IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三樹 久惠の特許一覧

<>
  • 特許-犬の便キャッチャー 図1
  • 特許-犬の便キャッチャー 図2
  • 特許-犬の便キャッチャー 図3
  • 特許-犬の便キャッチャー 図4
  • 特許-犬の便キャッチャー 図5
  • 特許-犬の便キャッチャー 図6
  • 特許-犬の便キャッチャー 図7
  • 特許-犬の便キャッチャー 図8
  • 特許-犬の便キャッチャー 図9
  • 特許-犬の便キャッチャー 図10
  • 特許-犬の便キャッチャー 図11
  • 特許-犬の便キャッチャー 図12
  • 特許-犬の便キャッチャー 図13
  • 特許-犬の便キャッチャー 図14
  • 特許-犬の便キャッチャー 図15
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】犬の便キャッチャー
(51)【国際特許分類】
   A01K 23/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A01K23/00 D
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021002816
(22)【出願日】2021-01-12
(65)【公開番号】P2022108032
(43)【公開日】2022-07-25
【審査請求日】2023-12-07
(73)【特許権者】
【識別番号】521017468
【氏名又は名称】三樹 久惠
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】三樹 久惠
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3021428(JP,U)
【文献】特開平11-276010(JP,A)
【文献】特開平10-191823(JP,A)
【文献】特開2018-174879(JP,A)
【文献】特開2019-022466(JP,A)
【文献】特開2009-240278(JP,A)
【文献】特開2017-184703(JP,A)
【文献】特開2019-103413(JP,A)
【文献】特開2002-142594(JP,A)
【文献】米国特許第04969419(US,A)
【文献】実開平07-017050(JP,U)
【文献】特開2007-159420(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0156991(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01K 13/00、23/00、29/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
中心からずれた位置に尾を通す孔が形成してある軟質の膜部と、
前記膜部の外周に沿って前記膜部に取り付けられており、自由長が前記膜部の面積の平方根に円周率の平方根の2倍を乗算した値より短いリング状の弾性部と、
前記弾性部を均等に三つに区分したうちの1つであって前記孔から前記弾性部までの最短位置を含む弾性部第1領域に接続し、前記弾性部第1領域を背中側へ引っ張る第1引張部と、
前記弾性部を均等に三つに区分したうちの1つであって前記弾性部第1領域の一方の端部に接する弾性部第2領域に接続し、前記弾性部第2領域を一方の後脚側へ引っ張る第2引張部と、
前記弾性部を均等に三つに区分したうちの1つであって前記弾性部第1領域の他方の端部に接する弾性部第3領域に接続し、前記弾性部第3領域を他方の後脚側へ引っ張る第3引張部と、を有する犬の便キャッチャー。
【請求項2】
前記第1引張部は、胴輪または首輪に係合可能な第1紐部と、前記第1紐部の両端部に接続しており前記弾性部第1領域に着脱自在に接続する一対の第1クリップ部と、を有する請求項1に記載の犬の便キャッチャー。
【請求項3】
前記膜部は、前記孔の開口縁部を含む孔周辺部の厚みが、前記孔周辺部と前記外周との間に位置するカバー部の厚みより厚いことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の犬の便キャッチャー。
【請求項4】
前記第2引張部は、第2紐部と、前記第2紐部の両端部に接続しており前記弾性部第2領域に着脱自在に接続する一対の第2クリップ部と、を有し、前記第2引張部と前記弾性部第2領域との間に、一方の後脚を通す挿通部が形成され、
前記第3引張部は、第3紐部と、前記第3紐部の両端部に接続しており前記弾性部第3領域に着脱自在に接続する一対の第3クリップ部と、を有し、前記第3引張部と前記弾性部第3領域との間に、他方の後脚を通す挿通部が形成される請求項1から請求項3までのいずれかに記載の犬の便キャッチャー。
【請求項5】
前記第1引張部は、前記弾性部第1領域に着脱自在に接続する第1クリップ部と、おしっこ用オムツに着脱自在に接続する一方の第4クリップ部と、前記第1クリップ部と前記第4クリップ部とを接続する第1紐部と、を有する請求項1に記載の犬の便キャッチャー。
【請求項6】
前記第2引張部は、一方の後脚を通すリング状または筒状の一方の後脚挿通部と、前記一方の後脚挿通部と前記弾性部第2領域とを接続する第2接続部と、を有し、
前記第3引張部は、他方の後脚を通すリング状または筒状の他方の後脚挿通部と、前記他方の後脚挿通部と前記弾性部第3領域とを接続する第3接続部と、を有する請求項1から請求項3までのいずれかに記載の犬の便キャッチャー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬に装着して排便による汚れを防止する犬の便キャッチャーに関する。
【背景技術】
【0002】
犬や猫などのペットと屋内で共同生活する生活スタイルが広がっている。特に犬は、愛玩犬のように精神的なつながりを求める場合や、盲導犬のように身体的なサポートを目的とする場合など、様々なシチュエーションで人間と良好な関係を構築する動物である。
【0003】
しかしながら、特に犬が年老いて老犬になった場合において、犬の排泄の失敗が増え、排泄失敗時の屋内の清掃などに関して、飼い主の負担が大きくなるという問題が発生する。このような犬の排泄失敗を解決するための対策として、犬用の紙おむつなどが提案されている(特許文献1参照)。しかし、従来の犬用のオムツでは、屋内の汚れを防止することはできるものの、オムツ内の大便が犬の体に付着する問題があり、排便後に犬の体を洗う作業が非常に大変である。特に中型犬以上の大きさの犬の場合、犬の体に付着した便を洗い流す作業に関する飼い主の負担は、非常に大きい。
【0004】
一方、なるべく犬の体を汚さないように、犬の大便を回収するものとして、プラスチック袋を取り付けた犬の尻当てパッドが提案されている(特許文献2参照)。ただし、このような尻当てパッドは、寝たきりの状態の犬に用いる場合はよいものの、犬がある程度動ける場合には簡単にお尻から脱落してしまい、便を回収できない問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-80833号公報
【文献】実用新案登録第3198758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、犬の動きによって位置ずれや脱落が生じにくく、犬の体を極力汚さないで大便を回収できる犬の便キャッチャーを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る犬の便キャッチャーは、
中心からずれた位置に尾を通す孔が形成してある軟質の膜部と、
前記膜部の外周に沿って前記膜部に取り付けられており、自由長が前記膜部の面積の平方根に円周率の平方根の2倍を乗算した値より短いリング状の弾性部と、
前記弾性部を均等に三つに区分したうちの1つであって前記孔から前記弾性部までの最短位置を含む弾性部第1領域に接続し、前記弾性部第1領域を背中側へ引っ張る第1引張部と、
前記弾性部を均等に三つに区分したうちの1つであって前記弾性部第1領域の一方の端部に接する弾性部第2領域に接続し、前記弾性部第2領域を一方の後脚側へ引っ張る第2引張部と、
前記弾性部を均等に三つに区分したうちの1つであって前記弾性部第1領域の他方の端部に接する弾性部第3領域に接続し、前記弾性部第3領域を他方の後脚側へ引っ張る第3引張部と、を有する。
【0008】
本発明に係る犬の便キャッチャーは、膜部に緩みを持たせるように外周に取り付けられたリング状の弾性部を有し、膜部の中心から背中側にずれた位置に尾を通す孔が形成されている。このような犬の便キャッチャーは、犬の尾の下の肛門から排泄される大便に対して、膜部が大便を受け止めて外周する袋として好適に機能し、犬の体を極力汚さないで大便を回収できる。また、本発明では、膜部の孔に尾を通したうえで、膜部の外周に取り付けられるリング状の弾性部を、背中側と、一方および他方の後脚側との3方向に、第1~第3引張部により引っ張る。本発明では、上述した3方向への引っ張りと、弾性部の伸縮と、尾が通される孔とにより、膜部が犬の動きによって位置ずれや脱落が生じにくい状態に維持され、膜部が肛門を確実に覆い、かつ、膜部の外周の弾性部が犬の体に密着する。したがって、本発明に係る犬の大便キャッチャーは、膜部が確実に大便を受け止めることができる。
【0009】
また、たとえば、前記第1引張部は、胴輪または首輪に係合可能な第1紐部と、前記第1紐部の両端部に接続しており前記弾性部第1領域に着脱自在に接続する一対の第1クリップ部と、を有してもよい。
【0010】
第1引張部が胴輪または首輪に係合することにより、弾性部を背中側に引っ張る力が安定する。また、第1クリップ部が着脱自在であるため、膜部および弾性部を容易に着脱および交換することができる。
【0011】
また、たとえば、前記膜部は、前記孔の開口縁部を含む孔周辺部の厚みが、前記孔周辺部と前記外周との間に位置するカバー部の厚みより厚くてもよい。
【0012】
このような膜部は、尾を通す孔の周りが補強されており、尾の動きや便の重さなどにより、孔の開口縁部などが裂ける問題を防止できる。
【0013】
また、たとえば、前記第2引張部は、第2紐部と、前記第2紐部の両端部に接続しており前記弾性部第2領域に着脱自在に接続する一対の第2クリップ部と、を有し、前記第2引張部と前記弾性部第2領域との間に、一方の後脚を通す挿通部が形成されていてもよく、
前記第3引張部は、第3紐部と、前記第3紐部の両端部に接続しており前記弾性部第3領域に着脱自在に接続する一対の第3クリップ部と、を有し、前記第3引張部と前記弾性部第3領域との間に、他方の後脚を通す挿通部が形成されていてもよい。
【0014】
このような犬の大便キャッチャーは、弾性部を後脚側に引っ張る力が安定し、膜部の位置ずれや脱落を、より好適に防止できる。また、第2および第3クリップ部が着脱自在であるため、膜部および弾性部を容易に着脱および交換することができる。
【0015】
また、たとえば、前記第1引張部は、前記弾性部第1領域に着脱自在に接続する第1クリップ部と、おしっこ用オムツに着脱自在に接続する一方の第4クリップ部と、前記第1クリップ部と前記第4クリップ部とを接続する第1紐部と、を有してもよい。
【0016】
本発明に係る犬の便キャッチャーは、おしっこ用オムツと併用してもよく、その場合、第1引張部がオムツと弾性部とを接続することにより、弾性部第1領域を背中側に引っ張る力が安定する。また、第1および第4クリップ部が着脱自在であるため、膜部および弾性部を容易に着脱および交換することができる。
【0017】
また、たとえば、前記第2引張部は、一方の後脚を通すリング状または筒状の一方の後脚挿通部と、前記一方の後脚挿通部と前記弾性部第2領域とを接続する第2接続部と、を有してもよく、
前記第3引張部は、他方の後脚を通すリング状または筒状の他方の後脚挿通部と、前記他方の後脚挿通部と前記弾性部第3領域とを接続する第3接続部と、を有してもよい。
【0018】
このような第2引張部および第3引張部も、弾性部を後脚側に引っ張る力が安定し、膜部の位置ずれや脱落を、より好適に防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1図1は、本発明の第1実施形態に係る犬の便キャッチャーの装着前後の状態を比較した概念図である。
図2図2は、図1に示す犬の便キャッチャーの装着状態を、犬の後方から観察した概念図である。
図3図3は、図1に示す犬の便キャッチャーの装着状態を、犬の側方から観察した概念図である。
図4図4は、図1に示す犬の便キャッチャーの装着前の状態を表す外観図である。
図5図5は、図4に示す犬の便キャッチャーにおける膜部および弾性部を示す外観図である。
図6図6は、図2~3に示す犬の便キャッチャーが便を回収した状態を示す概念図である。
図7図7は、図4に示す犬の便キャッチャーにおける第1引張部に関する第1変形例を示す外観図である。
図8図8は、犬の便キャッチャーにおける第2引張部に関する第2変形例を示す外観図である。
図9図9は、犬の便キャッチャーにおける第1引張部に関する第3変形例を示す外観図である。
図10図10は、図4に示す犬の便キャッチャーにおける第2および第3引張部に関する第4変形例を示す外観図である。
図11図11は、本発明の第2実施形態に係る犬の便キャッチャーを示す外観図である。
図12図12は、本発明の第3実施形態に係る犬の便キャッチャーに含まれる各パーツを示す外観図である。
図13図13は、本発明の第3実施形態に係る犬の便キャッチャーの第1引張部に関する第5変形例を示す外観図である。
図14図14は、本発明の第1実施形態に係る犬の便キャッチャーの第1および第2引張部に関する第6変形例を示す外観図である。
図15図15は、図4に示す犬の便キャッチャーにおける第2および第3引張部に関する第7変形例を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
第1実施形態
図1は、本発明の第1実施形態に係る犬の便キャッチャー10の装着前後の状態を比較した概念図である。図1上側は、犬の便キャッチャー10を装着する前の犬90を表しており、図1下側は、犬の便キャッチャー10を装着した後の犬90を表している。図1に示すように、犬の便キャッチャー10は、たとえば、胴輪98または首輪をした犬に対して装着して使用される。なお、胴輪98や首輪の形状は特に限定されず、図1に示すように胴輪98と首輪が一体となったものであってもよく、胴輪や首輪が単体で用いられるものであってもよい。
【0021】
図1に示すように、犬の便キャッチャー10は、膜部20、弾性部30、第1引張部40、第2引張部50および第3引張部60(図2参照)等を有する。犬の便キャッチャー10を装着した犬90を後方から見た図2に示すように、犬の便キャッチャー10は、膜部20が犬90の肛門を覆うように、膜部20を犬90のお尻に装着して使用する。
【0022】
図1に示すように、犬の便キャッチャー10は、おしっこ用オムツ91と組み合わせて使用することが可能である。ただし、犬の便キャッチャー10は、おしっこ用オムツ91と組み合わせることなく、単独で使用されてもよい。
【0023】
図4は、犬の便キャッチャー10を犬90に装着する前の状態を示す概略図であり、犬の便キャッチャー10を、弾性部30側から見た図である。図4に示すように、犬の便キャッチャー10は、膜部20と弾性部30とが一体になった部材(図5参照)と、第1引張部40と、第2引張部50と、第3引張部60との、互いに着脱可能な4つの部材で構成される。
【0024】
図5は、図4に示す犬の便キャッチャー10のうち、膜部20と弾性部30とが一体になった部材を示す概略図である。膜部20は、中心からずれた位置に犬90の尾94(図2参照)を通す孔22が形成してあり、折り畳みなどの変形が可能な軟質な材料で形成してある。例えば、膜部20の材質としては、PS、PE、PETなどの樹脂膜や、アルミ膜などの金属フィルム、布などが挙げられるが、樹脂膜であることが特に好ましい。膜部20が樹脂膜であれば、便の水分が多い場合でも、便が外部に漏れることを確実に防止できる。
【0025】
膜部20の大きさは、装着される犬90の大きさ、犬種などに応じて適宜変更されるが、たとえば膜部20は、100~5000cm程度の面積のシートで構成することができる。皺を伸ばした状態の膜部20の平面形状は、たとえば円形状とすることができるが、楕円でもよく、4角形、6角形その他の多角形であってもよい。また、膜部20は、弾性部30を取り付けなくても、開口を有する袋状などの立体形状を有していてもよい。
【0026】
図5に示すように、孔22は、膜部20の中心から上方(犬90に取り付けた状態で背中99側(図2参照))にずれた位置に形成されている。孔22は、図4に示すような多角形の開口縁を有するものであってもよく、図5に示すように、孔22の中心から放射状に形成された切り込みで構成されるものであってもよい。図2に示すように、膜部20および弾性部30は、弾性部30側から孔22に、犬90の尾94を付け根付近まで通すことにより、装着される。
【0027】
図5に示すように、膜部20は、孔22の開口縁部を含む孔周辺部24の厚みが、孔周辺部24と膜部20の外周23までの間に位置するカバー部25の厚みより厚くなっている。これにより、孔22に尾94を通す際や、犬の便キャッチャー10を装着した後の尾94の動きなどにより、孔22の開口縁が裂ける問題を防止できる。図5に示す例では、カバー部25が樹脂膜の1層構造であるのに対して、孔周辺部24は、樹脂膜とこれに貼り付けられた粘着テープの2重構造になっているが、孔周辺部24の構造はこれのみには限定されない。
【0028】
図5に示すように、リング状の弾性部30は、膜部20の外周23に沿って取り付けられている。弾性部30は、ゴムやエラストマーなどの弾性材料を含むリング状の部材で構成される。弾性部30は、たとえば膜部20の外周23に形成される紐遠し通路に収容されたり、プリーツ状にした外周23に接着または溶着されたりして、膜部20の外周23に取り付けられる。ただし、弾性部30の膜部20への取付方法は特に限定されず、弾性部30の伸縮に対して、膜部20が裂けずに追従できる他の方法で取り付けられていてもよい。
【0029】
図5に示すように、外力が作用しない状態での弾性部30の自由長(周長)は、膜部20の面積の平方根に円周率の平方根の2倍を乗算した値より短いため、膜部20には緩みが生じる。これにより、図6に示すように、膜部20が、肛門95からの排泄物を収容する袋として機能し、便により犬90の体が汚れることを防止することができる。
【0030】
また、弾性部30が伸縮することにより、犬90のお尻と弾性部30との間の隙間が開くことを防止するため、膜部20が排泄物を確実に収容し、犬90の排泄物により、屋内が汚れることを防止することができる。なお、膜部20は、透光性を有していてもよい。膜部20が透光性を有していれば、図6に示すように、膜部20内の排泄物を外部から視認することができるため、これを視認した飼い主が、犬の便キャッチャー10の膜部20および弾性部30(図5参照)を、新しいものに交換することができる。なお、図5に示すような膜部20と弾性部30が一体になった部材は、洗って繰り返し使用可能であってもよいが、衛生面などを考慮して使い捨てであってもよい。
【0031】
図2から図4に示すように、図5に示す膜部20および弾性部30は、第1引張部40、第2引張部50および第3引張部60を用いて、犬90に装着される。図2および図3に示すように、第1引張部40は、弾性部30の弾性部第1領域31(図4参照)を、犬90の背中99側に引っ張る。
【0032】
図4に示すように、第1引張部40は、弾性部30を均等に三つに区分したうちの1つである弾性部第1領域31に接続する。弾性部第1領域31は、膜部20に形成された孔22から弾性部30までの最短位置31cを含む。図3に示すように、膜部20および弾性部30は、第1引張部40が接続する弾性部第1領域31が上向きになる姿勢で、犬90のお尻に装着される。
【0033】
図3に示すように、第1引張部40は、胴輪98または首輪(不図示)に係合可能な第1紐部41と、第1紐部41の両端部に接続しており弾性部第1領域31(図4参照)に着脱自在に接続する一対の第1クリップ部42a、42bとを有する。第1紐部41は、樹脂製のコイル紐やゴム紐などの弾性のある紐であることが好ましいが、特に限定されない。図3に示す例では、第1紐部41を胴輪98に通すことにより、胴輪98に第1紐部41を係合させているが、第1紐部41と胴輪98または首輪との係合方法は、図3に示す例のみには限定されない。
【0034】
図4に示すように、第1クリップ部42a、42bは、リングなどで第1紐部41の両端部に接続されている。第1クリップ部42a、42bは、弾性部第1領域31を外側から挟むことにより、弾性部第1領域31に接続する。第1クリップ部42a、42bは、弾性部第1領域31に対する固定のロックと解除とをワンタッチで切り替える切換機構を有しているが、第1クリップ部42a、42bとしてはこれのみには限定されない。
【0035】
図4に示すように、第2引張部50は、弾性部30を均等に三つに区分したうちの1つである弾性部第2領域32に接続する。弾性部第2領域32は、孔22から弾性部30までの最短位置31cを含む弾性部第1領域31の一方の端部31aに接する。図2および図3に示すように第2引張部50は、弾性部30の弾性部第2領域32を、犬90の一方の後脚(右後脚92)側へ引っ張る。
【0036】
図4に示すように、第2引張部50は、第2紐部51と、第2紐部51の両端部に接続しており弾性部第2領域32に着脱自在に接続する一対の第2クリップ部52a、52bとを有する。図3および図4に示すように、第2引張部50と弾性部第2領域32との間に、一方の後脚である右後脚92を通す挿通部53が形成される。図2および図3に示すように、第2引張部50は、第2紐部51が犬90の右後脚92の付け根付近を回り、第2紐部51の両端に接続する第2クリップ部52a、52bがお尻側の弾性部30に接続する。
【0037】
図4に示す一対の第2クリップ部52a、52bは、弾性部第2領域32に対して着脱自在である。したがって、犬の便キャッチャー10の装着に際しては、膜部20および弾性部30を犬90のお尻に装着した後、第2引張部50を右後脚92に回したのち、第2クリップ部52a、52bの一方または両方を弾性部第2領域32に固定して挿通部53を形成してもよい。また、これとは異なり、予め挿通部53を形成しておき、右後脚92を挿通部53に通すことにより、犬の便キャッチャー10の装着を行ってもよい。
【0038】
第2紐部51は、伸縮性のあるゴム紐であるが、第1紐部41と同様のコイル紐であってもよく、伸縮性のない紐であってもよい。第2紐部51の長さは、第1紐部41の長さより短いが、後述する第3紐部61とは同じ長さである。
【0039】
一対の第2クリップ部52a、52bは、第2クリップ部52a、52bの後端に備えられる通し孔に第2紐部51が通されることにより、第2紐部51に対して接続されている。第2引張部50が有する一対の第2クリップ部52a、52bの構造は、第1引張部40が有する一対の第1クリップ部42a、42bの構造と同様である。
【0040】
図4に示すように、第3引張部60は、弾性部30を均等に三つに区分したうちの1つである弾性部第3領域33に接続する。弾性部第3領域33は、孔22から弾性部30までの最短位置31cを含む弾性部第1領域31の他方の端部31bに接する。図2に示すように第3引張部60は、弾性部30の弾性部第3領域33を、犬90の他方の後脚(左後脚93)側へ引っ張る。
【0041】
図4に示すように、第3引張部60は、第3紐部61と、第3紐部61の両端部に接続しており弾性部第3領域33に着脱自在に接続する一対の第3クリップ部62a、62bとを有する。図4に示すように、第3引張部60と弾性部第3領域33との間に、他方の後脚である左後脚93を通す挿通部63が形成される。図4に示すように、第3引張部60は、第2引張部50に対して略対称になるように弾性部30に対して配置されている。第3引張部60における第3紐部61および第3クリップ部62a、62bの構造は、第2引張部50における第2紐部52および第2クリップ部52a、52bの構造と同様である。
【0042】
図2に示すように、犬の便キャッチャー10では、尾94を孔22に通したうえで、弾性部30を第1~第3引張部40、50、60が三方向から引っ張ることにより、犬90が動いた場合にも、膜部20がお尻からずれたり脱落したりする問題を、好適に防止できる。また、図6に示すように、犬90の便96を膜部20が受け止めるともに、膜部20の緩み部分に収容されるため、便96が犬90の体に付着する問題も、好適に防止できる。
【0043】
また、図6に示すように、リング状の弾性部30が、膜部20の外周23に沿ってリング状に取り付けられているため、犬90が動いた場合でも、便96が膜部20から脱落することを好適に防止できる。したがって、このような犬の便キャッチャー10は、屋内や犬90の体を汚さないで、排泄失敗時の便96を確実に回収することができる。また、第1~第3引張部40、50、60が着脱自在であるため、犬の便キャッチャー10では、膜部20および弾性部30を容易に犬90から取り外すことが可能であり、排泄物の処理や付け替え作業も容易である。これにより、犬の便キャッチャー10は、老犬の飼育に関する飼い主の負担を軽減し、飼い主と犬との共同生活をサポートすることができる。
【0044】
本発明に係る犬の便キャッチャーは、図1図5に示す第1実施形態のみには限定されず、他の実施形態や変形例を含むことは言うまでもない。たとえば、図5に示す膜部20および弾性部30は、入浴時等に頭髪をカバーするシャワーキャップに孔22を形成し、孔22の周りに粘着テープを貼り付けて孔周辺部24を形成することにより、作製することができる。
【0045】
図7は、犬の便キャッチャー10の第1変形例に係る第1引張部140を示す外観図である。第1引張部140の第1紐部141は、図4に示す第2および第3引張部50、60の第2および第3紐部51、61と同様に、ゴム紐で構成される。第1引張部140の第1紐部は、図7に示すようなゴム紐であってもよく、図3に示すようなコイル紐であっても構わない。
【0046】
図8は、犬の便キャッチャー10の第2変形例に係る第2引張部250を示す外観図である。第2引張部250の第2紐部251は、図8に示すように、リング状のゴム紐である。なお、犬の便キャッチャー10の第1引張部40の第1紐部41および第3引張部60の第3紐部61についても、図8に示すようなリング状のゴム紐であってもよい。
【0047】
図9は、犬の便キャッチャー10の第3変形例に係る第1引張部340を示す外観図である。第1引張部340の第1紐部341は、図9に示すように、第1紐部341の長さを調整する長さ調整部341aを有する。なお、犬の便キャッチャー10の第2引張部50の第2紐部51および第3引張部60の第3紐部61についても、図8に示すような長さ調整部を有していてもよい。
【0048】
図10は、犬の便キャッチャー10の第4変形例に係る第2引張部450および第3引張部460を示す外観図である。第2引張部450は、犬90の一方の後脚(右後脚92)を通すリング状または筒状の一方の後脚挿通部452と、一方の後脚挿通部452と弾性部第2領域32(図5参照)とを接続する第2接続部454とを有する。第2接続部454は、一方の後脚挿通部452に接続するとともに、弾性部第2領域32に着脱自在に接続するクリップ部を有する。図10に示す例では、第2引張部450は、2つのクリップ部を有する。
【0049】
図10に示す第2引張部450は、犬90の一方の後脚(右後脚92)を一方の後脚挿通部452に通し、第2接続部454の2つのクリップ部を、弾性部第2領域32に、互いに間隔を空けて固定して使用する。一方の後脚挿通部452は、たとえば、弾性を有する(伸縮する)ゴムや布地で構成されることが好ましく、これにより、一方の後脚挿通部452がズレ落ちることを防止するとともに、第2引張部450が緩みなく弾性部第2領域32を引っ張ることができる。
【0050】
図10に示す第3引張部460は、犬90の他方の後脚(左後脚93)を通すリング状または筒状の他方の後脚挿通部462と、他方の後脚挿通部462と弾性部第3領域33(図5参照)とを接続する第3接続部464とを有する。第3引張部460は、1つの他方の後脚挿通部462と、2つの第3接続部464とを有する。第3引張部460は、2つの第3接続部464が分離しているが、第2接続部454と同様に2つのクリップ部が一体に繋がっていてもよく、第3引張部460と第2引張部450とは、同様の形状および構造を有してもよい。また、第3引張部460は、犬90の他方の後脚(左後脚93)を他方の後脚挿通部462に通し、2つの第3接続部464のクリップ部を、弾性部第3領域33に互いに間隔を空けて固定して使用する。
【0051】
このように、図10に示す第2および第3引張部450、460を、図4に示す第2および第3引張部50、60に代えて用いることができ、第2および第3引張部450、460を用いる犬の便キャッチャーも、第2および第3引張部50、60を用いる犬の便キャッチャー10と同様の効果を奏する。なお、図15に示す第2引張部950および第3引張部960のように、1つ後脚挿通部452、462と、1つのクリップ部を有する接続部454、464とを有していてもよく、このような第2引張部950および第3引張部960も、図4に示す第2および第3引張部50、60に代えて用いることができる。
【0052】
図14は、第1実施形態に係る犬の便キャッチャー10の第1引張部40および第2引張部50に関する第6変形例(第1引張部840および第2引張部850)を示す外観図である。図14に示すように、第6変形例に係る第1引張部840は、紐部と、紐部の両端に接続する2つのクリップ部を有する。第1引張部840の一方の端部に備えられるクリップ部は、弾性部第1領域31に接続し、他の端部に接続するクリップ部は、おしっこ用オムツ91に接続する。図14に示す犬の便キャッチャー10では、2本の第1引張部840により、弾性部第1領域31を、犬90の背中99側に引っ張る。
【0053】
また、第6変形例に係る第2引張部850は、第2紐部51と、第2紐部51の両端部に接続しており弾性部第2領域32に着脱自在に接続する一対の第2クリップ部52a、52bに加えて、中間係合部857を有する。中間係合部857の基端は第2紐部51に接続し、中間係合部857の先端には、おしっこ用オムツ91に係合するクリップ部が備えられている。中間係合部857の先端は、おしっこ用オムツ91のような、犬90に装着される犬の便キャッチャー10以外の部材に係合することにより、第2紐部51がズレ落ちたり、挿通部53(図4参照)が足先から抜けてしまったりする問題を防止することができる。図2および図4等に示す第3引張部60についても、第2引張部850と同様の中間係合部を追加することができる。
【0054】
図14に示す犬の便キャッチャー810も、図1に示す犬の便キャッチャー10との共通点については、犬の便キャッチャー10と同様の効果を奏する。
【0055】
第2実施形態
図11は、本発明の第2実施形態に係る犬の便キャッチャー510を示す外観図である。図11に示す犬の便キャッチャー510は、第2引張部550および第3引張部560の形状およびこれらの弾性部30に対する接続状態が異なる点で、図4に示す犬の便キャッチャー10とは異なるが、その他の部分については、図4に示す犬の便キャッチャー10と同様である。犬の便キャッチャー510については、第1実施形態に係る犬の便キャッチャー10との相違点を中心に説明を行い、犬の便キャッチャー10との共通点については、説明を省略する。
【0056】
図11に示すように、犬の便キャッチャー510の第2引張部550は、弾性部30の弾性部第2領域32に、第2接続部としての縫合糸554により固定されている。第2引張部550は、犬90の右後脚92を通すリング状または筒状の一方の後脚挿通部552を有し、一方の後脚挿通部552の開口縁が、縫合糸554によって弾性部30に接続されている。
【0057】
また、犬の便キャッチャー510の第3引張部560は、弾性部30の弾性部第3領域33に、第3接続部としての縫合糸564により固定されている。第3引張部560は、犬90の左後脚93を通すリング状または筒状の他方の後脚挿通部562を有し、他方の後脚挿通部562の開口縁が、縫合糸564によって弾性部30に接続されている。
【0058】
図11に示す犬の便キャッチャー510も、図1図6に示す犬の便キャッチャー10と同様に、犬90のお尻に装着して使用され、犬の便キャッチャー10との共通点については、犬の便キャッチャー10と同様の効果を奏する。図11に示す犬の便キャッチャー510は、第2引張部550および第3引張部560が弾性部30に固定されているため、第2引張部550および第3引張部560と弾性部30との接続が意図せず解除されてしまうことを防止できる。ただし、犬90に対する装着や膜部20の交換については、第2引張部50および第3引張部60が弾性部30に対して着脱自在である犬の便キャッチャー10(図4参照)のほうが、迅速に行うことができる。一方および他方の後脚挿通部552、562の材質は、たとえば伸縮性を有する樹脂製のネットや樹脂製の布、樹脂のシートなどが挙げられるが、特に限定されない。また、第2引張部550および第3引張部560は、縫合糸554、564の代わりに、接着剤を用いて弾性部30に固定されていてもよい。
【0059】
第3実施形態
図12は、本発明の第3実施形態に係る犬の便キャッチャーに含まれる各パーツを示す外観図である。図12に示す犬の便キャッチャー610は、第2引張部650および第3引張部660の第2紐部651および第3紐部661がコイル紐である点で図4等に示す犬の便キャッチャー10とは異なるが、その他の点では、第1実施形態に係る犬の便キャッチャー10と同様である。犬の便キャッチャー610については、第1実施形態に係る犬の便キャッチャー10との相違点を中心に説明を行い、犬の便キャッチャー10との共通点については、説明を省略する。
【0060】
図12に示す犬の便キャッチャー610は、第2紐部651および第3紐部661がコイル紐である。特に、第2紐部651および第3紐部661を樹脂製のコイル紐とすることにより、第1~第3引張部40、650、660の洗浄を容易に行うことができるため、犬の便キャッチャー610は、より衛生的に使用することができる。図12に示す犬の便キャッチャー610も、図1図6に示す犬の便キャッチャー10と同様に、犬のお尻に装着して使用され、犬の便キャッチャー10との共通点については、犬の便キャッチャー10と同様の効果を奏する。
【0061】
図13は、第5変形例に係る第1引張部740を示す外観図である。第5変形例に係る第1引張部740は、弾性部第1領域31に着脱自在に接続する第1クリップ部42a、42bと、おしっこ用オムツに着脱自在に接続する第4クリップ部745と、第1クリップ部42a、42bと第4クリップ部745とを接続する第1紐部741a、741bとを有する。第4クリップ部745には、第1クリップ部42aに接続する第1紐部741aと、第1クリップ部42bに接続する第1紐部741bの2本の第1紐部741a、741bが接続している。2本の第1紐部741a、741bは、略同一の長さである。
【0062】
図13に示す第1引張部740は、図3に示す第1引張部40に代えて犬の便キャッチャー10に用いられ、弾性部第1領域31(図4参照)を犬90の背中99側に引っ張る。第1引張部740の第4クリップ部745は、図3に示すおしっこ用オムツ91(図1図3参照)における背中99側の部分に固定されることにより、第1引張部740が、第1クリップ部42a、42bが固定される弾性部第1領域31を上方に引っ張ることができる。
【0063】
このように、図13に示す第1引張部740を、図3に示す第1引張部40に代えて用いることができ、第1引張部740を用いる犬の便キャッチャーも、第1引張部40を用いる犬の便キャッチャー10と同様の効果を奏する。
【符号の説明】
【0064】
10、510、610…犬の便キャッチャー
20…膜部
22…孔
23…外周
24…孔周辺部
25…カバー部
30…弾性部
31…弾性部第1領域
31a…一方の端部
31b…他方の端部
31c…最短位置
32…弾性部第2領域
33…弾性部第3領域
40、140、340、740…第1引張部
41、141、341、741a、741b…第1紐部
42a…第1クリップ部
42b…第1クリップ部
50、250、450、550、650…第2引張部
51、251、651…第2紐部
52a…第2クリップ部
52b…第2クリップ部
53、63…挿通部
60、460、560、660…第3引張部
61、661…第3紐部
62a、62b…第3クリップ部
91…おしっこ用オムツ
341a…長さ調整部
452、552…一方の後脚挿通部
454…第2接続部
462、562…他方の後脚挿通部
464…第3接続部
554、564…縫合糸
90…犬
92…右後脚
93…左後脚
94…尾
95…肛門
96…便
98…胴輪
99…背中
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15