換後に化学発光の存在又は形成を測定することによって検出される酵素アルカリ性ホスファターゼの他にも、CDP及びCDP-star(登録商標)又は当業界に公知のその他発光性物質、例えばテルビウム(III)及びユウロピウム(III)のような適切なランタニドのキレートであり得る。検出手段は選択されたラベルによって決定される。ラベル又はその反応生成物の外観は、ラベルが微粒子であり且つ適切なレベルに蓄積された場合、肉眼で識別したり、又は標準慣行にしたがって分光光度計、発光計、蛍光計などのような機構を用いて識別することができる。
【0263】
本明細書に記載の抗体はまた、抗体-薬物接合体(ADC)のような免疫接合体を形成するために治療剤に共役結合され得る。適切な治療剤は、神経膠症及び/又は反応性星状膠細胞症の発病調節剤及び/又は退行性脳障害、中枢神経系損傷又は神経病性疼痛治療剤を含む。退行性脳障害を治療するための治療剤は、ハンチントン病(Huntington’s disease)、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症及び筋萎縮性側索硬化症(ALS)を治療するための薬物を含む。これは、退行性脳障害を治療するために通常用いられる薬物、例えばセクションXIIに説明された薬物を含む。
【0264】
免疫接合体は当業界に公知の方法によって製造され得る。好ましくは、共役結合方法は実質的に(又はほぼ)非免疫原性連結、例えばペプチド-(すなわち、アミド-)、スルフィド-、(立体的に妨げられる)、ジスルフィド-、ヒドラゾン-及びエーテル連結を招く。これらの連結はほぼ非免疫原性であり、血清内で適切な安定性を示す(例えば、Senter,P.D.,Curr.Opin.Chem.Biol.13(2009)235-244;WO2009/059278;WO95/17886参照)。
【0265】
モイエティ及び抗体の生化学的性質によって、異なる共役結合戦略が用いられ得る。モイエティが50~500個アミノ酸の自然発生又は組換えである場合、タンパク質共役結合体の合成のための化学を記述する教科書に標準手順があり、当業者はこれに容易に従うことができる(例えば、Hackenberger,C.P.R.,and Schwarzer,D.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.47(2008)10030-10074参照)。一実施形態において、マレイニミドモイエティと抗体又はモイエティ内のシステイン残基との反応が用いられる。これは、例えば、抗体のFab又はFab’-断片が用いられる場合に特に適切な結合(coupling)化学である。代案として、一実施形態において、抗体又はモイエティのC末端に結合することが行われる。タンパク質、例えばFab-断片のC末端変形は記載の通りに実施され得る(Sunbul,M.and Yin,J.,Org.Biomol.Chem.7(2009)3361-3371)。
【0266】
一般に、部位特異的反応及び共有結合は、存在する他の官能基の反応性と直交する(orthogonal)反応性を有する天然アミノ酸をアミノ酸に変換させることに基づく。例えば、希少な配列コンテクスト内の特異的なシステインはアルデヒドにおいて酵素的に転換され得る(Frese,M.A.and Dierks,T.,ChemBioChem.10(2009)425-427参照)。与えられた配列コンテクストにおいて天然アミノ酸と特定酵素の特異的酵素反応性を用いて所望のアミノ酸変形を得ることも可能である(例えば、Taki,M.el.,Prot.Eng.Des.Sel.17(2004)119-126;Gautier,A.et al.,Chem.Biol.15(2008)128-136参照)。プロテアーゼ-触媒化されたC-N結合形成は、Bordusa,F.,Highlights in Bioorganic Chemistry(2004)389-403)によって用いられる。
【0267】
部位特異的反応及び共有結合はまた、末端アミノ酸と適切な変形試薬の選択的反応によって達成され得る。ベンゾニトリルとN末端システインの反応性(Ren,H.et al.,Angew.Chem.Int.Ed.Engl.48(2009)9658-9662参照)は部位特異的共有結合を達成するために用いられ得る。天然化学的ライゲーションはまた、C末端システイン残基に依存し得る(Taylor,E.Vogel;Imperiali,B,Nucleic Acids and Molecular Biology(2009)、22(Protein Engineering)、65-96)。
【0268】
EP1074563は正に荷電されたアミノ酸のストレッチ(stretch)に位置したシステインと負に荷電されたアミノ酸のストレッチ内でシステインの早い反応に基づく共役結合方法を記述する。
【0269】
モイエティはまた、合成ペプチド又はペプチド模倣体であり得る。ポリペプチドが化学的に合成される場合、直交化学的反応性を有するアミノ酸は当該合成中に混入し得る(例えば、De Graaf,A.J.et al.,Bioconjug.Chem.20(2009)1281-1295参照)。非常に様々な直交官能基が危うくなっており、合成ペプチドに導入され得るためにこのようなペプチドがリンカーに共役結合することは標準化学である。
【0270】
単一標識されたポリペプチドを得るために、1:1化学量論を有する共役結合は、他の共役結合副産物からクロマトグラフィーによって分離され得る。この手順は、染料標識された結合対メンバー及び荷電されたリンカーを使用することによって促進され得る。かかる種類の標識され且つ正に荷電された結合対メンバーを使用することによって、単一共役結合したポリペプチドは、荷電及び分子量の差が分離に用いられ得るので、非標識されたポリペプチド及び1つ以上のリンカーを有するポリペプチドから容易に分離される。蛍光染料は、標識された1価結合剤のような非結合成分から複合体を精製するのに有用であり得る。
【0271】
X.製薬学的組成物
生理学的に許容される担体、賦形剤又は安定剤(Remington’s Pharmaceutical Sciences(1990)Mack Publishing Co,Easton,PA)のうち、所望する程度の純度を有する本明細書に開示された方法に有用な抗体又はその抗原結合部分を含む組成物が開示される。許容される担体、賦形剤又は安定剤は、用いられた投薬量及び濃度において受領者に非毒性であり、緩衝剤、例えばホスフェート、シトレート及び他の有機酸;アスコルビン酸及びメチオニンを含む抗酸化剤;保存剤(例えば、オクタデシルジメチルベンジルアンモニウムクロリド;ヘキサメトニウムクロリド;ベンザルコニウムクロリド;ベンゼトニウムクロリド、フェノール、ブチル又はベンジルアルコール;アルキルパラベン、例えばメチル又はプロピルパラベン;カテコール;レゾルシノール;シクロヘキサノール;3-ペンタノール;及びm-クレゾール);低分子量(約10個未満の残基)ポリペプチド;タンパク質、例えば血清アルブミン、ゼラチン、又は免疫グロブリン;親水性重合体、例えばポリビニルピロリドン;アミノ酸、例えばグリシン、グルタミン、アスパラギン、ヒスチジン、アルギニン、又はリシン;単糖類、二糖類、及びグルコース、マンノース、又はデキストリンを含む他の炭水化物;キレート化剤、例えばEDTA;糖、例えばスクロース、マンニトール、トレハロース又はソルビトール;塩形成対イオン(salt-forming counter-ions)、例えばナトリウム;金属複合体(例えば、Zn-タンパク質複合体);及び/又は非イオン界面活性剤、例えばTWEEN(登録商標)、PLURONICS(登録商標)又はポリエチレングリコール(PEG)を含む。
【0272】
特定の実施形態において、製薬学的組成物は、製薬学的に許容される担体中に、本明細書に開示の抗体又はその抗原結合部分、二重特異的分子、又は免疫接合体、及び選択的に1つ以上の追加の予防又は治療剤を含む。特定の実施形態において、製薬学的組成物は、製薬学的に許容される担体中に、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分の有効量、及び選択的に1つ以上の追加の予防又は治療剤を含む。一部の実施形態において、抗体は製薬学的組成物に含まれた唯一の活性成分である。本明細書に開示された製薬学的組成物はFAM19A5活性を増進、誘発又は活性化し、且つ中枢神経系損傷、退行性脳障害又は神経病性疼痛のような病態を治療するのに有用である。
【0273】
非経口製剤に用いられた製薬学的に許容される担体は、水性ビークル、非水性ビークル、抗菌剤、等張剤、緩衝剤、抗酸化剤、局所痲酔剤、懸濁及び分散剤、乳化剤、金属イオン封鎖剤又はキレート化剤及び他の製薬学的に許容される物質を含む。水性ビークルの例は、塩化ナトリウム注射液、リンゲル液、等張デキストロース注射液、滅菌水注射液、デキストロース及び乳酸加リンゲル液を含む。非水性非経口ビークルは、植物起源の固定油、綿実油、トウモロコシ油、胡麻油及ラッカセイ油を含む。静菌(bacteriostatic)又は静真菌(fungistatic)濃度の抗菌剤が多回投与容器に包装された非経口製剤に添加されてもよく、これらはフェノール又はクレゾール、水銀含有物質、ベンジルアルコール、クロロブタノール、メチル及びプロピルp-ヒドロキシベンゾ酸エステル、チメロサール、ベンザルコニウムクロリド及びベンゼトニウムクロリドを含む。等張剤(isotonic agent)は塩化ナトリウム及びデキストロースを含む。緩衝剤は、ホスフェート及びシトレートを含む。抗酸化剤は重硫酸ナトリウムを含む。局所痲酔剤はプロカイン塩酸塩を含む。懸濁剤及び分散剤は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びポリビニルピロリドンを含む。乳化剤はポリソルベート80(TWEEN(登録商標)80)を含む。金属イオンの封鎖剤又はキレート化剤はEDTAを含む。製薬学的担体はまた、水混和性ビークル用エチルアルコール、ポリエチレングリコール及びプロピレングリコールを含み、pH調整用水酸化ナトリウム、塩酸、クエン酸又は乳酸を含む。
【0274】
製薬学的組成物は対象に対する任意の投与経路に合うように製剤化され得る。投与経路の具体的な例は、鼻内、経口、非経口、脊椎腔内、脳室内、肺、皮下、又は心室内経路を含む。皮下、筋肉内又は静脈内注射を特徴とする非経口投与がまた考慮される。注射可能物質が従来の形態で、液体溶液又は懸濁液、注射前に液体中で溶液又は懸濁液になるに適した固体形態、又はエマルジョンとして製造され得る。注射可能物質、溶液及びエマルジョンはまた、1つ以上の賦形剤を含有する。好適な賦形剤は、例えば水、食塩水、デキストロース、グリセロール又はエタノールである。また、所望時には、投与される製薬学的組成物は少量の非毒性補助物質、例えば湿潤又は乳化剤、pH緩衝剤、安定剤、溶解性増進剤、及び他のそのような製剤、例えば酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、オレイン酸トリエタノールアミン及びシクロデキストリンを含有し得る。
【0275】
抗体の非経口投与用製剤は、直に注射可能な滅菌溶液、使用直前に溶媒と直に調合可能な凍結乾燥した粉末のような滅菌乾燥可溶性製品、皮下注射用錠剤、直に注射可能な滅菌懸濁液、使用直前にビークルと直に調合可能な滅菌乾燥不溶性製品及び滅菌エマルジョンを含む。溶液は水性又は非水性であり得る。
【0276】
静脈内投与される場合、好適な担体は、生理学的食塩水又はリン酸緩衝食塩水(PBS)、及び増粘及び溶解剤を含有する溶液、例えばグルコース、ポリエチレングリコール、及びポリプロピレングリコール及びこれらの混合物を含む。
【0277】
抗体を含む局部用混合物は、局所及び全身投与について説明されたとおりに製造される。得られた混合物は、溶液、懸濁液、エマルジョンなどであり得、クリーム、ゲル、軟膏、エマルジョン、溶液、エリキシル、ローション、懸濁液、チンキ剤、ペースト、フォーム、エアゾール、灌注剤、スプレー、坐薬、包帯、皮膚パッチ又は局部的投与に適した任意の他の製剤として製剤化できる。
【0278】
本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分は、例えば吸入による、局部的投与用エアゾールとして製剤化できる(例えば、米国特許第4,044,126号、第4,414,209号、及び第4,364,923号を参照、これらの特許は炎症性疾患、特に喘息の治療に有用なステロイドの分配のためのエアゾールを開示する。)。経気道投与用のこれらの製剤は、噴霧器用のエアゾール又は溶液の形態であるか、又は吸込剤用の超微細粉末であり得、単独で用いられたり又はラクトースのような非活性担体と組み合わせて使用される。この場合、製剤の粒子は、一部の実施形態において、50ミクロン未満、一部の実施形態において、10ミクロン未満の直径を有する。
【0279】
本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分は、局所又は局部的適用、例えば皮膚及び粘膜に局部的適用、例えば目に局所適用のために、ゲル、クリーム及びローションとして製剤化でき、目に適用又は胸骨内又は髄腔内適用のために製剤化できる。局部的投与は経皮伝達のために考慮され、また目や粘膜投与、又は吸入療法用に考慮される。他の製薬学的に許容される賦形剤と組み合わせて又は単独で抗体の鼻液も投与され得る。
【0280】
イオン泳動及び電気泳動装置を含む経皮パッチが当業者にとって公知であり、抗体投与用に使用され得る。例えば、このようなパッチは、米国特許第6,267,983号、第6,261,595号、第6,256,533号、第6,167,301号、第6,024,975号、第6,0.10715号、第5,985,317号、第5,983,134号、第5,948,433号、及び第5,860,957号に開示されている。
【0281】
特定の実施形態において、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分を含む製薬学的組成物は凍結乾燥した粉末であり、これは、溶液、エマルジョン及び他の混合物として投与用に再構成され得る。凍結乾燥した粉末はまた、固形物又はゲルとして再構成及び製剤化されてもよい。凍結乾燥した粉末は、本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分、又はその製薬学的に許容される誘導体を適切な溶媒に溶解することによって製造される。一部の実施形態において、凍結乾燥した粉末は滅菌状態である。溶媒は粉末又は粉末から製造された再構成溶液の安定性又は他の薬物学的成分を改善する賦形剤を含有できる。使用可能な賦形剤は、制限ではないが、デキストロース、ソルビトール、フルクトース、コーンシロップ、キシリトール、グリセリン、グルコース、スクロース又は他の好適な製剤を含む。また、溶媒は、一部の実施形態において、pHが弱中性である緩衝剤、例えばシトレート、ナトリウム又はカリウムホスフェート又は当業者に公知の他の緩衝剤を含有し得る。溶液を後続滅菌濾過した後、当業者に公知の標準条件下で凍結乾燥することによって所望の製剤を提供する。一部の実施形態において、得られた溶液は凍結乾燥用バイアルに配分される。各バイアルは、化合物の単一投薬量又は多回投薬量を含有し得る。凍結乾燥した粉末は適切な条件の下に、例えば約4℃~室温で保管され得る。
【0282】
注射用水によるこの凍結乾燥した粉末の再構成は、非経口投与に使用するための製剤を提供する。再構成のために凍結乾燥した粉末が滅菌水又は他の適切な担体に添加される。正確な量は選択された化合物に依存する。このような量は経験的に決定され得る。
【0283】
本明細書に開示された抗体又はその抗原結合部分、二重特異的分子、又は免疫接合体及び本明細書に開示された他の組成物はまた、治療対象の特定組織、受容体、又は他の身体領域に標的化するように製剤化され得る。多くの標的化方法が当業者に公知されている。全てのこのような標的化方法を本組成物に使用することが考慮される。標的化方法の非制限的な例は、例えば、米国特許第6,316,652号、第6,274,552号、第6,271,359号、第6,253,872号、第6,139,865号、第6,131,570号、第6,120,751号、第6,071,495号、第6,060,082号、第6,048,736号、第6,039,975号、第6,004,534号、第5,985,307号、第5,972,366号、第5,900,252号、第5,840,674号、第5,759,542号及び第5,709,874号を参照する。特定の実施形態において、本明細書に記載された抗体又はその抗原結合部分は、中枢神経系損傷、退行性脳障害又は神経病性疼痛を治療するために標的化される。
【0284】
生体内投与に用いられる組成物は滅菌され得る。例えば、滅菌濾過膜を通した濾過によって容易に滅菌され得る。
【0285】
XI.キット
本明細書に記載の1つ以上の抗体、又はその抗原結合部分、二重特異的分子、又はその免疫接合体を含むキットが提供される。特定の実施形態において、本明細書に開示された1つ以上の抗体又はその抗原結合部分のような、製薬学的組成物の成分のうち1つ以上で満たされた1つ以上の容器、選択的な使用説明書を含む製薬学的パック又はキットが提供される。一部の実施形態において、キットは、本明細書に開示された製薬学的組成物及び任意の予防又は治療剤を含有する。
【0286】
XII.治療的用途及び方法
本発明は、本明細書に記載された抗FAM19A5抗体、二重特異的分子又は免疫接合体、又はそれらの組成物をそれを必要とする対象(例えば、ヒト)に投与することを含む、対象でCNSの損傷又は傷害を緩和させる方法を提供する。
【0287】
他の態様において、本明細書に開示の抗FAM19A5抗体を対象に投与することを含み、対象で神経膠症の始まり又は開始及びCNSの関連した有害な影響を抑制、鈍化、低下、制限、減少、逆転又は予防する方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、対象に本開示内容の抗FAM19A5抗体を投与することを含み、対象で反応性星状細胞の過度又は異常な増殖及びそれと関連したCNSの有害な影響を抑制、鈍化、低下、制限、減少、逆転、又は予防する方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の抗FAM19A5抗体を対象に投与することを含み、コンドロイチン硫酸プロテオグリカンの発現を縮小、抑制又は減少したり(ニューロカン、NG2又は全てのレベルを含む。)、又は不活性ニューロン、NG2又は全ての活性を減少したり付与する方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本願に記載された抗FAM19A5抗体を対象に投与することを含み、好ましくは、対象において損傷又は障害後に二ューロンの成長を刺激、促進、増加又は活性化させる方法を提供する。他の実施形態において、本発明は、本開示内容の抗FAM19A5抗体を対象に投与してc-fos mRNA、c-fosタンパク質又はc-fosタンパク質活性のレベルを増加させ、好ましくは、ニューロンの核でERK mRNA、ERKタンパク質又はpERK活性のレベルを増加させる方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載された抗FAM19A5を対象に投与して、好ましくはニューロンでGAP43mRNA、GAP43タンパク質のレベルを向上又は増加させたり、又はGAP43タンパク質の活性を増加させる方法を提供する。特定の実施形態において、本発明は、本明細書に記載の抗FAM19A5抗体を対象に投与し、必要とする対象でニューロンの生存を増進又は促進させ及び/又は軸索の再成長を促進させる方法を提供する。一部の実施形態において、対象は、ヒト、好ましくはCNS損傷、外傷、負傷、脳脊髓損傷、脳腫瘍、感染、虚血、脳卒中、自己免疫反応及び/又は神経退行性疾患からのニューロン損傷又は傷害を持つヒトである。
【0288】
一部の態様において、本発明はまた、本開示内容の抗FAM19A5抗体を対象に投与して疾患、障害又は病態を治療する方法を提供する。一部の実施形態において、疾患、障害又は病態は、中枢神経系損傷、脳脊髓系損傷、退行性脳障害、退行性脳脊髓液又は神経障害、又は神経病性疼痛を含む。一部の実施形態において、中枢神経系損傷は、外傷性脳損傷、脳脊髓損傷、脳卒中、脳腫瘍又はこれらの組合せである。一部の実施形態において、退行性脳障害は、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)又はこれらの組合せである。したがって、特定の実施形態において、本発明は本明細書に開示の抗FAM19A5抗体又はその組成物を対象に投与して、必要とする対象で外傷性脳損傷、脳脊髓損傷、脳卒中、脳腫瘍又はこれらの組合せを治療する方法を提供する。一部の実施形態において、本発明は、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体又はその組成物を対象に投与して、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ALSを治療する方法を提供する。一部の実施形態において、対象はヒトである。
【0289】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、中枢神経系損傷(例えば、外傷性脳損傷、脳脊髓損傷、脳卒中又は脳腫瘍)、脳脊髓液系損傷、退行性脳障害(例えば、ハンチントン病、パーキンソン病、アルツハイマー病、多発性硬化症、ALS)、退行性脳脊髓液又は神経障害又は神経病性疼痛を治療するための1つ以上の追加製剤との組合せで投与され得る。
【0290】
一部の実施形態において、疾患、障害又は病態は腫瘍、線維症、緑内障又は気分障害を含む。特定の実施形態において、疾患、障害又は病態は腫瘍を含む。一部の実施形態において、腫瘍は黒色腫、膵癌、神経膠腫(例えば、多形膠芽細胞腫(GBM))、乳癌、リンパ腫、肺癌、腎臓癌、前立腺癌、線維肉腫、結腸腺癌腫、肝癌又は卵巣癌を含む。
【0291】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、例えば腫瘍内の血管正常化を誘導する。一部の実施形態において、血管の正常化は、増加した連結性、増加した壁厚、減少した血管径、より規則的な血管方向及び分布パターン、増加した血管数、漏れ及び透過性減少、血管における増加した血管周囲細胞適用範囲及び近接性、増加した酸素化、又はこれらの組合せを含む血管の特性変化を伴う。
【0292】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、腫瘍の成長を抑制する。一部の実施形態において、腫瘍の成長は、基準(例えば、抗FAM19A5抗体を投与していない対象で腫瘍の成長)と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%抑制される。
【0293】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、免疫細胞の腫瘍への浸潤を向上させる。一部の実施形態において、腫瘍への免疫細胞の浸潤は、基準(例えば、抗FAM19A5抗体を投与していない癌対象)と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%促進/増加する。特定の実施形態において、免疫細胞は、大食細胞、樹状細胞、Tリンパ球、Bリンパ球、自然殺害(NK)細胞又はこれらの組合せを含む。一部の実施形態において、免疫細胞は肥大を示す。一部の実施形態において、免疫細胞の腫瘍への浸潤は神経細胞の腫瘍への浸潤増加を伴う。特定の実施形態において、ニューロン細胞は、星状細胞、神経膠細胞又はこれらの組合せを含む。
【0294】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、大食細胞又は小膠細胞の食作用を向上させる。一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は、大食細胞又は小膠細胞のミトコンドリア膜電位を増加させる。特定の実施形態において、食作用又はミトコンドリア膜電位は基準(例えば、抗FAM19A5抗体を投与していない癌対象)と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%促進又は増加する。
【0295】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体は、腫瘍の壊死及び浮腫を減少させる。他の実施形態において、抗FAM19A5抗体は腫瘍の組織透過性を減少させる。一部の実施形態において、腫瘍の壊死及び浮腫又は組織透過性は基準(例えば、抗FAM19A5抗体を投与していない癌対象)と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、又は100%減少する。
【0296】
一部の実施形態において、抗FAM19A5抗体は腫瘍において血流速度を増加させる。特定の実施形態において、血流速度は基準(例えば、抗FAM19A5抗体を投与していない癌対象)と比較して少なくとも5%、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%又は100%増加する。
【0297】
一部の実施形態において、腫瘍を治療する方法は、追加の治療剤を投与することを含む。特定の実施形態において、追加の治療剤は、化学療法、免疫療法、放射線療法又はこれらの組合せを含む。一部の実施形態において、免疫療法は単クローン性抗体、キメラ抗原受容体(CAR)療法、T-細胞療法、NK-細胞療法、樹状細胞(DC)療法、養子細胞移入(ACT)、免疫チェックポイント調節剤、サイトカイン、癌ワクチン、補助剤、腫瘍溶解性ウイルス又はこれらの組合せを含む。一部の実施形態において、化学療法は、テモゾロミド、ゲムシタビン、パクリタクセル、カルボプラチン、シスプラチン、エロツクスマブ(elotuxumab)、レナリドマイド、デキサメタゾン、オキサリプラチン又はこれらの組合せを含む。
【0298】
一部の実施形態において、治療有効量の本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその組成物が投与される。対象(例えば、ヒト)を治療するとき、本明細書に開示された抗FAM19A5抗体の治療的有効量は、疾患の年齢、性別、重症度のような因子に依存する。
【0299】
一部の実施形態において、本開示内容の抗FAM19A5抗体又はその組成物は、静脈内、経口、非経口、硬膜内、髄腔内、脳室内、肺、皮下、皮膚、筋肉内、又は心室内に投与される。
【0300】
次の実施例は例示的に提供されるもので、制限的なものではない。
【0301】
実施例
実施例1:ヒトFAM19A5タンパク質の発現及び精製
組換えヒトFAM19A5タンパク質を下に説明されたとおりに生成して精製し、この精製されたタンパク質を結合親和性分析に基づく抗体スクリーニング分析に使用した。まず、FAM19A5遺伝子を発現するLPS-hTプラスミドをバクテリアに形質転換し、タンパク質過発現を誘導した。生成されたFAM19A5タンパク質をNi-NTA親和性クロマトグラフィー(Qiagen,Valencia,CA,USA)を用いて精製した。イミダゾールを漸次高い濃度で使用してNi-カラムからHis-タグされたFAM19A5タンパク質を除去した。溶液中タンパク質発現をクマシーブリリアントブルー(Coomassie Brilliant Blue)R-250染料を用いて測定した。FAM19A5イミダゾール含有溶液だけを取り、PBSを用いてFAM19A5タンパク質を濃縮した。濃縮が完了した時、FAM19A5タンパク質の純度と濃度をウェスタンブロット分析を用いて測定した。次いで、濃縮されたタンパク質を用いてFAM19A5-特異的抗体に対してスクリーニングした。
【0302】
実施例2:抗体ライブラリーFAM19A5の生成
1.免疫化
FAM19A5タンパク質をニワトリの免疫化のための抗原として使用した。合成ペプチドKLH共役結合体(conjugate)50μgを750μLリン酸緩衝食塩水(PBS)に混合し、37℃で30分間インキュベーションした。その後、2%スクアレン内毒素MPL(モノホスホリレート脂質A種)から毒素を除去し、油中水(water in oil)エマルジョン補助剤(RIBI+MPL+TDM+CWS補助剤、Sigma,St Louis,Mo,USA)を含有するTDW及びCWSの細胞壁成分のミコバクテリアをエマルジョン化し、その後、3匹のニワトリ及び4匹のウサギに皮下注射した。ニワトリ及びウサギは免疫化中に略2~3週間隔で総3回及び4回免疫化した。FAM19A5タンパク質を過発現させたHEK293T細胞の細胞溶離液を用いて、免疫化された動物から得られた抗体の力価(titer)を免疫ブロッティングを用いて測定した。
【0303】
2.免疫化されたニワトリ及びウサギからの単鎖可変断片(scFv)ライブラリーの製造
TRI試薬(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)を用いて、前記説明された免疫化されたニワトリの脾臓、骨髄及び滑液嚢(synovial sac)からRNAを抽出した。Oligo-dTプライマーとSUPERSCRIPTTMIII第1鎖合成システム(First-Strand Synthesis System)(Invitrogen)を用いて第1鎖cDNAを合成した。動物の免疫システムから得られたcDNAに対して、拡張型高忠実度PCRシステム(Expand High Fidelity PCR System)(Roche Molecular Systems,IN,USA)を用いて単鎖可変領域ライブラリーを生成した。各反応においてcDNA 1μL、各プライマー60pmol、10倍反応緩衝溶液10μL、8μLの2.5mM dNTP(Promega,Madison,WI,USA)、及びTaq DNA重合酵素0.5μLを水と混合した。最終体積は100μLであった。PCR反応を次の条件を用いて行った:30サイクル(i)94℃で15秒、(ii)56℃で30秒、及び(iii)72℃で90秒、その後72℃で10分間最終延長。約350bpの長さを有する断片を含むPCR生成物を1.5%寒天ゲル上にローディングし、電気泳動後にQIAGEN Gel II抽出キット(QIAGEN,Valencia,CA,USA)を用いてヌクレオチド断片を精製した。精製されたPCR生成物をOD 260nmで読み取って定量した(1ユニットOD=50μL/mL)。
【0304】
第2PCRからの2個のVH及びVL第1生成物を重複延長PCR(Overlap extension PCR)によって無作為に連結した。各PCR反応物を100ngの精製されたVL及びVH生成物、各プライマー60pmol、10倍反応緩衝液10μL、8μLの2.5mM dNTP、Taq DNA重合酵素0.5μL及び水と100μLの最終体積として混合した。PCRを次の条件下で行った:25サイクル(i)94℃で15秒、(ii)56℃で30秒、及び(iii)72℃で2分、その後72℃で10分間最終延長。約700bpの長さを有する単鎖可変領域断片を含むPCR生成物を1.5%寒天ゲル上にローディングし、電気泳動後にQIAGEN IIゲル抽出キット(QIAGEN)を用いてヌクレオチド断片を精製した。精製されたPCR生成物をOD 260nmで読み取って定量した(1ユニットOD=50μL/mL)。
【0305】
3.ライブラリー、ライゲーション(ligation)及び形質転換
PCR生成物のscFv断片とベクターpComb3X-SS(The Scripps Research Institute CA,USA)をSfiI制限酵素で切断(digest)した。精製された重複PCT生成物10μgをSfiI 360ユニット(16ユニット当たりμg DNA,Roche Molecular Systems,Pleasanton,CA,USA)、10倍反応緩衝液20μL及び水と混合して最終体積200μLにした。pComb3X-SSベクター20μgをSfiI 120ユニット(6ユニット当たりμg DNA)、10倍反応緩衝液20μL及び水と混合して最終体積200μLにした。混合物を50℃で8時間切断した。その後、scFv断片(約700bp)及びベクター(約3,400bp)を含む切断された生成物を1%寒天ゲル上にローディングし、ゲル抽出キットII QIAGEN(QIAGEN,Valencia,CA,USA)を用いて精製した。SfiI-制限されたpComb3Xベクター1,400ngと切断されたscFv断片700ngを5倍リガーゼ緩衝液、10μLのT4DNAリガーゼ(Invitrogen,Carlsbad,CA,USA)及び水と混合して最終体積200μLにした。混合物を16℃で16時間インキュベーションしてライゲーションを行った。
【0306】
エタノールで沈殿後、DNAペレットを水15μLに溶解した。ライブラリーを生成するために、ライゲーションサンプルを大腸菌(E.coli)菌株ER2738(New England Biolabs Inc,Hitchin,Hertfordshine,SG4 OTY,England,UK)にバイブレーター遺伝子(遺伝子パルサー:Bio-Rad Laboratories,Hercules,CA,USA)を用いて電気穿孔によって形質転換した。細胞をスーパーブロス(SB)培地5mLと混合し、37℃で1時間250rpmで撹拌しながらインキュベーションした。その後、100mg/mLカナマイシン3μLをSB培地10mLに添加した。ライブラリーサイズを決定するために、培養物サンプル0.1μL、1μL及び10μLを50μg/mLカナマイシンを含有するルリアブロス(LB)寒天板上に擦り塗った。1時間撹拌後、100mg/mLカナマイシン4.5μLをLB培養物に添加し、さらに1時間追加撹拌した。その後、水中のVCM13ヘルパーファージ2mL(>1011cfu/mL)を100mg/mLカナマイシン92.5μLを含有する予熱されたLB(183mL)と共にLB培地に添加した。この混合物を2時間37℃で250rpmでさらに撹拌した。その後、カナマイシン280μL(50mg/mL)を培養物に添加し、37℃で一晩撹拌した。翌日、バクテリアペレットを高速遠心分離機(Beckman,JA-10ローター)を用いて4℃、3,000gで遠心分離した。その後、バクテリアペレットを用いてファージミドDNAを抽出し、上澄液は滅菌遠心分離瓶に移した。その後、ポリエチレングリコール-8000(PEG-8000,Sigma)8gと塩化ナトリウム(NaCl,Merck)6gを上澄液に添加した後、氷に30分間維持した。その後、上澄液を4℃、15,000gで15分間遠心分離した。その後、上澄液を捨て、1% BSA-再生を含有するファージペレットTrisを緩衝食塩水(TBS)に懸濁した。
【0307】
実施例3:免疫化された抗原に対するライブラリーパンニング(バイオパンニング)(bio-panning)
磁気ビーズ(Dynabeads M-270 Epoxy,Invitrogen)を用いてバイオパンニングを行った。室温で約1×107ビーズを組換えFAM19A5タンパク質5μgで室温で20時間ビーズとタンパク質を共に回転撹拌してコーティングした。コーティングが完了するとビーズをリン酸緩衝食塩水(PBS)で4回洗浄し、室温で3% BSAを含有するPBS中で1時間遮断した。その後、コーティングされたビーズを前記説明されたファージディスプレイされたscFvと共に室温で2時間培養した。抗原コーティングされたビーズに結合しないファージを除去するために、ビーズを0.05% Tween 20/PBSで洗浄した。その後、結合したファージを50μLの0.1Mグリシン/塩化水素(0.1Mグリシン-HCl、pH2.2)で溶出し、塩化水素と共に2M Tris(Tris-HCl、pH9.1)3μLで中和した。このファージ含有上澄液を用いて大腸菌ER2738細胞を感染させ、VCSM13ヘルパーファージを用いて一晩増幅し救済(rescue)した。また、50μg/mLカナマイシンを含有するLB寒天板上にファージ-感染された培養物をブロット(blotting)することによって、ファージ-感染された培養物からのファージ力価によって投入(インプット)及び生成(アウトプット)を決定した。翌日、PEG-8000及びNaClを用いてファージを沈殿させ、次いでこれをバイオパンニングに使用した。バイオパンニングは、前記過程を反復することによって最大で総5回行った。各増幅においてファージをスクリーニングし、FAM19A5タンパク質に対する高い親和性のために選択した。
【0308】
実施例4:ファージELISAによるクローンの選択
バイオパンニングから選択されたクローンを分析するために、ファージディスプレイされたscFvから個別クローンを無作為に選択し、ELISAを用いてクローンがFAM19A5組換えタンパク質に結合することを確認した。FAM19A5組換えタンパク質を0.1M NaHCO3緩衝剤に希釈し、タンパク質をウェル当たり100ngを用いて16時間4℃で96ウェル微量定量プレートをコーティングした。翌日、プレートを1時間37℃で3% BSA/PBSで遮断した。その後、ファージ上澄液を6% BSA/PBSと混合し、37℃で2時間培養した。その後、上澄液を含有するプレートを0.05% Tween 20/PBSで洗浄した。HRP-共役結合したM13抗体(a-M13-HRP,Pierce Chemical Co,Rockford,IL,USA)を1/5,000に希釈した。希釈された抗体50μLをプレートに添加し、37℃で1時間インキュベーションした。インキュベーション及び洗浄後、色展開(color development)のためにプレートに0.05Mクエン酸緩衝溶液、1μg/mLの2,2’-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸)(ABTS,Amresco,Solon,OH,USA)、及び0.1% H2O2を添加した。各ウェルに対する吸光度を405nmで測定した。
【0309】
FAM19A5組換えタンパク質に結合し、高い吸光度を示した他免疫化されたニワトリから生成された24個クローンを分析した。24個クローンから独特の配列を持つ13個のscFvクローンを得た。免疫化されたウサギ(データ不図示)から生成されたクローンの場合、164個のクローンが配列化され、174個のクローンが初期に確認された。これらのクローンから22個の最終独特のScFv配列を得た。
【0310】
実施例5:脱免疫化された抗FAM19A5抗体の生成
1.抗FAM19A5抗体(クローン1-65)の脱免疫化
ヒト対象に投与される時、免疫原性の危険を減少させるために、抗FAM19A5抗体(例えば、1-65)内で高い免疫原性の特定領域を確認するためにシリコ(silico)分析(EpiScreen Immunogenicity Analysis,Antitope Ltd.,UK)を行った。無差別(promiscuous)MHCクラスII結合ペプチドを確認するために、iTope
TM(Abzena plc.,UK)を全配列にわたって重なった9-merペプチドに対して行った。潜在的なT細胞エピトープは、34個の異なるMHCクラスII対立遺伝子に対する相互作用の分析によって予測された。クローン1-65は総13個の非ジャームライン無差別MHCクラスII結合ペプチドを含有した(
図2)。1-65抗体及びSS01-13(すなわち、脱免疫化後1-65抗体)の重鎖可変領域及び軽鎖可変領域の配列整列が
図1A及び
図1Bにそれぞれ提供されている。
【0311】
また、無差別MHCクラスII結合ペプチドは、10,000個以上のペプチドに対するT細胞刺激分析によって構築されたCD4+T細胞エピトープデータベースであるTCED
TM(Abzena plc.,UK)によって分析された。クローン1-65は4個の無差別MHCクラスII結合ペプチドが公知のT細胞エピトープに対して高い相同性を有することを示した(
図2)。
【0312】
2.複合抗体ライブラリーの構築
複合抗体ライブラリーは、免疫原性と関連したCD4+T細胞エピトープを回避するように設計されている。ライブラリー構築のために最も相同性であるヒトジャームラインを選択するために、クローン1-65のフレームワークをIgBLASTデータベース(NCBI)で分析した。ヒトジャームラインIGLV3-25
*02、IGLJ2
*01、IGHV3-23
*02及びIGHJ1
*01遺伝子は、クローン1-65に対して選択された(
図1)。最も相同性であるヒトジャームライン配列においてクローン1-65の同一でない特定アミノ酸残基MHCクラスII結合領域を相応するアミノ酸に置き換えるようにライブラリーを構築した。特に、ペプチド中のp1、p4、p6、p7及びp9残基は、MHCクラスII対立遺伝子の結合グルーブ(groove)との相互作用に重要である(James EA,Moustakas AK,Bui J,Nouv R,Papadopoulos GK,Kwok WW.J Immunol.2009;183(5):3249-58)。
【0313】
ヒト及びニワトリアミノ酸をともにカバーするために縮退性コドン(degenerate codons)を暗号化するオリゴヌクレオチドの連続重複延長重合酵素鎖反応(PCR)を行って、前述したように部位指向突然変異誘発ライブラリーを生成した(Baek DS,Kim YS.Biochem Biophys Res Commun.2015;463(3):414-20)。PCR生成物をファージミドベクター内にサブクローニングし、前述したようにファージ製造のために大腸菌菌株ER2738(New England BioLabs,Ipswich,MA,USA)に形質転換させた(Han J,Lee JH,Park S,Yoon S,Yoon A,Hwang DB et al.,Exp Mol Med.2016;48(11):e271)。
【0314】
3.バイオパンニング及びクローン選択
陽性クローンを単離させるために、バイオパンニング及びファージ酵素免疫分析を前述のように行った(Barbas CF.Phage display:実験室説明書。Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press:2001)。FAM19A5に対する反応性を有するファージクローンを選択し、そのヌクレオチド配列をサンガー(sanger)配列化によって決定した。FAM19A5に対する親和性が維持される最も少ない数の無差別MHCクラスII結合エピトープを有するscFvクローンが最終的に選択された。
【0315】
クローン1-65における総6個の無差別MHCクラスII結合エピトープが、脱免疫化されたクローン1-65(すなわち、SS01-13-S5抗体)から除去された(
図3A)。CDR-H1、CDR-H2及びCDR-H3の無差別MHCクラスII結合エピトープは除去不可能だった(すなわち、
図3Aの結合ペプチド#6、#7、#8及び#13)。また、HFR1に位置した結合ペプチド#4のp6残基及び結合ペプチド#5のp4残基が結合活性において決定的な役割を担うので、HFR1における無差別MHCクラスII結合エピトープは除去不可能だった。脱免疫化されたクローン1-65抗体とFAM19A5タンパク質に対する野生型1-65抗体の結合の比較は、
図3Bに提供される。
【0316】
実施例6:脱免疫化された抗FAM19A5抗体(クローン1-65)のCDR-H2で潜在的N-グリコシル化部位の部位指向除去
部位指向された突然変異誘発ライブラリーを構築するために、クローン1-65scFvを暗号化する遺伝子をPCRの鋳型として用いた。CDR-H2のS53は、前述したようにNNK変性コドン(N=A、T、G又はC、K=G又はT)を暗号化するオリゴヌクレオチドで無作為化された(Lee HK,Jin J,Kim SI,Kang MJ,Yi EC,Kim JE et al.,Biochem Biophys Res Commun.2017;493(1):325-31)。重複延長PCRによって増幅されたscFv断片を前記ファージミドベクター内にサブクローニングし、上述したようにファージ製造のためにER2738(New England BioLabs)内に形質転換させた。
【0317】
形質転換後、力価プレートから、ファージを表示する無作為に選択された突然変異体scFvを救済し、前述したようにファージ酵素免疫分析を実施した(Barbas CF.Phage display:実験室説明書。Cold Spring Harbor,NY:Cold Spring Harbor Laboratory Press;2001)。FAM19A5に対して類似の反応性を示すファージクローンを選択し、そのヌクレオチド配列をサンガー配列化によって決定した。S53は、トレオニン、グリシン及びロイシンに置換され得る。これらの結果は、クローン1-65のCDR-H2で潜在的なN-グリコシル化部位がセリンをロイシン又はグリシンに置き換えることによって除去され得ることを明らかにした。
【0318】
セリン(S53G)(すなわち、S5-SG抗体)からグリシンに置換された脱免疫化されたクローン1-65(すなわち、SS01-13-S5抗体)は、オリゴヌクレオチドを使用する重複延長PCRによって構築された(
図4C)。ファージミドベクター内にサブクローニングした後、ファージを表示するS5-SG抗体を救済し、上述したようにファージ酵素免疫分析を行った。抗体の発現レベル及びサイズは、
図4A及び
図4Bに提供されている。S5-SG抗体(“脱免疫化されたクローン1-65-S53G”)は、脱免疫化されたクローン1-65(すなわち、SS01-13-S5抗体)に比べてFAM19A5タンパク質に対する親和性がより低かった(
図4D)。
【0319】
実施例7:結合親和度分析
本明細書に開示された個別のる抗FAM19A5抗体のFAM19A5タンパク質に対する結合親和度をさらに評価するために、SPR及びELISA分析をともに用いた。
【0320】
SPR分析のために、次のプロトコルが用いられた。FAM19A5タンパク質を固定化緩衝液(immobilization buffer)(10mM酢酸ナトリウム、pH4.5)中に希釈させた(2μg/mL)。CM5センサーチップをエチル(ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDC)(400mM)及びNHS(100mM)の混合物で420秒間活性化させた。次いで、2μg/mLのFAM19A5タンパク質(固定化緩衝液中、pH4.5)を10μL/分の流速で420秒間Fc2サンプルチャネルに注入して約50RUレベルに到達した。その後、チップを420秒間流量10μL/分で1Mエタノールアミン塩化水素によって不活性化させた。基準表面Fclチャネルも製造され、類似に活性化及び不活性化された。抗FAM19A5抗体をランニング緩衝液(running buffer)(HBS-EP;0.005% Tween-20を有する1x HEPES,pH7.4)で個別の濃度(90nM、30nM、10nM、3.3nM、1.1nM、0nM)に希釈した。希釈された抗FAM19A5抗体を60秒のアソシエーション段階(association phase)の間に30μL/分の流速でFc1-Fc2チャネルに注射した。次に、単一サイクル動力学モードによる300秒解離段階(dissociation phase)が続いた。各分析サイクル後、センサーチップ表面を60秒間30μL/分の流速で10mMグリシン-HCl、pH1.5で再生させた。データはBIA評価ソフトウェアを用いて1:1フィッティングに対して分析された。
【0321】
ELISA分析のために、次のプロトコルが用いられた。抗ウサギFc抗体(50mM炭酸塩緩衝液、pH9.6で1μg/mLの濃度に希釈される。)を用いて4℃で一晩96-ウェルプレート(100μL/ウェル)をコーティングした。次に、プレートを洗浄緩衝液(PBST:0.05% Tween-20/PBS)で総5回洗浄した。その後、プレートを遮断緩衝液(1% BSA/PBST)(150μL/ウェル)で37℃で1時間遮断し、洗浄緩衝液でさらに洗浄した。次いで、遮断緩衝液に希釈された50ng/mLのFAM19A5-ウサギFc(FAM19A5-rFcともいう。)抗原を各ウェルに添加した。プレートを37℃でさらに1時間インキュベーションした。インキュベーション後、洗浄緩衝液でプレートをさらに総5回洗浄した。異なる濃度(2,055pM、685pM、228.3pM、76.1pM、25.4pM、8.5pM、2.8pM、0pM)で遮断緩衝液中の希釈された抗FAM19A5抗体を各ウェルに添加し、プレートを37℃で2時間インキュベーションした。インキュベーション後にプレートを洗浄し(洗浄緩衝液中で総5回洗浄)、次いで、希釈された抗ヒトカッパ軽鎖-HRP(遮断緩衝液中1:10,000)をウェルに添加した(100μL/ウェル)。プレートを37℃で1時間インキュベーションした。次いで、プレートをさらに洗浄し、TMB溶液(100μL/ウェル)で処理した。この反応を100μLの硫酸(2N H2SO4)を用いて中断し、96ウェルマイクロプレートリーダ(Molecular Device)を用いて450nmにおける吸収によって色変化の程度を検出した。
【0322】
分析結果は、
図5A~
図5C及び
図6A~
図6Dに示されている。
図5A~
図5Cに示すように、SPRの結果は、試験された3個の抗FAM19A5抗体のうち1-65抗体が最大の結合親和度でFAM19A5タンパク質に結合することを示唆した。1-65抗体は、0.345nMのK
Dを有するのに対し、SS01-13-S5及びS5-SG抗体はそれぞれ2.201nM及び1.797nMのK
Dを有する。
図6に示すように、ELISA分析で類似の結果が観察された。
【0323】
実施例8:免疫細胞の食細胞能(phagocytic ability)に対する抗FAM19A5抗体の効果評価
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体が特定免疫細胞の食細胞能に影響を及ぼすか否かを評価するために、BV細胞(固定化したネズミ小膠細胞株)を使用した。簡単にいうと、BV2細胞を96-ウェルプレート(5×103/100μL/ウェル)上にプレーティングし、6時間37℃の5% CO2でインキュベーションした。次いで、細胞をヒトFAM19A5-Fcタンパク質(0.25μM、ロット番号170815)単独で又は抗FAM19A5抗体1-65、SS01-13-S5又はS5-SGの様々な濃度(3.125μg/mL、6.25μg/mL、12.5μg/mL又は25μg/mL)に組み合わせて処理した。対照群の細胞をPBS単独で処理した。処理された細胞をさらに16時間37℃の5% CO2でインキュベーションした。インキュベーション後、PHRODOTMGreen E.coli BioParticles(Thermofisher,P35366)を細胞に添加した(15μg/100μL/ウェル)。その後、INCUCYTE(登録商標)(Sartorius)を用いて1時間ごとに緑色蛍光強度を測定し、BioParticlesの食細胞吸収を観察した。
【0324】
図7A~
図7Cに示すように、ヒトFAM19A5-Fcタンパク質でBV2細胞を処理した場合、BV2細胞の食細胞能を抑制した。しかし、ヒトFAM19A5-Fcタンパク質及び任意の試験された抗FAM19A5抗体の組合物でBV2細胞を処理した場合、濃度依存的方式で食作用を回復させた。BioParticlesで処理して約10時間後、対照群(すなわち、PBS単独)と比較して、抗体1-65、SS01-13-S5及びS5-SGで観察された食作用の量はそれぞれ、次の通りであった:86%、96%及び89%。これらの結果は、1-65抗体のように脱免疫化されたSS01-13-S5及びS5-SGがBV2細胞においてFAM19A5-Fcタンパク質媒介された抑制を効果的に遮断できることを立証する。
【0325】
実施例9:脳損傷動物モデルにおいて抗FAM19A5抗体の用途
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体の生体内機能を評価するために、外傷性脳損傷(TBI)マウスモデルが用いられ得る。簡単にいうと、マウスに個別の抗FAM19A5抗体が投与されるだろう。TBI誘導(TBI5D)後に動物を犠牲させることができる。抗FAM19A5抗体の効果、例えば、外傷性脳損傷後ペナンブラ(penumbra)部位の反応性神経膠症の発病が測定されるだろう。
【0326】
実施例10:誘導性黒色腫(melanoma)モデルにおいて抗FAM19A5抗体の抗癌効果
本開示内容の抗FAM19A5抗体の抗癌効果を評価するために、誘導性マウス黒色腫モデルが用いられ得る。簡単にいうと、黒色腫は、雄Tyr::CreER;Braf+/+;Ptenlox/loxマウス(Jackson Lab,USA)を雌Tyr::CreER;BrafCA/CA;Ptenlox/loxと交配することによってTyr::CreER;BrafCA/+;Ptenlox/loxマウスを生産することができる。Dankort D.,et al.,Nat Genet 41(5):544-52(2009)参照。黒色腫は出生後約7週目に自発的に誘導されるだろう。マウスは、腫瘍体積及び黒色腫の数によって分類され得る。
【0327】
分離後、動物には、抗FAM19A5抗体又はヒトIgG対照群抗体を投与することができる。次いで、投与して様々な時点に動物で黒色腫の体積分析を行うことができる。
【0328】
実施例11:神経病性疼痛動物モデルにおいて抗FAM19A5抗体の使用
本明細書に開示された抗FAM19A5抗体の生体内機能を評価するために、慢性収縮損傷(CCI)のマウスモデルが用いられ得る。簡単にいうと、マウスには個別の抗FAM19A5抗体が投与され得る。次いで、投与して約1週後に陰嚢神経ライゲーションによって末梢神経損傷が動物で誘導され得る。損傷後に様々な時点で、機械的異痛(allodynia)(物理的外部刺激に対する反応)及び熱痛覚過敏(hyperalgesia)(温度上昇に対する反応)がともに動物で評価され得る。機械的異痛はボンフレイ(Von Frey)モノフィラメント(0.16g)を損傷した足に複数回適用し、動物が疼痛に反応する頻度を観察して評価される。熱痛覚過敏はハーグリーブス(Hargreaves)試験を用いて評価され、ここで、放射形熱刺激(強度:30)が損傷した足に適用され、足引っ込め遅延時間が決定される。
【0329】
概要及び要約部分以外の詳細な説明部分が、請求項の解釈のためた用いられるものとして理解すべきである。概要及び要約部分は、本発明者らによって考察された通り、本発明の全部ではないが、1つ以上の例示的な実施形態を提示でき、したがって、本発明と添付の請求項をいかなる方法でも制限しようと意図しない。
【0330】
本発明は、明示された機能とこれらの関係の実施形態を例示する機能的構成要素の補助下に以上開示された。それらの機能的構成要素の境界は、説明の便宜のために本明細書で恣意的に限定された。明示された機能とそれらの関係が適切に行われる限り、代案の境界も限定され得る。
【0331】
特定の実施形態に関する前述した説明は、本発明の通常の性質を十分に表すことができ、第三者は当業界の知識を適用することによって本発明の一般概念から逸脱することなく過度な実験無しでこのような特定の実施形態を様々な用途に合わせて容易に変形及び/又は改造することができる。したがって、このような改造及び変形は、本明細書に提示された教示及び指針に基づいて開示された実施形態の等価物の意味と範囲内にあるように意図される。本明細書で用いられた語句又は用語は制限ではなく説明のためのものであることが理解されるべきであり、本明細書の用語又は語句は教示及び指針に照らして当業者によって解釈されるべきである。
【0332】
本発明の範囲及び領域は、前記説明された例示の実施形態のいずれによっても制限されず、請求項及びその等価物によってのみ限定されるべきである。
【0333】
本明細書で引用された全ての刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト及び受託番号/データベース配列(ポリヌクレオチド及びポリペプチド配列の両方を含む)は、各個別刊行物、特許、特許出願、インターネットサイト又は受託番号/データベース配列が参照として含まれるように具体的にそして個別的に簡潔に適示されたのと同じ範囲で全ての目的のためにその全体が参照として本明細書に含まれる。
【0334】
本PCT出願は、2018年5月10日付に提出された米国仮出願第62/669,648号及び2019年4月24日付に提出された米国仮出願第62/838,187号の優先権を主張し、これはその全体が本明細書に参照として含まれる。
【配列表】