(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理システム及びプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20240801BHJP
B22D 17/32 20060101ALI20240801BHJP
B29C 39/44 20060101ALI20240801BHJP
B29C 49/78 20060101ALI20240801BHJP
【FI】
B29C45/76
B22D17/32 J
B29C39/44
B29C49/78
(21)【出願番号】P 2023559646
(86)(22)【出願日】2022-11-08
(86)【国際出願番号】 JP2022041605
(87)【国際公開番号】W WO2023085283
(87)【国際公開日】2023-05-19
【審査請求日】2023-10-30
(31)【優先権主張番号】P 2021182728
(32)【優先日】2021-11-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】520359240
【氏名又は名称】株式会社MAZIN
(74)【代理人】
【識別番号】100174137
【氏名又は名称】酒谷 誠一
(72)【発明者】
【氏名】角屋 貴則
(72)【発明者】
【氏名】内山 祐介
(72)【発明者】
【氏名】岡 宏樹
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/091191(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0158985(US,A1)
【文献】特開2019-014187(JP,A)
【文献】特開2020-062848(JP,A)
【文献】特開平07-205230(JP,A)
【文献】畠山歓,材料科学における機械学習の利用と課題,日本神経回路学会誌,日本,2021年03月05日,28巻1号,p.20-27,https://www.jstage.jst.go.jp/article/jnns/28/1/28_20/_pdf/-char/ja
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 45/00-45/84
B22D 17/00-17/32
B29C 39/00-39/44
B29C 49/00-49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システムであって、
所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置と、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、
を備える情報処理システム。
【請求項2】
前記少なくとも一つの設定条件は、射出速度、VP切替位置、保圧及び保圧時間のうち少なくとも一つである、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項3】
前記記憶装置には、前記基準波形データが複数記憶されており、
前記成形条件提供部は、前記複数の基準波形データに対応する複数の設定条件から良品が出る設定条件範囲を複数特定し、特定した複数の設定条件範囲から一つの設定条件範囲を選択し、当該選択した設定条件範囲に基づいて設定条件の値を出力する
請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項4】
前記記憶装置には、樹脂の種類または樹脂の特性毎に機械学習モデルが記憶されている、請求項1から3のいずれか一項に記載の情報処理システム。
【請求項5】
前記成形条件提供部は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の物性に応じた機械学習モデルを前記記憶装置を参照して選択し、当該選択した機械学習モデルを用いて、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項6】
前記成形条件提供部は、前記成形機に設けられたモータの特性値及び/または
前記成形機を制御するコントローラに格納されている前記モータの特性値を用いて、前記成形機の前記樹脂の物性を推定し、当該推定した樹脂の物性に応じた機械学習モデルを用いて、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項4に記載の情報処理システム。
【請求項7】
前記記憶装置には、樹脂の種類または樹脂の物性が入力パラメータに含まれる機械学習モデルが記憶されている、請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項8】
前記成形条件提供部は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の物性に基づいて、樹脂の種類または樹脂の特性を前記機械学習モデルに入力することにより、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項9】
前記成形条件提供部は、前記成形機に設けられたモータの特性値及び/または
前記成形機を制御するコントローラに格納されている前記モータの特性値を用いて、前記成形機の前記樹脂の物性を推定し、当該推定した樹脂の物性を機械学習モデルに入力して、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する
請求項7に記載の情報処理システム。
【請求項10】
当該情報処理システムは1または複数の情報処理装置から構成されている請求項1に記載の情報処理システム。
【請求項11】
所定の成形品の良品成形時に成形機または型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置を参照可能なコンピュータに、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成型時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順、
を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理システム及びプログラムに関し、特に成形機の成形条件設定に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、溶かした樹脂(プラスチック)等を成形機の型に供給することにより成形品を成形する方法においては、複数ある成形条件を少しずつ調整しながら良品が成形できる条件を探していく。
この条件調整は、朝一番の生産開始前の立ち上げ時(最初は緩めの条件で開始したり)や、周辺環境の変化があった時などに発生する。
例えば、射出成形では溶かした樹脂の状態が非常に重要であり、溶かした樹脂は周辺環境(例えば温湿度など)の影響を受けるため、同じ成形条件で成形しても良品となる場合と不良品となる場合がある。また、樹脂のロットにより樹脂の物理特性にバラツキがある場合や国内工場で使用している金型を海外工場で使用する場合、環境やそもそもの成形機の違いにより成形条件調整を行う必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-030152号公報
【文献】特開2020-049929号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、その都度、熟練者が成形品の状態を見ながら成形条件の微調整をしていることが多く、熟練者が不在の場合には難航するし、熟練技術の習得には時間がかかる。
【0005】
そのため、成形条件設定は勘や経験に依存するところが多く、熟練の作業者でないと設定に時間がかかるという課題があった。また、条件設定のために行う成形はすべて無駄となってしまったり、作業者によって設定する条件がばらつくと、成形品の品質にもばらつきが生じてしまうという問題点もあった。
【0006】
ここで、成形時の物理量データから調整すべき成形条件とその調整量をAI(人工知能)による機械学習を用いて算出して出力する技術が開示されている(特許文献1参照)。
また、上記の特許文献1が開示する技術は、成形品の品質を加味して条件を調整するが、品質をフィードバックさせるためには検査工程まで進まなくてはならないため、検査工程に進む前までの情報だけを機械学習による第一モデルおよび第二モデルを用いて条件を調整(具体的には金型内圧を用いる。)する技術が開示されている(特許文献2参照)。
【0007】
しかし、特許文献1の問題点を克服するための特許文献2に開示される技術であっても、当該第一モデルも当該第二モデルに加えて機械学習によるとすると処理が煩雑化する一方、特許文献1の明細書の段落番号0029にも記載があるように、「一般に、機械学習には教師あり学習や教師なし学習など、その目的や条件によって様々なアルゴリズムに分類されている。本発明では金型に対する操作条件出し作業の学習を目的としており、射出成形システムでは射出環境において直接に測定できないパラメータ等が存在すること、射出した結果である成形品の状態に対してどのような行動(操作条件の調整)をすることが正しいのかを明示的に示すことが困難であることを考慮して、報酬を与えるだけで機械学習器が目標到達のための行動を自動的に学習する強化学習のアルゴリズムを採用する。」のであり、成形時のパラメータは複雑であり不明なものもあると推認されるので、必ずしも機械学習であるから当該第一モデルが完璧なものとなるわけではないともいえる。
【0008】
本発明の一態様の目的は、AIによる処理手順を簡素化しつつ作業者に分かりやすいように成形条件の設定を支援する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一態様に係る第一の成形条件決定支援システムは、
型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機と、センサおよび表示装置とが接続された成形条件決定支援システムであって、
センサにより所定の成形品の成形時の基準となる型内圧波形のデータを取得し、
情報処理装置は、基準となる型内圧波形と1ショットごととの波形に差分があるときに、どのような基準波形の場合に、型内圧波形に対して設定された複数の切り出し区間に関する設定条件の値をどのくらい変更したら、1ショットごとの波形が基準波形に近づくか、という学習データに基づいて機械学習により学習モデルを生成し、
情報処理装置は、基準となる型内圧波形と、センサにより取得した製造段階における複数ショットそれぞれでの型内圧波形との差分の絶対値を小さくするように、学習モデルを用いて調整すべき最適な設定条件とその値を算出し、その際、予め決められた順に、1つずついずれかの区間に関する設定条件から確定していき、
表示装置は、再設定すべき前記設定条件とその値を、切り出された前記区間の成形の時系列に沿った順番に並べて画面に表示する。
【0010】
本発明の一態様に係る第二の成形条件決定支援システムは、
型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機と、センサおよび表示装置とが接続された成形条件決定支援システムであって、
前記センサにより所定の前記成形品の成形時の基準となる型内圧波形のデータを取得し、
前記情報処理装置は、基準となる前記型内圧波形と前記センサにより取得した1ショットごとの波形とに差分があるときに、どのような前記基準波形の場合に、少なくとも(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧および(4)保圧時間の設定条件の値をどのくらい変更したら、前記1ショットごとの波形が前記基準波形に近づくか、という学習データに基づいて機械学習により学習モデルを生成し、
前記情報処理装置は、前記基準となる型内圧波形と、前記センサにより取得した製造段階における複数ショットそれぞれでの前記型内圧波形との差分の絶対値を小さくするように、前記学習モデルを用いて調整すべき最適な前記設定条件とその値を算出し、その際、前記(1)射出速度、前記(2)VP切替位置、前記(3)保圧および前記(4)保圧時間の順に確定していき、
前記表示装置は、再設定すべき前記設定条件とその値を、前記(1)射出速度、前記(2)VP切替位置、前記(3)保圧および前記(4)保圧時間の成形の時系列に沿った順番に並べて画面に表示する。
【0011】
本発明の第1の態様に係る情報処理装置は、型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理装置であって、
所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置と、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、
を備える。
【0012】
本発明の第2の態様に係る情報処理装置は、第1の態様に係る情報処理装置であって、前記成形条件提供部は、前記成形品の成形時の1ショットに含まれる複数の工程または区間のうち予め決められた順に、1つの工程または区間ずつ当該工程または区間における設定条件を確定することによって、複数の工程または区間の設定条件の値を出力する。
【0013】
本発明の第3の態様に係る情報処理装置は、第2の態様に係る情報処理装置であって、前記成形条件提供部は、前記出力された工程または区間毎の設定条件の値を、成形の工程または区間の時系列に沿った順番に並べて表示するための情報を出力する。
【0014】
本発明の第4の態様に係る情報処理装置は、第1から3のいずれかの態様に係る情報処理装置であって、前記センサは、圧力センサ及び/または温度センサである。
【0015】
本発明の第5の態様に係る情報処理装置は、第1から4のいずれかの態様に係る情報処理装置であって、前記記憶装置には、前記基準波形データが複数記憶されており、
前記成形条件提供部は、前記複数の基準波形データに対応する複数の設定条件から良品が出る設定条件範囲を複数特定し、特定した複数の設定条件範囲から一つの設定条件範囲を選択し、当該選択した設定条件範囲に基づいて設定条件の値を出力する。
【0016】
本発明の第6の態様に係る情報処理装置は、第5の態様に係る情報処理装置であって、前記成形条件提供部は、特定した複数の設定条件範囲から一つの設定条件範囲を選択する際に、最も設定条件範囲が広い設定条件範囲を選択する。
【0017】
本発明の第7の態様に係る情報処理装置は、第1から6のいずれかの態様に係る情報処理装置であって、前記記憶装置には、樹脂の種類または樹脂の特性毎に機械学習モデルが記憶されており、前記成形条件提供部は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の物性に応じた機械学習モデルを前記記憶装置を参照して選択し、当該選択した機械学習モデルを用いて、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する。
【0018】
本発明の第8の態様に係る情報処理装置は、第1から7のいずれかの態様に係る情報処理装置であって、前記記憶装置には、樹脂の種類または樹脂の物性が入力パラメータに含まれる機械学習モデルが記憶されており、前記成形条件提供部は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の物性に基づいて、樹脂の種類または樹脂の特性を前記機械学習モデルに入力することにより、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する。
【0019】
本発明の第9の態様に係る情報処理装置は、型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システムであって、
所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つと、良品成形時において前記成形機を制御するコントローラの運転データであって基準となる基準運転データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置と、
少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を入力として、成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、
を備える。
【0020】
本発明の第10の態様に係る情報処理装置は、第9の態様に係る情報処理装置であって、前記記憶装置には、樹脂の物性毎に機械学習モデルが記憶されており、
前記成形条件提供部は、前記成形機に設けられたモータの特性値及び/または前記コントローラに格納されている前記モータの特性値を用いて、前記成形機の前記樹脂の物性を推定し、当該推定した樹脂の物性に応じた機械学習モデルを用いて、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する。
【0021】
本発明の第11の態様に係る情報処理装置は、第9の態様に係る情報処理装置であって、前記記憶装置には、樹脂の物性を入力パラメータに含む機械学習モデルが記憶されており、
前記成形条件提供部は、前記成形機に設けられたモータの特性値及び/または前記コントローラに格納されている前記モータの特性値を用いて、前記成形機の前記樹脂の物性を推定し、当該推定した樹脂の物性を機械学習モデルに入力して、前記少なくとも一つの設定条件の値を出力する。
【0022】
本発明の第12の態様に係る情報処理装置は、第9から11のいずれかの態様に係る情報処理装置であって、前記成形条件提供部は、前記成形機にフィードバックするように、前記少なくとも一つの設定条件の値を成形機に出力する。
【0023】
本発明の第13の態様に係る情報処理装置は、第1から12のいずれかの態様に係る情報処理装置であって、前記機械学習モデルは、ベイズ最適化である。
【0024】
本発明の第14の態様に係る情報処理装置は、第1から13のいずれかの態様に係る情報処理装置であって、前記少なくとも一つの設定条件は、射出速度、VP切替位置、保圧及び保圧時間のうち少なくとも一つである。
【0025】
本発明の第15の態様に係る情報処理システムは、型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システムであって、
所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置と、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、
を備える。
【0026】
本発明の第16の態様に係る情報処理システムは、型のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理システムであって、
所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つと、良品成形時において前記成形機を制御するコントローラの運転データであって基準となる基準運転データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置と、
少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を入力として、成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する成形条件提供部と、
を備える。
【0027】
本発明の第17の態様に係るプログラムは、所定の成形品の良品成形時に成形機または型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置を参照可能なコンピュータに、
前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順、
を実行させるためのプログラムである。
【0028】
本発明の第18の態様に係るプログラムは、所定の成形品の良品成形時に成形機または型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つと、良品成形時において前記成形機を制御するコントローラの運転データであって基準となる基準運転データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置を参照可能なコンピュータに、
少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を入力として、成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する手順、
を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0029】
本発明の一態様によれば、AIによる処理手順を簡素化しつつ作業者に分かりやすいように成形条件の設定を支援する技術を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】本発明の実施の形態における成形条件決定支援システムの成形機の外観図である。
【
図2】本発明の実施の形態における成形条件決定支援システムの成形機の一部の概略構成図である。
【
図3】本発明の実施の形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。
【
図4】本発明の実施の形態における1つの成形品を成形する1ショット間の時間の経過に伴う型内圧波形を示す図である。
【
図5】本発明の実施の形態における成形条件決定支援システムの処理の流れを説明する図である。
【
図6】本発明の実施の形態における成形条件決定支援システムの表示装置の表示画面例を示す図である。
【
図7】本発明の実施の形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図8】本発明の実施の形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の処理の流れを示すフローチャートである。
【
図9】第2の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。
【
図10】第2の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図11】第2の実施形態に係る変形例のセンサの位置を示す模式図である。
【
図12】第3の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。
【
図13】第3の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図14】1つの成形品を成形する1ショット間の時間の経過に伴う型内圧波形の例を複数示す図である。
【
図15】第4の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。
【
図16】第4の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図17】記憶部に格納されている機械学習モデルの例を示す模式図である。
【
図18】第5の実施形態に係る成形条件決定支援システムの成形機の外観図である。
【
図19】第5の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。
【
図20】第5の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。
【
図21】第6の実施形態における成形条件決定支援システムの概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、各実施形態について、図面を参照しながら説明する。但し、必要以上に詳細な説明は省略する場合がある。例えば、既によく知られた事項の詳細説明や実質的に同一の構成に対する重複説明を省略する場合がある。これは、以下の説明が不必要に冗長になるのを避け、当業者の理解を容易にするためである。
【0032】
以下、本発明の実施の形態に係る成形条件決定支援システムについて、図面を参照して
詳細に説明する。
なお、成形条件決定支援システムは、溶融材料を成形機の型に供給することにより成形品を成形する方法に適用される。適用対象の成形方法は、例えば、樹脂またはゴム等の射出成形、ブロー成形および押出成形、ダイキャスト等の金属鋳造、などである。以下においては、適用対象として、主に、射出成形を例にあげて説明する。
【0033】
<第1の実施形態>
図1は、本発明の実施の形態における成形条件決定支援システム100の成形機1の外観図である。
成形機1は、溶かした樹脂(プラスチック)を金型へ流し入れ、冷やして固め、取り出すことで様々なプラスチック製品を作る機械である射出成形機である。大きく分けて、材料の樹脂等を熱で溶かして金型に注入するための射出ユニット10、金型の開閉を行う型締めユニット20、成形条件(例えば、樹脂を金型に注入する際の速度、圧力、温度など)を制御するためのコントローラ30から成る。
【0034】
図2は、上記の特許文献1および特許文献2に開示されているような、公知の一般的な成形機1の一部の概略構成図である。
射出ユニット10は、ホッパ、加熱シリンダ、スクリュー、ノズル、ヒータ、駆動装置等を備える。ホッパは、ペレット(粒状に成形材料)の投入口である。加熱シリンダは、ベッドに対して軸方向に移動可能に設けられている。スクリューは、加熱シリンダの内部に配置され、回転可能かつ軸方向へ移動可能に設けられている。ノズルは、加熱シリンダの先端に設けられた射出口であり、スクリューの軸方向移動によって、加熱シリンダの内部の溶かした樹脂を、金型のキャビティに供給する。
【0035】
型締めユニット20は、装着された金型の開閉動作を行うと共に、金型を締め付けた状態において、金型のキャビティ(成形品部)に射出された溶かした樹脂の圧力により金型が開かないようにする。型締めユニット20は、固定盤、可動盤、タイバー、駆動装置等を備える。固定盤には、固定側の第一金型が固定されている。固定盤には、上記のノズルに当接可能であって、ノズルから射出される樹脂を金型のキャビティへ導く。キャビティは、第一金型と第二金型との間に形成され、製品形状に対応する領域である。可動盤には、可動側の第二金型が固定されており、固定盤に対して接近および離間可能である。タイバーは、可動盤の移動を支持する。駆動装置は、例えば、シリンダ装置によって構成されており、可動盤を移動させる。第一金型は、ノズルからキャビティまでの間に供給路を備える。なお、3プレート金型等も同様に適用可能である。
エジェクタプレート21に固定されたエジェクタピン(押出しピン)22が型開き時に突き出すことで、成形後の成形品(ワーク)を金型から外すことができる。
このエジェクタプレート21に埋め込むような態様で金型内データを取得するセンサ23を、エジェクタピン22の位置と対応(対抗)する箇所等に複数設ける(
図5も参照)。センサ23は、溶かした樹脂から受ける金型内圧力を検出する圧力センサであり、例えば、ロードセル等である。なお、エジェクタプレート21およびエジェクタピン22を介した計測機構は必須ではなく、センサ23の取り付け位置は金型内データを取得することが可能であれば特に限定されなく金型の内部外部を問わず任意である。
【0036】
コントローラ30は、成形条件に関する指令値(パラメータ)に基づいて、射出ユニット10の駆動装置および型締めユニット20の駆動装置を制御する。
なお、成形機1は制御装置やセンサ等が備えられた複数の装置により構成されていてもよい。例えば、型締力制御装置、型開閉、スクリュ回転・前後進、射出ユニット前後進等を駆動するための制御装置、ノズル・シリンダ、ホッパ下部温度制御装置、圧力制御装置等がある。金型関係では、例えば、金型温度制御装置、ホットランナ温度・ノズル開閉制御装置、金型加振装置等がある。周辺装置としては、例えば、制御装置に制御される成形品取出装置、インサート品挿入装置、入子挿入装置、成形品のバリ取り装置、ランナ切断装置、成形品重量計、成形品強度試験機、成形品の光学検査装置、成形品撮影装置および画像処理装置、成形品運搬用ロボットなどがある。これらの装置の中にはセンサを備えてクローズドループによるフィードバック制御またはフィードフォワード制御を行う制御装置があってもよく、また、データ出力のみの機能を有する装置があってもよい。
【0037】
また、上記の特許文献1および特許文献2に開示されているように、以下のような一般的な射出成形方法が知られている。
計量工程において、ヒータの加熱およびスクリューの回転に伴う、せん断摩擦熱によって樹脂が溶かされながら、加熱シリンダの先端とノズルの間に貯留される。樹脂の貯留量の増加に伴って後退するスクリューの後退位置から樹脂の貯留量を計量する。
型締工程において、可動盤を移動させて、第一金型と第二金型とを合わせることにより、型締めを行う。さらに、ノズルを固定盤に接続する。
射出充填工程において、スクリューの回転を停止した状態において、スクリューをノズルに向けて所定の射出速度、押込み力にて移動させることにより、樹脂を高い圧力で金型のキャビティに射出充填する。
保圧工程において、充填された樹脂をさらにキャビティに押し込み、キャビティ内の樹脂に所定の保圧力が所定時間加えられる保圧処理を行う。具体的には、スクリューに一定の押込み力(保圧力)を付与することにより、樹脂に所定の保圧力を付与する。キャビティ内の樹脂に生じる圧力は、キャビティの位置によって異なる。
冷却工程において、樹脂の押込みを停止して保圧力を減少させる処理を行い、さらに金型を冷却することで、キャビティにおける樹脂を固化させる。
離型取出工程において、第一金型と第二金型とを離間させて、エジェクタピン(押出しピン)22が型開き時に突き出すことで、成形後の成形品を金型から外す(取り出す)ことができる。
【0038】
図3は、本実施の形態における成形条件決定支援システム100の機器構成の一例を示す図である。
【0039】
成形機1の型締めユニット20には、型内圧などの金型内データを取得するセンサ(ロードセル)23を備えた金型が設置される。センサ23は、データ取得部としての、計装アンプ2・A/Dコンバータ3等を介して、情報処理装置4にセンシングデータを送る。
なお、センサ23と情報処理装置4は無線接続等の構成であってもよい。ここでは、センサ(ロードセル)23としたが、型内圧などのキャビティ内データを取得することができるセンサであれば種類やデータ通信方法は問わなく、その設置位置も任意である。例えば、金型を作製する際に、金型自体にセンサを埋め込んだり、キャビティに触れる態様でセンサが設けられて入れば、型内圧などのキャビティ内データは取得可能である。
情報処理装置4は、例えば、産業用PC(パーソナルコンピューター)であり、制御部・計算部としての演算装置であるCPU(Central Processing Unite)等、ROM(Read Only Memory)・RAM(Random Access Memory)等、公知の入出力手段を備え、記憶部として所定の記憶装置を内蔵又は外付けHDD等として備えている。
図4を参照すると、センサ23により検出する、溶かした樹脂から受ける金型内圧力である、1つの成形品を成形する1ショット間の時間の経過に伴う型内圧波形の一例が示されている。
1ショット間の金型内圧力データを、横軸(時間)、縦軸(圧力)とした圧力波形で表示する。
型内圧波形は、横軸の時間の経過に伴い、複数(ここでは3つ)の区間にわけて分析することができる。第一の区間aは上記の(1)射出速度、(2)VP切替位置に関連し、第二の区間bは上記の(3)保圧に関連し、第三の区間cは上記の(4)保圧時間に関連するものとして分析する。
ここで、(1)射出速度とは、スクリューをノズルに向けてどれだけのスピードで前進させるかを指す。なお、段数設定されることであってもよい。(2)VP切替位置とは、スクリューの前進に関連して、制御方法がV(射出速度)からP(保圧)へ切り換わる位置のことをいう。射出する樹脂の量はスクリューの位置で決まり、射出開始の位置は計量位置、射出終わりの位置をVP切換位置という。VP切替位置のイメージは、例えば樹脂が95%程度充填された位置である。VP切替位置の数値を小さくすると徐々に成形品のショートが改善され、逆にVP切替位置の位置が小さすぎると、容量以上に樹脂が入り成形品にバリが発生することとなる。VP切替位置の数値を小さくしていくと、より多くの樹脂が入ることとなり、型内圧もより高く(大きく)なる関係にある。VP切替位置の数値を変更すると、第一の区間aの縦軸(型内圧)と横軸(時間)が変化する影響を受ける。(3)保圧とは、金型のキャビティ内に樹脂が充填された後に、ゲートから樹脂が逆流しないように一定の力でゲートシール(ゲートが固化すること)するまでの間に加える圧力のことをいう。単位は、MPa、またはkgf/cm2である。例えば、射出終了後に40MPaを2秒等を設定する。なお、段数設定されることであってもよい。(4)保圧時間とは、保圧を維持していている時間のことをいう。
【0040】
図3に戻り、情報処理装置4のAIを活用した算定結果の成形条件(変更値)の表示装置5は、例えばモニター、タブレット等であり、所定のスタンドにより支持されたり、成形機1に所定の治具により固定されていることであってもよい。表示装置5は、情報処理装置4と有線又は無線等により接続されている。
【0041】
図5は、本実施の形態における成形条件決定支援システム100の処理の流れを説明する図である。
所定の成形品のための1ショットにおける型内圧波形を金型のエジェクタピン22の背面に設置されたロードセル23(圧力センサ)により計測して取得するが、これは、大きく2通りの場面で実施される。1つは、前提としての基準波形を取得するためであり、もう1つは、実際の製造段階における毎ショットでの型内圧波形を取得するためである。以下、この2通りを含めて詳述する。
【0042】
まず、上記の前提としての基準波形を取得するため、すなわち所定の成形品のための1ショットにおける金型内圧の基準波形を取得するために、金型のエジェクタピン22の背面に設置されたロードセル23(圧力センサ)により型内圧を計測しておき、情報処理装置4はその基準波形データを取得しておく。すなわち、良品が出る条件で成形を行い(成形機1の最適な操作条件を算出する操作条件出し作業においては、経験に基づいておおよその基準となる操作条件を設定して成形作業を行いつつ、オペレータが、工程監視データや成形品重量計測値等を参照し、成形品を目視チェックするなどして成形状態を確認しながら、何回か試しに射出しつつ、各種操作条件・成形の条件・パラメータを微調整し、最適な操作条件になるように調整等する。)、そのときの型内圧を基準波形として情報処理装置4の所定の記憶部58のデータベースのテーブル等に保存しておく。これは、良品のときの圧力と、不良品(強度、寸法、表面の状態など)のときの圧力は異なるからであり、型内圧波形を利用して不良品を最小限度にとどめることを狙いとしている。例えば、キャビティの中に樹脂が少ないと圧力は小さく、樹脂が多いと圧力は大きくなる。また、樹脂温度や金型温度のばらつきによる樹脂の冷え方の傾向の違いも、圧力に現れる。なお、上記のデータベースのテーブル等には、成形品の種類ごとに基準波形が紐づけられて格納されていることであってよい。
【0043】
また、さらなる前提として、情報処理装置4は、AIの機械学習により学習モデルを生成しておく、すなわち事前に所定の成形品のための上記の基準波形および毎ショットでの型内圧波形並びに各パラメータの変更量とその結果の型内圧波形等を学習データ(教師データ)として、型内圧波形が基準波形から外れた種々のパターンに応じて、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間のうち、どのパラメータをどのくらいの量(値、幅)、変更すれば、効果的かつ効率的に基準波形に近付ける(理想的には一致させる)ように修正可能かを学習して学習モデルを生成しておく。ただし、この学習モデルは上記基準波形および毎ショットでの型内圧波形の差分に関する新たな学習データ(教師データ)が得られる度に更新される。なお、(5)等として温度などのパラメータも併せて考慮することであってもよい。
【0044】
そして、上記の実際の製造段階での毎ショットでの型内圧波形を取得するために、所定の成形品のための毎ショットでの型内圧波形を金型のエジェクタピン22の背面に設置されたロードセル23(圧力センサ)により計測し、情報処理装置4はその型内圧波形データを取得する。
次に、情報処理装置4はAIを備えた成形条件設定支援アプリケーション等により、毎ショットでの型内圧波形を基準波形と比較し、その差分が所定値を超えるか否かを判定し、超える場合には、差分が大きい(ずれが大きい)ため条件再設定が必要であると判定する。
情報処理装置4は上記の条件再設定が必要と判断した場合、直近の型内圧波形と基準波形の差分を最小化する(目標となる基準波形へ合わせていく)成形条件をAI(人工知能)が上記の生成された学習モデルにより算定する。すなわち、直近の型内圧波形と基準波形を比較し、波形のうちのどの部分に乖離があるか(傾きなど、種々のずれパターンがある。)等に基づき、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間のうち調整すべき成形条件およびその値を決定する(成形条件最適化)。なお、学習モデルに基づく算定の際に、成形条件の調整順番は固定しておく。すなわち、成形条件調整の際、すべての条件を一斉に探索するのではなく、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間の、この順番(順序)で調整を行う。(1)乃至(4)の条件はそれぞれ完全には独立していなく、相互に影響し合う関係の部分もあるため、一条件ずつ確定していくことで、各条件を一斉に条件探索するよりも少ない回数で最適化処理が可能となり、かつ作業者にも分かりやすい手順(時系列に沿った(1)乃至(4)の各条件の調整値を容易に視認して確認可能である。)で調整できることとなる。ここでは、(1)から順に確定していくこととするが、(1)から(4)の順番でなく、どの条件から先に確定するようにしてもよい。例えば、(3)、(4)、(1)、(2)の順番等である。なお、(5)等として温度などのパラメータも併せて考慮することであってもよい。もちろん、算定の結果、成形条件のうち調整すべき値が元の値と同じとなり、結果として調整不要のものがあってもよい。
最後に、情報処理装置4はAIが算定した成形条件を出力して、表示装置5に表示して作業者に変更指示し(このパラメータを変更してください、とおすすめしてくれる。)、作業者が成形機1のコントローラ30へ条件をボタン押下げ等の操作により入力して、所定の成形品の成形を再開する。
図6は、表示装置5の表示画面例を示す図である。射出条件の推奨値(この値に変更すべき最適条件)は、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間の成形の時系列に沿った順番に上から下に並べて直感的にわかりやすく(馴染みやすく)、かつ設定変更作業が煩雑とならないように最小限の項目を、視認しやすく表示する。次に設定すべき条件を作業者に分かりやすい手順として画面に出力することで、作業者の利便性が向上する。なお、上述のとおり、どの条件から先に確定するようにしてもよく、例えば、(3)、(4)、(1)、(2)の順番等の場合は、その順序で上から表示することであってもよい。また、
図6では、センサ数を6個として、その数に対応した数のグラフ(直近の型内圧波形と基準波形)が表示される例を示している。
【0045】
図7は、本実施の形態における成形条件決定支援システム100の情報処理装置4の機能ブロック図である。
図7を参照すると、情報処理装置4は、通信部41と、取得部42と、計算部43と、学習データ格納部44と、モデル生成部45と、成形条件提供部46と、出力部47と、記憶部48を備えている。各部は、公知の入出力I/FやCPU等により、またHDD等により実現されてよい。情報処理装置4のいくつかの機能は所定のソフトウェアとして実現されてもよく、そのソフトウェアのクラウド化が図られていてもよい。
【0046】
通信部41は、所定のネットワークに接続された各装置と通信を行う機能を有している。
【0047】
取得部42は、通信部41を介して、計装アンプ2・A/Dコンバータ3等を経由して、センサ23から実測された金型の内圧データを時系列に沿って取得する機能を有している。上述のとおり、大きく2通りの場面があり、1つは、前提としての基準波形を取得するためであり、もう1つは、実際の製造段階における毎ショットでの型内圧波形を取得するためである。
【0048】
計算部43は、記憶部48に格納された基準波形(基準波形データ)と取得部42により取得した1ショットごとの波形のずれを計算し、そのずれ量(距離など)に基づき、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかを計算する機能を有している。型内圧波形が基準波形から外れた種々のパターンに応じて、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間のうち、どのパラメータをどのくらいの量(値、幅)、変更すると、効果的かつ効率的に基準波形にどれくらい近付いたかを計算する。
【0049】
学習データ格納部44は、計算部43が計算した、どのような基準波形の場合に、基準波形と1ショットごとの波形のずれに基づき、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかのデータを紐付けて、学習データ(教師データ)として、記憶部48に格納する。なお、樹脂等の材質等のデータも紐づけて記憶することであってもよい。
【0050】
モデル生成部45は、AI(人工知能)モジュールにより、学習データに基づいて、どのような基準波形の場合に、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形が基準波形に近づくのか、という関係の学習モデルを生成し、記憶部48に格納する。具体的には、モデル生成部45は、どのような基準波形の場合に、(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形がどのようにどれくらい基準波形に近づいたかの関係を回帰分析等により機械学習する。回帰する方法は、例えば、線形回帰、多項式回帰やロジスティック回帰など、公知の手法を用いることができるため、詳細な説明は省略する。モデル生成部45は、大量の学習データに基づいて、多層構造のニューラルネットワークを用いたディープラーニング(深層学習)により、機械学習することであってもよく、その他の公知の機械学習等により学習モデルを生成することであってもよい。なお、(5)等として温度などのパラメータも併せて考慮することであってもよい。
【0051】
成形条件提供部46は、毎ショットでの型内圧波形を基準波形と比較し、その差分が所定値を超えるか否かを判定し、超える場合には、差分が大きい(ずれが大きい)ため条件再設定が必要であると判定する機能と、その条件再設定が必要と判断した場合、直近の型内圧波形と基準波形の差分を最小化する(目標となる基準波形へ合わせていく)成形条件を、学習モデルに基づいて、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更すべきか等を算定して提供する機能を有している。
上記のとおり、学習モデルに基づく算定の際に、成形条件の調整順番は固定しておく。すなわち、成形条件調整の際、すべての条件を一斉に探索するのではなく、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間の、この順番(順序)で調整を行う。(1)乃至(4)の条件はそれぞれ完全には独立していなく、相互に影響し合う関係の部分もあるため、一条件ずつ確定していくことで、各条件を一斉に条件探索するよりも少ない回数で最適化処理が可能となり、かつ作業者にも分かりやすい手順(時系列に沿った(1)乃至(4)の各条件の調整値を容易に視認して確認可能である。)で調整できることとなる。ここでは、(1)から順に確定していくこととするが、(1)から(4)の順番でなく、どの条件から先に確定するようにしてもよい(情報処理装置4は、なんらかのタイミングで設定されたこの順番の情報を保持しておき、学習モデルに基づく算定の際に利用する。)。例えば、(3)、(4)、(1)、(2)の順番等である。成形条件算定の際に使用しているAIのメインアルゴリズムとして、ベイズ最適化アルゴリズムが適用されてもよい。これは、活用(過去に得られたデータ/情報を使う)と探索(まだ得られていないデータを取得しに行く)の概念を用いて次に取るべき行動(探索すべき点)を導出する最適化手法である。なお、(5)等として温度などのパラメータも併せて考慮することであってもよい。
【0052】
出力部47は、例えば、ディスプレイ等の表示機構やスピーカなどの音声出力機構により画像データ、音声データ等の各種データを出力する機能を有している。特に、AIが算定した上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータの変更値や変更量を表示装置5に対して表示可能に出力する。
【0053】
記憶部48は、情報処理装置4を機能させるためのプログラムや各種データを記憶する機能を有している。記憶部48は、ブロックチェーンによる暗号化による記憶部として実現されてもよい。データベースには、各種のデータが紐付けられて記憶されている所定のテーブル等を有している。所定のデータベースのテーブル等には、成形品の種類ごとに基準波形データが紐づけられて格納されている。
【0054】
図8は、本実施の形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置4の主な処理の流れを示すフローチャートである。
まず、情報処理装置4の取得部42は、通信部41を介して、計装アンプ2・A/Dコンバータ3等を経由して、センサ23から実測された金型の内圧データのうち基準波形となるものを取得する(ステップS801)。
【0055】
次に、モデル生成部45は、AI(人工知能)モジュールにより、計算部43が計算した、どのような基準波形の場合に、基準波形と1ショットごとの波形のずれに基づき、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかのデータが紐付けられている、学習データ(学習データ格納部44により記憶部48に格納されている。)に基づいて、どのような基準波形の場合に、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、1ショットごとの波形が基準波形に近づくのか、という関係の学習モデルを生成する。(ステップS802)。
次に、取得部42は、通信部41を介して、計装アンプ2・A/Dコンバータ3等を経由して、センサ23から実測された金型の内圧データのうち実際の製造段階における毎ショットでの型内圧波形を取得する(ステップS803)。
【0056】
次に、成形条件提供部46は、毎ショットでの型内圧波形を基準波形と比較し、その差分が所定値よりも小さいか否かを判定し(ステップS804)、小さくない場合(ステップS804/No)には、差分が大きい(ずれが大きい)ため条件再設定が必要であると判定する。
次に、S802で生成した学習モデルを直近の型内圧波形と基準波形の差分の情報も学習データとして追加して更新し(ステップS805)、更新された学習モデルに基づいて、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更すべきか等を算定する(ステップS806)。なお、上記のとおり、学習モデルに基づく算定の際に、成形条件の調整順番は予め固定しておく。
【0057】
そして、出力部47は、成形条件提供部46が算定した上記の(1)乃至(4)の設定条件ごとのパラメータの変更値や変更量を表示装置5に対して表示可能に出力する(ステップS807)。その後は出力された結果に従って再設定された条件で成形を再開し、毎ショットでの型内圧波形の取得(ステップS803)及び型内圧波形と基準波形の差分が所定値よりも小さいか否かの判定(ステップS804)を、その差分が所定値よりも小さくなるまで繰り返す。
【0058】
上記の本実施の形態によれば、情報処理装置4に搭載されたAIによる処理手順を簡素化しつつ、作業者に分かりやすいように表示装置5に成形条件のパラメータの変更値を成形の時系列に沿って表示するため、成形条件の設定を支援することができる。
【0059】
〔変形例1〕
情報処理装置と結果表示部(モニター)が一体化した構成であってもよい。すなわち、表示装置に出力されるデータは、表示装置に出力することなく、情報処理装置のみにおいて所定の表示部(液晶ディスプレイ等)に表示して利用されることであってもよい。
【0060】
〔変形例2〕
成形機10が情報処理装置4と一体化した構成であってもよい。物理的に成形機10に組み込まれたり、その機能のみが成形機10において実現される態様を広く含む。また、その場合において、表示装置5も一体化した構成であっても、表示装置5を備えていない構成であってもよい(その場合パラメータの変更は自動制御でフィードバックされる。)。
【0061】
<第2の実施形態>
続いて第2の実施形態について説明する。第1の実施形態ではセンサが圧力センサであったのに対して、第2の実施形態ではセンサが温度センサである点が異なっている。第2の実施形態では、良品がでるときの基準温度波形を取得し、基準温度波形に近づくように温度に関連する成形条件を調整する。
【0062】
図9は、第2の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。
図9に示すように、第2の実施形態における成形条件決定支援システム100bは、
図3の第1の実施形態のものに比べて、センサ23がセンサ23bに変更されたものになっている。センサ23bは金型の温度を検出する。センサ23bは金型内部に埋め込まれていてもよいし、センサ23bがエジェクタピン(押出しピン)22の形をしたエジェクタピン型温度センサであってもよい。
【0063】
図10は、第2の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。第2の実施形態に係る情報処理装置において、第1の実施形態と同じ要素には同じ符号を付し、その詳細な説明を適宜省略する。なお、取得部42、計算部43b、学習データ格納部44b、モデル生成部45b、成形条件提供部46、出力部47の機能は、プロセッサ40が記憶部48からプログラムを読み出して実行することによって実現されてもよい。各部の処理については、第1の実施形態と同様であるので、その詳細は適宜省略する。
【0064】
記憶部48は記憶装置であり、記憶部48には、所定の成形品の良品成形時に成形機または金型に設けられたセンサ23bによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている。ここで波形データは、温度の時系列変化を表すデータである。
【0065】
成形条件提供部46は、記憶部48を参照して基準波形データを取得し、成形機または金型に設けられたセンサ23bから当該成形品の成形時の1ショットにおけるセンサ波形データを少なくとも一つ取得する。
成形条件提供部46は、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、当該基準波形データと同一または類似の波形データをセンサ23bが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する。
ここで、機械学習モデルは例えば、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差分に基づく評価値を出力とするブラックボックス関数を最適化することを目的とした機械学習モデル(具体的には例えばベイズ最適化)である。また設定条件とは例えば、(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間である。
【0066】
また成形条件提供部46は例えば、成形品の成形時の1ショットに含まれる複数の工程(または区間)のうち予め決められた順に、1つの工程(または区間)ずつ当該工程(または区間)における設定条件を確定することによって、複数の工程(または区間)の設定条件の値を出力してもよい。
ここで、工程とは上述した区間に対応しており、例えば
図4における第一の区間aは上述した射出充填工程の区間であり、第二の区間bは上述した保圧工程の区間であり、第三の区間cは上述した冷却工程の区間である。
【0067】
また第1の実施形態の
図6と同様に、成形条件提供部46は例えば、出力された工程(または区間)毎の設定条件の値を、成形の工程(または区間)の時系列に沿った順番に並べて表示するための情報を出力してもよい。
【0068】
なお、センサ23bが計測する温度は金型の温度に限らず、例えば
図11に示すように、ヒータの温度を検出してもよい。
図11は、第2の実施形態に係る変形例のセンサの位置を示す模式図である。
図11に示すように、ヒータ12はノズル11の外面を巻くように設けられており、センサ23bは例えば、このヒータ12に接触するように設けられていてもよい。
【0069】
なお、圧力センサと温度センサを併用してもよく、この場合において、1ショットの圧力と温度の波形がそれぞれ、圧力と温度の基準波形に近づくように成形条件を調整してもよい。
【0070】
<第3の実施形態>
続いて第3の実施形態について説明する。第3の実施形態では、第1の実施形態と比べて、設定条件の値を出力までの処理工程が変更されたものになっている。
図12は、第3の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。
図12に示すように、第3の実施形態における成形条件決定支援システム100cは、
図3の第1の実施形態のものに比べて、情報処理装置4が情報処理装置4cに変更されたものになっている。
【0071】
図13は、第3の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。
図13に示すように、情報処理装置4cは、第1の実施形態の情報処理装置4に比べて、成形条件提供部46が成形条件提供部46cに変更されたものになっている。
【0072】
図14は、1つの成形品を成形する1ショット間の時間の経過に伴う型内圧波形の例を複数示す図である。
図14において、縦軸が型内圧で横軸が経過時間である。
図14に示すように、良品となる波形、はりがあるときの波形、フローマークがあるときの波形、ショート・ショット(成形材料がキャビティに完全に充填していない現象)のときの波形、型離れ不良のときの波形が示されている。
図14に示すように、成形品が良品となる波形は複数ある。
【0073】
そこで、情報処理装置4cは、良品が出る基準波形データを複数取得し、記憶部48に格納してもよい。このように、基準波形データが複数記憶されていてもよい。
【0074】
この場合において、計算部43は、記憶部48に格納された複数の基準波形(基準波形データ)から1つを選択し、選択した基準波形データと取得部42により取得した1ショットごとの波形のずれを計算し、そのずれ量(距離など)に基づき、上記の(1)乃至(4)の設定条件のパラメータをどの位変更したら、次の1ショットの波形がどのように変化したかを計算してもよい。
【0075】
これに加えて/替えて、成形条件提供部46cは、複数の基準波形データに対応する複数の設定条件から良品が出る設定条件範囲を複数特定してもよい。具体的には例えば、複数の基準波形データそれぞれが得られた際の設定条件から2つの設定条件を選択して選択した2つの設定条件の間の範囲を、設定条件範囲として抽出することにより、複数の設定条件範囲を特定してもよい。
【0076】
そして成形条件提供部46cは、特定した複数の設定条件範囲から一つの設定条件範囲を選択してもよい。具体的には例えば、成形条件提供部46cは、特定した複数の設定条件範囲から一つの設定条件範囲を選択する際に、最も設定条件範囲が広い設定条件範囲を選択してもよい。
そして、成形条件提供部46cは、当該選択した設定条件範囲に基づいて設定条件の値を出力してもよい。具体的には例えば、成形条件提供部46cは、当該選択した設定条件範囲の中から設定条件を選択して出力してもよいし、設定条件範囲を統計処理(例えば、平均、中央値演算)して得られた設定条件を出力してもおい。ここで設定条件は、例えば(1)射出速度、(2)VP切替位置、(3)保圧、(4)保圧時間である。
【0077】
<第4の実施形態>
続いて第4の実施形態について説明する。樹脂の種類(例えば、ポリプロピレン、ポリスチレンなど)によって条件を変更したときのセンサの波形の変化の仕方が異なる。このことに着目して第4の実施形態では、樹脂の種類または樹脂の特性(例えば、樹脂の粘度)毎に機械学習モデルを設ける。
【0078】
図15は、第4の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。第4の実施形態における成形条件決定支援システム100dは、
図3の第1の実施形態のものに比べて、情報処理装置4が情報処理装置4dに変更されたものになっている。
【0079】
図16は、第4の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。第4の実施形態における情報処理装置4dは、
図7の第1の実施形態のものに比べて、モデル生成部45がモデル生成部45dに変更され、成形条件提供部46が成形条件提供部46dに変更され、入力部49が追加されたものになっている。入力部49は、ユーザからの入力(例えば、樹脂の種類または樹脂の特性)を受け付ける。
【0080】
図17は、記憶部に格納されている機械学習モデルの例を示す模式図である。
図17に示すように、機械学習モデル48-1、…、48-N(Nは2以上の整数)が格納されている。
モデル生成部45dは、樹脂の種類または樹脂の特性(例えば、樹脂の粘度)毎に機械学習モデルを生成し、
図17に示すように記憶部48に格納してもよい。そして記憶部48には、樹脂の種類または樹脂の特性(例えば、樹脂の粘度)毎に機械学習モデルが記憶されていてもよい。この場合において、取得部42は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の特性を取得してもよい。そして成形条件提供部46dは、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の物性に応じた機械学習モデルを、記憶部48を参照して選択し、当該選択した機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値を出力してもよい。
【0081】
あるいはモデル生成部45dは、樹脂の種類または樹脂の物性が入力パラメータに含まれる機械学習モデルを生成してもよい。より詳細には、モデル生成部45dは、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データに加えて、樹脂の種類または樹脂の物性を入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを生成してもよい。
【0082】
そして記憶部48には、この樹脂の種類または樹脂の物性が入力パラメータに含まれる機械学習モデルが記憶されていてもよい。この場合において、取得部42は、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の特性を取得してもよい。そして成形条件提供部46dは、ユーザによって入力された樹脂の種類または樹脂の特性を機械学習モデルに入力することにより、少なくとも一つの設定条件の値を出力してもよい。
【0083】
なお、上述の各実施形態において、1つの記憶部が記憶するとして説明したが、複数の記憶部に分散されて記憶されていてもよい。また、上述の各実施形態において、1つのプロセッサが実行するとして説明したが、複数のプロセッサによって処理が実行されてもよい。
【0084】
以上、第1~第4の実施形態に係る情報処理装置は、型(例えば金型)のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理装置である。第1~第4の実施形態に係る情報処理装置は、所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機(例えばヒータ)または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置を備える。
第1~第4の実施形態に係る情報処理装置は更に、前記記憶装置を参照して基準波形データを取得し、前記センサから前記成形品の成形時の1ショットにおける波形データを少なくとも一つ取得し、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを入力として成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの成形時の波形データを処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する少なくとも一つのプロセッサを備える。これにより、AIによる処理手順を簡素化しつつ、作業者による良品の設定条件の取得を容易化することができる。
【0085】
<第5の実施形態>
続いて第5の実施形態について説明する。第5の実施形態では、成形ショット毎の成形機の運転データ(例えば、モータの電流、モータのトルクなど)をモニタリングし、運転データの情報を加味して、成形ショット中のセンサの波形が、センサの基準波形に近づくように条件調整を行う。ここで設定条件は、成形機を動作させるために成形機側に指定する値である。一方、運転データは、設定条件で成形機が運転された際の成形機の動作を表す値であって、その値が時間的に変化していくものである。例えば、VP切替位置は成形機側に位置を値で指定するために設定条件であるが、トルク値は設定条件で成形機が動いた際に、時間的に大きさが変化していくため運転データである。
図18は、第5の実施形態に係る成形条件決定支援システムの成形機の外観図である。
図18に示すように、成形機1には、スクリューを駆動するモータ13と、モータ13の電流を検出する電流センサ14が設けられている。
図19は、第5の実施形態における成形条件決定支援システムの機器構成の一例を示す図である。第5の実施形態における成形条件決定支援システム100eは、
図3の第1の実施形態のものと比べて、情報処理装置4が情報処理装置4eに変更されたものになっている。
【0086】
図20は、第5の実施形態における成形条件決定支援システムの情報処理装置の機能ブロック図である。情報処理装置4eは、通信部41、取得部42、記憶部48、状態推定器51、条件調整部52を備える。通信部41と取得部42は、第1の実施形態と同様であるので、その説明を省略する。
記憶部48には例えば、学習モデルデータベース(DB)481が構築されている。記憶部48には所定の成形品の良品成形時に成形機1または金型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つと、良品成形時において成形機1を制御するコントローラ30の運転データであって基準となる基準運転データが少なくとも一つ記憶されている。
【0087】
状態推定器51は例えば、成形機1の押出しトルクに関するデータとして、電流センサ14によって検出されたモータ13の電流値(以下、モータ電流値ともいう)を取得する。あるいは状態推定器51は、成形機1の押出しトルクに関するデータを、成形機1に入力されているパラメータから取得してもよい。あるいは状態推定器51は、成形機1の押出しトルクに関するデータとして、コントローラ30が成形機1から受け取った成形機データに含まれるモータ電流値をコントローラ30から取得してもよい。
【0088】
状態推定器51は、当該押出しトルクに関するデータから、金型へ流し入れる樹脂の粘度に関するパラメータ(以下、粘度パラメータ)を取得する。
このように、状態推定器51は、成形機1に設けられたモータ13の特性値(例えば、電流またはトルク)及び/またはコントローラ30に格納されているモータ13の特性値(例えば、電流またはトルク)を用いて、成形機1の樹脂の物性を推定する。
【0089】
条件調整部52は、条件調整AI521を備える。ここで記憶部48の学習モデルデータベース481には例えば、樹脂の物性毎に、機械学習モデル(具体的には機械学習モデルのパラメータ)が記憶されている。
条件調整AI521は、学習モデルデータベース481から、樹脂の物性(例えば、粘度パラメータ)に応じた機械学習モデルを記録可能であり、読み出し可能である。ここでは一例として粘度パラメータ毎に機械学習モデルを記録されているものとして説明する。
【0090】
条件調整部52は例えば、圧力を検出するセンサ23のデータと状態推定器51から出力された粘度パラメータに基づいて、センサの基準波形に近づくように成形条件を決定する。
【0091】
具体的に例えば、条件調整部52は、成形時の波形データと基準波形データとの差分である第1の差分を生成する。また条件調整部52は、成形機の運転データと前記基準運転データとの差分である第2の差分を生成する。そして、条件調整AI521に、これらの第1の差分、第2の差分が入力される。
【0092】
条件調整AI521は、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を入力として、成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を処理することにより、基準波形データと同一または類似の波形データをセンサ23が検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する。
【0093】
具体的には例えば、条件調整AI521は、第1の差分と第2の差分に基づく評価値を出力とするブラックボックス関数を最適化することを目的とした機械学習モデル(例えば、ベイズ最適化)を用いて、当該評価値を最適化するよう、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と当該第2の差分を処理することにより、基準波形データと同一または類似の波形データをセンサが検出する少なくとも一つの設定条件の値を出力する。
【0094】
その際に、例えば、条件調整部52は、成形機1に設けられたモータの特性値(例えば、電流またはトルク)及び/またはコントローラ30に格納されているモータの特性値(例えば、電流またはトルク)を用いて、成形機1の樹脂の物性を推定し、推定した樹脂の物性に応じた機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値を出力してもよい。
【0095】
あるいは記憶部48には、樹脂の物性を入力パラメータに含む機械学習モデルが記憶されていてもよい。その場合において、条件調整部52は、成形機1に設けられたモータ13の特性値(例えば、電流またはトルク)及び/またはコントローラ30に格納されているモータ13の特性値(例えば、電流またはトルク)を用いて、成形機1の樹脂の物性を推定し、当該推定した樹脂の物性を機械学習モデルに入力して、少なくとも一つの設定条件の値を出力してもよい。
【0096】
条件調整AI521が決定した設定条件の値をユーザが成形機1に手動で入力するのではなく、条件調整部52が直接、成形機1にフィードバックするように、当該出力した少なくとも一つの設定条件の値を成形機1に出力してもよい。これにより、人手を介さずに良品の設定条件を成形機1に設定することができる。
【0097】
なお、第5の実施形態において、1つの記憶部が記憶するとして説明したが、複数の記憶部に分散されて記憶されていてもよい。また、上述の各実施形態において、1つのプロセッサが実行するとして説明したが、複数のプロセッサによって処理が実行されてもよい。
【0098】
以上、第5の実施形態における情報処理装置は、型(例えば金型)のキャビティに溶融材料を供給することにより成形品を成形する成形機の設定条件に関する情報を出力する情報処理装置である。第5の実施形態における情報処理装置は、所定の前記成形品の良品成形時に前記成形機または前記型に設けられたセンサによって検出された波形データであって基準となる基準波形データが少なくとも一つと、良品成形時において前記成形機を制御するコントローラの運転データであって基準となる基準運転データが少なくとも一つ記憶されている少なくとも一つの記憶装置を備える。第5の実施形態における情報処理装置は更に、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を入力として、成形時の波形データと当該基準波形データの差が小さくなるように学習する機械学習モデルを用いて、少なくとも一つの設定条件の値と当該設定条件の値のときの第1の差分と第2の差分を処理することにより、前記基準波形データと同一または類似の波形データを前記センサが検出する設定条件の値を少なくとも一つ出力する少なくとも一つのプロセッサを備える。これにより、AIによる処理手順を簡素化しつつ、作業者による良品の設定条件の取得を容易化することができる。
【0099】
また、第1~第5の実施形態において、出力される少なくとも一つの設定条件は例えば、射出速度、VP切替位置、保圧及び保圧時間のうち少なくとも一つである。
【0100】
<第6の実施形態>
続いて第6の実施形態について説明する。第6の実施形態では、第1~第5のいずれかの情報処理装置の機能を有する情報処理システムが通信ネットワークを介して成形機1が設置された端末装置6に接続されている点で異なっている。
【0101】
図21は、第6の実施形態における成形条件決定支援システムの概略構成図である。
図21に示すように、成形条件決定支援システム100fは、第1の実施形態のものと比べて、A/Dコンバータ3の出力に接続する端末装置6が設けられ、情報処理装置4が情報処理システム4fに変更されている。情報処理システム4fは、第1~第5のいずれかの情報処理装置の機能を有し、例えば一つまたは複数の情報機器によって構成されている。情報処理システム4fは、通信回路網CNを介して端末装置6と通信可能になっている。情報処理システム4fは、端末装置6から各種のデータ(例えば、センサの波形データ、運転データ、設定条件など)を受信可能である。また情報処理システム4fは、処理によって得られた設定条件の値を端末装置6に送信する。
【0102】
端末装置6は表示装置5に接続されており、表示装置に情報処理システム4fから受信した設定条件の値を含む情報を表示するよう制御する。情報処理システム4fは、遠隔(例えばクラウド)に構築されていてもよい。これにより、例えば情報処理システム4fを遠隔に構築することにより、複数の場所に設置された複数の成形機1について、良品を成形する設定条件の値を決定し、複数の成形機1の使用者が使用する端末装置6にこの設定条件の値を送信することができる。
【0103】
なお、上述する各実施形態は、本発明の好適な実施の形態であり、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更実施が可能である。上述した実施形態で説明した情報処理装置4、4b、4c、4d、4eまたは情報処理システム4fの少なくとも一部は、ハードウェアで構成してもよいし、ソフトウェアで構成してもよい。例えば、各装置・システムの少なくとも一部の機能を実現するためのプログラムを各装置・システム等に読込ませて実行することにより各装置・システム等の少なくとも一部の機能を実現する処理を行ってもよい。さらに、そのプログラムは、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であるCD-ROMまたは光磁気ディスクなどを介して、または伝送媒体であるインターネット、電話回線等を介して伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで記録媒体は、磁気ディスクや光ディスク等の着脱可能なものに限定されず、ハードディスク装置やメモリなどの固定型の記録媒体でもよい。また、一部のシステムが人の動作を介在して実現されてもよい。
【0104】
さらに、情報処理装置4、4b、4c、4d、4eは、一つまたは複数の情報機器を有する情報処理システムとして実現されてもよい。情報処理装置4、4b、4c、4d、4eまたは情報処理システム4fが複数の情報機器を有する場合、そのうちの少なくとも1つをコンピュータとし、当該コンピュータが所定のプログラムを実行することにより情報処理装置4、4b、4c、4d、4eまたは情報処理システム4fの少なくとも1つの手段として機能が実現されてもよい。
【0105】
以上、本発明は上記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施形態にわたる構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0106】
1 成形機
2 計装アンプ
3 A/Dコンバータ
4、4b、4c、4d、4e 情報処理装置
4f 情報処理システム
5 表示装置
6 端末装置
10 射出ユニット
20 型締めユニット
21 エジェクタプレート
22 エジェクタピン
23 センサ
30 コントローラ
40 表示装置
41 ケーブル
100、100b、100c、100d、100e、100f 成形条件決定支援システム