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特許7530639クーリングタワーに接続可能な冷却水浄化装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】クーリングタワーに接続可能な冷却水浄化装置
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/461 20230101AFI20240801BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20240801BHJP
   C25B 15/02 20210101ALI20240801BHJP
   C02F 1/66 20230101ALI20240801BHJP
   F28G 13/00 20060101ALI20240801BHJP
   F28F 19/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
C02F1/461 A
C25B9/00 A
C25B15/02
C02F1/66 510G
C02F1/66 521A
C02F1/66 530L
C02F1/66 530P
C02F1/66 540E
F28G13/00 A
F28F19/00 501A
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021000812
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2022106088
(43)【公開日】2022-07-19
【審査請求日】2023-08-21
(73)【特許権者】
【識別番号】505476216
【氏名又は名称】イノベーティブ・デザイン&テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000419
【氏名又は名称】弁理士法人太田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中博
(72)【発明者】
【氏名】酒井 文香
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-288238(JP,A)
【文献】特開2017-001004(JP,A)
【文献】特開2004-190924(JP,A)
【文献】特開2006-334499(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46- 1/48
C02F 1/66- 1/68
C25B 1/00- 9/77
C25B 13/00-15/08
F28G 1/00-15/10
F28F 11/00-19/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
発熱機械で用いられて熱せられた冷媒が冷却されるクーリングタワーに接続可能な冷却水浄化装置であって、
前記クーリングタワーに供給される水を受水するとともに、受水した前記冷却水に電解を印加する電解装置と、
前記電解装置の電解槽で生成された電解酸性水を貯留する電解酸性水貯留タンクと、
前記電解槽で生成された電解アルカリ水を貯留する電解アルカリ水貯留タンクと、
生成された前記電解酸性水を前記クーリングタワーへ供給する電解酸性水供給機構と、
を含み、
前記電解酸性水は、前記電解酸性水供給機構を介して、前記電解酸性水貯留タンクから前記クーリングタワーにおいて冷却水が一時的に貯留される水槽に直接注水される、
ことを特徴とするクーリングタワーに接続可能な冷却水浄化装置。
【請求項2】
前記水槽に設けられて前記一時的に貯留される冷却水のpH値を検出するpH検出装置からpH情報を受信するpH検出手段を更に含み、
前記電解酸性水供給機構は、前記pH検出手段で受信した前記一時的に貯留される冷却水のpH値に基づいて、前記電解酸性水貯留タンクから前記クーリングタワーへの電解酸性水の注水量を調整する、請求項1に記載の冷却水浄化装置。
【請求項3】
前記電解酸性水供給機構は、前記pH値が予め定められた目標範囲を下回ったときに前記注水量を一時停止させる、請求項2に記載の冷却水浄化装置。
【請求項4】
生成された前記電解アルカリ水を前記クーリングタワーへ供給する電解アルカリ水供給機構を更に含み、
前記電解アルカリ水供給機構は、前記pH値が前記目標範囲を下回ったときに、前記電解アルカリ水貯留タンクから前記電解アルカリ水を前記クーリングタワーの水槽に直接注水する、請求項3に記載の冷却水浄化装置。
【請求項5】
前記クーリングタワーから前記電解槽に供給される冷却水に含まれる不純物を遮断する不純物除去フィルタを更に有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の冷却水浄化装置。
【請求項6】
前記クーリングタワーから前記電解槽に供給される冷却水の温度を検出可能な温度センサーを更に有し、
前記温度センサーの検出結果に基づいて、前記電解槽における前記冷却水の電気分解が一時停止される、請求項1~5のいずれか一項に記載の冷却水浄化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器やボイラーなどに用いられる冷却水の冷却を行うクーリングタワーに接続されて当該クーリングタワーの冷却水を水質改善する冷却水浄化装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば工場や空調設備などで循環使用される水の冷却を目的としたクーリングタワー(「冷却塔」とも称される)が既知である。
このクーリングタワーの内部においては、熱を帯びた冷却水に対して、外部から取り込んだ気体を直接接触させてこれらの温度差を利用した熱伝導(顕熱による冷却)と、冷却水自体の蒸発(潜熱による冷却)とを利用して冷却水の温度を目的の範囲内まで低下させている。
かようなクーリングタワーでは、上記のとおり外部から気体を導入することから大気中の有機物や固形物等の粉塵がスケールとして管内に発生してしまう。
【0003】
このようなスケール発生の課題に対しては、例えば特許文献1においては、マグネシウム及びマグネシウム合金の切削加工で発生したさまざまな大きさの金属片を不織布の袋に詰められた浄化体を、クーリングタワー内の熱交換部を通過して冷却された冷却水が大気圧下で自然落下する途中の位置に設置する技術が提案されている。
【0004】
また、特許文献2では、冷却塔と熱交換器と循環水ラインとを有して構成される水循環系統内におけるスケール量を検出するスケール量計を設置し、このスケール量計で検知されたスケール量に応じて薬剤であるスケール防止剤を水循環系統に供給する技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6736750号公報
【文献】特開2018-159516号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら上記特許文献を含む従来技術では未だに以下の述べる課題が存在する。
すなわち、例えば特許文献1のごときマグネシウム合金による化学反応を利用した浄化手法では、たしかにスケールの析出をある程度は抑制できるものの、クーリングタワーの大きさによっては投入する浄化体の大きさや重量は相当なものとなってしまう。このとき、例えば浄化体を小分けにしてクーリングタワー内の複数個所にそれぞれ配置すれば、上記した大きさや重量の問題はクリアできるものの、その分だけメンテナンスに多大な労力を要してしまう。
【0007】
一方で特許文献2に例示されるように、冷却水に対して化学薬品を投入する対策もスケール除去としては有効ではあるが、例えば特許文献1でも指摘されているとおり薬剤のコストが高くなるばかりでなく、昨今の環境問題意識の高まりからするとベストな解決策であるとは言い難い。
【0008】
このように従来技術で提案されているクーリングタワーの冷却水における水質改善手法では、環境への負荷を可能な限り低減しつつ、低コストでメンテナンスも極めて容易に行い得る手法は未だに提案されていない。
【0009】
本発明は、上記した問題を一例に鑑みて為されたものであり、従来技術では未だに達成されていない、環境負荷を低減しつつ低コストでメンテナンスも極めて容易なクーリングタワーの冷却水浄化装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明の一実施形態にかかるクーリングタワーに接続可能な冷却水浄化装置は、(1)発熱機械で用いられて熱せられた冷媒が冷却されるクーリングタワーに接続可能な冷却水浄化装置であって、前記クーリングタワーに供給される水を受水するとともに、受水した前記冷却水に電解を印加する電解装置と、前記電解装置の電解槽で生成された電解酸性水を貯留する電解酸性水貯留タンクと、前記電解槽で生成された電解アルカリ水を貯留する電解アルカリ水貯留タンクと、生成された前記電解酸性水を前記クーリングタワーへ供給する電解酸性水供給機構と、を含み、前記電解酸性水は、前記電解酸性水供給機構を介して、前記電解酸性水貯留タンクから前記クーリングタワーにおいて冷却水が一時的に貯留される水槽に直接注水されることを特徴とする。
【0011】
なお上記した(1)に記載の冷却水浄化装置においては、(2)前記水槽に設けられて前記一時的に貯留される冷却水のpHを検出するpH検出装置からpH情報を受信するpH検出手段を更に含み、前記電解酸性水供給機構は、前記pH検出手段で受信した前記一時的に貯留される冷却水のpH値に基づいて、前記電解酸性水貯留タンクから前記クーリングタワーへの電解酸性水の注水量を調整することが好ましい。
【0012】
また、上記した(2)に記載の冷却水浄化装置においては、(3)前記電解酸性水供給機構は、前記pH値が予め定められた目標範囲を下回ったときに前記注水量を一時停止させることが好ましい。
【0013】
また、上記した(3)に記載の冷却水浄化装置においては、(4)生成された前記電解アルカリ水を前記クーリングタワーへ供給する電解アルカリ水供給機構を更に含み、前記電解アルカリ水供給機構は、前記pH値が前記目標範囲を下回ったときに、前記電解アルカリ水貯留タンクから前記電解アルカリ水を前記クーリングタワーの水槽に直接注水することが好ましい。
【0014】
また、上記した(1)~(4)のいずれかに記載の冷却水浄化装置においては、(5)前記クーリングタワーから前記電解槽に供給される冷却水に含まれる不純物を遮断する不純物除去フィルタを更に有することが好ましい。
【0015】
また、上記した(1)~(5)のいずれかに記載の冷却水浄化装置においては、(6)前記クーリングタワーから前記電解槽に供給される冷却水の温度を検出可能な温度センサーを更に有し、前記温度センサーの検出結果に基づいて、前記電解槽における前記冷却水の電気分解が一時停止されることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、クーリングタワーで用いられる冷却水や工業用水そのものを原資として電気分解を行って浄化用液体を生成しているため低コストであり、化学薬品を用いずに冷却水の水質改善が図れることから環境的な負荷も極めて小さく、さらにはクーリングタワー以外の場所で電気分解によって容易に浄化用液体が生成可能であることから高いメンテナンス性も同時に実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】第1実施形態におけるクーリングタワーの冷却水浄化システムを示した模式図である。
図2】冷却水浄化システムを構成する電解槽の構成を示した模式図である。
図3】第1のパターンによるクーリングタワーの冷却水浄化方法を説明するフローチャートである。
図4】第2のパターンによるクーリングタワーの冷却水浄化方法を説明するフローチャートである。
図5】第2実施形態におけるクーリングタワーの冷却水浄化システムを示した模式図である。
図6】変形例1のクーリングタワーの冷却水浄化システムを示した模式図である。
図7】変形例2のクーリングタワーの冷却水浄化システムを示した模式図である。
図8】炭酸系イオン存在比とpHの関係性を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための実施形態を説明する。なお、以下で詳述する構成以外については、例えば上記特許文献1や特許文献2などでも例示される公知のクーリングタワー(冷却塔)の構造や構成、あるいは公知の電解槽の構造や構成を適宜補充してもよい。
【0019】
≪第1実施形態≫
[冷却水浄化システム]
図1は、本発明の第1実施形態に係るクーリングタワーに適用可能な冷却水浄化システムを示している。
同図に示すように本実施形態の冷却水浄化システムは、発熱源である発熱機械HCと、この発熱機械HCで熱交換によって熱せられた冷却水を冷却するクーリングタワー(冷却塔)CTと、このクーリングタワーCTから直接的に電気分解用の水の供給を受ける電解装置10と、この電解装置10で電気分解された冷却水をそれぞれ電解酸性水および電解アルカリ水として貯留する電解酸性水貯留タンク20および電解アルカリ水貯留タンク30と、これらを適宜接続する配管t2、t3を含んで構成されている。
【0020】
発熱機械HCは、熱交換を行って所望のエネルギーを生み出す公知の種々の機械であり、例えばタービン、冷凍機や冷暖房設備などの空調機器などが例示できる。以下では発熱機械HCの一例として空調設備の熱交換器を例にして説明を継続するが、本発明はこの形態に限られずクーリングタワーCTに接続され得る他の公知の機械・機器であってもよい。
【0021】
クーリングタワーCTは、それぞれ公知の水槽CTa、散水装置CTb及びファンCTcなどを含んで構成された公知の冷却塔である。クーリングタワーCTは、配管t7を介して送水されてきた循環水Wh(熱交換により温度が上昇している)を、シャワーヘッドなど公知の散水装置CTbを介して外気(空気)と接触させて公知の充てん層(不図示)を通過させた後に水槽CTaで貯留する。これにより循環水Whは、外気と熱交換することで冷却されて水槽CTaに貯留される。
【0022】
このとき循環水Whは熱交換する過程で一部が蒸発してファンCTcを介して系外に放出される。したがって図1に示すように、かような冷却水の蒸発分を補うなどの目的で、水槽CTaに工業用水Wsを供給可能なそれぞれ公知の工業用水供給手段IWSとバルブVsおよび配管t0が設けられている。さらに本実施形態では、上記した工業用水供給手段IWSから工業用水Wsを電解装置10に供給可能なように、配管t0から分岐して電解装置10に接続される公知の配管tsとバルブV0が設けられている。これにより、バルブV0および配管tsを介して工業用水Wsが電解装置10に必要量だけ適時供給されるとともに、バルブVsと配管t0を介して工業用水Wsが水槽CTa内に適量だけ適時に供給可能とされている。
【0023】
このようにクーリングタワーCTのうち下方には、上記で冷却された循環水が貯留される水槽CTaが配設されている。上記のように冷却されて水槽CTaに貯留された循環水W0は、ふたたび配管t7を介して適正温度の冷却水Wcとして発熱機械HCへ送水されて発熱機械HCの配管t8を流れる公知の高熱流体との間で熱交換が行われる。
【0024】
なお水槽CTaの側部には、当該水槽内に溜まった循環水の液面の高さ(すなわち貯水量)を検知するレベルセンサーなどの公知の水量計(不図示)が設けられていてもよい。また、本実施形態のクーリングタワーCTは、上記の構成以外にもクーリングタワーCTに適用される公知の機構や機器を含んでいてもよい。
【0025】
上述のとおり、外気(大気)との熱交換を行って冷却される循環水W0においては、蒸発作用に伴って水中の硬度成分等(マグネシウム、カルシウム、シリカなど)が濃縮され、飽和溶解度を超えるとスケールとして析出し得る。かようなスケールの析出は熱交換効率の低下によるエネルギーロスやその他の不具合を招くことから、このスケールを如何にして排除するかが熱交換システムの安定運用に対する重要な課題となる。
【0026】
そして本実施形態では、従来技術のごとく化学薬品による除去やろ過による物理的な除去ではなく、そもそもスケールを析出させないようにクーリングタワーCT内に貯留される循環水W0の水質改善を行うことに特徴がある。
以下、本実施形態におけるクーリングタワーの冷却水を浄化する冷却水浄化装置について詳述する。
【0027】
[冷却水浄化装置100]
図1及び図2に示すように、本実施形態の冷却水浄化装置100は、上記した発熱機械HCで用いられて熱せられた冷媒(冷却水)が冷却されるクーリングタワーCTに接続可能であって、電解装置10と、電解酸性水貯留タンク20と、電解アルカリ水貯留タンク30と、電解酸性水供給機構40と、を含んで構成されている。
【0028】
電解装置10は、公知のポンプP1および配管t1を介して上記したクーリングタワーCTと接続されている。上述のとおり、電解装置10は、上記した工業用水供給手段IWSとバルブVo及び配管tsを介して接続されている。そして本実施形態の工業用水供給手段IWSは、公知のように、所定の陽圧を付与して工業用水を送水している。従って、制御装置CUは、バルブV0を適宜開閉する制御を行うことで、上記した工業用水Wsを電解装置10に供給することが可能となっている。なお水槽CTa内には貯水量を検出可能な公知の水量計(ボールタップなど)が設けられており、この水量計の値に応じて工業用水Wsが配管t0及びバルブVsを介して適時供給される仕組みとなっている。従って本実施形態では、必要に応じて、工業用水Wsを水槽CTa内に供給することと並行して電解装置10に工業用水Wsを送水することが可能となっている。なお、電解装置10への工業用水Wsの供給は、必ずしも水槽CTaへの供給と並行して行われることを要せず、当該水槽CTaへの工業用水Wsの供給とは独立して行われてもよい。
【0029】
これにより、本実施形態では、(α)配管tsを介して工業用水Wsを電解装置10へ直接的に送水する態様と、(β)クーリングタワーCT内の水槽CTaで貯留された循環水W0を、浄化前循環水W1として電解装置10へ直接的に送水する態様と、を利用することが可能となっている。すなわち本実施形態では、上記(α)と(β)の少なくとも一方を用いて電解装置10へ電気分解に必要な水を供給することが可能となっている。なお本実施形態において「電解装置10へ直接的に送水(「直接送水」とも称する)」とは、クーリングタワーCTと電解装置10との間もしくは工業用水供給手段IWSと電解装置10との間で薬液処理が行われずに、電気分解に供される水(工業用水Wsや循環水W0)が電解装置10へ流れ込むことを意味する。
【0030】
<電解装置10の構成>
本実施形態の電解装置10は、後述する制御装置CUによって制御され、前記したクーリングタワーCTに供給される水(浄化前循環水W1あるいは工業用水Ws)を受水するとともに、受水した前記水に電解を印加する機能を有している。
より具体的に電解装置10は、図2に示すとおり、クーリングタワーCTからの循環水が流れる配管t1および工業用水供給手段IWSからの工業用水Wsが流れる配管tsとそれぞれ接続可能な電解槽11と、この電解槽11内で後述する陽極板13及び陰極板14を隔てる隔膜12と、この隔膜を隔てて対向配置される陽極板13及び陰極板14と、これら陽極板13と陰極板14の間に所定の電圧を印加する公知の電源15を含んで構成されている。
【0031】
なお図示ではそれぞれ1つずつの陽極板13と陰極板14を用いて一対の陽極室と陰極室とが形成されているが、この例には限られない。すなわち、互いに複数の陰極板と陽極板をそれぞれ隔膜によって区画して複数の陰極室と陽極室を形成してもよい。
隔膜12は、電解槽11における陽極室と陰極室とを区画する機能を有している。本実施形態の隔膜12は、公知の種々の隔膜を適用することができ、例えば陰イオン交換膜や陽イオン交換膜などの他にイオン選択性がない中性隔膜を適用することができる。
【0032】
なお本実施形態における電解装置10は、上記した電解槽11内に公知のセンサーS2を具備していてもよい。かような電解槽11内に設置可能なセンサーS2の具体例としては、電解槽11内の水温を検出可能な公知の温度検出センサー、電解槽11内のpH値を検出可能な公知のpH検出センサーなどが例示できる。なお本実施形態においては、図2に示すようにセンサーS2は陽極室側に設けられているが、この形態に限られずセンサーS2を陰極室側に設けてもよいし、陽極室と陰極室の双方にそれぞれ設けてもよい。
【0033】
後述する制御装置CUは、これらセンサーS2や温調装置を統括して制御し、例えばこのセンサーS2からの検出情報に基づいて、クーリングタワーCTへ電解酸性水貯留タンク20から送水される電解酸性水の水量を増加させたり減少させたりして調整することができる。
【0034】
さらに本実施形態における電解装置10は、電解槽11内の水温を調整可能なヒーターやクーラーなど公知の温調装置(不図示)を具備していてもよい。そして後述する制御装置CUは、クーリングタワーCTの水槽CTa内の水温と比較して電解槽11内の水温を制御することができる。より具体的に制御装置CUは、水槽CTa内の水温と等しくなるように電解槽11内の水温を上記温調装置によって調整してもよい。
なお電解装置10について上記した構成以外については、例えば出願人の有する特許第5946563号に開示された浄化装置の構成など公知の種々の電解槽の仕様で補完することができる。
【0035】
電解酸性水貯留タンク20は、電解槽11で電気分解された浄化前循環水W1のうちの酸性水(「電解酸性水」とも称する)を貯留する機能を有している。より具体的に本実施形態においては、電解槽11と電解酸性水貯留タンク20とは配管t2を介して接続されている。これにより、電解槽11で電気分解により生成された電解酸性水が電解酸性水貯留タンク20で貯留される。なお、この電解酸性水貯留タンク20内に貯留される電解酸性水は、ヒーターなど公知の温調手段(不図示)によって所望の温度に温調されていてもよい。
【0036】
また、本実施形態における電解装置10においては、上記した電解酸性水貯留タンク20内に公知のセンサーS3を具備していてもよい。かような電解酸性水貯留タンク20内に設置可能なセンサーS3の具体例としては、上記センサーS2と同様に、電解酸性水貯留タンク20内の水温を検出可能な公知の温度検出センサー、電解酸性水貯留タンク20内のpH値を検出可能な公知のpH検出センサーなどが例示できる。
【0037】
電解アルカリ水貯留タンク30は、電解槽11で電気分解された浄化前循環水W1のうちのアルカリ水(「電解アルカリ水」とも称する)を貯留する機能を有している。より具体的に本実施形態においては、電解槽11と電解アルカリ水貯留タンク30とは配管t3を介して接続されている。これにより、電解槽11で電気分解により生成された電解アルカリ水が電解アルカリ水貯留タンク30で貯留される。なお、この電解アルカリ水貯留タンク30内に貯留される電解アルカリ水は、ヒーターなど公知の温調手段(不図示)によって所望の温度に温調されていてもよい。
【0038】
また、本実施形態における電解装置10においては、上記した電解アルカリ水貯留タンク30内に公知のセンサーS4を具備していてもよい。かような電解アルカリ水貯留タンク30内に設置可能なセンサーS4の具体例としては、上記センサーS3と同様に、電解アルカリ水貯留タンク30内の水温を検出可能な公知の温度検出センサー、電解酸性水貯留タンク20内のpH値を検出可能な公知のpH検出センサーなどが例示できる。
【0039】
上述したように上記した電解装置10は、制御装置CUによって制御される。かような制御装置CUとしては、例えばメモリや演算機能を備えた公知のCPUを具備するコンピューターが例示できる。また、図1では、電解装置10と制御装置CUは別々に例示されているが、当該制御装置CUが電解装置10に一体的となるように組み込まれていてもよい。
【0040】
電解酸性水供給機構40は、上記した制御装置CUによって制御され、生成された前記電解酸性水を前記クーリングタワーへ供給する機能を有している。より具体的に本実施形態の電解酸性水供給機構40は、制御装置CUと、電解酸性水貯留タンク20と水槽CTaとを接続する配管t4、この配管t4に設置されたそれぞれ公知のポンプP2およびバルブV1とを含んで構成されている。
【0041】
これにより電解装置10で生成されて電解酸性水貯留タンク20で貯留された電解酸性水は、この電解酸性水供給機構40を介して、電解酸性水貯留タンク20からクーリングタワーCTにおいて冷却水が一時的に貯留される水槽CTaに直接注水されることになる。
【0042】
なお上記したとおり、クーリングタワーCTの水槽CTa内にはpH検出装置(センサーS1としてのpH検出センサー)を具備することができる。したがって、上記した制御装置CUは、水槽CTaに設けられて一時的に貯留される冷却水のpH値を検出するpH検出装置(センサーS1)からpH情報を受信するpH検出手段としても機能することができる。
これにより電解酸性水供給機構40は、前記したpH検出手段で受信した一時的に貯留される冷却水のpH値に基づいて、電解酸性水貯留タンク20からクーリングタワーCTへの電解酸性水の注水量を調整してもよい。
【0043】
かような電解酸性水供給機構40の具体的な制御例としては、例えば水槽CTa内のpH値が予め定めた基準値(所定値)を超えたときには、例えば注水を一時停止するなどして注水量を低下させることなどが挙げられる。
あるいは後述するとおり、電解酸性水供給機構40による電解酸性水の注水は断続的に供給し又は一時停止しつつ、電解アルカリ水貯留タンク30から水槽CTaへ電解アルカリ水を注水することなどが挙げられる。
【0044】
具体的には、例えば制御装置CUは、上記したバルブV1を制御することで第一の期間は電解酸性水貯留タンク20から電解酸性水を水槽CTaへ供給しつつ、第二の期間にはバルブV1を切り替えて電解アルカリ水貯留タンク30から電解アルカリ水を水槽CTaへ供給する制御を行ってもよい。この第一の期間と第二の期間のデューティ比は、例えば20対1~3対1などとすることが考えられ、第一の期間が第二の期間よりも多くなるように設定できる。
【0045】
電解アルカリ水供給機構50は、上記した制御装置CUによって制御され、生成された前記電解アルカリ水を前記クーリングタワーCTへ供給する機能を有している。より具体的に本実施形態の電解アルカリ水供給機構50は、制御装置CUと、電解アルカリ水貯留タンク30と水槽CTaとを接続する配管t4及びt5、この配管t4及びt5に設置されたそれぞれ公知のポンプP3およびバルブV1及びV2とを含んで構成されている。
【0046】
そして本実施形態の電解アルカリ水供給機構50は、前記したpH値が所定値を超えたときに、電解アルカリ水貯留タンク30から電解アルカリ水をクーリングタワーCTの水槽CTaに直接注水するように構成されていてもよい。
なお電解アルカリ水供給機構50は、上記した水槽CTaへ電解アルカリ水貯留タンク30から電解アルカリ水を注水する機能を有するほか、当該注水を行わないときは配管t6を介して系外へ電解アルカリ水を排水する機能を有している。
【0047】
このとき電解アルカリ水供給機構50は、排水する電解アルカリ水に対して公知の添加剤や上記した電解酸性水貯留タンク20に貯留された電解酸性水を加えて中和してから、系外(例えば河川や下水道など)に排水してもよい。
また本実施形態では上記したとおり電解アルカリ水の使用用途としてクーリングタワーCTの水槽CTaまたは系外へ送水される例を示したが、これに限られず例えば工業製品などの脱脂洗浄などに供されてもよい。
【0048】
<クーリングタワーCTの循環水浄化方法(第1のパターン)>
次に図3もさらに参照しつつ、本実施形態における第1のパターンによるクーリングタワーの冷却水(循環水)浄化方法を説明する。なお以下で説明する冷却水(循環水)浄化方法は、非限定的な一例として上記した制御装置CUにより実行される。
【0049】
すなわち第1のパターンによる浄化方法の特徴としては、クーリングタワーCTの水槽CTa内に貯留された冷却水のpH値をモニタリングし、このpH値が目標範囲(例えばpH6.5~7.0程度)を上回ると電解酸性水を注水可能なことにある。また、更なる特徴として、上記モニタリングによってpH値が目標範囲に対して下がり過ぎたらpH値を戻す処理(例えば電解酸性水の送水一時停止や電解アルカリ水の送水など)を行うことにもある。
【0050】
すなわち本発明者らが鋭意検討した結果、クーリングタワーの水槽CTaにおける最適なpH値を下記によって決定できることに帰結した。
まず上記した冷却水に析出するスケールの主成分は炭酸カルシウムであり、この炭酸カルシウムは水中のカルシウムイオン(Ca2+)と炭酸イオン(CO 2-)が結合した化合物である。そのため、仮に水中に上記した炭酸イオンが存在しなければ、炭酸カルシウムは析出しないことになる。
【0051】
そして図8に示すように、炭酸系イオンは水中のpH値によって形態が変わる性質があり、水槽CTa内のpH値が所定値以下(本例では7.0以下)であれば炭酸イオンは水槽CTa内に存在しないこととなる。
そこで本実施形態では、上記した原理に基づいて、水槽CTa内における冷却水のpH値を所定値以下(例えば7.0以下)に制御することで水中に炭酸イオンが存在しない環境とすることとした。
【0052】
具体的には図3に示すように、まずステップAで、水槽CTaのpH情報として当該水槽CTa内のpH値が所定範囲内か否かが検出される。かような「所定範囲」については、水槽CTa内に供給される循環水Whの水質などによって多少の差異があるが、上記したとおり水中に炭酸イオンが存在しない環境とする限りにおいて適宜設定できる。本実施形態では、一例として、pH値が6.5~7.0の範囲内にあることを「所定範囲内」であると設定している。
【0053】
上記ステップAで水槽CTaのpH値が所定範囲内であれば(Yes)、再びステップAに戻ってpH値の検出が継続される。換言すれば、本実施形態では、水槽CTaのpH値を監視しており、このpH値が所定範囲内から外れると後述する処理が実行される仕組みとなっている。
【0054】
すなわちステップAで水槽CTaのpH値が所定範囲内から外れた場合(No)、水槽CTa内のpH値は7を超えた値となっていることから、このままでは上記したスケールが析出されてしまう。そこで本実施形態では、ステップBにおいて、電解酸性水貯留タンク20から電解酸性水を水槽CTaに直接的に送水する制御を実行する。これにより、上述したとおりクーリングタワーCTの水槽CTa内におけるpH値は時間の経過とともに徐々に低下していくことになる。
【0055】
次いでステップCでは、所定時間が経過したか否かが判定され、所定時間が経過していないとき(No)は再び計時が継続される。一方で、ステップCで所定時間が経過した場合には(Yes)、続くステップDで水槽CTa内のpH値が未だ目標(本例ではpH7.0)よりも上か否かが判定される。なお、「所定時間」の具体例としては、特に制限はなく、水槽CTa内におけるpH値の低下度合いなどに応じて適宜調整してもよい。一例として、本実施形態では、「所定時間」として数分~数十分の間の任意の値を設定している。
【0056】
そしてステップDで水槽CTa内のpH値が目標よりも上(例えばpH7.5など)である場合(Yes)には、ステップBに戻って上記した電解酸性水の送水が継続される。一方でステップDにおいて水槽CTa内のpH値が目標よりも上でない場合(No)には、続くステップEにおいて水槽CTa内のpH値が目標範囲(本例ではpH6.5~7.0)よりも下回っているかが判定される。
【0057】
すなわち本実施形態では電解酸性水が水槽CTa内に注水されることでpH値が低下することになるが、電解酸性水の注水量が過大となると上記した目標範囲のpH値を下回ってしまう(本例では例えば6.4以下)ことがあり得る。この状態を放置した場合には、スケールの析出は抑制されるものの他の問題が代わりに発生してしまう。
【0058】
そこで本実施形態では、ステップEにおいて水槽CTa内のpH値が目標範囲を下回っていると判定された場合(Yes)には、続くステップFで電解酸性水貯留タンク20からの電解酸性水の送水を一時停止する処理が実行される。これにより、時間の経過とともに再び水槽CTa内のpH値が上昇することで、水槽CTa内のpH値を上記した目標範囲内に推移させることが可能となっている。なおこのステップFでは、上記に代えて/又は加えて、電解アルカリ水貯留タンク30から電解アルカリ水を適量だけ水槽CTa内に添加する処理を行ってもよい。
【0059】
ステップEで水槽CTa内のpH値が目標範囲を下回っていないと判定された場合(No)、およびステップFで電解酸性水の送水が一時停止された場合、これらに続くステップGでは規定の洗浄時間が経過したか否かが判定される。そしてステップGで予め規定された洗浄時間が経過した場合(Yes)には上記した冷却水(循環水)浄化方法の処理が完了する一方で、上記の洗浄時間が未だ経過していない場合(No)には再びステップBに戻って電解酸性水の送水が継続される。
【0060】
なお上記した規定の洗浄時間としては、本実施形態の趣旨に反しない限りにおいて適宜設定できる。また、本実施形態では、洗浄時間を必ずしも設定する必要はなく、例えば水槽CTa内のpH値が目標範囲内に入るように上記した電解酸性水の送水を調整(例えば送水と一時停止とを繰り返す)してもよい。
【0061】
<クーリングタワーCTの循環水浄化方法(第2のパターン)>
図3を用いて既述したとおり、水槽CTa内のpH値が目標範囲に収まるように電解酸性水の送水を調整する手法が最も簡易でシンプルであるが、本発明は上記の例に限られず他の浄化方法を採用してもよい。
以下では他の一例として、図4もさらに参照しつつ、本実施形態における第2のパターンによるクーリングタワーの冷却水(循環水)浄化方法を説明する。
【0062】
まずステップ1で、制御装置CUは、電解装置10の電解槽11における水量は充分か否かが判定される。なお本ステップ1は必須でなく適宜省略してもよく、その場合には例えば作業者がこの要否を判定してもよい。
【0063】
ステップ1で水量が充分でない場合(ステップ1でNo)、続くステップ2で制御装置CUは、クーリングタワーCTから水(例えば水槽CTaの循環水や工業用水Ws)を電解槽11に直接送水する制御を行う。具体的には上記したとおり、制御装置CUは、ポンプP1を制御することで、例えば配管t1を介して浄化前循環水W1や配管tsを介して工業用水Wsを電解槽11へ送水する。
【0064】
一方でステップ1において水量が充分である場合(ステップ1でYes)には、後述するステップ4へ移行する。
ステップ2の後、続くステップ3で制御装置CUは、電解槽11へ送水された水を電気分解して電解酸性水と電解アルカリ水を生成する制御を行う。そしてその時に生成された電解酸性水と電解アルカリ水は、それぞれ電解酸性水貯留タンク20と電解アルカリ水貯留タンク30に貯留される。
【0065】
ステップ3の後、続くステップ4で制御装置CUは、水槽CTa内の循環水W0は洗浄(浄化)が必要か否かを判定する。より具体的に例えば制御装置CUは、所定期間(例えば数時間~数カ月の任意の日数)が経過しているか否かを判定し、この所定期間が経過していれば循環水W0の浄化が必要と判定する。一例として、本実施形態では1日1回の洗浄処理が実行されるように「所定期間」は24時間としている。
【0066】
そしてステップ4で浄化が不要であればステップ5Aにおいて電解槽11における電解酸性水貯留タンク20内の酸性電解水の量が充分か否かを判定する。より具体的に制御装置CUは、例えば電解酸性水貯留タンク20に設置された液面センサーなど公知の水量検出センサーの検出結果に基づいて、電解酸性水貯留タンク20内の酸性電解水の量を検出してもよい。
そしてステップ5Aにおいて電解酸性水の貯水量が充分であれば本処理を完了するとともに、貯水量が充分でない場合にはステップ2へ戻って処理を継続する。
【0067】
一方で、ステップ4で浄化が必要であれば、制御装置CUは、続くステップ5Bにおいて電解酸性水貯留タンク20からクーリングタワーCTへ電解酸性水の送水を開始する制御を行う。より具体的に制御装置CUは、それぞれ公知のポンプP2とバルブ(流量調整弁)V1を制御して、配管t4を介して水槽CTaへ直接的に電解酸性水貯留タンク20から電解酸性水の供給を行う。
【0068】
以上説明した第1のパターンおよび第2のパターンのいずれによっても、水槽CTaには電解酸性水が送水されることで当該水槽CTa内のpH値が低下することでスケールの析出が大幅に抑制される。なお、このとき電解酸性水貯留タンク20から送水される電解酸性水の量は、例えば水槽CTaの容積に応じて実験やシミュレーションで決定できる。従って制御装置CUは、上記実験やシミュレーションで算出した必要量の電解酸性水を連続的又は断続的に送水する制御を行うことができる。
【0069】
なお上述のとおり、このとき制御装置CUは、水槽CTa内のセンサーS1による検出結果に基づいて、電解酸性水貯留タンク20から送水される電解酸性水の量を調整することができる。例えばセンサーS1がpH検出装置である場合には、制御装置CUは、水槽CTa内のpH値に基づいて電解酸性水貯留タンク20からの送水を一時停止し、あるいは断続的な送水に切り替えてもよい。
【0070】
すなわち例えば第2のパターンにおいては、上記ステップ5Bに続くステップ6で、制御装置CUは、クーリングタワーCTの水槽CTa内のpH値は所定の範囲内か否かを判定する。この「所定の範囲内」については、上記した第1のパターンにおける「目標範囲」と同様であり、クーリングタワーCTごとの仕様などによって適宜決定されるものであるが、一例として例えばpH5~7程度であることが好ましい。
【0071】
そしてステップ6で水槽CTa内のpH値が所定範囲にない場合(ステップ6でNo)、制御装置CUは、続くステップ7Aで電解酸性水貯留タンク20からの送水を一時停止する制御を行う。
【0072】
そしてステップ7Aに続くステップ8で、制御装置CUは、所定時間が経過したか否かを判定する。この「所定時間」は、送水の停止時間であって水槽CTaの容積などに応じて適宜設定してもよい。そしてステップ8で上記した所定時間が経過した場合には、再びステップ6に戻って水槽CTa内のpH値の検出が行われる。
【0073】
一方で、ステップ6で水槽CTa内のpH値が所定範囲である場合(ステップ6でYes)、制御装置CUは、続くステップ7Bで水槽CTa内の循環水W0の浄化(洗浄)が完了したか否かを判定する。かような洗浄完了の判定基準としては、例えば予め算出した規定量の電解酸性水を送水したか否か、予め算出した規定時間の送水を行ったか否か、あるいは水槽CTa内のpH値が上記所定の範囲内で維持されているか否かなどが挙げられる。
【0074】
そしてステップ7Bにおいて水槽CTa内の循環水Woの浄化(洗浄)処理が完了した場合には本処理を完了するとともに、未だ完了していない場合にはステップ5Bへ戻って処理を継続する。
【0075】
以上説明した本実施形態における冷却水(循環水)浄化方法によれば、クーリングタワーで用いられる循環水Woそのものを原資として電気分解を行って浄化用液体(電解酸性水)を生成しているため、非常に低コストであると言える。
そして上記した浄化用液体(電解酸性水)は、クーリングタワーCT内の水槽CTa内だけでなく発熱機械HC内(熱交換器内など)にも流通するため、発熱機械HCの洗浄効果も同時に奏することができる。
【0076】
さらに電解酸性水で浄化を行うことで化学薬品を用いないことから、環境的な負荷も極めて小さいと言える。さらには制御装置CUによってクーリングタワー以外の場所から遠隔操作を行って電解酸性水を送水することから、わざわざクーリングタワーCT内に入らずとも高いメンテナンス性を実現することができる。
【0077】
≪第2実施形態≫
次に図5を用いて本発明の第2実施形態について説明する。
上記した第1実施形態においては、クーリングタワーCTで用いられる水(上記した循環水や工業用水)から生成した電解酸性水を用いて、水槽CTa内や発熱機械HC内のスケール除去や不析出を行っていた。
【0078】
これに対して本実施形態では、クーリングタワーCTと発熱機械HCの間の流路を一時的に切り替えて、電解酸性水貯留タンク20から送水される電解酸性水を発熱機械HC内へ直接流通させることを特徴としている。
従って以下の説明では、上記した第1実施形態との相違点のみについて主に説明し、第1実施形態と同じ構成要素については同一の符号を付してその説明は適宜省略する。なお図5では上記した工業用水供給手段IWSと配管tsなどが省略されているが、本実施形態においても第1実施形態と同様に工業用水Wsが電解装置10に供給可能な構成とされていてもよい。
【0079】
図5に示すように、本実施形態におけるクーリングタワーに適用可能な冷却水浄化システムでは、配管t7のうちクーリングタワーCTから発熱機械HCに向かう流路内にバルブV6が設けられるとともに、配管t7のうち発熱機械HCからクーリングタワーCTに向かう流路内にバルブV7が設けられている。
【0080】
また、このバルブV6とV7とを接続する配管t9(バイバス配管)が設けられるとともに、この配管t9には公知のポンプP4が配設されることで、発熱機械HCには流通させずにクーリングタワーCTからこの配管t9を経由して循環水Woが循環可能とされている。
【0081】
また同図から理解されるとおり、発熱機械HC内にクーリングタワーCTからの循環水W0が流通していた流路には電解酸性水貯留タンク20と接続される配管t9およびt10が配設されるとともに、それぞれバルブV4およびV5が設置されて電解酸性水貯留タンク20から電解酸性水が発熱機械HC内を循環可能となっている。
【0082】
以上の構成によれば、例えば発熱機械HCのメンテナンス時には、バルブV1~V5を適宜切り替えてポンプP2を駆動することで、電解酸性水貯留タンク20に貯留された電解酸性水が配管t4、配管t9及び配管t10を順次流通することで発熱機械HC内を通って電解酸性水貯留タンク20に還流する流れを生み出すことが出来る。このときバルブV6及びV7を切り替えてポンプP4を駆動することで、クーリングタワーCT内の水槽CTa内に存在する循環水Woはその場に留まらずに循環する流れを維持できることから、バクテリアの発生などを抑制することが可能となっている。
【0083】
なお本実施形態においても、例えば発熱機械HCの浄化処理中にクーリングタワーCTから直接的に循環水や工業用水を用いて電解装置10で電気分解を並行して行っていてもよい。このとき余剰となった電解アルカリ水は、バルブV2を切り替えるとともにポンプP3を駆動することで、必要に応じて中和処理を行いつつ系外へ適宜排水することができる。
【0084】
また、例えば発熱機械HCの浄化処理中に電解酸性水も余剰が出た場合には、バルブV1及びV2を切り替えることで、必要に応じて中和処理を行いつつ一時的に電解酸性水を系外へ排水することもできる。
以上説明した第2実施形態においても、発熱機械HCに特化して上記した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0085】
上記した各実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。以下、各実施形態に適宜適用が可能な変形例について説明する。なお、以下の変形例においては既述の構成と同じ機能・作用を奏するものは同じ参照番号を付し、その説明は適宜省略する。
【0086】
<変形例1>
図6に変形例1におけるクーリングタワーに適用可能な冷却水浄化システムを示す。本変形例1では、上記した第1実施形態のクーリングタワーに適用可能な冷却水浄化システムに加えてフィルタ手段をさらに具備することに特徴がある。なお図6では上記した工業用水供給手段IWSと配管tsなどが省略されているが、本変形例においても工業用水Wsが電解装置10に供給可能な構成とされていてもよい。
【0087】
より具体的に、冷却水浄化装置100は、前記したクーリングタワーCTから電解装置10の電解槽11に供給される冷却水(浄化前循環水W1)に含まれる不純物を遮断するフィルタ手段としての不純物除去フィルタ60を更に有していてもよい。かような不純物除去フィルタ60としては、例えばポリプロピレン樹脂を用いた不織布フィルタなど種々の公知のろ過フィルタを適用できる。
【0088】
また、本変形例1で上記不純物除去フィルタ60は電解槽11に設置される例を示しているが、設置場所としては例えば配管t1や水槽CTaからの送水口直下など適宜設置することができる。また、本変形例1では、1つの不純物除去フィルタを設置しているが、この形態に限られず上記した箇所にそれぞれ設置してもよい。
【0089】
以上の変形例1によれば、上記した第1実施形態の効果に加え、電解槽11内に不純物が混入してしまうことを抑制することができ、上記した冷却水の電気分解を安定して行うことが可能となっている。
【0090】
<変形例2>
図7に変形例2におけるクーリングタワーに適用可能な冷却水浄化システムを示す。本変形例2では、上記した変形例1の冷却水浄化システムに加えて冷却水温度検出手段を具備していることに特徴がある。なお変形例2においてフィルタ手段は必須ではなく適宜省略してもよく、その場合には第1実施形態の冷却水浄化システムに加えて冷却水温度検出手段を具備することになる。
【0091】
より具体的に、冷却水浄化装置100は、前記したクーリングタワーCTから電解装置10の電解槽11に供給される冷却水(浄化前循環水W1)の温度を検出可能な温度センサー70を更に有している。かような温度センサー70としては、水温を検出可能な公知の温度センサーが適用できる。
【0092】
また、本変形例2で上記温度センサー70は電解槽11に設置される例を示しているが、設置場所としては例えば配管t1や水槽CTaからの送水口直下など適宜設置することができる。また、本変形例2では、1つの温度センサーを設置しているが、この形態に限られず上記した箇所に合計で複数の温度センサーを設置してもよい。
【0093】
そして本変形例2において冷却水浄化装置100における制御装置CUは、前記した温度センサー70の検出結果に基づいて、例えば前記電解装置10における冷却水の電気分解を一時停止する制御を行ってもよい。
【0094】
すなわち電解槽11内における電解処理には効率的に実行可能な温度範囲があり、この温度範囲を外れる冷却水(浄化前循環水W1)が供給された場合には電解効率が低下してしまう。これに対して本変形例2によれば、上記した第1実施形態の効果に加え、電解槽11内での電解処理(浄化前循環水W1の電気分解)を効率的に行うことができるという効果も更に奏することが可能となっている。
【0095】
なお上記した変形例2における図7でも上記した工業用水供給手段IWSと配管tsなどが省略されているが、変形例2においても工業用水Wsが電解装置10に供給可能な構成とされていてもよい。この場合には、上記した上記冷却水温度検出手段を配管tsなどに設置することで、電解装置10に供給される工業用水Wsの温度も検出することが可能となる。
また、以上で説明した各実施形態および各変形例は適宜組み合わせて冷却水浄化システムを構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0096】
以上説明したように、本発明の冷却水浄化システムは、例えばクーリングタワーと発熱機械を循環する循環冷却水に対して好適であり、低コストで高効率な浄化システムを構築するのに適している。
【符号の説明】
【0097】
100 冷却水浄化装置
10 電解装置
11 電解槽
12 隔膜
13 陽極板
14 陰極板
15 電源
20 電解酸性水貯留タンク
30 電解アルカリ水貯留タンク
40 電解酸性水供給機構
50 電解アルカリ水供給機構
60 不純物除去フィルタ
70 温度センサー
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8