(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】偽造防止シール
(51)【国際特許分類】
B41M 3/14 20060101AFI20240801BHJP
B42D 25/324 20140101ALI20240801BHJP
【FI】
B41M3/14
B42D25/324
(21)【出願番号】P 2023198494
(22)【出願日】2023-11-22
【審査請求日】2023-11-22
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523443205
【氏名又は名称】株式会社ゼータ
(74)【代理人】
【識別番号】110003476
【氏名又は名称】弁理士法人瑛彩知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】小池 清
【審査官】佐藤 孝幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-184036(JP,A)
【文献】特開2001-315472(JP,A)
【文献】特開昭62-131284(JP,A)
【文献】特開2007-229967(JP,A)
【文献】特公昭56-019273(JP,B2)
【文献】登録実用新案第3140937(JP,U)
【文献】特開2020-067800(JP,A)
【文献】特開2018-065266(JP,A)
【文献】特開2021-137981(JP,A)
【文献】特開2019-084719(JP,A)
【文献】特開2009-149043(JP,A)
【文献】特開2005-335153(JP,A)
【文献】特開2003-216045(JP,A)
【文献】特開2001-265224(JP,A)
【文献】特開2006-297684(JP,A)
【文献】特開2005-125684(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41M 3/14
B42D 25/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
裏面に接着剤が塗布され
、偽造防止対象物に貼付される透明なシール層と、
前記シール層の表面に積層され
、紫外線照射により硬化する透明
インクにより形成されるとともに、その一部に所定の文字列および図柄の少なくとも一方が有色インクにより印刷された下地層と、
前記下地層の表面に積層され、透明インクにより微細な凹凸模様が形成される光沢層と
を備え、
前記凹凸模様は、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の規則的な図柄を構成する図柄領域と、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の文字列を構成する文字領域とを含み
、
前記図柄領域および前記文字領域は、少なくとも一部が重なって
おり、
前記シール層は、前記偽造防止対象物である所定の証明書を覆うように貼付され、
前記シール層、前記下地層、および前記光沢層を通して、前記証明書の記載内容が確認できるように構成される、偽造防止シール。
【請求項2】
前記図柄領域を構成する前記万線は、前記文字領域を構成する前記万線と異なる方向に向けて延びている、請求項1に記載の偽造防止シール。
【請求項3】
前記図柄領域を複数備え、
互いに隣り合う前記図柄領域は、それぞれを構成する前記万線同士が、互いに異なる方向に向けて延びている、請求項1又は2に記載の偽造防止シール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、偽造防止シールに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、各種の証明書等に貼付される偽造防止媒体が知られている。特許文献1には、レーザ加工により立体画像を記録したホログラム構造体を用いた偽造防止媒体が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、ホログラム構造体の製作するレーザ加工は加工コストが嵩むため、汎用性に乏しいという側面があった。
【0005】
本開示は上記課題に鑑みてなされたものであり、安価かつ低廉な構成によりセキュアな偽造防止シールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の偽造防止シールは、シール層と、下地層と、光沢層とを備える。前記シール層は、裏面に接着剤が塗布された透明な層をなす。前記下地層は、前記シール層の表面に積層される透明な層をなす。前記光沢層は、前記下地層の表面に積層され、透明インクにより微細な凹凸模様が形成される層をなす。前記凹凸模様は、図柄領域と、文字領域とを含む。図柄領域は、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の規則的な図柄を構成する。文字領域は、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の文字列を構成する。前記図柄領域および前記文字領域は、少なくとも一部が重なっている。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、低廉な構成により実現可能な偽造防止シールを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1に示す偽造防止シールの使用状態を示す図である。
【
図2】
図1に示す偽造防止シールが使用される証明書の一例を示す図である。
【
図3】本開示の一実施形態に係る偽造防止シールの平面図である。
【
図4】
図3に示す偽造防止シールのIV-IV線矢視断面図である。
【
図5】
図3に示す偽造防止シールにおける符号Vの拡大図である。
【
図6】
図1に示す偽造防止シールの製造ラインを示す模式図である。
【
図7】
図1に示す偽造防止シールの印刷に用いる版の平面図である。
【
図8】
図7に示す製造ラインに投入される基材を示す図である。
【
図9】
図1に示す偽造防止シールの製造方法を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本開示の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図中、同一又は相当部分については同一の参照符号を付す。
【0010】
(1)偽造防止シール1の概要
本発明の一実施形態に係る偽造防止シール1の概要について、
図1および
図2を参照して説明する。
図1は、偽造防止シール1が使用されている証明書の一例を示す平面図である。
図2は、
図1に示す証明書の平面図である。
【0011】
図1に示すように、本実施形態に係る偽造防止シール1は、各種の証明書等に貼付されるシール部材である。偽造防止シール1は、貼付された証明書が真正であることを証明する機能を有する。すなわち、偽造防止シール1は、証明書の偽造を防止する目的で証明書に貼付される。これにより、偽造防止シール1を貼付するだけで、公的な証明書の偽造防止を実現することができる。
【0012】
このため、偽造防止シール1が貼付されていることにより、証明書が真正なものであることが確認される。偽造防止シール1は、複数の透明な層により構成され、光透過性を有しているので、偽造防止シール1を通して証明書の記載内容を確認できるように構成される。
【0013】
図2に示すように、証明書には、例えば以下の情報が記載される。
・証明書の名称
・被証明者の識別情報(氏名、住所、個人番号など)
・公的機関が認定する本人の被証明属性(資格、障碍者等級、所属機関など)
・証明書の発行に関する事項(発行元、発行日など)
なお、証明書への記載事項は、証明書の種類により任意に変更される。
【0014】
被証明者は、証明書を行政窓口に提示することにより、行政機関において以下の事項が承認される。
・被証明者が、所定の行動をすること、又はしないこと
・被証明者が、所定の物品又はサービスの提供を受けること
なお、証明書を保有することにより承認される事項は、証明書の種類により任意に設定される。
【0015】
図1に示すように、証明書は、偽造防止シール1が貼付された状態で、発行元から被証明者に交付される。偽造防止シール1は流通が制限されており、証明書の発行元以外が入手することは困難となっている。このため、偽造防止シール1の不正な使用が回避される。
【0016】
(2)偽造防止シール1の構成
次に、偽造防止シール1の構成について、
図3~
図5を参照して説明する。
図3は、
図1に示す偽造防止シール1の平面図である。
図4は、
図3に示す偽造防止シール1のIV-IV線矢視の断面分解図である。
図5は、
図3に示す符号Vの拡大図である。
【0017】
図3に示すように、偽造防止シール1には、特定の文字列と特定の図柄とが形成されている。
図4に示すように、偽造防止シール1は、シール層10と、下地層20と、光沢層30とを備える。偽造防止シール1は、シール層10を構成する粘着性のシールの表面に下地層20が印刷され、下地層20の表面に光沢層30が印刷されることにより形成される。各層の構造について詳述する。
【0018】
シール層10は、裏面に接着剤が塗布された透明なシールである。シール層10は、例えば無色透明なPET(ポリエチレンテレフタレート)材により構成される。シール層10は光透過性を有する。シール層10の裏面には接着剤が塗布されている。なお、シール層10は有色透明であってもよい。シール層10は、公的機関が発行する各種の証明書に貼付される。シール層10の厚みは、例えば数十μm~数百μmである。
【0019】
下地層20は、シール層10の表面に積層される透明な層である。下地層20は、透明なベースインクで印刷されるベース部21を有する。ベース部21は光透過性を有する。ベース部21の一部に、有色インクにより任意の文字列又は図柄が印刷されている。下地層20の厚みは、例えば数μm~数十μmである。
【0020】
図示の例では、平面視で矩形状を呈するベース部21の4つの角に、符号Lで示す「〇×市」という文字列が印刷されている(
図3参照)。下地層20に印刷される文字又は図柄は、有色インクにより印刷される。
【0021】
下地層20に用いられる有色インクの種類は特に限定されないが、紫外線硬化インク(UVインク)を用いることができる。UVインクを印刷したうえで紫外線を照射することで、硬化時間を短縮できるためである。また、後述する光沢層30に形成される万線による光沢感を十分に得るためには、なるべく艶を有するインクを使用することが好ましい。下地層20の表面には光沢層30が形成されるので、下地層20の表面は、極力凹凸が存在しない一様な面となることが望ましい。
【0022】
このように、下地層20の一部には、所定の文字列および図柄の少なくとも一方が有色インクにより印刷されている。このため、特定の情報を下地層20に印刷することで、偽造防止シール1の構造を複雑なものとすることができ、より一層セキュアなものにできる。
【0023】
図3に示すように、光沢層30は、下地層20の表面に積層される無色透明な層である。光沢層30には、下地層20の表面上にさらに透明インクが印刷される。このため、光沢層30は光透過性を有する。透明インクは例えば数十μm~数百μmといった所定の厚みを有するように印刷される。光沢層30には、透明インクにより微細な凹凸模様31をなす万線が形成される。万線の太さ、間隔、および深さは、例えば数十μm~数百μmである。
【0024】
万線とは、規則的に並んだ線の集まりを指す。万線は例えば一群の平行線により形成される。一群の平行線を構成する凸部32の太さ、間隔、および凹凸の深さを調整することで、透明な領域における局所的な透過性を変化させ、光沢の度合いに濃淡を表現することができる。光沢層30の表面の一部には、万線が形成されない平滑な部分が形成されてもよい。
【0025】
図4の拡大図で示す万線において、凸部32の高さおよび幅は、任意に設定することができる。透明インクは、光透過性が高いものが好ましい。透明インクには、下地層20に有色インクにより印刷された図柄および文字列を視認することが可能な淡色インクを用いても構わない。透明インクとしては、下地層20に用いた有色インクと同様に、UVインクを用い、紫外線照射により硬化させることで、製造時間を短縮させてもよい。
【0026】
凹凸模様31は、図柄領域33と文字領域34とを含む。図柄領域33には、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の規則的な図柄が構成されている。
【0027】
図3に示すように、本実施形態では、光沢層30の表面の全域に規則的に配置された格子状の図柄領域33が形成されている。複数の図柄領域33それぞれは、互いに同じ大きさで同じ形状となっている。このため、図柄領域33全体として、統一された図柄による美観が演出されている。
【0028】
一つの図柄領域33に含まれる一群の平行線は、互いに同じ方向を向いている。言い換えれば、光沢層30では、同じ方向を向いて延びる一群の平行線により、図柄領域33が画定されている。すなわち、
図3では、図柄領域33に含まれる平行線の一部の図示を省略しているが、実際には、矩形状を呈する一つの図柄領域33の内部には、同じ方向に延びる一群の平行線により占められている。
【0029】
文字領域34には、微細な凹凸により形成される一群の平行線が配置されることにより、所定の文字列が構成されている。本実施形態では、光沢層30の一部に、文字列「〇×CITY」を示す文字領域34が形成されている。文字領域34に含まれる一群の平行線は、互いに同じ方向を向いている。言い換えれば、光沢層30では、同じ方向を向いて延びる一群の平行線により、文字領域34が画定される。
【0030】
図5は、
図3に示す偽造防止シール1における符号Vの拡大図である。
図5に示すように、光沢層30において、互いに隣り合う図柄領域33は、それぞれを構成する一群の平行線が、互いに異なる方向に向けて延びている。これにより、光沢層30において、微細な凹凸がなす平行線により、精緻な図柄を形成することができる。
【0031】
また、光沢層30において、図柄領域33を構成する平行線は、文字領域34を構成する平行線と異なる方向に向けて延びている。これにより、光沢層30において、微細な凹凸がなす平行線により、精緻な文字列を視認可能に形成することができる。
【0032】
また、複数の文字領域34それぞれにおいて、文字領域34を構成する平行線は、互いに同じ方向に延びている。このため、隣り合う文字領域34において、一群の文字領域34により文字列「〇×CITY」が表現されていることを認識しやすくなっている。〇×CITYは証明書の発行元を示している。このため、偽造防止シール1に形成された文字領域34により証明書の発行元が真正であることを証明することができる。
【0033】
そして、本実施形態の偽造防止シール1では、図柄領域33および文字領域34は、少なくとも一部が重なっている。
図5の例では、図柄領域33A~33Dと、文字領域34とが重なっている。すなわち、本来は矩形領域である図柄領域33A~33Dは、文字領域34を除く形状となっている。
【0034】
このように、光沢層30では、透明なインクにより、特定の図柄と特定の文字列からなる複雑な模様が形成されている。これにより、より一層偽造しにくくすることが可能となり、安価かつ低廉な構成により、セキュアな偽造防止シール1を提供することができる。
【0035】
また、光沢層30の表面において、その表面に万線により形成される凹凸模様31が存在するため、凹凸模様31に入射・反射しながら光沢層30を透過する光を観察したときに、光沢が様々に変化し、高級感を表現することができる。
【0036】
そして、
図1に示すように、偽造防止シール1では、全ての層が透明に構成されているので、光沢層30において特定の図柄および文字列から成る模様が形成され、光沢感を有しているが、証明書の記載内容は十分に視認できるようになっている。
【0037】
(3)偽造防止シール1の製造方法
次に、偽造防止シール1の製造方法について、
図6~
図9を参照して説明する。
図6は、
図1に示す偽造防止シール1の製造ライン100を示す模式図である。
図7は、
図1に示す偽造防止シール1の印刷に用いる版41Cの平面図である。
図8は、
図7に示す製造ライン100に投入される基材2を示す図である。偽造防止シール1の製造方法を示すフロー図である。
【0038】
偽造防止シール1は、複数回にわたるフレキソ印刷により製造される。フレキソ印刷とは、凸版印刷の一種であり、樹脂等の軟質材料の版の凸部にインクを付着し、印刷対象である基材2にインクを転移させる印刷方法である。
【0039】
図6に示すように、製造ライン100は、第1印刷機110と、第2印刷機120と、第3印刷機130と、型抜き機140と、複数の搬送ローラ150とを備えている。第1印刷機110、第2印刷機120、第3印刷機130および型抜き機140は、この順番に前工程から後工程となるように配置されている。複数の搬送ローラ150により、第1印刷機110、第2印刷機120、第3印刷機130および型抜き機140が一連の製造ライン100となるように構成される。
【0040】
第1印刷機110は、シール層10の表面に、下地層20のベース部21として、透明なベースインクを印刷する印刷機である。第2印刷機120は、下地層20のベース部21の表面に、有色インクにより文字列Lを印刷する印刷機である。第3印刷機130は、下地層20の表面に、光沢層30を印刷する印刷機である。なお、第1印刷機110~第3印刷機130は、共通の構成を有しているため、具体的構成については、以下にまとめて説明する。
【0041】
各印刷機110~130は、フレキソ印刷機である。各印刷機110~130は、版胴40と、圧胴50と、アニックスロール60と、インクパン70とを備える。版胴40は、版41が取り付けられるローラ部材である。版胴40の外周面に版41が巻き付けられている。
【0042】
図7に示すように、版41には、印刷する図柄および文字列が形成されている。
図7に示す版41Cは、光沢層30の印刷に用いられる版41に該当する。版41は樹脂材料又はゴム材料により形成されている。版41の表面には、印刷する図柄および文字列に対応する凹凸が、仕上がり状態と反転されて形成されている。
【0043】
版41は、レーザ加工によって成形することにより制作される。これにより、細密な表面形状を実現できるとともに、版41の製造時において薬品を使用しないため、環境負荷が低いというメリットがある。
【0044】
圧胴50は、長尺状の基材2を版胴40に押圧しながら搬送する。これにより、基材2の表面にインクの転移が行われる。圧胴50の押圧力を調整することで、印刷の状態を調整することができる。
【0045】
インクとしてUVインクを用いる場合には、基材2にインクを転移した後に、紫外線ランプを照射してもよい。これにより、直ちにインクが硬化し、次の工程に連続的に進むことができる。
【0046】
インクパン70は、インクを貯留する容器である。インクパン70内には、各層を形成するインクが貯留されている。
【0047】
アニックスロール60は、インクパン70内のインクを版41の表面に転移するローラ部材である。アニックスロール60は、インクパン70内のインクを外周面に付着させることですくい上げ、版41の表面と接触することでインクを版41に転移する。搬送ローラ150は、長尺状の基材2を搬送するローラ部材である。
【0048】
型抜き機140は、製造ライン100の最下流に配置される。型抜き機140は、製造ライン100に投入される基材2から、偽造防止シール1の型抜きを行うとともに、基材2に含まれる台紙11を除去する。ここで、製造ライン100に投入される基材2について説明する。
【0049】
図8に示すように、基材2は、粘着シール10と台紙11とを含む。粘着シール10は、例えばPET(ポリエチレンテレフタレート)材のシール部材であり、接着剤が裏面に塗布されている。粘着シール10は台紙11に接着されている。粘着シール10の表面に下地層20が印刷される。すなわち、基材2の粘着シール10が、偽造防止シール1のシール層10となる。
【0050】
型抜き機140は、光沢層30の印刷が済んだ基材2に対して抜き加工を行う。抜き加工では、
図8に破線で示すように、偽造防止シール1の大きさに合わせた刃型を粘着シール10の表面にプレスして、粘着シール10に偽造防止シール1の外形に対応する切れ目を入れるようにハーフカットを行う。
【0051】
型抜き機140はさらに、ハーフカットを行った基材2に対してカス上げを行う。カス上げとは、粘着シール10のうち、偽造防止シール1の外側にあたる枠部分を除去する作業である。これにより、台紙11に対して複数の偽造防止シール1が並んだタックシールを得ることができる。
【0052】
次に、偽造防止シール1の製造フローについて説明する。
図9に示すように、偽造防止シール1の製造では、まず、版41の製作がおこなわれる(ステップS101)。版41の製作では、下地層20および光沢層30の印刷イメージに基づくレーザ加工により行われる。これにより、各印刷機110~130で用いられる版41A~41Cがそれぞれ製作される。
【0053】
製作した版41を各印刷機110~130に取り付けた状態で、基材2に対する下地層20の印刷が行われる(ステップS102)。下地層20の印刷ではまず、第1印刷機110を用いて、基材2における粘着シール10の表面に、透明なベースインクを用いたベース部21の印刷が行われる。その後、第2印刷機120を用いて、ベース部21の表面に有色インクを用いた文字列又は図柄の印刷が行われる。
【0054】
下地層20の印刷の後に、光沢層30の印刷が行われる(ステップS103)。光沢層30の印刷では、第3印刷機130を用いて、下地層20の表面に透明インクを用いた凹凸模様31の印刷が行われる。
【0055】
光沢層30の印刷の後に、抜き加工が行われる(ステップS104)。型抜き加工では、型抜き機140の刃型を、基材2の表面にハーフプレスすることで、偽造防止シール1の外形に対応する切れ目が入れられる。抜き加工では、その後にカス取りが行われ、偽造防止シール1が台紙11上に複数並んだタックシールが得られる。
【0056】
その後、タックシールは所定の長さに切断される。これにより、偽造防止シール1の製造が完了する。偽造防止シール1を使用する際には、タックシールから取り外された偽造防止シール1が、各種の証明書に貼付される。
【0057】
(4)変形例
以下に、本実施形態の変形例について説明する。
【0058】
本実施形態では、下地層20のベース部21が透明である構成を示したが、この限りではない。下地層20のベース部21は、透明でなくてもよい。すなわち、下地層20のベース部21には有色インクにより特定の文字列又は図柄が印刷されてもよい。この場合には、下地層20が透過性を有しないこととなる。このため、このような偽造防止シール1は、証明書の全体を覆うことなく、証明書の一部に貼付されることでその証明書が真正であることを証明する証票として使用することができる。
【0059】
また本実施形態では、偽造防止シール1が、シール層10と下地層20と光沢層30とを備える構成を示したが、この限りではない。すなわち、偽造防止シール1は、シール層10と光沢層30のみを備えてもよい。
【0060】
また本実施形態では、偽造防止シール1が各種の証明書に貼付される例を示したが、この限りではない。偽造防止シール1は、金券、入場券などの有価印刷物の他、高級感を付与することを目的として、名刺や広告用の印刷物など、各種の印刷物に貼付されてもよい。
【0061】
また、光沢層30に形成する万線の向きを組み合わせることにより、多種多様の形状の光沢層30を有してもよい。万線は直線に限らず、曲線であっても構わない。
【0062】
また、本実施形態ではフレキソ印刷を用いて偽造防止シール1を製造する製造方法を説明したが、この限りではない。偽造防止シール1の製造方法としては、各種の印刷方法を採用することができる。例えば、フレキソ印刷のように、インクを盛るように印刷することが可能なシルクスクリーン印刷を採用することができる。これらの印刷方法であれば、下地層20に所定の厚みを確保しつつ、光沢層30に立体的な凹凸模様31を形成することが可能なためである。
【0063】
また本実施形態では、シール層10が、裏面に接着剤が塗布された透明なシール部材である構成を示したが、この限りではない。すなわち、シール層10に代えてフィルム層を備える特殊包装フィルムも本発明に含まれる。特殊包装フィルムは、フィルム層と下地層20と光沢層30とを備える。下地層20および光沢層30の構成は、前述した実施形態と同様である。フィルム層は、接着剤が塗布されない透明なフィルム材により形成される。フィルム層は有色透明であってもよい。フィルム層の厚みは、例えば数十μmである。
【0064】
特殊包装フィルムは、例えば特定の商品を被覆する包装用紙として用いられる。これにより、特殊包装フィルムにより覆われた商品が真正であることを証明できるとともに、その商品に流通段階での意匠性を付与することができる。
【0065】
例えば、従来の包装用紙として、無地で無色透明なフィルム材が広く知られている。このような一般的な包装フィルムは無地で無色透明であるため、意匠性に乏しいという側面があった。本発明に含まれる特殊包装フィルムでは、光沢層の凹凸模様により光沢が様々に変化するので、流通段階の商品に高級感を演出することができる。
【0066】
また、光沢層の凹凸模様が図柄領域33および文字領域34を含むので、例えば商品の出所を表示する特定の標章を図柄領域33又は文字領域34に凹凸模様として印刷することで、流通段階の商品に対して出所表示機能を具備させることができる。またこれにより、被覆された商品が真正なものであることを証明することができる。
【0067】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について説明した。ただし、本発明は、上記の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の態様において実施できる。また、上記の実施形態に開示される複数の構成要素は適宜改変可能である。例えば、ある実施形態に示される全構成要素のうちのある構成要素を別の実施形態の構成要素に追加してもよく、又は、ある実施形態に示される全構成要素のうちのいくつかの構成要素を実施形態から削除してもよい。
【0068】
また、図面は、発明の理解を容易にするために、それぞれの構成要素を主体に模式的に示している。また、上記の実施形態で示す各構成要素の構成は一例であって、特に限定されるものではなく、本発明の効果から実質的に逸脱しない範囲で種々の変更、省略、および組み合わせが可能であることは言うまでもない。
【0069】
(5)付記
本開示に係る発明について、以下に付記する。
【0070】
(付記1)
裏面に接着剤が塗布された透明なシール層と、
前記シール層の表面に積層される透明な下地層と、
前記下地層の表面に積層され、透明インクにより微細な凹凸模様が形成される光沢層とを備え、
前記凹凸模様は、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の規則的な図柄を構成する図柄領域と、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の文字列を構成する文字領域とを含み
前記図柄領域および前記文字領域は、少なくとも一部が重なっている、偽造防止シール。
【0071】
(付記2)
前記図柄領域を構成する前記万線は、前記文字領域を構成する前記万線と異なる方向に向けて延びている、付記1に記載の偽造防止シール。
【0072】
(付記3)
前記図柄領域を複数備え、
互いに隣り合う前記図柄領域は、それぞれを構成する前記万線同士が、互いに異なる方向に向けて延びている、付記1又は2に記載の偽造防止シール。
【0073】
(付記4)
前記下地層の一部に、所定の文字列および図柄の少なくとも一方が有色インクにより印刷されている、付記1から3のいずれかに記載の偽造防止シール。
【0074】
(付記5)
前記シール層は、公的機関が発行する各種の証明書に貼付される、請求項1から4のいずれかに記載の偽造防止シール。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本開示は、偽造防止シールの分野に利用可能である。
【符号の説明】
【0076】
1:偽造防止シール
10:シール層
20:下地層
30:光沢層
31:凹凸模様
32:凸部
33:図柄領域
34:文字領域
40:版胴
41:版
50:圧胴
60:アニックスロール
70:インクパン
【要約】
【課題】安価かつ低廉な構成によりセキュアな偽造防止シールを提供する。
【解決手段】本開示の偽造防止シール1は、シール層10と、下地層20と、光沢層30とを備える。シール層10は、裏面に接着剤が塗布された透明な層をなす。下地層20は、シール層10の表面に積層される透明な層をなす。光沢層30は、下地層20の表面に積層され、透明インクにより微細な凹凸模様が形成される層をなす。凹凸模様31は、図柄領域33と、文字領域34とを含む。図柄領域33は、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の規則的な図柄を構成する。文字領域34は、微細な凹凸により形成される万線が配置されて、所定の文字列を構成する。図柄領域33および文字領域34は、少なくとも一部が重なっている。
【選択図】
図1