(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-07-31
(45)【発行日】2024-08-08
(54)【発明の名称】身体構造の塞栓形成のためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
A61B 17/00 20060101AFI20240801BHJP
【FI】
A61B17/00 500
(21)【出願番号】P 2020500782
(86)(22)【出願日】2018-03-16
(86)【国際出願番号】 US2018022806
(87)【国際公開番号】W WO2018175221
(87)【国際公開日】2018-09-27
【審査請求日】2021-03-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-21
(32)【優先日】2017-03-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517416374
【氏名又は名称】マイクロベンション インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】MICROVENTION, INC.
【住所又は居所原語表記】35 Enterprise, Aliso Viejo, California 92656 (US)
(74)【代理人】
【識別番号】100109634
【氏名又は名称】舛谷 威志
(72)【発明者】
【氏名】メリット,ブライアン イー.
(72)【発明者】
【氏名】ヘウィット,トッド ジェー.
【合議体】
【審判長】佐々木 正章
【審判官】村上 哲
【審判官】栗山 卓也
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第6368338(US,B1)
【文献】特表2001-513354(JP,A)
【文献】国際公開第02/069783(WO,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の血管系内の血管内欠陥の治療のためのデバイスであって、
近位端、遠位端、および縦軸を有し、前記縦軸方向に垂直な径方向に自己拡張性である血液透過性編組み構造を含み、前記編組み構造は、複数の弾力性の細長いフィラメントが編組まれて成り、前記フィラメントは、前記血液透過性編組み構造の近位端または遠位端のうち少なくとも1つで留め付けられており、前記血液透過性編組み構造は、マイクロカテーテル内でデリバリされる際には、前記径方向に拘束された細長くされた形態を有し、前記マイクロカテーテルが取り除かれた際には、前記径方向に拘束された形態に比べて前記縦軸方向に短縮されて前記径方向に拡張された形態を有し、
前記血液透過性編組み構造の前記拡張された形態は、前記血液透過性編組み構造の前記近位端と前記遠位端との間に延びた複数の突起部、および前記複数の突起部のそれぞれの間に配置され、前記血液透過性編組み構造の前記近位端と前記遠位端との間に延びる複数の溝部を備え、前記拡張された形態の前記径方向の断面において、前記縦軸方向に亘って、波形状の外周を形成し;
前記複数の突起部の各々の前記径方向の断面の外周は、前記波形状の山部を形成し、該山部は前記径方向の断面において、それぞれ、第1の曲率半径(r1)を有する突起部の第1の側面と、第2の曲率半径(r2)を有する前記突起部の第2の側面と、前記突起部の前記第1の側面と前記突起部の前記第2の側面との間
に第3の曲率半径(r3)を有する前記突起部の中心部分とを備え、前記縦軸方向に亘って、前記径方向の断面において前記第3の曲率半径は、前記第1の曲率半径および前記第2の曲率半径よりも大きい、
デバイス。
【請求項2】
前記複数の突起部は、前記血液透過性編組み構造の前記縦軸の周りに均等に配置される、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記血液透過性編組み構造の前記複数の突起部は、2個~16個の突起部を含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記血液透過性編組み構造は、前記溝部のそれぞれに沿ってひだを付けるように構成される、請求項3に記載のデバイス。
【請求項5】
前記複数の弾力性の細長いフィラメントのそれぞれは、第1の末端、中心区画、および第2の末端を有し、前記複数のフィラメントの第1および第2の末端は、前記血液透過性編組み構造の近位端で留め付けられており、前記複数のフィラメントのそれぞれの中心区画は、前記血液透過性編組み構造の遠位領域を通過する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項6】
前記拡張された形態の前記径方向の断面は、2ミリメートルと14ミリメートルとの間の、対向する前記山部の間の距離である大径Dを有する、請求項1に記載のデバイス。
【請求項7】
前記拡張された形態の前記径方向の断面は、対向する前記
溝部間の距離である、小径dを有し、前記大径Dと前記小径dとの比は、約1.05と約1.35との間である、請求項6に記載のデバイス。
【請求項8】
前記血液透過性編組み構造は、前記血液透過性編組み構造の前記縦軸方向に垂直な断面の外周の少なくとも一部分に、前記外周方向に延在する少なくとも1つの溝部をさらに含む、請求項1に記載のデバイス。
【請求項9】
前記少なくとも1つの溝部は、へこみまたは陥凹を含む、請求項8に記載のデバイス。
【請求項10】
前記少なくとも1つの溝部は、半円形の断面または三角形の断面を有する、請求項9に記載のデバイス。
【請求項11】
患者の血管系内の血管内欠陥の治療のためのデバイスであって、
複数のフィラメントから形成されたメッシュ構造を備える編組み構造を備え、前記編組み構造は、近位端、遠位端、および前記近位端と前記遠位端を通して延びる縦軸を有し、前記編組み構造は、マイクロカテーテル内でデリバリされる際には、前記縦軸方向に垂直な径方向に拘束されて細長くされた形態を、および前記拘束が解かれた際には、前記径方向に拘束された形態に比べて前記縦軸方向に短縮された、前記径方向に拡張された形態を有し;
前記径方向に拡張された形態では、前記メッシュ構造が、前記編組み構造の前記近位端と前記遠位端の間にそれぞれが延びた複数の突起部と、前記複数の突起部のそれぞれの間に配置され、前記編組み構造の前記近位端と前記遠位端との間に延びる複数の溝部を備え、前記拡張された形態の前記径方向の断面において、前記縦軸方向に亘って、波形状の外周を形成し;
前記複数の突起部の各々の前記径方向の断面の外周は、前記波形状の山部を形成し、該山部は
前記径方向の断面において、それぞれ、第1の曲率半径(r1)を有する突起部の第1の側面と、第2の曲率半径(r2)を有する前記突起部の第2の側面と、前記突起部の前記第1の側面と前記突起部の前記第2の側面との間
に第3の曲率半径(r3)を有する前記突起部の中心部分とを備え、前記縦軸方向に亘って、前記径方向の断面において第3の曲率半径は、前記第1の曲率半径および前記第2の曲率半径よりも大きい、
デバイス。
【請求項12】
さらに、前記縦軸方向に垂直な断面の外周方向に延在する溝部を含む、請求項11に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
この出願は、ここに参照によりその全体を本明細書に組み込まれる「Systems And Methods For Embolization Of Body Structures」と題された2017年3月24日出願の米国特許仮出願第62/476,104号の利益および優先権を請求するものである。
【技術分野】
【0002】
本明細書のデバイスおよび方法の実施形態は、哺乳動物の身体内の管状管を通るかまたは嚢状の洞腔もしくは血管内欠陥の小さな内部房の中への流体の流れの遮断に向けられたものである。さらに具体的には、本明細書の実施形態は、具体的に患者の脳動脈瘤の治療に向けられたいくつかの実施形態を含めた、患者の血管内欠陥の治療のためのデバイスおよび方法に向けられたものである。
【背景技術】
【0003】
哺乳動物の循環系は、ポンプとして働く心臓と、体内の様々な箇所に血液を輸送する血管の系とから構成される。血管の上を流れる血液によって発揮される力に起因して、血管は、種々の血管内欠陥を発達させることがある。動脈瘤として知られるよくある血管内欠陥の1つは、結果として血管の異常な拡幅を生じる。血管の動脈瘤は、典型的には、血管壁の拡幅とそれに続くバルーンの膨張および管壁の拡張の結果として形成される。例えば、動脈瘤が脳の動脈内に存在し、頭蓋部の大出血の結果として動脈瘤が破裂するものとなる場合に、死が起こる可能性がある。
【0004】
脳動脈瘤の治療のための外科的な手法は、典型的には、患者の頭蓋骨に開口の作製を要する開頭術を含み、外科医は、その開口を通して器具を挿入して、患者の脳の上で直接的に手術することができる。いくつかの外科的なアプローチのためには、脳を引っ込ませて、動脈瘤の発生した親血管を曝露しなければならない。動脈瘤へのアクセスが得られると、外科医は、動脈瘤の頸部をまたいでクリップを留置し、それによって、動脈血が動脈瘤に入り込むのを防ぐ。クリップが正しく留置されると、動脈瘤は、僅か数分で消し去られるものとなる。外科的な手法は、多くの動脈瘤に有効な治療であることがある。残念ながら、これらのタイプの条件を治療するための外科的な手法は、生命の危険を伴う侵襲性の高い外科的な手順を含み、この手順は多くの場合、患者への高いリスクを伴う麻酔下に長期間おくことを必要とする。それゆえに、そのような手順では、患者は、そのような手順のための候補者となるために、全般的に良好な健康状態にあることを求められる。
【0005】
生命の危険を伴う外科手術に頼ることなく脳動脈瘤を治療するために、侵襲性の低い様々な代替の手順が使用されている。そのような手順のいくつかは、塞栓または充填材を動脈瘤内にデリバリすることを含む。そのような血管閉塞のデバイスまたは素材のデリバリを使用して、止血を促進するか、または動脈瘤の洞腔を完全に充填することがある。血管閉塞デバイスは、人体の血管系内に、典型的にはカテーテルを介して留置され、塞栓の形成によって動脈瘤のある管を通る血液の流れを遮断するか、またはそのような塞栓をその管から生じた動脈瘤内に形成することがある。種々の埋め込み式のコイル型の血管閉塞デバイスが知られている。そのようなデバイスのコイルは、それ自体で二次コイル形状に、または種々のさらに複雑な二次コイル形状のいずれかに、形成されることがある。血管閉塞用コイルは、脳動脈瘤を治療するために通例使用されるが、いくつかの制約を抱えている。そのような制約としては、パッキング密度に乏しいこと、血流からの流体力学的な圧力により圧密化されること、頸部径の広い動脈瘤では安定性に乏しいこと、ならびにこのアプローチを伴う殆どの動脈瘤治療が複数のコイルの配備を要するためにそれらの配備が複雑であり困難であること、が挙げられる。
【0006】
侵襲性の外科手術を必要とすることなく動脈瘤を治療する別のアプローチは、動脈瘤の発生した管内にまたは領域にわたってスリーブまたはステントを留置することを含む。そのようなデバイスは、管を通る血流を維持すると共に、動脈瘤の内部に印加されている血圧を低減する。あるタイプのステントは、バルーン拡張性ステントとよばれるバルーンカテーテルを膨らませることによって適正なサイズに拡張されるのに対し、他のステントは、自己拡張性の様式で伸縮自在に拡張するように設計される。いくつかのステントは、典型的には、グラフトとよばれるポリマー性素材のスリーブで覆われ、ステントグラフトを形成する。ステントおよびステントグラフトは、一般的には、血管内欠陥に隣接する予め選択された位置に、デリバリカテーテルを通じてデリバリされる。脳動脈瘤の治療では、治療されている血管内欠陥の近くにある場合がある小さな穿孔管が意図せず閉塞する可能性があるために、覆いのあるステントまたはステントグラフトは、極めて限定的な使用となっている。
【0007】
さらに、現在の覆いのないステントは、一般に、単独型の治療としては充分ではない。小さな脳血管で使用されているマイクロカテーテルを通じてステントをフィットさせるために、拡張されると少量のステント構造のみが動脈瘤の頸部を架橋するように、通常、それらの密度は低減される。それゆえ、それらは、動脈瘤で血液の凝固を引き起こすのに充分に流れを遮断しないため、一般に、上記に議論されたコイルなどの血管閉塞用デバイスと組み合わせて用いられて、動脈瘤の閉塞を達成するものとなる。
【0008】
欠陥をわたり広がる部分または領域を備えた複数の動脈瘤頸部架橋デバイスが試行されてきた。しかし、これらのデバイスのいずれも、著しい程の臨床上の成功または実用性がなかった。それらの採用および臨床上の有用性の主な制約とは、確実に頸部を覆うように欠陥をわたり広がる部分を配置することができないことである。神経血管に適合する(すなわち、マイクロカテーテルを通じてデリバリ可能であり可撓性の高い)既存のステントデリバリシステムは、必要な回転配置能を持たない。先行文献に記載されている数多くの動脈瘤架橋デバイスの別の制約は、可撓性に乏しいことである。脳血管は、曲がりくねっていることから、脳の殆どの動脈瘤の場所に有効にデリバリするためには、高度な可撓性が必要である。
【0009】
最近、小さな曲がりくねった血管でデリバリおよび使用するためのデバイスおよび方法が開発されており、それらは、脳の動脈瘤などの動脈瘤内への血液の流れを、実質的に遮断することができる。場合によっては、これらのデバイスは、短期的な結果を達成するが、圧縮または他の形状もしくは方位の変化を生じ易いことがあり、それらは結果として、動脈瘤の再疎通をもたらすことがある。変形、圧密化、または転位の著しいリスクを伴うことなく長期間にわたって脳動脈瘤の血流を遮断するのに適した、新しい方法およびデバイスが望まれている。
【発明の概要】
【0010】
本開示の一実施形態では、患者の血管系内の血管内欠陥の治療のためのデバイスは、近位端、遠位端、および縦軸を有する自己拡張性の透過性シェルを含み、このシェルは、編組み構造を有する複数の細長い弾力性のフィラメントを含み、そこでは、フィラメントは、透過性シェルの近位端または遠位端のうち少なくとも1つで留め付けられており、透過性シェルは、マイクロカテーテル内でデリバリされるように構成されて径方向に拘束され細長くされた状態にあって、径方向に拘束された状態に対して軸方向に短縮された構成を有するそれ自体の拡張状態にあり、透過性シェルは、編組フィラメントの間に形成された複数の開口を有し、拡張状態にある透過性シェルは、周囲に整列した複数の裂片を含む。
【0011】
本開示の別の実施形態では、患者の血管系内の血管内欠陥の治療のためのデバイスは、近位端、遠位端、および縦軸を有する自己拡張性の透過性シェルを含み、このシェルは、編組み構造を有する複数の細長い弾力性のフィラメントを含み、そこでは、フィラメントは、透過性シェルの近位端または遠位端のうち少なくとも1つで留め付けられており、透過性シェルは、マイクロカテーテル内でデリバリされるように構成されて径方向に拘束され細長くされた状態にあって、径方向に拘束された状態に対して軸方向に短縮された構成を有する拡張状態にあり、透過性シェルは、編組フィラメントの間に形成された複数の開口を有し、それ自体の拡張状態にある透過性シェルは、透過性シェルの外周の少なくとも一部分の周りで周囲に延在する少なくとも1つの陥凹を含む。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】デリバリデバイスまたはアクチュエータの遠位端に解除可能に留め付けられた、患者の血管系の治療のためのイントロデューサシース、マイクロカテーテル、およびデバイスによりアクセスされている患者の概略図を示す。
【0013】
【
図2】患者の血管系の治療のためのデバイスの配置の順番を示す図である。
【0014】
【
図3】患者の血管系の治療のためのデバイスの配置の順番を示す図である。
【0015】
【
図4】患者の血管系の治療のためのデバイスの配置の順番を示す図である。
【0016】
【
図5】患者の血管系の治療のためのデバイスの配置の順番を示す図である。
【0017】
【
図6】本開示の一実施形態による、血管の変形の治療のためのデバイスの透視図である。
【0018】
【
図7】動脈瘤内に配置された
図6のデバイスの第1の断面図である。
【0019】
【
図8】動脈瘤内に配置された
図6のデバイスの第2の断面図である。
【0020】
【
図9】本開示の一実施形態による、血管の変形の治療のためのデバイスの透視図である。
【0021】
【
図10】本開示の一実施形態による、血管の変形の治療のためのデバイスの透視図である。
【0022】
【
図11】本開示の一実施形態による、血管の変形の治療のためのデバイスの透視図である。
【0023】
【
図12】本開示の一実施形態による、血管の変形の治療のためのデバイスの透視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本明細書に議論されるのは、患者の血管系内での、具体的には患者の脳血管系内での侵襲性を最小限とする配置に適した、血管内欠陥の治療のためのデバイスおよび方法である。そのような実施形態を、所望の治療部位に安全かつ有効にデリバリし、有効に配置されるものとするために、いくつかのデバイスの実施形態は、マイクロカテーテルの内腔を通じたデリバリとその遠位端からの配置とに適した横寸法を有する薄型の拘束された状態に潰れるように、構成されることがある。これらのデバイスの実施形態はまた、ひとたび配置されると、長期にわたって患者の血管系内の動的力に耐えるように、充分な機械的完全性を備える臨床上有効な構成を維持し得るものであり、そうでない場合、上記の動的力の結果、配置されたデバイスが圧密化される。別段に記述のない限り、本明細書に議論される別の同様の実施形態において、様々な実施形態の特長、寸法、または素材の1つまたは複数を使用してもよい。
【0025】
いくつかの実施形態は、患者の血流から血管内欠陥を全体的にまたは部分的に隔離するように血管壁を再構成することによる、脳動脈瘤の治療に特に有用である。いくつかの実施形態は、血管内欠陥を治療するために、血管内欠陥に配置されて、管壁の再構成、架橋、またはその両方を推進するように構成されることがある。これらの実施形態に用いるために、デバイスの透過性シェルは、透過性シェルを臨床上有益な位置に係留または固定するように構成されることがある。いくつかの実施形態に用いるために、本デバイスは、デバイスを係留または固定するために、血管の構造または欠陥について血管内欠陥内に全体または一部を設けられることがある。血管内欠陥、またはその一部分を患者の正常な血管系から隔離するか、欠陥の治癒を可能にするか、またはその他患者の健康に欠陥を来すリスクを最小限にするために、透過性シェルは、血管内欠陥の開口、頸部、または他の部分にわたり広がるように構成されることがある。
【0026】
本明細書に議論される患者の血管系の治療のためのデバイスの実施形態のうち一部または全てについて、透過性シェルは、初発でいくらかの血液が透過性シェルを通って灌流することを可能にするように、構成されることがある。透過性シェルの多孔性は、欠陥の治癒および隔離を促進するべく、血管内欠陥を充分に隔離するように、しかしながら、血管系内でデバイスに対し血液または他の流体の動的流れにより膜上で発せられる機械的外力を低減するかさもなければ最小限にするべく、初発で透過性シェルを通って充分に流れることを可能にするように、構成されることがある。患者の血管系の治療のためのデバイスのいくつかの実施形態については、時には欠陥にわたり広がる部分ともよばれる、血管内欠陥の開口または頸部にわたり広がる透過性シェルのうちの一部分のみが、透過性である、および/または患者の血流中での血栓形成に資するものである必要がある。そのような実施形態については、デバイスのうち血管内欠陥の開口または頸部にわたり広がっていない部分は、実質的に非透過性であってもよいし、血栓形成を有効に促進するには大き過ぎるような孔または開口の構成を備えた完全な透過性であってもよい。
【0027】
一般には、患者内でデリバリするために薄型に拘束され得る弾力性素材の透過性シェルを備えた、壁の薄い中空のデバイスを使用することが、場合によっては望ましいことがある。そのようなデバイスはまた、拘束を解くと径方向外側に拡張するように構成されることがあり、その結果、デバイスのシェルがさらに大きな体積を呈し、血管内欠陥を充填するかさもなければ閉塞して欠陥内部に配置される。シェルが径方向の外側に拡張することは、血管内欠陥の内面の一部または全てを会合させる一助となることがあり、それによって、デバイスの透過性シェルの外面と血管内欠陥の内側面との間の機械的な摩擦により、デバイスが血管内欠陥内に有効に係留される。そのようなデバイスのうちいくつかの実施形態はまた、一部または全体が血管内欠陥の洞腔内に機械的に捕捉されることがあり、具体的にはその場合、欠陥は、大きな内部体積を備えた狭い頸部部分を有する。デリバリ用の薄型で小さな体積を実現し、高い比率での体積の拡張を可能にするために、いくつかのデバイスの実施形態は、織られたかまたは編み組まれたフィラメントのマトリックスを含むが、それらのフィラメントは、フィラメントの連結または交差点の間に孔または開口のパターンを有する自己拡張性の透過性シェルを形成するように、織り合わされた構造によって共に連結されており、上記パターンは、実質的に規則的な間隔を取りかつ安定であるとともに、さらに適合と容積の抑制とをもたらす。
【0028】
本明細書に使用される際に、織られたおよび編み組まれたという用語は、メッシュ構造を形成するための任意の形態のフィラメントの交差を意味するために、互換的に使用される。繊維業および他の産業では、これらの用語は、物品がシート形態であるか円筒形態であるかなど、製品または用途に応じて、異なるまたはさらに特有の意味を有することがある。本開示の目的には、これらの用語は、互換的に使用される。
【0029】
透過性シェルを有する血管内欠陥の治療のためのデバイスおよび方法に用いられるいくつかの実施形態は、あらゆる目的のために本明細書に参照によりその全体を組み込まれる2015年7月14日発行の「Filamentary Devices for Treatment of Vascular Defects」と題された米国特許第9,078,658号に記載されている。さらに、透過性シェルを有する血管内欠陥の治療のためのデバイスおよび方法に用いられる実施形態は、あらゆる目的のために本明細書に参照によりその全体を組み込まれる2016年9月1日公開の「Filamentary Devices for Treatment of Vascular Defects」と題された共有の米国特許出願公開公報第2016/02409934号に記載されている。
【0030】
本明細書に記載されるものなどの透過性シェルを作製するための管状の編組ひもを形成するためのデバイスおよび方法に用いられる実施形態は、あらゆる目的のために本明細書に参照によりその全体を組み込まれる2016年12月27日発行の「Braiding Mechanism and Methods of Use」と題された米国特許第9,528,205号に記載されている。透過性シェルを有する血管内欠陥の治療のためのデバイスは、あらゆる目的のために本明細書に参照によりその全体を組み込まれる2014年11月4日発行の「Delivery and Detachment Systems and Methods for Vascular Implants」と題された米国特許第8,876,855号に記載されるものなどのデバイスおよび方法の実施形態を使用して、デリバリデバイスに取り付けられて、血管内欠陥にデリバリされることがある。
【0031】
デリバリ装置110の実施形態は、一般に、デリバリシステム112に使用されるマイクロカテーテル61の全長よりも大きな長さを有することがある。この関係によって、デリバリ装置110は、その遠位端に留め付けられた埋め込み式のデバイスに沿って、マイクロカテーテル61の内腔111の遠位ポートから延在するとともに(
図3)、
図1に示されるようにマイクロカテーテル61の近位端150から延在する充分な長さを有し、医師によるその操作を可能にする。いくつかの実施形態については、デリバリ装置110の長さを、約170cmから約200cmまでとすることがある。血管内欠陥160の治療を受けている患者158が、
図1に示されており、この血管内欠陥は、脳の動脈瘤であり得る。アクセスシース162が、患者158の身体156の橈骨動脈164または大腿動脈166のどちらかの内部に設置され、マイクロカテーテル61およびデリバリ装置110を含むデリバリシステム112が、アクセスシース162内に設置されていることが示されている。デリバリシステム112は、患者の脳の血管内欠陥160に隣接する患者の脳の血管系内へと遠位に延在することが示されている。
【0032】
患者の種々の血管へのアクセスは、血管内欠陥160への経皮的なアクセスを達成するために確立されたものであってもよく、そのようなものとしては、大腿動脈166や橈骨動脈164などの動脈、または他の血管が挙げられる。一般に、アクセス動脈が、小さな外科的切開部152を介して曝露され、血管の管腔へのアクセスが、Seldinger手法を用いて得られるが、この手法では、導入針を使用してワイヤを留置し、それを覆って1つのダイレータまたは一連のダイレータにより管を拡張して、イントロデューサシース162を管内へ挿入することを可能にする。これによって、デバイスを経皮的に使用することが可能になる。イントロデューサシース162が適所にあれば、次いで、ガイドカテーテル168を用いて、進入部位から治療される標的部位154に近い領域までの安全な通路を提供する。例えば、ヒトの脳のある部位を治療する際には、大腿動脈の進入部位152から、大動脈弓を介して心臓の周囲に延在する大動脈を貫いて上り、大動脈の上側から延在する動脈のうちの1つ、例えば頸動脈170などを通じて下って延びる、ガイドカテーテル168が選ばれるものとなる。典型的には、次いで、ガイドワイヤ159およびマイクロカテーテル61を、ガイドカテーテル168を通して留置し、患者の血管系を通じて進めて、マイクロカテーテル61の遠位端を動脈瘤などの標的の血管内欠陥160に隣接してまたは内部に設置する。
【0033】
ひとたび適正にサイズ調整されたデバイス10(
図2~5)が選択されていれば、次いで、デリバリおよび配置のプロセスを進めてもよい。また、本明細書に議論されるデバイスの実施形態10およびデリバリシステムの実施形態112の特性によって、概して、欠陥160内に初発で配置した後に、しかしデバイス10を取り外す前に、デバイス10を引き込むことが可能となることにも留意すべきである。そのため、初発で配置されたデバイス10は、異なるサイズのデバイス10を優先して欠陥160内での適合性を評価した後に、引っ張るかまたは取り出すことが可能でありかつ望ましいことがある。末端の動脈瘤160の一例が、断面図で
図2に示されている。マイクロカテーテル61などのカテーテルの先端151は、
図3に示されるように、血管の部位または欠陥160(例えば動脈瘤)の中にまたは隣接して進められることがある。いくつかの実施形態については、塞栓コイルまたは他の血管閉塞用のデバイスもしくは素材が、任意選択的に動脈瘤160内に留置されて、デバイス10を受け入れるためのフレームワークをもたらすことがある。さらに、本明細書に議論される患者の血管系の治療のためのデバイスをデリバリする前または間に、いくつかの動脈瘤の親の管の内部に、動脈瘤の頸部を実質的に横断して、ステントが留置されることがある。
【0034】
デリバリ装置110からのデバイス10の取り外しは、デリバリシステム112(
図1)の近位端に設置された制御スイッチによって制御されてもよく、上記デリバリシステムはまた、電源に連結されていることがあり、この電源は、デバイス10をデリバリ装置110に留め付けるテザー72の助けとなる。デバイス10がマイクロカテーテル61の遠位ポートから押し出されれば、または径方向の拘束が別様に除かれれば、次いで、デバイス10の遠位端66を、近位端67に向かって軸方向に移動させて、
図4~5に示されるように血管内欠陥160内に、めくれ上がった球状の構成体を呈するようにしてもよい。
【0035】
デリバリの間に、カテーテル管腔111がデバイス10の径方向の拡張を抑制するように、デバイス10が、マイクロカテーテル61を通じて挿入されてもよい。デリバリシステム112の遠位の先端または配置ポートが、血管内欠陥160に隣接するかまたはその内部の望ましい場所に配置されれば、
図4に示されるように、デバイス10が、カテーテル61の遠位端の外に配置され、それゆえにデバイスは、径方向に拡張を開始することが可能になる。デバイス10がデリバリシステム112の遠位端から現れるのにつれて、
図5に示されるように、デバイス10は、血管内欠陥160内で拡張状態へと拡張するが、少なくとも一部が血管内欠陥160の内面によって拘束されていることがある。
【0036】
完全に配置されると、デバイス10の径方向の拡張は、血管内欠陥160内にデバイス10を留め付ける一助となることがあり、また、
図5に示されるように、血管内欠陥160に隣接する患者の血管系の流れ、圧力、またはその両方から血管内欠陥160を少なくとも部分的に隔離するように、開口190の少なくとも一部分(例えば動脈瘤頸部)にわたって透過性シェル40を配置することがある。デバイス10の、具体的には頸部領域190での適合性によって、密閉の向上がもたらされることがある。いくつかの実施形態については、配置されれば、透過性シェル40は、流体の流れを実質的に遅らせ、血管の部位内への流れを妨げるため、血管内欠陥160内の圧力を低減することがある。いくつかの実施形態については、デバイス10は、実質的に血管内欠陥160内に移植されることがあるが、実施形態によっては、デバイス10の一部分が、欠陥の開口もしくは頸部190の中に、または血管枝の中に延在することがある。透過性シェル40の縦軸46は、
図5に示されており、血管内欠陥160の最大突出(例えば頸部190からドーム191まで)に沿って延びている。他の場合では、透過性シェル40が血管内欠陥160について異なる方位を有するように、デバイス10が留置されることがあり、その結果、透過性シェルの縦軸46は、頸部190およびドーム191に対して横または斜めに延在する。
【0037】
図6は、複数の弾力性の
細長いフィラメント204から織られたかまたは編み組まれた透過性シェル202を含む、血管内欠陥200の治療のためのデバイスを説明する。弾力性の
細長いフィラメント204は、描図を簡単にするために一部のみが示されているが、実際には全般的に透過性シェル202の構造全体を作り上げている。透過性シェル202は、第1端206、第2端208、および縦軸210を有する。実施形態によっては、透過性シェル202の
細長い弾力性フィラメント204は、実質的に形状の丸い横断面を有し、形状記憶金属でもあり得る超弾性素材から作製されてもよい。フィラメント204は、まとめて第1端206で接着されるか、溶接されるか、またはその他留め付けられる。
図6の実施形態では、カラー216が、クリンピング、溶接、接着剤もしくはエポキシによる接着、または均一なはんだ付けもしくはろう付けによって、フィラメント204の端部218の周りに固定される。この具体的な実施形態では、第1端206は、デリバリデバイスに隣接する近位端となるように構成されるが、他の実施形態では、フィラメント204は、第1端206の代わりに第2端208でまとめて保持されてもよい。さらに他の実施形態では、フィラメント204は、両端206、208でまとめて保持されてもよい。透過性シェル202のフィラメントの形状記憶金属は、ゆとりのある拡張状態である球状の構成体に熱成形されることがある。適した超弾性の形状記憶金属は、NiTi合金などの合金を含んでいてもよい。そのような合金の超弾性は、
細長いフィラメント204に弾力性を付与する際に有用であることがあり、その結果、示されるように、マイクロカテーテル61の内腔内でデリバリするために完全に拘束され、次いで、患者の体内に配置されると解かれて自己拡張して、球状の構成体を持つ実質的に本来の熱成形形状に戻るような形状に、それらのフィラメントを熱成形することができる。透過性シェルを熱成形するためのデバイスおよび方法に用いるさらに別の実施形態が、2009年11月5日発行の「Filamentary Devices for Treatment of Vascular Defects」と題された共有の米国特許出願公開公報第2009/0275974号に記載されており、この出願は、あらゆる目的のために参照によりその全体を本明細書に組み込まれている。
【0038】
透過性シェル202は、透過性シェル202の縦軸210に対して周囲に整列された6個の裂片212a~f(または畝、耳、突起、隆起)を含む、二次形状214に熱成形される。透過性シェル202の編み組まれた壁220は、単純な円筒の形状(例えば円形の断面)を備える透過性シェルの壁とは異なる機械的な特徴を有する。単一の
曲率半径を熱成形により外周全体を囲む編み組まれた壁とする代わりに、二次形状214を備える透過性シェル202の編み組まれた壁220は、さらに複雑な輪郭を有し、複数の
曲率半径を含み、それらは、
図7および
図8にさらに詳細にみることができる。
【0039】
図7および
図8は、血管内欠陥160内に配置された血管内欠陥200の治療のためのデバイスの断面図を示しており、この具体的な場合では、血管内欠陥16とは動脈瘤である。
図7に示されるように、裂片212a~fは、縦軸210の周りに均等に分配されるが、互いに約60°ずつ隔てられていてもよい。代替の実施形態では、不揃いの分配が望ましいことがあり、異なる成形用の固定具を熱成形操作の間に使用することによって達成されることがある。
図6と
図7の両方に示されるように、裂片212a~fのそれぞれの間には、縦方向に延在するチャネル222a~fがある。裂片212a~fは、
図6に示されており、実質的に透過性シェル202の第1端206と第2端208との間に延在する。チャネル222a~fは、実質的に透過性シェル202の第1端206と第2端208との間に延在していてもよい。他の実施形態では、チャネル222a~fが、透過性シェル202の第1端206と第2端208との間に完全には延在しないが、その代わりに透過性シェル202の中心部分にのみ存在するように、隣接する裂片の遠位端が互いに合一していることがあり、および/または隣接する裂片の近位端が互いに合一していることがある。チャネル222a~fは、マイクロカテーテル61の管腔111を通じた留置のために、透過性シェル202を所望の収斂または圧縮された形状へと選択的に潰れるものとするような折り目またはひだを生じるように構成されることがある。
【0040】
図7に最もよくみられるように、各裂片212a~fは、第1の
曲率半径r1を有する第1の側面224と、第2の
曲率半径r2を有する第2の側面226とを備える。
図7の実施形態では、第1の
曲率半径r1は、第2の
曲率半径r2にほぼ等しいが、他の実施形態では、それらは異なることがある。各裂片212a~fはまた、第1の側面224と第2の側面226との間に中心区画228を含むことがあり、中心区画228は、第3の
曲率半径r3を有する。いくつかの実施形態では、第3の半径r3は、第1の
曲率半径r1よりも大きくかつ第2の
曲率半径r2よりも大きく、他の実施形態では、第3の半径r3は、第1の
曲率半径r1よりも小さくかつ第2の
曲率半径r2よりも小さい。各チャネル222a~fは、第4の
曲率半径r4を有することがある。編み組まれた壁220を複数のより小さな
曲率半径、例えば
曲率半径r1、r2、およびr4へと熱で処理することによって、血管内欠陥200の治療のためのデバイスを移植後に血管内欠陥160内に置く際に、長期にわたる圧縮、例えば反復的な血圧循環による径方向の圧縮に耐える、透過性シェル202の拡張状態を生じてもよい。編み組まれた壁220の隣接および対向する
曲率半径、例えばr1およびr4は、それ自体の拡張状態にある透過性シェル202の裂片212b(この具体例の)を生じる支持構造を作り出し、そうでなければ直径Dの円形断面を有する透過性シェルなど、純粋な円形の編み組まれた壁のうち唯一の比較的大きな丸みのある部分を押し潰すか、崩壊させるか、または圧縮する傾向の強い圧縮力に対する耐久性をもたらす。熱成形によるさらに小さな半径は、直径Dの純粋な円形断面の編み組まれた壁に比べて、編み組まれた壁220の曲げ剛性を増加させることがある。これに対し、透過性シェル202は、
大径Dおよび
小径dを有する。実施形態によっては、
大径Dと
小径dとの比(D/d)は、約1.05と約1.35との間、または約1.15と約1.25との間、または約1.20である。
図7に示される編み組まれた壁220の径方向の断面の全体的に波状の外周囲は、場合によっては、直径Dの純粋な円形断面の編み組まれた壁よりも大きな、例えば0.5%から10%大きな寸法を有することがある。
【0041】
実施形態によっては、大径Dは、約2ミリメートルと約14ミリメートルとの間、または約3ミリメートルと約12ミリメートルとの間、または約4ミリメートルと約11ミリメートルトの間である。実施形態によっては、透過性シェル202の長さ(例えば、第1端206と第2端208との間の縦軸210に沿って測定される)は、約2ミリメートルと約10ミリメートルとの間、または約4ミリメートルと約8ミリメートルトの間である。
【0042】
実施形態によっては、第3の曲率半径r3は、透過性シェル202の大径Dの半分にほぼ等しく、それゆえに、裂片212a~fの中心区画228はそれぞれ、直径Dを有する円の輪郭をおおよそ辿るものとなる。
【0043】
図6に戻ると、テザー272は、第1のテザー端274で血管内欠陥200の治療のためのデバイスと接続される。第2のテザー端276は、デリバリデバイスまたは「押し」デバイスと連結するように構成される。
図8では、テザー272が、取り外し手順の間に切り落とされているか、融解しているか、そうでなければ切り離されており、小さな残り278のみが留まっている。
図8ではまた、透過性シェル202の第2端208は、閉じた端部209を含む。閉じた端部を有する血管内欠陥の治療用のデバイスおよびデバイスを生産するための方法に用いる実施形態は、米国特許出願公開公報第2016/02409934号に記載されている。透過性シェル202のフィラメント204はそれぞれ、第1端218aおよび第2端218bを有し、これらの端部は、透過性シェル202の第1端206に留め付けられている。また、フィラメント204はそれぞれ、第1端218aと第2端218bとの間に中心区画211を有し、この区画は、透過性シェル202の第2端208の閉じた端部209を貫通するか、またはその中に組み込まれている。
【0044】
図8においてそれ自体の拡張状態にある血管内欠陥200の治療のためのデバイスの縦方向の断面では、編み組まれた壁220の他の熱形成された
曲率半径が、反復的な血圧循環などの要因から受ける軸方向/縦方向の圧縮に耐える一助となる。第5の
曲率半径r5は、概ね対向する第6の
曲率半径r6に隣接する。実施形態によっては、第5の
曲率半径r5は、第6の
曲率半径r6よりも大きい。
【0045】
様々な曲率半径についての代表的な範囲は、非限定的ではあるが、以下の通りである。曲率半径r1は、約0.29ミリメートルから約2.10ミリメートルまで、または約0.36ミリメートルから約1.10ミリメートルまでに及ぶことがある。曲率半径r2は、約0.29ミリメートルから約2.10ミリメートルまで、または約0.36ミリメートルから約1.10ミリメートルまでに及ぶことがある。曲率半径r3は、約0.29ミリメートルから約7.28ミリメートルまで、または約0.89ミリメートルから約2.69ミリメートルまでに及ぶことがある。曲率半径r4は、約0.16ミリメートルから約1.21ミリメートルまで、または約0.20ミリメートルから約0.63ミリメートルまでに及ぶことがある。曲率半径r5は、約0.28ミリメートルから約2.06ミリメートルまで、または約0.36ミリメートルから約1.09ミリメートルまでに及ぶことがある。曲率半径r6は、約0.16ミリメートルから約1.27ミリメートルまで、または約0.21ミリメートルから約0.65ミリメートルまでに及ぶことがある。
【0046】
異なる曲率半径の間の比についての代表的な範囲は、非限定的ではあるが、以下の通りである。比r1/r3は、約0.04から約2.49まで、または約0.16から約0.48まで、または約0.28から約0.36までに及ぶことがある。比r3/r4は、約0.68から約44.18まで、または約1.71から約6.42まで、または約2.14から約6.31までに及ぶことがある。比r1/r4は、約0.87から約12.39まで、または約1.50から約2.61まで、または約1.71から約1.77までに及ぶことがある。比r6/r5は、約0.08から約4.08まで、または約0.58から約0.90まで、または約0.29から約0.63までに及ぶことがある。比r2/r3の範囲は、比r1/r3の範囲と同様であることが予想される。比r2/r4の範囲は、比r1/r4の範囲と同様であることが予想される。
【0047】
血管内欠陥200の治療のためのデバイスが、6個の裂片212a~fを有して図示されているが、異なる数の裂片、例えば2個の裂片と16個の裂片との間、またはさらに32個ものもしくはそれを超える裂片を有する、他の実施形態があり得る。
【0048】
図9は、複数の弾力性の
細長いフィラメント304から織られたかまたは編み組まれた透過性シェル302を含む、血管内欠陥300の治療のためのデバイスを説明する。透過性シェル302は、第1端306、第2端308、および縦軸310を有する。
図6の血管内欠陥200の治療のためのデバイスに関連して記載される素材および構築手法のいずれもまた、血管内欠陥300の治療のためのデバイスの構築の際に使用されることがある。透過性シェル302は、透過性シェル302の縦軸310に対して周囲に整列された4個の裂片312a~d(または畝、耳、突起、隆起)を含む、二次形状314に熱成形される。裂片312a~dのそれぞれの間には、縦方向に延在するチャネル322a~dがある。同様に
図9では、透過性シェル302の第1端306は、閉じた端部309を含み、この端部は、
図8の血管内欠陥200の治療のためのデバイスの閉じた端部209と同じ方式で形成されることがある。
【0049】
図10は、複数の弾力性の
細長いフィラメント404から織られたかまたは編み組まれた透過性シェル402を含む、血管内欠陥400の治療のためのデバイスを説明する。透過性シェル402は、第1端406、第2端408、および縦軸410を含む。
図6の血管内欠陥200の治療のためのデバイスまたは
図9の血管内欠陥300の治療のためのデバイスに関連して記載される素材および構築手法のいずれもまた、血管内欠陥400の治療のためのデバイスの構築の際に使用されることがある。透過性シェル402は、透過性シェル402の縦軸410に対して周囲に整列された8個の裂片412a~h(または畝、耳、突起、隆起)を含む、二次形状414に熱成形される。裂片412a~hのそれぞれの間には、縦方向に延在するチャネル422a~hがある。裂片412a~hのそれぞれは、透過性シェル402の外縁を囲んで整列された全体的に半円筒の形状を有して、縦方向に延在する。この具体的な実施形態では、裂片412a~hのそれぞれは、透過性シェル402の
大径の半分に満たない外半径を有する。
【0050】
縦軸410に沿った中点で縦軸410に平行な平面で横断切断された際の、
図10の透過性シェル402の裂片412a~hは、
図7の透過性シェル202の断面に呈さされるような複数の
曲率半径を持たない(例えば、r1はr3に等しくない)ことに留意するべきである。その代わりに、単一の
曲率半径(
曲率r1、r2、およびr3が互いに全て等しいような)が、隣接し概して対向するそれぞれの
曲率半径r4の間に存在する。そのため、8個の裂片412a~hはそれぞれ、全般的に円筒状の外輪郭を外側の範囲に有する。
【0051】
図11は、複数の弾力性の
細長いフィラメント504から織られたかまたは編み組まれた透過性シェル502を含む、血管内欠陥500の治療のためのデバイスを説明する。透過性シェル502は、第1端506、第2端508、および縦軸510を有する。
図6の血管内欠陥200の治療のためのデバイス、
図9の血管内欠陥300の治療のためのデバイス、または
図10の血管内欠陥400の治療のためのデバイスに関連して記載される素材および構築手法のいずれもまた、血管内欠陥500の治療のためのデバイスの構築の際に使用されることがある。透過性シェル502は、isheatsetintoathatcomprises8個の裂片512a~h(または畝、耳、突起、隆起)を含む二次形状514に熱成形される。裂片512a~dは、透過性シェル502の縦軸510に対して周囲に整列される。裂片512e~hも、透過性シェル502の縦軸510に対して周囲に整列される。裂片512a~dと裂片512e~hとの間には、周囲に-延在するチャネル516(溝、へこみ、陥凹)がある。裂片512a~hはまた、縦方向に-延在するチャネル522a~hによって隔てられている。周囲に延在するチャネル516は、編み組まれた壁520に加熱形成され、
曲率半径rcを有した半円形の形状の断面を有する。
曲率半径rcは、本明細書に記載されるように、反復的な血圧循環などの要因に由来する軸方向および水平な径方向の圧縮に耐える一助となる。他の実施形態では、周囲に延在するチャネル516の断面は、実質的に三角形の形状を有することがある。他の実施形態では、周囲に延在するチャネル516の断面は、2個以上のチャネルを含むことがあり、そのそれぞれは、縦軸510に沿った異なる縦方向の場所にある。例えば、第1のチャネルは、第1端506に近接して位置することがあり、第2のチャネルは、第2端508に近接して位置することがある。チャネル516が、縦軸510の周りに360°に延在して
図11に示されているが、他の実施形態では、チャネルは、縦軸510の周りの一部にのみ延在することがある。実施形態によっては、2個以上のチャネルがあることがあり、そのそれぞれは、縦軸510に沿った縦方向のほぼ同じ場所にあるが、それぞれは、縦軸の周りに約180°未満で延在する。一例では、それぞれ約80°の円弧を含む、周囲に延在する4個の異なるチャネルは、互いに約10°ずつ隔てられている。
【0052】
図12は、複数の弾力性の
細長いフィラメント604から織られたかまたは編み組まれた透過性シェル602を含む、血管内欠陥600の治療のためのデバイスを説明する。透過性シェル602は、第1端606、第2端608、および縦軸610を有する。
図6の血管内欠陥200の治療のためのデバイス、
図9の血管内欠陥300の治療のためのデバイス、
図10の血管内欠陥400の治療のためのデバイス、または
図11の血管内欠陥500の治療のためのデバイスに関連して記載される素材および構築手法のいずれもまた、血管内欠陥600の治療のためのデバイスの構築の際に使用されることがある。透過性シェル602は、2個の裂片612a~bを含む二次形状614に熱成形される。裂片612aと612bとの間には、周囲に延在するチャネル616(溝、へこみ、陥凹)がある。周囲に延在するチャネル616は、編み組まれた壁620熱形成されることがあり、実質的に三角形の形状を有する断面を備える。チャネル616は、本明細書に記載されるように、反復的な血圧循環などの要因に由来する軸方向および水平な径方向の圧縮に耐える一助となる。他の実施形態では、周囲に延在するチャネル616の断面は、半円形の形状を有することがある。他の実施形態では、周囲に延在するチャネル616の断面は、2個以上のチャネルを含むことがある。
【0053】
本明細書に記載される実施形態のいずれにおいても、フィラメント204、304、404は、異なる横寸法のフィラメントを含んでいてよい。例えば、あるフィラメントのサブグループが、外直径約0.00075インチを有していてもよいし、別のフィラメントのサブグループが、外直径約0.001インチを有していてもよい。3個以上の異なるフィラメントのサブグループがある場合さえあり、各グループは、ある特定の横寸法および/または材料組成を有する。実施形態によっては、透過性シェル202、302、402の放射線不透過性を増加させるために、フィラメントのうち1つまたは複数が、白金、白金イリジウム、金、または他の素材などの放射線不透過性の素材を含有することがある。超弾性および/または形状記憶性と放射線不透過性との両方を各フィラメント内に付与するために、複合フィラメント、例えば充填引出管(drawn filled tube)(DFT)を含むフィラメントなどを使用してもよい。複合および/またはDFTフィラメントについてのいくつかの実施形態が、米国特許第9,078,658号に記載されている。
【0054】
約0.0005インチと約0.002インチの間、または約0.00075インチと約0.00125インチの間の横寸法を有するフィラメントを利用する実施形態が想定される。
【0055】
複数の半径または湾曲を有する熱成形された二次形状214、314、414を備える透過性シェル202、302、402の多裂片の幾何学的形状は、透過性シェル202、302、402がそれ自体の拡張状態または条件にある際に、透過性シェル202、302、402のin vivoでの圧縮、すなわち径方向および軸方向の/縦方向の両方の圧縮に耐えることが理解されよう。しかし、透過性シェル202、302、402が中に圧縮されている際には、透過性シェル202、302、402のいくらかの延伸が発生し、径方向に拘束された状態または条件に圧縮され、フィラメント204、304、404間に発生し得るいくらかの摺動によって支持される。これにより、カテーテルの管腔を通じて単純かつ効率的にデリバリするために、所望の力を伴う圧壊が透過性シェル202、302、402に及ぼされる。その一方でデバイスは、それ自体の拡張状態で血管内欠陥中に移植されている間、有意な期間にわたって圧縮に耐えることができる。
【0056】
実施形態が示され記載されている一方で、本明細書に開示されている発明の概念の範囲を逸脱することなく様々な改変がなされることがある。脳動脈瘤に加えて、他のタイプの動脈瘤が、本明細書に記載されたデバイスを用いて治療されてもよく、そのようなものとしては、以下に限定されないが、大動脈瘤が挙げられる。本明細書に記載されたデバイスを用いて治療され得る他の血管内欠陥は、心構造変形を含み、そのようなものとしては、以下に限定されないが、左心耳が挙げられる。