(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】マーキング済み製品の生産方法
(51)【国際特許分類】
B23K 26/00 20140101AFI20240801BHJP
B23K 26/064 20140101ALI20240801BHJP
B23K 26/066 20140101ALI20240801BHJP
【FI】
B23K26/00 B
B23K26/064 G
B23K26/066
(21)【出願番号】P 2024084424
(22)【出願日】2024-05-23
【審査請求日】2024-05-29
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】591016334
【氏名又は名称】大塚テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124039
【氏名又は名称】立花 顕治
(74)【代理人】
【識別番号】100210251
【氏名又は名称】大古場 ゆう子
(72)【発明者】
【氏名】村田 宏樹
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英秋
(72)【発明者】
【氏名】高島 望
(72)【発明者】
【氏名】小森 昌宏
【審査官】松田 長親
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-19576(JP,A)
【文献】特開2000-42763(JP,A)
【文献】特開2022-130978(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 26/00-26/70
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搬送路に沿って物体を搬送することと、
レーザー発振器と前記搬送路との間に、前記レーザー発振器から発生したレーザー光を所定のパターンに従って分岐する、あるいは前記レーザー光の一部を所定のパターンに従って遮蔽することで、前記レーザー光の規則的な強度分布を形成するビーム成形機構を配置することと、
前記レーザー発振器と前記搬送路との間に、前記物体に行うマーキングのデザインに対応して前記レーザー光を透過または遮蔽するデザインパターンが形成されたマスク部材を配置することと、
前記レーザー発振器から前記レーザー光を発生させ、搬送中の前記物体に前記ビーム成形機構及び前記マスク部材を通過したレーザー光を照射することと
を備え、
前記ビーム成形機構から出射するレーザー光の進行方向は一方向であり、前記ビーム成形機構に入射する前記レーザー光の進行方向と同じである、
マーキング済み製品の生産方法。
【請求項2】
前記レーザー発振器は、エキシマレーザー発振器、UVレーザー発振器、CO
2レーザー発振器、またはYAGレーザー発振器である、
請求項1に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項3】
前記ビーム成形機構は、前記レーザー光を透過させる材料から構成され、前記レーザー光を透過させる平坦な平坦部と、前記平坦部に隣接する曲面状の曲面部であって、前記レーザー光を隣接する前記平坦部に分岐させる曲面部とからなる規則的なパターンを有する光学部材である、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項4】
前記ビーム成形機構は、前記レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、前記レーザー光を透過する透過領域とからなる規則的なパターンを有するフォトマスクである、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項5】
前記ビーム成形機構は、前記レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、前記レーザー光を透過する透過領域とからなる規則的なパターンが形成された部材であり、
前記遮蔽領域は、高反射ミラーで形成される、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項6】
前記マスク部材は、前記レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、前記レーザー光を透過する透過領域とからなる前記デザインパターンが形成されたフォトマスクである、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項7】
前記マスク部材は、前記レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、前記レーザー光を透過する透過領域とからなる前記デザインパターンが形成された部材であり、
前記遮蔽領域は、高反射ミラーで形成される、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項8】
前記ビーム成形機構と、前記マスク部材とは一体的に構成されている、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項9】
前記物体は、底面部と、前記底面部の外周縁から上方に延びる側面部と、上部開口を規定する口部と、前記側面部と前記口部とに連続する肩部と、を含む樹脂製の容器本体を備え、
前記底面部、側面部、及び肩部の少なくとも1つには、凹み部が形成され、
前記搬送中の物体に前記ビーム成形機構及び前記マスク部材を通過したレーザー光を照射することは、前記凹み部の内面に前記レーザー光を照射することを含む、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項10】
前記側面部に前記凹み部が形成される、
請求項9に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項11】
前記凹み部は、前記側面部の全周にわたって延びる、
請求項9に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項12】
前記凹み部は、前記底面部の外周縁から、前記側面部の上端まで延びる、
請求項10に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項13】
前記凹み部の内面は、最奥の位置において前記容器本体の外部空間に面する平坦面を形成し、前記凹み部の内面に前記レーザー光を照射することは、前記平坦面に前記レーザー光を照射することを含む、
請求項9に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【請求項14】
前記物体は、底面部と、前記底面部の外周縁から上方に延びる側面部と、上部開口を規定する口部と、前記側面部と前記口部とに連続する肩部と、を含む樹脂製の容器本体を備え、
前記底面部、側面部、及び肩部の少なくとも1つには、外表面から突出する突出部が形成され、
前記搬送中の物体に前記ビーム成形機構及び前記マスク部材を通過したレーザー光を照射することは、前記突出部の近傍に前記レーザー光を照射することを含む、
請求項1または2に記載のマーキング済み製品の生産方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、マーキング済み製品の生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、レーザーマーキング装置を開示する。特許文献1のレーザーマーキング装置は、同一の走査手段とレンズを用いて、複数のレーザーが物体表面を走査して加工する。走査手段は、第一の方向に走査させる第一の走査手段と、第一の方向に略直交する方向に走査させる第二の走査手段とを有し、第一の走査手段が複数のレーザーの光路が収束する光路中に位置する。物体は、走査手段のいずれかと同一方向に移動制御される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1のレーザーマーキング装置では、一方向に移動制御される物体に対し、描画領域を複数に分割し、これらに複数のレーザー光源を割り当てる。特許文献1によれば、このように1つのビームあたりの描画面積を低減することで、生産性の向上が図られる。しかし、レーザー光を走査しながら物体表面にドットを形成する方法では、ドットの描画速度に合わせて物体の移動速度を低減させる必要がある。このため、レーザーマーキングによる加工速度については、さらなる改善が望まれていた。
【0005】
本開示は、加工速度が向上したマーキング済み製品の生産方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、物体を搬送路に沿って搬送することと、レーザー発振器と搬送路との間に、レーザー発振器から発生したレーザー光を所定のパターンに従って分岐する、あるいはレーザー光の一部を所定のパターンに従って遮蔽することで、レーザー光の規則的な強度分布を形成するビーム成形機構を配置することと、レーザー発振器と搬送路との間に、物体に行うマーキングのデザインに対応してレーザー光を透過または遮蔽するデザインパターンが形成されたマスク部材を配置することと、レーザー発振器からレーザー光を発生させ、搬送中の物体にビーム成形機構及びマスク部材を通過したレーザー光を照射することとを備える。ビーム成形機構から出射するレーザー光の進行方向は一方向であり、ビーム成形機構に入射するレーザー光の進行方向と同じである。
【0007】
本開示の第2観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点に係るマーキング済み製品の生産方法であって、レーザー発振器は、エキシマレーザー発振器、UVレーザー発振器、CO2レーザー発振器、またはYAGレーザー発振器である。
【0008】
本開示の第3観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点または第2観点に係るマーキング済み製品の生産方法であって、ビーム成形機構は、レーザー光を透過させる材料から構成され、レーザー光を透過させる平坦な平坦部と、平坦部に隣接する曲面状の曲面部であって、レーザー光を隣接する平坦部に分岐させる曲面部とからなる規則的なパターンを有する光学部材である。
【0009】
本開示の第4観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第3観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、ビーム成形機構は、レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、レーザー光を透過する透過領域とからなる規則的なパターンを有するフォトマスクである。
【0010】
本開示の第5観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第4観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記ビーム成形機構は、前記レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、前記レーザー光を透過する透過領域とからなる規則的なパターンが形成された部材であり、前記遮蔽領域は、高反射ミラーで形成される。
【0011】
本開示の第6観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第5観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記マスク部材は、前記レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、前記レーザー光を透過する透過領域とからなる前記デザインパターンが形成されたフォトマスクである。
【0012】
本開示の第7観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第6観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記マスク部材は、前記レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、前記レーザー光を透過する透過領域とからなる前記デザインパターンが形成された部材であり、前記遮蔽領域は、高反射ミラーで形成される。
【0013】
本開示の第8観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第7観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、ビーム成形機構と、マスク部材とは一体的に構成されている。
【0014】
本開示の第9観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第8観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、物体は、底面部と、底面部の外周縁から上方に延びる側面部と、上部開口を規定する口部と、側面部と口部とに連続する肩部と、を含む樹脂製の容器本体を備え、前記底面部、側面部、及び肩部の少なくとも1つには、凹み部が形成され、前記搬送中の物体に前記ビーム成形機構及び前記マスク部材を通過したレーザー光を照射することは、前記凹み部の内面に前記レーザー光を照射することを含む。
【0015】
本開示の第10観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第9観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記側面部に前記凹み部が形成される。
【0016】
本開示の第11観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第10観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記凹み部は、前記側面部の全周にわたって延びる。
【0017】
本開示の第12観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第11観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記凹み部は、前記底面部の外周縁から、前記側面部の上端まで延びる。
【0018】
本開示の第13観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第12観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記凹み部の内面は、最奥の位置において前記容器本体の外部空間に面する平坦面を形成し、前記凹み部の内面に前記レーザー光を照射することは、前記平坦面に前記レーザー光を照射することを含む。
【0019】
本開示の第14観点に係るマーキング済み製品の生産方法は、第1観点から第13観点のいずれかに係るマーキング済み製品の生産方法であって、前記物体は、底面部と、前記底面部の外周縁から上方に延びる側面部と、上部開口を規定する口部と、前記側面部と前記口部とに連続する肩部と、を含む樹脂製の容器本体を備え、前記底面部、側面部、及び肩部の少なくとも1つには、外表面から突出する突出部が形成され、前記搬送中の物体に前記ビーム成形機構及び前記マスク部材を通過したレーザー光を照射することは、前記突出部の近傍に前記レーザー光を照射することを含む。
【0020】
本開示の第15観点に係るマーキング済み製品は、底面部と、前記底面部の外周縁から上方に延びる側面部と、上部開口を規定する口部と、前記側面部と前記口部とに連続する肩部と、を含む樹脂製の容器本体を備え、前記底面部、側面部、及び肩部の少なくとも1つには、外面上に形成された複数の凹部の集合または複数の凸部の集合を含むマーキング領域であって、所定のデザインを表示するマーキング領域と、凹み部とが形成され、前記マーキング領域は、前記凹み部の内面に形成される。
【0021】
本開示の第16観点に係るマーキング済み製品は、第15観点に係るマーキング済み製品であって、前記側面部には、前記マーキング領域と前記凹み部とが形成される。
【0022】
本開示の第17観点に係るマーキング済み製品は、第15観点または第16観点に係るマーキング済み製品であって、前記凹み部は、前記側面部の全周にわたって延びる。
【0023】
本開示の第18観点に係るマーキング済み製品は、第15観点から第17観点のいずれかに係るマーキング済み製品であって、前記凹み部は、前記底面部の外周縁から前記側面部の上端まで延びる。
【0024】
本開示の第19観点に係るマーキング済み製品は、底面部と、前記底面部の外周縁から上方に延びる側面部と、上部開口を規定する口部と、前記側面部と前記口部とに連続する肩部と、を含む樹脂製の容器本体を備え、前記底面部、側面部、及び肩部の少なくとも1つには、外面上に形成された複数の凹部の集合または複数の凸部の集合を含むマーキング領域であって、所定のデザインを表示するマーキング領域と、前記マーキング領域の近傍において、前記マーキング領域よりも外方に突出する突出部とが形成される。
【発明の効果】
【0025】
本開示によれば、加工速度が向上したマーキング済み製品の生産方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】一実施形態に係るマーキング済み製品の生産方法を説明する図。
【
図2C】ビーム成形機構のさらに別の構成例を示す平面図。
【
図4】マーキング済み製品の生産方法の流れの一例を示すフローチャート。
【
図5】物体及びマーキング済み製品の第1の構成例を示す図。
【
図6】物体及びマーキング済み製品の第2の構成例を示す図。
【
図7】物体及びマーキング済み製品の第3の構成例を示す図。
【
図8】物体及びマーキング済み製品の第4の構成例を示す図。
【
図9】物体及びマーキング済み製品の第5の構成例を示す図。
【
図10A】ビーム成形機構における入射レーザー光の挙動を説明する図。
【
図10B】別のビーム成形機構における入射レーザー光の挙動を説明する図。
【
図10C】さらに別のビーム成形機構における入射レーザー光の挙動を説明する図。
【
図11A】変形例に係るフォトマスクのパターンを示す図。
【
図11B】別の変形例に係るフォトマスクのパターンを示す図。
【
図11C】さらに別の変形例に係るフォトマスクのパターンを示す図。
【
図11D】さらに別の変形例に係るフォトマスクのパターンを示す図。
【
図12】実施例に係る生産方法を実行するためのマーキング装置の構成を示す図。
【
図13】比較例に係る生産方法を実行するためのマーキング装置の構成を示す図。
【
図16A】実施例に係るビーム成形機構を用いて作成されたマーキングの顕微鏡画像。
【
図16B】実施例に係るビーム成形機構を用いて作成されたマーキングの顕微鏡画像。
【
図16C】実施例に係るビーム成形機構を用いて作成されたマーキングの顕微鏡画像。
【
図16D】実施例に係るビーム成形機構を用いて作成されたマーキングの顕微鏡画像。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を参照しつつ、本開示の一実施形態に係るマーキング済み製品の生産方法について説明する。
【0028】
<1.全体構成>
図1は、本開示の一実施形態に係るレーザーマーキング方法(以下、単に「マーキング方法」とも称する)を含む、マーキング済み製品の生産方法を説明する図である。本実施形態に係るマーキング方法によれば、従来のマーキング方法と比較して、1回当たりのマーキングに必要な加工時間が短縮される。このため、特に、複数の物体が連続的に搬送される搬送ラインに好ましく適用することができ、効率的にマーキング済み製品を生産することができる。
【0029】
マーキングの対象となる物体としては特に限定されず、例えば、樹脂製品、金属製品、電子部品(例えば回路素子が樹脂で封止されたもの)、可食物品、ガラス製品、陶製品、木製品、革製品、紙製品、繊維製品、ゴム製品、包装材(例えばプラスチックフィルム)等が挙げられる。物体の表面はどのような材料で構成されていてもよいが、マーキングされたデザインが視認可能となる程度に、レーザー光の照射により色や光沢が変化する性状を有することが好ましい。しかしながら、物体は、マーキングの対象となるマーキング領域に予め着色がなされ、これを消失させることによりマーキングされたデザインの視認性を高めるように加工されてもよいし、マーキングをなされた後に、その部分に着色が施されてもよい。さらに、物体は、レーザー光が照射されることにより変色するような成分を含有する材料から構成されていてもよい。なお、樹脂製品の代表的な例としては、PETボトルが挙げられる。また、可食物品の代表的な例としては、錠剤(糖衣錠、素錠、コーティング錠等)やカプセル剤等が挙げられる。
【0030】
物体にマーキングするマーキングデザインとしては特に限定されず、例えば文字、図案、バーコード等の1次元情報コード、またはQRコード(登録商標)等の2次元情報コード等を含むことができる。
【0031】
以下、PETボトル1の容器本体の側面に、バーコードを含むデザインをマーキングする方法を例にして説明する。PETボトル1は、これに限定されないが、ポリエチレンテレフタレート製の透明な容器本体と、容器本体の上部開口に取り付けられる、熱可塑性樹脂製のキャップとを含む。PETボトル1は、ベルトコンベア等で構成される搬送ライン(搬送路)10に一列に積載され、搬送ライン10に沿って所定の方向に連続的に移動する。搬送ライン10は、例えば1分間あたり600本~1000本程度のPETボトル1を搬送するように構成される。
【0032】
搬送ライン10の側方には、本実施形態に係るマーキング済み製品の生産方法を実行するためのマーキング装置2が設置される。マーキング装置2は、レーザー光により、所定の位置を通過するPETボトル1の側面に対して所定のデザインをマーキングする装置であり、レーザー発振器20、フィールドレンズ21、ビーム成形機構22、マスク部材23及びプロジェクションレンズ24を備える。搬送ライン10とマーキング装置2とは、マーキング済み製品を生産する生産システムを構成する。
【0033】
レーザー発振器20は、レーザー光を発生させる装置である。一般に、レーザー光は指向性が高く、レーザー発振器20から発生するレーザー光は、所定の方向に揃って進行するといってよい。レーザー発振器20としては特に限定されず、エキシマレーザー発振器、UVレーザー発振器、CO2レーザー発振器、及びYAGレーザー発振器等のいずれも用いることができる。物体がPETボトル1である場合には、レーザー発振器20としては、エキシマレーザー発振器が好ましい。本発明者らの検討によれば、レーザー光の波長が193nm~315nm程度であると、厚さ約0.2mmの透明なポリエチレンテレフタレート板に対する透過率が0%T~0.07%T程度となり、ポリエチレンテレフタレートに対する吸収性が高いと言える。これに対し、レーザー光の波長が355.5nmであると、同じポリエチレンテレフタレート板に対する透過率が75%T程度となり、ポリエチレンテレフタレートに対する吸収性は相対的に低いと言える。なお、上記ポリエチレンテレフタレート板は、既存のPETボトルから切り出されたサンプルであるが、上記レーザー光の透過率は、サンプルの厚みには依存しないと考えられる。エキシマレーザーは、希ガスやハロゲン等の混合ガスを用いるレーザーであり、代表的な波長が193nm、248nm、308nm、351nmであることから、PETボトル1に対するマーキングに適している。本実施形態に係るレーザー発振器20(エキシマレーザー発振器)のレーザーパルスの波長は308nmである。
【0034】
このように、レーザー発振器20としては、マーキングの対象となる物体に応じて、適した波長のレーザー光を発生させるものを選択することができる。
【0035】
また、各種レーザー発振器の1ショットの照射時間は、例えばエキシマレーザー発振器は約27ナノ秒であり、TEA-CO2レーザー発振器は約100ナノ秒であり、ナノ秒固体UVレーザー発振器は約50ナノ秒である。このように、エキシマレーザー発振器は、1ショットの照射時間が短いという観点からも好ましい。なお、レーザー発振器20の繰り返し周波数は、マーキングの対象となる物体の搬送速度に応じて、適宜調整することができる。例えば、1分間に1000本のPETボトル1に対するマーキングを行う場合は、1秒間に17ショットの照射が必要となる。この場合、より高い繰り返し周波数を有するレーザー発振器20の周波数を17Hzに設定することで、搬送ライン10上を移動する物体に対し、連続的にマーキングを行うことができる。なお、PETボトル1に限らず、搬送される物体の速度は、例えば1m/秒から2m/秒とすることができる。
【0036】
フィールドレンズ21は、レーザー発振器20とビーム成形機構22との間に配置される光学系部材である。フィールドレンズ21は、レーザー発振器20から発生したレーザー光の進行方向をさらに揃えるとともに、フィールドレンズ21から出射するレーザービームのサイズを調整する。
図1の例では、レーザー光は後述するプロジェクションレンズ24の光軸と平行になるように揃えられ、揃えられたレーザー光が形成するレーザービームは、60mm×20mmのサイズとなるように調整される。例えば、プロジェクションレンズ24の倍率が2倍であるとき、PETボトル1の側面に形成されるマーキングのサイズは、30mm×10mmとなる。
【0037】
ビーム成形機構22は、レーザー発振器20から発生したレーザー光(フィールドレンズ21から出射したレーザービームを含む)が通過する規則的な通路を形成する。具体的には、ビーム成形機構22は、上記レーザー光を所定のパターンに従って分岐する、あるいは上記レーザー光の一部を所定のパターンに従って遮蔽することにより、上記レーザー光の規則的な強度分布を形成する。これにより、ビーム成形機構22を通過したレーザービームは、後述するプロジェクションレンズ24の光軸と平行で、その進行方向に直交する平面において2次元的に配列される複数のレーザービームを形成する。ビーム成形機構22のうち、レーザー光を所定のパターンに従って分岐するものとしては、例えば
図2A及び
図2Bに示すような光学部材22A及び22Bが挙げられる。また、レーザー光の一部を所定のパターンに従って遮蔽するものとしては、
図2Cに示すようなフォトマスク22Cが挙げられる。ビーム成形機構22から出射するレーザー光(複数のレーザービーム)の進行方向は、ビーム成形機構22に入射するレーザー光の進行方向と同じであり、ビーム成形機構22に入射するレーザー光の進行方向と同様に、一方向であるといってよい。
【0038】
光学部材22A及び22Bは、それぞれ、全体として平面視矩形の平板状であり、レーザー光を透過させる透明の無機材料から構成される。このような無機材料としては、例えば二酸化ケイ素(石英、ガラス)、二酸化ケイ素以外の無機ガラス等が挙げられる。光学部材22A及び22Bは、それぞれ、所定の規則的なパターンが形成されたパターン領域220A及び220Bを含む。なお、光学部材22A及び22Bにおいて、パターン領域220A及び220Bが形成された面がレーザー光の入射面となり、パターン領域220A及び220Bが形成されていない平坦面がレーザー光の出射面となる。
【0039】
パターン領域220Aは、複数の平坦部2200Aと、各平坦部2200Aに隣接する複数の曲面部2201Aとからなる規則的なパターンを有する(ただし、符号は代表的なものにのみ付す)。平坦部2200Aは、平面視正方形状を有する平坦面を構成し、その周縁において曲面部2201Aに連続する。曲面部2201Aは、2つの平坦部2200Aの周縁に連続する曲面状の部位であり、側面視半円形状を有する。曲面部2201Aは、平坦部2200Aに対して凹みとなっており、光学部材22Aの厚みは、平坦部2200Aにおいて最も大きく、隣り合う2つの平坦部2200Aの中間(曲面部2201Aの描く半円の頂点)において最も小さい。各平坦部2200Aは、光学部材22Aに入射するレーザー光を、そのまま透過させる。一方、各曲面部2201Aは、光学部材22Aに入射するレーザー光を屈折させて、規則的に配列された、レーザー光が透過しない領域を形成する(
図10A参照)。つまり、各曲面部2201Aは、光学部材22Aに入射するレーザー光を、隣接する平坦部2200Aに分岐させる。これにより、光学部材22Aを入射するレーザー光は、平坦部2200Aに対応する複数のレーザービームに成形される。
【0040】
パターン領域220Bは、複数の平坦部2200B及び2201Bと、平坦部2200B及び2201Bのそれぞれに隣接する複数の曲面部2202Bとからなる規則的なパターンを有する(ただし、符号は代表的なものにのみ付す)。平坦部2200Bは、平面視正方形状を有し、その周縁において曲面部2202Bに連続する。平坦部2201Bも、同様に平面視正方形状を有し、その周縁において曲面部2202Bに連続する。ただし、平坦部2201Bは、平坦部2200Bに対して凹みとなっており、光学部材22Bの厚みは、平坦部2200Bにおいて最も大きく、平坦部2201Bにおいて最も小さい。曲面部2202Bは、平坦部2200Bの周縁と平坦部2201Bの周縁とに連続する曲面状の部位であり、断面視四分円形状を有する。各平坦部2200B及び2201Bは、光学部材22Bに入射するレーザー光を、ともにそのまま透過させる。一方、各曲面部2202Bは、光学部材22Bに入射するレーザー光を屈折させて、規則的に配列された、レーザー光が透過しない領域を形成する(
図10B参照)。つまり、各曲面部2202Bは、光学部材22Bに入射するレーザー光を、隣接する平坦部2201Bに分岐させる。これにより、光学部材22Bを入射するレーザー光は、平坦部2200B及び2201Bに対応する複数のレーザービームに成形される。
【0041】
光学部材22A及び22Bの厚みは、例えば1.5mmとすることができる。光学部材22Aの平坦部2200Aの1辺の長さ、光学部材22Bの平坦部2200Bの1辺の長さ及び平坦部2201Bの1辺の長さは、後述するプロジェクションレンズ24の倍率に応じて適宜設計することができるが、例えば10μm~300μmとすることができる。同様に、光学部材22Aの曲面部2201Aの描く円弧の半径、及び光学部材22Bの曲面部2202Bの描く円弧の半径は、適宜設計することができるが、例えば1μm~100μmとすることができる。なお、曲面部2202Bの描く円弧の半径は、平坦部2200Bと平坦部2201Bとの高低差と等しい。また、光学部材22Aにおいて、隣接する平坦部2200Aの中心の間隔は、例えば10μm~100μmとすることができ、光学部材22ZBにおいて、隣接する平坦部2200B及び平坦部2201Bの中心の間隔は、例えば15μm~150μmとすることができる。また、光学部材22A及び22Bにより成形されるレーザービームの本数は特に限定されないが、例えばPETボトル1の表面の30mm×13mmの範囲に30μm間隔でレーザー痕を形成する場合、10000本~15000本とすることができる。
【0042】
フォトマスク22Cは、平面視矩形の板状の部材であり、レーザー光の入射面である面220Cを有する。フォトマスク22Cは、
図2Cに示す面220がレーザー光の進行方向に対して直交するように配置される。面220C上には、規則的に配列された複数の正方形状の透過領域221と、遮蔽領域222とが形成される。透過領域221は、それぞれレーザー光を透過させる。遮蔽領域222は、レーザー光を遮蔽し、殆ど透過させないか、全く透過させない。結果として、フォトマスク22Cは、全体としてレーザー光の規則的な通路を形成する。つまり、レーザー光の進行方向に対して直交する面におけるレーザー光の強度分布は、規則的なパターンとなる。このようなフォトマスク22Cは、例えば、合成石英製の基板の片面に、クロム膜を所定のパターンで積層することにより形成することができる。つまり、透過領域221はクロム膜が積層されていない基板の部分で形成することができ、遮蔽領域222は、それぞれクロム膜で形成することができる。
【0043】
なお、1つの透過領域221Cのサイズは、これを透過するレーザー光のサイズが、後述するマスク部材23のスリット231の最小サイズに対して充分小さくなるように形成される。例えば、後述するマスク部材23には複数のスリット231が形成されているが、本実施形態では、そのうち最も幅が狭いスリットの幅は0.25mmである。このスリットを通過するレーザービームは、同スリットの幅方向に対して10列以上あることが好ましく、20列以上あることがより好ましく、30列以上あることがさらに好ましい。プロジェクションレンズ24の倍率にもよるが、レーザー光の通路が、スリット231のサイズに対し、上記のような密度で形成されることで、PETボトル1に形成されるバーコードの光学的読み取り性が向上する。なお、上記スリット231の最小幅や、スリット231のサイズに対する、好ましいレーザービームの列数(密度)の範囲は上記実施形態における例示であり、マーキングのデザインやマーキングの対象となる物体に応じて変化し得る。
【0044】
フォトマスク22Cは、上述した例に限られず、透過領域221及び遮蔽領域222は、それぞれ他の材料を用いて形成することができるし、他のパターンで形成することができる。また、フォトマスク22Cは、入射するレーザー光の一部を遮蔽して、全体としてレーザー光の規則的な通路を形成するビーム成形機構22の一例であるため、このようなビーム成形機構22は、フォトマスクに限定されない。ここで、「レーザー光の一部を遮蔽する」とは、レーザー光の一部を吸収することと、レーザー光の一部を反射し、搬送ライン10側への透過を妨げることとを含む。
【0045】
ビーム成形機構22の他の例としては、上記フォトマスク22Cにおける遮蔽領域222が、高反射ミラーで形成された部材が挙げられる。高反射ミラーとしては、例えば誘電体多層膜ミラー、金属ミラー等が挙げられる。誘電体多層膜ミラーは、高屈折率の誘電体膜と低屈折率の誘電体膜が交互に積層されて構成されており、所定の波長に対して高い反射率を示す反射部材である。金属ミラーは、表面の金属コーティングにより光を反射する反射部材であり、例えば、アルミミラー、銀ミラー、金ミラー等が挙げられ、この中ではアルミミラーが好ましい。例えば、ビーム成形機構22は、上記高反射ミラーに、(複数の透過領域221としての)複数の貫通孔またはレーザー光を透過する材料で形成される複数の透過孔部を規則的なパターンで形成することで得られる部材であってもよい。また、ビーム成形機構22は、レーザー光を透過する基材の片面上に、遮蔽領域222としての上記高反射ミラーを積層することで得られる部材であってもよい。
【0046】
本実施形態に係るマスク部材23は、ビーム成形機構22とプロジェクションレンズ24、あるいは物体との間に配置される。
図3は、マスク部材23の一例である。
図3のマスク部材23は、マーキングのデザインに対応する形状のデザインパターン230が形成された平面視矩形の板状の部材であり、例えば金属によって形成され、レーザー光を透過させない厚みを有する。
図3に示す例では、バーコードに対応するデザインパターン230は、黒色で示される複数の透過領域によって形成される。この透過領域は、それぞれ、マスク部材23を貫通する矩形状または線状のスリット231によって形成され、入射するレーザー光を通過させる。なお、スリット231の最小サイズは、上述したように、入射する各レーザービームの断面積よりも十分大きく、ビーム成形機構22から出射した複数のレーザービームは、そのまま複数のレーザービームとしてスリット231を通過する。本実施形態に係るマスク部材23は、
図3に示す面がビーム成形機構22の出射面に対面するように配置される。マスク部材23は、ビーム成形機構22と接触するように配置されてもよいし、ビーム成形機構22から間隔を空けて配置されてもよい。
【0047】
プロジェクションレンズ24は、マスク部材23と物体との間に配置される光学系部材である。プロジェクションレンズ24は、マスク部材23から出射した複数のレーザービームを、PETボトル1の側面上の所定の範囲に収束させる。
図1の例では、プロジェクションレンズ24により、複数のレーザービームは、PETボトル1の側面において縦30mm×横10mmの範囲に収束する。PETボトル1の側面に到達した複数のレーザービームのエネルギー密度は、200mJ/cm
2以上となることが好ましく、400mJ/cm
2以上となることがより好ましく、500mJ/cm
2以上となることがさらに好ましく、600mJ/cm
2以上となることが特に好ましい。ただし、この範囲は、エキシマレーザー発振器によってPETボトル1にバーコードをマーキングする場合を例とした範囲であり、レーザーの種類、マーキングのデザイン、及びマーキングの対象となる物体によって変化し得る。PETボトル1の側面に到達した各レーザービームは、PETボトル1の側面のポリエチレンテレフタレートを消失させ、表面に微細な凹凸を形成する。凹凸が形成された部分は、可視光の拡散により透明性が失われ、白化する。これにより、PETボトル1の側面において、縮小されたデザインパターン230の通りにマーキングのデザインを表示する、マーキング領域Mが形成される。
【0048】
上記微細な凹凸は、ビーム成形機構22の平坦部2200A、平坦部2200B及び2201B、あるいは透過領域221に対応して形成される複数の凹部と、凹部のそれぞれを囲む凸部から形成され、規則的なパターンを形成する凹凸である。この凹凸は、ミクロレベルのサイズ及び高低差を有する。マーキングのデザインの視認性を高める観点からは、単位面積当たりに形成される凹部の数は、より多いことが好ましい。
【0049】
<2.マーキング済み製品の生産方法の流れ>
図4は、上述したマーキング済み製品の生産方法を実行する場合の各工程の流れの一例を示すフローチャートである。以下、説明する。
【0050】
まず、所望するマーキングのデザインに対応するデザインパターン230が形成されたマスク部材23を準備する(ステップS1)。デザインパターン230のサイズは、物体に形成されるマーキングの実寸と一致している必要はなく、プロジェクションレンズ24による縮小を考慮したサイズとすることができる。
【0051】
次に、ビーム成形機構22とマスク部材23とを、レーザー発振器20と搬送ライン10との間、より具体的にはフィールドレンズ21とプロジェクションレンズ24との間に、この順に並ぶように配置する(ステップS2)。なお、レーザー発振器20、フィールドレンズ21、ビーム成形機構22、マスク部材23及びプロジェクションレンズ24は、必ずしも一直線上に並ぶように配置される必要はなく、これらの部材が並ぶ順とは、レーザー発振器20から発生したレーザー光が、これらを通過する順をいうものとする。搬送ライン10上の搬送ライン10は、レーザー発振器20から発生し、ビーム成形機構22及びマスク部材23を通過したレーザー光の進行方向が、搬送ライン10上のPETボトル1のマーキング領域Mとなる領域に対して垂直となるように配置されることが好ましい。
【0052】
次に、搬送ライン10による複数のPETボトル1の搬送を開始する(ステップS3)。搬送速度は一定であってよい。レーザー発振器20の周波数は、搬送速度に合わせて適宜設定することができる。
【0053】
続いて、マーキング装置2によるマーキングを開始する(ステップS4)。すなわち、レーザー発振器20から搬送中のPETボトル1に向けたレーザー光照射を開始する。マーキングの開始は、例えばPETボトル1が最初にプロジェクションレンズ24の前を通過するタイミングで行われる。本実施形態に係る生産システムには、物体検出センサ(不図示)が備えられる。物体検出センサは、各PETボトル1がプロジェクションレンズ24に接近したことを検出すると、マーキング装置2の動作を制御するコントローラ(不図示)に対して、検出信号を出力するように構成される。コントローラは、上記検出信号に基づき、各PETボトル1に対してレーザー発振器20からレーザー光を照射するタイミングを制御する。物体検出センサとしては特に限定されず、光電センサ、レーザーセンサ、超音波センサ、画像センサ等、どのようなものでも用いることができる。また、物体検出センサを設置する位置も特に限定されない。
【0054】
その後、プロジェクションレンズ24の前を順次通過するPETボトル1の各々に対し、1ショットのレーザー光照射が同様の要領で繰り返し行われる。このマーキングの繰り返しは、例えば搬送ライン10を停止した、搬送ライン10においてプロジェクションレンズ24の前を通過するPETボトル1がなくなった等の理由により、上記物体検出センサにより新たなPETボトル1が検出されない時間が一定以上継続すると停止する。
【0055】
<3.物体及びマーキング済み製品の構成例>
図5~9は、それぞれ、レーザーマーキングの対象となる物体と、同物体にレーザーマーキングが施されることにより生産される、マーキング済み製品の構成例を示す図である。物体は、それぞれ、樹脂製の透明な容器本体114A~114Eを備えるPETボトル11A~11Eである。容器本体114A~114Eは、底面部110A~110Eと、底面部110A~110Eの外周縁から上方に延びる側面部111A~111Eと、肩部112A~112Eと、口部113A~113Eとを含む。口部113A~113Eは、上部開口を規定する。肩部112A~112Eは、側面部111A~111Eの上端と口部113A~113Eの下端とに連続し、鉛直方向に対して傾斜する傾斜面、または湾曲面を構成する。
【0056】
図5に示すように、PETボトル11Aの側面部111Aには、その全周にわたって延びる凹み部115Aが形成される。凹み部115Aは、側面部111Aにおいて、他の部分よりも容器本体114Aの内側に窪んだ部分である。言い換えると、側面部111Aは、凹み部115Aの周縁1151A、1152Aと底面1150Aとを規定する。底面1150Aは、凹み部115Aの内面において最奥の位置にあり、容器本体114Aの外部空間に面する。例えば、上記マーキング済み製品の生産方法により、PETボトル11Aの凹み部115Aの底面1150Aにレーザーマーキングを施すと、底面1150Aにマーキング領域Mが形成されたマーキング済み製品としてのPETボトル1Aが得られる。この場合、上記マーキング済み製品の生産方法において、搬送中のPETボトル11Aにレーザー光を照射することは、底面1150Aにレーザー光を照射することを含む。マーキング領域Mは、レーザー痕により形成された複数の凹部の集合または複数の凸部の集合を含み、所定のデザインを表示する。凹み部115Aの最小深さ(周縁1151Aまたは周縁1152Aから底面1150Aまでの距離)は特に限定されず、マーキング領域Mの凸部が周縁1151A及び周縁1152Aに達しない程度の深さであれば良い。
【0057】
図6に示すように、PETボトル11Bの側面部111Bには、底面部110Bの外周縁から側面部111Bの上端(肩部112Bとの境界)にわたって延びる凹み部115Bが形成される。凹み部115Bは、側面部111Bにおいて、他の部分よりも容器本体114Bの内側に窪んだ部分である。言い換えると、側面部111Bは、凹み部115Bの周縁1151B、1152Bと底面1150Bとを規定する。底面1150Bは、容器本体114Bの外部空間に面するとともに、凹み部115Bの内面において最奥の面であり、好ましくは、平坦面である。例えば、上記マーキング済み製品の生産方法により、PETボトル11Bの底面1150Bにレーザーマーキングを施すと、底面1150Bにマーキング領域Mが形成されたマーキング済み製品としてのPETボトル1Bが得られる。この場合、上記マーキング済み製品の生産方法において、搬送中のPETボトル11Bにレーザー光を照射することは、底面1150Bにレーザー光を照射することを含む。マーキング領域Mは、レーザー痕により形成された複数の凹部の集合または複数の凸部の集合を含み、所定のデザインを表示する。凹み部115Bの最小深さ(周縁1151Bまたは周縁1152Bから底面1150Bまでの距離)は特に限定されず、マーキング領域Mの凸部が周縁1151B及び周縁1152Bに達しない程度の深さであれば良い。
【0058】
図7に示すように、PETボトル11Cの側面部111Cには、凹み部115Cが形成される。凹み部115Cは、側面部111Cにおいて、他の部分よりも容器本体114Cの内側に窪んだ部分である。言い換えると、側面部111Cは、凹み部115Cの周縁1151Cと底面1150Cとを規定する。底面1150Cは、容器本体114Cの外部空間に面するとともに、凹み部115Cの内面において最奥の面であり、好ましくは、平坦面である。例えば、上記マーキング済み製品の生産方法により、PETボトル11Cの底面1150Cにレーザーマーキングを施すと、底面1150Cにマーキング領域Mが形成されたマーキング済み製品としてのPETボトル1Cが得られる。この場合、上記マーキング済み製品の生産方法において、搬送中のPETボトル11Cにレーザー光を照射することは、底面1150Cにレーザー光を照射することを含む。なお、
図7では、PETボトル11Cは凹み部115Cの側方から視た状態で、PETボトル1Cは凹み部115Cの正面から視た状態でそれぞれ示されており、凹み部115Cは、正面視矩形である。マーキング領域Mは、レーザー痕により形成された複数の凹部の集合または複数の凸部の集合を含み、所定のデザインを表示する。凹み部115Cの最小深さ(周縁1151Cから底面1150Cまでの距離)は特に限定されず、マーキング領域Mの凸部が周縁1151Cに達しない程度の深さであれば良い。
【0059】
図8に示すように、PETボトル11Dの側面部111Dには、その外表面から突出する突出部115Dが形成される。突出部115Dは、周囲の他の部分から容器本体114Dの外側に突出していればよく、その形状は特に限定されない。例えば、上記マーキング済み製品の生産方法により、PETボトル11Dの突出部115Dの近傍にレーザーマーキングを施すと、突出部115Dの近傍にマーキング領域Mが形成されたマーキング済み製品としてのPETボトル1Dが得られる。この場合、上記マーキング済み製品の生産方法において、搬送中のPETボトル11Dにレーザー光を照射することは、PETボトル11Dの突出部115Dの近傍にレーザー光を照射することを含む。なお、
図8では、PETボトル11Dは突出部115Dの側方から視た状態で、PETボトル1Dは突出部115Dの正面から視た状態でそれぞれ示されている。マーキング領域Mは、例えば突出部115Dの下に形成される。側面部111Dの外表面を基準とする突出部115Dの最大高さは特に限定されず、マーキング領域Mの凸部よりも外方に突出するような高さであれば良い。マーキング領域Mは、できる限り突出部115Dの周縁の近傍に形成されることが好ましい。
【0060】
図9に示すように、PETボトル11Eの側面部111Eには、その外表面から突出する複数の突出部115Eが形成される。突出部115Eは、それぞれ、周囲の他の部分から容器本体114Dの外側に突出していればよく、その形状は特に限定されない。また、
図9では突出部115Eが6個形成され、略矩形状に配置されているが、突出部115Eが一定の間隔を空けて2個以上形成されていれば、その数や配置は特に限定されない。例えば、上記マーキング済み製品の生産方法により、PETボトル11Eの複数の突出部115Eで囲まれる領域にレーザーマーキングを施すと、複数の突出部115Eで囲まれる領域にマーキング領域Mが形成されたマーキング済み製品としてのPETボトル1Eが得られる。この場合、上記マーキング済み製品の生産方法において、搬送中のPETボトル11Eにレーザー光を照射することは、PETボトル11Eの複数の突出部115Eで囲まれる領域、あるいは2つの突出部115Eの間の領域にレーザー光を照射することを含む。側面部111Eの外表面を基準とする各突出部115Eの最大高さは特に限定されず、マーキング領域Mの凸部よりも外方に突出するような高さであれば良い。
【0061】
<4.特徴>
(1)上記実施形態に係るマーキング済み製品の生産方法によれば、ビーム成形機構22により、レーザー光を所定の走査線に沿って繰り返し照射したときに形成されるドットパターンに相当する複数のレーザービームを形成することができる。つまり、1つの物体に対して、1ショットのレーザー光照射で所望のマーキングを施すことができるので、高速で移動中の物体に対しても、その速度を低下させることなく容易にマーキングを行うことができる。なお、レーザーマーキングの速度を向上させる方法としては、レーザー発振器を複数設置する、レーザービームを複数の物体に分割して、複数の物体に同時にマーキングを行う方法も考えられる。しかし、これらの方法では、装置が大掛かりになる、コストが増大する等のデメリットがあり、また、一般的な搬送ラインにおける物体の搬送速度に見合ったマーキング速度を達成するのにも限界があった。この点、本実施形態に係るマーキング済み製品の生産方法では、1ショットの照射時間が10~30ナノ秒程度であるため、物体の搬送速度が高速であっても容易に対応することができる。また、1ショットの照射時間が上記範囲であると、レーザー光照射中の物体の移動距離を、マーキングデザインを表す規則的な凹凸形状の寸法に対して充分小さくできるため、上記規則的な凹凸形状が、搬送速度による影響を受けて物体に適切に形成されない事態を回避することができる。
【0062】
(2)上記実施形態に係るマーキング済み製品の生産方法によれば、ビーム成形機構22を通過した複数のレーザービームが、マスク部材23により所望のデザインに形作られる。このため、所望のデザインに対応するデザインパターンが形成されたマスク部材23を準備することで、容易にマーキングのデザインを変更することができる。
【0063】
(3)上記実施形態に係るマーキング済み製品の生産方法によれば、プロジェクションレンズ24により複数のレーザービームを収束させるので、マーキング対象となる物体のサイズに合わせてマーキングを行うことができる。
【0064】
(4)
図10A~Cは、それぞれ、上記実施形態に係る光学部材22A、光学部材22B及びフォトマスク22Cを例に、入射するレーザー光の挙動の相違を模式的に説明する図である。
図10A及び
図10Cから分かるように、光学部材22Aは、フォトマスク22C等、レーザー光を反射する材料からなる遮蔽領域が形成されたビーム成形機構22とは異なり、入射するレーザー光の強度分布を所定のパターンに従って形成することで、ドットパターンに相当するレーザービームを形成する。このため、フォトマスク22C等と比較して、入射するレーザー光をマーキングのために有効利用することができる。また、フォトマスク22C等では、レーザー光を反射することにより遮蔽領域を形成する材料が劣化するおそれがあるのに対し、光学部材22Aでは、平坦部2200A及び曲面部2201Aがともにレーザー光を透過させる材料で形成されているため、劣化のおそれがない。上述した光学部材22Aの利点は、光学部材22Bについても同様に該当する。
【0065】
(5)上述したように、レーザー光の照射により形成されるマーキング領域Mは、物体表面の材料を消失させることにより形成される複数の微細な凹部の集合、または複数の微細な凸部の集合を含む微細な凹凸パターンを有する。微細な凹凸パターンは、他の物体との接触により崩れやすい。特に、マーキング済み製品がPETボトル1であると、市中に流通するときに、他の物体との接触により凹凸パターンが崩れ、マーキング領域Mのバーコードがバーコードリーダーにより正しく読み取れない等の問題が生じ得る。しかし、上記PETボトル1A~1Cでは、マーキング領域Mが凹み部115A~115Cの内面に形成されているため、他の物体との接触が生じにくく、マーキング領域Mの凹凸パターンが崩れにくい。また、上記PETボトル1Dでは、マーキング領域Mが突出部115Dの近傍に形成されているため、マーキング領域Mが他の物体と接触することが突出部115Dにより妨げられ、マーキング領域Mの凹凸パターンが崩れにくい。上記PETボトル1Eでは、マーキング領域Mが複数の突出部115Eで囲まれる領域に形成されているため、マーキング領域Mが他の物体と接触することが複数の突出部115Eにより妨げられ、マーキング領域Mの凹凸パターンが崩れにくい。従って、PETボトル1A~1Eによれば、マーキング領域Mに表示されたデザインの視認性、及び、コードリーダー等による情報コードの可読性を維持する効果が奏される。
【0066】
(6)PETボトル11Aでは、凹み部115Aが全周にわたって延びる。これにより、搬送ライン10での搬送中に、レーザー発振器20に対するPETボトル11Aの回転位置に依存せず、凹み部115Aの底面1150Aにレーザー光を照射することができる。また、PETボトル11B及び11Cでは、底面1150B及び底面1150Cを平坦面として形成することができる。これにより、側面部111B及び111Cの形状によらず、レーザー光を照射する位置による焦点距離差を解消することができ、マーキング領域Mにおいて、より正確なデザインを表示することができる。PETボトル11D及び11Eでは、搬送ライン10が所定の位置で突出部115D及び115Eに接触するように構成することにより、レーザー発振器20を通過する前に、PETボトル11D及び11Eの回転位置を自動で調整するための機構として利用することができる。
【0067】
<5.変形例>
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない限りにおいて、種々の変更が可能である。例えば、以下の変更が可能である。また、以下の変形例の要旨は、適宜組み合わせることができる。
【0068】
(1)フィールドレンズ21及びプロジェクションレンズ24は、それぞれ1つのレンズで構成されてもよいし、複数のレンズを含んでいてもよい。
【0069】
(2)フォトマスク22Cは、上記実施形態のように、正方形状の透過領域221が形成されたものに限られない。透過領域及び遮蔽領域で形成されるフォトマスク22Cの別のパターンの例としては、例えば
図11A~
図11Dのようなパターンが挙げられる。
図11Aは、より大きな正方形状の透過領域221aと、より小さな正方形状の透過領域221bとが組み合わされたパターンの例である。
図11Bは、正六角形状の透過領域221cが規則的に配列されたパターンの例である。
図11Cは、
図11Aの例において、隣接する2つの透過領域221aの間に、より小さな正方形状の透過領域221dをさらに配置し、連続したより大きな透過領域と、より小さな透過領域221bとが形成されたパターンの例である。
図11Dは、正方形状の透過領域221eの内側と外側のそれぞれに、正方形状の遮蔽領域222a及び222bが形成されたパターンの例である。なお、上述した透過領域及び遮蔽領域で形成されるパターンの構成例は、いずれも、フォトマスク22Cだけではなく、遮蔽領域が高反射ミラーで形成された部材についても同様に適用することができる。
【0070】
(3)マスク部材23は、上記実施形態のように、スリット231が形成されたものに限られない。例えば、フォトマスク22Cと同様に、合成石英製の基板の片面に、クロム膜を所定のパターンで積層して、レーザー光を遮蔽する遮蔽領域と、レーザー光を透過させる透過領域とを形成したものとすることができる。あるいは、ビーム成形機構22の構成例で説明したように、高反射ミラーにデザインパターン230に相当する貫通孔、あるいはレーザー光を透過する材料で形成される透過孔部が形成された部材でマスク部材23を構成してもよい。また、レーザーを透過する基材の片面上に、高反射ミラーが積層された部材でマスク部材23を構成してもよい。この場合は、基材において高反射ミラーが積層されていない部分がデザインパターン230に相当する。しかしながら、マーキングのデザインに対応するデザインパターン230は、レーザー光を透過する透過領域全体(あるいはスリット全体)で構成してもよいし、レーザー光を遮蔽する遮蔽領域全体(あるいはスリットが形成されていない部分)で構成してもよい。デザインパターン230が遮蔽領域全体、あるいはスリットが形成されていない部分で形成される場合、物体表面において、微細な凹凸が形成された領域に囲まれる、無加工の領域がマーキングのデザインとなる。なお、耐久性の観点及びより自由度が高いデザインパターン230を形成できるという観点からは、マスク部材23としては、基材にクロム膜を積層したもの、高反射ミラーに貫通孔を形成したもの及び基材に高反射ミラーを積層したものが好ましい。
【0071】
(4)上述したビーム成形機構22の各構成例(光学部材22A、光学部材22B、フォトマスク22C、高反射ミラーに貫通孔または透過孔部を形成したもの、及び基材に高反射ミラーを積層したもの)及びマスク部材23(スリット231を有するもの、基材にクロム膜を積層したもの、高反射ミラーに貫通孔または透過孔部を形成したもの、及び基材に高反射ミラーを積層したもの)は、それぞれ自在に組み合わせることができる。また、ビーム成形機構22とマスク部材23とを一体的に形成し、1つの部材としてもよい。より具体的には、合成石英製の基板の片面に積層されたクロム膜の規則的なパターンが、レーザー光を規則的に分割するパターンと、デザインパターンとを兼ねるようにしてもよい。また別の例では、高反射ミラーと貫通孔または透過孔部、あるいは高反射ミラーと基材とで形成される規則的なパターンが、レーザー光を規則的に分割するパターンと、デザインパターンとを兼ねるようにしてもよい。つまり、レーザー光を規則的な通路により分割することと、デザインパターン230の通りにレーザー光を透過させることとが、同一の層で行われるようにしてもよい。ビーム成形機構22とマスク部材23とが1つの部材で構成される場合、上記マーキング済み製品の生産方法において、「レーザー光の規則的な強度分布を形成するビーム成形機構を配置すること」と、「デザインパターンが形成されたマスク部材を配置すること」とは、同時に実行される。
【0072】
(5)ビーム成形機構22とマスク部材23との位置関係は、上述したものに限られない。例えば、マスク部材23をプロジェクションレンズ24と搬送ライン10(物体)との間に配置することもできる。さらに、マスク部材23は、レーザー発振器20とビーム成形機構22との間に配置することもできる。しかし、マーキングのデザインをより鮮明に物体に形成する観点からは、ビーム成形機構22とマスク部材23とはできるだけ間隔を空けずに配置されるか、一体的に構成されることが好ましい。
【0073】
(6)上記PETボトル1、PETボトル11A~11E及びPETボトル1A~1Eの形状は、適宜変更されてよい。例えば、側面部111A~111Eは角筒状であってもよいし、肩部112A~112Eは水平であってもよい。また、これらは、ポリエチレンテレフタレートだけではなく、それ以外の熱可塑性樹脂から主として構成されてもよく、不透明または半透明であってもよいし、着色がなされていてもよい。凹み部115Aは、側面部111Aではなく、肩部112Aに形成されてもよい。つまり、PETボトル1Aにおいて、マーキング領域Mは、肩部112Aに形成されてもよい。凹み部115Aの底面1150Aは、平坦面として形成されてもよい。凹み部115Bは、側面部111Bの上端にまで延びていなくてもよいし、肩部112Bにまで延びていてもよい。凹み部115Bは、肩部112Aに形成されてもよい。つまり、PETボトル1Bにおいて、マーキング領域Mは、肩部112Bに形成されてもよい。凹み部115Bの底面1150Bは、湾曲面として形成されてもよい。凹み部115Cは、肩部112Cまたは底面部110Cに形成されてもよい。つまり、PETボトル1Cにおいて、マーキング領域Mは、肩部112Cまたは底面部110Cに形成されてもよい。凹み部115Cの底面1150Cは、湾曲面として形成されてもよい。凹み部115Cの正面視における形状も適宜変更されてよい。なお、凹み部115A~111Cにおいて、マーキング領域Mは内面に形成されていれば良く、必ずしも底面1150A~1150Cに形成されていなくてもよい。突出部115Dは、例えば無端の環状とすることができ、突出部115Dで囲まれる領域内にマーキング領域Mを形成することができる。突出部115Dは、肩部112Dまたは底面部110Dに形成されてもよい。つまり、PETボトル1Dにおいて、マーキング領域Mは、肩部112Dまたは底面部110Dに形成されてもよい。突出部115Eは、肩部112Eまたは底面部110Eに形成されてもよい。つまり、PETボトル1Eにおいて、マーキング領域Mは、肩部112Eまたは底面部110Eに形成されてもよい。上記凹み部115A~111C、突出部115D及び突出部115Eのうち少なくとも2種は、同じ樹脂製容器に形成されてもよい。
【0074】
(7)上記フローチャートのステップS1~S4の順序は、適宜変更することができる。
【0075】
(8)搬送ライン10と、マーキング装置2との位置関係は適宜変更することができる。すなわち、生産システムの構成は、上記実施形態のものに限られず、適宜変更することができる。例えば、マーキング装置2は、搬送ライン10の上方または下方から物体に向けてレーザー光を照射するように構成されてもよい。搬送ライン10により搬送されるときの物体の姿勢も特に限定されず、例えばPETボトル1であれば、容器本体の側面が上方を向くように搬送されるようにする等、適宜変更することができる。搬送ライン10は、ベルトコンベアで物体を搬送するものに限られず、バケットや板(フライト)で物体を搬送するもの、吊り下げ具で物体を搬送するもの等であってもよい。また、上記実施形態で説明した物体検出センサは省略されてもよく、他の手段によってレーザー光照射のタイミングや停止のタイミングを制御するように構成されてもよい。
【実施例】
【0076】
以下、本開示の実施例について説明する。ただし、本開示は、以下の実施例に限定されない。
【0077】
<実験1>
図12に示すようなマーキング装置3を準備し、実施例1~4に係るビーム成形機構35をそれぞれ用いて、試料4の表面に縦13mm×横30mmのサイズのバーコードのマーキングを形成した。マーキング装置3は、ビーム成形機構35の他に、エキシマレーザー発振器30、ビームシェーパー31、ビームホモジナイザー32、コリメーターレンズ33、フィールドレンズ34、マスク部材36、プロジェクションレンズ37、及びサンプルステージ38を備えていた。エキシマレーザー発振器30は、波長308nmのレーザー光を1ショットあたり約27ナノ秒で照射し、試料4の表面に達したレーザービームのエネルギー密度が、1ショットあたり500mJ/cm
2となるように構成された。ビームシェーパー31及びビームホモジナイザー32は、それぞれ公知のビームシェーパー及びビームホモジナイザーから構成され、エキシマレーザー発振器30で発生させたレーザー光のビームをフラットトップ化するとともに、上記ビームの強度分布の経時変化を均一化するように構成された。マスク部材36は、
図13に示すように、バーコードのクワイエットゾーン及びスペースに対応するスリットが形成された、金属製の板であった。マーキング装置3は、サンプルステージ38上に載置された試料4の表面上において、1ショットで上記サイズのマーキングを形成できるように構成された。試料4は、縦100mm×横80mm×厚さ1mmの透明なポリエチレンテレフタレート板とした。
【0078】
実施例1及び2に係るビーム成形機構35は、それぞれ上記実施形態の光学部材22Aと同様のパターン領域220Aが形成されたガラス板であり、平坦部2200Aの1辺の長さが互いに相違していた。また、実施例3及び4に係るビーム成形機構35は、それぞれ上記実施形態の光学部材22Bと同様のパターン領域220Bが形成されたガラス板であり、平坦部2200B及び2201Bの1辺の長さが互いに相違していた。以下の表1に、実施例1~4に係るパターン領域の各部の寸法を示す。なお、寸法公差は、+-0.15μmとした。
【表1】
【0079】
また、
図13に示すようなマーキング装置5を準備し、マーキング装置5を用いて、別の試料4の表面に縦13mm×横30mmのサイズのバーコードのマーキングを形成した(比較例)。マーキング装置5は、UVレーザー発振器50、X軸用ガルバノスキャナ51、Y軸用ガルバノスキャナ52、Fθレンズ53、及びサンプルステージ54を備えていた。UVレーザー発振器50は、出力3W、周波数100kHzの条件にて波長355nmのレーザー光を、試料4の表面における1ショットあたりの照射直径が30μmとなるよう照射した。試料4の表面に達したレーザービームのエネルギー密度は、1ショットあたり5.7J/cm
2となる。試料4の表面において、各ショットの照射で形成されるレーザー痕が互いに重ならず、かつ最大の密度で形成されるようにX軸用ガルバノスキャナ51及びY軸用ガルバノスキャナ52を制御しつつ、上記マスク部材36のスリットに相当する部分のマーキングを形成した。
【0080】
<結果1>
マーキング装置3を用いて形成されたマーキング全体と、マーキング装置5を用いて形成されたマーキング全体とを肉眼で観察し、いずれのマーキングでも、不透明な白色の領域と透明な領域とにより、意図したバーコードのデザインが形成されていることを確認した。次に、マーキング装置3を用いた場合とマーキング装置5を用いた場合とで、試料4にマーキングを形成するのに要した時間を比較した。マーキング装置3を用いた場合では、実施例1~4に係るビーム成形機構35のいずれを使用しても、1ショット分のレーザー照射(約27ナノ秒)でマーキングを形成することができた。これに対して、マーキング装置5を用いた場合では、同様のサイズ及びデザインのマーキングを形成するのに約5.5秒を要した。これにより、実施例1~4に係るビーム成形機構35を備えるマーキング装置3を用いれば、一定速度で搬送される物体に対して、充分に速く所定のデザインのマーキングを形成できることが確認できた。
【0081】
さらに、実施例1~4に係るビーム成形機構35を用いて形成したマーキングについて、加工深さ(μm)を3D測定レーザー顕微鏡(オリンパス社製、OLS)で測定するとともに、マーキングされたバーコードの反射値(%)を、バーコード検証機(STRATIX Laser Xminer)で測定した。結果を以下の表2に示す。反射値(%)は、バーコードの各クワイエットゾーン及び各スペースにおいて、入射する赤外線がどのくらい反射されたかを示す値であり、最小値が80%以上であればバーコード読み取り機による読み取りに支障がないといえる。表2の値は各クワイエットゾーン及び各スペースの平均値である。表2から、実施例1~4では互いに加工深さに差があるものの、バーコードとしての読み取りにはいずれも支障がない程度のマーキングが形成できることが確認できた。
【表2】
【0082】
また、参考までに、実施例1に係るビーム成形機構35を備えるマーキング装置3を用いて形成されたマーキングの一部(バーコードのクワイエットゾーンに対応する部分)を電子顕微鏡で撮像した画像を
図15に示す。
図15に示すように、試料4の表面では、レーザー光が到達して白く発色する部分と、レーザー光が到達せずに透明のまま残された部分とが、規則的なパターンを形成している。このことから、ビーム成形機構35により、その平坦部及び曲面部が形成するパターンに対応したレーザー光の規則的な強度分布が形成されたことが確認できた。
【0083】
<実験2>
レーザー光のエネルギー密度を変えた以外は、実験1と同様の条件にて試料4の表面にマーキングを形成した(実施例5~8)。エネルギー密度は、以下の1~4の条件とした。
条件1:200mJ/cm2
条件2:400mJ/cm2
条件3:600mJ/cm2
条件4:800mJ/cm2
条件1~4のそれぞれのエネルギー密度に対し、実験1と同様の方法で、形成されたマーキングの加工深さ(μm)と、マーキングされたバーコードの反射値(%)とを測定した。
【0084】
<結果2>
結果は、以下の表3のようになった。また、参考のため、各エネルギー密度で形成されたマーキングを電子顕微鏡で撮像した画像を、
図16A~
図16Dに示す。
【表3】
【0085】
表3の結果から、加工深さはエネルギー密度が高ければ高いほど深くなることが分かった。また、加工深さがより深いと、
図16A~
図16Dに示すように、試料4の表面に突起がより形成され易いことが分かった。より多く、またはより大きな突起が形成されると、試料4の表面における白い部分と透明部分とのコントラストが強くなる傾向にある。また、反射値は、エネルギー密度が200mJ/cm
2でも十分高いといってよいが、400mJ/cm
2以上であると、より高くなることが確認された。
【符号の説明】
【0086】
1、1A~1E、11A~11E PETボトル
2 マーキング装置
10 搬送ライン
20 レーザー発振器
21 フィールドレンズ
22 ビーム成形機構
22A 光学部材
22B 光学部材
22C フォトマスク
23 マスク部材
24 プロジェクションレンズ
220 面
220A、220B パターン領域
221、221a~e 透過領域
222、222a、222b 遮蔽領域
230 デザインパターン
231 スリット
2200A 平坦部
2201A 曲面部
2200B、2201B 平坦部
2202B 曲面部
【要約】
【課題】加工速度が向上したマーキング済み製品の生産方法等を提供する。
【解決手段】マーキング済み製品の生産方法は、物体を搬送路に沿って搬送することと、レーザー発振器と搬送路との間に、レーザー発振器から発生したレーザー光を所定のパターンに従って分岐する、あるいは前記レーザー光の一部を所定のパターンに従って遮蔽することで、レーザー光の規則的な強度分布を形成するビーム成形機構を配置することと、レーザー発振器と搬送路との間に、物体に行うマーキングのデザインに対応する透過パターンが形成されたマスク部材を配置することと、レーザー発振器からレーザー光を発生させ、搬送中の物体にビーム成形機構及びマスク部材を通過したレーザー光を照射することとを備える。ビーム成形機構から出射するレーザー光の進行方向は一方向であり、ビーム成形機構に入射するレーザー光の進行方向と同じである。
【選択図】
図1