(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】平面密集玉軸受及びその製造方法、章動減速機
(51)【国際特許分類】
F16C 33/40 20060101AFI20240801BHJP
F16C 19/10 20060101ALI20240801BHJP
F16H 1/32 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
F16C33/40
F16C19/10
F16H1/32 C
(21)【出願番号】P 2023540643
(86)(22)【出願日】2022-11-11
(86)【国際出願番号】 CN2022131488
(87)【国際公開番号】W WO2023116253
(87)【国際公開日】2023-06-29
【審査請求日】2023-06-30
(31)【優先権主張番号】202111578984.8
(32)【優先日】2021-12-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】523231004
【氏名又は名称】姜 虹
【氏名又は名称原語表記】JIANG Hong
【住所又は居所原語表記】Main Campus Of Beijing Jiaotong University, Beijing 100081, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】王 小椿
【審査官】西藤 直人
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0010688(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第103016548(CN,A)
【文献】特開2006-70909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16C 19/10-19/12
F16C 33/38-33/44
F16H 1/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持器と、玉と、を含み、
前記保持器には、前記玉が設けられた複数組の玉入れ孔が形成され、
各組の前記玉入れ孔は、保持器の周方向に沿って楕円配列軌跡として形成され、
複数組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡は、同一の楕円中心を有し、かつ、各楕円配列軌跡の長軸は、同一直線にあり、
各隣り合う2組の前記玉入れ孔は、前記保持器の周方向に沿ってずれて配列され、
同一組の玉入れ孔は、前記楕円中心に対して中心対称である
ことを特徴とする平面密集玉軸受。
【請求項2】
各組の前記玉入れ孔の数はいずれも等しく、かつ、いずれか1組の玉入れ孔のうちのいずれか1つの玉入れ孔の、それに隣り合う1組の玉入れ孔のうちの最も近い2つの玉入れ孔からの距離が等しくなる
ことを特徴とする請求項1に記載の平面密集玉軸受。
【請求項3】
前記複数組の玉入れ孔の数はいずれも偶数である
ことを特徴とする請求項2に記載の平面密集玉軸受。
【請求項4】
前記複数組の玉入れ孔の組数はnであり、
第i組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はLiとし、第i-1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はL
i-1であり、
第i+1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はL
i+1であり、前記Li~L
i-1の差分値は、L
i+1~L
iの差分値よりも大きく、
第i組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はWiとし、第i-1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はW
i-1であり、前記第i+1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はW
i+1であり、前記Wi~W
i-1の差分値は、W
i+1~W
iの差分値よりも大きく、
前記i-1、i、i+1が配列されている順は、楕円中心から離れる方向であり、
前記
n-1≧i≧2であり、iは自然数である
ことを特徴とする請求項1に記載の平面密集玉軸受。
【請求項5】
前記保持器の両側には、円盤状の軌道部材が設けられ、
前記保持器上の前記玉は、2つの前記軌道部材の間に挟まれ、
各前記軌道部材は、前記玉の側に向かって平面軌道として形成される
ことを特徴とする請求項1に記載の平面密集玉軸受。
【請求項6】
最も内輪の1組の前記玉入れ孔のうち、前記楕円長軸からの距離が最も近い
、2つの楕円短軸の同一側の玉入れ孔から前記楕円長軸までの距離の比はL1:L2であり、
前記L1:L2は1:3である
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の平面密集玉軸受。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれか1項に記載の平面密集玉軸受を含む
ことを特徴とする章動減速機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸受の技術分野に係り、特に、平面密集玉軸受及びその製造方法、章動減速機に係る。
【背景技術】
【0002】
スラスト軸受は、各種の機械に広く応用されている。スラスト軸受の種類は多いが、軸方向における寸法がコンパクトであり、スラストの分布が均一であり、限界回転速度が高く、かつ一定の転覆モーメントを受けることができるスラスト軸受が非常に少ない。軌道付きのスラスト軸受の軸方向における寸法が大きすぎ、円筒ころスラスト軸受は純転がりではなく、摩擦が大きく、発熱が多いため、高速動作を必要とする場合に用いることができない。平面密集玉スラスト軸受のみが上記の要求を満たしている。
【0003】
円筒ころスラスト軸受に比べ、平面密集玉スラスト軸受の耐荷能力は相対的に弱いである。耐荷能力を向上させるために、限られた範囲内に可能な限り多くの玉粒を配置するとともに、隣り合う玉の間の距離が所定値以上であることを保証する必要がある。一方、玉と軌道とが点接触であり、接触応力が比較的大きいため、軌道の耐用年数を向上させるために軌道の各半径に配列された玉の数が可能な限り少なくすることが望ましい。それと同時に、高速動作の場合に、特に軸受の軸線が運転しながら揺動する場合は、軸受を章動減速装置に用いると、動的バランスに寄与するために玉の分布が中心対称であることを望ましい。上記の要求を同時に満たすために、玉の保持器における配置案に対して厳しい要求が提出された。平面密集玉スラスト軸受が章動減速装置に用いられる場合は、保持器にも、慣性モーメント及びジャイロモーメントが発生し、これらのモーメントに対しバランスをとるために軌道が保持器に与える正圧力が必要であるため、保持器と軌道との間の摩擦の回避が困難である。どのように摩擦抵抗モーメントを減少させるかは、保持器の形状の設計への挑戦となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これに鑑み、本発明は、従来の平面密集玉スラスト軸受保持器の玉の配列が多すぎると、軌道の疲労孔食が発生し、配列が少なすぎると、スラスト軸受の耐荷能力が弱いという問題を解決するために、平面密集玉軸受及びその製造方法を開示する。
本発明は、上記目的を実現するために、以下の技術案を採用した。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1態様には、
保持器と、玉と、を含み、前記保持器には、前記玉が設けられた複数組の玉入れ孔が形成され、各組の前記玉入れ孔は、保持器の周方向に沿って楕円配列軌跡として形成され、複数組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡は、同一の楕円中心を有し、かつ、各楕円配列軌跡の長軸は、同一直線にあり、各隣り合う2組の前記玉入れ孔は、前記保持器の周方向に沿ってずれて配列され、同一組の玉入れ孔は、前記楕円中心に対して中心対称である平面密集玉軸受が開示された。
【0006】
さらに、各組の前記玉入れ孔の数はいずれも等しく、かつ、いずれか1組の玉入れ孔のうちのいずれか1つの玉入れ孔の、それに隣り合う1組の玉入れ孔のうちの最も近い2つの玉入れ孔からの距離が等しくなってもよい。
さらに、前記複数組の玉入れ孔の数はいずれも偶数であってもよい。
【0007】
さらに、前記複数組の玉入れ孔の組数はnであり、第i組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はLiとし、第i-1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はLi-1であり、前記第i+1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はLi+1であり、前記Li~Li-1の差分値は、Li+1~Liの差分値よりも大きく、第i組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はWiとし、第i-1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はWi-1であり、前記第i+1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はWi+1であり、前記Wi~Wi-1の差分値は、Wi+1~Wiの差分値よりも大きく、前記i-1、i、i+1が配列されている順は、楕円中心から離れる方向であり、前記n≧i≧2であり、iは自然数であってもよい。
【0008】
さらに、前記保持器の両側には、円盤状の軌道部材が設けられ、前記保持器上の前記玉は、2つの前記軌道部材の間に挟まれ、各前記軌道部材は、前記玉の側に向かって平面軌道として形成されてもよい。
【0009】
さらに、最も内輪の1組の前記玉入れ孔のうち、前記楕円長軸からの距離が最も近い2つの同一側の玉入れ孔から前記楕円長軸までの距離の比はL1:L2であり、
前記L1:L2は1:3であってもよい。
【0010】
さらに、前記保持器の2つの側面のそれぞれには、前記保持器の周方向に沿って回られる複数の環状波状突起が形成され、前記環状波状突起の山部と谷部は、径方向に沿って延びられ、同一側に隣り合う2つの環状波状突起の間には、隙間が形成され、かつ、前記隙間に環状波状溝が形成され、前記環状波状突起は、前記平面軌道と油膜を形成するために用いられてもよい。
【0011】
さらに、前記保持器の材料は、繊維強化複合材であってもよい。
【0012】
さらに、前記保持器は、繊維強化複合材で形成された繊維が巻回されて形成されたものであり、かつ、前記繊維が保持器の周方向に沿って交差するように分布されてもよい。
【0013】
本発明の第2態様には、請求項9に記載の平面密集玉軸受の製造方法であって、
S1:金型において、複数組の玉入れ孔の位置に応じて、複数組の巻回柱が対応的に設けられ、各組の巻回柱が楕円配列軌跡に従って配列され、最も内側の1組の巻回柱をA1と記し、最も内側の1組の巻回柱から最も外側の1組の巻回柱までがそれぞれ順に、A1、A2……Anであり、nが3以上の整数であり、
S2:A1~An組の巻回柱の順に、内から外へ交錯して巻回させて、前記A1組の巻回柱のうちのいずれかの巻回柱の楕円軌跡の中心に近い側を巻き始めとし、前記繊維を採用して、前記巻き始めから、An組の巻回柱に巻回されるまで、保持器の周方向に沿って同一方向に向かって交錯して巻回させ、繊維が同一組の2つの巻回柱を通過するたびに、前記同一組に隣り合う1組の巻回柱に向かって同一方向に従って同じように巻回させ、少なくとも交錯してAn組の2つの巻回柱を通過し、
そして、An~A1組の巻回柱の順に、外から内へ交錯して巻回させ、An組の2つの巻回柱を経過した後、A1組の巻回柱の楕円軌跡の中心に近い側に巻回されるまで、繊維が同一組の2つの巻回柱を通過するたびに、前記同一組に隣り合う1組の巻回柱に向かって同一方向に従って同じように巻回させ、
S3:ステップS2の巻回す方式を同一方向に繰り返し、所定の厚さになると、巻回すことを停止させ、
S4:エポキシ樹脂を注入して硬化させ、離型させることを含むことが開示された。
【0014】
さらに、S2ステップにおいて、繊維の内側の玉の総数といずれか1組に巻回柱の数とは公約数を有する場合、繊維が、ステップS2を繰り返して、巻回が前記いずれか1組に含まれる巻回柱を通過する時に、交錯して巻回され、回される巻回柱の数が前記いずれか1組に含まれる巻回柱の数よりも1個多くなってもよい。
【0015】
さらに、前記S2ステップにおいて、An組の巻回柱に巻回される時に、An組を交錯して通過する巻回柱の数は3個であってもよい。
【0016】
本発明の第3態様には、第1態様に記載の平面密集玉軸受を含む。
【発明の効果】
【0017】
本発明には、隣り合う2組の玉入れ孔がずれて配列されて配置され、同一組の玉入れ孔内の玉が楕円に従って配列されることにより、スラスト軸受の耐用年数を向上させ、平面密集玉軸受の軌道での早期の疲労孔食が発生することを回避するとともに、玉が楕円に従って配列されることにより、隣り合う玉入れ孔の間の距離が所定値以上であることを保証する上で、同一組の玉入れ孔は可能な限り多く配列され、軸受の耐荷能力を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付図面を参照しながら、それに例示された実施例について詳細に説明することにより、本発明が開示する上記と他の目的、特徴及び利点はさらに明確になる。以下で説明される図面は、本発明が開示するいくつかの実施例に過ぎず、当業者にとっては、創造的な労力を必要とせずに、これらの図面から他の図面を得ることができる。
【
図1】本発明の平面密集玉軸受の実施例の全体構造を示す斜視図である。
【
図2】本発明の平面密集玉軸受の実施例の全体構造を示す正面図である。
【
図3】本発明の平面密集玉軸受の製造方法の実施例における保持器が繊維の巻回の工程を採用した概略図であり、同図は、内側の1つの巻回柱を巻き初めとして、一周に巻回される経路のみを示している。
【
図4】本発明の平面密集玉軸受が章動歯車減速機の実施例3に適用される全体構造を示す概略図である。
【
図7】本発明の章動減速機の実施例における予備延長された環状弾性フィルムの実施例を示す斜視図である。
【
図8】
図7における予備延長された環状弾性フィルムの実施例の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、本発明の実施例の目的、技術案及び利点をより明確にするために、本発明の実施例における図面を参照しながら、本発明の実施例における技術案を明確かつ完全に説明し、ここで、説明された実施例は本発明の実施例の一部であり、全ての実施例ではないことは明らかである。創造的の労働をしない前提に、本発明における実施例に基づいて当業者が得られた全ての他の実施例は、いずれも本発明の特許請求の範囲に含まれる。
【0020】
本発明の実施例において使用される用語は、特定の実施例を説明するためのみを目的として、本発明を限定することを意図していない。文脈から他の意味が明確に示されていない限り、本発明の実施例及び特許請求の範囲において使用される単数形式の「1種」、「前記」及び「該」は、複数形式を含むことを意図し、「複数種」は、通常少なくとも2種を含むが、少なくとも1種を含む場合もある。
【0021】
本明細書中に使用される「及び/又は」という用語について、関連対象の関連関係を説明するものだけであり、3種の関係が存在可能であることを示しており、例えば、A及び/又はBは、Aが単独で存在する場合、AとBが同時に存在する場合及びBが単独で存在する場合という3種の場合を示し得ることが理解されるべきである。また、本明細書中に、「/」という符号は、通常、前後の関連対象が「又は」の関係であることを示す。
【0022】
また、「含む」という用語又はその他のいずれかの変形について説明すべきであることは、非排他的な「含む」を包括することによって、一連の要素を含む商品やシステムが、それらの要素を含むだけでなく、明示的に列挙されていない他の要素も含まれるように、又は、このような商品又はシステムに固有された要素も含まれるようにすることを意図している。「1つの…を含む」という文によって限定された要素は、さらなる制限がない限り、前記要素を含む商品又はシステムにおいて、別の同じ要素が存在することを排除するものではない。
【0023】
従来の平面密集玉スラスト軸受保持器の玉の配列が多すぎると、軌道の疲労孔食が発生し、配列が少なすぎると、スラスト軸受の耐荷能力が弱いであるとともに、機械的加工により保持器複合材板材で保持器を製造し、保持器上の密集的な玉入れ孔が繊維骨格をミリメートルレベルの短繊維に切断させるため、繊維骨格の剛性及び強度を深刻に弱めるという問題を解決する。
【0024】
本発明の平面密集玉軸受は、同一組の玉が楕円の配列方式を採用することにより、スラスト軸受の軌道に早期の疲労孔食が発生しやすいという問題を解決しているが、隣り合う2組の玉がずれて配列されることにより、より多くの玉を配列させ、玉を保持器により均一に分布させることができるため、スラスト軸受の耐荷力を向上させることができる。本発明のスラスト軸受保持器の製造方法は、特殊的な互いずれに巻回させるようにすることにより、繊維の各輪に巻回される軌跡は、いずれも重ね合わせずに交錯して配列されているため、保持器の強度及び剛性を大幅に向上させた。
【0025】
本発明の技術案をより詳細に説明するために、
図1~
図9に合わせて、以下の具体的な実施例を提供する。
【0026】
(実施例1)
本実施例には、
図1及び
図2に示すように、保持器200と、玉202と、を含み、保持器200には、玉202が設けられる複数組の玉入れ孔201が形成され、各組の前記玉入れ孔201は、保持器200の周方向に沿って楕円配列軌跡として形成され、複数組の玉入れ孔201により形成された楕円配列軌跡は、同一の楕円中心Oを有し、かつ、各楕円配列軌跡の長軸は、同一直線にあり、各隣り合う2組の玉入れ孔201は、保持器200の周方向に沿ってずれて配列され、同一組の玉入れ孔201は、前記楕円中心Oに対して中心対称である、平面密集玉軸受を提供している。
さらに、本実施例の保持器200は、中空の円盤構造であってもよい。
【0027】
本実施例における平面密集玉軸受は、平面を玉202の軌道とし、軌道は、平面密集玉軸受に載置された部品に形成されてもよく、本実施例の平面密集玉軸受上の一部であってもよく、すなわち、保持器200の両側に円盤状の軌道部材(図示せず)が設けられ、保持器200上の前記玉は、2つの前記軌道部材の間に挟まれ、各軌道部材は、前記玉の側に向かって平面軌道として形成される。
【0028】
同一組の玉及び玉入れ孔は、楕円の配列を採用することにより、玉を平面軌道上に転動させる時に、同一の直径には、2つの玉のみがあることに対して、従来の真円の玉配列では、同一の直径の軌道上の玉数は、玉の合計数から玉の層数を割って得られたものであるので、楕円に配列された玉を採用することにより、玉が軌道上を転動することによる疲労孔食の早期の発生を回避することができる。
【0029】
好ましくは、各組の玉入れ孔201の数はいずれも等しく、かつ、いずれか1組の玉入れ孔201のうちのいずれか1つの玉入れ孔201の、それに隣り合う1組の玉入れ孔201のうちの最も近い2つの玉入れ孔201からの距離が等しくなる。それにより、玉が可能な限り多く配列されるため、玉の分布をより密集させることにより、耐荷力を向上させることができる。
【0030】
さらに、前記複数組の玉入れ孔の組数はnであり、第i組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はLiとし、第i-1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はLi-1であり、前記第i+1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の長軸はLi+1であり、前記Li~Li-1の差分値は、Li+1~Liの差分値よりも大きく、第i組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はWiとし、第i-1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はWi-1であり、前記第i+1組の前記玉入れ孔により形成された楕円配列軌跡の短軸はWi+1であり、前記Wi~Wi-1の差分値は、Wi+1~Wiの差分値よりも大きく、前記i-1、i、i+1が配列されている順は、楕円中心から離れる方向であり、前記n≧i≧2であり、iは自然数である。各組の玉の数が同じである場合に、玉を可能な限り均一に分布させることにより、耐荷能力を向上させる。
【0031】
好ましくは、複数組の玉入れ孔201の数はいずれも偶数であり、これにより、保持器200が高回転速度である場合の動的アンバランスを低減することができる。
【0032】
好ましくは、
図2に示すように、最も内輪の1組の前記玉入れ孔のうち、前記楕円長軸からの距離が最も近い2つの同一側の玉入れ孔から前記楕円長軸までの距離の比はL1:L2であり、前記L1:L2は1:3であり、これにより、複数組の玉の配列のうち、隣り合う2組の玉を可能な限り交錯して配列することができる。
【0033】
好ましくは、本実施例のいずれか1組の玉入れ孔のうちの1つの玉入れ孔は、それに隣り合う別の1組の玉入れ孔のうちの最も近いとの距離は玉の直径の2倍より小さくすることにより、玉を密着に配列することを確保することができる。
【0034】
好ましくは、保持器の2つの側面のそれぞれには、前記保持器の周方向に沿って回られる複数の環状波状突起(図示せず)が形成され、環状波状突起の山部と谷部は、径方向に沿って延びられ、同一側に隣り合う2つの環状波状突起の間には隙間を空けて、環状波状溝が形成され設けられており、環状波状突起は、平面軌道と油膜を形成するために用いられており、これにより、保持器の回転中の摩擦損失を低減するとともに、玉に対して潤滑の役割を果たす。
【0035】
保持器の材料は、繊維強化複合材である。具体的には、保持器は、繊維強化複合材で形成された繊維が巻回されて形成されたものであり、かつ、繊維が保持器の周方向に沿って交差するように分布されている。
【0036】
(実施例2)
本実施例は、
図3に示すように、実施例1を例とする平面密集玉軸受の製造方法を提供し、前記製造方法は以下の内容を含む。
【0037】
S1:複数組の玉入れ孔の位置に応じて、金型において複数組の巻回柱が対応的に設けられ、各組の巻回柱が楕円配列軌跡に従って配列され、最も内側の1組の巻回柱をA1と記し、最も内側の1組の巻回柱から最も外側の1組の巻回柱までがそれぞれ順に、A1、A2……Anであり、nが3以上の整数であり、
S2:A1~An組の巻回柱の順に、内から外へ交錯して巻回させて、A1組の巻回柱のうちのいずれかの巻回柱を巻き始めとし、巻き始めが楕円軌跡の中心側に近く、前記巻き始めから、An組の巻回柱に巻回されるまで、前記繊維を採用して、保持器の周方向に沿って同一方向に向かって交錯して巻回させ、繊維が同一組の2つの巻回柱を通過するたびに、該組に隣り合う1組の巻回柱に向かって同一方向に従って同じように巻回させ、少なくとも交錯して2つのAn組の巻回柱を通過し、
そして、An~A1組の巻回柱の順に、内から外へ交錯して巻回させ、2つのAn組の巻回柱を経過した後、A1組の巻回柱の楕円軌跡の中心に近い側に巻回されるまで、繊維が同一組の2つの巻回柱を通過するたびに、該組に隣り合う1組の巻回柱に向かって同一方向に従って同じように巻回させ、
S3:ステップS2の巻回す方式を同一方向に繰り返し、所定の厚さになると、巻回すことを停止させ、
S4:エポキシ樹脂を注入して硬化させ、離型させる。
【0038】
さらに、S2ステップにおいて、繊維の内側の玉の総数といずれか1組の巻回柱の数とは公約数を有する場合、ステップS2を繰り返して繊維の巻回が該組の巻回柱を通過する時に、交錯して巻回され、回される巻回柱の数が1個多くなる。それにより、一周が巻回されたごとに繊維の軌跡が前回と重ね合わせず、複数回繰り返されると、各巻回柱のいずれの周りにも交錯していた繊維が分布されることが可能であり、これにより、玉入れ孔の剛性及び強度を向上させる。図におけるE、Fの両点は、ステップS2の、外へ向いて巻回させ、内側に巻回され戻された一回の始点及び終点として、繊維の内側の巻回柱の総数と、いずれか1組の巻回柱の数とは公約数を有し、上記方式に従って回られる巻回柱の数を増加させる。
【0039】
さらに、前記S2ステップにおいて、An組の巻回柱に巻回される時に、交錯してAn組を通過する巻回柱の数は3個であってもよい。
【0040】
機械で保持器を切削加工する方式に比べ、交錯して巻回させる本実施例の方式を採用することは、保持器がより高い強度及び剛性を有することにより保持器の耐用年数を向上させる。
【0041】
(実施例3)
本実施例は、実施例1を例とする前記平面密集玉軸受を含む、章動減速機を提供している。
【0042】
具体的には、
図4~
図9に示すように、前記章動減速機は、ケース300と、ケース300内に設けられた2対の章動歯車対であって、各対の章動歯車対は、章動歯車400及び非章動歯車500により噛み合って形成され、非章動歯車500は、ケース300内に固設されるか又はケース300と一体成形され、各対の章動歯車対において、章動歯車400の歯数は、非章動歯車500の歯数よりも1つ多くなる2対の章動歯車対と、前記ケース300内に転設される減速機の出力軸301と、2つの予備延長された環状弾性フィルムであって、各環状弾性フィルムは、内環101、外環102及び内環101と外環102との間に接続された環状弾性体103を有し、内輪101及び外輪102には、それぞれの周方向に沿って複数のヒンジ孔が設けられ、各章動歯車対における章動歯車は、第1ヒンジボルトにより環状弾性フィルム上の外輪102に固定接続され、かつ第1ヒンジボルトは、外輪102のヒンジ孔を貫通して外輪102のヒンジ孔と係合され、減速機の出力軸301は、第2ヒンジボルトにより環状弾性フィルム上の内輪101に固定接続され、かつ第2ヒンジボルトは、内輪101のヒンジ孔を貫通して内輪101のヒンジ孔と係合されることにより、前記環状弾性フィルムは、前記章動歯車が章動運動を行う時に、環状弾性体103により発生された弾性変形を利用して、章動歯車の章動運動を前記減速機の出力軸の単一の回転運動に変換させる2つの予備延長された環状弾性フィルムと、ケース300内に設けられる章動発生機構であって、2対の章動歯車対は、章動発生機構の両側に対称的に設けられ、章動発生機構は、章動歯車400を章動運動するように駆動させることにより、章動歯車400の歯を非章動歯車500の歯に転動させるために用いられる章動発生機構と、を含む。
【0043】
本実施例では、第1ヒンジボルトと外輪のヒンジ孔とが係合され、かつ第2ヒンジボルトと内輪のヒンジ孔とが係合されることにより、環状弾性フィルムの径方向にける位置決めとトルクの伝達を実現する。好ましくは、第1ヒンジボルトと外輪のヒンジ孔は、すきま嵌めを採用し、第2ヒンジボルトと内輪のヒンジ孔とは、すきま嵌めを採用することができる。
【0044】
なお、本実施例における章動歯車400の歯及び非章動歯車500の歯は、それぞれの歯付きディスクの側の端面に形成され、それぞれの歯は、いずれもぞれぞれの歯付きディスクの径方向に沿って延びられ、それぞれの歯の縦断面積は、歯先から歯底まで徐々に大きくなり、ぞれぞれの歯の横断面積は、それぞれの歯付きディスクの径方向に沿って外から内へ徐々に小さくなり、歯幅は歯内円端面と歯外円端面との距離である。
【0045】
さらに、章動歯車400の歯及び非章動歯車500の歯は、それぞれの歯付きディスク端面の側に分布され、章動歯車400の歯の幅方向は、章動歯車400の径方向と同一であり、非章動歯車500の歯の幅方向は、非章動歯車500の径方向と同一であってもよい。
【0046】
章動発生機構は、ケース300内の減速機の出力軸301に転設される斜板600であって、斜板600の両側には対称な斜面601が設けられ、斜板600が駆動機構により回転するように駆動される斜板600と、斜板600と各対の章動歯車対の章動歯車400との間に設けられる平面密集玉軸受200であって、斜板600の両側面と2対の前記歯車対のそれぞれの前記章動歯車400の裏面が平面密集玉軸受200の軌道とする平面密集玉軸受200とを含み、2対の章動歯車対の2つの章動歯車400の歯数が等しく、2対の章動歯車対の2つの非章動歯車500の歯数が等しく、斜板600が回転する場合に、斜板600の両側の斜面601が章動歯車400を章動運動するように駆動させることにより、章動歯車400の歯を非章動歯車500の歯に転動させる。章動歯車対の2つの非章動歯車500の歯数が等しいことにより、出力された回転速度が同一であり、2つの章動歯車400の章動角が同一であることを保証することができ、さらに、同一の斜板600が2つの章動歯車400を同時に章動運動するように駆動させることを実現するとともに、斜板600の両側の応力が不均一の問題を相殺し、斜板600の軸線を減速機の出力軸と同軸であるように保持させた。
【0047】
前記駆動機構は、モータ及び伝動機構を含み、伝動機構は、伝動歯車を含み、斜板600の外周には、その周方向に沿って均一に分布される複数の歯車歯が形成され、モータ軸には、歯車が固設され、歯車は、斜板600上の歯車歯と噛み合って伝動する。
【0048】
本実施例における斜板600の斜面は、平面密集玉軸受により章動歯車400を動くように駆動させ、平面密集玉軸受は、複数組の配列された玉を有し、斜板600の斜面と章動歯車400の裏面とは、平面密集玉軸受の軌道として、軌道は平面軌道であり、これにより、章動歯車400の裏面及び斜面に早期の疲労孔食が発生することを回避することができ、これは、平面密集玉軸受の玉が楕円軌跡に応じて配列され、玉の配列が密着であることにより、平面密集玉軸受の耐荷力を増加させたためである。
【0049】
以上、本開示の例示的な実施例について具体的に示して説明した。理解できるように、本開示は、ここで説明された詳細な構造、設置方式又は実現方法に限定されるものではなく、それに対し、本開示は、特許請求の範囲の要旨及び範囲内に含まれる種々の変更及び等価設定を包括することを意図する。
【符号の説明】
【0050】
200 保持器
201 玉入れ孔
202 玉
203 楕円
O 楕円中心
204 繊維
205 巻回柱