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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】フィルムを作製するための方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/312 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
H01L21/312 A
【請求項の数】 27
(21)【出願番号】P 2021564485
(86)(22)【出願日】2020-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-07-15
(86)【国際出願番号】 FI2020050261
(87)【国際公開番号】W WO2020221958
(87)【国際公開日】2020-11-05
【審査請求日】2023-03-08
(31)【優先権主張番号】20195357
(32)【優先日】2019-05-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FI
(73)【特許権者】
【識別番号】506252772
【氏名又は名称】ツルン ユリオピスト
(74)【代理人】
【識別番号】110001896
【氏名又は名称】弁理士法人朝日奈特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】エワレ、ラフル バル
(72)【発明者】
【氏名】サロメキ、ミッコ
(72)【発明者】
【氏名】ダムリン、ピア
(72)【発明者】
【氏名】クバルンストレム、カリタ
【審査官】長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第02123731(EP,A1)
【文献】特表2008-537016(JP,A)
【文献】特開平04-180552(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0241549(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2003/0045663(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2013/0328026(US,A1)
【文献】特開2007-251093(JP,A)
【文献】特開2009-074055(JP,A)
【文献】特開2018-157028(JP,A)
【文献】GRADZKA, Emilia et al.,Chemically formed conducting polyazulene: From micro- to nanostructures,Synthetic Metals,2018年10月19日,Vol. 246,pp. 115-121
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/312
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム(1)を作製するための方法であって、前記フィルム(1)が、ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層(3)を含み、前記フィルム(1)が基板(4)の少なくとも1つの表面上に位置しており、かつ、前記フィルムの全体の厚さが10nm~100μmであり、前記方法が、
a)堆積表面上に酸化剤を含む溶液を適用することにより、前記堆積表面上に酸化剤層(2)を形成する工程、および
b)大気圧下、45~75℃の重合温度で前記堆積表面を少なくともアズレンモノマー蒸気にさらすことによって、ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成されるポリマー層(3)を形成する工程
を含み、工程a)が工程b)に先行し、工程b)の間、前記堆積表面の温度が前記重合温度とは~30℃異なる、方法。
【請求項2】
前記方法が、工程a)および工程b)を1回または複数回繰り返すことを含む、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記ポリマー層(3)が、大気圧気相重合(VPP)によって前記堆積表面上に形成される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
工程b)が、1~20分、または2~16分、または4~8分間継続される、請求項1~3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
工程b)は、前記ポリマー層の厚さが、10~100nm、または20~90nm、または30~80nm、または40~60nmになるまで継続される、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、前記堆積表面が、少なくともアズレンモノマー蒸気、ならびに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、アニリン、チオフェン、およびフェニレンからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるモノマー蒸気にさらされる、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記方法がバッチプロセスまたは連続プロセスとして実行される、請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
工程b)の間、前記堆積表面の温度が、25~75℃、または30~70℃、または35~65℃、または40~50℃、または45~55℃である、請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
工程b)の間、前記重合温度が、50~60℃、または55~65℃である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)の間、前記堆積表面の温度が、重合温度より、1~25℃、または5~20℃、または10~15℃低い、または重合温度より、1~15℃、または5~10℃高い、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記酸化剤が、FETOS、FeCl3、CuCl2、CuBr2、およびFe(OTf)3からなる群から選択される、請求項1~10のいずれか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記酸化剤を含む溶液の濃度が、60~500mM、または70~480mM、または120~320mM、または180~240mMである、請求項1~11のいずれか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記酸化剤を含む溶液が前記堆積表面上にスピンコートされる、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記方法が、工程b)の後に、60~100℃の温度で前記フィルムをアニールする工程を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層(3)を含むフィルム(1)であって、前記フィルムが、基板(4)の少なくとも1つの表面上に位置しており、前記フィルムの全体の厚さが10nm~100μmであり、前記フィルムの平均粗さが200nm未満であり、前記フィルムのシート抵抗が1~80MΩ/□である、フィルム。
【請求項16】
ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層(3)を含むフィルム(1)であって、前記フィルムが、請求項1~14のいずれか1項に記載の方法によって得ることができる基板(4)の少なくとも1つの表面上に位置しており、前記フィルムの全体の厚さが10nm~100μmであり、前記フィルムの平均粗さが200nm未満であり、前記フィルムのシート抵抗が1~80MΩ/□である、フィルム。
【請求項17】
前記フィルムの全体の厚さが、20nm~50μm、または50nm~10μm、または100nm~1μm、または200nm~500nmである、請求項15または16に記載のフィルム。
【請求項18】
前記フィルムが導電性である、請求項15~17のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項19】
前記フィルムの平均粗さが、150nm未満、または100nm未満、または80nm未満、または50nm未満、または25nm未満、または15nm未満、または10nm未満である、請求項15~18のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項20】
前記フィルムの面積静電容量が、0~10mF/cm2、または0.01~9mF/cm2、または0.05~8mF/cm2、または0.2~7mF/cm2、または1~5mF/cm2、または2~4mF/cm2である、請求項15~19のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項21】
体積静電容量が、200~2000F/cm3、または250~1500F/cm3、または300~1200F/cm3、または500~1000F/cm3、または600~800F/cm3である、請求項15~20のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項22】
前記フィルムの透過率が、10~95%、または20~85%、または30~75%である、請求項15~21のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項23】
前記フィルムのシート抵抗が、2~70MΩ/□、または5~50MΩ/□、または10~40MΩ/□、または15~30MΩ/□である、請求項15~22のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項24】
前記フィルムの導電率が、0~3Scm、または0.01~2Scm、または0.05~1.5Scm、または0.1~1.0Scm、または、または0.3~0.8Scm、または0.4~0.6Scmである、請求項15~23のいずれか1項に記載のフィルム。
【請求項25】
請求項15~24のいずれか1項に記載のフィルム(1)を含むデバイス。
【請求項26】
前記デバイスが、有機電気化学トランジスタ、電気化学トランスデューサ、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロルミネセントデバイス、エレクトロルミネセントディスプレイ、有機コンデンサ、超コンデンサ、センサ、バイオセンサ、エネルギーハーベスティングデバイス、帯電防止材料、光起電デバイス、ストレージデバイスまたは熱電デバイスである、請求項25記載のデバイス。
【請求項27】
電子デバイス内または電子デバイスの、帯電防止コーティングまたは電極としての請求項15~24のいずれか1項に記載のフィルムの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムを作製(fabricating)するための方法に関する。本開示はさらに、少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムに関する。本開示はさらに、フィルムを含むデバイスおよびフィルムの使用に関する。本開示はさらに、少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムを作製するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
アズレンモノマーの酸化は、1-位と3-位で重合して、1,3-ポリアズレンを生成する。ポリアズレン(PAz)は、高い静電容量および酸化還元挙動を有する導電性ポリマーである。PAzフィルムは、電気化学的、化学的および光化学的重合によって生成され得る。電子特性、伝導および酸化還元挙動に加えて、高速充放電の性質が要因で、PAzフィルムは、エレクトロニクス、帯電防止コーティング、色素増感太陽電池または有機太陽電池、電気化学的トランスデューサ、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロルミネセントデバイス、有機発光ダイオード(OLED)、ならびに近未来の超コンデンサの分野に関連する用途で有用であり得る。上述の用途に適したものとなるために、PAzフィルムは、高度に組織化され、均質で、透明であり、薄い必要があり得る。現在の方法のうち、電気化学的重合は不均一なフィルムを生成し、その作製を電極材料のみに制限する導電性電極基板を必要とし得るが、酸化的化学合成は材料を粉末または粒状の形態にし得る。PAzは不溶性であるため、さらなる鋳造または加工ができない場合がある。現在の生成方法では望ましい特性を有する高品質のPAzフィルムの生成が困難であり得るため、新しいアプローチが必要とされ得る。
【発明の概要】
【0003】
PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムを作製するための方法であって、フィルムが基板の少なくとも1つの表面上に位置している方法が開示される。当該方法は、
a)堆積表面上に酸化剤を含む溶液を適用することによって堆積表面上に酸化剤層を形成する工程、および
b)大気圧下、20~95℃の重合温度で堆積表面をアズレンモノマー蒸気にさらすことによって、PAz、モノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成されるポリマー層を形成する工程
を含み得、工程a)は工程b)に先行し、工程b)の間、堆積表面の温度は重合温度とは0~30℃異なる。
【0004】
PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムであって、フィルムが、基板の少なくとも1つの表面上に位置しており、フィルムの全体の厚さが10nm~100μmである、フィルムが開示される。
【0005】
PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムであって、フィルムが、本願に記載される方法によって得ることができる基板の少なくとも1つの表面に位置している、フィルムが開示される。
【0006】
本願において定義されるフィルムを含むデバイスが開示される。
【0007】
電子デバイス内または電子デバイスの、帯電防止コーティングまたは電極としての本願で定義されるフィルムの使用が開示される。
【0008】
ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムを作製するためのシステムであって、フィルムが基板の少なくとも1つの表面上に位置している、システムが開示されている。当該システムは、
a)堆積表面上に酸化剤層を形成するために堆積表面上に酸化剤を含む溶液を適用するように構成された酸化剤ユニット、ならびに
b)ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成されるポリマー層を形成するために、大気圧下、20~95℃の重合温度で堆積表面を少なくともアズレンモノマー蒸気にさらすように構成されたチャンバ
を備え、酸化剤ユニットがチャンバの前に置かれ、チャンバ内での、堆積表面の温度が重合温度と0~30℃異なるように構成されている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
実施形態のさらなる理解を提供し、本明細書の一部を構成するために含まれる添付の図面は、様々な実施形態を例示している。
【0010】
図1】本発明の一実施形態による基板の表面上に位置しているフィルムの概略図である。
図2】気相重合を実行するための気相重合セルを例示する図である。
図3】可撓性基板に対して連続気相重合を実行するための連続セットアップを例示する図である。
図4】剛性基板に対して連続気相重合を実行するための連続セットアップを例示する図である。
図5】より大規模に気相重合を実行するためのスケールアップされた気相重合セルを例示する図である。
図6】240mMのCuCl2で調製されたPAzフィルムの粗さ、シート抵抗、および導電率の変化を説明する。
図7】50×50μmおよび10×10μmのサイズの1L PAz、3L PAz、および6L PAzフィルムのAFM画像を例示する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本願は、ポリアズレン(PAz)、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムを作製するための方法であって、フィルムが基板の少なくとも1つの表面に位置している、方法に関し、当該方法は、
a)堆積表面上に酸化剤を含む溶液を適用することによって堆積表面上に酸化剤層を形成する工程、および
b)大気圧下、20~95℃の重合温度で堆積表面を少なくともアズレンモノマー蒸気にさらすことによって、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成されるポリマー層を形成する工程、
を含み、工程a)が工程b)に先行し、工程b)の間、堆積表面の温度が重合温度とは0~30℃異なる。
【0012】
本願はさらに、ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムを作製するためのシステムであって、フィルムが基板の少なくとも1つの表面に位置している、システムに関し、当該システムは、
a)堆積表面上に酸化剤層を形成するために堆積表面上に酸化剤を含む溶液を適用するように構成された酸化剤ユニット、ならびに
b)ポリアズレン、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成されるポリマー層を形成するために、大気圧下、20~95℃の重合温度で堆積表面を少なくともアズレンモノマー蒸気にさらすように構成されたチャンバ
を備え、酸化剤ユニットがチャンバの前にあり、チャンバ内では、堆積表面の温度が重合温度と0~30℃異なるように構成されている。
【0013】
本明細書に関連して、「重合温度」という用語は、重合工程b)中の(1つまたは複数の)モノマー蒸気の温度を指し得る。重合温度はまた、反応チャンバまたはセルの温度を指し得、その内部で重合が実行される。
【0014】
一実施形態では、工程b)において、堆積表面は、少なくともアズレンモノマー蒸気および少なくとも1つのさらなるモノマー蒸気にさらされる。一実施形態では、工程b)において、堆積表面は、少なくともアズレンモノマー蒸気、ならびに3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、アニリン、チオフェン、およびフェニレンからなる群から選択される少なくとも1つのさらなるモノマー蒸気にさらされる。一実施形態では、少なくとも1つのさらなるモノマー蒸気は、以下から選択される:3,4-エチレンジオキシチオフェン(EDOT)、ピロール、アニリン、チオフェン、フェニレン、フラン、エチレン、テトラフルオロエチレン、塩化ビニル、プロピレン、メタクリル酸メチル、アクリル酸メチル、酢酸ビニル、エチレン酢酸ビニル、スチレン、1,3-ブタジエン、イソプレン(2-メチル-1,3-ブタジエン)、クロロプレン(2-クロロ-1,3-ブタジエン)、イソブチレン(メチルプロペン)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン-1(PB-1);ポリオレフィンエラストマー(POE):ポリイソブチレン(PIB)、エチレンプロピレンゴム(EPR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(M-クラス)ゴム(EPDMゴム)、およびモノマーとしての単純なオレフィン、環状オレフィン、ビニルエーテル、アリルエーテル、ビニルエステル、アリルエステルから生成される任意のタイプのポリマー。蒸気に変換することができないこれらのモノマーは、酸化剤を含む溶液と混合することができ、工程a)の間に堆積表面に適用することができる。一実施形態では、工程a)は、酸化剤および少なくとも1つのさらなるモノマーを含むか、またはそれらからなる溶液を適用することを含む。
【0015】
本願はさらに、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムであって、フィルムが、基板の少なくとも1つの表面上に位置しており、フィルムの全体の厚さが10nm~100μmである、フィルムに関する。
【0016】
一実施形態では、フィルムの全体の厚さは、20nm~50μm、または50nm~10μm、または100nm~1μm、または200nm~500nmである。
【0017】
本願はさらに、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層を含むフィルムであって、フィルムが、本願の方法によって得ることができる基板の少なくとも1つの表面上に位置している、フィルムに関する。
【0018】
一実施形態では、当該方法は、工程a)およびb)を1回または複数回繰り返す工程を含む。
【0019】
一実施形態では、当該方法は、バッチプロセスとして実行される。すなわち、1つのフィルムを、たとえば、反応チャンバまたはセル内で、一度に調製することができ、異なる方法の工程を実行することができる。一実施形態では、当該方法は連続プロセスとして実行される。すなわち、基板を、中断することなく、1つの方法の工程から別の方法の工程に移動させることができる。たとえば、基板は、最初に酸化剤でコーティングされ、その後、(1つまたは複数の)モノマー蒸気にさらされる。連続プロセスでは、いくつかのフィルムは同時に調製されてもよい。
【0020】
一実施形態では、フィルムは剛性構造を有する。一実施形態では、フィルムは可撓性である。一実施形態では、フィルムは巻き上げられてもよい。
【0021】
一実施形態では、少なくとも1つの触媒および/または少なくとも1つの触媒添加剤が、工程b)で使用される。一実施形態では、少なくとも1つの触媒および/または触媒添加剤は、以下から選択される:チーグラー・ナッタ触媒、AlCl3、TiCl3、硝酸セリウムアンモニウム、セリウムトシラート、酸化剤としても使用されるFe(III)トシラート、ピリジン、p-トルエンスルホン酸(p-TSA)、ジエチレングリコール(DEG)、モリブドリン酸、モリブド-2-バナドリン酸、ポリ(スチレンスルホン酸)(PSS)、Fe(III)アルキルベンゼンスルホン酸塩、ヨウ素、臭素、ピロカテコールバイオレット、ベンゼンスルホン酸(BSA)、p-トルエンスルホン酸(TSA)、ドデシルベンゼンスルホン酸(DBSA)、ブチルベンゼンスルホン酸(BBSA)、グリセロール、トリアルキルアルミニウムフリーの修飾メチルアルミノキサン、TEMPO((2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシルまたは(2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-1-イル)オキシダニル)、過酸化物、炭化水素溶媒中のアルキルアルミニウム化合物を有するTi、V、Zr、Cr、W、Coおよびアルミニウム(MgまたはLi)アルキルTiCl4の塩化物または酸化物、マグネシウム塩上で支持されたチタン、アルミニウムアルキルRAlCl2を有するVOCl3、VCl4、またはVO(OR)3、シクロペンタジエニル環の間に挟まれた遷移金属(Zr、Ti、またはHf)、アルミナ、シリカ、ジルコニア、および活性化炭素上で支持されたCr、Mo、Co、またはNi、Cr/SiO2、Zr/Al23およびTi/MgO、支持された酸化クロム、ビス(アレーン)Cr0、シリカ、アルミナまたはチタニア上で支持された酸化クロム。
【0022】
一実施形態では、工程b)は、ポリマー層の厚さが、少なくとも10~100nm、または20~90nm、または30~80nm、または40~60nmになるまで継続される。特定の用途では、より厚いフィルム、すなわちポリマー層のいくつかの層を有することが有用であり得るが、他の用途では、より少ない層を有するより薄いフィルムが有用であり得る。層の数、すなわちフィルムの厚さは、マイクロまたはナノレベルで活物質の含有量および構成に影響を及ぼし得、これは、導電率、静電容量、シート抵抗、バンドギャップ、活性表面積、および透明性などのフィルム特性に影響を及ぼし得る。
【0023】
本明細書に関連して、「堆積表面」という用語は、基板自体の表面、または酸化剤層で覆われた表面を指し得る。「堆積表面」はさらに、酸化剤層または基板の上にある、ポリマー層で覆われた表面を指し得る。それはさらに、酸化剤および/またはポリマー層の連続(sequential)層で覆われた表面を指し得、基板の表面上の第1の層が酸化剤層であり、その後ポリマー層が続く、というように続いていく。したがって、「堆積表面」は、化学物質が表面上に適用されると、(堆積)プロセス中に変化する。
【0024】
「フィルム」という用語は、特に他に明記のない限り、その横方向の寸法がその厚さよりも実質的に大きい構造を指すものとして、本明細書で理解されるべきである。その意味で、フィルムは「薄い」構造であると見なされ得る。
【0025】
フィルムが基板の表面「上に位置している(situated on)」という表現は、特に他に明記のない限り、フィルムが基板上にもしくは基板の上にあるように形成されるか、または少なくとも部分的にその中に埋め込まれていることを意味するものとして、本明細書で理解されるべきである。基板は、フィルムに対するキャリアまたは支持構造として機能し得る。基板は変更することができ、基板の材料はフィルムが使用される用途に応じて変えることができる。一実施形態では、基板は剛性である。一実施形態では、基板は、可撓性であり、曲げることができ、および/または巻き上げることができる。
【0026】
一実施形態では、ポリマー層は1,3-ポリアズレン層である。一実施形態では、フィルムは少なくとも1つの1,3-ポリアズレン層を含む。一実施形態では、フィルムは、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層からなる。一実施形態では、フィルムは、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される1つまたは複数のポリマー層からなる。一実施形態では、フィルムは、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される少なくとも1つのポリマー層、および少なくとも1つの酸化剤層からなる。一実施形態では、フィルムは、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成される1つまたは複数のポリマー層、および1つまたは複数の酸化剤層からなる。
【0027】
一実施形態では、ポリマー層は基板の少なくとも片側に形成される。一実施形態では、ポリマー層は基板の上側および下側に形成される。
【0028】
一実施形態では、工程b)は、1~20分、または2~16分、または4~8分間継続される。重合時間は、PAz、またはモノマーの1つがアズレンであるコポリマー、またはそれらの任意の組み合わせで形成されるポリマー層の厚さに影響を及ぼし得る。重合が長時間継続されると、ポリマー層がより厚くなり得る。また、一定時間後、重合が継続されても層が厚くならない可能性もある。これは、酸化剤層で覆われた堆積表面が重合されたポリマーで完全に占められると、重合が長時間継続されてもモノマーが酸化剤に到達することができないという事実に起因し得る。これはそれ自体でモノマーを堆積させ得るだけであるが、重合されない。さらに、堆積した重合されていないモノマーは、フィルムの洗浄中に洗い流され得、重合フィルムのみが残る。
【0029】
一実施形態では、ポリマー層は、大気圧気相重合(VPP)によって堆積表面上に形成される。VPPは、モノマーのみが気相に変換される重合技術である。大気圧で実行されるVPPは、制御が容易であるという追加の有用性を有する。これは圧力制御または洗練されたデバイスまたは真空オーブンを必要としないかもしれない。当該方法は大面積フィルムの製造にも使用され得る。
【0030】
一実施形態では、VPPは反応チャンバまたはセル内で実行される。一実施形態では、反応チャンバまたはセルの温度は制御される。一実施形態では、反応チャンバまたはセルの温度は恒温槽で制御される。
【0031】
一実施形態では、工程b)の間、堆積表面の温度は、25~75℃、または30~60℃、または35~65℃、40~50℃、または45~55℃である。
【0032】
一実施形態では、工程b)の間、重合温度は、25~90℃、または35~85℃、または40~80℃、または45~75℃、または50~70℃、または55~65℃である。低い重合温度の使用には、使用する電気が少なくなるためにコストを節約することができるという追加の有用性がある。これはまた、生体分子で処理された基板またはプラスチックやその他の繊細な基板など、温度に敏感な基板にも適し得る。
【0033】
一実施形態では、工程b)の間、堆積表面の温度は、重合温度と0~30℃、または1~25℃、または5~20℃、または10~15℃だけ異なる。
【0034】
一実施形態では、工程b)の間、堆積表面の温度は、重合温度より0~30℃、または1~25℃、または5~20℃、または10~15℃低いか、重合温度より0~20℃、または1~15℃、または5~10℃高い。一実施形態では、工程b)の間、堆積表面の温度は、重合温度より0~30℃、または1~25℃、または2~25℃、または3~25℃、または4~20℃、または5~20℃、または10~15℃低いか、重合温度より0~20℃、または1~15℃、または2~15℃、または3~15℃、または4~10℃、または5~10℃高い。
【0035】
堆積表面の温度はフィルムのシート抵抗に影響を与え得る。これはシート抵抗を増減させ得る。さらに、これはフィルム構成の安定性に影響を与え得、場合によっては洗浄中の応力による破壊を回避し得る。温度処理後のシート抵抗の減少は、ドーピングレベルが低下しているか、またはポリマー鎖構造が再編成しているもしくは壊れていることを意味し得る。一実施形態では、堆積表面の温度は、少なくとも0℃、またはそれ以上である。一実施形態では、堆積表面の温度は、少なくとも室温、またはそれ以上である。
【0036】
一実施形態では、重合温度が20~95℃でありかつ堆積表面の温度が25~75℃であり、重合温度が25~90℃でありかつ堆積表面の温度が25~75℃であり、または重合温度が35~85℃でありかつ堆積表面の温度が30~70℃であり、または重合温度が40~80℃でありかつ堆積表面の温度が35~65℃であり、または重合温度が45~75℃でありかつ堆積表面の温度が40~50℃であり、または重合温度が50~60℃でありかつ堆積表面の温度が45~55℃である。
【0037】
一実施形態では、セルまたは反応チャンバは、飽和量の(1つまたは複数の)モノマー蒸気を含む。飽和量はセルまたは反応チャンバのサイズに依存し得る。
【0038】
一実施形態では、酸化剤は、鉄(II)、鉄(III)、セリウム(IV)および銅(II)の塩からなる群から選択される。一実施形態では、酸化剤は、FETOS、FeCl3、CuCl2、CuBr2、およびFe(OTf)3からなる群から選択される。酸化剤の酸化強度はさまざまであり得る。使用する酸化剤によってフィルム構造やポリマー構成が変わり得る。一実施形態では、CuCl2酸化剤が高品質のフィルムを提供する。一実施形態では、Fe(OTf)3酸化剤が高品質のフィルムを提供する。一実施形態では、FETOS酸化剤が高品質のフィルムを提供する。一実施形態では、CuBr2酸化剤が高品質のフィルムを提供する。
【0039】
一実施形態では、酸化剤を含む溶液の濃度は、60~500mM、または70~480mM、または120~320mM、または180~240mMである。酸化剤を含む溶液中の溶媒は、n-ブタノール、メチルアルコール、2-ブチルアルコール、n-プロピルアルコール、イソプロパノール、エチルセロソルブ、エチルアルコール、酢酸エチル、アセトニトリルおよびメチルエチルケトン、およびそれらの混合物などの、有機溶媒からなる群から選択され得る。酸化剤の目的は、モノマーを脱プロトン化し、重合を開始させることである。一実施形態では、溶液は溶媒および酸化剤からなる。一実施形態では、酸化剤層は重合前に乾燥される。重合前に酸化剤層を乾燥させることによって、重合工程に進む前に微量の溶媒を除去することができる。一実施形態では、重合反応は界面を有する気固反応である。
【0040】
一実施形態では、酸化剤を含む溶液は堆積表面上にスピンコートされる。一実施形態では、酸化剤を含む溶液は、20~90秒間1000~2800rpmで堆積表面上にスピンコートされる。一実施形態では、酸化剤を含む溶液は、30~80秒、または40~70秒、または50~60秒、1200~2600rpm、または1400~2400rpm、または1600~2200rpm、または1800~2000rpmで堆積表面上にスピンコートされる。一実施形態では、酸化剤でコーティングされた堆積表面は工程b)の前に乾燥される。一実施形態では、酸化剤でコーティングされた堆積表面は、10~150秒間70~110℃の温度で、たとえば90秒間90℃で、ホットプレート上で乾燥される。
【0041】
一実施形態では、当該方法は工程a)の前に堆積表面を洗浄する工程を含む。一実施形態では、基板は溶媒を用いた超音波処理によって洗浄され得る。一実施形態では、超音波処理用の溶媒は有機溶媒からなる群から選択され得る。一実施形態では、超音波処理用の溶媒は、アセトン、EtOH、水、およびそれらの混合物からなる群から選択される。
【0042】
一実施形態では、洗浄された堆積表面は高温溶液に浸され得る。一実施形態では、洗浄された堆積表面は、50~100℃の温度、たとえば85℃で、5:1:1の容積比としてH2O:NH4OH(25%):H22(30%)の高温溶液に浸され得る。洗浄には堆積表面に残った有機不純物を除去するという追加の有用性がある。一実施形態では、酸素プラズマ処理が続き得る。酸素プラズマ処理とはプラズマチャンバに酸素を導入するプラズマ処理のことである。酸素プラズマ処理には基板をさらに洗浄するという追加の有用性がある。酸素は、その低コストで幅広い入手可能性のためにプラズマ洗浄技術で使用される最も一般的な気体である。
【0043】
一実施形態では、当該方法は、工程b)の後に、60~100℃の温度でフィルムをアニールする工程を含む。一実施形態では、アニールする工程の温度は70~90℃または約80℃である。一実施形態では、フィルムのアニーリングは、140~40秒、または50~120秒、または60~90秒の間、たとえば120秒間、継続される。アニーリングは、ホットプレートまたはオーブンで行われ得る。一実施形態では、システムは、60~100℃の温度でフィルムをアニールするように構成された加熱ユニットを備える。
【0044】
一実施形態では、アニーリング後、フィルムは室温まで冷却される。フィルムは、洗浄工程中のフィルムの応力破損を回避するためにアニールすることができる。一実施形態では、アニールおよび冷却されたフィルムが洗浄される。一実施形態では、洗浄は、フィルムをMeCNおよび/またはEtOHで浸してすすぐことを含む。洗浄には、コンダクタンスを低下させ得る未反応の酸化剤、モノマー、および任意の他の不純物を除去するという追加の有用性がある。使用する溶媒はフィルムのシート抵抗に影響を与え得る。シート抵抗は、たとえば溶媒中に微量の水が存在するため、減少させられ得る。一実施形態では、洗浄後、フィルムは乾燥窒素ガス流下で乾燥される。
【0045】
一実施形態では、基板は非導電性である。一実施形態では、基板は、ガラス、ゴム、ポリマー、またはこれらの任意の組み合わせを含むか、またはそれらからなる。一実施形態では、ガラスは、顕微鏡ガラススライドまたはフッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスまたは酸化インジウムスズ(ITO)でコーティングされたガラスであり得る。一実施形態では、非導電性基板は、ポリマーを含むか、またはポリマーからなる。ポリマーはポリエチレンテレフタレート(PET)であり得る。一実施形態では、ゴムは、エチレンプロピレンゴム(EPR)およびエチレンプロピレンジエンモノマー(Mクラス)ゴム(EPDMゴム)からなる群から選択される。
【0046】
一実施形態では、基板の厚さは5μm~2cmである。基材の厚さは、フィルムの使用目的または基板の材料に応じて変わり得る。
【0047】
基板が「非導電性」であるという表現は、特に他に明記のない限り、基板が10Mohms/square(M/□)以上のシート抵抗を有することを意味するものとして本明細書で理解されるべきである。
【0048】
一実施形態では、基板は、導電性であり、たとえば、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)ガラスまたは酸化インジウムスズ(ITO)でコーティングされたガラスまたは金(Au)でコーティングされた基板または銀(Ag)でコーティングされた基板またはシリコンである。用途に応じて、導電性または非導電性の基板が有用となり得る。
【0049】
ときには表面粗さとも呼ばれる、フィルムの粗さは、その理想的な形状からの実際の表面の法線ベクトルの方向の偏差の尺度である。偏差が大きい場合、表面は粗く、偏差が小さい場合、表面は滑らかである。
【0050】
一実施形態では、フィルムの平均粗さ(Ra)は、200nm未満、または150nm未満、または100nm未満、または80nm未満、または50nm未満、または25nm未満、または15nm未満、または10nm未満である。
【0051】
PAzフィルムの粗さの平均値は、WSXM 5ソフトウェアを使用してAFM画像から得られる。粗さの平均は、平均高さとサンプルの各単一点の高さとの間の絶対値での差の平均である。この数は間隔の範囲によってさまざまである。これは、PAzフィルムがどれほど均一であるかまたは粗いかを示している。これは次の方程式(1)で計算され得る。
【0052】
【数1】
式中、r.aは粗さの平均を表し、
<a>は平均高さであり、
aijはサンプルの各単一点での高さであり、
iとjは二次元表面上の単一点(エントリー)の位置を示し、および
Nは表面上で考慮される「aij」点の数である。
【0053】
フィルムの粗さの二乗平均平方根(RMS)は、WSXM 5ソフトウェアを使用することによってAFM画像から得られる。これは次の方程式(2)で計算され得る。
【0054】
【数2】
【0055】
この数は間隔の範囲によってさまざまである。最小値:対象の間隔の高さの最小値。最大値:対象の間隔の高さの最大値。
【0056】
一実施形態では、フィルムの粗さは、アニーリングおよび洗浄の工程の前に測定される。これは、フィルムの重要な特性であるため、これらの工程がフィルムの粗さにどのように影響するかを確認するのに有用であり得る。
【0057】
滑らかなフィルムには、その導電率および透過率がフィルムの表面全体にわたっても変わらないままであり得るという追加の有用性がある。
【0058】
一実施形態では、フィルムの透過率は、10~95%、または20~85%、または30~75%である。一実施形態では、フィルムの透過率は、300~1100nm、または550~1100nm、または550nmで測定される。
【0059】
Agilent 8453分光計を使用して、UV-Visスペクトルを記録することができる。%透過率(%T)は、次の方程式(3)を使用することによって吸光度データから計算される。
(%T)=(10(-Abs))×100 (3)
【0060】
一実施形態では、フィルムの面積静電容量は、0~10mF/cm2、または0.01~9mF/cm2、または0.05~8mF/cm2、または0.2~7mF/cm2、または1~5mF/cm2、または2~4mF/cm2である。一実施形態では、フィルムの面積静電容量は、0~25mF/cm2、または0.01~15mF/cm2、または0.05~10mF/cm2、または0.2~7mF/cm2、または1~5mF/cm2、または2~4mF/cm2である。
【0061】
一実施形態では、フィルムの体積静電容量は、200~2000F/cm3、または250~1500F/cm3、または300~1200F/cm3、または500~1000F/cm3、または600~800F/cm3である。一実施形態では、フィルムの体積静電容量は、5000~18000F/cm3、または6000~17500F/cm3、または7000~17000F/cm3である。
【0062】
一実施形態では、面積静電容量および体積静電容量の値は、サイクリックボルタンメトリー(CV)を用いた電気化学的特性評価によって判定される。電荷(Q)は、Originソフトウェアの電位範囲-0.25V~0.9Vのサイクリックボルタモグラムの積分によって計算され、これは、方程式(4)および(5)を使用してさらに処理され、静電容量値が得られる:
面積静電容量、CA=Q/(ΔV×A) (4)
体積静電容量、CV=Q/(ΔV×V) (5)
式中、「ΔV」は電位窓、「A」は面積、「V」は作用電極の体積である。(注:測定前に、すべての溶液を乾燥窒素ガスで15分間パージした)。
【0063】
一実施形態では、フィルムの導電率は、0~3Scm、または0.01~2Scm、または0.05~1.5Scm、または0.1~1.0Scm、または0.3~0.8Scm、または0.4~0.6Scmである。導電率はフィルムの洗浄の前または後に測定され得る。洗浄後に、導電率の値は洗浄工程の前よりも高くても低くてもよい。低い重合温度では、導電率は洗浄工程前により低くなる。高い重合温度では、導電率は洗浄工程後により低くなる。
【0064】
一実施形態では、フィルムのシート抵抗は、1~80MΩ/□、または2~70MΩ/□、または5~50MΩ/□、または10~40MΩ/□、または15~30MΩ/□である。一実施形態では、フィルムのシート抵抗は、0.01~2MΩ/□、または0.05~1.5MΩ/□、または0.08~1.1MΩ/□、または0.2~1.1MΩ/□、または0.6~1MΩ/□である。シート抵抗はフィルムの洗浄の前または後に測定され得る。洗浄後に、シート抵抗の値は洗浄工程の前よりも高くても低くてもよい。低い重合温度では、シート抵抗の値は洗浄工程後により低くなる。高い重合温度では、シート抵抗の値は洗浄工程後により高くなる。
【0065】
一実施形態では、シート抵抗は、アニール工程および洗浄工程の前に測定される。これは、これらの工程がフィルムの抵抗にどのように影響するかを確認するのに有用であり得る。
【0066】
円筒形の4点プローブヘッドを備えたJandelモデルRM3000+を使用して、PAzフィルムのシート抵抗(rシート)値を得た。フィルムの比抵抗(r)は、シート抵抗にフィルムの厚さ(d)を掛けることによって得られる、方程式(6):
r=rシートd (6)
【0067】
フィルムの導電率(s)は方程式(7)に従って得られる。
s=1/r (7)
【0068】
本願はさらに、本願のフィルムを含むデバイスに関する。
【0069】
一実施形態では、デバイスは、有機電気化学トランジスタ、電気化学トランスデューサ、エレクトロクロミックデバイス、エレクトロルミネセントデバイス、エレクトロルミネセントディスプレイ、有機コンデンサ、超コンデンサ、センサ、バイオセンサ、エネルギーハーベスティングデバイス、帯電防止材料、光起電デバイス、ストレージデバイスまたは熱電デバイスである。
【0070】
本願はさらに、電子デバイス内または電子デバイスの帯電防止コーティングまたは電極としてのフィルムの使用に関する。
【0071】
本願に記載される方法には、高度に組織化された、透明で、均質な、多層の薄膜を生成するという追加の有用性がある。さらに、本願に記載される方法には、大気圧制御された重合、短い反応時間、低温および低いモノマー負荷のために、低コストで、簡潔かつ高速であるという追加の有用性がある。
【0072】
本願に記載される方法には、さまざまな用途で有用であり得る、フィルムの層ごとの調製を可能にするという追加の有用性がある。本願に記載される方法には、屈曲自在の電子機器で使用され得るプラスチック材料上の可撓性の薄膜の調製を可能にするという追加の有用性がある。さらに、当該方法は、ナノメートルからマイクロメートルのスケールの薄膜の調製を可能にする。
【0073】
本願に記載される方法には、様々な特性、たとえば、導電率および粗さの値を有するフィルムの調製に適しており、したがって、さまざまな用途に有用であるという追加の有用性がある。
【実施例
【0074】
ここで、さまざまな実施形態を詳細に参照し、その一例は添付の図面に例示されている。
【0075】
以下の説明は、当業者が本開示に基づいて実施形態を利用することができるように詳細にいくつかの実施形態を開示している。本願に基づいて当業者に工程または特徴の多くが明白となるため、実施形態のすべての工程または特徴が詳細に説明されているわけではない。
【0076】
簡潔にするために、コンポーネントを繰り返す場合には、項目番号が以下の例示的な実施形態で維持される。
【0077】
図1は、本願に記載される一実施形態によるVPPによって調製されたPAz層を含むフィルムを例示している。フィルム1は、酸化剤2の1つまたは複数の層および1つまたは複数のポリマー層3を含み得、これらの層は、基板4の表面上に重ねて配置され、それにより、基板上の第1の層は酸化剤層となる。酸化剤層はまた製造方法中に洗い流され得る、すなわち、フィルムは必ずしも(a)(1つまたは複数の)酸化剤層を含むとは限らない。
【0078】
図2は、本願に記載される一実施形態によるVPPを実行するためのVPPチャンバを例示している。重合または反応チャンバ5は、基板4および金属ブロック8のためのスタンド7を備える。恒温槽10が重合チャンバ5に取り付けられ、(1つまたは複数の)モノマー蒸気9の温度を重合温度に保つ。恒温槽11は金属ブロック8に取り付けられ、基板4の温度、したがって堆積表面の温度を制御された所定の温度に保つ。重合チャンバ5は、重合チャンバ5を閉じるために使用される蓋6を備える。
【0079】
図3および4は、本願に記載される一実施形態による、可撓性(図3)および剛性(図4)の基板のための連続VPPプロセスのセットアップを例示している。酸化剤13を含む溶液は、ロールツーロール技術12によって基板4上に堆積され、その後、酸化剤14の乾燥およびオーブン内またはヒーター15での予熱16が続く。次の工程では、酸化剤で覆われた基板4は、重合チャンバまたはセル5内の(1つまたは複数の)モノマー蒸気にさらされる。ローラの速度によって、基板がチャンバ内で費やす時間を判定する。基板または堆積表面の温度は、ヒーター/温度コントローラ17で制御される。次に、フィルムをアニールし18、続いて溶媒を洗浄する19。最後に、フィルムを(窒素ガスで)乾燥し20、フィルム21で覆われた基板を得る。
【0080】
図5は、本願に記載される一実施形態による、VPPを実行するためのスケールアップされたVPPチャンバを例示している。重合チャンバ5は、基板4と、基板用のヒーター/温度コントローラ17とを含む。モノマーを気化させ、それを重合温度まで加熱するために、加熱コイル22を使用する。重合チャンバはさらに、蒸気ホモジナイザ23と、重合チャンバ5を閉じるための調整可能な蓋6とを含む。
【0081】
実施例1:ポリマー層を含むフィルムの調製
基板を、アセトン、水、およびEtOHで、それぞれ、5分間超音波処理することによって洗浄した。洗浄したガラス基板を、5分間5:1:1の容積比としてH2O:NH4OH(25%):H22(30%)の高温溶液(80℃)に浸し、表面に残った有機不純物を除去した。基板を、その後、3分間酸素プラズマ処理によって洗浄した。酸化剤CuCl2を含む60mMの溶液を、n-ブタノールを溶媒として使用して調製した。酸化剤を含む80μlの溶液を、60秒間2400rpmで基板上にスピンコーティングした。酸化剤でコーティングした基板を、90秒間90℃でホットプレート上で乾燥した。乾燥した基板を、コーティングされた表面が蒸気の方に向くように、56℃でアズレンモノマーを含む予熱されたセル(図2)にすぐに移した。重合を4分間行った。フィルムのアニーリングを、120秒間90℃でホットプレート上で重合した後に行った。アニーリング後、フィルムを、室温まで冷却し、MeCN中に完全に浸して、すすぎ、未反応の酸化剤、モノマー、任意の他の不純物を除去した。洗浄後、フィルムを乾燥窒素ガス流下で乾燥した。この手順をスピンコーティング工程から1回以上繰り返して、基板上にPAzの複数の層を調製した。セルの温度を恒温槽によって制御した。
【0082】
上記の手順をいくつかの異なる酸化剤および酸化剤濃度で繰り返して、異なる特性を有する単層または多層のPAzフィルムを作製した。
【0083】
同じ手順が異なる基板に使用され得る。さらに、場合によっては、アニール工程が省略されてもよい。
【0084】
実施例2:ポリマー層を含むフィルムの調製
上記の実施例1の手順に従ったが、ポリマー層を、モノマーの1つがアズレンであり、かつ追加のモノマーが3,4-エチレンジオキシチオフェンであるコポリマーで形成した。両方のモノマーを同時に堆積表面にさらした。実施例中のパラメータに加えて結果を、表4に関連して以下で説明する。
【0085】
結果
図6は、堆積表面温度(ほぼ室温)と重合時間(4分)を一定に保ちながら最初に重合温度を変化させ、その後、重合温度(55℃)と重合時間(4分)を一定に保ちながら堆積表面温度を変化させ、最後に、重合温度(55℃)と堆積表面温度(ほぼ室温)を一定に保ちながら重合時間(2~16分)を変化させることによって調製されたPAzフィルムの粗さ、シート抵抗、および導電率の変化について記載している。図6に提示されているすべてのフィルムを、240mMのCuCl2酸化剤溶液80μlを使用して調製した。酸化剤を、2400rpmのスピンコーティング速度で基板上にスピンコーティングした。酸化剤層を90秒間90℃で乾燥させた。アニーリングは実施しなかった。フィルムを、アセトニトリルで2回洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。図6では、「NC」は非導電性を示している。
【0086】
表1は、さまざまな濃度のCuCl2またはFETOS酸化剤を使用して調製された1層(1L)、3層(3L)、および6層(6L)のPAzフィルムに対する面積静電容量および体積静電容量および電荷の値の変化について記載している。すべてのフィルムを、80μlの酸化剤溶液を使用して調製した。酸化剤を、2400rpmのスピンコーティング速度で基板上にスピンコーティングした。酸化剤層を90秒間90℃で乾燥させた。層あたりの重合時間は4分であり、重合温度は55℃であった。エントリー1~6を除く他のすべてのフィルムに対してアニーリングを実施した。フィルムを、アセトニトリルで2回洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。堆積表面の温度はほぼ室温であった。
【0087】
【表1】

【0088】
表2は、酸化剤としてCuCl2を使用して調製した(1つまたは複数の)PAz層を含むフィルムに対するシート抵抗および導電率の値について記載している。すべてのフィルムを、80μlの酸化剤溶液を使用して調製した。酸化剤を、2400rpmのスピンコーティング速度で基板上にスピンコーティングした。酸化剤層を90秒間90℃で乾燥させた。層あたりの重合時間は4分であり、重合温度は55℃であった。エントリー1~4におけるフィルムを除く他のすべてのフィルムに対してアニーリングを実施した。エントリー5~8では、シート抵抗はアニール工程前に測定される。フィルムを、アセトニトリルで2回洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。堆積表面の温度は制御されなかった。すなわちそれはほぼ室温であった。すべてのシート抵抗値はフィルム調製直後に測定される。
【0089】
【表2】
【0090】
表3は、さまざまな酸化剤(CuCl2、FETOS、CuBr2、およびFeCl3)および酸化剤濃度で調製されたPAzフィルムの粗さの変化について記載している。すべてのフィルムを、80μlの酸化剤溶液を使用して調製した。酸化剤を、2400rpmのスピンコーティング速度で基板上にスピンコーティングした。酸化剤層を90秒間90℃で乾燥させた。層あたりの重合時間は4分であり、重合温度は55℃であった。エントリー1~3におけるフィルムを除く他のすべてのフィルムに対してアニーリングを実施した。フィルムを、アセトニトリルで2回洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。堆積表面の温度は制御されなかった。すなわちそれはほぼ室温であった。
【0091】
【表3】
【0092】
表4は、コポリマーで形成されたポリマー層を含むフィルムに対するシート抵抗、透過率、および粗さの値について記載しており、モノマーは、異なる酸化剤を使用して調製されたPAzおよびPEDOTである。表4は、アニール工程を使用せずに調製されたPAz層を含むフィルムのこれらの値についてさらに記載している。すべてのフィルムを、80μlの酸化剤溶液を使用して調製した。酸化剤を、2400rpmのスピンコーティング速度で基板上にスピンコーティングした。酸化剤層を90秒間90℃で乾燥させた。層あたりの重合時間は4分であり、重合温度は65℃であった。エントリー3におけるフィルムを除く他のすべてのフィルムに対してアニーリングを実施した。エントリー1および2では、シート抵抗はアニール工程前に測定される。フィルムを、アセトニトリルで2回洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。堆積表面の温度はエントリー1および2において55℃であった。エントリー3では、堆積表面の温度は制御されなかった。すなわちそれはほぼ室温であった。すべてのシート抵抗値はフィルム調製直後に測定される。
【0093】
【表4】
【0094】
【表5】
【0095】
特徴づけ
Agilent 8453(最大1000nm)を使用して、UV-Vis-NIR測定を記録した(コーティングされていない基板を使用してバックグラウンド補正を行った)。
【0096】
原子間力顕微鏡(AFM)測定を、室温でタッピングモードで動作するVeeco diCaliber走査型プローブ顕微鏡を使用して実行した。すべてのAFM画像を、Bruker TESP-MTプローブを使用して記録した(共振周波数:320kHz、ばね定数:42N/m、長さ:125μm、幅:30μm、カンチレバー仕様:0.01~0.025Ωcmのアンチモン(n)ドープシリコン、厚さ:4mm、チップ仕様:10~15mmの高さ、8nmの半径)。WSXMソフトウェアを使用して、PAzフィルムの平均粗さ(粗さ平均(Ra))値を判定した。
【0097】
電気化学的特性評価にはCV測定を使用した。CV測定を、0.1MのTBA-BF4/MeCNを使用して従来の3電極構成で実行した。異なる数のPAz層で覆われた基板上にVPPで調製されたPAzフィルムを作用電極として使用した。Ag/AgCl線および白金線を、それぞれ、参照電極および対電極として使用した。Ag/AgCl参照電極を、フェロセンレドックスカップル(E1/2(Fe/Fe+)=0.43V)を使用して、あらゆる電気化学的測定の前後に較正した。サイクリックボルタモグラムを、20~200mV/sのスキャン速度で-0.25V~0.9Vの電位範囲においてMetrohm Autolab PCSTAT 101ポテンシオスタットを使用して記録した。電荷(Q)は、Originソフトウェアの電位範囲-0.25V~0.9Vのサイクリックボルタモグラムの積分によって計算され、これは、上に提示した方程式(4)および(5)を使用してさらに処理され、静電容量値が得られる。
【0098】
円筒形の4点プローブヘッドを備えたJandelモデルRM3000+を使用して、1L~6LのPAzフィルムのシート抵抗(rシート)値を計算した。フィルムの比抵抗(r)および導電率(s)を、方程式(6)および(7)から計算した。
【0099】
図7Aは、50×50μmのサイズの1L、3L、および6LのPAzフィルムのAFM画像を例示し、図7Bは、10×10μmのサイズの1L、3L、および6LのPAzフィルムを例示している。すべてのフィルムを、240mMのCuCl2酸化剤溶液80μlを使用してVPPを介して調製した。酸化剤を、2400rpmのスピンコーティング速度で基板上にスピンコーティングした。酸化剤を90秒間90℃で乾燥した。重合時間は層あたり4分であり、セル温度、すなわち、重合温度は55℃であった。すべてのフィルムを、アセトニトリルで2回洗浄し、窒素ガス流下で乾燥させた。アニール工程は使用しなかった。
【0100】
技術の進歩に伴い、基本的な考えが様々な方法で実施され得ることは当業者に明らかである。したがって、実施形態は、上記の実施例に限定されず、代わりに、特許請求の範囲内で異なり得る。
【0101】
前述の実施形態は、互いに任意の組み合わせで使用され得る。実施形態のいくつかは一緒に組み合わされて、さらなる実施形態を形成し得る。本明細書に開示される方法、フィルム、デバイス、または使用は、前述の実施形態の少なくとも1つを含み得る。上記の恩恵および利点が、1つの実施形態に関連し得るか、またはいくつかの実施形態に関連し得ることが理解される。実施形態は、言及された問題のいずれかまたはすべてを解決するもの、または言及された恩恵および利点のいずれかまたはすべてを有するものに限定されない。項目「an」への参照が、それらの項目の1つまたは複数を指すことがさらに理解される。「含む(comprising)」という用語は、本明細書において、1つまたは複数の追加の特徴または作用の存在を排除することなく、その後に続く(1つまたは複数の)特徴または(1つまたは複数の)作用を含むことを意味するように使用される。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B