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特許7530651中間色でデジタル印刷をするための方法及び機械
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】中間色でデジタル印刷をするための方法及び機械
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/21 20060101AFI20240801BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20240801BHJP
   H04N 1/60 20060101ALI20240801BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B41J2/21
B41J2/01 129
H04N1/60
B41M5/00 120
B41M5/00 100
B41J2/01 203
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021572534
(86)(22)【出願日】2020-06-02
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-11-07
(86)【国際出願番号】 ES2020070363
(87)【国際公開番号】W WO2020245481
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2022-06-28
(31)【優先権主張番号】201930518
(32)【優先日】2019-06-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】ES
(31)【優先権主張番号】19382603.9
(32)【優先日】2019-07-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】516277439
【氏名又は名称】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
(74)【代理人】
【識別番号】100158920
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 英樹
(72)【発明者】
【氏名】バルベラン ラトーレ, イエズス フランシスコ
【審査官】長田 守夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-193300(JP,A)
【文献】特表2011-508682(JP,A)
【文献】特開2009-241609(JP,A)
【文献】特開2004-99657(JP,A)
【文献】特開2009-285854(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0179727(US,A1)
【文献】特開2009-12312(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0252168(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
H04N 1/60
B41M 5/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ニュートラルカラーでのデジタル印刷の方法であって、
-印刷ヘッドを備えたデジタル印刷機を使用することと、
-デジタル印刷を受ける基材を提供することと、
-ブラック(K)の印刷インクの濃度よりも低い黒の顔料の濃度を有する少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを含む印刷用生産物を提供することと、
-前記基材に前記印刷用生産物を射出するための配置となるように、前記印刷用生産物を備えた前記印刷ヘッドを配置することと、
-少なくとも1つのニュートラルカラーを含むデザインに従って前記印刷用生産物を射出することによって、前記基材にデジタル印刷を行うことと
を含み、前記デジタル印刷機が単一パスタイプの機械であり、前記デジタル印刷を行うことは、前記デジタル印刷がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の印刷インクだけを射出して行われた場合に前記印刷ヘッドのずれによって生じる前記ニュートラルカラーの色調での目に見える欠陥を少なくとも低減するために、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)から選択されることができる色の少なくとも1つの印刷インクの代わりに、前記少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを特定のピクセルに射出することを含むことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクの前記黒の顔料の前記濃度は、前記ブラック(K)の印刷インクの濃度の10%から40%の間であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記印刷用生産物は、紫外線によって硬化可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記基材は不連続又は連続の形態を有し、木材、HPL、プラスチック、金属、複合材、紙、及びボール紙から選択されることができる材料を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記印刷用生産物は、シアン(C)の印刷インク、マゼンタ(M)の印刷インク、イエロー(Y)の印刷インク、ブラック(K)の印刷インク、及びそれらの2つ以上のいずれかの組み合わせから選択されることができる少なくとも別の1つの印刷インクを更に含むことを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷用生産物に含まれる少なくとも2つのライトブラック(LK)の印刷インクがあり、前記黒の顔料の前記濃度が互いに異なることを特徴とする、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ニュートラルカラーでデジタル印刷をするための機械であって、該機械は、ブラック(K)インクの濃度よりも低い黒の顔料の濃度を有する少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを含む印刷用生産物と、制御ユニットとを含み、該制御ユニットは、前記デジタル印刷をする機械が少なくとも1つのニュートラルカラーを含むデザインに従って前記印刷用生産物を射出することによって基材にデジタル印刷を行うように構成され、前記機械が単一パスタイプの機械であり、前記制御ユニットは、前記デジタル印刷がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の印刷インクだけを射出して行われた場合に前記印刷ヘッドのずれによって生じる前記ニュートラルカラーの色調での目に見える欠陥を少なくとも低減するために、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)から選択されることができる色の少なくとも1つの印刷インクの代わりに、前記少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを特定のピクセルに射出するように前記機械を制御するように更に構成されることを特徴とする、ニュートラルカラーでデジタル印刷をするための機械。
【請求項8】
前記印刷用生産物は、シアン(C)の印刷インク、マゼンタ(M)の印刷インク、イエロー(Y)の印刷インク、ブラック(K)の印刷インク、及びそれらの2つ以上のいずれかの組み合わせから選択されることができる少なくとも別の1つの印刷インクを更に含むことを特徴とする、請求項7に記載の機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基材に印刷するためのデジタル印刷技術に関係する産業に関する。
【背景技術】
【0002】
基材に印刷するためのデジタル印刷技術の使用が、今日知られている。基材への印刷は、非常に多くの場合に、印刷インクによる様々な色でデザインを印刷する必要がある。これによると、様々な必要な色を得るために、主にシアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)などの限られた色が、従来は使用されている。
【0003】
補充などを行う必要なく、印刷で上記各色の印刷インクの使用を長くするために、デジタル印刷機又はプリンタ、例えば産業用インクジェット「単一パス」機械によって行われる印刷のための方法は、色のブラック(K)は、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)を同じ割合で合わせた結果に対応しているとして、ブラック(K)の印刷インクを使用することである。
【0004】
したがって、ニュートラルカラーでの印刷に対するブラック(K)の印刷インクの従来の使用は、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの消費を大幅に節約する。
【0005】
しかし、今日の産業用インクジェット「単一パス」デジタルプリンタでは、例えばバンディング(カラーバンディングとも呼ばれる)やニュートラルカラーでない色に由来するシャドウの形態での色の不一致などの印刷での欠陥無しに、ニュートラルカラーを高品質で印刷することは困難又は不可能でさえある。
【0006】
色は、3つのベクトル座標軸(A、B、L)によって定められる空間直交座標系に従って定められることができる。その軸のうちの2つは、色調と彩度を定める2つの有彩色要素(A、B)に対応し、あと1つは明るさ又は明度を定める明度要素(L)に対応する。
【0007】
明度要素(L)は、純粋な黒に対応する0と純粋な白に対応する100の間の値に従って定量化されることができる。有彩色要素(A、B)に関して、その要素の1つ(A)は緑-赤成分を表し、緑は負の値であり、赤は正の値であり、有彩色要素の他の1つ(B)は青-黄色成分を表し、青は負の値であり、黄色は正の値である。有彩色要素のそれぞれの値は、定量化が割合量に変換されるようにして、正の100(+100)と負の100(-100)の間で定量化されることができる。
【0008】
それにより、一般に無彩色とも呼ばれるニュートラルカラーは、ゼロであるか又はゼロに近い2つの有彩色要素(A、B)の値を有する色として特定されることができる。-100から+100までで定められる段階で、ゼロ以外であり、正の25(+25)と負の25(25)の間である(両方の値を含む)値は、ゼロに近い値として理解される。
【0009】
同様に、ニュートラルカラーは、2つの有彩色要素(A、B)の値がゼロである場合は無彩色として分類され、2つの有彩色要素(A、B)の値がゼロに近い場合又は2つのうちの1つがゼロで、もう1つはゼロに近い場合には、無彩色に近い色として分類される。
【0010】
これによると、無彩色は白、つまり純粋な白、黒、つまり純粋な黒、及び白と黒の間のグレースケール全体である。そして、無彩色に近い場合、明度要素(L)は、ゼロ以外で-25と+25の間(両方の値を含む)の値である有彩色要素(A、B)よりも明らかに優勢であり、そのため灰色がかった色調になる。
【0011】
通常、ニュートラルカラーで印刷する場合は、すべての原色CMYK(シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラック)が含まれる。結果として、いずれかの印刷ヘッドのずれは、はっきりと又は直ちに印刷に反映され、色調の変化という形で目に見える欠陥を引き起こ
【0012】
これに従って、カラープロファイルが得られ、それに従って各デザインで必要とされる各色の使用量が決定されるようにして、印刷されるデザインに対して画像処理が行われることが知られている。
【0013】
CMYK組成を使用したカラープロファイルの作成では、CMYはニュートラルカラーの生成のために使用される。印刷ヘッドが起こすことのある位置のずれは、かなり不正確な色測定を生じ得る。それにより、ニュートラルカラー又はニュートラルカーラーの色調に近い色で印刷する場合に不正確となる。
【0014】
この種の印刷デザインを4色(CMYK)の印刷だけで印刷できるようにするには、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの消費において、より多くのブラック(K)の印刷インクが使用されるように画像処理が調整されなければならない。それにより、ニュートラルカラーで印刷する場合に、これら3つのインクの使用が低減される。
【0015】
このすべてには、より明るいニュートラルカラーの色調で、つまり、明度要素の値が純粋な白の100に近いほど、黒の印刷ドットが容易に見られることがあり、品質の欠如が認識されるという明らかにマイナスの側面がある。ブラック(K)の印刷インクのこれらのドット、つまり「ピクセル化」は、上述のより明るい色調のニュートラルカラーは、印刷された時にブラック(K)の割合が低くなり、それはニュートラルカラーによりなされた印刷で、直接的に品質の欠如をもたらすことによる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
現在存在する方法の説明された欠点又は制限を考慮すると、印刷品質を向上させると同時に、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクで印刷する際にそれらの使用を節約する、ニュートラルカラーでの印刷を可能にする方法が必要である。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的を達成して、これまでに説明した技術的問題を解決し、更に以下で得られる追加の利点を提供するために、本発明は、ニュートラルカラーでのデジタル印刷の方法を提供する。その方法は、印刷ヘッドを備えた好ましくは単一パスタイプのデジタル印刷機を使用することと、デジタル印刷を受ける基材を提供することと、ブラックインクの濃度よりも低い黒の顔料の濃度を有する少なくとも1つのライトブラック(明るい黒)の印刷インクを含む、好ましくは紫外線放射によって硬化可能な印刷用生産物を提供することと、基材に印刷用生産物を射出するための配置となるように、印刷用生産物を備えた印刷ヘッドを配置することと、少なくとも1つのニュートラルカラーを含むデザインに従って印刷用生産物を射出することによって、基材にデジタル印刷を行うこととを含む。
【0018】
好ましくは、少なくとも1つのライトブラックの印刷インクの黒の顔料の濃度は、ブラックの印刷インクの濃度の10%から40%の間である。
【0019】
基材は、好ましくは、不連続又は連続の形態を有し、木材、HPL、プラスチック、金属、複合材、紙、及びボール紙から選択されることができる材料を含む。
【0020】
デジタル印刷を行うことは、シアン、マゼンタ、イエロー、及びブラックから選択されることができる色の少なくとも1つの印刷インクの代わりに、少なくとも1つのライトブラックの印刷インクを射出することを含む。
【0021】
印刷用生産物は、シアンの印刷インク、マゼンタの印刷インク、イエローの印刷インク、ブラックの印刷インク、及びそれらの2つ以上のいずれかの組み合わせから選択されることができる少なくとも別の1つの印刷インクを更に含む。
【0022】
好ましくは、印刷用生産物に含まれる少なくとも2つのライトブラックの印刷インクがあり、黒の顔料の濃度が互いに異なる。
【0023】
本発明は、ニュートラルカラーでのデジタル印刷のためのデジタル印刷機を提供し、そのデジタル印刷機は、ブラックインクの濃度よりも低い黒の顔料の濃度を有する少なくとも1つのライトブラックの印刷インクを含む印刷用生産物と、制御ユニットとを含み、その制御ユニットは、デジタル印刷機が少なくとも1つのニュートラルカラーを含むデザインに従って印刷用生産物を射出することによって基材にデジタル印刷を行うように構成される。
【0024】
制御ユニットは、デジタル印刷機が、デジタル印刷を行うためにシアンの印刷インク、マゼンタの印刷インク、イエローの印刷インク、及び/又はブラックの印刷インクを射出する代わりに、少なくとも1つのライトブラックの印刷インクを射出するように構成される。
【0025】
好ましくは、印刷用生産物は、シアンの印刷インク、マゼンタの印刷インク、イエローの印刷インク、ブラックの印刷インク、及びそれらの2つ以上のいずれかの組み合わせから選択されることができる少なくとも別の1つの印刷インクを更に含む。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】それに従って色を定義できる、3つのベクトル座標軸による光度要素及び2つの有彩色要素を示す図である。
図2】デジタル印刷方法の例の概略図を示す。
図3】デジタル印刷方法の別の例の概略図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0027】
本発明は、デジタル印刷機又はプリンタの使用による、少なくとも1つのニュートラルカラー、無彩色及び無彩色に近いニュートラルカラーの両方、又は灰色がかった色調のニュートラルカラーの少なくとも1つを含むデジタル印刷の品質を改善するための、ニュートラルカラーでのデジタル印刷の方法に関する。更に、本発明は、その方法を行う際に使用されるデジタル印刷機(インクジェット)に関する。
【0028】
色は、3つのベクトル座標軸(A、B、L)によって定められる空間直交座標系に従って定められることができる。その軸のうちの2つは、色調と彩度を定める2つの有彩色要素(A、B)に対応し、あと1つは明るさ又は明度を定める明度要素(L)に対応する。
【0029】
本明細書におけるニュートラルカラー又は無彩色は、2つの有彩色要素の値がゼロであるか又はゼロに近い色として特定される。図1を参照されたい。
【0030】
負の100(-100)から正の100(+100)までで定められる段階で、ゼロ以外であり、正の25(+25)と負の25(25)の間である(両方の値を含む)値は、ゼロに近い値として理解される。
【0031】
これによると、ニュートラルカラーは、2つの有彩色要素の値がゼロである場合は無彩色として分類され、2つの有彩色要素(A、B)の値がゼロに近い場合又は2つの有彩色要素のうちの1つがゼロで、もう1つはゼロに近い場合には、無彩色に近い色として分類される。
【0032】
デジタル印刷は、好ましくは、単一パスタイプの機械であるデジタル印刷機を用いて基材に行われる。同様に、その機械は、1つの印刷ヘッド、好ましくはいくつかの印刷ヘッドを含む。その機械に含まれるそれぞれの印刷ヘッドは、少なくとも1つの射出器、好ましくは複数の射出器を含む。
【0033】
印刷又は処理される基材は、不連続又は連続の形態を有する。すなわち、それらは、個別に及び独立して、あるいは例えば巻かれた又は折り畳まれた状態から伸ばされるか又は巻きがほどかれるようにして、連続的に機械に供給されることができる要素である。
【0034】
同様に、板状材は、木材(例えば、中密度繊維板(MDF)、高密度繊維板(HDF)、及びパーティクルボードによって)、HPL、プラスチック、複合材、アルミニウム、鋼、銅などの金属、及び例えば紙や段ボールなどのセルロース誘導体から好ましくは選択される材料を含む、様々な材料で作られることができる。
【0035】
デジタル印刷機は、印刷用生産物を含む。この印刷用生産物は、対応するデジタル印刷ヘッドに保管又は収容されて配置され、射出器を通じて基材に射出されるように配置される。
【0036】
この印刷用生産物は、少なくとも1つの印刷インクを含む。好ましくは2つ、より好ましくは3つ、更により好ましくは4つ、更により好ましくは少なくとも5つ又は少なくとも6つの印刷インクが印刷用生産物に含まれ、印刷インクは異なる色に対応し、又は互いに異なる色調である1つの同じ色に対応する。
【0037】
印刷インクは、モノマー、光開始剤、及び特定の濃度の顔料を含む。顔料は、印刷インクの色に応じて選択される。印刷インクがブラック(K)の場合、その組成に関しては、顔料はカーボン粒子に基づく。
【0038】
ブラック(K)の印刷インクは、一般的な又は標準的なブラックの印刷インクを指す。この標準的なブラック(K)は、単独で、又は明らかに対応する印刷インクの形態であるシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)などの色と共に、デジタル印刷機で一般的に見られるものに対応する。
【0039】
印刷インクを規定するときは、特定の波長について、単位距離当りの光素子の吸収を測定する、物理的な大きさの光学濃度と呼ばれるものを使用するのが一般的である。例として、印刷の10分後にモードM0及び2°(観察角度)でi1pro2分光光度計を使用して測定される光学濃度で、上記のブラック(K)の印刷インクの光学濃度は、1.6から2.2の間である。
【0040】
上記のニュートラルカラーにより印刷を行うために、デジタル印刷機は、黒の顔料又はカーボン粒子の濃度がブラック(K)の印刷インクの濃度よりも低いという事実により、ライトブラック(LK)と呼ばれることができる色による印刷インクの少なくとも1つを含む。それにより、その少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクの色調は、黒であるが、ブラック(K)の印刷インクの色調とは異なる。
【0041】
ライトブラック(LK)の印刷インクの黒の顔料の濃度は、ブラック(K)の印刷インクの黒の顔料の濃度と比較して10%から40%の間である。
【0042】
これによれば、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクの光学濃度もまた、ブラック(K)の印刷インクの光学濃度よりも低い。比較として、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクの黒の顔料の濃度が、ブラック(K)の印刷インクのその濃度の20%である場合、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクの光学濃度は、そのブラック(K)の印刷インクの光学濃度の40%である。
【0043】
これによれば、任意でデジタル印刷機に含まれる2つ以上のライトブラック(LK)の印刷インクがあり、その黒の顔料又はカーボン粒子の濃度は互いに異なる。
【0044】
デジタル印刷機は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び/又はブラック(K)の印刷インクを射出する代わりに、デジタル印刷機が対応する射出器により上記のライトブラック(LK)の印刷インクの1つ又は複数を射出して、対応するニュートラルカラーを印刷するように構成された制御ユニットを更に含む。
【0045】
上述したように、本方法は、ライトブラック(LK)の印刷インクの少なくとも1つを射出して、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び/又はブラック(K)の印刷インクの代わりに、対応するニュートラルカラーを印刷することを含む。
【0046】
デジタル印刷を行う1つ又は複数のライトブラック(LK)の印刷インクの射出は、対応する基材で少なくとも1つのニュートラルカラーを含むデザインを得るために行われる。
【0047】
デザインに従って、本発明の方法は、カラープロファイルが得られ、カラープロファイルに従ってシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の各色の使用量が決定されるようにして、画像処理を行うことを含む。それによれば、そのデザインは、好ましくは予め定められる。
【0048】
決定されたブラック(K)の量に従って、ブラック(K)の印刷インクの代わりに少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを使用、利用、又は射出することにより、より信頼性が高く安定した方法で、ニュートラルカラーでの印刷を提供する。
【0049】
これは、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インク使用することにより、特定の黒の色調で又は決定されたブラック(K)の量に従って印刷を得るために、より多くの液滴、すなわち、そのインク(LK)のより多くの射出点を使用できるという事実による。それは、基材にニュートラルカラーを得る又はニュートラルカラーで印刷する際に使用されることができる他の色(C、M、Y、K)の印刷インクの「ピクセル化」又はドットを大幅に低減又は排除さえする。
【0050】
シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの代わりに、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを使用すると、シャドウの形でのその印刷における色調のずれや色の不一致の問題を取り除く。
【0051】
更に、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの代わりにライトブラック(LK)の印刷インクを使用すると、それらの印刷インクの節約をもたらす。これらの節約はかなりの量であり、対応するニュートラルカラーの色調と、無彩色及び無彩色に近い色の両方を得るためにライトブラック(LK)の印刷インクのみを使用することによる対応するデザインの画像処理とによっては、20%に達することさえある。
【0052】
同様に、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの代わりにライトブラック(LK)の印刷インクを使用すると、特定の状況で1つの色の2つのサンプルが一致し、しかし他の異なる特定の状況では異なる、一般に「メタメリズム」と呼ばれる状況として一般的に定義される心理物理的現象を減らす。
【0053】
後者は、ブラック(K)はほとんどの光を吸収し、したがって光の反射が最も少ない色であり、そのためシアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの代わりにライトブラック(LK)の印刷インクを使用することは、ニュートラルカラーの知覚がより安定した、つまり当たる光の種類及び入射角に応じた変化に対してより受ける影響が少ない、対応する印刷を行うことを可能にするという事実による。
【0054】
デジタル印刷機は、好ましくは、1つ以上のライトブラック(LK)の印刷インクに加えて、シアン(C)の印刷インク、マゼンタ(M)の印刷インク、イエロー(Y)の印刷インク、ブラック(K)印刷、又はそれらの2つ以上の任意の組み合わせを含む。
【0055】
好ましい実施形態によれば、デジタル印刷機は、その色の全種類によりデジタル印刷を行うように構成される。それによればデジタル印刷機は、シアン(C)の印刷インク、マゼンタ(M)の印刷インク、イエロー(Y)の印刷インク、及びライトブラック(LK)の印刷インクを含み、任意でブラック(K)の印刷インクも追加される。
【0056】
したがって、デジタル印刷機は、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の印刷インクを依然として含むものの、制御ユニットは、デジタル印刷機がシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及び/又はブラック(K)の印刷インクを射出する代わりに、対応する射出器により上記のライトブラック(LK)の印刷インクの1つ又は複数を射出し、必要なニュートラルカラーで印刷を行うように構成される。
【0057】
本発明の方法は、そのデジタル印刷機で実施される。それによりその方法は、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの代わりに、任意で更にブラック(K)の印刷インクの代わりに、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを射出して、1つ又は複数のニュートラルカラーで印刷を行うことを含む。
【0058】
同様に、本発明の方法は、デジタル印刷機がシアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インク、加えて任意でブラック(K)を射出するように構成されている場合であっても、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の印刷インクに代えて、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを射出して、1つ又は複数のニュートラルカラーで印刷を行うことを含む。
【0059】
印刷ヘッド、より具体的にはその射出器のずれは、無彩色で印刷する場合に特に顕著に現れ、無彩色に近い色で印刷する場合にも顕著に現れる。そのずれは、所望の所定の色調を得ることに関して印刷での欠陥をもたらす。その欠陥のいくつかは、例えば、バンディング又はカラーバンディング、色調のずれ、及び「ピクセル化」である。
【0060】
この事実によれば、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの使用を少なくすることにより、所望の所定の色調を得ることにおけるその欠陥が低減又は排除される。
【0061】
更に、ライトブラック(LK)の印刷インクによりカーボン粒子を使用又は利用することにより、メタメリズムも低減又は排除さえされる。同様に、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の印刷インクの代わりに、対応するライトブラック(LK)の印刷インクを使用すると、所望の所定の色調に対する色調の変化の形で影響を与える、印刷インクの液滴の膨張での欠陥が減少又は排除さえされる。
【0062】
本発明を更に説明するために、以下で2つの例を説明する。これらの例によれば、本発明のデジタル印刷の方法は、インクジェット単一パスデジタル印刷機械を用いて基材にされるデジタル印刷の印刷品質を向上又は改善するために、少なくとも1つのライトブラック(LK)の印刷インクを使用又は利用する。その印刷は、1つ又は複数のニュートラルカラーを含む。
【0063】
いくつかのニュートラルカラーを含む対応するデザインが印刷される対応する基材での領域が、例では考慮される。
【0064】
図2に示された例によると、そのデザインは20%のシアン(C)、30%のマゼンタ(M)、及び40%のイエロー(Y)で構成されている。この同じデザインは、デジタル印刷機に含まれる制御ユニットによって処理され、それにより約20%のブラック(K)、20%のマゼンタ(M)、及び30%のイエロー(Y)によりデザインが得られることが計算される。
【0065】
図3に示された例によると、そのデザインは20%のシアン(C)、40%のマゼンタ(M)、及び30%のイエロー(Y)で構成されている。この同じデザインは、デジタル印刷機に含まれる制御ユニットによって処理され、それにより約25%のブラック(K)、35%のマゼンタ(M)、及び20%のイエロー(Y)によりデザインが得られることが計算される。
【0066】
対応する領域では、これはブラック(K)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクで射出される特定のピクセルに変換される。これらの射出は、制御ユニットによる対応する画像処理に従って行われる決定に従って分配される。
【0067】
したがって、本発明の方法は、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)によるデザインの作成又は印刷から、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)による同じデザインの作成へと進む。それにより、シアン(C)の印刷インク、マゼンタ(M)の印刷インク、及びイエロー(Y)の印刷インクの消費量が主として低減される。
【0068】
本発明の方法では、行われる上記の決定に加えて又は代えて、別の決定が行われる。その領域において、これはライトブラック(LK)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクで射出される特定のピクセルに変換され、これらの射出は、制御ユニットによって行われるデザインの対応する画像処理に従って、ソフトウェアによって行われるこの別の決定に従って分配される。
【0069】
それにより、その別の決定は、その領域において、ブラック(K)の対応する割合がライトブラック(LK)の印刷インクによって提供され、マゼンタ(M)の対応する割合がマゼンタ(M)の印刷インクによって、イエロー(Y)の対応する割合がイエロー(Y)の印刷インクによって提供されるようにして行われる。
【0070】
これによれば、その別の決定は、ライトブラック(LK)の印刷インクで射出されるピクセルの群を決定することを伴い、このピクセルの群は、同じ量の黒を提供するためにブラック(K)の印刷インクで射出されることが決定され得るものよりも、数又は量が多い。
【0071】
したがって、その別の決定は、所定量の黒に対して、ブラック(K)の印刷インクを使用する代わりに、ライトブラック(LK)の印刷インクが使用又は利用されるようにして行われる。
【0072】
したがって、本発明の方法は、シアン(C)、マゼンタ(C)、及びイエロー(Y)の印刷インクによって、1つ又は複数のニュートラルカラーを得る又は合成する際に生じる印刷インクの液滴のずれ及び/又は膨張の特徴的な欠陥を解決するか又は少なくとも減少させる。
【0073】
ニュートラルカラーでのデジタル印刷において発生する可能性のある別の欠陥は、印刷ヘッドに直接関係しており、印刷インクの液滴当りの体積に関する。対応する色の印刷インクの1つ又は複数の射出された液滴の体積にずれが生じた場合、欠陥は直ちにかつ明らかに目立つ。本発明の方法は、シアン(C)、マゼンタ(M)、及びイエロー(Y)の印刷インクの使用を減らすことによって、上述した液滴の体積におけるずれのようなそれらの使用に内在する欠陥も減少するので、ライトブラック(LK)の印刷インクの使用によって、その欠陥を低減させるか、又は排除さえする。
【0074】
したがって、本発明の方法は、このライトブラック(LK)は、パーセンテージで表すとブラック(K)よりも低い光学濃度の値を有するので、特定の割合のブラック(K)を達成するために、より多くの量が射出されるピクセルがなければならないという利点を提供する。それにより、基材において予め定められたデザインの得られた印刷は、「ピクセル化」が少なくなり、すなわちより均質である。
【0075】
上述した事項によれば、ライトブラック(LK)の印刷インクの使用は、少なくともブラック(K)の印刷インクを使用する際に生じる「ピクセル化」を低減し、それによりデジタル印刷の均質性が高められる。またそれは、カーボン粒子によれば、黒は最も少ない光を反射する色であることで、少なくともメタメリズムを減らすことに加えて、シアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、及びブラック(K)の印刷インクを使用する際に生じる液滴のずれと膨張の欠陥を少なくとも減らす。
【0076】
本発明は、印刷インクが紫外線によって硬化可能である場合に特に関連する。紫外線で硬化可能な印刷インクは、他の種類の硬化がされる印刷インクと比較して、互いに混合する能力が小さく、無いことさえあり、膨張能力が異なる。そのため、他の異なる手段によって硬化可能な印刷インクの場合と比較して、上記の欠陥を生じるより高い傾向があることがより明らかで、その欠陥は本発明によって改められる。
【0077】
このように、本方法は基材で対応するデザインを得るための印刷を行うことを含み、そのデザインは少なくとも1つのニュートラルカラーを含み、使用されるライトブラック(LK)の印刷インクは、紫外線によって硬化可能なものである。
【0078】
同様に、少なくとも1つのニュートラルカラーを得るために射出されるように配置されたシアン(C)、マゼンタ(M)、イエロー(Y)、又はブラック(K)の印刷インクのうちの少なくとも1つを有する場合、これ又はこれらの印刷インクは、好ましくは、1つ又は複数のライトブラック(LK)の印刷インクと同様に紫外線放射によって硬化可能である。これによれば、デジタル印刷機は対応する印刷インクを含み、その印刷インクは、紫外線によって硬化可能である。
図1
図2
図3