(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/392 20190101AFI20240801BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20240801BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20240801BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20240801BHJP
H02J 7/02 20160101ALI20240801BHJP
【FI】
G01R31/392
G01R31/367
H01M10/48 P
H02J7/00 Y
H02J7/02 F
(21)【出願番号】P 2022542573
(86)(22)【出願日】2021-02-26
(86)【国際出願番号】 JP2021007491
(87)【国際公開番号】W WO2022034704
(87)【国際公開日】2022-02-17
【審査請求日】2023-01-25
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2020/030800
(32)【優先日】2020-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】522369728
【氏名又は名称】TeraWatt Technology株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】新井 寿一
(72)【発明者】
【氏名】緒方 健
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 佳邦
(72)【発明者】
【氏名】井本 浩
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-54214(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106199443(CN,A)
【文献】国際公開第2019/189821(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/230069(WO,A1)
【文献】国際公開第2018/003210(WO,A1)
【文献】国際公開第2019/181727(WO,A1)
【文献】特開2000-261901(JP,A)
【文献】特開2006-329707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/42
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信する第1受信部と、
前記充放電データに含まれる放電後開回路電圧(OCV)に基づくパラメータを推定モデルの説明変数に含める回帰分析を実行することにより、前記二次電池の劣化の状態を示す劣化指標を推定するための回帰式モデルとしての前記推定モデルを生成する推定モデル生成部と、
を備え
、
前記推定モデル生成部は、前記回帰分析において、放電後OCVのみを前記推定モデルの説明変数とし、又は、充電後OCV-放電後OCVを前記推定モデルの説明変数に含める、情報処理装置。
【請求項2】
前記二次電池は、負極に活物質を含まない、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記推定モデル生成部は、前記回帰分析において、充電後OCV-放電後OCVのみを前記推定モデルの説明変数とする、請求項
1又は2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信する第1受信部と、
前記充放電データに含まれる放電後開回路電圧(OCV)に基づく
充電後OCV-放電後OCVを推定モデルの入力に含める機械学習を実行することにより、前記二次電池の劣化の状態を示す劣化指標としてのSOH(State of Health)を推定するための機械学習済みモデルとしての前記推定モデルを生成する推定モデル生成部と、
を備える、情報処理装置。
【請求項5】
前記複数の二次電池管理システムのうちの1つの二次電池管理システムから、前記1つの二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信する第2受信部と、
前記推定モデルに前記1つの二次電池管理システムから取得した前記充放電データを入力することにより、前記1つの二次電池管理システムが管理する前記二次電池の劣化指標の推定値を取得する推定部と、
取得された前記推定値に基づく通知情報を生成する通知情報生成部と、
前記通知情報を前記1つの二次電池管理システムに送信する送信部と、
を更に備える、請求項1から
4のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記通知情報は、前記推定値を示す情報、及び前記推定値に基づく前記二次電池に関するメッセージの少なくともいずれかを含む、請求項
5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記通知情報生成部は、前記推定値に基づいて所定の通知条件を判定し、該通知条件を満たすと判定した場合に、前記通知情報を生成する、請求項
5又は
6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記複数の二次電池管理システムのそれぞれは、負極に負極活物質を含まない二次電池を管理する、請求項1から
7のいずれか一項に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータが、
複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信することと、
前記充放電データに含まれる放電後開回路電圧(OCV)に基づくパラメータを推定モデルの説明変数に含める回帰分析を実行することにより、前記二次電池の劣化の状態を示す劣化指標を推定するための回帰式モデルとしての前記推定モデルを生成することと、
を実行する、情報処理方法
であって、
前記推定モデルを生成することにおいて、前記回帰分析において、放電後OCVのみを前記推定モデルの説明変数とし、又は、充電後OCV-放電後OCVを前記推定モデルの説明変数に含める、情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータを、
複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信する第1受信部と、
前記充放電データに含まれる放電後開回路電圧(OCV)に基づくパラメータを推定モデルの説明変数に含める回帰分析を実行することにより、前記二次電池の劣化の状態を示す劣化指標を推定するための回帰式モデルとしての前記推定モデルを生成する推定モデル生成部と、
として機能させるための、プログラム
であって、
前記推定モデル生成部は、前記回帰分析において、放電後OCVのみを前記推定モデルの説明変数とし、又は、充電後OCV-放電後OCVを前記推定モデルの説明変数に含める、プログラム。
【請求項11】
コンピュータが、
複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信することと、
前記充放電データに含まれる放電後開回路電圧(OCV)に基づく
充電後OCV-放電後OCVを推定モデルの入力に含める機械学習を実行することにより、前記二次電池の劣化の状態を示す劣化指標としてのSOH(State of Health)を推定するための機械学習済みモデルとしての前記推定モデルを生成することと、
を実行する、情報処理方法。
【請求項12】
コンピュータを、
複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信する第1受信部と、
前記充放電データに含まれる放電後開回路電圧(OCV)に基づく
充電後OCV-放電後OCVを推定モデルの入力に含める機械学習を実行することにより、前記二次電池の劣化の状態を示す劣化指標としてのSOH(State of Health)を推定するための機械学習済みモデルとしての前記推定モデルを生成する推定モデル生成部と、
として機能させるための、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、太陽光又は風力等の自然エネルギーを電気エネルギーに変換する技術が注目されている。これに伴い、安全性が高く、かつ多くの電気エネルギーを蓄えることができる蓄電デバイスとして、様々な二次電池が開発されている。特に、リチウムイオン二次電池等よりも更なる高エネルギー密度化や生産性の向上等を目的として、炭素材料やリチウム金属といった負極活物質を有しない負極を用いる二次電池が開発されている。例えば、特許文献1には、負極集電体上に金属粒子が形成され、充電によって正極から移動され、負極集電体上にリチウム金属を形成する二次電池が開示されている。
【0003】
このような二次電池は、使用に際して繰返し充放電されることに伴って劣化するため、二次電池の劣化状態の様々な推定手法が提案されている。この点につき、本発明者らは、上述した負極活物質を有しない二次電池については、劣化状態が二次電池の各種パラメータと良い線形性を示すことを見出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、例えば、ある二次電池の劣化状態の推定において、当該二次電池から得られるデータのみに基づいて推定を行おうとしても、精度高く推定を行うことは困難である場合がある。一方で、複数のユーザに対して二次電池の使用に関する各種のサービスを統合的に提供するBaaS(Battery as a Service)においては、各ユーザが利用する二次電池のデータは十分に活用されていないという側面がある。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、複数の二次電池に関するデータを有効に活用し、二次電池の劣化状態の予測を精度高く行うことの可能な情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の実施形態に係る情報処理装置は、複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信する第1受信部と、前記充放電データに基づいて、前記二次電池の劣化の状態を示す劣化指標を推定するための推定モデルを生成する推定モデル生成部と、を備える。
【0008】
この態様によれば、複数の二次電池管理システムから、各々の二次電池管理システムが管理する二次電池の充放電データを受信した上で、これら充放電データに基づいて二次電池の劣化指標を推定するための推定モデルを生成することが可能となる。そのため、複数の二次電池に関するデータを有効に活用し、二次電池の劣化状態の予測を精度高く行うことが可能となる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の二次電池に関するデータを有効に活用し、二次電池の劣化状態の予測を精度高く行うことの可能な情報処理装置、情報処理方法、及びプログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係る管理システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る電源装置10の概略構成の一例を示すブロック図である。
【
図3】本実施形態に係るリチウム二次電池101の概略断面図である。
【
図4】本実施形態に係るBMS400の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図5】本実施形態に係るサーバ装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。
【
図6】本実施形態に係る充放電データのデータ構造の一例を示す図である。
【
図7】各種実施例に係るリチウム二次電池101の「放電後OCV」と「SOH」との特性情報を示す図である。
【
図8】各種実施例に係るリチウム二次電池101の「充電後OCV-放電後OCV」と「充放電容量」との特性情報を示す図である。
【
図9】本実施形態に係る管理システム1による推定モデルの生成処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図10】本実施形態に係る管理システム1による劣化指標の推定処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【
図11】本実施形態に係る通知情報の画面1000の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
添付図面を参照して、本発明の好適な実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
(1)管理システム1
図1は、本実施形態に係る管理システム1の概略構成の一例を示すブロック図である。
図1に示すように、管理システム1は、例えば、複数の電源装置10と、サーバ装置20とを備える。複数の電源装置10の各々は、例えば、ユーザが利用する電源装置であって、例えば、電池モジュール100と、充電器200と、負荷300と、バッテリ・マネジメント・システム(BMS)400とを備える。各BMS400とサーバ装置20とは、例えば、互いに情報を送受信可能にインターネット等の通信ネットワークNに接続される。管理システム1では、例えば、サーバ装置20によって、電源装置10を利用する各ユーザに対して、二次電池の使用に関する各種のサービスを統合的に提供するBaaS(Battery as a Service)が提供される。
【0012】
(2)電源装置10
(2-1)全体構成
図2は、本実施形態に係る電源装置10の概略構成の一例を示すブロック図である。
【0013】
電源装置10は、例えば、電池モジュール100と、充電器200と、負荷300と、BMS400と、を含む。
【0014】
電池モジュール100は、単一のセルとしてのリチウム二次電池101、又は直列及び/又は並列に接続された複数のリチウム二次電池101を含んで構成される。電池モジュール100が有するリチウム二次電池101の数は特に限定されない。複数のリチウム二次電池101は、それぞれ同一の特性を有していてもよいし、異なる特性を有していてもよい。リチウム二次電池101の構成の詳細については後述する。
【0015】
電池モジュール100は、更に、複数のリチウム二次電池101に直列に接続された電流センサ102を有する。電流センサ102は、複数のリチウム二次電池101に対して直列に接続されており、これらリチウム二次電池101に流れる電流を測定し、当該電流値をBMS400に供給する。
【0016】
電池モジュール100は、更に、複数のリチウム二次電池101のそれぞれに設けられた電圧センサ103及び温度センサ104を有する。各電圧センサ103は、各リチウム二次電池101に対して並列に接続される。各電圧センサ103は、各リチウム二次電池101の正極端子及び負極端子の間の電圧(端子間電圧)を測定し、当該電圧値をBMS400に供給する。また、温度センサ104は、複数のリチウム二次電池101のそれぞれに対して熱的に結合され、各リチウム二次電池101の温度を測定し、当該温度値をBMS400に供給する。
【0017】
充電器200の構成は特に限定されないが、例えば、外部電源に接続された充電プラグが接続可能な充電コネクタが設けられ、外部電源からの供給電力をリチウム二次電池101の充電電力に変換するように構成されてよい。リチウム二次電池101は、例えば、充電器200に接続され、BMS400の制御によって充電器200が供給する充電電流によって充電され得る。
【0018】
負荷300の構成は特に限定されないが、例えば、電動車両(電気自動車、ハイブリッド自動車)の駆動装置等として構成されてよい。リチウム二次電池101は、例えば、負荷300に接続され、BMS400による制御によって負荷300に電流を供給し得る。
【0019】
BMS400は、電池モジュール100に含まれるリチウム二次電池101の充電及び放電を制御する。BMS400の構成は後述する。
【0020】
(2-2)リチウム二次電池101
図3は、本実施形態に係るリチウム二次電池101の概略断面図である。本実施形態のリチウム二次電池101は、正極12と、負極活物質を有しない負極13とを備える。また、リチウム二次電池101において、正極12の負極13に対向する面とは反対側に正極集電体11が配置され、正極12と負極13との間に、セパレータ14が配置されている。以下、リチウム二次電池101の各構成について説明する。
【0021】
(負極)
負極13は、負極活物質を有しないものである。本明細書において、「負極活物質」とは、負極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。具体的には、本実施形態の負極活物質としては、リチウム金属、及びリチウム元素(リチウムイオン又はリチウム金属)のホスト物質が挙げられる。リチウム元素のホスト物質とは、リチウムイオン又はリチウム金属を負極13に保持するために設けられる物質を意味する。そのような保持の機構としては、特に限定されないが、例えば、インターカレーション、合金化、及び金属クラスターの吸蔵等が挙げられ、典型的には、インターカレーションである。
【0022】
本実施形態のリチウム二次電池101は、電池の初期充電前に負極13が負極活物質を有しないため、負極13上にリチウム金属が析出し、及び、その析出したリチウム金属が電解溶出することによって充放電が行われる。したがって、本実施形態のリチウム二次電池101は、負極活物質を有するリチウム二次電池101と比較して、負極活物質が占める体積及び負極活物質の質量が削減され、電池全体の体積及び質量が小さくなるため、エネルギー密度が原理的に高い。
【0023】
本実施形態のリチウム二次電池101は、電池の初期充電前に負極13が負極活物質を有せず、電池の充電により負極上にリチウム金属が析出し、電池の放電によりその析出したリチウム金属が電解溶出する。したがって、本実施形態のリチウム二次電池101は、電池の放電終了時にも、負極13が負極活物質を実質的に有しない。したがって、本実施形態のリチウム二次電池101において、負極13は負極集電体として働く。
【0024】
本実施形態のリチウム二次電池101をリチウムイオン電池(LIB)及びリチウム金属電池(LMB)と比較すると、以下の点で異なるものである。
リチウムイオン電池(LIB)において、負極はリチウム元素(リチウムイオン又はリチウム金属)のホスト物質を有し、電池の充電によりかかる物質にリチウム元素が充填され、ホスト物質がリチウム元素を放出することにより電池の放電が行われる。LIBは、負極がリチウム元素のホスト物質を有する点で、本実施形態のリチウム二次電池101とは異なる。
リチウム金属電池(LMB)は、その表面にリチウム金属を有する電極か、あるいはリチウム金属単体を負極として用いて製造される。すなわち、LMBは、電池を組み立てた直後、すなわち電池の初期充電前に、負極が負極活物質であるリチウム金属を有する点で、本実施形態のリチウム二次電池101とは異なる。LMBは、その製造に、可燃性及び反応性が高いリチウム金属を含む電極を用いるが、本実施形態のリチウム二次電池101は、リチウム金属を有しない負極13を用いるため、より安全性及び生産性に優れるものである。
【0025】
本明細書において、負極が「負極活物質を有しない」とは、負極が負極活物質を有しないか、実質的に有しないことを意味する。負極が負極活物質を実質的に有しないとは、負極における負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であることを意味する。負極における負極活物質の含有量は、負極全体に対して、好ましくは2質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。負極が負極活物質を有せず、又は、負極における負極活物質の含有量が上記の範囲内にあることにより、リチウム二次電池101のエネルギー密度が高いものとなる。
【0026】
本明細書において、「リチウム金属が負極上に析出する」とは、負極の表面、又は負極の表面に形成された後述する固体電解質界面(SEI)層の表面の少なくとも1箇所に、リチウム金属が析出することを意味する。例えば、
図1において、リチウム金属は、負極13の表面(負極13とセパレータ14との界面)に析出する。
【0027】
本明細書において、電池が「初期充電前である」とは、電池が組み立てられてから第1回目の充電をするまでの状態を意味する。また、電池が「放電終了時である」とは、電池の電圧が1.0V以上3.8V以下、好ましくは1.0V以上3.0V以下である状態を意味する。
【0028】
本明細書において、「負極活物質を有しない負極を備えるリチウム二次電池101」とは、電池の初期充電前又は放電終了時に、負極が負極活物質を有しないことを意味する。したがって、「負極活物質を有しない負極」との句は、「電池の初期充電前又は放電終了時に負極活物質を有しない負極」、「電池の充電状態に依らずリチウム金属以外の負極活物質を有せず、かつ、初期充電前又は放電終了時においてリチウム金属を有しない負極」、又は「初期充電前又は放電終了時においてリチウム金属を有しない負極集電体」等と換言してもよい。また、「負極活物質を有しない負極を備えるリチウム二次電池101」は、アノードフリーリチウム電池、ゼロアノードリチウム電池、又はアノードレスリチウム電池と換言してもよい。
【0029】
本実施形態の負極13は、電池の充電状態によらず、リチウム金属以外の負極活物質の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であり、好ましくは2質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。また、本実施形態の負極13は、初期充電前又は放電終了時において、リチウム金属の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であり、好ましくは2質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。負極13は、初期充電前及び放電終了時において、リチウム金属の含有量が、負極13全体に対して10質量%以下であると好ましい(その中でも好ましくは、リチウム金属の含有量が、負極13全体に対して2質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。)
【0030】
本実施形態のリチウム二次電池101は、電池の電圧が1.0V以上3.5V以下である場合において、リチウム金属の含有量が、負極13全体に対して10質量%以下であってもよく(好ましくは2質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。);電池の電圧が1.0V以上3.0V以下である場合において、リチウム金属の含有量が、負極13全体に対して10質量%以下であってもよく(好ましくは2質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。);又は、電池の電圧が1.0V以上2.5V以下である場合において、リチウム金属の含有量が、負極全体に対して10質量%以下であってもよい(好ましくは2質量%以下であり、1.0質量%以下であってもよく、0.1質量%以下であってもよく、0.0質量%以下であってもよい。)。
【0031】
また、本実施形態のリチウム二次電池101において、電池の電圧が4.2Vの状態において負極13上に析出しているリチウム金属の質量M4.2に対する、電池の電圧が3.0Vの状態において負極13上に析出しているリチウム金属の質量M3.0の比M3.0/M4.2は、好ましくは20%以下であり、より好ましくは15%以下であり、更に好ましくは10%以下である。比M3.0/M4.2は、8.0%以下であってもよく、2%以下であってもよく、3.0%以下であってもよく、1.0%以下であってもよい。
【0032】
本実施形態の負極活物質の例としては、リチウム金属及びリチウム金属を含む合金、炭素系物質、金属酸化物、並びにリチウムと合金化する金属及び該金属を含む合金等が挙げられる。上記炭素系物質としては、特に限定されないが、例えば、グラフェン、グラファイト、ハードカーボン、メソポーラスカーボン、カーボンナノチューブ、及びカーボンナノホーン等が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化チタン系化合物、酸化スズ系化合物、及び酸化コバルト系化合物等が挙げられる。上記リチウムと合金化する金属としては、例えば、ケイ素、ゲルマニウム、スズ、鉛、アルミニウム、及びガリウムが挙げられる。
【0033】
本実施形態の負極13としては、負極活物質を有せず、集電体として用いることができるものであれば特に限定されないが、例えば、Cu、Ni、Ti、Fe、及び、その他Liと反応しない金属、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものが挙げられる。なお、負極13にSUSを用いる場合、SUSの種類としては従来公知の種々のものを用いることができる。上記のような負極材料は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。なお、本明細書中、「Liと反応しない金属」とは、リチウム二次電池101の動作条件においてリチウムイオン又はリチウム金属と反応して合金化することがない金属を意味する。
【0034】
本実施形態の負極13は、好ましくはCu、Ni、Ti、Fe、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものであり、より好ましくは、Cu、Ni、及び、これらの合金、並びに、ステンレス鋼(SUS)からなる群より選択される少なくとも1種からなるものである。負極13は、更に好ましくは、Cu、Ni、これらの合金、又は、ステンレス鋼(SUS)である。このような負極13を用いると、電池のエネルギー密度、及び生産性が一層優れたものとなる傾向にある。
【0035】
本実施形態の負極13の平均厚さは、好ましくは4μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上18μm以下であり、更に、好ましくは6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、電池における負極13の占める体積が減少するため、電池のエネルギー密度が一層向上する。
【0036】
(正極)
正極12としては、正極活物質を有する限り、一般的にリチウム二次電池101に用いられるものであれば特に限定されず、リチウム二次電池101の用途によって、公知の材料を適宜選択することができる。正極12は、正極活物質を有するため、安定性及び出力電圧が高い。
【0037】
本明細書において、「正極活物質」とは、正極において電極反応、すなわち酸化反応及び還元反応を生じる物質である。具体的には、本実施形態の正極活物質としてはリチウム元素(典型的には、リチウムイオン)のホスト物質が挙げられる。
【0038】
そのような正極活物質としては、特に限定されないが、例えば、金属酸化物及び金属リン酸塩が挙げられる。上記金属酸化物としては、特に限定されないが、例えば、酸化コバルト系化合物、酸化マンガン系化合物、及び酸化ニッケル系化合物等が挙げられる。上記金属リン酸塩としては、特に限定されないが、例えば、リン酸鉄系化合物、及びリン酸コバルト系化合物が挙げられる。典型的な正極活物質としては、LiCoO2、LiNixCoyMnzO(x+y+z=1)、LiNixMnyO(x+y=1)、LiNiO2、LiMn2O4、LiFePO、LiCoPO、LiFeOF、LiNiOF、及びTiS2が挙げられる。上記のような正極活物質は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0039】
正極12は、上記の正極活物質以外の成分を含んでいてもよい。そのような成分としては、特に限定されないが、例えば、公知の導電助剤、バインダー、ポリマー電解質、及び無機固体電解質が挙げられる。
【0040】
正極12における導電助剤としては、特に限定されないが、例えば、カーボンブラック、シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT)、マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT)、カーボンナノファイバー(CF)、及びアセチレンブラック等が挙げられる。また、バインダーとしては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド、ポリテトラフルオロエチレン、スチレンブタジエンゴム、アクリル樹脂、及びポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0041】
正極12における、正極活物質の含有量は、正極12全体に対して、例えば、2質量%以上100質量%以下であってもよい。導電助剤の含有量は、正極12全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下あってもよい。バインダーの含有量は、正極12全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下であってもよい。固体ポリマー電解質、及び無機固体電解質の含有量の合計は、正極12全体に対して、例えば、0.5質量%30質量%以下であってもよい。
【0042】
(正極集電体)
正極12の片側には、正極集電体11が配置されている。正極集電体11は、電池においてリチウムイオンと反応しない導電体であれば特に限定されない。そのような正極集電体11としては、例えば、アルミニウムが挙げられる。
【0043】
正極集電体11の平均厚さは、好ましくは4μm以上20μm以下であり、より好ましくは5μm以上18μm以下であり、更に、好ましくは6μm以上15μm以下である。そのような態様によれば、リチウム二次電池101における正極集電体11の占める体積が減少するため、リチウム二次電池101のエネルギー密度が一層向上する。
【0044】
(セパレータ)
セパレータ14は、正極12と負極13とを隔離することにより電池が短絡することを防ぎつつ、正極12と負極13との間の電荷キャリアとなるリチウムイオンのイオン伝導性を確保するための部材であり、電子導電性を有せず、リチウムイオンと反応しない材料により構成される。また、セパレータ14は電解液を保持する役割も担う。セパレータ14を構成する材料自体にイオン伝導性はないが、セパレータ14が電解液を保持することにより、電解液を通じてリチウムイオンが伝導する。セパレータ14は、上記役割を担う限りにおいて限定はないが、例えば、多孔質のポリエチレン(PE)膜、ポリプロピレン(PP)膜、又はこれらの積層構造により構成される。
【0045】
セパレータ14は、セパレータ被覆層により被覆されていてもよい。セパレータ被覆層は、セパレータ14の両面を被覆していてもよく、片面のみを被覆していてもよい。セパレータ被覆層は、リチウムイオンと反応しない部材であれば特に限定されないが、セパレータ14と、セパレータ14に隣接する層とを強固に接着させることができるものであると好ましい。そのようなセパレータ被覆層としては、特に限定されないが、例えば、ポリビニリデンフロライド(PVDF)、スチレンブタジエンゴムとカルボキシメチルセルロースの合材(SBR-CMC)、ポリアクリル酸(PAA)、ポリアクリル酸リチウム(Li-PAA)、ポリイミド(PI)、ポリアミドイミド(PAI)、及びアラミドのようなバインダーを含むものが挙げられる。セパレータ被覆層は、上記バインダーにシリカ、アルミナ、チタニア、ジルコニア、酸化マグネシウム、水酸化マグネシウム、硝酸リチウム等の無機粒子を添加させてもよい。なお、セパレータ14は、セパレータ被覆層を有しなくてもよいし、セパレータ被覆層を有してもよい。
【0046】
セパレータ14の平均厚さは、好ましくは30μm以下であり、より好ましくは25μm以下であり、更に好ましくは20μm以下である。そのような態様によれば、リチウム二次電池101におけるセパレータ14の占める体積が減少するため、リチウム二次電池101のエネルギー密度が一層向上する。また、セパレータ14の平均厚さは、好ましくは5μm以上であり、より好ましくは7μm以上であり、更に好ましくは10μm以上である。そのような態様によれば、正極12と負極13とを一層確実に隔離することができ、電池が短絡することを一層抑止することができる。
【0047】
(電解液)
リチウム二次電池101は、電解液を有していることが好ましい。リチウム二次電池101において、電解液は、セパレータ14に浸潤させてもよく、正極集電体11と、正極12と、セパレータ14と、負極13との積層体と共に密閉容器に封入してもよい。電解液は、電解質及び溶媒を含有し、イオン伝導性を有する溶液であり、リチウムイオンの導電経路として作用する。このため、電解液を含む態様によれば、電池の内部抵抗が一層低下し、エネルギー密度、容量、及びサイクル特性が一層向上する。
【0048】
電解液は、下記式(A)で表される1価の基及び下記式(B)で表される1価の基のうち少なくとも一方を有するフッ化アルキル化合物を溶媒として含有すると好ましい。
【0049】
【0050】
【0051】
ただし、式中、波線は、1価の基における結合部位を表す。
【0052】
一般的に、電解液を有するアノードフリー型のリチウム二次電池101において、電解液中の溶媒等が分解されることにより、負極等の表面に固体電解質界面層(SEI層)が形成される。SEI層は、リチウム二次電池101において、電解液中の成分が更に分解されること、並びにそれに起因する非可逆的なリチウムイオンの還元、及び気体の発生等を抑制する。また、SEI層はイオン伝導性を有するため、SEI層が形成された負極表面において、リチウム金属析出反応の反応性が負極表面の面方向について均一なものとなる。リチウム二次電池101において、上記のフッ化アルキル化合物を溶媒として用いると、負極表面にSEI層が形成されやすく、負極上にデンドライト状のリチウム金属が成長することが一層抑制され、その結果、サイクル特性が一層向上する傾向にある。
【0053】
なお、本明細書において、化合物が「溶媒として含まれる」とは、リチウム二次電池101の使用環境において、当該化合物単体又は他の化合物との混合物が液体であればよく、さらには、電解質を溶解させて溶液相にある電解液を作製できるものであればよい。
【0054】
そのようなフッ化アルキル化合物としては、エーテル結合を有する化合物(以下、「エーテル化合物」という。)、エステル結合を有する化合物、及びカーボネート結合を有する化合物等が挙げられる。電解液における電解質の溶解度を一層向上させる観点、及びSEI層が一層形成されやすくなる観点から、フッ化アルキル化合物は、エーテル化合物であると好ましい。
【0055】
フッ化アルキル化合物であるエーテル化合物としては、式(A)で表される1価の基及び式(B)で表される1価の基の双方を有するエーテル化合物(以下、「第一フッ素溶媒」ともいう。)、式(A)で表される1価の基を有し、かつ、式(B)で表される1価の基を有しないエーテル化合物(以下、「第二フッ素溶媒」ともいう。)、及び式(A)で表される1価の基を有せず、かつ、式(B)で表される1価の基を有するエーテル化合物(以下、「第三フッ素溶媒」ともいう。)等が挙げられる。
【0056】
第一フッ素溶媒としては、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジエトキシメタン、及び1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルジエトキシプロパン等が挙げられる。上記のフッ化アルキル化合物の効果を有効かつ確実に奏する観点から、第一フッ素溶媒としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルが好ましい。
【0057】
第二フッ素溶媒としては、例えば、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、エチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、プロピル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、1H,1H,5H-パーフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、及び1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル等が挙げられる。上記のフッ化アルキル化合物の効果を有効かつ確実に奏する観点から、第二フッ素溶媒としては、1,1,2,2-テトラフルオロエチル-2,2,2-トリフルオロエチルエーテル、メチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、エチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテル、及び1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル-1,1,2,2-テトラフルオロエチルエーテルが好ましい。
【0058】
第三フッ素溶媒としては、例えば、ジフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、トリフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、フルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル、及びメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテル等が挙げられる。上記のフッ化アルキル化合物の効果を有効かつ確実に奏する観点から、第三フッ素溶媒としては、ジフルオロメチル-2,2,3,3-テトラフルオロプロピルエーテルが好ましい。
【0059】
電解液は、式(A)で表される1価の基及び式(B)で表される1価の基の双方を有しない溶媒を含んでいてもよい。そのような溶媒としては、特に限定されないが、例えば、ジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、ジメトキシエタン、ジエチレングリコールジメチルエーテル、アセトニトリル、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチル、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、クロロエチレンカーボネート、メチルアセテート、エチルアセテート、プロピルアセテート、メチルプロピオネート、エチルプロピオネート、リン酸トリメチル、及びリン酸トリエチル等のフッ素を含有しない溶媒、並びに、メチルノナフルオロブチルエーテル、エチルノナフルオロブチルエーテル、1,1,1,2,2,3,4,5,5,5-デカフルオロ-3-メトキシ-4-トリフルオロメチルペンタン、メチル-2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピルエーテル、1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルメチルエーテル、エチル-1,1,2,3,3,3-ヘキサフルオロプロピルエーテル、及びテトラフロロエチルテトラフロロプロピルエーテル等のフッ素を含有する溶媒が挙げられる。
【0060】
上記フッ化アルキル化合物を含め、上述した溶媒は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いることができる。
【0061】
電解液におけるフッ化アルキル化合物の含有量は、特に限定されないが、電解液の溶媒成分の総量に対して、好ましくは40体積%以上であり、より好ましくは2体積%以上であり、更に好ましくは60体積%以上であり、更により好ましくは70体積%以上である。フッ化アルキル化合物の含有量が上記の範囲内にあると、SEI層が一層形成されやすくなるため、電池のサイクル特性が一層向上する傾向にある。フッ化アルキル化合物の含有量の上限は特に限定されず、フッ化アルキル化合物の含有量は、電解液の溶媒成分の総量に対して、100体積%以下であってもよく、95体積%以下であってもよく、90体積%以下であってもよく、80体積%以下であってもよい。
【0062】
電解液に含まれる電解質としては、塩であれば特に限定されないが、例えば、Li、Na、K、Ca、及びMgの塩等が挙げられる。電解質としては、好ましくはリチウム塩が用いられる。リチウム塩としては、特に限定されないが、LiI、LiCl、LiBr、LiF、LiBF4、LiPF6、LiAsF6、LiSO3CF3、LiN(SO2F)2、LiN(SO2CF3)2、LiN(SO2CF3CF3)2、LiBF2(C2O4)、LiB(O2C2H4)2、LiB(O2C2H4)F2、LiB(OCOCF3)4、LiNO3、及びLi2SO4等が挙げられる。上記のリチウム塩は、1種を単独で又は2種以上を併用して用いられる。
【0063】
電解液における電解質の濃度は特に限定されないが、好ましくは0.5M以上であり、より好ましくは0.7M以上であり、更に好ましくは0.9M以上であり、更により好ましくは1.0M以上である。電解質の濃度が上記の範囲内にあることにより、SEI層が一層形成されやすくなり、また、内部抵抗が一層低くなる傾向にある。電解質の濃度の上限は特に限定されず、電解質の濃度は10.0M以下であってもよく、2M以下であってもよく、2.0M以下であってもよい。
【0064】
(2-3)BMS400
図4は、本実施形態に係るBMS400の機能構成の一例を示すブロック図である。BMS400は、例えば、1つ又は複数のコンピュータにより構成され、通信部401と、操作部402と、出力部403と、記憶部404と、処理部405とを有する。BMS400は、例えば、PC、スマートフォン、タブレット端末等のデバイスであってよく、リチウム二次電池101を管理すると共に、サーバ装置20からBaaSの提供を受けることが可能である。
【0065】
通信部401は、通信インターフェース回路を備え、BMS400を通信ネットワークNに接続する。通信部401は、処理部405から供給されたデータを、通信ネットワークNを介してサーバ装置20等に送信する。また、通信部401は、サーバ装置20等から通信ネットワークNを介して受信したデータを処理部405に供給する。
【0066】
操作部402は、BMS400の操作が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、タッチパネルやキーボタン等である。ユーザは、操作部402を用いて、文字や数字、記号等を入力することができる。操作部402は、ユーザにより操作されると、その操作に対応する信号を発生する。そして、発生した信号は、ユーザの指示として、処理部405に供給される。
【0067】
出力部403は、例えば、表示部や音声出力部を備える。表示部は、映像や画像等の表示が可能であればどのようなデバイスでもよく、例えば、液晶ディスプレイや有機EL(Electro-Luminescence)ディスプレイ等である。表示部は、処理部405から供給された映像データに応じた映像や、画像データに応じた画像等を表示する。また、音声出力部は、例えば、スピーカとして構成され、処理部405から供給された音声データに基づいて音声を出力する。
【0068】
記憶部404は、例えば、半導体メモリ装置を備える。記憶部404は、処理部405での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。例えば、記憶部404は、ドライバプログラムとして、操作部402を制御する入力デバイスドライバプログラム、出力部403を制御する出力デバイスドライバプログラム等を記憶する。また、記憶部404は、アプリケーションプログラムとして、BMS400を管理するためのプログラムや、サーバ装置20が提供するBaaSを利用するためのプログラム等を記憶する。各種プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部404にインストールされてもよい。また、記憶部404は、BMS400が管理するリチウム二次電池101の充放電に関するデータである充放電データを記憶してよい。充放電データのデータ構造については後述する。
【0069】
処理部405は、1つ又は複数のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部405は、BMS400の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部405は、BMS400の各種処理が記憶部404に記憶されているプログラムや操作部402の操作等に基づいて適切な手順で実行されるように、通信部401や出力部403等の動作を制御する。処理部405は、記憶部404に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部406は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0070】
処理部405は、例えば、充放電制御部406と、充放電データ生成部407と、送受信部408と、出力制御部409とを備える。これらの各部は、処理部405が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとしてBMS400に実装されてもよい。
【0071】
充放電制御部406は、電池モジュール100に含まれる各リチウム二次電池101の充電及び放電を制御する。充放電制御部406は、例えば、記憶部404に予め記憶された設定や操作部402を介した操作により入力される設定に基づいて、充電及び放電を制御してもよい。当該設定は、例えば、充放電の時間、充放電開始時の残存容量、充放電終了時の残存容量、充放電開始時の正極及び/又は負極の端子電圧、充放電終了時の正極及び/又は負極の端子電圧等によって任意に設定してもよい。
【0072】
充放電データ生成部407は、BMS400が管理するリチウム二次電池101の充放電に関するデータである充放電データを生成する。充放電データ生成部407は、生成した充放電データを記憶部404に記憶させてもよい。充放電データのデータ構造については後述する。
【0073】
送受信部408は、送信部及び受信部としての機能を有し、各種の情報やデータを、通信部401を介してサーバ装置20等の他の情報処理装置に送信し、また、各種の情報やデータを、通信部401を介してサーバ装置20等の他の情報処理装置から受信する。送受信部408は、例えば、充放電データをサーバ装置20に送信する。また、送受信部408は、例えば、各種の通知情報をサーバ装置20から受信する。
【0074】
出力制御部409は、出力部403に各種の情報を出力させる。例えば、出力部403が表示部として構成される場合、出力制御部409は、映像データや画像データを生成し、当該映像データに基づく映像や画像データに基づく画像等を当該表示部に表示させる。また、出力部409が音声出力部として構成される場合、出力制御部409は音声データを生成して、当該音声出力部に音声出力させる。
【0075】
(3)サーバ装置20
図5は、本実施形態に係るサーバ装置20の機能構成の一例を示すブロック図である。サーバ装置20は、例えば、1つ又は複数のコンピュータにより構成される情報処理装置の一例であって、通信部21と、記憶部22と、処理部23とを備える。サーバ装置20は、各BMS400に対して、BaaSを提供する。
【0076】
通信部21は、通信インターフェース回路を備え、サーバ装置20を通信ネットワークNに接続する。通信部21は、処理部23から供給されたデータを、通信ネットワークNを介して各BMS400等に送信する。また、通信部21は、各BMS400等から通信ネットワークNを介して受信したデータを処理部23に供給する。
【0077】
記憶部22は、例えば、半導体メモリ装置を備える。記憶部22は、処理部23での処理に用いられるオペレーティングシステムプログラム、ドライバプログラム、アプリケーションプログラム、データ等を記憶する。各種プログラムは、例えばCD-ROM、DVD-ROM等のコンピュータ読み取り可能な可搬型記録媒体から、公知のセットアッププログラム等を用いて記憶部22にインストールされてもよい。記憶部22は、例えば、推定モデル生成部25が生成した推定モデルを記憶してもよい。また、記憶部22は、BMS400から送信された充放電データを記憶してもよい。また、記憶部22は、各BMS400が管理する電池モジュール100の仕様(負極、正極、負極集電体、正極集電体、セパレータ、電解液等のリチウム二次電池101の仕様に関する情報や、各リチウム二次電池101の接続に関する情報)や、充電器200及び負荷300の仕様に関する情報等を記憶してもよい。
【0078】
処理部23は、1つ又は複数のプロセッサ及びその周辺回路を備える。処理部23は、サーバ装置20の全体的な動作を統括的に制御するものであり、例えば、CPUである。処理部23は、サーバ装置20の各種処理が記憶部22に記憶されているプログラム等に基づいて適切な手順で実行されるように、通信部21等の動作を制御する。処理部23は、記憶部22に記憶されているプログラム(オペレーティングシステムプログラムやドライバプログラム、アプリケーションプログラム等)に基づいて処理を実行する。また、処理部23は、複数のプログラム(アプリケーションプログラム等)を並列に実行することができる。
【0079】
処理部23は、例えば、送受信部24と、推定モデル生成部25と、推定部26と、通知情報生成部27と、を備える。これらの各部は、処理部23が備えるプロセッサで実行されるプログラムにより実現される機能モジュールである。あるいは、これらの各部は、独立した集積回路、マイクロプロセッサ、又はファームウェアとしてサーバ装置20に実装されてもよい。
【0080】
送受信部24は、送信部及び受信部としての機能を有し、各種の情報やデータを、通信部21を介して各BMS400等の他の情報処理装置に送信し、また、各種の情報やデータを、通信部21を介して各BMS400等の他の情報処理装置から受信する。送受信部24は、例えば、充放電データを各BMS400から受信する。また、送受信部24は、例えば、各種の通知情報を各BMS400に送信する。
【0081】
推定モデル生成部25は、各BMS400から受信した充放電データに基づいて、リチウム二次電池101の劣化指標を推定するための推定モデルを生成する。特に、推定モデル生成部25は、複数のBMS400から受信した充放電データを統合して、単一の推定モデルを生成してもよい。推定モデル生成部25は、例えば、充放電データに基づく回帰分析を実行することにより、回帰式モデルとしての推定モデルを生成してもよい。或いは、推定モデル生成部25は、例えば、充放電データに基づく機械学習を実行することにより、機械学習済みモデルとしての推定モデルを生成してもよい。
【0082】
ここで、
図6を参照して、充放電データのデータ構造を説明する。
図6は、本実施形態に係る充放電データのデータ構造の一例を示す図である。
図6に示すリストの各レコードは、BMS400が備えるリチウム二次電池101の充電又は放電の1サイクルに対応している。なお、充放電データは、更に、電圧センサ103が測定した電圧値、電流センサ102が測定した電流値、及び温度センサ104が測定した温度値の少なくともいずれかの、各サイクルにおける経時的変化のデータを含んでもよい。
【0083】
図6に示すように、充放電データは、例えば、「日時」、「状態」、「モード」、「サイクル数」、「総サイクル数」、「積算容量」、「経過時間」、「積算電力」、「平均電圧」、「ピーク電圧」、「OCV」、「終了条件」、及び充放電データを解析して得られた「解析データ」を含む。「日時」は、当該サイクルを実行した日時を示す情報である。「状態」は、当該サイクルについての充電又は放電の別を示す情報であり、例えば、1は充電を示し、2は放電を示す。「モード」は、充放電の繰り返しに関するモードの設定であり、例えば、「1」は単一の充放電サイクルを実行するモードを示し、「2」は複数の充放電サイクルを実行するモードを示す。「サイクル数」は、当該サイクルが、「モード」に示されるモードにおいて何回目のサイクルであるかを示す情報である。「総サイクル数」は、当該電源装置10において実行された通算の充放電サイクル数を示す情報である。「積算容量」は、当該レコードにおける充電により記録された充電容量、又は当該レコードにおける放電により記録された放電容量を示す情報である。「経過時間」は、当該サイクルにおける充電又は放電に要した時間である。「総経過時間」は、当該電源装置10の充電又は放電が開始されてから当該サイクルの充電又は放電が実行されるまでの通算の経過時間である。「積算電力」は、当該サイクルにおける充電により充電された電力、又は当該サイクルにおける放電により放電された電力を示す情報である。「平均電圧」は、当該サイクルにおける充電又は放電における電池モジュール100の平均電圧である。「ピーク電圧」は、当該サイクルにおける充電又は放電における電池モジュール100のピーク電圧(電圧の最大値)である。「OCV」は、当該サイクルにおける放電が終了してから所定時間が経過した後のOCVである放電後OCV、又は当該サイクルにおける充電が終了してから所定時間が経過した後のOCVである充電後OCVを示す情報である。ここで、OCVは、開回路電圧(Open Circuit Voltage)とも称され、電池の電極間に外部電源を接続し、電流を0Aにして自己放電しない時間範囲内で長時間緩和させたときの平衡電圧であってよい。なお、所定時間は、例えば、OCVが安定するために要する時間であってよい。「終了条件」は、当該サイクルの充放電の終了条件を示す情報である。終了条件は、例えば、リチウム二次電池101の電圧値が所定の値になったことを含んでもよいし、充放電が開始されてから所定時間が経過したことを含んでもよい。「解析データ」は前記の充放電データの解析により得られるデータで、例えば「直流抵抗」「dQ/dV」、「dQ/dV」の各ピーク位置、「dQ/dV」の各ピーク高さ、「dQ/dV」の各ピーク幅などを含む。「直流抵抗」は、ある時点における電圧とOCVの差を電流で除した数値である。「dQ/dV」は、電流値を時間当たりの電圧変化で除した数値である。そのピーク位置、ピーク幅、ピーク高さは、「dQ/dV」を電流、電圧またはそのほかのパラメータに対してプロットしたグラフにおけるピークの位置、幅、高さの情報である。
【0084】
推定モデルが回帰分析によって生成される場合、推定モデル生成部25は、例えば、充放電データに基づいて回帰分析における説明変数を設定し、また、充放電データに基づいて目的変数を設定してもよい。特に、推定モデル生成部25は、回帰分析において、充放電データに含まれる放電後OCVに基づくパラメータを推定モデルの説明変数に含めてもよい。パラメータは、例えば、後述するように劣化指標とよい線形性を示す「放電後OCV」であってもよく、特に、「放電後OCV」のみが推定モデルの説明変数であってもよい。この場合、推定モデルは、実質的には「放電後OCV」と劣化指標との間の関係性を示すグラフやテーブルとなる。或いは、パラメータは、例えば、後述するように劣化指標とよい線形性を示す「充電後OCV-放電後OCV」であってもよく、特に、「充電後OCV-放電後OCV」のみが推定モデルの説明変数であってもよい。この場合、推定モデルは、実質的には「充電後OCV-放電後OCV」と劣化指標との間の関係性を示すグラフやテーブルとなる。また、特に、推定モデル生成部25は、回帰分析において、充放電データに含まれる劣化指標を推定モデルの目的変数に含めてもよい。劣化指標は、例えば、リチウム二次電池101の「充放電容量」であってもよいし、「充放電容量」を「初期の充放電容量」で除した割合である「SOH(State of Health)」であってもよい。なお、BMS400の充放電データ生成部407は、サーバ装置20の推定モデル生成部25が回帰分析において扱う上述した説明変数及び目的変数を含む限り、充放電データを任意に構成してもよい。
【0085】
推定モデルが機械学習によって生成される場合、推定モデル生成部25は、例えば、充放電データに基づいて機械学習における入力を設定し、また、充放電データに基づいて機械学習における出力を設定してもよい。推定モデル生成部25は、機械学習において、充放電データに含まれる放電後OCVに基づくパラメータを推定モデルの入力に含めてもよい。パラメータは、例えば、「放電後OCV」であってもよいし、「充電後OCV-放電後OCV」であってもよい。
【0086】
なお、推定モデル生成部25は、上述した充放電データに加えて、各BMS400が管理する電池モジュール100、充電器200、及び負荷300等の仕様に関する情報に基づいて、推定モデルを生成してもよい。例えば、推定モデルが回帰分析によって生成される場合、推定モデル生成部25は、例えば、これら仕様に関する情報の少なくとも一部を回帰分析における説明変数に加えてもよい。また、推定モデルが機械学習によって生成される場合、推定モデル生成部25は、例えば、これら仕様に関する情報の少なくとも一部を機械学習における入力に含めてもよい。
【0087】
ここで、
図7及び8を参照して、リチウム二次電池101の劣化指標の線形性について説明する。本発明者らは、本実施形態に係るリチウム二次電池101のように、負極13に負極活物質を含まない場合、放電後OCVに基づくパラメータが、リチウム二次電池101の劣化指標とよい線形性を示すことを見出した。
【0088】
図7は、各種実施例に係るリチウム二次電池101の「放電後OCV」と「SOH」との特性情報を示す図である。各実施例の条件は、次の表1の通りである各実施例は、電池条件及び動作条件等によって規定されてよい。電池条件は、正極重量(mg/cm
2)及びセパレータの構成を含んでもよい。また、動作条件は、充電レート(C)及び放電レート(C)を含んでもよい。なお、上限電圧(充電を停止する電圧)は全て4.2Vであるものとし、下限電圧(放電を停止する電圧)は全て3Vであるものとした。表1において、セパレータ「A」は、PVDFをコートしたポリエチレン系セパレータを表す。
【0089】
【0090】
図7に示すとおり、実施例1~5に係る放電後OCV-SOH特性情報では、いずれも、「放電後OCV」と「SOH」との間に、各実施例の条件に応じて線形性が見られる。そのため、推定モデルが回帰分析によって生成される場合には推定モデルの説明変数として、或いは推定モデルが機械学習によって生成される場合には機械学習の入力として、「放電後OCV」を含めることにより、推定モデルによる劣化指標の推定値(例えば、SOH)の精度は向上するといえる。
【0091】
図8は、各種実施例に係るリチウム二次電池101の「充電後OCV-放電後OCV」と「充放電容量」との特性情報を示す図である。各実施例の条件は、次の表2の通りである。各実施例は、電池条件及び動作条件等によって規定されてよい。電池条件は、正極重量(mg/cm
2)及びセパレータの構成を含んでもよい。また、動作条件は、充電レート(C)及び放電レート(C)を含んでもよい。なお、上限電圧(充電を停止する電圧)は全て4.2Vであるものとし、下限電圧(放電を停止する電圧)は全て3Vであるものとした。表1において、セパレータ「B」は、アラミドをコートしたポリエチレン系セパレータを表し、セパレータ「C」は、セパレータ「A」とは異なる厚みでPVDFをコートしたポリエチレン系セパレータを表す。
【0092】
【0093】
図8に示すとおり、実施例6~10に係る「充電後OCV-放電後OCV」と「充放電容量」では、いずれも、「充電後OCV-放電後OCV」と「充放電容量」との間に線形性が見られる。そのため、推定モデルが回帰分析によって生成される場合には推定モデルの説明変数として、或いは推定モデルが機械学習によって生成される場合には機械学習の入力として、「充電後OCV-放電後OCV」を含めることにより、推定モデルによる劣化指標の推定値(例えば、SOH)の精度は向上するといえる。
【0094】
推定部26は、推定モデルを用いて、リチウム二次電池101の劣化指標の推定値を取得する。推定部26は、例えば、管理システム1を構成する任意のBMS400から、充放電データを取得し、当該充放電データを推定モデルに入力することにより、当該BMS400が管理するリチウム二次電池101の劣化指標の推定値を取得する。推定部26は、 所定の推定条件を満たす場合に、BMS400が管理するリチウム二次電池101の推定値を出力してもよい。
【0095】
通知情報生成部27は、推定値に基づいて所定の通知情報を生成する。ここで、通知情報の内容は劣化指標の推定値に基づけば特に限定されないが、例えば、当該推定値を示す情報、当該推定値の所定閾値との比較を示す情報、リチウム二次電池101の交換時期を示す情報、リチウム二次電池101の交換を促すメッセージ、リチウム二次電池101の運用に関するアドバイス等を含んでもよい。また、通知情報生成部27は、前記推定値に基づいて所定の通知条件を判定してもよく、所定の通知条件が満たされると判定した場合に、上記通知情報を生成してもよい。
【0096】
(4)動作処理
(4-1)推定モデルの生成処理
図9は、本実施形態に係る管理システム1による推定モデルの生成処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0097】
(S101)まず、BMS400の充放電制御部406は、電池モジュール100の充放電を実行する。充放電制御部406は、例えば、記憶部404に記憶された充放電に関する設定に基づいて、充電器200及び負荷300を制御して、電池モジュール100の充電及び放電を制御する。充放電に関する設定は、例えば、充放電の時間、充放電開始時の残存容量、充放電終了時の残存容量、充放電開始時の正極及び/又は負極の端子電圧、充放電終了時の正極及び/又は負極の端子電圧等を含んでもよい。充放電制御において、充放電制御部406は、電流センサ102から供給される電流値、電圧センサ103から供給される電圧値、及び温度センサ104から供給される温度値の少なくともいずれかを監視してよい。
【0098】
(S102)次に、BMS400の充放電データ生成部407は、ステップS101における充放電制御に基づいて充放電データを生成する。充放電データは、例えば、
図6に示すデータ構造を有してもよい。
【0099】
(S103)次に、BMS400の送受信部408は、ステップS102で生成された充放電データをサーバ装置20に送信する。サーバ装置20の送受信部24は、BMS400から当該充放電データを受信し、記憶部22に格納する。送受信部408が、充放電データを送信するタイミングや、送信する充放電データの単位は、任意に設定可能であってよい。充放電データを送信するタイミングは、特に限定されないが、例えば、サイクル数が所定閾値を上回ったとき、周期的又は非周期的な特定の日時、充放電容量が所定の閾値を下回ったとき、ユーザが操作部402を介して所定の操作を行ったとき、サーバ装置20からの要求をBMS400が受信したとき等であってよい。
【0100】
(S104)次に、サーバ装置20の推定モデル生成部25は、所定のタイミングで、各BMS400から供給された充放電データに基づいて、推定モデルを生成する。推定モデル生成部25は、例えば、各BMS400から供給された充放電データに基づく回帰分析を実行することにより、回帰式モデルとしての推定モデルを生成してもよい。或いは、推定モデル生成部25は、例えば、各BMS400から供給された充放電データに基づく機械学習を実行することにより、機械学習済みモデルとしての推定モデルを生成してもよい。推定モデルを生成するタイミングは、特に限定されないが、周期的又は非周期的な特定の日時等であってよい。
【0101】
(4-2)劣化指標の推定処理
図10は、本実施形態に係る管理システム1による劣化指標の推定処理の動作シーケンスの一例を示す図である。
【0102】
(S201)まず、サーバ装置20の推定部26は、所定のBMS400について劣化指標の推定についての所定条件が満たされる場合、推定モデルを用いて、当該所定のBMS400が管理するリチウム二次電池101の劣化指標の推定値を出力する。ここで、劣化指標の推定についての所定条件は、特に限定されないが、例えば、当該所定のBMS400から充放電データを受信したこと、周期的又は非周期的な特定の日時が到来したこと、当該特定のBMS400からの要求をサーバ装置20が受信したこと等を含んでもよい。
【0103】
(S202)次に、サーバ装置20の通知情報生成部27は、ステップS201で生成された劣化指標の推定値に基づいて通知情報を生成する。ここで、通知情報の内容は劣化指標の推定値に基づけば特に限定されないが、例えば、当該推定値を示す情報、当該推定値の所定閾値との比較を示す情報、リチウム二次電池101の交換時期を示す情報、リチウム二次電池101の交換を促すメッセージ、リチウム二次電池101の運用に関するアドバイス等を含んでもよい。
【0104】
(S203)次に、サーバ装置20の送受信部24は、生成された通知情報を、上述した所定のBMS400に送信する。所定のBMS400の送受信部408は、通知情報をサーバ装置20から受信する。
【0105】
(S204)次に、BMS400の出力制御部409は、出力部403に各種の情報を出力させる。例えば、出力部403が表示部として構成される場合、出力制御部409は、上記通知情報に基づいて映像データや画像データを生成し、当該映像データに基づく映像や画像データに基づく画像等を当該表示部に表示させる。また、出力部409が音声出力部として構成される場合、出力制御部409は上記通知情報に基づいて音声データを生成して、当該音声出力部に音声出力させる。これにより、出力部403からは、通知情報の内容として、当該推定値を示す情報、当該推定値の所定閾値との比較を示す情報、リチウム二次電池101の交換時期を示す情報、リチウム二次電池101の交換を促すメッセージ等が出力される。
【0106】
図11は、出力部403が表示部として構成される場合に、当該表示部に表示される通知情報の画面1000の一例を示す図である。
図11に示すように、画面1000には、充放電容量やSOHという劣化指標の推定値が含まれてよい。また、
図11に示すように、画面1000には、劣化指標の推定値に基づいた情報として、使用可能サイクル数や交換目安といった情報が含まれてよい。
【0107】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0108】
1…管理システム、10…電源装置、11…正極集電体、12…正極、13…負極、14…セパレータ、20…サーバ装置、21…通信部、22…記憶部、23…処理部、24…送受信部、25…推定モデル生成部、26…推定部、27…通知情報生成部、100…電池モジュール、101…二次電池セル、102…電流センサ、103…電圧センサ、200…充電器、300…負荷、400…バッテリ・マネジメント・システム(BMS)、401…通信部、402…操作部、403…出力部、404…記憶部、405…処理部、406…充放電制御部、407…充放電データ生成部、408…送受信部、409…出力制御部